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明細書 :マルチレベル電力変換器及びマルチレベル電力変換器の制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 マルチレベル電力変換器及びマルチレベル電力変換器の制御方法
国際特許分類 H02M   7/483       (2007.01)
FI H02M 7/483
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 32
出願番号 特願2016-508741 (P2016-508741)
国際出願番号 PCT/JP2015/057911
国際公開番号 WO2015/141681
国際出願日 平成27年3月17日(2015.3.17)
国際公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
優先権出願番号 2014055788
優先日 平成26年3月19日(2014.3.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】赤木 泰文
【氏名】萩原 誠
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100092624、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴田 準一
【識別番号】100114018、【弁理士】、【氏名又は名称】南山 知広
【識別番号】100165191、【弁理士】、【氏名又は名称】河合 章
【識別番号】100151459、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 5H770
Fターム 5H770BA11
5H770CA04
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA11
5H770DA23
5H770DA31
5H770HA03Z
要約 1次側に交流入出力端子(T1-1,2)、2次側巻線上に中間端子(T2-3)を有する変圧器(14)であって、2次側の両端(T2-1,2)には半導体スイッチと直流コンデンサ(C)と充放電電流用の入出力端子とを有してカスケード接続された複数の単位セル(11-1,…M)を備えた第1と第2のアーム(12-P,N)が接続され、中間端子(T2-3)には直流電源(Vdc)が接続された変圧器(14)を備え、第1と第2のアーム(12-P,N)と直流電源(Vdc)の自由端がアーム結合部(13)で接続されたマルチレベル電力変換器(1)において、第1のアーム(12-P)と第2のアーム(12-N)を流れる循環電流(iZP,iZN)を別々に定義して、各アームの直流電圧平均値を独立に制御することにより、アームバランス制御を不要としたマルチレベル電力変換器である。
特許請求の範囲 【請求項1】
直列接続された2つの半導体スイッチと、前記2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、前記半導体スイッチのスイッチング動作に応じて前記直流コンデンサから放電若しくは前記直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの前記単位セル、又は前記入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の前記単位セルからなる第1及び第2のアームであって、前記第1及び第2のアームは同数の前記単位セルを有する第1及び第2のアームと、
前記第1のアームの一端が接続される第1の端子と、前記第2のアームの一端が接続される第2の端子と、直流電源の一端が接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に中間端子を有する変圧器であって、前記2次側巻線の2つの末端端子には、前記第1のアームの、前記第1の端子が接続されない側の端子と、前記第2のアームの、前記第2の端子が接続されない側の端子とがそれぞれ接続され、前記中間端子には、前記直流電源の、前記第3の端子が接続されない側の端子が接続される変圧器と、
前記第1のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値と前記第2のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値とに基づいて、前記第1のアームの循環電流指令値と前記第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
前記第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、前記第1と第2のアームを流れる電流に、前記変圧器の巻線比と前記交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、前記第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器。
【請求項2】
前記アーム結合部は、前記第1の端子と、前記第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間の巻線上に位置する中間タップである前記第3の端子とを有する3端子結合リアクトル、からなる請求項1に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項3】
前記アーム結合部は、互いに直列接続された2つのリアクトルであって、前記直列接続された2つのリアクトルの一方の端子である前記第1の端子と、前記直列接続された2つのリアクトルの他方の端子である前記第2の端子と、前記直列接続された2つのリアクトルの直列接続点である前記第3の端子とを有する2つのリアクトルからなる請求項1に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項4】
前記第1のアーム及び前記第2のアームそれぞれにおいて、互いにカスケード接続された前記単位セル間の任意の位置に接続されるリアクトルを備え、
前記アーム結合部において、前記第1の端子と、前記第2の端子と、前記第3の端子とは互いに接続される請求項1に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項5】
直列接続された2つの半導体スイッチと、前記2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、前記半導体スイッチのスイッチング動作に応じて前記直流コンデンサから放電若しくは前記直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの前記単位セル、又は前記入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の前記単位セルからなる第1及び第2のアームであって、前記第1及び第2のアームは同数の前記単位セルを有する第1及び第2のアームと、
前記第1のアームの一端との間で直流電源が接続される第1の端子と、前記第2のアームの一端との間でさらに別の直流電源が接続される第2の端子と、前記第1の端子及び前記第2の端子に接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に3端子結合リアクトルを有する変圧器であって、前記2次側巻線の2つの末端端子には、前記第1のアームの、前記直流電源が接続されない側の端子と、前記第2のアームの、前記さらに別の直流電源が接続されない側の端子とがそれぞれ接続され、前記3端子結合リアクトルの両端端子間の巻線上に位置する中間端子には、前記第3の端子が接続される変圧器と、
前記第1のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値と前記第2のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値とに基づいて、前記第1のアームの循環電流指令値と前記第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
前記第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、前記第1と第2のアームを流れる電流に、前記変圧器の巻線比と前記交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、前記第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器。
【請求項6】
直列接続された2つの半導体スイッチと、前記2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、前記半導体スイッチのスイッチング動作に応じて前記直流コンデンサから放電若しくは前記直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの前記単位セル、又は前記入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の前記単位セルからなる第1及び第2のアームであって、前記第1及び第2のアームは同数の前記単位セルを有し、前記第1のアームの一端と前記第2のアームとの間に直流電源が接続される第1及び第2のアームと、
前記第1のアームの、前記直流電源が接続される側の端子に接続される第1のコンデンサと、
前記第2のアームの、前記直流電源が接続される側の端子に接続される第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの、前記第1のアームが接続されない側の端子が接続される第1の端子と、前記第2のコンデンサの、前記第2のアームが接続されない側の端子が接続される第2の端子と、前記第1の端子及び前記第2の端子に接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に3端子結合リアクトルを有する変圧器であって、前記2次側巻線の2つの末端端子には、前記第1のアームの、前記第1のコンデンサが接続されない側の端子と、前記第2のアームの、前記第2のコンデンサが接続されない側の端子と、がそれぞれ接続され、前記3端子結合リアクトルの両端端子間の巻線上に位置する中間端子には、前記第3の端子が接続される変圧器と、
前記第1のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値と前記第2のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値とに基づいて、前記第1のアームの循環電流指令値と前記第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
前記第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、前記第1と第2のアームを流れる電流に、前記変圧器の巻線比と前記交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、前記第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器。
【請求項7】
前記指令値生成手段は、前記第1のアーム内及び前記第2のアーム内の全ての前記直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値が,所定の直流電圧指令値に追従するよう制御するための前記第1と第2のアーム毎に循環電流指令値を生成する請求項1,5,6の何れか1項に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1のアーム内の全ての前記直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値に、前記第1のアーム内の各前記直流コンデンサの電圧値をそれぞれ追従させる制御、及び、前記第2のアーム内の全ての前記直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値に、前記第2のアーム内の各前記直流コンデンサの電圧値をそれぞれ追従させる制御を更に実行する請求項7に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項9】
前記制御手段は、前記追従させる制御に対応して前記半導体スイッチをスイッチング動作させるスイッチング指令手段を有する請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項10】
各前記半導体スイッチは、
オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子と、
該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードと、
を有する請求項1~9の何れか1項に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のマルチレベル電力変換器を3相分備える三相マルチレベル電力変換器であって、
各前記マルチレベル電力変換器内の前記変圧器は、1次側にスター結線を有し2次側にオープンスター結線を有する三相変圧器における各相をそれぞれ構成し、
各前記マルチレベル電力変換器には共通の前記直流電源が接続される、
ことを特徴とする三相マルチレベル電力変換器。
【請求項12】
請求項1~10の何れか1項に記載のマルチレベル電力変換器を2相分備える三相二相マルチレベル電力変換器であって、
各前記マルチレベル電力変換器内の前記変圧器の2次側巻線は、スコット変圧器の2次側における各相の巻線をそれぞれ構成し、
各前記マルチレベル電力変換器には共通の前記直流電源が接続される、
ことを特徴とする三相二相マルチレベル電力変換器。
【請求項13】
請求項1,5,6の何れか1項に記載のマルチレベル電力変換器において、
前記変圧器の1次側と2次側の巻線比をN1/N2、変圧器の交流入力端子に入力される電流をiacとした時に、第1のアームの循環電流と第2のアームの循環電流を、
ZP=iP+(N1/N2)×iac
ZN=iN-(N1/N2)×iac
で定義し、
前記第1のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値と前記第2のアーム内の前記直流コンデンサの電圧値とに基づいて、前記第1のアームの循環電流指令値と前記第2のアームの循環電流指令値とを作成し、
前記第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、前記第1と第2のアームを流れる電流に、前記変圧器の巻線比と前記交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、前記第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御することを特徴とするマルチレベル電力変換器の制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、直流と交流とを双方向に変換する単相電力変換器及び三相電力変換器並びに三相交流と二相交流とを双方向に変換する三相二相電力変換器を含むマルチレベル電力変換器及びマルチレベル電力変換器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電の導入機会の増大に伴い、電池電力貯蔵装置の重要性が増している。図20は、電池電力貯蔵装置の一般的な構成を示す図である。電池電力貯蔵装置1000は、NAS電池(登録商標)やリチウムイオン電池などのバッテリ100と、バッテリ100の直流電圧を交流電圧に変換する連系変換器200と、連系変換器200と電力系統400とを連系する連系変圧器300と、を備える。電池電力貯蔵装置1000においては、バッテリ100の直流電圧は、電力系統400の電圧実効値に対して相対的に低いため、連系変換器200には高い昇圧比が求められる。このため、従来より、数Mワット級の連系変換器において変換器用変圧器を使用することで高圧化及び大容量化を実現してきた。しかしながら、このような変換器用変圧器の使用は、装置の大型化及び高重量化をもたらす要因となる。
【0003】
このような問題を解決するために、実装が容易で大容量・高圧用途に適した次世代トランスレス電力変換器として、モジュラー・マルチレベル変換器(Modular Multilevel Converter:MMC)が提案されている。
【0004】
モジュラー・マルチレベル変換器は、複数の双方向チョッパセルもしくはフルブリッジ変換器セルを直列接続したモジュールでアームを構成する点に特徴がある。絶縁等の問題を除けば、直列セル数を増やすことにより、半導体スイッチを高耐圧化することなく、交流出力電圧の増大を図るとともに電圧及び電流のリプルを抑制することが可能であり、高電圧かつ大容量の電力変換器として期待されている。モジュラー・マルチレベル変換器は、実装が容易で、冗長性に富み、装置の小型軽量化を実現できることから、系統連系用電力変換器や、誘導電動機のためのモータドライブ装置などに適用できる。
【0005】
モジュラー・マルチレベル変換器として、例えばカスケード型のモジュラー・マルチレベル変換器(Modular Multilevel Cascade Converter:MMCC)が提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1~4参照。)。
【0006】
しかし、電池電力貯蔵装置の直流電圧を交流電圧に変換する連系変換器の高昇圧比を変換器用変圧器で実現すると、装置の大型化及び高重量化をもたらす。即ち、実装が容易で大容量・高圧用途に適したモジュラー・マルチレベル変換器を用いた場合であっても、変換器用変圧器は除去できるが、電圧整合性及び電気絶縁性の観点から連系変圧器を除去できないという問題がある。
【0007】
また、今後は風力発電や太陽光発電が産業界のみならず一般家庭にも普及していくことが考えられ、電池電力貯蔵装置のより一層の小型化、低価格化及び高効率化がさらに要求される。更に、特許文献1及び非特許文献1~4に記載されたカスケード型のモジュラー・マルチレベル変換器(MMCC)よりもさらに小型、低価格で高効率の電力変換器が求められる。
【0008】
そこで、本発明者らは、直流と交流とを双方向に変換する、構造容易、小型、低価格で高効率のモジュラー・マルチレベルの単相電力変換器及び三相電力変換器、ならびに、三相交流と二相交流とを双方向に変換する、構造容易、小型、低価格で高効率の三相二相電力変換器を案出した(特許文献2参照)。なお、以後、モジュラー・マルチレベルの単相電力変換器及び三相電力変換器、並びに三相二相電力変換器を総称して、マルチレベル電力変換器と記す。
【0009】
特許文献2に記載のマルチレベル電力変換器では、プッシュプル・インバータの各アームをセルを使用してモジュール化した回路構成のモジュラー・プッシュプル・変換器(MPC:Modular Push-pull Converter)が使用される。モジュラー・プッシュプル・変換器は以後、MPCと記す。
【0010】
そして、MPCの正常動作を実現するために、各セルに使用している直流コンデンサ電圧を一定にする制御として、特許文献2には、平均値制御、アームバランス制御、循環電流制御及び個別バランス制御の4つの制御が開示されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2011-182517号公報
【特許文献2】国際出願PCT/JP2012/079668号公報
【0012】

【非特許文献1】萩原誠、赤木泰文著、「モジュラー・マルチレベル変換器(MMC)のPWM制御法と動作検証」、電気学会論文誌D、第128巻、第7号、pp957~965、2008年7月
【非特許文献2】西村和敏、萩原誠、赤木泰文著、「モジュラー・マルチレベルPWMインバータを用いた高圧モータドライブシステムへの応用-400V,15kWミニモデルによる実験的検証-」、電気学会半導体電力変換研究会、SPC-09-24、pp19~24、2009年1月
【非特許文献3】赤木泰文、萩原誠著、「モジュラー・マルチレベル・カスケード変換器(MMCC)の分類と名称」、電気学会全国大会、no.4-043、pp71~72、2010年3月
【非特許文献4】萩原誠、前田亮、赤木泰文著、「モジュラー・マルチレベル・カスケード変換器(MMCC-DSCC)の理論解析と制御法」、電気学会全国大会、no.4-044、pp73~74、2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献2に開示の、各セルにある直流コンデンサ電圧を一定にするアームバランス制御では、アーム間で直流電圧の情報を高速で通信しており、アーム間で高速な通信を行う都合上、各アームを近接設置する必要があり、設計上の制約があった。
【0014】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、各アームの直流電圧平均値を独立に制御することにより、各セルにある直流コンデンサ電圧を一定にするアームバランス制御を無くし、アーム間での直流電圧の情報の高速通信を不要として、MPCの設計上の制約を無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を実現する本発明の第1の形態によれば、
直列接続された2つの半導体スイッチと、2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、半導体スイッチのスイッチング動作に応じて直流コンデンサから放電若しくは直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの単位セル、又は入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の単位セルからなる第1及び第2のアームであって、第1及び第2のアームは同数の単位セルを有する第1及び第2のアームと、
第1のアームの一端が接続される第1の端子と、第2のアームの一端が接続される第2の端子と、直流電源の一端が接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に中間端子を有する変圧器であって、2次側巻線の2つの末端端子には、第1のアームの、アーム結合部の第1の端子が接続されない側の端子と、第2のアームの、アーム結合部の第2の端子が接続されない側の端子とがそれぞれ接続され、中間端子には、直流電源の、アーム結合部の第3の端子が接続されない側の端子が接続される変圧器と、
第1のアーム内の直流コンデンサの電圧値と第2のアーム内の直流コンデンサの電圧値とに基づいて、第1のアームの循環電流指令値と第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、第1と第2のアームを流れる電流に、変圧器の巻線比と交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器が提供される。
【0016】
上記目的を実現する本発明の第2の形態によれば、
直列接続された2つの半導体スイッチと、2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、半導体スイッチのスイッチング動作に応じて直流コンデンサから放電若しくは直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの単位セル、又は入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の単位セルからなる第1及び第2のアームであって、第1及び第2のアームは同数の単位セルを有する第1及び第2のアームと、
第1のアームの一端との間で直流電源が接続される第1の端子と、第2のアームの一端との間でさらに別の直流電源が接続される第2の端子と、第1の端子及び第2の端子に接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に3端子結合リアクトルを有する変圧器であって、2次側巻線の2つの末端端子には、第1のアームの、直流電源が接続されない側の端子と、第2のアームの、上記さらに別の直流電源が接続されない側の端子とがそれぞれ接続され、3端子結合リアクトルの両端端子間の巻線上に位置する中間端子には、第3の端子が接続される変圧器と、
第1のアーム内の直流コンデンサの電圧値と第2のアーム内の直流コンデンサの電圧値とに基づいて、第1のアームの循環電流指令値と第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、第1と第2のアームを流れる電流に、変圧器の巻線比と交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器が提供される。
【0017】
上記目的を実現する本発明の第3の形態によれば、
直列接続された2つの半導体スイッチと、2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサと、半導体スイッチのスイッチング動作に応じて直流コンデンサから放電若しくは直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子とを有する単位セルと、
1つの単位セル、又は入出力端子を介して互いにカスケード接続された複数の単位セルからなる第1及び第2のアームであって、第1及び第2のアームは同数の単位セルを有する第1及び第2のアームと、
第1のアームの、直流電源が接続される側の端子に接続される第1のコンデンサと、
第2のアームの、直流電源が接続される側の端子に接続される第2のコンデンサと、
第1のコンデンサの、第1のアームが接続されない側の端子が接続される第1の端子と、前2のコンデンサの、第2のアームが接続されない側の端子が接続される第2の端子と、第1の端子及び第2の端子に接続される第3の端子とを有するアーム結合部と、
1次側に交流入出力端子、2次側巻線上に3端子結合リアクトルを有する変圧器であって、2次側巻線の2つの末端端子には、第1のアームの、第1のコンデンサが接続されない側の端子と、第2のアームの、第2のコンデンサが接続されない側の端子とがそれぞれ接続され、3端子結合リアクトルの両端端子間の巻線上に位置する中間端子には、第3の端子が接続される変圧器と、
第1のアーム内の直流コンデンサの電圧値と第2のアーム内の直流コンデンサの電圧値とに基づいて、第1のアームの循環電流指令値と第2のアームの循環電流指令値とを作成する指令値作成手段と、
第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、第1と第2のアームを流れる電流に、変圧器の巻線比と交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは引いた、第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御する制御手段とを備えることを特徴とするマルチレベル電力変換器が提供される。
【0018】
上記目的を実現する本発明の第4の形態は、上記第1から第3の形態のマルチレベル電力変換器を制御する方法であって、
上記第1から第3の形態の何れかの形態のマルチレベル電力変換器において、
変圧器の1次側と2次側の巻線比をN1/N2、変圧器の交流入力端子に入力される電流をiacとした時に、第1のアームの循環電流と第2のアーム循環電流を、
ZP=iP+(N1/N2)×iac
ZN=iN-(N1/N2)×iac
で定義し、
第1のアーム内の直流コンデンサの電圧値と第2のアーム内の直流コンデンサの電圧値とに基づいて、第1のアームの循環電流指令値と第2のアームの循環電流指令値とを作成し、
第1と第2のアームの循環電流指令値に対して、第1と第2のアームを流れる電流に、変圧器の巻線比と交流入出力端子に印加される交流電流とを考慮した交流分を加えた、若しくは加えた、第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流が追従するよう制御することを特徴とするマルチレベル電力変換器の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各アームの直流電圧平均値を独立に制御することにより、各セルにある直流コンデンサ電圧を一定にするアームバランス制御を無くし、アーム間での直流電圧の情報の高速通信を不要として、MPCの設計上の制約を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施例による単相電力変換器を示す回路図である。
【図2A】第1~第5の実施例による単相電力変換器内の単位セルであるチョッパセルを示す回路図である。
【図2B】第1~第5の実施例による単相電力変換器内の単位セルであるブリッジセルを示す回路図である。
【図3】第2の実施例による単相電力変換器を示す回路図である。
【図4A】第3の実施例による単相電力変換器におけるアームの回路構成を示す回路図である。
【図4B】第3の実施例による単相電力変換器におけるアームの回路構成を示す回路図である。
【図4C】第3の実施例による単相電力変換器におけるアームの回路構成を示す回路図である。
【図5】第4の実施例による単相電力変換器を示す回路図である。
【図6】第5の実施例による単相電力変換器を示す回路図である。
【図7】第6の実施例による三相電力変換器を示す回路図である。
【図8A】図7に示す三相電力変換器における変圧器を示す回路図である。
【図8B】図7に示す三相電力変換器における変圧器を示す回路図である。
【図9A】第6の実施例による三相電力変換器の直流コンデンサ制御についての制御ブロック図(その1)である。
【図9B】第6の実施例による三相電力変換器の直流コンデンサ制御についての制御ブロック図(その2)である。
【図9C】第6の実施例による三相電力変換器の直流コンデンサ制御についての制御ブロック図(その3)である。
【図10】第6の実施例による三相電力変換器の直流コンデンサ制御装置を示すブロック図である。
【図11】第6の実施例による三相電力変換器の実験における瞬時有効電力制御及び瞬時無効電力制御を示すブロック図である。
【図12】第6の実施例による三相電力変換器を、インバータ動作させたときの定常特性についての実験波形を示す図である。
【図13】第6の実施例による三相電力変換器を、整流器動作させたときの定常特性についての実験波形を示す図である。
【図14】第6の実施例による三相電力変換器を、所定動作条件で動作させた時のスタートアップ動作中の実験波形を示す図である。
【図15】第6の実施例による三相電力変換器を、瞬時有効電力指令値を-4kWから-5kWにステップ状に変化させた時の実験波形を示す図である。
【図16】第7の実施例による三相電力変換器を示す回路図である。
【図17】本発明で使用するスコット変圧器を示す回路図である。
【図18A】図17に示すスコット変圧器の瞬時電圧ベクトル図(その1)である。
【図18B】図17に示すスコット変圧器の瞬時電圧ベクトル図(その2)である。
【図19】第8の実施例による三相二相電力変換器を示す回路図である。
【図20】電池電力貯蔵装置の一般的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明のマルチレベル電力変換器の第1の実施例を示すものであり、単相電力変換器1の回路図を示している。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。図2Aは、第1の実施例並びに以後の実施例における単相電力変換器内の単位セルであるチョッパセルCCを示す回路図である。図2Bは、第1の実施例並びに以後の実施例の単相電力変換器1において使用することができる単位セルであるブリッジセルBCを示す回路図である。

【0022】
第1の実施例による単相電力変換器1は、単位セル11-1~11-M(ただし、Mは自然数)と、第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nと、アーム結合部13と、変圧器14とを備える。単位セル11-1~11-Mは、直列接続された2つの半導体スイッチSWと、2つの半導体スイッチSWに並列接続された直流コンデンサCと、半導体スイッチSWのスイッチング動作に応じて直流コンデンサCから放電若しくは直流コンデンサCへ充電される電流の入出力端子T1,T2とを有する。

【0023】
なお、これ以降、単位セル11-1~11-M内にある直流コンデンサCについては、理解を容易にするために、当該単位セル11-1~11-Mの外側に記載している。単位セル11-1~11-Mは、図2Aに示すチョッパセルCCもしくは図2Bに示すブリッジセルBCのいずれでもよい。

【0024】
図2Aに示すチョッパセルCCは、直列接続された2つの半導体スイッチSWと、2つの半導体スイッチSWに並列接続された直流コンデンサCと、半導体スイッチSWのスイッチング動作に応じて直流コンデンサCから放電若しくは直流コンデンサCへ充電される電流の入出力端子T1及びT2とを有する双方向のチョッパセルである。2つの半導体スイッチSWのうちの一方の半導体スイッチの両端端子を、チョッパセルCCの入出力端子T1及びT2とする。

【0025】
図2Bに示すブリッジセルBCは、直列接続された2つの半導体スイッチSWを2組並列接続し、これに直流コンデンサCを並列接続して構成されるものである。直列接続された2つの半導体スイッチSWの各組の、直列接続点を、直流コンデンサCから放電若しくは直流コンデンサCへ充電される電流の入出力端子T1及びT2とする。チョッパセルCCとブリッジセルBCは、単位セルとも呼ばれる。

【0026】
図2A及び図2Bに示すいずれの単位セルにおいては、各半導体スイッチSWは、オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子Sと、この半導体スイッチング素子Sに逆並列に接続された帰還ダイオードDとを有する。単位セルの入出力端子T1及びT2間に、1つの単位セルが出力する電圧が現れる。

【0027】
図1に示すように、第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nは、1つの単位セル、又は入出力端子T1及びT2を介して互いにカスケード接続された複数の単位セルを同数有するようにする。図1並びに以後の実施例では、第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nに配置される単位セルに、符号11-1~11-M(ただし、Mは自然数であり、以後も同様である)を付して説明する。

【0028】
アーム結合部13は、第1のアーム12-Pの下側端子1abが接続される第1の端子aと、第2のアーム12-Nの下側端子2abが接続される第2の端子bと、第1の端子aと第2の端子bとの間に位置する第3の端子cとを有する。第3の端子cには直流電源Vdcの負極側端子が接続される。

【0029】
上記アーム結合部13は、第1の実施例では、図1に示すように、第1の端子aと、第2の端子bと、第1の端子aと第2の端子bとの間の巻線上に位置する中間タップである第3の端子cとを有する3端子結合リアクトルLからなる。図1においては3端子結合リアクトルLの極性を黒丸(・)で表わしている。第1の端子aと第3の端子cとの間の巻線の極性と、第3の端子cと第2の端子bとの間の巻線の極性とが逆向き(図示の例では相反する向きに向いている)となるようにする。

【0030】
変圧器14は、1次側に交流入出力端子T1-1及びT1-2を有し、2次側には2つの末端端子T2-1及びT2-2の間の2次側巻線上にセンタータップである中間端子T2-3を有する。変圧器14の1次側の交流入出力端子T1-1及びT1-2間に、単相電力変換器1の交流出力電圧vacが現れる。ここで、変圧器14の1次側巻線の巻き数をN1とし、2次側巻線の巻き数をN2とする。したがって、2次側においては、末端端子T2-1と中間端子T2-3との間の巻線の巻き数及び中間端子T2-3と末端端子T2-2との間の巻線の巻き数は、共にN2/2となる。

【0031】
また、図1においては変圧器14の1次側巻線及び2次側巻線の極性を黒丸(・)で表わしている。2次側巻線においては、末端端子T2-1と中間端子T2-3との間の巻線の極性と、中間端子T2-3と末端端子T2-2との間の巻線の極性とが同じ向き(図示の例では左向に揃っている)となるようにする。一方、1次側巻線の極性の向きについては、2次側巻線の極性の向きと必ずしも同じとならなくてもよい。

【0032】
変圧器14の2次側巻線の末端端子T2-1には、第1のアーム12-Pの、アーム結合部13の第1の端子aが接続されない側の端子、即ち第1のアーム12-Pの上側端子1atが接続され、変圧器14の2次側巻線の末端端子T2-2には、第2のアーム12-Nの、アーム結合部13の第2の端子bが接続されない側の端子,即ち第2のアーム12-Nの上側端子2atが接続される。また、変圧器14の中間端子T2-3には、直流電源Vdcの、アーム結合部13の第3の端子cが接続されない側の端子,即ち直流電源Vdcの正極側端子が接続される。

【0033】
第1の実施例による単相電力変換器1の動作を、数式を用いて解析すると次の通りである。

【0034】
変圧器14の1次側の交流入出力端子T1-1及びT1-2間に、単相電力変換器1の交流電圧vacが現れる。交流電流をiacとする。また、第1のアーム12-Pに流れるアーム電流をiPとし、第2のアーム12-Nに流れるアーム電流をiNとする。第1のアーム12-P内の各単位セル11-j(ただし、j=1~M)の入出力端子(図2A及び図2BのT1及びT2)間に表れる電圧をvPjとし、第2のアーム12-N内の各単位セル11-j(ただし、j=1~M)の入出力端子(図2A及び図2BのT1及びT2)間に表れる電圧をvNjとしたとき、第1のアーム12-Pの出力電圧総和vP及び第2のアーム12-Nの出力電圧総和vNはそれぞれ式1及び式2で表わされる。

【0035】
【数1】
JP2015141681A1_000003t.gif

【0036】
【数2】
JP2015141681A1_000004t.gif

【0037】
一方、変調度をm(0≦m≦1)、角周波数をωとしたとき、第1のアーム12-Pの出力電圧総和vP及び第2のアーム12-Nの出力電圧総和vNはそれぞれ式3及び式4で表わされる。

【0038】
【数3】
JP2015141681A1_000005t.gif

【0039】
【数4】
JP2015141681A1_000006t.gif

【0040】
ここで、循環電流iZを式5のように定義する。

【0041】
【数5】
JP2015141681A1_000007t.gif

【0042】
アーム結合部13における3端子結合リアクトルは循環電流iZに対してのみLのインダクタンスを有するので、式6及び式7に示す電圧方程式が成り立つ。

【0043】
【数6】
JP2015141681A1_000008t.gif

【0044】
【数7】
JP2015141681A1_000009t.gif

【0045】
式3、式4、式6及び式7より式8及び式9が得られる。

【0046】
【数8】
JP2015141681A1_000010t.gif

【0047】
【数9】
JP2015141681A1_000011t.gif

【0048】
式9からわかるように、循環電流iZは直流量となる。すなわち、第1のアーム12-Pに流れるアーム電流iP及び第2のアーム12-Nに流れるアーム電流iNはともに直流分を含むということである。変圧器14においては直流電流による磁束は互いに打ち消し合うため、直流磁束は発生しない。なお、上述の式9の導出には、vP+vN=2Vdcの関係を用いている。しかしながら実際は、高調波電圧やデッドタイムなどの影響によりvP+vN≠2Vdcとなるので、循環電流iZに交流分が重畳する。

【0049】
一方、第1のアーム12-Pに流れるアーム電流iP及び第2のアーム12-Nに流れるアーム電流iNに含まれる交流分をそれぞれ(iPac及び(iNacとすると、変圧器の起磁力の関係から式10が得られる。

【0050】
【数10】
JP2015141681A1_000012t.gif

【0051】
式10において、(iPac=-(iNacの関係が成立すると仮定すると式11及び式12が得られる。

【0052】
【数11】
JP2015141681A1_000013t.gif

【0053】
【数12】
JP2015141681A1_000014t.gif

【0054】
本発明では、第1のアーム12-Pに流れる循環電流iZP及び第2のアーム12-Nに流れる循環電流iZNを別々に定義する。すると、図1において循環電流iZPは、以下の式Aと式Bのように与えられる。
ZP=iP+(iPac=iP+(N1/N2)iac …(A)
ZN=iN-(iNac=iN-(N1/N2)iac …(B)

【0055】
式Aと式Bの右辺第2項は循環電流iZPと循環電流iZNに含まれる交流分に相当する。従って循環電流iZPと循環電流iZNは理想的には直流分のみになる。本発明では、循環電流iZPと循環電流iZNを使用することにより、第1のアーム12-Pと第2のアーム12-Nの直流電圧平均値vaveCP,vaveCNを独立に制御することができる。

【0056】
図3は、本発明のマルチレベル電力変換器の第2の実施例を示すものであり、単相電力変換器1の回路図を示している。第2の実施例による単相電力変換器1は、図1、図2A及び図2Bを参照して説明した第1の実施例におけるアーム結合部13を、3端子結合リアクトルLではなく、通常のリアクトル、即ち非結合リアクトルL1,L2で構成したものである。なお、これ以外の回路構成要素については、図1に示す単位セル11-1~11-M、第1のアーム12-P、第2のアーム12-N及び変圧器14、ならびに図2A及び図2Bに示す単位セルと同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。

【0057】
第2の実施例では、図3に示すように、アーム結合部13は、互いに直列接続された2つのリアクトルL1及びL2からなり、リアクトルL1の一方の端子である第1の端子aと、リアクトルL2の一方の端子である第2の端子bと、直列接続された2つのリアクトルL1及びL2の直列接続点である第3の端子cとを有する。なお、リアクトルL1,L2は、変圧器14の漏れインダクタンスで代用してもよい。

【0058】
図4A~図4Cは、本発明のマルチレベル電力変換器の第3の実施例を示すものであり、単相電力変換器1におけるアームの回路構成を示す回路図である。第3の実施例による単相電力変換器1は、図3を参照して説明した第2の実施例におけるアーム結合部13を構成するリアクトルL1、L2の位置を変更したものである。図4A~図4Cでは、単相電力変換器1におけるアームを構成するリアクトルL1,L2の内のリアクトルL及び単位セル11-1~11-Mを含む第1もしくは第2のアームのみを表している。第3の実施例では、図4A~図4Cに示すように、第1のアーム及び第2のアームそれぞれにおいて、互いにカスケード接続された単位セル11-1~11-M間の任意の位置に接続されるリアクトルLを備えるので、図3に示したアーム結合部13の第1の端子aと、第2の端子bと、第3の端子cとは互いに接続されるように変更する。これ以外の回路構成要素については、第2の実施例と同様である。なお、リアクトルLは変圧器14の漏れインダクタンスで代用してもよい。

【0059】
図5は、本発明のマルチレベル電力変換器の第4の実施例を示すものであり、単相電力変換器1の回路図を示している。第4の実施例による単相電力変換器1は、図1、図2A及び図2Bを参照して説明した第1の実施例におけるアーム結合部13及び変圧器14を変更したものである。

【0060】
単位セル11-1~11-M、並びに第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nは、図1、図2A及び図2Bを参照して説明した第1の実施例と同様であるので詳細な説明については省略する。単位セル11-1~11-Mは、第1の実施例と同様、図2Aに示すチョッパセルCC、若しくは図2Bに示すブリッジセルBCの何れも使用でき、直列接続された2つの半導体スイッチSWと、2つの半導体スイッチSWに並列接続された直流コンデンサCと、半導体スイッチSWのスイッチング動作に応じて直流コンデンサCから放電若しくは直流コンデンサへ充電される電流の入出力端子T1,T2とを有する。第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nは、第1の実施例と同様、1つの単位セル11-1、又は入出力端子T1及びT2を介して互いにカスケード接続された複数の単位セル11-1~11-Mを同数有するようにする。

【0061】
アーム結合部13は、第1のアーム12-Pの下側端子1abに一端が接続される直流電源Vdcの他端が接続される第1の端子aと、第2のアーム12-Nの下側端子2abに一端が接続される更に別の直流電源Vdcの他端が接続される第2の端子bと、第1の端子aと第2の端子bとに接続される第3の端子cとを有する。

【0062】
図5に示すように、第4の実施例における変圧器14’は、図1を参照して説明した第1の実施例による単相電力変換器1における変圧器14の中間端子があった位置に、3端子結合リアクトル15を設けたものである。即ち、変圧器14’の2次側巻線上に3端子結合リアクトル15を有する。変圧器14’の1次側の交流入出力端子T1-1及びT1-2間に、単相電力変換器1の交流出力電圧vacが現れる。ここで、変圧器14’の1次側巻線の巻き数をN1とし、2次側巻線の巻き数をN2とする。したがって、2次側においては、末端端子T2-1と3端子結合リアクトル15との間の巻線の巻き数及び3端子結合リアクトル15と末端端子T2-2との間の巻線の巻き数は共にN2/2となる。

【0063】
変圧器14’の2次側巻線の末端端子T2-1には、第1のアーム12-Pの、直流電源Vdcが接続されない側の端子、即ち第1のアーム12-Pの上側端子1atが接続される。また、変圧器14’の2次側巻線の末端端子T2-2には、第2のアーム12-Nの、更に別の直流電源Vdcが接続されない側の端子,即ち第2のアーム12-Nの上側端子2atが接続される。そして、3端子結合リアクトル15の両端端子間の巻線上に位置する中間端子T2-3には、アーム結合部13の第3の端子cが接続される。

【0064】
また、図5においては変圧器14’の1次側巻線及び2次側巻線の極性を黒丸(・)で表している。2次側巻線においては、末端端子T2-1と中間端子T2-3との間の巻線の極性と、中間端子T2-3と末端端子T2-2との間の巻線の極性とが逆向き(図示の例では互いに向き合う)となるようにする。一方、1次側巻線の極性の向きについては、2次側巻線の極性の向きと必ずしも同じとならなくてもよい。また、3端子結合リアクトル15の極性の向きについては、3端子結合リアクトル15の両端端子と中間端子T2-3との間の2つの巻線の極性の向きが同じ向き(図示の例では左向に揃っている)となるようにする。3端子結合リアクトル15の極性の向きは、図示の例で右側に揃わせることもできる。

【0065】
図6は、本発明のマルチレベル電力変換器の第5の実施例を示すものであり、単相電力変換器1の回路図である。第5の実施例による単相電力変換器1は、図5を参照して説明した第4の実施例におけるアーム結合部13及びこれと直流電源vdcとの接続関係を変更し、この変更に伴い新たにコンデンサを設けたものである。

【0066】
単位セル11-1~11-Mならびに第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nは、図1、図2A及び図2Bを参照して説明した第1の実施例と同様である。即ち、単位セル11-1~11-Mは、第1の実施例と同様、図2Aに示すチョッパセルCC若しくは図2Bに示すブリッジセルの何れも使用でき、直列接続された2つの半導体スイッチSWと、2つの半導体スイッチSWに並列接続された直流コンデンサCと、半導体スイッチSWのスイッチング動作に応じて直流コンデンサCから放電若しくは直流コンデンサCへ充電される電流の入出力端子T1,T2とを有する。第1のアーム12-P及び第2のアーム12-Nは、第1の実施例と同様、1つの単位セル11-1、又は入出力端子T1及びT2を介して互いにカスケード接続された複数の単位セル11-1~11-Mを同数有するようにする。直流電源Vdcは、第1のアーム12-Pの下側端子1abと第2のアーム12-Nの下側端子2abとの間に接続される。

【0067】
第1のコンデンサCdc1は、第1のアーム12-Pの下側端子1abに一端が接続され、他端が第1の端子aに接続される。第2のコンデンサCdc2は、第2のアーム12-Nの下側端子2abに一端が接続され、他端が第2の端子bに接続される。第1のコンデンサCdc1と第2のコンデンサCdc2とは互いに直列接続され、この直列接続された第1のコンデンサCdc1及び第2のコンデンサCdc2は、直流電源Vdcに並列接続される。このとき、第1のコンデンサCdc1及び第2のコンデンサCdc2の極性の向きは、直流電源Vdcの極性の向きに合わせる。

【0068】
アーム結合部13には、第1のコンデンサCdc1に接続される第1の端子aと、第2のコンデンサCdc2に接続される第2の端子b、及び3端子結合リアクトル15の中間端子T2-3に接続される第3の端子cとを有する。

【0069】
第5の実施例における変圧器14’は、第4の実施例の場合同様、図1を参照して説明した第1の実施例による単相電力変換器1における変圧器14の中間端子があった位置に、3端子結合リアクトル15を設けたものである。すなわち、変圧器14’の2次側巻線上に3端子結合リアクトル15を有する。変圧器14’の1次側の交流入出力端子T1-1及びT1-2間に、単相電力変換器1の交流出力電圧vacが現れる。ここで、変圧器14’の1次側巻線の巻き数をN1とし、2次側巻線の巻き数をN2とする。従って、2次側においては、末端端子T2-1と3端子結合リアクトル15との間の巻線の巻き数及び3端子結合リアクトル15と末端端子T2-2との間の巻線の巻き数は共にN2/2となる。

【0070】
変圧器14’の2次側巻線の末端端子T2-1には、第1のアーム12-Pの上側端子1atが接続され、変圧器14’の2次側巻線の末端端子T2-2には、第2のアーム12-Nの上側端子2atが接続される。また、3端子結合リアクトル15の両端端子T2-1とT2-2の間の巻線上に位置する中間端子T2-3には、アーム結合部13の第3の端子cが接続される。

【0071】
また、図6においても変圧器14’の1次側巻線及び2次側巻線の極性を黒丸(・)で表している。2次側巻線においては、末端端子T2-1と中間端子T2-3との間の巻線の極性と、中間端子T2-3と末端端子T2-2との間の巻線の極性とが逆向き(図示の例では互いに向かい合う向きに向いている)となるようにする。一方、1次側巻線の極性の向きについては、2次側巻線の極性の向きと必ずしも同じとしなくてもよい。また、3端子結合リアクトルの極性については、3端子結合リアクトル15の両端端子T2-1、T2-2と中間端子T2-3との間の2つの巻線の極性の向きが同じ向き(図示の例では左向に揃っている)となるようにする。3端子結合リアクトルの極性の向きは、図示の例で右側に揃わせることもできる。

【0072】
以上説明した第1~第5の実施例による単相電力変換器1を3相分用いて三相電力変換器を構成することができる。また、第1~第5の実施例による単相電力変換器1を2相分用いて三相二相電力変換器を構成することができる。次に、三相電力変換器を第6の実施例及び第7の実施例として説明する。なお、三相二相電力変換器については第8の実施例として後述する。

【0073】
図7は、本発明のマルチレベル電力変換器の第6の実施例を示すものであり、三相電力変換器2を示す回路図である。図8A及び図8Bは、図7に示す三相電力変換器2における変圧器を示す回路図である。第6の実施例では、一例として第1の実施例による単相電力変換器1を用いて三相電力変換器2を構成する場合について説明するが、第2~第5の実施例による単相電力変換器1を用いても同様に構成することができる。第5の実施例による単相電力変換器1を用いて三相電力変換器2を構成する場合については後述の第7の実施例として説明する。

【0074】
図7に示す第6の実施例では、3つの単相電力変換器1をu相用、v相用及びw相用として使用しており、これらそれぞれの単相電力変換器を1u、1v及び1wで示す。そして、これら単相電力変換器1u、1v及び1wを用いて三相電力変換器2を形成している。なお、図7において、単相電力変換器1v及び1wについては、単相電力変換器1uと回路構成が同じであるので、具体的な回路構成の記載は省略する。以下、主としてu相の単相電力変換器1uに関して説明するが、v相及びw相の単相電力変換器1v,1wについても同様に適用できる。また、本実施例では、単位セルの個数を、一例として1アームあたり4個、1相当たり8個、従って三相電力変換器2内に24個としたが、この数値はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。

【0075】
第6の実施例による三相電力変換器2においては、u相、v相及びw相の各相に設けられる各単相電力変換器1u、1v及び1w内の変圧器14を用いて、1次側にスター結線を有し2次側にオープンスター結線を有する三相変圧器24における各相をそれぞれ構成する。一例として、1次側巻線と2次側巻線の巻き数比N1:N2は1:1とする。図8Aは三相変圧器24の1次側のスター結線を示し、図8Bは三相変圧器24の2次側のオープンスター結線を示す。図8Bに示すようにオープンスター結線である2次側巻線の端子数は本来9個であるが、第6の実施例においては、図7に示すようにu、v及びwの各相のアーム結合部13の3端子結合リアクトルL内の中間端子である第3の端子cを1つの共通端子として構成することで、必要端子数を7個に抑えることができる。

【0076】
図1を参照して説明したように、単相電力変換器1においては、アーム結合部13の第3の端子cには直流電源Vdcの負極側端子が接続され、変圧器14の中間端子T2-3には直流電源Vdcの正極側端子が接続される。これに対して、第6の実施例では、図1において単相電力変換器1に上記のように接続されていた直流電源Vdcを、図7に示すようにu、v及びwの各相で共通とする。

【0077】
次に、第6の実施例による三相電力変換器2の各単位セル内の直流コンデンサの制御について図9A~図9C、図10及び図11を参照して以下に説明する。図9A~図9Cは、第6の実施例による三相電力変換器2の直流コンデンサ制御についての制御ブロック図である。図10は、第6の実施例による三相電力変換器2の直流コンデンサ制御装置50を示すブロック図である。上述のように、第6の実施例による三相電力変換器2は、第1の実施例による単相電力変換器1を3相分備えて構成したものである。なお、図9A~図9C及び図10に示すブロック図は、三相電力変換器のうちのu相の単相電力変換器1u(即ち、第1の実施例による単相電力変換器1)における直流コンデンサ制御を示すが、v相及びw相の単相電力変換器1v及び1wにも適用可能であり、第2~第5の実施例による単相電力変換器1で三相電力変換器2を構成しても同様である。また、同様の理由で、第1~第5の実施例による単相電力変換器1の単独の直流コンデンサ制御として、以下に説明する三相電力変換器2の直流コンデンサ制御をそのまま適用可能である。

【0078】
第6の実施例によれば、図9A~図9Cに示すように、三相電力変換器2の直流コンデンサ制御は大きく分けて次の3つの制御に分かれる。3つの制御は、平均値制御、循環電流制御及び個別バランス制御と呼ばれるものである。以下に、この3つの制御について個々に説明する。

【0079】
平均値制御は、直流電圧指令値に、各アーム内の全ての直流コンデンサの電圧平均値を平均して得られた値をそれぞれ追従させる制御である。循環電流制御は、平均値制御において作成される循環電流指令値に、第1のアームを流れる循環電流と第2のアームを流れる循環電流とが追従するようにする制御である。個別バランス制御は、同一アーム内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値に当該アーム内の各直流コンデンサの電圧値をそれぞれ追従させる制御であって、各アームごとに実行される制御である。

【0080】
上記3つの制御は、図10に示すような三相電力変換器2の直流コンデンサ制御装置50により実行される。直流コンデンサ制御装置50は、指令値作成手段51と制御手段52とを備える。指令値作成手段51は、第1のアーム12-P内の直流コンデンサの電圧値と第2のアーム12-N内の直流コンデンサの電圧値とに基づいて、第1のアーム12-Pの循環電流指令値iZP*と、第2のアーム12-Nの循環電流指令値iZN*とを作成する。制御手段52は、第1と第2のアームの循環電流指令値iZP*, iZN*に対して、第1と第2のアームをそれぞれ流れる循環電流iZP, iZNが追従するよう制御する。第1と第2のアームの循環電流iZP, iZNは、第1と第2のアームを流れる電流iP,iNに、変圧器14の巻線比N1/N2と、交流入出力端子T1-1、T1-2に印加される交流電流iacとを考慮した交流分(N1/N2)×(iac)を加えたもの、若しくは引いたものである。

【0081】
また、制御手段52は、上記追従させる制御に対応して半導体スイッチをスイッチング動作させるスイッチング指令手段63を有する。これら各手段は、例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置を用いて実現される。

【0082】
以下、図9A~図9Cに示す上記3つの制御それぞれについて、図10と対応させながら説明する。なお、指令値には符号*を付して説明するが、本明細書中では、循環電流指令値iZP*と記載されているのに対して、図面では循環電流指令値がi*ZPのように記載されていて、符号*の位置が異なる。しかし、ここでは、iZP*とi*ZPとは同じものとして説明する。他の符号についても同様である。

【0083】
図9Aは、直流電圧指令値に、各アーム内の全ての直流コンデンサの電圧平均値を平均して得られた値をそれぞれ追従させる平均値制御を示すブロック図である。図9Aに示す平均値制御は、図10に示す直流コンデンサ制御装置50における指令値作成手段51によって行われる。指令値作成手段51は、第1のアーム12-P用の循環電流指令値分iZP*と、第2のアーム12-N用の循環電流指令値分iZN*とを作成することで、第1のアーム12-P内及び第2のアーム12-N内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値VaveCP及びVaveCNを所定の直流電圧指令値VC*に追従させるフィードバックループを構成する。

【0084】
即ち、図10に示す指令値作成手段51は、図9Aに示した第1のアーム12-P内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値vaveCPが、所定の直流電圧指令値VC*に追従するように制御するための、第1のアーム12-P用の循環電流指令値iZP*を生成する。同様に、指令値作成手段51は、第2のアーム12-N内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値vaveCNが、所定の直流電圧指令値VC*に追従するよう制御するための、第2のアーム12-N用の循環電流指令値iZN*を生成する。

【0085】
続いて、図9Bは、平均値制御において作成される循環電流指令値iZP*,iZN*に、第1のアームを流れる循環電流iZPと第2のアームを流れる循環電流iZNが追従するようにする循環電流制御を示すブロック図である。循環電流制御は、各アームごとに実行され、図9Bでは、第1のアーム12-Pについての個別バランス制御を主として表記しているが、第2のアーム12-Nについての循環電流制御についてはカッコ「()」内に表記している。

【0086】
図9Bに示す循環電流制御は、図10に示す直流コンデンサ制御装置50における指令値作成手段51によって作成された、第1のアームを流れる循環電流iZPの循環電流指令値iZP*と、第2のアームを流れる循環電流iZNの循環電流指令値iZN*とに、第1のアームを流れる循環電流iZPと第2のアームを流れる循環電流iZNが追従するよう、制御手段52により制御するものである。

【0087】
なお、第1のアームを流れる循環電流iZPと第2のアームを流れる循環電流iZNは、式13と式14及び図9Bに示すように、第1と第2のアームを流れる電流iP,iNに、変圧器14の巻線比N1/N2と、交流入出力端子T1-1、T1-2に印加される交流電流iacとを考慮した交流分(N1/N2)×(iac)を加えたもの、若しくは引いたものである。そして、制御手段52は、第1のアームを流れる循環電流iZPと第2のアームを流れる循環電流iZNを、循環電流指令値iZP*、iZN*に追従させるフィードバックループを構成するための電圧指令値vAP*、vAN*を作成する。

【0088】
【数13】
JP2015141681A1_000015t.gif

【0089】
【数14】
JP2015141681A1_000016t.gif

【0090】
続いて、図9Cは、同一アーム内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値に当該アーム内の各直流コンデンサの電圧値をそれぞれ追従させる個別バランス制御を示すブロック図である。個別バランス制御は、各アームごとに実行され、図9Cでも、第1のアーム12-Pについての個別バランス制御を主として表記しているが、第2のアーム12-Nについての個別バランス制御についてはカッコ「()」内に表記している。

【0091】
制御手段52は、第1のアーム12-P内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値vaveCPに、第1のアーム12-P内の各直流コンデンサの電圧値vCPjをそれぞれ追従させる制御、及び、第2のアーム12-N内の全ての直流コンデンサの電圧値を平均して得られた値vaveCNに、第2のアーム12-N内の各直流コンデンサの電圧値vCNjをそれぞれ追従させる制御を実行する。このための電圧指令値が、各アーム12-P及び12-N内の各単位セル11-jごとに作成され、第1のアーム12-PについてはvBPj*、第2のアーム12-NについてはvBNj*で表す。ここで、Mをアーム内の単位セルの個数としたとき、j=1~Mとする。

【0092】
上記3つの制御により各アーム12-P及び12-N内の単位セル11-j内の直流コンデンサ制御のための電圧指令値が作成され、これと三相電力変換器2の1相分(すなわち単相電力変換器1)が出力すべき交流電圧についての電圧指令値vac*と組み合わせることで、各アーム12-P及び12-N内の単位セル11-jごとの最終的な出力電圧指令値が式15及び式16のように作成される。

【0093】
【数15】
JP2015141681A1_000017t.gif

【0094】
【数16】
JP2015141681A1_000018t.gif

【0095】
ここで、制御の安定化を図るため直流電圧Vdcを、フィードフォワード項として利用する。

【0096】
上述の式15及び式16に示される出力電圧指令値vPj*及びvNj*を用いて、三相電力変換器2内の各単位セル11-j内の半導体スイッチSWのスイッチング動作が制御される。上述のように、制御手段52は、半導体スイッチSWをスイッチング動作させるスイッチング指令手段63を有する。各アーム12-P及び12-Nについて生成された出力電圧指令値vPj*及びvNj*は、各直流コンデンサの電圧VCPj及びVCNjでそれぞれ規格化された後、キャリア周波数fcの三角波キャリア信号(最大値:1、最小値:0)と比較され、PWMのスイッチング信号が生成される。生成されたスイッチング信号(図10にはスイッチング指令値と記載)は、スイッチング指令手段63により、対応する単位セル11-j内の半導体スイッチSW(図2A、図2B参照)のスイッチング制御に用いられる。

【0097】
第6の実施例による三相電力変換器2は、1相あたり8個(各アームに4個ずつ)の単位セルを用いると、相電圧が9レベル、線間電圧が17レベルのPWM波形となる。このスイッチング信号の生成は、例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置を用いて実現される。

【0098】
次に、第6の実施例による三相電圧変換器2を用いた実験結果について説明する。実験には以下に示す回路パラメータを用いた。
定格容量 5kVA
定格線間電圧実効値VS 200V
定格電流実効値I 15A
系統周波数f 50Hz
変圧器の巻線比N2/N1 1.5
直流リンク電圧Vdc 140V
結合インダクタL 4mH
直流電圧指令値VC* 75V
直流コンデンサC 3.3mF
単位静電容量定数H 45ms
キャリア周波数fc 2kHz
交流側連係リアクトルLS 2.75mH

【0099】
実験では、各アーム12-Pと12-Nのチョッパセル数Mを4としたので、三相電圧変換器2には24個のチョッパセルがある。交流側のMPCは、交流リアクトルLsを通じて200Vの3相交流に接続し、直流側は直流電圧Vdcが140Vの直流電源に接続した。

【0100】
図11は、第6の実施例による三相電力変換器2の実験における瞬時有効電力制御及び瞬時無効電力制御を示すブロック図である。各アームのセル数は幾つでも構わない。ここで、瞬時有効電力指令値をp*、瞬時無効電力指令値をq*、で表す。第6の実施例における三相電力変換器2の各相の相電圧指令値vu*、vv*及びvw*は、各相の電源電流iu、iv及びiwの非干渉電流制御により決定される。

【0101】
第6の実施例による三相電力変換器2には、直流コンデンサ電圧制御手段71と各単位セルの出力電圧指令値作成手段72がある。直流コンデンサ電圧制御手段71には直流電圧指令値VC*、3相の各アームの各直流コンデンサの電圧値vuCP1,vuCP2,~vwCNM,各相の各アームのアーム電流iuP,iuN,~iwN及び各相の交流電流iacu,iacv,iacwが入力され、各相の電圧指令値vuAP*,vuAN*~vwBN*と各相の各直流コンデンサの電圧指令値vuBPj*~vwBPj*が出力される。

【0102】
直流コンデンサ電圧制御手段71から出力された各相の電圧指令値vuAP*,vuAN*~vwBN*と、各相の各直流コンデンサの電圧指令値vuBPj*~vwBPj*と、直流電源の電圧値Vdc及び各相の相電圧指令値vu*、vv*及びvw*が各単位セルの出力電圧指令値作成手段72に入力される。そして、各単位セルの出力電圧指令値作成手段72からは、各相の各アームのチョッパセルの電圧指令値vuPj*,vuNj*,~vwNj*が出力される。

【0103】
図12は第6の実施例による三相電力変換器2を用いた実験波形を示すものであり、MPCはインバータとして動作しており、瞬時有効電力指令値p*は-5kW,瞬時無効電力指令値q*は0kVAである。変圧器14の2次側の電圧がv2u、v2v,v2wは9ステップのPWM波形である。iuの総合高調波歪THDは1.9%に低減された。アーム電流iuP,iuNは直流成分と50Hzの交流成分の両方を含み、直流成分は6.3Aである。一方、50Hzの交流成分の振幅は,供給電流の2/3(=N1/N2)であり、循環電流iuZPは、変圧器14の効果により、直流成分IuZP=6.3Aに加えて、50Hzの基本周波数成分を含む。しかしながら、50Hzの成分は直流成分に比べれば無視できる。実質的な観点から見ると、式(iZPN=iZP-iZN)によって規定されるu相の電流iuZPNは直流成分を含んでいない。直流コンデンサ電圧vuCP1及びvuCN1は共に直流成分と交流成分を含んでおり、電圧制御によって直流成分は75Vに規制される。直流電源電流の直流成分Idcは39Aであり、電流IuZの6倍高い値である。

【0104】
図13は第6の実施例による三相電力変換器2を用いた実験波形を示すものであり、MPCは整流器として動作しており、瞬時有効電力指令値p*は5kW,瞬時無効電力指令値q*は0kVAである。図13に示される実験波形を図12の実験波形と比べると、図13に示される振幅vu2,vv2及びvw2は、図12に示される振幅vu2,vv2及びvw2よりも小さい。これは電力回路の抵抗値の影響によるものであり、抵抗値によってこれらの振幅が整流動作の間に低くなるが、逆変換の場合はこの逆で大きくなる。これは、整流動作によって、電流iuZPとidcの極性が負に変わるからである。図13に示される電流iuZPとidcの振幅は、変換機の電力損失により、図12に示されるこれらの振幅よりも小さい。図13に示されるその他の波形は図12に示される波形と同じである。

【0105】
図14は第6の実施例による三相電力変換器2を用いた実験波形を示すものであり、Vdcが140V、瞬時有効電力指令値p*が-5kW、瞬時無効電力指令値q*が0kVAの時のスタートアップ動作中の波形である。時刻t1から時刻t2の期間では、vC*が傾斜変化率5V/0.1sで70Vから75Vに増大している。また、時刻t3から時刻t4の期間では、瞬時無効電力指令値q*が0kVAであるのに対して、瞬時有効電力指令値p*が傾斜変化率-5kW/0.1sで0kWから-5kWに減少している。供給電流とアーム電流の振幅は、過電流が流れることなく増大している。更に、直流電圧vuCP1及びvuCN1の平均値は、定常誤差なく指令電圧値75Vによって規制される。電流iuZPNに含まれる直流成分は、過渡状態の間でさえもゼロに抑えられる。

【0106】
図15は第6の実施例による三相電力変換器2を用いた実験波形を示すものであり、瞬時有効電力指令値p*が-4kWから-5kWにステップ状に変化する時の波形である。実験波形によれば、直流リンク電流idcが、瞬時有効電力指令値p*における変化に対する一次応答を示しており、その中で実験波形から推定される時定数は1.5msと同様に短い。瞬時有効電力指令値p*がステップ状に変化する状態でも、iuZPNにおいては直流電流は発生しない。

【0107】
本発明のモジュラープッシュプルPWM変換器(MPC)は、電池電力貯蔵システムに適用できる。本発明は、MPC用の新たな制御方法を提案するものであり、3相MPC用の循環電流において6自由度を達成することができる。この結果、第1のアームと第2のアームにおける平均電圧を、干渉なしに独立に規制することができ、シンプルで信頼性のあるシステムを提供できる。3相200V、5kWの実用的なシステムから得られた実験結果によれば、変換器の重要性と効率が保証されることが分かる。

【0108】
図16は、第7の実施例による三相電力変換器を示す回路図である。第7の実施例は、図6を参照して説明した第5の実施例による単相電力変換器を用いて三相電力変換器を構成したものである。図16において、u相、v相及びw相にそれぞれ設けられる単相電力変換器を参照符号1u、1v及び1wで示し、これら単相電力変換器1u、1v及び1wで構成される三相電力変換器を参照符号2で表す。なお、図16において、単相電力変換器1v及び1wについては、単相電力変換器1uと回路構成が同じであるので、具体的な回路構成の記載は省略する。以下、主としてu相に関して説明するが、v相及びw相についても同様に適用できる。また、本実施例では、単位セルの個数を、一例として1アームあたり4個、1相当たり8個、したがって三相電力変換器2内に24個としたが、この数値はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。

【0109】
図6を参照して説明したように第5の実施例における変圧器14’は、図1を参照して説明した第1の実施例による単相電力変換器1における変圧器14の中間端子があった位置に、3端子結合リアクトル15を設けたものである。すなわち、変圧器14’の2次側巻線上に3端子結合リアクトル15を有する。第7の実施例による三相電力変換器2においては、この変圧器14’を用いて三相変圧器24における各相をそれぞれ構成する。

【0110】
図6を参照して説明したように第5の実施例における直流電源Vdcは、第1のアーム12-Pの下側端子1abと第2のアーム12-Nの下側端子2abとの間に接続される。第7の実施例では、図6において単相電力変換器1に上記のように接続されていた直流電源Vdcを、図16に示すようにu、v及びwの各相で共通とするが、図6に示す第5の実施例の場合の2倍の電圧値とする。ここで、3端子結合リアクトル15の中間端子(センタータップ)をY接続することで、図6に示す第5の実施例においては存在していた分圧コンデンサを除去することができる。

【0111】
第8の実施例は、第1~第5の実施例による単相電力変換器1を2相分備えて三相二相電力変換器を構成したものである。第1~第5の実施例による単相電力変換器1を2相分設けて系統側に連系するには、スコット変圧器を用いる。

【0112】
図17は、本発明で使用するスコット変圧器を示す回路図である。スコット変圧器25は、M座変圧器Tm及びT座変圧器Ttの2台の単相変圧器より構成する。M座変圧器Tmの1次側巻線の巻き数をN1、2次巻線の巻き数をN2とする。このとき、M座変圧器Tmの1次側巻線の中間端子(センタータップ)をT座変圧器Ttの1次側巻線と接続する。なお、T座変圧器Ttの1次側巻線の巻き数は√3N1/2となる。また、図18A及び図18Bは、図17に示すスコット変圧器の瞬時電圧ベクトル図である。図18Aに示すようにスコット変圧器の1次側巻線に三相平衡正弦波電圧vu、vv及びvwを印加すると、2次側巻線には位相差90度の二相正弦波電圧vα及びvβが現れる。

【0113】
図19は、第8の実施例による三相二相電力変換器を示す回路図である。図19に示す第8の実施例では、一例として第1の実施例による単相電力変換器を用いて三相二相電力変換器を構成する場合について説明するが、第2~第5の実施例による単相電力変換器を用いても同様に構成することができる。図19において、α相及びβ相にそれぞれ設けられる単相電力変換器を参照符号1α及び1βで示し、これら単相電力変換器1α及び1βで構成される三相二相電力変換器を参照符号3で表す。なお、図19において、単相電力変換器1βについては、単相電力変換器1βと回路構成が同じであるので、具体的な回路構成の記載は省略する。以下、主としてα相に関して説明するが、β相についても同様に適用できる。また、本実施例では、単位セルの個数を、一例として1アームあたり4個、1相当たり8個、したがって三相電力変換器2内に16個、としたが、この数値はあくまでも一例であり、これに限定されるものではない。

【0114】
第8の実施例による三相二相電力変換器3においては、α相及びβ相の各相に設けられる各単相電力変換器1α及び1β内の変圧器14を用いて、スコット変圧器25における各相をそれぞれ構成する。一例として、1次側巻線と2次側巻線の巻き数比N1:N2は√3:1とする。第8の実施例による三相二相電力変換器3の2次側α相においては、図17を参照して説明したスコット変圧器25の、M座変圧器Tmの2次側巻線上に中間端子(センタータップ)α1を設ける。また、三相二相電力変換器3の2次側β相においては、図20を参照して説明したスコット変圧器25の、T座変圧器Ttの2次側巻線上に中間端子(センタータップ)β1を設ける。図1を参照して説明したように、単相電力変換器1においては、アーム結合部13の第3の端子cには直流電源Vdcの負極側端子が接続され、変圧器14の中間端子T2-3には直流電源Vdcの正極側端子が接続されるが、第6の実施例では、これら中間端子α1及びβ1を直流電源Vdcの正極側端子に接続することで、図19に示すようにα相及びβ相で共通ものとする。

【0115】
また、三相二相電力変換器3の2次側α相においては、スコット変圧器25のM座変圧器Tmの2次側巻線の両端端子α0及びα1には第1のアーム12-P及び12-Nの上側端子を接続する。第1のアーム12-P及び12-Nの下側端子には、アーム結合部13である3端子結合リアクトルを接続する。3端子結合リアクトルの中間端子には、直流電源Vdcの負極側端子を接続する。三相二相電力変換器3の2次側β相についてもα相と同様の構成とする。

【0116】
以上説明したように、本発明のマルチレベル電力変換器及びマルチレベル電力変換器の制御方法では、各アームの直流電圧平均値を独立に制御することにより、従来の制御法に比べて、アームバランス制御を無くすことができたので、アーム間での直流電圧の情報の高速通信が不要になり、MPCの設計上の制約を無くすことができた。
【符号の説明】
【0117】
1、1u、1v、1w 単相電力変換器(マルチレベル電力変換器)
2 三相電力変換器(マルチレベル電力変換器)
3 三相二相電力変換器(マルチレベル電力変換器)
11-1、…、11-M 単位セル
12-P 第1のアーム
12-N 第2のアーム
13 アーム結合部
14、14’ 変圧器
15 3端子結合リアクトル
24 三相変圧器
25 スコット変圧器
50 直流コンデンサ制御装置
51 指令値作成手段
52 制御手段
63 スイッチング制御手段
71 直流コンデンサ電圧制御手段
72 各単位セルの出力電圧指令値作成手段
a 第1の端子
b 第2の端子
c 第3の端子
BC ブリッジセル
CC チョッパセル
D 還流ダイオード
S 半導体スイッチング素子
SW 半導体スイッチ
T1-1、T1-2 交流入出力端子
T2-1、T2-2 2次側巻線の末端端子
T2-3 中間端子
dc 直流電源
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図3】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図4C】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8A】
10
【図8B】
11
【図9A】
12
【図9B】
13
【図9C】
14
【図10】
15
【図11】
16
【図12】
17
【図13】
18
【図14】
19
【図15】
20
【図16】
21
【図17】
22
【図18A】
23
【図18B】
24
【図19】
25
【図20】
26