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明細書 :微小金属構造体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6108256号 (P6108256)
登録日 平成29年3月17日(2017.3.17)
発行日 平成29年4月5日(2017.4.5)
発明の名称または考案の名称 微小金属構造体
国際特許分類 C23C  18/34        (2006.01)
C23C  18/36        (2006.01)
C23C  18/40        (2006.01)
C23C  18/44        (2006.01)
C23C  18/31        (2006.01)
H05K   9/00        (2006.01)
FI C23C 18/34
C23C 18/36
C23C 18/40
C23C 18/44
C23C 18/31 Z
H05K 9/00 M
請求項の数または発明の数 4
全頁数 22
出願番号 特願2016-515932 (P2016-515932)
出願日 平成27年4月17日(2015.4.17)
国際出願番号 PCT/JP2015/061796
国際公開番号 WO2015/166816
国際公開日 平成27年11月5日(2015.11.5)
優先権出願番号 2014093361
優先日 平成26年4月30日(2014.4.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年9月21日(2016.9.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】鎌田 香織
【氏名】朴 貞子
【氏名】彌田 智一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100163119、【弁理士】、【氏名又は名称】布施 卓哉
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開2013-150003(JP,A)
調査した分野 C23C 18/00-20/08
C12P 3/00
H05K 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
テンプレートとしての珪藻類の表面をメッキ処理にて被覆する金属層を備え、
前記金属層にて所定の構造をなす微小金属構造体において、
前記所定の構造は、
円形の第1面、および前記第1面の径と同じ径をもつ円形の第2面を有し、前記第1面および前記第2面が間隔をもって平行に相互離間した中空円盤となるよう構成され、
前記第1面は、
前記円形における中心から円周に向かう方向に沿って、第1細孔が規則的に複数配設されるよう構成されることを特徴とする微小金属構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の微小金属構造体において、
前記第2面は、
前記第1細孔よりも径が大きい第2細孔が複数配設されているよう構成されることを特徴とする微小金属構造体。

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微小金属構造体において、
前記金属層は、
金、銀、銅、ニッケル、コバルト、およびアルミニウムの群のうち、少なくとも1つ以上の金属で構成されることを特徴とする微小金属構造体。

【請求項4】
請求項3に記載の微小金属構造体において、
前記金属層は、
前記テンプレートとしての珪藻類の表面から外側に向かう方向に沿って、第1層と、第2層とを少なくとも備え、
前記第1層を構成する金属は、そのイオン化傾向が、前記第2層を構成する金属のものよりも大きい金属であることを特徴とする微小金属構造体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層にて所定の構造をなす微小金属構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物組織をテンプレート(鋳型)とし、生物組織特有の形状をそのまま写し取る、所謂バイオテンプレート技術が開発されてきている。生物組織は、複雑で秩序的形状を有しているため、このバイオテンプレート技術によれば、写し取った構造体形状に応じて、特有の性質発現が期待される。特に、生物として微生物を用いることで、構造体として、ナノまたはマイクロメートルスケールの精緻な形状が達成される可能性が大きい。
【0003】
一般に、種々産業分野において、微細かつ緻密な加工が要求される場合が多い。たとえば、光学分野では、偏光(偏波)の制御や電磁波の吸収(遮蔽)に対し、構造体を介して電磁波を処理する手法が知られている。その構造体においては、より高度な電磁波処理をめざして、より微小で精緻な形状が求められている。
【0004】
この観点から、これまでの機械的な精密加工に代えて、上述のバイオテンプレート技術の応用が、期待されている。たとえば、下記特許文献1には、微細な藍藻に金属被覆する事例が、開示されている。この藍藻は、単位構造として微小なコイル形状を呈しており、所定の線径・巻き数・ピッチ・巻き方向を有している。この藍藻の表面に金属層を被覆することにより、上記コイル形状がそのまま写し取られる。この被覆としては、無電解メッキ処理が用いられている。これにより、上記コイル形状を備えた、金属の微小な構造体が取得され得る。この取得された構造体を用い、電磁波遮蔽(吸収)体をアセンブリすることで、その構造特有の吸収特性が発現し得る旨が開示されている。以下、生物組織の表面に金属層を被覆することを、「金属被覆」と称呼する。また、この金属被覆にて得られる微小な構造体を、「微小金属構造体」と称呼する。
【0005】
また、下記非特許文献1および非特許文献2には、微細な珪藻に金属被覆する事例が、開示されている。この珪藻は、単位構造として所定の面に微小な細孔を有している。この珪藻への金属被覆により、上記細孔に対応する凸部を備えた面形状がそのまま写し取られ、微小金属構造体が取得され得る。上記2つの金属被覆には、無電解メッキ処理が用いられている。これらの微小金属構造体の特性として、電磁波のGHz帯周波数と誘電率との関係や、赤外領域の波長と透過率との関係が、開示されている。
【0006】
また、下記非特許文献3および非特許文献4には、微細な珪藻に金属被覆する事例が、開示されている。非特許文献1および2に記載のものと同様の面形状がそのまま写し取られ、微小金属構造体が取得され得る。これら2つの金属被覆には、化学蒸着処理が用いられている。これらの微小金属構造体に対し、光が照射されることで、構造特有の表面プラズモン共鳴や、表面増強ラマン散乱が発現し得る旨が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013‐150003号公報
【0008】

【非特許文献1】カイ(Cai J.)、外4名、「アプライドサーフェスサイエンス(Applied Surface Science)」、(オランダ)、2012年、258、p.9680‐9684
【非特許文献2】サンドヘイジ(Sandhage K.)、外6名、「アドバンストファンクショナルマテリアルズ(Advanced Functional Materials)」、(ドイツ)、2012年、22、p.2550‐2559
【非特許文献3】ロシック(Losic D.)、外2名、「ニュージャーナルオブケミストリ(New Journal of Chemistry)」、(フランス)、2006年、30、p.908‐914
【非特許文献4】マーキン(Mirkin C.)、外3名、「アンゲヴァンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemie International Edhition)」、(ドイツ)、2005年、44、p.5064‐5067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1および上記非特許文献1~4に記載の微小金属構造体においては、精緻な形状や形状の規則性がたびたび消失する。従って、その金属被覆の質が十分に高いとは言えない。これは、金属被覆の際に、その金属層がテンプレートとなる生物組織へ十分に追従することが難しいことに基づく。また、金属が生物組織に追従した場合であっても、一旦金属が被覆された後に、金属被覆層の一部に剥離が生じたり、凝集が生じることにも基づく。従って、このようにして得られる微小金属構造体においては、バイオテンプレート技術にて期待される精緻な形状を、安定かつ大量に得ることが困難であった。このことが、実用化を妨げる1つの要因となっていた。このため、バイオテンプレート技術においては、金属被覆の質を向上させることが、待望されていた。
【0010】
以上を鑑み、本発明の目的は、生物組織の表面に金属層を被覆することに基づいて得られる微小金属構造体において、金属被覆の質を向上し、精緻な形状を達成し得るものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる微小金属構造体は、テンプレートとしての珪藻類の表面をメッキ処理にて被覆(すなわち、金属被覆)する金属層を備え、前記金属層にて所定の構造をなすものである。
【0012】
ここにおいて、微小金属構造体においては、メッキ処理により金属層が被覆された後に、珪藻類を除去してもよい。また、金属層が被覆された後であっても、珪藻類を除去せず、微小金属構造体中にそのまま含有されるようにしてもよい。
【0013】
本発明にかかる微小金属構造体の特徴は、前記所定の構造が、円形の第1面、および前記第1面の径と同じ径をもつ円形の第2面を有し、前記第1面および前記第2面が間隔をもって平行に相互離間した中空円盤となるよう構成され、前記第1面が、前記円形における中心から円周に向かう方向に沿って、第1細孔が規則的に複数配設されるよう構成されることにある(請求項1)。
【0014】
ここにおいて、上記中空円盤は、上記第1,2面が金属層より成ることで、構成される。この金属層は、単層でも多層であってもよい。また、これら第1,2面は、たとえば、それぞれ壁や円盤側面が間に介装されることで、平行に相互離間するようにしてもよい。また、上記第1細孔は、たとえば、円形の第1面半径線上に、列を成し且つ等間隔に複数配設されてもよい。更に、上記第2面には、細孔が配設されてもよいし、配設されてなくてもよい。
【0015】
発明者は、金属被覆における金属層の剥離や凝集の態様は、金属層の形状に大きく依存することを明らかにした。発明者の鋭意研究によれば、上述した特有の形状となるよう金属層が構成されることで、上記剥離や凝集の抑制が達成され得た。上記構成は、かかる知見に基づく。この構成によれば、微小金属構造体において、金属被覆の質が向上され得、精緻な形状が達成され得る。
【0016】
また、本発明にかかる微小金属構造体においては、前記第2面が、前記第1細孔よりも径が大きい第2細孔が複数配設されているよう構成されると好適である(請求項2)。
【0017】
また、本発明にかかる微小金属構造体においては、前記メッキ処理にて前記金属層を被覆する時間を、前記第1細孔の径または前記第2細孔の径と、前記金属層を被覆する速度とに基づいて設定し、前記設定された時間に基づいて、前記メッキ処理が実行されると好適である

【0018】
ここにおいて、被覆する時間を、第1および第2細孔の径のうち、何れか小さい方に着目して設定してもよい。また、金属層を被覆する速度は、メッキ処理の建浴における温度、pH(水素イオン濃度)、メッキ溶液に対する珪藻の固体濃度、およびメッキ溶液中の金属イオン濃度のうち、少なくとも1つの因子から推定してもよい。
【0019】
また、本発明にかかる微小金属構造体においては、前記金属層が、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、およびアルミニウムの群のうち、少なくとも1つ以上の金属で構成されてもよい(請求項3)。

【0020】
この場合、前記金属層が、前記テンプレートとしての珪藻類の表面から外側に向かう方向に沿って、第1層と、第2層とを少なくとも備え、前記第1層を構成する金属が、そのイオン化傾向が、前記第2層を構成する金属のものよりも大きい金属であると好適である(請求項4)。

【0021】
これによれば、イオン化傾向がより大きい金属が、第1層として用いられるため、第2層の金属の下地となり得る。これにより、第1,2層は、相互に剥離することが抑制され得る。したがって、第1層を生物組織に追従させた後、第2層を、第1層上に対して金属被覆した場合であっても、精緻な形状が達成され得る。すなわち、第2層の金属単独では、生物組織に対し被覆の追従が困難な場合であっても、上記構成により、金属被覆の質を向上させることができる。
【0022】
より具体的には、たとえば、前記金属層が備える前記第1層が、前記ニッケルで構成され、前記金属層が備える前記第2層が、前記金で構成されてもよい

【0023】
また、本発明にかかる微小金属構造体においては、前記テンプレートとしての珪藻類として、たとえば、コアミケイソウまたはエオリムナを用いてもよい
【0024】
コアミケイソウやエオリムナは、比較的短期間にて、一定の質をもって大量培養が可能である。従って、上記構成によれば、テンプレートとしての珪藻類の培養プロセスも含み、精緻な形状の微小金属構造体を、安定かつ大量に得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、微小金属構造体において、金属被覆の質を向上し、精緻な形状を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる微小金属構造体の、テンプレートとしての珪藻の構造を説明するための図である。
【図2】図1に記載の珪藻の珪藻が解体される様子を表した図である。
【図3】図1に記載の珪藻の詳細構造を説明するための図である。
【図4】図1に記載の珪藻の表面に触媒を吸着させるプロセスを説明するための、第1円盤および第2円盤の縦断面図である。
【図5】図1に記載の珪藻の表面に第1層を形成させるプロセスを説明するための、第1円盤および第2円盤の縦断面図である。
【図6】図1に記載の珪藻の表面において、第1層としての金属ニッケルが析出する際の機構を説明するための図である。
【図7】図1に記載の珪藻の表面における、第1層の被覆厚と、被覆時間との関係を説明するための図である。
【図8】被覆速度と、溶液の温度および溶液のpHとの関係を示すグラフである。
【図9】図1に記載の珪藻の表面に第2層を形成させるプロセスを説明するための、第1円盤および第2円盤の縦断面図である。
【図10】図1に記載の珪藻の表面において、第2層としての金が析出する際の機構を説明するための図である。
【図11】図1に記載の珪藻の表面における、第2層の被覆厚と、被覆時間との関係を説明するための図である。
【図12】図1に記載の珪藻を除去するプロセスを説明するための、第1円盤および第2円盤の縦断面図である。
【図13】本発明の実施形態にかかる微小金属構造体の第1面側からの鳥瞰図である。
【図14】本発明の実施形態にかかる微小金属構造体の縦断面図である。
【図15】本発明の実施形態の変形例にかかる微小金属構造体の、テンプレートとしての珪藻の表面において、第2層としての金属銅が析出する際の機構を説明するための図である。
【図16】本発明の実施例にかかる洗浄処理後におけるコアミケイソウの全体を示すSEM像である。
【図17】図16に示すコアミケイソウの拡大図を示すSEM像である。
【図18】図17のSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。
【図19】本発明の実施例にかかるニッケルメッキ処理における、被覆速度と、溶液の温度との関係を示すグラフである。
【図20】本発明の実施例にかかるニッケルメッキ処理後における微小金属構造体の全体を示すSEM像である。
【図21】図20に示す微小金属構造体の拡大図を示すSEM像である。
【図22】図21のSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。
【図23】本発明の実施例にかかる金メッキ処理における、被覆速度と、溶液の温度との関係を示すグラフである。
【図24】本発明の実施例にかかる金メッキ処理後における微小金属構造体の全体を示すSEM像である。
【図25】図24に示す微小金属構造体の拡大図を示すSEM像である。
【図26】図25のSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。
【図27】本発明の実施例にかかる微小金属構造体をホールアレイとして用いた場合における光学特性を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 珪藻
20 第1層
30 第2層
40 微小金属構造体
41 第1面
42 第2面
41a 第1細孔
42a 第2細孔
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による微小金属構造体の実施形態について説明する。本発明の実施形態にかかる微小金属構造体は、バイオテンプレート技術により得られるものである。具体的には、テンプレートとして珪藻を用い、その珪藻の表面に、金属層をメッキ処理にて被覆する。次いで、金属被覆した後に、珪藻を除去する。これにより、テンプレートとしての珪藻の形状が、金属層の所定の構造をもって、そのまま写し取られる。この写し取られた構造体が、微小金属構造体そのものとなる。

【0029】
本発明の実施形態にかかる微小金属構造体の製造は、主に4つのプロセスにて構成される。そのプロセスは、それぞれ、「1.前処理プロセス」、「2.第1層形成プロセス」、「3.第2層形成プロセス」、「4.除去プロセス」である。「1.前処理プロセス」は、培養した珪藻に対し、金属被覆が生物組織に追従するよう前処理するものである。「2.第1層形成プロセス」は、前処理した珪藻を金属被覆して第1層(下地)を形成するものである。「3.第2層形成プロセス」は、第1層にて金属被覆された珪藻を、更に金属被覆して第2層を形成するものである。「4.除去プロセス」は、金属被覆された珪藻から生物組織(すなわち珪藻)のみを除去するものである。以下、テンプレートとしての珪藻の構造と、4つのプロセスを説明する。以下、本実施形態では、珪藻としてコアミケイソウが用いられるものとして説明する。

【0030】
<珪藻の構造>
図1は、テンプレートとしての珪藻10(コアミケイソウ)の構造を説明するための図である。この珪藻10は、円柱形状を呈しており主成分はケイ素である。その円柱形状の珪藻10は、頂面11および底面12を備えている。頂面11および底面12を構成する円盤13は、それぞれ2層構造となっている。この2層構造については、後に詳述する。珪藻10は、原型として、2つの円盤13が、側面14を介して一体となっているが、各円盤13は、それぞれ別体として容易に解体され得る。

【0031】
上記円柱形状の珪藻10は、各面において、細孔が配設されている。頂面11、底面12、および側面14においては、それらを貫通する細孔11a、細孔12a、および細孔14aが複数個配設されている。これら配設された細孔群は、所定の規則性をもって配列されている。頂面11および底面12においては、それらの中心から円周に向かう方向に沿って、細孔11aおよび細孔12aが、一列をなして配設されている。これらの細孔の列は、動径方向に沿うように、頂面11および底面12の全体に規則的に配設されている(図1においては、細孔の一部のみを記載している。)。換言すれば、頂面11および底面12において、細孔11aおよび細孔12aが、中心から円周に向かって放射状に配設されている。また、側面14においても、細孔14aは、側面14の全体に配設されている(図1においては、細孔の一部のみを記載している。)。

【0032】
図2は、珪藻10が解体される様子を表した図である。珪藻10は、円柱形状の側面14を起点として、頂面11を含む上蓋と、底面12を含む下蓋とに容易に解体され得る。珪藻10においては、後述する微小金属構造体の製造プロセス中にて、頂面11側および底面12側に、それぞれ一つずつ円盤13が別体として解体される。図3は、珪藻10の詳細構造を説明するための図である。頂面11側の円盤13においては、頂面11から底面12に向かう方向に沿って、それぞれ第1円盤131、第2円盤132が備えられている。これら第1,第2円盤131,132により、2層構造が形成される。第1円盤131および第2円盤132には、これらを貫通するように細孔131a(上記細孔11aに相当)および細孔132aが複数個それぞれ配設されている。第1円盤131の細孔131aの径は、第2円盤132の細孔132aの径よりも小さい。これら配設された細孔群も、上記細孔11aおよび細孔12aと同様に、所定の規則性をもって配列されている。第1円盤131および第2円盤132においては、それらの中心から円周に向かう方向に沿って、細孔131aおよび細孔132aが、一列をなして配設されている。これらの細孔の列は、動径方向に沿うように、第1円盤131および第2円盤132の全体に規則的に配設されている。換言すれば、第1円盤131および第2円盤132において、細孔131aおよび細孔132aが、中心から円周に向かって放射状に配設されている。

【0033】
第1円盤131と第2円盤132とは、所定高さの壁133が介装されることで、平行に相互離間するよう配設される。この壁133は、全体としてハニカム状となるよう構成されている。壁133は、第2円盤132の細孔132aの1つを、ハニカム1セルにて取り囲むように構成されている。すなわち、壁133が、第1円盤131、第2円盤132を接続する支柱として機能する。この支柱の一端は、第2円盤132と、1つの細孔132aを取り囲むように配設される。一方、この支柱の他端は、第1円盤131と、複数の細孔131aを取り囲むように配設される。なお、底面12側においても、底面12から頂面11に向かう方向に沿って、上述した第1円盤131と第2円盤132との関係と同様ものとなる構造が、形成されている。すなわち、底面12側の円盤13においては、底面12から頂面11に向かう方向に沿って、上記と同様に、それぞれ第1円盤131、第2円盤132が備えられ、これらを貫通するように細孔131a(上記細孔12aに相当)および細孔132aが複数個それぞれ配設されている。

【0034】
このように、珪藻10においては、頂面11および底面12が、それぞれ2つの円盤13にて構成されるとともに、内部にて、連通路が形成されることになる。すなわち、第1円盤131の細孔131a(頂面11の細孔11a)は、第2円盤132の細孔132aと連通している。従って、頂面11の細孔11aは、これらの細孔131a,132aを介して、底面12の細孔12aまで通じる。また、第1円盤131と第2円盤132の間における空間は、側面14の細孔14aとも連通することになる。従って、たとえば、珪藻10の外部にて流体が加圧される場合、上述のように形成された連通部位を経て、流体が珪藻10の内部空間に流入可能となっている。以上が、珪藻10の構造の説明である。

【0035】
<微小金属構造体の製造>
<<1.前処理プロセス>>
先ず、培養された珪藻10を分取する。この培養方法としては、珪藻10の構成要素に則した培養媒体を用いて、培養するのが好適である。たとえば、珪藻10がコアミケイソウである場合、炭素源、窒素源、ミネラルの含有量を調整した人工海水や、天然の海水などが用いられてもよい。分取としては、所定の固液分離手段を用い、培養媒体と珪藻10とが分離される。固液分離手段は、たとえばメンブレンフィルタを用いた吸引ろ過でもよい。

【0036】
上記分取される珪藻10に対して、先ず、洗浄処理が施される。具体的には、洗浄剤を所定の濃度に調整した溶液に、珪藻10を分散・振とうさせる。そこから、珪藻10のみを回収する。これらを数回繰り返すことで、珪藻10が洗浄される。次いで、洗浄された珪藻10に対し、界面活性剤での処理が施される。具体的には、界面活性剤を所定の濃度に調整した溶液に、珪藻10を含浸させる。この処理により、界面活性剤が、珪藻10の内部空間にも流入する。この結果、珪藻10の表面(円柱形状としての外表面、および内部空間を形成する表面(すなわち、第1円盤131、第2円盤132、および壁133の表面)も含む。図4を参照。)に対し、有効な脱脂が実行されるとともに、界面活性剤の分子層が形成される。なお、珪藻10に対する溶液による何れの処理において、それぞれ撹拌を伴うと好適である。撹拌の手法としては、撹拌子による機械的な撹拌や、エアレーション・バブリングに伴う撹拌などが挙げられる。これにより、溶液への珪藻10の分散、および珪藻10内部への溶液の拡散が促進され得る。

【0037】
図4は、珪藻10の表面に触媒を吸着させるプロセスを説明するための、第1円盤131および第2円盤132の縦断面図である。上述のように界面活性剤で処理された珪藻10に対し、触媒を吸着させる。具体的には、パラジウム‐スズ錯体から成る触媒を所定濃度に調整した溶液に、この珪藻10を含浸させる。この処理により、パラジウム‐スズ錯体が、上記界面活性剤処理された表面に、均一に吸着する。次いで、吸着した触媒から金属パラジウムを生成させる。具体的には、スズ塩を溶解させ、触媒を金属パラジウムとして還元させる。この処理により、上記表面が、金属パラジウムにて被覆される。この結果、無電解メッキの核(金属パラジウム)が、珪藻10の表面に均一被覆されることになる。以上が、前処理プロセスの説明である。

【0038】
<<2.第1層形成プロセス>>
次に、第1層形成プロセスについて、説明する。上述のように、表面に金属パラジウムが均一被覆された珪藻10に対して、無電解メッキ処理を施す。無電解メッキ用の溶液は、第1層の金属種に応じて選択され得る。たとえば、この溶液として、ニッケルイオンおよびジメチルアミノボランを含むものが用いられる。なお、触媒下でニッケルに対し還元作用を呈するものであれば、ジメチルアミノボラン限られず、たとえば次亜リン酸塩等であってもよい。また、第1層20の金属は、ニッケルに限られないが、後述する第2層を形成する金属に比して、そのイオン化傾向が大きいものが好ましい。加えて、メッキ処理に用いるメッキ浴溶液の量は、珪藻10の総表面積100~200cmに対して、1Lとなるよう調製されると好適である。

【0039】
図5は、珪藻10の表面に第1層20を形成させるプロセスを説明するための、第1円盤131および第2円盤132の縦断面図である。先ず、上記被覆された珪藻10は、この無電解メッキ用の溶液に含浸される。この処理により、溶液が、上述した珪藻10の通路および空間に流入する。このため、被覆されている金属パラジウムと接触する。この状態において、所定の条件とすることで、このパラジウムが触媒として作用する。従って、溶液中のパラジウム近傍におけるニッケル(イオン)が、ジメチルアミンボランにより還元される。この還元に応じて、金属ニッケルがパラジウム表面にて均一に析出する。

【0040】
図6は、第1層20としての金属ニッケルが析出する際の機構を説明するための図である。上述の溶液においては、アノード反応およびカソード反応が同時に進行する。アノード反応として、下記(1)式に示すように、溶液中のジメチルアミノボラン(CHNHBHから電子eが放出される。この反応は、開始時には上記金属パラジウムを触媒として進行する。カソード反応として、下記(2)式および(3)式に示すように、放出された電子eが、溶液中のニッケルイオンNi2+および水素イオンHに受け渡される。これらは、金属および気体としてそれぞれ還元し、この還元に応じて、金属ニッケルの析出が開始される。析出した金属ニッケルは、それ自身が触媒(無電解メッキの核)として作用する。このため、析出した金属ニッケルを触媒として、溶液中の新たなニッケルイオンNi2+が、ジメチルアミノボラン(CHNHBHにより還元されていく。すなわち、一旦金属ニッケルが析出すると、その後は金属ニッケルの自己触媒性に基づき、下記(1)式、(2)式、および(3)式の反応が進行していく。なお、上述の各反応の進行に伴い、カソード反応においては、下記(4)に示すように、副反応としてニッケルボロンNiBも析出する。従って、第1層20を構成する材料は、ニッケルボロンを含む金属ニッケルとなる。このようにして、金属ニッケルは、所定の被覆速度をもって金属パラジウム上に堆積されていく。
(CHNHBH+2HO→BO+(CHNH+7H+6e・・・(1)
Ni2++2e→Ni・・・(2)
2H+2e→H・・・(3)
2Ni2++(CHNHBH+e→NiB+(CHNH+3H・・・(4)

【0041】
図7は、第1層20の被覆厚と、被覆時間との関係を説明するための図である。ここにおいて、被覆厚は、珪藻10の表面から外側に向かい、かつ、同表面からみて垂直方向となる層の長さを示している。被覆時間は、第1層20の形成開始から完了までの時間を示している。本実施形態では、第1円盤131の細孔131aが金属被覆により閉塞しないよう、第1層20の形成において、被覆時間が調整される。この観点より、第1層20の被覆厚は、以下のように設定される。細孔131aの直径をD、パラジウム層の被覆厚をt、第1層20の被覆厚をt1として、D、t、および下記(5)式に基づいて、t1が設定される。被覆時間は、このように設定されたt1に対応する被覆時間T1となるよう調整される。
t1<D/2-t・・・(5)

【0042】
ここにおいて、無電解メッキにおける反応条件により、被覆速度v(=被覆厚t1/被覆時間T1)は変化する。このことを用いて、被覆時間T1は、被覆速度vに応じて調整されると好適である。被覆時間T1は、被覆速度vが大きいほどより短くなるよう調整される。被覆速度vを規定する反応条件としては、たとえば、溶液の温度、溶液のpHなどが挙げられる。

【0043】
図8は、被覆速度vと、溶液の温度および溶液のpHとの関係を示すグラフである。被覆速度vは、温度が高いほど、また、pHが大きいほどより大きくなる。従って、溶液の温度、pH、およびこの関係に基づいて、被覆速度vが決定される。この決定された被覆速度vにて、上記設定された被覆厚t1を除することで、被覆時間T1が設定される。このようにして、被覆時間T1が、被覆速度v(すなわち、溶液の温度、pH、および図78の関係)にて調製されるようになっている。

【0044】
この結果、金属パラジウムが被覆されていた表面全体に亘って、金属ニッケルの第1層20が形成される。換言すれば、金属ニッケルの無電解メッキは、コアミケイソウの生物組織に追従し、第1層20にて金属被覆が達成される。なお、第2円盤132の細孔131bの直径は、第1円盤131の細孔131aの直径Dよりも大きい。このため、上述のように、第1層20の被覆厚がt1に設定されることで、細孔132aが金属被覆により閉塞しない。以上が、第1層形成プロセスの説明である。

【0045】
<<3.第2層形成プロセス>>
次に、第2層形成プロセスについて、説明する。上述のように、第1層20にて金属被覆された珪藻10に対して、更に無電解メッキ処理を施す。無電解メッキ用の溶液は、第2層30の金属種に応じて選択され得る。たとえば、この溶液として、金イオンを含むもの(たとえば、亜硫酸金ナトリウムNaAu(SO水溶液、シアン化金カリウムKAu(CN)水溶液など)を所定濃度に調整したものが用いられる。第2層30の金属は、金に限られないが、上記第1層20を形成するニッケルに比して、そのイオン化傾向が小さいものが好ましい。

【0046】
図9は、珪藻10の表面に第2層30を形成させるプロセスを説明するための、第1円盤131および第2円盤132の縦断面図である。先ず、上記第1層20にて金属被覆された珪藻10は、上記無電解メッキ用の溶液に含浸される。この処理により、溶液が、上述した珪藻10の通路および空間に流入する。このため、被覆されている第1層20(すなわち、金属ニッケル)と接触する。この状態において、所定の条件とすることで、溶液中の第1層20近傍における金(イオン)が、金属ニッケルにより還元される。この還元に応じて、金(金属)が第1層20表面にて均一に析出する。

【0047】
図10は、第2層30としての金が析出する際の機構を説明するための図である。上述の溶液においては、第1層形成プロセスと同様、アノード反応およびカソード反応が同時に進行する。アノード反応として、下記(6)式に示すように、第1層20の金属ニッケルの一部が酸化され、電子eが放出される。これは、ニッケルの標準電極電位(イオン化傾向)が、金のものに比してより卑である(大きい)ことに基づく。カソード反応として、下記(7)式に示すように、金イオンAu3+に放出された電子eが受け渡される。これにより、金イオンAu3+は金属として還元し、この還元に応じて、金(金属)の析出が開始される。析出した金は、それ自身が触媒(無電解メッキの核)として作用する。このため、析出した金を触媒として、溶液中の新たな金イオンAu3+が、金属ニッケルにより還元されていく。すなわち、一旦金が析出すると、その後は金の自己触媒性に基づき、下記(6)式および(7)式の反応が進行していく。他方、第1層20は、反応の進行に応じて溶出していく。このようにして、金は、所定の被覆速度をもって第1層20上に堆積されていく。
Ni→Ni2++2e・・・(6)
Au3++3e→Au・・・(7)

【0048】
図11は、第2層30の被覆厚と、被覆時間との関係を説明するための図である。ここにおいて、被覆時間は、第2層30の形成開始から完了までの時間を示している。第2層30の形成においても、第1円盤131の細孔131aが金属被覆により閉塞しないよう、被覆時間が調製される。第2層30の被覆厚をt2として、t2は、上記D、t、t1および下記(8)式に基づいて設定される。被覆時間は、このように設定されたt2に対応する被覆時間T2となるよう調整される。なお、第2層30が、第1層20の溶出に基づいて析出する場合、第1層20が溶出する量も考慮に入れて、第2層30の被覆厚t2および被覆時間T2を設定すると好適である。
t2<D/2-(t+t1)・・・(8)

【0049】
第2層形成プロセスにおいても、上述の第1層形成プロセスと同様に、被覆時間T2が、被覆速度v(=被覆厚t2/被覆時間T2)に応じて調整されると好適である。すなわち、溶液の温度、pH、および図6に示す関係に基づいて、被覆速度vが決定される。この決定された被覆速度vにて、上記設定された被覆厚t2を除することで、被覆時間T2が設定される。

【0050】
この結果、第1層20が被覆されていた表面全体に亘って、金の第2層30が形成される。換言すれば、金の無電解メッキも、珪藻10(コアミケイソウ)の生物組織に追従し、第2層30にて金属被覆が達成される。なお、第1層形成プロセスと同様、第2層30の被覆厚がt2に設定されることで、第2円盤132の細孔132aは、金属被覆により閉塞しない。以上が、第2層形成プロセスの説明である。

【0051】
<<4.除去プロセス>>
次に、除去プロセスについて、説明する。上述のように、第1層20および第2層30にて金属被覆された珪藻10から、珪藻10に相当する部位のみ除去する。すなわち、除去プロセスにより、金属層のみで構成された構造体が得られることになる。除去用の溶液としては、アルカリ性を呈する水溶液(たとえば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液)を、所定濃度に調製したものが用いられる。

【0052】
図12は、珪藻10を除去するためのプロセスを説明するための、第1円盤131および第2円盤132の縦断面図である。先ず、上記第1層20および第2層30にて金属被覆された珪藻10は、この除去用の溶液に含浸される。次いで、所定温度・所定時間にて加熱されることで、珪藻10由来のケイ素が溶液中に溶出する。そして、溶出が完了することで、金属層内側の珪藻10が占めていた部分が、空間となる。これにより、微小金属構造体40の光学的な透過率が、珪藻10の除去前に比して向上し得る。以上4つのプロセスを経ることで、第1層20および第2層30にて構成される構造体が得られる。

【0053】
<微小金属構造体の構造>
次に、上述のようにして得られた微小金属構造体40の構造を説明する。図13は、本発明の実施形態にかかる微小金属構造体40の第1面41側からの鳥瞰図である。この微小金属構造体40は、上述の4つのプロセスを経て得られた構造体の一部である。この微小金属構造体40は、珪藻10全体に金属被覆した構造体から、第1円盤131および第2円盤132に対応する部分と、それらを繋ぐ壁133および側面14に対応する部分のみとを、抽出したものである。

【0054】
すなわち、微小金属構造体40は、円形の第1面41、および第1面41の径と同じ径をもつ円形の第2面42を有している。第1面41には、円形における中心から円周に向かう方向に沿って、第1細孔41aが規則的に複数配設される。この第1細孔41aは、上記第1円盤131の細孔131aに対応するものである。第2面42には、上記第1細孔41aよりも径が大きい第2細孔42aが複数配設される。この第2細孔42aは、上記第2円盤132の細孔132aに対応するものである。

【0055】
図14は、本発明の実施形態にかかる微小金属構造体40の縦断面図である。上記第1面41および第2面42は、上記壁133の高さに相当する間隔をもって、平行に相互離間している。このため、微小金属構造体40は、中空部43を備えた中空円盤となる。第1層20および第2層30は、テンプレートとしての珪藻10の表面から外側に向かう方向に沿って形成される。すなわち、第1層20が第2層30の下地として機能するようになっている。

【0056】
以上、本発明による微小金属構造体の実施形態によるによれば、上述した特有の形状となるよう金属層(第1層20および第2層30)が構成される。これにより、金属層の剥離や凝集の抑制が達成され得、微小金属構造体40において、金属被覆の質が向上され得る。この結果、精緻な形状が達成され得る。このように製造される微小金属構造体40は、珪藻10の全体または一部に対する金属被覆で構成される。この微小金属構造体40は、細孔配列に由来する電磁波の透過・吸収特性を有することになる。このため、微小金属構造体40は、偏光子や、Cavity Strong Couplingなどに応用され得る。

【0057】
より具体的には、この微小金属構造体40を、液媒体に懸濁・分散させることで、上述の透過・吸収特性が発現するようにしてもよい。微小金属構造体40の細孔径そのものや、細孔内への媒体の浸透率が推定できるため、たとえば、平均的に揃ったプラズモン特性が得られる。

【0058】
ここにおいて、第1層20は、イオン化傾向が大きいニッケルが用いられ、第2層30には、イオン化傾向が小さい金が用いられている。このため、第1層20が、第2層30の下地となり得る。これにより、第1,2層20,30は、相互に剥離することが抑制され得る。第2層30の金単独では、珪藻10に対し被覆の追従が困難であるが、上述した微小金属構造体40の構成により、金属被覆の質を向上させることができる。

【0059】
加えて、コアミケイソウは、比較的短期間にて、一定の質をもって大量培養が可能である。従って、テンプレートとしての珪藻10の培養プロセスも含み、精緻な形状の微小金属構造体を、安定かつ大量に得ることができる。以上が、本発明による微小金属構造体の実施形態の説明である。

【0060】
本発明による微小金属構造体においては、上記に限定されることなく、本発明の範囲内にて種々形態を採用することができる。以下、上記実施形態の変形例について、説明する。

【0061】
上記実施形態においては、第1,第2層20,30の金属として、ニッケルおよび金がそれぞれ用いられていたが、これに代えて、たとえば、銀、銅、コバルト、およびアルミニウムの群のうちから2種類を用いてもよい。この場合、第1層20の金属のイオン化傾向が、第2層30のものよりも大きくなるよう、第1,第2層20,30をそれぞれ選択すると好適である。

【0062】
たとえば、第2層30の金属として、金に代えて銅が用いられる場合、第2層形成プロセスを下記のように構成してもよい。無電解メッキ用の溶液として、銅イオンおよびホルムアルデヒドを含むものが用いられる。第1層20にて金属被覆された珪藻10は、上記無電解メッキ用の溶液に含浸される。この処理により、溶液が、上述した珪藻10の通路および空間に流入する。このため、被覆されている第1層20(すなわち、金属ニッケル)と接触する。この状態において、所定の条件とすることで、この金属ニッケルが触媒として作用する。従って、溶液中の第1層20近傍における銅(イオン)が、ホルムアルデヒドにより還元される。この還元に応じて、金属銅が第1層20表面にて均一に析出する。

【0063】
図15は、第2層30としての金属銅が析出する際の機構を説明するための図である。上述の溶液においては、第1層形成プロセスと同様、アノード反応およびカソード反応が同時に進行する。アノード反応として、下記(9)式に示すように、第1層20の金属ニッケルの一部が溶出し、電子eが放出される。これは、ニッケルの標準電極電位(イオン化傾向)が、銅のものに比してより卑である(大きい)ことに基づく。カソード反応として、下記(10)式に示すように、銅イオンCu2+に放出された電子eが受け渡される。これにより、銅イオンCu2+は金属として還元し、この還元に応じて、金属銅の析出が開始される。析出した金属銅は、それ自身が触媒(無電解メッキの核)として作用する。このため、析出した金属銅を触媒として、溶液中の新たな銅イオンCu2+が、ホルムアルデヒドHCHOにより還元されていく。この還元は、アノード反応であり、下記(11)式に示すように、ホルムアルデヒドHCHOが、上記ジメチルアミノボラン(CHNHBHに対応する機能を発現する。すなわち、一旦金属銅が析出すると、その後は金属銅の自己触媒性に基づき、下記(10)式、(11)式、および上記(3)式の反応が進行していき、他方、下記(9)式の反応が停止する。このようにして、金属銅は、所定の被覆速度をもって第1層20上に堆積されていく。加え、第1層20(金属ニッケル)の多量な溶出が抑制される。このようにして、第2層30の金属として、銅を用いてもよい。
Ni→Ni2++2e・・・(9)
Cu2++2e→Cu・・・(10)
HCHO+HO→HCOO+3H+2e・・・(11)

【0064】
また、上記実施形態においては、テンプレートとしての珪藻10として、コアミケイソウが用いられていたが、これに代えて、たとえば、エオリムナが用いられてもよい。エオリムナも、上記コアミケイソウと同様に、比較的短期間にて、一定の質をもって大量培養が可能である。従って、これによっても、テンプレートとしての珪藻10の培養プロセスも含み、精緻な形状の微小金属構造体を、安定かつ大量に得ることができる。

【0065】
また、上記実施形態においては、4.除去プロセスを経て、テンプレートとしての珪藻10を除去していたが、このプロセスを省略してもよい。すなわち、3.第2層形成プロセスにて第2層30が被覆された後であっても、珪藻10を除去せず、微小金属構造体40中にそのまま含有されるようにしてもよい。このことは、第1円盤131と第2円盤132との間隔に相当する光学的距離が短い場合には、珪藻10がそのまま含有されていても十分に透過率が大きいことに基づく。これによれば、プロセスが1つ省略されるので、全工程としてより簡易に、微小金属構造体40が製造され得る。

【0066】
また、上記実施形態においては、第2層30が、第1層20の表面に直接形成されていた。すなわち、3.第2層形成プロセスにおいて、第1層20のニッケルを利用して、第2層30の金を析出させていた。これに代えて、たとえば、第1層20を形成した後であって、第2層30を形成する前において、第1層20の表面に、更に金属パラジウムを被覆させてもよい。そして、この金属パラジウムの被覆が完了した後に、第2層30の形成を開始してもよい。これによれば、第2層30を形成する際、この金属パラジウムが触媒として機能して、金イオンの還元・金(金属)の析出が達成される。このため、第1層20のニッケルの溶出が、より抑制され得る。この場合、細孔131aが閉塞しないよう、この金属パラジウムの被覆厚を考慮して、第1層20および第2層30の被覆厚t1およびt2がそれぞれ設定されると好適である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明による微小金属構造体の実施例について説明する。上述の実施形態における4つのプロセスを用い、微小金属構造体を製造した。製造した微小金属構造体について、その構造を顕微鏡により確認した。この実施例においては、テンプレートの珪藻としてコアミケイソウを用いた。
【実施例】
【0068】
表1、表2、表3、および表4は、上述の「1.前処理プロセス」、「2.第1層形成プロセス」、「3.第2層形成プロセス」、および「4.除去プロセス」の詳細をそれぞれ示す表である。ここにおいて、「工程」は、コアミケイソウに対する溶液処理を示している。各溶液処理では、所定の温度・保持時間をもって、コアミケイソウを溶液に分散させた。溶液への分散中、スターラにて撹拌を継続した。各工程の完了後には、それぞれ固体物をろ布にてろ過し、ろ過時に純水にて洗浄した。その後、次の工程に進めた。「薬品」は、各工程において、溶液に溶解させた薬品の物質名、または商品名を示している。「濃度」は、上記溶液における薬品の濃度である。なお、溶媒を純水とした。「処理条件」は、溶液処理にかかる温度・保持時間を示している。
【実施例】
【0069】
「1.前処理プロセス」を、表1を参照しながら説明する。先ず、洗浄処理では、珪藻(コアミケイソウ)を含む培養液をろ過し、固体物を回収した。ろ過には500~700メッシュの濾布を用いた。固体物である珪藻略2mgを、50mLビーカ内にて10mLの蒸留水に分散させた。そのビーカ内に、パイプユニッシュ(商標、ジョンソン株式会社製)10mLを洗浄液として添加して、ビーカを振とう撹拌した後に30分静置した。この溶液を再びろ過し、固体物を回収した後、蒸留水に分散させた。この回収と分散を5回繰り返した後、蒸留水とエタノールとを1:1の割合とした溶液中にて、洗浄したコアミケイソウを保存した。
【表1】
JP0006108256B2_000002t.gif

【実施例】
【0070】
図16は、洗浄処理後におけるコアミケイソウの全体を示すSEM像である。図17は、そのコアミケイソウの拡大図を示すSEM像である。SEMによる撮像には、シリコンドリフト検出器EDAX APOLLO(アメテック株式会社)、および超高分解能電解放出形走査電子顕微鏡SU8020(株式会社日立ハイテクノロジーズ)で構成されたEDX‐SEMを用いた。このコアミケイソウが円筒形状を呈していることを確認した。コアミケイソウの第1面に相当する部位には、小さな径をもつ細孔(第1細孔に相当)が存在することを確認した。この細孔は、209nm程度の平均直径を有していた。コアミケイソウの第2面に相当する部位には、大きな径をもつ細孔(第2細孔に相当)が存在することを確認した。この細孔は、略1171nmの平均直径を有していた。これらの平均直径は、各細孔の観測個数をそれぞれ20個とした場合の、各直径の測定値の平均値である。
【実施例】
【0071】
図18は、上記撮像したSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。スペクトルの取得には、上述と同じEDX‐SEMを用い、プローブ電流「high」、1分間のスキャン条件とした。このコアミケイソウが、シリカで構成されていることを確認した。換言すると、メッキ処理前のコアミケイソウには、何れの金属も被覆されていないことを確認した。
【実施例】
【0072】
次に、界面活性剤処理(コアミケイソウの脱脂および表面調整)では、上記保存していた溶液10mLに対し、濃度50mL/LのOPC-370コンディクリーンMA(商標、奥野製薬工業株式会社製)を添加した。このとき、溶液のエタール分を、蒸留水に置換した。溶液への薬品添加は、トータル液量が500mLとなるようにした。なお、以降の各工程における薬品添加でも、トータル液量を500mLとした。ここにおいて、溶液中のコアミケイソウの量を、略0.15mgに調製し、固体物の濃度を、略0.30mg/L(溶液)とした。このコアミケイソウの比表面積の平均値は、3×10cm/gであった。従って、溶液(メッキ浴用の溶液も含む)1Lに対し、コアミケイソウの総表面積は、100cmとなる。以降の各工程では、このコアミケイソウの量がそれぞれ維持される。
【実施例】
【0073】
次に、触媒吸着処理では、上記界面活性剤処理したコアミケイソウに対し、濃度25mL/LのOPC-50インデューサーAおよび濃度25mL/LのOPC-50インデューサーC(商標、奥野製薬工業株式会社製)をpH12として添加した。次に、活性化処理では、上記触媒吸着処理したコアミケイソウに対し、濃度75mL/LのOPC-150クリスターMU(商標、奥野製薬工業株式会社製)を添加した。
【実施例】
【0074】
「2.第1層形成プロセス」を、表2を参照しながら説明する。ニッケルメッキ処理では、上記活性化処理したコアミケイソウに対し、濃度90mL/Lのトップケミアロイ66-MLF、濃度15mL/Lのトップケミアロイ66-1LF、および濃度60mL/Lのトップケミアロイ66-2LF(商標、奥野製薬工業株式会社製)をpH6.5として添加した。
【表2】
JP0006108256B2_000003t.gif

【実施例】
【0075】
図19は、ニッケルメッキ処理におけるニッケルの被覆速度(nm/min)と、温度(℃)との関係を規定するグラフである。このグラフは、予め各温度に対応する被覆速度を取得し、データをプロットすることで作成されたものである。すなわち、このグラフは、上述の図7に記載のものに対応するものである。このプロットの際の条件は、コアミケイソウの総表面積が100cm/L(溶液)、且つ、pHが6.5である。ニッケルメッキ処理における温度(50℃)と、このグラフとに基づけば、被覆速度は、60nm/minである。他方、被覆厚の予測値を、図16から読み取れる各細孔直径の平均値と、上述の式(5)とに基づいて、60nmに設定した。この設定した被覆厚と、被覆速度とに基づいて、被覆時間を1分に調整した。
【実施例】
【0076】
図20は、ニッケルメッキ処理後における微小金属構造体の全体を示すSEM像である。図21は、その微小金属構造体の拡大図を示すSEM像である。SEMによる撮像には、上記洗浄処理後に使用したものと同一のEDX‐SEMを用いた。この微小金属構造体において、金属被覆が、上述のコアミケイソウの形状に良好に追従していることを確認した。小さな径をもつ細孔(第1細孔に相当)は、略53nmの平均直径を有していた。大きな径をもつ細孔(第2細孔に相当)は、略1412nmの平均直径を有していた。この大きな径をもつ細孔については、洗浄処理後のSEM像より測定した平均直径よりも、大きい値を示した。これは、コアミケイソウの細孔直径のばらつきによるものであり、ニッケルの金属被覆時に、細孔の連結などで孔径が成長したものではない。このばらつきは、偏差として±150nm程度であった。
【実施例】
【0077】
図22は、上記撮像したSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。スペクトルの取得には、上述と同じEDX‐SEM、条件を用いた。この微小金属構造体が、シリカおよびニッケルで構成されていることを確認した。すなわち、ニッケルメッキ処理により、コアミケイソウに、ニッケルが被覆されていることを確認した。
【実施例】
【0078】
「3.第2層形成プロセス」を、表3を参照しながら説明する。金メッキ処理では、上記活性化処理したコアミケイソウに対し、濃度2.0g/L(この表においてのみ、金属(Au)の質量に対する溶液の濃度を示す)のNCゴールド HS II(商標、小島化学薬品株式会社製)を添加した。
【表3】
JP0006108256B2_000004t.gif

【実施例】
【0079】
図23は、金メッキ処理における金の被覆速度(nm/min)と、温度(℃)との関係を規定するグラフである。このグラフは、予め各温度に対応する被覆速度を取得し、データをプロットすることで作成されたものである。すなわち、このグラフは、上述の図8に記載のものに対応するものである。このプロットの際の条件は、コアミケイソウの総表面積が100cm/L(溶液)、且つ、pHが8.5である。金メッキ処理における温度(50℃)と、このグラフとに基づけば、被覆速度は、5nm/minである。他方、被覆厚の予測値を、図16から読み取れる各細孔直径の平均値と、ニッケルメッキの被覆厚と、上述の式(8)と、ニッケル層の溶出量とに基づいて、100nmに設定した。この設定した被覆厚と、被覆速度とに基づいて、被覆時間を20分に調整した。なお、本設定の被覆厚は、ニッケルメッキ処理後の第2細孔の径よりも大きい。ここにおいて、金メッキ処理では、金属被覆されたニッケル層が溶出する。この溶出量に応じてニッケルの被覆厚が低減し、細孔が拡がる。このため、細孔を閉塞させないための余裕が生じ、本設定の被覆厚であっても、細孔の閉塞が抑制され得る。
【実施例】
【0080】
図24は、金メッキ処理後における微小金属構造体の全体を示すSEM像である。図25は、その微小金属構造体の拡大図を示すSEM像である。SEMによる撮像には、上記洗浄処理後およびニッケルメッキ処理後に使用したものと、同一のEDX‐SEMを用いた。この微小金属構造体において、金属被覆が、上述のコアミケイソウの形状に良好に追従していることを確認した。小さな径をもつ細孔(第1細孔に相当)は、略126nmの平均直径を有していた。大きな径をもつ細孔(第2細孔に相当)は、略1200nmの平均直径を有していた。この小さな径をもつ細孔については、ニッケルメッキ処理後のSEM像より測定した平均直径よりも、大きい値を示した。これは、ニッケルの溶出浸食が生じ、ニッケルの被覆厚が低減することによるものであり、金の金属被覆時に、細孔の連結などで孔径が成長したものではない。
【実施例】
【0081】
図26は、上記撮像したSEM像に対応するEDXスペクトルを示すグラフである。スペクトルの取得には、上述と同じEDX‐SEM、条件を用いた。この微小金属構造体が、シリカ、ニッケル、および金で構成されていることを確認した。すなわち、金メッキ処理により、ニッケル層上に金が被覆されていることを確認した。
【実施例】
【0082】
「4.除去プロセス」を、表4を参照しながら説明する。除去処理では、上記金メッキ処理したコアミケイソウに対し、濃度0.10mol/Lの水酸化ナトリウムを添加した。これらのプロセスを完了させた後、洗浄・乾燥させて微小金属構造体を得た。以上のプロセスに係る微小金属構造体においては、金属層の剥離や凝集が抑制されており、質の高い金属被覆が確認された。微小金属構造体にて、コアミケイソウの形状に由来した、精緻な形状が達成された。
【表4】
JP0006108256B2_000005t.gif

【実施例】
【0083】
図27は、上記プロセスにて得た微小金属構造体をホールアレイとして用いた場合における光学特性を示す図である。透過スペクトル波形のうち、「hole」と付記したものが、上記微小金属構造体を用いた場合のスペクトルである。透過スペクトルとして、450nmおよび670nmにて局所的に透過率が大きくなった。特に、670nmにおいては、1.5%の透過率を確認した。このように、上記プロセスにて得た微小金属構造体によれば、その規則正しい細孔配置に応じて、選択的な波長の透過が達成され得る。
【実施例】
【0084】
なお、本出願は、2014年4月30日に日本国に本出願人により出願された、特願2014-93361号に基づく。その全内容は、参照により本出願に組み込まれる。
【実施例】
【0085】
本発明の特定の実施形態についての上記説明は、例示を目的として提示したものである。それらは、網羅的であったり、記載した形態そのままに本発明を制限したりすることを、意図したものではない。数多くの変形や変更が、上記の記載内容に照らして可能であることは、当業者に自明である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の微小金属構造体は、生物組織の表面に金属層を被覆することに基づいて得られるものであり、これにより、金属被覆の質が向上され、精緻な形状が達成され得る。この微小金属構造体は、市場規模の大きい電波吸収体、空洞共振器などに応用され得るので、産業上有用である。

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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