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明細書 :リンパ節イメージング剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 リンパ節イメージング剤
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
C08G  83/00        (2006.01)
FI A61K 49/00 A
A61K 49/02 A
C08G 83/00
国際予備審査の請求
全頁数 20
出願番号 特願2016-517855 (P2016-517855)
国際出願番号 PCT/JP2015/061943
国際公開番号 WO2015/170573
国際出願日 平成27年4月20日(2015.4.20)
国際公開日 平成27年11月12日(2015.11.12)
優先権出願番号 2014096756
優先日 平成26年5月8日(2014.5.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】児島 千恵
【氏名】仁木 悠一郎
【氏名】間賀田 泰寛
【氏名】小川 美香子
出願人 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C085
4J031
Fターム 4C085HH03
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB72
4C085KB76
4C085LL03
4J031BA29
4J031BB01
4J031BB02
4J031BB03
4J031BC19
4J031BD03
4J031CD09
4J031CD14
4J031CD25
4J031CD28
要約 本発明は少量で且つ簡便な投与方法でリンパ節を撮像することができるリンパ節イメージング剤を提供することを目的とする。
リンパ節イメージング剤として用いられる、少なくとも1種の標識物質を有し、分子径が5~20nmである、アニオン性分岐ポリマー。
特許請求の範囲 【請求項1】
リンパ節イメージング剤として用いられる、少なくとも一種の標識物質を有し、分子径が5~20nmである、アニオン性分岐ポリマー。
【請求項2】
ゼータ電位が-10mV以下である、請求項1に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項3】
少なくとも一種のアニオン性基を有する、請求項1又は2に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項4】
前記アニオン性基が、カルボキシル基、スルホン基、及びフェノール基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項5】
前記アニオン性基が、カルボキシル基である、請求項3に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項6】
前記標識物質が、放射性同位体、低分子有機色素、蛍光色素、及びガドリニウム配位キレート剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項7】
皮内投与用リンパ節イメージング剤として用いられる、請求項1~6の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項8】
アニオン性分岐ポリマーが、グラフトポリマー、スターポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドロン、デンドリマー、デンドロンポリマー、又はデンドリグラフトポリマーである、請求項1~7の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマーを含む、リンパ節イメージング剤。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマーを投与する工程を含む、リンパ節の撮像方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はリンパ節イメージング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
センチネルリンパ節(1次リンパ節)は、癌細胞が転移する際に最初に通過するリンパ節であり、リンパ節を検出することは、転移癌の検出、診断等を行う際に非常に重要とされる。
【0003】
非特許文献1には、放射標識されたリポソームを用いてリンパ節を検出する方法が開示されている。斯かるリポソームは100nm程度の分子サイズを有するアニオン性リポソームであり、これが皮下投与されることによってリンパ節に存在するマクロファージによって貪食され、結果としてリンパ節に集積することが知られている。
【0004】
非特許文献2には、ベンジルサルフェート基を表面に有する、分子径が2.8nm程度のポリL-リジンデンドリマーが皮下投与及び尾静脈投与されることによってリンパ節に集積することが開示されている。
【0005】
非特許文献3には20~40nmの量子ドットを尾静脈投与することによってリンパ節を検出する方法が開示されている。
【0006】
非特許文献4には放射標識されたポリアミドアミンアミンデンドリマーを用いたリンパ節のイメージング方法が開示されており、G4~G8のデンドリマーがイメージングに好適であることが開示されている。なお、投与方法として直接乳腺に斯かるデンドリマーを投与する方法が開示されている。
【0007】
特許文献1には、ポリアミドイミンおよびポリアミドアミンを用いて作製したデンドリマーとアルギン酸又はガンマポリグルタミン酸との複合体であって、分子径が24nm程度、ゼータ電位が-49mV程度の複合体を、マウスのFoot pad投与してセンチネルリンパ節をイメージングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開2011/105520号パンフレット
【0009】

【非特許文献1】Biochim Biophys Acta.1984 Sep 7;801(1):76-86.
【非特許文献2】J Control Release.2009 Dec 3;140(2):108-16
【非特許文献3】Bioconjug Chem.2007 Mar-Apr;18(2):389-96.
【非特許文献4】J Control Release.2006 Apr 10;111(3):343-51.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、これまでにセンチネルリンパ節を造影するための手段として種々の方法が開発されている。センチネルリンパ節を造影するために、造影剤となる物質をリンパ管に直接投与することは、リンパ節が微小で複雑な構造である点から現実的ではなく、間質を介してリンパ節へ造影剤を送達することが好ましいとされる。
【0011】
しかしながら、これまでに知られるリンパ節の造影するために採用されている投与方法は、何れも乳腺への投与、皮下投与等といった投与方法が難しいか又は多量の投与を必要とする方法といった面で欠点を有している。
【0012】
このような現状に鑑み、本発明は少量で且つ簡便な投与方法でリンパ節を撮像することができるリンパ節イメージング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らはこれらの問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の分子径を有するアニオン性分岐ポリマーを用いることによって、少ない投与量でリンパ節の撮像を行うことができることを見出した。
【0014】
本発明は斯かる知見に基づいて完成されたものであり、下記に示す広い態様の発明を包含する。
【0015】
項1 リンパ節イメージング剤として用いられる、少なくとも1種の標識物質を有し、分子径が5~20nmである、アニオン性分岐ポリマー。
【0016】
項2 ゼータ電位が-10mV以下である、上記項1に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0017】
項3 少なくとも一種のアニオン性基を有する、上記項1又は項2に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0018】
項4 前記アニオン性基が、カルボキシル基、スルホン基、及びフェノール基からなる群より選択される少なくとも1種である、上記項3に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0019】
項5 前記アニオン性基が、カルボキシル基である、上記項3に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0020】
項6 前記標識物質が、放射性同位体、低分子有機色素、蛍光色素、及びガドリニウム配位キレート剤からなる群より選択される少なくとも1種である、上記項1~項5の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0021】
項7 皮内投与用リンパ節イメージング剤として用いられる、上記項1~項6の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0022】
項8 アニオン性分岐ポリマーが、グラフトポリマー、スターポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドロン、デンドリマー、デンドロンポリマー、又はデンドリグラフトポリマーである、項1~項7の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマー。
【0023】
項9 上記項1~項8の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマーを含む、リンパ節イメージング剤。
【0024】
項10 上記項1~項9の何れか1項に記載のアニオン性分岐ポリマーを投与する工程を含む、リンパ節の撮像方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーは、リンパ節のイメージング剤として好適に用いることができる。
【0026】
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーをリンパ節のイメージング剤として用いることにより、少量で且つ簡便な投与方法、例えば皮内投与によってリンパ節をイメージングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施例にて作製した各種デンドリマーのNMRスペクトラムと部分構造。
【図2】本実施例にて作製した各種デンドリマーのNMRスペクトラム。
【図3】本実施例にて作製した各種デンドリマーのNMRスペクトラム。
【図4】本実施例にて作製した各種デンドリマーのNMRスペクトラム。
【図5】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(センチネルリンパ節)。
【図6】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(肝臓)。
【図7】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(脾臓)。
【図8】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(腎臓)。
【図9】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(投与部位)。
【図10】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(血液)。
【図11】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(肺臓)。
【図12】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(心臓)。
【図13】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後の分布を示す図(筋肉)。
【図14】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後に撮影したSPECT/CT像。
【図15】本実施例にて作製した各種デンドリマーを投与した後に撮影したSPECT/CT像。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<アニオン性分岐ポリマー>
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーはリンパ節イメージング剤として用いられる。また、本発明に係るアニオン性分岐ポリマーは、少なくとも1種の標識物質を有し、分子径が5~20nmである。

【0029】
本発明に係る分岐ポリマーは、5nm以上であることから、投与部位から拡散することなく、リンパ節に集積しやすいという効果を発揮する。また、20nm以下であることからマクロファージ等に認識されにくい効果を発揮する。

【0030】
本発明に係る分岐ポリマーは5~15nm程度であることが好ましい。15nm以下であることからマクロファージ等に更に認識されにくいといった効果を発揮する。

【0031】
なお、平均分子径は下記実施例に示すように、動的光散乱法(DLS)法に基づいて測定される分子径であり、DLSの原理に基づいて得た測定値を、多分散系であるMarquardt法で解析して求めた体積基準の粒径分布における一番小さい分布の平均粒径である。動的光散乱法に用いる測定機器は、ELSZ-DN2(大塚電子)又はその同等品である。

【0032】
分岐ポリマーとは、分岐構造を有するポリマーであり、大きく分けると、グラフトポリマー、スターポリマー等のように主鎖又は中心点に存在する分岐点から伸びた分子鎖が一本鎖である分岐ポリマーと、ハイパーブランチポリマー、デンドロン、樹状ポリマー(デンドリマー)、デンドロンポリマー(Dendronized polymer)等のように、主鎖又は中心点に存在する分岐点から伸びた分子鎖が更に分岐点を有し、分岐の起点から遠くなるにつれて末端数が増加していく分岐ポリマーとがある。

【0033】
また、グラフトポリマーの枝ポリマーに更に枝ポリマーがグラフトポリマー状に連結したデンドリグラフトポリマーも本発明に係る分岐ポリマーに包含される。

【0034】
デンドリマーは、その中心から伸びる分子鎖が規則的な分岐を有し、階層(世代ともいう)毎に段階的に合成することができ、形及び大きさが完全に揃っており、規則性及び対称性に富む分岐ポリマーである。一方、ハイパーブランチポリマー及びデンドロンポリマーは、デンドリマーの様な規則性、対称性等を有さない分岐ポリマーである。

【0035】
また、デンドロンポリマーとは、主鎖のポリマーの側鎖にデンドリマーの部分構造であるデンドロンが結合する分岐ポリマーである。

【0036】
本発明に係る分岐ポリマーは、上述のように複数の分岐鎖を有しているため、アニオン性基を複数有することができる点で共通している。そのため、当該分岐ポリマーは何れも本願発明の効果を発揮することができる。

【0037】
本発明に係る分岐ポリマーは上記の分岐ポリマーであれば特に限定はされないず、例えばデンドリマーであることが好ましい。
本発明に係る分岐ポリマーはアニオン性を有しており、アニオン性であることに起因して、斯かるポリマーを生体に投与した際に、これがリンパ節に集積される効果を発揮する。

【0038】
本発明に係る分岐ポリマーがアニオン性であることは、塩化ナトリウムを溶媒として測定した分岐ポリマーのゼータ電位を基に決定することができる。

【0039】
本発明に係る分岐ポリマーの具体的なゼータ電位は特に限定はされない。ゼータ電位は、通常-10mV程度以下であり、好ましくは-20mV程度以下である。

【0040】
このような本発明に係る分岐ポリマーのアニオン性は、分岐ポリマーが有するアニオン性基に依って付与されることができ、分岐ポリマーの表面基にアニオン性基を有することが好ましい。さらに好ましくは、分岐ポリマーの末端にアニオン性基を有することが好ましい。このようなアニオン性基は、分岐ポリマーと共有結合することが好ましい。

【0041】
本発明に係る分岐ポリマーがその表面基にアニオン性を有している際のアニオン性基の割合は、分岐ポリマーの表面基全体に対して、通常は100%以下で、且つ50%程度以上、好ましくは60%程度以上、より好ましくは70%程度以上、より好ましくは80%程度以上、より好ましくは85%程度以上、より好ましくは90%程度以上、より好ましくは95%程度以上であり、98%程度以上が最も好ましい。

【0042】
具体的なアニオン性基の種類は特に限定はされず、例えばカルボキシル基、スルホン基、及びフェノール基等が挙げられる。これらの本発明に係る分岐ポリマーに含まれるアニオン性基は1種のみであっても、2種以上であってもよい。上述のアニオン性基の中でもカルボキシル基が特に好ましい。

【0043】
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーは、少なくとも1種の標識物質を有する。これ等の標識物質は、特に限定はされないず、例えば11C、13N、15O、18F化合物等の放射性同位体(PET用)、111In化合物等の放射性同位体(SPECT用)、インジゴカルミン、またはパテントブルーV等の低分子有機色素;インドシアニングリーン、フルオレセイン、ローダミン、Alexa Fluor色素等の蛍光色素;及びガドリニウムキレート剤等の核磁気共鳴イメージング用の造影剤等が挙げられる。

【0044】
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーは、公知の方法で作製することができる。分岐ポリマーにアニオン性を付与するには、分岐ポリマー中に公知の方法を用いてアニオン性基を結合されることが挙げられる。斯かる結合様式は特に限定はされず、例えば共有結合させることが好ましい。

【0045】
分岐ポリマーに結合させる標識物質も公知の方法を用いて付与させることができ、例えばキレート剤などといった他の化合物を介して分岐ポリマーに標識物質を結合させることもできる。斯かる結合様式も特に限定されることはなく、例えば分岐ポリマーの物性等と標識物質の物性等とに鑑みて適宜決定することができる。

【0046】
本発明に係るアニオン性分岐ポリマーは、リンパ節イメージング剤として用いられる。具体的な使用方法は、後述する<本発明に係るリンパ節イメージング剤>の記載と同様にすることができる。

【0047】
<本発明に係るリンパ節イメージング剤>
本発明に係るリンパ節イメージング剤は、上述の本発明に係るアニオン性分岐ポリマーを含む。アニオン性分岐ポリマーの含有量は特に限定されない。具体的な含有量として、例えばリンパ節イメージング剤100重量部に対して、通常0.001~100重量部程度である。すなわち、本発明に係るアニオン性分岐ポリマーそのものを、本発明に係るリンパ節イメージング剤として用いることができる。

【0048】
本発明に係るリンパ節イメージング剤の剤形は特に限定はされない。このような剤形として、例えば後述のような投与量、投与方法等に鑑みて、従来より公知の薬学上許容され得る各種の担体と共に、所望の剤形とすることができる。

【0049】
具体的な剤形としては、液剤、埋め込み注射剤、持続性注射剤等の注射剤;腹膜透析用剤、血液透析用剤等の透析用剤等が挙げられる。

【0050】
これらの剤形は、第16改正日本薬局方解説書等の公知の文献に基づいて製造することができる。

【0051】
本発明に係るリンパ節イメージング剤には、上述のアニオン性分岐ポリマー以外にpH調整剤;保存剤;等張化剤;防腐剤;注射用水、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油等の溶剤;不活性ガス(窒素、二酸化炭素等)、キレート剤(EDTA、チオグリコール酸等)、還元物質(亜硫酸水素ナトリウム、L-アスコルビン酸等)等の安定剤;パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム等の保存剤;結合性溶解補助剤(ヨウ化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ニコチン酸ナトリウム等)、溶剤性溶解補助剤(アルコール、プロピレングリコール、液状マクロゴール等)等の溶解補助剤;塩酸プロカイン、ベンジルアルコール等の局所麻酔剤;ブドウ糖、ソルビトール、アミノ酸等の無痛化剤;クエン酸、酢酸、リン酸ナトリウム塩、これらの注射用のもの等の緩衝剤;カルメロースナトリウム、PVP、アルミニウムモノステアレート、これらの注射用のもの等の懸濁化剤等を含有させることができる。

【0052】
本発明に係るリンパ節イメージング剤の投与量は、特に限定はされることはなく、剤形、投与方法、リンパ節イメージングの部位、目的、投与される個体の性別、年齢、体重、イメージング手法、標識物質の種類等に鑑みて、適宜設定することができる。また、このような投与量は容量に換算して通常50~300μL程度である。

【0053】
本発明のリンパ節イメージング剤の投与方法は、特に限定はされず、例えば、静脈投与、皮下投与、皮内投与等が挙げられる。中でも、皮内投与が好ましい。

【0054】
本発明に係るリンパ節イメージング剤を用いて撮像を行うことができる装置は、上述のアニオン性分岐ポリマーに含まれる標識物質の種類に応じて適宜選択することができ、特に限定はされない。このような装置として、通常は核医学検査装置、MRI装置、蛍光検出装置等が挙げられる。具体的な撮像方法は、上記の装置のマニュアルに沿って、適宜条件を変更することによって行うことができる。

【0055】
<本発明に係るリンパ節の撮撮像影方法>
本発明に係るリンパ節の撮像方法は、上述のアニオン性分岐ポリマーを投与する工程を含む。

【0056】
アニオン性分岐ポリマー、投与量、投与方法、撮像に用いる機器等については、上述の<本発明に係るアニオン性分岐ポリマー>又は<本発明に係るリンパ節イメージング剤>に記載した通りとすることができる。

【0057】
<実施例>
以下に本発明をより詳細に説明するための実施例を示す。ただし、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。

【0058】
製造例1:キレート化PAMAMデンドリマーの作製
各種サイズを有するポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーをキレート剤であるp-SCN-Bn-DTPA(2-(4-isothiocyanatobenzyl)-diethylenetriaminepentaacetic acid)で修飾した。

【0059】
使用したPAMAMデンドリマーはALDRICHから入手した、PAMAM dendrimer,ethylenediamine core,generation 2.0 solution(412406;以後、本実施例にてこれをG2-NHと呼ぶ。)、PAMAM dendrimer,ethylenediamine core,generation 4.0 solution(412449;以後、本実施例にてこれをG4-NHと呼ぶ。)、PAMAM dendrimer,ethylenediamine core,generation 6.0 solution(536717;以後、本実施例にてこれをG6-NHと呼ぶ。)、及びPAMAM dendrimer,ethylenediamine core,generation 8.0 solution(536741;以後、本実施例にてこれをG8-NHと呼ぶ。)であり、p-SCN-Bn-DTPAはMACROCYCLICSから入手した(B-305)。

【0060】
溶媒を減圧留去し、真空乾燥および凍結乾燥した上記各種PAMAMデンドリマーにp-SCN-Bn-DTPAを加え、125mMのNaHCOバッファー中で37℃、24時間撹拌した。

【0061】
ここでp-SCN-BnーDTPAの添加量は、G2-NHは10当量、G4-NH及びG6-NHは7当量、そしてG8-NHは17当量である。

【0062】
その後得られた溶液をG2-NHはMwCO1000の透析膜、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHはMwCO3000の限外ろ過膜を用いて精製し、その後凍結乾燥した。

【0063】
p-SCN-Bn-DTPAの結合量はUVスペクトルを測定し、p-SCN-Bn-DTPAの検量線から見積もった。

【0064】
製造例2:アセチル化・カルボキシル化PAMAMデンドリマーの作製
上述の各種サイズを有するキレート化PAMAMデンドリマーをさらにアセチル化又はカルボキシル化に供した。

【0065】
(アセチル化)
上記p-SCN-Bn-DTPAで修飾されたG2-NH、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHを4mlのNaHCOバッファー(125mM)に溶解させた。pH9~10を維持しながら、無水酢酸及び4NのNaOHaqを少量ずつ(無水酢酸を10μl;4NのNaOHを50μlずつ)、交互に加えた(×20回;室温、1時間)。

【0066】
その後、上記混合物を一晩撹拌し、精製(G2-NHはMwCO1000の透析膜、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHはMwCO3000の限外ろ過膜を用いて精製を行い、その後凍結乾燥した。

【0067】
反応率の同定は、フルオレスカミン呈色反応を用いて行った。併せてH NMR測定を用いて反応の確認を行った(図1~4)。1.95ppmにてアセチル化のピークが存在することが明らかとなった。

【0068】
G2-NH、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHをアセチル化した各種サンプルを、以後の実施例においてそれぞれG2-Ac、G4-Ac、G6-Ac、及びG8-Acと呼ぶ。

【0069】
(カルボキシル化)
上記p-SCN-Bn-DTPAで修飾されたG2-NH、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHを4mlのNaHCOバッファー(125mM)に溶解させた。pH9~10を維持しながら、無水コハク酸及び1NのNaOHaqを少量ずつ交互に加えた(室温、1時間)。

【0070】
その後、上記混合物を一晩撹拌し、精製(G2-NHはMwCO1000の透析膜、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHはMwCO3000の限外ろ過膜を用いて精製を行い、その後凍結乾燥した。

【0071】
反応率の同定は、フルオレスカミン呈色反応を用いて行った。併せてH NMR測定を用いて反応の確認を行った(図1~4)。2.4ppmにてカルボキシル基のピークが存在することが明らかとなった。

【0072】
G2-NH、G4-NH、G6-NH、及びG8-NHをアセチル化した各種サンプルを、以後の実施例においてそれぞれG2-COOH、G4-COOH、G6-COOH、及びG8-COOHと呼ぶ。

【0073】
また、上記アセチル化及びカルボキシル化の効率を、フルオレスカミンによって、得られた各種PAMAMデンドリマーに残る未反応のアミノ基の量を差し引くことで算出した。結果を表1に示す。

【0074】
【表1】
JP2015170573A1_000003t.gif

【0075】
作製した各種PAMAMデンドリマーの物性を測定した。各種デンドリマーをそれぞれPBSに10mg/mLの濃度となるように溶解し、粒径は動的光散乱(DLS)法に基づいたELSZ-DN2(大塚電子)を用いて測定し、ゼータ電位はELSZ-DN2(大塚電子)を用いて測定した。測定値を、多分散系であるMarquardt法で解析して求めた体積基準の粒径分布における一番小さい分布を粒径とした。結果を表2に示す。

【0076】
ゼータ電位は、PBSを溶媒として測定したことによって、全体的にマイナス側に寄った結果が得られた。キレート化していないG4-NH PAMAMデンドリマーを10mMのNaClで測定したゼータ電位は+2.82mVであるのに対して、PBSで測定したゼータ電位は-15.63mVであった。

【0077】
【表2】
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【0078】
※「修飾数」とは各種デンドリマー1分子当たりのp-SCN-Bn-DTPAによる修飾数を示す。

【0079】
製造例3:放射標識化PAMAMデンドリマーの作製
上記12種類の各種PAMAMデンドリマー(20nmol)を、1.2mLの酢酸アンモニウム(0.15M)に溶解させ、111InCl(22.2MBq~37MBq)を加え、室温で1時間反応させた。

【0080】
その後、反応物をPD-10カラム(溶媒:PBS)を用いて精製した。続いてMwCO3000の限外濾過膜を用いて精製し、溶媒をPBSから生理食塩水に置換した。

【0081】
実施例1:生体内分布実験
製造例3にて作製した12種類の放射標識化PAMAMデンドリマーを、各々0.37MBq(0.15~0.37MBq/DTPAnmol)/100μLに調製し、その全量をSlc:SDラット(オス、5週齢、120-140g)の足背に皮内投与し、投与部位を30秒間マッサージした(n=4)。

【0082】
投与から1、6、24時間後にラットをそれぞれ安楽死させ、投与部位及び各種臓器(膝窩リンパ節、血液、脾臓、腎臓、肝臓、心臓、肺臓、及び筋肉)を取り出し、それらの重量とラジオアクティビティーを測定した。結果を図5~13に示す。

【0083】
リンパ節への取り込みはG4以上のアニオン性末端(G4-COOH、G6-COOH、及びG8-COOH)が著しく高いことが分かった。

【0084】
細網内皮系である肝臓および脾臓でもアニオン性末端(-COOH)のものの取り込みが高いことがわかった。中性(-Ac)のものは後述するように、血中の取り込みが高いため肝臓および脾臓でも取り込みも高くなっていると考えられる。

【0085】
G2およびG4の一部は、低分子であるために腎臓から排出されていることが分かった。

【0086】
投与部位への滞留性はカチオン性(-NH)、アニオン性(-COOH)、及び中性(-Ac)の順で高く、G8、G6、G4、及びG2の順で高くなることが明らかとなった。

【0087】
血液中では、中性のG6及びG8(G6-Ac及びG8-Ac)の取り込みが高いことが分かった。肺、心臓、及び筋肉でも血液と同様の取り込みを示すことが分かった。

【0088】
カチオン性(-NH)のものは大部分が投与部位にとどまり、アニオン性(-COOH)のものはリンパ節、肝臓、および脾臓に取り込まれた。中性のG8-Ac及びG6-Acは各種臓器と相互作用しづらいため、取り込みが高くなったと考えられる。

【0089】
実施例2:SPECTイメージング
製造例3にて作製したサンプルのうち、G8-COOH、G6-COOH、G6-NH、G6-Ac、G4-COOH、及びG2-COOHの6種をそれぞれ7.4MBq/100μLに調製し、その全量をSlc:SDラット(オス、5週齢、120-140g)の足背に皮内投与して、投与部位を30秒間マッサージした(n=1)。

【0090】
投与から24時間後にFX Pre-clinical platform (Gamma Medica Ideas Inc)を用いてSPECTイメージングを行った(60sec/projection;64projection)。撮影像を図14及び15に示す。図中の丸で囲まれた部位が投与部位であり、四角で囲まれた部位が1次リンパ節、そして三角で囲まれた部位が2次リンパ節を示す。

【0091】
G8-COOH及びG6-COOHでは、センチネルリンパ節(1次リンパ節)に止まらず、2次リンパ節までイメージングできていることがわかった。G4-COOHでは、センチネルリンパ節はイメージングできているが、G2-COOHでは分子量が小さすぎるため拡散していることがわかった。G6-NHでは投与部位にかなり滞留することが、G6-Acでは投与部位から拡散しているのが分かった。

【0092】
以上より、センチネルリンパ節のイメージングにはG6-COOH又はG8-COOHが適していると考えられる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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