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明細書 :超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法
国際特許分類 B21J   5/00        (2006.01)
B21D  28/16        (2006.01)
B21D  28/02        (2006.01)
B21D  24/02        (2006.01)
B21J  13/02        (2006.01)
B30B  15/14        (2006.01)
FI B21J 5/00 B
B21D 28/16
B21D 28/02 Z
B21D 24/02 D
B21D 24/02 C
B21J 13/02 L
B21J 13/02 Z
B21J 5/00 Z
B30B 15/14 B
B30B 15/14 F
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 26
出願番号 特願2016-529342 (P2016-529342)
国際出願番号 PCT/JP2015/067221
国際公開番号 WO2015/194517
国際出願日 平成27年6月15日(2015.6.15)
国際公開日 平成27年12月23日(2015.12.23)
優先権出願番号 2014123673
優先日 平成26年6月16日(2014.6.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】川端 信行
【氏名】中村 日出好
【氏名】宮島 恭平
【氏名】篠原 正幸
【氏名】野原 清彦
【氏名】早野 仁司
【氏名】山本 明
【氏名】佐伯 学行
【氏名】加藤 茂樹
【氏名】山中 将
出願人 【識別番号】399026328
【氏名又は名称】しのはらプレスサービス株式会社
【識別番号】512027599
【氏名又は名称】野原 清彦
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査請求
テーマコード 4E048
4E087
4E089
Fターム 4E048BA01
4E048BA06
4E048GA04
4E048GA06
4E087AA08
4E087AA10
4E087BA03
4E087BA19
4E087CB04
4E087CB06
4E087CB10
4E087CB13
4E087DB05
4E087DB14
4E087DB22
4E087ED03
4E087ED09
4E087GA04
4E087GA07
4E087HA00
4E089EA01
4E089EB01
4E089EB02
4E089ED02
要約 【課題】量産化を視野に入れ、超伝導高周波加速空洞の厚肉純ニオブ製エンドグループ部品を、従来の切削加工やウォータジェット加工からプレス加工へ工法転換した製造方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法であって、
(1)厚肉純ニオブ板材の板厚の0.5%以下の微小クリアランスとし、束縛治具で前記厚肉純ニオブ材を束縛しつつ素形品を成形する、精密打抜き法とは異なるせん断打抜き加工と、
(2)前記素形品を室温から200℃における低温域温度制御によって青熱脆化を回避し加工品を成形する、熱間・温間・冷間鍛造のいずれとも異なる鍛造加工とからなり、
前記厚肉純ニオブ製のエンドグループ部品の切削加工やウォータジェット加工をプレス加工へ工法転換したことを特徴とする純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法とした。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法であって、
(1)厚肉純ニオブ板材の板厚の0.5%以下の微小クリアランスとし、束縛治具で前記厚肉純ニオブ材を束縛しつつ素形品を成形する、精密打抜き法とは異なるせん断打抜き加工と、
(2)前記素形品を室温から200℃における低温域温度制御によって青熱脆化を回避し加工品を成形する、熱間・温間・冷間鍛造のいずれとも異なる鍛造加工とからなり、
前記厚肉純ニオブ製のエンドグループ部品の切削加工やウォータジェット加工をプレス加工へ工法転換したことを特徴とする純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項2】
前記せん断打抜き加工は、
100mm/sec以上の高速にて前記厚肉純ニオブ板材を連続打抜きするとともに、前記せん断打抜き金型が抜熱冷却機能を有することを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項3】
前記せん断打抜き加工には、
マルチアクションダイ及びサーボダイクッションを使用して多重作動しつつ前記素形品の板押え及び面圧制御をするとともに、プレス機のサーボ化を計り打抜き速度及びモーション制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項4】
前記鍛造加工の低温域温度制御は、
前記素形品の表面酸化被膜の生成を極小化する温度制御であることを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項5】
前記鍛造加工の低温域温度制御は、
前記素形品の塑性流動性を容易化する温度制御であることを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項6】
前記厚肉純ニオブ板材は、
粒径が数10μmの細粒結晶組織からなることを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項7】
前記鍛造加工で使用する金型は、
焼付き防止のため、表面改質された金型で、かつ前記金型に温度非依存型潤滑性能を有する固形被膜潤滑剤を使用することを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項8】
前記鍛造加工には、
プレス機のサーボ化を計り速度及びモーション制御を含むことを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項9】
荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法であって、
(1)厚肉純ニオブ板材から素形品を成形するために、微小クリアランスとする金型と、前記金型での高速・連続せん断打抜き加工による発熱を逃がす抜熱用冷却装置と、前記厚肉純ニオブ板材移動を防ぐ束縛治具と、複数系統の外力負荷を制御するマルチアクションダイと、前記厚肉純ニオブ板材の板押え及び面圧制御用サーボダイクッションと、前記厚肉純ニオブ板材の速度・モーションを制御するサーボ機構をプレス機に搭載する、精密打抜き法とは異なるせん断打抜き加工と、
(2)前記素形品の製品形状の加工品を成形するために、前記素形品の青熱脆化回避と塑性流動容易化を計るための前記金型及び前記素形品の温度制御を行う加熱装置と、前記素形品の成形性向上と表面酸化極小化のために表面改質した金型と、前記素形品と金型間の焼付きを防止するための温度非依存固形被膜タイプの潤滑剤と、前記せん断打抜き加工した素形品の速度及びモーションを制御するサーボ機構をプレス機に搭載する、熱間・温間・冷間鍛造のいずれとも異なる鍛造加工とからなり、
前記厚肉純ニオブ製のエンドグループ部品の切削加工やウォータジェット加工をプレス加工へ工法転換したことを特徴とする純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法によって得られた前記加工品が、純ニオブ製のHOMアンテナのプレス加工品であることを特徴とする。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品を、従来の切削加工やウォータジェット加工からプレス加工へ工法転換した製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、ヒッグス粒子の発見やビッグバン及びインフレーション理論の進展もあり、30~50kmに及ぶ長大な線形加速器である国際リニアコライダー(ILC)建設計画が鋭意進められている。
【0003】
ILCの中核をなすのが超伝導高周波加速空洞であり、その最小単位を「9連空洞」と称し、図1に示すように、9個のセルからなるセンター部品2と、両エンドグループ部品3からなる。エンドグループ部品3は電力の入力やモニターのためのポート類(ビームパイプ3a,ポートパイプ3b)のほかに、複雑形状を有するHOM(高調波)カプラー3c等から構成される。
【0004】
HOMカプラー3cは、図2に示すように、HOMカップ4とHOMアンテナ5が一体化されたものである。即ち、粒子ビームが電磁加速され、空洞内を通過するときにHOM(高調波)を励起してしまい、ビームの加速を阻害するため、空洞外に吸い出して減衰させる必要がある。この機能を受け持つのがHOMカプラー(高調波減衰器)である。
【0005】
9連空洞のセンター部品2もエンドグループ部品3も使用素材は、希少金属の純ニオブである。主たる理由は、純ニオブは超伝導遷移温度が9.2Kと高く、これを2Kで使用することにより、最重要な超伝導特性、即ち粒子ビームの易加速性を向上するための単位長さあたりの加速電圧を高く取れる可能性が大きいことによる。
【0006】
純ニオブは極めて高価、かつ難プレス加工・難切削材料である。その主たる理由は、プレス加工については低塑性歪比、切削については工具との凝着現象にある。従来、HOMアンテナ5は、素材から全切削加工もしくはウォータジェット加工等によって作成した素形品を切削加工によって製品化しているのが実情である。
【0007】
また、HOMカップ4に関しては全切削加工もしくは後方押し出し後切削及び熱処理、あるいは複数工程のプレス加工とその間の熱処理並びに加工後熱処理の挿入によっている。
【0008】
従って、いずれも生産性及び経済性の点で、深刻な課題を内包しており、これらの課題解決のため、先進的なプレス加工法への工法転換が強く期待されている。
【0009】
そこで、発明者等は、HOMカップ4について、超深絞り加工に工法転換する技術について研究し、既に国内及び国際特許出願(特許文献1及び2)をしている。
【0010】
しかしながら、HOMアンテナ5は、図2(D)の外観図からも判別されるように、プレス加工化に関しては「難加工形状品」であり、かつ純ニオブは、機械切削加工やプレス加工のいずれにおいても「難加工材」である。そして、HOMアンテナ5の初期板厚が10mmの「厚板」ゆえ、目標とする障壁は高い。
【0011】
HOMアンテナ5において、特に、超伝導特性の適正化を図るために、各部位の距離寸法が重要である。同時に板厚や辺縁部のR寸法にも配慮する必要がある。本来エンドグループ部品3のプレス加工化にあたっては「材料技術」と「塑性加工技術」を同時に配慮する必要がある。また、ほぼ四角形状の打抜き穴部分の一部が狭小になっており、応力集中が生じやすいのでネッキング(くびれ)/亀裂、肉余り/不足、形状出し、残留応力等の発生が予想され、加工難度が高いものと推測される。
【0012】
さらに、仕上げ工程においてCP(化学研磨)及びEP(電解研磨)を行うが、その負荷をできるだけ低減するためにも、表面性状や表面もしくはその近傍の異物や微量不純物元素の付着・侵入にも注意しなければならない。
【0013】
そのため、HOMアンテナ5の切削加工やウォータジェット加工以外の加工法については、知られておらず、確立もされていない。そして、切削加工やウォータジェット加工からの工法転換による、量産性の飛躍的向上及び製造コストの低減が強く期待されている。
【0014】
ここで期待に沿う手段として、従来工法を全プレス加工に転換するために、「新たなせん断打抜き加工」とそれに続く「新たな鍛造加工」の先進化技術による「新たな全プレス加工」の未だ試みられたことのない発想のもとに、その実現のために開発研究した成果が本発明である。
【0015】
ここで既存の慣用せん断打抜き加工、精密打抜き法は除外される。前者では通常打抜きクリアランスが板厚(t)の5~10%であるため、所要形状寸法精度を出すことは不可能であり、後者では高価な専用機と高価な金型費用が発生し、技術難度も高く、生産効率が問題になる可能性があることによる。
【0016】
発明者等は、「新たなせん断打抜き法」の検討に先んじて、まず切削に替えて現在模索中の「ウォータジェット加工」での素形品成形の可能性について評価した。ウォータジェット加工による素形品の加工は、比較的高速化・高能率化が期待されるところから、後続の切削加工を、周知の「冷間鍛造加工」によってプレス加工に置き換えられないかを視野に入れつつ、種々の実験・検討を行ったものである。
【0017】
その結果、幾つかの技術課題の存在が認識された。主たる問題点は、試作品のCP後の表面SEM観察及びEDX元素分析によって異物の存在と、それらが素地中に埋入されているのが認められたことである(図3)。SEM像(図3(A))からは、明らかに数μ~数10μの白点が散在しており、その周辺の色調がおそらく応力場により変化している。
【0018】
SEM像中の観察視野(白丸で表示)のEDX測定チャート(図3(B))では、白点(粒子群)はアルミナ、シリカ、酸化鉄もしくは酸化マグネシウム等によるものと同定された。これら粒子状異物の存在原因は、素形品製作のウォータジェット切断時に使用する「砥粒」と見なされる。現在のところ、この切断手法を適用する限り、製品表面への砥粒の埋入は避けられない。
【0019】
砥粒の埋入があると、高周波共振モードの発生を促進させる恐れが大きく、空洞性能に悪影響を与える懸念が拭えないので、この素形品のウォータジェット加工は回避せざるを得ない。しかも、ウォータジェット加工は、プレスせん断打抜き加工に比べれば、生産性及び経済性に劣ることも否めない。HOMアンテナ5であれば、1個成形するために、10分程度の時間を要するゆえ、数万個の量産には向かないといえよう。
【0020】
他方、素形品の製品形状への加工においては、従来の冷間鍛造が先ず考えられた。しかし、試験の結果、例えば、ネッキングや寸法不同あるいは応力集中及び形状問題(だれ・バリ・材料の肉余りや充填不足等)あるいは凝着現象等の問題が確認された。これらに共通する原因に関わるのは、材料と金型間の「塑性流動」と云ってよい。
【0021】
その中で、特に、冷間鍛造試験後の一部に図4に示すようなネッキング現象の発生が重大問題である。技術的な塑性加工上の冷間鍛造条件を種々変動させた実験を行ったが、ネッキング(円内)の発生を回避することはできなかった。
【0022】
ネッキングの発生確率がいかに小さくてもこれはHOMアンテナ5の機能を損ない、加速器に使用される全体の内1個であっても加速器が作動しなくなるような重要な問題であるため、容認することはできない。
【0023】
このネッキングは応力集中によって生じたのは確かだが、材料の強度不足・延性不足・塑性流動・加工変形過程における変形余裕度不足のいずれが主原因であるかは未詳である。
【0024】
上記砥粒の材料への埋入、ネッキングは、材料と加工との相互作用によって生じた現象である。当然HOMカップ4との組み合わせや電子ビーム溶接(EBW)後に共振モードの制御や超伝導特性等の加速空洞の機能を劣化させることが確実ゆえ、発生を失くす必要がある。そのため、材料と加工の両者に配慮した新たなHOMアンテナ5の加工法の検討が、極めて重要になる。
【先行技術文献】
【0025】

【特許文献1】特願2013-152686号
【特許文献2】WO2013/115401 A1
【特許文献3】特開平07-48589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
そこで、本発明は、量産化を視野に入れ、超伝導高周波加速空洞の厚肉純ニオブ製エンドグループ部品を、従来の切削加工やウォータジェット加工からプレス加工へ工法転換した製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明者等は、上記試験、課題を検討した結果、新たなせん断打抜き加工で素形品を形成し、新たな鍛造加工で、製品形状の加工品に成形する組み合わせ技術を創出することによって、本発明を完成するに至った。
【0028】
より具体的には、
本発明は、上記課題を解決するため、
[1]
荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法であって、
(1)厚肉純ニオブ板材の板厚の0.5%以下の微小クリアランスとし、束縛治具で前記厚肉純ニオブ材を束縛しつつ素形品を成形する、精密打抜き法とは異なるせん断打抜き加工と、
(2)前記素形品を室温から200℃における低温域温度制御によって青熱脆化を回避し加工品を成形する、熱間・温間・冷間鍛造のいずれとも異なる鍛造加工とからなり、
前記厚肉純ニオブ製のエンドグループ部品の切削加工やウォータジェット加工をプレス加工へ工法転換したことを特徴とする純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[2]
前記せん断打抜き加工は、
100mm/sec以上の高速にて前記厚肉純ニオブ板材を連続打抜きするとともに、前記せん断打抜き金型が抜熱冷却機能を有することを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[3]
前記せん断打抜き加工には、
マルチアクションダイ及びサーボダイクッションを使用して多重作動しつつ前記素形品の板押え及び面圧制御をするとともに、プレス機のサーボ化を計り打抜き速度及びモーション制御を含むことを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[4]
前記鍛造加工の低温域温度制御は、
前記素形品の表面酸化被膜の生成を極小化する温度制御であることを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[5]
前記鍛造加工の低温域温度制御は、
前記素形品の塑性流動性を容易化する温度制御であることを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[6]
前記厚肉純ニオブ板材は、
粒径が数10μmの細粒結晶組織からなることを特徴とする請求項1に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[7]
前記鍛造加工で使用する金型は、
焼付き防止のため、表面改質された金型で、かつ前記金型に温度非依存型潤滑性能を有する固形被膜潤滑剤を使用することを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[8]
前記鍛造加工には、
プレス機のサーボ化を計り速度及びモーション制御を含むことを特徴とする[1]に記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[9]
荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法であって、
(1)厚肉純ニオブ板材から素形品を成形するために、微小クリアランスとする金型と、前記金型での高速・連続せん断打抜き加工による発熱を逃がす抜熱用冷却装置と、前記厚肉純ニオブ板材移動を防ぐ束縛治具と、複数系統の外力負荷を制御するマルチアクションダイと、前記厚肉純ニオブ板材の板押え及び面圧制御用サーボダイクッションと、前記厚肉純ニオブ板材の速度・モーションを制御するサーボ機構をプレス機に搭載する、精密打抜き法とは異なるせん断打抜き加工と、
(2)前記素形品の製品形状の加工品を成形するために、前記素形品の青熱脆化回避と塑性流動容易化を計るための前記金型及び前記素形品の温度制御を行う加熱装置と、前記素形品の成形性向上と表面酸化極小化のために表面改質した金型と、前記素形品と金型間の焼付きを防止するための温度非依存固形被膜タイプの潤滑剤と、前記せん断打抜き加工した素形品の速度及びモーションを制御するサーボ機構をプレス機に搭載する、熱間・温間・冷間鍛造のいずれとも異なる鍛造加工とからなり、
前記厚肉純ニオブ製のエンドグループ部品の切削加工やウォータジェット加工をプレス加工へ工法転換したことを特徴とする純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の純ニオブ製エンドグループ部品の製造方法によって得られた前記加工品が、純ニオブ製のHOMアンテナのプレス加工品であることを特徴とする。
とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、厚肉純ニオブ板材を出発材料として、切削加工やウォータジェット加工を用いることなく、また精密打抜き法を用いることなく、素形品を成形するせん断打抜き加工と、さらに既存の熱間/温間/冷間鍛造法のいずれにもよらない加工品を成形する鍛造加工の連携技術によって、厚肉純ニオブ製エンドグループ部品を成形する技術である。
【0030】
その結果、ウォータジェット加工による砥粒埋入問題、冷間鍛造によるネッキングの問題が解消され、高価な厚肉純ニオブの使用量を削減し、素材コストを抑えることができるとともに、安定した加速器の運転を保障することができる。さらに、プレス成形で、仕上げ処理前の加工品とすることができるため、製造時間の短縮が図られるので、大幅な製造コストを抑えることが可能になるとともに、安定的量産・部品供給に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】純ニオブ製エンドグループを取り付けた超伝導高周波9セル加速空洞の写真である。
【図2】超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループを構成するHOMカプラーと、HOMカプラーを構成するHOMカップ及びHOMアンテナの模式図である。
【図3】従来の厚肉純ニオブ板材のウォータジェット加工の説明図である。(A)はウォータジェット加工によって成形された素形品の表面のSEM電子顕微鏡写真、(B)は(A)の白円内の粒子のEDX元素分析結果である。
【図4】従来のウォータジェット加工によって成形された素形品の冷間鍛造加工によって成形された加工品の写真である。(A)外観像、(B)は(A)の円内の接写画像である。(B)でネッキングの発生が認められる。
【図5】せん断打抜き加工における厚肉純ニオブ材の束縛方法の一例である。(A)は素材、工具とともに示した(B)のB-B‘断面模式図、(B)は(A)のA-A’矢視模式図である。
【図6】純ニオブの青熱脆性現象を示す図である。
【図7】本発明のプレス加工に用いられた各種制御機構と金型を搭載したサーボプレス機及び加熱・冷却制御装置の外観写真である。
【図8】本発明によるせん断打抜き素形品(A)、鍛造加工品(仕上げ前)(B)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図5,6に基づき、本発明について詳細に説明する。

【0033】
本発明である荷電粒子の加速に用いられる超伝導高周波加速空洞の純ニオブ製エンドグループ部品3のうちHOMアンテナ5は、本願手段による新たなせん断打抜き加工法(1)と、新たな鍛造加工法(2)とから製造され、従来の切削加工やウォータジェット加工からプレス加工への工法転換を可能にする。

【0034】
(1)せん断打抜き加工
せん断打抜き加工は、厚肉純ニオブ板材5aから素形品5bを成形する工程で、ダイ6aとポンチ6cとの隙間(クリアランス)の微小化、厚肉純ニオブ板材6の束縛手段、高速打抜き手段、抜熱冷却手段、マルチアクションダイ、サーボダイクッション、プレス機のサーボ制御を含み、各手法の適切な組み合わせからなる。以下にそれらの手段/効果について説明する。

【0035】
・微小クリアランス6e
図5(A)に示すように、微小クリアランス6eは、高精度のせん断打抜き品を得るために、ダイ6aとポンチ6cの隙間を被加工材板厚(t)の0.5%以下の微小に設定するものである。慣用打抜きでは、板厚(t)の10~15%が通常であり、既存の精密打抜き(FB)法ではt<0.5%である。しかしFB法では、V字突起を形成する等が必要な高価なFBプレス機と特殊金型を要すること、打抜きスピードが遅いこと、さらにプレス機の操作に熟練を要すること等の問題がある。

【0036】
他方、本発明は、下記する連携構成技術の創案によって、慣用打抜きでも、FB法にも該当しない、厚肉純ニオブ板材5aのごとき難プレス加工材に適応できる新たなせん断打抜き加工法を提供する。

【0037】
・束縛手段6
この手段は、図5に例示するように、例えば、厚肉純ニオブ板材5aを通常のFB法に採用されているV字突起方式を採用することなく、厚肉純ニオブ板材5aのふくれや素形品5bの板厚変動を抑制、制御するものである。

【0038】
例えば、図5に示すごとく、厚肉純ニオブ板材5aに通常の板押え荷重Pbを上下(板押え6d及びダイ6a)から加える。なお、厚肉純ニオブ板材5aのダレの生成程度に応じて場合により打抜き荷重Pfに対し逆押え荷重Ppを加える。

【0039】
さらに、本発明では、束縛荷重Fを厚肉純ニオブ板材5aに加える。束縛荷重Fは、長方形素材である厚肉純ニオブ板材5aの長手側面に加えられる第一側面束縛力F1と、短手側面に加えられる第二側面束縛力F2とからなる。なお、F1’はF1の反荷重、F2’はF2の反荷重である。

【0040】
この際、
Pb=F1+F2 式(1)
の関係を維持するように制御するのが要諦である。その結果、せん断打抜き時の厚肉純ニオブ板材5aの板厚変動を必要十分な程度に抑制することができる。

【0041】
ここで、Pbはサーボダイクッションによって加工中に動的制御することを本発明に含むことから、原理的にはFはそれに追随して変動する要因とみなしてよい。

【0042】
厚肉純ニオブ板材5aは、通常のFB法に採用されているV字突起方式であっても、通常の板押えであっても、打抜き時に、移動し、素形品5bの板厚減少が起こることを認識して、かかる発明要素の考案に至ったものである。

【0043】
・連続高速打抜きと抜熱冷却
厚肉純ニオブ板材5aの打抜き時に、ポンチスピードを例えば100mm/sec以上に高速化することにより、せん断打抜き性が向上することを知見した。このような高速化は、FB法における油圧サーボ機構では実現できない。そこで、本発明では後述の電気的サーボ制御機構のプレス機搭載機能によって実現可能にしたものである。

【0044】
純ニオブにおいて、高速打抜きで打抜き性が向上するメカニズムは不明だったが、発明者等は、材料学的な観点から、純ニオブ材料の加工変形中にミクロすべりとタングリング(もつれ)に対するブロックの影響(おもに積層欠陥エネルギーの低下による交叉すべりの容易化が関係している)が減殺するためであることを知見した。

【0045】
他方、打抜きスピードを高速化し、かつ連続加工すると、外力の熱エネルギーへの変換量が増加・蓄積して、発熱現象が生じ、金型温度が上昇する。すると金型と厚肉純ニオブ板材5aの表面で相互の原子間相互作用が増加するとともに、潤滑剤や金型表面改質被膜が化学変化、主として酸化反応が起こり、「焼付き現象」が生じるので、連続せん断打抜き中に、被加工材料と金型の「抜熱」が必要になるゆえ、温度制御装置で、金型を冷却し、熱伝導で被加工材の冷却を行わなければならない。

【0046】
・マルチアクションダイ
プレス機は通常2軸外力加工(スライドと板押え)形式が基本であるが、FB法のような複雑な機構によらずに、慣用プレス機にサーボ機能を付加した装置マルチアクションダイを搭載することで、スライド力に対して反対方向の「対抗力」(第3番目の軸力)の作動が可能になる(3軸外力加工化)。

【0047】
微小クリアランス6eで高精度な素形品5bを成形するには、かかる簡略な複動化の工夫の効果は無視できない(図5のPpに相当する)。その結果、せん断打抜き加工装置の初期投資を抑え、素形品5bの製品コストを低く抑えることが可能になる。

【0048】
・サーボダイクッション
厚肉純ニオブ板材5aのせん断打抜き時の板押え荷重(面圧)を、せん断打抜き加工中に可変にして、せん断打抜き性の向上を図るために搭載する。加工時間が短いため、かかる動的可変動作を行うことには困難が伴うが、フィードバックセンサーの応答速度の改良によって実用化を可能にした。当該機構は、他の構成と併用することで、相乗作用を発揮し、高精度・高能率のせん断打抜き加工を可能にする。

【0049】
・サーボ制御
プレス加工においては、知られた手法・装置であるが、高速・連続せん断打抜きや速度制御やモーション制御を有効利用することを特徴とする本願発明においては大切な要素であり、せん断打抜き加工において、かかる発想は従来存在しない。

【0050】
(2)鍛造加工
次いで、鍛造加工は、素形品5dを製品形状の加工品5cに成形する工程で、低温域温度制御(青熱脆化、表面酸化被膜極小化、塑性流動容易化)、微細結晶純ニオブ材の選択、表面改質された金型、適正潤滑油、プレス機のサーボ制御を含む、各手法の適切な組み合わせからなる。以下に、それらの手段/効果について説明する。

【0051】
・低温度域温度制御
純ニオブの青熱脆化、表面酸化被膜の極小化、塑性流動容易化のために、室温(RT)~200℃の低温域で温度制御する。より好ましくは、50~150℃の温度域である。
従来から、鍛造加工において、温度条件に関連して、
熱間鍛造(再結晶温度以上、大略>800℃)
温間鍛造(300~800℃)
冷間鍛造(RT(室温))が知られている。
本発明のこの低温度域制御の温度範囲は、従来知られているいずれの温度制御領域にも当てはまらない新たな温度域における温度制御手段であり、難プレス加工材の加工にふさわしい新たな鍛造加工法を提供するものである。

【0052】
・青熱脆性
純ニオブの静的及び動的機械的特性の温度依存性を広範な領域で調べた結果(図6)、厚肉純ニオブ板材5aのプレス加工化の手段と効果に関して貴重な情報が得られ、本願発明に関わる新たな鍛造法につき重要な要素の創案を得るに至った。

【0053】
図6に0~400℃における純ニオブの静的単軸引張結果を示す。横軸が温度、第一縦軸(左)が伸び(延性)、第二縦軸(右)が引張強さ(強度特性)である。EL(全伸び)については異なるチャージの結果をプロットしてある。

【0054】
これから、純ニオブの静的な機械的特性が温度変化に対して一様には変化(増加・減少・不変)しないことが分かる。特に200~300℃の温度領域で純ニオブの延性・強度特性ともに急減することが知られた。これを、従来の金属材料学にならって純ニオブの「青熱脆化」と称することとする。

【0055】
青熱脆化現象が生じると、延性低下による塑性変形能の低下と、強度特性の劣化による材料の外力に対する変形抵抗の低減を招くことになるから、純ニオブ材の加工性の低下、即ち応力集中部分のネッキングが生じる危険性が急増する。それゆえ、青熱脆化は鍛造加工にあたって、絶対に避けなければならない。

【0056】
青熱脆化の生成原因は、以下のように考えられる。これは、後述の「細粒化純ニオブの選択使用」と関連する。図6中の挿入図の斜線丸囲い部の応力-歪線の流動応力変化からも分かるように、純ニオブ素材中の結晶粒界やミクロすべり生成部位における侵入型原子(炭素及び窒素)の固体拡散による固着・ブロックによるものである。

【0057】
純ニオブのごときフェライト(体心立方結晶(BCC))中の拡散現象(拡散係数D)は、温度Tに依存する、
D=Dexp(-Q/kT) 式(2)
で表される。
:振動数項,Q:活性化エネルギー,k:ボルツマン定数

【0058】
そして、時間tにおける原子の拡散距離x(拡散速度)は、
x=√Dt 式(3)
となる。

【0059】
しかるに、200~300℃におけるフェライト中の炭素及び窒素のDは10^-10cm^2/sec程度であるから、ミクロすべり速度とマッチングするので、前記固着作用が生じ、青熱脆化が生じるものと考える。

【0060】
そして、後述のように前記「細粒化純ニオブの選択使用」と同時に、「塑性流動の容易化」も同時に考慮しなければならないのである。

【0061】
・表面酸化被膜極小化
純ニオブは酸化物(殆どNb)の標準生成自由エネルギーΔGが小さく、酸化しやすい。スケール(酸化膜)除去として、仕上げ切削(機械的/化学的(Cp)/電気化学的(Ep))等をプレス鍛造製品製作後に行う。とくにEpは2万台弱つくる予定の“9連空洞”の1台ごとに行う必要がある。よって酸化膜生成を少しでも減らすことは、EP処理能力を向上に寄与するから、コストダウンにつながる。

【0062】
従って、鍛造温度は室温~200℃の間でなるべく低値に越したことはないが、同時に青熱脆性の回避(前記のごとく図6に挿入した応力-歪線図に示された流動応力変化への対応を含む。この原因は青熱脆化と同じで、前記したように侵入型原子のミクロすべり歪の固着によるものであるが、時効現象とも称し、青熱脆化下限温度以下での高温域においても生じる可能性がある)や後述する塑性流動性の容易化にも配慮すると、130℃付近を中心とした100~150℃の温度域制御が好適である。

【0063】
・塑性流動容易化
鍛造加工は、主として圧縮力による材料変形によって進捗するものであるから、いかに純ニオブ材料のマクロ的な塑性流動を所要の製品形状寸法に沿って適切かつ均一に起こさせるかが肝要である。

【0064】
そのためには、少しでもマクロ機械的特性のうち全伸びで示される延性に優れることと、変形抵抗を減殺するために強度・流動応力を低めに保つことが望ましい。そして、既述の炭素や窒素の侵入型原子のミクロな変形歪に対する固着作用を回避することが望まれる。

【0065】
かかる観点から、図6を参照すると、室温~200℃間の低温域温度制御をすることの肝要性が理解できるのであるが、望ましくは表面酸化被膜極小化温度について述べた観点とも一致することとなる130℃付近の温度域制御の選択が好ましいといえる。

【0066】
かくして、鍛造時のあらゆる曲面部分の形成と高精度化や、表面性状が向上することになる。開発研究実験と理論的指導原理から導かれた本発明、即ち純ニオブ材料の全プレス加工化を実現した技術は、これまで知られていない。

【0067】
・微細結晶純ニオブ材の選択
これには二つの観点がある。第1点は、厚肉純ニオブ板材5aと金型間で起こる焼付き(凝着)現象回避の観点である。純ニオブは通常再結晶熱処理による結晶粒成長速度が大きく、数100μm程度の粗大粒を呈するのが一般である。

【0068】
これは、本願用途に使用する純ニオブが300RRR以上の高純度(炭素や窒素等の侵入型不純物元素の含有率が数ppm程度)ゆえ、結晶粒界移動阻止作用が小さいことと、ニオブ原子の体拡散が容易なことによるものと推察される。

【0069】
被加工材料の結晶組織が粗大粒からなると、その表面と金型表面との間に、原子のランダムウオークによる交互作用が、細粒材の場合よりも確率的に増大するので、化学反応も生じやすくなり、焼付きや摩耗現象が促進されるものとの推定原理によって、数10μmの細粒結晶の純ニオブ素材を用いることによって焼付き(凝着)現象を低減させるものである。

【0070】
純ニオブ素材の結晶粒径が焼付き・凝着の原因のひとつであることはこれまで知られていない。また、結晶粒径を数10μmオーダーに調整する技術も開示されていない。

【0071】
もう1点は、図6の青熱脆化及び時効現象について前記したことからも分かるように、結晶粒径が如上のように現用の1/10程度の細粒材を使用することによって、結晶粒界面積が著しく増大するので、炭素や窒素等の侵入型元素の多くが拡散によって、同じ温度であっても、結晶粒界に固着(トラップ)され、ミクロすべりの進行を妨げる程度が減少することである。つまり、同じ温度条件の鍛造加工において、粗粒材よりも細粒材の方が青熱脆化や時効現象が緩和され、鍛造加工が容易になり、鍛造性も改善されることである。

【0072】
・表面改質された金型
金型と厚肉純ニオブ板材5aとの焼付き(凝着)防止と金型の摩擦・摩耗対策のため、金型の表面をDLCや低温窒化あるいは化成処理等で改質する。被加工材が軟質純ニオブであることを考慮して、改質層の厚みや下地処理に配慮すると同時に、金型材質の選択にも配慮する。

【0073】
・適正潤滑剤
温度非依存型潤滑性能を有する固形被膜潤滑剤を用いる。例えば、本願発明者のひとりが関わった、室温~800℃まで動粘度が不変な、即ち、潤滑性能不変な潤滑剤が知られている(特許文献3)ので、これを用いることで、焼付き・凝着現象が緩和される。なお、特許文献3に記載の潤滑剤は、焼付き・凝着防止に従来使用されてきた塩素添加潤滑油の人体/環境への負荷を回避した固形潤滑剤で、加工性のアップにも寄与する。

【0074】
・サーボ制御(モーション制御)
この機能は、慣用プレス機に搭載して、プレス機のスライド(ストローク)の速度制御及びまたはモーション制御を行い、外力の使用要件を変化させ、厚肉純ニオブ板材5aのミクロ的及び又はマクロ的変形モードとの親和性を改善し、塑性加工性を向上させることを意図したものである。
【実施例1】
【0075】
以上、本願発明内容について詳細説明をしるしたので、以下、これらに基づく具体的な実施例を図6、7を参照しつつ示す。なお本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
図7に発明を実施するための設備・装置の外観写真を示した。主たる装置はプレス機であり、慣用プレス機に電気式(AC)サーボ機構を搭載し、さらにマルチアクションダイを取り付けた。基本的にはコストパフォーマンスの観点から、実施例では単発加工とした。即ち、素形品5bの加工のための新せん断打抜き加工と仕上げ処理前の製品加工のための新鍛造加工を、適当な個数ごとに分けて行った。(いうまでもなく量産時には2台のプレス機で連続加工を行うこととなる)。
【実施例1】
【0077】
そのために、途中でせん断打抜き用金型と鍛造用金型を交換した。金型重量物の交換にはQDCを用いた。実施例のための金型材質はSKD11とし、表面改質はDLCとし、改質層の厚みは2μmである。潤滑剤には固形潤滑剤G2578T(日本工作油(株)製)を使用した。これら型材・表面改質・潤滑剤は、せん断打抜き加工と鍛造加工共用で実施した。
【実施例1】
【0078】
新せん断打抜き加工の冷却制御及び新鍛造加工のための加熱制御用に、図7に示した温度制御装置7を使用した。温度制御範囲はー20~+300℃であり、冷却は非フロン冷媒、加熱は金型7aに埋入した電気ヒーターを、それぞれ用いた。厚肉純ニオブ板材5aと金型の温度制御には若干の時間差が生じたが、特段の問題はなかった。
【実施例1】
【0079】
純ニオブ被加工材としては、板厚10mmの厚肉純ニオブ板材を使用した。このものは数回のEBM(電子ビーム溶解)を施したのち、インゴットの分塊圧延及び厚板圧延を行い、脱スケール後に真空焼鈍したものである。材料ミルシート(検査表)によれば、不純物固溶原子の炭素、窒素、酸素等はすべて数ppmのレベルで、RRRは341であった。同族(元素周期表の第5族)のタンタル含有量は280ppmであった。金属結晶粒径は大略100~300μm径で、ほぼ等軸粒である。結晶方位集合組織の測定は行われていない。硬さを測定したところ、ビッカース硬度で約90であった。
【実施例1】
【0080】
実施例の条件は以下のようである。
(1)せん断打抜き加工:(微小)クリアランス40μm;板押え荷重(Pb)20トン;板押え面圧140kg/cm^2;束縛荷重(F)は面圧に同じ;打抜き荷重(Pf)90トン;逆押え荷重(Pp)13トン;速度200mm/sec;冷却温度0℃;サーボモーションはストレート;連続加工個数50個。
【実施例1】
【0081】
(2)鍛造加工:鍛造加工荷重160トン;鍛造速度0.5mm/sec;鍛造金型の素形品5bワークのオフセット量0.2mm;加工温度130℃;連続加工個数50個。
【実施例1】
【0082】
以上の条件にて、本発明に従って、厚肉純ニオブ板材5aから多数個のHOMアンテナ5の新せん断打抜き方法と、それに続く新鍛造方法によって行った実施加工品5b及び5cのうち典型的な例を図8に示す。
【実施例1】
【0083】
図8(A)に、せん断打抜き素形品5bを示したが、板厚10mmに達する加工難度の高い軟質厚肉純ニオブ板材5aのせん断打抜きが、特段の問題が全くない状態で実施できた。もちろん、ウォータジェット素形品加工における砥粒の埋入は皆無であり、この問題を完全に解決することができた。
【実施例1】
【0084】
図8(B)に、(A)からの継続加工である新鍛造方法による鍛造後(仕上げ処理前)の製品(加工品5c)を示したが、この場合も前記縷々しるした手段・条件の適用によって所要の形状寸法を有する加工品が、再現性をもって製造可能であることが示された。
【実施例1】
【0085】
相当の個数を鍛造加工したが、従来法の冷間鍛造で発生した「ネッキング」の発生は皆無であった。図8には、(A),(B)それぞれの長さ寸法及び板厚寸法をしるしているが、これらは十分この後の仕上げ処理に問題のないことを確認している。
【実施例1】
【0086】
特に、板厚が鍛造によって、1mm減少し、長さ寸法も減少しているが、これらは想定内であり、前記したように金型で設計図に対するオフセット量を適正に考慮したゆえんである。
【実施例1】
【0087】
以上の実施例から判断できるように、本願発明の適用によって、厚肉純ニオブ板材5aからHOMアンテナ5の加工品を、従来の切削やウォータジェットを回避した、仕上げ処理を除く製造工程をすべてプレス加工方法へ工法転換することが可能であるとの結果を得た。従って、大きなネックであった加速空洞部品の素材歩留りの減少、コスト低減、量産性の向上等の実現が可能になった。
【符号の説明】
【0088】
1 超伝導高周波加速空洞
2 センター部品
3 エンドグループ部品
3a ビームパイプ
3b ポートパイプ
3c HOMカプラー
4 HOMカップ
5 HOMアンテナ
5a 厚肉純ニオブ板材
5b 素形品
5c 加工品
6 束縛手段
6a ダイ
6b 板押え
6c ポンチ
6d 逆押え
6e 微小クリアランス
6f 束縛治具
6g 束縛治具
6h 束縛治具
Pf 打抜き荷重
Pb 板押え荷重
Pp 逆押え荷重
F 束縛荷重
F1 第一側面束縛力
F1’ 反荷重
F2 第二側面束縛力
F2’ 反荷重
7 サーボプレス機
7a 金型
7b 温度制御装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7