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明細書 :目的遺伝子の発現誘導可能なウイルスベクター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-000015 (P2017-000015A)
公開日 平成29年1月5日(2017.1.5)
発明の名称または考案の名称 目的遺伝子の発現誘導可能なウイルスベクター
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-114308 (P2015-114308)
出願日 平成27年6月4日(2015.6.4)
発明者または考案者 【氏名】朝長 啓造
【氏名】本田 知之
【氏名】山本 祐介
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
Fターム 4B024AA01
4B024AA20
4B024CA01
4B024CA04
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024DA03
4B024EA02
4B024GA11
4B024HA01
4B024HA08
4B024HA17
要約 【課題】ウイルスベクターを利用して遺伝子導入操作を行うに際し、ベクター配列のゲノムへの挿入を起こすことなく、所望のタイミングに遺伝子の発現を可能とするウイルスベクターを提供する。
【解決手段】ボルナ病ウイルス(BDV)ゲノムの部分若しくは全部を含む、BDVベクターであって、導入する任意の目的遺伝子の非翻訳領域にリボザイム配列を組み込んでなるBDVベクターを用いることによる。具体的には、(a)BDVゲノムをコードするcDNAに任意の目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されており、さらに(a)における任意の目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクターによる。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAに目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターであって、さらに(a)における当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクター。
【請求項2】
目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子とM遺伝子との間の非翻訳領域に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、請求項1に記載のウイルスベクター。
【請求項3】
目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子の翻訳領域の下流に連結する非翻訳領域内に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、請求項1に記載のウイルスベクター。
【請求項4】
リボザイム(R)が、自己消化型リボザイムである、請求項1~3のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項5】
リボザイム(R)の制御機構(R')が、テオフィリンに結合しうるアプタマーである、請求項1~4のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項6】
リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')を含むカセットを、リボザイム(R)制御カセットとし、当該リボザイム(R)制御カセットを特定する塩基配列を1単位としたときに、1単位又は2~5単位から選択される任意の繰り返し単位での塩基配列を含む、請求項5に記載のウイルスベクター。
【請求項7】
リボザイム(R)制御カセットが、配列番号3に示す塩基配列で特定される、請求項6に記載のウイルスベクター。
GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTTGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACGGAGGACGAAACAGC(配列番号3)
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を可逆的に不活性化又は活性化することにより、前記(a)に含まれる当該目的遺伝子(A)の発現を制御する工程を含む、目的遺伝子(A)の発現制御方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を不活性化することにより当該目的遺伝子(A)の発現を促進する、請求項8に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。
【請求項10】
リボザイム(R)を不活性化することが、テオフィリンを作用させることによる、請求項8又は9に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスベクターを利用して外来の目的遺伝子の導入操作により目的遺伝子を発現させる方法において、所望のタイミングに当該目的遺伝子の発現を誘導可能とするウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
任意の外来性目的遺伝子(以下、単に「目的遺伝子」ともいう。)を生体又は細胞に運搬する手段として、ウイルスベクターを利用する方法が知られている。ウイルスが持つ病原性に関する遺伝子を取り除き、当該目的遺伝子を組み込んだものがウイルスベクターである。人に感染するアデノウイルスは50種類ほどが知られているが、ウイルスベクターとして利用されているのは、主にヒトアデノウイルス5型である。ヒトアデノウイルス5型は小児の風邪を引き起こすウイルスの一種で、約 36kb の2本鎖直鎖状DNAをゲノムとして持つ。カプシドは直系約 80nm の正二十面体構造をとり、エンベロープを持たないウイルスである。ウイルス粒子から突出するファイバー蛋白質の先端が細胞表面のレセプター(CAR: coxackie-adeno receptor)に結合して吸着・感染する。レトロウイルス(retrovirus)はエンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスであり、感染した細胞内で逆転写されて二本鎖DNAとなった後に宿主ゲノムにランダムに組み込まれる。レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターの一種であるが、潜伏期間が長いという特徴を持つ。代表的なものとしてヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)が知られており、いくつかの修飾遺伝子や制御遺伝子を有するなど通常のレトロウイルスより複雑な構造を取っている。他のレトロウイルスと大きく異なる特徴として、レンチウイルスは分裂していない細胞にも感染して宿主ゲノムにウイルスDNAを導入できる点がある。 その他、ウイルスベクターとして、アデノ随伴ウイルス、センダイウイルスを利用するベクター等が開発されている。
【0003】
しかしながら、レトロやレンチウイルスベクターによる幹細胞への導入はゲノムにベクター由来の配列が挿入されることで細胞が腫瘍化する有害事象がある(非特許文献1:J Clin Invest. 2008 118:1502, 非特許文献2:Science. 2003 17;302)。例えば、X連鎖重症複合免疫不全症 (X-linked Severe Combined Immunedeficiency; X-SCID) の遺伝子治療を受けた患者に白血病を発症する等の副作用があった。また、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスに関連するベクターが汎用されているが、DNAウイルスであるためにゲノムにベクター由来の配列が挿入される可能性があること、ウイルスベクターが一過性感染型ベクターであるため、安定持続的に導入されず、急速に増殖する細胞に長期的な遺伝子変更を行うことが困難である。さらにゲノムへの挿入を起こさないRNAウイルスであるセンダイウイルスベクターは安定持続的に導入されず、またセンダイウイルスは細胞質で増殖するため低分子RNAを発現することはできない(非特許文献3:Exp Hematol. 2011 39:47)。
【0004】
ボルナ病ウイルス(Borna disease virus:以下、「BDV」ともいう)は、非分節のマイナス鎖、1本鎖のRNAをゲノムとして持つモノネガウイルス目に属するウイルスであり、神経細胞に感染指向性があるという特徴を有する。さらに、BDVは細胞核で複製するウイルスであるが、その感染は非細胞障害性であり長期に持続感染するという特徴や、感染可能な宿主域が極めて広いという特徴も有する。
【0005】
BDVを利用する任意の目的遺伝子の細胞への導入技術として、緑色蛍光蛋白質(GFP)の発現カセットをBDVゲノムの5'末端側の非翻訳領域に挿入し、この組換えウイルスを高活性のポリメラーゼと共にラットに感染させると、ラットの神経細胞においてGFP遺伝子が発現したことが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
さらにBDVを用いる技術において、感染可能な宿主域が広く、安全性及び目的遺伝子の導入効率が高く、安定性及び持続性が良好なウイルスベクターが開発されている。BDVを用いるベクターとして、例えば、(a)BDVゲノムをコードするcDNAのG遺伝子の翻訳領域に目的遺伝子を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターについて開示がある(特許文献1:特開2010-22338号公報)。BDVの神経細胞への感染指向性を利用し、マウス及びラットの脳内へ8ヶ月以上の長期に渡り安定持続的に目的遺伝子を発現するBDVベクターを本発明者らは作製し、本技術に関して特許を取得した(特許文献2:特許5299879)。
【0007】
自己消化型リボザイムにおいて、リボザイムとテオフィリンに結合しうるアプタマーを組み込んでなる細胞機能を制御するための遺伝子制御スウィッチプラットフォーム(switch platform)について報告がある(非特許文献4)。
【0008】
しかしながら、BDVベクターを用いた遺伝子導入方法によれば、導入した遺伝子を適切なタイミングで発現誘導させることが困難であるとの問題がある。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】J Clin Invest. 2008 118:1502
【非特許文献2】Science. 2003 17;302
【非特許文献3】Exp Hematol. 2011 39:47
【非特許文献4】PNAS. 2007 14: 14283-14288
【0010】

【特許文献1】特開2010-22338号公報
【特許文献2】特許第5299879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ウイルスベクターを利用して任意の目的遺伝子(外来性遺伝子)の導入操作により目的遺伝子を発現させる方法において、所望のタイミングに目的遺伝子の発現を誘導可能とするウイルスベクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ボルナ病ウイルス(BDV)ゲノムの部分若しくは全部を含むBDVベクターであって、導入する目的遺伝子の非翻訳領域に自己消化型リボザイム配列を組み込んでなるBDVベクターによれば、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち本発明は、以下よりなる。
1.(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAに目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターであって、さらに(a)における当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクター。
2.目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子とM遺伝子との間の非翻訳領域に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、前項1に記載のウイルスベクター。
3.目的遺伝子(A)が、(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAの、P遺伝子の翻訳領域の下流に連結する非翻訳領域内に挿入されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されてなる、前項1に記載のウイルスベクター。
4.リボザイム(R)が、自己消化型リボザイムである、前項1~3のいずれかに記載のウイルスベクター。
5.リボザイム(R)の制御機構(R')が、テオフィリンに結合しうるアプタマーである、前項1~4のいずれかに記載のウイルスベクター。
6.リボザイム(R)をコードするcDNAとリボザイム(R)の制御機構(R')を含むカセットを、リボザイム(R)制御カセットとし、当該リボザイム(R)制御カセットを特定する塩基配列を1単位としたときに、1単位又は2~5単位から選択される任意の繰り返し単位での塩基配列を含む、前項5に記載のウイルスベクター。
7.リボザイム(R)制御カセットが、配列番号3に示す塩基配列で特定される、前項6に記載のウイルスベクター。
GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTTGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACGGAGGACGAAACAGC(配列番号3)
8.前項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を可逆的に不活性化又は活性化することにより、前記(a)に含まれる当該目的遺伝子(A)の発現を制御する工程を含む、目的遺伝子(A)の発現制御方法。
9.前項1~7のいずれかに記載のウイルスベクターを用いて前記(a)に含まれる目的遺伝子(A)の発現を制御する方法であって、リボザイム(R)を不活性化することにより当該目的遺伝子(A)の発現を促進する、前項8に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。
10.リボザイム(R)を不活性化することが、テオフィリンを作用させることによる、前項8又は9に記載の目的遺伝子(A)の発現制御方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の(a)ボルナ病ウイルスゲノムをコードするcDNAに任意の目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターであって、さらに(a)における当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクターによれば、制御機構(R')を操作することで、BDVベクターに搭載した当該目的遺伝子(A)の発現を所望のタイミングで誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に使用可能なBDVゲノムの構造例を示す図である。
【図2】リボザイム(R)制御カセットによる自己消化制御機構を示す模式図である。
【図3】リボザイム(R)制御カセットを含む本発明のBDVベクターの構造を示し、さらにリボザイム(R)制御カセットをタンデムに連結した場合の目的遺伝子(A)であるルシフェラーゼ(Gluc)の発現制御を確認した結果を示す図である。(実施例1、2)
【図4】リボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターに、テオフィリンを添加したときの目的遺伝子(Gluc)の発現誘導を確認した結果を示す図である。(実施例3)
【図5】リボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターがVero細胞に感染したことを確認した図である。(実施例4)
【図6】リボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターがVero細胞に感染したことを蛋白質レベルで確認した図である。(実施例4)
【図7】タンデムにリボザイム(R)制御カセットを連結したBDVベクターがVero細胞に感染したことを確認した図である。(実施例4)
【図8】タンデムにリボザイム(R)制御カセットを連結したBDVベクターがVero細胞に感染したことをRNAレベルで確認した図である。(実施例4)
【図9】リボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターに、各濃度のテオフィリンを添加したときの目的遺伝子(Gluc)の発現誘導を確認した結果を示す図である。(実施例5)
【図10】リボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターが可逆的に目的遺伝子(Gluc)の発現を制御することが可能であることを示す図である。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ウイルスベクターを利用して任意の目的遺伝子(外来性遺伝子)の導入操作を行うに際し、所望のタイミングに当該目的遺伝子の発現を誘導可能とするウイルスベクターに関する。より具体的には(a)BDVゲノムをコードするcDNAに、当該目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNA、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されていることを特徴とするウイルスベクターであって、さらに(a)における目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)をコードするcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクターに関する。

【0017】
1.BDVゲノム
本発明におけるBDVゲノムは、Bornaviridae(ボルナウイルス科)に属するウイルス又はその変異株の遺伝子であればよい。ボルナウイルス科に属するウイルスとしては、例えば、He80、H1766、StrainV、huP2br等のウイルス株が挙げられる。変異株としては、例えば、No/98、Bo/04w、HOT6等が挙げられる。これらのゲノム配列は、例えば、以下から入手可能である。

【0018】
He80;GenBank Accession# L27077, Cubitt,B., Oldstone,C. and de la Torre,J.C. Sequence and genome organization of Borna disease virus. J. Virol. 68 (3), 1382-1396 (1994).

【0019】
H1766;GenBank Accession# AJ311523, Pleschka,S., Staeheli,P., Kolodziejek,J., Richt,J.A., Nowotny,N. and Schwemmle,M. Conservation of coding potential and terminal sequences in four different isolates of Borna disease virus. J. Gen. Virol. 82 (PT 11), 2681-2690 (2001).

【0020】
StrainV;GenBank Accession# U04608, Briese,T., Schneemann,A., Lewis,A.J.,
Park,Y.S., Kim,S., Ludwig,H. and Lipkin,W.I. Genomic organization of Borna disease virus. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91 (10), 4362-4366 (1994).

【0021】
huP2br;GenBank Accession# AB258389, Nakamura, Y., Takahashi, H., Shoya, Y., Nakaya, T., Watanabe, M., Tomonaga, K., Iwahashi, K., Ameno, K., Momiyama, N., Taniyama, H., Sata, T., Kurata, T., de la Torre, J. C., Ikuta, K. Isolation of Borna disease virus from human brain tissue, J. Virol 74 (2000) 4601-4611.

【0022】
No/98;GenBank Accession# AJ311524, Nowotny,N. and Kolodziejek,J. Isolation and characterization of a new subtype of Borna disease virus. J. Gen. Virol. 74, 5655-5658 (2000).

【0023】
Bo/04w;GenBank Accession# AB246670, Watanabe,Y., Ibrahim,M.S., Hagiwara,K., Okamoto,M., Kamitani,W., Yanai,H., Ohtaki,N., Hayashi,Y., Taniyama,H., Ikuta,K. and Tomonaga,K. Characterization of a Borna disease virus field isolate which shows efficient viral propagation and transmissibility. Microbes and Infection 9 (2007) 417-427.

【0024】
また、BDVとしての機能が保持されている限り、これらのゲノム配列の一部が他の塩基と置換、削除又は新たに塩基が挿入されていてもよく、さらには塩基配列の一部が転位されていてもよい。これら誘導体のいずれも本発明に用いることができる。上記一部とは、例えばアミノ酸残基換算で、1~数個(1~5個、好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個)であってよい。BDVゲノムをコードするcDNAは、当該ウイルスゲノム情報に基づいて調製することができる。例えば、RNAゲノムから、配列逆転酵素を使用してcDNAを調製することができる。また、RNAゲノムの配列に基づき、DNA合成機を用いて化学合成することもできる。

【0025】
2.BDVゲノムの全部又は部分を含むBDVベクター
天然型のBDVゲノムには、少なくとも6つの蛋白質、すなわち核蛋白質(N蛋白質)、X蛋白質、リン酸化蛋白質(P蛋白質)、マトリックス蛋白質(M蛋白質)、表面糖蛋白質(G蛋白質)及びRNA依存性RNAポリメラーゼ(L蛋白質)がコードされている。図1において、N、X、P、M、G及びLは、それぞれの遺伝子のORFを模式的に示している。本明細書中、G蛋白質、M蛋白質、N蛋白質、P蛋白質及びL蛋白質をコードするウイルスRNAを、それぞれG遺伝子、M遺伝子、N遺伝子、P遺伝子及びL遺伝子という。また、例えば、「G遺伝子のcDNA」とは、G遺伝子をコードするcDNAを意味する。

【0026】
本明細書におけるBDVゲノムの全部又は部分を含むBDVベクターは、(a)BDVゲノム(図1参照)のcDNAに目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNAを含み、さらに、(b)リボザイムをコードするcDNA及び(c)プロモーター配列を含み、該(a)の上流及び下流に(b)が配置され、かつ(a)及び(b)が(c)の下流に配置されており、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)のcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されていることを特徴とする。

【0027】
BDVゲノムのcDNA (a)に目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスは、具体的には以下の態様が例示されるが、これらに限定されるものではない。

【0028】
(1)本発明の組換えウイルスの一態様は、BDVゲノム(a)のcDNAにおいて、N遺伝子、X遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、G遺伝子及びL遺伝子の各cDNAを含み、P遺伝子とM遺伝子との間に目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNAを含み、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)のcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されている。

【0029】
(2)本発明の組換えウイルスの他の一態様は、BDVゲノム(a)のcDNAにおいて、G遺伝子欠損型であり、N遺伝子、X遺伝子、P遺伝子、M遺伝子及びL遺伝子の各cDNAを含み、P遺伝子とM遺伝子との間に目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNAを含み、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)のcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されている。

【0030】
(3)本発明の組換えウイルスの更なる他の一態様は、BDVゲノム(a)のcDNAにおいて、M遺伝子及びG遺伝子の各遺伝子欠損型であり、N遺伝子、X遺伝子、P遺伝子、及びL遺伝子の各cDNAを含み、P遺伝子の翻訳領域の下流に連結する非翻訳領域内に目的遺伝子(A)を挿入した組換えウイルスのcDNAを含み、当該目的遺伝子(A)の非翻訳領域に、リボザイム(R)のcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されている。

【0031】
本明細書においてBDVゲノム(a)のcDNAに挿入される目的遺伝子(A)の種類や長さは特に限定されず、目的に応じて所望の遺伝子を用いることができる。例えば、蛋白質又はペプチドをコードする遺伝子のcDNA、siRNA、short hairpin RNA (shRNA)、microRNA (miRNA)をコードするcDNA、RNAアプタマーをコードするcDNA等を用いることができる。例えば当該目的遺伝子のcDNAの3'末端とG遺伝子のスプライスドナーサイトとの間に、さらにコンセンサス配列が配置されていることが好ましい。これにより、目的遺伝子の発現効率がより高くなる。コンセンサス配列は、細胞や導入する目的遺伝子に応じて適宜決定すればよい。

【0032】
本発明のBDVベクターにおいて、目的遺伝子(A)の非翻訳領域には、リボザイム(R)をコードするcDNAと、リボザイム(R)の制御機構(R')が配置されている。本明細書において使用可能なリボザイム(R)は自己消化型リボザイムであり、例えばハンマーヘッド型リボザイムともいう。リボザイム(R)の制御機構(R')としては、例えばテオフィリンに結合しうるアプタマーが挙げられる。リボザイム(R)は当該アプタマーにテオフィリンが結合することで、リボザイム(R)の活性を制御することができる。

【0033】
本明細書において、リボザイム(R)及びリボザイム(R)の制御機構(R')を含むカセットを「リボザイム(R)制御カセット」という場合もある。当該リボザイム(R)制御カセットを特定する塩基配列を1単位としたときに、本発明のBDVベクターには、1単位又は2~5単位から選択される任意の繰り返し単位での塩基配列を含むことができる。リボザイム(R)制御カセットとしては、例えば非特許文献4に示す遺伝子制御スウィッチプラットフォーム(switch platform)であるL2bulge9(L2b9)を用いることができる。

【0034】
リボザイム(R)をコードするcDNAの塩基配列は、具体的には例えば配列番号1で示すことができる。また、制御機構(R')の塩基配列は、例えば配列番号2で示すことができる。これらを組み合わせたリボザイム(R)制御カセットを特定する塩基配列は、例えば配列番号3で示すことができる。また、下記配列番号1~3に示す各塩基配列は、本発明の目的を達成しうる範囲内で、1~複数個のヌクレオチドが、置換、欠失及び付加されたものであってもよい。また、配列番号1~3に示す塩基配列は各々例示であって、リボザイム(R)をコードするcDNA、制御機構(R')及びリボザイム(R)制御カセットの各々を特定する塩基配列は、本発明の目的を達成しうる範囲内で各々配列番号1~3で特定される各塩基配列とは異なる配列であってもよい。

【0035】
リボザイム(R)(sTRSVのハンマーヘッド型リボザイム):GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTGAGGACGAAACAGC(配列番号1)
制御機構(R'):TGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACG(配列番号2)
リボザイム(R)制御カセット:GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTTGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACGGAGGACGAAACAGC(配列番号3)
上記配列番号3に示す塩基配列中、下線をひいた部位は、配列番号2に示す塩基配列(制御機構(R'))と同じである。

【0036】
本明細書において(b)で示されるリボザイムは、組換えBDVゲノム(a)のcDNAから転写されたBDVゲノムRNAを切断できるリボザイムであればよい。本発明のBDVベクターに含まれるリボザイム(b)は、上述のリボザイム(R)とはBDVゲノム(a)のcDNAにおける位置が相違するものである。(b)で示されるリボザイムのcDNAは、例えば、D型肝炎ウイルスリボザイム(HDVRz)、ヘアピンリボザイム、人工リボザイム等のリボザイムであってもよいし、ハンマーヘッドリボザイム(HamRz)であってもよい。また、リボザイム活性を有する限り、上記リボザイムの改変型リボザイムのcDNAも使用することができる。具体的には、特許文献2に示すリボザイムのcDNAを適用することができる。

【0037】
本明細書において(c)で示されるBDVベクターに含まれるプロモーター配列としては、RNAポリメラーゼII系のプロモーター配列、RNAポリメラーゼI系プロモーター配列、T7ポリメラーゼ系プロモーター配列が挙げられるが、中でもRNAポリメラーゼII系のプロモーター配列が好ましい。RNAポリメラーゼII系のプロモーターとしては、CMVプロモーター、CAGGSプロモーターが挙げられる。中でも、CAGGSプロモーターが特に好適である。具体的には、特許文献2に示すプロモーターを適用することができる。

【0038】
本発明で使用されるBDVベクターには、ウイルスのG遺伝子のcDNAを含むことができる。これにより、BDVベクターから産生される遺伝子導入用組換えBDVを自己複製型(持続感染型)のBDVとすることができる。自己複製型とは、BDVベクターのゲノム内に完全長のウイルスG遺伝子のcDNAを含むことにより、BDVベクターから産生された遺伝子導入用組換えウイルスが伝播能力を有する完全なウイルス粒子として発現され、自ら感染を広げることができるタイプとなることをいう。

【0039】
本発明におけるウイルスのG遺伝子としては、エンベロープウイルスのG蛋白質として機能する蛋白質をコードする遺伝子であればよく、例えばBDVのG遺伝子、BDV以外のウイルスのG遺伝子が挙げられる。BDV以外のウイルスのG遺伝子としては、ラブドウイルス科ヴェシキュロウイルス属(Vesicular Stomatitis Virus: VSV)ウイルスのG遺伝子が好適である。具体的には、特許文献2に示すウイルスのG遺伝子を適用することができる。

【0040】
(e)その他の塩基配列
本発明で使用されるBDVベクターは、例えばSV40ウイルス複製開始点/プロモーター領域配列の1部又は全部の配列を含むことができる。また、BDVベクターがSV40ウイルス複製開始点/プロモーター領域配列の1部又は全部の配列を含む場合には、該配列は(a)、(b)及び(c)の下流に配置されていることが好ましい。SV40ウイルスDNAの複製開始点/プロモーター領域配列の一部としては、SV40複製開始点/プロモーター領域内の5'側の113塩基からなる断片が好適である。SV40ウイルス複製開始点/プロモーター領域配列は、例えば、D.A. Dean, B.S. Dean, S. Muller, L.C. Smith, Sequence requirements for plasmid nuclear import, Exp. Cell. Res. 253 (1999) 713-722等に記載されている。

【0041】
本発明で使用されるBDVベクターは、本発明の効果を奏する限り、さらに、蛋白質の発現に有利である1又は複数の因子、例えば、エンハンサー、アクティベーター(例えばトランス作用因子)、シャペロン、プロセッシングプロテアーゼをコードする1又は複数の核酸配列も含み得る。また、本発明の方法で使用されるBDVベクターは、選択された細胞内で機能的であるいずれかの因子を有していてもよい。

【0042】
本発明で使用されるBDVベクターは、線状DNAであっても環状DNAであってもよいが、細胞に導入する際には環状であることが好ましい。環状のBDVベクターとしては、市販のプラスミドベクター中に配置されているもの等が挙げられる。市販のプラスミドベクターとしては、ウイルスベクターを導入する細胞内で自己複製可能なものであればよく、例えば、pBluescript SKII(-)、pCAGGS、pCXN2、pCDNA3.1等が挙げられる。具体的には、特許文献2を参照することができる。

【0043】
2.BDVベクターの作製方法
本発明で使用されるBDVベクターの作製方法としては特に限定されず、自体公知の遺伝子工学的手法を用いることができる。例えば、Yanai et al., Microbes and Infection (2006), 8 1522-1529の"Materials and methods"の2.2 Plasmid constructionに記載されている方法において、CAT遺伝子をG遺伝子欠損BDVのゲノム配列に置き換え、さらに目的遺伝子をP-M遺伝子間領域に組み込むことにより環状のウイルスベクター(一過性感染型)を作製することができる。また、この一過性感染型のウイルスベクターにおいて、L遺伝子をコードしている領域の下流にBDV又はVSVのG遺伝子をコードするcDNAを制限酵素を用いて挿入することにより、自己複製型(持続感染型)のウイルスベクターを作製することもできる。より詳細には、特許文献2に記載の方法を参照することができる。

【0044】
3.遺伝子導入用組換えBDV
本発明の方法で使用される遺伝子導入用組換えBDVは、上述した本明細書に記載のBDVベクターを含む。遺伝子導入用組換えBDVの作製方法は、特許文献2に記載の方法を参照することができる。

【0045】
4.目的遺伝子の細胞への導入方法
上記遺伝子導入用組換えBDVを細胞に感染させることにより、該BDVに組み込まれた目的遺伝子を細胞に導入することができる。遺伝子導入用組換えBDVの細胞への感染は、精製して得られた遺伝子導入用組換えBDVを含む培養液を、細胞の培養系に加えることにより達成される。より詳細には、特許文献2に記載の方法を参照することができる。

【0046】
5.目的遺伝子の発現の制御方法
本発明は、本発明のBDVベクターを用いることによる、任意の目的遺伝子(A)の発現誘導の制御方法にも及ぶ。目的遺伝子(A)の発現制御は、上述のリボザイム(R)の制御機構(R')により可逆的にリボザイム(R)を不活性化又は活性化することにより達成される。上述したごとく、リボザイム(R)を可逆的に不活性化又は活性化させうる制御機構(R')の例として非特許文献4に示す遺伝子制御スウィッチプラットフォーム(switch platform)であるL2bulge9(L2b9)が挙げられる。L2b9では、テオフィリンに結合しうるアプタマーを含み、当該アプタマーにテオフィリンを作用させることで、リボザイム(R)を不活化することができる。培養系からテオフィリンを除去することで可逆的にリボザイム(R)を活性化することができる。この機構を用いることで、本発明のウイルスベクターは、テオフィリンを作用させていないときは、リボザイム(R)が活性化した状態であり、前記(a)に含まれる当該目的遺伝子(A)の発現が抑制されている。一方、テオフィリンを作用させることで、制御機構(R')によりリボザイム(R) の活性化が抑制される。その結果、目的遺伝子(A)がリボザイム(R)に抑制されることなく発現させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、これらの実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)ウイルスベクターの構築
本実施例では、目的遺伝子(A)及びリボザイム(R)制御カセットを含むBDVベクターを作製した(図3参照)。目的遺伝子(A)としてレポーター蛋白質であるルシフェラーゼ(Gaussoa Luciferase: Gluc)をコードするcDNAを用いた。リボザイム(R)制御カセットは、配列番号1に示される塩基配列からなるリボザイム(R)のcDNA(sTRSVのハンマーヘッド型リボザイム)及び配列番号2に示される塩基配列からなるテオフィリンに結合しうるアプタマーのcDNA(制御機構(R'))を含む。リボザイム(R)制御カセットは、配列番号3に示される塩基配列により特定される。
【実施例】
【0049】
本実施例では配列番号3で示される塩基配列を1単位のリボザイム(R)制御カセットとし、1~3単位のリボザイム(R)制御カセットを直列に連結したカセットを含むBDVベクターを構築した。リボザイム(R)制御カセット1単位をGluc-L2b9×1、2単位をGluc-L2b9×2及び3単位をGluc-L2b9×3とした。具体的には、Gluc-L2b9×1には、配列番号3の配列が1つ、Gluc-L2b9×3には、配列番号3の配列が3つタンデムに含まれる。また、本実施例で使用されるルシフェラーゼ(Gluc)をコードするcDNAは配列番号4で特定される。本実施例におけるリボザイム(R)制御カセットは、非特許文献4に示すL2b9を適用した。
【実施例】
【0050】
リボザイム(R):GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTGAGGACGAAACAGC(配列番号1)
制御機構(R'):TGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACG(配列番号2)
リボザイム(R)制御カセット(リボザイム(R)+制御機構(R')=L2b9:GCTGTCACCGGATGTGCTTTCCGGTCTGATGAGTCCGTTGTCCAATACCAGCATCGTCTTGATGCCCTTGGCAGTGGATGGGGACGGAGGACGAAACAGC(配列番号3)
ルシフェラーゼ(Gluc):ATGGGAGTCAAAGTTCTGTTTGCCCTGATCTGCATCGCTGTGGCCGAGGCCAAGCCCACCGAGAACAACGAAGACTTCAACATCGTGGCCGTGGCCAGCAACTTCGCGACCACGGATCTCGATGCTGACCGCGGGAAGTTGCCCGGCAAGAAGCTGCCGCTGGAGGTGCTCAAAGAGATGGAAGCCAATGCCCGGAAAGCTGGCTGCACCAGGGGCTGTCTGATCTGCCTGTCCCACATCAAGTGCACGCCCAAGATGAAGAAGTTCATCCCAGGACGCTGCCACACCTACGAAGGCGACAAAGAGTCCGCACAGGGCGGCATAGGCGAGGCGATCGTCGACATTCCTGAGATTCCTGGGTTCAAGGACTTGGAGCCCATGGAGCAGTTCATCGCACAGGTCGATCTGTGTGTGGACTGCACAACTGGCTGCCTCAAAGGGCTTGCCAACGTGCAGTGTTCTGACCTGCTCAAGAAGTGGCTGCCGCAACGCTGTGCGACCTTTGCCAGCAAGATCCAGGGCCAGGTGGACAAGATCAAGGGGGCCGGTGGTGACTAA(配列番号4)
【実施例】
【0051】
BDVベクターとして、BDVゲノムのP遺伝子及びM遺伝子の間のシストロン領域にGluc遺伝子及びL2b9を組み込んだ遺伝子組換えBDV(rBDV P/M-Gluc)を用いた。rBDV P/M-Glucは、Vero細胞(アフリカミドリザル・腎臓上皮細胞由来)中で増殖させた。6×10cmディッシュで100 %コンフルエントのBDV産生細胞から増殖したBDV(rBDV P/M-Gluc)を回収し、1.2 mlのFCSを含むDMEM培地に懸濁したものを30秒ずつ4回超音波処理し、4℃、1,200gで25分間遠心分離を行った。rBDV P/M-Glucを含む上清を回収し、無細胞BDV(rBDV P/M-Gluc)とした。無細胞BDV(rBDV P/M-Gluc)は-80℃で保存した。
【実施例】
【0052】
(実施例2)ルシフェラーゼ(Gluc)発現制御の確認
本実施例では、実施例1で作製したBDVベクターを用いて、レポーター蛋白質であるGlucの発現に及ぼすリボザイム(R)制御カセットの作用を確認した。
【実施例】
【0053】
本実施例では、実施例1で作製したGluc-L2b9×1、Gluc-L2b9×2及びGluc-L2b9×3の各BDVベクターをVero細胞に持続感染させ、2 % FCS(ウシ仔血清)を含むDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地中で24時間37℃で培養し、各ベクターについてGluc発現量を測定した。NEW ENGLAND Biolabs Biolux(R) Gaussia Luciferase Assay Kitのプロトコルに則り、Gluc活性試験(Gluc assay)を行った。1μlのBioLux GLuc Substrateに対し100μlのBioLux GLuc アッセイ用緩衝液(Assay Buffer)を加えよく混和し、これをGLuc アッセイ溶液(assay solution)とした。培養24時間後のrBDV Gluc-L2b9x1、rBDV Gluc-L2b9×2及びrBDVGluc-L2b9×3感染Vero細胞の培地上清を1μl採取し、1000μlの2 % FCSを含むDMEMに希釈し、これを検体とした。試験管中で、Gluc活性試験溶液(Gluc assay solution) 10μlと検体10μlを混和し、発光光度計(Berthold Technologies Lumat LB 9507 Single Tube Luminometer)を用いて蛍光強度を測定し、Gluc発現量を確認した。
【実施例】
【0054】
リボザイム(R)制御カセットが1単位の場合のGluc発現量を1としたときの相対発現量を図3に示した。その結果、リボザイム(R)制御カセットの単位が増加する場合に、Glucの発現が抑制される傾向が観察された(図3)。リボザイム(R)制御カセットは、上述の如く、リボザイム(R)及び制御機構(R')を含む。リボザイム(R)制御カセットに含まれる制御機構(R')は、テオフィリンに結合しうるアプタマーのcDNAを含み、テオフィリンを制御機構(R')に作用させない場合は、リボザイム(R)のリボザイム活性は維持されている。そのため、テオフィリンを加えない場合は、連結したリボザイム(R)制御カセットの単位数が多いほど、リボザイム(R)によりGlucの発現が抑制される傾向が認められた。
【実施例】
【0055】
(実施例3)テオフィリンによるルシフェラーゼ(Gluc)発現制御の確認1
本実施例では、テオフィリン10mMを作用させた場合のGlucの発現を調べた。
【実施例】
【0056】
実施例1で作製したGluc-L2b9×1、Gluc-L2b9×2及びGluc-L2b9×3の各BDVベクター及びGluc-L2b9を含まないBDVベクターについて、テオフィリン10mMを各々作用させた。各ベクターについて、テオフィリン10mMを作用させた時のGlu発現量をテオフィリン0mMを作用させた時のGlu発現量で除した値をON/OFF ratioとして算出し図4に示した。連結したリボザイム(R)制御カセットの単位数が大きいほど、Glucの発現量が相対的に高いことが確認された。
【実施例】
【0057】
(実施例4)BDVベクターを作用させた場合の細胞に及ぼす影響
本実施例ではVero細胞に本発明のBDVベクターを作用させた場合の細胞に及ぼす影響を確認した。rBDV Gluc-L2b9×1感染Vero細胞を2×104 cells/wellの濃度で8ウェルチャンバースライド(well chamber slide)に播種し、90~100 %コンフルエントになるまで37℃で培養した。免疫染色法で細胞核、BDV N蛋白質、BDV M蛋白質の染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で蛍光を観察した。Vero細胞にrBDV Gluc-L2b9×1が感染していることが確認された(図5)。
【実施例】
【0058】
24ウェルプレート(well plate)に、Vero細胞及びrBDV Gluc-L2b9×1、rBDV GFP感染Vero細胞をそれぞれ4×104 cells/wellの濃度で播種し、37℃で培養した。24時間後にそれぞれの細胞を100μlの1×sample bufferに溶解し、これを検体とした。検体をSDS-PAGEに供した後、抗BDV核蛋白質抗体、抗GFP抗体及び抗Tubulin抗体を用いてウエスタンブロットを行った。たしかにVero細胞にrBDV Gluc-L2b9×1が感染していることが蛋白質レベルで確認された(図6)。
【実施例】
【0059】
Vero細胞及びrBDV Gluc-L2b9×1、×2、×3感染Vero細胞を2×104 cells/wellの濃度で8ウェルチャンバースライド(well chamber slide)に播種し、90~100 %コンフルエントになるまで37℃で培養した。免疫染色法でBDV M蛋白質の染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で蛍光を観察した。その結果、Vero細胞にrBDV Gluc-L2b9×1、×2、×3が感染していることが確認された(図7)。
【実施例】
【0060】
Vero細胞及びGluc-L2b9×1、Gluc-L2b9×2及びGluc-L2b9×3の各BDVベクター各々の感染Vero細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応を用いてcDNAを作成した。cDNAを鋳型に、下記配列番号5及び配列番号6に示す塩基配列のプライマーを用いてBDV-P/M間を増幅し、アガロースゲル電気泳動でPCR産物のサイズを確認した。予想されるPCR産物のサイズはGFP:約1000 bp、rBDV Gluc-L2b9×1:約1000 bp、rBDV Gluc-L2b9×2:約1150 bp、rBDV Gluc-L2b9×3:約1300 bpである。
【実施例】
【0061】
BDV_P_F2 : GACCTCCTCTACGCATCAAC(配列番号5)
BDV_M_R2 : CATCCAGGGACGATTACCTT(配列番号6)
その結果、Gluc-L2b9×1、Gluc-L2b9×2及びGluc-L2b9×3のBDVベクターをそれぞれ検出することができた(図8)。
【実施例】
【0062】
(実施例5)テオフィリンによるレポーター遺伝子の誘導
本実施例では、実施例1で作製したGluc-L2b9×1 BDVベクターについて、テオフィリンを作用させたときのレポーター遺伝子の誘導作用を確認した。対照は、Gluc-L2b9を含まないBDVベクターとした。48ウェルプレート(well plate)に、rBDV Gluc感染Vero細胞及びrBDV Gluc-L2b9×1感染Vero細胞を4×104 cells/wellの濃度で播種し、37℃で培養した。3時間後、細胞がウェル底面に接着しているのを確認後、テオフィリン(0、1、3、10 mM)を添加した2%FCSを含むDMEM培地に培地交換し、37℃で培養した。24時間後に培地上清をそれぞれ1μl採取し、1000μlの2%FCSを含むDMEMに希釈してGluc活性試験に供した。
【実施例】
【0063】
その結果、テオフィリン添加量が多いほどGlu発現量が大きいことが示された。特にテオフィリン10mMを添加した場合には、本発明のリボザイム(R)制御カセットを挿入していないベクターを同程度にGluが発現した(図9)。
【実施例】
【0064】
(実施例6)テオフィリンによるレポーター遺伝子の誘導可逆的反応
本実施例では、実施例1で作製したGluc-L2b9×1 BDVベクターについて、テオフィリンを作用させたときのレポーター遺伝子の誘導作用の可逆的反応を確認した。
【実施例】
【0065】
48ウェルプレート(well plate)に、rBDV Gluc-L2b9×1感染Vero細胞を4×104 cells/wellの濃度で撒き、37℃で培養した。3時間後、細胞がWell底面に接着しているのを確認後、培地をテオフィリン添加(0、3 mM)した2%FCS DMEMに入れ替え、37℃で培養した。24時間後に培地上清をそれぞれ1μl採取し、1000μlの2%FCS DMEMに希釈してGluc活性試験に供した(Day1)。その後、培地をテオフィリン無添加の2%FCS DMEMに入れ替えて、37℃で培養した。24時間後に培地上清をそれぞれ1μl採取し、1000μlの2%FCS DMEMに希釈してGluc活性試験に供した(Day2)。同様に、培地をテオフィリン無添加の2%FCS DMEMに入れ替えて、37℃で培養した。24時間後に培地上清をそれぞれ1μl採取し、1000μlの2%FCS DMEMに希釈してGluc活性試験に供した(Day3)。
【実施例】
【0066】
その結果、テオフィリン3mMを添加した培地でルシフェラーゼ発現を誘導した後、テオフィリン無添加培地で培養すると、ルシフェラーゼの発現誘導を行わない場合と同じレベルまで発現が抑制され、目的遺伝子の発現を可逆的に制御可能であることが認められた(図10)。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上詳述したように、本発明のリボザイム(R)の制御機構(R')が配置されているウイルスベクターによれば、制御機構(R')を操作することで、BDVベクターに搭載した目的遺伝子(A)の発現を所望のタイミングで誘導することが可能となる。
【0068】
BDVベクターにより細胞に導入された遺伝子は、ウイルスが細胞に持続感染しているために数ヶ月にわたり安定に発現する。そこで、本発明のBDVベクターを用いることで、数ヶ月にわたり安定に維持されている遺伝子を所望のタイミングで可逆的に発現誘導させることが可能となる。これにより、遺伝子治療の際には、レシピエントのゲノムの遺伝子の挿入等による汚染を起こすことなく、長期間にわたり安定的に所望の遺伝子治療を施すことが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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