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明細書 :ブレード複合型開放流路装置およびその接合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 ブレード複合型開放流路装置およびその接合体
国際特許分類 B81B   1/00        (2006.01)
FI B81B 1/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2016-515181 (P2016-515181)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り インターネットの、http://www.nature.com/srep/2013/131023/srep03024/pdf/srep03024.pdfにおいて、2013年10月23日に、公開のタイトル「Water transport mechanism through open capillaries analyzed by direct surface modifications on biological surfaces」として発表。
国際出願番号 PCT/JP2015/062233
国際公開番号 WO2015/163365
国際出願日 平成27年4月22日(2015.4.22)
国際公開日 平成27年10月29日(2015.10.29)
優先権出願番号 2014089650
優先日 平成26年4月23日(2014.4.23)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】針山 孝彦
【氏名】石井 大佑
【氏名】下村 政嗣
【氏名】奥村 剛
【氏名】谷 茉莉
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
【識別番号】100190067、【弁理士】、【氏名又は名称】續 成朗
審査請求
テーマコード 3C081
Fターム 3C081AA13
3C081BA09
3C081BA30
3C081CA02
3C081CA05
3C081CA28
3C081CA29
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA03
3C081DA10
3C081DA22
3C081DA27
3C081EA26
3C081EA31
要約 本発明のブレード複合型開放流路装置は、複数の流路(6)が隣接する流体流路装置であって、流路(6)の底部を構成する基板(2)と、基板(2)の表面に立設されて流路(6)の側壁を構成する複数のブレード(3)とを有し、複数のブレード(3)は、流体(4)の流れの上流側から下流側への方向に間隔(5)をあけて複数立設され、この間隔(5)において隣接する流路(6)間の流体(4)の導通が可能にされており、流路(6)の一端が流体(4)に接することで、流体(4)の流れが可能とされていることを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の流路が隣接する流体流路装置であって、流路の底部を構成する基板と、
基板の表面に立設されて流路の側壁を構成する複数のブレードとを有し、
前記複数のブレードは、前記流体の流れの上流側から下流側への方向に間隔をあけて複数立設され、この間隔において隣接する流路間の流体の導通が可能にされており、
流路の一端が流体に接することで、流体の流れが可能とされている
ことを特徴とするブレード複合型開放流路装置。
【請求項2】
前記流体の流れが、重力が関与しない水平方向の流れもしくは重力に反する方向の流れであることを特徴とする請求項1に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項3】
前記ブレードの流体の流れの上流側から下流側への方向における間隔が、微小な流路装置においては、0.1μmから100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項4】
前記複数のブレードが、第1ブレードと、第1ブレードよりも流体の流れの上流側から下流側への方向の長さの長い第2ブレードとの複合構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項5】
前記第1ブレードを複数の流路の最外部に配置し、前記第2ブレードを第1ブレードによって囲まれた中央部に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブレード複合型開放流路装置において、一定間隔ごとに第1ブレードを中央部に配置した境界部が設けられていることを特徴とするブレード複合型開放流路装置。
【請求項7】
前記第1ブレードと第2ブレードの流体の流れの上流側から下流側への方向の長さが、微小な流路装置においては、10μmから100μmの範囲内であることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項8】
前記複数のブレードの形成方法が、フォトリソグラフィであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項9】
前記基板やブレードの表面が親水性または疎水性処理されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のブレード複合型開放流路装置を単位ブロックとして、複数の前記単位ブロックを接合させていることを特徴とするブレード複合型開放流路装置接合体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード複合型開放流路装置およびその接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内径が極めて小さな管状構造や、小型デバイス内部に設けられた微小空間を流路として用いて流体を輸送する微小流路装置が知られている。このような微小流路装置の用途としては、例えば、医療用カテーテル、分析や反応のためのマイクロ流体デバイス等が例示される。この微小流路装置を用いることにより、送液装置や分析装置、反応装置の小型化、分析や反応試料の微量化、送液や分析、反応システムの自動化および省エネルギー化等、様々な効果が得られるとされている。
【0003】
しかしながら、従来の微小流路装置においては、通常は、流路内に流体を送り込む際の外部エネルギーとして高圧が必要であり、外部エネルギーが得られない環境下においては、駆動力が確保できないため流体輸送が困難であった。また、従来の微小流路装置においては、流路の構造が微細かつ緻密であるため、不純物の付着等によって流路阻害が生じる上、閉鎖流路であるために洗浄効率が悪く、メンテナンス性が低いという問題点が指摘されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、生物の体表面に存在するナノ構造のもつ様々な特性について研究を進めており、特に、海辺に生息するフナムシ(Ligia exotica)の脚部に存在する微細突起が、優れた水輸送メカニズムを備えた開放流路を形成していることを発見した。本発明者は、この開放流路によれば、従来、主としてマイクロエレクトロニクスの観点からの検討がなされてきた微小流路の構造について全く新しいアプローチが可能ではないかと想起した。そこで、本発明者は、フナムシの脚部の微小突起による水輸送メカニズムについて鋭意研究を進めた。そして、産業上利用可能な流路装置として、外部エネルギーをほとんど使用することなく流体の流量を制御可能な新しい流路装置を実現可能とし、さらには、微細構造の装置においては流路構造の乱れや部分的な破損、および付着物などの流路阻害要因に対する回避機構を実現可能とするための方策の検討が深められることで、その手掛かりが得られてきた。
【0005】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、外部エネルギーの使用を抑制することができ、微小構造においては不純物の付着による流路阻害の影響を低減可能であって、かつ洗浄容易な、広い産業分野への適用が可能とされる新しい開放流路装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開放流路装置は、上記の課題を解決するために、以下の特徴を有している。
【0007】
すなわち、本発明は、複数の流路が隣接する流体流路装置であって、流路の底部を構成する基板と、基板の表面に立設されて流路の側壁を構成する複数のブレードとを有し、前記複数のブレードは、前記流体の流れの上流側から下流側への方向に間隔をあけて複数立設され、この間隔において隣接する流路間の流体の導通が可能にされており、流路の一端が流体に接することで、流体の流れが可能とされているブレード複合型開放流路装置であることを特徴としている。
【0008】
そして本発明の流路装置においては、流体の流れは重力が関与しない水平方向の流れもしくは重力に反する方向への流れも可能であることも特徴としている。
【0009】
また、微小な流路装置としては、好ましくは前記ブレードの流体の流れの上流側から下流側への方向における間隔が、0.1μmから100μmの範囲内であることを特徴としている。より好ましくは、20μmから50μmの範囲内である。
【0010】
さらにまた、好ましくは、複数のブレードが、第1ブレードと、第1ブレードよりも流体の流れの上流側から下流側への方向の長さの長い第2ブレードとの複合構造であることを特徴としている。
【0011】
第1ブレードを複数の流路の最外部に配置し、第2ブレードを第1ブレードによって囲まれた中央部に設けられていることも好ましい。
【0012】
この場合、一定間隔ごとに第1ブレードを中央部に配置した境界部が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、微小な流路装置としては、第1ブレードと第2ブレードの流体の流れの上流側から下流側への方向の長さが10μmから100μmの範囲内であることも好ましい。
【0014】
複数のブレードの形成方法が、フォトリソグラフィであることも好ましい。
【0015】
そして、本発明のブレード複合型開放流路装置においては、基板やブレードの表面が親水性または疎水性処理されていることも好ましい。
【0016】
本発明は、また、ブレード複合型開放流路装置の接合体として、以上のブレード複合型開放流路装置を単位ブロックとして、複数の単位ブロックの接合体であるものも提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外部エネルギーの使用を抑制することができ、微小構造においては不純物の付着による流路阻害の影響を低減可能であって、かつ洗浄容易な、広い産業分野への適用が可能とされる新しい開放流路装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のブレード複合型開放流路装置の第一の実施形態を示した正面図である。
【図2】図1のブレード複合型開放流路装置を用い、流体として水を輸送する場合における、重力に抗した水の輸送距離H(mm)を示したグラフである。
【図3】図1のブレード複合型開放流路装置において、流体の流れの上流側から下流側への方向に設けられたブレード間の間隔による流路阻害要因の回避を示した写真と流体の移動を示した模式図である。
【図4】図1のブレード複合型開放流路装置において、ブレードの長さを変化させた際の水の上昇速度の指標D(mm/s)および流路の表面積(cm)を示したグラフである。
【図5】図1のブレード複合型開放流路装置において、ブレードの配列パターンを周期的にずらした変形例を示す図である。
【図6】ブレード複合型開放流路装置において、ブレードの配列パターンを周期的にずらした変形例における水の上昇速度の指標D(mm/s)および流路の表面積(cm)を示したグラフである。
【図7】本発明の第一の実施形態に係る微小流路装置の作製例について、流路の一部を拡大して示すSEM画像である。
【図8】λ=1の配列(Sample 1)およびλ=2の配列(Sample 2)を有する微小流路装置を用いて、水の輸送挙動を観察した結果を示す写真である。
【図9】流体輸送試験例7の結果を示す写真である。
【図10】流体輸送試験例8の結果を示すグラフである。
【図11】流体輸送試験例9の結果を示す写真である。
【図12】流体輸送試験例9において、TCL長の計算値と、重力に抗しての水の輸送速度の指標Dの試験値との関係を示したグラフである。
【図13】本発明のブレード複合型開放流路装置の第二の実施形態を示した図である。
【図14】図13のブレード複合型開放流路装置におけるブレードの長さ、ブレードの間隔、および流路の幅の3つのパラメータが、水の上昇速度に及ぼす影響を定量的に評価したグラフである。(A)は、ブレード配置が単純なパターンの場合を示し、(B)は、ブレード配置が図13に示した複合パターンの場合を示している。
【図15】本発明のブレード複合型開放流路装置の第三の実施形態を示した図である。
【図16】(a)は、本発明のブレード複合型開放流路装置の第三の実施形態の実施例を示した図である。(b)は、この場合の水の上昇を示した写真であり、(c)は、水の上昇高さzの時間発展z/zを示したグラフであり、(d)は、(c)の縦軸をz/zの2乗で取り直したグラフである。(e)および(f)は、図16(d)において、中央部8のブレード間隔L(μm)の値を変化させた場合の時間tと水の輸送距離z/zの2乗との関係を示したグラフである。
【図17】本発明のブレード複合型開放流路装置の応用例である流体循環システムの構成を示す模式図である。
【図18】図17の流体循環システムにおいて、滴下手段による水の供給時間と容器内の水位との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明のブレード複合型開放流路装置の第一の実施形態を示した正面図である。

【0020】
ブレード複合型開放流路装置1では、平板状の基板2の表面に複数のブレード3を備えている。複数のブレード3は、基板2の表面において流体4の流れの上流側から下流側への方向に間隔5をあけて立設されている。また、横方向では、相互に間隔をあけて複数の流路6が形成されている。ブレード3は、流路6の側壁を構成し、基板2は流路6の底部を形成している。

【0021】
また、図1にその全体像を例示したように、ブレード3を立設した基板2を垂直にもしくは傾けた状態で、流路6の一端を流体4に接触させると、流体4は、表面張力ないしは毛管力を起動力として流路6の下方の上流側から上方の下流側へと重力とは反対方向へと上昇する。流体4は、自発的に輸送されることになる。このため、流路6の流れの開始点における加圧が不要な省エネルギー流路が実現される。ここで基板2は、平板状であっても、あるいは曲面状、屈折面状であってもよい。そしてまた、流体4に流路6の一端が接触する基板2の流体4に対しての配置位置、配置の姿勢状況によって、流体4を斜め上方、そして水平方向に輸送することも可能となる。

【0022】
流体4としては、水等の低粘性液体に限らず、イオン液体やオイル等の粘性液体等の液体、気体および気液混合液体等が例示される。また、流体4は親水性溶媒であっても疎水性溶媒であってもよい。

【0023】
流体4は、その粘性抵抗、そして重力に対しての流体の表面張力、毛管現象としての流体連続性を維持して起動することになる。流体4の種類、流路6の幅、つまりブレード3の横方向の間隔や、ブレード3や基板2の表面のぬれ性(親水性/疎水性)、ブレードの配列や形状は適宜選択、設定されてよい。

【0024】
流路6の側壁を構成する複数のブレード3は、流体4の流れの上流側から下流側への方向に間隔5をあけて立設されており、流体4を隣接する流路6間で導通させることが可能となる。このような構成を備えていることにより、複数のブレード3の配列の乱れや複数のブレード3の部分的な破損、および不純物の付着などの流路阻害要因が存在しても、それらを回避して流体4を輸送することが可能となる。また、流路6の側壁としてのブレード3に随時に間隔5を形成したり、ブレード3を移動可能として間隔5の大きさやブレード3の配列パターンを変更したりすることによって、流路6の始点および終点を自在に設定することも可能となる。

【0025】
図2は、図1のブレード複合型開放流路装置1を用い、流体4として水を輸送する場合における、重力に抗しての水の上昇速度の指標Dを傾きとして例示したグラフである。輸送距離Hが経過時間Tの1/2乗に比例するキャピラリー理論に従った挙動を示すことが確認されている(H=DT)。なお、流体4は水等の低粘性液体に限らず、イオン液体やオイル等の粘性液体であってもよい。

【0026】
複数のブレード3の形状は、流体4の輸送が可能であれば特に限定されない。例えば、円弧形の板状、断面矩形の板状、断面楕円形の板状等が例示される。

【0027】
微小流路装置、例えば、流路幅として5μm~100μmのスケールの装置の場合には、複数のブレード3は、例えば、フォトリソグラフィによって形成されてよい。

【0028】
基板2および複数のブレード3の素材は、表面パターニングが容易な材料であれば、特に限定されない。例えば、半導体素子の材料であるエポキシ系レジスト材料等の高分子材料、上記高分子材料をレジストとしてエッチング処理したシリコン基板等の無機材料、上記無機材料を鋳型として転写法で作製したゲル材料等が例示される。例えば、密着性に優れ、アスペクト比の高いマスクパターンを形成可能な、従来の微小流路装置であるマイクロ流体デバイスの材料としても使用されている、エポキシ系レジスト材料は、本発明のブレード複合型開放流路装置1にも好適に用いることができる。

【0029】
このような材料からなる基板2やブレード3の表面は、親水性または疎水性処理されていることが好ましい。親水性処理としては、例えば、低圧水銀ランプによる紫外線照射(波長253.7nm、184.9nm)、エキシマ照射(波長172nm)、プラズマ表面改質、コロナ処理等が例示される。特に、真空紫外線照射によって生成されるオゾン処理で、基板2の表面に親水性官能基が形成されることが好ましい。また、疎水性処理としては、疎水性基を含む機能性モノマーを基板表面にグラフト重合させることで表面改質を行う方法、金薄膜をスパッタリング等で形成させて機能性チオール修飾剤を反応させる方法、表面を親水性処理した後シランカップリング剤を加水分解により反応させる方法等が例示される。

【0030】
上記のような表面改質を行うことによって、本発明のブレード複合型開放流路装置1における基板2やブレード3の表面と流体4との接触角度を小さくし、基板2やブレード3の表面のぬれ性を向上することが可能である。このように、流体4の種類、組成、物性等に応じて表面改質を行う方法を選択し、基板2やブレード3の表面と流体4との親和性を高めることにより、流体4、例えば、水との接触表面積が大きくなるため、駆動力が増大し、それに従って輸送速度の増加が図られる。

【0031】
なお、基板2やブレード3の表面改質を行う際には、全体を均質に処理してもよく、部分的に処理してもよい。例えば、親水性処理を行う際に、基板2をフォトマスク等で部分的に覆い、上述した紫外線照射やエキシマ照射等を行うことによって、基板2やブレード3の表面のうちフォトマスク等で覆われていない部分を選択的に改質することができる。

【0032】
また、基板2やブレード3の表面は、流体4の種類、組成、物性、およびブレード複合型開放流路装置1の用途や所要の性能等に応じて、親水性または疎水性に適宜変更することができる。すなわち、親水性処理を施した表面に疎水性処理を行ってもよく、また、疎水性処理を施した表面に親水性処理を行ってもよい。

【0033】
複数のブレード3の流体4の流れの上流側から下流側への方向における間隔5、すなわちブレード3の間隔5としては、微小流路装置では、例えば、0.1μmから100μmの範囲が例示される。好ましくは、20μmから50μmの範囲が例示される。間隔5が上記の範囲内であれば、間隔5をあけていない従来の流路と同等の流体4の輸送速度を得ることができる。また、間隔5は狭い方が流体4の輸送速度を高めることができる。

【0034】
図3は、図1のブレード複合型開放流路装置1において、流体の流れの上流側から下流側への方向に設けられた間隔による流路阻害要因の回避を示した写真と流体の移動を示した模式図である。流路6の側壁に間隔5が設けられていない独立したストライプ型の開放流路では、図3(A)に示すように、流路内に設置された流路阻害要因を回避することができず、流体4の輸送が途中で停止する。一方、本発明のブレード複合型開放流路装置1においては、図3(B)に示すように、流路6の側壁を構成するのが複数のブレード3であって、間隔5がブレード3間に設けられているため、流路内に設置された流路阻害要因を回避して、流路6の上端部まで流体4の輸送を可能とする。

【0035】
複数のブレード3の流体4の流れの上流側から下流側への方向の長さ、すなわちブレード3の長さとしては、微小流路装置では、例えば、10μmから100μmの範囲が例示される。好ましくは、25μmから50μmの範囲が例示される。ブレード3の長さは、後述するブレード3の幅や立設高さ、流路の幅等を考慮して、適宜設定することができる。

【0036】
複数のブレード3の流体4の流れと直交する横方向の長さ、すなわちブレード3の幅としては、微小流路装置では、例えば1μmから100μmの範囲が例示される。ブレードの幅が小さければ、基板2の単位面積当たりの流路6を多数確保することができるため、流体4の輸送効率を高めることができると考えられる。

【0037】
ブレード3の基板2の表面からの立設高さについては、微小流路装置では、例えば、5μmから100μmの範囲が例示される。立設高さが高ければ、ブレード3の表面と流体4と接触表面積が大きくなるため、駆動力が増大し、それに従って速度の増加が可能となる。

【0038】
複数のブレード3の流体4の流れと直交する横方向の間隔、すなわち流路の幅としては、微小流路装置では、例えば25μmから100μmの範囲が例示される。流路の幅が上記の範囲内であれば、微小流路装置では、流体4の輸送が妨げられることがなく、表面張力、毛管現象が十分に起こり得る。流路の幅は、ブレード3の長さ、幅および立設高さ等を考慮して、適宜設定することができる。

【0039】
<流体輸送試験例1>
図4は、図1のブレード複合型開放流路装置1において、ブレード3の長さを変化させた際の水の上昇速度の指標D(mm/s)および流路の表面積(cm)を示したグラフである。本試験例において、ブレード3の幅は2μmであり、流路6の幅は25μmである。図4に示すように、ブレード3の長さが50μm以下の範囲においては、ブレード3の長さが長くなるにつれて流体4である水との接触表面積が大きくなるため、駆動力が増大し、それに従って速度の増加が認められた。なお、流路の幅を50μmとした開放流路装置においても、上記と同様の傾向が確認されている。

【0040】
複数のブレード3は、流体4の流れと直交する横方向において、間隔5の位置が揃うように複数列配設されていてもよいし、間隔5の位置がずれるように複数列配設されていてもよい。例えば、ブレード3の配列パターンを周期的にずらすことにより、間隔5の位置をずらすことができる。また、間隔5の位置をずらすことに加えて、ブレード3の配列パターンに物理的な要素を付加してもよい。

【0041】
図5は、図1のブレード複合型開放流路装置1において、ブレード3の配列パターンを周期的にずらした変形例を示した図である。λは、ずれパラメータを示し、何列隣に同一の配列パターンが現れるかを定義するものである。同一の配列パターンの間に立設されるブレード3は、上流側から下流側方向へ均等にずらして配設されている。

【0042】
<流体輸送試験例2>
図6は、図5のブレード複合型開放流路装置1において、ブレード3の配列パターンを周期的にずらした変形例における水の上昇速度の指標D(mm/s)および流路の表面積(cm)を示したグラフである。

【0043】
本試験例では、図5に示すブレード複合型開放流路装置1において、ブレード3の長さを25μm、ブレード3の幅を2μm、ブレード3の間隔5を20μm、流路6の幅を50μmとし、ずれパラメータλのみを変化させている。図6に示すように、λ値が変化することにより、基板2の単位面積当たりの表面積は同一であるにもかかわらず、流体4の輸送速度に増大が認められる。このことから、ブレード3の配列パターンを周期的にずらすことにより、複合型開放流路装置1の流路6の流体輸送性能が向上することが確認された。

【0044】
<流体輸送試験例3>
図5に示すブレード複合型開放流路装置1において、ブレード3の長さを50μm、ブレード3の幅を2μm、ブレード3の間隔5を10μm、流路6の幅を20μmとし、ずれパラメータλ=1およびλ=2のブレード複合型開放流路装置を作製した。このブレード複合型開放流路装置を用いて、基板を水の液面に対して垂直に着水させ、流路を移動する水の鉛直方向と水平方向の輸送速度を比較した。その結果、鉛直方向への水の輸送については、λ=2の配列が優位であり、水平方向については、λ=1の配列が優位であることが確認された。これより、ブレード3の配列によって、流体4の輸送方向を制御することができることがわかった。また、λ=2の場合には、水平方向への水の輸送においては、その配列パターンに伴って、毛細管現象の効果が十分に得られない場合があることが示唆された。

【0045】
流体4の流れと直交する横方向における複数のブレード3の配設列数、すなわちブレード列数は、特に制限されることはない。ブレード列数が多い方が、流体4の輸送量を増加させることができる。

【0046】
なお、複数のブレード3は、ブレードの長さや、ブレードの幅が同一であってもよいし、異なっていてもよい。

【0047】
本発明のブレード複合型開放流路装置1は、基板2やブレード3の表面の親水性または疎水性処理によって、流体4の輸送速度を任意に調節することが可能である。このような機能を有することから、本発明のブレード複合型開放流路装置1は、極性の異なる液体の混合物についても、輸送速度の差を利用して自発的に分離することができる。

【0048】
また、本発明のブレード複合型開放流路装置1は、流路6の表面構造である複数のブレード3が露出している開放系であるため、容易に流路6の洗浄が可能となる。

【0049】
流路6の洗浄方法としては、例えば、UVオゾン洗浄や流水洗浄等が例示される。

【0050】
本発明のブレード複合型開放流路装置1は、平坦な基板2だけではなく、湾曲面を有する基材表面に複数のブレード3を設けることによっても得られる。

【0051】
また、本発明のブレード複合型開放流路装置1の複数のブレード3を、従来用いられている微小流路装置の流路内に設けることによって、微小流路装置の流速を向上させることもできる。例えば、医療用カテーテルの内壁やマイクロ流体デバイスの流路内に複数のブレード3を設けることが例示される。

【0052】
本発明のブレード複合型開放流路装置1を建物の壁面等に設置することにより、大規模流路として利用することや、建物内の雰囲気を湿潤状態に保ち、生鮮食品の鮮度維持やインフルエンザ予防等に活用することも可能となる。

【0053】
また、本発明のブレード複合型開放流路装置1を単位ブロックとして、複数の単位ブロックを接合させることによってブレード複合型開放流路装置接合体を得ることができる。このようなブレード複合型開放流路装置接合体を用いることによって、大量の流体4を長距離輸送することが可能となる。

【0054】
本発明のさらに別の実施の形態においては、例えば、基板2と複数のブレード3を別体に成形し、基板2の表面にスリット等を設け、ブレード3の挿入と移動が自在とされることによって、複数のブレード3が基板2のスリットにおいて摺動可能とされたブレード可動式の複合型開放流路装置1としてもよい。

【0055】
さらには、このようにブレード3が摺動可能とされたブレード可動式の複合型開放流路装置1においては、ブレード3の移動を可能とさせる移動装置と、移動装置に移動命令を伝達させる制御伝達装置等を組み合わせることによって、リアルタイムに流路6内を流れる流体4の流量を調節可能としたブレード複合型開放流路装置1を構築することができる。

【0056】
図7は、本実施形態に係る微小流路装置の作製例について、流路の一部を拡大して示すSEM画像である。この微小流路装置においては、フナムシの脚部を模倣した突起構造として、エポキシ系レジスト材料(SU-8)を用いて、フォトリソグラフィによって、25mm×10mmのシリコンウェハー上に作製したブレードが配設されている。この微小流路装置の構造に関するパラメータを以下に示す:
ブレードの長さ:25μm
ブレードの幅:2μm
ブレードの立設高さ:30μm
ブレードの間隔:50μm
流路の幅:50μm
ずれパラメータλ=5。

【0057】
<流体輸送試験例4>
図8は、λ=1の配列(Sample 1)およびλ=2の配列(Sample 2)としたこと以外は図7に示した微小流路装置と同様の構成を有する微小流路装置を用いて、水の輸送挙動を観察した結果を示す写真である。各々の基板およびブレードの表面は、真空紫外線照射によって酸化処理(親水性処理)されている。図8に示すように、フナムシの脚部を模倣した突起構造を有する本実施形態に係る微小流路装置を用いることにより、流体の輸送が可能であることがわかる。

【0058】
<流体輸送試験例5>
上記試験例4で用いたλ=1の配列を有する微小流路装置を用いて、水、ヘキサデカンおよびシリコンオイルの輸送挙動を分析した。シリコンウェハー基板およびブレード(SU-8)の表面を、無処理、親水性処理または疎水性処理によって均質に処理して、表面の化学的特性と流体挙動との関係性を分析した。

【0059】
基板およびブレードの表面を改質処理しなかった場合(無処理)には、ヘキサデカンの接触角度は約30°であり、シリコンオイルの接触角度は1°未満であり、いずれも輸送性は良好であった。一方、水の接触角度は約70°であり、流路の上端部までの輸送性は確認されなかった。

【0060】
また、TEMS(トリエトキシメチルシラン)を用いた化学蒸着(CVD)により、基板およびブレードの表面を疎水性処理した場合には、無処理の場合と比較して、ヘキサデカンの接触角度が約10°にまで減少し、より良好な輸送性が確認された。なお、シリコンオイルおよび水の接触角度および輸送性は、無処理の場合と同様であった。

【0061】
一方、エキシマ照射により、基板およびブレードの表面を親水性処理した場合には、水、ヘキサデカンおよびシリコンオイルのいずれも、接触角度が1°未満(ほぼ0°)となり、優れた輸送性が確認された。

【0062】
これらの結果より、本発明のブレード複合型開放流路装置において、基板およびブレードの表面改質を行う方法を選択することによって、種々の流体を輸送することができることが確認された。

【0063】
<流体輸送試験例6>
上記試験例4で用いたλ=1の配列を有する微小流路装置を用いて、シリコンウェハー基板およびブレード(SU-8)の表面を、エキシマ照射による親水性処理、およびTEMSもしくはFASを用いた化学蒸着(CVD)による疎水性処理を1サイクルとして、合計3サイクル繰り返し行い、各々の表面改質処理後の流体の輸送性を分析した。

【0064】
その結果、エキシマ照射による親水性処理後には、水、ヘキサデカンおよびシリコンオイルのいずれも、接触角度が1°未満(ほぼ0°)となり、優れた輸送性が確認された。

【0065】
また、TEMSもしくはFASを用いた化学蒸着(CVD)による疎水性処理後には、親水性処理後と比較して、ヘキサデカンおよびシリコンオイルの接触角度の増加が見られたものの、流路の上端部までの輸送性が確認された。一方、疎水性処理後の水の接触角度は大きく増加するため、流路の上端部までの輸送性は確認されなかった。

【0066】
これらの流体挙動は、親水性処理および疎水性処理の3サイクルを通じて、再現性を有していた。

【0067】
これらの結果より、本発明のブレード複合型開放流路装置においては、基板およびブレードの表面を、親水性または疎水性に適宜変更することができることが確認された。

【0068】
<流体輸送試験例7>
上記試験例4で用いたλ=1の配列を有する微小流路装置において、シリコンウェハー基板およびブレード(SU-8)の表面を、以下の(A)~(C)に示す方法を用いて部分的に処理して、流体の輸送挙動を解析した。結果を図9に示す。

【0069】
(A) 基板の片側(5mm×25mmの範囲)をフォトマスクで覆った状態でエキシマ照射した後、FAS(フッ化アルキルシラン)を用いた化学蒸着(CVD)により疎水性処理を行った。これにより、エキシマ照射と疎水性処理を行った部分(A1)と、疎水性処理のみを行った部分(A2)とを有する微小流路装置を得た。この微小流路装置の流路の一端をシリコンオイルに接触させたところ、図9(A)に矢印で示したように、A2の流路からシリコンオイルが選択的に輸送された。

【0070】
(B) 基板全体をエキシマ照射した後、FAS(フッ化アルキルシラン)を用いた化学蒸着(CVD)により疎水性処理を行い、さらに、基板の片側(5mm×25mmの範囲)をフォトマスクで覆った状態で再度エキシマ照射を行った。これにより、エキシマ照射と疎水性処理を行った部分(B1)と、エキシマ照射と疎水性処理に加えてエキシマ照射を行った部分(B2)とを有する微小流路装置を得た。この微小流路装置の流路の一端を水とヘキサデカンとの混合液に接触させたところ、図9(B)に矢印で示したように、B2の流路からヘキサデカンのみが選択的に輸送された。

【0071】
(C) 基板の両側(それぞれ、3.5mm×25mmの範囲)をフォトマスクで覆った状態でエキシマ照射することにより親水性処理を行った。これにより、エキシマ照射を行った部分(C1)と、2箇所の無処理部分(C2)とを有する微小流路装置を得た。この微小流路装置の流路の一端をシリコンオイルと水の混合液に接触させたところ、図9(C)に矢印で示したように、中央のC1の流路からは水が選択的に輸送され、両側のC2の流路からはシリコンオイルが選択的に輸送された。

【0072】
これらの結果より、本発明のブレード複合型開放流路装置においては、基板およびブレードの表面を、流体の種類やブレード複合型開放流路装置の所要の性能等に応じて、親水性処理および疎水性処理、または無処理を組み合わせて、流路に親水性領域と親油性領域とを設け、表面自由エネルギーを制御することによって、所望の流体を領域選択的に輸送でき、流体が油水混合液の場合には油水分離が可能であることが確認された。

【0073】
<流体輸送試験例8>
上記試験例4で用いた微小流路装置と同様にして、エポキシ系レジスト材料(SU-8)を用いて、フォトリソグラフィによって、25mm×10mmのシリコンウェハー上に、複数のブレードが配設された微小流路装置を作製した。本試験例では、ブレードの長さ、流路の幅、ずれパラメータ(λ)を様々に変化させて、ブレードの数やサイズ、およびブレードの配列と、水およびシリコンオイルの輸送挙動との関係性を分析した。結果を図10に示す。

【0074】
流体として水を用いた場合には、図10(A)の(1a)に示したように、ブレードの長さ(SL)が50μm以下の範囲においては、ブレードの長さ(SL)が長くなるにつれて、重力に抗しての水の上昇速度の指標Dの増加が見られた。一方、ブレードの長さが50μm以上になると、Dが減少する傾向が見られた。なお、図10(A)の(1a)において、LWは流路の幅を表す。

【0075】
また、ブレードの配列に関して、図10(A)の(1b)に示したように、λの値が2以上の場合には、λ=1の場合と比較して、重力に抗しての水の上昇速度の指標Dが増加し、輸送速度の上昇が見られた。

【0076】
流体としてシリコンオイル(動粘度cSt=10、50、100)を用いた場合には、図10(B)の(2a)に示したように、ブレードの長さ(SL)が50μm以下の範囲においては、ブレードの長さ(SL)の増加により、重力に抗してのシリコンオイルの上昇速度の指標Dが増加する傾向が見られた。なお、シリコンオイルの動粘度が50cSt、100cStの場合には、動粘度が10cStの場合と比較して、ブレードの長さとDとの相関はやや弱かった。

【0077】
また、ブレードの配列に関して、図10(B)の(2b)に示したように、ブレードの長さが100μmの装置では、λ=2の場合には、λ=1の場合と比較して、いずれの動粘度のシリコンオイルでも、重力に抗してのシリコンオイルの上昇速度の指標Dが増加し、輸送速度の顕著な上昇が見られた。

【0078】
これらの結果より、本発明のブレード複合型開放流路装置においては、流路におけるブレードの間隔の位置のずれと、重力に抗しての流体の上昇速度の指標Dとには、一定の相関があることが示唆された。また、流体の粘性が高い場合には、ブレードの数やサイズを変化させて当該流体と接触する表面積を増加させることよりも、ブレードの配列パターンを変化させることが、輸送速度の向上のためにより有効であることが示唆された。

【0079】
<流体輸送試験例9>
次に、上記試験例4で用いたλ=1およびλ=2の配列を有する微小流路装置を用いて、水の輸送に関して、上昇する水の上端部分に位置する気液固の三相が接する線(Three phase Contact Line:TCL)の様子を解析した。結果を図11に示す。

【0080】
図11(A)および(B)においてそれぞれ拡大して示したように、λ=2の場合には、λ=1の場合と比較して、時間の経過とともにTCLの形状が段階的に変化していることがわかる。より具体的には、輸送の初期段階では、TCLは水の進行方向に対して垂直な形状を保ったまま上昇し、一定時間を経過すると、TCLは、ブレードの配列パターンのなす角に沿ったジグザグ状に変化する状態(転移)が観察された。

【0081】
この転移が起こる前においては、λ=2の流路では、λ=1の流路の場合と同様に、TCLは水平な形状を形成するが、TCLが常にブレードの配列構造と接触することで、λ=1の流路の場合よりも安定した駆動力を得ることができる。転移後には、TCLはより複雑な形状となり、TCL長が増加する。流体輸送の駆動力となる流体の表面張力はTCL長に比例して増加するため、λの変化によってより高速な流体輸送が可能となることが示唆された。

【0082】
そこで、ブレードのサイズや配列を系統的に変化させた微小流路装置を作製し、各々の装置について、TCLの形状が複雑化する転移後の状態において予想されるTCL長を計算し、重力に抗しての水の輸送速度の指標Dの試験値との関係を分析した。なお、Dの値は転移前を含めた全体の流体輸送速度から計算される値である。結果を図12に示す。

【0083】
図12に示したように、TCL長の計算値と流体輸送速度との間に明らかな相関関係が確認された。なお、図12において、横軸は、分析対象の装置について計算したTCL長と、λ=1の流路のTCL長との比を表わす。

【0084】
このように、本発明のブレード複合型開放流路装置は、流体の種類、組成、物性、およびブレード複合型開放流路装置1の用途や所要の性能等に応じて、ブレードの数やサイズ、およびブレードの配列パターンを設計することにより、所望の流体の輸送性を制御することができることが確認された。また、上述した基板およびブレードの表面の改質処理を組み合わせることにより、より効率的な流体の輸送が可能である。

【0085】
図13は、本発明のブレード複合型開放流路装置1の第二の実施形態を示した図である。この実施形態においては、複数のブレード3として、流体4の流れの上流側から下流側への方向の長さの短い第1のブレード3aと、第1のブレード3aよりも流体4の流れの上流側から下流側への方向の長さの長い第2のブレード3bが形成されており、これら長さの異なる複数のブレード3の複合構造をとる。

【0086】
長さの異なる第1のブレード3a、第2のブレード3bの配置は、第1のブレード3aと第2のブレード3bとが流体4の流れの上流側から下流側への方向の同一直線上に配設されていてもよいし、第1のブレード3aのみ、または第2のブレード3bのみが流体4の流れの上流側から下流側への方向の同一直線上に配設されていてもよい。ブレード複合型開放流路装置1の最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配設され、第1のブレード3aに囲まれた中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配設されることが好ましい。

【0087】
図14は、ブレード複合型開放流路装置1におけるブレード3の長さ、ブレード3の間隔5、および流路6の幅の3つのパラメータが、水の上昇速度に及ぼす影響を定量的に評価したグラフである。図14(A)には、長さの短い第1のブレード3aのみが配設された流路6aと、第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bのみが配設された流路6bの単独パターンについて、それぞれの結果を示している。

【0088】
図14(A)の(1a)~(1c)は、上記の3つのパラメータについて、いずれか1つを変動させ、残り2つを固定して作製したブレード複合型開放流路装置1における、水の上昇速度の指標D(mm/s)の変化を示している。○でプロットされているのは、図13に示した本発明の第二の実施形態のブレード複合型開放流路装置1における中央部8に配置された第2のブレード3bのみで構成された流路6aのデータである。また、図中の挿入図において、□でプロットされているのは、図13に示した第二の実施形態のブレード複合型開放流路装置1における最外部7に配置された第1のブレード3aのみで構成された流路6bのデータである。そして、図中の実線で描かれた曲線は、後述の流路6a、6bにおけるキャピラリー理論の理論式を示したグラフである。

【0089】
図14(A)の(1d)は、上記(1a)~(1c)のデータをもとに導出した流路6a、6bにおけるキャピラリー理論の変数α1、β1を求めるためのグラフである。

【0090】
ここで、本発明のブレード複合型開放流路装置1におけるキャピラリー理論の理論式は、以下の式で示される。

【0091】
/(1-φ)D=α+βφD/(1-φ)D (式1)
式1において、D(mm/s)は実験から求めた上昇速度の指標、DおよびDはそれぞれ、D=γ(l+w)h/ηLW、D=γ(l+w)w/ηLであり、Dは基板底面から流体に働く抵抗力と駆動力との競合から理論的に求めた上昇速度の指標、Dはブレード側面から流体に働く抵抗力と駆動力との競合から理論的に求めた上昇速度の指標である。ここで、γ(N/m)は流体4の表面張力、η(kg/m・s)は流体4の粘性を表している。αはDにつく数値係数、βはDにつく数値係数である。また、φはl/Lすなわち流体4の流れの上流側から下流側への方向に見たブレード3の割合を、(1-φ)はブレード3のない部分の割合を表している(図16(a)参照)。

【0092】
図14の(1d)において、グラフの縦軸は、式1の左辺を表しており、グラフの横軸は、式1の右辺第2項の係数βを除いた部分(φD/(1-φ)D)を表している。本発明のブレード複合型開放流路装置1におけるキャピラリー理論がよく成り立っていればデータは直線に乗り、その傾きがβ1、y切片がα1となる。

【0093】
図14の(1a)において、縦軸は実験で測定した水の上昇速度を表す指標D(mm/s)、横軸はブレードの長さl(μm)を示している。流体4の流れ方向のブレード間隔L(μm)、流体の流れと直交方向のブレード幅W(μm)の値は、それぞれ、流路6aに対しては(L,W)=(20,50)、流路6bに対しては(L,W)=(10,25)に固定した。これより、ブレードの長さlが長いほど水の上昇速度は速くなることが確認される。

【0094】
図14の(1b)において、縦軸は実験で測定した上昇速度を表す指標D(mm/s)、横軸は流体の流れ方向のブレード周期L(ブレード間隔L+ブレード長さl)(μm)である。他のパラメータはそれぞれ、流路6aに対しては(l,W)=(20,50)、流路6bに対しては(l,W)=(10,25)に固定した。これより、流体の流れ方向のブレード間隔Lが小さいほど上昇速度は速くなることが確認される。

【0095】
図14の(1c)において、縦軸は実験で測定した上昇速度を表す指標D(mm/s)、横軸は流体の流れと直交する横方向のブレード周期W(流路の幅W+ブレード幅w)(μm)である。他のパラメータはそれぞれ、流路6aに対しては(l,L)=(20,20)、流路6bに対しては (l,L)=(10,10)に固定した。これより、流体の流れと垂直方向のブレード間隔Wが小さいほど上昇速度は速くなることが確認される。

【0096】
図14(A)の(1a)~(1c)のすべてのデータおよび他の3つのデータすなわち(l,L,W)=(20,20,50)、(10,20,50)、(20,10,25)(単位はμm)をプロットしたところ、データ点は直線によく乗り、フィッティングから上記直線の式のy切片に相当するα1=13.1、傾きに相当するβ1=1.54と求まった。さらにこのα1、β1の値を用いて、(1a)~(1c)に理論曲線を追加したところ、理論曲線はデータ点の傾向をよく説明することが確認される。

【0097】
一方、図14(B)には、図13に示した本発明の第二の実施形態、すなわちブレード複合型開放流路装置1の最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配設され、第1のブレード3aに囲まれた中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配設された流路6の複合パターンの結果を示している。

【0098】
図14(B)においては、最外部7における3つのパラメータは(l、W、L)=(10,25,10)に保ち、中央部8における3つのパラメータのみ変化させた。

【0099】
図14(B)の(2a)において、縦軸は実験で測定した上昇速度を表す指標D(mm/s)、横軸は中央部8における第2のブレード3bの長さl(μm)である。中央部8の流体の流れ方向のブレード間隔L(μm)、中央部8の流体の流れと直交する横方向のブレード間隔W(μm)の値はそれぞれ(L,W)=(20,50)に固定した。これより、中央部8の第2のブレード3bの長さlが大きいほど上昇速度は速くなることが確認される。

【0100】
図14(B)の(2b)において、縦軸は実験で測定した上昇速度を表す指標D(mm/s)、中央部8の横軸は流体の流れ方向のブレード周期L(ブレード間隔L+ブレード長さl)(μm)である。他のパラメータは(l,W)=(20,50)に固定した。これより、中央部8の流体の流れ方向のブレード間隔Lが小さいほど上昇速度は速くなることが確認される。

【0101】
図14(B)の(2c)において、縦軸は実験で測定した上昇速度を表す指標D(mm/s)、中央部8の横軸は流体の流れと直交する横方向のブレード周期W(流路の幅W+ブレードの幅w)(μm)である。他のパラメータは(l,L)=(20,20)に固定した。これより、中央部8の流体の流れと直交する横方向のブレード間隔Wが小さいほど上昇速度は速くなることがわかる。

【0102】
図14(B)の(2d)は、図14(A)の(1d)と同様に、上記(2a)~(2c)のデータをもとに導出した本発明の第二の実施形態におけるキャピラリー理論の変数α1、β1を求めるためのグラフである。上記(2a)~(2c)のすべてのデータをプロットし、これらの点に対するフィッティング線を実線で表した。このとき、α1=8.20、β1=1.68であった。このα1、β1の値を用いて、上記(2a)~(2c)に理論曲線を追加したところ、実線で示した理論曲線は、データ点の傾向をよく説明することが確認される。

【0103】
さらに、図14(A)の(1d)で求めたα1、β1を用いた理論曲線を図14(B)の(2a)~(2c)に破線で示した。加えて、上記(2a)~(2c)の図中の挿入図に、複合パターンにおけるDの値を、複合パターンの中央部8に対応するブレード3bの単独パターンにおけるDの値への割合(%)として示した。

【0104】
その結果、流体の流れ方向の中央部分のブレード間隔L(μm)または流体の流れと直交方向の中央部分のブレード間隔W(μm)の値が小さい2つのデータ点を除き、複合パターンの流路の方が明らかに水の上昇が速いことが確認された。

【0105】
長さの短い第1のブレード3aのみが配設された流路6aと、第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bのみが配設された流路6bとにおける流体の輸送速度を比較すると、図14(A)に示すように、長さの短い第1のブレード3aのみが配設された流路6aの方が、流体4の輸送速度が大きい。一方、ブレード複合型開放流路装置1の最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配設され、第1のブレード3aに囲まれた中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配設されているブレード複合型開放流路装置1の流路6の一端を流体4に接触させると、図14(B)に示すように、図14(A)の単独パターンと比較して水の上昇速度の指標が大きく、流体4の輸送速度が大きいことが確認される。この流体4の輸送速度の向上は、中央部8への流体4の輸送速度よりも最外部7への流体4の輸送速度が大きいために、先に最外部7に輸送された流体4が中央部8に流体4を引き上げる働きをすることに起因する。以上より、複合パターン構造で、中央部8での長さスケールよりも最外部7での長さスケールが十分小さい場合には、最外部7が効果的役割を果たし、単一パターン構造においては見られなった複合効果によって水の上昇速度は大きくなることがわかった。

【0106】
図15は、本発明のブレード複合型開放流路装置1の第三の実施形態を示した図である。また、図16は、本発明のブレード複合型開放流路装置1の第三の実施形態の実施例を示した図であり、(a)は、実施例のブレード複合型開放流路装置のサイズを示している。(b)は、(a)における水の上昇を示した写真であり、(c)は、水の上昇高さzの時間発展z/zを示したグラフであり、(d)は、(c)の縦軸をz/zの2乗で取り直したグラフである。

【0107】
本発明の第三の実施形態においては、図15の中央のレーンに示すように、ブレード複合型流路装置1の最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配置され、中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配置され、かつ一定間隔ごとに中央部8にも長さの短い第1のブレード3aが配置されている。この中央部8において、一定間隔ごとに長さの短い第1のブレード3aが配置された領域を境界部9とする。本実施形態におけるブレード複合型流路装置1は、基板2としてシリコンウェハーが用いられ、フォトリソグラフィ技術によってブレード第1の3a、第2の3bが配設され、紫外線照射によって基板2および第1のブレード3a、第2の3b表面は、水に対する完全ぬれ性が実現されている。

【0108】
本実施形態におけるブレード複合型流路装置1は、図16(a)の中央のレーンとその一部を拡大した図に示すように、ブレード3aの長さが10μmである最外部7と、ブレードの長さ3bが20μmである中央部8とを複合化している。最外部7においては、ブレード3aの間隔5aが10μm、流路6aの幅が25μmである。中央部8においては、ブレード3bの間隔5bが20μm、流路6bの幅が50μmである。また、ブレードの高さhおよびブレードの厚さwは、それぞれ30μmと2μmに固定されている。さらにまた、図16(a)の中央のレーンの一部を拡大した図に示すように、境界部9には、最外部7と同様に第1のブレード3aが配置されており、この境界部9の長さは、上流側が0.1mm、下流側が0.1mmであって合計で0.2mmである。一方、図16(a)の左側のレーンは、比較例として最外部7と同様に第1のブレード3aのみが複数列配置されており、右側のレーンには、比較例として中央部8と同様に第2のブレード3bのみが複数列配置されている。

【0109】
図16(b)は、上記の3つのレーンにおける流路4の吸水挙動を示した写真である。αは、最外部7と同様に第1のブレード3aのみが複数列配置された比較例である左側のレーンの水の上昇先端を示しており、βは、中央部8と同様に第2のブレード3bのみが複数列配置された比較例である右側のレーンの水の上昇先端を示している。また、γは、実施例である中央のレーンの最外部7における水の上昇先端を示しており、δは、実施例である中央のレーンの中央部における水の上昇先端を示している。図16(b)に示すように、最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配置され、中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配置された流路装置に境界部9を設けることにより、最外部7と同様のブレード3aのみが複数列配置された流路装置や中央部8と同様のブレード3bのみが複数列配置された流路装置と比較して、流体4の輸送距離が増加することが確認された。

【0110】
図16(c)は、時間tと水の上昇高さzとの関係を示すグラフである。グラフの縦軸は、境界部9の周期z(3.6mm)(境界部9の間隔(3.4mm)+境界部9の長さ(0.2mm))で規格化された液体の上昇高さzを表しており、横軸は経過時間tである。αは、最外部7と同様のブレード3aのみが複数列配置された図16(a)、(b)の左側のレーンの水の上昇高さを示しており、βは、図15の中央部8と同様のブレード3bのみが複数列配置された、図16(a)、(b)の右側のレーンの水の上昇高さを示している。また、γは、図16(a)、(b)の中央のレーンの最外部7における水の上昇高さを示しており、δは、図16(a)、(b)の中央のレーンの中央部8における水の上昇高さを示している。

【0111】
図16(b)、(c)から、本実施形態の中央のレーンでの水の浸透の動力学には、通常の毛管上昇とは大きく異なるいくつかの特徴があることが確認される。すなわち、中央のレーンの最外部7および中央部8への水の浸透はいずれも、単独パターンである左側および右側のレーンの流路への水の浸透よりも速い。ここで、各レーンへの水の浸透速度を比較すると、左側のレーンへの水の浸透(α)は、右側のレーンへの水の浸透(β)より速い。これは、左側のレーンではブレードの長さが右側のレーンに比べて短く、その結果、毛管力がより強いためである。また、中央のレーンの最外部7での水の浸透(γ)は、左側レーンへの水浸透(α)より速い(破線の鉛直矢印参照)。さらにまた、中央のレーンの中央部8への水の浸透(δ)は、右側のレーンへの水の浸透(β)より速い(実線の鉛直矢印参照)。これは、中央のレーンにおいて、先に最外部7(γ)に浸透している水が中央部8の水を引き上げることに起因する。

【0112】
図16(d)は、図16(c)のグラフにおける縦軸をz/zの2乗で取り直したグラフである。図中のα~δについては、図16(c)と同一のレーンまたはレーン内の部分を示している。このグラフより、少なくとも左側のレーンの流路と右側のレーンの流路への水の浸透の動力学は、時間tの1/2乗で表されることが示唆されている。また、中央のレーンの流路の中央部8は、図16(d)中に鉛直な破線で示したように、初期と後期の2領域に分けられる。実線および細線はそれぞれ、初期および後期のフィッティング線である。境界部9で断続的ではあるものの、初期の水の動力学は、ほぼ時間tの1/2乗であり、右側のレーンよりもわずかに速い。後期の水の動力学は、上記鉛直な破線で示したように、中央のレーンの最外部7での液体先端がパターンの上端に達した時に開始する。

【0113】
図16の(e)および(f)は、図16(d)において、中央部8のブレード間隔L(μm)の値を変化させた場合の時間tと水の上昇高さz/zの2乗との関係を示したグラフである。図16(d)において、中央部8の流路のパラメータは、それぞれ、(l、L、W)=(20,20,50)である。図16(e)において、中央部8の流路のパラメータは、それぞれ、(l、L、W)=(20,10,50)である。また、図16(f)において、中央部8の流路のパラメータは、それぞれ、(l、L、W)=(20,40,50)である。なお、図16の(e)、(f)のいずれにおいても、最外部7の流路のパラメータは、(l、L、W)=(10,10,25)に固定した。図16の(e)および(f)においても、図16(d)で見られた水の動力学の特徴が確認された。

【0114】
このように、ブレード複合型流路装置1の最外部7に長さの短い第1のブレード3aが配置され、中央部8に第1のブレード3aよりも長さの長い第2のブレード3bが配置され、かつ一定間隔ごとに中央部8にも長さの短い第1のブレード3aが配置された境界部9を備えるブレード複合型流路装置1においては、最外部7における流体4の輸送速度の増大と、最外部7に先に輸送された流体4が中央部8の流体4を引き上げることに伴う中央部8における流体4の輸送速度の増大とによって、流体4の輸送速度が相乗的に向上することが確認された。

【0115】
本発明のブレード複合型開放流路装置の応用例として、上記試験例4で用いたλ=1の配列を有する微小流路装置を用いて、流体循環システムを作製した。図17は、流体循環システムの構成を示す模式図である。

【0116】
より具体的には、図17に示す流体循環システム10においては、一定量(1mL)の水(流体)11を入れた容器12(容量2mL)に、ピペット等の滴下手段13によって一定の時間間隔で所定量の水11が供給される。微小流路装置14は、容器12内の水11の水位hが所定の値(例えば、容器12内の水量が1.5mLとなった時点の水位)に達すると、微小流路装置14に形成された流路(図示せず)の一端が液面に接触するように、容器12の開口部から水11の液面に向かって挿入されて配置されている。また、微小流路装置14の流路の他端は、蒸発促進部15と連通している。

【0117】
このような構成を有する流体循環システム10においては、滴下手段13による水11の供給に伴って容器12内の水11の水位hが上昇し、水11の液面が微小流路装置14の流路の一端に接触すると、水11は、図17に矢印で示したように、流路を通じて他端まで輸送され、当該他端に設けられた蒸発促進部15に送られる。単位時間あたりの滴下手段13による水11の供給量よりも、微小流路装置14による水11の輸送量が上回ると、容器12内の水11の水位hは低下し、流路の一端と水11の液面との接触が解消され、水11の輸送が停止する。すると、滴下手段13からの水11の供給により容器12内の水11の水位hは再び上昇し、流路の一端と水11の液面とが接触し、上述した水11の輸送が行われ、以降、同様の挙動が繰り返される。

【0118】
図18は、図17に示した流体循環システム10において、滴下手段13による水11の供給時間と容器12内の水11の水位hとの関係を示したグラフである。図18から理解されるように、本発明のブレード複合型開放流路装置を用いることにより、容器内の流体を一定の時間間隔で一定量容器外に送り出しながら、容器内の流体の液面の高さを一定に保つことが可能な流体循環システムを構築することができる。また、微小構造の流路装置を用いた場合には、例えば、mLオーダーもしくはμLオーダーでの制御が可能な微量流体循環システムを構築することができる。このような微量流体循環システムは、例えば、多穴培養ウェルにおける細胞培養の培養液の自動管理システム等の用途に適したものである。

【0119】
なお、比較例として、微小流路装置の代わりにマイクロキャピラリー(φ0.5mm)を用いたこと以外は上記と同様にして、微量溶液循環システムを作製し、水の循環試験を行った。本比較例では、水の液面とマイクロキャピラリーの一端との最初の接触時には、水がマイクロキャピラリーにより吸い上げられて、マイクロキャピラリーの他端に設けた蒸発促進部へと輸送された。しかしながら、二度目の接触時(着液時)には、マイクロキャピラリーの内部に気泡が侵入して、マイクロキャピラリーの流路に目詰まりが生じたため、水を輸送することができなかった。

【0120】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、本発明のブレード複合型開放流路装置およびブレード複合型開放流路装置接合体の具体的な形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、これまで説明してきたように、ブレードの配列構造が流体に働く主の駆動力をもたらす流路(空間)を維持することが可能な限りにおいては、本発明のブレード複合型開放流路装置およびブレード複合型開放流路装置接合体は、流路全体もしくは一部にガラス等を密着させる等して、閉鎖系とすることもできる。
【符号の説明】
【0121】
1 ブレード複合型開放流路装置
2 基板
3 ブレード
3a 第1のブレード
3b 第2のブレード
4 流体
5 間隔
6、6a、6b 流路
7 最外部
8 中央部
9 境界部
10 流体循環システム
11 水(流体)
12 容器
13 滴下手段
14 微小流路装置
15 蒸発促進部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図4】
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【図5】
3
【図6】
4
【図13】
5
【図17】
6
【図18】
7
【図3】
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【図7】
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【図8】
10
【図9】
11
【図10】
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【図11】
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【図12】
14
【図14】
15
【図15】
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【図16】
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