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明細書 :光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-076097 (P2017-076097A)
公開日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法
国際特許分類 G02B   6/02        (2006.01)
G02B   6/032       (2006.01)
G02B   6/26        (2006.01)
FI G02B 6/02 451
G02B 6/032 Z
G02B 6/26
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2015-205117 (P2015-205117)
出願日 平成27年10月16日(2015.10.16)
発明者または考案者 【氏名】横田 浩久
【氏名】今井 洋
【氏名】樋口 恵一
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100158023、【弁理士】、【氏名又は名称】牛田 竜太
審査請求 未請求
テーマコード 2H137
2H150
Fターム 2H137AB01
2H137BA04
2H137BA11
2H137BC31
2H150AB02
2H150AB04
2H150AB32
2H150AC37
2H150AC51
2H150AD34
2H150AF02
2H150AF29
2H150AH12
2H150AH22
要約 【課題】
マルチモードを伝搬可能であって接続損失及び結合損失を低減した光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法の提供。
【解決手段】
フォトニック結晶ファイバ1は、コア領域2とクラッド領域3とを有している。クラッド領域3には、複数の空孔4が形成されており、複数の空孔4同士の距離Aは一定である。複数の空孔4の第1層から第4層までの直径は、フォトニック結晶ファイバ1の中心Cからの距離rの2乗に比例するように定められる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
コア領域と、前記コア領域を覆うクラッド領域と、を有する光ファイバであって、
前記クラッド領域には複数の空孔が形成され、
前記複数の空孔の直径は、前記コア領域から光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径することを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記複数の空孔の直径は、前記光ファイバの中心からの距離の2乗に比例することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記複数の空孔は、前記クラッド領域に多角形をなすように形成され、
前記多角形は複数の層で構成され、前記中心側の少なくとも3層の前記空孔の直径は前記中心からの距離の2乗に比例することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記空孔は複数の層で構成され、前記複数の層のうち、前記径方向外側の少なくとも2層の前記空孔の直径は互いに同一であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバが端部に接続されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
第1光ファイバと第2光ファイバとを接続する光ファイバ接続方法であって、
前記第1光ファイバの一端と第2光ファイバの一端とを対向させるステップと、
前記第1光ファイバの一端に、
コア領域と、前記コア領域を覆うクラッド領域と、を有する第3光ファイバであって、
前記クラッド領域には複数の空孔が形成され、
前記複数の空孔の直径は、前記コア領域から前記第3光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径している前記第3光ファイバの一端を接続するステップと、
前記第3光ファイバの他端と前記第2光ファイバの一端とを接続するステップと、
からなることを特徴とする光ファイバ接続方法。
【請求項7】
前記複数の空孔の直径は、前記第3光ファイバの中心からの距離の2乗に比例することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ接続方法。
【請求項8】
前記複数の空孔は、前記クラッド領域に多角形をなすように形成され、
前記多角形は複数の層で構成され、前記中心側の少なくとも3層の前記空孔の直径は前記中心からの距離の2乗に比例することを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ接続方法。
【請求項9】
前記空孔は複数の層で構成され、前記複数の層のうち、前記径方向外側の少なくとも2層の前記空孔の直径は互いに直径と同一であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の光ファイバ接続方法。
【請求項10】
前記第3光ファイバの他端と前記第2光ファイバの一端との間には所定物質が介在していることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ接続方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法に関し、特にフォトニック結晶ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバの断面に軸方向に延びる空孔を形成した構造を持つフォトニック結晶ファイバ(PFC)が知られている(例えば、特許文献1)。フォトニック結晶ファイバは、屈折率約1.45の石英ガラスの周囲に屈折率約1の空気を含む空孔が周期的に形成されている。フォトニック結晶ファイバでは、空気と石英ガラスとの屈折率の差が大きいため、コア領域への光の閉じ込め効果が増大し、非線形効果を効果的に得ることができる。
【0003】
図10に従来のフォトニック結晶ファイバ101を示す。フォトニック結晶ファイバ101は、コア領域102とクラッド領域103とを有しており、クラッド領域103には複数の空孔104が形成されている。空孔104は、フォトニック結晶ファイバ101の中心Cを中心とする正六角形をなすように周期的に配置されている。複数の空孔104の直径はすべて同一であって、各空孔104の中心間距離も同一である。コア領域102における実効的な屈折率はクラッド領域103における屈折率よりも高いため、コア領域102に入射した光は全反射によりフォトニック結晶ファイバ101内を伝搬する。
【0004】
フォトニック結晶ファイバでは、コアへの光の閉じ込め効果が大きいため、曲げ損失が通常の光ファイバに比べて小さく、屋内のケーブル敷設作業を効率的に行うことができる。また、従来から、光ファイバの屈折率分布が中心からの距離の2乗に比例するいわゆる2乗分布による光ファイバを用いたコリメータが知られている(例えば、特許文献2)。このような屈折率分布とすることにより、クラッド領域からの反射によるモードの影響を受けにくくなり損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-277090号公報
【特許文献2】特開2006-113488号公報
【0006】

【非特許文献1】藤田盛行、他5名、「フォトニック結晶ファイバ(1)-光学特性—」2002年7月三菱電線工業時報、第99号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のフォトニック結晶ファイバでは、一つの導波モードしか伝搬可能ではなかった。このようなシングルモード光ファイバでは、コア径が小さいため、光ファイバ同士を接続するときの不整合による接続損失が大きく取扱が難しかった。また、レーザ光源からフォトニック結晶ファイバの端面に光を直接入射する際には、モードフィールド径不整合による結合損失が生じていた。
【0008】
そこで、本発明はマルチモードを伝搬可能であって接続損失及び結合損失を低減した光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、コア領域と、前記コア領域を覆うクラッド領域と、を有する光ファイバであって、前記クラッド領域には複数の空孔が形成され、前記複数の空孔の直径は、前記コア領域から前記光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径することを特徴とする光ファイバを提供する。
【0010】
このような構成によると、複数の空孔の直径が光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径しているため、クラッド領域の一部が見かけ上のコア領域となり、コア領域が実質的に広がる。これにより、モードフィールド径が拡大し、マルチモードが伝搬可能となる。さらに、複数の空孔が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、光ファイバの曲げの曲率半径を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。空孔が形成されていない通常の光ファイバにおいては、二酸化ゲルマニウム等のドーパントを添加することにより屈折率を制御しているが、この場合には光の波長が変化するとビーム径も変化するためビーム径の安定した出力を得ることが難しく、他の光ファイバとの接続時に接続損失が発生していた。しかし、本発明の光ファイバによると、光の波長が変化してもビーム径は略一定であるため、他の光ファイバとの接続時に接続損失の低減を図ることができる。
【0011】
また、前記複数の空孔の直径は、前記光ファイバの中心からの距離の2乗に比例してもよい。
【0012】
このような構成によると、複数の空孔の直径が光ファイバの中心からの距離の2乗に比例しているため、実効的な屈折率分布が2乗分布に近くなる。これにより、クラッド領域からの反射によるモードの影響を受けにくくなり損失を低減することができる。さらに、複数の空孔が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、光ファイバの曲げの曲率半径を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。
【0013】
また、前記複数の空孔は、前記クラッド領域に多角形をなすように形成され、前記多角形は複数の層で構成され、前記中心側の少なくとも3層の前記空孔の直径は前記中心からの距離の2乗に比例してもよい。
【0014】
このような構成によると、中心側の少なくとも3層の空孔の直径は中心からの距離の2乗に比例しているため、クラッド領域の一部が見かけ上のコア領域となり、中心側の少なくとも3層に対応する部分にまでコア領域が広がる。これにより、モードフィールド径が拡大し、マルチモードが伝搬可能となる。さらに、複数の空孔が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、光ファイバの曲げの曲率半径を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。
【0015】
また、前記空孔は複数の層で構成され、前記複数の層のうち、前記径方向外側の少なくとも2層の前記空孔の直径は互いに同一であってもよい。
【0016】
このような構成によると、前記複数の層のうち、径方向外側の少なくとも2層の空孔の直径は互いに同一であるため、径方向外側の2層で光が外部に漏れることを低減できる。これにより、光ファイバの閉じ込め損失の抑制を図ることができる。
【0017】
本発明の別の観点によると、上述の光ファイバが端部に接続されていることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0018】
このような構成によると、光ファイバケーブルには上述の光ファイバが接続されているため、モードフィールド径不整合による損失を抑制し、光ファイバ端部から入射する光を高効率で取り込むことができる。光ファイバケーブルを、例えばファイバコリメータに用いることにより、広いビーム径の光を高効率で取り込むことができるため、レンズと光ファイバケーブルとの位置合わせが容易になる。
【0019】
本発明の別の観点によると、第1光ファイバと第2光ファイバとを接続する光ファイバ接続方法であって、前記第1光ファイバの一端と第2光ファイバの一端とを対向させるステップと、前記第1光ファイバの一端に、コア領域と、前記コア領域を覆うクラッド領域と、を有する第3光ファイバであって、前記クラッド領域には複数の空孔が形成され、前記複数の空孔の直径は、前記コア領域から前記第3光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径している前記第3光ファイバの一端を接続するステップと、前記第3光ファイバの他端と前記第2光ファイバの一端とを接続するステップと、からなることを特徴とする光ファイバ接続方法を提供する。
【0020】
このような構成によると、第1光ファイバと第2光ファイバとの間に光ファイバの径方向外方に向かうにつれて拡径する空孔が形成された第3光ファイバが挿入されているため、第3光ファイバによって第3光ファイバに入射した光のビーム径が変化する。これにより、第3光ファイバから出射した光を第2光ファイバの導波モードに近い状態で第2光ファイバに入射させることができるため、第1光ファイバと第2光ファイバとのモードフィールド径不整合を抑制し、接続損失を低減することができる。
【0021】
また、前記複数の空孔の直径は、前記第3光ファイバの中心からの距離の2乗に比例してもよい。
【0022】
このような構成によると、複数の空孔の直径が光ファイバの中心からの距離の2乗に比例しているため、実効的な屈折率分布が2乗分布に近くなる。これにより、クラッド領域からの反射によるモードの影響を受けにくくなり、損失を低減することができる。さらに、複数の空孔が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、光ファイバの曲げの曲率半径を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。
【0023】
また、前記複数の空孔は、前記クラッド領域に多角形をなすように形成され、前記多角形は複数の層で構成され、前記中心側の少なくとも3層の前記空孔の直径は前記中心からの距離の2乗に比例してもよい。
【0024】
このような構成によると、中心側の少なくとも3層の空孔の直径が光ファイバの中心からの距離の2乗に比例しているため、クラッド領域の一部が見かけ上のコア領域となり、中心側の少なくとも3層に対応する部分にまでコア領域が広がる。これにより、モードフィールド径が拡大し、マルチモードが伝搬可能となる。さらに、複数の空孔が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、光ファイバの曲げの曲率半径を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。
【0025】
また、前記空孔は複数の層で構成され、前記複数の層のうち、前記径方向外側の少なくとも2層の前記空孔の直径は互いに同一であってもよい。
【0026】
このような構成によると、前記複数の層のうち、径方向外側の少なくとも2層の空孔の直径は互いに同一であるため、径方向外側の2層で光が外部に漏れることを低減できる。これにより、光ファイバの閉じ込め損失の抑制を図ることができる。
【0027】
また、前記第3光ファイバの他端と前記第2光ファイバの一端との間には所定物質が介在していてもよい。
【0028】
このような構成によると、所定物質である空気やフィルタ、各種光学素子が第3光ファイバの他端と第2光ファイバの一端との間に介在していても、第3光ファイバによって第3光ファイバに入射した光のビーム径が変化する。これにより、第3光ファイバから出射した光を第2光ファイバの導波モードに近い状態で第2光ファイバに入射させることができるため、第1光ファイバと第2光ファイバとのモードフィールド径不整合を抑制し、第1光ファイバと第2光ファイバとの接続損失を低減することができる。特に第1光ファイバと第2光ファイバとをコネクタ接続する場合には、意図せずにその間に間隙ができてしまうことがあるが、第3光ファイバによって間隙により生じる接続損失が低減される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、マルチモードを伝搬可能であって接続損失及び結合損失を低減した光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態による光ファイバの断面図。
【図2】光ファイバの屈折率分布を示し、(a)従来の光ファイバの屈折率分布を示す図、(b)本発明の実施の形態の光ファイバの屈折率分布を示す図。
【図3】光ファイバのビーム径を示し、(a)従来の光ファイバのビーム径を示す図、(b)本発明の実施の形態の光ファイバのビーム径を示す図。
【図4】光ファイバの光パワーを示し、(a)従来の光ファイバの光パワーを示す図、(b)本発明の実施の形態の光ファイバの光パワーを示す図。
【図5】本発明の実施の形態による光ファイバケーブルを示す図。
【図6】図5の状態における光ファイバの(a)光パワーを示す図、(b)ビーム径を示す図。
【図7】光ファイバの接続方法であって、(a)従来の光ファイバの接続方法を示す図、(b)本実施の形態の光ファイバの接続方法を示す図。
【図8】光ファイバのビーム径を示し、(a)図7(a)におけるビーム径を示す図、(b)図7(b)におけるビーム径を示す図。
【図9】光ファイバのパワーを示し、(a)図7(a)における光パワーを示す図、(b)図7(b)における光パワーを示す図。
【図10】従来の光ファイバの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態による光ファイバを図1乃至図9に基づき説明する。

【0032】
図1に示すように、光ファイバの一例であるフォトニック結晶ファイバ1は純粋石英からなり、コア領域2と、クラッド領域3と、を有する。クラッド領域3には、フォトニック結晶ファイバ1の中心Cを中心とする六角形を成すように複数の空孔4が形成されている。図示していないが、フォトニック結晶ファイバ1の外周にファイバ保護のためのジャケット領域を設けてもよい。

【0033】
本実施の形態では、フォトニック結晶ファイバ1の径方向に6層の空孔4が形成され、径方向外方に向かうにつれて空孔4の直径が拡大している。第1層から第4層までの空孔4の直径dは、中心Cから空孔4までの距離rとの関係において、以下ように決定される。
(数1)
=kr (kは定数)
つまり、第n層の直径dは、空孔4から中心Cまでの距離rの2乗に比例する(以下、2乗分布という)。第5層及び第6層の空孔4は、第4層の空孔4と同一の直径を有する。本実施の形態では、第1層を0.169μm、第2層を0.678μm、第3層を1.52μm、第4層から第6層までを2.71μmとした。つまり、本実施の形態では、中心C側の4層(第1層、第2層、第3層、及び第4層)の空孔4の直径を2乗分布とし、径方向外側の3層(第4層、第5層、及び第6層)の空孔4の直径を互いに同一とした。第4層以降の空孔4の直径を一定にすることにより、閉じ込め損失の抑制を図っている。フォトニック結晶ファイバ1では、各空孔4の中心間距離Aが一定となっている。図10に示す従来例では、空孔104の直径をすべて2.71μmとしている。図1における空孔4が形成されている位置と図10における空孔104が形成されている位置とは、略同一である。

【0034】
図2乃至図6は、従来のフォトニック結晶ファイバ101及び本実施の形態のフォトニック結晶ファイバ1の端面に、波長1.55μm、光強度がピークの1/eとなるビーム直径30μmのガウスビームを入射した場合の挙動を示す模式的なグラフである。

【0035】
図2に、縦軸に屈折率、横軸に位置を表すグラフであって、従来のフォトニック結晶ファイバ101を図2(a)に、本実施の形態のフォトニック結晶ファイバ1を図2(b)に示す。図2は、中心を通る線上における等価的な屈折率分布を表している。図2(a)に示すフォトニック結晶ファイバ101では、すべての空孔104の直径が同一であることから、空孔104が形成されている箇所は屈折率が低くなっている。具体的には、中心から直径約7.2μmの部分が屈折率の高いコア領域102となり、クラッド領域103に入ると空孔104内の空気の作用によって屈折率が急激に低下する。フォトニック結晶ファイバ101周縁になると、空孔104が無くなることにより再び屈折率がコア領域102と略同一となる。コア領域102に入射した光は領域内で全反射を繰り返すことにより、フォトニック結晶ファイバ101の内部を伝搬する。

【0036】
図2(b)に示すフォトニック結晶ファイバ1では、同様に中心部分のコア領域2における屈折率が最も高くなっている。クラッド領域3における空孔4の第1層から第3層目に相当する部分では空孔4の断面積が段階的に大きくなっているため、屈折率が段階的に低下している。これにより、第1層から第3層までの空孔4の部分も見かけ上のコア領域となり、従来のフォトニック結晶ファイバ101と比べてモードフィールド径が大きくなる。従って、フォトニック結晶ファイバ101では1つの導波モードのみ伝搬可能であったが、本実施の形態のフォトニック結晶ファイバ1では複数の導波モードを伝搬することができる。

【0037】
図3に、縦軸にビーム径、横軸に伝搬距離を表すグラフであって、従来のフォトニック結晶ファイバ101を図3(a)に、本実施の形態のフォトニック結晶ファイバ1を図3(b)に示す。図3(a)に示すフォトニック結晶ファイバ101では、単一の導波モードのみ伝搬するため、光が伝搬するに従って急速に一定のビーム径(約8.5μm)に収束する。図3(b)に示すフォトニック結晶ファイバ1では、複数の導波モードを伝搬可能であるため、モード間干渉によってビーム径が周期的に変化する。

【0038】
図4に、縦軸に光パワー、横軸に伝搬距離を表すグラフであって、従来のフォトニック結晶ファイバ101を図4(a)に、本実施の形態のフォトニック結晶ファイバ1を図4(b)に示す。光パワーでは、ファイバ入射時のパワーを1とする。図4(a)に示すフォトニック結晶ファイバ101では、導波モードと合致しない成分については放射損失として外部に漏れ出してしまうため、伝搬距離が進むにつれて光パワーが大きく減衰する。図4(b)に示すフォトニック結晶ファイバ1では、複数の導波モードを伝搬することができるため放射損失が抑制されて伝搬する光パワーの減衰が低減される。

【0039】
図5は、フォトニック結晶ファイバ101の端部に長さ1.14mmのフォトニック結晶ファイバ1の一端を接続して光ファイバケーブル10とし、フォトニック結晶ファイバ1の他端からビームLを入射したことを表している。フォトニック結晶ファイバ1の長さは、フォトニック結晶ファイバ101に入射する光のビーム径が図3(a)に示すフォトニック結晶ファイバ101の導波モードのビーム径(本実施の形態では8.5μm)に最も近くなる長さになるように定められる。このときのフォトニック結晶ファイバ1の一端(z=0)からの伝搬距離zと光パワー及びビーム径との関係を図6に示す。フォトニック結晶ファイバ101の端部にフォトニック結晶ファイバ1を接続することにより、ガウスビームを入射した際にフォトニック結晶ファイバ1内に複数の導波モードが励起され、伝搬する光パワーの減衰が低減されるとともに、フォトニック結晶ファイバ1内でビームLのビーム径が周期的に変化する。フォトニック結晶ファイバ1の長さは、フォトニック結晶ファイバ101に入射する光のビーム径が図3(a)に示すフォトニック結晶ファイバ101の導波モードのビーム径に最も近くなるように定められているため、モードフィールド径不整合による損失を低減でき、効率よくフォトニック結晶ファイバ101に光を入射できる。これにより、一定のビーム径で90%以上の効率でフォトニック結晶ファイバ101に光を入射させることができる。

【0040】
次に、図7乃至図9に基づいて、フォトニック結晶ファイバ1を用いることによるフォトニック結晶ファイバ同士の接続について説明する。

【0041】
フォトニック結晶ファイバ同士を接続する際に、一のフォトニック結晶ファイバ端面と他のフォトニック結晶ファイバ端面との間に間隙がある場合又はフィルタ等が挿入されている場合は、端面から出射された光のビーム径が回析によって広がる。これにより、一のフォトニック結晶ファイバと他のフォトニック結晶ファイバとの間でモードフィールド径不整合となり、接続損失が増大する。本実施の形態では、フォトニック結晶ファイバ同士の接続の際に、両者の間にフォトニック結晶ファイバ1を挿入することで、接続損失を大幅に低減することができる。

【0042】
図7(a)に一のフォトニック結晶ファイバ101と他のフォトニック結晶ファイバ101とを間隙G1をあけて接続する状態を示し、図7(b)に一のフォトニック結晶ファイバ101とフォトニック結晶ファイバ1とを接続し、間隙G2をあけて他のフォトニック結晶ファイバ101を接続する状態を示す。間隙G1、G2には空気が満たされているが、当該箇所にフィルタや光学素子等が存在してもよい。各ファイバの接続は、光コネクタを用いてもよく、メカニカル接続やアーク放電等による融着接続であってもよい。各ファイバ間では、接続損失低減のためにそれぞれのフォトニック結晶ファイバの光軸が互いに一致するように接続される。

【0043】
本実施の形態においてフォトニック結晶ファイバ101を互いに接続する際は、各フォトニック結晶ファイバ101を互いの光軸が一致するように対向させ、フォトニック結晶ファイバ1の一端と一のフォトニック結晶ファイバ101の一端とを接続し、フォトニック結晶ファイバ1の他端と他のフォトニック結晶ファイバ101とを間隙G2をあけて接続する。図7(a)及び図7(b)の矢印で示すように、この状態で一のフォトニック結晶ファイバ101の端面からビームを入射する。本実施の形態では、間隙G1、G2を0.3mmとしフォトニック結晶ファイバ1の長さを1.4mmとする。フォトニック結晶ファイバ1の長さは、間隙G2の距離に応じて適切な値を選択する。具体的には、フォトニック結晶ファイバ1の長さは、他のフォトニック結晶ファイバ101に入射する光のビーム径が他のフォトニック結晶ファイバ101のモードフィールド径に近くなるように設定される。図7(b)においてビームが入射される一のフォトニック結晶ファイバ101は第1光ファイバの一例であり、フォトニック結晶ファイバ1は第3光ファイバの一例であり、フォトニック結晶ファイバ1と間隙G2をあけて接続される他のフォトニック結晶ファイバ101は第2光ファイバの一例である。間隙G2にある空気は、所定物質の一例である。

【0044】
図8(a)に図7(a)におけるビーム径とフォトニック結晶ファイバ101の端部(z=0)からの伝搬距離zとの関係を表すグラフを示し、図8(b)に図7(b)におけるビーム径とフォトニック結晶ファイバ101の端部(z=0)からの伝搬距離zとの関係を表すグラフを示す。フォトニック結晶ファイバ1を挿入していない図8(a)では、間隙G2があることにより回析が発生してビーム径が広がっている。そのため、間隙G1が大きくなるにつれてモードフィールド径不整合による接続損失が増大する。具体的には、間隙G1が0.3mmであることから、図8(a)により伝搬距離zが0.3のときビーム径は約30μmとなる。フォトニック結晶ファイバ101に入射するビーム径は30μmとなり、図3(a)のビーム径8.5μmと大きくかけ離れるため、モードフィールド径不整合による接続損失が増大する。

【0045】
フォトニック結晶ファイバ1を挿入した図8(b)では、フォトニック結晶ファイバ1内をビームが伝搬している間はビーム径が周期的に変化し、間隙G2の部分(図8(b)におけるグレー部分)に至っても同様にビーム径が変化している。フォトニック結晶ファイバ1の長さを最適化することにより、フォトニック結晶ファイバ101に入射するビーム径を所望のビーム径8.5μmに近づけることができる。これにより、モードフィールド径不整合による接続損失を低減できる。

【0046】
図9(a)に図7(a)における光パワーと伝搬距離との関係を表すグラフを示し、図9(b)に図7(b)における光パワーと伝搬距離との関係を表すグラフを示す。図9における伝搬距離は、図7(a)及び(b)における他のフォトニック結晶ファイバ101の端面からの距離を示す。図9(a)では、間隙G1による接続損失で光パワーが急激に低下しているが、フォトニック結晶ファイバ1を挿入することにより、間隙G2により発生する光パワーの低減を抑制することができる。

【0047】
このような構成によると、複数の空孔4の直径がフォトニック結晶ファイバ1の径方向外方に向かうにつれて拡径しているため、クラッド領域3における空孔4の第1層から第3層までの領域が見かけ上のコア領域2となり、第1層から第3層に対応する部分にまでコア領域2が実質的に広がる。これにより、モードフィールド径が拡大し、マルチモードが伝搬可能となる。さらに、複数の空孔4が形成されていることにより、曲げ損失が低減され、フォトニック結晶ファイバ1の曲げの曲率を小さくすることができ、局所配線の容易化やコネクタ等の部品の小型化を行うことができる。

【0048】
このような構成によると、複数の空孔4の直径が光ファイバの中心からの距離の2乗に比例しているため、フォトニック結晶ファイバ1における実効的な屈折率分布が2乗分布に近くなる。これにより、クラッド領域3からの反射によるモードの影響を受けにくくなり、損失を低減することができる。

【0049】
このような構成によると、第4層から第6層の空孔4の直径は互いに同一であるため、第5層以降の層で光が外部に漏れることを低減できる。これにより、フォトニック結晶ファイバ1の閉じ込め損失の抑制を図ることができる。

【0050】
このような構成によると、光ファイバケーブル10には上述のフォトニック結晶ファイバ1が接続されているため、モードフィールド径不整合による損失を抑制し、光源等から発せられフォトニック結晶ファイバ1端部から入射する光を高効率で取り込むことができる。光ファイバケーブル10を、例えばファイバコリメータに用いることにより、広いビーム径の光を高効率で取り込むことができるため、レンズと光ファイバケーブル10との位置合わせが容易になる。

【0051】
このような構成によると、フォトニック結晶ファイバ101の間に、径方向外方に向かうにつれて拡径する空孔4が形成されたフォトニック結晶ファイバ1が挿入されているため、フォトニック結晶ファイバ1によってフォトニック結晶ファイバ1に入射した光のビーム径が変化する。これにより、フォトニック結晶ファイバ1から出射した光をフォトニック結晶ファイバ101の導波モードに近い状態でフォトニック結晶ファイバ101に入射させることができるため、モードフィールド径不整合を抑制し、接続損失を低減することができる。

【0052】
このような構成によると、間隙G2がフォトニック結晶ファイバ1の他端とフォトニック結晶ファイバ101の一端との間に介在していても、フォトニック結晶ファイバ1によってフォトニック結晶ファイバ1に入射した光のビーム径が変化する。これにより、フォトニック結晶ファイバ1から出射した光をフォトニック結晶ファイバ101の導波モードに近い状態でフォトニック結晶ファイバ101に入射させることができるため、モードフィールド径不整合を抑制しファイバ間の接続損失を低減することができる。

【0053】
本発明による光ファイバ、光ファイバケーブル、及び光ファイバ接続方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。

【0054】
上述の実施の形態では、フォトニック結晶ファイバ1の材料としてドーパントが添加されていない純粋石英を用いていたが、これに限定されない。例えば、加工性の良い低融点の多成分ガラスやプラスチック高分子を用いてもよい。

【0055】
上述の実施の形態では、フォトニック結晶ファイバ1の空孔4が径方向外方に向かうにつれて中心Cからの距離の2乗に比例するように定められたが、これに限定されず、クラッド領域3の少なくとも一部を見かけ上のコア領域となるように径方向外方に向けて空孔が拡径するように定められればよい。

【0056】
上述の実施の形態では、第1層から第4層までの空孔4を2乗分布としたが、例えば、中心C側の少なくとも3層の空孔を2乗分布としてもよい。また、フォトニック結晶ファイバ1の第4層から第6層の空孔4の直径が同一だったが、例えば、径方向外側の少なくとも2層の直径が互いに同一であっても閉じ込め損失の抑制を図ることができる。

【0057】
上述の実施の形態では、フォトニック結晶ファイバ1の空孔4は正六角形をなすように配置されていたが、これに限定されず、中心Cを中心とする多角形であってもよく、中心Cを中心とする円をなすように配置されていてもよい。また、空孔4の層数も6層に限定されない。

【0058】
上述の実施の形態では、光ファイバ接続方法としてフォトニック結晶ファイバ1とフォトニック結晶ファイバ101とを接続したが、これに限定されない。フォトニック結晶ファイバ1と空孔が形成されていない通常の光ファイバとを接続してもよい。同様に、光ファイバケーブル10においても、フォトニック結晶ファイバ1と空孔が形成されていない通常の光ファイバとを接続してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,101 フォトニック結晶ファイバ
2,102 コア領域
3,103 クラッド領域
4,104 空孔
10 光ファイバケーブル
A 間隔
C 中心
d 直径
G1,G2 間隙
L ビーム
r 距離
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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