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明細書 :スクアレンを蓄積した培養微細藻類を含有する魚介類養殖用飼料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-077188 (P2017-077188A)
公開日 平成29年4月27日(2017.4.27)
発明の名称または考案の名称 スクアレンを蓄積した培養微細藻類を含有する魚介類養殖用飼料
国際特許分類 A23K  50/80        (2016.01)
A01K  61/10        (2017.01)
A23K  10/30        (2016.01)
FI A23K 1/18 102
A01K 61/00 A
A23K 1/14
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-205410 (P2015-205410)
出願日 平成27年10月19日(2015.10.19)
発明者または考案者 【氏名】水間 洋
【氏名】下野 正美
【氏名】伊藤 純一
【氏名】渡邉 信
【氏名】吉田 昌樹
【氏名】伊藤 順子
【氏名】多田 清志
出願人 【識別番号】598062608
【氏名又は名称】株式会社 ヒガシマル
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087871、【弁理士】、【氏名又は名称】福本 積
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100117019、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 陽一
【識別番号】100150810、【弁理士】、【氏名又は名称】武居 良太郎
【識別番号】100182730、【弁理士】、【氏名又は名称】大島 浩明
審査請求 未請求
テーマコード 2B005
2B104
2B150
Fターム 2B005GA01
2B005GA02
2B005GA06
2B005KA04
2B005LA06
2B005LB03
2B005MA01
2B005MA03
2B005MA05
2B005MB01
2B005MB05
2B005MC00
2B104AA01
2B104AA02
2B104AA03
2B104AA16
2B104AA17
2B104AA18
2B150AA07
2B150AA08
2B150AB03
2B150AB20
2B150AE01
2B150AE12
2B150AE31
2B150BA01
2B150BC10
2B150CE26
2B150CJ01
2B150CJ04
2B150CJ07
2B150CJ08
2B150DA32
2B150DA41
2B150DC13
2B150DD01
2B150DD31
2B150DD47
2B150DE01
2B150DG00
2B150DH35
要約 【課題】細胞内にスクアレンを蓄積した培養微細藻類を配合した魚介類養殖用の飼料、当該飼料を与えて魚介類を養殖する方法、及び当該方法により養殖した魚介類を提供することを課題とする。
【解決手段】発明者らは、細胞内にスクアレンを高レベルで蓄積したオーランチオキトリウム属藻類を配合した飼料を与えて魚介類を養殖することにより、藻類由来のスクアレンによって栄養強化された魚介類を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
魚介類養殖用の飼料であって、細胞内にスクアレンを蓄積した微細藻類を含む、当該飼料。
【請求項2】
前記微細藻類を、飼料の全重量に対して、乾燥藻体換算で1.0~20.0重量%含有する、請求項1に記載の飼料。
【請求項3】
魚介類に請求項1又は2のいずれかに記載の飼料を与える工程を含む、魚介類を養殖する方法。
【請求項4】
養殖時に与えた飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが養殖された魚介類の体内に蓄積する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
養殖時に与えた請求項1又は2のいずれかに記載の飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが体内に蓄積している、養殖魚介類、又はその加工品。
【請求項6】
養殖時に与えた請求項1又は2のいずれかに記載の飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが体内に少なくとも0.003重量%の量で蓄積している、請求項5に記載の養殖魚介類、又はその加工品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内にスクアレンを蓄積した微細藻類を配合した魚介類養殖用の飼料、当該飼料を与えて魚介類を養殖する方法、及び当該方法により養殖した魚介類に関する。
【背景技術】
【0002】
生物細胞の物質生産過程を利用して様々な有機物を取得する技術は、近年、地球温暖化又は埋蔵資源の枯渇等の問題から注目を集めている。特に、微生物が産生する炭化水素やトリアシルグリセロール等のオイル又は多糖類は、食料と競合せず、大量培養が可能であることから、工業的利用の期待が高く、微生物から様々なバイオ燃料やその他の有用成分を獲得する技術の開発が進められている。
【0003】
斯かる物質生産に利用される微生物の例として、ラビリンチュラ類(Labyrinthulomycetes)に属する藻類が挙げられる。ラビリンチュラ類藻類は様々な炭化水素や油脂を生産するものが報告されており、微生物を利用した物質生産技術の有望な材料として注目されている。例えば物質生産性ラビリンチュラ類藻類として、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸を多量に蓄積する性質を有するもの(SR21株、特許文献1)や、スクアレンを生産するものが知られている。(非特許文献1、2、3)。
【0004】
スクアレンは医療、化粧品およびサプリメントとして市場に広く出回っており、ワクチンのアジュバント、肌の保湿、新陳代謝の上昇や免疫力増強に効果があると言われている。現在流通しているスクアレンは深海鮫の肝油から抽出されており、特にツノザメ科に属するサメは魚体の約25%が肝臓で、肝臓の90%が肝油、肝油の90%がスクアレンである(非特許文献4)。その高いスクアレン含量のため、毎年推定1億尾の深海鮫が捕獲されている。ウロコアイザメは乱獲により個体数を減らし、国際資源保護連合により絶滅危惧種に指定された。現在は主にアイザメ、アブラツノザメ等が原料になっているが、近い将来それらの魚種も絶滅危惧種に指定される可能性が高い。
【0005】
一方、上記のような培養藻類を用いたスクアレン生産技術においては、供給源の確保の問題が生じることはなく、従来の技術と比較して低コストかつ高効率で安定してスクアレンを生産することが出来る。
【0006】
スクアレンのように有効成分を蓄積する培養藻類を用いた様々な有用成分の生産技術が確立されることにより、従来用いられていた生産技術の困難性のために高価にならざるを得なかった希少な有効成分がより手軽に利用できるようになることが予想される。
【0007】
スクアレンと同様に培養藻類を利用して生産が可能なDHAにおいて、これを養殖魚介類に与える飼料に配合し、その魚介類の可食部にDHAを蓄積させて、DHAを強化した魚介類を作製する試みがなされている。米国の自然由来飼料添加物メーカーのオルテックは、シゾキトリウム属藻類由来のDHAに富む培養抽出物を添加した飼料をアトランティックサーモンに与えたことを報告している(非特許文献5)。しかしながら、スクアレンを蓄積する培養微細藻類を給餌してスクアレンで栄養強化された養殖魚介類を作出することが可能であるかについては、この報告において何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】:特許第2764572号公報
【0009】

【非特許文献1】:G. Chen. et al. New Biotechnology 27, 382-289 (2010)
【非特許文献2】:Q. Li et al., J. Agric. Food Chem. 57(10), 4267-4272 (2009)
【非特許文献3】:K. W. Fan et al., World J. Microbiol. Biotechnol. 26, 1303-1309 (2010)
【非特許文献4】:油化学(1990), 39巻, 8号, 525-529
【非特許文献5】:みなと新聞(2015),7月8日,19077号,2p
【非特許文献6】:Biosci. Biotechnol. Biochem. (2011) 75(11), 2246-2248
【非特許文献7】:Journal of Applied Phycology, February 2014, Vol. 26, Issue 1, 29-41
【非特許文献8】:Tom D. Niehaus, 12260-12265, doi: 10.1073/pnas.1106222108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、細胞内にスクアレンを蓄積した培養微細藻類を配合した魚介類養殖用の飼料、当該飼料を与えて魚介類を養殖する方法、及び当該方法により養殖したスクアレン強化魚介類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
スクアレンを細胞内に蓄積するオーランチオキトリウムtsukuba-3株(受託番号:FERM AP-220147)は、培養条件下で1.29g/Lものスクアレンが生産可能であり(非特許文献6)、培養藻類由来のスクアレンの供給源として極めて有望である。発明者らは、そのような細胞内にスクアレンを高レベルで蓄積したオーランチオキトリウム属藻類を配合した飼料を与えて魚介類を養殖することにより、藻類由来のスクアレンによって栄養強化された魚介類を作製することに成功した。
【0012】
また、驚くべきことに、スクアレンを蓄積したオーランチオキトリウム属藻類の乾燥藻体を養殖飼料に配合して魚介類に与えた場合、精製スクアレンを同等量で養殖飼料に配合したものを魚介類に与えた場合と比較して、魚介類へのスクアレンの蓄積量が顕著に増大することが見出された。これらの新規かつ驚異的な知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0013】
従って、本願は、以下の発明を提供する。
1.魚介類養殖用の飼料であって、細胞内にスクアレンを蓄積した微細藻類を含む、当該飼料。
2.前記微細藻類を、飼料の全重量に対して、乾燥藻体換算で1.0~20.0重量%含有する、項目1に記載の飼料。
3.魚介類に項目1又は2のいずれかに記載の飼料を与える工程を含む、魚介類を養殖する方法。
4.養殖時に与えた飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが養殖された魚介類の体内に蓄積する、項目3に記載の方法。
5.養殖時に与えた項目1又は2のいずれかに記載の飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが体内に蓄積している、養殖魚介類、又はその加工品。
6.養殖時に与えた項目1又は2のいずれかに記載の飼料中に含まれている微細藻類が細胞内に蓄積していたスクアレンが体内に少なくとも0.003重量%の量で蓄積している、項目5に記載の養殖魚介類、又はその加工品。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、培養藻類由来のスクアレンを蓄積して栄養強化された魚介類の作製が可能となる。培養藻類を用いたスクアレンの生産技術の発達により、従来はコストの問題で実現が困難であった養殖魚介類の栄養強化という、スクアレンの新しい用途を案出できるようになった。
【0015】
また、下記実施例にて示すように、培養微細藻類の細胞内に蓄積させたスクアレンを藻体ごと配合した飼料を与えて魚介類を養殖すると、精製スクアレンを同等量で養殖飼料に配合したものを魚介類に与えた場合と比較して、魚介類へのスクアレンの蓄積量が顕著に増大することが見出された。養殖魚介類に有効成分を蓄積させて栄養強化を図るにあたり蓄積率を増大させることは、養殖のコストの削減及び取得される養殖魚介類の付加価値増大の観点から極めて好ましい。従って、本発明は、栄養強化養殖魚介類の作製技術において画期的な進歩をもたらすものである。
【0016】
スクアレンは経口摂取により様々な健康上の効果をもたらすことが知られている。本発明においてスクアレンで栄養強化した養殖魚介類を提供することで、消費者は当該養殖魚介類を食することにより、消費者の健康増進に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、スクアレン蓄積性藻類オーランチオキトリウム・マングロベイ(Aurantiochytrium mangrovei)の乾燥藻体又は精製スクアレンを配合した飼料を与えたクルマエビにおける、飼料中のスクアレン濃度とクルマエビ魚体中のスクアレン含量との間の関連性を示す。
【図2】図2は、スクアレン蓄積性藻類オーランチオキトリウム・マングロベイの乾燥藻体又は精製スクアレンを配合した飼料を与えたマダイにおける、飼料中のスクアレン濃度とマダイ魚体中のスクアレン含量との間の関連性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
魚介類養殖用飼料
本発明において、魚介類養殖用飼料は、魚介類の養殖に適切な任意の飼料成分を含有する。当業者は、養殖する魚介類の種類や具体的な養殖の条件を考慮して、適切な飼料を選択し、又は飼料成分を配合することを承知している。

【0019】
前記飼料成分として、好ましくは、具体的な魚介類の養殖の条件に適合するように、動物又は植物由来の加工物又は抽出物、油脂、炭水化物、有機酸、ビタミン、ミネラル、抗生物質、香料、着色料、保存料、賦形剤、増量剤、増粘剤、接着剤、水和剤、崩壊剤、乳化剤、pH調整剤等の、飼料調製に通常利用される材料を含有する。

【0020】
前記魚介類養殖用飼料は、任意の適切な形態、例えばペースト、粉末、モイストペレット、ドライペレット、エクストルーダーペレット、フレーク、ケーキ若しくは錠剤の形態であってもよい。

【0021】
本発明の魚介類養殖用飼料を与えて養殖される魚介類としては、当該飼料によって養殖が可能なあらゆる養殖魚介類が想定され、限定されないが、ブリ、マダイ、カワハギ、カンパチ、マグロ、フグ、シマアジ、スズキ、ヒラメ、アジ、サバ、ハタ類、サーモンなどの海産養殖魚類、また、ニジマス、コイ、ウナギ、アユ、アマゴ、イワナなどの淡水養殖魚類、クルマエビ、ウシエビ、ホワイトシュリンプ、タイショウエビ、テンジクエビ、ブルーシュリンプ、オニテナガエビ等の海産および淡水エビ類、ガザミ、タラバガニ、ズワイガニ、ケガニ、シャコ等のカニ類を含む。

【0022】
本発明において、前記魚介類養殖用飼料は、細胞内にスクアレンを蓄積した培養微細藻類を含有する。

【0023】
細胞内にスクアレンを蓄積し得る微細藻類は、限定されないが、オーランチオキトリウム属、シゾキトリウム属、パリエティキトリウム属、ボトリオキトリウム属、スラウストキトリウム属、アプラノキトリウム属、シキオイドキトリウム属、オブロンギキトリウム属などのヤブレツボカビ科の藻類(例えば非特許文献7)や、ボツリオコッカス属藻類(非特許文献8)、またはこれらを起源とする藻類変異体、組換え藻類が挙げられる。

【0024】
本発明の特定の態様において、細胞内にスクアレンを蓄積し得る微細藻類はオーランチオキトリウム属藻類である。

【0025】
本発明の飼料に配合される培養微細藻類は、スクアレンを生産する能力の優れた株を用いるのが好ましい。そのような藻類株は、天然に採取及び分離されたものであっても、突然変異誘導及びスクリーニングを経てクローニングされたものであっても、あるいは遺伝子組み換え技術を利用して樹立されたものであってもよい。当該藻類株において改善され得る特性は、スクアレン生産効率、増殖効率、最適ではない培養条件(日照、栄養、温度、pH、成分組成等)に対する耐性、スクアレン以外の更なる有効成分の生産、又は藻体が飼料として配合された場合の魚介類へのスクアレン蓄積効率等、本発明において飼料に配合されるスクアレン供給源として調製されるのに有利な任意の特性である。

【0026】
上記微細藻類の培養は、当該技術分野において確立された方法で行われる。即ち、通常の維持培養は、適切に成分調製した培地に藻類を播種し、定法に従い行われる。

【0027】
微細藻類を培養するための培地は、本質的に、塩分、炭素供給源及び窒素供給源を含有する。一般的に、微細藻類の培養には、いわゆるGTY培地(人工海水塩10-40g/L、D(+)グルコース20-100g/L、トリプトン10-60g/L、酵母抽出物5-40g/L)が用いられる。本発明に関する培地も、基本的にはこれらの3つの要素を組み合わせて構成される。

【0028】
炭素源としてはグルコース、フルクトース、スクロース等の糖類がある。これらの炭素源を、例えば、培地1リットル当たり20~120gの濃度で添加する。

【0029】
前記微細藻類の培養培地には、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素、又は酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素、又は酵母抽出物、コーンスチープリカー、ポリペプトン、ペプトン、トリプトン等の生物由来消化物等の、様々な窒素源が添加され得る。

【0030】
海洋性藻類を培養する場合、培地には適切な量の人工海水又は天然海水が添加される。好ましくは、人工海水は、最終的な培地の塩分濃度が海水(塩分濃度3.4%(w/v))の約10%(v/v)~約100%(v/v)、例えば塩分濃度が約1.0~3.0%(w/v)となるように添加される。

【0031】
微細藻類の培養は、培養温度5~40℃、好ましくは10~35℃、より好ましくは15~30℃にて行われる。継代は、藻類株の増殖速度に応じて、通常1~10日間、好ましくは3~7日間置きに行われる。培養は通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養で行うことができるが、好ましくは通気攪拌培養又は振とう培養で培養する。藻類株の長期の保存には、液体培地に1.0~3.0%濃度の寒天を加えて凝固させた寒天培地を用いてもよく、より長期の保存に際しては、藻類株は定法に従い凍結保存されてもよい。

【0032】
培養終了後、微細藻類を飼料に配合するための適切な形態に加工する。本発明の飼料に配合する微細藻類の形態は、培養物、濃縮藻体、乾燥藻体、ホモジネート、粗抽出物等、性状は問わないが、いずれも簡素な手順で調製が可能なものである。例えば、前記培養物から遠心分離にて固形分を回収することでウェットな藻体を得て、これをスプレードライ、ドラム乾燥機等で乾燥することで乾燥藻体を取得する。特定の態様において、飼料への培養微細藻類の配合率は、乾燥藻体換算で0.5~40.0重量%、好ましくは1.0~30.0重量%、より好ましくは2.5~20.0重量%であるが、実際の配合率は、養殖される魚介類の種類や配合される藻類の種類、スクアレン生産能力、又は所望の魚介類へのスクアレン蓄積量に応じて、当業者が容易に決定できる。

【0033】
本発明において、当該培養微細藻類を配合した飼料を与えて、魚介類が養殖される。養殖の諸条件は、養殖される魚介類の種類に応じて当業者が適宜選択することが出来る。

【0034】
本発明において、前記培養微細藻類を配合した飼料を与えて養殖した魚介類の体内に、当該培養微細藻類由来のスクアレンが蓄積する。蓄積されるスクアレンの量は、養殖される魚介類の種類、本発明の飼料に配合した藻類の種類及び量、本発明の飼料の給餌期間、並びに他の養殖の諸条件によって変動し得る。しかしながら、当業者は、本発明の教示に基づいて通常の養殖条件の検討を行うことにより、本発明の方法を用いて養殖する魚介類が所望の栄養強化を達成するのに必要な条件を容易に決定することが出来る。

【0035】
本発明において、スクアレンで栄養強化した魚介類は、肝臓に優勢にスクアレンを蓄積している。この傾向は、スクアレンが深海鮫の肝臓内に大量に蓄積する現象と一致している。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定するものではない。また、実施例中「%」で表示されているものは、特記されていなければ「重量%」の意味である。
【実施例】
【0037】
実施例1.クルマエビにおける飼育試験1
スクアレン蓄積性オーランチオキトリウムのオーランチオキトリウム・マングロベイ(Aurantiochytrium mangrovei)を定法に従い培養し、藻体を回収し、乾燥藻体を調製した。当該乾燥藻体は、6.6%のスクアレンを含有していた。クルマエビ養殖用飼料に当該乾燥藻体を0、2.5、5.0、10.0、20.0%配合した飼料を作製し、それらを与えたクルマエビ体内へのスクアレンの蓄積を検討した。
【実施例】
【0038】
供試魚および飼育方法
株式会社ヒガシマルの臨海研究所で人工種苗生産した平均体重1.09gのクルマエビを、100L容角型水槽に15尾ずつ収容して5試験区を設けた。各水槽には加温濾過海水を注水し、期間中の平均水温は19.0℃であった。
【実施例】
【0039】
表1に示した試験飼料組成に従い、試験飼料を作製した。各原料を秤量・混合した後、微粉砕し、外割で30%の水を加えて混練した後、ペレットマシンを用いて直径約2mmのペレットを成型した。これを熱風乾燥機により乾燥し試験飼料を作製した。飼育期間は56日間とし、1日1回日没後に各試験飼料を給与した。翌朝に残餌、脱皮殻、糞を回収し、残餌量に応じて給餌量を決定した。試験区は各試験飼料につき3反復区を設けたが、飼育試験終了後は同一試験区である45尾の供試魚をプールし、ミンチにして分析に用いた。統計処理に関して、得られた結果は一元分散分析で有意差を確認した後、Tukeyの多重比較検定法で各試験区における平均値の有意差判定を行った(p<0.05)。
【表1】
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【実施例】
【0040】
飼育成績
飼育成績を表2に示した。平均体重、平均増重率、生残率、飼料効率に有意差はないが、日間摂餌率は試験区4が有意に高くなったことから、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウム藻体は摂餌を促進させる効果もあることが示唆された。これらの結果から、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウムは成長に関して悪影響を及ぼさないことが確認された。
【表2】
JP2017077188A_000004t.gif
【実施例】
【0041】
表3に開始時および終了時における全魚体の一般成分、スクアレン含量を示した。一般成分に区間差はないが、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウムの配合量が多くなると全魚体のスクアレン含量は上昇し、最大で0.0103%の蓄積が確認された。飼料中のスクアレン含量が0.17%となる試験区1において、魚体へのスクアレン蓄積は確認されなかった。
【表3】
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【実施例】
【0042】
実施例2.マダイにおける飼育試験1
実施例1で使用したスクアレン蓄積性オーランチオキトリウム乾燥藻体を0、2.5、5.0%配合したマダイ用配合飼料を作製し、それらを与えたマダイ体内へのスクアレン蓄積を検討した。
【実施例】
【0043】
供試魚および飼育方法
株式会社ヒガシマルの臨海研究所で飼育している平均体重114.3gのマダイを、1t容円型水槽に15尾ずつ収容して3試験区を設けた。各水槽には濾過海水を注水し、期間中の平均水温は22.2℃であった。
【実施例】
【0044】
表4に示した試験飼料組成に従い、試験飼料を作製した。各原料を秤量・混合した後、微粉砕し、外割で30%の水を加えて混練した後、ペレットマシンを用いて直径約5mmのペレットを成型した。これを熱風乾燥機により乾燥し試験飼料を作製した。飼育期間は56日間とし、週6日、1日2回8:00および16:00に各試験飼料を飽食給与した。試験区は反復区を設けず、飼育試験終了後は15尾の供試魚をプールし、ミンチにして分析に用いた。
【表4】
JP2017077188A_000006t.gif
【実施例】
【0045】
飼育成績
飼育成績を表5に示した。全てのパラメータに区間差はなく、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウムは養殖マダイの成長に関して悪影響を及ぼさないことが確認された。
【実施例】
【0046】
【表5】
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【実施例】
【0047】
表6に開始時および終了時における全魚体の一般成分、スクアレン含量を示した。一般成分に区間差はないが、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウムの配合量の増大に応じて全魚体のスクアレン含量は上昇し、最大で0.052%のスクアレン蓄積が確認された。
【表6】
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【実施例】
【0048】
実施例3.クルマエビにおける飼育試験2
クルマエビ用配合飼料へスクアレン(和光純薬工業、試薬特級)を0、0.1、0.5、1.0、2.0%配合したクルマエビ用配合飼料を与えたクルマエビへのスクアレンの蓄積を検討した。
【実施例】
【0049】
供試魚および飼育方法
株式会社ヒガシマルの臨海研究所で人工種苗生産した平均体重1.09gのクルマエビを、100L容角型水槽に15尾ずつ収容して5試験区を設けた。各水槽には加温濾過海水を注水し、期間中の平均水温は24.0℃であった。
【実施例】
【0050】
表7に示した試験飼料組成に従い、試験飼料を作製した。各原料を秤量・混合した後、微粉砕し、外割で30%の水を加えて混練した後、ペレットマシンを用いて直径約2mmのペレットを成型した。これを熱風乾燥機により乾燥し試験飼料を作製した。飼育期間は56日間とし、1日1回日没後に各試験飼料を給与した。翌朝に残餌、脱皮殻、糞を回収し、残餌量に応じて給餌量を決定した。試験区は各試験飼料につき3反復区を設けたが、飼育試験終了後は同一試験区である45尾の供試魚をプールし、ミンチにして分析に用いた。統計処理に関して、得られた結果は一元分散分析で有意差を確認した後、Tukeyの多重比較検定法で各試験区における平均値の有意差判定を行った(p<0.05)。
【表7】
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【実施例】
【0051】
飼育成績
飼育成績を表8に示した。日間摂餌率を除く、その他のパラメータで有意差はなく、飼料へのスクアレン添加は成長に悪影響を及ぼさないことが確認された。
【表8】
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【実施例】
【0052】
表9に、養殖開始時および終了時における全魚体の一般成分及びスクアレン含量を示した。一般成分に区間差はないが、スクアレンの配合量の増大に応じて全魚体のスクアレン含量が増大し、最大で0.0069%の蓄積が確認された。飼料中のスクアレン含量が0.1%となる試験区1において、魚体へのスクアレン蓄積は確認されなかった。
【表9】
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【実施例】
【0053】
上記実施例1と当該実施例3は、前者はスクアレン蓄積性オーランチオキトリウム乾燥藻体の形態で、後者は精製品のスクアレンの形態で、クルマエビ養殖用飼料にスクアレンが配合された点のみが相違している。両者のスクアレン含量を比較するグラフを図1に示す。実施例1における乾燥藻体を10%配合した試験区3の飼料のスクアレン含有量は0.65%であったが、当該試験区のクルマエビ魚体中のスクアレン蓄積量0.0062%は、精製スクアレンを1.03%配合した飼料が与えられた実施例3における試験区3のクルマエビ魚体中のスクアレン蓄積量0.0054%を上回った。また、実施例1における乾燥藻体を20%配合した試験区4の飼料のスクアレン含有量は1.31%であったが、当該試験区のクルマエビ魚体中のスクアレン蓄積量0.0103%は、精製スクアレンを2.11%配合した飼料が与えられた実施例3における試験区4のクルマエビ魚体中のスクアレン蓄積量0.0069%を上回った。従って、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウム乾燥藻体の形態でクルマエビ養殖用飼料にスクアレンが配合された場合、等量のスクアレンが精製品の形態で配合された場合と比較して、養殖クルマエビへのスクアレン蓄積量が顕著に増大することが実証された。
【実施例】
【0054】
実施例4.マダイにおける飼育試験2
マダイ用配合飼料へスクアレン(和光純薬工業、試薬特級)を0、0.1、0.5、1.0、2.0%配合したマダイ用配合飼料を与えたマダイへのスクアレンの蓄積を検討した。
【実施例】
【0055】
供試魚および飼育方法
株式会社ヒガシマルの臨海研究所で人工種苗生産した平均体重114.3gのマダイを、1t容円型水槽に15尾ずつ収容して5試験区を設けた。各水槽には濾過海水を注水し、期間中の平均水温は23.7℃であった。
【実施例】
【0056】
表10に示した試験飼料組成に従い、試験飼料を作製した。各原料を秤量・混合した後、微粉砕し、外割で30%の水を加えて混練した後、ペレットマシンを用いて直径約5mmのペレットを成型した。これを熱風乾燥機により乾燥し試験飼料を作製した。飼育期間は56日間とし、週6日、1日2回8:00および16:00に各試験飼料を飽食給与した。試験区は反復区を設けず、飼育試験終了後は15尾の供試魚をプールし、ミンチにして分析に用いた。
【表10】
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【実施例】
【0057】
飼育成績
飼育成績を表11に示した。飼料中にスクアレンを0.5%添加した試験区で摂餌がピークとなり、増肉係数と負の相関が確認された。しかし、平均体重には一定の傾向が見られないことから成長に及ぼす悪影響はほとんどないと判断した。
【表11】
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【実施例】
【0058】
表12に開始時および終了時における全魚体の一般成分、スクアレン含量を示した。一般成分に区間差はないが、スクアレンの配合量が多くなるとスクアレン含量は上昇し、試験区4では0.112%と、開始時の10倍量のスクアレンを蓄積していることが明らかとなった。なお、この値はオリーブの実と同等のスクアレン含量である。
【表12】
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【実施例】
【0059】
上記実施例2と当該実施例4は、前者はスクアレン蓄積性オーランチオキトリウム乾燥藻体の形態で、後者は精製品のスクアレンの形態で、マダイ養殖用飼料にスクアレンが配合された点のみが相違している。両者のスクアレン含量を比較するグラフを図2に示す。実施例2における乾燥藻体を5%配合した試験区2の飼料のスクアレン含有量は0.33%であったが、当該試験区のマダイ魚体中のスクアレン蓄積量0.052%は、精製スクアレンを0.53%配合した飼料が与えられた実施例4における試験区2のマダイ魚体中のスクアレン蓄積量0.057%と同レベルであった。従って、スクアレン蓄積性オーランチオキトリウム乾燥藻体の形態でマダイ養殖用飼料にスクアレンが配合された場合、等量のスクアレンが精製品の形態で配合された場合と比較して、養殖マダイへのスクアレン蓄積量が顕著に増大することが実証された。
【実施例】
【0060】
表13には開始時および終了時における比肝重値、肝臓のスクアレン含量を示した。比肝重値は飼料中のスクアレン含量が増えると増加する傾向にあり、試験区3でピークとなった。また、肝臓のスクアレン含量も飼料中のスクアレン添加量に比例しており、最大1.42%という数値が得られた。これらの結果から、魚類も深海鮫と同様、肝臓にスクアレンを蓄積することが示唆された。
【実施例】
【0061】
【表13】
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図面
【図1】
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【図2】
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