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明細書 :通信制御方法および移動端末

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月27日(2017.4.27)
発明の名称または考案の名称 通信制御方法および移動端末
国際特許分類 H04W  40/32        (2009.01)
FI H04W 40/32
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 55
出願番号 特願2016-531201 (P2016-531201)
国際出願番号 PCT/JP2015/065565
国際公開番号 WO2016/002404
国際出願日 平成27年5月29日(2015.5.29)
国際公開日 平成28年1月7日(2016.1.7)
優先権出願番号 2014136232
優先日 平成26年7月1日(2014.7.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】加藤 寧
【氏名】西山 大樹
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095359、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 篤
【識別番号】100143834、【弁理士】、【氏名又は名称】楠 修二
審査請求
テーマコード 5K067
Fターム 5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE25
5K067GG06
5K067HH22
要約 【課題】
従来のテーブル駆動型や蓄積転送型のルーティングよりも効率的なスター型のネットワーク接続トポロジに基づくルーティング方式において、3ホップ以上のマルチホップ通信を実現することができる通信制御方法および移動端末を提供する。
【解決手段】
グループの解散/再構成の反復実行によって、グループ解散以前から移動端末内に蓄積されていた転送データを、グループ外から新たにグループ仲間になった移動端末に中継する動作が何度でも繰り返し実行される。その結果、本発明は、スター接続型ルーティング方式における中継ホップ数の上限(2ホップ)を超えて転送データを中継転送するためのマルチホップ通信を実現する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
2個以上の移動端末の中から選出された中継端末および前記中継端末と接続する一つ以上の移動端末から成る端末グループを単位としてパケットの端末間通信が中継される無線網において:
第1端末グループ内における端末間の通信アクティビティが所定の閾値を下回ったことが前記第1端末グループ内のいずれかの端末により判定された場合、前記第1端末グループ内のいずれかの端末が、移動端末毎に算出された優先度に基づいて新たな中継端末を選出した上で前記第1端末グループを解散するステップ;および、
前記選出された新たな中継端末と無線接続可能な移動端末と共に、前記選出された新たな中継端末が第2端末グループを形成し、前記第2端末グループ内の各移動端末に通信を開始させるステップ、
を反復的に実行する通信制御動作を具備する通信制御方法であって、
前記優先度は、前記第1端末グループの解散と前記第2端末グループの形成を介して不特定多数の移動端末間での前記パケットの拡散効率を改善するように算出され、
前記第1と第2の端末グループ内において前記中継端末と接続する移動端末は、前記中継端末との間の通信経路が所定の安定性条件を充足することを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
前記優先度は、各移動端末を新たな中継端末として形成される第2端末グループに対して前記第1端末グループの外から新たに参加する移動端末の個数に応じて算出される、
ことを特徴とする、請求項1記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記優先度を前記算出する動作は:
前記第1端末グループの外から前記第1端末グループ内の各移動端末に1ホップで無線接続可能な移動端末の個数を前記第1端末グループ内の各移動端末毎に算出する動作;および、
前記移動端末毎に算出した個数を、前記移動端末毎の優先度の値として設定する動作;
を含み、
前記新たな中継端末を前記選出する動作は、前記中継端末が前記第1端末グループ内の移動端末毎に優先度の値を収集し、前記第1端末グループの中から前記優先度の値が最大となる移動端末を前記新たな中継端末として選出する動作を含むことを特徴とする、請求項2記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記優先度は、端末グループを単位とする前記パケットの端末間通信によって端末グループ内の各移動端末内に蓄積されたパケットの個数に応じて算出されることを特徴とする、請求項1記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記移動端末毎の優先度を算出する命令を、前記第1端末グループ内において各移動端末が前記中継端末から受信したことに応答して、前記優先度を前記算出するために、前記各移動端末は:
端末グループを単位とする前記パケットの端末間通信によって端末グループ内の各移動端末内に蓄積されたパケットの個数を前記第1端末グループ内の各移動端末毎に算出する動作;および、
前記移動端末毎に算出した前記パケットの個数を、前記移動端末毎の優先度の値として設定する動作;
を実行するように構成されることを特徴とする、請求項4記載の通信制御方法。
【請求項6】
前記優先度は、端末グループ内において前記中継端末を中心とした各移動端末の相対的な位置に応じて算出され、端末グループ内における各移動端末と前記中継端末との間のホップ数又は距離が大きいほど、高い優先度が算出されることを特徴とする、請求項1記載の通信制御方法。
【請求項7】
前記移動端末毎の優先度を算出する命令を、前記第1端末グループ内において各移動端末が前記中継端末から受信したことに応答して、前記優先度を前記算出するために、前記各移動端末は:
前記第1端末グループ内の各移動端末毎の前記優先度として、端末グループ内において前記中継端末を中心とした各移動端末の相対的な位置に応じて前記優先度を算出する動作であって、端末グループ内における各移動端末と前記中継端末との間のホップ数又は距離が大きいほど、高い優先度が算出される、動作;および、
前記移動端末毎に算出した前記移動端末毎の優先度の値を自端末内に設定する動作;
を実行するように構成されることを特徴とする、請求項6に記載された通信制御方法。
【請求項8】
前記優先度は、各移動端末の過去一定時間内に参加したグループへの平均参加継続時間S[sec]、各移動端末の過去一定時間内の転送データの送信時間もしくは受信時間の平均時間A[sec]、または、これら2つの時間を、パラメータWで重み付けを行って、優先度P=W×S+(1-W)×A(Wは1~0の値)として求めたものから成ることを特徴とする、請求項1記載の通信制御方法。
【請求項9】
前記移動端末毎の優先度を算出する命令を、前記第1端末グループ内において各移動端末が前記中継端末から受信したことに応答して、前記優先度を前記算出するために、前記各移動端末は:
前記第1端末グループ内の各移動端末毎の前記優先度として、各移動端末の過去一定時間内に参加したグループへの平均参加継続時間S[sec]、各移動端末の過去一定時間内の転送データの送信時間もしくは受信時間の平均時間A[sec]、または、これら2つの時間を、パラメータWで重み付けを行って、優先度P=W×S+(1-W)×A(Wは1~0の値)として求めたものを算出する、動作;および、
前記移動端末毎に算出した前記移動端末毎の優先度の値を自端末内に設定する動作;
を実行するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載された通信制御方法。
【請求項10】
前記選出された新たな中継端末が前記第2端末グループを前記形成する動作は、前記中継端末から送出された端末発見信号に応答した移動端末のうち、前記中継端末との間の地理的な直線距離および/または前記中継端末との間の通信経路のホップ数が所定の閾値を下回る移動端末のみを前記中継端末と接続させることによって、端末グループを形成する動作を具備することを特徴とする、請求項1乃至請求項9の中のいずれか一項に記載された通信制御方法。
【請求項11】
前記選出された新たな中継端末が前記第2端末グループを前記形成する動作は、前記中継端末から送出された端末発見信号に応答した移動端末の各々について:
前記中継端末との間で診断用ビーコンを複数回にわたって往復させる段階;
前記診断用ビーコンの通信成功率および/または前記診断用ビーコンの平均ラウンド・トリップ時間を計測する段階;および、
前記通信成功率および/または前記平均ラウンド・トリップ時間が所定の閾値を下回る場合にのみ、前記中継端末との接続を許可する段階;
を具備することを特徴とする、請求項1乃至請求項10の中のいずれか一項に記載された通信制御方法。
【請求項12】
前記無線網内において前記端末グループが一つも形成されていない初期状態においては、前記無線網内の移動端末の各々が、自端末の優先度を算出した上で、他の移動端末との間で前記算出した優先度を交換し合い、
移動端末毎に算出される前記優先度は、各移動端末に1ホップで無線接続可能な状態の他の移動端末の個数に応じて算出され、
前記無線網内の移動端末の中で、自端末の前記優先度が最高であると判定した移動端末が、前記初期状態から最初に形成される端末グループの中継端末としての動作を開始する、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項11の中のいずれか一項記載の通信制御方法。
【請求項13】
各移動端末は通信用のチャネルを複数有し、他の移動端末との間で多重通信を行うよう構成されており、分割された各周波数領域および/または各時間領域を各チャネルに割り当てると共に、各チャネルを互いに異なる用途の通信に使用するよう設定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項12の中のいずれか一項記載の通信制御方法。
【請求項14】
2個以上の移動端末の中から選出された中継端末および前記中継端末と接続する一つ以上の移動端末から成る端末グループを単位としてパケットの端末間通信が中継される無線網において動作する移動端末であって:
移動端末の通信動作を制御する制御部;および、
他の移動端末との間でデータを送受信する無線送受信部;
を具備し、第1端末グループ内において自端末が前記中継端末として選出されているならば、前記制御部は、
前記第1端末グループ内において端末間の通信アクティビティが所定の閾値を下回ると判定した場合、前記第1端末グループ内の各移動端末に対して移動端末毎の優先度を算出する命令を送出するように前記無線送受信部に指示する動作;および、
前記第1端末グループ内において移動端末毎に算出した優先度を各移動端末から収集し、前記収集された優先度に基づいて選出した移動端末に対して、新たな中継端末として選出された旨の通知を送出するように前記無線送受信部に指示する動作;
を実行するように構成され、
前記優先度は、前記第1端末グループの解散と前記第2端末グループの形成を介して不特定多数の移動端末間での前記パケットの拡散効率を改善するように算出され、
前記第1と第2の端末グループ内において前記中継端末と接続する移動端末は、前記中継端末との間の通信経路が所定の安定性条件を充足することを特徴とする、移動端末。
【請求項15】
前記第1端末グループ内において自端末が前記中継端末として前記選出されていないならば、前記制御部は、
前記無線送受信部を介して前記通知を受信した際に、第2端末グループを形成するために他の移動端末に対して端末発見信号を送出するように、前記無線送受信部に指示する動作;および、
前記無線送受信部を介して前記新たな中継端末から前記端末発見信号を受信した際に、前記無線送受信部を介して自端末を前記新たな中継端末に無線接続する動作;
を実行するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項14記載の移動端末。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末間における新規なパケット中継制御方式に関し、より具体的には、無線アクセス・ポイントを介さずに移動端末間でEnd-To-End通信を行う際の信頼性や効率を改善するために移動端末間で実行されるパケット中継制御方式の通信制御方法および移動端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、無線アドホック・ネットワークのように無線アクセス・ポイントを介さずに移動端末間でEnd-To-End通信を行うための技術が知られてきている。無線アクセス・ポイントを介さずに移動端末間でEnd-To-End通信を行うためのパケット中継制御に関して現在広く知られている実現方式は、「テーブル駆動型(例えば、下記の非特許文献1と非特許文献2を参照)」および「蓄積転送型(例えば、下記の非特許文献3と非特許文献4を参照)」に大別される。
【0003】
上述した蓄積転送型のパケット中継方式においては、データを蓄積している中継移動端末が近隣の2つ以上の移動端末と同時に無線通信可能な状態であり、これら2つ以上の移動端末を隣接ノードとして有している場合、データが最終宛先へ到達する確率を高めるために以下の経路制御方式を採用している。すなわち、データを蓄積した各中継移動端末が複数の隣接ノードにデータの複数のコピーを転送するデータ中継動作が順次繰り返され、相互に通信可能な移動端末間でデータの多数のコピーを拡散させる。このようなデータ拡散の仕組みは、感染型経路制御(Epidemic Routing)、評価型経路制御(Estimation Routing)または符号化型経路制御(Coding Routing)などとして知られている(例えば、下記の非特許文献9乃至非特許文献11を参照)。
【0004】
また、非特許文献5乃至非特許文献8が開示する「スター接続型のパケット中継方式」は、上述した蓄積転送型のパケット中継方式において、端末グループを単位として移動端末間の通信を制御するように改変した改良型の方式である。また、スター接続型のパケット中継方式においては、端末グループ毎に、親ノード端末であるグループ・オーナー(GO:Group Owner)を中心として子ノード端末となる他の一つ以上の移動端末が無線接続することによりスター型のネットワーク接続トポロジが形成される。
【0005】
上記のように無線アクセス・ポイントを介さずに移動端末間通信を行うための無線ネットワーク環境においては、多種多様なパケット中継方式を使用する形でネットワーク運用がされることが今後予想される。上述した多種多様なパケット中継方式には、テーブル駆動型および蓄積転送型などが含まれ、当該蓄積転送型の方式においては、パケットを中継転送するための経路制御方式として感染型経路制御(Epidemic Routing)、評価型経路制御(Estimation Routing)または符号化型経路制御(Coding Routing)などの様々な方式が使用される。その結果、上述した無線ネットワーク環境において、移動端末間の伝送データのパケット中継制御をシームレスに実現することを目的として、互いに異なるパケット中継制御方式同士の間で互いに連携動作する形で、ネットワーク運用がされることも今後予想される。また、データを中継転送する移動端末の各々は、自端末が置かれている状況(例えば、無線チャネル状態の安定性、端末モビリティまたは周辺エリア内の端末密度など)の変化に応じて適切なパケット中継制御方式に切り替えながらパケット中継動作を継続することが必要となるだろう。
【0006】
上述した無線ネットワーク環境において、上述した様々なパケット中継方式を状況に応じて適切に使い分けたり、組み合わせて使用したとしても、以下のような問題が依然として残る。すなわち、各方式に起因する通信の到達性の問題、通信容量のスケーラビリティの問題および通信の効率化や端末電力の消費効率の最適化の問題が依然として解決されない。具体的には、以下のとおりである。
【0007】
(1)テーブル駆動型の中継方式においては、各移動端末のモビリティが高くなり、移動端末間の無線チャネル状態が不安定になってくると、ネットワーク全体のトポロジが不安定化するので、End-To-Endにおけるパケット到達失敗率は急激に増加する。すなわち、テーブル駆動型のパケット中継転送方式においては、End-To-End通信経路が非常に不安定化する状況が生じ得る。
【0008】
(2)テーブル駆動型の中継方式では、複数の移動端末相互間で常にルーティング情報を交換し合うことによる端末バッテリーの著しい消耗や通信容量の圧迫が生じる。
【0009】
(3)蓄積転送型の中継方式においては、End-To-Endでのデータ転送に関してランダムで制限のない通信遅延が発生し得る。しかも、パケットが最終宛先に到達するまでEnd-To-Endの通信経路が決まらない蓄積転送型のパケット中継転送方式では、End-To-Endにおけるパケットの到達を保証することは通信状態の良否に関わらず不可能である。
【0010】
(4)中継転送される通信量が、各中継端末上のバッファ・メモリ容量に応じてサポート可能な通信容量の上限を超えると、転送データが当該バッファ・メモリから溢れてしまうので、蓄積転送型のパケット中継転送方式においては中継転送データのドロップが発生し得る。
【0011】
(5)蓄積転送型の方式が採用する経路制御方式として上記において例示した感染型経路制御(Epidemic Routing)、評価型経路制御(Estimation Routing)または符号化型経路制御(Coding Routing)などの方式は、以下の問題点を有する。すなわち、これらの経路制御方式は、データが最終宛先へ到達する確率を高めることができる反面、ネットワーク内の多数の中継移動端末間で同時並列的に非常に多数のデータ転送が発生し、通信の効率や端末消費電力の効率を低下させてしまう。
【0012】
上述した(1)~(5)の問題点に共通する点として、無線ネットワーク内におけるパケットの送信元端末から最終宛先端末に至るEnd-To-End通信経路のホップ数が長くなれば長くなるほど、以下の問題が生じる。つまり、テーブル駆動型の中継方式を使用する場合、無線ネットワーク内の無線チャネル状態や電波状況が理想的な状態に維持されていない限り、その通信経路が安定して存在する期間が短くなったり安定に維持されている確率が低くなってしまうという問題が生じる。また、蓄積転送型の中継方式を使用する場合、End-To-End通信経路のホップ数が長くなれば長くなるほど、パケットが最終宛先に到達する確率が低下し、到達に要する通信遅延時間が増加するという問題が生じる。
【0013】
他方、上述した「スター接続型の中継方式」においては、以下の理由により、テーブル駆動型と蓄積転送型に関する上記のとおり検討した種々の問題点の多くが克服される。
【0014】
「スター接続型の中継方式」においては、ネットワーク全体のトポロジが非常に単純なスター型トポロジに単純化される。そのため、この方式においては、移動端末上で実行されるパケットの中継転送制御が単純化されるだけでなく、移動端末上のCPUによるパケット中継転送制御の処理負担も軽くなる。さらに、この方式においては、端末グループ内の移動端末同士の間でデータを共有するために実行する必要があるメッセージ送受信回数は、「テーブル駆動型」や「蓄積転送型」と比較して非常に少なくすることが出来る。その結果、端末グループ内の移動端末同士の間でデータを共有する際に端末グループ内の各移動端末が消費する端末電力を節約することが可能となる。このような利点は、「スター接続型の中継方式」に限らず、多数の移動端末を端末グループ毎にグループ化し、端末グループ毎にグループ内での端末間通信によるパケット中継転送を行う中継方式に共通の利点である。以下、上記のように多数の移動端末を端末グループ毎にグループ化し、端末グループ毎に端末間通信を行う中継方式を「端末グループに基づく中継方式」と呼ぶことにする。
【0015】
上述した「端末グループに基づく中継方式」においては、パケットの送信元端末から最終宛先端末に至るEnd-To-End通信経路は、送信元端末が属する端末グループの外縁より先には伸びない。つまり、当該End-To-End通信経路のホップ数は、送信元端末が属する端末グループのサイズに依存し、端末グループのサイズとは、端末グループの外縁に位置する子ノード端末から親ノードであるGOに至る通信経路のホップ数の最大値である。
【0016】
「端末グループに基づく中継方式」においては、送信元端末を中心とする周辺エリア内における無線チャネル状態、電波状況、他の移動端末の存在密度や地理的配置状況に応じて端末グループのサイズを適切に選択することが可能である。そこで、端末グループのサイズを上記のような状況に応じて適切に選択することにより、End-To-End通信経路のホップ数の上限を状況に応じて適切に制限することが出来る。その結果、End-To-End通信経路のホップ数が長くなることに伴う上述した問題を回避することが出来る。
【0017】
従って、近年の無線ネットワーク環境においては、「テーブル駆動型」や「蓄積転送型」の方式に見られる通信容量のスケーラビリティ、通信の効率化、端末電力の消費効率の最適化およびEnd-To-End通信経路の安定性の問題を解決可能なパケット中継方式として、「端末グループに基づく中継方式」が有望とされている。
【先行技術文献】
【0018】

【非特許文献1】RFC3626 “Optimized Link State Routing Protocol (OLSR)” Internet Engineering Task Force, 2003年10月
【非特許文献2】RFC3561 “Ad hoc On-Demand Distance Vector (AODV) Routing” Internet Engineering Task Force, 2003年7月
【非特許文献3】RFC4838 “Delay-Tolerant Networking Architecture” Internet Engineering Task Force, 2007年4月
【非特許文献4】RFC5050“Bundle Protocol Specification” Internet Engineering Task Force, 2007年11月
【非特許文献5】Wi-Fi Direct、 http://www.wi-fi.org/discover-and-learn/wi-fi-direct、 Wi-Fi Alliance.
【非特許文献6】LTE Direct、 http://www.qualcomm.com/solutions/wireless-networks/technologies/lte/lte-direct、 Qualcomm Incorporated.
【非特許文献7】Zigbee(登録商標)、 http://www.zigbee.org/ 、Zigbee Alliance.
【非特許文献8】Bluetooth(登録商標)、http://www.bluetooth.com/Pages/Bluetooth-Home.aspx 、Bluetooth.com
【非特許文献9】落合秀也他:「DTN環境を想定したトポロジ変化に強いメッセージルーティング」、情報処理学会論文誌第50巻、第9号、第2312ページから第2326ページ、2009年9月
【非特許文献10】鶴正人他著:「DTN技術の現状と展望」、電子情報通信学会、通信ソサイエティマガジン、No.16、2011年春号
【非特許文献11】A. Lindgren, A. Doria and O. Schelen著:「Probabilistic Routing in Intermittently Connected Networks」Mobile Computing and Communications Review, vol. 7, no. 3, pp. 19-20, Jul. 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、各移動端末を端末グループ毎にグループ化し、これらの端末同士をグループ・オーナー(GO:Group Owner)を中心とした接続トポロジによって相互接続しようとすると、以下の問題が生じる。上記のようなネットワーク接続トポロジに基づいて端末グループ単位で通信を中継する方式では、データを転送可能な最大のホップ数は、端末グループのサイズによって制限されてしまう点が問題である。言い換えると、上記のようなネットワーク接続トポロジに基づいて端末グループ単位で通信を中継転送する「端末グループに基づく中継方式」では、End-To-Endのパケット中継転送動作が端末グループ内に閉じられており、所定ホップ数以上のマルチホップ通信が実現できない点が問題である。
【0020】
例えば、「端末グループに基づく中継方式」の一例として上述した「スター接続型の中継方式」を仮定する。スター型のネットワーク接続トポロジに基づいて端末グループ単位で通信を中継する方式では、データを転送可能な最大のホップ数は、2ホップまでである点が問題である。言い換えると、スター型のネットワーク接続トポロジに基づいて端末グループ単位で通信を中継転送する方式では、End-To-Endのパケット中継転送動作が端末グループ内に閉じられており、3ホップ以上のマルチホップ通信が実現できない点が問題である。
【0021】
以上から、上述した無線ネットワーク環境において、パケット中継方式として上述した「端末グループに基づく中継方式」を使用したとしても、当該方式に起因する通信の到達性の問題が依然として解決されない。
【0022】
上述した問題点に鑑み、本発明は、上記のようなネットワーク接続トポロジに基づいて端末グループ単位で通信を中継する「端末グループに基づく中継方式」をパケット中継方式として採用すると同時に、所定ホップ数の制限を超えて任意のホップ数にわたってデータ中継転送が可能なマルチホップ通信を実現することができる通信制御方法および移動端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る通信制御方法は、2個以上の移動端末の中から選出された中継端末および前記中継端末と接続する一つ以上の移動端末から成る端末グループを単位としてパケットの端末間通信が中継される無線網において:第1端末グループ内において、端末間の通信アクティビティが所定の閾値を下回ると前記中継端末が判定した場合、移動端末毎に算出された優先度に基づいて前記中継端末が新たな中継端末を選出した上で前記第1端末グループを解散するステップ;および、前記選出された新たな中継端末と無線接続可能な移動端末と共に、前記選出された新たな中継端末が第2端末グループを形成し、前記第2端末グループ内の各移動端末に通信を開始させるステップ、を反復的に実行する通信制御動作を具備する通信制御方法であって、前記優先度は、前記第1端末グループの解散と前記第2端末グループの形成を介して不特定多数の移動端末間での前記パケットの拡散効率を改善するように算出され、前記第1と第2の端末グループ内において前記中継端末と接続する移動端末は、前記中継端末との間の通信経路が所定の安定性条件を充足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上より、本発明においては、例えば、既存のグループの解散と再構築によって今までグループ外であった移動端末が解散前の中継データを蓄積している移動端末と新たにグループ仲間になるので、当該中継データが再構築後の新グループ内において当該新たにグループ仲間になった端末に中継転送される。従って、本発明においては、グループの解散/再構成の反復実行によって、グループ解散以前から移動端末内に蓄積されていた転送データを、グループ外から新たにグループ仲間になった移動端末に中継する動作が何度でも繰り返し実行される。その結果、本発明は、端末グループ毎に端末間通信を行う中継転送方式における中継ホップ数の上限(例えば、2ホップ)を超えて任意のホップ数にわたって転送データを中継転送するためのマルチホップ通信を実現することが可能となる。
【0025】
その際、例えば本発明においては、グループ解散の直前におけるグループ外の隣接ノード端末数が最も多い移動端末を再構築後のグループのGOとするので、GOから見た場合に、グループ再構築後に、グループ外から新たにグループ仲間に加わる端末個数を最大化することが出来る。隣接ノード端末とは、自端末が発した近隣探索ビーコンに応答したことにより、自端末に対して次ホップ・ノードとして無線接続されることが可能な近隣の移動端末である。その結果、本発明においては、上述したグループの解散と再構築を繰り返すプロセスにおいて、上述したグループ内中継転送による蓄積データの拡散効率と拡散速度を最大化することが可能となる。
【0026】
その結果、本発明は、多種多様なパケット中継転送方式と併用することにより、上述した通信の到達性、通信容量のスケーラビリティおよび通信の効率化や端末電力の消費効率の最適化に関する問題を解決可能な仕組みを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】MANET網において、経路ホップ数の増加に伴ってEnd-To-End送信が失敗する確率が増加するシナリオを説明する図である。
【図2】DTN網において、単位時間あたりのEnd-To-End伝送情報量の増加に伴って通信経路上でデータ・ドロップの発生も増加するため、End-To-Endで単位時間あたりに送信可能な情報量が制限されるシナリオを説明する図である。
【図3】スター型DTN網においてパケット中継転送可能なホップ数の上限が2ホップまでに限定されるシナリオを説明する図である。
【図4】MANET標準に基づくパケット中継転送制御プロトコルとDTN標準に基づくパケット中継転送制御プロトコルとが混在した形で運用されるアドホック・ネットワークの一例を示す図である。
【図5】MANET端末間において、ルーティング制御テーブルを使用したパケット中継とルーティング情報の交換を実行するネットワーク層とそれより下位のプロトコル層を示す図である。
【図6】DTNに基づくパケット中継転送制御の例として、Internet Engineering Task ForceのRFC5050において標準化がされているパケット中継転送制御を例示する図である。
【図7】本発明に係る移動端末の構成例として、移動端末100の構成を複数の回路モジュールから構成されるハードウェア構造として表した図である。
【図8】本発明に係る移動端末の(a)第1の作動状態における構成例、(b)第2の作動状態における構成例として、移動端末100内の構成を抽象的な機能ブロックの集まりとして表した図である。
【図9】本発明に係る移動端末の構成例として、複数のソフトウェア構成要素および複数のデータ構造によって構成される移動端末100内のソフトウェア構造を表した図である。
【図10】MANET-DTN間の切り替え機能の例示のために、複数の移動端末100-(a)乃至100-(k)および無線アクセス・ルータ200から形成される無線アドホック・ネットワークを表す図である。
【図11】MANETモードとDTNモードとの間でパケット中継転送制御の実行を切り替える動作の流れを説明するフローチャートである。
【図12】グループの解散/再構成のプロセスを介してデータが拡散するシナリオを説明する図である。
【図13】感染(Epidemic)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図14】感染(Epidemic)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図15】評価(Estimation)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図16】評価(Estimation)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図17】符号化(Coding)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図18】符号化(Coding)型経路制御における複製配布制御の効果を説明する図である。
【図19】本実施の形態に係る第2実施例における端末グループ形成の様子を示す図である。
【図20】初期状態におけるIntent Valueの決定法を説明する図である。
【図21】既存のグループが一旦解散され、新たなグループを再構築しようとする際のIntent Valueの決定法を説明する図である。
【図22】自端末の通信可能範囲内に2つ以上のGO(グループ・オーナー)が同時に存在する場合において自端末から何れか一つのGOに選択的に接続するシナリオを説明する図である。
【図23】本実施の形態に従い、初期状態において実行される一連の処理動作を説明するフローチャートである。
【図24】本実施の形態に従い、グループ解散/再構築の反復実行プロセスが開始された後の一連の処理動作を説明するフローチャートである。
【図25】本実施の形態に従い、グループ形成後のグループ内通信の制御動作を説明するフローチャートである。
【図26】本実施の形態に従うパケット中継転送制御を実行する各移動端末の動作状態の遷移を示す状態遷移図である。
【図27】本実施の形態に関して図26に示した状態遷移図において、各状態遷移の発生に必要なトリガー条件を説明する表である。
【図28】同一の端末グループ内でMANETモード端末とDTMモード端末とが直接通信するネットワーク構成を示す図である。
【図29】本実施の形態と従来技術(MANETおよびDTN)との比較について説明する図である。
【図30】本実施の形態と従来技術(MANETおよびDTN)との比較について説明する図である。
【図31】本実施の形態と従来技術(MANETおよびDTN)との比較について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
無線基地局や無線アクセス・ポイントが未整備の山間部、離島などの地域において、あるいは地震や台風などの災害により無線基地局や無線アクセス・ポイントが損壊した地域においては、通信事業者などが提供する移動端末用の無線ネットワーク通信基盤が一切利用できない。そのため、そのような無線ネットワーク通信基盤を一切使用することなく移動端末同士の間で直接無線通信することを可能とする技術が必要とされる。そのような技術の一例として、アドホック・ネットワーク技術が挙げられる。

【0029】
アドホック・ネットワーク・システムとは、携帯電話における基地局に代表されるような集中制御局を必要とせずに、複数の移動端末の各々が周囲の所定の範囲内にある通信可能な他の移動端末とデータ通信し、送信元の移動端末から送信先の移動端末まで途中の移動端末がデータをバケツリレーのように順次中継することで遠方までのデータ通信を可能とする技術である。現在、アドホック・ネットワークを形成するための多くのパケット中継転送制御プロトコル(アドホック・ルーティング制御プロトコル)として上記の非特許文献1乃至非特許文献8に記載されたパケット中継転送プロトコルやその関連技術が提案されている。

【0030】
これらの移動端末間パケット中継転送技術に共通しているのは、移動端末同士の間で協調してマルチホップ通信を実現する点である。その結果、上記のような移動端末間パケット中継転送技術は、無線基地局などに依存せずに相互に通信可能な複数の移動端末同士が集まって自律的に無線ネットワークを構築することを可能にする。また、上記のような移動端末間パケット中継転送技術は、相互に通信可能な複数の移動端末同士が集まって状況に応じた適切なネットワーク・トポロジを柔軟に形成することを可能にする。

【0031】
本実施の形態が実現される無線ネットワーク環境は、無線アクセス・ポイントや基地局を介さずに移動端末同士が自律的にネットワークを形成し、移動端末間で相互に通信しあう無線ネットワーク環境である。同時に、本実施の形態が実現される無線ネットワーク環境は、多種多様なパケット中継方式が動作するネットワーク環境である。上述した多種多様なパケット中継方式には、以下において後述するテーブル駆動型、蓄積転送型(転送制御のために感染型経路制御(Epidemic Routing)、評価型経路制御(Estimation Routing)または符号化型経路制御(Coding Routing)などを使用する場合を含む)およびスター接続型の中継方式が含まれる。

【0032】
本実施の形態においては、上述した無線通信ネットワーク環境において、移動端末を端末グループ毎にグループ化し、端末グループ毎に端末間通信を行う中継方式(端末グループに基づく中継方式)を採用することが前提となる。これにより、本実施の形態は、通信容量のスケーラビリティ、通信の効率化や端末電力消費の効率化およびEnd-To-End通信経路の不安定性に関する問題を解決する。その上で、端末グループに基づく中継方式では不可能であった3ホップ以上にわたるパケット中継転送を実現することが出来るマルチホップ通信が可能な仕組みを実現することが本実施の形態の狙いである。

【0033】
本明細書の以下の説明においては、まず、本実施の形態の説明に先立って、本実施の形態と関連する関連技術について図1乃至図3を参照しながら説明する。続いて、本実施の形態が実現される無線ネットワーク環境の具体例について図4乃至図6を参照しながら説明する。続いて、本実施の形態において使用され得る移動端末の構成例を図7乃至図9を参照しながら説明する。続いて、本実施の形態の基本的な動作原理および従来技術と比較した場合の技術的優位性について図10乃至図22を参照しながら説明する。また、本実施の形態を実施するための詳細な動作手順について図23乃至図25を参照しながら説明する。また、本実施の形態に従うパケット中継転送制御を実行する各移動端末の動作状態の遷移を示す状態遷移について図26と図27を使用して説明する。また、本実施の形態と従来技術(MANETおよびDTN)との比較について図28乃至図31を使用して説明する。

【0034】
<1> 本実施の形態と関連する関連技術
(1-A)テーブル駆動型の中継方式
OLSRやAODVが規定するパケット中継制御によって形成されるアドホック・ネットワークは、MANET(Mobile Ad Hoc Network)としてInternet Engineering Task Forceにおいて標準化されている(非特許文献1および2)。MANETは、テーブル駆動型のパケット中継転送制御プロトコルに基づき、複数の移動端末間で経路情報を含むルーティング情報を常時交換し、交換したルーティング情報によりルーティング制御テーブルを最新の状態に更新する方式である。これにより、MANETに基づくパケット中継転送では、通信の要求が生じた際に保持する経路情報をもとに通信の開始が可能となっている。このとき、無線通信カバレージが相互に重なっており、直接の無線通信が可能な移動端末同士がネットワーク内での隣接ノードとなる。このようなアドホック・ネットワークにおいては、ルーティング情報を隣接ノードである移動端末相互間で常に交換し合うために、無線ネットワーク内に存在する複数の移動端末は常に相互に直接無線通信が可能である必要がある。テーブル駆動型のパケット中継転送においては、各移動端末のモビリティが低く、移動端末間の無線チャネル状態が安定していれば、ネットワーク全体のトポロジも安定した状態のままである。従って、ネットワーク全体のトポロジが安定している限りにおいては、テーブル駆動型のパケット中継転送においては、ネットワーク内で互いに隣接ノードとなる移動端末間のリンクがEnd-To-Endで安定である。その反面、テーブル駆動型のパケット中継転送においては、各移動端末のモビリティが高くなり、移動端末間の無線チャネル状態が不安定になってくると、ネットワーク全体のトポロジが不安定化するので、End-To-Endにおけるパケット到達性は急激に低下する。

【0035】
MANETなどのテーブル駆動型のパケット中継転送制御に従い、相互に無線接続された複数の移動端末100A乃至100Fの間でデータがルーティングされてゆく様子を図1に示す。図1においては、移動端末100Aが内部に記憶している経路制御テーブル(ルーティング情報)が例示されており、当該経路制御テーブル(ルーティング情報)には移動端末100Aを送信元とする以下の転送経路情報が含まれている。

【0036】
(r1)移動端末100Bは移動端末100Aと1ホップで直接無線接続している。
(r2)移動端末100Cは、移動端末100Aから移動端末100Bを経由して2ホップで間接的に無線接続している。
(r3)移動端末100Dは、移動端末100Aから移動端末100Bを経由して2ホップで間接的に無線接続している。
(r4)移動端末100Eは、移動端末100Aから移動端末100Bを経由し、さらに移動端末Dを経由して3ホップで間接的に無線接続している。
(r5)移動端末100Fは、移動端末100Aから移動端末100Bを経由し、さらに移動端末Dを経由して3ホップで間接的に無線接続している。

【0037】
図1においては、移動端末100Aを送信元とする転送データが、移動端末100A内の経路制御テーブルに記録されている経路(r5)を介して最終宛先である移動端末100Fにルーティングされる様子を示している。

【0038】
(1-B)蓄積転送型のパケット中継転送方式
他方、通信相手までのEnd-to-End通信経路が常に発見できるとは限らないという点、即ち、無線ネットワーク内に存在する複数の移動端末は常に相互に通信可能であるとは限らないという点に鑑み、DTNは、いわゆる蓄積転送(Store and Forward)型の中継方式を採用する。DTNに基づくアドホック・ネットワークは、Internet Engineering Task Forceにおいて標準化されている(非特許文献3および4)。この方式では、送信すべきデータを有する送信元端末は、宛先端末との間に直接的なEnd-to-End通信経路が存在しない場合、宛先端末との間に介在する中継移動端末へ、該データを送信する。中継移動端末は、自身が送出した近隣探索ビーコンに対して近隣の他の中継移動端末のいずれかが応答するまで自身が受信した該データを内部に一旦蓄積する。その後、他の中継移動端末のいずれかが近隣探索ビーコンに応答し、当該他の中継移動端末と通信可能となった時点で、当該他の中継移動端末へ該データを転送する。複数の中継移動端末がこのような転送を繰り返すことによって、蓄積転送型のパケット中継転送は、最終的に、該データを宛先端末へ転送する。蓄積転送型のパケット中継転送においては、ネットワーク層内の経路制御の実行によってEnd-To-Endの通信経路が事前に確定しているテーブル駆動型のパケット中継転送とは異なり、このような前提が不要である。すなわち、DTNのような蓄積転送型のパケット中継転送は、End-To-End伝送経路をパケット中継転送の開始前に識別することなく、単に、パケット蓄積中の移動端末が発した近隣探索ビーコンにたまたま応答した他の移動端末に対してパケットを中継転送する手順を繰り返すだけである。

【0039】
なお、DTNのような蓄積交換型のパケット中継転送においては、データを蓄積している中継移動端末からの近隣探索ビーコンに応答した隣接ノードとして、2つ以上の他の中継移動端末が存在する場合がある。この場合、データを蓄積している中継移動端末がデータの転送先を選択するために実行可能な方法として、全ての隣接ノードに対して該データを転送する手法(感染型経路制御(Epidemic Routing))、または隣接ノードの全数にデータ送信確率pを乗算して得られる個数の隣接ノードを所定の条件で選択し転送する手法などがある。感染型経路制御(Epidemic Routing)などを含むこれらの手法は、DTNなどの蓄積転送型のパケット中継転送動作を実行中の多数の移動端末間でデータを拡散してゆくための手法であり、蓄積転送型のパケット中継動作の一部として実行されるデータ拡散方式である。これらのデータ拡散方式においては、データを蓄積した各中継移動端末が複数の隣接ノードにデータの複数のコピーを転送するデータ中継動作が順次繰り返される。その結果、これらのデータ拡散方式は、無線ネットワーク内でデータの多数のコピーを拡散させ、データが最終宛先へ到達する確率を高めることができる。その反面、これらのデータ拡散方式では、ネットワーク内の多数の中継移動端末間で同時並列的に非常に多数のデータ転送が発生し、通信の効率や端末消費電力の効率が低下する。上記のような問題が生じる理由は、無線ネットワーク内に存在する多数の移動端末の間でデータの多数のコピーを拡散させるための感染型経路制御(Epidemic Routing)などの仕組みにおいて、下記の仕組みが欠如しているからであることが理解されよう。すなわち、最終宛先に配送すべきデータを蓄積している移動端末は、同時に通信可能な複数の隣接ノード端末の中から蓄積データを最終宛先に配送するために最も効率が良いデータ中継先となる隣接ノード端末を適切に取捨選択する仕組みを持たない。

【0040】
図2は、近隣探索ビーコンの送信とこれに対する応答によって相互に相手の存在を識別し相互に繋がりあった移動端末間で転送データがバケツリレーのように中継転送されてゆく様子を示す。図2においては、転送データの送信元は移動端末100Aであり、転送データの最終宛先は移動端末100Fであるとする。図2のシナリオにおいては、移動端末100Aからの近隣探索ビーコンに応答した移動端末100Bと100Cに対して移動端末100Aから転送データが中継転送され、同様の中継転送をバケツリレー式に繰り返すことによって転送データが移動端末100Eに到達する。すると、図2の移動端末100Eは、自身が発した近隣探索ビーコンに応答した移動端末100Fと100Gに転送データを中継転送するので、転送データは最終宛先である移動端末100Fに到達する結果となる。

【0041】
(1-3)スター接続型のパケット中継転送方式
スター接続型のパケット中継転送方式による転送データの中継が実行されるネットワーク構成を図3に示す。スター接続型のパケット中継方式の具体例としては、Wi-Fi DirectとしてWi-Fi Allianceにおいて標準化されている方式(非特許文献5を参照)やその他の方式(非特許文献6乃至非特許文献8を参照)がある。この方式では、相互に無線通信が可能な複数の移動端末同士はグループを形成し、各グループ内で移動端末間の通信を行う。このグループは、IEEE802.11無線LANのアドホックモードにおけるIBSS(Independent Basic Service Set)やインフラストラクチャ・モードにおけるBSS(Basic Service Set)と同様の概念である。各グループ内に属する複数の移動端末の中の一つはグループ・オーナー(GO:Group Owner)として動作する。各グループ内のGOは、自身の制御下にあるグループ全体の通信を管理し、グループ内において無線アクセス・ポイントとして振る舞うので、GO以外の他の移動端末からはGOは無線アクセス・ポイントであるかのように見える。すなわち、各グループ内においてGOが果たす役割は、IEEE802.11無線LANのインフラストラクチャ・モードにおいてBSS内に属する無線端末機器間の通信をBSS全体にわたって管理する無線アクセス・ポイントの役割と同様である。GOの近隣に位置する1つ以上の他の移動端末がGOからの近隣探索ビーコンに応答する形でGOに対して無線接続することにより、GOを中心とするグループが形成される。従って、スター接続型のパケット中継転送方式において、一の移動端末から発した近隣探索ビーコンに対して、偶然近くにいた別の移動端末が応答することにより、これら2つの移動端末間でデータの中継転送が可能な無線接続が形成される点はDTN方式と共通である。そのため、スター接続型のパケット中継転送方式はスター型DTN方式とも呼ばれる。

【0042】
上記のようなGOを中心とするスター型ネットワーク接続トポロジを図3に示す。図3においては、グループ内においてGOに無線接続している移動端末間の通信をGOがハブとなって中継転送する様子が示されている。具体的には、図3においては、送信元である移動端末100Aから送信された転送データがGOによって最終宛先である移動端末100Cに中継される様子が示されている。

【0043】
(1-4)検討
以上より、MANETのようなテーブル駆動型のパケット中継転送は、ネットワーク内で隣接した移動端末間のリンクがEnd-To-Endで安定であることにより、送信元から発したパケットがEnd-To-Endの最終宛先に高い確率で到達し、通信遅延が発生し難い。その反面、テーブル駆動型のパケット中継転送では、複数の移動端末相互間で常にルーティング情報を交換し合うことによる端末バッテリーの著しい消耗や通信容量の圧迫が問題となる。

【0044】
また、テーブル駆動型のパケット中継転送では、ルーティング情報を隣接ノードである移動端末相互間で常に交換し合うために、無線ネットワーク内に存在する複数の移動端末は常に相互に直接無線通信が可能である必要がある。さらに、テーブル駆動型のパケット中継転送においては、ネットワーク全体のトポロジが安定的であることにより、移動端末毎のルーティング情報テーブルの整合性が一定以上に維持されていることが安定動作のために必要不可欠である。従って、テーブル駆動型のパケット中継転送においては、各移動端末のモビリティが高くなり、移動端末間の無線チャネル状態が不安定になってくると、ネットワーク全体のトポロジが不安定化するので、End-To-End 通信経路の不安定化に伴い、End-To-Endにおけるパケット到達性は急激に低下する。

【0045】
他方、DTNのような蓄積転送型のパケット中継転送は、ランダムで制限のない通信遅延の代償として大きな通信容量を可能にし、ルーティング情報の交換による端末電力の消耗も無い。その反面、パケットが最終宛先に到達するまでEnd-To-Endの通信経路が決まらない蓄積転送型のパケット中継方式においては、安定稼働時のテーブル駆動型のパケット中継転送よりも送信元から最終宛先までのEnd-To-Endにおけるパケットの到達率がテーブル駆動型のパケット中継転送よりも小さいという問題がある。

【0046】
また、DTNのような蓄積転送型のパケット中継転送では、データを中継転送する各移動端末上のバッファ・メモリ容量に応じて、一連のパケット中継転送動作により中継転送が可能な通信容量の上限が制限される。つまり、中継転送される通信量が、各移動端末上のバッファ・メモリ容量に応じてサポート可能な通信容量の上限を超えると、転送データが当該バッファ・メモリから溢れてしまうので、蓄積転送型のパケット中継転送においては中継転送データのドロップが発生し得る。

【0047】
さらに別の問題として、無線ネットワーク内に存在する複数の移動端末が常に相互に通信可能であるか否かは、移動端末や無線アクセス・ポイントの地理的配置または無線通信カバレージの到達範囲などに応じて時々刻々と変化する。

【0048】
スター接続型のパケット中継転送方式では、GOを中心とするスター型のネットワーク接続トポロジを採用することにより、他のパケット中継方式と比べて、パケット中継転送処理を大幅に簡素化し、各移動端末によるパケット中継転送処理負担を軽減することが出来る。その反面、スター接続型のパケット中継転送方式では、各グループ内において、複数の移動端末同士がGOを中心とするスター型接続を介して互いに通信するので、パケット中継転送によりデータを転送可能な範囲は同一グループ内に限られる。従って、スター接続型のパケット中継転送方式では、一つのグループ内においてGO以外の2つの移動端末を第1端末および第2端末とした場合、移動端末間のパケット中継転送によりデータを転送可能な最大のホップ数は、第1端末からGOを経由して第2端末へと至る2ホップまでである。

【0049】
本実施の形態が想定する無線ネットワーク環境は、上述した複数の異なるパケット中継転送方式を使用して運用されるネットワーク環境である。しかしながら、上述した無線ネットワーク環境においては、通信の到達性、通信容量のスケーラビリティおよび通信の効率化や端末電力の消費効率の最適化に関する問題を依然として解決することができていない。

【0050】
(1-5)その他の関連技術
非特許文献9では、DTNに基づく無線アドホック・ネットワークにおいては、移動端末のモビリティが高いため、物理的なネットワーク・トポロジが絶えず不安定に変化しており、現在の全体像を把握することが困難であるという問題を踏まえ、この問題の解決策を提案している。具体的には、ネットワークの現在の全体像を知るために、全ノードがルーティング情報を相互拡散するなどによってネットワーク全体で同期を取る代わりに、近隣ノードとの関係を知るだけでデータ配送を行う方式を提案している。例えば、非特許文献9は、各隣接ノードが有するポテンシャル値を参照し、ポテンシャル値が低い隣接ノードには蓄積したデータを反復的に転送する。

【0051】
非特許文献9記載のパケット中継転送方式は、DTNに基づいて動作するネットワーク全体のトポロジが常に変化して不安定である問題に鑑み、ネットワーク・トポロジの不安定性に起因するEnd-To-Endのデータ伝送の脆弱性を克服しようとするものである。しかし、非特許文献9記載の技術は、本発明のように移動端末毎の電力消費効率や通信容量のスケーラビリティの改善を直接の目標としてネットワーク全体の動作を最適化するものではない。

【0052】
従って、本実施の形態が想定する上述した無線ネットワーク環境において、非特許文献9記載の発明を従来の様々なパケット中継方式と併用したとしても、通信の到達性、通信のスケーラビリティおよび通信の効率化や端末電力の消費効率の最適化に関する問題を効果的に解決することができない。

【0053】
<2>例示的な無線ネットワーク環境
本実施の形態が実現される無線ネットワーク環境は、テーブル駆動型、蓄積転送型およびスター接続型を含む様々な中継転送方式を使用して動作するネットワーク環境である。以下において後述するとおり、当該無線ネットワーク環境においては、各移動端末が周囲の状況変化に応じて適切なパケット中継転送方式に切り替えながらパケット中継転送動作を実行する。以下、図4乃至図6を参照しながら、このような無線ネットワーク環境の一例について説明する。

【0054】
図4は、MANET標準に基づく中継転送制御プロトコルとDTN標準に基づく中継転送制御プロトコルとを併用する無線ネットワークの一例を示す。以下、図4において、MANET標準に基づく中継転送制御プロトコルを実行する移動端末をMANET端末と呼び、DTN標準に基づく中継転送制御プロトコルを実行する移動端末をDTN端末と呼ぶ。

【0055】
図4のアドホック・ネットワークにおいては、通信エリア内に存在する複数のMANET端末1 100(a)~MANET端末5 100(e)は、常に相互に直接無線通信が可能である必要がある。そのために、MANET端末1 100(a)~MANET端末5 100(e)の無線通信カバレージは相互に重なっている状態にある。そして、MANET端末同士は、無線LANのアドホックモードによって無線LANルータ200に直接接続して通信するか、そうでなければ、該直接接続したMANET端末から他のMANET端末へと信号(パケット)をバケツリレーのように順次中継して通信する。これにより、MANET端末同士は、MANETに基づくアドホック・ネットワークを形成することができる。

【0056】
なお、各MANET端末は、無線通信カバレージが相互に重なっている他の全てのMANET端末との間でルーティング情報を一定周期で交換し合い、交換したルーティング情報によりルーティング制御テーブルを最新の状態に更新する。このルーティング制御テーブルは、ルーティング経路上で受信したパケットを中継すべき次ホップ・ノードとなる他のMANET端末のアドレスを検索することが可能な検索テーブルである。図5に示すとおり、このようなルーティング制御テーブルを使用したパケット中継とルーティング情報の交換は、各MANET端末においてネットワーク層(例えばIP層)とそれより下位のプロトコル層(例えばWi-Fiプロトコル)により実行される。

【0057】
他方、図4に示すDTN端末1 100(f)およびDTN端末2 100(g)は、MANET端末1 100(a)~MANET端末5 100(e)のいずれとも通信カバレージが繋がっておらず、DTN端末1 100(f)とDTN端末2 100(g)とが互いに遠く離れている時には、これらのDTN端末間においても通信は不可能である。そして、DTN端末1 100(f)とDTN端末2 100(g)とが互いに通信可能な距離に近付いた時には、DTN端末1 100(f)およびDTN端末2 100(g)は、蓄積しておいた送信データを互いに相手に転送する。この場合、DTN端末1 100(f)およびDTN端末2 100(g)は、DTNに基づくアドホック・ネットワークを形成することができる。図6は、DTNに基づくパケット中継転送の例として、Internet Engineering Task ForceのRFC5050において標準化がされている中継転送制御を例示する。図6に示すように、上記した送信データの蓄積と転送の制御は、互いに通信可能な距離に近付いた隣接するDTN端末のBundle層同士の間において実行される。図6において、Bundle層は、TCP/IPなどの広く普及した一般的なトランスポート層/ネットワーク層よりも上位に位置し、送信データの蓄積と転送のためにストレージにアクセスしながら、アプリケーション層とトランスポート層との間でデータをやり取りする。

【0058】
図4において、MANETとDTNの2種類の中継方式に基づいてそれぞれ形成された2つのアドホック・ネットワークを一体的な単一ネットワークとして動作させるためには、以下の機能を実現することが必要となる。

【0059】
すなわち、複数の移動端末が置かれている状況や状態に応じて、各移動端末が実行するパケット中継転送動作をMANETに基づく中継転送またはDTNに基づく中継転送のいずれか最適な方に自動的に切り替える機能が必要である。具体的には、以下のとおりである。複数の移動端末の地理的配置または無線カバレージの到達範囲などが時々刻々と変化することにより、各移動端末が他の移動端末と継続的かつ安定的に通信可能であるのか、断続的にしか通信可能ではないのかが変動する。従って、各移動端末が置かれたその時々の状況や状態に応じて、各移動端末が実行すべきパケット中継転送動作をMANETに基づく中継転送またはDTNに基づく中継転送のいずれか最適な方に自動的に切り替える機能が必要となる。

【0060】
<3>本実施形態に係る移動端末の構成
以下、図7乃至図9を使用して、本実施形態において使用され得る移動端末の構成例を説明する。

【0061】
図7は、本実施形態に係る移動端末の構成例として、移動端末100の構成を複数の回路モジュールから構成されるハードウェア構造として表した図である。図7において、移動端末100は、制御プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、ユーザ入出力装置14、送受信アンテナ15A、GPS用アンテナ15B、RF送受信回路16、ベースバンド・プロセッサ17、3軸加速度センサー18、バッテリー残量メーター19、GPS送受信機20およびバス21から構成されている。制御プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、ユーザ入出力装置14、ベースバンド・プロセッサ17、3軸加速度センサー18、バッテリー残量メーター19、GPS送受信機20は、バス21によって電気的に接続され、バス21を介して互いに情報をやり取りする。RF送受信回路16は信号線23によってベースバンド・プロセッサ17と電気的に接続され、送受信アンテナ15は、信号線22によってRF送受信回路16と電気的に接続されている。

【0062】
制御プロセッサ11は、揮発性メモリであるメモリ12内に記憶されたソフトウェアを実行することによって移動端末100全体を制御すると同時に、生成した一時データや外部から読み込んだデータをメモリ12に記憶させる。ストレージ13は、メモリ12上にロードされるデータおよびメモリ12上から保存されるデータを長期的に記憶する不揮発性メモリであると同時に、移動端末100が、DTNのような蓄積交換型のパケット中継動作を実行中にデータ・パケットを蓄積しておく蓄積場所として機能する。ユーザ入出力装置は、移動端末100におけるユーザ・インターフェースを提供する。

【0063】
移動端末100が他の端末から情報信号を受信する際、ベースバンド・プロセッサ17は、以下の処理を行う。まず、送受信アンテナ15Aによって受信され、RF送受信回路16によってRF周波数帯域からベースバンド周波数帯域へとダウンコンバートされ信号処理されたベースバンド信号をRF送受信回路16から受信する。続いて、受信したベースバンド信号を処理してベースバンド・シンボルを生成する。最後に、生成したベースバンド・シンボルをデジタル・ビット系列に変換し、バス21を介して当該デジタル・ビット系列を制御プロセッサ11に送信する。移動端末100が他の端末に対して情報信号を送信する場合には、ベースバンド・プロセッサ17は、上記とは逆の処理を行う。

【0064】
3軸加速度センサー18は、移動端末100が物理的に移動する際に移動端末100に加わる加速度ベクトルを検出し、制御プロセッサ11からの要求に応じて、バス21を介して当該加速度ベクトルを表すデータを制御プロセッサ11に送信する。バッテリー残量メーター19は、移動端末100のバッテリー残量を検出し、制御プロセッサ11からの要求に応じて、バス21を介して当該バッテリー残量を表すデータを制御プロセッサに送信する。GPS送受信機20は、GPS用アンテナ15Bを介してGPS衛星(図示なし)との間で衛星信号を通信し、GPS衛星から受信した衛星信号に基づいて移動端末100の現在位置を計算するために、バス21を介して受信した衛星信号の位相タイミング情報を制御プロセッサ11に送信する。

【0065】
図8(a)および図8(b)は、本実施形態に係る移動端末の構成例として、移動端末100内の構成を相互に連携する抽象的な機能ブロックの集まりとして表した図である。図8(a)および図8(b)において、移動端末100は、ユーザ・インターフェースを含むアプリケーション110、MANET/DTN切り替え判断部111、メッセージ受信部112、受領メッセージ解析部113、MANET送信部120、ルーティング制御テーブル130、DTN送信部140、IPND送受信部141および受領IPND解析部142、プロトコル下位層150および対応表160から構成される。図8(a)と図8(b)とでは、移動端末100が現在実行中の動作状態によって上述した機能ブロック同士の間の接続関係や機能ブロック間の情報の流れが異なっている。すなわち、図8(a)は、ユーザからアプリケーション110を介してデータ・パケットのEnd-To-End伝送を指示されたことに応じて、移動端末100が、End-To-End伝送を開始する動作を実行している際における、移動端末100内の機能ブロック同士の間の接続関係を表す。他方、図8(b)は、移動端末100が、パケット中継転送動作によって他の移動端末から転送されて来たパケットを受信してさらに中継する動作を実行している際における、移動端末100内の機能ブロック同士の間の接続関係を表す。

【0066】
アプリケーション110、MANET/DTN切り替え判断部111、メッセージ受信部112、受領メッセージ解析部113、MANET送信部120、DTN送信部140、IPND送受信部141および受領IPND解析部142およびプロトコル下位層150は、図7におけるメモリ12内に常駐し、制御プロセッサ11により実行されるソフトウェア・プログラムとすることが可能である。

【0067】
まず、図8(a)における各機能ブロックの機能と役割について説明する。ユーザから指示を受けたアプリケーション110は、所望の宛先端末に対するデータ・パケットのEnd-To-End伝送の開始を、MANET/DTN切り替え判断部111を介して、MANET送信部120またはIPND送受信部141に要求する。具体的には、所望の宛先端末がユーザによって端末IDの形で指定されると、アプリケーション110は、まず最初に、後述する対応表160を参照して当該端末IDを対応するIPアドレスに変換する。続いて、アプリケーション110は、当該IPアドレスとEnd-To-End伝送すべきデータ・パケットをMANET/DTN切り替え判断部111に渡して、当該データ・パケットの中継転送動作の開始を要求する。MANET/DTN切り替え判断部111は、移動端末100がMANETに基づくルーティングを使用して通信を行うMANETモードと移動端末100がDTN基づくパケット中継転送を使用して通信を行うDTNモードとの間で移動端末100の動作モードを状況に応じて切り替える。MANET/DTN切り替え判断部111が、移動端末100の動作モードをどのような状況でMANETモードに切り替え、どのような状況でDTNモードに切り替えるべきかの具体的判断基準については後述する。

【0068】
MANET/DTN切り替え判断部111が移動端末100の動作モードをMANETモードに切り替える際、MANET/DTN切り替え判断部111は、MANET送信部120に対して起動指示を発する。その後、MANET送信部120は、ルーティング制御テーブル130を参照しながら、データ・パケットの中継処理を実行するのと並行して、直接無線通信が可能な他の移動端末である隣接ノードとの間で周期的にルーティング情報を交換し、ルーティング制御テーブル130の内容を更新する。

【0069】
ルーティング制御テーブル130は、各移動端末がMANET方式に基づいてパケットのルーティングを行うために使用される経路制御情報の一覧であり、テーブルを構成する各ルーティング情報エントリーは、特定のEnd-To-End伝送経路に対応付けられる。具体的には、各ルーティング情報エントリーは、自身に対応付けられた特定のEnd-To-End伝送経路上における最終宛先のIPアドレスと自端末がパケットを直接中継する先である隣接ノードのIPアドレスを対にして保持している。各移動端末により構成される無線アドホック・ネットワークのトポロジは時々刻々と変化するので、各移動端末は隣接ノードとの間で経路情報を定期的に交換することにより、ルーティング制御テーブル130を一定時間間隔で最新の内容に更新する必要がある。すなわち、MANET方式において使用されるルーティング制御テーブル130は、隣接ノード間での経路情報の定期的な交換により全体として同期がとられたネットワーク内において、End-To-End伝送経路とパケット中継先となる特定の隣接ノードとの間の最新の対応関係を常に保持する。何らかの理由により、隣接ノード間での経路情報の定期的な交換が滞り、ルーティング制御テーブル130内の一部のエントリーに関して、End-To-End伝送経路とパケット中継先となる隣接ノードとの間の対応関係が最新の状態ではなくなる場合がある。この場合、MANET送信部120は、当該対応関係が最新の状態に更新されていないエントリーを無効であるとして削除する。

【0070】
次に、DTN送信部140、IPND送受信部141および受領IPND解析部142の機能と役割について説明する。アプリケーション110が移動端末100の動作モードをDTNモードに切り替える際、アプリケーション110は、IPND送受信部141に対して起動指示を発する。その後、IPND送受信部141は、移動端末100と直接無線通信が可能な隣接ノードとなる他の移動端末を探索するために、近隣探索ビーコンであるIPND(IP Neighbor Discovery)パケットを送出し、近隣のいずれかの移動端末が当該IPNDパケットに応答するのを待つ。この時、移動端末100が近隣の移動端末に中継すべきパケットを受信済みであれば、移動端末100は当該応答を待ちながら、受領IPND解析部142を経由して当該受信済みパケットをDTN送信部140内に蓄積する。近隣のいずれか一つ以上の移動端末から当該応答が受信できた場合、DTN送信部140は当該応答内に含まれる無線接続情報を使用して応答送信元である移動端末に無線接続し、無線接続した移動端末に対して蓄積していた当該受信済みパケットを転送する。

【0071】
移動端末100内のIPND送受信部141が近隣の他の移動端末からのIPNDパケットの送信を検知し、これを受信した場合には、受領IPND解析部142は、以下の動作をする。まず、受領IPND解析部142は、当該IPNDパケットをIPND送受信部141から受信し、受信したIPNDパケット内の送信元情報に基づいて応答をIPNDパケットの送信元であるDTN端末に返信する。続いて、受領IPND解析部142は、IPNDパケットの送信元であるDTN端末から転送されてくるデータ・パケットに関して、その中継先である次ホップ・ノードに対応する他の移動端末を決定するために、受信したIPNDパケットに対する解析処理を実行する。その後、IPNDパケットの送信元であるDTN端末からデータ・パケットが転送されて来たならば、受領IPND解析部142は、当該解析処理によって決定した次ホップ・ノードに対応する移動端末に当該データ・パケットを転送するために、当該データ・パケットをDTN送信部140内に蓄積した上で、IPND送受信部141に制御を渡す。最後に、制御を渡されたIPND送受信部141は、上記と同様の手順によって次ホップ・ノードに対応する近隣の移動端末に対してデータ・パケットの転送を実行する。

【0072】
以上より、DTNに基づいてDTN送信部140、IPND送受信部141および受領IPND解析部142により実行される一連のパケット中継転送制御は、End-To-End伝送経路をパケット中継動作開始前に識別することなく、パケットの最終宛先に到達するまで以下の動作を繰り返すだけである。すなわち、DTNに基づくパケット中継転送制御は、パケット蓄積中の移動端末が送出したIPND(すなわち、近隣探索ビーコン)にたまたま応答した一つ以上の他の移動端末を隣接ノードとして認識し、当該隣接ノードに対してパケットを中継転送する動作を繰り返す。

【0073】
プロトコル下位層150は、移動端末100がMANETモードまたはDTNモードで動作中にルーティング情報、IPNDパケット又はその応答のような制御情報およびデータ・パケットを近隣の移動端末と通信し合うためのデータリンク・レベルの無線伝送手段を提供する。

【0074】
対応表160は、上述したように、ユーザから指定された端末IDと対応するIPアドレスとの間の変換のために使用されることに加え、以下のような場合にアプリケーション110によってアクセスされ、使用される。即ち、MANETモードで動作中の移動端末100がDTNモードで動作中の近隣の移動端末に対してデータ・パケットの中継転送をする必要がある場合、またはその逆の場合である。これらの場合において、アプリケーション110は、DTNモード固有のパケット宛先識別情報であるEIDと各移動端末を識別するIPアドレスや端末IDとの間で変換処理を行うために対応表160を使用する。MANET端末とDTN端末間におけるパケット中継処理の詳細とその際に実行される対応表160を使用した変換処理については後述する。

【0075】
次に、図8(b)における各機能ブロックの機能と役割について説明する。パケット中継転送により他の移動端末から転送されて来たデータ・パケットを、移動端末100内のプロトコル下位層150が受信すると、メッセージ受信部112は、プロトコル下位層150から当該データ・パケットを受け取る。続いて、受領メッセージ解析部113は、当該データ・パケットをメッセージ受信部112から受け取り、当該データ・パケットの宛先IPアドレスを解析し、その解析結果に応じて、当該データ・パケットをアプリケーション110、MANET送信部120およびIPND送受信部141のうちの何れに渡すかを判定する。具体的には、以下のとおりである。

【0076】
(a)当該宛先IPアドレスが移動端末100自身のIPアドレスと一致する場合には、当該データ・パケットの最終的な宛先は移動端末100であると判断できるから、当該データ・パケットをアプリケーション110に渡す。
(b)当該宛先IPアドレスに対応するルーティング情報エントリーがルーティング制御テーブル130内から検索できた場合には、ルーティング制御テーブル130を使用してMANETモードでのルーティングの実行が可能である。そこで、このような場合であって、なおかつ、MANET/DTN切り替え判断部111が移動端末100の動作モードをDTNモードに切り替えていないならば、当該データ・パケットをMANET送信部120に渡す。
(c)上記(a)および(b)の何れの場合にも該当しない場合には、DTNモードでのパケット中継転送の実行が必要となるので、当該データ・パケットをIPND送受信部141に渡す。

【0077】
図8(b)において、アプリケーション110、MANET送信部120、ルーティング制御テーブル130、DTN送信部140、IPND送受信部141、受領IPND解析部142、プロトコル下位層150および対応表160の構成と動作は図8(a)の場合と同様である。

【0078】
図9は、本実施形態に係る移動端末の構成例として、複数のソフトウェア構成要素および複数のデータ構造によって構成される移動端末100内のソフトウェア構造を表した図である。図9において、ユーザ1によって操作される移動端末100は、アプリケーション110、アプリケーションからランタイム・ライブラリとして呼び出される切り替え制御モジュール101、第1のアプリケーション・レベル(APL)ソケット・インターフェース102を介して切り替え制御モジュール101と接続されたMANETモジュール103、第2のAPLソケット・インターフェース104を介して切り替え制御モジュール101と接続されたDTNモジュール105を含む。移動端末100はさらに、アプリケーション110、切り替え制御モジュール101、MANETモジュール103およびDTNモジュール105をソフトウェアとして実行する実行環境であるOS/API 106を含む。OS/API 106は、アプリケーション110、MANETモジュール103およびDTNモジュール105からアクセスすることが可能な内部データ構造として図8(a)および図8(b)と同様のルーティング制御テーブル130および対応表160を含んでいる。加えて、OS/API 106は、アプリケーション110から指示を受けた切り替え制御モジュール101がMANETモードのルーティング機能を使用してデータ・パケットをEnd-To-Endで送受信するためのインターフェースとして、TCP/IPソケット・インターフェース107をさらに含んでいる。一実施形態においては、移動端末100は、OS/API 106としてAndroid OS(登録商標)を採用することが可能である。

【0079】
アプリケーション110、切り替え制御モジュール101、MANETモジュール103、DTNモジュール105およびOS/API 106は、図7におけるストレージ13からロードされてメモリ12上に常駐し、図7における制御プロセッサ11によって実行されるソフトウェア・プログラムとすることが出来る。ルーティング制御テーブル130および対応表160は図7のメモリ12上に常駐するデータ構造として実装され、これらのデータ構造の内容は、一定周期毎に、移動端末100の通信ログと共に、不揮発性メモリであるストレージ13(図7)内に退避される。

【0080】
図9のアプリケーション110の機能と役割は、図8(a)および図8(b)のアプリケーション110の機能と役割と同一であるため、説明は省略する。切り替え制御モジュール101は、アプリケーション110にリンクされたランタイム・ライブラリ・モジュールであり、図8(a)および図8(b)におけるMANET/DTN切り替え判断部111、メッセージ受信部112、受領メッセージ解析部113の三者の機能を実装するモジュールである。切り替え制御モジュール101は、移動端末100の動作モードをMANETモードに切り替える際には、第1のAPLソケット・インターフェース102を介してMANETモジュール103に対して起動指示を送信し、MANETモジュール103の動作をアクティブにする。切り替え制御モジュール101は、移動端末100の動作モードをDTNモードに切り替える際には、第2のAPLソケット・インターフェース104を介してDTNモジュール105に対して起動指示を送信し、DTNモジュール105の動作をアクティブにする。

【0081】
MANETモジュール103は、切り替え制御モジュール101からの起動指示によりアクティブ化されると、図8(a)および図8(b)のMANET送信部120が実行する機能のうち、直接無線通信が可能な他の移動端末(隣接ノード)との間で周期的にルーティング情報を交換し、ルーティング制御テーブル130の内容を更新する機能を実行する。DTNモジュール105は、切り替え制御モジュール101からの起動指示によりアクティブ化されると、図8(a)および図8(b)のDTN送信部140、IPND送受信部141および受領IPND解析部142と同様の機能を実行する。

【0082】
OS/API 106は、MANETモジュール103およびDTNモジュール105の実行環境を提供することに加えて、MANETモジュール103およびDTNモジュール105から見て、図7のプロトコル下位層150と同様の機能を実行する役割も有している。さらに、OS/API 106は、図8(a)および図8(b)のMANET送信部120が実行する機能のうち、ルーティング制御テーブル130を参照しながらデータ・パケットをルーティングする機能を実行する。

【0083】
なお、移動端末100がMANETモードで動作しているときは、アプリケーション110から指示を受けた切り替え制御モジュール101によるEnd-To-Endでのデータ・パケットの送受信動作はOS/API 106内のTCP/IPソケット・インターフェースを介して行われる一方、DTNモードで動作しているときは、当該アプリケーション110による当該End-To-End送受信動作は、第2のAPLソケット・インターフェース104 およびDTNモジュール105を介して行われる。

【0084】
<4>中継移動端末が実行するパケット中継転送動作をMANET-DTN間で切り替える機能を実現するための実施形態
図10および図11は、中継移動端末が実行するパケット中継動作をMANET-DTN間で切り替える機能を実現するために移動端末間で実行される通信動作を説明するための図である。以下、図10および図11を使用して、中継移動端末が実行するパケット中継動作をMANET-DTN間で切り替える機能を実現する通信動作の実施形態を説明する。

【0085】
図10は、MANET-DTN間における上述した切り替え機能の例示のために、複数の移動端末100-(a)乃至100-(k)および無線アクセス・ルータ200から形成される無線アドホック・ネットワークを表す。今、図10において、MANETモードで動作中の移動端末100-(a)のバッテリー残量が残り僅かとなったことを移動端末100-(a)上で実行中の切り替え制御モジュール101が検知したとする。この時、切り替え制御モジュール101は、隣接ノードである他の移動端末100-(d)および100-(e)との間の周期的なルーティング情報の交換とルーティング制御テーブル130の更新による電力消耗に移動端末100-(a)が耐えられないと判断する。その結果として、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(a)上でのパケット中継制御の実行をMANETモードから電力消耗の少ないDTNモードに切り替える。

【0086】
また、図10において、MANETモードで動作中の移動端末100-(b)が高速で移動していることにより、隣接ノードである移動端末100(f)および無線アクセス・ルータ200との間の無線チャネル状態が良好ではなくなったことを移動端末100-(b)上で実行中の切り替え制御モジュール101が検知したとする。この時、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(b)が隣接ノードとの間のルーティング情報の交換を良好な無線チャネル状態下で実行することが困難となり、同時に、安定したルーティング経路を維持することが困難であると判断する。その結果として、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(b)上でのパケット中継制御の実行をMANETモードから安定したルーティング経路の維持を前提としないDTNモードに切り替える。

【0087】
また、図10において、MANETモードで動作中の移動端末100-(c)と直接無線通信が可能な相手(隣接ノード)がいなくなったことを移動端末100-(c)上で実行中の切り替え制御モジュール101が検知したとする。このような状況は例えば、移動端末100-(c)が元の場所から長距離を移動したために、無線アクセス・ルータ200の無線通信カバレージおよび他の全ての移動端末の無線通信カバレージから大きく離れてしまった場合などに起こり得る。この時、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(c)がいずれの隣接ノードともルーティング情報を交換することが不可能であると判断する。そしてそれにより、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(c)がルーティング制御テーブル130内においてルーティング情報エントリー毎に保持する隣接ノードとEnd-To-End伝送経路との間の対応関係を最新の状態に更新することが不可能であると判断する。その結果として、切り替え制御モジュール101は、移動端末100-(c)上でのパケット中継制御の実行をMANETモードから隣接ノードとの間の連続的な経路情報の交換を必要としないDTNモードに切り替える。

【0088】
図11は、移動端末100内の制御プロセッサ11(図7)により実行される切り替え制御モジュール101(図8、図9)がMANETモードとDTNモードとの間でパケット中継制御の実行を切り替える動作の流れを説明するフローチャートである。

【0089】
図11においては、処理フローはS10の実行から開始し、切り替え制御モジュール101は、バス21(図7)を介してバッテリー残量メーター19(図7)から現在のバッテリー残量を受信する。続いて、S20において、切り替え制御モジュール101は、受信したバッテリー残量を第1閾値と比較し、当該バッテリー残量が当該第1閾値以上であるか否かを判定する。この判定結果がYESならば、処理フローはS30に進み、NOならば処理フローはS70に進む。S30において、切り替え制御モジュール101は、バス21(図7)を介して3軸加速度センサー18(図7)から移動端末100に関する加速度ベクトルを受信し、移動端末100の現在の移動速度と加速度を計算する。S40において、切り替え制御モジュール101は、受信した移動速度または加速度のいずれか一方を第2閾値と比較し、当該移動速度または加速度のいずれか一方が当該第2閾値以下であるか否かを判定する。この判定結果がYESならば、処理フローはS50に進み、NOならば処理フローはS70に進む。S50において、切り替え制御モジュール101は、自端末と直接に無線通信が可能な隣接ノードに相当する他の移動端末が存在するか否かを判定する。この判定結果がYESならば、処理フローはS60に進み、NOならば処理フローはS70に進む。自端末から見た隣接ノードの有無の判定は、例えば、以下の2通りの方法で実現することが出来る。一つ目は、切り替え制御モジュール101が、メモリ12(図7)内に記憶されているルーティング制御テーブル130を検索し、ルーティング制御テーブル130内に隣接ノードとして他の移動端末のアドレス情報又は識別情報が登録されているか否かを判定する方法である。二つ目は、移動端末内に内蔵された孤立ノード監視タイマー(図示せず)が通知する周期的な時点において、自端末が他のMANET端末からのビーコン送信の有無を判定する方法である。いずれにしても、ルーティング制御テーブル130内の特定のルーティング情報エントリーが保持している隣接ノードとEnd-To-End伝送経路との間の対応関係が最新のものでなければ、当該ルーティング情報エントリーは無効なエントリーとして削除される。その結果、上記対応関係に関して最新の内容を保持するルーティング情報エントリーをルーティング制御テーブル中から一つも検索できなければ、切り替え制御モジュール101は、隣接ノードが存在しないと判断する。S60においては、移動端末100が実行中のパケット中継動作がDTNモードであるならば、それをMANETモードに切り替える。S70においては、移動端末100が実行中のパケット中継動作がMANETモードであるならば、それをDTNモードに切り替える。

【0090】
本発明に係る一変形実施例においては、図11に示すフローチャートのS30において、移動端末100の移動速度や加速度を計算するために、3軸加速度センサー18(図7)から取得した加速度ベクトルのデータではなく、GPS送受信機20(図7)から取得したGPS衛星信号の位相タイミング情報を使用することが可能である。具体的には、制御プロセッサ11が、GPS送受信機20から連続的に取得した衛星信号の位相タイミング情報に基づいて、移動端末100の現在位置の時系列データを計算し、当該時系列データの解析結果から移動端末100の移動速度や加速度を計算する。以上より、制御プロセッサ11が、移動端末100の移動速度(または加速度)を上記手段により計算することは、制御プロセッサ11が、3軸加速度センサー18から取得される加速度ベクトルに基づいて移動速度(または加速度)を計算することの代替的な手段として採用することが出来る。

【0091】
<5>本実施の形態の基本的な動作原理
本実施の形態は、図7に示す移動端末100において、メモリ12の上に読み込まれ、制御プロセッサ11によって実行される通信制御ソフトウェアとして実施することが可能である。より具体的には、本実施の形態は、図9に示す移動端末100のソフトウェア構造図において、アプリケーション110の機能の一部として実装することが可能である。また、本実施の形態は、図4に示された無線ネットワーク環境内において、複数の移動端末同士がパケットを中継転送し合う協調動作によって実行されるパケット中継転送方法として実施することが可能である。また、図3において例示される端末のような本実施の形態に係る移動端末は、本実施の形態に係るパケット中継転送方法を実行するための装置として実施することが出来る。

【0092】
図4に示す無線ネットワーク環境においては、MANETモードとDTNモードを含む複数の異なる種類のパケット中継方式が混在する形でネットワーク運用がされる。加えて、図4に示す無線ネットワーク環境においては、各移動端末が周囲の状況変化に応じて適切なパケット中継転送方式に切り替えながらパケット中継転送動作を実行する。本実施の形態はこのような無線ネットワーク環境を基盤として実現され、本実施の形態において使用される各移動端末は、図10に示すように自端末が置かれている状況の変化に応じて、自端末のパケット中継動作をMANETモードとDTNモードとの間で切り替える。このような状況の変化には、例えば、無線チャネル状態の安定性、端末モビリティまたは周辺エリア内の端末密度などの変化が含まれる。本実施の形態においては、MANETモードとDTNモードとの間でパケット中継動作を切り替えながらデータの中継転送動作を実行中の多数の移動端末を、GOを中心として構成されるネットワーク接続トポロジを有する端末グループの単位で組織化する。

【0093】
すなわち、本実施形態が使用する「端末グループに基づく中継方式」においては、端末グループを構成する移動端末の各々は、MANETモードとDTNモードとの間でパケット中継動作を状況に応じて切り替えながらデータの中継転送動作を実行中の端末である。言い換えると、本実施形態が使用する「端末グループに基づく中継方式」においては、各端末グループは、MANETモード端末およびDTNモード端末が混在した端末集合として構成される。また、本実施形態が使用する「端末グループに基づく中継方式」においては、端末グループ内で行われる端末間通信は、パケット中継動作を状況に応じてMANETモードとDTNモードとの間で切り替えながら実行することによって実現される。従って、各端末グループ内においては、MANETモード端末とDTNモード端末とが互いに次ホップ・ノードとして直接通信し合うことにより、パケットの中継転送を実行する必要が生じる場合がある。互いに異なるパケット中継転送の仕組みを具備するMANETモード端末とDTNモード端末とが同一の端末グループ内において次ホップ・ノードとして直接通信し、パケットの中継転送を実行する具体的な方法については後述する。

【0094】
また、本実施形態が使用する「端末グループに基づく中継方式」においては、パケットの送信元端末から最終宛先端末に至るEnd-To-End通信経路は、送信元端末が属する端末グループの外縁より先には伸びない。つまり、当該End-To-End通信経路のホップ数は、送信元端末が属する端末グループのサイズに依存し、端末グループのサイズとは、端末グループの外縁に位置する子ノード端末から親ノードであるGOに至る通信経路のホップ数の最大値である。

【0095】
「端末グループに基づく中継方式」においては、送信元端末を中心とする周辺エリア内における無線チャネル状態、電波状況、他の移動端末の存在密度や地理的配置状況に応じて端末グループのサイズを適切に選択することが可能である。そこで、端末グループのサイズを上記のような状況に応じて適切に選択することにより、End-To-End通信経路のホップ数の上限を状況に応じて適切に制限することが出来る。その結果、「テーブル駆動型」や「蓄積転送型」のパケット中継転送を行う無線ネットワークにおいて、End-To-End通信経路のホップ数が長くなることに伴う上述した問題を回避することが出来る。

【0096】
本実施形態においては、送信元端末を中心とする周辺エリア内における無線チャネル状態、電波状況、他の移動端末の存在密度や地理的配置状況に応じて端末グループのサイズを適切に選択するために、以下の基準に基づいて端末グループのサイズの選択を行う。

【0097】
本実施形態においては、端末グループ毎に子ノード端末としてGOに無線接続しようとする一つ以上の移動端末は、当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性の度合いを評価する。当該GOと各子ノード端末との間のEnd-To-End通信経路の安定度は、以下のような指標によって評価することが出来る。例えば、子ノード端末としてGOと新たに接続しようとする端末とGOとの間の地理的な直線距離、当該GOと当該接続しようとする端末との間の通信経路のホップ数などを通信経路の安定度の指標とすることが出来る。加えて、当該GOと当該接続しようとする端末との間で通信経路診断用のビーコンを複数回にわたって往復させ、当該診断用ビーコンの通信成功率や当該診断用ビーコンの平均ラウンド・トリップ時間を計測し、これらの値を通信経路の安定度の指標とすることも出来る。

【0098】
GOに接続しようとする当該端末が当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性を評価した結果、当該通信経路の安定性の度合いが所定の閾値よりも高ければ、当該端末は当該GOに子ノード端末として無線接続して、当該GOを中心とする端末グループに参加する。GOに接続しようとする当該端末が当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性を評価した結果、当該通信経路の安定性の度合いが所定の閾値よりも低ければ、当該端末は当該GOに無線接続せず、当該GOを中心とする端末グループには参加しない。このようにして、GOを中心として当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定度が所定閾値以上となる一つ以上の子ノード端末により、端末グループのネットワーク接続トポロジを構成し、その結果得られた端末グループのサイズを適切なサイズとして選択する。

【0099】
本実施の形態の狙いは、上述したグループ・オーナー(GO:Group Owner)を中心として端末グループ単位で構成されるネットワーク接続トポロジにおいて、データを中継転送するためのホップ数に制限の無いマルチホップ通信を実現することである。すなわち、本実施の形態は、GOを中心として端末グループ単位で構成されるネットワーク接続トポロジに基づいてパケットを中継する「端末グループに基づく中継方式」において、転送データを中継可能なホップ数の上限を超えて転送データを中継可能とする技術を開示する。

【0100】
なお、図4に示す無線ネットワーク環境において複数の移動端末の各々が本実施の形態に係るパケット中継転送を実行しているときに各移動端末がとり得る複数の端末状態を図26にしめす。本実施の形態に係るパケット中継転送の実行過程において生じる種々のトリガー事象に応じて、各移動端末の端末状態は、図26に示した複数の端末状態の間を状態遷移する。この状態遷移の契機となるトリガー事象の発生条件を図27に示す。本実施の形態に係るパケット中継転送の実行過程については、本明細書の後の記述において詳細に後述する。

【0101】
図3に示す「スター接続型の中継方式」は、GOを中心として端末グループ単位で構成されるネットワーク接続トポロジに基づいてパケットを中継する方式(端末グループに基づく中継方式)の最も単純な例である。

【0102】
そこで、本明細書の以下の説明においては、まず「端末グループに基づく中継方式」の最も単純な例である「スター接続型の中継方式」を実行するスター接続型のネットワーク接続トポロジにおいて、本実施の形態に係るパケット中継方式を実現する仕組みを第1実施例として説明する。

【0103】
続いて、「端末グループに基づく中継方式」のより複雑な例として、一つの端末グループ内において2ホップ以上を隔ててGO(親ノード端末)と子ノード端末が接続し得るより大きな規模の端末グループを対象としたパケット中継方式を実現する仕組みを第2実施例として説明する。

【0104】
<5-1>第1実施例
第1実施例は、本実施形態に係る「端末グループに基づくパケット中継方式」において、GOとなる親ノード端末までのEnd-To-End通信経路の安定度に基づいて端末グループのサイズを選択した結果、何れの端末グループについてもサイズが常に1ホップとなる特別な場合に対応する。第1実施例においては、何れの端末グループについてもサイズが常に1ホップとなるので、端末グループ毎のネットワーク接続トポロジは、図3に示すスター型ネットワーク接続トポロジとなり、端末グループ内ではパケットは「スター接続型のパケット中継方式」で中継転送される。

【0105】
図3に示す「スター接続型のパケット中継方式」が実行されるスター型接続ネットワークにおいては、転送データを中継可能なホップ数が2ホップに制限されていた。そこで、第1実施例は、図3に示すスター型接続ネットワークにおいて上述したホップ数の上限を超えて転送データを中継可能とする技術を開示する。図3に示す「スター接続型の中継方式」の具体例には、Wi-Fi DirectとしてWi-Fi Allianceにおいて標準化されている方式(非特許文献5を参照)やその他の方式(非特許文献6乃至非特許文献8を参照)がある。例えば、Wi-Fi Direct標準において規定される「スター接続型の中継方式」には以下の実装上の制約がある。

【0106】
・GO(Group Owner)は一つの端末グループ内で一つだけ存在する。
・親ノードであるGOに対して他の移動端末が子ノードとして無線接続するスター型接続形態での通信が可能である。
・端末グループの稼働中にGOとしての役割を親ノードから子ノードへ移管することは不可能であり、GOとして動作する端末を変更するためには、端末グループの再構成が必要となる。
・端末グループに参加していない各移動端末は自端末が通信可能な範囲内にGOが存在する場合には、当該GOに無線接続して端末グループに参加する。
・少なくとも2台以上の移動端末が何れの端末グループにも参加していなければ、これらの移動端末同士が集まって端末グループを形成するための動作が実行される。

【0107】
上述した実装上の制約の下では、Wi-Fi Direct方式は、転送データを送信元から最終宛先までマルチホップ通信によりEnd-To-End伝送するために端末グループを動的に構成変更することができない。また、上述した実装上の制約の下では、Wi-Fi Direct方式は、マルチホップ通信によりEnd-To-End伝送するために、時々刻々と変化する通信状況に応じて最適なGOを動的に選出することも出来ない。また、上述した実装上の制約の下では、Wi-Fi Direct方式は、転送データをマルチホップ通信によりEnd-To-End伝送するために、各端末グループに参加させる子ノード端末の取捨選択を最適化することも出来ない。その結果、上述した実装上の制約の下では、Wi-Fi Direct方式は、データを中継転送するためのホップ数に制限の無いマルチホップ通信を実現することができない。

【0108】
そこで、第1実施例では、例えばWi-Fi Direct標準などにおいて規定されるような「スター接続型の中継方式」において、上述したホップ数の上限(2ホップ)を超えて転送データを中継可能とする仕組みを実現する。具体的には、図3に示す「スター接続型の中継方式」に基づく転送データの中継動作を実行しながら、状況に応じて既存のグループの解散と再構成を繰り返し行い、グループの解散/再構成のたびにグループのメンバー構成やグループ形状を変化させる。その結果、古いグループが解散され、新しいグループが形成された際に、古いグループの解散以前からの転送データを蓄積している移動端末と古いグループの外から新たにグループ仲間になった移動端末との間で当該転送データの中継が実行される。

【0109】
グループの解散/再構成の反復実行によって、グループ解散以前から移動端末内に蓄積されていた転送データが新グループ形成後に新たにグループ仲間になった移動端末に中継される動作が何度でも繰り返し実行される。その結果、DTNのような蓄積転送型のパケット中継方式と同様に、転送データを蓄積済みの移動端末が別の移動端末と新たに無線接続可能となるたびに、転送データをバケツリレー式に中継してゆく形で、ホップ数に制限の無いマルチホップ通信を実現することができる。

【0110】
その際、第1実施例は、グループ解散の直前の時点においてグループ外の隣接ノード端末数が最も多い移動端末を再構築後のグループのGOとするので、GOから見た場合に、グループ再構築後に、グループ外から新たにグループ仲間に加わる端末個数を最大化することが出来る。その結果、本実施例においては、上述したグループの解散と再構築を繰り返すプロセスにおいて、上述したグループ内中継転送による蓄積データの拡散効率と拡散速度を最大化することが可能となる。

【0111】
具体的には、現在の端末グループの解散とグループ再構成の必要があるとGOが判断した場合、端末グループに所属する全ての移動端末の各々は、端末毎のGO選出優先度を算出する。GO選出優先度の典型的な具体例には、以下に述べるようなIntent値が含まれる。その他に、端末毎のGO選出優先度の具体例としては、各端末が端末グループ外への中継転送のために蓄積しているメッセージ(パケット)の個数や、グループ解散前における各端末の端末グループ内での相対的な位置、各端末の過去一定時間内に参加したグループへの平均参加継続時間、各端末の過去一定時間内の転送データの送信時間または受信時間の平均時間、これらのうちの複数を組み合わせたものなどを挙げることが出来る。GO選出優先度として、Intent値、各端末が端末グループ外への中継転送のために蓄積しているメッセージ(パケット)の個数、またはグループ解散前における各端末の端末グループ内での相対的な位置、各端末の過去一定時間内に参加したグループへの平均参加継続時間、各端末の過去一定時間内の転送データの送信時間または受信時間の平均時間、これらのうちの複数を組み合わせたものなどを採用することができる。

【0112】
例えば、GO選出優先度として、「グループ解散前における各端末の端末グループ内での相対的な位置」を使用する場合、自端末とGOとの間の距離が長いほど、または自端末とGOとの間のホップ数が大きいほど、自端末に関して算出されるGO選出優先度が大きくなる。Intent値については、以下において詳しく後述する。これにより、GOから見た場合に、グループ再構築後に、グループ外から新たにグループ仲間に加わる端末個数を最大化することが出来る。その結果、本実施例においては、上述したグループの解散と再構築を繰り返すプロセスにおいて、上述したグループ内中継転送による蓄積データの拡散効率と拡散速度を最大化することが可能となる。

【0113】
GO選出優先度として、各端末の過去一定時間内に参加したグループへの平均参加継続時間S[sec]を使用する場合、その平均参加継続時間が長いほどGO選出優先度が大きくなるため、グループとしての継続時間が長く、安定したグループを形成することができる。また、GO選出優先度として、各端末の過去一定時間内の転送データの送信時間または受信時間の平均時間A[sec]を使用する場合、その平均時間が長いほどGO選出優先度が大きくなるため、転送データの送受信が活発なグループを形成することができる。また、GO選出優先度として、これら2つの時間S[sec]およびA[sec]を組み合わせたものを使用する場合、例えば、パラメータWで重み付けを行って、優先度P=W×S+(1-W)×A(Wは1~0の値)として求めた優先度Pを使用することができる。この場合、場面に応じてWの値を変化させることにより、安定性と活性度とのバランスを考慮したグループを形成することができる。

【0114】
以下においては、GO選出優先度としてIntent値を使用する場合を例として使用する。
例えば、現在の端末グループの解散とグループ再構成の必要があるとGOが判断した場合、GOは、端末グループ内の全ての子ノード端末にIntent値を算出させるために、自端末についてのIntent値を算出すべき旨の命令を全ての子ノード端末に送信する。端末グループ内において当該命令を受信した子ノード端末の各々は、自端末に隣接する隣接ノード端末のうち、自端末と同じ端末グループに属していない端末の個数をIntent値として算出し、GOに送信する。その際、隣接ノード端末とは、自端末が発した近隣探索ビーコンに応答したことにより、自端末に対して次ホップ・ノードとして無線接続された近隣の移動端末である。その結果、本実施の形態は、グループ解散の直前の時点においてグループ外の隣接ノード端末数が最も多い移動端末を再構築後のグループのGOとするので、GOから見た場合に、グループ再構築後に、グループ外から新たにグループ仲間に加わる端末個数を最大化することが出来る。

【0115】
端末グループ内の各移動端末がGOから受信した命令に応じて自身に関するIntent値を算出しようとする場合、各移動端末は近隣探索ビーコンを送出する。さらに、上述した端末グループ内の各移動端末は、当該近隣探索ビーコンに応答した近隣の移動端末のうち、上述した端末グループに属していない端末の個数をカウントすることによって自端末についてのIntent値を算出する。端末グループ内の各移動端末が自身に関するIntent値を計算する動作の詳細については、以下の説明において図19および図20を参照しながら後述する。

【0116】
端末グループ内の全ての子ノード端末からIntent値を受信したGOは、最大のIntent値を送信した子ノード端末を次の新たなGOとして選出する。続いて、GOは、当該選出された子ノード端末に対して次の新たなGOとして選出されたことを通知する選出通知を送信し、現在の端末グループを解散する。当該選出通知を受信した子ノード端末は、次の新たなGOとして動作を開始し、次の新たな端末グループを形成するために、近隣探索ビーコンを送出する。最後に、当該次の新たなGOとして動作を開始した端末は、当該近隣探索ビーコンに応答した近隣の移動端末を子ノード端末として当該次の新たなGOに無線接続させるべきか否かを判定する。具体的には、当該GOが送出した近隣探索ビーコンに応答した近隣の移動端末と当該GOとの間の通信経路の安定性の度合いを評価し、当該安定性の度合いが所定の閾値を上回るか否かを判定する。当該安定性の度合いが所定の閾値を上回るならば、当該近隣の移動端末を当該GOに無線接続させることによって次の新たな端末グループを形成する。それによって、当該近隣の移動端末は、当該GOをネットワーク接続トポロジの中心とする端末グループに新たに参加する。当該安定性の度合いが所定の閾値を以下であるならば、当該近隣の移動端末を当該GOに無線接続させない。

【0117】
なお、上記においては、各端末について算出されたIntent値を集約して次の新たなGOを選出する動作はGOが実行していたが、そのような動作を同一の端末グループ内に属する子ノード端末が実行することも可能である。その場合、次の新たなGOの選出が必要であると現在のGOが判断して時点で、同じ端末グループ内から無作為に選んだ一の子ノード端末に対して指名メッセージを送信する。続いて、当該指名メッセージを受信した子ノード端末は、現在のGOを含む各端末について算出されたIntent値を集約して次の新たなGOを選出する動作を実行する。さらに、当該指名メッセージを受信した子ノード端末は、次の新たなGOを選出する動作に続いて、現在の端末グループを解散する動作を現在のGOに代わって実行することもまた可能である。

【0118】
以上の説明から理解できる通り、端末グループ内において移動端末毎に算出されるIntent値は、端末グループ内の各移動端末が同じグループ内の他の端末よりも優先的に次の新たなGOとして選出されるか否かを表す相対的な優先度としての役割を果たす。

【0119】
さらに本実施の形態においては、端末グループ内における通信のアクティビティが高い間は、端末グループ内のGOは、グループを解散せずに維持し続け、グループ解散時には、実行可能な全てのグループ内通信要求の処理が完了している状態にしておく。従って、既存のグループが解散/再編された直後においては、以前のグループ内に未処理の通信要求は残存していない。その結果、本実施の形態においては、グループ再構築直後には、グループ解散前から蓄積されていた中継データをグループ外から新たにグループ仲間に加わった端末に直ちに転送することができるので、通知遅延を可能な限り低く抑えることができる。

【0120】
特別な場合として、無線網内において端末グループが一つも形成されていない初期状態においては、無線網内の移動端末の各々は、近隣探索ビーコンを送出することによって自端末の隣接ノード端末の個数をIntent値として算出する。続いて、無線網内において自身のIntent値を算出した複数の移動端末は、互いのIntent値を交換し合いながらIntent値の大きさに基づいて互選によりGOを選出する。例えば、無線網内において自身のIntent値を算出した移動端末の各々は、自端末の近隣に存在する他の移動端末との間でIntent値を互いに交換し合う。その際に、各移動端末が近隣に存在する他の移動端末との間でIntent値を互いに交換し合う通信動作は、上述した蓄積転送型方式(例えば、DTN方式)における感染型経路(Epidemic Routing)制御と同様のデータ拡散方法を使用することにより実現することができる。その結果、無線網内の移動端末の各々は、自身のIntent値に加えて近隣の全ての移動端末のIntent値の一覧表を生成し、当該一覧表の中で自端末のIntent値が最大であると判定した移動端末がGOとしての動作を開始することが可能となる。

【0121】
なお、図4を参照しながら上述した無線ネットワーク環境においては、MANETモードで動作中の移動端末のみがGOとして選出される可能性のある候補となることができ、DTNモードで動作中の移動端末は子ノード端末としてGOに無線接続することしかできない。図4のようにMANETモードとDTNモードのパケット中継方式が混在して使用されている無線ネットワーク環境においては、ネットワーク接続トポロジが安定しているのは、MANET端末同士の相互接続により形成されるネットワーク・ドメインだけである。つまり、本実施の形態においては、ネットワーク接続トポロジが安定した移動端末群との間における無線接続状態が常に安定している移動端末だけがGOとして選出される可能性のある候補となり得る。言い換えると、本実施の形態においては、移動端末間で相互に経路制御テーブル(ルーティング情報)を交換しながらテーブル駆動型のパケット中継動作を実行中の移動端末群に属している移動端末だけがGOとして選出される候補となり得る。

【0122】
従って、端末グループの解散/再構築の繰り返し実行に基づくマルチホップ転送によって多数の移動端末間に転送データが拡散してゆくプロセスにおいて、当該転送データは、図4におけるMANET網とDTN網の境界を超えてDTNドメイン内に拡散してゆくことは出来ない。ここで、DTNドメインとは、図4に示す無線ネットワーク環境において、DTNモードで動作中の端末だけで構成されるネットワーク・ドメインを指して言う。

【0123】
本実施の形態において、上述した端末グループの解散/再構築の繰り返し実行プロセスに基づくデータ拡散プロセスがDTNドメイン内に拡散してゆくことが出来ない構成としている理由は以下のとおりである。
(理由1)ルーティング・テーブルが全く使用されないDTNドメイン内においては、任意メッシュ型のネットワーク接続トポロジをスター型のネットワーク接続トポロジに単純化することによるパケット中継転送処理負担の軽減効果がMANETを使用する場合と比べてそれほど期待できない。
(理由2)無線チャネルが不安定でモビリティが非常に高いDTNドメインでは、ネットワーク接続トポロジの形に関わらず、3台以上からなるトポロジを安定して維持することが困難である。そのため、トポロジやグループ・メンバー端末などの情報管理は困難であり、出来たとしても有効性はほとんど期待できない。むしろ、そのような処理を試みることは,不要な通信制御を増やす結果を招き、単純にすれ違う2台でメッセージを交換する仕組みを採用した場合と比較して、性能が劣化する危険性の方が大きい。

【0124】
一方、稼働中の端末グループ内においてGOとして既に選出された移動端末が、転送データを中継するための中継転送動作を例えばDTN方式での実行に切り替えた場合には、当該GOとして選出されていた移動端末はGOとしての動作を継続することが出来なくなる。つまり、図4の無線ネットワーク環境においてGOとして選出されていた移動端末のパケット中継動作がMANETモードからDTNモードに移行した場合、当該DTNモードに移行した端末はGOとしての動作を継続することが出来なくなる。そこで、当該GOとして選出されていた端末はDTNモードに移行後に以下の動作を実行する。まず、当該GOとして選出されていた端末は、端末グループ内における通信アクティビティの高さとは無関係に当該端末グループを直ちに解散し、続いて、移動端末毎に算出したIntent値を移動端末間で交換し合う。その結果、移動端末の各々は、自身のIntent値に加えて近隣の全ての移動端末のIntent値の一覧表を生成し、当該一覧表の中で自端末のIntent値が最大であると判定した移動端末が次の新たなGOとしての動作を開始することが可能となる。

【0125】
次に、図12を使用して、古いグループが解散され、新しいグループが形成された際に、古いグループの解散以前からの転送データを蓄積している移動端末と古いグループの外から新たにグループ仲間になった移動端末との間で当該転送データの中継が実行されるシナリオを説明する。

【0126】
図12のシナリオにおいては、グループの解散/再構成の反復実行によって、グループ解散以前から移動端末内に蓄積されていた転送データが新グループ形成後に新たにグループ仲間になった移動端末に中継される動作が実行される。

【0127】
図12の(1)において、端末T1乃至T5がGOからの近隣探索ビーコンに応答し無線接続を確立することにより、GOを中心とする端末グループが形成される。その後、端末グループが解散されると、解散前の端末グループのGOは、GOとしての役割を終えて端末T0となり、端末T0と他の端末T1乃至T5との間の無線接続は消滅する。

【0128】
続いて、図12の(2)において、端末T2とT3のみが端末グループ解散時の位置に留まり、図12において(A)で示す円内に含まれる端末T0、T1、T4およびT5が遠くに去ってしまう。その後、図12において(B)で示す円内に含まれる端末T6乃至T9が端末T2およびT3の近傍領域に進入し、端末T2、T3、T6、T7、T8およびT9の間でGO選出優先度を交換することにより、端末T6が新たなGOとして選出されるとする。この場合、端末T2とT3は、図12の(1)で示したグループ解散前の端末グループに所属していた端末であるから、当該グループ解散前の端末グループ内において端末間通信されたパケットを蓄積している。その結果、端末T2とT3においてグループ解散前から蓄積されていた上記パケットは、端末T6を新たなGOとして形成された新たな端末グループ内における端末間通信により、端末T6乃至T9に転送されることとなる。

【0129】
このような動作を反復実行すると、DTNのような蓄積転送型のパケット中継方式と同様に、転送データを蓄積済みの移動端末が別の移動端末と新たに無線接続可能となるたびに、転送データをバケツリレー式に中継してゆく形で、ホップ数に制限の無いマルチホップ通信を実現することができる。

【0130】
また、本実施の形態によれば、非特許文献10や非特許文献11などに開示されている感染型(Epidemic)、評価型(Estimation)および符号化型(Coding)の経路制御に従って複数の移動端末間でデータを拡散させてゆくために実行されるデータ拡散の効率をさらに高めることが出来る。より具体的には、以下のとおりである。従来の蓄積転送型のパケット中継動作の一部として上述した感染型、評価型および符号化型などの経路制御が実行された場合と比べて、本実施の形態は、データを拡散させるための端末間通信を効率化したり、当該端末間通信に要する端末毎の消費電力を節約することが出来る。例えば、本実施の形態によれば、上述した感染型、評価型および符号化型などの経路制御が実行された場合と比べて、データを多数の移動端末に拡散させるのに要する端末間のメッセージ送受信回数を効果的に減らすことが出来る。その結果、本実施の形態によれば、上述した感染型、評価型および符号化型などの経路制御が実行された場合と比べて、データを多数の移動端末に拡散させるのに要する端末毎の消費電力を効果的に節約することもできる。

【0131】
以下、図13乃至図18を参照しながら、上述した感染型、評価型および符号化型などの経路制御が実行された場合と比べて、本実施の形態がデータ拡散の効率を改善することが出来る例示的なシナリオを説明すると共に、データ拡散効率が改善される理由を説明する。

【0132】
図13は、感染型経路制御(Epidemic Routing)方式に従って多数の端末間でデータを拡散させてゆくプロセスにおける1ホップ分の転送中継動作を例示するシナリオを示している。

【0133】
まず、図13の(1)の時点においては、一方の端末MT1は、2つの転送データαとβを蓄積しており、他方の端末MT2は、データαだけを蓄積している。MT1とMT2は相互にメッセージを交換し合い(図13の(1)に示すメッセージm1とm2)、自端末が蓄積しているデータの一覧表を相手側の端末に通知する。例えば、図13の(1)において、MT1は、メッセージm1をMT2に送信することによって、MT1が2つの転送データαとβを蓄積していることをMT2に通知する。同時に、MT2は、メッセージm2をMT1に送信することによってMT2がデータαだけを蓄積していることをMT1に通知する。

【0134】
続いて、図13の(2)に示すとおり、MT2は、データαだけを蓄積しており、MT1が蓄積しているデータβを保有していないので、MT2は、データβの送信要求をメッセージm2としてMT1に送信する。他方、MT1は、データαとβの両者を保有しているので、MT2が現在保有しているデータの中で自身が保有していないデータは存在しない。従って、MT1は、MT2からの送信を要求すべきデータが存在しないことを示すメッセージm1をMT2に対して送信する。

【0135】
最後に、図13の(3)に示すとおり、MT1は、MT2から受信したデータβの送信要求に応じて、データβをMT2に送信する。

【0136】
以上のようにして、感染型経路制御方式に従う1ホップ分の転送中継動作により、互いに1ホップで通信し合う2つの端末間において当該2つの端末がそれぞれ保有する全てのデータを当該2つの端末間で共有することが可能となる。

【0137】
次に、図14は、互いに1ホップで通信し合う3台以上の端末間において端末上の全データを共有するために必要なメッセージ送受信回数を感染型経路制御(Epidemic Routing)方式と本実施の形態との間で比較した結果の具体例である。図14の左図は、感染型経路制御(Epidemic Routing)方式に従って、4台の移動端末間で端末上の全データを共有するために必要なメッセージ送受信を示した図である。他方、図14の右図は、本実施の形態に係るスター接続型のパケット中継方式に従って、4台の移動端末間で端末上の全データを共有するために必要なメッセージ送受信を示した図である。

【0138】
図14の左図においては、4台の移動端末MT1乃至MT4の間で端末上の全データを共有するためにm1乃至m5として示されるメッセージを交換する。図14の左図においては、4台の移動端末MT1乃至MT4の間での上述したメッセージ交換により、端末毎の蓄積データの一覧表の送受信と端末毎の未保有データの送信要求の送受信を12回ずつ実行しなくてはならない。

【0139】
他方、図14の右図においては、4台の移動端末MT5乃至MT8の間で端末上の全データを共有するためにm6乃至m8として示されるメッセージを交換する。図14の右図においては、4台の移動端末MT5乃至MT8の間での上述したメッセージ交換により、以下の動作が実行される。まず、MT6乃至MT8の各々がそれぞれ保有している全ての蓄積データとその一覧表が、MT6乃至MT8の各々からGOとして動作中のMT5の上に集約される。続いて、GOとして動作中のMT5は、端末毎の蓄積データ一覧表をMT6乃至MT8から上記のとおり集約した全データの集合と比較して、MT6乃至MT8の各々が何れのデータを未保有であるかを判定する。最後に、GOとして動作中のMT5は、MT6乃至MT8の各々が未保有のデータをMT6乃至MT8の各々に対して送信する。その結果、図14の右図においては、4台の移動端末MT5乃至MT8の間での上述したメッセージ交換により、端末毎の蓄積データの一覧表の送受信と端末毎の未保有データの送信要求の送受信を3回ずつ実行すれば良いことになる。

【0140】
以上より、本実施の形態は、GOを中継ハブとするスター型のネットワーク接続トポロジの利点を生かし、複数端末間で端末上の全データを互いに共有するのに要するメッセージ送受信回数を感染型経路制御(Epidemic Routing)方式より少なくすることができる。本実施の形態は、上述したメッセージ送受信回数を従来よりも少なくするだけでなく、同時に、転送データを送信元端末から2つ以上の中継端末を介して3ホップ以上先まで中継転送可能なマルチホップ通信機能を実現できるようにした点に意義がある。

【0141】
図15は、評価型経路制御(Estimation Routing)方式に従って多数の端末間でデータを拡散させてゆくプロセスにおけるデータ転送中継動作を例示するシナリオを示している。評価型経路制御(Estimation Routing)方式は、転送データを送信元の移動端末から最終宛先となる移動端末まで順次転送してゆく一連の中継転送プロセスにおいて、ホップ毎の中継先を2つの端末間の接触が起きる確率に基づいて選択するものである。具体的には、上述した中継転送プロセスにおいて、転送データを現在蓄積している端末は、最終宛先となる端末と接触する確率が自端末よりも高い移動端末を発見した場合には、当該発見した端末を次ホップ・ノードとして転送データを中継する。ただし、最終宛先となる端末と接触する確率に関して、転送データを現在蓄積している端末の方が他の端末よりも大きい確率を有する場合には、転送データを現在蓄積している端末自身が最終宛先となる端末を次ホップとしてデータを直接転送しようとする。

【0142】
上述した用語「接触」とは、DTN等のような蓄積転送型のパケット中継方式が動作しているネットワーク・ドメイン内において移動端末同士の間の接続性が断続的である場合に、移動端末同士が通信可能な状態になることを指して言う。また、移動端末同士が互いに接触する時間や場所は必ずしも事前に予測できるとは限らないが、所定の推定モデルなどに基づいて特定の2つの端末が接触する確率を事前に推定することは可能である。従って、2つの端末間において「接触」が起こり得る確率を上記のような推定モデルなどを使用して推定したものを2つの端末間における「接触確率」と呼ぶ。

【0143】
図15においては、移動端末MT2を送信元とし、移動端末MT4を最終宛先として、メッセージm1が中継転送されるものとする。送信元の端末Bがメッセージm1を最初に中継しようとする際、MT2は、移動端末MT1および移動端末MT3の2つと接触する可能性が高いと仮定する。このとき、MT2は、メッセージm1を次ホップに中継する際に、MT2自身が最終宛先MT4と接触する確率が、MT1よりも高いか否かを判定する。同時に、MT2は、メッセージm1を次ホップに中継する際に、MT2自身が最終宛先MT4と接触する確率が、MT3よりも高いか否かを判定する。図15においては、PA→Dは、最終宛先となるMT4(端末D)に対するMT1(端末A)の接触確率を表し、PB→Dは、最終宛先となるMT4(端末D)に対するMT2(端末B)の接触確率を表し、PC→Dは、最終宛先となるMT4(端末D)に対するMT3(端末C)の接触確率を表す。図15によれば、「PA→D<PB→D」であるので、MT2(端末B)は、MT1(端末A)にはデータを中継しない。他方、図15によれば、「PB→D<PC→D」であるので、MT2(端末B)は、MT3(端末C)を次ホップとしてデータを中継する。MT2(端末B)からデータを中継されたMT3(端末C)は、上記の場合と同様に、最終宛先となるMT4(端末D)との間の接触確率に応じて次ホップとしてデータを中継すべき移動端末を選択する。そして、データが最終宛先となるMT4(端末D)に到達するまで同様の中継転送動作が繰り返される。

【0144】
次に、図16は、MT1(端末A)を送信元とし、MT4(端末D)を最終宛先として、メッセージm0が中継転送されてゆくプロセスの途中において、転送データが複製される個数を、評価型経路制御(Estimation Routing)方式と本実施の形態との間で比較した結果の具体例である。

【0145】
図16の左図は、評価型経路制御(Estimation Routing)方式においてMT4を最終宛先として、メッセージm0が中継転送されてゆくプロセスの途中において、転送データが複製される様子を示す。送信元のMT1(端末A)がメッセージm0を最初に中継しようとする際、「PA→D<PB→D」であるので、送信元のMT1(端末A)は、MT2(端末B)を次ホップとしてデータを中継する。これと同時並行して、「PA→D<PC→D」であるので、送信元のMT1(端末A)は、MT3(端末C)を次ホップとしてデータを中継する。この場合、MT1(端末A)は、メッセージm0を2つのメッセージm1とm2に複製し、複製した2つのメッセージm1とm2をMT2(端末B)とMT3(端末C)にそれぞれ中継転送する。

【0146】
他方、図16の右図は、本実施の形態において、MT5(端末A)を送信元とし、MT8(端末D)を最終宛先として、メッセージm0が中継転送されてゆくプロセスを示しており、MT5(端末A)乃至MT7(端末C)が同一の端末グループに属しているとする。当該端末グループ内のGOは、MT5(端末A)乃至MT7(端末C)の各々が最終宛先MT8(端末D)と接触する確率を表す接触確率情報をMT5(端末A)乃至MT7(端末C)の各々から収集することで可能である。この時、MT5(端末A)乃至MT7(端末C)の何れか一つが端末グループ内のGOとして動作することも可能である。GOは、最終宛先MT8(端末D)と接触する接触確率が大きい順に、配下の端末グループに属する全ての移動端末をソートし、当該接触確率が最も大きい端末の識別子をデータの送信元であるMT5(端末A)に通知することが出来る。例えば、図16の右図の場合、GOが配下の端末グループに属する全ての端末を上述した接触確率に応じてソートした結果として、「PA→D<PB→D<PC→D」であることが判明する。従って、GOは、配下の端末グループ内において最終宛先MT8(端末D)と接触する接触確率が最も大きいのは、MT7(端末C)であると判定し、GOは、MT7(端末C)を次ホップとしてメッセージm0を中継する(図16の右図のm1)ようにMT5(端末A)に指示する。

【0147】
以上より、図16の右図に示す本実施の形態の場合においては、図16の左図のようにメッセージm0を2つに複製することなく、一つのメッセージを次ホップに中継すれば充分である。

【0148】
図16の左図に示す評価型経路制御(Estimation Routing)方式では、データを蓄積中の自端末は、最終宛先との接触確率に関して隣接ノード端末の方が自分よりも高いか否かだけを判定し、隣接ノード端末の方が高ければ当該隣接ノード端末にデータを中継するだけである。従って、データを蓄積中の自端末と同時に通信可能な2つ以上の隣接ノード端末が存在する場合、これらの隣接ノード端末同士の間において最終宛先との接触確率の相対的な大小関係を判定することが出来ない。これに対して、図15の右図に示す本実施の形態においては、最終宛先との接触確率の相対的な大小関係を同一の端末グループに属する全ての端末同士の間において判定する処理をGOが実行可能である。

【0149】
以上より、本実施の形態は、GOを中継ハブとするスター型のネットワーク接続トポロジの利点を生かし、不特定多数の複数端末間におけるメッセージの拡散効率を評価型経路制御(Estimation Routing)方式よりも改善することができる。本実施の形態は、上述したメッセージ送受信回数を従来よりも少なくするだけでなく、同時に、転送データを送信元端末から2つ以上の中継端末を介して3ホップ以上先まで中継転送可能なマルチホップ通信機能を実現できるようにした点に意義がある。

【0150】
図17は、符号化型経路制御(Coding Routing)方式に従って多数の端末間でデータを拡散させてゆくプロセスにおけるデータ転送中継動作を例示するシナリオを示している。感染型経路制御(Epidemic Routing)方式においては、最終宛先へのパケット到達率を高くするために各パケットを充分な個数だけ複製しながら多数の移動端末間で拡散する必要がある。符号化型経路制御(Coding Routing)方式においては、一つの符号化パケット内に複数の情報パケットを含ませることが出来るので、最終宛先への高いメッセージ到達率を維持したまま、多数の移動端末間でメッセージ拡散を行う際のメッセージ複製数を減らすことが出来る。

【0151】
符号化型経路制御(Coding Routing)方式においては、送信元の端末から最終宛先となる端末まで到達させるべきデータの個数をNとすると、多数の移動端末間でメッセージ拡散を行う際のメッセージ複製数はN+Rとなる。このとき、Rは、N個のデータが最終宛先まで到達する確率を高めるために複製されるメッセージの個数の冗長分を表す。例えば、図17においては、送信元である端末MT1は最終宛先となる端末まで到達させるべきデータとして2つのデータαとβを保有しているから、N=2である。また、図17においては、MT1において符号化により複製した3つメッセージを、MT1から次ホップである3つの端末MT2乃至MT4にそれぞれ中継転送しているからN+R=3であり、R=1である。MT1においては、2つのデータαとβはリード・ソロモン符号化方式などに基づいて3つの符号化メッセージ「2α+3β」、「3α+β」および「α+2β」として複製される。符号化メッセージ「2α+3β」は、データαを2倍した情報とデータβを3倍した情報とを符号化により合成して得られるメッセージである。同様に、符号化メッセージ「3α+β」は、データαを3倍した情報とデータβを1倍した情報とを符号化により合成して得られるメッセージである。同様に、符号化メッセージ「α+2β」は、データαを1倍した情報とデータβを2倍した情報とを符号化により合成して得られるメッセージである。図17において最終宛先となる端末MT5が2つの符号化メッセージ「2α+3β」と「3α+β」を受信した場合、MT5は、これら2つの符号化メッセージからリードソロモン復号化処理により2つのデータαとβを復号化して取り出すことが出来る。リードソロモン復号化処理による上述したデータ復号化は、「第1の符号化メッセージ=2α+3β」と「第2の符号化メッセージ=3α+β」の2つの式を連立させた連立方程式を解くことのアナロジーと考えることが出来る。従って、最終宛先においてN個のデータを復号化により取り出すためには、多数の中継端末間に複製/拡散されたN+R個の符号化メッセージのうち少なくともN個の符号化メッセージを最終宛先が受信できれば良いことが分かる。

【0152】
図18は、リードソロモン符号化により一つの符号化メッセージ内に合成して含めることが出来るデータの個数について符号化型経路制御(Coding Routing)方式と本実施の形態との間で比較した結果の具体例である。

【0153】
図18の左図は、符号化型経路制御(Coding Routing)方式に従って送信元端末がデータを符号化するシナリオを例示し、それぞれがデータ送信元である3つの端末MT1乃至MT3を図示している。図18の左図において、MT2は、最終宛先に配送すべき2つのデータαとβを保有しており、MT1は、最終宛先に配送すべき1つのデータγを保有しており、MT3は、最終宛先に配送すべき1つのデータδを保有している。MT2とMT3は、最終宛先に配送すべきデータをそれぞれ一つずつしか保有していないので、符号化により当該データを合成することができない。

【0154】
他方、図18の右図は、本実施の形態に従って送信元端末がデータを符号化するシナリオを例示し、それぞれがデータ送信元である3つの端末MT4乃至MT6を図示している。図18の右図において、3つの端末MT4乃至MT6は同一の端末グループに属し、MT5はGOとして動作中であり、MT5はGOとしてグループ内の全端末からデータを収集できるとする。この場合、MT5は、3つの端末MT4乃至MT6の全てが保有する全データα、β、γおよびδを自端末上に集約し、これら4つのデータα、β、γおよびδを符号化(例えば、リードソロモン符号化処理)により合成して単一の符号化メッセージ「α+β+γ+δ」を生成することが出来る。

【0155】
以上より、図18の左図に示す符号化型経路制御(Coding Routing)においては、MT1とMT3は複数のデータを符号化して符号化メッセージを合成することが出来ず、MT2はN=2となる符号化メッセージしか合成することが出来ない、これに対して、図18の右図に示す本実施の形態においては、グループ内の全端末から収集した全データを符号化により合成してN=4となる符号化メッセージを生成することが出来る。従って、本実施の形態は、符号化を使用して一つのメッセージ上に従来より多くのデータを含める形で当該メッセージを多数の中継端末間に拡散させてゆくことが出来る。

【0156】
以上より、本実施の形態は、GOを中継ハブとするスター型のネットワーク接続トポロジの利点を生かし、一つのメッセージ上に従来より多くのデータを符号化する形で当該メッセージを多数の中継端末間に拡散させてゆくことができる。本実施の形態は、上記のように一つのメッセージ上に符号化することが出来る情報量を増やすだけでなく、同時に、転送データを送信元端末から2つ以上の中継端末を介して3ホップ以上先まで中継転送可能なマルチホップ通信機能を実現できるようにした点に意義がある。

【0157】
なお、本実施の形態では、各端末のチャネル数については考慮していないが、基本的には、CSMA/CA with RTS/CTS などの分散制御方式下では、チャネル数は1つでも実施可能である。ただし、チャネル数が多い方が、動作の効率は良くなる。例えば、WLANやLTEなどで使用されている直交周波数分割多重方式のような周波数分割方式や時分割方式、あるいはこれらを組み合わせた方式の多重通信においては、分割された複数の周波数領域や時間領域を各チャネルに割り当てることにより、各チャネルを異なる用途に使用することができる。そのような用途としては、例えば、以下のような用途がある。
(ア)GOの互選のための用途
(a)各端末間の優先度(Intent値など)の交換
(b)優先度を計算するために必要な情報の、周囲の端末からの収集
(イ)グループ形成のための用途
(a)新たなGOとして、GOの存在を知らせるための近隣探索ビーコンの送信
(b)GOへの参加応答および参加決定のための各端末間の通信
(ウ)グループ管理のための用途
(a)子ノード端末の存在確認のための通信
(b)グループの解散通知
これらの用途を各チャネルに割り当てることにより、効率的な動作が可能である。また、これらの用途のうち、各チャネルを、GOから子ノード端末に向けて発信するチャネルと、子ノード端末からGOに向けて発信するチャネルとに分けることにより、動作の管理および制御が容易となる。

【0158】
<5-2>第2実施例
以下、図19を参照して第2実施例について説明する。第2実施例についての以下の説明では、第1実施例についての説明と重複する説明は省略し、第1実施例との相違点のみを説明する。

【0159】
第1実施例と同様に、第2実施例は、GOが端末グループの解散と再構成を行うことを決定した後、端末グループ内の全ての子ノード端末からIntent値を受信したGOは、最大のIntent値を送信した子ノード端末を次の新たなGOとして選出する。続いて、GOは、当該選出された子ノード端末に対して次の新たなGOとして選出されたことを通知する選出通知を送信し、現在の端末グループを解散する。当該選出通知を受信した子ノード端末は、次の新たなGOとして動作を開始し、次の新たな端末グループを形成するために、近隣探索ビーコンを送出する。

【0160】
第1実施例と同様に、第2実施例においては、無線網内において端末グループが一つも形成されていない初期状態においては、無線網内の移動端末の各々は、近隣探索ビーコンを送出することによって自端末の隣接ノード端末の個数をIntent値として算出する。続いて、無線網内において自身のIntent値を算出した複数の移動端末は、互いのIntent値を交換し合いながらIntent値の大きさに基づいて互選によりGOを選出する。

【0161】
いずれにしても、第2実施例において、今後形成される新たな端末グループの中心となるべき新たなGOが選出されたならば、第2実施例は以下の動作を実行する。まず、新たな端末グループの中心となるべき新たなGOとして動作を開始した端末は、当該近隣探索ビーコンに応答した近隣の移動端末を子ノード端末として当該新たなGOに無線接続させるべきか否かを判定する。具体的には、当該新たなGOが送出した近隣探索ビーコンに応答した近隣の移動端末と当該GOとの間の通信経路の安定性の度合いを評価し、当該安定性の度合いが所定の閾値を上回るか否かを判定する。当該安定性の度合いが所定の閾値を上回るならば、当該近隣の移動端末を当該GOに無線接続させることによって次の新たな端末グループを形成する。それによって、当該近隣の移動端末は、当該GOをネットワーク接続トポロジの中心とする端末グループに新たに参加する。当該安定性の度合いが所定の閾値を以下であるならば、当該近隣の移動端末を当該GOに無線接続させない。

【0162】
上述したとおり、第1実施例の場合とは異なり、端末グループに子ノード端末として新たに参加する移動端末は、2ホップ以上の通信経路を経由してGOと無線接続することが出来る可能性がある。例えば、図19において、子ノード端末C-Aは、他の中継端末を介さずに当該GOに直接接続することによって、当該GOから見て次ホップに位置する隣接ノード端末として端末グループに新たに参加した子ノード端末である。子ノード端末C-Aは、当該GOと同様に近隣探索ビーコンの送出を開始する。当該新たな子ノード端末C-Aが送出する当該近隣探索ビーコンは、当該GOが送出する近隣探索ビーコンと同様に、ビーコン送出元の端末C-Aが属する端末グループg1の周辺に位置する他の未参加端末C-B乃至C-Eを当該端末グループに参加させる誘因となる。

【0163】
図19に示す隣接ノード端末C-Bが、子ノード端末C-Aをビーコン送出元として送出された近隣探索ビーコンに応答した場合、第2実施例は、ビーコン送出元の子ノード端末C-Aを中継ノードとして端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について通信経路の安定度を評価する。例えば、子ノード端末としてGOと新たに接続しようとする端末とGOとの間の地理的な直線距離、当該GOと当該接続しようとする端末との間の通信経路のホップ数などを通信経路の安定度の指標とすることが出来る。加えて、当該GOと当該接続しようとする端末との間で通信経路診断用のビーコンを複数回にわたって往復させ、当該診断用ビーコンの通信成功率や当該診断用ビーコンの平均ラウンド・トリップ時間を計測し、これらの値を通信経路の安定度の指標とすることも出来る。端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について評価した安定度が所定の閾値を上回るならば、端末C-Bは、端末C-Aを中継ノードとして当該GOに間接的に接続し、さらに新たな子ノード端末として当該端末グループに参加することとなる。端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について評価した安定度が所定の閾値以下であるならば、端末C-Bは、当該端末グループには参加しない。

【0164】
以上のように、第2実施例においても、端末グループ毎に子ノード端末としてGOに無線接続しようとする一つ以上の移動端末は、当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性の度合いを評価する。GOに接続しようとする当該端末が当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性を評価した結果、当該通信経路の安定性の度合いが所定の閾値よりも高ければ、当該端末は当該GOに子ノード端末として無線接続して、当該GOを中心とする端末グループに参加する。GOに接続しようとする当該端末が当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定性を評価した結果、当該通信経路の安定性の度合いが所定の閾値よりも低ければ、当該端末は当該GOに無線接続せず、当該GOを中心とする端末グループには参加しない。このようにして、GOを中心として当該GOとの間のEnd-To-End通信経路の安定度が所定閾値以上となる一つ以上の子ノード端末により、端末グループのネットワーク接続トポロジを構成し、その結果得られた端末グループのサイズを適切なサイズとして選択する。

【0165】
<6>Intent値の算出
以下、図20および図21を参照しながら、端末グループを管理するGOとなる移動端末を選出する際に移動端末毎にIntent値を算出する方法を説明する。図20および図21を使用して説明する以下の算出方法においては、説明を簡単にするために、移動端末は、図3に示すネットワーク接続トポロジを有する端末グループ毎にグループ化され、第1実施例において説明したパケット中継転送動作を実行していると仮定する。

【0166】
図20は、無線網内において端末グループが一つも形成されていない初期状態において、移動端末毎にIntent値を算出する方法を説明するための図である。図20に示す初期状態においては、無線網内の移動端末の各々は、近隣探索ビーコンを送出することによって自端末の隣接ノード端末の個数をIntent値として算出する。その際、隣接ノード端末とは、自端末が発した近隣探索ビーコンに応答したことにより、自端末に対して次ホップ・ノードとして無線接続された近隣の移動端末である。

【0167】
例えば、図20において、端末100a、100b、100c、100d、100e、100fおよび100gは、それぞれIntent値が5、2、3、2、2、2および2となる。続いて、無線網内において自身のIntent値を算出した複数の移動端末100a、100b、100c、100d、100e、100fおよび100gは、互いのIntent値を交換し合いながらIntent値の大きさに基づいて互選によりGOを選出する。例えば、無線網内において自身のIntent値を算出した移動端末100a、100b、100c、100d、100e、100fおよび100gの各々は、自端末の近隣に存在する他の移動端末との間でIntent値を互いに交換し合う。その結果、最大のIntent値を有する端末100aがGOとして選出されることとなる。

【0168】
図21は、端末グループが一つも形成されていない初期状態の後に最初の端末グループが形成され、端末グループの解散/再構成の反復実行プロセスが開始された後の状態において、移動端末毎にIntent値を算出する方法を説明するための図である。この状態においては、現在の端末グループの解散とグループ再構成の必要があるとGOが判断した場合、GOは、端末グループ内の全ての子ノード端末にIntent値を算出させるために、自端末についてのIntent値を算出すべき旨の命令を全ての子ノード端末に送信する。

【0169】
例えば、図21においては、端末100a、100b、100c、100d、100eおよび100gは、同一の端末グループ内に属しており、端末100aは、当該端末グループを管理するGOである。図21において、端末100f、100hおよび100iは上述した端末グループには属していない。現在の端末グループの解散とグループ再構成の必要があると端末100aが判断した場合、端末100aは、端末グループ内の子ノード端末100b、100c、100d、100eおよび100gに対して、Intent値を算出すべき旨の命令を送信する。

【0170】
端末グループ内において当該命令を受信した子ノード端末100b、100c、100d、100eおよび100gの各々は、端末グループに属していない端末100f、100hおよび100iの中で隣接ノード端末として自端末に接続する端末の個数をカウントすることによってIntent値を算出する。図21において、子ノード端末100cに対しては、端末グループに属していない端末100hおよび100iの2台が隣接ノード端末として接続しているので、子ノード端末100cのIntent値は2と算出される。同様に、図21において、端末100a、100b、100d、100eおよび100gの各々についてのIntent値は、それぞれ0、1、0、1および1と算出される。

【0171】
なお、端末グループに属していない端末100f、100hおよび100iのIntent値は、図20に示した場合と同様の算出方法によって、上述した端末グループの動作状態とは無関係に事前に決定しておくことが出来る。

【0172】
図20または図21に関して説明した方法に従って算出された移動端末毎のIntent値に基づいて一旦GOが選出されると、近隣に位置するその他の移動端末が、上記選出されたGOからの近隣探索ビーコンに応答してGOに無線接続する。それによって、当該近隣探索ビーコンに応答した各移動端末は、当該GOを中心とする端末グループに参加する。その際、図22に示すように、一の移動端末100bが近隣に位置する2つ以上のGO(図20に示す端末100a(1)と100a(2))からほぼ同時に近隣探索ビーコンを受信した場合、端末100bは無線接続すべきGOをランダムに選択する。すなわち、図22において、移動端末100bは、端末100a(1)と100a(2)の何れか一方を接続先のGOとしてランダムに選択する。

【0173】
<7>本実施の形態の詳細な動作の流れ
以下、図23乃至図25のフローチャートを参照しながら、本実施の形態の詳細な処理動作の流れを説明する。本実施の形態は、図7に示す移動端末100において、メモリ12の上に読み込まれ、制御プロセッサ11によって実行される通信制御ソフトウェアとして実施することが可能である。より具体的には、本実施の形態は、図9に示す移動端末100のソフトウェア構造図において、アプリケーション110の機能の一部として実装することが可能である。

【0174】
なお、図4に示す無線ネットワーク環境において複数の移動端末の各々が本実施の形態に係るパケット中継転送を実行しているときに各移動端末がとり得る複数の端末状態を図26にしめす。本実施の形態に係るパケット中継転送の実行過程において生じる種々のトリガー事象に応じて、各移動端末の端末状態は、図26に示した複数の端末状態の間を状態遷移する。この状態遷移の契機となるトリガー事象の発生条件を図27に示す。

【0175】
図23は、無線網内において端末グループが一つも形成されていない初期状態において、最初の端末グループが形成され、当該グループが解散されるまでの処理動作の流れを説明するフローチャートである。この初期状態においては、全ての移動端末の状態は図26の状態遷移図における状態S1である。

【0176】
まず、ステップST11において最初の端末グループが形成される。具体的には、無線網内の移動端末の各々は、自端末が新たなGOとして選出される優先度を表すGO選出優先度を算出する。続いて、無線網内において自身のGO選出優先度を算出した複数の移動端末は、互いのGO選出優先度を交換し合いながらGO選出優先度の大きさに基づいて互選によりGOを選出する。これは、図26の状態遷移図における状態S1から状態S8への遷移に相当する。例えば、無線網内において自身のGO選出優先度を算出した移動端末の各々は、自端末の近隣に存在する他の移動端末との間でGO選出優先度を互いに交換し合う。その結果、無線網内の移動端末の各々は、自身のGO選出優先度に加えて近隣の全ての移動端末のGO選出優先度の一覧表を生成し、当該一覧表の中で自端末のGO選出優先度が最大であると判定した移動端末がGOとしての動作を開始する。

【0177】
例えば、GO選出優先度として以下で述べるIntent値を使用する場合、無線網内の移動端末の各々は、近隣探索ビーコンを送出することによって自端末の隣接ノード端末の個数をIntent値として算出する。続いて、無線網内において自身のIntent値を算出した複数の移動端末は、互いのIntent値を交換し合いながらIntent値の大きさに基づいて互選によりGOを選出する。例えば、無線網内において自身のIntent値を算出した移動端末の各々は、自端末の近隣に存在する他の移動端末との間でIntent値を互いに交換し合う。その結果、無線網内の移動端末の各々は、自身のIntent値に加えて近隣の全ての移動端末のIntent値の一覧表を生成し、当該一覧表の中で自端末のIntent値が最大であると判定した移動端末がGOとしての動作を開始する。

【0178】
図20を参照して上述した方法に従って算出された移動端末毎のGO選出優先度に基づいて一旦GOが選出されると、当該新たに選出されたGOは、近隣に位置するその他の移動端末に近隣探索ビーコンを送出し、これに応答した隣接ノード端末を当該GOを中心とする端末グループに参加させようとする。これは、図26の状態遷移図において、GOが状態S8から状態S7へ遷移することに相当する。同時にこれは、端末グループに未参加の状態の各端末が上述した近隣探索ビーコンを受信することにより状態S1から状態S2へと遷移した後に、GOに子ノード端末として接続しようとするこれらの端末が状態S2から状態S3に遷移しようとしている途中であることに相当する。

【0179】
上述したとおり、端末グループに子ノード端末として新たに参加する移動端末は、2ホップ以上の通信経路を経由してGOと無線接続することが出来る可能性がある。つまり、端末グループに子ノード端末として新たに参加する移動端末は、当該端末グループに以前から参加している他の端末を中継ノードとしてGOに間接的に接続する場合があり得る。その場合、当該GOだけでなく当該中継ノードも近隣探索ビーコンを送出し、当該中継ノードからの近隣探索ビーコンに応答して当該端末グループに新たに参加する移動端末は、2ホップ以上の通信経路を経由して子ノード端末としてGOに無線接続し得る候補となる。いずれにしても、GOと接続するための通信経路のホップ数が幾つであれ、端末グループ内から送出された近隣探索ビーコンに応答した当該端末グループ周辺の各移動端末は、当該端末グループのGOとの間の通信経路の安定性が充分満足できる場合に限り、当該GOに接続して当該端末グループに参加する。これは、図26の状態遷移図において、GOが状態S7から状態S6へ遷移し、GOに子ノード端末として接続する各端末が状態S2から状態S3に遷移することに相当する。

【0180】
例えば、図19において、子ノード端末C-Aは、他の中継端末を介さずに当該GOに直接接続することによって、当該GOから見て次ホップに位置する隣接ノード端末として端末グループに新たに参加した子ノード端末である。子ノード端末C-Aは、当該GOと同様に近隣探索ビーコンの送出を開始する。当該新たな子ノード端末C-Aが送出する当該近隣探索ビーコンは、当該GOが送出する近隣探索ビーコンと同様に、ビーコン送出元の端末C-Aが属する端末グループg1の周辺に位置する他の未参加端末C-B乃至C-Eを当該端末グループに参加させる誘因となる。

【0181】
図19に示す隣接ノード端末C-Bが、子ノード端末C-Aをビーコン送出元として送出された近隣探索ビーコンに応答した場合、第2実施例は、ビーコン送出元の子ノード端末C-Aを中継ノードとして端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について通信経路の安定度を評価する。例えば、子ノード端末としてGOと新たに接続しようとする端末とGOとの間の地理的な直線距離、当該GOと当該接続しようとする端末との間の通信経路のホップ数などを通信経路の安定度の指標とすることが出来る。加えて、当該GOと当該接続しようとする端末との間で通信経路診断用のビーコンを複数回にわたって往復させ、当該診断用ビーコンの通信成功率や当該診断用ビーコンの平均ラウンド・トリップ時間を計測し、これらの値を通信経路の安定度の指標とすることも出来る。端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について評価した安定度が所定の閾値を上回るならば、端末C-Bは、端末C-Aを中継ノードとして当該GOに間接的に接続し、さらに新たな子ノード端末として当該端末グループに参加することとなる。端末C-Bから当該GOに至る2ホップ以上の長さの通信経路について評価した安定度が所定の閾値以下であるならば、端末C-Bは、当該端末グループには参加しない。

【0182】
以上のようにして、端末グループ内から送出された近隣探索ビーコンに応答した当該端末グループ周辺の各移動端末は、当該端末グループのGOとの間の通信経路の安定性が充分満足できるものであるならば、当該GOを中心とする端末グループに参加する。この際、当該端末グループに新たに参加する端末は、当該GOと2ホップ以上の通信経路を介して無線接続することによって当該端末グループに参加する場合があり得る。

【0183】
続いて図23のフローチャートの処理はステップST12に進み、GOは、端末グループ内の送信データ数を一定時間にわたって測定する。これは、GOが端末グループ内における通信のアクティビティの高さを監視する動作に相当する。このとき、図26の状態遷移図において現在のGOの状態は、状態S6である。続いて処理はステップST13に進み、GOは、端末グループ内での送信データ数が所定の閾値を下回るか否かを判定する。これは、端末グループ内における通信のアクティビティが所定レベルを下回るか否かをGOが判定する動作に相当する。なお、端末グループ内における通信のアクティビティが所定レベルを下回るか否かを判定するための上述した動作は、現在のGOと同じ端末グループ内の子ノード端末が実行することも可能である。この場合、現在のGOは、同じ端末グループ内から無作為に選んだ一の子ノード端末に対して監視動作開始メッセージを送信する。続いて、当該監視動作開始メッセージを受信した子ノード端末は、端末グループ内における通信のアクティビティの高さを監視する動作を開始すると共に、端末グループ内における通信のアクティビティが所定レベルを下回ると判定した場合には、その旨をGOに報告することが可能である。また、GOから指名メッセージを受信した子ノード端末が、次の新たなGOの選出する動作とそれに続いて端末グループを解散する動作を制御する役割を担っているケースにおいては、当該監視動作開始メッセージを受信した子ノード端末は、通信のアクティビティが所定レベルを下回った旨を当該指名メッセージを受信した子ノード端末に対して報告することが可能である。

【0184】
端末グループ内での送信データ数が所定の閾値を下回るなら処理はステップST14に進み、そうでなければ、処理はステップST12に戻る。ステップST14に進む場合は、図26の状態遷移図において、GOの現在の状態は状態S5に遷移し、ステップST12に戻るならば、GOの現在の状態は、状態S6のままである。

【0185】
ステップST14においては、GOは、現在の端末グループの解散に先立って、端末グループ内の各端末毎に、各端末が次の新たなGOとして選出される優先度であるGO選出優先度を算出する必要があると判断する。その結果、GOからの指示メッセージに基づいて、端末グループに所属する全ての移動端末の各々は、端末毎のGO選出優先度を算出する。この時、図26の状態遷移図において、GOの状態は、状態S5からS4へと遷移している。GO選出優先度の典型的な具体例には、以下で述べるようなIntent値が含まれる。その他に、端末毎のGO選出優先度の具体例としては、各端末が端末グループ外への中継転送のために蓄積しているメッセージ(パケット)の個数やグループ解散前における各端末の端末グループ内での相対的な位置を挙げることが出来る。

【0186】
GO選出優先度としてIntent値を使用する場合、端末グループに所属する全ての移動端末の各々は、図21を参照して上述した算出方法に従い、自端末に隣接する隣接ノード端末のうち、自端末と同じ端末グループに属していない端末の個数を算出する。その際、隣接ノード端末とは、自端末が発した近隣探索ビーコンに応答したことにより、自端末に対して次ホップ・ノードとして無線接続された近隣の移動端末である。続いてステップST15においては、端末グループに所属する全ての移動端末の各々は、上記のとおり算出した端末個数を自端末についてのIntent値として設定し、GOに送信する。

【0187】
GO選出優先度として、「グループ解散前における各端末の端末グループ内での相対的な位置」を使用する場合、自端末とGOとの間の距離が長いほど、または自端末とGOとの間のホップ数が大きいほど、自端末に関して算出されるGO選出優先度が大きくなる。

【0188】
続いて、端末グループ内の全ての子ノード端末からGO選出優先度を受信したGOは、最大のGO選出優先度を送信した子ノード端末を次の新たなGOとして選出する。続いて、GOは、当該選出された子ノード端末に対して次の新たなGOとして選出されたことを通知する選出通知を送信し、現在の端末グループを解散し、図23のフローチャートを終了する。当該選出通知を受信した子ノード端末は、次の新たなGOとして動作を開始し、次の新たな端末グループを形成するために、近隣探索ビーコンを送出する。この時、図26の状態遷移図において、次の新たなGOとして選出された端末の状態は、状態S4からS7へと遷移している。

【0189】
図21を参照して上述した方法に従って算出された移動端末毎のGO選出優先度に基づいて一旦GOが選出されると、当該新たに選出されたGOは、近隣に位置するその他の移動端末に近隣探索ビーコンを送出し、これに応答した隣接ノード端末を当該GOを中心とする端末グループに参加させようとする。

【0190】
図24は、端末グループが一つも形成されていない初期状態から出発して、端末グループの解散/再構成の反復実行プロセスを反復実行するために、本実施の形態が実行する処理動作の流れを説明するフローチャートである。

【0191】
以下の説明においては、GO選出優先度としてIntent値を使用した場合について説明するが、GO選出優先度として上述した端末毎の蓄積パケット個数や端末グループ内での各端末の相対位置を使用することも可能である。

【0192】
まず、ステップST21において、無線網内の移動端末の各々は、近隣探索ビーコンを送出することによって自端末の隣接ノード端末の個数をIntent値として算出する。続いて、図24のフローチャートの処理はステップST22に進む。ステップST22においては、無線網内において自身のIntent値を算出した複数の移動端末は、互いのIntent値を交換し合いながらIntent値の大きさに基づいて互選によりGOを選出し、当該GOを中心として新たな端末グループを形成する。これは、図26の状態遷移図において、GOが状態S8または状態S4から出発して、状態S7を経て状態S6へ遷移し、GOに子ノード端末として接続する各端末が状態S2から状態S3に遷移することに相当する。

【0193】
続いて、図24のフローチャートの処理はステップST23に進み、ステップST22において新たに選出されたGOを中心として端末グループを維持するプロセスが実行される。端末グループを維持するための上述したプロセスは、例えば、図23のフローチャートのステップST12およびステップST13において上述した手順に従って実行することが可能である。

【0194】
続いて、図24のフローチャートの処理はステップST24に進み、ステップST22において選出されたGOを中心とする現在の端末グループが解散される。このグループ解散により、図26の状態遷移図において、解散した端末グループ内の各端末の状態は、状態S5から状態S4に遷移し、状態S4において次の新たなGOに選出された端末は状態S7に遷移し、それ以外の端末は状態S1を経て状態S2に遷移する。続いて、図24のフローチャートの処理はステップST25に進み、端末グループの解散によってグループに未所属となった各移動端末は、自端末の通信可能範囲内に既存のGOが存在するか否かを判定する。

【0195】
既存のGOが存在すれば、グループに未所属となった各移動端末は、当該GOへと無線接続し(図24のステップST27)、そうでなければ、図23のフローチャートと同様の方法に従って、グループに未所属となった移動端末同士の間でGOとなる端末を選出した上で、新たな端末グループを形成する(図24のステップST26)。

【0196】
ステップST23の実行中において、GOとして動作中の移動端末が、転送データを中継するためのパケット中継転送動作を例えばMANET方式からDTN方式での実行に切り替えた場合には、当該GOとして選出されていた移動端末はGOとしての動作を継続することが出来なくなる。つまり、図4の無線ネットワーク環境においてGOとして選出されていた移動端末のパケット中継転送動作がMANETモードからDTNモードに移行した場合、当該DTNモードに移行した端末はGOとしての動作を継続することが出来なくなる。そのような場合には、図24のフローチャートの処理はステップST28に進み、移動端末上で本実施の形態を実行するためのアプリケーション・プログラムを停止し、ステップST21に戻って図24のフローチャートの処理を最初からやり直す。これは、図26の状態遷移図において「トリガー事象J」によってGOが状態S6から状態S1へと遷移し、端末グループ内のその他の子ノード端末が状態S3から「トリガー事象J」によって状態S1に遷移することに対応する。

【0197】
図25は、端末グループの形成後に、端末グループ内の移動端末同士の間で行われる通信動作を説明するフローチャートである。

【0198】
図25のフローチャートの処理はまずステップST31に進み、端末グループ内の各移動端末は、自端末が送信候補となるデータを保持しているか否かを判定する。送信候補データを保持しているなら、図25のフローチャートの処理はステップST32に進み、そうでなければ、図25のフローチャートの処理を終える。

【0199】
ステップST32においては、端末グループ内の各移動端末は、同一の端末グループに属する他の移動端末がデータ送信中であるかどうかを確認する。続いて、ステップST33において、同一の端末グループに属する他の移動端末がデータ送信中であるか否かを判定し、データ送信中なら処理はステップST36に進み、そうでなければ、処理はステップST34に進む。

【0200】
図25のフローチャートのステップST34においては、各移動端末は、自端末が送信候補として保持しているデータの一覧表に含まれる全てのデータを端末グループ内の送信相手に送信し、続いて、ステップST35において、送信候補データの一覧表をクリアする。

【0201】
ステップST36においては、端末グループ内の各移動端末は、ランダムな長さの時間だけ待機する。続いて、図25のフローチャートの処理はステップST37に進み、端末グループ内の各移動端末は、同一の端末グループに属する他の子ノード端末から受信したデータが送信候補データの一覧表の中に存在するか否かを判定する。そのようなデータが一覧表に含まれていれば、処理はステップST38に進み、各移動端末は、送信候補データの一覧表からそのようなデータを削除し、処理はステップST39に進む。そのようなデータが一覧表に含まれていなければ、図25のフローチャートの処理はステップST36に戻る。図25のフローチャートのステップST39においては、端末グループ内の各移動端末は、所定の待機時間が経過したか否かを判定し、経過していたら、図25のフローチャートの処理はステップST31に戻り、そうでなければ、図25のフローチャートの処理はステップST36に戻る。

【0202】
<8>MANETモード端末とDTMモード端末とが直接通信するための具体的な方法
以下、図28を参照しながら、MANETモード端末とDTMモード端末とが互いに次ホップ・ノードとして直接通信するための方法について具体的に説明する。

【0203】
図28は、DTNモードで動作中のDTN端末100Gが、複数のMANET端末100A乃至100Fから形成される無線アドホック・ネットワークと無線通信が可能な範囲内に進入した状況を示す図である。図28において、MANET端末100A乃至100Fから形成される無線アドホック・ネットワークは、MANETモードでパケットを相互にルーティングしており、MANET端末100A乃至100Fにより形成される無線アドホック・ネットワークは、後述するゲートウェイ・ノードを介して通信事業者網やインターネットと接続されている。

【0204】
ゲートウェイ・ノードは、無線アクセス・ポイント(図28中のAP 200A、200B)や基地局(図28中のBS 300)それ自体に加え、これらと常に直接無線通信が可能であることが固定的に保証されている無線端末などを含む。例えば、図28中のノートPC 400は、図28中においてAP 200Aと表記される無線アクセス・ポイントと常に直接の無線通信が可能な固定的位置に設置されており、無線アクセス・ポイント200AとMANET端末100A乃至100Fとの間の通信を常に中継することが可能である。従って、ノートPC 400は、MANET端末100A乃至100Fにとってのゲートウェイ・ノードとなることができる。

【0205】
さらに、DTN端末100Gは、DTNモードで転送すべきパケットを蓄積している。図28において、MANET端末100A乃至100Fは各々の無線通信カバレージが相互に重なっていると同時に、DTN端末100GはMANET端末100Cおよび100Dの無線通信カバレージ内に位置している。従って、DTN端末100Gが蓄積しているパケットをDTNモードで転送しようとする際、DTN端末100Gが、近隣探索ビーコンを送出すると、MANET端末100Cおよび100Dは当該近隣探索ビーコンをDTN端末100Gから直接受信する。DTN端末100Gが送出する当該近隣探索ビーコンは、Internet Engineering Task Forceによって標準化されているDTN標準におけるIPND(IP Neighbor Discovery)パケットとすることが可能であり、IPNDパケットの詳細は、Internet Engineering Task Forceが発行しているRFC4838およびRFC5050において記述されている。続いて、当該近隣探索ビーコンをDTN端末100Gから受信したMANET端末100Cおよび100Dの各々は、自端末からゲートウェイ・ノードまでの最短経路ホップ数を計算する。当該最短経路ホップ数は、IPNDパケットを受信したMANET端末が、パケット中継端末として機能する他のMANET端末を経由してゲートウェイ・ノードに到達するまでの一つ以上のルーティング経路のうち、最短のルーティング経路に対応する経路ホップ数である。例えば、図28において、ノートPC 400がゲートウェイ・ノードであった場合は、MANET端末100Cの最短経路ホップ数は3であり、MANET端末100Dの最短経路ホップ数は2となる。続いて、MANET端末100Cおよび100Dの各々は、自身のIPアドレスと共に自端末の最短経路ホップ数を応答パケットに格納してDTN端末100Gに対して返送する。続いて、MANET端末100Cおよび100Dの各々から応答パケットを受信したDTN端末100Gは、隣接ノード・リスト内に受信した応答パケットに含まれるIPアドレスと最短経路ホップ数を互いに関係付けて端末毎に格納する。隣接ノード・リストは、移動端末毎にそのIPアドレスと最短経路ホップ数とを対応付ける対応表である。続いて、DTN端末100Gは、MANET端末100Cおよび100Dの中で最短経路ホップ数が最小となるMANET端末のIPアドレスを隣接ノード・リスト内から検索し、これをルーティング経路上の次ホップ・ノードのIPアドレスとして選択する。例えば、図28の例において、ゲートウェイ・ノードがノートPC 400またはBS(基地局)300のいずれであったとしても、MANET端末100Dの方がMANET端末100Cよりも最短経路ホップ数が小さい。従って、DTN端末100Gは、MANET端末100DのIPアドレスを次ホップ・ノードに対応するIPアドレスとして選択する。最後に、DTN端末100Gは、次ホップとして選択したMANET端末100DのIPアドレスに基づいてMANET端末100Dに無線接続し、蓄積していたデータ・パケットを転送する。この際、転送されるデータ・パケットのヘッダー部分には、MANET端末100DのIPアドレスと最終宛先ノードに関するEIDが含まれる。EIDは、DTN標準が定めるルーティング機能によりデータ・パケットをEnd-To-End伝送する際の最終宛先ノードの端末識別子である。

【0206】
次に、DTN端末100Gからデータ・パケットを転送されたMANET端末100Dが、MANETモード・ルーティングにおけるパケット中継先である次ホップ・ノードを決定する動作の具体例について説明する。

【0207】
まず、MANET端末100Dは、DTN端末100Gから転送されたデータ・パケットのヘッダー部分からEnd-To-Endの最終宛先ノードを表すEIDを取り出し、このEIDをキーとして、最終宛先ノードのIPアドレスを検索する。

【0208】
MANET端末100Dは、データ・パケットのヘッダー部から取り出したEIDに基づいて検索された最終宛先IPアドレスを取得する。当該取得されたIPアドレスは、End-To-Endの最終宛先ノードを表すEIDに対応するIPアドレスである。続いて、MANET端末100Dは、当該取得されたIPアドレスを最終宛先IPアドレスとしてルーティング制御テーブル130を検索し、次ホップ・ノードに対応するMANET端末のIPアドレスと無線インターフェース情報を取得する。

【0209】
次ホップ・ノードのIPアドレスを得た後、MANET端末100Dは、当該取得されたIPアドレスと無線インターフェース情報を使用して次ホップ・ノードに対応するMANET端末に無線接続する。最後に、MANET端末100Dは、当該無線接続を使用してデータ・パケットを中継先に無線伝送する。

【0210】
これまでの説明とは逆に、MANET端末側からDTN端末側へとパケットを中継転送する場合における、MANET端末の動作を以下のとおり説明する。例えば仮に、MANET端末がMANET方式により中継転送しようとするパケットの最終宛先端末がDTNモードに移行してDTN端末となっているとする。すると、MANET端末側は、End-To-Endの最終宛先となるパケット内の宛先IPアドレスに対応する隣接ノードをルーティング制御テーブル130内から検索することが出来ない。これにより、当該MANET端末はDTNモードに移行してDTN端末となると同時に、中継転送すべきパケットを蓄積する。続いて、当該DTN端末は、以下において後述するとおり、近隣探索ビーコンを送出し、当該ビーコンに対する他のDTN端末からの応答を検知すると、応答した他のDTN端末を隣接ノードと認識し、当該隣接ノードに対してDTN方式によりパケットを中継転送する。

【0211】
なお、図28のネットワーク環境においては、ゲートウェイ・ノード、無線アクセス・ポイント(図28中のAP 200A、200B)および基地局(図28中のBS 300)が設けられている構成としていた。しかし、図28に示す実施形態においては、図28に示した移動端末100A~100Gがこれらのアクセス・ポイントを介して電気通信事業者網やインターネットに接続することなく独立した無線網を形成している場合にも、MANETモード端末とDTMモード端末とが互いに次ホップ・ノードとして直接通信するための上述した方法を実施することが可能である。

【0212】
<9>本実施の形態と従来技術との間の比較検討
図29において、中央の図は、本実施の形態によるパケット中継転送方式に対応し、左図と右図は、従来のMANETモードとDTNモードのパケット中継転送方式にそれぞれ対応する。図29は、MANETモード→本実施の形態→DTNモードの順にEnd-To-Endの到達可能ホップ数が長くなることを示す。同時に、図29は、MANETモード→本実施の形態→DTNモードの順にEnd-To-Endの送信失敗率が高くなることを示す。同時に、図29は、DTNモード→本実施の形態→MANETモードの順に、所定のEnd-To-End到達確率の下で中継転送することが可能な通信データ容量が大きいことを示す。同時に、図29は、DTNモード→本実施の形態→MANETモードの順に、End-To-End伝送経路上でのデータ・ドロップ確率が高くなることを示す。

【0213】
図30は、End-To-Endパケット中継転送での1ホップ毎の通信成功確率をpとし、End-To-Endの総ホップ数をNとした場合、End-To-End伝送の失敗に応じて転送データを再送する回数の期待値Eを、従来のMANETモード、DTNモードおよび本実施の形態にそれぞれ基づく3種類のパケット中継転送方式の各々について理論値として計算した場合を示している。

【0214】
図30において、従来のMANETモードに基づくEnd-To-Endパケット中継転送では、各矢印に相当する伝送の失敗により、転送データを再送する回数の期待値Eを理論値で計算すると、
【数1】
JP2016002404A1_000003t.gif
となる。

【0215】
図30において、従来のDTNモードに基づくEnd-To-Endパケット中継転送では、各矢印に相当する伝送の失敗により、転送データを再送する回数の期待値Eを理論値で計算すると、
【数2】
JP2016002404A1_000004t.gif
となる。

【0216】
図30において、本実施の形態に基づくEnd-To-Endパケット中継転送では、各矢印に相当する伝送の失敗により、転送データを再送する回数の期待値Eを理論値で計算すると、
【数3】
JP2016002404A1_000005t.gif
となる。

【0217】
上述した再送回数の期待値Eを縦軸とし、End-To-Endパケット中継転送の中継ホップ数を横軸とする2次元グラフにおいて、3種類のパケット中継転送方式「MANET」、「DTN」および「本実施の形態」のそれぞれに関して、期待値Eの理論値をプロットすると、図31のとおりとなる。3種類のパケット中継転送方式「MANET」、「DTN」および「本実施の形態」のそれぞれに関して、期待値Eの理論値は、図30に示した3種類の理論式から算出している。

【0218】
図31の2次元グラフを見ると、従来のMANETモードとDTNモードに基づくパケット中継転送方式よりも、本実施の形態に基づくパケット中継転送方式の方が中継ホップ数の増加に対して、各矢印に相当する伝送の失敗により、再送回数の増加を抑制できることが分かる。

【0219】
<10>本実施の形態の効果
以上より、本実施の形態においては、既存のグループの解散と再構築によって今までグループ外であった移動端末が解散前の中継データを蓄積している移動端末と新たにグループ仲間になるので、当該中継データが再構築後の新グループ内において当該新たにグループ仲間になった端末に中継転送される。従って、グループの解散/再構成の反復実行によって、グループ解散以前から移動端末内に蓄積されていた転送データを、グループ外から新たにグループ仲間になった移動端末に中継する動作が何度でも繰り返し実行される。その結果、本実施の形態は、スター接続型の中継方式における中継ホップ数の上限(2ホップ)を超えて転送データを中継転送するためのマルチホップ通信を実現することが可能となる。

【0220】
その際、本実施の形態は、グループ解散の直前におけるグループ外の隣接ノード端末数が最も多い移動端末を再構築後のグループのGOとするので、GOから見た場合に、グループ再構築後に、グループ外から新たにグループ仲間に加わる端末個数を最大化することが出来る。その結果、本実施の形態においては、上述したグループの解散と再構築を繰り返すプロセスにおいて、上述したグループ内中継転送による蓄積データの拡散効率と拡散速度を最大化することが可能となる。

【0221】
その結果、本実施の形態は、多種多様なパケット中継転送方式と併用することにより、上述した通信の到達性、通信容量のスケーラビリティおよび通信の効率化や端末電力の消費効率の最適化に関する問題を解決可能な仕組みを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明は、移動端末機器が他の移動端末機器との間で無線アクセス・ポイントや基地局を介さずに自律的なネットワークを構成し、当該ネットワークを介して相互に通信する機能を実現するために、移動端末機器にインストールすることが出来る通信ソフトウェアとして利用することができる。また、本発明は、他の移動端末との間で無線アドホック・ネットワークを構成し、当該ネットワークを介して相互に通信する移動端末機器およびそのような移動端末機器から構成されるネットワークシステムとして利用することが出来る。
【符号の説明】
【0223】
11 制御プロセッサ
12 メモリ
13 ストレージ
14 ユーザ入出力装置
15 送受信アンテナ
16 RF送受信回路
17 ベースバンド・プロセッサ
18 3軸加速度センサー
19 バッテリー残量メーター
20 GPS送受信機
21 バス
22 信号線
23 信号線
100 移動端末
101 切り替え制御モジュール
102 APLソケット・インターフェース
103 MANETモジュール
104 APLソケット・インターフェース
105 DTNモジュール
106 OS/API
107 TCP/IPソケット・インターフェース
110 ユーザ・インターフェースを含むアプリケーション
111 MANET/DTN切り替え判断部
112 メッセージ受信部
113 受領メッセージ宛先解析部
120 MANET送信部
130 ルーティング制御テーブル
140 DTN送信部
141 IPND送受信部
142 受領IPND解析部
150 プロトコル下位層
160 対応表
200 無線LANルータ又は無線アクセス・ルータ
300 基地局
400 ノートPC
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30