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明細書 :路面状況認識装置、そのプログラム、及び移動体システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-045432 (P2017-045432A)
公開日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 路面状況認識装置、そのプログラム、及び移動体システム
国際特許分類 G05D   1/02        (2006.01)
G01N   3/40        (2006.01)
FI G05D 1/02 H
G01N 3/40 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-169850 (P2015-169850)
出願日 平成27年8月28日(2015.8.28)
発明者または考案者 【氏名】高西 淳夫
【氏名】石井 裕之
【氏名】田中 克明
【氏名】菅原 雄介
【氏名】塩沢 恵子
【氏名】望月 寿彦
【氏名】佐々木 浩二
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】591184046
【氏名又は名称】株式会社アドイン研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 5H301
Fターム 5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301GG11
5H301GG14
要約 【課題】比較的簡易な構成や装備により、移動体が走行する路面の硬さや凹凸の程度等の路面状況を検出でき、当該路面状況に基づき移動体の走行制御を正確に行うこと。
【解決手段】本発明の移動体システム10は、モータ19の動力により、複数の脚部18で路面Gへの接触及び非接触を繰り返し行いながら移動する移動ロボット11と、移動ロボット11の移動時に路面Gの状況を認識する路面状況認識装置12とを備えている。路面状況認識装置12は、移動時における移動ロボット11の状態を検出する検出手段26と、検出手段26の検出結果に基づいて路面Gの状況に対応した路面情報を求める情報決定手段27とを備えている。情報決定手段27では、モータ19を流れる電流値の経時的変化から路面Gの硬さに対応した硬さ推定値と、移動ロボット11の姿勢の経時的変化から路面Gの凹凸の程度に対応した粗さ推定値とが求められる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
アクチュエータの動力により、複数の脚部で路面への接触及び非接触を繰り返し行いながら移動する移動体の移動時に、前記路面の状況を認識する路面状況認識装置において、
移動時における前記移動体の状態を検出する検出手段と、当該検出手段の検出結果に基づいて、前記路面の状況に対応した路面情報を求める情報決定手段とを備え、
前記検出手段は、前記アクチュエータに対する負荷を検出する負荷検出部を備え、
前記情報決定手段は、前記負荷検出部で検出された前記負荷の経時的変化に基づき、前記路面の硬さに対応した硬さ推定値を求める硬さ推定部を備えたことを特徴とする路面状況認識装置。
【請求項2】
前記硬さ推定部では、前記移動体の所定の運動周期における前記負荷の極大値と極小値の差に基づいて、前記硬さ推定値が求められることを特徴とする請求項1記載の路面状況認識装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記脚部を分けて動作させるように複数設けられ、
前記硬さ推定部では、前記硬さ推定値が、前記アクチュエータ毎にそれぞれ求められ、当該アクチュエータ毎に重み付けをした状態で、当該アクチュエータ毎に求めた前記各硬さ推定値を加算することで、前記硬さ推定値の最終値が決定されることを特徴とする請求項2記載の路面状況認識装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記移動体の姿勢を検出する姿勢検出部を更に備え、
前記情報決定手段は、前記姿勢検出部で検出された姿勢の経時的変化に基づき、前記路面の凹凸の程度に対応した粗さ推定値を求める粗さ推定部を更に備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の路面状況認識装置。
【請求項5】
前記粗さ推定部では、前記移動体の所定の運動周期における前記移動体のピッチ方向とロール方向の傾きの変化と前記移動体のサイズに基づいて、前記粗さ推定値が求められることを特徴とする請求項4記載の路面状況認識装置。
【請求項6】
アクチュエータの動力により、複数の脚部で路面への接触及び非接触を繰り返し行いながら移動する移動体の移動時に、前記路面の状況を認識する路面状況認識装置のコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
移動時における前記移動体の状態に基づいて、前記路面の状況に対応した路面情報を求める情報決定手段として前記コンピュータを機能させ、
前記情報決定手段では、前記路面情報として、前記アクチュエータに対する負荷の経時的変化から前記路面の硬さに対応した硬さ推定値が求められ、及び/又は、前記移動体の姿勢の経時的変化から前記路面の凹凸の程度に対応した粗さ推定値が求められることを特徴とする路面状況認識装置のプログラム。
【請求項7】
所定の路面を移動可能な移動体と、当該移動体の移動時に前記路面の状況を認識する路面状況認識装置と、前記移動体の動作制御を行う制御装置とを備えた移動体システムにおいて、
前記移動体は、前記路面に対して接触及び非接触を繰り返し行うことで前記移動体を移動させる脚部と、当該脚部の動力として駆動するアクチュエータとを備え、
前記路面状況認識装置は、移動時における前記移動体の状態に基づいて、前記路面の状況に対応した路面情報を求める情報決定手段を備え、
前記情報決定手段では、前記路面情報として、前記アクチュエータに対する負荷の経時的変化から前記路面の硬さに対応した硬さ推定値が求められ、及び/又は、前記移動体の姿勢の経時的変化から前記路面の凹凸の程度に対応した粗さ推定値が求められ、
前記制御装置は、前記移動体に所望の動作させるために前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と、前記路面状況認識装置で求められた前記路面情報に応じて、前記移動体の動作を変更するように、前記駆動制御手段に指令する動作変更指令手段とを備えたことを特徴とする移動体システム。
【請求項8】
前記情報決定手段では、前記硬さ推定値及び前記粗さ推定値が求められ、
前記動作変更指令手段では、前記硬さ推定値が所定の閾値以下のときに、又は、前記粗さ推定値が所定の閾値以上のときに、前記移動体を後退させ、及び/又は、前記移動体の移動経路を再設定するように、前記駆動制御手段に指令することを特徴とする請求項7記載の移動体システム。
【請求項9】
前記動作変更指令手段では、前記粗さ推定値が求められ、当該粗さ推定値の大きさに応じて前記移動体の移動速度を変化させるように、前記駆動制御手段に指令することを特徴とする請求項7又は8記載の移動体システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、路面状況認識装置、そのプログラム、及び移動体システムに係り、更に詳しくは、移動体が路面を移動する際に当該路面の状況を認識する路面状況認識装置及びそのプログラムと、当該路面状況認識装置で認識された路面の状況に応じて移動体の動作制御を行う移動体システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、土砂崩れや噴火などの多岐に亘る自然災害に悩まされており、近年では、災害の予知や状況把握等の理由から環境モニタリングに対する需要が増加している。そこで、本発明者らは、このような社会的需要を受け、森林などの特別な環境で長時間自律作業が可能な環境モニタリングロボットの研究を行っている。ここで、屋外環境には、木や石などの障害物や沼や草地などの走行の障害となる場が多く散在するため、ロボットを自律移動させるためには、ロボットが屋外環境を正しく認識し、それに併せてロボットの走行制御を行う必要がある。
【0003】
ところで、下記特許文献1、2及び3には、ロボット等の移動体に搭載され、当該移動体が走行する路面の形状や種類を推定する装置が開示されている。すなわち、特許文献1には、レーザレンジファインダを用い、走行可能領域内に存在する起伏が斜面か段差かを判別する走行領域判別装置が開示されている。また、特許文献2には、車両進行方向の路面画像を取得し、当該取得画像と、予め記憶された砂利道等の複数の路面種類を表す基準パターン画像との対比により、最も近い基準パターン画像を特定して路面の種類を推定する路面状態推定装置が開示されている。更に、特許文献3には、足底部と路面との接地状態を検出する圧力センサの実測値と、砂地、コンクリート等の路面の種類に対応して予め記憶された圧力センサの記憶値とを対比することにより、現在走行している路面の種類を判定するロボット装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-119349号公報
【特許文献2】特開2013-213793号公報
【特許文献3】特開2014-200880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記各引用文献の装置にあっては、路面の形状や種類の特定に留まり、路面の状況、すなわち、路面の硬さや凹凸の程度まで検出することができない。従って、前記各引用文献の装置では、例えば、山間部の土の路面のように、路面が同一の形状や種類であっても、降雨の前後による路面の軟弱性の変化までの情報を得ることはできず、このような特別な屋外環境において、ロボット等の移動体の正確な走行制御を行うことができない。加えて、遠隔操作によって環境モニタリングを行う災害対応用の小型の移動ロボットについては、前記各引用文献のような大型の装備やセンサ類の搭載に限界があり、路面状況の特定のために新たな機器類を設けることは実用的ではない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、比較的簡易な構成や装備により、移動体が走行する路面の硬さや凹凸の程度等の路面状況を検出することができ、当該路面状況に基づき移動体の走行制御を正確に行うことに寄与する路面状況認識装置、そのプログラム、及び移動体システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、アクチュエータの動力により、複数の脚部で路面への接触及び非接触を繰り返し行いながら移動する移動体の移動時に、前記路面の状況を認識する路面状況認識装置において、移動時における前記移動体の状態を検出する検出手段と、当該検出手段の検出結果に基づいて、前記路面の状況に対応した路面情報を求める情報決定手段とを備え、前記検出手段は、前記アクチュエータに対する負荷を検出する負荷検出部を備え、前記情報決定手段は、前記電流検出部で検出された前記負荷の経時的変化に基づき、前記路面の硬さに対応した硬さ推定値を求める硬さ推定部を備える、という構成を採っている。
【0008】
なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、「路面」は、道路の表面のみならず、移動体の走行時に脚部が接触する走行面全般を意味する用語として用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、路面の柔軟性や路面の凹凸の程度等、移動体の走行に影響を与え得る路面の状況を推定することができ、自律移動する移動体の走行制御を正確に行うために寄与できる。また、移動体の脚部を動作させるアクチュエータに対する負荷の経時的変化や、移動体の姿勢情報の経時的変化により、路面状況を認識できるため、当該路面状況の認識のために新たな機器や装備等を移動体に設ける必要が少なく、移動体の動作に利用される幾つかの機器を併用することができる。すなわち、本発明では、力センサやレーザレンジファインダなどの高価格や計算負荷が大きくなるセンサ類を必要とせずに、比較的簡単な構成や装備により路面状況を認識することができ、小型の移動体にも適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る移動体システムの構成を表すブロック図。
【図2】移動ロボットの概略斜視図。
【図3】(A)は、移動ロボットの概略左側面図であり、(B)は、移動ロボットの概略正面図である。
【図4】(A)は、同位相モーションにおけるある時刻での移動ロボットの概略斜視図であり、(B)は、逆位相モーションにおけるある時刻での移動ロボットの概略斜視図である。
【図5】(A)は、同位相モーションによる脚部の時系列変化を説明するための図であり、(B)は、逆位相モーションによる脚部の時系列変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0012】
図1には、本実施形態における移動体システムの構成を表すブロック図が示されている。この図において、移動体システム10は、種々の路面を移動可能な脚式の移動体としての移動ロボット11と、移動ロボット11の移動時に路面の状況を認識する路面状況認識装置12と、操作者からの指令や路面状況認識装置12で認識された路面の状況に基づいて、移動ロボット11の動作制御を行う制御装置14とを備えている。なお、特に限定されるものではないが、路面状況認識装置12及び制御装置14は、一体的に設けても別体に設けても良く、また、移動ロボット11と離れて設けられていても一体であっても良い。

【0013】
前記移動ロボット11は、図示しないコンピュータからなる端末からの操作者の遠隔指令により、所定領域を自律移動可能となっている。この移動ロボット11は、図2及び図3に示されるように、箱型のロボット本体16と、ロボット本体16の側方の複数箇所に設けられ、路面G(図3参照)に対して接触及び非接触を繰り返し行うことで、ロボット本体16を移動させる脚部18と、ロボット本体16の内部に収容され、脚部18の動力として駆動するアクチュエータとしてのモータ19(図2参照)とを備えている。

【0014】
なお、以下の説明において、移動ロボット11について位置や方向を説明する際に用いる「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、特に明記しない限り、図2に示された移動ロボット11の位置を基準とし、同中x軸に沿う方向を前後方向とし、同図中y軸方向を左右方向とし、同図中z軸方向を上下方向とする。

【0015】
前記脚部18は、ロボット本体16の左側面に設けられた左側の脚部18Lと、同右側面に設けられた右側の脚部18Rとからなる。左右両側の脚部18L,18Rは、相互に同一の構成となっており、それぞれ、同一の形状及びサイズを有する楕円円盤状の楕円脚20,21,22が3箇所ずつ設けられている。各楕円脚20,21,22は、ロボット本体16側に繋がる回転軸24にそれぞれ固定されている。当該各回転軸24は、モータ19の駆動により回転し、当該回転に伴って各楕円脚20,21,22が回転するようになっている。また、各回転軸24は、各楕円脚20,21,22の外周縁寄りに固定されており、楕円脚20,21,22と回転軸24の中心がずれた状態で相互に取り付けられている。従って、楕円脚20,21,22は、モータ19の駆動によってロボット本体16に対して偏心回転することになる。

【0016】
左右それぞれの楕円脚20,21,22は、前後方向に次のように配置されている。すなわち、前後方向の両端に位置する前後の楕円脚20,22と、楕円脚20,22の間となる前後方向中央に位置する中央の楕円脚21とは、上下方向に反転した向きで取り付けられている。また、図2及び図3(B)に示されるように、前後の楕円脚20,22と、中央の楕円脚21とは、左右方向に相互にシフトして配置されており、中央の楕円脚21が、前後の楕円脚20,22よりも外側に配置され、各楕円脚20,21,22が相互に干渉せずに偏心回転可能となっている。また、前後の楕円脚20,22と、中央の楕円脚21は、移動ロボット11の移動に際してそれぞれが回転する過程で、前後の楕円脚20,22と中央の楕円脚21の何れか一方が路面Gに接触している際には、何れか他方が路面Gから離れるようになっている。

【0017】
前記モータ19は、電気モータであり、図2に示されるように、左側の脚部18Lを動作させる左側のモータ19Lと、右側の脚部18Rを動作させる右側のモータ19Rとからなる。左右両側のモータ19L,19Rは、ロボット本体16が所望の動作を行うように、制御装置14によって駆動制御がなされる。なお、本発明の本質部分でないため図示省略しているが、左側のモータ19Lと左側の脚部18Lの間、及び右側のモータ19Rと右側の脚部18Rの間には、それぞれ、モータ19L,19Rの動力を脚部18L,18Rに伝達する駆動機構が設けられている。当該駆動機構は、複数のプーリと当該プーリに掛け回されるベルト等からなり、左側のモータ19Lが回転すると、左側の脚部18Lの3箇所の楕円脚20,21,22を同期して回転させる構造となっており、右側のモータ19Rが回転すると、右側の脚部18Rの3箇所の楕円脚20,21,22を同期して回転させ構造となっている。

【0018】
前記左右の脚部18L,18Rは、沼や草地などの不整地等で移動ロボット11を走行させる際には、後述する制御装置14によるモータ19L,19Rの駆動制御により、左右の楕円脚20,21,22が同位相となる走行モーション(以下、「同位相モーション」と称する。)が適用される。この同位相モーションは、図4(A)及び図5(A)に示されるように、左右の脚部18L,18R間で、常時、各前後の楕円脚20,22の位置姿勢が同一になるとともに、各中央の楕円脚21の位置姿勢も同一になるように、脚部18が動作する。一方、整地等で移動ロボット11を走行させる際には、後述する制御装置14によるモータ19L,19Rの駆動制御により、左右の楕円脚20,21,22が逆位相となる走行モーション(以下、「逆位相モーション」と称する。)が適用される。この逆位相モーションは、図4(B)及び図5(B)に示されるように、左右の脚部18L,18R間で、常時、各前後の楕円脚20,22の位置姿勢が180度ずれるとともに、各中央の楕円脚21の位置姿勢も180度ずれるように、脚部18が動作する。

【0019】
なお、本実施形態において、脚部18は、楕円円盤状の形状をなしているが、本発明はこれに限らず、路面Gへの接触及び非接触を繰り返し行えるものであれば、その形状や構造は問わない。また、脚部18及びモータ19は、本実施形態の設置数に限定されるものではなく、更に増減した態様にも本発明を適用可能となる。

【0020】
前記路面状況認識装置12は、図1に示されるように、移動時における移動ロボット11の状態を検出する検出手段26と、検出手段26の検出結果に基づいて、脚部18が接地している路面の状況に対応した路面情報を求める情報決定手段27とを備えている。

【0021】
前記検出手段26は、左右両側の各モータ19L,19Rに対する負荷に応じて変化する電流値をそれぞれ検出する電流検出部29(負荷検出部)と、移動ロボット11の姿勢を検出する姿勢検出部30とからなる。本実施形態において、電流検出部29は、モータ19L,19Rに流れる電流値を計測するように、当該モータ19L,19Rに付随する電流センサにより構成され、姿勢検出部30は、3次元の角速度と加速度を検出可能な慣性計測装置(IMU)により構成されているが、本発明はこれに限らず、同様の情報を検出可能な限りにおいて、他のセンサや測定機器に代替することもできる。これら電流検出部29及び姿勢検出部30からの計測値は、所定時間毎に前記情報決定手段27に送られるようになっている。

【0022】
前記情報決定手段27は、電流検出部29で検出された左右両側の各モータ19L,19Rのそれぞれの電流値の経時的変化に基づき、路面の硬さに対応した硬さ推定値を求める硬さ推定部32と、姿勢検出部30で検出された移動ロボット11の姿勢情報の経時的変化に基づき、路面の凹凸の程度に対応した粗さ推定値を求める粗さ推定部33とを備えている。なお、路面状況認識装置12は、その一部がCPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを情報決定手段27として機能させるためのプログラムがインストールされている。

【0023】
前記硬さ推定部32では、次のようにして硬さ推定値が求められる。すなわち、移動ロボット11の走行時に、当該移動ロボット11が路面Gから受ける反力が大きいときに、モータ19を流れる電流値が大きくなる。換言すると、路面Gの硬さに応じて、各楕円脚20,21,22が接地する際に路面Gから受ける反力が変化することから、モータ19を流れる電流のピーク値も硬さの異なる路面Gで異なる。このことから、硬さ推定部32では、予め特定した移動ロボット11の運動周期における電流値の極大値と極小値の差に基づいて、前記硬さ推定値が求められる。具体的には、予め記憶された次の数式に、電流検出部29で検出された各モータ19L,19Rのそれぞれの電流値の極大値と極小値が代入され、硬さ推定値Hが求められる。ここで、特に限定されるものではないが、本実施形態における運動周期Tは、各脚部18L,18Rが同一の位置姿勢に戻るまでの時間に設定されている。
【数1】
JP2017045432A_000003t.gif
上式において、kをモータ19の番号(k=1、2・・・N)とし、本実施形態では、左側のモータ19Lをk=1とし、右側のモータ19Rをk=2とする。そして、i(t)は、移動ロボット11の運動周期T(時間)の中で、k番のモータ19の電流値が極大値を採る時刻tにおけるk番のモータ19の電流値である。また、i(t)は、前記運動周期Tの中で、k番のモータ19の電流値が極小値を採る時刻tにおけるk番のモータ19の電流値である。更に、ikmaxは、k番のモータ19に流せる最大の電流値であり、各モータ19L,19Rで予め定められた値を採る。また、ωは、各モータ19L,19Rに設定された重み付けした係数である。つまり、上式では、モータ19L,19R毎に重み付けをした状態で、当該モータ19L,19R毎に求めた各硬さ推定値Hを加算することで、最終的な硬さ推定値Hが求められる。

【0024】
前記粗さ推定部33では、路面の凹凸が走行時の移動ロボット11の姿勢に大きく影響を与えることから、移動ロボット11の姿勢情報の経時的変化に基づき、路面の凹凸の程度に対応した粗さ推定値が求められる。すなわち、移動ロボット11は、不整地の路面を走行する際、前後に搖動する方向(ピッチ方向)と、左右に搖動する方向(ロール方向)に姿勢が傾く。従って、粗さ推定部33では、前記運動周期Tにおける移動ロボット11のピッチ方向とロール方向の傾きの変化に加え、路面の凹凸による影響を左右する移動ロボット11のサイズを考慮した粗さ推定値が求められる。具体的には、予め記憶された次の数式に、姿勢検出部30で検出された時刻tにおける移動ロボット11のピッチ方向の傾き角度θ(t)とロール方向の傾き角度θ(t)が代入され、粗さ推定値Uが求められる。
【数2】
JP2017045432A_000004t.gif
上式において、l,w,hは、予め特定された移動ロボット11の長さ、幅、高さであり、定数として予め記憶されており、上式における粗さ推定値Uは、運動周期Tの間における移動ロボット11の姿勢の変化を移動ロボット11のサイズで無次元化したものとなっている。

【0025】
このように、情報決定手段27では、路面Gの硬さと粗さに関する路面情報である硬さ推定値H及び粗さ推定値Uが、前記運動周期T毎に求められ、求められた路面情報が制御装置14に送られる。

【0026】
前記制御装置14は、コンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。当該制御装置14は、図1に示されるように、移動ロボット11に所望の動作をさせるために各モータ19L,19Rの駆動を制御する駆動制御手段35と、路面状況認識装置12で求められた路面情報に応じて、移動ロボット11の動作を変更するように、駆動制御手段35に指令する動作変更指令手段36とを備えている。

【0027】
前記駆動制御手段35では、移動ロボット11から一定範囲内で離れた場所での操作者側の端末操作と、脚部18の位置や速度を測定する図示しないエンコーダを含め移動ロボット11の状態を検出する各種センサの測定値と、路面状況認識装置12での路面状況の認識とにより、左右両側の脚部18L,18Rの動作と速度が制御される。すなわち、ここでは、操作者の操作による所望の動作に、路面状況認識装置12で検出された路面状況が加味されて、次の走行パターンにより、各モータ19L,19Rの駆動状態と回転速度とが調整される。

【0028】
本実施形態における前記走行パターンとしては、特に限定されるものではないが、前述した同位相モーション及び逆位相モーションのそれぞれついて、2種類の速度モード(高速モード、低速モード)で、前進及び後退を可能とするパターンが設定されている。

【0029】
前記同位相モーションでは、図4(A)及び図5(A)に示されるように、同一時刻で左右の脚部18L,18Rの配置関係が左右対称となる同位相になるように、左右のモータ19L,19Rの駆動が制御される。一方、前記逆位相モーションでは、図4(B)及び図5(B)に示されるように、同一時刻で左右の脚部18L,18Rの配置関係が180度ずれた時間差が生じるように、左右のモータ19L,19Rの駆動が制御される。

【0030】
前記動作変更指令手段36では、現在の移動ロボット11の走行パターンと、路面状況認識装置12で求められた現在の路面情報とから、予め記憶されたルールに従って異なる走行パターンに遷移させるように、モータ19L,19Rの駆動状態の変更が駆動制御手段35に指令される。

【0031】
本実施形態では、例えば、水平整地路面等を走行する際に適用され、高速モードの逆位相モーションで前進する第1の走行パターンと、水平不整地路面等を走行する際に適用され、低速モードの同位相モーションで前進する第2の走行パターンと、水平軟弱路面等を走行する際に適用され、低速モードの同位相モーションで後退する第3の走行パターン等が設定されている。なお、第3の走行パターンでは、移動ロボット11の後退に加えて、或いは、当該後退に代えて、移動ロボット11の移動経路を再設定しても良い。

【0032】
(前記第1の走行パターンでの移動時)
第1の走行パターンで移動ロボット11が移動している際に、粗さ推定値Uが予め設定された第1の閾値以上になった場合には、移動ロボット11に影響を与える凹凸を有する不整地の路面に入ったとして、移動ロボット11を低速で前進させる第2の走行パターンに遷移される。また、第1の走行パターンで移動ロボット11が移動している際に、硬さ推定値Hが予め設定された第2の閾値以下になった場合には、移動ロボット11が軟弱路面に入ったとして、移動ロボット11を低速で後退させる第3の走行パターンに遷移される。

【0033】
(前記第2の走行パターンでの移動時)
第2の走行パターンで移動ロボット11が移動している際に、粗さ推定値Uが前記第1の閾値未満になった場合には、不整地の路面から整地された路面上の走行に変わったとして、移動ロボット11を高速で前進させる第1の走行パターンに遷移される。また、第2の走行パターンで移動ロボット11が移動している際に、硬さ推定値Hが前記第2の閾値以下になった場合、若しくは、粗さ推定値Uが前述と別に設定された第3の閾値以上になった場合には、移動ロボット11が軟弱路面に入ったとして、移動ロボット11を低速で後退させる第3の走行パターンに遷移される。ここで、前記第3の閾値は、前記第1の閾値よりも大きい値に設定されている。

【0034】
以上の本実施形態によれば、路面の硬さに対応した硬さ推定値Hと、移動ロボット11のサイズを考慮して、当該移動ロボット11の移動に影響を与え得る路面の凹凸の状況に対応した粗さ推定値Uとを求めることができる。これら硬さ推定値H及び粗さ推定値Uを求める際には、演算処理が高負荷となる各種処理、例えば、力センサでの検出や、カメラによって撮像された画像の処理や、レーザレンジファインダ等を用いた処理等が不要である。従って、本実施形態の構成は、小型の移動ロボット11にも十分適用が可能になるという効果を得る。また、硬さ推定値Hが所定の閾値以下のときに、又は、粗さ推定値Uが所定の閾値以上のときに、移動ロボット11を後退させ、及び/又は、移動ロボット11の移動経路が再設定され、また、粗さ推定値Uの大きさに応じて移動ロボット11の移動速度が変化される。このため、人間の体性感覚に近い感覚で、路面状況に応じた移動ロボット11の移動制御が可能になる。

【0035】
なお、前記実施形態では、情報決定手段27で、硬さ推定値H及び粗さ推定値Uの双方が求められているが、必要に応じて、何れか一方のみを求める構成にしても良い。

【0036】
また、本発明は、前記実施形態の構成の移動ロボット11に対する適用に限定されるものではなく、路面への接触及び非接触を繰り返し行うように動作する複数の脚部を備えた多足歩行ロボット等、あらゆる脚式の移動体に適用することができる。

【0037】
更に、前記実施形態では、脚部18を動作させるアクチュエータとして電気モータ19を用いた脚式の移動体について説明したが、本発明はこれに限らず、アクチュエータとして油圧モータや油圧シリンダを用いた脚式の移動体への適用も可能である。この場合、前記硬さ推定部32では、アクチュエータの負荷の経時的変化として、アクチュエータに繋がる油圧系統に設けられた油圧計を用いて、アクチュエータに流れる油圧の経時的変化を検出し、前記実施形態と同様にして硬さ推定値が求められる。

【0038】
また、移動ロボット11には、特許第5269729号公報に記載された手法又はそれに類する手法が適用された計測装置を搭載しても良い。

【0039】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 移動体システム
11 移動ロボット(移動体)
12 路面状況認識装置
14 制御装置
18 脚部
19 モータ(アクチュエータ)
26 検出手段
27 情報決定手段
29 電流検出部(負荷検出部)
30 姿勢検出部
32 硬さ推定部
33 粗さ推定部
35 駆動制御手段
36 動作変更指令手段
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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