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明細書 :コーティング剤およびそれを用いた親水性膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-061598 (P2017-061598A)
公開日 平成29年3月30日(2017.3.30)
発明の名称または考案の名称 コーティング剤およびそれを用いた親水性膜の製造方法
国際特許分類 C09D   4/00        (2006.01)
C08F   2/44        (2006.01)
C08J   7/04        (2006.01)
C08F 220/36        (2006.01)
C08F 220/38        (2006.01)
C09D 133/08        (2006.01)
C09D 133/10        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
FI C09D 4/00
C08F 2/44 C
C08J 7/04 CFDT
C08F 220/36
C08F 220/38
C09D 133/08
C09D 133/10
C09D 7/12
請求項の数または発明の数 20
出願形態 OL
全頁数 28
出願番号 特願2015-186964 (P2015-186964)
出願日 平成27年9月24日(2015.9.24)
発明者または考案者 【氏名】須賀 健雄
【氏名】西出 宏之
【氏名】越智 寛
出願人 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001368、【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
【識別番号】100129252、【弁理士】、【氏名又は名称】昼間 孝良
【識別番号】100155033、【弁理士】、【氏名又は名称】境澤 正夫
【識別番号】100138287、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 功
審査請求 未請求
テーマコード 4F006
4J011
4J038
4J100
Fターム 4F006AA35
4F006AA53
4F006AB24
4F006AB54
4F006AB76
4F006BA10
4F006EA03
4F006EA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CA08
4J011CC10
4J011PA13
4J011PA69
4J011PB22
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
4J038CG141
4J038FA011
4J038GA09
4J038GA13
4J038GA14
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA06
4J038NA11
4J038PA17
4J038PA19
4J038PC01
4J038PC05
4J100AL08P
4J100AL09Q
4J100AL10Q
4J100BA03H
4J100BA17P
4J100BA32P
4J100BA56P
4J100BA64P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA39
4J100HA61
4J100HC75
4J100JA01
要約 【課題】基材の表面に親水性膜を形成するコーティング剤および親水性膜の製造方法を提供する。
【解決手段】複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーおよび/または該モノマーのオリゴマーまたはポリマー、刺激応答開始剤、シリカおよび特定の構造を有する両性イオンポリマーからなるコーティング剤を、基材上に塗布し製膜し、光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成し、この硬化膜に水を接触させ親水性膜を形成する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーおよび/または該モノマーのオリゴマーまたはポリマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤。
【化1】
JP2017061598A_000029t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化2】
JP2017061598A_000030t.gif
【化3】
JP2017061598A_000031t.gif
【化4】
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【化5】
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ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【請求項2】
前記重合性モノマーが、多官能性(メタ)アクリルモノマーである請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記刺激応答開始剤が、光重合開始剤または熱重合開始剤である請求項1または2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記両性イオンポリマー並びに前記重合性モノマー、該モノマーのオリゴマーおよびポリマーの合計100重量部に対し、前記両性イオンポリマーを0.5~99.5重量部含有する請求項1~3のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項5】
下記の工程(1)および(2)をこの順に行う硬化膜の製造方法。
工程(1)複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤を、基材上に塗布し製膜する工程
工程(2)得られた膜に光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成する工程
【化6】
JP2017061598A_000034t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化7】
JP2017061598A_000035t.gif
【化8】
JP2017061598A_000036t.gif
【化9】
JP2017061598A_000037t.gif
【化10】
JP2017061598A_000038t.gif
ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【請求項6】
前記重合性モノマーが、多官能性(メタ)アクリルモノマーである請求項5に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記刺激応答開始剤が、光重合開始剤または熱重合開始剤である請求項5または6に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング剤が、前記両性イオンポリマー並びに前記重合性モノマー、該モノマーのオリゴマーおよびポリマーの合計100重量部に対し、前記両性イオンポリマーを0.5~99.5重量部配合する請求項5~7のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれかに記載の硬化膜の製造方法に続き、前記工程(2)の後に下記工程(3)を行う親水性膜の製造方法。
工程(3)得られた硬化膜に水を接触させ親水性膜を形成する工程
【請求項10】
請求項5~8のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化膜であって、その表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した硬化膜。
【請求項11】
前記硬化膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、硬化膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い請求項10に記載の硬化膜。
【請求項12】
前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である請求項10または11に記載の硬化膜。
【請求項13】
請求項9に記載の製造方法により得られた親水性膜であって、その表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した親水性膜。
【請求項14】
前記親水性膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、親水性膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い請求項13に記載の親水性膜。
【請求項15】
前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である請求項13または14に記載の親水性膜。
【請求項16】
基材の表面に硬化膜を形成した成形体であって、
前記硬化膜が、複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤の硬化物であり、前記硬化膜の表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した成形体。
【化11】
JP2017061598A_000039t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化12】
JP2017061598A_000040t.gif
【化13】
JP2017061598A_000041t.gif
【化14】
JP2017061598A_000042t.gif
【化15】
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ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【請求項17】
前記硬化膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、硬化膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い請求項16に記載の成形体。
【請求項18】
前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である請求項16または17に記載の成形体。
【請求項19】
請求項16~18のいずれかに記載の成形体において、前記硬化膜が水と接触した親水性膜を有する成形体。
【請求項20】
前記親水性膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、親水性膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い請求項19に記載の成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に親水性膜を形成するコーティング剤および親水性膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海水、かん水の淡水化、排水処理および処理水の浄化等の水処理技術への関心が高まり、種々の水処理装置が広く使用されている。各種水処理装置において、海水、かん水、排水などの被処理水と接触するタンク、配管、操作機器、計測機器、制御機器の内面に、微生物がバイオフィルムのかたちで増殖し水処理の効率に影響を及ぼすことがある。一方、船舶の底部やスクリューの表面、或は水中作業機械の表面に、フジツボや貝などの海洋生物が付着し、船舶の運航および水中作業を妨げる一因になっている。
【0003】
水処理装置内面に水中微生物が付着するのを防止するため、および船舶や水中作業機械の外表面に海洋生物が付着するのを防止するため、それぞれの水に接する表面を加工することが検討されている。例えば水処理装置の内表面を親水性の材料でコーティングしたり、架橋したりすることで親水性を付与し、水中微生物や海洋生物が付着し難くすることが考えられる。しかしこのような親水性の材料は、装置を形成する基材と比べ機械的強度が弱く、使用中に破壊したり剥がれ易いという問題がある。
【0004】
非特許文献1は、基材の表面から親水性高分子の重合反応を開始し高分子鎖を基材のから垂直方向に成長させたポリマーブラシを生やすことにより、基材表面を親水性に加工することを提案します。このポリマーブラシによる表面加工は、その表面特性および機械的強度を改良するが、水処理装置を構成するタンクや配管等の内表面や、船舶の底部の外表面という非常に広範な領域にポリマーブラシによる表面改質を施すことは、労力やコストの観点から非常に困難という問題がある。
【0005】
このため改質材料の機械的強度が優れるとともに、基材の表面積が広いときも、表面改質を容易に行うことができるようにする技術が求められていた。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Atsushi Takahara et al., Wettability and Antifouling Behavior on the Surfaces of Superhydrophilic Polymer Brushes, Langmuir, 2012, 28, 7212-7222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機械的強度に優れた親水性膜を、基材の表面に容易に形成するコーティング剤および親水性膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(1) 複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーおよび/または該モノマーのオリゴマーまたはポリマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤。
【化1】
JP2017061598A_000002t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化2】
JP2017061598A_000003t.gif
【化3】
JP2017061598A_000004t.gif
【化4】
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【化5】
JP2017061598A_000006t.gif
ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【0009】
(2) 前記重合性モノマーが、多官能性(メタ)アクリルモノマーである前記(1)に記載のコーティング剤。
【0010】
(3) 前記刺激応答開始剤が、光重合開始剤または熱重合開始剤である前記(1)または(2)に記載のコーティング剤。
【0011】
(4) 前記両性イオンポリマー並びに前記重合性モノマー、該モノマーのオリゴマーおよびポリマーの合計100重量部に対し、前記両性イオンポリマーを0.5~99.5重量部含有する前記(1)~(3)のいずれかに記載のコーティング剤。
【0012】
(5) 下記の工程(1)および(2)をこの順に行う硬化膜の製造方法。
工程(1)複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤を、基材上に塗布し製膜する工程
工程(2)得られた膜に光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成する工程
【化6】
JP2017061598A_000007t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化7】
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【化8】
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【化9】
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【化10】
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ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【0013】
(6) 前記重合性モノマーが、多官能性(メタ)アクリルモノマーである前記(5)に記載の硬化膜の製造方法。
【0014】
(7) 前記刺激応答開始剤が、光重合開始剤または熱重合開始剤である前記(5)または(6)に記載の硬化膜の製造方法。
【0015】
(8) 前記コーティング剤が、前記両性イオンポリマー並びに前記重合性モノマー、該モノマーのオリゴマーおよびポリマーの合計100重量部に対し、前記両性イオンポリマーを0.5~99.5重量部配合する前記(5)~(7)のいずれかに記載の硬化膜の製造方法。
【0016】
(9) 前記(5)~(8)のいずれかに記載の硬化膜の製造方法に続き、前記工程(2)の後に下記工程(3)を行う親水性膜の製造方法。
工程(3)得られた硬化膜に水を接触させ親水性膜を形成する工程
【0017】
(10) 前記(5)~(8)のいずれかに記載の製造方法により得られた硬化膜であって、その表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した硬化膜。
【0018】
(11)前記硬化膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、硬化膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い前記(10)に記載の硬化膜。
【0019】
(12)前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である前記(10)または11に記載の硬化膜。
【0020】
(13)前記(9)に記載の製造方法により得られた親水性膜であって、その表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した親水性膜。
【0021】
(14)前記親水性膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、親水性膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い前記(13)に記載の親水性膜。
【0022】
(15)前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である前記(13)または14に記載の親水性膜。
【0023】
(16) 基材の表面に硬化膜を形成した成形体であって、
前記硬化膜が、複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび下記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤の硬化物であり、前記硬化膜の表面に前記シリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した成形体。
【化11】
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(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化12】
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【化13】
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【化14】
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【化15】
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ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)
【0024】
(17)前記硬化膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、硬化膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い前記(16)に記載の成形体。
【0025】
(18)前記基材が、有機材料、無機材料またはこれらの複合材である前記(16)または17に記載の成形体。
【0026】
(19)前記(16)~18のいずれかに記載の成形体において、前記硬化膜が水と接触した親水性膜を有する成形体。
【0027】
(20)前記親水性膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、親水性膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い前記(19)に記載の成形体。
【発明の効果】
【0028】
本発明のコーティング剤によれば、コーティング剤を複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーおよび/またはこのモノマーのオリゴマーまたはポリマー、刺激応答開始剤、シリカおよび特定の構造を有する両性イオンポリマーから組成したので、基材にこのコーティング剤を塗布、製膜し、光刺激または熱刺激を与えて硬化膜を形成することができる。この硬化膜は、その表面層にシリカおよび両性イオンポリマーが偏析した相構造を形成し親水性を高くすることができる。さらに水に接触させて親水性膜を形成することにより、その表面層にシリカおよび両性イオンポリマーがより偏析した相構造になり親水性を一層優れたものにすることができる。また硬化膜および親水性膜の基材側の層はシリカおよび両性イオンポリマーの存在割合が低くポリマーで構成されるため機械的強度を高くすることができる。したがって本発明のコーティング剤および親水性膜の製造方法は、機械的強度に優れた親水性膜を、基材の表面に容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
コーティング剤
本発明のコーティング剤は、複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーおよび/または該モノマーのオリゴマーまたはポリマー、刺激応答開始剤、シリカおよび後述する一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなる。

【0030】
複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、そのオリゴマーおよび/またはポリマーを含むことにより、基材上に形成した硬化膜および親水性膜の機械的強度を高くすることができる。複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーとしては、多官能性(メタ)アクリルモノマーが好ましい。重合性モノマーとして例えばポリ(メタ)アクリレートカルバメート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、[9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エチレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物などが挙げられる。これらは単独または混合して用いることができる。混合物としては、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートおよびイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートを例示することができ、この混合物は硬化時の収縮が小さいため、炭素繊維強化プラスチックからなる基材に好適に適用することができる。また収縮以外の観点から、重合性モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを上述したなかから単独または複数を選択して用いることができる。

【0031】
またこれらの重合性モノマーの少なくとも一部が、重合性モノマーからなるオリゴマーおよび/またはポリマーでもよい。重合性モノマーを重合する方法は、通常行われる手段および条件を用いて行うことができる。

【0032】
刺激応答開始剤は、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤等を挙げることができ、好ましくは光重合開始剤または熱重合開始剤が好ましい。刺激応答開始剤は、上述した複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーを重合にするのに通常用いられる重合開始剤を使用することができる。

【0033】
熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。熱重合開始剤の具体例として過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、アゾビスイソブチルロニトリル、ジブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリルなどが例示される。

【0034】
光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤の具体例として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヘキシル-フェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノンなどが例示される。

【0035】
刺激応答開始剤の使用量は、特に制限されるものではないが、重合性モノマー、重合性モノマーのオリゴマーおよびポリマー並びに両性イオンポリマーの合計100重量部に対し、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.05~5重量部であるとよい。刺激応答開始剤の使用量をこのような範囲内にすることにより、硬化膜および親水性膜の機械的強度を確保することができる。

【0036】
本発明のコーティング剤において、シリカを配合することにより、硬化膜および親水性膜の表面に両性イオンポリマーを偏析することができる。シリカは、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物に通常用いられるものを使用することができる。シリカの種類としては、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカ、コロイダルシリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。

【0037】
シリカの平均粒径は特に制限されるものではないが、0.001~100μmであることが好ましく、より好ましくは0.001~10μm、更に好ましくは0.005~0.5μm、特に好ましくは0.01~0.02μmであるとよい。平均粒径が0.001μmを下回ると、コーティング剤の粘度が高くなり、塗布等の作業性が劣るおそれがある。平均粒径が100μmを超えると、硬化膜および親水性膜の機械的強度が低下するおそれがある。なお、シリカの平均粒径はレーザー回析法により測定することができる。

【0038】
シリカの配合量は、特に限定されないが、重合性モノマー、重合性モノマーのオリゴマーおよびポリマー並びに両性イオンポリマーの合計100重量部に対し、0.1~200重量部が好ましく、より好ましくは1~100重量部、更に好ましくは、2~50重量部である。シリカの配合量が0.1重量部未満であると、硬化膜および親水性膜の表面に両性イオンポリマーを偏析する作用が十分に得られない。

【0039】
両性イオンポリマーは、下記一般式(I)で表される。
【化16】
JP2017061598A_000017t.gif
(式(I)中、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基、R2は下記一般式(II),(III)または(IV)で表される両性イオン基、R4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基、R5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または下記一般式(V)で表される基であり、mおよびnは1以上の実数で、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。
【化17】
JP2017061598A_000018t.gif
【化18】
JP2017061598A_000019t.gif
【化19】
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【化20】
JP2017061598A_000021t.gif
ただし式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、式(V)中、R6はメチル基またはビニル基である。)

【0040】
前記一般式(I)において、R1,R3は互いに独立に水素またはメチル基であり、好ましくはメチル基であるとよい。

【0041】
2は両性イオン基であり、前記一般式(II),(III)または(IV)で表される。一般式(II),(III),(IV)中、xおよびyは互いに独立して1~8の実数、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の実数である。

【0042】
2が前記一般式(II)である繰り返し数mを有するセグメントは、下記一般式(VI)で表される化合物をモノマーにして重合することができる。
【化21】
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(ただし式(VI)中、R1は水素またはメチル基、xおよびyは互いに独立して1~8の実数である。)

【0043】
前記一般式(VI)で表される化合物としては、例えば2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリレート、3-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。

【0044】
2が前記一般式(III)である繰り返し数mのセグメントは、下記一般式(VII)で表される化合物をモノマーにして重合することができる。
【化22】
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(ただし式(VII)中、R1は水素またはメチル基、xおよびyは互いに独立して1~8の実数である。)

【0045】
前記一般式(VII)で表される化合物としては、例えば2-(メタ)アクロイルオキシエチルホスホコリン、3-(メタ)アクロイルオキシプロピルホスホコリン等を挙げることができる。

【0046】
またR2が前記一般式(IV)である繰り返し数mのセグメントは、下記一般式(VIII)で表される化合物をモノマーにして重合することができる。
【化23】
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(ただし式(VIII)中、R1は水素またはメチル基、xおよびyは互いに独立して1~8の実数である。)

【0047】
前記一般式(VIII)で表される化合物としては、例えば2-(N-3-カルボキシラトプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリレート、3-(N-3-カルボキシラトプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。

【0048】
4はヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、エポキシ基から選ばれる官能基であり、好ましくはヒドロキシ基、アミノ基である。R4は、シリカ表面のシラノール基と相互作用がある官能基であることが好ましい。R4をこのような官能基で構成することによりシリカと両性イオンポリマーとの親和性が高くなり、硬化膜および親水性膜の表面に両性イオンポリマーが偏析しやすくなる。

【0049】
5はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~18の有機基または前記一般式(V)で表される基である。有機基としては、アルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれでもよい。ヘテロ原子を含む有機基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む官能基を有する有機基や、2-フリル、3-チエニル、4-ピリジル、2-キノリル、モルホリノなどヘテロ環を挙げることができる。なお、R4およびR5が結合し、エポキシ基、オキセタン基、ラクトン基などの環を形成してもよい。

【0050】
5は好ましくは前記一般式(V)で表される基であるとよい。前記一般式(V)において、R6はメチル基またはビニル基である。

【0051】
前記一般式(I)における繰り返し数nを有するセグメントは、例えばグリシジル(メタ)アクリレートをモノマーにして重合した後に、エポキシ基に反応性を有する化合物を反応させることにより調製することができる。例えばR4がヒドロキシ基、R5がR6=メチル基の前記一般式(V)で表される基であるとき、グリシジル(メタ)アクリレートの重合物のエポキシ基に酢酸を反応させることにより調製することができる。またR4がヒドロキシ基、R5がR6=ビニル基の前記一般式(V)で表される基であるとき、グリシジル(メタ)アクリレートの重合物のエポキシ基にアクリル酸を反応させることにより調製することができる。

【0052】
前記一般式(I)において、繰り返し数mで括られるセグメントは、両性イオン基R2を有し親水性を付与する作用をもつ。一方繰り返し数nで括られるセグメントは、シリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基R4を有しシリカとの親和性を高くする作用をもつ。これら両セグメントの作用により、硬化膜および親水性膜の表面に両性イオンポリマーが偏析しやすくなる。前記一般式(I)における繰り返し数mおよびnは1以上の実数であり、比(m/n)が5/95~99/1を満たす。繰り返し数mとnの比(m/n)は、両セグメント単位のモル比を意味し、これを調節することにより親水性および偏析の程度を変化させることができる。比(m/n)は、好ましくは10/90~50/50、より好ましくは15/85~25/75であるとよい。比(m/n)が5/95未満であると、親水性の発現がしにくくなる。また比(m/n)が99/1を超えると、多官能アクリレートへの溶解性が困難になる。

【0053】
両性イオンポリマーの分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは数平均分子量(Mn)が2000~200000、より好ましくは10000~100000、さらに好ましくは15000~80000であるとよい。両性イオンポリマーの数平均分子量が200000を超えると、溶解性が下がり取り扱いが困難になる。また両性イオンポリマーの数平均分子量が2000未満であると、親水性の改良効果が小さくなり、またその易溶出性等のコーティング内の保持安定性が懸念される。本明細書において、両性イオンポリマーの数平均分子量は、GPCまたはNMRにより測定することができる。

【0054】
前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーにおいて、繰り返し数mおよびnの比(m/n)は、その分子量の影響を受ける。両性イオンポリマーの数平均分子量が小さいと溶解性が優れるので、比(m/n)を大きくすることができる。また両性イオンポリマーの数平均分子量が大きいと溶解性が下がるので比(m/n)を小さくするのが好ましい。例えば両性イオンポリマーの数平均分子量が25000~70000であるとき、比(m/n)が好ましくは1/6~1/3、より好ましくは2/11~2/9であるとよい。

【0055】
両性イオンポリマーの配合量は、特に限定されないが、重合性モノマー、重合性モノマーのオリゴマーおよびポリマー並びに両性イオンポリマーの合計100重量部に対し、0.5~99.5重量部が好ましく、より好ましくは1~70重量部、更に好ましくは2~50重量部、特に好ましくは5~40重量部である。両性イオンポリマーの配合量が0.5重量部未満であると、硬化膜および親水性膜の表面における親水性が十分に得られない。両性イオンポリマーの配合量が99.5重量部を超えると、硬化膜および親水性膜の機械的強度が不足する虞がある。

【0056】
両性イオンポリマーは、前記一般式(II)~(IV)のいずれかの両性イオン基を有する(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートを共重合することにより、両性イオンポリマーの前駆体を得ることができる。この共重合は、(メタ)アクリレートの共重合に通常用いられる開始剤、触媒、溶媒を使用して行うことができる。また共重合の反応条件も通常行われる範囲で適宜、調節することができる。

【0057】
両性イオンポリマーの前駆体に、酢酸、アクリル酸を反応させることにより、前駆体のエポキシ基が開環してヒドロキシ基および前記一般式(v)で表される基が付加する。R4およびR5の置換基の種類に応じて、両性イオンポリマーの前駆体に反応させる化合物および触媒の種類を適宜、選択することができる。また両性イオンポリマーの前駆体への反応条件は、反応の種類に応じて適宜、設定することができる。

【0058】
前記一般式(II)~(IV)のいずれかの両性イオン基を有する(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合することにより、両性イオンポリマー(R4がヒドロキシ基、R5が水素)を、調製することができる。この共重合は、(メタ)アクリレートの共重合に通常用いられる開始剤、触媒、溶媒を使用して行うことができる。また共重合の反応条件も通常行われる範囲で適宜、調節することができる。

【0059】
また前記一般式(II)~(IV)のいずれかの両性イオン基を有する(メタ)アクリレートと、エポキシ基が開環したグリシジル(メタ)アクリレートを共重合することにより、両性イオンポリマーを得ることができる。この共重合は、(メタ)アクリレートの共重合に通常用いられる開始剤、触媒、溶媒を使用して行うことができる。また共重合の反応条件も通常行われる範囲で適宜、調節することができる。

【0060】
本発明において、両性イオンポリマーは、他の重合性モノマーからなるセグメントを含んでもよい。他の重合性モノマーからなるセグメントの含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜、調整することができる。

【0061】
本発明のコーティング剤は、上述した構成成分の他、必要に応じ、各種有機溶媒、触媒、助触媒、架橋剤、架橋促進剤、増感剤、溶解調整剤、安定剤、消泡剤などの配合剤を添加することができる。

【0062】
コーティング剤の調製は、有機溶剤に重合性モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマー、刺激応答開始剤、シリカ並びに両性イオンポリマーを混合、分散させることにより行うことができる。混合、分散方法は、通常行われる手段、条件を用いることができる。

【0063】
硬化膜およびその製造方法
本発明の硬化膜の製造方法は、下記の工程(1)および(2)をこの順に行う。
工程(1)複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤を、基材上に塗布し製膜する工程
工程(2)得られた膜に光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成する工程

【0064】
工程(1)で使用するコーティング剤の仕様は上述した通りであり、繰り返しの説明を省く。基材は、被処理水と接触する表面を有する部材であり、タンク、配管、操作機器、計測機器、制御機器の内表面や、船舶の底部やスクリュー、或は水中作業機械の外表面を構成する部材である。これら基材は、有機材料、無機材料またはこれらの複合材で形成することができる。有機材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等からなる成形体が例示される。無機材料は、金属、セラミック、鉱物等で構成された部材が例示される。有機材料および無機材料の複合材としては、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維等に熱硬化性樹脂を含浸させた複合材や金属部材の表面に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を被覆した積層体などが例示される。なお基材の構成及び材質はこれらの限定されるものではなく被処理水と接触する部材に適用することができる。

【0065】
基材にコーティング剤を塗布し製膜する方法は、特に限定されるものではなく、通常の塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどが挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~100μmであることが好ましく、より好ましくは2.0~50μmであるとよい。なお、塗布により得られた膜は、乾燥工程にかけて乾燥してもよいし、自然乾燥させてもよい。或いは乾燥する前に工程(2)で硬化させてもよい。

【0066】
工程(2)では、工程(1)で得られた膜に光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成する。光刺激および熱刺激の種類、強度、時間は、コーティング剤中の刺激応答開始剤の種類および量に応じて適宜、調節することができる。

【0067】
上述した工程(1)および(2)を含む製造方法により硬化膜を製造することができる。得られた硬化膜は、その表面にシリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析している。これにより、硬化性膜の表面近くの層において親水性が大きくなる。一方、硬化膜の基材近くの領域では、シリカおよび両性イオンポリマーの存在が少なくなり、多官能の重合性モノマー、オリゴマーおよびポリマーの存在確率が高くなる。これにより硬化膜の機械的強度が大きくなり、基材に対する密着性も高くなる。硬化膜の表面(深さ10nm)における元素組成は、X線光電子分光(XPS)により測定することができる。また硬化膜の内部における元素組成は、硬化膜の表面を深さ方向に一定量を削り取ることにより、更新された表面の元素組成をX線光電子分光(XPS)により測定することができる。或いは硬化膜の仕込み時の元素組成および表面の元素分析の結果から、硬化膜の内部の原子分布を推算することができる。

【0068】
本発明の硬化膜は、両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度を、硬化膜の内部におけるそれぞれの濃度より高くすることができる。これは、シリカおよび両性イオンポリマーが硬化膜の表面層側に偏析することに伴う濃度分布である。したがってシリカ由来のケイ素原子の表面濃度も、硬化膜の内部におけるケイ素原子の濃度より高くなる。硬化膜において、シリカおよび両性イオンポリマーが偏析する理由は、基材側から硬化が進み、シリカおよびシリカと相互作用する両性イオンポリマーが排斥されるためと考えられる。したがって、硬化膜の表面側にシリカおよび両性イオンポリマーの偏析を助長するために、粒径の小さなシリカを用いるとよい。

【0069】
本発明にかかる、基材の表面に硬化膜を形成した成形体は、硬化膜が複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤の硬化物であり、硬化膜の表面にシリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した構造を有する。

【0070】
親水性膜およびその製造方法
本発明の親水性膜の製造方法は、下記の工程(1)~(3)をこの順に行う。
工程(1)複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤を、基材上に塗布し製膜する工程
工程(2)得られた膜に光刺激または熱刺激を与え硬化膜を形成する工程
工程(3)得られた硬化膜に水を接触させ親水性膜を形成する工程

【0071】
上記工程(1)および(2)は、上述した硬化膜の製造方法における工程(1)および(2)と同じ工程であるので説明を省略する。

【0072】
親水性膜の製造方法の工程(3)において、工程(1)および(2)により製造された硬化膜に水を接触させ親水性膜を形成する。水に接触させる方法は、特に限定されるものではなく、水中に浸漬する方法、水を噴霧する方法、硬化膜を高湿度下で保持する方法等通常行われる接触方法を適用することができる。なお上記のように硬化膜に水を積極的に接触させる方法の他、硬化膜で被覆した基材の保管、運搬、使用により、硬化膜が水に接触し親水性膜が形成されてもよい。

【0073】
硬化膜に接触させる水の種類は、特に制限させるものではなく、水道水、蒸留水、イオン交換水の他、海水、かん水、河川水、湖沼水、排水、これらの処理水、等を例示することができる。硬化膜に水を接触させるときの温度、圧力、時間は特に制限されるものではないが、温度は好ましくは5~90℃、より好ましくは10~40℃であるとよい。また圧力は大気圧、加圧、減圧のいずれでもよい。更に時間は好ましくは1分~24時間、より好ましくは5分~2時間であるとよい。このように硬化膜に水を接触させることにより、表面層における親水性膜の偏析をより顕著にすることができる。

【0074】
硬化膜に水を接触させた親水性膜は、その表面の両性イオンポリマーの偏析が、硬化膜表面の両性イオンポリマーの偏析よりも顕著になる。すなわち親水性膜における両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、親水性膜の内部におけるそれぞれの濃度より高い。また親水性膜の表面の両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度が、水を接触させる前の硬化膜の表面の両性イオンポリマー由来の硫黄原子または燐原子の表面濃度よりも高くなる。

【0075】
本発明にかかる、基材の表面に親水性膜を形成した成形体は、親水性膜が複数のエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマー、刺激応答開始剤、シリカおよび前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーからなるコーティング剤の硬化物からなり、この硬化膜が水と接触することにより、親水性膜が形成されている。親水性膜は、その表面にシリカおよび/または両性イオンポリマーが偏析した構造を有し、これら原子の偏析の度合いは、硬化膜におけるシリカおよび両性イオンポリマーの偏析の度合いよりも強くなる。

【0076】
以下実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0077】
以下の実施例において、各種特性を以下の方法により測定を行った。
(1)平均分子量および分子量分布
両性イオンポリマーの前駆体の平均分子量および分子量分布をゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製Super Aw5000,3000)を使用し、キャリアーを0.1mol/L塩化リチウム含有N,N-ジメチルホルムアミドとして測定し、スタンダードとしてポリスチレンを用いて検量し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なおGPCによる分子量測定の他、数平均分子量(Mn)はNMRを用いた末端基定量法から見積もった。
【実施例】
【0078】
(2)表面の元素組成分析
ポリエチレンテレフタレート製基板上に製造した硬化膜および親水性膜について、それぞれの表面をX線光電子分光法で測定し、表面(10nm)における元素組成を分析した。
・装置:JPS-9010TR、日本電子社製
・測定領域:5mmφ
・使用X線:MgKα線
・加速電圧:10kV
・サーベイスキャン:1100~0eV
【実施例】
【0079】
(3)接触角
炭素繊維強化プラスチック製基板上に製造した親水性膜について、KRUSS社製接触角計DSA25を使用し、captive bubbleモードで水中および1MのNaCl水溶液中の接触角を測定した。captive bubbleモードの接触角は、水中および1MのNaCl水溶液中のそれぞれで、気泡10μLおよびヘキサデカン10μLの接触角を測定した。
【実施例】
【0080】
ポリエチレンテレフタレート製基板上に製造した親水性膜について、新東科学社製表面性試験機Heidon Type22を用いて引っ掻き強度を測定した。引っ掻き針はサファイヤ製(R加工0.2mm)、引っ掻き距離10mm、引っ掻き速度0.2mm/秒、荷重範囲5~300g、室温で動摩擦力を測定し、動摩擦力が変化を示した荷重を引っ掻き強度とした。
【実施例】
【0081】
5種類の両性イオンポリマー(PSBG1~3,PPCG1,PPCG2、PPCHEおよびPPCHP)を以下の方法により調製した。
【実施例】
【0082】
合成例1
スルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG1(Mn=51000)の合成
2-(N-3-スルホプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート(SBMA)0.300gとグリシジルメタクリレート(GMA)0.763gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)6.60gに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル6.62mgを加えて80℃で3時間攪拌しながら共重合した。得られた共重合物を水で沈殿精製し、室温で真空乾燥することにより共重合体PSBMA-r-PGMAを0.757g得た。収率は71重量%、SBMAセグメントとGMAセグメントのモル比(PSBMA:PGMA)は約1:5(mol/mol)であった。また重量平均分子量(Mw)は40100、数平均分子量(Mn)は26900、分子量分布(Mw/Mn)は1.50であった。またNMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は51000であった。得られた共重合体PSBMA-r-PGMAは、DMSO、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に可溶、アセトン、メタノール、エタノールに不溶であった。
【実施例】
【0083】
上記で得られた共重合体PSBMA-r-PGMA 0.200gをDMF 3.78gに溶解し、酢酸0.126g、トリフェニルホスフィン0.0280gを加え110℃で12時間反応させた。得られた反応物を、ジエチルエーテル213gで沈殿精製し、室温での真空乾燥を行うことにより、エポキシ環を開環したスルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG1を得た。1H-NMRにより定量的なエポキシ基の開環が支持された。SB含有ポリマーPSBG1は、R1,R3がメチル基、R2が前記一般式(II)で表される両性イオン基、R4がヒドロキシ基、R5が前記一般式(V)で表される基、R6がメチル基、比(m/n)が約1/5である前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーである。
【実施例】
【0084】
合成例2
スルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG2(Mn=26900)の合成
アゾビスイソブチロニトリルの添加量を24.9mgに変更したことを除き、合成例1と同様にして共重合体PSBMA-r-PGMAを0.75g得た。収率は71重量%、SBMAセグメントとGMAセグメントのモル比(PSBMA:PGMA)は約1:5(mol/mol)であった。重量平均分子量(Mw)は24700、数平均分子量(Mn)は14500、分子量分布(Mw/Mn)は1.70であった。またNMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は26900であった。得られた共重合体PSBMA-r-PGMAを用い、合成例と同様にしてエポキシ環を開環したスルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG2を得た。
【実施例】
【0085】
合成例3
スルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG3(Mn=18100)の合成
アゾビスイソブチロニトリルの添加量を37.3mgに変更したことを除き、合成例1と同様にして共重合体PSBMA-r-PGMAを0.66g得た。収率は62重量%、SBMAセグメントとGMAセグメントのモル比(PSBMA:PGMA)は約1:5(mol/mol)であった。重量平均分子量(Mw)は22800、数平均分子量(Mn)は9600、分子量分布(Mw/Mn)は2.38であった。またNMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は18100であった。得られた共重合体PSBMA-r-PGMAを用い、合成例と同様にしてエポキシ環を開環したスルホベタイン(SB)含有ポリマーPSBG3を得た。
【実施例】
【0086】
合成例4
ホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCG1の合成
2-メタクロイルオキシエチルホスホコリン(MPC)0.500gとグリシジルメタクリレート(GMA)1.20gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)7.70gに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10.4mgを加えて80℃で12時間攪拌しながら共重合した。得られた共重合物をエタノール197gとジエチルエーテル178gからなる混合溶媒で沈殿精製し、室温で真空乾燥することにより共重合体PMPC-r-PGMAを1.43g得た。収率は84重量%、MPCセグメントとGMAセグメントのモル比(PMPC:PGMA)は1:5(mol/mol)であった。またNMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は52000であった。得られた共重合体PMPC-r-PGMAは、DMSO、DMF、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に可溶、アセトン、メタノール、エタノール、クロロホルムに不溶であった。
【実施例】
【0087】
上記で得られた共重合体PMPC-r-PGMA 0.200gをDMF 3.78gに溶解し、酢酸0.119g、トリフェニルホスフィン0.0261gを加え110℃で12時間反応させた。得られた反応物を、ジエチルエーテル213gで沈殿精製し、室温での真空乾燥を行うことにより、エポキシ環を開環したホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCG1を得た。1H-NMRにより定量的なエポキシ基の開環が支持された。SB含有ポリマーPSBG1は、R1,R3がメチル基、R2が前記一般式(III)で表される両性イオン基、R4がヒドロキシ基、R5が前記一般式(V)で表される基、R6がメチル基、比(m/n)が約1/5である前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーである。
【実施例】
【0088】
合成例5
ホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCG2の合成
上記合成例2と同様にして共重合体PMPC-r-PGMAを合成した。得られた共重合体PMPC-r-PGMA 0.200gをDMF 3.78gに溶解し、酢酸0.113g、アクリル酸0.00677g、トリフェニルホスフィン0.0261gを加え110℃で12時間反応させた。得られた反応物はNMRの末端規定表から見積もられた数平均分子量(Mn)が52000であった。得られた反応物を、ジエチルエーテル213gで沈殿精製し、室温での真空乾燥を行うことにより、エポキシ環を開環したホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCG2を得た。1H-NMRにより定量的なエポキシ基の開環が支持された。PC含有ポリマーPPCG2は、R1,R3がメチル基、R2が前記一般式(III)で表される両性イオン基、R4がヒドロキシ基、R5が前記一般式(V)で表される基、R6がメチル基およびビニル基の混在(9:1 mol/mol)、比(m/n)が約1/5である前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーである。
【実施例】
【0089】
合成例6
ホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCHEの合成
2-メタクロイルオキシエチルホスホコリン(MPC)0.500gと2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.10gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)11.0gに溶解し、開示剤としてアゾビスイソブチロニトリル10.4mgを加えて80℃で10時間攪拌しながら共重合した。得られた共重合物をクロロホルム745gで沈殿精製し、室温で真空乾燥することによりランダム共重合体PPCHEを1.21g得た。収率は76重量%、MPCセグメントとHEMAセグメントのモル比(PMPC:PHEMA)は1:5(mol/mol)であった。またNMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は65000であった。得られた共重合体PPCHEは、水、メタノール、DMSOに可溶、アセトン、エタノールに不溶であった。得られた共重合体PPCHEの構造を、前記一般式(I)に当てはめると、R1,R3がメチル基、R2が前記一般式(III)で表される両性イオン基、R4がヒドロキシ基であるが、R5が水素であり前記一般式(I)で表される両性イオンポリマーではない。
【実施例】
【0090】
合成例7
ホスホコリン(PC)含有ポリマーPPCHPの合成
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)0.500gと2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)1.22gをジメチルスルホキシド11.0gに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10.4mgを加え80℃で10時間撹拌し重合させ、アセトン745gで沈殿精製し、室温での真空乾燥を経て共重合体PPCHPを1.49g得た(収率86%、PMPC:PHPMA=1:5mol/mol)。GPCによる分子量測定より重量平均分子量(Mw)が31400、数平均分子量(Mn)は19400、分子量分布(Mw/Mn)が1.62であった。NMRの末端基定量法から見積もられた数平均分子量(Mn)は62800であった。ポリマーは水、メタノール、エタノール、DMFに可溶、アセトン、クロロホルム、IPAに不溶であった。
【実施例】
【0091】
合成例8
ポリマーPG1の合成
グリシジルメタクリレート(GMA)1.00gをジメチルスルホキシド6.60gに溶解し、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル7.21mgを加え80℃で3時間撹拌し重合させ、メタノールで沈殿精製し、室温での真空乾燥を経てポリマーPGMAを0.780g得た(収率78%)。GPCによる分子量測定より数平均分子量(Mn)が14800であった。ポリマーはアセトン、クロロホルムに可溶、水、メタノールに不溶であった。
【実施例】
【0092】
PGMA 0.200gをN,N-ジメチルホルムアミド3.78gに溶解し、酢酸0.169g、トリフェニルホスフィン0.0369gを加え110℃で12時間の反応後、ジエチルエーテル213gへの沈殿精製、室温での真空乾燥を経てエポキシ基を開環したポリマーPG1を得た。1H-NMRより定量的なエポキシ基の開環が支持された。
【実施例】
【0093】
コーティング剤の調製
合成例1~7で得られた両性イオンポリマーを使用し、或は使用せずに、または合成例8で得られたポリマーPG1を使用して、表1,2に示す光硬化性コーティング剤および熱硬化性コーティング剤を以下の方法により調製した。
上記合成例1~7で得られた両性イオンポリマー、合成例8で得られたポリマーPG1、多官能アクリレート(東亞合成社製M313、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変成ジアクリレート/イソシアヌル酸エチレンオキサイド変成トリアクリレートの35/65 重量%/重量%混合物)、シリカ(日産化学社製コロイダルシリカMEK-ST、メチルエチルケトン中30重量%の分散液にして使用、表中CS+MEKと記載)、刺激応答開始剤およびメタノールを表1,2に記載した重量比で秤量、混合し溶解させることにより、各コーティング剤を調製した。刺激応答開始剤として、光硬化性コーティング剤には光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、東京化成社製、表中「HCPK」と記載)、熱硬化性コーティング剤には熱重合開始剤(2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、和光純薬工業社製、表中「V70」と記載)をそれぞれ配合した。
【実施例】
【0094】
硬化膜の製造
ポリエチレンテレフタレート製基板(厚さ125μm)および炭素繊維強化プラスチック製基板(東レ社製、厚さ2mm)のそれぞれの表面に、表1,2に示された両性イオンポリマーまたはポリマーPG1を含有する組成からなる16種類の光硬化性または熱硬化性コーティング剤(実施例1~12、比較例1~4)をバーコート法により塗布し、製膜した。各基板を60℃、60秒で加熱し溶媒を除去した。光硬化性コーティング剤から得られた膜に超高圧水銀灯(0.3mW/cm2)を300秒間照射し、各基板上に光硬化膜(厚さ約2.5μm)を製造した。また熱硬化性コーティング剤から得られた膜を70℃、7200秒加熱することにより熱硬化膜(厚さ約2.5μm)を製造した。
【実施例】
【0095】
親水性膜の製造
上記で得られた硬化膜を、水または1MのNaCl水溶液に5分間、浸漬することにより、親水性膜(実施例1~12)および水浸漬硬化膜(比較例1~4)を製造した。
【実施例】
【0096】
炭素繊維強化プラスチック製基板上に形成した親水性膜および水浸漬硬化膜について、水中における気泡10μLの接触角およびヘキサデカン10μLの接触角を上述した方法で測定した。なお比較例5として基材にした炭素繊維強化プラスチックの接触角を同様にして測定した。得られた接触角からOwens-Wendlt法により、表面張力γsvおよび水-被膜間の界面張力γswを算出した。得られた結果を表1,2に記載する。炭素繊維強化プラスチックの水中における気泡の接触角は138deg、ヘキサデカン10μLの接触角は110degであった。また水中表面張力γsvは60.8mN/m、水-被膜間の界面張力γswは6.7mN/mであった。
【実施例】
【0097】
実施例1,4,5の親水性膜、比較例3~4の水浸漬硬化膜および比較例5の炭素繊維強化プラスチックについて、1MのNaCl水溶液中における気泡10μLの接触角およびヘキサデカン10μLの接触角を上述した方法で測定した。得られた結果を表1,2に記載する。また炭素繊維強化プラスチックの1MのNaCl水溶液中における気泡10μLの接触角は146deg、ヘキサデカン10μLの接触角は133degであった。
【実施例】
【0098】
【表1】
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【実施例】
【0099】
【表2】
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【実施例】
【0100】
実施例4,5および比較例4により、ポリエチレンテレフタレート製基板上に形成された親水性膜について、引っ掻き強度を上述した方法で測定した。実施例2,3および比較例4の親水性膜の引っ掻き強度は、155±3g、215±5gおよび235±2gであった。
【実施例】
【0101】
実施例1,4のコーティング剤でポリエチレンテレフタレート製基板上に製造した硬化膜、親水性膜の膜表面における元素組成を上述した方法で測定した。各硬化膜を10mm四方に3つずつ切り取り、その1つを硬化膜の試験片とした。他の1つを純水に2時間浸漬し、「水浸漬の親水性膜」とした。残りの1つを1MのNaCl水溶液に2時間浸漬し、「NaClaq浸漬の親水性膜」とした。それぞれの表面元素組成の分析結果を表3~表7に記載する。
【実施例】
【0102】
【表3】
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【実施例】
【0103】
【表4】
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