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明細書 :関節炎の予防・治療剤、検査キット、並びに関節炎予防・治療薬のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月8日(2017.6.8)
発明の名称または考案の名称 関節炎の予防・治療剤、検査キット、並びに関節炎予防・治療薬のスクリーニング方法
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  19/02        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61K 48/00
A61P 17/06
A61P 29/00 101
A61P 19/02
A61K 31/7088
A61K 31/713
C12Q 1/68 ZNAA
C07K 16/18
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
国際予備審査の請求
全頁数 62
出願番号 特願2016-545659 (P2016-545659)
国際出願番号 PCT/JP2015/074556
国際公開番号 WO2016/031996
国際出願日 平成27年8月24日(2015.8.24)
国際公開日 平成28年3月3日(2016.3.3)
優先権出願番号 2014174638
優先日 平成26年8月28日(2014.8.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】中野 和久
出願人 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
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4C086
4H045
Fターム 2G045AA13
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2G045AA29
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2G045CA25
2G045CB01
2G045CB17
2G045CB26
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB08
2G045FB12
2G045FB14
2G045GC15
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要約 本発明はTet 3の発現阻害物質を含有する、関節リウマチを含む関節炎の予防・治療剤、診断キット、並びに関節リウマチを含む関節炎の予防及び/又は治療活性を有する新規な物質の探索手段を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質を含有する、関節炎の予防及び/又は治療剤。
【請求項2】
Tet 3の発現阻害物質が、
(a)Tet 3遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、
(b)Tet 3遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸、又は
(c)Tet 3遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
以下の(1)~(3)の工程を含む、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法:
(1)Tet 3遺伝子もしくは該遺伝子の転写調節領域の制御下にあるレポータータンパク質をコードする核酸を含む細胞を、被検物質に接触させる工程、
(2)前記細胞におけるTet 3遺伝子もしくはTet 3タンパク質又はレポータータンパク質の発現量を測定する工程、
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、Tet 3遺伝子もしくはTet 3タンパク質又はレポータータンパク質の発現量を低下させた被検物質を、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程。
【請求項5】
Tet 3と被検物質とを接触させ、Tet 3と結合能を有する被検物質を関節炎の予防及び/又は治療剤の候補として選択することを特徴とする、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
【請求項6】
関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択された被検物質を関節炎モデルに適用し、該モデルにおける炎症反応を抑制するか否かを検定することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下の(1)~(3)の工程を含む、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法:
(1)滑膜線維芽細胞を、被検物質に接触させる工程、
(2)前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性の程度を測定する工程、
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性を抑制した被検物質を、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程。
【請求項8】
関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
被験者由来の試料から、下記(a)または(b)を用いてTet 3遺伝子の転写産物または翻訳産物を検出または定量することを含む、関節炎の検査方法:
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体。
【請求項10】
関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
下記(a)および/または(b):
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体
を含有してなる、関節炎検査用キット。
【請求項12】
関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質の有効量を対象に投与することを含む、関節炎の予防及び/又は治療方法。
【請求項14】
関節炎の予防及び/又は治療に使用するための、Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質。
【請求項15】
関節炎の予防及び/又は治療剤を製造するための、Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎、特に関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の予防・治療剤、並びに関節炎、特に関節リウマチ予防・治療薬のスクリーニング方法に関する。より詳しくは、Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の機能を阻害する物質を含有する、関節炎、特に関節リウマチの予防剤及び/又は治療剤、並びにTet 3の機能阻害を指標とする、関節炎、特に関節リウマチ予防・治療薬の候補物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは、全身の関節に慢性炎症を生じる難治性の自己免疫疾患である。関節内の滑膜組織が増殖し、進行性に軟骨と骨が破壊される。関節リウマチの滑膜線維芽細胞(FLS)はマクロファージやリンパ球により刺激(TNFα、IL-1βなどの炎症性サイトカイン)されて活性化され、活性化した滑膜線維芽細胞は、炎症性サイトカインやケモカイン産生、基質分解酵素分泌により関節破壊を起こす一方、増殖能・浸潤能の亢進、アポトーシス感受性低下などの癌細胞と似た性質も持つ。近年、GWAS(Genome-Wide Association Study)の結果より約30の遺伝子多型が関節リウマチの発症や重症度に関わることが知られるようになってきた。その一方で、エピジェネティクスの異常が関節リウマチの発症や重症度に深く関わることが示唆されるようになった。DNAのメチル化はエピジェネティクスの代表的な機構の一つであり、関節リウマチにおいてもゲノム全体、もしくは特定の遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化異常が存在することが報告されてきた。発明者は近年、ゲノム網羅的DNAメチル化解析により、関節リウマチ患者由来滑膜線維芽細胞には疾患に特有なDNAメチル化パターンが存在し、異常メチル化を示した遺伝子の多くが関節リウマチの病態に深く関わることを示した(非特許文献1)。
生物学的製剤による炎症性サイトカインを標的とした関節リウマチ治療は、寛解導入を身近なものにしたが、関節リウマチ治療にはいわゆる「Window of Opportunity」が存在し、治療開始の遅れは治療効果を限定的なものとする。このことは、炎症環境の持続自体が、滑膜炎症部位に存在する細胞をより攻撃的でかつ治療抵抗性な表現型に変質させている可能性を示唆するが、この詳細なメカニズムは不詳であった。発明者は、関節リウマチにおける滑膜炎症・骨関節破壊の中心的役割を担うTNFαやIL-1βが、FLSにおいてDNAメチル化酵素(DNMT)の発現を低下させ、受動的脱メチル化を促進することを示し、疾患特有のDNAメチル化パターン形成の分子機構の一端を明らかにした(非特許文献2)。
しかしながら、これまでは能動的なDNA脱メチル化の機構が不詳であったため、DNAメチル化・脱メチル化のダイナミズムの全貌は不明であった。近年、DNA脱メチル化酵素として機能するTet(Ten-Eleven translocation)タンパク質ファミリーが同定され、Tetタンパク質が5-メチルシトシン(5mC)を水酸化して5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を合成することが報告され、ES細胞などにおけるDNAメチル化のダイナミズムの研究は急速な進展を見せている。
ただ、関節リウマチにおけるTetタンパク質の関与については未だ明らかにされておらず、Tetタンパク質が関節リウマチの治療標的となり得るか否かは全く不明のままであった。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Nakano K et al.,Ann Rheum Dis.72(1):110-117,2013.
【非特許文献2】Nakano K et al.,J Immunol.190(3):1297-1303,2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、関節炎、特に関節リウマチにおけるTetタンパク質、特にTet3タンパク質の機能を明らかにすることであり、当該機能に基づいてTet 3を標的とする関節炎の予防・治療剤、検査キットを提供すること、並びにTet 3の機能調節を指標として、関節炎の予防及び/又は治療活性を有する新規な物質を探索する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の目的を達成すべく、関節リウマチ患者由来の滑膜や炎症性サイトカインで刺激した、関節リウマチ患者由来の滑膜線維芽細胞(FLS)におけるTetタンパク質ファミリーの発現レベルおよびDNAメチル化レベルを測定した。その結果、健常者や変形性関節症(OA)患者に比べて、関節リウマチ患者由来の滑膜表層細胞層や炎症性サイトカインで刺激した、関節リウマチ患者由来の滑膜線維芽細胞(FLS)では、Tet 3の発現レベルが高く、DNAメチル化レベルも低いことを見出した。また、関節リウマチ患者由来のFLSのTet3をノックダウンした場合、FLS自身の組織(軟骨、骨)浸潤に関与するケモカインCCL2や接着分子ICAM1の発現が阻害され、また、該FLSの浸潤能も抑制された。これらの結果は、Tet 3の選択的阻害が、DNAメチル化レベルの維持を介してCCL2やICAM1の発現を阻害し、それに伴って浸潤性に代表される滑膜線維芽細胞の活性化を阻害することによって、関節炎、特に関節リウマチの新規治療につながることを示唆するものである。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質を含有する、関節炎の予防及び/又は治療剤。
[2]Tet 3の発現阻害物質が、
(a)Tet 3遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、
(b)Tet 3遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸、又は
(c)Tet 3遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体である、[1]に記載の剤。
[3]関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、[1]または[2]に記載の剤。
[4]以下の(1)~(3)の工程を含む、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法:
(1)Tet 3遺伝子もしくは該遺伝子の転写調節領域の制御下にあるレポータータンパク質をコードする核酸を含む細胞を、被検物質に接触させる工程、
(2)前記細胞におけるTet 3遺伝子もしくはTet 3タンパク質又はレポータータンパク質の発現量を測定する工程、
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、Tet 3遺伝子もしくはTet 3タンパク質又はレポータータンパク質の発現量を低下させた被検物質を、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程。
[5]Tet 3と被検物質とを接触させ、Tet 3と結合能を有する被検物質を関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択することを特徴とする、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法。
[6]関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択された被検物質を関節炎モデルに適用し、該モデルにおける炎症反応を抑制するか否かを検定することをさらに含む、[5]に記載の方法。
[7]以下の(1)~(3)の工程を含む、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法:
(1)滑膜線維芽細胞を、被検物質に接触させる工程、
(2)前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性の程度を測
定する工程、
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性を抑制した被検物質を、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程。
[8]関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、[4]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]被験者由来の試料から、下記(a)または(b)を用いてTet 3遺伝子の転写産物または翻訳産物を検出または定量することを含む、関節炎の検査方法:
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体。
[10]関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、[9]に記載の方法。
[11]下記(a)および/または(b):
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体
を含有してなる、関節炎検査用キット。
[12]関節炎が関節リウマチ、乾癬性関節炎または脊椎関節炎である、[11]に記載のキット。
[13]Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質の有効量を対象に投与することを含む、関節炎の予防及び/又は治療方法。
[14]関節炎の予防及び/又は治療に使用するための、Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質。
[15]関節炎の予防及び/又は治療剤を製造するための、Tet 3(Ten-Eleven translocation 3)の発現阻害物質の使用。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、Tet 3は関節リウマチの病態悪化に関与することが明らかとなったので、Tet 3の発現もしくは機能を阻害することにより、関節炎を治療又は予防することができる。また、Tet 3の発現もしくは機能阻害を指標として、関節炎の治療又は予防薬をスクリーニングすることができる。さらに、Tet 3の発現を指標として、関節炎を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は関節リウマチ(RA)患者由来の滑膜組織における、Tetタンパク質ファミリー(Tet1,2,3)の発現、DNAメチル化(5-メチルシトシン(5mC)、5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC))を示す免疫組織化学染色像である。
図2は変形性関節症(OA)患者由来の滑膜組織における、Tetタンパク質ファミリー(Tet1,2,3)の発現、DNAメチル化(5-メチルシトシン(5mC)、5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC))を示す免疫組織化学染色像である。
図3は関節リウマチ(RA)患者由来の滑膜組織における、Tet3タンパク質(青色)とCD55タンパク質(茶色)の二重染色、Tet3タンパク質(青色)とCD68タンパク質(茶色)の二重染色を示す免疫組織化学染色像である。
図4はサイトカイン未刺激のFLS(健常人、OA、RA)における、Tetファミリー(Tet1,Tet 2,Tet 3)の相対的mRNA発現レベルを示す図である。
図5はサイトカイン未刺激のFLS(OA、RA)における、Tetファミリー(緑色)(Tet1,Tet 2,Tet 3)の発現と核(青色)を示す免疫組織化学染色像である。
図6はTNFαやIL-1βによる刺激後における、FLS(n=4(RA 2,OA 2))におけるTetファミリー(Tet 1,Tet 2,Tet 3)のmRNA発現レベルの経時変化を示す図である。
図7はTNFα刺激後における、FLSにおけるTet3タンパク質のN/C比の経時変化を示す図である。
図8AはTNFαによる刺激後における、OA由来または健常者由来FLS(OA,Nr)におけるTet3のタンパク質発現レベルを示す図である。図8BはTNFαによる刺激後における、AR由来FLSにおけるTet 3のタンパク質発現レベルを示す図である。
図9Aは実施例4の試験過程を示す図である。図9BはTNFαによる刺激後における、AR由来FLSにおける5hmCレベルを示すドットブロット像である。図9CはAR由来FLSにおける5hmCレベルを示すグラフである。
図10Aは実施例5の試験過程を示す図である。図10BはTet3をノックダウンし、TNFαによる刺激後における、AR由来FLSにおける炎症性サイトカインの分泌レベルを示すグラフである。
図11Aは実施例6の試験過程を示す図である。図11BはTet3をノックダウンし、TNFαによる刺激後の、AR由来FLSのScratch assayを示す顕微鏡像である。図11CはTet 3をノックダウンし、TNFαによって刺激し、scratch後24時間における、AR由来FLSの単位面積当たりの浸潤細胞数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくとも部分的には、Tet 3が関節リウマチの増悪に寄与していることの発見に基づく。当該知見は、Tet 3が関節炎、特に関節リウマチマーカーとして利用できるだけでなく、関節炎、特に関節リウマチの創薬標的ともなり得ることを示すものである。即ち、Tet 3の既知の阻害薬は関節炎の予防及び/又は治療に有用であるとともに、Tet3タンパク質やそれを発現する細胞・動物を用いて、新規なTet 3阻害薬、ひいては関節炎の予防・治療薬となる物質を探索することもできる。
I.Tet 3又はこれをコードする核酸
本明細書において、Tet 3は公知のタンパク質であり、Genbank Accession No.:043151として知られている、配列番号:2で表されるヒトTet 3のアミノ酸配列、あるいはこれと実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。本明細書において、タンパク質およびペプチドは、ペプチド表記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。
本明細書において、Tet 3はヒトや他の温血動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、サル、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリなど)の細胞[例えば、滑膜線維芽細胞、滑膜表層細胞など]又は組織[例えば、滑膜(特に滑膜表層細胞層)など]等から、公知のタンパク質分離精製技術により単離・精製されるものであってよい。
「配列番号:2で表されるアミノ酸配列またはこれと実質的に同一のアミノ酸配列」としては、以下の(a)~(e)が挙げられる:
(a)配列番号:2で示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号:2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加、挿入もしくは置換され、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号:2で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有し、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列;
(d)配列番号1で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列;
(e)配列番号1で示される塩基配列の相補鎖配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列。
具体的には、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトTet 3タンパク質の他の哺乳動物におけるオルソログのアミノ酸配列、または配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトTet 3タンパク質もしくはそのオルソログのスプライスバリアント、アレル変異体もしくは多型バリアントにおけるアミノ酸配列が挙げられる。
ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306-1310(1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444-453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11-17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444-2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
上記(e)におけるストリンジェントな条件とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6,1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50~65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
より好ましくは、「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」として、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と、約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約96%以上、いっそう好ましくは約97%以上、特に好ましくは約98%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質」は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の機能を有するタンパク質である。
ここで「実質的に同質の機能」とは、例えば生理学的に、あるいは薬理学的にみて、その性質が定性的に同じであることを意味し、機能の程度(例、約0.1~約10倍、好ましくは0.5~2倍)や、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。また、Tet3の機能としては、5-メチルシトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)、5-フォルミルシトシン(5fC)または5-カルボキシルシトシン(5CaC)に変換する活性(以下、「5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性」)、滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性等が挙げられ、上記の活性を有するタンパク質を、「実質的に同質の機能を有するタンパク質」とみなすことができる。
ここで、5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性および滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性は、例えば、後述する実施例に記載の通りに測定することができる。
本発明におけるTet3タンパク質として、例えば、(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1~30個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1~30個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1~30個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1~30個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失、付加または置換されている場合、その挿入、欠失、付加または置換の位置は、タンパク質が、5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または滑膜線維芽細胞の浸潤を促進し得る限り、特に限定されない。
ここでアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号:2で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
Tet 3の好ましい例としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(Genbank Accession No.043151)、あるいは他の哺乳動物におけるそのオルソログ、アレル変異体、多型バリアント〔例えば一塩基多型(SNPs)〕などがあげられる。
「Tet 3をコードする核酸」は、上記(a)~(e)で示される、配列番号:2で表されるアミノ酸配列又はこれと実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸を表す。具体的には、以下の(f)~(j):
(f)配列番号:2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(g)配列番号:2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加、挿入もしくは置換され、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(h)配列番号:2で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有し、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(i)配列番号1で示される塩基配列、
(j)配列番号1で示される塩基配列の相補鎖配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
を有する核酸が挙げられる。
尚、ここで遺伝子とは、cDNAもしくはゲノムDNA等のDNA、またはmRNA等のRNAのいずれでもよく、また一本鎖の核酸配列および二本鎖の核酸配列を共に含む概念である。また、本明細書において、配列番号:1等に示される核酸配列は、便宜的にDNA配列であるが、mRNAなどRNA配列を示す場合には、チミン(T)をウラシル(U)として解する。
Tet 3をコードする核酸の好ましい例としては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列からなるヒトTet 3 cDNA(Genbank Accession No.NM_001287491)、あるいは他の哺乳動物におけるそのオルソログ、アレル変異体、多型バリアント〔例えば一塩基多型(SNPs)〕などがあげられる。
本発明は、Tet 3の発現を阻害する物質を含有してなる、関節炎の予防及び/又は治療剤を提供する。
II.Tet 3の発現を阻害する物質
本発明において「Tet3の発現を阻害する物質」とは、Tet3をコードする核酸(Tet3遺伝子)の転写レベル、転写後調節のレベル、Tet 3タンパク質への翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、Tet3の発現を阻害する物質としては、例えば、Tet3遺伝子の転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからTet 3の翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する物質(例、siRNA、リボザイム)、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても好ましく用いることができるが、より好ましくは、以下の(1)~(3)からなる群より選択される物質が例示される。
(1)Tet 3遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸、
(2)Tet 3遺伝子の転写産物に対するリボザイム核酸、
(3)Tet3遺伝子の転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体。
ここで転写産物の好ましい例としては、mRNAが挙げられる。
Tet 3遺伝子のmRNAからTet 3への翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、好ましくは、これらのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸が挙げられる。
Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と実質的に相補的な塩基配列とは、投与対象となる哺乳動物におけるTet 3産生細胞(例、滑膜線維芽細胞、滑膜表層細胞)の生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る(あるいは該標的配列を切断する)程度の相補性を有する塩基配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAの塩基配列と完全相補的な塩基配列(すなわち、mRNAの相補鎖の塩基配列)と、オーバーラップする領域に関して、約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約97%以上の相同性を有する塩基配列である。
本発明における「塩基配列の相同性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
より具体的には、Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列としては、以下の(k)または(l):
(k)配列番号:1で表される塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列;
(l)配列番号:1で表される塩基配列の相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を有するタンパク質をコードする配列と、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列;
が挙げられる。
ストリンジェントな条件は、前述のとおりである。
Tet 3遺伝子のmRNAの好ましい例としては、配列番号:1で表される塩基配列(Genbank Accession No.NM_001287491)を含むヒトTet 3のmRNA、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型バリアント等が挙げられる。
Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と「相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列の一部」とは、Tet 3遺伝子のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害(あるいは該mRNAを分解)し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的もしくは実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上を含むものである。
具体的には、Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸として、以下の(1)~(3)のいずれかのものが好ましく例示される:
(1)Tet 3遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、
(2)Tet 3遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、
(3)Tet 3遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体。
(1)Tet 3遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における「Tet3遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸」とは、該mRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。
アンチセンス核酸は、2-デオキシ-D-リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D-リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN-グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていたりしてよい。
上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、Tet3遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、Tet3遺伝子のcDNA塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてタンパク質:Tet 3への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、Tet 3をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10~約40塩基、特に約15~約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、Tet3遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6-ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、Tet 3遺伝子のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH(2’-O-Me)、CHCHOCH(2’-O-MOE)、CHCHNHC(NH)NH、CHCONHCH、CHCHCN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォメーションはC2’-endo(S型)とC3’-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi,T.et al.,Chem.Commun.,1653-9,2002;Jepsen,J.S.et al.,Oligonucleotides,14,130-46,2004)やENA(Morita,K.et al.,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids,22,1619-21,2003)もまた、好ましく用いられ得る。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Tet 3遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
(2)Tet 3遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイム核酸が挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイム核酸として最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイム核酸は、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。Tet 3遺伝子のmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98(10):5572-5577(2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res.,29(13):2780-2788(2001)]。
(3)Tet 3遺伝子のmRNAに対するsiRNA
本明細書においては、Tet 3遺伝子のmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAもまた、Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature,411(6836):494-498(2001)]、上記のアンチセンス核酸やリボザイムの代替技術として汎用されている。
siRNAは、標的遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、Elbashirら(Genes Dev.,15,188-200(2001))、Teramotoら(FEBS Lett.579(13):p2878-82(2005))の提唱する規則に従って設計することができる。siRNAの標的配列は、原則的には15~50塩基、好ましくは19~49塩基、更に好ましくは19~27塩基の長さを有しており、例えばAA+(N)19(AAに続く、19塩基の塩基配列)、AA+(N)21(AAに続く、21塩基の塩基配列)もしくはA+(N)21(Aに続く、21塩基の塩基配列)であってもよい。
本発明の核酸は、5’または3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常2~4塩基程度であり、siRNAの全長として19塩基以上である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、siRNAは、3’末端に突出部配列(オーバーハング)を有していてもよく、具体的には、dTdT(dTはデオキシリボ核酸のデオキシチミジン残基を表わす)を付加したものが挙げられる。また、末端付加がない平滑末端(ブラントエンド)であってもよい。
また、siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖が異なる塩基数であってもよく、例えば、アンチセンス鎖が3’末端および5’末端に突出部配列(オーバーハング)を有している「aiRNA」を挙げることができる。典型的なaiRNAは、アンチセンス鎖が21塩基からなり、センス鎖が15塩基からなり、アンチセンス鎖の両端で各々3塩基のオーバーハング構造をとる
(Sun,X.ら著、Nature Biotechnology Vol26 No.12 p1379、国際公開第WO2009/029688号パンフレット)。
標的配列の位置は特に制限されるわけではないが、5’-UTRおよび開始コドンから約50塩基まで、並びに3’-UTR以外の領域から標的配列を選択することが望ましい。上述の規則その他に基づいて選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等のホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認する。特異性の確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19-21塩基に相補的な配列およびTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
siRNAおよび/またはshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、Ambionが提供するsiRNA Target Finder
(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)およびpSilencer(登録商標)Expression Vector用インサートデザインツール
(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)、RNAi Codexが提供するGeneSeer
(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)があるがこれらに限定されない。
siRNAを構成するリボヌクレオシド分子もまた、安定性、比活性などを向上させるために、上記のアンチセンス核酸の場合と同様の修飾を受けていてもよい。但し、siRNAの場合、天然型RNA中のすべてのリボヌクレオシド分子を修飾型で置換すると、RNAi活性が失われる場合があるので、RISC複合体が機能できる最小限の修飾ヌクレオシドの導入が必要である。
当該修飾として具体的には、siRNAを構成するヌクレオチド分子の一部を、天然型のDNAや、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を施したRNAに置換することができる(Usman and Cedergren,1992,TIBS 17,34;Usman et al.,1994,Nucleic Acids Symp.Ser.31,163を参照)。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、siRNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH(2’-O-Me)、CHCHOCH(2’-O-MOE)、CHCHNHC(NH)NH、CHCONHCH、CHCHCN等)、フッ素原子(-F)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。その他上記(1)に記載されたアンチセンス核酸における修飾方法を用いることができる。あるいは、siRNAにおけるRNAの一部をDNAに置換する化学修飾(2’-デオキシ化、2’-H)を施してもよい。また、糖(リボース)の2’位と4’位を-O-CH-で架橋しコンフォメーションをN型に固定した人工核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)を用いてもよい。
また、siRNAを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖は、リンカーを介し、細胞表層に存在する受容体を特異的に認識するリガンド、ペプチド、糖鎖、抗体、脂質や正電荷や分子構造的に細胞膜表層に吸着し貫通するオリゴアルギニン、Tatペプチド、RevペプチドまたはAntペプチドなどと化学結合していてもよい。
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90~約95℃で約1分程度変性させた後、約30~約70℃で約1~約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これを、ダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
本明細書においては、生体内でTet3遺伝子のmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5~25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製することができる。shRNAを発現するベクターには、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成するというものである。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成するというものである。プロモーターとしては、polII系プロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター)を使用することもできるが、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列が用いられる。
このようにして構築したsiRNAもしくはshRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入する。このようなベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどが用いられる。
上記siRNAは、ヌクレオチド配列の情報に基づいて、例えば394 Applied Biosystems,Inc.合成機等のDNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って化学的に合成することができる。例えば、Caruthers et al.,1992,Methods in Enzymology 211,3-19、Thompson et al.,国際公開99/54459、Wincott et al.,1995,Nucleic Acids Res.23,2677-2684、Wincott et al.,1997,Methods Mol.Bio.,74,59、Brennan et al.,1998,Biotechnol Bioeng.,61,33-45、Usman et al.,1987
J.Am.Chem.Soc.,109,7845、Scaringe et al.,1990 Nucleic Acids Res.,18,5433、および米国特許第6001311号に記載される方法等が挙げられる。具体的には、当業者に公知の核酸保護基(例えば5’末端にジメトキシトリチル基)およびカップリング基(例えば3’末端にホスホルアミダイト)を用いて合成できる。すなわち、5’末端の保護基を、TCA(トリクロロ酢酸)等の酸で脱保護し、カップリング反応を行う。ついでアセチル基でキャッピングを行った後、次の核酸の縮合反応を行う。修飾されたRNAやDNAを含むsiRNAの場合には、原料として修飾されたRNA(例えば、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド)を用いればよく、カップリング反応の条件は適宜調整できる。また、リン酸結合部分が修飾されたホスホロチオエート結合を導入する場合には、ボーケージ試薬(3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド)を用いることができる。
あるいは、オリゴヌクレオチドは、別々に合成し、合成後に例えばライゲーションにより一緒につなげてもよいし(Moore et al.,1992,Science 256,9923;Draper et al.国際公開WO93/23569;Shabarova et al.,1991,Nucleic Acids Research 19,4247;Bellon et al.,1997,Nucleosides&Nucleotides,16,951:Bellon et al.,1997,Nucleosides&Nucleotides,Bellon et al.,1997,Bioconjugate Chem.8,204)、または合成および/または脱保護の後にハイブリダイゼーションにより、一緒につなげてもよい。siRNA分子はまたタンデム合成法により合成することができる。すなわち、両方のsiRNA鎖を、切断可能なリンカーにより分離された単一の連続するオリゴヌクレオチドとして合成し、次にこれを切断して別々のsiRNAフラグメントを生成し、これをハイブリダイズさせて精製する。リンカーはポリヌクレオチドリンカーであっても非ヌクレオチドリンカーであってもよい。
合成したsiRNA分子は、当業者に公知の方法を用いて精製できる。例えばゲル電気泳動により精製する方法、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製する方法が挙げられる。
本発明において、Tet 3遺伝子に対するsiRNAを構成するTet 3遺伝子のmRNAに相補的なオリゴRNAおよびその相補鎖としては、それぞれ配列番号:3を含む配列および配列番号:4を含む配列が挙げられ、好ましくは、それぞれ配列番号:3からなる配列および配列番号:4からなる配列が挙げられる。
Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の別の好ましい例として、該mRNAを標的とするmicro RNA(miRNA)が挙げられる。ヒトTet 3 mRNAを標的とするヒトmiRNAとしては、例えば、hsa-miR-22,hsa-miR-26a、hsa-miR-301a,hsa-miR-301b,hsa-miR-372,hsa-miR-29c,hsa-miR-29a,hsa-miR-29b,hsa-miR-374b,hsa-miR-374a等が挙げられる。miRNAも、上述のsiRNAについて記載した方法に準じて調製することができる。
Tet 3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で提供されたり、他の分子が付加された形態で提供されうる。付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大させたりするような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
これらの核酸のTet 3発現阻害活性は、Tet 3をコードする核酸を導入した形質転換体、生体内や生体外のTet 3遺伝子発現系、または生体内や生体外のTet 3タンパク質の翻訳系を用いて調べることができる。
本発明におけるTet3の発現を阻害する物質は、上記のようなTet3遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に限定されず、Tet 3の産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。そのような物質は、例えば、後述する本発明のスクリーニング方法により取得することができる。
Tet 3の発現を阻害する物質は、Tet 3の有する5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化活性または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を抑制する活性を示すことから、関節炎の予防及び/又は治療に有用である。
従って、Tet 3の発現を阻害する物質を含有する医薬は、関節炎の予防及び/又は治療剤として使用することができる。
III.アンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNAおよびその前駆体を含有する医薬
Tet 3遺伝子の転写産物に相補的に結合し、該転写産物からのタンパク質の翻訳を抑制することができる本発明のアンチセンス核酸や、Tet 3遺伝子の転写産物(mRNA)と相同な(もしくは相補的な)塩基配列を有し、当該転写産物を標的として該転写産物を切断し得るsiRNA(もしくはリボザイム)、さらに該siRNAの前駆体であるshRNAなど(以下、包括的に「本発明の核酸」という場合がある)は、生体内におけるTet3の発現を抑制し、5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または滑膜線維芽細胞の浸潤の促進活性を抑制するので、関節炎の予防及び/又は治療剤として使用することができる。
本発明の核酸を含有する医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
本発明の核酸を上記の関節炎の予防及び/又は治療剤として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。即ち、本発明の核酸を、単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可能な態様で挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
本発明の核酸は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の核酸と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の核酸を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記核酸を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。本発明の核酸は、例えば、投薬単位剤形当たり通常5~500mg、とりわけ注射剤では5~100mg、その他の剤形では10~250mg含有されていることが好ましい。
本発明の核酸を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、関節リウマチの治療・予防のために使用する場合には、本発明の核酸を1回量として、通常0.01~20mg/kg体重程度、好ましくは0.1~10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1~5mg/kg体重程度を、1日1~5回程度、好ましくは1日1~3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
なお前記した各組成物は、本発明の核酸との配合により好ましくない相互作用を生じない限り適宜他の活性成分を含有してもよい。
上述のTet 3に対するアンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNAおよびその前駆体を含有する医薬や、Tet 3の発現を抑制する低分子化合物等を含有する医薬組成物は、関節炎の治療、予防、または進行防止に用いることができる。関節炎として、具体的には、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎(例えば、強直性脊椎炎など)などが挙げられ、好ましくは、関節リウマチが挙げられる。また、Tet 3がその病態の増悪に関与しているいかなる疾患も、本発明の対象疾患に包含される。
上述のTet 3に対するアンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNAおよびその前駆体を含有する医薬や、Tet 3の発現を抑制する低分子化合物等を含有する医薬組成物を関節炎の治療または予防に使用する場合には、単独で使用してもよいが、1種または2種以上の抗炎症作用を有する薬剤と併用してもよい。
併用する薬剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メサラジン、副腎皮質ステロイド(例、ベタメタゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン等)、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs;例、サリチル酸系、アントラニル酸系、アリール酸系、プロピオン酸系、オキシカム系、ピリン系)、抗TNFα抗体(インフルキシマブ、アダリムマブ)、抗リウマチ薬(例、アクタリット等の免疫調節薬、メトトレキサート等の免疫抑制薬、抗TNFα抗体やエタネルセプト等の生物学的製剤)などが挙げられる。
IV.疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
上述の通り、Tet 3の発現及び/又は機能を阻害すると、5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化が抑制され、活性化された滑膜線維芽細胞の最も重要な攻撃的な表現型の一つである浸潤能が抑制される。このことは、Tet3の選択的阻害は、DNAメチル化レベルの維持を介してCCL2やICAM1の発現を阻害し、それに伴って浸潤性に代表される滑膜線維芽細胞の活性化を阻害することによって、関節炎の治療につながることを意味する。従って、Tet 3の発現及び/又は機能を阻害する化合物は、関節炎の予防及び/又は治療剤として使用することができる。
したがって、Tet 3を産生する細胞は、Tet 3(又はTet 3遺伝子)の発現量及び/又は機能を指標とすることにより、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニングのためのツールとして用いることができる。
Tet 3の発現又は機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合、該スクリーニング方法は、Tet 3を産生する能力を有する細胞を、被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下におけるTet 3の発現量又は機能の程度を比較することを含む。また、Tet 3の機能を阻害する化合物は、精製したTet 3タンパク質への結合能を試験することによっても、スクリーニングすることができる。
上記のスクリーニング方法において用いられるTet 3を産生する能力を有する細胞としては、それらを生来発現しているヒトもしくは他の哺乳動物細胞(例:滑膜線維芽細胞、滑膜表層細胞等)またはそれを含む生体試料(例:滑膜(特に滑膜表層細胞層)等)であれば特に制限はない。非ヒト動物由来の滑膜等の場合は、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体自体に被検物質を投与し、一定時間経過後にそれら生体試料を単離してもよい。
また、Tet 3を産生する能力を有する細胞としては、公知慣用の遺伝子工学的手法により作製された各種の形質転換体も使用することができる。宿主としては、例えば、H4IIE-C3細胞、HepG2細胞、HEK293細胞、COS7細胞、CHO細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。
具体的には、Tet3をコードするDNA(即ち、配列番号:1で表される塩基配列または該塩基配列に対し相補性を有する塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同質の機能を有するポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNA)を、適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結して宿主動物細胞に導入することにより調製することができる。
Tet 3をコードする遺伝子の調製方法について、以下に説明する。
Tet 3をコードする遺伝子は、通常の遺伝子工学的方法(例えば、Sambrook J.,Frisch E.F.,Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載されている方法)に準じて取得することができる。すなわち、Tet 3をコードするDNAは、例えば、配列番号:1で表される塩基配列に基づいて、適当なオリゴヌクレオチドをプローブもしくはプライマーとして合成し、前記したTet 3を産生する細胞・組織由来のcDNAもしくはcDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーション法やPCR法を用いてクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(上記)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
次いで、得られたTet3遺伝子を用いて、通常の遺伝子工学的方法に準じてTet3タンパク質を発現する細胞を製造・取得することができる。
例えば、Tet 3遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、さらに形質転換された宿主細胞(形質転換体)を培養することでTet 3タンパク質を発現する細胞を取得すればよい。上記プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自律的に複製できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーをもつ発現ベクターに、Tet 3をコードする遺伝子が導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
例えば、大腸菌での発現に使用される発現ベクターは、lac、trp、tacなどのプロモーターを含む発現ベクターであって、これらはファルマシア社、タカラバイオ等から市販されている。当該発現ベクターにTet 3をコードする遺伝子を導入するために用いられる制限酵素もタカラバイオ等から市販されている。さらなる高発現を導くことが必要な場合には、Tet 3をコードするDNAの上流にリボソーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボソーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20,p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms,p202,講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
また、動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどを用いることもできる。プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、βアクチン遺伝子プロモーター、aP2遺伝子プロモーターなどが用いられる。なかでも、EF-αプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。
選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
上記したTet 3をコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換することにより、Tet 3発現細胞を製造することができる。
宿主細胞としては、原核生物もしくは真核生物である微生物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞等を挙げることができる。哺乳動物細胞としては、例えば、HepG2細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、ヒトFL細胞、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞、ラットH4IIE-C3細胞、ラットGH3細胞などが用いられ得る。
前記のようにして得られたプラスミドは、通常の遺伝子工学的方法により前記宿主細胞に導入することができる。形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
形質転換は、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより行うことができる。例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法を用いることができる。
上記のようにして得られる形質転換細胞や生来Tet 3を産生する能力を有する哺乳動物細胞または該細胞を含む組織・臓器は、例えば、約5~20%の胎仔牛血清を含む最小必須培地(MEM) 〔Science,122巻,501(1952)〕、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔Virology,8巻,396(1959)〕、RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199巻,519(1967)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などの培地中で培養することができる。培地のpHは約6~8であるのが好ましい。培養は通常約30~40℃で行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
Tet 3タンパク質の取得は、一般のタンパク質の単離・精製に通常使用される方法を組み合わせて実施すればよい。例えば、前記の培養により得られた形質転換体を遠心分離などで除去し、培養上清からTet3を前記と同様にして精製してもよい。また、Tet 3タンパク質が前記の培養により得られた形質転換体の細胞内に蓄積する場合には、例えば、該形質転換体を遠心分離等で集めた後、細胞を破砕または溶解せしめ、必要であればタンパク質の可溶化を行い、イオン交換、疎水、ゲルろ過等の各種クロマトグラフィーを用いた工程を単独で、若しくは組み合わせることにより精製すればよい。精製されたタンパク質の高次構造を復元する操作をさらに行ってもよい。
本発明のスクリーニングを実施するに当たり、被検物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
また、Tet 3もしくはTet 3遺伝子の発現量を低下させる物質、またはTet 3の機能を低下させる物質を選択する際に、被検物質を接触させない対照細胞を比較対照として用いることもできる。ここで「被検物質を接触させない」とは、被検物質の代わりに被検物質と同量の溶媒(ブランク)を添加する場合や、Tet 3もしくはTet 3遺伝子の発現量またはTet 3の機能に影響を与えないネガティブコントロール物質を添加する場合も含まれる。
被検物質の上記細胞との接触は、例えば、上記の培地や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被検物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被検物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM~約100μMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分~約24時間が挙げられる。
Tet 3を産生する細胞が、非ヒト哺乳動物個体の形態で提供される場合、該動物個体の状態は特に制限されないが、例えば、薬剤もしくは遺伝子改変により関節炎を誘起した関節炎モデル動物(例えば、コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウス、SKGマウス、PD-1ノックアウトマウス、K/BxNマウス、シノビオリンTgマウス等のRAモデル動物など)であってもよい。使用される動物の飼育条件に特に制限はないが、SPFグレード以上の環境下で飼育されたものであることが好ましい。被検物質の該細胞との接触は、該動物個体への被検物質の投与によって行われる。投与経路は特に制限されないが、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、経口投与、気道内投与、直腸投与等が挙げられる。投与量も特に制限はないが、例えば、1回量として約0.5~20mg/kgを、1日1~5回、好ましくは1日1~3回、1~14日間投与することができる。
あるいは、上記のスクリーニング方法は、Tet 3を産生する能力を有する細胞に代えて、該細胞の抽出液、あるいは該細胞から単離精製したTet 3に、被検物質を接触させることにより行うこともできる。
(Tet 3遺伝子またはTet 3の発現量の測定)
本発明は、Tet 3を産生する能力を有する細胞における該タンパク質(遺伝子)の発現を、被検物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。本方法において用いられる細胞、被検物質の種類、被検物質と細胞との接触の態様などは、上記と同様である。
Tet 3の発現量は、前記したTet 3をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸、即ち、配列番号:1で表される塩基配列もしくはそれと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸(DNA)(以下、「本発明の検出用核酸」という場合がある)を用いて、Tet 3遺伝子のmRNAを検出することにより、RNAレベルで測定することができる。あるいは、該発現量は、前記したTet 3に対する抗体(以下、「本発明の検出用抗体」という場合がある)を用いて、これらのタンパク質を検出することにより、タンパク質レベルで測定することもできる。
従って、より具体的には、本発明は、
(a)Tet 3を産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質をコードするmRNAの量を、本発明の検出用核酸を用いて測定、比較することを特徴とする、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法、および
(b)Tet 3を産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質の量を、本発明の検出用抗体を用いて測定、比較することを特徴とする、関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法を提供する。
すなわち、Tet 3の発現量を変化させる物質のスクリーニングは、以下のようにして行うことができる。
(i)正常あるいは疾患モデル(例えば、RAモデル動物など)非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して被検物質を投与し、一定時間経過した後(30分後~3日後、好ましくは1時間後~2日後、より好ましくは1時間後~24時間後)に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、滑膜等)、あるいは臓器から単離した組織または細胞を得る。
Tet 3のmRNAは、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出して定量することができ、あるいは自体公知のノーザンブロット解析により定量することもできる。一方、Tet 3のタンパク質量は、ウェスタンブロット解析や以下に詳述する各種イムノアッセイ法を用いて定量することができる。
(ii)Tet 3遺伝子を発現する細胞(例えば、滑膜線維芽細胞、滑膜表層細胞、Tet3を導入した形質転換体)を上記の方法に従って作製し、常法に従って培養する際に被検物質を培地もしくは緩衝液中に添加し、一定時間インキュベート後(1日後~7日後、好ましくは1日後~3日後、より好ましくは2日後~3日後)、該細胞中に含まれるTet3あるいはそれをコードするmRNAを、上記(i)と同様にして定量、解析することができる。
Tet3遺伝子(mRNA)の発現レベルの検出および定量は、前記細胞から調製したRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを用いて、ノーザンブロット法、RT-PCR法など公知の方法で実施できる。具体的には、Tet 3遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/またはその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いることによって、RNA中のTet 3遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。そのようなプローブもしくはプライマーは、Tet 3遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3(http://primer3.sourceforge.net/)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合、前記プライマーもしくはプローブを放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした細胞由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された前記プライマーもしくはプローブ(DNAまたはRNA)とRNAとの二重鎖を、前記プライマーもしくはプローブの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルとして放射線検出器(BAS-1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System(Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従って前記プローブを標識し、細胞由来のRNAとハイブリダイズさせた後、前記プローブの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
RT-PCR法を利用する場合は、細胞由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的のTet 3遺伝子の領域が増幅できるように、Tet 3遺伝子の配列に基づき調製した一対のプライマー(上記cDNA(-鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した前記プライマーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents(Applied Biosystems社製)で該プロトコールに従ってRT-PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
また、Tet 3の発現量を変化させる物質のスクリーニングは、Tet 3遺伝子の転写調節領域を用いたレポーター遺伝子アッセイで行うことも可能である。ここで、「転写調節領域」とは、通常、当該染色体遺伝子の上流数kbから数十kbの範囲を指し、例えば、(i)5’-レース法(5’-RACE法)(例えば、5’-full Race Core Kit(タカラバイオ社製)等を用いて実施されうる)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’-上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することが出来る。
Tet 3遺伝子の転写調節領域の下流に機能可能な形でレポータータンパク質をコードする核酸(以下、「レポーター遺伝子」という)を連結して、レポータータンパク質発現ベクターを構築する。該ベクターは当業者に公知の方法で調製すればよい。すなわち、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition」(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols In Molecular Biology」(1987),John Wiley & Sons,Inc.等に記載される通常の遺伝子工学的手法に従って切り出されたTet 3遺伝子の転写調節領域を、レポーター遺伝子を含むプラスミド上に組み込むことができる。
レポータータンパク質としては、β-グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(GAS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)等が挙げられる。
調製したTet 3遺伝子の転写調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を、通常の遺伝子工学的手法を用いて、当該レポーター遺伝子を導入する細胞において使用可能なベクターに挿入し、プラスミドを作製し、適当な宿主細胞へ導入することができる。ベクターに搭載される選択マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、安定な形質転換細胞を得ることができる。あるいは、Tet 3遺伝子の転写調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子は、宿主細胞内に一過的に発現させてもよい。
また、レポーター遺伝子の発現量を測定する方法としては、個々のレポーター遺伝子に応じた方法を利用すればよい。例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いる場合には、前記形質転換細胞を数日間培養後、当該細胞の抽出物を得、次いで当該抽出物をルシフェリンおよびATPと反応させて化学発光させ、その発光強度を測定することによりプロモーター活性を検出することができる。この際、ピッカジーンデュアルキット(登録商標;東洋インキ製)等の市販のルシフェラーゼ反応検出キットを用いることができる。
Tet 3のタンパク質量の測定方法としては、具体的には、例えば、
(i)本発明の検出用抗体と、試料液および標識化されたTet3とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたタンパク質を検出することにより試料液中のTet3を定量する方法や、
(ii)試料液と、担体上に不溶化した本発明の検出用抗体および標識化された別の本発明の検出用抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、試料液中のTet 3を定量する方法等が挙げられる。
Tet 3のタンパク質発現レベルの検出および定量は、Tet3を認識する抗体を用いたウェスタンブロット法等の公知方法に従って定量できる。ウェスタンブロット法は、一次抗体としてTet 3を認識する抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAI-1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体としてTet 3を認識する抗体を用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)を利用して該プロトコールに従って検出し、マルチバイオメージャーSTORM860(アマシャム ファルマシアバイオテク社製)で測定することもできる。
上記の抗体は、その形態に特に制限はなく、Tet 3を免疫原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であってもよく、さらにはTet 3を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体を用いることもできる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.12~11.13)。
上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はTet 3の異なる部分を認識するものであることが望ましい。例えば、一方の抗体がTet 3のN端部を認識する抗体であれば、他方の抗体として該タンパク質のC端部と反応するものを用いることができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
本発明の検出用抗体を用いるTet 3の定量法は、特に制限されるべきものではなく、試料液中の抗原量に対応した、抗体、抗原もしくは抗体-抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられる。感度、特異性の点で、例えば、後述するサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明の検出用抗体に試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明の検出用抗体を反応させた(2次反応)後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のTet 3を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明の検出用抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、試料液中のTet 3と標識したTet 3とを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定することにより、試料液中のTet 3を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか(直接法)、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる(間接法)固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、試料液中のTet 3と固相化したTet 3とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するか、あるいは試料液中のTet 3と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化したTet 3を加えて未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し試料液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。試料液中のTet 3の量がわずかであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてTet 3の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書Vol.73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書Vol.74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書Vol.84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書Vol.92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書Vol.121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の検出用抗体を用いることによって、細胞におけるTet3の量を感度よく定量することができる。
例えば、上記スクリーニング法において、被検物質の存在下におけるTet 3の発現量(mRNA量またはタンパク質量)が、被検物質の非存在下における場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害された場合、該被検物質を、Tet 3の発現阻害物質、従って、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択することができる。
あるいは、上記スクリーニング法において、Tet 3遺伝子を発現する細胞に代えて、Tet3遺伝子の内在の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む細胞を用いることができる。このような細胞は、Tet 3遺伝子の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼ、GFPなど)を導入したトランスジェニック動物の細胞、組織、臓器もしくは個体であってもよい。かかる細胞を用いる場合には、Tet 3の発現量は、レポーター遺伝子の発現レベルを、常法を用いて測定することにより評価することができる。
(Tet 3の機能の測定)
本発明のスクリーニング方法は、被検物質がTet 3の機能を阻害するか否かを指標として行うこともできる。
Tet 3は脱メチル化タンパク質であるので、Tet 3タンパク質に結合能を有する物質は、脱メチル化活性を抑制することにより、Tet 3の機能を阻害し得ると考えられる。従って、Tet 3への結合能を指標として、Tet 3の機能阻害物質の候補をスクリーニングすることができる。
例えば、被検物質をウェルプレートの各ウェルに吸着させ、適当な標識剤で標識したTet 3溶液を各ウェルに添加してインキュベートした後液相を除き、洗浄後に固相に結合した標識量を測定することにより、Tet 3との結合能を有する被検物質を検出することができる。Tet 3を直接標識する代わりに、標識した抗Tet 3抗体を用いて固相に結合したTet 3を検出することもできる。あるいは、Tet 3を固定化した担体(例、アフィニティーカラム)に被検物質の溶液を通し、該担体に保持された被検物質を、Tet 3との結合能を有する物質、即ち関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択することもできる。
このようにして得られた候補物質が実際に抗炎症作用を有するか否かは、該候補物質を関節炎モデルに適用し、該モデルにおける炎症反応を抑制するか否かを検定することにより確認することができる。そのような関節炎モデルとしては、in vivo及びin vitroのモデルを用いることができる。in vivoモデルとしては、例えばCIAモデル(完全フロイントアジュバントとエマルジョン化したII型コラーゲンで非ヒト動物を免疫することにより調製することができる)、CAIAモデル(II型コラーゲンのCB11内のエピトープを認識するモノクローナル抗体カクテルを非ヒト動物に注射することにより調製することができる)等のRAモデル等を用いることができるが、これらに限定されない。一方、in vitroモデルとしては、関節炎における標的細胞(例えば、RAにおける滑膜細胞等)の培養系(例えば、RA患者の滑膜組織由来の滑膜線維芽細胞の培養系等)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらのin vitroモデルは、必要に応じてTNFα等の炎症性サイトカイン等による刺激、あるいは単球、マクロファージ、好中球等の炎症性サイトカイン産生細胞との複合培養(例えば、トランスウェルTM培養システム等を用い、上部コンパートメントに標的細胞(例、滑膜線維芽細胞)、下部コンパートメントに炎症性サイトカイン産生細胞(マクロファージ様のTHP-1細胞、RAW264.7細胞)をそれぞれ単層培養する培養系)などにより、炎症反応を惹起することができる。
候補物質が抗炎症作用を有するか否かは、上記の関節炎モデルにおける炎症反応が候補物質の添加により抑制されたか否かにより判定することができる。例えば、上記のRAモデル動物であれば、滑膜炎、炎症細胞浸潤の程度、リウマトイド因子の有無などを指標にして、関節炎治療効果の有無及び/又はその程度を判定することができる。一方、in vitro関節炎モデルである滑膜線維芽細胞の単層培養系を用いた場合、後述の実施例の通り、ゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化の程度またはscratch assayの結果を指標にして炎症反応の程度を評価することができる。
本発明のさらに別の実施態様においては、上記in vitro関節炎モデルを用いて、Tet 3の機能を阻害して関節炎の予防及び/又は治療効果を示す物質を、ワンステップでスクリーニングすることもできる。当該方法は以下の(1)~(3)の工程を含む。
(1)滑膜線維芽細胞を、被検物質に接触させる工程、
(2)前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性の程度を測定する工程、
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化または浸潤性を抑制した被検物質を、関節炎の予防及び/又は治療薬の候補として選択する工程。
当該方法は、必要に応じて、上記工程(1)と同時もしくはその前後において、炎症を惹起する工程をさらに含み得る。炎症を惹起する方法としては、例えば、TNFα等の炎症性サイトカイン等による刺激、あるいは単球、マクロファージ、好中球等の炎症性サイトカイン産生細胞との複合培養等が挙げられる。好ましい一実施態様においては、例えば、トランスウェルTM培養システム等を用い、上部コンパートメントに標的細胞(例、滑膜線維芽細胞)、下部コンパートメントに炎症性サイトカイン産生細胞(マクロファージ様のTHP-1細胞、RAW264.7細胞)をそれぞれ単層培養する方法が挙げられる。被検物質は通常、下部コンパートメントの培地に添加されるが、例えば、腸管吸収されてTet 3の機能を阻害し得る食品中に含有される成分や、経口投与可能なTet 3機能阻害薬をスクリーニングすることを目的とする場合等においては、上部コンパートメントの培地に被検物質が添加され得る。
細胞のゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化の程度の測定は、前記細胞から調製したゲノムDNAを用いて、5hmCや5mCを認識する抗体を用いたウェスタンブロット法等の公知方法に従って定量できる。本スクリーニング方法に用いるウェスタンブロット法は、前記のTet 3タンパク質の測定方法に記載のウェスタンブロット法と同様であってよい。5hmCや5mCを認識する抗体は、その形態に特に制限はなく、5hmCや5mCを免疫原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であってもよい。
また、細胞の浸潤性の程度の測定は、例えば、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。具体的には、被験物質に接触させた細胞または接触させていない細胞を培地(10%FCS含有DMEM(必要に応じて炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)を含有してもよい))で培養(例えば96時間)後、細胞が接着した培養皿の表面を擦過し、再度培養しながら、細胞が擦過表面に浸潤する細胞数を測定することによって、細胞の浸潤性の程度の測定・比較することができる。
本発明の上記いずれかのスクリーニング方法を用いて得られる、Tet 3の発現または機能を阻害する物質は、炎症性疾患の予防及び/又は治療用の医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物を上述の予防・治療剤として使用する場合、上記Tet 3の発現または機能を阻害する低分子化合物と同様に製剤化することができ、同様の投与経路および投与量で、ヒトまたは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して、経口的にまたは非経口的に投与することができる。
V.疾病に対する検査方法
上述の通り、関節リウマチ患者由来の滑膜表層細胞層や炎症性サイトカインで刺激した、関節リウマチ患者由来の滑膜線維芽細胞では、Tet 3の発現レベルが高いことを見出した。
したがって、被験者由来の試料のTet 3(又はTet 3遺伝子)の発現量を指標とすることにより、関節炎を検査することができる。
本発明は、被験者由来の試料から、Tet3の検出物質を用いてTet 3遺伝子の転写産物または翻訳産物を検出または定量することを含む、関節炎の検査方法を提供する。Tet3の検出物質としては、具体的には、以下の(a)または(b)が挙げられる:
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体。
関節炎としては、具体的には、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎(例えば、強直性脊椎炎など)などが挙げられ、好ましくは、関節リウマチが挙げられる。
本発明の検査方法に用いられる試料としては、検査対象である被験者から分離されるものであって、検出または定量する対象であるTet3遺伝子産物(例、RNA、タンパク質、その分解産物など)を含有し得る組織または細胞等であれば特に制限されない。例えば、滑膜、滑膜線維芽細胞、滑膜表層細胞などが挙げられる。
被験者から分離した試料におけるTet 3の検出または定量は、該被験者からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれるTet 3遺伝子の転写産物を検出または定量することにより調べることができる。
従って、一実施態様において、本発明の検査方法は、Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマーを用いて測定することを特徴とする。
RNA画分の調製は、グアニジン-CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができるが、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit;QIAGEN製等)を用いて、微量検体から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することができる。RNA画分中のTet 3遺伝子の転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット、DNAチップ解析等)を用いる方法、あるいはPCR(RT-PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)を用いる方法などが挙げられる。微量検体から迅速且つ簡便に定量性よくTet 3遺伝子の発現変動を検出できる点で競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が好ましい。
Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマーおよび該核酸プローブまたは核酸プライマーを用いたハイブリダイゼーション方法は、前記の本発明の関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法において記載した本発明の検出用核酸およびハイブリダイゼーション方法と同様であってよい。
あるいは、被験者から分離した試料におけるTet 3の検出または定量は、該検体からタンパク質画分を調製し、該画分中に含まれる該遺伝子の翻訳産物(即ち、Tet3タンパク質)を検出または定量することにより調べることができる。Tet3の検出または定量は、Tet 3タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的測定法(例:ELISA、FIA、RIA、ウェスタンブロット等)によって行うこともできる。
従って、一実施態様において、本発明の検査方法は、Tet 3の翻訳産物を特異的に検出し得る抗体を用いて測定することを特徴とする。
Tet 3の翻訳産物を特異的に認識する抗体および該抗体を用いた免疫学的測定方法は、前記の本発明の関節炎の予防及び/又は治療薬のスクリーニング方法において記載した本発明の検出用抗体および免疫学的測定方法と同様であってよい。
本発明の関節炎の検査方法において、Tet 3の検出又は定量により、関節炎の検査を行うことができる。具体的には、以下の工程を含む方法であってよい。
(1)対照群および被験者から分離した試料についてTet 3を検出または定量する工程、
(2)対照群で検出または定量されたTet3と被験者で検出または定量されたTet3を比較する工程。
後述の実施例に示されるように、変形性関節症患者(対照群)と比較して関節リウマチを発症した患者において滑膜中のTet3濃度が高い。関節炎の検査は、Tet3の濃度と関節炎への罹患率との間のこのような正の相関に基づき行われる。
例えば、関節炎を発症していない対照群及び被験者からの試料におけるTet 3の濃度を定量し、被験者からの試料におけるTet 3の濃度を、対照群からの試料におけるTet 3の濃度と比較する。あるいは、Tet 3の濃度と関節炎の発症の有無との相関図をあらかじめ作成しておき、被験者におけるTet 3濃度をその相関図と比較してもよい。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
そして、被験者においてTet 3が、対照群に比べて高値で検出若しくは定量された場合には、上記のような関節炎を発症している可能性が高いと判断することができる。従って、本発明の検査方法は、上記(1)、(2)の工程に加えて、(3)被験者においてTet3が、対照群に比べて高値で検出若しくは定量された場合には、関節炎を発症していると判断する工程を含んでもよい。
さらに、本発明は、関節炎検査用のキット(診断剤)にも及ぶ。本発明の関節炎検査用キットは、上述の本発明の検査方法を簡便に実施するためのキットであればよく、特に限定されない。該検査するためのキットは、
(a)Tet 3遺伝子の転写産物を特異的に検出し得る核酸プローブまたは核酸プライマー、および/または
(b)Tet 3遺伝子の翻訳産物を特異的に認識する抗体
を含有してなる。該判定するためのキットが2以上の上記核酸および/または抗体を含む場合、各核酸または抗体は互いにTet 3遺伝子の塩基配列上の異なる部分を特異的に認識、またはTet 3遺伝子の翻訳産物の異なるエピトープを特異的に認識し得るものである。
本発明のキットが前記(a)の核酸を含有する試薬を構成として含む場合、該核酸としては、本発明の検査方法において前記したプローブ用核酸もしくはプライマー用オリゴヌクレオチドが挙げられる。
Tet 3遺伝子の発現を検出し得る核酸は、乾燥した状態もしくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水もしくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、該核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。
あるいは、該核酸は、適当な固相に固定化された状態で提供することもできる。固相としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、固相上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で固相と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、固相をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
該検査するためのキットに含有される核酸は、同一の方法(例:ノーザンブロット、ドットブロット、DNAアレイ技術、定量RT-PCR等)によりTet 3遺伝子の発現を検出し得るように構築されていることが特に好ましい。
本発明のキットが前記(b)の抗体を含有する試薬を構成として含む場合、該抗体としては、本発明の検査方法において前記した抗体が挙げられる。
本発明のキットを構成する試薬は、Tet 3遺伝子の発現を検出し得る核酸や抗体に加えて、該遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質であって、共存状態で保存することにより反応に悪影響を及ぼさない物質をさらに含有することができる。あるいは、該試薬は、Tet 3遺伝子の発現を検出するための反応において必要な他の物質を含有する別個の試薬とともに提供されてもよい。例えば、Tet3遺伝子の発現を検出するための反応がPCRの場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、dNTPs、耐熱性DNAポリメラーゼ等が挙げられる。競合PCRやリアルタイムPCRを用いる場合は、competitor核酸や蛍光試薬(上記インターカレーターや蛍光プローブ等)などをさらに含むことができる。また、Tet 3遺伝子の発現を検出するための反応が抗原抗体反応の場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、competitor抗体、標識された二次抗体(例えば、一次抗体がウサギ抗ヒトTet 3抗体の場合、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等で標識されたマウス抗ウサギIgGなど)、ブロッキング液等が挙げられる。
以下の実施例は、単に本発明をより具体的に例示するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0009】
(実施例1)滑膜におけるTetタンパク質ファミリーの発現レベル
Tetタンパク質ファミリーとしてはTet 1,Tet 2,Tet 3の3種類のサブタイプが存在し、細胞ごとに発現レベルが異なること、またそれぞれが標的にする遺伝子座が異なることが知られる。そのため、まずは関節リウマチ(RA)患者、対照となる変形性関節症(OA)患者由来の滑膜における、Tetタンパク質ファミリーの発現レベルを免疫組織化学染色法によって調べた。滑膜は関節手術の際に得られた滑膜組織の一部を凍結保存して後に組織切片を作成した。抗体はGoat-anti-human TET1 Ab(Santa Cruz biotech,sc-1634443),mouse anti-human TET2 Ab(sc-136926),rabbit anti-huuman TET3 Ab(sc-139186),rabbit anti-5-hydroxymethylcytosine(5-hmC)polyclonal Ab(ActiveMotif),rabbit anti-5-methylcytosine(5-mC)polyclonal Ab(ActiveMotif)を用い、二重染色にはmouse monoclonal anti-CD55 Ab(ab89190)、mouse monoclonal anti-CD68 Ab(ab74704)、2次抗体としてはMACH 2 double stain 2(mouse-HRP + rabbit-AP)を使用した。観察にはBIOREVO(keyence,Japan)を使用した。
その結果、OA、RAともにTet 1、Tet 2の発現レベルには差が認められず、Tet 3は滑膜表層細胞層において、OAよりもRAで強い発現が認められた(図1~3)。
また、RA、OA由来の滑膜におけるDNAメチル化レベルおよびTetタンパク質ファミリーによる脱メチル化レベルを調べるために、5-メチルシトシン(5mC)および5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を免疫組織化学染色した。
その結果、RA、OA共に、5mCのレベルは低く、5hmCのレベルは中等度で滑膜表層でより強い印象であった(図1、2)。
(実施例2)滑膜線維芽細胞(FLS)におけるTetタンパク質ファミリーの発現レベル
継代培養したFLSではすでに炎症性サイトカインの直接的な影響はないが、RA特有のDNAメチル化プロファイルは保たれている(Nakano K et al.Ann Rheum Dis 2013)。そこで、炎症性サイトカイン非存在下で培養した場合のTetファミリーの発現レベル(mRNA、タンパク質)を、RA、OA、健常人由来FLSで比較した。FLSとしては、実施例1の滑膜組織にコラゲナーゼ処理を加えて抽出した滑膜細胞を4-6継代して、99%以上の純度が確認されたFLSを用いた。mRNAの発現はStepOnePlusTMを使用してリアルタイムPCRで解析した。primer/probeはTaqMan Gene Expression AssaysのTET1(Hs00286756_m1),TET2(Hs00325999_m1),TET3(00379125_m1)を用い、発現レベルをGAPDH(Hs99999905_m1)で補正した。蛍光染色には一次抗体としてGoat-anti-human TET1 Ab(Santa Cruz biotech,sc-1634443),mouse anti-human TET2 Ab(sc-136926),rabbit anti-human TET3 Ab(sc-139186)、二次抗体としてFITC-conjugated anti-goat IgG,FITC-conjugated anti-mouse IgG,FITC-conjugated anti-rabbit IgGをそれぞれ使用した。観察にはBIOREVO(keyence,Japan)を、画像解析にはBZ-II Viewer software(keyence)を使用した。
その結果、炎症性サイトカインによる刺激がないFLSにおけるTetタンパク質ファミリーのmRNA発現レベルは、RA、OA、健常人の間で差を認めなかった(図4)。一方、タンパク質発現レベルでは、Tet1、Tet2の発現レベルは非常に低く、Tet3はTet 1、Tet 2に比べて強い発現がOA、RA由来FLSで認められた(図5)。
(実施例3)炎症性サイトカイン刺激後のFLSにおけるTetタンパク質ファミリーの発現レベル
実施例2のFLSにRAの病態に中心的に関与するとされる炎症性サイトカインTNFαやIL-1βを加えて培養した場合の、Tetタンパク質ファミリーの発現レベルの変化(mRNA、タンパク質)を調べた。TNFαはrecombinant human TNF-alpha(R&D),IL-1βはrecombinant human IL-1β(RELIATech GmbH)を使用して、それぞれ50ng/ml,1ng/mlで刺激した。また、蛍光染色を行い、ランダムに20個の細胞の核内と細胞質の蛍光強度を解析し、蛍光強度の比をN/C比とした。核タンパクの抽出にはNuclear Extraction Kit(Affymetrix,Fremont,CA)を使用し、Western blot法でタンパク質の発現を解析した。
その結果、TNFαやIL-1βによってFLSを刺激すると、OA、RAに関わらず、mRNA発現レベルに関しては、Tet 1が刺激後2時間で顕著に低下したことに対して、Tet3は刺激後2時間で有意に発現が増加した。Tet2の発現の変化は認めなかった(図6)。タンパク質発現レベルに関しては、健常者、OA、RAに関わらず、TNFα刺激後24時間からFLSの核内のTet 3発現レベルは有意に増加し、刺激後96時間で顕著となった(図7、8)。
(実施例4)炎症性サイトカイン刺激後のFLSにおけるDNAメチル化レベル
RA由来FLSにTNFαによる刺激を加え、DNAの脱メチル化レベルを調べるために5hmCのレベル(genomic DNA)の変化を調べた。gDNAの抽出にはSpinclean genomic DNA purification kit(m.biotech)を用い、Dot Blot法でgDNA中の5hmCの発現レベルを解析した。一次抗体にはrabbit anti-5-methylcytosine(5-mC)polyclonal Ab(ActiveMotif)、二次抗体にはECLTM Anti-Rabbit IgG,HRP linked whole antibody(GE healthcare,UK)、検出にはECLTM Prime Western blotting detection reagent(GE healthcare,UK)を用いた。コントロールとしては5-Methylcytosine & 5-Hydroxymethylcytosine DNA Standard Setを使用した。画像撮影にはLight-capture(AE-6972,Atto,Tokyo,Japan)を使用し、画像解析にはCS Analyzer,version 3.0(Atto)を用いて定量化を行った。
その結果、TNFαによって刺激したFLSは刺激後96時間で有意に5hmCのレベルが増加した(図9)。
(実施例5)Tet 3発現抑制後のFLSにおける炎症性サイトカインの分泌レベル
Tet 3 siRNAを用いてTet 3発現を阻害した上で、TNFαによって刺激を加え、RA由来FLSが分泌する炎症性サイトカインレベルを評価した。具体的には、配列番号:3および配列番号4の塩基配列からなるsiRNAでTet 3をノックダウンしたFLSをTNFα(1ng/ml)を含む培地(10%FCS含有DMEM)で96時間培養後、洗浄して、さらにTNFαを含まない0.1%FCS含有DMEMで48時間の培養を行った。コントロールとしてTet 1のsiRNAを使用した。予備的検討で使用したsiRNA(いずれもLife technologies社のPrimer Set Human)はそれぞれの遺伝子について2種類ずつ、すなわち、siRNA ID:HSS129586,HSS129587 for TET1,HSS123253,HSS123254 for TET2,HSS153381,HSS176459 for TET3を使用した。コントロールとしてはStealthTM RNAi Negative Control DuplexesよりLow GC Duplex(Invitrogen)を使用した。Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent(Life technologies)を用いてリポフェクション法でsiRNA遺伝子を導入した。遺伝子導入効率の予備的検討の結果より、TET3のsiRNAとしてはHSS153381、TET1のsiRNAとしてはHSS129587を使用することとした。IL-6、IL-8、VEGF、CCL2などのタンパク分泌量についてはBDTMCytometric Bead Array(CBA,BD,Japan)で、MMP3の分泌量はSRLに測定を依頼した(検査方法はLTIA法)。またICAM-1やVCAM-1の接着分子の発現はflow-cytometry法(FACSVerseTM,BD)で測定し、FlowJo(Miltenyi Biotec)で解析した。CCL2のmRNAの発現解析にはTaqMan(R)GeneExpress Assays CCL2(Hs00234140_m1)を用いた。
その結果、RAの病態への関連が示唆されてきた多数のサイトカイン、ケモカイン、MMPsの中で、IL-6、IL-8、VEGF、CCL2、MMP3などはTNFα依存性の発現誘導が認められたが、これらの中でCCL2のみはTet 3ノックダウンによりTNFα依存性の発現誘導が阻害された(図10)。この現象はmRNAと分泌タンパクレベルでも確認された。また、接着分子の中でICAM1も同様にTet 3ノックダウンによりTNFα依存性の発現誘導が阻害された。CCL2やICAM-1はFLSの骨・軟骨組織への浸潤に関わり、RAの病態形成に深く関与することが知られている。従って、Tet 3ノックダウンは、DNAのメチル化レベルの維持を介して、CCL2やICAM-1の発現を抑制することによって、RAの予防および治療に有効であることが示唆された。なお、IL-1β、TNFα、IL-17αについても検出を試みたが、値が検出感度以下であったため、検出することができなかった。
(実施例6)Tet 3発現抑制後のFLSの浸潤能
Tet 3 siRNAを用いてTet 3発現を阻害した上で、TNFαによって刺激を加え、RA由来FLSの浸潤能をScratch assayで評価した。具体的には、siRNAでTet 3をノックダウンしたFLSをTNFα(1ng/ml)を含む培地(10%FCS含有DMEM)で96時間培養後、洗浄して、FLSが接着したdish表面にscratchを施行し、TNFαを含まない0.1%FCS含有DMEMで培養しながら、最長48時間の観察を行った。コントロールとしてTet 1のsiRNAを使用した。
その結果、Tet 3ノックダウンによりTNFα依存性のFLS浸潤誘導が完全に阻害された(図11)。Tet 3の選択的阻害が関節リウマチ患者の滑膜線維芽細胞において見られる最も重要な攻撃的な表現型の一つである浸潤性を阻害することで、RAの予防および治療につながることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明により、これまでの治療剤の標的とは異なる因子であるTet 3を標的とした、関節炎の予防及び/又は治療剤あるいは診断キットが提供される。新たな作用機序を有する治療薬が提供されることにより、既存の治療法では病状回復効果が認められない、又は病状回復効果が十分でない関節炎患者、及び既存の治療薬を継続使用することで該治療薬について耐性を獲得した関節炎患者に対してもより良い治療を提供し得る。さらに本発明は、関節炎を未然に防ぐ予防目的、及び関節炎が一時寛解した患者が病気の再発を予防する目的にも使用され得る。また、本発明によれば、Tet 3の発現又は機能を阻害することで関節炎の予防及び/又は治療効果を発揮する、関節炎の新規予防・治療薬の候補物質をスクリーニングすることが可能である。
本出願は、日本で出願された特願2014-174638(出願日:平成26年8月28日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
[配列表]
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図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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