TOP > 国内特許検索 > メタマテリアル装置 > 明細書

明細書 :メタマテリアル装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-152959 (P2017-152959A)
公開日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 メタマテリアル装置
国際特許分類 H01P   7/10        (2006.01)
H01P   3/16        (2006.01)
H01P   1/00        (2006.01)
FI H01P 7/10
H01P 3/16
H01P 1/00 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2016-034213 (P2016-034213)
出願日 平成28年2月25日(2016.2.25)
発明者または考案者 【氏名】上田 哲也
【氏名】石山 拓未
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査請求 未請求
テーマコード 5J006
5J011
5J014
Fターム 5J006HC07
5J006MB02
5J006NE03
5J011CA14
5J014HA02
要約 【課題】導体損を回避しながら、従来よりも広帯域で動作する、3次元的に等方性のメタマテリアル装置を提供する。
【解決手段】単位セル10は、単位セル10の中央の誘電体共振器1と、誘電体共振器1を包囲する複数のストリップ誘電体3と、誘電体共振器1及びストリップ誘電体3を支持するホスト媒質2とを備える。単位セル10において、複数のストリップ誘電体3は、第1の方向に配置された第1のストリップ誘電体と、第2の方向に配置された第2のストリップ誘電体と、第3の方向に配置された第3のストリップ誘電体とを含む。第1のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、第2のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、第3のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置される。誘電体共振器1はホスト媒質2の誘電率よりも高い誘電率を有し、ストリップ誘電体3は誘電体共振器1の誘電率以上の誘電率を有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置において、
上記各単位セルは、上記単位セルの中央に配置された誘電体共振器と、上記誘電体共振器を包囲するように配置された複数のストリップ誘電体と、上記誘電体共振器及び上記ストリップ誘電体を支持するホスト媒質とを備え、
上記各単位セルにおいて、上記複数のストリップ誘電体は、第1の方向に配置された少なくとも1つの第1のストリップ誘電体と、上記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された少なくとも1つの第2のストリップ誘電体と、上記第1及び第2の方向によって張られる面に対して所定角度を有する第3の方向に配置された少なくとも1つの第3のストリップ誘電体とを含み、
上記複数の単位セルを周期的に配置することにより構成される上記メタマテリアル装置において、上記第1のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、上記第2のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、上記第3のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、
上記誘電体共振器は上記ホスト媒質の誘電率よりも高い誘電率を有し、上記ストリップ誘電体は上記誘電体共振器の誘電率以上の誘電率を有することを特徴とするメタマテリアル装置。
【請求項2】
上記メタマテリアル装置に入射する所定周波数の電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効誘電率及び実効透磁率がともに負となるように、上記単位セルの形状及び寸法と、上記誘電体共振器の形状、寸法、及び比誘電率と、上記ストリップ誘電体の太さと、上記第1、第2、及び第3のストリップ誘電体を周期的に配置する間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率とが設定されたことを特徴とする請求項1記載のメタマテリアル装置。
【請求項3】
上記各単位セルは、上記複数のストリップ誘電体によって形成される導波路を備え、上記各単位セルは所定のカットオフ周波数を有し、上記各単位セルは、上記メタマテリアル装置に入射する上記カットオフ周波数よりも低い周波数の電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効誘電率が負となるように構成され、
上記誘電体共振器は、上記誘電体共振器に入射する所定周波数の電磁波により、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布の共振形態で励起し、上記電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効透磁率が負となるように構成されることを特徴とする請求項2記載のメタマテリアル装置。
【請求項4】
上記各単位セルは立方体であり、上記第1、第2、及び第3の方向は互いに直交することを特徴とする請求項1~3のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項5】
上記誘電体共振器は球形状を有することを特徴とする請求項1~4のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項6】
上記誘電体共振器は円柱形状もしくは多角柱形状を有することを特徴とする請求項1~4のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項7】
上記誘電体共振器は立方体形状、多面体形状もしくは菱面体形状を有することを特徴とする請求項1~4のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項8】
上記複数の単位セルのうち、1つの面で互いに隣接する2つの単位セルのすべての組み合わせのそれぞれは、上記1つの面において上記ストリップ誘電体を共有することを特徴とする請求項1~7のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項9】
上記ホスト媒質は空洞を備えた第1の基板、及び上記第1の基板を挟む第2の基板から成り、上記第1の基板及び/又は上記第2の基板には上記第1のストリップ誘電体及び/又は第2のストリップ誘電体が形成され、
上記誘電体共振器が上記第1の基板の上記空洞に配置され、上記第2の基板で挟まれた単位形態で形成され、もしくは、上記単位形態が2層以上積層された状態で形成される上記第3のストリップ誘電体を有することを特徴とする請求項1~8のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、負の屈折率を示す電磁人工構造物であるメタマテリアル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアル装置は、サブ波長サイズを有する複数の単位構成要素(以下、単位セルという)から構成される。メタマテリアル装置の特徴的なふるまいとして、電磁波のバックワード伝搬を生じる負の屈折率を有する構造物を構成できるということがある。負の屈折率は、構造物の実効誘電率及び実効透磁率が同時に負となる場合に実現される。
【0003】
一般に、メタマテリアル装置の単位セルは異方性であり、電磁波の伝搬方向及び偏波方向により、メタマテリアル装置のふるまいは大きく異なる。独立な3方向へ伝搬する電磁波又は異なる偏波特性を有する電磁波に対して、等方性の、すなわち方向依存性のないメタマテリアル装置の構造を設計することは容易ではない。
【0004】
すでに、独立な3方向へ伝搬する電磁波に対して負の屈折率を示す3次元メタマテリアル装置がいくつか提案されている(例えば、特許文献1~7を参照)。さらに、電磁波の伝搬方向及び偏波方向に依存せずに負の屈折率を示す等方性の3次元メタマテリアル装置として、磁気双極子に類似した電磁界分布をもつ誘電体粒子群と、交流電界に対して遮蔽効果を持つ金属細線格子との組み合わせからなる複合構造が提案されている。この構造では、誘電体粒子群は負の透磁率を示す構造として使用されている。各誘電体粒子が磁気双極子に類似した電磁界分布を示すように、誘電体粒子内に電気力線の渦が形成される共振モードが利用されている。一方、金属細線格子は負の誘電率を示す構造として使用されている。金属細線格子は、所定間隔を有して並んだ一対の金属細線に当該間隔の2倍よりも長い波長を有する電磁波が入射したとき、負の誘電率を示す。金属細線格子単体を使用したときは、電磁波が伝搬できないカットオフ領域が現れ、遮蔽効果を示す。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-114489号公報
【特許文献2】特開2008-244683号公報
【特許文献3】特開2008-252293号公報
【特許文献4】特開2009-272592号公報
【特許文献5】特開2013-005044号公報
【特許文献6】特許第5581526号公報
【特許文献7】国際公開2013/133175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタマテリアル装置は一般に、その構成要素のサイズを変えて設計することにより、マイクロ波領域だけでなく、ミリ波領域又はテラヘルツ波領域においても原理的に動作する。しかしながら、誘電体粒子及び金属細線格子からなる複合構造においては、動作帯域の高域化に伴い、導体損の影響が大きくなる。また、金属細線は経時変化により導電率が低下し、メタマテリアル装置の特性に影響を及ぼすという問題があった。
【0007】
これらの導体損による影響を回避する方法の1つとして、誘電体のみからなるメタマテリアル装置の構成方法もすでに提案されている。しかし、その多くは、フォトニクス結晶としてよく知られた誘電体柱が2次元格子上に周期的に配置された構造を有し、その2次元構造に起因して偏波依存性が生じる。3次元で等方性を有する構造として、電気双極子及び磁気双極子を形成する2種類の誘電体粒子群を用いる方法が提案されているが、負の誘電率を実現する際に、電気双極子に類似した高次の共振モードを利用するので、動作帯域が極めて狭く、数%以下の製造ばらつきでも負の誘電率が消失してしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、以上の課題を解決し、導体損を回避しながら、従来よりも広帯域で動作可能であり、経時変化が極めて小さく、しかも製造が容易である、3次元的に等方性のメタマテリアル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るメタマテリアル装置によれば、
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置において、
上記各単位セルは、上記単位セルの中央に配置された誘電体共振器と、上記誘電体共振器を包囲するように配置された複数のストリップ誘電体と、上記誘電体共振器及び上記ストリップ誘電体を支持するホスト媒質とを備え、
上記各単位セルにおいて、上記複数のストリップ誘電体は、第1の方向に配置された少なくとも1つの第1のストリップ誘電体と、上記第1の方向とは異なる第2の方向に配置された少なくとも1つの第2のストリップ誘電体と、上記第1及び第2の方向によって張られる面に対して所定角度を有する第3の方向に配置された少なくとも1つの第3のストリップ誘電体とを含み、
上記複数の単位セルを周期的に配置することにより構成される上記メタマテリアル装置において、上記第1のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、上記第2のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、上記第3のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、
上記誘電体共振器は上記ホスト媒質の誘電率よりも高い誘電率を有し、上記ストリップ誘電体は上記誘電体共振器の誘電率以上の誘電率を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1の態様に係るメタマテリアル装置において、
上記メタマテリアル装置に入射する所定周波数の電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効誘電率及び実効透磁率がともに負となるように、上記単位セルの形状及び寸法と、上記誘電体共振器の形状、寸法、及び比誘電率と、上記ストリップ誘電体の太さと、上記第1、第2、及び第3のストリップ誘電体を周期的に配置する間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率とが設定されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第2の態様に係るメタマテリアル装置において、
上記各単位セルは、上記複数のストリップ誘電体によって形成される導波路を備え、上記各単位セルは所定のカットオフ周波数を有し、上記各単位セルは、上記メタマテリアル装置に入射する上記カットオフ周波数よりも低い周波数の電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効誘電率が負となるように構成され、
上記誘電体共振器は、上記誘電体共振器に入射する所定周波数の電磁波により、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布の共振形態で励起し、上記電磁波に対して上記メタマテリアル装置の実効透磁率が負となるように構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第3のうちの1つに係るメタマテリアル装置において、
上記各単位セルは立方体であり、上記第1、第2、及び第3の方向は互いに直交することを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第4のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
上記誘電体共振器は球形状を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第4のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
上記誘電体共振器は円柱形状もしくは多角柱形状を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第4のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
上記誘電体共振器は立方体形状、多面体形状もしくは菱面体形状を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第7のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
上記複数の単位セルのうち、1つの面で互いに隣接する2つの単位セルのすべての組み合わせのそれぞれは、上記1つの面において上記ストリップ誘電体を共有することを特徴とする。
【0017】
本発明の第9の態様に係るメタマテリアル装置によれば、第1~第8のうちの1つの態様に係るメタマテリアル装置において、
上記ホスト媒質は空洞を備えた第1の基板、及び上記第1の基板を挟む第2の基板から成り、上記第1の基板及び/又は上記第2の基板には上記第1のストリップ誘電体及び/又は第2のストリップ誘電体が形成され、
上記誘電体共振器が上記第1の基板の上記空洞に配置され、上記第2の基板で挟まれた単位形態で形成され、もしくは、上記単位形態が2層以上積層された状態で形成される上記第3のストリップ誘電体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導体損を回避しながら、従来よりも広帯域で動作可能であり、経時変化が極めて小さく、しかも製造が容易である、3次元的に等方性のメタマテリアル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置20の単位セル10の構造を示す斜視図である。
【図2】図1の単位セル10からなる1次元メタマテリアル装置20を示す斜視図である。
【図3】図1の単位セル10からなる2次元メタマテリアル装置30を示す斜視図である。
【図4】図1の単位セル10からなる3次元メタマテリアル装置40を示す斜視図である。
【図5】図1の単位セル10の中心を通る水平方向の断面図である。
【図6】本発明の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Aの構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Bの構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Cの構造を示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る3次元メタマテリアル装置40Aの製造方法を説明するための分解斜視図である。
【図10】図9の基板層101の構造を示す斜視図である。
【図11】図10のA-A’線における断面図である。
【図12】図9の基板層102の構造を示す斜視図である。
【図13】図12のB-B’線における断面図である。
【図14】図9の基板層101-1,102-1,101-2,102-2,101-3を含む3次元メタマテリアル装置40Aの構造を示す断面図である。
【図15】比較例に係る1次元メタマテリアル装置の導体格子のみからなる伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。
【図16】本発明の実施例に係る1次元メタマテリアル装置の誘電体格子のみからなる伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。
【図17】メタマテリアル装置における電磁波の伝搬方向を説明するための図である。
【図18】比較例に係る3次元メタマテリアル装置の分散曲線を示すグラフである。
【図19】本発明の実施例に係る3次元メタマテリアル装置の分散曲線を示すグラフである。
【図20】本発明の実施例に係る3次元メタマテリアル装置の伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。図面中のxyz座標を参照する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。

【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置20の単位セル10の構造を示す斜視図である。単位セル10は、単位セル10の中央に配置された誘電体共振器1と、誘電体共振器1を包囲するように配置された複数のストリップ誘電体3xa~3xd,3ya~3yd,3za~3zd(以下、総称して符号「3」により示す)と、誘電体共振器1及びストリップ誘電体3を支持するホスト媒質2とを備える。ホスト媒質2は、例えば、単位セル10内の空間を充填する誘電体である。ホスト媒質2は、エポキシ、ポリイミドなどの有機物質であってもよく、有機物質及びガラス繊維などの混合物であってもよい。

【0022】
単位セル10は、直方体などの平行六面体形体とすることができるが、3次元的な等方性及び製造の容易性を考慮すると、好ましくは、辺の長さpを有する立方体である。

【0023】
誘電体共振器1は、ホスト媒質2の比誘電率よりもずっと高い比誘電率を有する。例えば、ホスト媒質2が比誘電率1~10を有する場合、誘電体共振器1は比誘電率15~150を有する。誘電体共振器1は、例えば、辺の長さlを有する立方体である。誘電体共振器1の中心は、単位セル10の中心にほぼ一致してもよい。

【0024】
ストリップ誘電体3は、誘電体共振器1の誘電率とほぼ同等か、さらに高い誘電率を有する。例えば、誘電体共振器1が比誘電率15~150を有する場合、ストリップ誘電体3は比誘電率50~2000を有する。

【0025】
複数のストリップ誘電体3は単位セル10の各辺に設けられる。ストリップ誘電体3は、x方向に沿って配置されたストリップ誘電体3xa~3xdと、y方向に沿って配置されたストリップ誘電体3ya~3ydと、z方向に沿って配置されたストリップ誘電体3za~3zdとを含む。複数の単位セル10を1次元的、2次元的、又は3次元的に周期的に配置することにより構成されるメタマテリアル装置において、複数のx方向のストリップ誘電体が互いに平行にかつ周期的に配置され、複数のy方向のストリップ誘電体もまた互いに平行にかつ周期的に配置され、複数のz方向のストリップ誘電体もまた互いに平行にかつ周期的に配置される。例えば、z方向に沿って配置されたストリップ誘電体(3za~3zdなど)は、x方向に周期的に配置され、y方向に周期的に配置され、さらに、他の方向(例えばストリップ誘電体3za及び3zdを含む面に沿った方向など)でも所定長さ毎に周期的に配置される。

【0026】
図2は、図1の単位セル10からなる1次元メタマテリアル装置20を示す斜視図である。図3は、図1の単位セル10からなる2次元メタマテリアル装置30を示す斜視図である。図4は、図1の単位セル10からなる3次元メタマテリアル装置40を示す斜視図である。複数の単位セル10は、1次元的、2次元的、又は3次元的に周期的に配置される。このとき、複数のストリップ誘電体3のうちの一部はx軸に沿って互いに平行かつ周期的に配置され、複数のストリップ誘電体3のうちの他の一部はy軸に沿って互いに平行かつ周期的に配置され、複数のストリップ誘電体3のうちの他の一部はz軸に沿って互いに平行かつ周期的に配置される。単位セル10及び誘電体共振器1が立方体であり、複数のストリップ誘電体3が上述のように形成されているとき、そのような単位セルを周期的に配置したメタマテリアル装置20,30,40は等方性になる。

【0027】
1次元メタマテリアル装置20は、例えば、両端にポートP1,P2を有する伝送線路として使用可能である。この場合、ポートP1,P2には、空間とのインピーダンス整合のために、誘電体ブロック21,22が設けられる。同様に、2次元メタマテリアル装置30及び3次元メタマテリアル装置40もまた、両端にポート及び誘電体ブロックを有する伝送線路として使用可能である。

【0028】
単位セル10からなるメタマテリアル装置は、例えば、マイクロ波帯、ミリ波帯、テラヘルツ周波数帯などの周波数帯で動作する。単位セル10からなるメタマテリアル装置は、大きさを考慮すれば、例えば、数MHzの周波数帯で動作してもよく、数GHzの周波数帯で動作してもよく、又は数THzの周波数帯で動作してもよい。

【0029】
次に、図1の単位セル10からなるメタマテリアル装置の動作原理について説明する。

【0030】
単位セル10からなるメタマテリアル装置は、以下に説明するように、負の実効誘電率を有する単位セル10内に負の実効透磁率を有する誘電体共振器1を挿入することにより、その実効誘電率及び実効透磁率が所定周波数の電磁波に対してともに負となるように構成される。

【0031】
負の誘電率を実現するために、例えば特許文献7では、ストリップ導体からなる格子構造を用いていた。一方、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置は、従来のストリップ導体からなる格子構造の代わりに、高誘電率の誘電体材料からなるストリップ誘電体からなる格子構造を備えている。導体材料は導電率が高くインピーダンスがほぼゼロになるが、非常に高い誘電率を有する誘電体材料も高周波数帯ではインピーダンスがほぼゼロになるので、このような置き換えが可能である。

【0032】
互いに平行な2つの導体板又は導体棒からなる構造物に対して平行な電界成分を持つ電磁波が入射する場合、電磁波の波長が導体板又は導体棒の間隔の2倍よりも長いとき、当該構造物の実効誘電率が負となる。従って、構造物は遮蔽効果を示し、電磁波が伝搬できないカットオフ領域(バンドギャップ)が現れる。導体に代えて誘電体からなる同様の構造物に対して平行な電界成分を持つ電磁波が入射する場合、特定の動作周波数帯域において、導体の場合と同様に遮蔽効果を示し、カットオフ領域(バンドギャップ)が現れる。ストリップ導体からなる格子構造とストリップ誘電体からなる格子構造との大きな相違は、前者では低域阻止の周波数特性を示すのに対して、後者では帯域阻止の周波数特性を示し、阻止帯域の高域側のみならず低域側でも電磁波は伝搬可能となる、ということにある。特に低域側では、ストリップ誘電体からなる格子構造及びその周囲のホスト媒質2の電磁的特性が粗視化(平滑化)され、有限の正の誘電率を持つ誘電体媒質として電磁波伝搬が可能となる。

【0033】
図5は、図2の単位セル10の中心を通る水平方向(xy面に平行な面に沿った方向)の断面図である。図5では、中央の単位セル10と、それに隣接する単位セルの一部とを示す。ストリップ誘電体3のそれぞれ(図5には、z方向のストリップ誘電体3za~3zdのみを示す)は、例えば、辺の長さL2を有する正方形の断面形状を有するものとする。ストリップ誘電体3za~3zdは、x方向に間隔L1を有して周期的に配置され、y方向に間隔L3を有して周期的に配置される。ただし、前述のように単位セル10が立方体であるとき、L1=L3である。単位セル10は、例えばx方向に沿って、ストリップ誘電体3で包囲された長さL2の区間と、ストリップ誘電体3で包囲されていない長さL1の区間とが交互に配置された導波路として構成される。この導波路におけるストリップ誘電体3で包囲された区間の実効誘電率は、TEモードのカットオフ周波数より低い周波数領域において負になる。従って、この導波路は、カットオフ周波数より低い周波数を有する電磁波であって、例えば+x方向に向かう電磁波が入射波として到来するとき、ストリップ誘電体3で包囲された区間では負の実効誘電率ε2<0を有し、ストリップ誘電体3で包囲されていない区間では正の実効誘電率ε1>0を有するように構成される。このとき、メタマテリアル装置は、その全体としては、正、零又は負の所定値の実効誘電率を有する。同様に、単位セル10は、y方向及びz方向に沿って、ストリップ誘電体3で包囲された区間と、ストリップ誘電体3で包囲されていない区間とが交互に配置された導波路として構成される。これらの導波路は、カットオフ周波数より低い周波数を有する電磁波であって、y方向又はz方向に向かう電磁波が入射波として到来するとき、ストリップ誘電体3で包囲された区間では負の実効誘電率を有し、ストリップ誘電体3で包囲されていない区間では正の実効誘電率を有するように構成される。これらのときも、メタマテリアル装置は、その全体としては、正、零又は負の所定値の実効誘電率を有する。

【0034】
また、各単位セル10は、複数のストリップ誘電体3によって形成される導波路とそれ以外の部分とを含む単位セル10の全体構造に依存する実効値としてのカットオフ周波数(単位セル10全体のカットオフ周波数)を有する。単位セル10からなるメタマテリアル装置は、このカットオフ周波数より低い周波数の電磁波が入射するとき、負の実効誘電率を有し、このカットオフ周波数より高い周波数の電磁波が入射するとき、零又は正の実効誘電率を有する。

【0035】
さらに、誘電体共振器1は、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布の共振形態を有する。ここで、「磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布」とは、誘電体共振器1の内部において、ある軸に対して垂直な面内で、電気力線が閉じた同心状の渦を形成し、さらに、磁力線が誘電体共振器1の中心付近ではほぼその軸に沿った方向を向き、かつ、磁力線が誘電体共振器1の外部にも広がって閉曲線を形成している状態のことをいう。一般に磁力線はソレノイダルである(必ず閉じている)ので、この場合、磁力線は誘電体共振器1の外部に大きく広がった分布をなす。誘電体共振器1の内部では磁気エネルギーに比べて電気的エネルギーの方がより多く蓄えられる一方、誘電体共振器1の外部では、電界により蓄えられるエネルギーよりも磁界により蓄えられるエネルギーの方が大きくなり、誘電体共振器1と外部の電磁界との結合は磁気結合が支配的となる。

【0036】
誘電体共振器1の実効透磁率を変化させるために、所定周波数を有する電磁波が誘電体共振器1に入射するとき、電磁波の磁界ベクトルが、誘電体共振器1において、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布の共振状態を励起させる必要がある。その結果、単位セル10の内部において、電磁波の周波数に応じて、正、零又は負の実効透磁率を実現する。このとき、単位セル10からなるメタマテリアル装置は、その全体として、正、零又は負の所定値の実効透磁率を有する。

【0037】
単位セル10からなるメタマテリアル装置の実効誘電率及び実効透磁率が所定周波数の電磁波に対してともに負となるように、単位セル10の形状及び寸法と、誘電体共振器1の形状、寸法、及び比誘電率と、ストリップ誘電体3の太さと、ストリップ誘電体3を周期的に配置する間隔と、ホスト媒質2の比誘電率とが決定される。このとき、単位セル10からなるメタマテリアル装置は、電磁波の伝搬方向及び偏波方向に依存せずに負の屈折率を示す等方的な伝搬特性を有するメタマテリアル装置として構成される。

【0038】
負の屈折率を得るためには、誘電率及び透磁率を同時に負にする必要があるが、誘電体共振器1の共振周波数の上側帯域で形成される負の透磁率の帯域と、ストリップ誘電体3からなる格子構造により形成される負の誘電率のバンドギャップの帯域とが重なるように設計することにより、負の屈折率のメタマテリアル装置を構成できる。

【0039】
単位セル10からなるメタマテリアル装置が等方的な伝搬特性を有するためには、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布を有する誘電体共振器1の共振形態のうちで、x方向に対称軸を有する第1の共振形態と、y方向に対称軸を有する第2の共振形態と、z方向に対称軸を有する第3の共振形態とがいずれも、ほぼ同じ共振周波数を有する(すなわち、異なる3つの共振モードをほぼ縮退させる)ことが必要である。この共振周波数付近の周波数を有する電磁波が誘電体共振器1に入射すると、電磁波の伝搬方向に関係なく、誘電体共振器1は共振状態もしくはそれに近い電磁界分布を有する状態となる。また、その共振時における誘電体共振器1内外の電磁界分布は、電磁波の伝搬方向ベクトルの成分に応じて、ほぼ縮退した3つの共振モードのいずれかあるいはそれらの組み合わせ(線形和)として表される。

【0040】
本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、ストリップ導体からなる格子構造に代えてストリップ誘電体3からなる格子構造を備えたことにより、高周波数化又は経時変化などに起因する導体損を回避し、従来よりも広帯域で動作可能であり、3次元的に等方性のメタマテリアル装置を提供することができる。

【0041】
さらに、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置は、簡単な構造を有するので、容易かつ安価に製造することができる。

【0042】
さらに、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置は、金属導体部品を含まないので、酸化などに起因する経時的な変化を生じることなく、長期間にわたって安定的に動作することができる。

【0043】
複数の単位セル10を周期的に配置するだけで、負の屈折率を有する任意形状のメタマテリアル装置を構成することができる。

【0044】
図1では立方体の単位セル10を示したが、単位セルの形状は立方体に限定されない。複数の単位セルを1次元的、2次元的、又は3次元的に周期的に配置してメタマテリアル装置を構成できるのであれば、直方体、角柱(六角柱など)、正四面体などの任意の形状の単位セル、又は複数の種類の単位セルの組み合わせを用いることができる。各単位セルにおいて、複数のストリップ誘電体は、少なくとも3つの方向に沿って配置される。すなわち、各単位セルにおいて、複数のストリップ誘電体は、第1の方向に配置された少なくとも1つの第1のストリップ誘電体と、第1の方向とは異なる第2の方向に配置された少なくとも1つの第2のストリップ誘電体と、第1及び第2の方向によって張られる面に対して所定角度を有する第3の方向に配置された少なくとも1つの第3のストリップ誘電体とを含む。複数の単位セルを3次元的に周期的に配置することにより構成される3次元メタマテリアル装置において、第1のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、第2のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置され、第3のストリップ誘電体は互いに平行にかつ周期的に配置される。このように構成されたメタマテリアル装置において、電磁波の伝搬方向及び偏波方向に依存しない、すなわち、等方的な伝搬特性を容易に実現することができる。ただし、等方的な伝搬特性のためには、単位セルは、方向によって寸法などが異なる直方体などの形状よりも、立方体などの対称な形状を有するほうが好ましい。

【0045】
誘電体共振器1は、単一の誘電体材料から構成されてもよく、又は複数の誘電体材料の組み合わせから構成されてもよい。例えば、誘電体共振器1は、誘電体セラミックを焼成したものでも、誘電体セラミック粉末を成形したものでもよい。できるだけ誘電損失の小さい材料を用いれば、伝搬損失の小さいメタマテリアル装置を実現することができる。

【0046】
誘電体共振器1は、当該誘電体共振器1を含む単位セル10に隣接する単位セル10の誘電体共振器1に接していなくてもよく、接していてもよい。

【0047】
ホスト媒質2は、例えば、誘電体共振器1の比誘電率よりもずっと低い比誘電率を有する誘電体、例えば10分の1から5分の1以下の比誘電率を有する有機物質などの誘電体にて単位セル10を充填することによって構成される。また、ホスト媒質2として、単位セル10の内部の少なくとも一部を空気により充填してもよく、又は、空気及び誘電体の組み合わせ、もしくは、複数の誘電体の組み合わせにより、単位セル10の内部を充填してもよい。

【0048】
通常の媒質が正の実効誘電率及び正の実効透磁率を有するのに対して(右手系媒質)、メタマテリアル装置には、負の実効誘電率及び負の実効透磁率を有する左手系媒質として機能するものがある。実施形態に係るメタマテリアル装置は、動作周波数により、右手系メタマテリアル装置、左手系メタマテリアル装置、誘電率及び透磁率のどちらか一方が負で他方が正となるシングルネガティブメタマテリアル装置、実効誘電率あるいは透磁率が零のメタマテリアル装置として動作する右手/左手系複合メタマテリアル装置として構成されてもよい。

【0049】
また、メタマテリアル装置の実効誘電率が零となる周波数と実効透磁率が零となる周波数とは一般に異なるが、これらの周波数を一致させることにより、実施形態に係るメタマテリアル装置を平衡型右手/左手系複合メタマテリアル装置として構成してもよい。右手/左手系複合メタマテリアル装置の実効誘電率及び実効透磁率が零の値を有する周波数は、一般に異なる。その場合、隣接する実効誘電率が零になる周波数と実効透磁率が零になる周波数の間の帯域は、実効誘電率及び実効透磁率のどちらか一方のみが負の値を有し、他方が正の値を有する。この帯域では電磁波の伝搬条件が満たされず、電磁波が伝搬できない禁止帯になる。右手/左手系複合メタマテリアル装置は、この禁止帯の下側の帯域では実効誘電率及び実効透磁率がともに負であるので左手系メタマテリアル装置として動作し、上側の帯域ではともに正の値となり右手系メタマテリアル装置として動作する。実効誘電率と実効透磁率が零となる周波数が一致する場合には禁止帯が形成されず、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域が連続的に接続される。このようなメタマテリアル装置を平衡型右手/左手系複合メタマテリアル装置と呼び、そうでないものを非平衡型右手/左手系複合メタマテリアル装置と呼ぶ。平衡型右手/左手系複合メタマテリアル装置は、禁止帯を生じないばかりでなく、位相定数が零となる周波数においても群速度が零とならず、効率良い電力伝送が可能である。

【0050】
図6は、本発明の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Aの構造を示す斜視図である。単位セル10Aは、半径R1の球形状を有する誘電体共振器1Aを備える。球形状の誘電体共振器1Aの場合、誘電体共振器1Aの誘電率がホスト媒質2の誘電率に比べて充分大きいという条件のもとで、境界で磁気壁(磁界の接線成分が零)を仮定して共振モードが近似的に計算される。このように簡単化されたモデルにおいて、誘電体共振器1Aの電磁界分布はTE011共振モードとして表される。

【0051】
図7は、本発明の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Bの構造を示す斜視図である。図7の単位セル10Bは、半径R2及び高さH1の円柱形状の誘電体共振器1Bを備える。円柱形状の誘電体共振器1Bの場合、(1)TE01δ共振モード及びその共振周波数の近傍において、円柱の対称軸に平行な磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布をなし、(2)HE11δ共振モード及びその共振周波数の近傍において、円柱の側面に垂直な方向に磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布をなす。この場合、円柱の側面に垂直な方向の決め方は自由度が2であるので、ここでは2つの共振状態が縮退しているとみなす。上記(1)及び(2)の共振周波数が同じである場合、異なる3方向に対称軸をそれぞれ有する3つの磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布を、同じ周波数で実現することが可能となる。誘電体共振器1BのTE01δモード及びHE11δモードの共振周波数がほぼ同じ周波数で縮退するように、誘電体共振器1Bの直径(半径R2×2)及び高さH1がほぼ同じ長さに決められる。

【0052】
図6の単位セル10A又は図7の単位セル10Bからなるメタマテリアル装置においても、電磁波の伝搬方向及び偏波方向に依存しない、すなわち、等方的な伝搬特性を容易に実現することができる。

【0053】
誘電体共振器は、立方体、球、及び円柱以外の形状を有してもよく、例えば、回転楕円体、多角柱、多面体、菱面体などの任意の形状、又は複数の種類の形状の組み合わせを有してもよい。ただし、1つの単位セルに注目するとき、非対称な形状を有する誘電体共振器を用いると等方的な伝搬特性が損なわれる。そのような誘電体共振器を用いる場合であっても、複数の単位セルにおいて誘電体共振器をさまざまな異なる方向を向けて配置することで、平均的には等方的な伝搬特性を実現することができる。また、1つの単位セルに注目するとき、誘電体共振器を単位セルの中央に配置しなければ等方的な伝搬特性が損なわれる。誘電体共振器を単位セルの中央に配置しない場合であっても、複数の単位セルにおいて誘電体共振器をさまざまな異なる位置に配置することで、平均的には等方的な伝搬特性を実現することができる。

【0054】
図8は、本発明の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Cの構造を示す平面図である。単位セルは、個別に形成されてもよく、隣接する単位セルと一体的に、複数個でまとめて形成されてもよい。後者の場合、複数の単位セルのうち、1つの面で互いに隣接する2つの単位セルのすべての組み合わせのそれぞれ(すなわち、1つの面で互いに隣接する任意の2つの単位セル)は、当該1つの面においてストリップ誘電体3を共有してもよい。図8を参照すると、単位セル10Cは、その各面において隣接する単位セルとの間で、ストリップ誘電体3を共有する。図8の構成によれば、隣接する2つの単位セルの間でストリップ誘電体3を共有することにより、複数の単位セルをまとめて形成し、メタマテリアル装置の製造を簡単化することができる。

【0055】
図8では、複数の単位セルを2次元的に配置した例を示すが、複数の単位セルを1次元的又は3次元的に配置する場合にも同様に、複数個の単位セルをまとめて形成してもよい。

【0056】
次いで、図9~図14を参照して、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置の製造方法の一例について説明する。

【0057】
図9は、本発明の実施形態に係る3次元メタマテリアル装置40Aの製造方法を説明するための分解斜視図である。3次元メタマテリアル装置40Aは、積層された複数の基板層101-1,102-1,101-2,102-2,101-3,…,101-Nを含む。後述するように、一部の基板層102-1,102-2,…,102-(N-1)(以下、総称して符号「102」により示す)は、誘電体共振器1Aをそれぞれ収容する複数の空洞を有し、残りの基板層101-1,101-2,101-3,…,101-N(以下、総称して符号「101」により示す)は、それぞれ基板層102を間に挟んで誘電体共振器1Aを基板層102の空洞に固定する。また、図2のストリップ誘電体3は、各基板層101,102の少なくとも一方の面にスパッタ等により形成されるか、又は各基板層101,102を貫通するスルーホール内に形成される。基板層101,102の個数は、必要な特性を考慮して任意に選択することができる。図9の3次元メタマテリアル装置40Aは、N個の基板層101とN-1個の基板層102とから構成されている。

【0058】
図10は、図9の基板層101の構造を示す斜視図である。図11は、図10のA-A’線における断面図である。基板層101の母材は、エポキシ、ポリイミド、またはガラス繊維などを混入したエポキシなどの半硬化樹脂からなる誘電体基板111で形成され、誘電体基板111の少なくとも一方の面(図10及び図11では+z側の面)には、x方向に沿って延在する複数の線状誘電体パターン112x(図1のx方向のストリップ誘電体3xa~3xdに対応する)と、y方向に沿って延在する複数の線状誘電体パターン112y(図1のy方向のストリップ誘電体3ya~3ydに対応する)とからなる格子状の誘電体膜がパターン形成される。さらに、線状誘電体パターン112x,112yが交差する位置(格子点)においてそれぞれ、レーザー法やパンチング法を用いて、誘電体基板111を貫通するスルーホール113が形成される。後述するように、スルーホール113に、誘電体棒131(図1のz方向のストリップ誘電体3za~3zdに対応する)が設けられる。

【0059】
図12は、図9の基板層102の構造を示す斜視図である。図13は、図12のB-B’線における断面図である。基板層102の母材は、エポキシ、ポリイミド、またはガラス繊維などを混入したエポキシなどの半硬化樹脂からなる誘電体基板121で形成され、誘電体基板121の少なくとも一方の面(図11及び図12では+z側の面)には、x方向に沿って延在する複数の線状誘電体パターン122x(図1のx方向のストリップ誘電体3xa~3xdに対応する)と、y方向に沿って延在する複数の線状誘電体パターン122y(図1のy方向のストリップ誘電体3ya~3ydに対応する)とからなる格子状の誘電体膜がパターン形成される。さらに、線状誘電体パターン122x,122yが交差する位置(格子点)においてそれぞれ、レーザー法やパンチング法を用いて、誘電体基板121を貫通するスルーホール123が形成される。後述するように、スルーホール123に、誘電体棒131(図1のz方向のストリップ誘電体3za~3zdに対応する)が設けられる。さらに、誘電体基板121上において線状誘電体パターン122x,122yによって包囲される領域はそれぞれ、レーザー法やパンチング法を用いて誘電体基板121を貫通する空洞124が形成される。空洞124内にそれぞれ、誘電体共振器1Aが設けられる。

【0060】
基板層102の誘電体基板121には、スルーホール123と、空洞124の穴が形成される。スルーホール123の直径は誘電体共振器1Aの直径よりも小さく形成され、空洞124の穴は誘電体共振器1Aの直径よりも大きく形成される。従って、(ある基板層102における空洞124の個数よりも十分多い)複数の誘電体共振器1Aを誘電体基板121上に配置して誘電体共振器1Aをスキージで掃引すれば、誘電体共振器1Aを空洞124に装填することができる。このとき、スルーホール123の直径は空洞124よりも小さいので、誘電体共振器1Aはスルーホール123には入らない。スルーホール123の直径が空洞124よりも大きい場合には、LSI実装において半田ボールを回路基板上へ設置する際に使用される吸引法の装置を使用すれば、同様にして誘電体共振器1Aを空洞124のみに装填することができる。

【0061】
図14は、図9の基板層101-1,102-1,101-2,102-2,101-3を含む3次元メタマテリアル装置40Aの構造を示す断面図である。基板層102-1,102-2の空洞124に誘電体共振器1Aを装填した後、スルーホール113,123の位置を合わせて図14に示すように基板層101-1,102-1,101-2,102-2,101-3を積み重ね、全体をz方向に圧縮する。基板層101,102は、前述のように半硬化状態にあるので、圧縮により全体として一体化する。次に、スルーホール113,123に誘電体棒131(図1のz方向のストリップ誘電体3za~3zdに対応する)を挿入して、全体に80~180°C程度の熱を加えることで、最終的に硬化する。この製造方法の例によれば、各誘電体共振器1Aは、図1のストリップ誘電体3によって包囲されるのと同様に、基板層101の線状誘電体パターン112x,112yと、基板層102の線状誘電体パターン122x,122yと、誘電体棒131とによって包囲される。各誘電体共振器1A、線状誘電体パターン112x,112y,122x,122y、及び誘電体棒131は、誘電体基板111,121によって支持される。従って、この製造方法の例によれば、図4のメタマテリアル装置40と同様に誘電体共振器1Aをそれぞれ含む複数の単位セルを3次元的に周期的に配置して構成された3次元メタマテリアル装置40Aを製造することができる。

【0062】
図9~図14では、球形状の誘電体共振器1Aを示したが、これに代えて、他の形状の誘電体共振器(立方体、直方体、円柱、など)を用いてもよい。

【0063】
図9~図14を参照して説明したメタマテリアル装置の製造方法を用いて、図2のような1次元メタマテリアル装置を形成してもよく、図3のような2次元メタマテリアル装置を形成してもよい。

【0064】
次に、図15~図20を参照して、以上に説明した実施形態に係るメタマテリアル装置のシミュレーション結果について説明する。

【0065】
電磁波伝搬の計算には、市販の有限要素法に基づく高周波電磁界シミュレータを用いた。計算に用いた構造パラメータを以下に示す。単位セル10は立方体であり、その1辺の長さがp=10.3mmであり、誘電体共振器1も立方体であり、その1辺の長さはlDR=6mmであった。ストリップ誘電体3の太さはw=0.8mmであった。誘電体共振器1の比誘電率はεDR=104であり、ホスト媒質2の比誘電率はε=2.2であり、ストリップ誘電体3の比誘電率はε=600であった。

【0066】
まず、ストリップ誘電体3からなる格子構造により生じる負の誘電率を示す周波数帯域を確認するために、誘電体共振器1を備えず、ホスト媒質2及びストリップ誘電体3のみを備えた単位セルからなる3次元メタマテリアル装置(図2を参照)を解析した。このシミュレーションでは、電磁波の進行方向に5個、横方向に無限個の単位セルを3次元的に周期的に配置した。3次元メタマテリアル装置の両端には、インピーダンス整合のための図2の誘電体ブロック21,22を設けず、自由空間とした。入力信号として、TEMモードの電磁波を垂直に入射した。

【0067】
図15は、比較例に係る3次元メタマテリアル装置の導体格子のみからなる伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。図15の場合、各単位セルは、誘電体共振器1をもたず、ホスト媒質2を備え、さらに、ストリップ誘電体3に代えてストリップ導体からなる格子構造を備えるように設定した。図15によれば、カットオフ周波数が約10GHzであり、それより低い周波数で入力した信号は全て遮断されることがわかる。図15より、導体からなる格子構造を用いて負の誘電率を生じるメタマテリアル装置は、低域阻止の特性を示す。

【0068】
図16は、本発明の実施例に係る3次元メタマテリアル装置の誘電体格子のみからなる伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。図16の場合、各単位セルは、誘電体共振器1を備えず、ホスト媒質2及びストリップ誘電体3のみを備えるように設定した。ストリップ誘電体3からなる格子構造の内部にも電磁波が浸透するので、ストリップ導体からなる格子構造の場合よりも格子のサイズが大きい場合に相当する。図16によれば、カットオフ周波数は少し低下して、8GHz辺りに存在することがわかる。ポートP1,P2の一方から入射した電磁波は、その電界が指数関数的に減衰し、伝送線路の途中で遮断される。また、図16によれば、ストリップ誘電体3からなる格子構造の場合には、さらに低域の3GHz以下の帯域においても通過帯が現れていることがわかる。図16より、ストリップ誘電体3からなる格子構造を用いて負の誘電率を生じるメタマテリアル装置は、低域阻止ではなく、帯域阻止の特性を示す。実際、このストリップ誘電体3からなる格子構造に加えて、実効透磁率を操作するために高誘電率の誘電体共振器1が単位セル10に挿入されるので、メタマテリアル装置の実効誘電率は上昇する。したがって、本発明の実施例に係るメタマテリアル装置では、カットオフ周波数が上記よりもさらに低下することを設計の際に考慮する必要がある。

【0069】
図17は、メタマテリアル装置における電磁波の伝搬方向を説明するための図である。図17は、3次元メタマテリアル装置に係る波数領域の表現を表す。空間座標(x,y,z)をフーリエ変換した波数領域(空間周波数領域)では、その各点は、成分βx,βy,βzを有する波数ベクトルβ=(βx,βy,βz)により表される。さらに、3次元メタマテリアル装置の構造が周期性を持つ場合、伝搬特性を表す分散曲線は波数領域においても周期性をもち、第1ブリルアン領域と呼ばれる波数領域内の部分領域を用いて全体領域が表現される。この波数領域の原点(βx,βy,βz)=(0,0,0)を「Γ」点と呼ぶ。電磁波が図15のx軸に沿って伝搬する場合、波数ベクトルはβx成分のみをもち、その方向のブリルアン領域の境界点(π/L,0,0)を「X」と表す。同様に、電磁波が図15の(x,y,z)=(1,1,0)方向に伝搬する場合、波数ベクトルの成分はβx=βyかつβz=0の関係を有し、その方向のブリルアン領域の境界点(π/L,π/L,0)を「M」と表す。さらに、電磁波が図15の(x,y,z)=(1,1,1)方向に伝搬する場合、波数ベクトルの成分はβx=βy=βzの関係を有し、その方向のブリルアン領域の境界点(π/L,π/L,π/L)を「R」と表す。

【0070】
図18は、比較例に係る3次元メタマテリアル装置の分散曲線を示すグラフである。図18は、図1の単位セル10においてストリップ誘電体3に代えてストリップ導体を備えた場合の、3次元メタマテリアル装置の分散曲線を示す。図18の分散曲線は、図15の単位セル10Bに対して周期的境界条件を課して得られる固有モード解を示す。図19において、「ΓX」は、図15のxyz座標において、電磁波が原点から点(1,0,0)に伝搬するとき(+x方向)の分散曲線を示し、「ΓM」は、原点から点(1,1,0)に伝搬するときの分散曲線を示し、「ΓR」は、原点から点(1,1,1)に伝搬するときの分散曲線を示す。電磁波の伝搬方向が「ΓX」であるとき、伝搬特性は偏波方向に依存しない。電磁波の伝搬方向が「ΓM」であるとき、水平偏波(xy面に平行な偏波方向)の分散曲線と、垂直偏波(xy面に垂直な偏波方向)の分散曲線を求めた。電磁波の伝搬方向が「ΓR」であるとき、伝搬特性は偏波方向に依存しない。図18の分散曲線は固有値計算から得られた。βは3次元メタマテリアル装置の位相定数を表す。なお、位相定数βは波数ベクトルβの成分に対応する。図18によれば、分散特性がΓ点近傍で等方的であることがわかる。

【0071】
図19は、本発明の実施例に係る3次元メタマテリアル装置の分散曲線を示すグラフである。いずれの場合も、4.1GHz~4.35GHzにわたって負の屈折率で伝搬し(左手系モード)、4.35GHzにおいて実効屈折率がゼロとなり、さらに上の帯域では正の屈折率で伝搬する(右手系モード)ことがわかる。

【0072】
図20は、本発明の実施例に係る3次元メタマテリアル装置の伝送線路の反射係数S11及び通過係数S21を示すグラフである。図20は、電磁波の進行方向に8個、横方向に無限個の単位セル10を周期的に配置した3次元メタマテリアル装置(図2を参照)についてのシミュレーション結果を示す。3次元メタマテリアル装置の両端には、設計した3次元メタマテリアル装置の波動インピーダンスの値に近く、広帯域にわたってインピーダンス整合がとれるように、比誘電率ε=47の誘電体を設けた。図20のモデルは、立方格子の主軸方向、つまり図19の分散曲線ではΓX(100)方向の伝搬に対応する。図20によれば、4.15GHz~4.8GHzにわたって広帯域な帯域通過特性が達成され、これは、先の分散曲線において伝搬モードの存在する帯域とよく一致していることが分かる。

【0073】
以上のシミュレーションによれば、本発明の実施形態に係るメタマテリアル装置は、導体損を回避しながら、従来よりも広帯域で動作し、さらに、3次元的に等方性の動作を実現することができることがわかる。

【0074】
また、本発明者らは、本発明の実施形態に係る3次元メタマテリアル装置において、入力される電磁波の周波数に応じて、バックワード波伝搬及びフォワード波伝搬の両方が生じることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るメタマテリアル装置は、マイクロ波回路、そのコンポーネント及びアンテナ(広角ビーム走査アンテナ、微小アンテナ、など)、平板スーパーレンズ、負屈折平板レンズ、波長以下の分解能を有する近傍界イメージング、クローキング技術等のような光学的デバイス及びそのコンポーネントへ応用することができる。
【0076】
本発明の応用例としては、クローキング(隠れ蓑)技術による電波障害の解決がある。都市では、高層ビルディングの建築により電波が乱反射されて、映像機器及び通信機器などの信号伝搬誤差が多くなるという問題が多発している。対象物(高層ビルディング)をメタマテリアル装置により包囲して、その中の電磁波の透過特性を最適化することで、電磁波に対象物を迂回させ、乱反射を少なくして、電波環境を改善する(電波クローキング)。
【0077】
また、左手系と右手系の遷移領域である阻止域を使い、電磁波の阻止又は減衰に使う例もある。この効果は、複数の無線システム及びデジタル回路を厳しい実装条件で搭載している携帯電話機への応用において有効である。例えば現在の携帯電話機では、電話用に800MHz帯、1500MHz帯、及び2GHz帯が使用され、GPS用には1.57GHzが使用され、ワンセグTV用には470~710MHz帯が使用され、また電子マネー等のアプリケーションをサポートするために13.56MHz帯が使用され、それぞれの周波数帯に対応する複数のアンテナが携帯電話機の筐体の狭い空間内に配置されている。小さな筐体の中では、アンテナ間の電磁波干渉に起因して通信性能が劣化する。また、これらのアンテナの近くの回路からのクロック信号の不要輻射が雑音としてアンテナで受信され、通信品質を低下させる要因ともなる。このような厳しい実装条件下で、それぞれの周波数毎に電磁波をコントロールし、互いの干渉を減少させるためにメタマテリアル装置を使用することが有効である。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B…誘電体共振器、
2…ホスト媒質、
3,3xa~3xd,3ya~3yd,3za~3zd…ストリップ誘電体、
10,10A~10C…単位セル、
20…1次元メタマテリアル装置、
21,22…誘電体ブロック、
30…2次元メタマテリアル装置、
40,40A…3次元メタマテリアル装置、
101,102,101-1,102-1,…,101-N…基板層、
111,121…誘電体基板、
112x,112y,122x,122y…線状誘電体パターン、
113,123…スルーホール、
131…誘電体棒、
124…空洞、
P1,P2…ポート。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19