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明細書 :マイクロ駆動装置及びそれを用いたマイクロデバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 マイクロ駆動装置及びそれを用いたマイクロデバイス
国際特許分類 G02B  26/10        (2006.01)
G02B  26/08        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
FI G02B 26/10 104Z
G02B 26/08 E
G02B 26/10 C
B81B 3/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2016-511970 (P2016-511970)
国際出願番号 PCT/JP2015/060279
国際公開番号 WO2015/152309
国際出願日 平成27年3月31日(2015.3.31)
国際公開日 平成27年10月8日(2015.10.8)
優先権出願番号 2014074963
優先日 平成26年3月31日(2014.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】岩瀬 英治
【氏名】飯野 知紗
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
【識別番号】100188994、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 裕介
【識別番号】100194892、【弁理士】、【氏名又は名称】齋藤 麻美
【識別番号】100207653、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 聡
審査請求 未請求
テーマコード 2H045
2H141
3C081
Fターム 2H045AB13
2H045AB38
2H045BA12
2H141MA12
2H141MB24
2H141MD04
2H141MD12
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD17
2H141MD24
2H141MG03
2H141MG06
2H141MZ03
2H141MZ06
2H141MZ16
2H141MZ19
2H141MZ25
2H141MZ26
3C081AA11
3C081AA13
3C081BA28
3C081BA44
3C081BA46
3C081BA47
3C081BA48
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA15
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA10
3C081DA11
3C081DA25
3C081DA27
3C081DA30
3C081DA31
3C081EA08
3C081EA11
3C081EA14
要約 多軸駆動可能なマイクロ駆動装置(1)であって、可動対象部(3)と、前記可動対象部を軸支し1方向のみに設けられた少なくとも一対の梁(4)とを備え、前記可動対象部(3)は、前記梁(4)が有する一つ又は複数の共振周波数で共振してねじれる又は曲がることによりx軸、y軸及びz軸方向に回転又は並進することを特徴とし、構造の大型化及び構造の複雑化を同時に解消することができる、マイクロ駆動装置。
特許請求の範囲 【請求項1】
多軸駆動可能なマイクロ駆動装置であって、
可動対象部と、前記可動対象部を軸支し、1方向のみに設けられた少なくとも一対の梁とを備え、
前記可動対象部は、前記梁が有する一つ又は複数の共振周波数で共振してねじれる又は曲がることによりx軸、y軸及びz軸方向に回転又は並進することを特徴とするマイクロ駆動装置。
【請求項2】
前記梁は、
第一の方向で設けられ前記可動対象部と接続される第一の梁と、
前記第一の梁と異なる方向で設けられ、マイクロ駆動装置のフレームに接続される第二の梁で構成されることを特徴とする請求項1記載のマイクロ駆動装置。
【請求項3】
前記第一の梁と前記第二の梁とが直交して設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ駆動装置。
【請求項4】
前記第一の梁及び/又は前記第二の梁が複数に分割されていることを特徴とする請求項2又は3いずれか1項に記載のマイクロ駆動装置。
【請求項5】
前記第一の梁と、前記第二の梁とが異なる材料からなることを特徴とする請求項2~4いずれか1項に記載のマイクロ駆動装置。
【請求項6】
前記第一の梁及び/又は前記第二の梁が備えている複数に分割されている部分の少なくとも1つが、
前記分割されている部分の他の部分と異なる材料からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のマイクロ駆動装置。
【請求項7】
前記一つ又は複数の共振周波数で加振するための駆動信号が、1つの制御機構により発生されることを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載のマイクロ駆動装置。
【請求項8】
前記可動対象部がミラーであり、
前記ミラーは、ミラー面内のx軸方向及びy軸方向に対して回転し、ミラー面の法線方向のz軸方向に並進することを特徴とする請求項7記載のマイクロ駆動装置。
【請求項9】
請求項1~8いずれか1項に記載のマイクロ駆動装置を備えたことを特徴とするマイクロデバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ駆動装置及びそれを用いたマイクロデバイスに関する。例えば、可動対象部をミラーとする超小型化ミラー駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、プロジェクタの光学素子、インクジェットプリンタのヘッド部にある微小ノズル、圧力センサ、加速度センサ、流量センサなどの各種センサに用いられ、これらの各種センサが組み込まれたマイクロデバイスの小型化及び高性能化を図る技術の一つである。
【0003】
このようなマイクロデバイスの例としてMEMS光スキャナを図17に示す。図17に示すように、例えば、レーザープリンターやファイバースコープ、ヘッドマウントディスプレイ、光スイッチ等に組み込まれるMEMS光スキャナ100として、直径1mm程度のミラー101と、ミラー101を駆動するマイクロ駆動装置102とを備えているものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
このマイクロ駆動装置102は、電磁駆動方式により2軸に駆動され、枠状の外側可動板103と、外側可動板103を回転可能に半導体基板に軸支する外側梁104と、該外側梁104と軸方向が直交し、内側可動板であるミラー101を回転可能に軸支する内側梁105とを備える2重のジンバル構造を有する駆動装置である。
【0005】
ここで、図17に示すマイクロ駆動装置102は、外側梁上に形成されたコイルに流した電流と外から印加される磁界とから生じるローレンツ力により、1つの梁が1つの軸を回転するように構成されている。このように2軸駆動可能(2自由度)とするために、ミラー101の外側に外側可動板103が必要となることから、駆動装置が大型化するという問題があった。さらに自由度を追加しようとすると、外側可動板103の外側に可動板及び梁を追加する必要があり、ジンバル構造を用いるマイクロ駆動装置では駆動装置が大型化及び複雑化するという問題点を有していた。
【0006】
そこで、そのような問題点を解決するために、1つの梁で2軸駆動可能な圧電駆動型MEMS光スキャナが提案されている(非特許文献2参照)。この光スキャナに用いられる駆動装置は、ミラーを軸支する1つのS型梁が、共振周波数ωBによって曲りを生じ、共振周波数ωTによってねじりを生じるような構造を備えている。しかし、この駆動装置も、さらに自由度を追加した構造については考慮されておらず、この構造のままで3軸駆動可能(3自由度)以上に対応することはできない。
【0007】
その他のマイクロデバイスの例として、特許文献1には、長手方向の両端の片面に圧電素子の層が上下に設けられたユニモルフ構造の支持梁に接続される一対のトーションバーを有し、この一対のトーションバーにより回転振動可能に軸支されるミラーを備える1重のジンバル構造からなる1軸のマイクロミラーが提案されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2011-191589号公報
【0009】

【非特許文献1】Arda D.Yalcinkaya, Hakan Urey, Dean Brown, Tom Montague, and Randy Sprague, “Two-AxisElectromagnetic Microscanner for High Resolution Displays,” Journal of Microelectromechanical Systems, vol. 15, no. 4, pp. 786-793, 2006.
【非特許文献2】Kah How Koh, Takeshi Kobayashi, and Chengkuo Lee, “A 2-D MEMS scanning mirror based on dynamic mixed mode excitation of a piezoelectric PZT thin film S-shaped actuator,” OPTICAL EXPRESS, Vol. 19, No. 15, pp. 13812-13824.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した従来のマイクロ駆動装置あるいはマイクロデバイスでは、高機能化するために自由度を追加することが困難であり、仮に追加できたとしても構造が複雑化して大型化してしまう問題があった。
【0011】
本発明は、かかる状況を鑑みてなされたもので、簡易な構造で、多軸駆動が可能な超小型化マイクロ駆動装置及びそれを用いたマイクロデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
多軸駆動可能なマイクロ駆動装置であって、可動対象部と、前記可動対象部を軸支し、1方向のみに設けられた少なくとも一対の梁とを備え、前記可動対象部は、前記梁が有する一つ又は複数の共振周波数で共振してねじれる又は曲がることによりx軸、y軸及びz軸方向に回転又は並進することを特徴とするマイクロ駆動装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マイクロ駆動装置に要求される自由度の数に応じて、可動対象部を軸支する1方向にのみ一対の梁を設け、上記梁を一つ又は複数の共振周波数で共振して、ねじれる又は曲がることによりx軸、y軸、z軸方向に回転又は並進するように設計し、多軸駆動が可能となる超小型化マイクロ駆動装置が提供される。また、本発明によれば、ジンバル構造を採用することなく、多軸駆動が可能であり、構造の大型化及び複雑化を回避可能な超小型化マイクロ駆動装置が提供される。さらに、本発明によれば、各自由度に対応する共振周波数を加振できる駆動方式であれば、1つの制御機構で駆動できる超小型化マイクロ駆動装置を提供することができる。これにより、ある軸方向の共振周波数で加振し、それに対応した1軸のみを駆動できるだけでなく、複数の軸方向の共振周波数を重畳した波形で加振することで、同時に多軸を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マイクロ駆動装置の概略図である。
【図2】単純化モデルの模式図である。
【図3】第一の梁及び第二の梁を有するマイクロ駆動装置の概略図である。
【図4】z軸並進するマイクロ駆動装置の概念図4Aと、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフの図4Bである。
【図5】x軸回転するマイクロ駆動装置の概念図5Aと、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフの図5Bである。
【図6】y軸回転するマイクロ駆動装置の概念図6Aと、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフの図6Bである。
【図7】光スキャナ用マイクロ駆動装置モデルの模式図である。
【図8】光スキャナ用マイクロ駆動装置モデルの模式図である。
【図9】形状パラメータの最適値を算出するフローチャート図である。
【図10】マイクロ駆動装置の作製方法を示す工程図である。
【図11】作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置のモデル図である。
【図12】評価実験における測定位置を示す模式図である。
【図13】共振周波数の変化と、測定点における変位の変化とをプロットした図13Aと、共振周波数の変化と測定点a及びbのゲインの変化とをプロットした図13Bである。
【図14】作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置がx軸回転していることを示した図である。
【図15】作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置がz軸並進していることを示した図である。
【図16】作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置がy軸回転していることを示した図である。
【図17】ジンバル構造の従来型マイクロ駆動装置を有する光スキャナを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
[マイクロ駆動装置の構成]
以下、本発明の実施形態を適宜図面に基づいて説明する。図1は、本発明によるマイクロ駆動装置1の基本構成を模式的に示したモデル図である。マイクロ駆動装置1は、可動対象部3と、この可動対象部3を取り囲むように設けられるフレーム部2と、そのフレーム部2と可動対象部3とを軸支する少なくとも一対の梁4とを備える。この梁4を1方向にのみ設けるとともに、この梁4の形状が有する一つ又は複数の共振周波数で共振して、ねじれる又は曲がることによりx軸、y軸、z軸方向に可動対象部3を回転又は並進するように設計することで、多軸駆動が可能となる構成を有している。このマイクロ駆動装置1は、例えば厚さ1~1000μm程度に薄く形成される。なお、可動対象部3を駆動するための駆動部は省略して示している。

【0016】
[共振周波数によるマイクロ駆動装置の動作背景]
図2は、単純化モデル21の模式図である。なお、単純化モデル21は、マイクロ駆動装置1の技術的特徴を説明するためのモデルである。単純化モデル21は、図2に示すように、1つの軸に対して1つの可動対象部23及び一対の梁24として単純化したモデルである。その際に、この単純化モデル21では、可動対象部23を質点と捉え、梁24の質量は無視するものとする。

【0017】
この単純化モデル21の共振周波数をエネルギー法により求めると、曲げの共振周波数f1及びねじりの共振周波数f2は、以下の数式により表される。

【0018】
【数1】
JP2015152309A1_000003t.gif

【0019】
【数2】
JP2015152309A1_000004t.gif

【0020】
ここで、単純化モデル21では、可動対象部23の質量をmm、慣性モーメントをJm、梁24は両端固定端となっており、梁幅をw、厚さをt、全長をl、ヤング率をE、横弾性係数をG、梁の断面二次モーメントをI、断面二次極モーメントをIpとする。

【0021】
ここで、E及びGは梁24の材料によって決まる定数あり、可動対象部23の質量mm及び慣性モーメントJmは可動対象部23の形状および材料で決まる定数である。また、梁の断面形状長方形の場合にはI=wt3/12及びIp=wt3/12+tw3/12となる。tが梁のどの部分でも一定であると仮定すると、上記の数式(1)及び(2)は、以下の通り、書き換えることができる。

【0022】
【数3】
JP2015152309A1_000005t.gif

【0023】
【数4】
JP2015152309A1_000006t.gif

【0024】
従って、この単純化モデル21では、曲げにおいては全長lが、ねじりにおいては梁幅wがその他パラメータよりも影響が大きくなることがわかる。上記数式(3)及び(4)における梁幅w及び全長lの値を適切に設定することで、曲げとねじりの共振周波数を設計することも可能である。そこで、本発明者らは、このように曲げとねじりの共振周波数を梁の形状によって設計することが可能になると考察した。

【0025】
[マイクロ駆動装置の詳細]
フレーム部2は、可動対象部3を囲むように矩形状に形成される。一辺の略中央に1の梁4が固定され、対向する一辺にも他の梁4が固定され、これら一対の梁4を介して可動対象部3を支持し得るように構成されている。ここでは、一対の梁4がフレーム部2に固定されているが、後で説明する第二の梁がフレーム部2に固定され、第二の梁及び梁4を介して可動対象部3を支持するように構成してもよい。本実施形態では、フレーム部2が矩形状に形成されているが、これに限定されるのではなく、本発明のマイクロ駆動装置を組み込むデバイスの形状に応じて変更でき、例えば円形状であってもよい。

【0026】
可動対象部3は、梁4がねじれる又は曲がることによって、回転又は並進の動作をする対象である。可動対象部3は、マイクロ駆動装置1の用途に応じて異なる形状及び機能を有する。この可動対象部3は、一対の梁4が当該可動対象部3を挟んで直線に並ぶように、即ち一対の梁4が一方向となるように、梁4の一端が可動対象部3に固定され、梁4の他端がフレーム部2の1辺に固定されることにより、一対の梁4を介してフレーム部2により支持される。

【0027】
図1において、この可動対象部3の形状は、長方形であるが、特に限定されるものではなく、マイクロ駆動装置1の用途によって、適宜採択することができる。例えば、マイクロ駆動装置1が光スキャナに用いられる場合には、可動対象部3又はその一部が板状又は円状のミラーであってもよい。また、マイクロ駆動装置1の用途によっては、平面的な形状でなく、例えば中央が膨らんだような立体的な形状であってもよい。また、可動対象部3又はその一部がレンズや偏光素子であってもよい。

【0028】
可動対象部3は、厚さ、長さ、半径等の形状に応じた形状パラメータを有しており、これらの形状パラメータを適宜変更することにより、梁4が有する共振周波数を変化させることができる。また、可動対象部3を形成する材料を変更することによっても、梁4が有する共振周波数を変化させることができる。

【0029】
梁4は、可動対象部3とフレーム部2の1辺に固定される。梁4は、フレーム部2に固定されるため梁4自体が回転及び並進するのではなく、自由度に対応する共振周波数で共振することで長手方向へのねじれが生じたり、所定の曲りが生じたりする。梁4がこのような動作を行うことにより、可動対象部3を回転及び並進させるように構成されている。そのため、梁4は、可動対象部3を軸支しているように動作し得る。なお、梁4は、フレーム部2に固定されて設けられていればよい。例えば、一対の梁4が可動対象部3を挟んで1方向に、例えばx軸方向に沿って直線となるように設けられていてもよい。また例えば、3本の梁4が可動対象部3を中心にして、120°間隔で放射状に設けられていてもよい。また例えば、梁4が直線形状ではなく曲線形状をしていてもよい。また例えば、上記フレーム部2の1辺ではなく、隅に固定してフレーム部2の対角線上に設けてもよい。

【0030】
この梁4は、可動対象部3の動作に応じた複数の共振周波数で共振し得るように、梁幅、長さ、厚さ、分割数及び梁間の形状パラメータを変化させることで、共振周波数の制御が可能となっている。また、梁4の形状は、作製の容易さから基本的に細長い板状であるが、必要となる共振周波数によってはその他の形状であってもよい。なお、梁4は、複数本設けることもできる。形状パラメータの変更として、1本であった梁4を複数本に分けて設けることも含まれる。例えば、梁4が1本の場合の梁幅と複数本の梁幅の合計とが同じになるように梁4を平行に分割することがあり得る。ここで、分割数とは、複数に分割した梁の本数のことであり、梁間とは、梁4を複数本設けた場合における互いの間隔のことである。

【0031】
このマイクロ駆動装置1は、Si基板から作製され、可動対象部3、フレーム部2及び梁4はSiからなる。好ましくは、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いるが、微細加工が可能な材料であれば、他の材料の基板を用いることができる。また、フレーム部2、可動対象部3及び梁4は、それぞれが異なる材料で形成されるように、例えば金属や半導体又は有機物等の他の材料、またはそれらの積層体で形成されたものを使用してもよい。この点については、実施形態3として後述する。

【0032】
<実施形態2>
[第一の梁及び第二の梁を有するマイクロ駆動装置]
発明者らは、実施形態1で説明したマイクロ駆動装置の梁の具体的な構造として、第一の方向で設けられた第一の梁と第二の方向で設けられた第二の梁を含む構造とし、第一の梁と第二の梁を直交するように配置することで、第一の梁及び第二の梁の梁形状によって、x軸回転、y軸回転及びz軸並進のそれぞれの共振周波数を容易に設計することが可能になると考察した。ここで梁形状とは、主に梁幅、長さ、分割数、梁間のことである。

【0033】
実施形態2は、第一の梁及び第二の梁を有するマイクロ駆動装置である。図3に示すようなマイクロ駆動装置11は、第一の梁14に設けられる少なくとも1つの第二の梁15を備える。この第二の梁15は、第一の梁14に対して直交するように、第一の梁14の可動対象部13側の先端から複数本配置されている。なお、第二の梁15は、少なくとも1本、第一の梁14に固定されて設けられていればよい。また、第二の梁15は、第一の梁14の方向と異なる方向に設けることができ、必ずしも直交する必要はなく、マイクロ駆動装置の用途によっては、例えば第一の梁14の方向に対して45°の角度で配置してもよい。また例えば、第二の梁15が直線形状ではなく曲線形状をしていてもよい。また例えば、第一の梁14と第二の梁15の両方またはどちらか一方が分割されていてもよい。

【0034】
この第二の梁15は、第一の梁14に固定される共振周波数で共振することで長手方向へのねじれが生じたり、所定の曲がりが生じたりすることで、第一の梁14のねじれ及び曲がりと合わせて、可動対象部3を回転及び並進させるように構成されている。即ち、第二の梁15は、第一の梁14に対して、設定可能な共振周波数の範囲を拡大するために設けられる。

【0035】
この第二の梁15は、第一の梁14と同様に、可動対象部13の動作に応じた複数の共振周波数で共振し得るように、梁幅、長さ、梁間及び厚さの形状パラメータを変化させることで、共振周波数の制御が可能となっている。また、第二の梁15の形状は、作製の容易さから基本的に細長い板状であるが、必要となる共振周波数によってはその他の形状であってもよい。

【0036】
[共振周波数によるマイクロ駆動装置の動作概要]
x軸方向の回転、y軸方向の回転及びz軸方向の並進をすることができるこのマイクロ駆動装置11の動作概要を説明する。図4は、共振周波数とマイクロ駆動装置11との関係を示す概念図(z軸並進)である。図4(A)は、z軸並進するマイクロ駆動装置の概念図であり、図4(B)は、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフである。図4(A)に示すマイクロ駆動装置11は、第二の梁15を第一の梁14に直交するように配置し、第一の梁14及び第二の梁15のそれぞれの形状パラメータを適宜設定することにより、異なる3つの周波数のピークにおいて可動対象部13の振幅が最大となるように設計されている。

【0037】
図4(B)に示すように、実線で示された周波数を第一の梁14及び第二の梁15に印加すると、一対の第一の梁14はフレーム部12側から可動対象部13側に向かってz軸方向の上側へ曲がるとともに、第二の梁15は第一の梁14付近から離れるに従ってz軸方向の上側へ曲がることにより第一の梁14のz軸方向の並進動作を補助している。その結果、このマイクロ駆動装置11は、z軸方向への並進が可能となる。

【0038】
図5は、共振周波数とマイクロ駆動装置11との関係を示す概念図(x軸回転)である。図5(A)は、x軸回転するマイクロ駆動装置の概念図であり、図5(B)は、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフである。図5(B)に示すように、点線で示された中央の周波数を第一の梁14及び第二の梁15に印加すると、両方の第一の梁14はx軸に対して矢印の方向にねじれるとともに、第二の梁15は第一の梁14を中心に回転方向上側が凸状に、回転方向下側が凹状に曲がることにより第一の梁14のx軸方向の回転動作を補助している。その結果、このマイクロ駆動装置11は、x軸方向への回転が可能となる。

【0039】
図6は、共振周波数とマイクロ駆動装置11との関係を示す概念図(y軸回転)である。図6(A)は、y軸回転するマイクロ駆動装置の概念図であり、図6(B)は、マイクロ駆動装置に印加された周波数とその振幅との関係を示したグラフである。図6(B)に示すように、一点鎖線で示された最も高い周波数を第一の梁14及び第二の梁15に印加すると、第一の梁14は一方がフレーム部12側から可動対象部13側に向かってz軸方向の上側へ曲がり、もう一方がフレーム部12側から可動対象部13側に向かってz軸方向の下側へ曲がるとともに、第二の梁15はy軸方向に対して矢印の方向にねじれることにより、第一の梁14のy軸方向の回転動作を補助している。その結果、このマイクロ駆動装置11は、y軸方向への回転が可能となる。

【0040】
マイクロ駆動装置11においては、第一の梁14と第二の梁15とを直交させる配置にすることにより、第一の梁14と第二の梁15から構成される一対の梁のみで3軸駆動可能(3自由度)、即ちx軸方向への回転、y軸方向の回転及びz軸方向の並進ができる。しかも、マイクロ駆動装置11は、第一の梁14と第二の梁15とを直交させる配置とし、これらの梁が一つ又は複数の共振周波数で共振して、ねじれる又は曲がるように設計されていることから、1つの制御機構で駆動できる。さらに、マイクロ駆動装置11は、可動対象部13や第一の梁14、第二の梁15の形状パラメータを適切に設定することにより、可動対象部13の各自由度に対する共振周波数を適切に異なるように設計できる。また、マイクロ駆動装置11は、その使用用途や設計、形状に応じた最適な位置に制御機構を設けることができる。これらのことから、本願発明のマイクロ駆動装置は、駆動装置の設計の自由度が向上し、超小型化を図ることもできる。また、本願発明のマイクロ駆動装置は、設計の自由度及び超小型化が図れることで、使用用途も大幅に拡大できる。

【0041】
以下では、第一の梁と第二の梁とが直交し、x軸方向への回転、y軸方向の回転及びz軸方向の並進が可能な実施形態2のマイクロ駆動装置を有する光スキャナの用途を想定し、実際にその用途に適合する形状及び形状パラメータを設定し、光スキャナ用マイクロ駆動装置の作製を行う。

【0042】
[マイクロ駆動装置の形状決定]
ここで、光スキャナのミラー部の面積占有率である開口率を可能な限り高くし、かつ各自由度に対する共振周波数を適切に異なる、即ちそれぞれの共振周波数のピーク間隔を広くして各自由度を独立に制御可能なようにするために、図7及び図8に示す光スキャナ用マイクロ駆動装置51の形状を決定する。図7に示す光スキャナ用マイクロ駆動装置51は、可動対象部であるアルファベットのI文字(大文字)形状に形成されたミラー部53と、一対の第一の梁Pと、第一の梁Pに直交するように設けられた第二の梁Qを支持するフレーム部を有している。図8に示す光スキャナ用マイクロ駆動装置51は、図7に示した第一の梁Pが2分割された第一の梁P及びPとなっている。

【0043】
図8に示す光スキャナ用マイクロ駆動装置51では、第一の梁P1及び第一の梁P2の梁幅を梁幅WP(第一の梁Pを分割したのでそれぞれ同じ幅となるため)、その第一の梁P1及び第一の梁P2の間隔を間隔P12、ミラー部53を挟んだ一対の第一の梁の長さを合わせた第一の梁の全長を長さlPとする。また、両端固定されている第二の梁Qの梁幅をWQとする。本実施形態では、これらの定義された形状パラメータを使用して、光スキャナ用マイクロ駆動装置51の共振周波数の最適化を行う。なお、可動対象部がミラー部53であるとして以下の説明を行うが、例えば可動対象部が他の用途であっても同様の方法で実施可能である。

【0044】
[マイクロ駆動装置の共振周波数最適化方法]
この光スキャナ用マイクロ駆動装置51における共振周波数の最適化方法では、最適に異なる共振周波数が得られる形状パラメータを取得するために、最初に与えられる形状パラメータを変化させながら、有限要素解析法により最終的な形状パラメータを決定する。本実施形態では、有限要素解析法を用いて、形状パラメータを決定したが、これに限られることなく、他の解析方法を用いることもでき、例えば、実際に形状パラメータを変更した光スキャナ用マイクロ駆動装置51を作製して最終的な形状パラメータを決定してもよい。

【0045】
この光スキャナ用マイクロ駆動装置51の有限要素解析では、計算を簡易化するために、x軸回転及びy軸回転の対称性を保ち、さらにデバイス全体の形状を正方形にして、正方形の一辺を1,500μm、ミラー部及び梁の厚さはt=30μmで一定とすることで、第一の梁Pの長さlp=1,500μmとなる。

【0046】
図9は、光スキャナ用マイクロ駆動装置51の有限要素解析において、各自由度に対応する共振周波数を最適に異なるようにする、形状パラメータの最適値を算出するフローチャートである。ここでは、図9に記載のフローチャートの手順に沿って、形状パラメータの選定手順を説明する。

【0047】
S61は、マイクロ駆動装置の用途に応じた仕様を確定する仕様確定ステップである。次いで、評価関数導出ステップであるS62は、解析中の形状パラメータにより変化する共振周波数を評価する評価関数を決定する。S63は、仕様を最低限満たしている寸法値を基準として設定(以下、基準寸法値とする)し、上述した評価関数と当該基準寸法値とを初期条件とする初期条件設定ステップである。

【0048】
S64は、形状パラメータの中から1つを選択し、選択した形状パラメータのみを基準寸法値から所定間隔で変化させながら、残りの形状パラメータを基準寸法値に固定して、有限要素解析法を用いて各間隔で共振周波数と評価関数値とを算出することを全ての形状パラメータについて行う形状パラメータ変更ステップである。但し、このS64では、任意の形状パラメータ値をとることは不可能なので、それぞれの形状パラメータにおいて適切な間隔で値を動かすこととする。

【0049】
S65は、各間隔で算出された共振周波数をそれに対応する評価関数値で評価して、各形状パラメータの最適寸法値範囲を算出する最適寸法値範囲算出ステップである。S66は、算出した各形状パラメータの最適寸法値範囲から適当な値を選び出し、それらを全て掛け合わせて新たな形状パラメータの組み合わせを作成する代表値組み合わせステップである。S67は、新たな形状パラメータの組み合わせに対して、形状パラメータ変更ステップであるS64を実行して、各間隔で算出された共振周波数をそれに対応する評価関数値で評価して、暫定基準寸法値の組み合わせを決定する暫定基準値算出ステップである。

【0050】
S68は、S67で得られる暫定基準寸法値の組み合わせを形状パラメータの新たな基準寸法値とし、基準寸法値と暫定基準寸法値とが一致するまでS64~S67を繰り返す最適値算出ステップである。なお、1回目のサイクルで、基準寸法値と暫定基準寸法値とが一致すれば再度S64~S67を繰り返す必要はない。最終的に、S68では、基準寸法値と暫定基準寸法値とが一致すれば、その一致した暫定基準寸法値を最適寸法値と考える。

【0051】
上述した共振周波数最適化方法により、本実施形態では、光スキャナ用マイクロ駆動装置51に用いる最適化された形状パラメータを、梁幅WQ=80μm、梁幅WP=10μm、長さlP=400μm、間隔P12=25μmとした。また、これらの形状パラメータを有する光スキャナ用マイクロ駆動装置51では、x軸回転共振周波数fxが4.341kHz、y軸回転共振周波数fyが33.74kHz及びz軸並進共振周波数fzが19.68kHzとの結果が得られた。

【0052】
<マイクロ駆動装置の作製方法>
光スキャナ用マイクロ駆動装置51の作製について、図10に示す工程図を基に説明する。本実施形態では、可動対象部の3次元の変位を考慮して基板の表と裏とからエッチングする必要があるため、SOI(Silicon On Insulator)の基板を用いている。これは、基板表面と基板裏面との間に設けられたSiO2層がSiエッチング時のストッパーとなり、基板表面に形成される形状を維持したまま、基板裏面からのエッチングが行えるためである。

【0053】
使用したSOIウエハーは、シリコン層30μm(以下、表面という)、SiO2層2μm及びシリコン層250μm(以下、裏面という)の3層からなる。図10に示すS71では、SOI基板81上に界面活性剤OAP(東京応化工業株式会社)をスピンコーティングにより塗布して乾燥させた後、その上にポジ型フォトレジスト82であるOFPR(東京応化工業株式会社)をスピンコーティングにより塗布した。塗布したポジ型フォトレジスト82には、フォトマスクに描かれた光スキャナ用マイクロ駆動装置51のパターンを紫外線照射により焼き付けた。露光したSOI基板81を現像液に浸すことにより、焼き付けたパターン以外の不要なフォトレジスト82を除去した。

【0054】
S72では、焼き付けたパターンを基板のSi上層83に転写するためにSiエッチングをSiO2層84まで行って、Si上層83にパターンを形成した。このSiエッチングは、SF6、酸素及びC4F8を用いたドライエッチングで行った。ここでは、ドライエッチングを用いたが、例えばウェットエッチングを用いてもよい。

【0055】
S73では、Si上層83のパターン上の残ったフォトレジスト82を溶剤等を用いて除去した。この溶剤は、フォトレジスト除去として用いられるものであれば種類は問わない。ここでは、アセトン、イソプロパノール及び硫酸過酸化水素水を用いてレジスト除去を行った。

【0056】
S74~S76では、SOI基板81の裏面側からS71~S73と同様にして、Si下層85をSiO2層84までSiエッチングして基板裏面側のパターンを形成した。

【0057】
S77では、SiO2層を除去した。ここでは、フッ酸水溶液を用いたが、Si層をエッチングせずSiO2層のみをエッチングできればよく、例えばドライエッチングを用いてもよい。図11に工程図に示されたS71~S77の各工程を経て作製された実施形態2の光スキャナ用マイクロ駆動装置を示す。

【0058】
[マイクロ駆動装置の評価]
(評価方法)
作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置の特性を評価するために、このマイクロ駆動装置に加振して、その際の特定点におけるz軸方向の変位を測定した。これにより、この光スキャナ用マイクロ駆動装置が仕様通りの共振周波数で3種類のモードを示しているか評価した。

【0059】
図12は、光スキャナ用マイクロ駆動装置をz軸方向から見た2次元形状の模式図である。図12に示すように、測定点として3点a、b、cを設定した。但し、光スキャナ用マイクロ駆動装置の外に測定点cを設けたのは、加振した際にマイクロ駆動装置を支える外部の機構も振動するため、その外部の振動を差し引き、加振時における純粋な光スキャナ用マイクロ駆動装置のミラー部の変位を求めるためである。

【0060】
測定点a及びbの変位の測定により、次のようなことを判断することができる。測定点aが変位せず測定点bが変位している場合には、ミラー部がx軸回転していると判断できる。また、測定点a及びbが変位している場合には、z軸並進をしていると判断でき、測定点aが変位して測定点bが変位していない場合には、y軸回転していると判断できる。

【0061】
測定点における変位の測定では、レーザードップラー振動計(Polytec製,MSA- 500)を使用した。また加振器としてピエゾアクチュエータを用いて光スキャナ用マイクロ駆動装置に加振した。加振時は、20mm角に製作されている光スキャナ用マイクロ駆動装置を支えるために、ピエゾアクチュエータの上にアルミ板を挟んで固定した。レーザードップラー振動計は、指定した範囲で指定した点の個数だけ変位計測が可能であるが、上記した3つの測定点の変位のみ抽出し、それらの共振周波数及び共振モードを計測した。加振時の駆動電圧は、片振幅2Vとした。

【0062】
(評価結果)
作製した光スキャナ用マイクロ駆動装置に対して、上述した評価方法に従って光スキャナ用マイクロ駆動装置としての特性を評価した。図13(A)に光スキャナ用マイクロ駆動装置に印加された周波数とその変位との関係(周波数-変位グラフ)を示した。図13(B)に光スキャナ用マイクロ駆動装置に印加された外部の変位を差し引いて算出した周波数とゲインとの関係(周波数-ゲイングラフ)を示した。

【0063】
図13(A)に示された周波数-変位グラフによれば、低い周波数のピークから順に、測定点bのみが変位し、測定点a及びbが変位し、測定点aのみが変位していることが分かる。図13(B)に示された周波数-ゲイングラフを検討すると、周波数-変位グラフの最も低いピークに該当する共振周波数近傍では、測定点bの変位成分のみが存在している。また、周波数-変位グラフの中央のピークに該当する共振周波数近傍では、測定点a及びbの変位成分が同じ強さで重なっている。

【0064】
さらに、周波数-変位グラフの最も高いピークに該当する共振周波数近傍では、測定点bの変位成分が高い共振周波数も多少存在しているが、ほとんど測定点aの変位成分であることが分かる。この評価結果に基づいて、各軸の動作に対応する独立した共振周波数を選択した。

【0065】
次いで、選択した共振周波数で行った光スキャナ用マイクロ駆動装置の駆動の様子を、3Dグラフィックスにして図14~16に示した。測定点bのみが変位する最も低いピーク付近の2.781kHzの共振周波数を光スキャナ用マイクロ駆動装置に加振すると、図14に示すようにx軸回転モードを示した。この結果は、共振周波数最適化方法で得られたx軸回転共振周波数fxと近い周波数でx軸回転していることが示されている。

【0066】
また、測定点a及びbの変位成分が同じ強さで重なっている中央のピーク付近の17.31kHzの共振周波数を光スキャナ用マイクロ駆動装置に加振すると、図15に示すようにz軸並進モードを示した。この結果は、共振周波数最適化方法で得られたz軸並進共振周波数fzと近い周波数でz軸並進していることを示している。

【0067】
また、測定点aのみが変位している最も高いピーク付近の29.50kHzの共振周波数を光スキャナ用マイクロ駆動装置に加振すると、図16に示すようにy軸回転モードを示した。この結果は、共振周波数最適化方法で得られたy軸回転共振周波数fyと近い周波数でy軸回転していることが示されている。

【0068】
以上の構成において、本発明のマイクロ駆動装置は、第一の梁P及び第二の梁Qが直交して設けられており、かつ形状パラメータを最適化すると、最適に異なる3つの共振周波数が得られることから、第一の梁P及び第二の梁Qが各共振周波数に応じてねじれる又は曲がることで、可動対象部をx軸回転、y軸回転及びz軸並進することができる。そのため、本発明のマイクロ駆動装置からなる光スキャナ用マイクロ駆動装置は、簡易な構造により小型化できるとともに、z軸並進によりフォーカス機能を備えることができ、ミラー部をフレーム部の内側において最大限に拡張できる構成のため、開口率を高くすることもできる。

【0069】
<実施形態3>
実施形態1及び2では、SOI基板をエッチング加工して、フレーム部、可動対象部、第一の梁及び第二の梁を作製し、これらの構成部材をシリコンとするマイクロ駆動装置について説明した。実施形態3のマイクロ駆動装置では、上記構成部材として異なる材料を使用できるようにし、作製方法としてもエッチング加工だけでなく、蒸着等の積層プロセスを追加することにより、それぞれの構成部材に使用する材料を積層し得るようにしている。構成部材としてこのような材料を用いることにより、材料パラメータを増やすことが可能となり、共振周波数最適化がより望めるようになる。

【0070】
実施形態3のマイクロ駆動装置に使用可能な材料として、金、銀、アルミニウム等の金属材料、炭素、金属酸化物等の無機材料、及びポリアミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機材料が挙げられる。これらの材料は、微細加工時に使用できる材料であればどの材料を用いてもよい。また、単一の材料で各構成部材を作製するだけでなく、複数の材料を積層したような複合材料を構成部材の材料として用い、各構成部材を作製することもできる。

【0071】
以上の実施形態1及び2と異なる構成において、実施形態3のマイクロ駆動装置は、フレーム部、可動対象部、第一の梁及び第二の梁のうち少なくとも1つを異なる材料で作製するため、共振周波数を制御できるパラメータが増加する。その結果、各共振周数の間隔を広げることができる。それにより、可動対象部及び第一の梁を有機材料で作製し、フレーム部及び第二の梁を金属又は無機材料で作製したようなマイクロ駆動装置では、例えば、x軸回転の周期を遅くし、y軸回転の周期及びZ軸並進の周期を非常に速くするようにすることもできる。さらに、実施形態3のマイクロ駆動装置は、複数に分割されている部分を有する第一の梁及び/又は第二の梁を備えるとともに、当該分割されている部分の一の部分が他の部分と異なる材料となるように設計されていてもよい。

【0072】
[マイクロデバイス]
本発明のマイクロ駆動装置を組み込むことで、多軸駆動を実現するマイクロデバイスを作製することが可能となる。マイクロデバイスの使用用途に応じて可動対象部を変更し、必要な自由度に応じて、第一の梁と第二の梁の配置方法及び材料を選定して作製することにより、所望のマイクロデバイスを得ることができる。マイクロデバイスの例としては、可動対象部をミラーとするマイクロミラーに限らず、可動対象部をシャフトやアーム等の機械部品、圧力センサや光学センサ等のセンサとする、多軸駆動するマイクロマシンやマイクロセンサ等が挙げられる。

【0073】
[マイクロ駆動装置用共振周波数決定プログラム]
本発明のマイクロ駆動装置を製造する際に適用した共振周波数最適化方法は、コンピュータ処理によって実現することができる。マイクロ駆動装置の共振周波数の最適化方法をコンピュータに実行させるためのプログラムをCPUがRAM上に展開し、当該プログラムに従って、上記共振周波数最適化方法をコンピュータが実行することができる。当該プログラムはコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて、コンピュータにインストールしても良いし、ネットワークを介して他のコンピュータや記録媒体からインストールしても良い。

【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、当該実施形態はあくまでも例として提示したに過ぎず、発明の範囲を限定することを意図していない。ここに提示した実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明のマイクロ駆動装置は、一方向のみに設けられた梁を備え、多軸駆動可能であり、かつ小型化された装置であるため、超小型化、微細化が要求されるマイクロデバイスに適用することができる。このため、本発明のマイクロ駆動装置は、電子機器関連産業の発達に寄与することができる。また、可動対象部がミラーであるマイクロミラー駆動装置は、光センサ等の各種センサに用いられ、MEMS光スキャナ等として採用することができるため、電子光学機器産業の発達に大きく貢献することができる。また、この本願発明によるマイクロ駆動装置を用いた光スキャナをヘッドマウントディスプレイに応用すれば、このヘッドマウントディスプレイは、従来の2次元画像のみならず3次元画像を映し出すことが可能となり、画像技術の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
1,11 マイクロ駆動装置
2,12 フレーム部
3,13 可動対象部
4 梁
14 第一の梁
15 第二の梁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16