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明細書 :ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムを含む膜を備える半導体構造およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6133991号 (P6133991)
登録日 平成29年4月28日(2017.4.28)
発行日 平成29年5月24日(2017.5.24)
発明の名称または考案の名称 ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムを含む膜を備える半導体構造およびその製造方法
国際特許分類 H01L  21/316       (2006.01)
H01L  21/318       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  29/78        (2006.01)
C23C  14/58        (2006.01)
C23C  14/06        (2006.01)
C23C  14/08        (2006.01)
FI H01L 21/316 P
H01L 21/316 Y
H01L 21/318 C
H01L 29/78 301B
H01L 29/78 301G
C23C 14/58 A
C23C 14/06 A
C23C 14/08 J
C23C 14/08 A
請求項の数または発明の数 18
全頁数 31
出願番号 特願2015-534036 (P2015-534036)
出願日 平成26年6月6日(2014.6.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 発行日 平成26年3月3日 刊行物名 第61回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集 発行者名 公益社団法人応用物理学会
国際出願番号 PCT/JP2014/065144
国際公開番号 WO2015/029535
国際公開日 平成27年3月5日(2015.3.5)
優先権出願番号 2013179912
2013195887
優先日 平成25年8月30日(2013.8.30)
平成25年9月20日(2013.9.20)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成28年3月4日(2016.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】鳥海 明
【氏名】田畑 俊行
【氏名】李 忠賢
【氏名】西村 知紀
【氏名】魯 辞莽
個別代理人の代理人 【識別番号】100087480、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 修平
審査官 【審査官】河合 俊英
参考文献・文献 国際公開第2006/025350(WO,A1)
特開2010-219536(JP,A)
K.KITA(他5名),Control of high-k/germanium interface properties through selection of high-k materials and suppressi,Applied Surface Science,NL,Elsevier,2008年 7月30日,Volume 254, Issue 19,pp.6100-6105
T.NISHIMURA(他6名),Electron Mobility in High-k Ge-MISFETs Goes Up to Higher,2010 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers,米国,IEEE,2010年 6月17日,p.209-210
調査した分野 H01L 21/316
C23C 14/06
C23C 14/08
C23C 14/58
H01L 21/318
H01L 21/336
H01L 29/78
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲルマニウム層と、
前記ゲルマニウム層の上面に形成され、酸化ゲルマニウムと、アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの酸化物と、からなり、物理膜厚が3nm以下の第1絶縁膜と、
を具備し、
前記ゲルマニウム層と前記第1絶縁膜との界面における前記第1絶縁膜内の前記アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの元素の前記少なくとも1つの元素とゲルマニウムとの和に対する原子組成比は10%以上かつ30%以下であることを特徴とする半導体構造。
【請求項2】
アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つは、イットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムの少なくとも1つの金属であることを特徴とする請求項1記載の半導体構造。
【請求項3】
前記第1絶縁膜は、酸化ゲルマニウムと、酸化イットリウムおよび酸化スカンジウムの少なくとも1つと、からなることを特徴とする請求項1記載の半導体構造。
【請求項4】
ゲルマニウム層と、
前記ゲルマニウム層の上面に形成され、酸化ゲルマニウムと、酸化ゲルマニウムと、酸化イットリウムおよび酸化スカンジウムの少なくとも1つと、からなり、物理膜厚が3nm以下の第1絶縁膜と、
を具備し、
前記ゲルマニウム層と前記第1絶縁膜との界面における前記第1絶縁膜内のイットリウムおよびスカンジウムの少なくとも1つの元素の前記少なくとも1つの元素とゲルマニウムとの和に対する原子組成比は6%以上かつ30%以下であることを特徴とする半導体構造。
【請求項5】
前記第1絶縁膜は、酸化ゲルマニウムと酸化イットリウムとからなることを特徴とする請求項1または4記載の半導体構造。
【請求項6】
前記第1絶縁膜上に形成された酸化シリコンより誘電率の高い第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を具備することを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の半導体構造。
【請求項7】
前記第1絶縁膜上に酸化シリコン膜より誘電率の高い第2絶縁膜を介さず形成されたゲート電極を具備することを特徴とする請求項1からのいずれか一項記載の半導体構造。
【請求項8】
ゲルマニウム層と、
前記ゲルマニウム層の上面に形成され、酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とからなり、物理膜厚が3nm以下の第1絶縁膜と、
を具備し、
前記ゲルマニウム層の上面の1μm平方内の高さ頻度の半値幅は0.7nm以下であり、
前記物質は、窒化ゲルマニウム、または前記ゲルマニウム層と前記第1絶縁膜との界面におけるイットリウムとスカンジウムとの少なくとも一方の元素の前記少なくとも一方の元素とゲルマニウムとの和に対する原子組成比は10%以上かつ30%以下である酸化イットリウムおよび酸化スカンジウムの少なくとも一方であることを特徴とする半導体構造。
【請求項9】
前記物質は、窒化ゲルマニウムであることを特徴とする請求項8記載の半導体構造。
【請求項10】
前記第1絶縁膜上に形成された金属層を具備することを特徴とする請求項8または9記載の半導体構造。
【請求項11】
前記第1絶縁膜と前記金属層との間に形成された前記第1絶縁膜とは組成の異なる第2絶縁膜を具備することを特徴とする請求項10記載の半導体構造。
【請求項12】
前記半値幅は、0.5nm以下であることを特徴とする請求項8から11のいずれか一項記載の半導体構造。
【請求項13】
ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含み、物理膜厚が3nm以下の第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜を、酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および前記第1絶縁膜を形成するときの温度より高い熱処理温度において熱処理する工程と、
を含むことを特徴とする半導体構造の製造方法。
【請求項14】
前記物質は、酸化イットリウム、酸化スカンジウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1つを主に含み、
前記第1絶縁膜におけるイットリウム、スカンジウムおよびアルミニウムの少なくとも1つの元素の前記少なくとも1つの元素とゲルマニウムとの和に対する原子組成比は10%以上かつ30%以下であることを特徴とする請求項13記載の半導体構造の製造方法。
【請求項15】
前記第1絶縁膜上に前記第1絶縁膜とは組成の異なる第2絶縁膜を形成する工程を含み、
前記熱処理する工程は、前記第2絶縁膜を形成した後に行なうことを特徴とする請求項13または14記載の半導体構造の製造方法。
【請求項16】
前記酸化性ガス雰囲気は酸素ガス雰囲気であることを特徴とする請求項13から15のいずれか一項記載の半導体構造の製造方法。
【請求項17】
ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜を、酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および前記第1絶縁膜を形成するときの温度より高い熱処理温度において熱処理する工程と、
を含み、
前記熱処理する工程後の前記ゲルマニウム層の上面の1μm平方内の高さ頻度の半値幅は0.7nm以下であることを特徴とする半導体構造の製造方法。
【請求項18】
ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜を、酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および前記第1絶縁膜を形成するときの温度より高い熱処理温度において熱処理する工程と、
を含み、
前記圧力は、前記ゲルマニウム層の上面が平坦化される圧力であることを特徴とする半導体構造の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構造およびその製造方法に関し、ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムを含む膜を備える半導体構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルマニウム(Ge)は、シリコン(Si)に比べ優れた電子物性を有する半導体である。ゲルマニウムを半導体層としたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が知られている(例えば非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】ECS Transactions, 25(6) (2009) pp301-306
【非特許文献2】Japanese Journal of Applies Physics 51 (2012) 02BF07
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ゲルマニウム層を用いてMOSFETを形成する場合、ゲルマニウム層とゲート絶縁膜との界面の平坦性(表面粗さ)が重要となる。ゲルマニウム層表面の平坦性が低いと、トランジスタ特性が劣化する、または、トランジスタの長期信頼性が低下する。
【0005】
または、絶縁膜を形成後の製造工程等により、絶縁膜および/または絶縁膜とゲルマニウム層との界面が劣化する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、上面に絶縁膜が形成されたゲルマニウム層上面の平坦性を向上させること、または、絶縁膜および/または絶縁膜とゲルマニウム層との界面の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゲルマニウム層と、前記ゲルマニウム層の上面に形成され、酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む第1絶縁膜と、を具備し、前記ゲルマニウム層の上面の1μm平方内の高さ頻度の半値幅は0.7nm以下であることを特徴とする半導体構造である。
【0008】
上記構成において、前記物質は、窒化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1つを主に含む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1絶縁膜上に形成された金属層を具備する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1絶縁膜と前記金属層との間に形成された前記第1絶縁膜とは組成の異なる第2絶縁膜を具備する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記半値幅は、0.5nm以下である構成とすることができる。
【0012】
本発明は、ゲルマニウム層上に酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む第1絶縁膜を形成する工程と、前記第1絶縁膜を、酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および前記第1絶縁膜を形成する際の温度より高い熱処理温度において熱処理する工程と、を含むことを特徴とする半導体構造の製造方法である。
【0013】
上記構成において、前記物質は、窒化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1つを主に含む構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1絶縁膜上に前記第1絶縁膜とは組成の異なる第2絶縁膜を形成する工程を含み、前記熱処理する工程は、前記第2絶縁膜を形成した後に行なう構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記酸化性ガス雰囲気は酸素ガス雰囲気である構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記ゲルマニウム層の上面の1μm平方内の高さ頻度の半値幅は0.7nm以下である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記圧力は、前記ゲルマニウム層の上面が平坦化される圧力である構成とすることができる。
【0018】
本発明は、ゲルマニウム層と、前記ゲルマニウム層の上面に形成され、酸化ゲルマニウムと、アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの酸化物と、を主に含む第1絶縁膜と、を具備することを特徴とする半導体構造である。
【0019】
上記構成において、アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つは、イットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムの少なくとも1つの金属である構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第1絶縁膜における前記アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの元素の前記少なくとも1つの元素とゲルマニウムとの和に対する原子組成比は6%以上かつ30%以下である構成とすることができる。
【0021】
上記構成において、前記少なくとも1つの元素は、イットリウムである構成とすることができる。
【0022】
上記構成において、前記第1絶縁膜上に形成された酸化シリコンより誘電率の高い第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を具備する構成とすることができる。
【0023】
上記構成において、前記第1絶縁膜上に酸化シリコン膜より誘電率の高い第2絶縁膜を介さず形成されたゲート電極を具備する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上面に絶縁膜が形成されたゲルマニウム層上面の平坦性を向上させること、または、絶縁膜および/または絶縁膜とゲルマニウム層との界面の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、酸化前のゲルマニウム基板のRMSに対する酸化ゲルマニウム膜を除去した後のRMSを示す図である。
【図2】図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、ゲルマニウム基板の上面の1μm×1μm内の各測定点について、高さに対する頻度を示す図である。
【図4】図4は、実施例1におけるC-V特性を示す図である。
【図5】図5(a)は、膜厚に対する超高真空中で一酸化ゲルマニウムが検出されるピーク温度を示す図、図5(b)は、窒素雰囲気で熱処理したサンプルについて高さに対する頻度を示す図である。
【図6】図6(a)は、膜厚に対する一酸化ゲルマニウムが超高真空中で検出されるピーク温度を示す図である。図6(b)は、熱処理時間に対する膜厚を示す図である。
【図7】図7(a)から図7(d)は、AFM画像を示す図である。
【図8】図8(a)は、AFM画像、図8(b)は、断面プロファイルを示す図である。
【図9】図9は、実施例2におけるC-V特性を示す図である。
【図10】図10は、実施例3におけるC-V特性を示す図である。
【図11】図11は、温度に対する酸素ポテンシャルを示す図である。
【図12】図12(a)から図12(c)は、実施例4に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図13】図13(a)から図13(d)は、実施例5に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図14】図14は、実施例6に係る半導体装置の断面図である。
【図15】図15(a)から図15(d)は、実施例7に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図16】図16は、実施例7におけるエッチング時間に対する絶縁膜の膜厚を示す図である。
【図17】図17は、実施例7における絶縁膜のY濃度に対する比誘電率および絶縁膜上面のRMSを示す図である。
【図18】図18(a)は、実施例7における絶縁膜内のX線照射時間に対するGe4+3dの結合エネルギーを示す図である。図18(b)は、実施例7における絶縁膜内のY濃度に対する電子トラッピングエネルギーを示す図である。
【図19】図19は、実施例7における絶縁膜の波数に対する赤外線(IR)吸収を示す図である。
【図20】図20は、実施例7に係る半導体構造における放置時間に対するC-V測定におけるヒステリシスを示す図である。
【図21】図21は、実施例7に係る半導体構造における絶縁膜のY濃度に対する界面準位密度Ditを示す図である。
【図22】図22は、実施例7における絶縁膜の膜厚に対するリーク電流Jgを示す図である。
【図23】図23(a)および図23(b)は、実施例7に係る半導体構造における面電子密度Nに対する移動度μeffを示す図である。
【図24】図24は、実施例8におけるエッチング時間に対する絶縁膜の膜厚を示す図である。
【図25】図25は、実施例8における絶縁膜の膜厚に対するTDSのピーク温度を示す図である。
【図26】図26(a)および図26(b)は、実施例9に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図27】図27は、実施例9に係る半導体構造の製造方法における熱処理温度に対する絶縁膜のEOTを示す図である。
【図28】図28(a)から図28(d)は、実施例10に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図29】図29(a)から図29(d)は、実施例11に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。
【図30】図30は、実施例12におけるエッチング時間に対する絶縁膜22の膜厚を示す図である。
【図31】図31は、実施例12における絶縁膜22の膜厚に対するTDSのピーク温度を示す図である。
【図32】図32(a)から図32(c)は、絶縁膜22内のネットワークの模式図である。
【図33】図33は、イオン半径に対する配位数を示す図である。
【図34】図34は、実施例12における絶縁膜22の波数に対する赤外線吸収を示す図である。
【図35】図35(a)および図35(b)は、Ge4+3dの結合エネルギーに対するXPS強度を示す図である。
【図36】図36は、絶縁膜22内の結合状態を示す模式図である。
【図37】図37は、イオン半径に対するDitを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
シリコン層表面を平坦化する際に、シリコン層表面を酸化させ、酸化膜を除去することによりシリコン層表面を平坦化する方法がある。そこで、ゲルマニウム層の表面を酸化させ、酸化膜を除去することにより、ゲルマニウム層の表面を平坦化させる方法を検討した。(100)面を主面とするゲルマニウム基板を準備した。ゲルマニウム基板表面を高温純水を用い処理することにより、意図的に凹凸を形成した。ゲルマニウム基板の表面のRMS(Root Mean Square:二乗平均の平方根)を測定した。ゲルマニウム基板表面を、HPO(High Pressure Oxidation)法を用い温度が550℃かつ時間が10分の熱酸化を行なった。次にLOA(Low Temperature O2 Annealing)法を用い、温度が400℃かつ時間が60分の酸素雰囲気下で熱処理を行なった。これにより、膜厚が約15nmの酸化ゲルマニウム膜を形成した。その後、希フッ酸を用い酸化ゲルマニウム膜を除去した。その後、ゲルマニウム基板の表面のRMSを測定した。RMSの測定にはAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)法を用いた。

【0027】
図1は、前述の方法を用いた、意図的な凹凸形成後である酸化前のゲルマニウム基板のRMSに対する酸化ゲルマニウム膜を除去した後のRMS(測定範囲は2μm□)を示す図である。ドットが測定点、縦横のバーは誤差を示す。図1に示すように、ゲルマニウム基板表面を酸化させた後、酸化ゲルマニウム膜を除去してもゲルマニウム基板表面の平坦性は向上しない。

【0028】
発明者らは、酸化ゲルマニウム膜に酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質を含有させ、酸化性ガス雰囲気において熱処理することにより、ゲルマニウム基板の表面が平坦化することを見出した。以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、酸素ポテンシャルが低い物質として窒化ゲルマニウムを用いる例である。図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図2(a)に示すように、ゲルマニウム基板10を準備する。ゲルマニウム基板10は(100)面を主面とし、ドーパントがGa(ガリウム)であり、ドーパント濃度が約1×1016cm-3のp型である。ゲルマニウム基板10の表面粗さの変化を調べるため、ゲルマニウム基板10の表面を過酸化水素水(H)処理した。
【実施例1】
【0030】
図2(b)に示すように、ゲルマニウム基板10上に絶縁膜12として窒化酸化ゲルマニウム膜を形成する。絶縁膜12は、ゲルマニウムをターゲットとし、窒素ガスおよび酸素ガスを用いた反応性スパッタリング法を用い形成する。または、二酸化ゲルマニウムをターゲットとして窒素ガスを用いてスパッタリングすることにより絶縁膜12を形成することもできる。
【実施例1】
【0031】
図2(c)に示すように、酸素ガス雰囲気(酸素ガスが100%)において、ゲルマニウム基板10を熱処理する。図2(d)に示すように、熱処理後に、窒化酸化ゲルマニウム膜である絶縁膜12の表面に金属膜16として金(Au)膜を形成する。
【実施例1】
【0032】
絶縁膜12の膜厚を6.6nm、窒素の原子組成比(窒素/(酸素+窒素))を10原子%とし、図2(c)における熱処理を行なった。熱処理条件は、熱処理温度が550℃および600℃、熱処理時間が5分間、酸素ガス圧力が1気圧、10気圧および70気圧である。なお、ガス圧力は、室温(約25℃)での圧力である。すなわち、室温において上記ガス圧力でサンプルを密閉後、温度を上げ熱処理を行なっている。このため、熱処理時のガスの圧力は、上記ガス圧力より大きい。以下の実施例においても同様である。
【実施例1】
【0033】
比較のため、絶縁膜12として窒化酸化ゲルマニウム膜を形成した後、熱処理を行なっていないサンプル(as-depoと記載する)も作製した。
【実施例1】
【0034】
図2(c)の後、絶縁膜12を水を用い除去した。各サンプルの表面をAFM法を用い観察した。
【実施例1】
【0035】
図3(a)および図3(b)は、ゲルマニウム基板の上面の1μm×1μm内の各測定点について、高さに対する頻度を示す図である。高さはゲルマニウム基板10の表面の高さ(基準高さは任意)を示している。図3(a)および図3(b)は、酸素ガス雰囲気における熱処理温度がそれぞれ550℃および600℃である。各図において、各頻度を直線で結んでいる。太実線、実線線、点線および破線は、それぞれ、圧力が1気圧、10気圧、70気圧およびas-depoの測定結果を示している。高さに対する頻度(これを頻度分布という)の半値幅は、以下である。なお、半値幅が小さいほど平坦性が良好なことを示している。
熱処理温度 550℃ 600℃
圧力: 1気圧 0.8nm 0.8nm
圧力:10気圧 0.8nm 0.5nm
圧力:70気圧 0.8nm 1.3nm
as-depo 0.8nm 0.8nm
【実施例1】
【0036】
図3(a)に示すように、熱処理温度が550℃のサンプルでは、圧力によらず頻度分布はas-depoとほとんど同じである。一方、図3(b)に示すように、熱処理温度が600℃のサンプルでは、圧力により頻度分布が異なる。1気圧では、as-depoとほぼ同じ頻度分布である。10気圧では、as-depoより頻度分布が急峻である。これは、10気圧では、1気圧およびas-depoに比べ、ゲルマニウム基板10の表面が平坦であることを示している。70気圧では、as-depoより頻度分布が緩やかである。
【実施例1】
【0037】
熱処理温度が600℃、圧力が10気圧であるサンプルについて、図2(d)のように絶縁膜12上に金属膜16を形成し、室温においてC-V測定を行なった。図4は、実施例1におけるC-V特性を示す図である。ドットは測定点である。測定周波数は、1MHzである。図4に示すように、ヒステリシスはほとんど観測されず、蓄積状態と反転状態との間のキャパシタンスが急峻に変化している。これにより、熱処理温度が600℃、圧力が10気圧であるサンプルにおいては、良好なMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造が形成されていることがわかる。

【実施例1】
【0038】
このように、ゲルマニウム基板10上に窒化酸化ゲルマニウム膜を形成した後、高圧の酸素ガス雰囲気において熱処理することによりゲルマニウム基板10の表面が平坦化する。この理由を調べるため、超高真空中で窒化酸化ゲルマニウム膜および二酸化ゲルマニウム(GeO)膜のTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析を行なった。
【実施例1】
【0039】
図5(a)は、膜厚に対する一酸化ゲルマニウム(M/z=90:GeO)が検出されるピーク温度を示す図である。四角ドットは二酸化ゲルマニウム膜の測定点を示し、白丸ドットは窒化酸化ゲルマニウム膜(窒素の原子組成比が20%)の測定点を示す。曲線は近似曲線である。温度の上昇レートは20℃/分であり、測定真空度は2×10-7Paである。
【実施例1】
【0040】
図5(a)に示すように、ゲルマニウム基板10上の窒化酸化ゲルマニウム膜から一酸化ゲルマニウムガスが放出される温度は、ゲルマニウム基板10上の二酸化ゲルマニウム膜から一酸化ゲルマニウムのガスが放出される温度に比べ150℃高くなる。なお、この温度差は、窒化酸化ゲルマニウム膜の膜厚にも依存する。これは、窒化ゲルマニウムの酸素ポテンシャル(酸素の部分モルギブス自由エネルギー)が二酸化ゲルマニウムより低いため、窒化ゲルマニウムが一酸化ゲルマニウムの放出を抑制するためである。
【実施例1】
【0041】
さらに、熱処理を窒素ガス雰囲気で行なった。実験の詳細は以下である。まず、絶縁膜12として窒化酸化ゲルマニウム膜を形成する。絶縁膜12の膜厚は7.3nm、窒素の原子組成比(窒素/(酸素+窒素))は11原子%である。その後、窒素ガス雰囲気において熱処理を行なった。熱処理温度は600℃である。その後、絶縁膜12を水を用い除去した。各サンプルの表面をAFM法を用い観察した。
【実施例1】
【0042】
図5(b)は、窒素雰囲気で熱処理したサンプルについて高さに対する頻度を示す図である。図5(b)において、各ドットは、熱処理時の窒素ガスの圧力が1気圧、10気圧、70気圧およびas-depoの測定結果を示している。図5(b)に示すように、いずれの条件においても頻度分布の半値幅は0.7nmより大きい。1気圧、10気圧および70気圧のいずれの圧力で窒素ガス熱処理しても、as-depoに対し絶縁膜12の膜厚は変化せず、かつ平坦化されていない。
【実施例1】
【0043】
これらのことより、ゲルマニウム基板10の表面が平坦化されるメカニズムは以下のように考えられる。窒化酸化ゲルマニウム膜がゲルマニウム基板10上に形成された状態で酸素熱処理される場合には、ゲルマニウム基板10の表面は、600℃程度の温度でもほとんど酸化されない。これは、窒化酸化ゲルマニウム膜の酸素ポテンシャルが窒化ゲルマニウムの存在により低下し、酸素の拡散が大きく抑制され、ゲルマニウムの酸化が抑制されるためと考えられる。ゲルマニウム基板10と窒化酸化ゲルマニウム膜との界面におけるゲルマニウム原子は高温において移動しやすくなることで、ゲルマニウム原子はゲルマニウム基板10と窒化酸化ゲルマニウム膜との間を移動する、および/または、ゲルマニウム基板表面の最も酸素反応しやすい部分がわずかな酸素と結合する。これにより、ゲルマニウム基板10と窒化酸化ゲルマニウム膜との界面が平坦化される。このとき、界面におけるゲルマニウム原子の移動、ゲルマニウム基板10表面におけるゲルマニウムの酸化、および窒化酸化ゲルマニウム膜からの一酸化ゲルマニウムガスの放出の速度、がバランスすることにより、界面が平坦化されると考えられる。
【実施例1】
【0044】
図1のように、二酸化ゲルマニウム膜に酸素ポテンシャルの低い物質を含ませず熱処理する。この場合、一酸化ゲルマニウムの放出速度が速くなり、ゲルマニウム基板10の表面は平坦化されない。
【実施例1】
【0045】
図3(a)のように、熱処理温度が低いと、界面におけるゲルマニウム原子が移動しにくく、ゲルマニウム基板10の表面は平坦化されない。
【実施例1】
【0046】
図3(b)の1気圧のように、酸素ガスの圧力が大気圧では、界面におけるゲルニウムの酸化が進まず、ゲルマニウム基板10の表面は平坦化されない。
【実施例1】
【0047】
図3(b)の70気圧のように、酸素ガスの圧力が高くなりすぎ、ゲルマニウム基板10の界面の酸化速度が速くなりすぎると、ゲルマニウム基板10の表面の平坦化は抑制される。
【実施例1】
【0048】
さらに、図5(b)のように、酸素を含有しないガス雰囲気で熱処理しても、ゲルマニウム基板10の表面は酸化されず、ゲルマニウム基板10の表面は平坦化されない。これは、酸素を含有しないガス雰囲気で熱処理しても、ゲルマニウム基板表面の最も酸素反応しやすい部分がわずかな酸素と結合するということがないためと考えられる。
【実施例1】
【0049】
図3(b)の10気圧のように、酸素ガス雰囲気下においてゲルマニウム基板10の界面を酸化することによって、ゲルマニウムの酸化がある程度抑制され、界面の平坦化が実現される。
【実施例1】
【0050】
このように、ゲルマニウム基板10上に酸化ゲルマニウムと酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む絶縁膜を形成する。ゲルマニウム基板10表面の平坦性が得られるための熱処理条件は、酸化ゲルマニウム膜中の酸素ポテンシャルの低い物質の種類および濃度に関連する。少なくとも、酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および絶縁膜12を形成する際の温度より高い熱処理温度において熱処理する。これにより、ゲルマニウム層30の上面の平坦性を向上できる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、酸化ポテンシャルの低い物質として、酸化イットリウム(Y)を用いる例である。
【実施例2】
【0052】
実施例2に係る半導体構造の製造方法は、実施例1の図2(a)から図2(d)と同じである。図2(a)において、(111)を主面とする単結晶ゲルマニウム基板10を準備する。ゲルマニウム基板10のドーパントおよび濃度は実施例1と同じである。図2(b)において、絶縁膜12として、酸化ゲルマニウムと酸化イットリウムとを主に含むYGO膜を形成する。YGO膜は、酸化ゲルマニウム(GeO)と酸化イットリウム(Y)をターゲットとし、アルゴンガスを用いたスパッタリング法を用い形成する。なお、YGO膜は、ゲルマニウムとイットリウムをターゲットとし、反応性スパッタリング法を用い形成してもよい。図2(c)において、酸素ガス雰囲気、圧力が10気圧、熱処理温度が550℃および熱処理時間が5分間の条件で熱処理する。
【実施例2】
【0053】
YGO膜および二酸化ゲルマニウム膜のTDS分析を行なった。図6(a)は、膜厚に対する超高真空中で一酸化ゲルマニウムが検出されるピーク温度を示す図である。三角ドットは二酸化ゲルマニウム膜の測定点を示し、丸ドットおよび四角ドットは、それぞれイットリウムの原子組成比(YとGeとの和に対するYの比)が10%および30%のYGO膜の測定点を示す。曲線は近似曲線である。温度の上昇レートは20℃/分であり、測定真空度は2×10-7Paである。
【実施例2】
【0054】
図6(a)に示すように、YGO膜のピーク温度は二酸化ゲルマニウム膜に比べ100℃以上高い。イットリウムの組成比が高くなるとピーク温度はさらに高くなる。これは、酸化イットリウムの酸素ポテンシャルが二酸化ゲルマニウムより低いため、酸化イットリウムが一酸化ゲルマニウムの放出を抑制するためである。
【実施例2】
【0055】
YGO膜および二酸化ゲルマニウム膜を、酸素ガス雰囲気中で熱処理し、絶縁膜の膜厚を測定した。熱処理条件は、酸素ガス雰囲気、圧力が10気圧、熱処理温度が550℃である。図6(b)は、熱処理時間に対する膜厚を示す図である。各ドットは、図6(a)と同じである。図6(b)に示すように、二酸化ゲルマニウム膜は、酸素熱処理により膜厚が増加する。YGO膜は、酸素熱処理によっても膜厚が一定である。これは、絶縁膜12に酸化イットリウムが含有することにより、ゲルマニウムの酸化が抑制され、界面におけるゲルマニウム原子の移動、ゲルマニウムの酸化、および一酸化ゲルマニウムガスの放出の速度、がバランスしているためである。
【実施例2】
【0056】
図2(b)において、絶縁膜12として、イットリウム組成比が6%(Y6%)、10%(Y10%)および20%(Y20%)のYGO膜を形成した。比較のため、絶縁膜12として、イットリウムを含まない二酸化ゲルマニウム膜(Y0%)を形成した。膜厚は約3nmである。図2(c)において、酸素ガス雰囲気、圧力が10気圧、熱処理温度が500℃または550℃、熱処理時間が5分間の条件で熱処理を行なう。熱処理後、絶縁膜12を塩酸またはフッ酸を用い除去した。その後、ゲルマニウム基板10の表面をAFM観察した。
【実施例2】
【0057】
図7(a)から図7(d)は、AFM画像を示す図である。AFM画像の範囲は1μm□であり、熱処理温度は550℃である。図7(a)から図7(d)は、それぞれイットリウム組成比が0%、6%、10%および20%のサンプルである。イットリウム組成比が6%、10%および20%のサンプルでは、ステップ・アンド・テラス構造が観察されている。
【実施例2】
【0058】
AFMにより1μm□内の頻度分布の半値幅を測定した。測定結果は、以下である。
熱処理温度 Y組成比 RMS
550℃ 6% 0.43±0.04nm
550℃ 10% 0.43±0.04nm
550℃ 20% 0.33±0.04nm
500℃ 6% 0.58±0.04nm
500℃ 10% 0.60±0.04nm
500℃ 20% 0.58±0.04nm
熱処理なし 0% 0.60±0.04nm
【実施例2】
【0059】
熱処理温度が500℃のサンプルにおいて、熱処理なしのサンプルとRMSはほとんど変わらない。また、ステップ・アンド・テラス構造は観察されない。一方、熱処理温度が550℃のサンプルにおいては、イットリウムの原子組成比によらず熱処理なしのサンプルより半値幅が小さくなる。
【実施例2】
【0060】
以上のように、熱処理温度が500℃ではゲルマニウム基板10の表面が平坦化されないが、熱処理温度を550℃とすることにより、ゲルマニウム基板10の表面を平坦化できる。これは、500℃においては、ゲルマニウム原子の移動が十分ではないが、550℃において、ゲルマニウム原子の移動、ゲルマニウムの酸化速度、一酸化ゲルマニウムの放出速度がバランスするためである。
【実施例2】
【0061】
絶縁膜12に酸化イットリウムを含有させたサンプルを550℃において酸素熱処理することにより、頻度分布の半値幅を0.5nm以下とすることができる。なお、頻度分布の半値幅は、一般的にRMS×2.35σ程度である。
【実施例2】
【0062】
図8(a)は、AFM画像、図8(b)は、断面プロファイルを示す図である。熱処理条件は、酸素ガス雰囲気、圧力が10気圧、熱処理温度が550℃および熱処理時間が5分間である。図8(a)においては、テラス面が平行になるように補正している。図8(a)に示すように、ステップ・アンド・テラス構造が観察できる。図8(b)において、高さは、0.326μmで規格化している。0.326μmは、ダイアモンド構造を構成する正四面体結合構造を単位としたGe原子同士の結合の2個分に相当する。図8(a)および図8(b)のように、ステップ・アンド・テラス構造が観察される。これは、ゲルマニウム基板10の表面の平坦性が非常に良好なことを示している。
【実施例2】
【0063】
イットリウム組成比が10%で熱処理温度が550℃のサンプルについて、図2(d)のように絶縁膜12上に金属膜16を形成し、室温においてC-V測定を行なった。図9は、実施例2におけるC-V特性を示す図である。ドットは測定点である。測定周波数は、1MHzから1kHzである。左下から右上に矢印の方向に行くにしたがい測定周波数が低くなっている。図9に示すように、1kHzでは0Vから0.5Vにおいて、ヒステリシスがあるもののその他の周波数において、ヒステリシスはほとんど観測されず、蓄積状態と反転状態との間のキャパシタンスが急峻に変化している。このように、実施例2においては、良好なMIS構造が形成されていることがわかる。
【実施例2】
【0064】
さらに、イットリウムが10%の絶縁膜12を用い、ゲート長が100μm、ゲート幅が25μmのFETを作製し移動度を測定した。移動度は、スプリットCV法を用い、室温において測定した。絶縁膜12のEOT(等価酸化膜厚:Equivalent Oxide Thickness)は0.8nmである。面電子密度が1×1013cm-2のときの移動度は約380cm/Vsと良好であった。
【実施例3】
【0065】
実施例3は、酸化ポテンシャルの低い物質として、酸化スカンジウム(Sc)を用いる例である。
【実施例3】
【0066】
実施例3に係る半導体構造の製造方法は、実施例1の図2(a)から図2(d)と同じである。図2(a)において、(111)を主面とする単結晶ゲルマニウム基板10を準備する。ゲルマニウム基板10のドーパントおよび濃度は実施例1と同じである。図2(b)において、絶縁膜12として、酸化ゲルマニウムと酸化スカンジウムとを主に含むScGO膜を形成する。ScGO膜は、酸化ゲルマニウム(GeO)と酸化スカンジウム(Sc)をターゲットとし、アルゴンガスを用いたスパッタリング法を用い形成する。なお、ScGO膜は、ゲルマニウムとスカンジウムをターゲットとし、反応性スパッタリング法を用い形成してもよい。図2(c)において、酸素ガス雰囲気、圧力が10気圧、熱処理温度が550℃および熱処理時間が5分間の条件で熱処理する。
【実施例3】
【0067】
図2(d)のように絶縁膜12上に金属膜16を形成し、室温においてC-V測定を行なった。図10は、実施例3におけるC-V特性を示す図である。ドットは測定点である。測定周波数は、1MHzから5kHzである。左下から右上に矢印の方向に行くにしたがい測定周波数が低くなっている。図10に示すように、ヒステリシスはほとんど観測されず、蓄積状態と反転状態との間のキャパシタンスが急峻に変化している。ゲルマニウム基板10表面の平坦性が悪いと、良好なMIS構造は得られない。よって、実施例3においても、ゲルマニウム基板10表面が平坦化していると考えられる。
【実施例3】
【0068】
図11は、温度に対する各種材料の酸化物における酸素1モルに対する酸素ポテンシャルを示す図である。酸素ポテンシャル(ΔG)として、ゲルマニウム、シリコン、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、スカンジウムおよびイットリウムの酸化物の酸素ポテンシャルを示す。図11に示すように、シリコン、ハフニウム、アルミニウム、ランタン、スカンジウムおよびイットリウムの酸化物の酸素ポテンシャルは、二酸化ゲルマニウムより小さい。
【実施例3】
【0069】
よって、二酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質として、シリコン、ハフニウム、アルミニウム、ランタン、スカンジウムまたはイットリウムの酸化物を用いることができる。特に、酸素ポテンシャルの小さな酸化イットリウムまたは酸化スカンジウムを用いることが好ましい。また、絶縁膜12は、金属膜およびゲルマニウムと反応しないことが好ましい。この観点から、物質としては酸化イットリウム、酸化スカンジウムまたは酸化アルミニウムが好ましい。物質は、上記1つの物質に限られず、複数の物質を含んでもよい。例えば、物質は、窒化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1つを主に含むことが好ましい。
【実施例4】
【0070】
図12(a)から図12(c)は、実施例4に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図12(a)に示すように、ゲルマニウム層30を準備する。ゲルマニウム層30は、単結晶ゲルマニウム基板でもよいし、基板(例えばシリコン基板またはガラス基板等の絶縁基板)上に形成されたゲルマニウム膜でもよい。また、ゲルマニウム層30は、高純度ゲルマニウムでもよいが、不純物が含まれていてもよい。例えばn型またはp型ゲルマニウムでもよい。さらに、ゲルマニウム層30には、上記実験の効果が得られる程度にシリコンが含まれていてもよい。シリコンの組成比は、全体の10原子%程度以下であればよい。ゲルマニウム層30の主面は、例えば(100)面、(110)面または(111)面を用いることができる。
【実施例4】
【0071】
図12(b)に示すように、ゲルマニウム層30の上面に絶縁膜32(第1絶縁膜)を形成する。絶縁膜32は、二酸化ゲルマニウムと二酸化ゲルマニウムより酸素ポテンシャルが低い物質とを主に含む。酸素ポテンシャルが酸化ゲルマニウムより著しく低い物質としては、窒化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウムまたは酸化アルミニウム等がある。一方、絶縁膜32をゲート絶縁膜として用いるため、絶縁膜32は、誘電率が大きいことが好ましい。また、絶縁膜32は、ゲルマニウム層30およびゲート電極等の金属層と反応しないことが好ましい。
【実施例4】
【0072】
絶縁膜32は、例えばスパッタリング法を用い形成する。絶縁膜32の膜厚としては、最終的にゲート絶縁膜として用いるため物理膜厚として3nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましい。絶縁膜32を形成した後にエッチングすることにより絶縁膜32を薄膜化してもよい。ゲート絶縁膜として用いる絶縁膜32内の酸素ポテンシャルの低い物質の原子組成比は、一酸化ゲルマニウムの昇華を抑制することとゲルマニウム層30の酸化を抑制する観点から5原子%以上が好ましく、10原子%以上がより好ましい。ゲルマニウム層30と絶縁膜32との界面を良好にするため、物質の原子組成比は、50原子%以下が好ましく、30原子%以下がより好ましい。なお、原子組成比は、例えば、物質が窒化ゲルマニウムの場合、酸素と窒素の和に対する窒素の比であり、例えば、物質が酸化イットリウムの場合、イットリウムとゲルマニウムの和に対するイットリウムの比である。

【実施例4】
【0073】
図12(c)に示すように、ゲルマニウム層30および絶縁膜32を酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および絶縁膜32を形成する際の温度より高い熱処理温度において熱処理する。これにより、ゲルマニウム層30の表面(絶縁膜32との界面)の平坦性を向上できる。例えば、ゲルマニウム層30の上面の1μm平方内の高さに対する頻度の半値幅を0.7nm以下とすることができる。この半値幅は0.6nm以下がより好ましく、0.5nm以下がさらに好ましい。
【実施例4】
【0074】
熱処理時の酸化性ガスとしては、例えば酸素ガス、酸素と不活性ガスとの混合ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、窒素ガスまたは第18族元素のガス、またはこれらの混合ガスを用いることができる。第18族元素ガスは、ヘリウム、ネオン(Ne)、アルゴン、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)またはラドン(Rn)等である。熱処理温度は、ゲルマニウム原子がゲルマニウム層30の表面で移動できる程度の温度が好ましく、例えば400℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましく、520℃以上がさらに好ましい。ゲルマニウム層30の更なる酸化を抑制するため、および熱応力等を抑制するため、熱処理温度は700℃以下であることが好ましく、600℃以下であることがより好ましく、580℃以下がさらに好ましい。ゲルマニウム層30の表面の酸化速度を適度に保つための酸素分圧力は、酸素ポテンシャルの低い物質の濃度、熱処理温度および初期の絶縁膜32の膜厚により異なり、適宜設定することが好ましい。例えば、室温での酸素分圧が2気圧以上であることが好ましく、5気圧以上、10気圧以上または20気圧以上がより好ましい。室温でのガス圧力は70気圧以下が好ましく、50気圧以下がより好ましい。
【実施例5】
【0075】
実施例5は、絶縁膜上に異なる組成の絶縁膜を形成する例である。図13(a)から図13(d)は、実施例5に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図13(a)に示すように、実施例4と同様に、ゲルマニウム層30を準備する。図13(b)に示すように、ゲルマニウム層30上に絶縁膜32を形成する。絶縁膜32は、実施例4と同様である。絶縁膜32は、例えばスパッタリング法を用い形成する。または、絶縁膜32は、ゲルマニウム層30表面の自然酸化ゲルマニウム膜を窒素プラズマに曝すことにより形成する。例えば、ゲルマニウム層30表面に、絶縁膜34(図13(d)参照)として窒化金属膜を、窒素プラズマを用いた反応性スパッタリング法を用い形成するときに、ゲルマニウム層30表面の自然酸化ゲルマニウム膜を窒素プラズマに曝すことにより、絶縁膜32を形成できる。絶縁膜32の膜厚はゲート絶縁膜として用いるため、物理膜厚として、3nm以下が好ましく2nm以下がより好ましく、1nm以上が好ましい。
【実施例5】
【0076】
図13(c)に示すように、絶縁膜32上に絶縁膜32と組成の異なる絶縁膜34を形成する。絶縁膜34は、ゲート絶縁膜として機能するため、例えば高誘電率(High-k)絶縁膜であり、例えば酸化シリコンより誘電率が高いことが好ましい。絶縁膜34としては、例えば窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化チタン膜、酸化アルミニウム膜および希土類元素酸化膜(例えば酸化ランタン膜)の少なくとも1つの膜を用いることができる。
【実施例5】
【0077】
図13(d)に示すように、絶縁膜34を形成した後に、ゲルマニウム層30、絶縁膜32および絶縁膜34を酸化性ガス雰囲気、室温でのガスの圧力が大気圧より大きくなるような圧力、および絶縁膜32および絶縁膜34を形成する際の温度より高い熱処理温度において熱処理する。このように、絶縁膜34の膜厚が、絶縁膜32と合わせた全体の容量膜厚(例えばEOT:Equivalent Oxide Thickness)がゲート絶縁膜として用いることができる範囲であれば、絶縁膜32上に別の絶縁膜34を形成した後に熱処理を行なってもよい。絶縁膜34の膜厚は、ゲート絶縁膜として用いるため、物理膜厚として、3nm以下が好ましく2nm以下がより好ましく、1nm以上が好ましい。
【実施例6】
【0078】
図14は、実施例6に係る半導体装置の断面図である。ゲルマニウム層30上にゲート絶縁膜35を介しゲート電極36を形成する。ゲート電極36の両側のゲルマニウム層30内にソースまたはドレイン領域38を形成する。ゲルマニウム層30をp型、ソースまたはドレイン領域38をn型とする。ゲルマニウム層30をn型、ソースまたはドレイン領域38をp型としてもよい。ゲート絶縁膜35として、実施例4の絶縁膜32、または実施例5の絶縁膜32および34を用いる。これにより、ゲルマニウム層30の表面の平坦性を向上させることができる。ゲルマニウム層30の表面の平坦性を向上させることにより、トランジスタ特性を向上できる。また、ゲート絶縁膜35の長期信頼性を向上させることができる。
【実施例6】
【0079】
実施例6において、実施例4および実施例5に係る半導体構造をMOSFETに適用する例を説明したが、実施例4および5に係る半導体構造をMOSFET以外の半導体装置に適用することもできる。
【実施例6】
【0080】
以上、ゲルマニウム層表面の平坦性を向上できる実施例について説明した。以下に、酸化ゲルマニウムを含む絶縁膜、および絶縁膜とゲルマニウム層との界面の劣化を抑制できる実施例について説明する。ゲルマニウム層(またはゲルマニウム基板)上に絶縁膜を形成した後の製造工程により、絶縁膜から一酸化ゲルマニウムが離脱する。または、絶縁膜を介しゲルマニウム層表面が酸化する。このように、絶縁膜、および絶縁膜とゲルマニウム層との界面が劣化してしまう。以下の実施例では、このような劣化を抑制する。
【実施例7】
【0081】
図15(a)から図15(d)は、実施例7に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図15(a)に示すように、ゲルマニウム基板20を準備する。ゲルマニウム基板20は(111)面を主面とし、ドーパントがGaであり、ドーパント濃度が約1×1016cm-3のp型である。

【実施例7】
【0082】
図15(b)に示すように、絶縁膜22として、酸化ゲルマニウムと酸化イットリウムとを主に含むYGO膜を形成する。YGO膜は、酸化ゲルマニウムと酸化イットリウムを同時に共スパッタリングすることにより、形成する。図15(c)に示すように、ゲルマニウム基板20および絶縁膜22を、窒素ガス雰囲気(窒素ガスが100%)、大気圧、熱処理温度が500℃および熱処理時間が30秒の熱処理(Post Deposition Anneal)する。
【実施例7】
【0083】
図15(d)に示すように、C-V測定およびリーク電流を測定するサンプルに、絶縁膜22の表面に金属膜26として金膜を形成する。
【実施例7】
【0084】
絶縁膜22中のイットリウムの原子組成比(YとGeとの和に対するYの比:Y濃度ともいう)を変えたサンプルを作製した。比較例として、イットリウム組成比が0%のサンプルを作製した。比較例は、絶縁膜22として酸化ゲルマニウム膜を形成後、70気圧の酸素ガス雰囲気において500℃の熱処理を行なっている。
【実施例7】
【0085】
イットリウム組成比の異なる絶縁膜22を純水を用いエッチングした。図16は、実施例7におけるエッチング時間に対する絶縁膜の膜厚を示す図である。イットリウム組成比(Y濃度)が2%、6%、8%、10%、20%および30%のサンプルの結果を示している。ドットは測定点、破線は近似線である。図16に示すように、イットリウム組成比が2%から8%のサンプルは、純水に浸すと絶縁膜22の膜厚が急激に減少する。一方、イットリウム組成比が10%のサンプルは、純水に浸してもエッチングレートは小さい。さらに、イットリウム組成比が20%から30%のサンプルは、さらに小さくなる。これは、イットリウム組成比が10%以上の絶縁膜22において、酸化ゲルマニウムと水との反応が抑制されていることを示している。
【実施例7】
【0086】
図17は、実施例7における絶縁膜22のY濃度に対する比誘電率および絶縁膜22上面のRMSを示す図である。ドットは測定点、バーは誤差、破線は近似線である。図17に示すように、イットリウム組成比が0%(酸化ゲルマニウム)では、比誘電率は約6である。イットリウム組成比が高くなると、比誘電率は高くなり、イットリウム組成比が10%では比誘電率は約8.5である。イットリウム組成比が20%から30%では、比誘電率は約10である。RMSは、イットリウム組成比が10%以下では約0.35nmであり、ほとんど変わらない。イットリウム組成比が20%ではRMSは約0.4nmとやや高くなり、イットリウム組成比が30%ではRMSは約0.5nmとなる。このように、イットリウム組成比が高くなると、比誘電率が高くなる。しかし、イットリウム組成比が20%を越えると絶縁膜22表面の平坦性(RMS)が悪くなる。
【実施例7】
【0087】
イットリウム組成比の異なる絶縁膜22をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析した。図18(a)は、実施例7における絶縁膜22内のX線照射時間に対するGe4+3dの結合エネルギーを示す図である。図18(b)は、実施例7における絶縁膜22内のY濃度に対する電子トラッピングエネルギーを示す図である。図18(a)に示すように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウム(イットリウム組成比が0%)のサンプルでは、X線照射時間が10秒程度で結合エネルギーがピークとなる。X線照射時間が長くなると結合エネルギーが低くなる。イットリウム組成比が6%のサンプルでは、結合エネルギーのピークからの低下が小さくなる。イットリウム組成比が10%のサンプルでは、結合エネルギーはほとんど低下しない。
【実施例7】
【0088】
図18(b)において、電子トラッピングエネルギーは、図18(a)における結合エネルギーの低下を示している。図18(b)に示すように、イットリウム組成比が8%以上となると、電子トラッピングエネルギーはほぼ0となる。これは、イットリウム組成比が8%以上において、絶縁膜22中の電子捕獲センターがほとんどないことを示している。
【実施例7】
【0089】
イットリウム組成比の異なる絶縁膜22の赤外線吸収を測定した。図19は、実施例7における絶縁膜22の波数に対する赤外線(IR)吸収を示す図である。図19に示すように、酸化ゲルマニウム膜に対し、YGO膜のイットリウム組成比が2%、6%、10%および20%と大きくなると、吸収のピークは、低波数側にシフトする。さらに、ピークがブロードになる。特に、イットリウム組成が10%以上では、吸収ピークのシフトが大きく、また、ピークが非常にブロードとなっている。これは、酸化ゲルマニウム(GeO)膜内のネットワーク構造がイットリウムを添加することにより、大きく変化することを示している。
【実施例7】
【0090】
図18(a)から図19のように、酸化ゲルマニウムに酸化イットリウムをドープすると、ゲルマニウムと酸素の結合状態が大きく変わる。イットリウム組成比が大きくなるとゲルマニウムと酸素の結合が安定となる。これは、図11のように、酸化イットリウムの酸素ポテンシャルが酸化ゲルマニウムより低いためと考えられる。
【実施例7】
【0091】
図15(c)のように、絶縁膜22を熱処理した後、大気中にサンプルを放置した。その後、図15(d)のように、絶縁膜22上に金属膜26を形成し、C-V測定を行なった。絶縁膜22の膜厚は約10nmである。図20は、実施例7に係る半導体構造における放置時間(日)に対するC-V測定におけるヒステリシスの大きさを示す図である。測定したサンプルは、イットリウム組成比が10%のサンプルと、イットリウム組成比が0%のサンプルである。
【実施例7】
【0092】
図20に示すように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウム(イットリウム組成比が0%)のサンプルにおいては、放置時間が日単位で長くなるとヒステリシスが大きくなる。これは、絶縁膜22とゲルマニウム基板20との界面状態が劣化していることを示している。一方、イットリウム組成比が10%のサンプルでは、ヒステリシスはほとんど変わらない。このように、イットリウム組成比が0%のサンプルは大気中に放置すると界面状態が劣化する。一方、イットリウム組成比が10%のサンプルは大気に放置しても界面状態は変わらず、安定である。
【実施例7】
【0093】
図21は、実施例7に係る半導体構造における絶縁膜のY濃度に対する界面準位密度Ditを示す図である。Ei+0.2eVは、エネルギーバンドギャップの中心Eiから+0.2eVの界面準位密度を示し、Ei-0.2eVは、エネルギーバンドギャップの中心Eiから-0.2eVの界面準位密度を示している。
【実施例7】
【0094】
図21に示すように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウムのサンプルは、界面準位密度が5×1011eV-1cm-2程度である。イットリウム組成比が高くなると界面準位密度が低くなる。イットリウム組成比が10%のサンプルでは、界面準位密度が最も低い。さらにイットリウム組成比が高くなり、イットリウム組成比が20%となると、界面準位密度は高くなる。イットリウム組成比が30%となると、界面準位密度はさらに高くなる。このように、イットリウム組成比を6%以上とすることにより、界面準位密度を低減できる。イットリウム組成比を10%以上かつ20%以下とすることにより、界面準位密度をより低減することができる。
【実施例7】
【0095】
図22は、実施例7における絶縁膜の膜厚に対するリーク電流Jgを示す図である。ドットは測定点、破線は近似線である。リーク電流Jgは、ゲルマニウム基板20の下面の金属膜(図15(d)には不図示)に対し金属膜26に電圧Vgを印加したときのリーク電流である。電圧Vgとしては、C-V測定において規定したフラットバンドをVFBとしたとき、VFB-1Vとした。
【実施例7】
【0096】
図22に示すように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウム(イットリウム組成比が0%)のサンプルはリーク電流が大きい。イットリウム組成比が6%においては、リーク電流は小さくなる。イットリウム組成比が10%のサンプルでは、リーク電流がさらに小さくなる。イットリウム組成比が30%のサンプルでは、リーク電流はやや大きくなる。このように、イットリウム組成比が10%のサンプルはリーク電流が最も小さい。イットリウム組成比を6%以上とすることにより、リーク電流を低減できる。イットリウム組成比を10%以上かつ30%以下とすることにより、リーク電流をより低減することができる。
【実施例7】
【0097】
イットリウム組成比の異なる絶縁膜22を有する実施例7の半導体構造を用いFETを作製した。ゲルマニウム基板20としてn型ゲルマニウム基板を用い、p型FETを作製した。ゲルマニウム基板20として(100)を主面とするn型ゲルマニウム基板を用い、p型FETを作製した。また、絶縁膜22のEOTは約3nmとした。ゲート長を100μm、ゲート幅を25μmとし、スプリットCV法を用い、室温におけるキャリア数と移動度μeffを求めた。スプリットCV法は、CV測定の積分からキャリア数を導出し、キャリア数とI-V測定から移動度を求める方法である。
【実施例7】
【0098】
図23(a)および図23(b)は、実施例7に係る半導体構造における面電子密度Nに対する移動度μeffを示す図である。図23(a)は、p型FETにおけるホール移動度、図23(b)は、n型FETにおける電子移動度を示している。ゲート電極にゲート電圧を印加することにより、面電子密度Nを変化させ、移動度μeffを測定した。ドットは、測定点を示す。実線は、シリコンMOSFETにおける一般的な移動度を示す。
【実施例7】
【0099】
図23(a)および図23(b)に示すように、p型FETおよびn型FETにおいて、イットリウム組成比が10%および20%において、絶縁膜22が酸化ゲルマニウム(イットリウム組成比が0%)のサンプルと同程度のホール移動度および電子移動度を得ることができる。移動度は、シリコンMOSFETにおける一般的な移動度に比べ非常に高い。イットリウム組成比が6%では、移動度は低い。
【実施例7】
【0100】
実施例7によれば、ゲルマニウム基板20上に、酸化ゲルマニウムと酸化イットリウムを主に含む絶縁膜22を形成する。これにより、図16のように、純水によるエッチングレートが低くなる。図20のように、大気中に放置することによる、ゲルマニウム基板20と絶縁膜22との界面状態の劣化を抑制できる。図21のように、界面準位密度を低減できる。図22のように、リーク電流を抑制できる。このように、ゲルマニウム基板20と絶縁膜22との界面状態を安定に維持し、かつ図23(a)および図23(b)のように、移動度を向上できる。
【実施例7】
【0101】
このように、酸化イットリウムにより界面状態が安定となるのは、図18(a)から図19に示したように、絶縁膜22内のゲルマニウムと酸素の結合が安定になるためと考えられる。図16、図21から図23より、イットリウム組成比は、6%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。図17のように、RMSの悪化を防ぐためには、イットリウム組成比は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【実施例8】
【0102】
実施例8は、絶縁膜22としてScGO膜を用いる例である。図15(a)において、(111)を主面とする単結晶ゲルマニウム基板20を準備する。ゲルマニウム基板20のドーパントおよび濃度は実施例7と同じである。図15(b)において、絶縁膜22として、酸化ゲルマニウムと酸化スカンジウムとを主に含むScGO膜を形成する。ScGO膜は、酸化ゲルマニウムと酸化スカンジウムを共スパッタリングすることにより、形成する。図15(c)において、実施例7と同じ条件で熱処理する。
【実施例8】
【0103】
絶縁膜22が酸化ゲルマニウムのサンプル(GeO)、実施例7においてイットリウム組成比が10%のサンプル(YGO)、スカンジウム組成比が10%のサンプル(ScGO)を準備した。各サンプルに対し、純水によるエッチングレートの測定、およびTDS分析を行なった。
【実施例8】
【0104】
図24は、実施例8におけるエッチング時間に対する絶縁膜22の膜厚を示す図である。ドットは測定点、破線は近似線である。図24に示すように、ScGO膜は、酸化ゲルマニウム膜に比べ純水によるエッチングレートが低くなっているが、YGO膜より若干早い。
【実施例8】
【0105】
図25は、実施例8における絶縁膜22の膜厚に対するTDSのピーク温度を示す図である。ドットは測定点、破線は近似線である。図25に示すように、YGO膜と同様に、ScGO膜はGeO膜に比べピーク温度が約100℃高くなっている。
【実施例8】
【0106】
図11のように、酸化スカンジウムも酸化イットリウムと同程度の酸素ポテンシャルである。このため、図24のように、ScGO膜はYGO膜と同様に純水によるエッチングレートが低い。また、図25のように、一酸化ゲルマニウムの離脱温度が高い。このように、絶縁膜22としてScGO膜を用いても絶縁膜22および/または界面の劣化を抑制できる。
【実施例9】
【0107】
図26(a)および図26(b)は、実施例9に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図26(a)に示すように、実施例7の図15(b)の後に、イットリウム組成比が10%のYGO膜である絶縁膜22上に絶縁膜24として酸化ハフニウム(HfO)膜を形成する。酸化ハフニウム膜は、スパッタリング法を用い形成する。その後、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス(酸素濃度が0.1%)雰囲気で、熱処理時間が30秒の熱処理を行なう。図26(b)に示すように、絶縁膜24上に金属膜26として金膜を形成する。
【実施例9】
【0108】
図27は、実施例9に係る半導体構造の製造方法における熱処理温度に対する絶縁膜のEOTを示す図である。絶縁膜22であるYGO膜の膜厚が1nm、絶縁膜24である酸化ハフニウム膜の膜厚が1.5nmのサンプルにおいて、熱処理温度を変えた。熱処理温度が450℃から550℃においてEOTは0.6nm程度となる。熱処理温度500℃がEOTは最も薄い。絶縁膜22であるYGO膜の膜厚が1nm、絶縁膜である酸化ハフニウム膜の膜厚が1nmのサンプルにおいて、熱処理温度を500℃としたところ、EOTは0.47nmとなった。
【実施例9】
【0109】
実施例9のように、絶縁膜22上に酸化シリコンより誘電率の高い絶縁膜24を形成することにより、EOTを薄くし、かつゲルマニウム基板20と絶縁膜22との界面状態を良好にすることができる。
【実施例10】
【0110】
図28(a)から図28(d)は、実施例10に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図28(a)に示すように、ゲルマニウム層40を準備する。ゲルマニウム層40は、単結晶ゲルマニウム基板でもよいし、基板(例えばシリコン基板またはガラス基板等の絶縁基板)上に形成されたゲルマニウム膜でもよい。また、ゲルマニウム層40は、高純度ゲルマニウムでもよいが、不純物が含まれていてもよい。例えばn型またはp型ゲルマニウムでもよい。さらに、ゲルマニウム層40には、上記実験の効果が得られる程度にシリコンが含まれていてもよい。シリコンの組成比は、全体の10原子%程度以下であればよい。ゲルマニウム層40の主面は、例えば(100)面、(110)面または(111)面を用いることができる。
【実施例10】
【0111】
図28(b)に示すように、ゲルマニウム層40の上面に絶縁膜42(第1絶縁膜)を形成する。絶縁膜42は、二酸化ゲルマニウムとアルカリ土類(第2A族)元素および希土類(第3A族)元素の少なくとも一方の酸化物とを主に含む。アルカリ土類元素は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)またはラジウムRa)である。希土類元素は、例えばスカンジウム、イットリウムまたはランタノイドである。ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)またはルテチウム(Lu)である。絶縁膜42は、二酸化ゲルマニウムと酸化アルミニウムとを主に含んでもよい。また、絶縁膜42は、これらの酸化物の混合物と、酸化ゲルマニウムと、を主に含んでもよい。

【実施例10】
【0112】
これらの酸化物は、酸化ゲルマニウムに比べ酸素ポテンシャルが低い。よって、絶縁膜42内においてゲルマニウムと酸素がより安定に結合する。これにより、絶縁膜42を形成後の製造工程、または大気への放置により、絶縁膜42および/または絶縁膜42とゲルマニウム層40との界面が劣化することを抑制できる。

【実施例10】
【0113】
絶縁膜42をゲート絶縁膜として用いるため、絶縁膜42は、誘電率が高いことが好ましい。また、絶縁膜42は、ゲルマニウム層40およびゲート電極等の金属層と反応しないことが好ましい。よって、絶縁膜42は、酸化ゲルマニウムと、酸化イットリウム、酸化スカンジウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1つを主に含むことが好ましい。
【実施例10】
【0114】
絶縁膜42は、例えばスパッタリング法を用い形成する。絶縁膜42は、その他の方法を用い、形成することもできる。絶縁膜42の膜厚としては、最終的にゲート絶縁膜として用いるため物理膜厚として3nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましい。絶縁膜42を形成した後にエッチングすることにより絶縁膜42を薄膜化してもよい。
【実施例10】
【0115】
ゲート絶縁膜として用いる絶縁膜42内のアルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの酸化物の原子組成比は、絶縁膜42およびゲルマニウム層40と絶縁膜42との界面の安定性の観点から、6%以上か好ましく、10%以上がより好ましい。また、50原子%以下が好ましく、30%原子以下がより好ましい。なお、原子組成比は、(アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つの元素)の(少なくとも1つの元素とゲルマニウムとの和)に対する比である。

【実施例10】
【0116】
図28(c)に示すように、絶縁膜42を熱処理する。これにより、絶縁膜42内の原子の結合を強化する。熱処理は、不活性ガス雰囲気でもよいし、酸化性ガス雰囲気でもよい。不活性ガスとしては、窒素ガスまたは第18族元素のガス、またはこれらの混合ガスを用いることができる。酸化性ガスとしては、例えば酸素ガス、酸素と不活性ガスとの混合ガスを用いることができる。ガス雰囲気の圧力は大気圧(1気圧)でもよいし、1気圧より高くてもよく、1気圧より低くてもよい。ガス雰囲気の圧力を1気圧とすることにより、熱処理装置を簡略化できる。熱処理温度は、400℃以上かつ600℃以下が好ましく、450℃以上かつ550℃以下がより好ましい。熱処理は、イオン注入されたドーパントの活性化のための熱処理を兼ねてもよい。
【実施例10】
【0117】
図28(d)に示すように、絶縁膜42上にゲート電極46を形成する。ゲート電極46は、金、銅またはアルミニウム等の導電体である。
【実施例11】
【0118】
図29(a)から図29(d)は、実施例11に係る半導体構造の製造方法を示す断面図である。図29(a)に示すように、実施例10と同様に、ゲルマニウム層40を準備する。図29(b)に示すように、ゲルマニウム層40上に絶縁膜42を形成する。絶縁膜42は、実施例10と同様である。絶縁膜42は、例えばスパッタリング法を用い形成する。絶縁膜42の膜厚はゲート絶縁膜として用いるため、物理膜厚として、3nm以下が好ましく2nm以下がより好ましく、1nm以上が好ましい。
【実施例11】
【0119】
図29(c)に示すように、絶縁膜42上に絶縁膜42と組成の異なる絶縁膜44(第2絶縁膜)を形成する。絶縁膜44は、例えば高誘電率(High-k)絶縁膜であり、例えば酸化シリコンより誘電率が高いことが好ましい。絶縁膜44としては、例えば窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化チタン膜、酸化アルミニウム膜、酸化イットリウム膜および希土類元素酸化膜(例えば酸化ランタン膜)の少なくとも1つの膜を用いることができる。
【実施例11】
【0120】
図29(d)に示すように、絶縁膜44を形成した後に、ゲルマニウム層40、絶縁膜42および絶縁膜44を、絶縁膜42および絶縁膜44を形成するときの温度より高い熱処理温度において熱処理する。熱処理条件は、例えば実施例10の図28(c)と同じである。絶縁膜44上にゲート電極46を形成する。ゲート電極46は、例えば実施例10の図28(d)と同じである。
【実施例11】
【0121】
絶縁膜42は、ゲルマニウム層40上に形成された自然酸化ゲルマニウム膜に絶縁膜44の元素が拡散することにより形成してもよい。例えば、図29(b)において、絶縁膜42を形成せず、図29(c)において、ゲルマニウム層40上に絶縁膜44(例えば酸化イットリウム膜)を形成する。図29(d)の熱処理により、絶縁膜44内の元素(例えばイットリウム)がゲルマニウム層40と絶縁膜44との間の自然酸化ゲルマニウム膜内に拡散し、絶縁膜42(酸化イットリウムが含まれる酸化ゲルマニウム)が形成される。
【実施例11】
【0122】
自然酸化ゲルマニウム膜に絶縁膜44の元素を拡散させて絶縁膜42を形成する場合、絶縁膜42の膜厚および組成を制御することが難しい。また、比較的厚い絶縁膜42は形成できない。これに対し、絶縁膜42を形成した後に絶縁膜44を形成する方法では、絶縁膜42の膜厚および組成を制御することが可能となる。
【実施例11】
【0123】
実施例10のように、絶縁膜42上に、高誘電率絶縁膜である絶縁膜44を形成せずにゲート電極46を形成することができる。また、実施例11のように、絶縁膜42上に絶縁膜44を形成し、絶縁膜44上にゲート電極46を形成することもできる。実施例10および11においては、絶縁膜42および絶縁膜42とゲルマニウム層40との界面の劣化を抑制することができる。
【実施例11】
【0124】
実施例10および11に係る半導体構造を、実施例6と同様のMOSFETに適用することができる。また、実施例10および11に係る半導体構造をMOSFET以外の半導体装置に適用することもできる。
【実施例12】
【0125】
実施例12は、酸化ゲルマニウムと三価金属(Trivalent metal)Mを含む絶縁膜22(MGO膜)を用いる例である。三価金属Mの酸化物は化学式Mを有する酸化物となる。実施例7および8の図15(a)から図15(c)において、絶縁膜22として、YGO膜およびScGO膜に加え、AlGO膜およびLaGO膜を形成した。AlGO膜は、酸化ゲルマニウムと酸化アルミニウム(Al))とを主に含む膜である。LaGO膜は酸化ゲルマニウムと酸化ランタン(La))とを主に含む膜である。MGO膜は、酸化ゲルマニウム(GeO)とM酸化物(M)をターゲットとし、アルゴンガスを用いたスパッタリング法を用い形成する。絶縁膜22におけるMとGeの和に対するMの濃度(M濃度)を約10%とした。
【実施例12】
【0126】
図30は、実施例12におけるエッチング時間に対する絶縁膜22の膜厚を示す図である。ドットは測定点、破線は近似線である。測定方法は図16および図24と同じであり説明を省略する。図30に示すように、MGO膜における純水によるエッチングレートは、GeO膜より低い。また、エッチングレートは、LaGO膜が最も低く、YGO膜、ScGO膜およびAlGO膜の順に高くなる。
【実施例12】
【0127】
図31は、実施例12における絶縁膜22の膜厚に対するTDSのピーク温度を示す図である。ドットは測定点、破線は近似線である。測定方法は図6(a)および図25と同じであり説明を省略する。図31に示すように、絶縁膜22にからGeOが離脱するピーク温度は、GeO膜より高い。ピーク温度は、LaGO膜が最も高く、YGO膜、ScGO膜およびAlGO膜の順に低くなる。
【実施例12】
【0128】
このように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウムに加え三価金属Mの酸化物M含むことにより、純水によるエッチングレートが低くなり、GeOの離脱温度が高くなる。これは、図11のように、Mの酸素ポテンシャルがGeOより低いためと考えられる。
【実施例12】
【0129】
さらに、酸化物Mが含まれることにより、酸化ゲルマニウム膜内のネットワークが修正されるモデル(Network modification model)を考えた。図32(a)から図32(c)は、絶縁膜22内のネットワークの模式図である。図32(a)に示すように、GeO内のネットワークは、Ge原子を中心とした四面体50の頂点にO原子が位置する構造である。図32(b)に示すように、酸化物Mの構造は、M原子とO原子とがM-Oボンド52により結合されている。図32(c)に示すように、酸化ゲルマニウムGeOに酸化物Mが加わると、M-Oボンド52が加わる。これにより、酸化ゲルマニウムGeOのネットワークが修正される。このM-Oボンド52により、ネットワークの結合強度が強くなると考えられる。これにより、実施例7のYGO膜において議論したように、MGO膜においてもゲルマニウムとMGO膜との界面状態が安定すると考えられる。
【実施例12】
【0130】
以上のように、絶縁膜22が酸化ゲルマニウムGeOと三価金属Mの酸化物Mとを含むことにより、界面状態を安定にできる。三価金属Mとしては、アルカリ土類元素、希土類元素およびアルミニウムの少なくとも1つ、またはこれらの混合物を用いることができる。
【実施例12】
【0131】
上記ネットワーク修正モデルによれば、図21に示したようなM濃度とDitの関係は、イットリウム以外の三価金属においても大きくは異ならないと考えられる。よって、絶縁膜22における、三価金属MとゲルマニウムGeとの和に対する三価金属Mの原子組成比は、6%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。また、図17に示したようなM濃度と比誘電率の関係もイットリウム以外の三価金属Mにおいても大きくは異ならないと考えられる。よって、絶縁膜22における、三価金属MとゲルマニウムGeとの和に対する三価金属Mの原子組成比は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【実施例12】
【0132】
次に、三価金属Mのうち好ましい金属について考える。三価金属Mの化学的性質はイオン半径に大きく依存することが知られている。図33は、イオン半径に対する配位数を示す図である。アルミニウム、スカンジウム、イットリウムおよびランタンについて示す。図33に示すように、イオン半径が大きくなると配位数が大きくなる。
【実施例12】
【0133】
図34は、実施例12における絶縁膜22の波数に対する赤外線吸収を示す図である。測定方法は図19と同じであり説明を省略する。図34に示すように、AlGO膜のピーク波数および強度はGeO膜と大きく変わらない。ScGO膜、YGO膜、LaGO膜の順にピーク波数がGeO膜からシフトし、ピークがブロードとなる。このように、三価金属Mのイオン半径が大きくなると絶縁膜22内の結合のネットワーク構造が大きく変化する。
【実施例12】
【0134】
図33および図34から、イオン半径が大きいと図32(c)のようなネットワーク構造に修正されるため、結合が強固になり好ましいように考えられる。しかしながら、発明者らの実験によるとLaGO膜では、界面状態がよくない。
【実施例12】
【0135】
ゲルマニウム基板上に形成したYGO膜およびLaGO膜をXPS分析した。図35(a)および図35(b)は、Ge4+3dの結合エネルギーに対するXPS強度を示す図である。破線はゲルマニウム基板の波形である。30eV付近のピークは、Ge-Ge結合のピークである。33eV付近のピークは、Y-GeOおよびLa-GeO結合のピークである。YGO膜ではY4p、ScGO膜ではLa5sのピークも観察される。YGO膜では、Ge-Y結合のピークは観察されないが、LaGO膜では、Ge-La結合のピークが観察される。このように、LaGO膜ではGe-La結合が形成されていることがわかる。
【実施例12】
【0136】
図36は、絶縁膜22内の結合状態を示す模式図である。ゲルマニウム基板20上に絶縁膜22が形成されている。絶縁膜22として右側はLaGO膜、左側はYGO膜を示す。YGO膜内ではY-O-Ge結合が形成され、LaGO膜内ではLa-O-Ge結合が形成される。ゲルマニウム基板20と絶縁膜22との界面において、YGO膜では、Oを介してYとGeが結合するのに対し、LaGO膜では、LaとGeが直接結合する。このように、Mのイオン半径が大きすぎると、GeとMとの直接結合が生じる。これにより、界面状態が悪くなると考えられる。
【実施例12】
【0137】
図37は、イオン半径に対するDitを示す模式図である。図37では、発明者らの実験からイオン半径とDitとの関係を模式的に示している。アルミニウムのようにイオン半径が小さいと、MGO膜のDitは大きい。イットリウムおよびスカンジウム程度のイオン半径では、MGO膜のDitは最も小さくなる。ランタンのようにイオン半径が大きいと、MGO膜のDitが大きくなる。このように、界面状態が良好となるMのイオン半径が存在すると考えられる。
【実施例12】
【0138】
図33および図37より、三価金属のイオン半径は0.7Å以上かつ1.0Å以下が好ましい。この範囲内の三価金属としては、イットリウムおよびスカンジウム以外に、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムがある。このように、絶縁膜22に含まれる酸化物は、イットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムのいずれか1つの金属の酸化物、またはこれらの混合物であることが好ましい。さらに、三価金属のイオン半径は0.75Å以上かつ0.95Å以下がより好ましい。
【実施例12】
【0139】
実施例12の絶縁膜22を実施例10および11に用いることができる。また、実施例12の絶縁膜22を実施例6と同様のMOSFETに適用することができる。さらに、実施例12の絶縁膜22をMOSFET以外の半導体装置に適用することもできる。
【実施例12】
【0140】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0141】
10、20 ゲルマニウム基板
12、22 絶縁膜
16、26 金属膜
30、40 ゲルマニウム層
32、34、42、44 絶縁膜
35 ゲート絶縁膜
36、46 ゲート電極
38 ソースまたはドレイン領域
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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