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明細書 :動物細胞の運動方向の制御基材、当該基材を用いた細胞の識別方法及び細胞の分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6128620号 (P6128620)
登録日 平成29年4月21日(2017.4.21)
発行日 平成29年5月17日(2017.5.17)
発明の名称または考案の名称 動物細胞の運動方向の制御基材、当該基材を用いた細胞の識別方法及び細胞の分離方法
国際特許分類 C12M   3/04        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12N   5/071       (2010.01)
C12M   1/26        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
FI C12M 3/04 Z
C12M 1/00 Z
C12N 5/071
C12M 1/26
C12M 1/34 B
C12Q 1/04
請求項の数または発明の数 10
全頁数 18
出願番号 特願2015-546670 (P2015-546670)
出願日 平成26年11月6日(2014.11.6)
国際出願番号 PCT/JP2014/079421
国際公開番号 WO2015/068759
国際公開日 平成27年5月14日(2015.5.14)
優先権出願番号 2013229898
優先日 平成25年11月6日(2013.11.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年4月27日(2016.4.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】角南 寛
【氏名】横田 育子
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 国際公開第2012/049784(WO,A1)
特開2013-208098(JP,A)
特開2013-179912(JP,A)
特開2009-22276(JP,A)
角南寛,他,三次元パターンを利用した細胞分離,再生医療,2011年 2月 1日,Vol. 10 Suppl 2011,p. 271, 2P-124
調査した分野 C12M 3/00
C12M 1/00
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CiNii
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
動物細胞の運動方向を制御するための制御基材であって、該基材表面は複数の溝部を有し、該溝部は相対する2つの壁部と底部から形成され、該溝部を形成する相対する2つの壁部は柱状凸部を連続して有し、該柱状凸部は、
イ)その凸が水平方向断面で少なくとも一つの頂部となる形状であり、ならびに
ロ)相対する壁部に形成される柱状凸部と互い違いの位置に設けられる
ことを特徴とする、動物細胞の運動方向の制御基材。
【請求項2】
一つの壁部において隣接する柱状凸部の頂部の間隔が3μm~20μmである、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記壁部の高さが10~40μmである、請求項1又は2に記載の基材。
【請求項4】
前記相対する壁部の間の距離が2μm~20μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の基材。
【請求項5】
前記凸の方向が相対する壁部の距離方向に対して一方向に傾いている、請求項1~4のいずれか一項に記載の基材。
【請求項6】
前記凸の方向が相対する壁部の垂線方向に対して10度~80度の方向を向いている、請求項1~5のいずれか一項に記載の基材。
【請求項7】
前記柱状凸部の水平断面形状が6角形以下の多角形である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基材。
【請求項8】
基材がシリコン、ガラス、プラスチック及び金属よりなる群から選択される材料で形成される、請求項1~7のいずれかに一項に記載の基材。
【請求項9】
2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて識別する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の基材の溝部の一端に前記2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の溝方向に沿って細胞の種類を識別する工程を含む、前記識別方法。
【請求項10】
2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて分離する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の基材の溝部の一端に前記2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の細胞を回収する工程を含む、前記分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の運動能の差異を利用して細胞を識別する又は分離するための、動物細胞の運動方向の制御基材及び当該基材を用いた細胞の識別方法及び細胞の分離方法に関する。
本願は、2013年11月6日に日本に出願された、特願2013-229898号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
血液、リンパ液又は液体培地などの移動可能な環境下に置かれた細胞は、化学物質や増殖因子などの化学的刺激、電気的刺激、接触刺激などの物理的刺激、その他の外的要因に応答して移動する(遊走する)性質を有している。この細胞の運動能に着目し、細胞の遊走を促す刺激を選択して使用することで、異種細胞群から任意の細胞を特異的に識別したり、分離したりする方法や、そのための機器、器具あるいは材料などが研究開発されている。
【0003】
化学物質に対する細胞の化学走性(ケモタキシス)による細胞遊走の制御はこれまでに多数の研究例があり、応用としての化学走性を用いた細胞診断も実用化に至っている。化学走性を利用した細胞を分離・診断する方法の例としては、多孔質なフィルターで上下に仕切られたボイデンチャンバーを用いた方法が挙げられる。この方法は、ボイデンチャンバーのフィルター下の区画に特定の細胞を引き寄せる化学物質を置き、フィルター上の区画に様々な細胞を播くことによって、フィルター下の区画方向への細胞の移動を観察したり、移動した細胞を採取したりすることを可能にする。
【0004】
しかし、ケモタキシスを用いた細胞分離方法は、細胞を化学物質や増殖因子で刺激するために、対象となる細胞の分化、増殖、機能発現などの各細胞の性状に影響を与えて、刺激前後の細胞の性状を変化させてしまうおそれがある。すなわちケモタキシスは対象となる細胞の性状を不安定にさせる傾向があり、刺激後の細胞を生体に投与するような細胞治療や診断において、ケモタキシスの利用は不利である。
【0005】
一方、シリコン等の適当な材質から作製されるいわゆる「足場」(スキャホールド)を細胞に提供することで、足場上を移動する細胞の遊走能の差を利用して細胞を識別又は分離する方法も提唱されている。例えば、フォトレジスト技術を用いてシリコン基材上にマイクロオーダーの正三角柱の規則的パターンを成形した基材や、表面に突起物を形成させた基材に細胞を播種することで、細胞の遊走方向を制御する方法が報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0006】
足場を刺激とした細胞遊走の誘導は、ケモタキシスとは異なり刺激前後の細胞の性状を変化させる可能性が低く、足場の構造的性質又は特徴と細胞の遊走能や方向制御に関する研究が進められている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】「三次元パターンを利用した細胞遊走の制御」、第33回分子生物学会年会・第83回日本生化学大会合同大会、2010年11月19日。
【非特許文献2】「三次元パターンを利用した新規細胞走性の開発」、戦略目標「プロセスインテグレーションによる次世代ナノシステムの創製」、3研究領域合同公開シンポジウム、2013年10月17日。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、化学物質や増殖因子、抗体などを用いたケモタキシスではなく、特徴的なマイクロパターンを有する基材を足場として細胞に提供し、細胞の遊走能を利用して細胞を識別又は分離する新たな基材と方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、細胞が足場の突起部を好んで遊走することに着目し、突起を一定方向に連続して並べることで細胞の遊走方向を制御することができることを見いだし、下記の各発明を完成させた。
【0010】
(1)動物細胞の運動方向を制御するための制御基材であって、該基材表面は複数の溝部を有し、該溝部は相対する2つの壁部と底部から形成され、該溝部を形成する相対する2つの壁部は柱状凸部を連続して有し、該柱状凸部は、
イ)その凸が水平方向断面で少なくとも一つの頂部となる形状であり、ならびに ロ)相対する壁部に形成される柱状凸部と互い違いの位置に設けられる
ことを特徴とする、動物細胞の運動方向の制御基材。
(2)一つの壁部において隣接する柱状凸部の頂部の間隔が3μm~20μmである、(1)に記載の基材。
(3)前記壁部の高さが10~40μmである、(1)又は(2)に記載の基材。
(4)前記相対する壁部の間の距離が2μm~20μmである、(1)~(3)のいずれか一項に記載の基材。
(5)前記凸の方向が相対する壁部の距離方向に対して一方向に傾いている、(1)~(4)のいずれか一項に記載の基材。
(6)前記凸の方向が相対する壁部の垂線方向に対して10度~80度の方向を向いている、(5)に記載の基材。
(7)前記柱状凸部の水平方向断面形状が6角形以下の多角形である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の基材。
(8)基材がシリコン、ガラス、プラスチック及び金属よりなる群から選択される材料で形成される、(1)~(7)のいずれかに一項に記載の基材。
(9)2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて識別する方法であって、(1)~(8)のいずれか一項に記載の基材の溝部の一端に前記2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の溝方向に沿って細胞の種類を識別する工程を含む、前記識別方法。
(10)2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて分離する方法であって、(1)~(8)のいずれか一項に記載の基材の溝部の一端に前記2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の細胞を回収する工程を含む、前記分離方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明の基材上に細胞懸濁液を播種することで、細胞本来の機能を維持したまま細胞の識別又は分離を行うことができる。また、この基材上での細胞の分離過程や移動した細胞数を顕微鏡その他の機器を用いてモニタリングすれば、細胞懸濁液中や生体組織中の各細胞種の存在量、がん細胞の浸潤性の評価などを行うことができる。
【0012】
また、本発明は細胞を遊走させるために化学物質、増殖因子、抗体などを用いる必要がないことから、細胞の性状を維持したまま細胞を分離することが可能となり、細胞診断、細胞治療に望まれる安全な細胞を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様の基材の微細構造を模式的に示す図である。
【図2】本発明の別の態様の基材の微細構造を模式的に示す図である。
【図3】図1に示される基材の斜視図である。
【図4】本発明の基材の作製に使用したフォトマスクの基本パターンを示す。
【図5】基材1~5のパターンを示す顕微鏡写真である。
【図6】基材6~10のパターンを示す顕微鏡写真である。
【図7】基材11~15のパターンを示す顕微鏡写真である。
【図8A】本発明の基材に播種したNIH3T3細胞の移動軌跡(図中の線)を表した顕微鏡写真である。
【図8B】本発明の基材に播種したNIH3T3細胞の移動軌跡(図中の線)を表した顕微鏡写真(図8A)の模式図である。
【図9A】本発明の基材に播種したNIH3T3細胞とHaCaT細胞の移動軌跡を表した顕微鏡写真である。図中、緑色はHaCaT細胞を、赤色と線はNIH3T3細胞とその軌跡をそれぞれ表している。
【図9B】本発明の基材に播種したNIH3T3細胞とHaCaT細胞の移動軌跡を表した顕微鏡写真(図9A)の模式図である。
【図10】本発明の基材の溝部を移動するNIH3T3細胞を表す顕微鏡写真である。
【図11】本発明の基材の領域を模式的に示した図である。
【図12】基材1~15における基板のR領域及びL領域で観察されるNIH3T3細胞の数を表したグラフである。
【図13】基材9のR領域及びL領域のNIH3T3細胞を表す顕微鏡写真である。
【図14】基材4のR領域及びL領域のHaCaT細胞及びNIH3T3細胞を表す顕微鏡写真である。図中、緑色(矢印)はHaCaT細胞を、赤色(無印)はNIH3T3細胞をそれぞれ表している。
【図15】本発明の別の態様の基材の構造及び使用方法を模式的に示す図である。
【図16】基材4のR領域及びL領域のHaCaT細胞及びNIH3T3細胞を示す顕微鏡写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、動物細胞の運動方向を制御するための制御基材であって、該基材表面は複数の溝部を有し、該溝部は相対する2つの壁部と底部から形成され、該溝部を形成する相対する2つの壁部は柱状凸部を連続して有し、該柱状凸部は、
イ)その凸が水平方向断面で少なくとも一つの頂部となる形状であり、ならびに
ロ)相対する壁部に形成される柱状凸部と互い違いの位置に設けられる
ことを特徴とする、動物細胞(以下細胞と称する)の運動方向の制御基材に関する。なお、本発明にいう細胞の運動とは細胞の移動すなわち遊走を意味する。
【0015】
本発明の基材に適当な溶媒に懸濁した細胞を播種すると、運動能の高い細胞は自ら遊走を開始して、溝部に進入ないし落下した後、壁部の連続する柱状凸部の頂部を伝って溝部を一方向に遊走するようになる。一方、運動能の低い細胞は、基板上に播種された場所から殆ど又は僅かにしか動かず、その結果、運動能の高い細胞と運動能の低い細胞とが、基材の上で互いに離れて位置するようになる。本発明の基材は、この様に細胞の運動方向すなわち細胞の遊走方向を制御するための基材である。
【0016】
本発明の基材における壁部及び溝部の代表的な態様を図1及び図2に示す。以下、図面を用いて説明する。
図1及び図2では、網掛け部分が基材を真上から見たときの2以上の相対する壁部1を表し、相対する壁部の間の無色部(空間)が溝部を表している。また、図示の便宜上、紙面の奥方向に位置する底部の記載は省略されている。また、図1の態様の基材の斜視図を図3に示す。
【0017】
図1に示される態様の発明における壁部1は、壁部1を水平方向に切断したときの断面形状が三角形である柱状凸部2を壁部1の両面に連続して有する。壁部1の柱状凸部2は、相対する壁部1の2つの柱状凸部の頂部3の間を向いて形成され、その結果、相対する壁部1に形成される柱状凸部2と互い違いの位置に設けられる。柱状凸部2は、底部から立ち上がるように壁部1と一体的に形成された壁部1の部分構造である(図3の斜視図参照)。
【0018】
「相対する壁部に形成される柱状凸部と互い違いの位置に設けられる」とは、「相対する2つの壁部1に対する垂線4を描いたときに、2つの壁部1の柱状凸部2のうち相対する壁部1に最も近接するそれぞれの頂部が一の垂線上には存在しない様に形成される」とも表すことができる。
【0019】
また、「その凸が水平方向断面で少なくとも一つの頂部となる形状であり」とは、「柱状凸部は少なくとも一つの角を有する」とも表すことができる。本発明における壁部1の柱状凸部2の形状(壁部1を水平方向に切断したときの断面形状)は、細胞が遊走する際の掛かりとなる頂部を少なくとも一つ有する他は、特に制限はない。本発明の頂部は、柱状凸部2の形状(壁部を水平方向に切断したときの断面形状)が多角形である場合には、90度以下、好ましくは60度以下、より好ましくは30度以下の角度を有する角であればよい。
【0020】
本発明における柱状凸部2は、壁部1の伸展方向に向かって連続して存在する。その繰り返しピッチは、柱状凸部の頂部3の間隔7で表すことができる。本発明の基材では、柱状凸部の頂部3の間隔が3μm~20μm、好ましくは10μm~15μmの範囲となるように、柱状凸部2が形成されることが好ましい。
柱状凸部2の高さは、壁部1の高さと同程度であればよい。
【0021】
また本発明において、凸の方向は相対する壁部の距離方向に対して一方向に傾いていることが好ましい。図1に示される態様では、相対する壁部1の柱状凸部2の一辺5(三角形の斜辺)は、いずれも壁部1の垂線に対して傾き6を伴って図の右方向を向くように形成されている。本発明における柱状凸部2は、傾き6が10度~80度、好ましくは30度から75度の範囲となるように形成されることが好ましい。この凸が向いている方向に細胞の遊走方向が制御される。
【0022】
本発明における壁部1の高さ(溝部の深さ)は、5μm~40μm、好ましくは20~30μmとなるように調節されることが好ましい。壁部1の高さ(溝部の深さ)が5μmを下回ると、溝部を遊走する細胞が壁部1の上部に登ってしまう頻度が増加して遊走方向の制御効率が低下する傾向にある。なお、壁部1の高さを40μmより高くしても遊走方向の制御に関しては特に不都合はなく、その上限は基材の製作技術に依存する。
【0023】
本発明における相対する壁部1は、それらの間の距離が2μm~20μm、好ましくは5μm~15μmとなるように形成されることが好ましい。ここにいう距離とは、一方の壁部1の柱状凸部の頂部3をつなぐ面と他方の壁部1の柱状凸部の頂部3をつなぐ面との間の距離8を意味する。距離が上記範囲を超えると、細胞の遊走速度が低下する傾向がある。
【0024】
本発明における壁部の幅9は、20μm~60μm、好ましくは30~50μmとなるように調節されることが好ましい。幅が上限を超える場合、基材に播種された細胞が溝部に移動ないし落下しにくくなり、細胞の識別又は分離操作により長い時間を要する可能性がある。
【0025】
本発明の基材の別の態様を示す図2の各符号は、図1の符号と対応している。図2の態様の壁部1は、壁部1を水平方向に切断したときの断面形状が台形となる柱状凸部2を壁の両面に複数有する。この態様において、一方の壁部1の柱状凸部の頂部3(台形のうち相対する壁部に最も近接する角)は、他方の壁部2の2つの柱状凸部の頂部3の間を向いて形成され、該頂部は互い違いの位置に形成されている。また、相対する壁部1の柱状凸部2の凸は、いずれも図の右方向を向くように形成されている。
【0026】
なお、図1及び図2に態様における柱状凸部2は、その形状(壁部を水平方向に切断したときの断面形状)が多角形として表されているが、本発明における柱状凸部2は曲線で形成される断面形状、例えば半楕形状又は波型形状を有するものであってもよい。またその柱状凸部2の頂部は、90度以下、好ましくは60度以下、より好ましくは30度以下の角度を有するものであっても、これらと同程度の曲率を有するヘアピン状の頂部であってもよい。また、前述の頂部の間隔、壁部の距離、高さ及び幅は、一つの基材において及び一つの壁部において均一であっても、又は上記範囲内で異なっていてもよい。例えば、一つの基材中に頂部の間隔、高さ及び/又は幅が互いに異なる壁部が存在してもよく、また一つの壁部の頂部の間隔又は幅が部分的に異なっていてもよい。
【0027】
本発明の基材の材料としては、ミクロンオーダーの微細構造を形成することが可能な材料であれば特に限定はないが、シリコン、ガラス、プラスチック、金属などを好適な材料として挙げることができる。シリコン又はガラスは微細構造を形成するためのフォトリソグラフィ技術を利用して本発明の基材を作成することが可能である。
【0028】
特に好ましい基材の材料は、フォトリソグラフィ技術を用いてミクロンオーダーの微細構造を形成することが可能なシリコンウェーハである。
【0029】
シリコンウェーハ上に微細構造を形成するためのフォトリソグラフィ技術は、フォトマスクの作成やウェーハ状でのパターン成形その他の工程を含め、半導体素子やプリント基材などの製造分野において広く知られた技術であり、ポジ型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストを含む多くの方法が開発されておる。本発明の基材の作製に対しては、シリコンウェーハ等を対象としたフォトリソグラフィ技術であればいずれも利用可能である。
【0030】
なお、フォトリソグラフィ技術を用いてシリコンウェーハから本発明の基材を作製する場合、本発明の基材の壁部の高さ(溝部の深さ)を確保するために、ボッシュ法などのディープエッチングを行うことが好ましい。
【0031】
本発明の基材においては適当な液体溶媒好ましくは液体培地に懸濁された細胞が基材に播種され、溝部内を細胞が移動する。そのため、例えばシリコンウェーハを材料としてフォトリソグラフィ技術で作製された基材などの表面が疎水性である基材は、その表面を親水化処理して使用することが好ましい。この様な表面が親水性の付与された基材は、本発明の好ましい態様の一つである。
【0032】
基材の表面を親水化する方法は、用いる素材に応じて既知の方法を採用すればよく、例えばシリコンウェーハから作製された基材に対しては、Oプラズマ法、界面活性剤処理法などを採用することができる。
【0033】
上記のフォトリソグラフィ技術によって作製されるシリコンウェーハをベースとした基材は、これを別の素材にパターンを移すための鋳型としても利用することができる。例えば、上記基材に適当なプラスチック、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を溶融あるいは溶媒に溶解して、流し込んで固化させることで、プラスチック等を素材とした本発明の基材を作成することもできる。あるいは、可塑性材料にシリコンウェーハでできた基材を押し当てることでパターンを可塑性材料に転写してもよい。また、金属を材料とする場合は、マイクロレーザー加工などによって、金属に対して直接的に本発明のパターンを形成して、本発明の基材として作製してもよい。
【0034】
本発明は、さらに別の態様として、前述の基材の溝部の一端に2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の溝方向に沿って細胞の種類を識別する工程を含む、2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて識別する方法を提供する。
【0035】
またもう一つの態様として、前述の基材の溝部の一端に前記2種以上の異なる種類の細胞を含む細胞懸濁液を添加する工程、基材を前記細胞が生存可能な条件に保持する工程及び保持後の基材上の細胞を回収する工程を含む、2以上の異なる種類の細胞を運動能に基づいて分離する方法も提供する。
【0036】
上記方法における基材の溝部の一端とは、前述の壁部の柱状凸部の頂部が向いている(傾いている)方向とは逆の方向の端部を意味し、図1及び図2に示される基材を用いる方法を例にすれば、図の左側に位置する端部である。
【0037】
また、さらに別の態様として、前述の基材上(壁部上)の少なくとも一部を覆うように、カバーガラス等の被覆部材を基材上に載置した上で、被覆されていない基材上に少なくとも1種以上の細胞を含む細胞懸濁液を添加し、その後、被覆部材を除去して細胞の遊走を開始させることもできる(図15)。
【0038】
本発明の方法の典型例は、基材を適当な液体、好ましくは分離対象となる細胞の生存に好適な液体培地や緩衝液に基材を浸し、基材の溝部が伸展する方向の一端に対象となる細胞を含む懸濁液を播種し、細胞が生存可能な条件、例えば37℃前後の温度と好気的な環境下に数時間~数日間静置させることで行われる。具体的には、本発明の基材をシャーレ等の容器に置き、DMEM培地その他の動物細胞の培養に用いられる適当な液体培地を基材の上側表面が僅かに浸る程度にシャーレに加えた後、基材の溝部が伸展する方向の一端に細胞懸濁液を滴下し、これを細胞培養条件下に10時間~24時間静置すればよい。
【0039】
培地、緩衝液及び静置条件は、識別又は分離対象となる細胞に応じてその細胞に好適なものとして当業者に知られているものを選択すればよい。また細胞は、顕微鏡を用いた細胞の外観観察、光学的特性を利用した観察、細胞に特異性を有する蛍光試薬や抗体などの化学物質を用いた細胞標識その他の、細胞の識別に一般的に用いられる方法を適用することで識別することができる。また遊走能の違いによって基材上の異なる部位に局在することとなった細胞は、その一方又は両方をそれぞれ適当な方法によって回収することで互いを分離することができる。
【0040】
本発明の基材を用いることで、運動能の高い細胞と運動能の低い細胞とを特別な化学物質を使用することなく識別又は分離することができる。例えば、癌化した細胞は正常細胞と比較して運動能が高いといわれていることから、例えばバイオプシー等によって摘出あるいは回収した検体から調製される細胞懸濁液を本発明の基材上に播種することで、移動する細胞に着目して細胞の性状を調べることで、癌の診断等を行うことができると期待される。
【0041】
また、一般にiPS細胞は運動能が低く、特定の細胞へと分化誘導された細胞は高い運動能を発揮するといわれていることから、本発明の基材を利用することで、iPS細胞から分化誘導された目的の細胞と未分化に留まっているiPS細胞とを識別し、又は分離することが可能になる。特に本発明の方法によれば、細胞の分離に遊走の方向性を制御するための化学物質は必ずしも必要ではなく、分離の前後において細胞の性状が変化する可能性は極めて小さいか殆どない。この様な分離技術は細胞診断、細胞治療に望まれる安全な細胞を供給することが可能となる点で有利である。
【0042】
さらに、本発明の基材を血管ステントやカテーテル、人工関節などの医療材料に応用することで、生体内に埋め込まれた医療材料の表面で運動性の低い細胞を材料表面に留める一方で運動性の高い細胞を基材から脱離させることができ、医療材料の表面を望ましい細胞で被覆して生体適合性を高めることが可能になると期待される。
【0043】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0044】
<実施例1>
(1)三次元パターン基材の作製
25個の1mm角のエリアを有するクオーツフォトマスク(ミタニマイクロニクス社製)の各エリアに対して、図4に示される基本構造を有し、かつa~hに示される各部寸法及び角度が互いに異なる15種類のパターン1~15のフォトマスクを用意した。
【0045】
900nmの熱酸化皮膜付きのシリコン基材(10mm×10mm)上にHMDS(ヘキサメチルジシラザン;東京応化工業社製)及びレジスト組成物OFPR-5000LB(東京応化工業社製)をスピンコート(1000rpm、5秒~4000rpm、45秒)した。プリベーク(110℃、2分間)後、露光装置MA-20(ミカサ社製)に、先に用意したクオーツフォトマスクとレジスト膜がコートされたシリコン基材をセットし、1.5秒間露光した。
【0046】
露光後のシリコン基材を現像液NMD-3(東京応化工業社製)に浸漬し現像した。光学顕微鏡により、レジスト膜パターンのチェックを行い、シリコン基材上にレジスト膜パターンが作製されていることを確認した。ポストベーク(130℃、20分間)を行った後、シリコン基材のレジスト膜で覆われていない部分のSiOを反応性イオンエッチング装置RIE-10-NRV(サムコ社製)を用いて除去した。FE-SEM JSM-6700FT(日本電子社製)によってSiOが除去できていることを確認後、RIE-10-NRV(サムコ社製)を用いてOクリーニング(50sccm、3Pa、3分間)の後、アセトン中で30秒間超音波洗浄してレジスト膜を完全に除去した。
【0047】
ICPドライエッチング装置(MUC-21、住友精密工業社製)によりSiを深くエッチングした(SF6、50sccm、C4H8、50sccm、500W、22分、4.7Pa)。マスクとして用いたSiOをHFで除去した。FE-SEMJSM-6700FT(日本電子社製)によってシリコン基材の断面を観察したところ、深さ23μmの溝が形成されていることが確認された。
【0048】
カラーレーザー3D顕微鏡VK-9700(KEYENCE社製)を用いて、得られた三次元パターンの形状の観察を行った。この時、50倍の対物レンズ(ニコン社製)を用いてReal Peak Detection(RPD)を行いながら高精細モードで観察した。この観察により、フォトマスクで用意したパターン1~15においていずれも、連続する三角柱形状の柱状凸部を有する複数の壁部が所定の範囲でずれて向かい合った壁部が何列にも配列したパターンを有する、本発明の基材1~15が作製されたことが確認された。基材1~15の各パターンを図5~図7にまとめて示す。
【0049】
基材1~15のパターン形状像を形態分析し、基材毎に、図4のa~hで示される部位の長さをそれぞれ異なる6箇所について計測し、各部位の平均値と標準偏差を算出した。その結果を表1に表す。
【0050】
【表1】
JP0006128620B2_000002t.gif

【0051】
【表2】
JP0006128620B2_000003t.gif

【0052】
【表3】
JP0006128620B2_000004t.gif

【0053】
(2)三次元パターンの親水化と滅菌、表面の脱気
(1)で作製した基材1~15を、RIE-10NRV(サムコ社製)を用いてOクリーニング(50sccm、3Pa、8分間)して、基材に水に対する親水性を付加した。基材1~15を120℃で20分間滅菌した後、10%FBS、1%ペニシリン及びストレプトマイシンを含むDMEM培地(以下、DMEM培地と略記する)を加えた35mmセルカルチャーディッシュの底に沈め、-0.09Mpaで1分間、軽く振とうしながら脱気を行った。光学顕微鏡による反射像観察で気泡が完全に除去できていることが確認された。この親水化された基材1~15を、以下の実験に使用した。
【0054】
<実施例2>
(1)NIH3T3細胞のPKH26染色
DMEM培地を加えた35mmセルカルチャーディッシュの底に実施例1(2)で作製した基材を沈め、-0.09Mpaで1分間、軽く振とうしながら脱気を行い、培地交換を行った後、そのまま12時間培地に浸漬して静置した。NIH3T3細胞を1×10個/cm2で三次元パターン基材の入ったディッシュに播種し、2時間培養後、PKH26(シグマアルドリッチ社、500倍希釈)に4分間室温で浸漬した。FBSでPKH26の反応を止めた後、培地で洗浄した。PKH26によるNIH3T3細胞の染色から洗浄操作が終了するまでにかける時間は約0.25時間である。これらの手順はPKH26の染色プロトコールを参考に改変して使用した。
【0055】
PKH26で染色されたNIH3T3細胞が接着した基材を、培地で満たされたGlass Base Dish 12φ(IWAKI社製)に移し、このディッシュの底のガラス窓の部分に反転させて置いた。このとき、各基材の四つの頂点がガラス窓の枠にかかるようにして、細胞播種面とガラスの間に十分な隙間が空くようにして、細胞培養面に培地を拡散させた。この状態で、更に1.75時間、DMEM培地で培養した後、StageTop(登録商標) Incubation INU-ZILCS(TOKAI HIT社製)が取り付けられた蛍光顕微鏡ObserverZ1(Zeiss社製)を用いて30分間隔で72時間にわたり、タイムラプス観察を行った。観察は10倍の対物レンズを用い、指定された定点(871μm×690μm)の三次元パターンの反射像とPKH26、でラベルされた細胞の蛍光像をCCDカメラにより撮影した。各定点において得られた画像から動画を作成し、動画から細胞の遊走する方向を確認した。その結果、基材1~15全てについて、NIH3T3細胞が、柱状凸部の頂部が突出している方向(図4の右方向)にのみ遊走していることが確認された。代表的な基材6~9を撮影したものに、細胞の軌跡をデジタル処理して加えた写真を図8Aに示す。また、図8Bとして、図8A中の基材パターン及び細胞軌跡が明確となるよう、図8Aを模式化した図を示す。
【0056】
(2)二種類の生きた細胞のPKH26およびPKH67染色
DMEM培地を加えた35mmセルカルチャーディッシュの底に実施例1(2)で作製した基材を沈め、-0.09Mpaで1分間、軽く振とうしながら脱気を行い、培地交換を行った後、そのまま12時間培地に浸漬して静置した。HeLa細胞及びHaCaT細胞をそれぞれ1×10個/cm2で基材の入ったディッシュに播種し、DMEM培地で9.75時間培養後、PKH67(250倍希釈)に4分間室温で浸漬した。FBSでPKH67の反応を止めた後、培地で洗浄した。PHK67による細胞染色から洗浄操作が終了するまでにかける時間は約0.25時間である。これらの手順はPHK67の染色プロトコールを参考に改変して使用した。
【0057】
次に、トリプシンで剥離させたNIH3T3細胞をDMEM培地で洗浄し、PKH26(250倍希釈)に4分間室温で浸漬した。FBSでPKH26の反応を止めた後、培地で洗浄した。PKH26で染色されたNIH3T3細胞1×10個/cmを、PKH67で染色されたHeLa細胞及びHaCaT細胞が接着した基材に播種した。PKH26による細胞染色から洗浄操作が終了するまでにかける時間は約0.25時間である。
【0058】
5.75時間、DMEM培地で培養した後、培地で満たされたGlass Base Dish 12φに移し、このディッシュの底のガラス窓の部分に反転させて置いた。このとき、各基材の四つの頂点がガラス窓の枠にかかるようにして、細胞播種面とガラスの間に十分な隙間が空くようにして、細胞培養面に培地を拡散させた。この状態で、(1)と同様にしてタイムラプス観察を行った。
【0059】
HaCaT細胞(緑色及び黒塗りの△で示される)とNIH3T3細胞(赤色及び〇で表示される)を同じ基材に播種して、72時間にわたって定点連続観察したものに、細胞の軌跡をデジタル処理して加えた写真を図9Aに示す。また、図9Bとして、図9A中の基材パターン及び細胞軌跡が明確となるよう、図9Aを模式化した図を示す。
この写真から分かるように、HaCaT細胞(△)は殆ど遊走しないのに対しNIH3T3細胞(〇)はいずれも右方向に遊走した。この結果は、本発明の基材を用いることでHaCat細胞とNIH3T3細胞とを識別又は分離することが可能であることを示すものである。
【0060】
(3)サンプルの固定化とDAPI染色、観察
(1)及び(2)のタイムラプス観察を行った後の細胞を含む基材5~9を4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液に浸して、細胞を固定化した。DAPI(Dojindo Laboratories社、2000倍希釈)を用いて20分間、室温で細胞核を染色し、EUKITT(登録商標)(O.Kindler製)を用いてカバーガラス上に封入した。接着細胞の観察は共焦点レーザー走査型顕微鏡FV-1000D(オリンパス社製)を用いて行われた。このとき対物レンズは40倍のレンズあるいは100倍のレンズを用いた。この細胞核の蛍光像とパターンおよび細胞の反射像を三次元的に形態観察した。細胞の蛍光染色はファロイジン-Alexa546によって行われた。三次元的な観察は基材表面近傍から0.5μm間隔で30μmの深さまで行われた。基材上の細胞を真上から見た像と、その基材上の断面図を作成した。真上から見た細胞および基材の像は、全ての焦点を足しあわせたものである。その結果を図10に示す。
【0061】
図10から、本発明の基材に播種された細胞は、柱状凸部の頂部を伝いながら溝部を遊走していることが確認された。
【0062】
(4)一種類の細胞の遊走の方向性の確認
細胞が一方向に動いたのかどうかを厳密に判断するために、実施例2の(1)の基材上でのNIH3T3細胞の遊走方向を観察した。
各基材(1mm×1mm)の観察領域を、左(L)領域と右(R)領域をさらにそれぞれA~C領域の三段に分けた(図11)。
【0063】
各基材を写真に撮り、上記各領域に存在する細胞数をカウントし、A~CそれぞれのR領域とL領域に存在する全細胞数に対してR領域及びL領域の細胞数の存在比率を求めた。さらに、A~CのR領域及びL領域の存在比率の平均値および標準偏差を算出した。
その結果を図12に示す。図中、各群の左側(網掛け)棒グラフが、全細胞数に対するL領域に存在する細胞数の比率を示し、各群の右側(白抜き)棒グラフが、全細胞数に対するR領域に存在する細胞数の比率を示す。エラーバーは標準偏差である。
また、基材9を撮影した写真を図13に示す。
【0064】
基材9では細胞はR領域に大きく偏在していることが確認された。また基材1~15において細胞がR領域に有意に偏在していることが確認された。
【0065】
(5)二種類の細胞の遊走の方向性の確認
前記(4)と同様にして、実施例2の(2)の基材上のHaCaT細胞及びNIH3T3細胞の遊走の方向性を確認した。基材4を撮影した写真を図14に示す。
HaCaT細胞(緑色、白矢印で示す)は殆ど遊走が見られないのに対してNIH3T3細胞(赤色、矢印無し)はR領域へと遊走していることが確認された。
【0066】
(6)二種類の細胞の遊走の方向性の確認2
前記(4)と同様にして、実施例2の(2)の基材上のHaCaT細胞及びNIH3T3細胞の遊走の方向性を確認した。基材4を撮影した写真を図16に示す。
左図に示すL領域では、多くのHaCaT細胞(緑色、矢印無し)が認められたが、NIH3T3細胞(赤色、白矢印で示す)はごく僅かに存在していたのみだった。一方、右図に示すR領域では、撮影視野中の全ての細胞がNIH3T3細胞(赤色、矢印無し)であった。
この結果から、HaCaT細胞は殆ど遊走していない一方、NIH3T3細胞の大多数はR領域へと遊走していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、細胞本来の機能を維持したまま細胞の識別又は分離を行うことができる技術を提供するものであり、細胞懸濁液中や生体組織中の各細胞種の存在量、がん細胞の浸潤性の評価などを行うことができる。また、本発明は細胞を遊走させるために化学物質、増殖因子、抗体などを用いる必要がないことから、細胞の性状を維持したまま細胞を分離することが可能となり、細胞診断、細胞治療に望まれる安全な細胞を供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1 壁部
2 柱状凸部
3 柱状凸部の頂部
4 相対する2つの壁部に対する垂線
5 柱状凸部の一辺
6 壁部の垂線に対しての傾き
7 2つの柱状凸部の頂部の間隔
8 一方の壁部の柱状凸部の頂部をつなぐ面と他方の壁部の柱状凸部の頂部をつなぐ面との間の距離
9 壁部の幅
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A】
7
【図8B】
8
【図9A】
9
【図9B】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17