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明細書 :電子素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 電子素子
国際特許分類 H01L  27/105       (2006.01)
H01L  27/10        (2006.01)
H01L  45/00        (2006.01)
H01L  49/00        (2006.01)
FI H01L 27/10 448
H01L 27/10 451
H01L 45/00 Z
H01L 49/00 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2015-505449 (P2015-505449)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り その他電気通信回線2013年12月12日(12.12.2013)RANDOMTELEGRAPHSIGNALSBYALKANETHIOL-PROTECTEDAUNANOPARTICLESINCHEMICALLYASSEMBLEDSINGLE-ELECTRONTRANSSISTORSJ.APPL.PHYS.114,223717
国際出願番号 PCT/JP2014/056080
国際公開番号 WO2014/142040
国際出願日 平成26年3月9日(2014.3.9)
国際公開日 平成26年9月18日(2014.9.18)
優先権出願番号 2013047422
優先日 平成25年3月9日(2013.3.9)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】真島 豊
【氏名】寺西 利治
【氏名】東 康男
【氏名】坂本 雅典
【氏名】加納 伸也
【氏名】ダニエル エドゥアルド ウルタド サリナス
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査請求 未請求
テーマコード 5F083
Fターム 5F083FZ10
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA56
5F083JA60
要約 金属ナノ粒子を用いなくても、スイッチングやメモリとして機能する電子素子を提供する。電子素子が、ナノギャップを有するように配置された一方の電極及び他方の電極5A,5Bと、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間で少なくとも何れかの電極上に設けられたハロゲンイオン6と、を備える。一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に電圧を正の値から負の値まで、負の値から正の値まで連続的に繰り返し変化させると、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に流れる電流波形が非対称となる。一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に印加する電圧の値に応じてハロゲンイオン6の状態を変化させ、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に流れる電流の値に対応させて情報の書き込み状態と情報の消去状態とを維持する。
特許請求の範囲 【請求項1】
ナノギャップを有するように配置された一方の電極及び他方の電極と、
上記一方の電極と上記他方の電極との間で少なくとも何れかの電極上に設けられたハロゲンイオンと、
を備える、電子素子。
【請求項2】
前記一方の電極と前記他方の電極との間に電圧を正の値から負の値まで及び/又は負の値から正の値まで連続的に変化させると、前記一方の電極と前記他方の電極との間に流れる電流波形が非対称となる、請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
前記一方の電極と前記他方の電極との間の電圧に対する電流特性が負性微分コンダクタンスを有する、請求項1に記載の電子素子。
【請求項4】
前記一方の電極と前記他方の電極との間に印加する電圧の値に応じて前記ハロゲンイオンの状態を変化させ、前記一方の電極と前記他方の電極との間に流れる電流の値に対応させて情報の書き込み状態と情報の消去状態とを維持する、請求項1に記載の電子素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング機能やメモリ機能を有する電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
対向する電極間に架橋、細線、ポイントコンタクトなどを形成した電子素子が開発されている(例えば特許文献1)。一方、本発明者らは、単電子トランジスタの製造技術の確立のために、単電子デバイスにおけるクーロン島として金ナノ粒子に注目し、STMを用いて1.8nmの粒径の金ナノ粒子が常温でクーロン島として機能していることを明らかにしてきた。また、固体基板上に電子デバイスの構築に向けて、無電解メッキを用いて5nmのギャップ長を有するナノギャップ電極を一度に高歩留まりで作製する技術を確立してきた。さらに、ナノギャップ電極間に、アルカンチオール分子で保護された金ナノ粒子を化学吸着法により導入した単電子トランジスタの動作について報告してきた(非特許文献1乃至5)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第4119950号公報
【0004】

【非特許文献1】S. Kano, Y. Azuma, M. Kanehara, T. Teranishi, Y. Majima, Appl. Phys. Express, 3, 105003 (2010)
【非特許文献2】Y. Yasutake, K. Kono, M. Kanehara, T. Teranishi, M. R. Buitelaar, C. G. Smith, Y. Majima, Appl. Phys. Lett., 91, 203107 (2007)
【非特許文献3】Victor M. Serdio V., Yasuo Azuma, Shuhei Takeshita, Taro Muraki, Toshiharu Teranishi and Yutaka Majima, Nanoscale, 4, 7161 (2012)
【非特許文献4】N. Okabayashi, K. Maeda, T. Muraki, D. Tanaka, M. Sakamoto, T. Teranishi, Y. Majima, Appl. Phys. Lett., 100, 033101 (2012)
【非特許文献5】猪川洋、藤原聡、高橋庸夫、信学技報、ED2001-241、SDM2001-250、15-20頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような単電子トランジスタでは、アルカンチオール分子で保護された金属ナノ粒子を一対のナノギャップ電極の間に配置することが必要であり、そのためには、ナノギャップ電極の表面にアルカンチオール/アルカンジチオールの混合自己組織化単分子膜を形成し、アルカンジチオールをアンカー分子として用いて、金属ナノ粒子を化学吸着させることで、ナノギャップ電極間に金属ナノ粒子を導入することが必要である。このように、化学吸着法を用いた単電子トランジスタの製造方法では、上述のアルカンチオール/アルカンジチオールの混合自己組織化単分子膜を形成する工程、金属ナノ粒子を導入する工程を加える必要があるため、製造工程が複雑となっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、金属ナノ粒子を用いなくてもスイッチングやメモリとして機能する電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じる。
〔1〕 ナノギャップを有するように配置された前記一方の電極及び前記他方の電極と、前記一方の電極と前記他方の電極との間で少なくとも何れかの電極上に設けられたハロゲンイオンと、を備える、電子素子。
〔2〕 前記一方の電極と前記他方の電極との間に電圧を正の値から負の値まで及び/又は負の値から正の値まで連続的に変化させると、前記一方の電極と前記他方の電極との間に流れる電流波形が非対称となる、前記〔1〕に記載の電子素子。
〔3〕 前記一方の電極と前記他方の電極との間の電圧に対する電流特性が、負性微分コンダクタンスを有する、前記〔1〕に記載の電子素子。
〔4〕 前記一方の電極と前記他方の電極との間に印加する電圧の値に応じてハロゲンイオンの状態を変化させ、前記一方の電極と前記他方の電極との間に流れる電流の値に対応させて情報の書き込み状態と情報の消去状態とを維持する、前記〔1〕に記載の電子素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属ナノ粒子を電極と電極との間の隙間に配置しなくても、メモリ機能又はスイッチング機能を備えた電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電子素子の構成を示しており、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図2】図1に示す電子素子の電流電圧特性を示す図である。
【図3】分子定規として用いる界面活性剤分子(CTAB)の化学構造を模式的に示す図である。
【図4】実施例1で作製したサンプルのSEM像を示す図である。
【図5】実施例1で作製したサンプルの1回目の電流電圧特性を示す図である。
【図6】実施例1で作製したサンプルの2回目以降の電流電圧特性を示す図である。
【図7】実施例1で作製したサンプルにおける書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。
【図8】実施例1で作製したサンプルに対して、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図9】実施例1で作製したサンプルを評価した結果であって、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス電圧列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す図である。
【図10】実施例1で作製したサンプルを評価した結果であって、-40℃の真空下において測定した電流電圧特性を示す図である。
【図11】実施例1で作製したサンプルを評価した結果であって、-40℃の真空下における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。
【図12】実施例1で作製したサンプルを評価した結果であって、-40℃の真空下において、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図13】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス電圧列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、-40℃、真空下における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す図である。
【図14】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、120℃、真空下における電流電圧特性を示す図である。
【図15】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、120℃、真空下における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。
【図16】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、120℃の真空下、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図17】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、120℃、真空下における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す図である。
【図18】実施例1で作製したサンプルの120℃、空気中における電流電圧特性を示す図である。
【図19】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、120℃で空気中における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。
【図20】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、120℃で空気中において、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図21】実施例1で作製したサンプルの特性を評価した結果であって、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、120℃で空気中における書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す図である。
【図22】実施例2で作製したサンプルのSEM像を示す図である。
【図23】実施例2で作製したサンプルの第1回目の電流電圧特性を示す図である。
【図24】実施例2で作製したサンプルのフォーミング後の電流電圧特性を示す図である。
【図25】実施例2で作製したサンプルにおいて、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図26】(A)は実施例1で作製したサンプルを臭化ヘキサメトニウム水溶液に浸漬させた前後における電流電圧特性を示し、(B)は実施例2で作製したサンプルを臭化ヘキサメトニウム水溶液に浸漬させた前後における電流電圧特性を示す図である。
【図27】参考例として作製したサンプルに正負のバイアス方向に電圧を掃引したときの電流電圧特性を示し、(A)は第1回目の測定結果を、(B)は第2回目以降の測定結果を示す図である。
【図28】参考例として作製したサンプルを室温、空気中において、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧に対応するパルス電圧列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。
【図29】実施例3としてヨウ素無電解金メッキで作製したナノギャップ電極間の電流電圧特性を示し、(A)は電流電圧特性を、(B)はパスル電圧列を印加したときの電流特性を示す図である。
【符号の説明】
【0010】
1:基板
2:絶縁層
3A,3B,4A,4B:金属層
5A:ナノギャップ電極(一方の電極)
5B:ナノギャップ電極(他方の電極)
6:ハロゲンイオン
10:電子素子
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は特許請求の範囲に記載した発明の範囲において適宜変更して実施することができる。

【0012】
〔電子素子の構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る電子素子の構成を示しており、(A)は断面図、(B)は平面図である。本発明の実施形態に係る電子素子10は、基板1と、基板1上に設けられた絶縁層2と、絶縁層2上にナノギャップ長を有するように設けられた一方の電極5A及び他方の電極5Bと、一方の電極5A、他方の電極5Bの少なくとも何れかの電極に設けられたハロゲンイオン6と、を備える。ここで、ナノギャップ長とは数nm、例えば0.3nm~12nmの寸法である。一方の電極5Aと他方の電極5Bでナノギャップ電極が構成される。

【0013】
基板1にはSi基板など各種の半導体基板が用いられ得る。絶縁層2は、SiO、Siなどにより形成され得る。
一方の電極5A及び他方の電極5Bは、Au、Al、Ag、Cu、Niなどにより形成され得る。一方の電極5A及び他方の電極5Bは、密着層3A,3Bと金属層4A,4Bとを順に積層することで形成されてもよい。ここで、密着層3A,3BはTi、Cr、Niなどで形成されることができ、金属層4A,4Bは、密着層3A,3B上にAu、Al、Ag、Cu、Niなどの別の又は同一の金属で形成され得る。
ハロゲンイオン6としては、臭素イオン,塩素イオン,ヨウ素イオンである。ナノギャップ電極間に存在し、電気伝導に寄与するハロゲンイオン6は、一方の電極5A,他方の電極5Bに均等の数で配置されているのではなく、何れか一方に偏って配置される。

【0014】
〔電子素子の特性〕
図1に示す電子素子の特性について説明する。図2は図1に示す電子素子の電流電圧特性を示す。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流I(A)である。電子素子10の一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に電圧を印加する。他方の電極5Bを接地した状態で、一方の電極5Aに電圧を掃引する。正バイアスを増加させると電流が増加し、或る電圧に達した後に減少させても元の電流波形とはならない。また、負バイアスを増加させると、或る電圧を超えると負性微分コンダクタンスの領域となる。つまり、或る負バイアスのとき、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間においてハロゲンイオン6の状態を変化させることができる。図1に示すように、電子素子10の電流電圧波形は、電圧を正の値から負の値まで、負の値から正の値までの何れか又は双方を、一回又は複数回、連続的に変化させた場合に電流波形が非対称となるヒステリシスを描く。このことから、何れかの電極表面にハロゲンイオンが吸着していることにより、電気伝導に寄与するナノギャップ間の電極構造が電気的に非対称となっている。

【0015】
ここで、図2に示すような電流-電圧特性が得られる理由について説明する。
図2に示すような電流-電圧特性が得られるのは、ナノギャップ電極間に電圧を印加することにより、ギャップ間に存在するハロゲンイオンの価数が変化してその結果として酸化還元反応が生じ、又はギャップ間に存在するハロゲンイオンの個数が変化してその結果として伝導に寄与するハロゲンイオンの個数が変化し、ナノギャップ電極間の導電性が変化しているためと考えられる。このことは、後述するナノギャップ電極間に存在するハロゲンイオンの個数が電気伝導度に影響を与えていることから示唆されるものである。また、ナノギャップ電極間に電圧を印加することにより、イオンがマイグレーションしたため、導電性が変化したとも考えられる。

【0016】
そこで、電子素子10の一方の電極5Aに印加する電圧の大きさとして、書込電圧をVwrite,読取電圧をVread,消去電圧をVeraseとすると、
書込電圧Vwrite<0<読取電圧Vread<消去電圧Verase
又は、書込電圧Vwrite>0>読取電圧Vread>消去電圧Verase
が成り立つように、各電圧を設定する。すると、電子素子10をメモリ素子として用いることができ、またスイッチング素子として用いることができる。

【0017】
〔電子素子の製造方法〕
図1に示す電子素子の製造方法について説明する。先ず、第1ステップとして基板1上に第1の絶縁層2を形成する。次に、第2ステップとして、分子定規無電解メッキ法によりナノギャップ電極5A,5Bを形成する。

【0018】
例えば、第1の絶縁層2上にナノギャップよりも広いギャップを有するように金属層3A,3Bを間隔をあけて対を成すように形成しておく。次に、無電解メッキ液に基板1を浸漬する。無電解メッキ液は、金属イオンを含む電解液に還元剤及び界面活性剤が混入されて作製される。この無電解メッキ液に基板1を浸すと、金属イオンが還元剤により還元されて、金属が金属層3A,3Bの表面に析出して金属層4Aと金属層4Bとなり、金属層4Aと金属層4Bとのギャップが狭くなり、無電解メッキ液に含まれる界面活性剤が、その析出により形成される金属層4A,4Bに化学吸着する。界面活性剤は電極間のギャップの長さ(単に「ギャップ長」と呼ぶ。)をナノメートルサイズに制御する。電解液中の金属イオンが還元剤により還元されて金属が析出するため、このような手法は無電解メッキ法に分類される。金属層3A、3Bに金属層4A、4Bがメッキにより形成され、電極5A,5Bの対が得られる。このように、ナノギャップ電極5A,5B表面に保護基である界面活性剤分子を分子定規として用いた無電解メッキ法(以下、「分子定規無電解メッキ法」と呼ぶ。)により、ギャップ長を界面活性剤の分子によって制御する。これにより、ナノギャップ電極5A,5Bを精度よく形成することができると共に、ハロゲンイオンをカウンターイオンとして備える各種界面活性剤により、ハロゲンイオンの元をナノギャップ電極5A,5Bに配置することができる。

【0019】
その後、第3ステップとして、ナノギャップ電極に、UV洗浄及び/又はO2プラズマアッシングを行うことで、表面に付着した分子を灰化処理する。そのとき、界面活性剤のカウンターイオンが一方の電極5A,他方の電極5Bに吸着した状態となり、一方の電極5A、他方の電極5Bに電圧を印加することにより、イオン状態が変化するか又はイオンがマイグレーションするか、その双方が生じる。

【0020】
以上により、本発明の実施形態に係る電子素子10を作製することができる。

【0021】
ここで、第2ステップについて詳細に説明する。
混合溶液であるメッキ液には、分子定規の機能を果たす界面活性剤と、析出する金属の陽イオンが混入されている水溶液、例えば塩化金(III)酸水溶液と還元剤と、が含まれ、この混合液に後述するように酸が含まれていることが好ましい。

【0022】
分子定規には、例えば、界面活性剤である臭化アルキルトリメチルアンモニウム(Alkyltrimethylammonium Bromide)分子が用いられる。臭化アルキルトリメチルアンモニウムとしては、具体的には、臭化デシルトリメチルアンモニウム(DTAB:Decyltrimethylammonium Bromide)、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム(LTAB:Lauryltrimethylammonium Bromide)、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム(MTAB:Myristyltrimethylammonium Bromide)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB:Cetyltrimethylammonium Bromide)、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム(STAB:Stearyltrimethylammonium Bromide)、臭化ヘキサメトニウム(HMB:Hexamethonium Bromide)、臭化オクタメトニウム(OMB:Octamethonium Bromide)、臭化デカメトニウム(DMB:Decamethonium Bromide)が用いられる。

【0023】
分子定規には、それ以外にも、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、ヨウ化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジアルキルジメチルアンモニウム、臭化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、ヨウ化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、アルキルアミン、N-メチル-1-アルキルアミン、N-メチル-1-ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、オレイルアミン、アルキルジメチルホスフィン、トリアルキルホスフィン、アルキルチオールの何れかが挙げられる。ここで、長鎖脂肪族アルキル基としては、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどのアルカン基、アルキレン基などがあるが、長鎖脂肪族アルキル基であれば同様の機能が期待されるため、これらの例に限らない。

【0024】
分子定規としては、DDAB(ジデシルジメチルアンモニウムブロミド)以外にも、ヘキサメトニウムブロミド、N,N'-(1,20-イコサンジイル)ビス(トリメチルアミニウム)ジブロミド、1,1'-(デカン-1,10-ジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン]ジブロミド、塩化プロピルジトリメチルアンモニウム、1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムジクロリド、1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムジヨージド、1,1'-ジエチル-4,4'-ビピリジニウムジブロミド、1,1'-ジヘプチル-4,4'-ビピリジニウムジブロミドの何れかを用いてもよい。

【0025】
電解液としては、塩化金(III)酸水溶液、塩化金(III)酸ナトリウム水溶液、塩化金(III)酸カリウム水溶液、塩化金(III)水溶液、塩化金(III)酸アンモニウム塩が有機溶媒に溶解した溶液を用いる。ここで、アンモニウム塩には上述したアンモニウム塩、有機溶媒には脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などが挙げられる。

【0026】
還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、一級アミン、二級アミン、一級アルコール、二級アルコール、ジオールを含むポリオール、亜硫酸ナトリウム、塩化ヒドロキシルアンモニウム水素化ホウ素塩、水素化アルミニウムリチウム、シュウ酸、ギ酸などが挙げられる。

【0027】
還元力が比較的弱い、例えばアスコルビン酸は、電極表面を触媒にした自己触媒型のメッキにより金の0価への還元を可能にする。還元力が強いと、電極以外でも還元が起こり、クラスターが多く生成する。即ち、溶液中に金微粒子が生成して電極上に付着してしまい、電極上に選択的に金を析出させることができないため好ましくない。逆に、アスコルビン酸など、より弱い還元剤であると、自己触媒型のメッキ反応が進まない。なお、クラスターとは、無電解メッキを可能にする核が表面にあってその核の上にメッキにより形成された金のナノ粒子のことである。
L(+)-アスコルビン酸は、上述した還元剤の中では還元作用が弱く、クラスターの生成をより少なくし、電極表面を触媒にして金を0価へ還元するため、還元剤として用いるのが好適である。

【0028】
無電解メッキ液には、クラスターの生成を抑える働きがある酸を混入させておくことが好ましい。クラスターが核形成をし始めた不安定な状態で溶かすことができるからである。酸としては、塩酸、硝酸、酢酸を用いることができる。

【0029】
図3は分子定規として用いる界面活性剤分子(CTAB)の化学構造を模式的に示す図である。CTABはC16、即ち直鎖の炭素が16個結合しているアルキル鎖長を有する分子である。この他にもアルキル鎖の異なる誘導体、アルキル鎖C10となるDTAB、C12となるLTAB、C14となるMTAB、C18となるSTABの合わせて5分子を最良の形態の一例として示す。頭文字のD,L、M、C、Sはそれぞれ10のDecyl、12のLauryl、14のMyristyl、16のCetyl、18のStearylの頭文字からとられている。

【0030】
上述では、電極材料として金を用いているが、金に限らず別の金属であってもよい。例えば、電極材料としてイニシャル電極の材料を銅としてもよい。その際、イニシャル電極は、電子ビームリソグラフィー(Electron Beam Lithography)法又は光リソグラフィー法を用いて銅電極を形成し、その後、銅電極表面を塩化銅とする。次いで、メッキ液としてアスコルビン酸を還元剤として用いた塩化金溶液を用い、銅電極表面を金で覆う。具体的には、塩化金(III)酸水溶液に界面活性剤臭化アルキルトリメチルアンモニウムC2n+1〔CH33・Brを混ぜ、還元剤L(+)-アスコルビン酸を加え、ギャップ電極上に、自己触媒型無電解金メッキを行う。その後、分子定規メッキ法により表面が金のナノギャップ電極を作製する。
【実施例1】
【0031】
実施例1として、以下の要領で分子定規無電解メッキ法を用いて電子素子を作製した。
最初に、シリコン基板1上にシリコン酸化膜2が全面に設けられた基板を用意し、その基板上にレジストを塗布し、EBリソグラフィー技術によりギャップ長30nmとなる金属層3A,3Bとしてのイニシャル電極のパターンを描画した。現像後、EB(Electron Beam)蒸着により2nmのTi膜を蒸着し、そのTi膜上にAuを10nm蒸着して、金属層3A,3Bとしてのイニシャルの金ナノギャップ電極を作製した。
【実施例1】
【0032】
次に、無電解メッキ液を用意した。分子定規として25ミリモルの臭化アルキルトリメチルアンモニウム(Alkyltrimethylammonium Bromide)を28ミリリットル測って取る。そこに、塩化金酸水溶液50ミリモルを120マイクロリットル測って加える。酸として酢酸を1ミリリットル加え、還元剤となるL(+)-アスコルビン酸(Ascorbic acid)を0.1モル、3.6ミリリットル加え、よく撹拌してメッキ液とした。
【実施例1】
【0033】
実施例1では、臭化アルキルトリメチルアンモニウムとして、LTAB分子を用いた。既に作製した、金ナノギャップ電極付きの基板を無電解メッキ液に30分程度浸漬した。これにより、実施例1の分子定規無電解メッキ法によりナノギャップ長を有する電極を作製した。
【実施例1】
【0034】
その後、酸素プラズマアッシングを行って、分子定規として用いたLTABの直鎖部分を除去し、残りのカウンターイオンをナノギャップ電極の何れか一方に偏在させた。
【実施例1】
【0035】
図4は、実施例1で作製したサンプルのSEM像を示す図である。電極の間のナノギャップが2.48nmであった。なお、実施例1ではサイドゲートも同時に作製した。
【実施例1】
【0036】
図5は、実施例1で作製したサンプルの1回目の電流電圧特性を示す。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流I(μA)である。1回目の電流電圧特性の測定として、先ず、0Vから-1Vまで印加して0Vまで戻し、その後、0Vから1Vまで印加して0Vまで戻し、さらに、0Vから-1Vまで印加して0Vまで戻した。図から、電流電圧特性がヒステリシスを有し、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に電圧を負の値から正の値まで連続的に変化させると、一方の電極5Aと他方の電極5Bとの間に流れる電流波形が非対称となる。つまり、電圧の掃引方向に依存して非対称なヒステリシスを含む電流波形を有していることが分かった。なお、図中の矢印は、電圧の掃引方向を示している。測定は室温で行った。
【実施例1】
【0037】
図6は、実施例1で作製したサンプルの二回目以降の電流電圧特性を示す。測定は室温で行った。図から、電圧の正負で電流の特性が異なり、負バイアスを印加した状態において負性微分コンダクタンス領域が存在することが分かった。また、約-0.4Vを読出電圧、約-1.0Vを消去電圧、約0.75Vを書込電圧として設定すればよいことが分かった。
【実施例1】
【0038】
図7は、実施例1で作製したサンプルにおける書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。横軸は電圧(V)であり、縦軸はOn/Off比である。測定は室温で行った。読出電圧を-0.35VとしたときがOn/Off比が最も高いことが分かった。
【実施例1】
【0039】
図8は、実施例1で作製したサンプルに対して、それぞれ5s(秒)ずつの書込電圧Vwrite=0.8V・読出電圧Vread=-0.35V・消去電圧Verase=-1.0V・読出電圧Vread=-0.35Vのパルス列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加したときの電流特性を示す図である。横軸は時間(s)であり、左縦軸は電圧(V)であり、右縦軸は電流(μA)である。測定は室温で行った。パルス電圧の変化に電流波形が対応しており、書込電圧を印加した後に読出電圧を印加したとき(すなわちOn状態)の電流値と、消去電圧を印加した後に読出電圧を印加したとき(すなわちOff状態)の電流値とで差が現れており、メモリ動作していることが分かる。この場合のOn/Off比は、178.6μA/47.4μA=3.76であった。
【実施例1】
【0040】
図9は、実施例1で作製したサンプルを評価した結果であって、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間を1周期とし、その逆数を周波数と定義した場合の、書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はOn/Off比である。測定は室温で行った。パルス列の周波数を50mHz,500mHz,5Hz,50Hz,500Hz,5kHzと増加させると、On/Off比は3.76(=178.6μA/47.4μA),2.87(=145.8μA/50.8μA),2.36(=114.8μA/48.6μA),1.65(=85.6μA/51.9μA),1.28(=70.4μA/54.9μA),1.13(=62.6μA/55.5μA)と減少することが分かった。なお、何れの周波数でも電圧の変化に電流が追従していた。
【実施例1】
【0041】
次に、実施例1で作製したサンプルを-40℃の真空中で測定した結果について述べる。
図10は電流電圧特性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流(μA)である。図6と同様に電圧の正負で電流の特性が異なり、負バイアスを印加した状態において負性微分コンダクタンス領域が存在することが分かった。また、約-0.3Vを読出電圧、約-1.0Vを消去電圧、約0.8Vを書込電圧として設定すればよいことが分かった。
【実施例1】
【0042】
図11は書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸はOn/Off比である。読出電圧を-0.3VとしたときがOn/Off比が最も高いことが分かった。
【実施例1】
【0043】
図12は5s(秒)ずつの書込電圧Vwrite=0.8V・読出電圧Vread=-0.35V・消去電圧Verase=-1.0V・読出電圧Vread=-0.35Vのパルス列を印加した場合の電流特性を示す図である。横軸は時間(s)、左縦軸は電圧(V)、右縦軸は電流(μA)である。この場合のOn/Off比は、143.0μA/39.5μA=3.62であった。
【実施例1】
【0044】
図13は、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はOn/Off比である。パルス列の周波数を50mHz,500mHz,5Hz,50Hz,500Hz,5kHzと増加させると、On/Off比は3.62(=143.0μA/39.5μA),2.45(=105.0μA/62.1μA),1.82(=80.4μA/44.1μA),1.51(=71.6μA/47.4μA),1.19(=59.8μA/50.2μA),1.17(=56.4μA/48.0μA)と減少することが分かった。なお、何れの周波数でも電圧の変化に電流が追従していた。
【実施例1】
【0045】
次に、実施例1で作製したサンプルを、120℃の真空中で測定した結果について述べる。
図14は電流電圧特性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流I(μA)である。図6と同様に電圧の正負で電流の特性が異なり、負バイアスを印加した状態において負性微分コンダクタンス領域が存在することが分かった。また、約-0.2Vを読出電圧、約-1.0Vを消去電圧、約0.8Vを書込電圧として設定すればよいことが分かった。
【実施例1】
【0046】
図15は書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値の比であるOn/Off比の読出電圧依存性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸はOn/Off比である。電圧を-0.2VとしたときがOn/Off比が最も高いことが分かった。
【実施例1】
【0047】
図16は5s(秒)ずつの書込電圧Vwrite=0.8V・読出電圧Vread=-0.2V・消去電圧Verase=-1.0V・読出電圧Vread=-0.2Vのパルス列を印加した場合の電流特性を示す図である。横軸は時間(s)であり、左縦軸は電圧(V)であり、右縦軸は電流(μA)である。この場合のOn/Off比は、112.9μA/33.7μA=3.55であった。
【実施例1】
【0048】
図17は、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間の逆数を周波数と定義した場合の、書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性を示す。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はOn/Off比である。パルス列の周波数を50mHz,500mHz,5Hz,50Hz,500Hz,5kHzと増加させると、On/Off比は3.55(=112.9μA/33.7μA),2.62(=100.3μA/38.3μA),1.97(=78.5μA/39.9μA),1.54(=62.4μA/40.6μA),1.25(=50.4μA/40.5μA),1.14(=46.4μA/40.8μA)と減少することが分かった。なお、何れの周波数でも電圧の変化に電流が追従していた。
【実施例1】
【0049】
次に、120℃の空気中で測定した結果について述べる。
図18は電流電圧特性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流(μA)である。図6と同様に電圧の正負で電流の特性が異なるが、この結果では正バイアスを印加した状態において負性微分コンダクタンス領域が存在することが分かった。また、約+0.1Vを読出電圧、約+1.1Vを消去電圧、約-0.85Vを書込電圧として設定すればよいことが分かった。
【実施例1】
【0050】
図19は書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の読出電圧依存性を示す図である。横軸は電圧V(V)であり、縦軸はOn/Off比である。読出電圧を+0.1VとしたときがOn/Off比が最も高いことが分かった。
【実施例1】
【0051】
図20は5s(秒)ずつの書込電圧Vwrite=—0.85V・読出電圧Vread=+0.1V・消去電圧Verase=+1.1V・読出電圧Vread=+0.1Vのパルス列を印加したときの電流特性を示す図である。横軸は時間(s)、左縦軸は電圧(V)、右縦軸は電流(μA)である。この場合のOn/Off比は、45.0μA/19.9μA=2.26であった。
【実施例1】
【0052】
図21は、一組の書込電圧・読出電圧・消去電圧・読出電圧のパルス列に要する時間の逆数を周波数と定義したときの、書込電圧印加後の読出電圧印加時のOn状態の電流値と、消去電圧印加後の読出電圧印加時のOff状態の電流値との比である、On/Off比の周波数依存性の図である。横軸は周波数(Hz)であり、縦軸はOn/Off比である。パルス列の周波数を50mHz,500mHz,5Hz,50Hz,500Hz,5kHzと増加させると、On/Off比は2.26(=45.0μA/19.9μA),1.79(=35.8μA/20.0μA),1.36(=29.4μA/21.6μA),1.14(=24.9μA/21.8μA),1.05(=22.3μA/21.3μA),1.05(=22.1μA/21.1μA)と減少することが分かった。なお、何れの周波数でも電圧の変化に電流が追従していた。
【実施例1】
【0053】
よって、実施例1で作製したサンプルは、温度・雰囲気などの使用環境によらずメモリ素子として動作することが分かった。
【実施例2】
【0054】
実施例2で用いたサンプルは、実施例1と同様の手法で作製したものである。図22は、実施例2で作製したサンプルのSEM像である。電極の間のナノギャップは1.79nmであった。なお、実施例2ではサイドゲートも同時に作製した。
【実施例2】
【0055】
図23は、実施例2で作製したサンプルの第1回目の電流電圧特性を示す。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流(μA)である。1回目の電流電圧特性の測定として、室温状態で、先ず、0Vから負バイアス側に増加させて0Vまで戻し、次に、0Vから正バイアス側に増加させて0Vまで戻し、その後、0Vから負バイアス側に増加させて0Vまで戻し、さらに、0Vから正バイアス側に増加させて0Vまで戻した。図から、1回目と2回目の電流電圧特性にはヒステリシスを有しないが、3回目と4回目は電流電圧特性がヒステリシスを有し、3回目の掃引では負性微分コンダクタンスが観察され、電圧を正の値から負の値まで変化させ次に負の値から正の値まで連続的に変化させると、電流波形が非対称となることが分かった。図23より、連続的な電圧掃引を行うと、ヒステリシスが発現する。ヒステリシスを発現させるための連続的な電圧掃引をフォーミングとここでは呼ぶことにする。なお、図中の矢印は、電圧の掃引方向を示している。測定は室温で行った。
【実施例2】
【0056】
図24は、フォーミング後の電流電圧特性を示す。横軸は電圧V(V)であり、縦軸は電流(μA)である。測定は室温で行なった。実施例1と同様に電流電圧特性がヒステリシスを有し、負性微分コンダクタンス領域が存在する特性が得られている。
【実施例2】
【0057】
図25は実施例2で作製したサンプルに対して、5s(秒)ずつの書込電圧Vwrite=—0.9V・読出電圧Vread=+0.7V・消去電圧Verase=+1.1V・読出電圧Vread=+0.7Vのパルス列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加した際の電流特性を示す図である。測定は室温で行なった。横軸は時間(s)であり、左縦軸は電圧V(V)であり、右縦軸は電流(μA)である。図8と同様にパルス列に対応した電流が観測されており、そのOn/Off比は読出電圧0.7Vにおいて、548.6μA/231.1μA=2.26であった。
【実施例2】
【0058】
次に、本メモリ素子においてハロゲンイオンが素子動作に影響することを示すため、実施例1及び実施例2で作製したサンプルを、臭素イオンを含む臭化ヘキサメトニウム(HMB)水溶液中に浸漬させ、その前後における電気特性の変化を調べた。
【実施例2】
【0059】
図26(A)は実施例1で作製したサンプルの、HMB水溶液の浸漬前後における電流電圧特性を示し、(B)は実施例2で作製したサンプルの、HMB水溶液の浸漬前後における電流電圧特性である。実施例1、2共に室温で真空中で行った。縦軸は電流(μA)、横軸は電圧である。
【実施例2】
【0060】
双方の結果において、HMB水溶液への浸漬に伴い、電流電圧特性に変化が現れ、HMBに浸漬させた後の方が、電流量が大きくなっていることがわかった。特に図26(B)では8倍程度の電流量の増加が見られている。また、浸漬前後において、On/Off比は殆ど変化しなかった。すなわち、実施例1のサンプルにおける読出電圧+0.1VでのOn/Off比は、浸漬前は2.46(=28.1μA/11.4μA)、浸漬後のOn/Off比は2.52(=27.4μA/10.9μA)であり、実施例2のサンプルにおける電圧—0.1VでのOn/Off比は、浸漬前は2.74(=1.5μA/0.55μA)、浸漬後のOn/Off比は2.45(=26.1μA/10.6μA)であった。HMB水溶液へのナノギャップ電極の浸漬により、ナノギャップ電極間に導入された臭素イオンの個数は、浸漬前よりも浸漬後の方が多くなっていることが予想される。従って、ナノギャップ間に存在する臭素イオンの増加が、電流電圧特性の変化として素子動作に影響を与えていると考えられる。
【実施例2】
【0061】
〔比較例〕
実施例1と同様に作製したナノギャップを有する電極の隙間に、下記化学式で示されるチオール官能化オリゴ(フェニレンエチニレン)(OPE)で保護された金ナノ粒子を配置した。具体的には、Auで3.6nmのナノギャップ電極を電子ビームリソグラフィーと分子定規無電解メッキを用いて作製した。その後、チオール官能基で保護されたAuナノ粒子(2.0nmのコア平均直径サイズ)の溶液中に、Auナノギャップ電極を浸漬した。電気的な測定は室温で行った。
【化1】
JP2014142040A1_000003t.gif
【実施例2】
【0062】
図27は、参考例として作製したサンプルに正負のバイアス方向に電圧を掃引したときの電流電圧特性を示し、(A)は第1回目の測定、(B)は第2回目以降の測定結果を示す図である。何れも、横軸は電圧(V)であり、縦軸は電流(μA)である。第2回目以降の測定では、コンダクタンスが高い状態から低い状態に変化していることが分かった。電流応答は、-0.5Vで異なる状態を含んだ明確なヒステリシスを示した。スイッチング動作の観測のために、書込電圧、読取電圧及び消去電圧を、それぞれ+0.6V、-0.4V、-1.0Vに設定すればよいことが分かった。図28は参考例として作製したサンプルを室温、空気中において、それぞれ5sずつの書込電圧Vwrite=+0.6V・読出電圧Vread=-0.4V・消去電圧Verase=-1.0V・読出電圧Vread=-0.4Vのパルス列(周期20s、周波数としては50mHzに対応)を印加したときの電流特性を示す図である。横軸は時間(s)、左縦軸は電圧(V)、右縦軸は電流(μA)である。固体デバイスで再現可能なメモリ動作を示しており、室温でスイッチング素子及びメモリ素子として実現できることが分かった。
【実施例2】
【0063】
ここで、実施例1及び実施例2と比較例とを比較すると、金属ナノ粒子を電極のナノギャップ間に配置しなくても、定性的に同様の傾向が得られていることから、金属ナノ粒子の有無にあまり素子特性が影響を受けないことが分かった。また、実施例1及び実施例2と比較例を比べても、電流の値が同じオーダーであり、素子サイズ及び構造から予測される値よりも電流が100μAと高いことが特徴でもある。電流が比較的連続的に変化していることから、電極同士の間でパスが並列に形成されていることが予測される。
【実施例2】
【0064】
なお、図1に示すように、何れか一方の電極で、他方の電極に対向するようにハロゲンイオンが設けられている場合に限らず、双方の電極で対向する表面にハロゲンイオンが設けられてもよい。ただ、その場合には、一方の電極に設けられているハロゲンイオンの数と、他方の電極に設けられているハロゲンイオンの数とで差が生じていればよい。
【実施例3】
【0065】
実施例3として、ヨウ素無電解金メッキでナノギャップ電極を作製した。
最初に、シリコン基板1上にシリコン酸化膜2を全面に設けた基板を用意し、その基板上にレジストを塗布し、EBリソグラフィー技術によりギャップ長30nmとなる金属層3A,3Bとしてのイニシャル電極のパターンを描画した。現像後、EB蒸着により2nmのTi膜を蒸着し、そのTi膜上にAuを10nm蒸着して、金属層3A,3Bとしてのイニシャルの金ナノギャップ電極を作製した。
次に、ヨウ素無電解メッキ液を用意した。ヨードチンキ溶液に金箔を溶かすことにより、[AuI]イオンとして金を溶かし、還元剤としてL(+)-アスコルビン酸を加え、[AuI]イオンに還元する。この溶液をメッキ液とし、室温下でメッキ液へのサンプルの浸漬処理を複数回繰り返すことにより、ヨウ素無電解メッキを用いて、種電極層にメッキを施す。
【実施例3】
【0066】
図29は、ヨウ素無電解金メッキで作製したナノギャップ電極間の電流電圧特性を示し、(A)は電流電圧特性図、(B)はパスル電圧列を印加したときの電流特性を示す図である。図はフォーミング後の電流電圧特性であり、電圧0Vから電圧を正方向に連続的に掃引させると、1.2Vあたりでショルダーが観察されコンダクタンスが減少している。2Vから0Vまで電圧を負方向に掃引させると、直前に正方向に掃引した場合よりも同じ電圧における電流値が小さく非対称となっている。連続して負方向に0Vから-2Vまで負方向に掃引すると、電流値は電圧の絶対値の増加に伴って負方向に増大する。連続して-2Vから0Vまで電圧を正方向に掃引させると、今度は直前に負方向に掃引したときよりも同じ負の電圧における電流の絶対値が大きくなり非対称となっている。すなわち、図29では正の電圧領域における正方向から負方向への連続した電圧掃引では、時計回りのヒステリシスになり、負の電圧領域における負方向から正方向への連続した電圧掃引では、時計回りのヒステリシスとなっている。このことから、正の電圧領域における掃引では、コンダクタンスが高い状態から低い状態に変化し、負の電圧領域における掃引では、コンダクタンスが低い状態から高い状態に変化しており、結果としてスイッチ特性が得られており、この素子には極性があることになる。なお、このようなスイッチ特性を得るためには、フォーミングが必要であるが、どちらの極性になるかという点は、いずれの場合もあり得る。
【実施例3】
【0067】
本発明は実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲において種々変更して適用することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
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【図19】
18
【図20】
19
【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
23
【図25】
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【図26】
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【図27】
26
【図28】
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【図29】
28