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明細書 :スピン制御機構及びスピンデバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6090878号 (P6090878)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
発明の名称または考案の名称 スピン制御機構及びスピンデバイス
国際特許分類 H01L  29/82        (2006.01)
H01L  37/00        (2006.01)
H01L  43/08        (2006.01)
H02N  10/00        (2006.01)
B81B   5/00        (2006.01)
FI H01L 29/82 Z
H01L 37/00
H01L 43/08 Z
H02N 10/00
B81B 5/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 18
出願番号 特願2015-545280 (P2015-545280)
出願日 平成26年10月29日(2014.10.29)
国際出願番号 PCT/JP2014/078816
国際公開番号 WO2015/064663
国際公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
優先権出願番号 2013227153
優先日 平成25年10月31日(2013.10.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年6月8日(2016.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
【識別番号】500116351
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ヨーク
【氏名又は名称】UNIVERSITY OF YORK
発明者または考案者 【氏名】廣畑 貴文
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100161425、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 鉄平
審査官 【審査官】鈴木 聡一郎
参考文献・文献 特開2013-045840(JP,A)
国際公開第2012/161336(WO,A1)
国際公開第2009/066631(WO,A1)
国際公開第2011/004891(WO,A1)
UCHIDA, K et al.,Spin Seebeck insulator,Nature Materials,英国,Nature Publishing Group,2010年11月 9日,Vol.9 (No.11),p.894-897
調査した分野 H01L 29/82
H01L 37/00
H01L 43/08
H02N 10/00
B81B 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
磁気モーメントの向きを制御するスピン制御機構であって、
磁気モーメントを有するスピン部と、
前記スピン部と接触して設けられ、強磁性かつ絶縁体で構成された第1チャネル部と、
を備え、
前記第1チャネル部に与えられた温度勾配によって発生するスピン流を用いて、前記スピン部の磁気モーメントの向きを制御
前記第1チャネル部は、前記第1チャネル部の所定位置から前記第1チャネル部と前記スピン部との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなる厚さの勾配を有する、
スピン制御機構。
【請求項2】
前記第1チャネル部には、前記第1チャネル部と前記スピン部との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられる、請求項1に記載のスピン制御機構。
【請求項3】
前記第1チャネル部の所定位置と前記第1チャネル部及び前記スピン部が互いに接触する接触位置との間に温度勾配を与えるために、前記第1チャネル部の所定位置と熱発生源部とが熱的に接続された請求項1又は2に記載のスピン制御機構。
【請求項4】
前記熱発生源部は、ジュール熱を発生する請求項に記載のスピン制御機構。
【請求項5】
前記熱発生源部は、他の電子機器に接続されたヒートシンクである請求項に記載のスピン制御機構。
【請求項6】
スピン流によって動作するスピンデバイスであって、
磁気モーメントを有するスピン部と、
前記スピン部と離間して設けられ、磁性体からなるスピン注入子と、
前記スピン部に接触して設けられ、強磁性かつ絶縁体で構成された第1チャネル部と、
前記スピン注入子と前記スピン部との間に配置され、前記スピン注入子及び前記スピン部と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなる第2チャネル部と、
を備え、
前記第1チャネル部に与えられた温度勾配によって前記第1チャネル部に発生するスピン流、及び、前記スピン注入子及び前記第2チャネル部に電流又は電圧が印加されることによって前記第2チャネル部に発生するスピン流の少なくとも一方を用いて、前記スピン部の磁気モーメントの向きを制御する、
スピンデバイス。
【請求項7】
前記第1チャネル部には、前記第1チャネル部と前記スピン部との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられる、請求項に記載のスピンデバイス。
【請求項8】
前記第1チャネル部は、前記第1チャネル部の所定位置から前記第1チャネル部と前記スピン部との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなる厚さの勾配を有する、請求項6又は7に記載のスピンデバイス。
【請求項9】
前記第1チャネル部の所定位置と前記第1チャネル部及び前記スピン部が互いに接触する接触位置との間に温度勾配を与えるために、前記所定位置と熱発生源部とが熱的に接続された、請求項6~8の何れか一項に記載のスピンデバイス。
【請求項10】
前記熱発生源部は、ジュール熱によって熱を発生する請求項に記載のスピンデバイス。
【請求項11】
前記熱発生源部は、他の電子機器に接続されたヒートシンクである請求項に記載のスピンデバイス。
【請求項12】
基板をさらに備え、
前記スピン部は、基板上に設けられた強磁性体からなる円板状の部材であり、
前記スピン注入子は、前記基板上に前記スピン部と離間して設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体からなる請求項6~11の何れか一項に記載のスピンデバイス。
【請求項13】
磁気モーメントの向きが固定されたピンド層と、前記ピンド層に対向して配置され、磁気モーメントの向きを変更可能なフリー層と、前記ピンド層及び前記フリー層との間に配置され、トンネルバリア層又は非磁性層からなる中間層とを含むスピンバルブ構造を有するスピンデバイスであって、
前記ピンド層と前記フリー層との間に電位差を与える電位差生成部と、
強磁性体かつ絶縁体からなり、前記ピンド層、前記中間層及び前記フリー層の側方に接触して配置された第1チャネル部と、
を備えるスピンデバイス。
【請求項14】
前記第1チャネル部には、前記第1チャネル部と前記フリー層との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられる、請求項13に記載のスピンデバイス
【請求項15】
前記第1チャネル部は、前記ピンド層側から前記第1チャネル部と前記フリー層との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなる厚さの勾配を有する、請求項13又は14に記載のスピンデバイス。
【請求項16】
前記電位差生成部は、前記スピンバルブ構造にジュール熱を発生させ、
前記第1チャネル部は、前記スピンバルブ構造で発生したジュール熱によって、前記ピンド層側から前記第1チャネル部と前記フリー層との接触位置へ向けて温度勾配が与えられる請求項13~15の何れか一項に記載のスピンデバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スピン制御機構及びスピンデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器において電子部品から発生する熱は、電子機器の正常な動作を妨げる要因となるおそれがある。このため、従来から、電子部品の温度を調整する機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。下記の特許文献1には、電子部品の温度を調整する機構として、ヒートシンク及びファンが記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-107513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、発明者は、電子部品の温度を調整する機構を備えるラップトップ型のコンピュータにおける主要部品の体積、重量及び電力消費量比を計算した。このコンピュータで用いられているメモリデバイスはDRAMである。図11に示されるように、ラップトップ型のコンピュータにおいて、ファン及びヒートシンクの重量は、コンピュータ全体の重量の約2割を占めており、ファンの電力消費量は、コンピュータ全体の電力消費量の約1割を占めている。
【0005】
このように、電子部品の温度を調整する機構の存在は、コンピュータの小型化又は省電力化に大きな影響を与えている。そこで、DRAMに比べて小型かつ小さい発熱量となるスピンエレクトロニクス素子を採用することで、電子部品の温度を調整する機構の体積、重量又は電力消費量を抑えることが考えられる。しかしながら、上記対策ではDRAMに比べて小さくなった重量分又は発熱量分だけしか、電子部品の温度を調整する機構の排熱能力を小さくすることはできない。本技術分野では、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能な新規なデバイスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、熱を利用して動作するデバイスを発明することができれば、電子部品で発生する熱を電子部品の動作に利用することができると考えた。すなわち、発明者は、熱で動作可能なデバイスを発明することにより、排熱の対象となる熱そのものを低減することができ、結果として、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となると考え、本発明に至った。
【0007】
本発明の一側面に係るスピン制御機構は、スピン部及び第1チャネル部を備える。スピン部は、磁気モーメントを有する。第1チャネル部は、スピン部に接触して設けられ、強磁性かつ絶縁体で構成される。そして、スピン制御機構は、第1チャネル部に与えられた温度勾配によって発生するスピン流を用いて、スピン部の磁気モーメントの向きを制御する。第1チャネル部は、第1チャネル部の所定位置から第1チャネル部と前記スピン部との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなる厚さの勾配を有する。
【0008】
このスピン制御機構では、第1チャネル部に温度勾配が与えられる。強磁性絶縁体に温度勾配が存在する場合、スピンゼーベック効果により、スピンが強磁性絶縁体中に励起してスピン流が発生する。すなわち、第1チャネル部の温度勾配により、スピン部へ向けてスピン流が発生することにより、スピン部の磁気モーメントを制御することができる。よって、例えば、他の電子部品で発生する熱を熱発生源部として利用することで、他の電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。
【0009】
一実施形態に係るスピン制御機構では、第1チャネル部には、第1チャネル部とスピン部との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられてもよい。このような温度勾配により、スピン部へ向けて第1チャネル部にスピン流が発生するため、発生したスピン流がスピン部の磁気モーメントの向きを変更することができる。
【0011】
一実施形態に係るスピン制御機構では、第1チャネル部の所定位置と第1チャネル部及びスピン部が互いに接触する接触位置との間に温度勾配を与えるために、第1チャネル部の所定位置と熱発生源部とが熱的に接続されていてもよい。このように構成することで、熱発生源部から第1チャネル部の所定位置へ熱が伝導し、強磁性かつ絶縁体で構成された第1チャネル部の所定位置と第1チャネル部におけるスピン部との接触位置と間に温度勾配が生成される。
【0012】
一実施形態に係るスピン制御機構では、熱発生源部は、ジュール熱を発生してもよい。また、一実施形態では、熱発生源部は、他の電子機器に接続されたヒートシンクであってもよい。この場合、他の電子部品で発生する熱を利用することで他の電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。
【0013】
本発明の一側面に係るスピンデバイスは、スピン流によって動作するスピンデバイスである。該スピンデバイスは、スピン部、スピン注入子、第1チャネル部及び第2チャネル部を備える。スピン部は、磁気モーメントを有する。スピン注入子は、スピン部と離間して設けられ、磁性体からなる。第1チャネル部は、スピン部に接触して設けられ、強磁性かつ絶縁体で構成される。第2チャネル部は、スピン注入子とスピン部との間に配置され、スピン注入子及びスピン部と直接又は絶縁層を介して接合された非磁性体からなる。そして、スピンデバイスは、第1チャネル部に与えられた温度勾配によって第1チャネル部に発生するスピン流、及び、スピン注入子及び第2チャネル部に電流又は電圧が印加されることによって第2チャネル部に発生するスピン流の少なくとも一方を用いて、スピン部の磁気モーメントの向きを制御する。
【0014】
該スピンデバイスでは、例えば強磁性体からなるスピン注入子と非磁性体からなる第2チャネル部とに電流又は電圧が印加されると、第2チャネル部に強磁性体からなるスピン部へ向けてスピン流が発生する。第2チャネル部に流れるスピンは、スピン部の磁気モーメントに対してスピントランスファートルク(Spin-Transfer Torque)として作用する。ここで、第1チャネル部に与えられた温度勾配により、スピンゼーベック効果により第1チャネル部にスピン流が発生する。当該スピン流は、スピン部の磁気モーメントに対して、スピントランスファートルクとして作用する。これにより、第1チャネル部のスピン流の分だけ、スピン部の磁気モーメントを回転しやすくすることができる。すなわち、熱を利用して磁気モーメントを回転しやすくさせるスピンデバイスを実現することが可能となる。よって、例えば、他の電子部品で発生する熱を利用することで他の電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することができる。
【0015】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、第1チャネル部には、第1チャネル部とスピン部との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられてもよい。このような温度勾配により、スピン部へ向けて第1チャネル部にスピン流が発生するため、発生したスピン流がスピン部の磁気モーメントの向きを変更することができる。
【0016】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、第1チャネル部には、第1チャネル部の所定位置から第1チャネル部とスピン部との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなるように、厚さの勾配が形成されていてもよい。このように構成することで、第1チャネル部の所定位置から接触位置に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。このため、スピン部の磁気モーメントを効率的に制御することが可能となる。
【0017】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、第1チャネル部の所定位置と第1チャネル部及びスピン部が互いに接触する接触位置との間に温度勾配を与えるために、第1チャネル部の所定位置と熱発生源部とが熱的に接続されていてもよい。このように構成することで、熱発生源部から第1チャネル部の所定位置へ熱が伝導し、強磁性かつ絶縁体で構成された第1チャネル部の所定位置と第1チャネル部におけるスピン部との接触位置と間に温度勾配が生成される。
【0018】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、熱発生源部は、ジュール熱を発生してもよい。また、一実施形態では、熱発生源部は、他の電子機器に接続されたヒートシンクであってもよい。この場合、他の電子部品で発生する熱を利用することで他の電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。
【0019】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、スピンデバイスが基板をさらに備え、スピン部は、基板上に設けられた強磁性体からなる円板状の部材であり、スピン注入子は、基板上にスピン部と離間して設けられ、基板面内方向に磁化された強磁性体であってもよい。
【0020】
このように構成することで、スピン部が円板状の場合、基板面内方向におけるスピン部の磁気異方性を均一にすることができるため、スピン部の磁気モーメントの基板面内方向における磁気モーメントの制御を容易に行うことが可能となる。
【0021】
本発明の他の側面に係るスピンデバイスは、スピンバルブ構造を備える。スピンバルブ構造は、ピンド層、フリー層及び中間層を備える。ピンド層は、磁気モーメントの向きが固定されている。フリー層は、ピンド層に対向して配置され、磁気モーメントの向きを変更可能とされている。中間層は、ピンド層及びフリー層との間に配置され、トンネルバリア層又は非磁性層からなる。そして、該スピンデバイスは、電位差生成部及び第1チャネル部を備える。電位差生成部は、ピンド層とフリー層との間に電位差を与える。第1チャネル部は、強磁性体かつ絶縁体からなり、ピンド層、中間層及びフリー層の側方に接触して配置されている。
【0022】
スピンバルブ構造体は、ピンド層とフリー層とに挟まれた中間層に対して、電位差生成部により電位差を与えることにより、フリー層の磁気モーメントの向きによって検出信号が異なるスイッチ素子又はメモリ素子として機能する。ここで、中間層は、トンネルバリア層又は非磁性層からなる。また、電位差生成部により電圧が印加された場合、ジュール熱が発生し、ピンド層とフリー層との間に温度差が生じる。この温度差によって、ピンド層とフリー層とに接触された第1チャネル部には温度勾配が発生する。当該温度勾配により、第1チャネル部にスピン流が発生する。このスピン流はフリー層の磁気モーメントに対して、スピントランスファートルクとして作用する。このため、第1チャネル部のスピン流の分だけ、フリー層の磁気モーメントを制御しやすくすることができる。すなわち、信号検出のための電圧によって発生した熱を利用して、フリー層の磁気モーメントを回転しやすくさせるスピンデバイスを実現することができる。このように、第1チャネル部が電子部品で発生する熱を利用することができるので、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。
【0023】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、第1チャネル部には、第1チャネル部とフリー層との接触位置へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配が与えられてもよい。このような温度勾配により、フリー層へ向けて第1チャネル部にスピン流が発生するため、発生したスピン流がフリー層の磁気モーメントの向きを変更することができる。
【0024】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、第1チャネル部には、ピンド層側から第1チャネル部とフリー層との接触位置へ向かうに従って厚みが薄くなるように、厚さの勾配が形成されていてもよい。このように構成することで、第1チャネル部の所定位置から接触位置に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。このため、スピン部の磁気モーメントを効率的に制御することが可能となる。
【0025】
一実施形態に係るスピンデバイスでは、電位差生成部は、スピンバルブ構成にジュール熱を発生させ、第1チャネル部は、スピンバルブ構成で発生したジュール熱によって、ピンド層側から第1チャネル部とフリー層との接触位置へ向けて温度勾配が与えられてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び種々の実施形態によれば、熱を利用してスピンを制御するスピン制御機構及びスピンデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るスピンデバイスの構成を示す概要図である。
【図2】温度勾配を説明するグラフである。
【図3】第1チャネル部の厚さを説明する図である。
【図4】第2実施形態に係るスピンデバイスの斜視図である。
【図5】図4のII-II線に沿った断面図である。
【図6】第2実施形態に係るスピンデバイスの拡大図である。
【図7】スピンデバイスの動作原理を説明する概要図である。
【図8】第2実施形態に係るスピンデバイスの変形例を示す拡大図である。
【図9】第3実施形態に係るスピンデバイスの斜視図である。
【図10】第3実施形態に係るスピンデバイスの変形例を示す斜視図である。
【図11】ラップトップ型のコンピュータにおけるファン及びヒートシンクの体積比、重量比及び消費電力比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して実施形態について具体的に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。

【0029】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係るスピンデバイスについて説明する。図1は、一実施形態に係るスピンデバイスの構成を示す概要図である。図1の(A)は斜視図、図1の(B)は側断面図である。

【0030】
スピンデバイスは、スピン流を利用して磁気モーメントを反転させるナノスケールのデバイスである。ここでは、スピンデバイスの一例として、いわゆるスピンゼーベック効果を応用して、磁気モーメントの反転を行うスピンデバイスについて説明する。スピンゼーベック効果は、磁性体に温度差をつけるとスピン流が発生する現象である。

【0031】
図1に示すように、スピンデバイス10は、スピン制御機構1を備えている。スピン制御機構1は、スピン部2及び第1チャネル部4を備える。

【0032】
スピン部2は、反転可能又は回転可能な磁気モーメント3を備えている。すなわち、スピン部2は、磁性体を含んで構成されている。スピン部2は、例えば強磁性体で構成されている。なお、ここでは、スピンデバイス10は、スピン部2の磁気モーメント3の磁化方向に応じて、検出信号が変化する構成を備えているものとする。すなわち、スピンデバイス10は、スピン部2の磁化方向に応じて、少なくとも第1の状態(例えばON状態)と第2の状態(例えばOFF状態)とを区別した信号を検出可能な構成を備えているものとする。

【0033】
スピン部2は、第1チャネル部4と他の部材を介することなく直接に接している。スピン部2と第1チャネル部4とが接触することで、接触面S1が形成されている。なお、この接触面S1の大きさは限定されるものではなく、例えば1点で接していてもよい。以下では、接触面S1に含まれる点を接触位置P2という。

【0034】
第1チャネル部4は、強磁性体を含んで構成された絶縁体である。第1チャネル部4は、例えば長手方向を有する線形部材である。第1チャネル部4は、長手方向がx方向に沿うように配置されている。第1チャネル部4の一端部にスピン部2が配置されている。

【0035】
第1チャネル部4には温度勾配が与えられる。温度勾配とは、位置に応じて温度差が存在することをいう。例えば、第1チャネル部4の他端部(所定位置P1)には、熱発生源部15が熱的に接続されている。所定位置P1は、熱発生源部15が熱的に接続される位置である。所定位置P1は、第1チャネル部4上に存在し、接触位置P2と離間している。熱的に接続とは、2つの物体間で熱が伝導可能な状態となっていることを意味する。これによって、熱発生源部15から第1チャネル部4へ熱が伝導し、温度勾配が与えられる。

【0036】
熱発生源部15は、ジュール熱によって発熱する部材、他の因子で発熱する部材、又は、既に熱が伝導された部材そのものであってもよい。熱発生源部15は、例えば他の電子機器に接続され、当該電子機器の熱を放熱するヒートシンクであってもよい。本実施形態では、熱発生源部15として、電源15a及び抵抗部材15bを採用している。電源15aは、抵抗部材15bに電圧を印加可能に構成されている。電源15aが制御部に接続され、電圧印加をON・OFFできるように構成されていてもよい。抵抗部材15bに電圧が印加されると、抵抗部材15bがジュール熱を発生する。発生した熱は、所定位置P1の第1チャネル部4の温度を上昇させる。図2は、第1チャネル部4の位置と温度との関係を示すグラフである。熱発生源部15から熱が所定位置P1に与えられると、図2に示すように所定位置P1における温度がΔTだけ上昇する。すなわち、接触位置P2の温度をT1とすると、所定位置P1の温度はT1+ΔTとなる。これにより、所定位置P1と接触位置P2との間に温度差ΔTが生じ、所定位置P1と接触位置P2との間に温度勾配が生じる。この温度勾配は、所定位置P1から接触位置P2へ向かうに従って温度が低くなる温度勾配である。すなわち、所定位置P1が熱発生源部15と接続されることにより、所定位置P1と接触位置P2との間に温度勾配が生じる。

【0037】
一実施形態では、第1チャネル部4が所定位置P1から接触位置P2に向かうに従って厚みが薄くなるように、第1チャネル部4の厚さの勾配が形成されてもよい。図3は、第1チャネル部4の厚さの一例を説明する図である。図3に示すように、熱発生源部15が接続された所定位置P1における第1チャネル部4の厚さt1は、スピン部2と接触している接触位置P2の厚さt2よりも厚くてもよい。そして、第1チャネル部4の厚さは、スピン部2と接触している接触位置P2へ向かうに連れて除々に薄くなってもよい。このように構成することで、所定位置P1から接触位置P2へ向かうにつれて位置ごとの熱容量が変化することから、第1チャネル部4の所定位置P1から接触位置P2に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。これにより、例えば、接触位置P2の温度よりも所定位置P1の温度の方が高くすることを容易に実現することができる。よって、スピン部2の磁気モーメント3を効率的に制御することが可能となる。

【0038】
次に、スピンデバイス10の動作を説明する。まず、スピン部2の磁気モーメント3の向きを制御する場合には、熱発生源部15から第1チャネル部4の所定位置P1へ熱が供給される。これにより、所定位置P1と接触位置P2との間に温度勾配が発生する。第1チャネル部4は、強磁性絶縁体で構成されているため、スピンゼーベック効果により、スピンが強磁性絶縁体中に励起してスピン流が発生する。スピン流は、所定位置P1から所定位置P1よりも低温となっている接触位置P2へ向かって流れる。このスピン流が、スピン部2の磁気モーメント3にスピントランスファートルクとして作用する。これにより、スピン部2の磁気モーメント3の向きが制御される。

【0039】
以上、第1実施形態に係るスピン制御機構1によれば、熱を利用してスピン部2の磁気モーメント3を制御することができる。このため、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化するために利用可能である。例えば、熱発生源部15として、他の電子部品から発生する熱を利用することにより、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。

【0040】
また、第1実施形態に係るスピン制御機構1によれば、第1チャネル部4は、所定位置P1から接触位置P2に向かうに従って厚みが薄くなるように形成されていてもよい。このように構成することで、第1チャネル部の所定位置P1から接触位置P2に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。このため、スピン部2の磁気モーメント3を効率的に制御することが可能となる。

【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るスピンデバイス10は、第1実施形態に係るスピンデバイスと同様のスピン制御機構1を備えている。第2実施形態に係るスピンデバイス10は、いわゆるスピンバルブ構造を応用したスピンモータである点が、第1実施形態に係るスピンデバイスと相違する。このため、第1実施形態の説明と重複する点は省略し、相違点を中心に説明する。

【0042】
図4から図7を参照して、本実施形態に係るスピンデバイス10について説明する。図4は、一実施形態に係るスピンデバイス10の斜視図である。図5は、図4のII-II線に沿った断面図である。図6は、一実施形態に係るスピンデバイス10の拡大図である。図7は、スピンデバイス10の動作原理を説明する概要図である。

【0043】
図4に示すように、スピンデバイス10は、例えば、第2チャネル部12、スピン注入子14、スピン回転制御部19及びスピン部2を備えている。ここでは、強磁性体からなるスピン注入子14及び強磁性体からなるスピン部2を非磁性体からなる第2チャネル部12によって橋渡しした面内スピンバルブ構造が形成されている。スピン注入子14及びスピン部2は、例えばFe、NiFe等により形成され得る。第2チャネル部12は、例えばSiもしくはヒ化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、又は、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。以下では、第2チャネル部12が半導体材料で形成された場合を説明する。

【0044】
図4,5に示すように、第2チャネル部12は基板24上に配置されている。基板24として例えば半導体基板が用いられる。第2チャネル部12は、線形部材であって、その軸線方向が基板24の面内方向に向くように配置されている。第2チャネル部12は、例えば基板24上に積層させた半導体層20をメサ状に加工することによって形成される。第2チャネル部12の線幅は、例えば10μm以下とされる。なお、基板24と半導体層20との間に二次元電子ガス層22を形成した場合には、二次元電子ガス層22及び半導体層20をメサ状に加工することによって第2チャネル部12を形成してもよい。例えば、基板24としてGaAs基板を用い、半導体層20を基板24に電子をドーピングして形成した場合には、半導体層20と基板24との間に二次元電子ガス層22が形成される。

【0045】
スピン注入子14は、基板24上に設けられる。スピン注入子14は、線形部材であって、その軸線方向が基板24の面内方向に向くように配置され、面内方向に磁化されている。なお、ここではスピン注入子14は、第2チャネル部12上に配置されている。スピン注入子14は、第2チャネル部12と交差するように配置される。このため、スピン注入子14及び第2チャネル部12は、互いに接触(直接的に接合)している。スピン注入子14と第2チャネル部12とが交差する領域はスピン注入領域(スピン注入位置)である。スピン注入子14の線幅は、例えば10μm以下とされる。

【0046】
スピン部2は、基板24上にスピン注入子14と離間して設けられる。スピン部2は、円板部材であって、基板面内方向に磁気モーメントが向くように形成されている。なお、円板部材とは、その水平断面が鋭角部を有さない形状の部材を意味する。円板部材は、例えば、その水平断面が円形の板状部材のみならず、水平断面が楕円形状である部材、水平断面が多角形であって角の角度が例えば180度に近い非常に大きな多角形である部材、ドット形状の部材、及び、円錐状の部材をも含む。ここではスピン部2は、第2チャネル部12上に配置されている。スピン部2は、第2チャネル部12と接触(直接的に接合)されている。スピン部2の直径は、例えば10μm以下とされる。ここでは、スピン部2は、その直径が第2チャネル部12の線幅より小さくなるように形成されている。

【0047】
このように、スピンデバイス10は、スピン注入子14とスピン部2との間に第2チャネル部12が配置された面内スピンバルブ構造とされている。スピン注入子14の一端部には、電流又は電圧印加用の端子部14aが形成され、第2チャネル部12の一端部(両端部のうちスピン注入子14に近い端部)には、電流又は電圧印加用の端子部12aが形成されている。

【0048】
スピン回転制御部19は、例えば図示しない電圧制御部及び電圧印加用端子を備えている。スピン回転制御部19は、第2チャネル部12に接続されている。例えば、スピン回転制御部19は、第2チャネル部12上の領域であって、スピン注入子14とスピン部2との間に位置する領域と直接接合されている。スピン回転制御部19は、第2チャネル部12のスピンの回転方向を制御するために、第2チャネル部12へ電場又は磁場を印加可能に構成されている。スピン回転制御部19は、例えば略直方体を呈し、第2チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅が例えば10μm以下とされる。なお、ここでは、スピン部2は、第2チャネル部12の長手方向に直交する方向の幅が第2チャネル部12の線幅以下になるように形成されている。

【0049】
ここで、スピンデバイス10は、スピン制御機構1を備えている。スピン制御機構1は、第1実施形態と同様であり、スピン部2及び第1チャネル部4を備える。第1チャネル部4は、例えば、第2チャネル部12と略平行に延在してもよい。また、第1チャネル部4の他端部がスピン注入子14上に配置されていてもよい。なお、この場合、第1チャネル部4とスピン注入子14との間に断熱材が設けられていてもよい。その他の第1チャネル部4の構成及び変形例は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。

【0050】
図6は、スピンモータとして機能するスピンデバイス10を示した図である。図6に示すように、スピンデバイス10は、モータ回転子30を備える。モータ回転子30は、強磁性体材料により形成され、スピン部2の上方にスピン部2と離間し対向して配置されている。モータ回転子30は、スピン部2の漏洩磁場が伝達される範囲に配置されればよく、スピン部2から例えば数10nm以下の範囲に配置される。すなわち、モータ回転子30は、スピン部2の磁気モーメントに追従して回転可能な位置に配置されている。モータ回転子30は、例えば略円板状を呈し、その回転軸が基板24に直交するように配置されている。なお、モータ回転子30の形状は略円板状に限られるものではなく、例えば棒状部材等であってもよい。モータ回転子30には、モータ回転子30の回転運動を伝達させる棒状部材等が接続されている。モータ回転子30の直径は、例えば10μm以下とされる。

【0051】
上記構成を有するスピンデバイス10の動作を説明する。図6に示すように、スピン部2の磁気モーメントは、第1チャネル部4に流れるスピン流R1及び第2チャネル部12に流れるスピン流R2によって制御される。なお、第2チャネル部12に流れるスピン流R2が主にスピン部2の磁気モーメントを制御し、第1チャネル部4に流れるスピン流R1が、スピン流R2によってスピン部2の磁気モーメントを制御し易くなるように補助する。すなわち、スピン制御機構1は、面内スピンバルブ素子の磁化反転のアシスト機構として機能する。

【0052】
最初に、主制御に関連する第2チャネル部12に流れるスピン流R2について概説する。

【0053】
図7は、第2チャネル部12に流れるスピン流R2を説明するための概略図である。図7では、説明理解の容易性を考慮して、第1チャネル部4は省略している。まず、スピン注入子14の端子部14aと第2チャネル部12の端子部12aとの間に電流が印加される。これにより、図7に示すように、スピン注入子14の磁化方向と反平行となるスピンが第2チャネル部12へ注入される。第2チャネル部12に注入されたスピンは、第2チャネル部12の両端部へ拡散する。このとき、拡散するスピンとは反平行のスピンがスピン部2側からスピン注入子14側に向けて流れる。このため、電荷を伴わないスピン流が、スピン注入子14側からスピン部2側へ向けて発生する。第2チャネル部12に流れるスピンは、スピン軌道相互作用によって歳差運動しており、このスピン軌道相互作用がスピン回転制御部19によって印加された電圧による電界によって制御される。すなわち、第2チャネル部12に流れるスピンの向きは、スピン回転制御部19の印加電圧によって変更される。ここでは、スピンの向きが、時間に応じて基板面内方向に除々にΔθずつ回転するように変更される。すなわち、スピン部2へ到来するスピン流は、時系列でスピンの向きが基板面内方向にΔθずつ回転されている。第2チャネル部12のスピンは、スピン部2の磁気モーメントにスピントランスファートルクを与える。このため、スピン流のスピンの向きが時系列で回転させられていることで、スピン部2の磁気モーメントが回転する。このとき、図6に示すように、モータ回転子30はスピン部2の磁気モーメントに追従して回転する。このように、磁気モーメントの回転を運動エネルギーに変換することでスピンモータとして駆動させることができる。また、例えば、スピン部2の水平断面を楕円形など軸の長さに差がある形状を採用した場合には、長軸方向に磁気モーメントが向きやすくなるため、初期の磁気モーメントの向きを制御することができる。

【0054】
次に、アシスト機構に関連する第1チャネル部4に流れるスピン流R1について概説する。スピン部2の磁気モーメントの向きを制御する場合には、熱発生源部15から第1チャネル部4の所定位置P1へ熱が供給される。これにより、所定位置P1と接触位置P2との間に温度勾配が発生する。第1チャネル部4は、強磁性絶縁体で構成されているため、スピンゼーベック効果により、スピンが強磁性絶縁体中に励起してスピン流R1が発生する。スピン流R1は、所定位置P1から所定位置P1よりも低温となっている接触位置P2へ向かって発生する。このスピン流R1が、スピン部2の磁気モーメントにスピントランスファートルクとして作用する。これにより、スピン流R2によってスピン部2の磁気モーメントを制御する際に、スピン流R1もスピン部2の磁気モーメントに対して、スピントランスファートルクとして作用させることができる。これにより、第1チャネル部4のスピン流R1の分だけ、スピン部2の磁気モーメントを回転しやすくすることができる。

【0055】
また、本実施形態において、図8に示すように、第1チャネル部4が所定位置P1から接触位置P2に向かうに従って厚みが薄くなるように形成されてもよい。例えば、所定位置P1における第1チャネル部4の厚さは、スピン部2と接触している接触位置P2の厚さよりも厚くてもよい。そして、第1チャネル部4の厚さは、スピン部2と接触している接触位置P2へ向かうに連れて除々に薄くなってもよい。このように構成することで、所定位置P1から接触位置P2へ向かうにつれて位置ごとの熱容量が変化することから、第1チャネル部4の所定位置P1から接触位置P2に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。これにより、例えば、接触位置P2の温度よりも所定位置P1の温度の方が高くすることを容易に実現することができる。よって、スピン部2の磁気モーメント3を効率的に制御することが可能となる。

【0056】
以上、第2実施形態に係るスピンデバイス10によれば、熱を利用してスピン部2の磁気モーメント3を制御することができる。このため、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化するために利用可能である。例えば、熱発生源部15として、他の電子部品から発生する熱を利用することにより、電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。

【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るスピンデバイス10は、第1実施形態に係るスピンデバイスと同様のスピン制御機構1を備えている。第3実施形態に係るスピンデバイス10は、いわゆる面直スピンバルブ構造を有する点が、第1実施形態及び第2実施形態に係るスピンデバイスと相違する。このため、第1実施形態及び第2実施形態の説明と重複する点は省略し、相違点を中心に説明する。

【0058】
図9に示されるように、スピンデバイス10は、例えば、基板60,61、反強磁性層62、ピンド層63、中間層64、フリー層65、第1チャネル部4及び電位差生成部50を備えている。ピンド層63、中間層64及びフリー層65によってスピンバルブ構造が形成される。

【0059】
基板60は、例えばSiもしくはヒ化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、又は、MgO、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。基板60上には、反強磁性体からなる反強磁性層62が積層されている。反強磁性層62上には、ピンド層63が積層されている。ピンド層63は磁性体からなる。ピンド層63の磁気モーメントと反強磁性層62との交換結合により、ピンド層63の磁気モーメントの向きが一方向へ固定されている。ピンド層63は、強磁性体材料により形成されている。強磁性体材料として、例えばFe、Co又はNi等が用いられる。ピンド層63は、任意の第1方向に磁化が固定され得る。第1方向は、例えば、基板面直方向(基板面に垂直な方向)である。

【0060】
中間層64は、ピンド層63上に設けられている。中間層64は、例えば、スピンバルブ構造のトンネル結合のためのトンネルバリア層であってもよい。この場合、中間層64は、例えば絶縁体材料により形成される。絶縁体材料として、例えば、SiO、Al、CoFeO等が用いられる。また、中間層64は、例えば、非磁性層であってもよい。非磁性層は、例えば、MgO、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。

【0061】
フリー層65は、中間層64上に設けられている。フリー層65は、強磁性体材料により形成されている。強磁性体材料として、例えばFe、Co又はNi等が用いられる。フリー層65は、磁気モーメントの向きが変更可能である。フリー層65の磁気異方性は、例えば、基板面直方向(基板面に垂直な方向)である。すなわち、フリー層65は、基板面直方向に磁化反転可能に構成されている。フリー層65上には、キャップ層として機能する基板61が配置されている。基板61は、例えばSiもしくはヒ化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、又は、MgO、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。また、基板61の少なくとも一部に電極が形成されてもよい。この電極は、例えば、MgO、AgもしくはCu等の非磁性金属により形成され得る。

【0062】
スピンデバイス10は、このように中間層64を挟んでピンド層63とフリー層65とが積層され、TMR(トンネル磁気抵抗)またはGMR(巨大磁気抵抗)効果を奏する積層構造となる。基板60,61には、電圧印加用の端子がそれぞれ設けられており、各端子に電位差生成部50が接続されている。電位差生成部25は、ピンド層63とフリー層65との間に電位差を与える。フリー層65の磁気モーメントの向きに応じて、基板60,61間の抵抗値が変化する。中間層64が主に絶縁体から構成された場合、スピンデバイス10にはTMR(トンネル磁気抵抗効果)によりフリー層65の磁気モーメントの向きに応じて抵抗値が変化する。一方、中間層64が主に非磁性体から構成された場合、スピンデバイス10にはGMR(巨大磁気抵抗効果)によりフリー層65の磁気モーメントの向きに応じて抵抗値が変化する。フリー層65の磁気モーメントの向きは、例えばピンド層に注入された電子により励起されたスピンによって制御され得る。また、スピンバルブ構造へ電流が注入されることによりジュール熱が発生する。例えば、基板60側から基板61へ電流が流れる場合には、ジュール熱が発生し、電流の流れる方向と同方向にスピン流が発生する。

【0063】
ここで、積層されたピンド層63、中間層64及びフリー層65の側方に接触して第1チャネル部4が配置されている。フリー層65及び第1チャネル部4を含んでスピン制御機構1が構成されている。このスピン制御機構1については、第1実施形態に係るスピン制御機構と同一であるため、説明を省略する。

【0064】
第1チャネル部4の垂直方向の端部は、基板60及び基板61にそれぞれ接続されている。このため、スピンバルブ構造を含む積層構造へ電圧を印加した場合、積層構造にジュール熱が発生する。発生したジュール熱は、積層構造の側方に配置された第1チャネル部4へ伝導する。このとき、基板60側すなわちピンド層63側の温度は、基板61側すなわちフリー層65側の温度よりも高くなる。これにより、第1チャネル部4には、第1チャネル部4とピンド層63との接触位置から、第1チャネル部4とフリー層65との接触位置へ向けて温度勾配が生じ得る。このため、第1チャネル部4にはスピンが励起されてスピン流が発生する。当該スピン流はフリー層65の磁気モーメントに対して、スピントランスファートルクとして作用する。このとき、第1チャネル部4のスピン流の分だけ、フリー層65の磁気モーメントを制御しやすくすることができる。すなわち、本実施形態に係るスピン制御機構1は、第2実施形態に係るスピン制御機構と同様に、アシスト機構として機能する。このように、第1チャネル部4が電子部品で発生する熱を利用し、フリー層65の磁気モーメントの向きを容易に制御することができる。

【0065】
また、本実施形態において、図10に示すように、ピンド層63側から第1チャネル部4とフリー層65との接触位置P2へ向かうに従って厚みが薄くなるように、第1チャネル部4の厚さの勾配が形成されてもよい。ピンド層63側における第1チャネル部4の厚さは、フリー層65と接触している接触位置P2の厚さよりも厚くてもよい。この場合、例えば、第1チャネル部4とフリー層65とが接触した接触面に含まれる点を接触位置P2としてよい。この接触面の大きさは限定されるものではなく、例えば1点で接していてもよい。

【0066】
このように構成することで、フリー層65へ向かうにつれて第1チャネル部4の位置ごとの熱容量が変化することから、第1チャネル部4のピンド層63側から接触位置に向けて効率的に温度勾配を形成することができる。よって、フリー層65の磁気モーメントを効率的に制御することが可能となる。

【0067】
厚さの勾配が形成された第1チャネル部4は、スパッタ装置で適宜製造可能である。第1チャネル部4は、例えば成膜サンプル及びターゲットの何れか一方を水平面と平行に配置し、他方を水平面から傾斜させて配置する。この状態でスパッタすることで、厚さに変化を与えて成膜することができる。

【0068】
以上、第3実施形態に係るスピンデバイス10によれば、スピンバルブ素子が発生する熱を利用して、フリー層65の磁気モーメントを制御しやすくすることができる。このため、スピンバルブ素子を採用した電子部品の温度を調整する機構をより小型化又は省電力化することが可能となる。

【0069】
上述した各実施形態は、種々の変形が可能である。

【0070】
例えば、上述した各実施形態では、スピンデバイス10の各構成部材の大きさがマイクロオーダーの部材である場合も含むように説明しているが、各構成部材の大きさをナノオーダーで形成し、ナノスケールのスピンデバイス10としてもよい。

【0071】
また、上述した第2実施形態では、スピン注入子14、スピン回転制御部19及びスピン部2は、第2チャネル部12と直接接合されている例を説明したが、スピン注入子14、スピン回転制御部19及びスピン部2の少なくとも1つが、第2チャネル部12と絶縁層を介して接合されていてもよい。このように構成した場合であっても、スピンデバイス10として機能させることができる。

【0072】
また、上述した第2実施形態では、スピン注入子14及びスピン部2が第2チャネル部12よりも上方に配置される例を説明したが、スピン注入子14及びスピン部2は、第2チャネル部12と少なくとも一部が接触した状態となっていれば、どのように配置されていてもよい。すなわち、スピン注入子14及びスピン部2は、第2チャネル部12の側方に配置されてもよい。また、スピン部2は第2チャネル部12の線幅以上であってもよい。

【0073】
また、上述した第2実施形態では、第1チャネル部4がスピン部2の上方に配置される例を説明したが、スピン注入子14及びスピン部2は、第1チャネル部4と少なくとも一部が接触した状態となっていれば、どのように配置されていてもよい。すなわち、スピン注入子14及びスピン部2は、第1チャネル部4の側方に配置されてもよい。

【0074】
また、上述した第2実施形態では、スピン回転制御部19として第2チャネル部12に電流を印加する例を説明したが、他のスピン回転制御部を採用してもよい。例えば、第2チャネル部12へ円偏光を照射する照射部をスピン回転制御部19として採用してもよい。なお、この場合、第2チャネル部12は半導体材料により形成される。このように形成することで、円偏光を用いてスピンの向きを制御することが可能となるため、第2チャネル部12に接触させる部品点数を少なくすることができる。

【0075】
さらに、スピン注入子14へ印加する電圧値を変更する制御部を、スピン回転制御部19として採用してもよい。強磁性体金属と半導体との界面にはショットキー障壁が形成されており、電子のエネルギーと共鳴準位とが一致したときに電流が大きく流れる。スピン注入子14へ印加する電圧値を変更することで、強磁性体金属/半導体界面内に生成された共鳴準位を変更することができるため、第2チャネル部12のスピンの向きをスピン注入子への印加電圧で制御することができる。このように形成することで、第2チャネル部12に接触させる部品点数を少なくすることができる。

【0076】
また、上述した第2実施形態では、いわゆる非局所手法によって電荷の流れを伴わないスピン流を発生させてスピン部2を回転させる例を説明したが、スピン部2に近い第2チャネル部12の端部に電流印加用の端子部12aを形成し、いわゆる局所手法によって電荷の流れを伴うスピン流を発生させてスピン部2の磁気モーメントを回転させてもよい。この場合、非局所手法の場合に比べて電流密度を大きくすることができるため、スピントルクを大きくすることが可能となる。よって、効率良くスピン部2の磁気モーメントを回転させることができる。

【0077】
また、上述した第2実施形態では、モータ回転子30は、スピン部2と離間し対向して配置される例を説明したが、スピン部2とモータ回転子30は離間している場合に限定されない。例えば、スピン部2とモータ回転子30とがベアリング等を介して接続されていてもよい。このように構成した場合であっても、スピンモータとして機能させることができる。

【0078】
さらに、上述した第3実施形態において、第1チャネル部4が、熱発生源部15に別途接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
スピンデバイス10は、産業上、以下のような利用可能性を有している。スピンデバイス10は、例えば、上述した実施形態に係るスピンデバイス10のように、微小モータを駆動するモータ用の動力源として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)などの分野で利用することができる。またスピンデバイス10は、電子・電気分野、医療関係分野等の機器部品、モータとして使用できる。また、スピンデバイス10は、例えば、各産業分野における電気電子部品として使用することができる。例えば、メモリ素子又は縦型ナノピラー等の強磁性体/半導体ハイブリッド構造におけるゲート制御としても適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…スピン制御機構、10…スピンデバイス、2…スピン部、4…第1チャネル部、12…第2チャネル部、14…スピン注入子、15…熱発生源部、24…基板、50…電位差生成部、63…ピンド層、64…中間層、65…フリー層、P1…所定位置、P2…接触位置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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