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明細書 :セキュリティマーク、及びその認証方法、認証装置及び製造方法、並びにセキュリティマーク用インク及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 セキュリティマーク、及びその認証方法、認証装置及び製造方法、並びにセキュリティマーク用インク及びその製造方法
国際特許分類 G07D   7/1205      (2016.01)
B42D  25/378       (2014.01)
G07D   7/206       (2016.01)
G07D   7/00        (2016.01)
G07D   7/005       (2016.01)
FI G07D 7/1205
B42D 15/10 378
G07D 7/206
G07D 7/00 J
G07D 7/005
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2016-506104 (P2016-506104)
国際出願番号 PCT/JP2015/000371
国際公開番号 WO2015/133056
国際出願日 平成27年1月28日(2015.1.28)
国際公開日 平成27年9月11日(2015.9.11)
優先権出願番号 2014040378
優先日 平成26年3月3日(2014.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】阿部 二朗
【氏名】小林 洋一
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100105991、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 玲子
【識別番号】100119183、【弁理士】、【氏名又は名称】松任谷 優子
【識別番号】100114465、【弁理士】、【氏名又は名称】北野 健
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
審査請求 未請求
テーマコード 2C005
3E041
Fターム 2C005HB01
2C005HB09
2C005HB10
2C005HB13
2C005JA09
2C005JB11
2C005JB12
2C005JB13
2C005JB14
2C005LA24
3E041AA01
3E041AA03
3E041BA12
3E041BA14
3E041BB02
3E041BB03
3E041BB04
3E041BB05
3E041CA05
3E041CB03
3E041CB04
要約 フォトロクミック化合物を用いたセキュリティマークの認証方法において、一層高いセキュリティ性能を達成可能な技術として、フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射するプロセスと、励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得するプロセスと、取得された第一のセキュリティ情報と、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報とを照合するプロセスと、を含む認証方法を提供する。この認証方法において、前記セキュリティマークは、好ましくは、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるものとされる。
特許請求の範囲 【請求項1】
セキュリティマークの認証方法であって、
フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射するプロセスと、
励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得するプロセスと、
を含む認証方法。
【請求項2】
取得された第一のセキュリティ情報と、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報とを照合するプロセスをさらに含む、請求項1記載の認証方法。
【請求項3】
取得された第一のセキュリティ情報を取得時の温度により校正して、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報との照合を行う、請求項2記載の認証方法。
【請求項4】
前記セキュリティマークが、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項5】
前記セキュリティマークがさらに蛍光物質を含んでなり、
前記セキュリティマークから放出される蛍光のスペクトルに関する第二のセキュリティ情報を取得するプロセスと、
取得された第二のセキュリティ情報と、前記セキュリティマークについて予め取得した第二のセキュリティ情報とを照合するプロセスをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項6】
前記第一のセキュリティ情報を時間分解吸収スペクトル及び/又は反射スペクトル測定により取得する、請求項1~5のいずれか一項に記載の認証方法。
【請求項7】
セキュリティマークに紫外光及び/又は波長400~600nmの光を含む励起光を照射する励起用光源と、
前記セキュリティマークに可視光及び/又は近赤外光を照射する測定用光源と、
前記セキュリティマークによる前記可視光及び/又は近赤外光の透過光又は反射光を検出する光検出器と、
該光検出器からの出力される信号を、励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報として格納する解析部と、
を含む、セキュリティマークの認証装置。
【請求項8】
表示部をさらに備え、
前記解析部は、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報を保持し、
取得された第一のセキュリティ情報と、保持された第一のセキュリティ情報とを照合し結果を前記表示部に出力する、請求項7記載の認証装置。
【請求項9】
前記解析部は、前記フォトクロミック化合物の消色速度と温度との関係を規定した校正情報を保持し、
該校正情報に基づき、取得された第一のセキュリティ情報を取得時の温度により校正して、保持された第一のセキュリティ情報との照合を行う、請求項8記載の認証装置。
【請求項10】
フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマーク用インク。
【請求項11】
フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を混合し、励起光照射後の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化パターンを作成する工程を含む、セキュリティマーク用インクの製造方法。
【請求項12】
フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマーク。
【請求項13】
フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を混合し、励起光照射後の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化パターンを作成する工程を含む、セキュリティマークの製造方法。
【請求項14】
フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークが付された物品。
【請求項15】
物品の認証方法であって、
認証対象物に、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークを付す手順を含む認証方法。
【請求項16】
物品の認証方法であって、
認証対象物に付された、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射する手順と、
励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得する手順と、を含む認証方法。
【請求項17】
物品の認証方法であって、
認証対象物に付された、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報と、基準情報と、を照合する手順を含む認証方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティマーク、及びその認証方法、認証装置及び製造方法、並びにセキュリティマーク用インク及びその製造方法に関する。より詳しくは、フォトクロミック化合物を用いたセキュリティマークの認証方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムを示すフォトクロミック化合物として、ジアリールエテン系(特許文献1)、スピロピラン系(特許文献2)、ヘキサアリールビイミダゾール系(非特許文献1)及びアゾベンゼン系(非特許文献2)の化合物が知られている。「フォトクロミズム」とは、「ホトクロミズム」、「フォトクロミー(photochromy)」、「光互変(光可逆変色:phototropy)」とも称され、ある種の物質が固体又は溶液の状態で特定の波長の光(紫外線又は可視光線)の照射により色を変え、別の波長の光(紫外線又は可視光線)を照射、あるいは光照射を停止すると再びもとの色に戻る現象のことをいう。
【0003】
フォトクロミック化合物は、光照射によって可逆な着色を示すことから、調光材料への応用(特許文献3)や光記録材料への応用(特許文献4及び5)を目指した研究が行われている。また、特許文献6にはフォトロクミック化合物を用いたインクが記載されている。このインクは、耐光性を有し、光を長時間照射しても着色濃度が減少しないとされている。
【0004】
本発明者らによる特許文献7には、フォトロクミック化合物を用いたセキュリティインクが開示されている。このセキュリティインクは、塗装または印刷等により形成されたセキュリティインク層に対して紫外光等を照射するとフォトクロミック化合物が着色して塗装または印刷等された文字や図形等のセキュリティマークが視認可能となり、紫外光等の照射を停止するとフォトクロミック化合物が消色してセキュリティマークの視認が不可能となるものである。なお、特許文献7には、セキュリティインクに、フォトクロミック特性の異なる2以上の化合物を配合することは記載されていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-325087号公報
【特許文献2】特開2005-266608号公報
【特許文献3】特開2005-215640号公報
【特許文献4】特開2000-112074号公報
【特許文献5】特開平08-245579号公報
【特許文献6】特開2006-22202号公報
【特許文献7】特開2011-132265号公報
【0006】

【非特許文献1】Hayashi, T.; Maeda, K., Bull. Chem. Soc. Jpn. 1960, 33, 565-566.
【非特許文献2】Hartley, G. S., Nature 1937, 140, 281.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献7に記載されるセキュリティインク及びセキュリティマークによれば、紫外光等の照射によりフォトクロミック化合物が着色した後、紫外光等の照射を停止してフォトクロミック化合物が消色するまでの間のみセキュリティマークが視認可能となり、この間以外は他者の目にセキュリティマークが触れることがないので、高いセキュリティ性能が実現される。
【0008】
本発明は、フォトロクミック化合物を用いたセキュリティマークの認証方法において、一層高いセキュリティ性能を達成可能な技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フォトクロミック反応(光可逆変色)の過程におけるフォトクロミック化合物の吸収スペクトル又は反射スペクトルの変化が各化合物の構造に固有なものである点に着眼し、フォトクロミック化合物の吸収スペクトル等の経時変化をセキュリティ認証のための情報として利用すること、さらには複数のフォトクロミック特性の異なる化合物を組み合わせて該情報を構成することによって、セキュリティ性の高い認証技術を完成させた。すなわち、本発明は、以下のセキュリティマークの認証方法等を提供するものである。
【0010】
[1]セキュリティマークの認証方法であって、フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射するプロセスと、励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得するプロセスと、を含む認証方法。
[2]取得された第一のセキュリティ情報と、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報とを照合するプロセスをさらに含む、[1]の認証方法。
[3]取得された第一のセキュリティ情報を取得時の温度により校正して、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報との照合を行う、[2]の認証方法。
[4]前記セキュリティマークが、フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる、[1]~[3]のいずれかの認証方法。
[5]前記セキュリティマークが、フォトクロミック反応による着色が異なるか、及び/又は、着色後の消色速度が異なる、2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる、[4]の認証方法。
[6]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後1秒以内に消色する化合物を用いる、[5]の認証方法。
[7]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後10秒以上経過後に消色する化合物をさらに用いる、[6]の認証方法。
[8]前記セキュリティマークがさらに蛍光物質を含んでなり、前記セキュリティマークから放出される蛍光のスペクトルに関する第二のセキュリティ情報を取得するプロセスと、取得された第二のセキュリティ情報と、前記セキュリティマークについて予め取得した第二のセキュリティ情報とを照合するプロセスをさらに含む、[1]~[7]のいずれかの認証方法。
[9]前記励起光が、紫外光及び/又は波長400~600nmの光を含む、[1]~[8]のいずれかの認証方法。
[10]前記第一のセキュリティ情報を時間分解吸収スペクトル及び/又は反射スペクトル測定により取得する、[1]~[9]のいずれかの認証方法。
【0011】
[11]セキュリティマークに紫外光及び/又は波長400~600nmの光を含む励起光を照射する励起用光源と、前記セキュリティマークに可視光及び/又は近赤外光を照射する測定用光源と、前記セキュリティマークによる前記可視光及び/又は近赤外光の透過光又は反射光を検出する光検出器と、該光検出器からの出力される信号を、励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報として格納する解析部と、を含む、セキュリティマークの認証装置。
[12]表示部をさらに備え、前記解析部は、前記セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報を保持し、取得された第一のセキュリティ情報と、保持された第一のセキュリティ情報とを照合し結果を前記表示部に出力する、[11]の認証装置。
[13]前記解析部は、前記フォトクロミック化合物の消色速度と温度との関係を規定した校正情報を保持し、該校正情報に基づき、取得された第一のセキュリティ情報を取得時の温度により校正して、保持された第一のセキュリティ情報との照合を行う、[12]記載の認証装置。
【0012】
[14]フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマーク用インク。
[15]フォトクロミック反応による着色が異なるか、及び/又は、着色後の消色速度が異なる、2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる、[14]のセキュリティマーク用インク。
[16]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後1秒以内に消色する化合物を含む、[15]のセキュリティマーク用インク。
[17]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後10秒以上後に消色する化合物をさらに含む、[16]のセキュリティマーク用インク。
[18]フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を混合する工程を含む、セキュリティマーク用インクの製造方法。
[19]前記工程において、フォトクロミック反応による着色が異なるか、及び/又は、着色後の消色速度が異なる、2以上のフォトクロミック化合物を混合する、[18]の製造方法。
[20]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後1秒以内に消色する化合物を用いる、[19]の製造方法。
[21]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後10秒以上後に消色する化合物をさらに用いる、[20]の製造方法。
【0013】
[22]フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマーク。
[23]フォトクロミック反応による着色が異なるか、及び/又は、着色後の消色速度が異なる、2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる、[22]のセキュリティマーク。
[24]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後1秒以内に消色する化合物を含む、[23]のセキュリティマーク。
[25]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後10秒以上後に消色する化合物をさらに含む、[24]のセキュリティマーク。
[26][22]~[25]のいずれかのセキュリティマークが付された物品。[27]フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を混合する工程を含む、セキュリティマークの製造方法。
[28]前記工程において、フォトクロミック反応による着色が異なるか、及び/又は、着色後の消色速度が異なる、2以上のフォトクロミック化合物を混合する、[27]の製造方法。
[29]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後1秒以内に消色する化合物を用いる、[28]の製造方法。
[30]前記フォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応による着色後10秒以上後に消色する化合物をさらに用いる、[29]の製造方法。
【0014】
[31]物品の認証方法であって、認証対象物に、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークを付す手順を含む認証方法。
[32]物品の認証方法であって、認証対象物に付された、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射する手順と、励起光照射後の前記セキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得する手順と、を含む認証方法。
[33]物品の認証方法であって、認証対象物に付された、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報と、基準情報と、を照合する手順を含む認証方法。
[34]前記認証対象物が、有価証券、銀行券、クレジットカード、キャッシュカード、パスポート、身分証明文書、運転免許証、切手、納税印紙、乗車券、入場券、消費財又はそれらの包装である[31]~[33]のいずれかの認証方法。
【0015】
本明細書において「セキュリティマーク」とは、本発明に係る認証方法によって光学的に検出が可能な情報であって、当該セキュリティマークを他のセキュリティマークと区別可能にする情報(セキュリティー情報)を含むものである。「セキュリティマーク」には、フォトクロミック化合物を含んでなる文字、記号、図形及びこれらの組み合わせが広く包含される。
また、「物品」とは、上記セキュリティマークを付されて本発明に係る認証方法の「認証対象物」となり得るものである。「物品」には、有価証券、銀行券(紙幣)、クレジットカード、キャッシュカード、パスポート、身分証明文書、運転免許証、切手、納税印紙、乗車券、入場券、消費財及びそれらの包装などが広く包含される。セキュリティマークは、当該セキュリティマークが付された一つの認証対象物又は一群の認証対象物と、他のセキュリティマークが付された他の一つの認証対象物又は他の一群の認証対象物と、を区別可能とする情報(セキュリティ情報)を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、フォトロクミック化合物を用いたセキュリティマークの認証方法において、一層高いセキュリティ性能を達成可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フォトクロミック化合物のフォトクロミック反応前後の吸収スペクトル変化を説明する図である。
【図2】フォトクロミック化合物の着色体の消色過程における吸光度の経時変化を説明する図である。
【図3】フォトクロミック特性が異なる3つのフォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークで取得される第一のセキュリティ情報(波長/時間-二次元吸収スペクトル)を説明する図である。
【図4】フォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークで取得される第一のセキュリティ情報(吸収スペクトル)を説明する図である。
【図5】(a)フォトクロミック化合物A,(b)フォトクロミック化合物B,(c)フォトクロミック化合物Cの着色体の消色過程における吸収スペクトルの経時変化を説明する図である。
【図6】フォトクロミック化合物A,B,Cの着色体の消色過程における、異なる3波長の吸光度の経時変化を説明する図である。
【図7】本発明に係るセキュリティマークの認証装置の構成を説明するブロック図である。
【図8】本発明に係るセキュリティマークの認証装置の測定部の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

【0019】
1.セキュリティマーク認証方法
本発明に係るセキュリティマーク認証方法は、以下のプロセスを含む。
(1)フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射するプロセス(照射プロセス)。
(2)励起光照射後のセキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報を取得するプロセス(第一情報取得プロセス)。
(3)取得された第一のセキュリティ情報と、セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報とを照合するプロセス(第一照合プロセス)。

【0020】
また、本発明に係るセキュリティマーク認証方法は、以下のプロセスを含んでいてもよい。
(4)セキュリティマークから放出される蛍光のスペクトルに関する第二のセキュリティ情報を取得するプロセス(第二情報取得プロセス)。
(5)取得された第二のセキュリティ情報と、セキュリティマークについて予め取得した第二のセキュリティ情報とを照合するプロセス(第二照合プロセス)。

【0021】
本発明において、「第一のセキュリティ情報」とは、フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークの吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する情報であって、フォトクロミック化合物の吸収波長(あるいは反射波長)及び/又はその強度の情報と、時間情報と、を含む。さらに、「第一のセキュリティ情報」は、その取得時の温度に関する情報を含んでいてもよい。

【0022】
フォトクロミック化合物は、励起光の照射により、分子量を変えることなく構造変化(異性化)を起こし、その吸収スペクトルを変化させる。図1に、励起光照射前の消色状態及び励起光照射後の着色状態におけるフォトクロミック化合物の吸収スペクトル変化の一例を示す。励起光照射前、フォトクロミック化合物の吸収スペクトルは可視光及び/又は近赤外光領域に吸収を有さず、フォトクロミック化合物は無色である(図中「励起光照射前」の吸収スペクトル)。励起光を照射すると、フォトクロミック化合物が着色し、吸収スペクトルにおいて可視光及び/又は近赤外光領域に吸収を生じる(図中「励起光照射後」の吸収スペクトル)。励起光の照射を停止すると、フォトクロミック化合物は消色し、吸収スペクトルは励起光を照射する前の状態に戻る。このように、フォトクロミック化合物の吸収スペクトルは、フォトクロミック反応に伴い、2つの異なる吸収スペクトルの間で可逆的に変化する。図2は、励起光の照射前及び励起光停止後のフォトクロミック化合物の特定の波長における吸光度の経時変化の一例を示す。励起光の照射(図中0秒)により着色体が生成することで、可視光及び/又は近赤外光領域内の特定の波長(ここでは任意の3波長を示す)の吸光度は瞬時に増大する。励起光の照射を停止すると、着色体が消色体に戻り、吸光度は徐々に減少する。

【0023】
本発明に係るセキュリティマーク認証方法は、このようなフォトクロミック化合物の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する情報であって、波長及び/又はその強度と、時間と、を含む情報を「第一のセキュリティ情報」として利用する。ここで、フォトクロミック化合物の吸収光が変化するとその補色である透過光も相関して変化する。従って、本発明の「第一のセキュリティ情報」において、セキュリティマークの「吸収スペクトル」と「透過スペクトル」は、特に言及しない限り、以下では同義に扱われる。また、フォトクロミック化合物の「吸収スペクトル」が変化すると、それに相関して「反射スペクトル」も変化するため、本発明の「第一のセキュリティ情報」には、セキュリティマークの吸収スペクトル(あるいは透過スペクトル)の経時変化に関する情報のみならず、セキュリティマークの反射スペクトルの経時変化に関する情報も含まれる。セキュリティマークが付された認証対象物が光透過性を有しない場合、第一のセキュリティ情報には、セキュリティマークの反射スペクトルに関する情報を用いることが好ましい。

【0024】
フォトクロミック化合物には、フォトクロミック特性、すなわちフォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度、が異なる種々の化合物が存在する。また、既存の化合物の構造を改変することにより、多様な着色及び消色速度を示すフォトクロミック化合物を設計することが可能である。上記第一のセキュリティ情報は、セキュリティマークに含まれるフォトクロミック化合物に固有な情報であり、当該化合物のフォトクロミック特性に応じて多様に変化するため、これをセキュリティ認証のために利用することで高いセキュリティ性を実現できる。

【0025】
さらに、セキュリティマークに、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を組み合わせて含有させることにより、励起光照射後の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化(第一のセキュリティ情報)のパターンをほぼ無限に作成することが可能である。

【0026】
なお、上記では、フォトクロミック化合物を励起光の照射により着色する化合物として説明したが、本発明に係るセキュリティマーク認証方法において、フォトクロミック化合物には、いわゆる「逆フォトクロミズム」を示し、励起光の照射により消色する化合物(Journal of the American Chemical Society, 2013, 135, 3164-3172参照)も包含されるものとする。すなわち、励起光を照射すると、吸収スペクトルの可視光及び/又は近赤外光領域の吸収が消失して消色し、励起光の照射を停止すると、吸収スペクトルが元の状態に戻り、着色するような逆フォトクロミック化合物の吸収スペクトルの経時変化に関する情報も、「第一のセキュリティ情報」として利用できる。

【0027】
また、本発明において、「第二のセキュリティ情報」とは、フォトクロミック化合物と蛍光物質を含んでなるセキュリティマークから放出される蛍光のスペクトルに関する情報を意味する。

【0028】
蛍光物質の蛍光スペクトルは各物質に固有であるので、第二のセキュリティ情報と第一のセキュリティ情報を組み合わせて認証に用いることで、セキュリティ性をさらに高めることができる。

【0029】
以下、本発明に係るセキュリティマークの認証方法の各プロセスについて順に説明する。

【0030】
[照射プロセス]
照射プロセスでは、フォトクロミック化合物を含んでなるセキュリティマークに励起光を照射する。励起光は、紫外光及び/又は波長400~600nmの光を含む。なお、本発明に係るセキュリティマークの認証方法は、照射プロセスの前段手順として、セキュリティマークを製造するプロセスを含んでいてもよい。当該製造プロセスについては、本発明に係るセキュリティマーク用インクの製造方法及びセキュリティマークの製造方法の項で詳しく後述する。

【0031】
セキュリティマークへの励起光の照射時間は、フォトクロミック化合物を着色するのに必要な時間とされればよく、特に限定されないが、例えば10~200ミリ秒程度とされる。逆フォトクロミック化合物の場合は励起光の照射により消色するが、以下ではフォトクロミック化合物を例として説明する。

【0032】
[第一情報取得プロセス]
第一情報取得プロセスでは、励起光照射後のセキュリティマークによる吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する第一のセキュリティ情報が取得される。

【0033】
第一のセキュリティ情報の取得は、励起光照射後のセキュリティマークに可視光及び/又は近赤外光を照射し、当該可視光及び/又は近赤外光の透過光又は反射光を検出器により経時的に検出することにより行う。可視光は、白色光であってもよい。

【0034】
セキュリティマークへの可視光及び/又は近赤外光の照射時間は、フォトクロミック化合物の消色時間に応じて適宜設定され、特に限定されないが、例えば0.1~10秒程度とされる。第一のセキュリティ情報の取得は、励起光の照射と同時に開始されてもよく、この場合可視光及び/又は近赤外光は励起光と同時にセキュリティマークに照射される。

【0035】
第一のセキュリティ情報の取得は、好適には、時間分解吸収スペクトル及び/又は反射スペクトル測定装置により、例えば紫外光LED(365nm)のパルス光を励起光光源に、白色LEDを可視光光源及び/又は近赤外光LEDを近赤外光光源に用いて、フォトクロミック化合物の着色体の吸収波長(あるいは反射波長)及び/又はその吸収強度を経時的に測定することによって行うことができる。また、より簡易な測定装置として、後述する本発明に係るセキュリティマーク認証装置を用いることもできる。

【0036】
セキュリティマークの吸収スペクトル及び/又は反射スペクトル測定では、ベースライン補正を行うことが望ましい。すなわち、励起光を照射して取得されたスペクトルから、白色光のみを照射して取得された吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルをバックグランド値として差し引く補正を行うことが望ましい。

【0037】
図3及び図4に、取得される第一のセキュリティ情報を例示する。図3は縦軸に吸収波長、横軸に時間をとり、吸収スペクトルを二次元表示したものである。図4は、縦軸に吸光度、横軸に吸収波長をとり、各データ取得時間における吸収スペクトルを示したものである。図3及び図4は、フォトクロミック特性が異なる3つのフォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークで取得される第一のセキュリティ情報を示している。図5には、フォトクロミック化合物A,B,Cに励起光を照射した後に生成する着色体の消光過程における吸収スペクトルの経時変化を示す。縦軸は吸光度、横軸は吸収波長を示す。

【0038】
フォトクロミック反応により、フォトクロミック化合物Aは、可視光領域から近赤外光領域にわたって吸収を生じ、特に780nm付近に強い吸収を生じる。また、フォトクロミック化合物Bは470nm付近、フォトクロミック化合物Cは550nm付近に吸収を生じる。着色体の室温における半減期は、化合物Aが約30ミリ秒、化合物Bが約100ミリ秒、化合物Cが約1秒である。

【0039】
セキュリティマークで取得される第一のセキュリティ情報には、フォトクロミック化合物A,B,Cの吸収スペクトル変化に起因して、波長470nm、550nm及び780nm付近に特徴的な変化が含まれる(図4及び図5参照)。このセキュリティマークで取得される第一のセキュリティ情報を、波長480nm、600nm及び780nm付近の吸光度の経時変化を抽出して示すと図6のように示される。図6縦軸は吸光度、横軸は時間を示す。

【0040】
第一情報取得プロセスにおける第一のセキュリティ情報の取得は、図3及び図4に示したように、可視光及び/又は近赤外光全域のスペクトル測定によって行われてもよく、処理速度を高めるため、図6に示したように、特定波長のみ(好ましくは複数の波長)の測定によって行われてもよい。

【0041】
[第一照合プロセス]
第一照合プロセスでは、第一情報取得プロセスで取得された第一のセキュリティ情報と、セキュリティマークについて予め取得した第一のセキュリティ情報との照合が行われる。

【0042】
具体的には、特定のフォトクロミック化合物を含むセキュリティマークについて、事前に第一のセキュリティ情報(以下「基準情報」ともいう)を取得しておく。そして、認証すべきセキュリティマークについて第一情報取得プロセスで取得された第一のセキュリティ情報(以下「照会情報」ともいう)と基準情報とを照合し、その一致不一致に基づき、セキュリティ認証を行う。なお、基準情報は、事前に測定されたものに限られず、既知の情報を利用してもよい。

【0043】
基準情報と照会情報の照合は、図3及び図4に示したような吸収波長、時間及び吸光度の情報を含む波長/時間-二次元吸収スペクトルあるいは吸収スペクトルの比較により行うことができる。比較は、波長/時間-二次元吸収スペクトルあるいは吸収スペクトルの全体について行ってもよく、一部の特徴量を選択、抽出して行ってもよい。例えばスペクトル全体の比較は、公知の最小二乗法によるフィッティングカーブを用いた解析により行うことができる。また、特徴量の比較は、吸光度の減衰曲線の傾きや、着色状態における複数波長の吸光度のピーク比などであってよい。例えば、上記のフォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークの場合、フォトクロミック化合物A,B,Cのフォトクロミック特性に起因して現れる波長470nm、550nm及び780nm付近のピーク強度比を特徴量として採用できる。

【0044】
簡易な認証アルゴリズムとしては、例えばフォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークの場合、以下のようなものが例示される。すなわち、フォトクロミック化合物A,B,Cを含むセキュリティマークについて予め取得しておいた基準情報に基づいて以下の条件1~4を設定する。そして、照会情報が条件1~4の全ての充足した場合に基準情報と照会情報が一致したと判定し、いずれか一以上の条件が不充足の場合に不一致と判定する。

【0045】
条件1:励起光照射中、化合物A,B,Cの着色状態に対応する吸収スペクトルが検出されること。
条件2:励起光照射直後から照射後0.1秒までは、780nm付近の吸収が存在すること(図4参照)。
条件3:励起光照射後0.2秒の吸収ピークが470nm付近にあること。
条件4:励起光照射後0.5秒の吸収ピークが550nm付近にあること。
なお、フォトクロミック反応により、化合物Aは780nm付近、化合物Bは470nm付近、フォトクロミック化合物Cは550nm付近に吸収を生じる。化合物A,B,Cの消色速度はA,B,Cの順に速く、室温における半減期は化合物Aが約30ミリ秒、化合物Bが約100ミリ秒、化合物Cが約1秒である。

【0046】
フォトクロミック化合物の消色速度は、温度に依存して変化する。このため、本プロセスでは、照会情報を取得時の温度により校正して、基準情報と照合するようにすることが望ましい。温度による校正は、温度と消色速度との関係を規定した校正曲線を用いた一般的な手法によって行うことができる。校正曲線は、予め取得したものあるいは既知のものを用いればよい。

【0047】
また、セキュリティマークの反射スペクトルを第一のセキュリティ情報に用いる場合には、反射スペクトル用光源のスペクトルが既知である必要がある。従って、本プロセスでは、照会情報と基準情報の照合のために反射スペクトル用光源のスペクトルの情報も参照される場合がある。反射スペクトル用光源のスペクトルの情報を、認証のための情報として利用することで、セキュリティ性能がさらに高められる。

【0048】
[第二情報取得プロセス]
本発明に係るセキュリティマークの認証方法において、セキュリティマークはフォトクロミック化合物に加えて蛍光物質を含んでいてもよく、この場合には、セキュリティマークから放出される蛍光のスペクトルに関する第二のセキュリティ情報を取得する第二情報取得プロセスが実行される。蛍光物質は、特に限定されず、従来公知の化合物を採用できる。

【0049】
第二のセキュリティ情報の取得は、励起光の照射によってセキュリティマークから放出される蛍光を検出器により検出することにより行う。蛍光物質を励起するための励起光は、フォトクロミック化合物を励起するための励起光と同じであってもよく、異なっていてもよい。蛍光物質の励起光は、好ましくは紫外光とされる。

【0050】
[第二照合プロセス]
第二照合プロセスでは、取得された第二のセキュリティ情報と、セキュリティマークについて予め取得した第二のセキュリティ情報とを照合する。

【0051】
具体的には、特定の蛍光物質を含むセキュリティマークについて、事前に第二のセキュリティ情報(以下「基準情報(蛍光)」ともいう)を取得しておく。そして、認証すべきセキュリティマークについて第二情報取得プロセスで取得された第二のセキュリティ情報(以下「照会情報(蛍光)」ともいう)と基準情報(蛍光)とを照合し、その一致不一致に基づき、セキュリティ認証を行う。なお、基準情報(蛍光)は、事前に測定されたものに限られず、既知の情報を利用してもよい。

【0052】
2.セキュリティマーク認証装置
次に、本発明に係るセキュリティマークの認証方法に用いることができる認証装置について説明する。図7及び図8に、本発明に係るセキュリティマークの認証装置の構成を示す。

【0053】
認証装置1は、測定部2と解析部3とからなる。測定部2では、上述のセキュリティマーク認証方法の「照射プロセス」及び「第一情報取得プロセス」と任意に「第二情報取得プロセス」が実行される。また、解析部3では、同方法の「第一照合プロセス」と任意に「第二照合プロセス」が実行される。

【0054】
[測定部]
測定部2は、セキュリティマークMに紫外光及び/又は波長400~600nmの光を含む励起光を照射する励起用光源21と、セキュリティマークMに可視光及び/又は近赤外光を照射する測定用光源22と、を含む(図8参照)。また、測定部2は、セキュリティマークMによる可視光及び/又は近赤外光の透過光又は反射光を検出する光検出器23を有する。

【0055】
励起用光源21から出射される励起光と測定用光源22から出射される可視光及び/又は近赤外光は、三分岐光ファイバー24の2本の光ファイバーに導光され、セキュリティマークMに照射される。三分岐光ファイバー24の励起光及び可視光及び/又は近赤外光の出射端とセキュリティマークMとの間には、外光の侵入を防ぐカバーを設けることが好ましい。ただし、光ファイバーを用いないで、セキュリティマークMに励起光と可視光及び/又は近赤外光を直接照射してもよい。

【0056】
セキュリティマークMへの励起光の照射時間は、フォトクロミック化合物の励起に必要な時間とされればよく、特に限定されないが、例えば10~200ミリ秒程度とされる。また、セキュリティマークMへの可視光及び/又は近赤外光の照射時間は、フォトクロミック化合物の消光時間に応じて適宜設定され、特に限定されないが、例えば0.1~10秒程度とされる。

【0057】
可視光及び/又は近赤外光のセキュリティマークMへの照射は、励起光の照射直後及び必要に応じて励起光の照射と同時に開始される。セキュリティマークMに照射される可視光及び/又は近赤外光の透過光又は反射光は、三分岐光ファイバー24の残りの一本の光ファイバーによって集光され、光検出器23により検出される。ただし、光ファイバーを用いないで、透過光又は反射光を検出器で直接検出してもよい。

【0058】
セキュリティマークMの吸収スペクトルと反射スペクトルの両方を検出する場合には、測定用光源22及び光検出器23は、吸収スペクトル用と反射スペクトル用に別個に設けられる。さらに、セキュリティマークMが蛍光物質を含む場合には、セキュリティマークMの蛍光スペクトルを検出するための励起用光源(不図示)と光検出器(不図示)を設けてもよい。

【0059】
励起用光源21と測定用光源22には、それぞれ紫外LEDと白色LEDを用いることができる。光検出器23にはフォトダイオードアレイを分光器と組み合わせて用いてもよく、特定波長のみの検出を行う場合には安価なフォトダイオードをカラーフィルタと組み合わせて用いてもよい。また、測定部2は、公知の時間分解吸収スペクトル及び/又は反射スペクトル装置により構成してもよい。

【0060】
[解析部]
解析部3は、CPU31、メモリ32、ハードディスク33、マウス34及びキーボード35等の入力部、ディスプレイ36及びプリンタ37等の表示部などから構成されている。解析部3には、汎用のコンピュータとプログラムにより構成することができる。

【0061】
検出部2によって検出されたセキュリティマークMの透過光及び/又は反射光と任意に蛍光は、電気信号に変換され、第一のセキュリティ情報(照合情報)と任意に第二のセキュリティ情報(照合情報(蛍光))として解析部3のハードディスク33に格納される(図7符号331参照)。

【0062】
ハードディスク33には、セキュリティマークMについて予め取得した第一のセキュリティ情報(基準情報)と任意に予め取得した第二の基準情報(基準情報(蛍光))も保持されている(符号332参照)。また、ハードディスク33には、OS333と、照会情報331と基準情報332の照合のためのプログラム334が格納されている。

【0063】
解析部3は、OS333とプログラム334とによって照会情報331と基準情報332の照合を行い、結果をディスプレイ36及びプリンタ37等の表示部に出力する。照会情報331と基準情報332の照合は、上述の第一照合プロセス及び第二照合プロセスで説明したのと同様に行うことができる。また、照会情報の温度による校正を行う場合、ハードディスク33に格納された、温度と消色速度との関係を規定した校正情報が参照される。さらに、セキュリティマークMの反射スペクトルを第一のセキュリティ情報に用いる場合には、反射スペクトル用の光源のスペクトルが既知である必要があり、該光源のスペクトル情報もハードディスク33に格納される。

【0064】
3.セキュリティマークの製造方法
[セキュリティマーク用インク]
本発明に係るセキュリティマーク用インクは、フォトクロミック特性の異なる2以上フォトクロミック化合物を含んでなり、より具体的には、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる。

【0065】
フォトクロミック化合物の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化に関する情報であって、波長及び/又はその強度と、時間と、を含む情報は、上述の通り、高いセキュリティ性を備えた情報として利用できる。このため、フォトクロミック化合物は、セキュリティマーク用インクに有用である。

【0066】
さらに、セキュリティマーク用インクに、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を組み合わせて配合することにより、上述の通り、励起光照射後の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの経時変化のパターンをほぼ無限に作成することが可能である。セキュリティマーク用インクに複数種のフォトクロミック化合物を配合する場合、その数は、特に限定されないが、セキュリティ性の向上とコストとを勘案して、2~20種程度とされることが好ましく、より好ましくは3~10種程度とされる。

【0067】
本発明で用いるフォトクロミック化合物は、上記のジアリールエテン系(特許文献1)、スピロピラン系(特許文献2)、ヘキサアリールビイミダゾール系(非特許文献1)及びアゾベンゼン系(非特許文献2)の化合物などの公知の化合物をであってよい。

【0068】
さらに、好適なフォトクロミック化合物として、フォトクロミック反応に要する時間がより短い化合物が挙げられる。迅速にフォトクロミック反応する化合物を用いることで、フォトクロミック化合物の吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの測定時間を短縮し、認証処理を高速化できる。このようなフォトクロミック化合物(高速発消色フォトクロミック化合物)としては、本発明者によって開発された、特許文献7、特許第464376号公報、特開2011-122089号公報、特開2011-144289号、特開2012-251097号記載のビスイミダゾール系化合物が挙げられる。これらの化合物は、励起光の照射停止後速やかに消色し、消色時間は数十ナノ秒~数秒以内、好ましくは1マイクロ秒~1秒以内、より好ましくは10マイクロ秒~100マイクロ秒以内である。

【0069】
本発明に係るセキュリティマーク用インクは、上記のような消色時間が短い化合物に加えて、逆に消色時間が相当程度長い化合物を含んでいてもよい。セキュリティマーク用インクに敢えて消色時間が長い化合物、具体的には例えばフォトクロミック反応による着色後数秒以上後、好ましくは10秒以上後に消色する化合物、を含ませておくことで、インクのフォトクロミック反応を人が視認可能なものとでき、見た目のセキュリティ性を訴求できる。

【0070】
セキュリティ認証は、高速発消色フォトクロミック化合物による吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの変化のみを第一のセキュリティ情報として行ってもよく、これに加えて消光時間が長いフォトクロミック化合物による吸収スペクトル及び/又は反射スペクトルの変化も第一のセキュリティ情報に利用してもよい。処理の高速化のためには、高速発消色フォトクロミック化合物から取得される情報のみを用いて認証を行うことが好ましい。この場合、消色時間が長い化合物の色変化は、見た目のセキュリティ性を訴求すると同時に、実際に認証に用いる高速発消色フォトクロミック化合物の色変化を覆い隠すように機能し、これによって認証情報の秘匿性を高めセキュリティ性を向上させる。

【0071】
本発明に係るセキュリティマーク用インクは、フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を通常用いられるインク溶媒に溶解又は分散させることによって製造できる。

【0072】
溶媒は、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、クロロフォルム、塩化メチレン、メタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、アセトン、メチルエチルケトン、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、セキュリティマーク用インクには、各種添加剤を配合してもよい。

【0073】
溶媒には、樹脂等の高分子化合物が含まれていてもよい。高分子化合物としては、特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール等を挙げることができる。これらの高分子化合物は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて、用いることができる。なお、高分子化合物を含む溶媒には、高分子化合物を溶媒に溶解したもののみでなく、重合反応等により該高分子化合物を形成可能なモノマーを溶媒に溶解したものであってもよい。

【0074】
[セキュリティマーク]
本発明に係るセキュリティマークは、フォトクロミック特性の異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなり、より具体的には、フォトクロミック反応による着色及び/又は着色後の消色速度が異なる2以上のフォトクロミック化合物を含んでなる。本発明に係るセキュリティマークは、認証対象物に上記のセキュリティマーク用インクを塗装又は印刷等することにより形成できる。

【0075】
認証対象物となる物品としては、特に限定されないが、有価証券、銀行券(紙幣)、クレジットカード、キャッシュカード、パスポート、身分証明文書、運転免許証、切手、納税印紙、乗車券、入場券、消費財及びそれらの包装などが挙げられる。有価証券には、国債、地方債、社債、出資証券、株券、受託証券、抵当証券等が含まれる。消費財には、工業製品、農水産物、飲食品及び医薬品等が含まれ、工業製品には、完成品のみならず、完成品の組み立てに用いられる部品(特に半導体素子等の電子部品)も含まれるものとする。

【0076】
本発明に係るセキュリティマークが保持する第一のセキュリティ情報及び第二のセキュリティ情報は、上記物品の同一性(真贋)、製造者、発行者、製造地、発行地、製造日、発行日、保有者、使用者、流通経路、売買履歴及び使用履歴などを記録したものとでき、本発明に係るセキュリティマークは、これらの情報を照合、認証するために用いられ得る。

【0077】
第一のセキュリティ情報には、認証対象物が光透過性を有する場合には、セキュリティマークの吸収スペクトル及び/又は透過スペクトルの経時変化に関する情報を利用し、光透過性を有さない場合には、反射スペクトルの経時変化に関する情報を用いることが好ましい。

【0078】
塗装によりセキュリティマークを形成する場合には、刷毛塗り、スプレー塗装、浸漬塗装、静電塗装、ローラー塗装等の塗装方法により、認証対象物への塗装を行う。また、印刷によりセキュリティマークを形成する場合には、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、孔版印刷、オフセット印刷、インクジェット等の印刷方法により認証対象物に印刷する。

【0079】
セキュリティマークは、文字や図形等であってよく、図形とする場合にはQRコード(登録商標)のような2次元画像であってもよい。マークの2次元形状内においてフォトクロミック化合物の種類、濃度の2次元分布を変化させて塗装、印刷等してもよい。これにより、マーク内の位置情報と、当該位置で取得される第一のセキュリティ情報と、を組み合わせてより複雑でセキュリティ性の高い認証情報を構築できる。

【0080】
また、セキュリティマークを認証対象物あるいはその包装の開封口に、開封操作によってマークが破断するように付し、不正開封検出に利用することもできる。例えば、セキュリティマークを、上述のような2次元形状内においてフォトクロミック化合物の種類、濃度の2次元分布を変化させたものとすれば、マークの破断前後で検出されるマーク内の位置情報及び当該位置で取得される第一のセキュリティ情報が変化するため、開封の有無を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るフォトロクミック化合物を用いたセキュリティマークの認証方法等は、有価証券、銀行券(紙幣)、クレジットカード、キャッシュカード、パスポート、身分証明文書、運転免許証、切手、納税印紙、乗車券、入場券、消費財の認証に利用でき、これらの偽造や無断複製、すり替えや取り違えを発見し抑止するために有用である。
【符号の説明】
【0082】
1:認証装置、2:測定部、21:励起用光源、22:測定用光源、23:光検出器、24:三分岐光ファイバー、3:解析部、331:照合情報、332:基準情報
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7