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明細書 :カルシウム指示遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 カルシウム指示遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
A01K 67/027
C07K 19/00
C07K 14/47
C07K 14/435
C12Q 1/02
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 29
出願番号 特願2016-527634 (P2016-527634)
公序良俗違反の表示 1.MATLAB
国際出願番号 PCT/JP2015/002869
国際公開番号 WO2015/190083
国際出願日 平成27年6月8日(2015.6.8)
国際公開日 平成27年12月17日(2015.12.17)
優先権出願番号 2014120828
優先日 平成26年6月11日(2014.6.11)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】尾藤 晴彦
【氏名】井上 昌俊
【氏名】竹内 敦也
【氏名】中井 淳一
【氏名】大倉 正道
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100105991、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 玲子
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
審査請求
テーマコード 4B063
4B065
4H045
Fターム 4B063QA01
4B063QQ02
4B063QR48
4B063QS32
4B063QX02
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA00
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA15
要約 蛍光特性及びカルシウム反応性に優れるカルシウム指示タンパクとして、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているDNAを提供する。このDNAによってコードされるカルシウム指示タンパクは、カルシウムが結合したCaM配列に対する結合ドメインとしてckkap配列を有することにより、従来のカルシウム指示タンパクに比して優れた蛍光特性及びカルシウム反応性を発揮する。
特許請求の範囲 【請求項1】
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているDNA。
【請求項2】
ckkap配列をコードするヌクレオチドの塩基配列が、配列番号1~3に示される塩基配列のいずれか一つである、請求項1記載のDNA。
【請求項3】
ckkap配列をコードするヌクレオチドと蛍光タンパクをコードするヌクレオチド、及び、蛍光タンパクをコードするヌクレオチドとCaM配列をコードするヌクレオチドが、アミノ酸リンカーをコードするヌクレオチドを介してそれぞれ結合されている、請求項1又は2記載のDNA。
【請求項4】
蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端にckkap配列をコードするヌクレオチドが、3’末端側にCaM配列をコードするヌクレオチドが結合されており、
ckkap配列をコードするヌクレオチドと蛍光タンパクをコードするヌクレオチドがアミノ酸リンカーAをコードするヌクレオチドを介して結合されており、かつ、
蛍光タンパクをコードするヌクレオチドとCaM配列をコードするヌクレオチドがアミノ酸リンカーBをコードするヌクレオチドを介して結合されており、
アミノ酸リンカーA及びアミノ酸リンカーBの組み合わせが以下のいずれか一つである、請求項3記載のDNA。
アミノ酸リンカーA(-Pro-Val-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Arg)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、及び
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のDNAを含むベクター。
【請求項6】
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているカルシウム指示遺伝子が導入された形質転換細胞。
【請求項7】
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているカルシウム指示遺伝子が導入された、ヒトを除くトランスジェニック動物。
【請求項8】
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)の一方が蛍光タンパクのN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されているタンパク。
【請求項9】
ckkap配列が、配列番号4~6,15~19に示されるアミノ酸配列のいずれか一つである、請求項8記載のタンパク。
【請求項10】
ckkap配列と蛍光タンパク、及び、蛍光タンパクとCaM配列が、アミノ酸リンカーを介してそれぞれ結合されている、請求項8又は9記載のタンパク。
【請求項11】
蛍光タンパクのN末端にckkap配列が、C末端側にCaM配列が結合されており、
ckkap配列と蛍光タンパクがアミノ酸リンカーAを介して結合されており、かつ、
蛍光タンパクとCaM配列がアミノ酸リンカーBを介して結合されており、
アミノ酸リンカーA及びアミノ酸リンカーBの組み合わせが以下のいずれか一つである、請求項10記載のタンパク。
アミノ酸リンカーA(-Pro-Val-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Arg)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、及び
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。
【請求項12】
細胞内で発現されたカルシウム指示タンパクから放射される蛍光を検出する手順を含む、細胞の活動電位の測定方法であって、
前記カルシウム指示タンパクは、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)の一方が蛍光タンパクのN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されている、カルシウム指示タンパクであることを特徴とする方法。
【請求項13】
細胞内で発現されたカルシウム指示タンパクから放射される蛍光を検出する手順を含む、細胞内カルシウムイオンのイメージング方法であって、
前記カルシウム指示タンパクは、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)の一方が蛍光タンパクのN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されている、カルシウム指示タンパクであることを特徴とする方法。
【請求項14】
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されている、カルシウム指示遺伝子を前記細胞に導入する手順を含む、請求項12記載の細胞活動電位の測定方法又は請求項13記載の細胞内カルシウムイオンのイメージング方法。
【請求項15】
細胞の活動電位の測定及び/又は細胞内カルシウムイオンのイメージングのためのカルシウム指示試薬であって、
カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(ckkap配列)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(CaM配列)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているDNA又は該DNAを含むベクターを含む、試薬。
【請求項16】
前記細胞が神経細胞である、請求項15記載の試薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム指示遺伝子に関する。より詳しくは、カルシウムセンサーとして機能する蛍光タンパクであって、蛍光特性及びカルシウム反応性に優れた蛍光カルシウム指示タンパクに関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、筋肉の収縮、神経興奮性やホルモン分泌、酵素活性の変化などの各種の細胞機能の調節因子として、生体機能の維持および調節に不可欠な役割を担っている。生体内(細胞外及び細胞内)のカルシウム濃度を測定するため、従来、カルシウムセンサー(カルシウムインディケーター)と称されるタンパクが用いられている。
【0003】
近年、脳高次機能の本質である認知活動を細胞レベル及び細胞内ドメインレベルで解析するため、神経活動に伴うカルシウム濃度の変化を超高速でイメージングする技術が必要とされており、優れたカルシウム反応性を備える蛍光カルシウムセンサーの開発が望まれている。
【0004】
カルシウムセンサーとして機能するタンパクとして、蛍光タンパクにカルモジュリンの部分配列とミオシン軽鎖キナーゼの部分配列を結合したカルシウム指示タンパクが知られている。このカルシウム指示タンパクは、カルシウムがカルモジュリンの部分配列に結合するとタンパクの立体構造が変化し、蛍光タンパク(GFP又はRFP)の発する蛍光強度が変化することを利用している。例えば、非特許文献1には、蛍光タンパクとしてmAppleを用いたカルシウム指示タンパク(R-GECO1)が記載されている。また、特許文献1には、R-GECO1を改良して作成され、R-GECO1よりも大きな蛍光強度変化を示すR-CaMP1.01と、R-CaMP1.01を改良して作成され、R-CaMP1.01よりもさらに大きな蛍光強度変化を示し、細胞内の局在性が改善されたR-CaMP1.07が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-1161号公報
【0006】

【非特許文献1】Science,2011,333,1888-1891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のカルシウム指示タンパクよりもさらに蛍光特性及びカルシウム反応性に優れるカルシウム指示タンパクを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本発明は、以下の[1]~[23]を提供する。
【0009】
[1]カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼのカルモジュリン結合配列(以下「ckkap配列」)をコードするヌクレオチド及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(以下「CaM配列」)をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているDNA。
[2]蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端にckkap配列をコードするヌクレオチドが、3’末端側にCaM配列をコードするヌクレオチドが結合されている、[1]のDNA。
[3]ckkap配列をコードするヌクレオチドの塩基配列が、配列番号1~3に示される塩基配列のいずれか一つである、[1]又は[2]のDNA。
[4]ckkap配列をコードするヌクレオチドと蛍光タンパクをコードするヌクレオチド、及び、蛍光タンパクをコードするヌクレオチドとCaM配列をコードするヌクレオチドが、アミノ酸リンカーをコードするヌクレオチドを介してそれぞれ結合されている、[1]~[3]のいずれかのDNA。
[5]蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端にckkap配列をコードするヌクレオチドが、3’末端側にCaM配列をコードするヌクレオチドが結合されており、
ckkap配列をコードするヌクレオチドと蛍光タンパクをコードするヌクレオチドがアミノ酸リンカーAをコードするヌクレオチドを介して結合されており、かつ、
蛍光タンパクをコードするヌクレオチドとCaM配列をコードするヌクレオチドがアミノ酸リンカーBをコードするヌクレオチドを介して結合されており、
アミノ酸リンカーA及びアミノ酸リンカーBの組み合わせが以下のいずれか一つである、[4]のDNA。
アミノ酸リンカーA(-Pro-Val-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Arg)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、及び
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。
[6]CaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列が、配列番号7又は8に示される塩基配列である、[1]~[5]のいずれかのDNA。
[7][1]~[6]のいずれかのDNAを含むベクター。
【0010】
[8]ckkap配列をコードするヌクレオチド及びCaM配列をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているカルシウム指示遺伝子が導入された形質転換細胞。
[9]ckkap配列をコードするヌクレオチド及びCaM配列をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているカルシウム指示遺伝子が導入された、ヒトを除くトランスジェニック動物。
[10]前記カルシウム指示遺伝子において、蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端にckkap配列をコードするヌクレオチドが、3’末端側にCaM配列をコードするヌクレオチドが結合されている、[8]の細胞又は[9]のトランスジェニック動物。
[11]ckkap配列をコードするヌクレオチドの塩基配列が、配列番号1~3に示される塩基配列のいずれか一つである、[8]の細胞又は[9]のトランスジェニック動物。
[12]CaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列が、配列番号7又は8に示される塩基配列である、[8]の細胞又は[9]のトランスジェニック動物。
【0011】
[13]ckkap配列及びCaM配列の一方が蛍光タンパクのN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されているタンパク。
[14]前記蛍光タンパクのN末端側にckkap配列が、C末端側にCaM配列が結合されている、[13]のタンパク。
[15]ckkap配列が、配列番号4~6,15~19に示されるアミノ酸配列のいずれか一つである、[13]又は[14]のタンパク。
[16]CaM配列が、配列番号9又は10に示されるアミノ酸配列である、[13]~[15]のいずれかのタンパク。
[17]ckkap配列と蛍光タンパク、及び、蛍光タンパクとCaM配列が、アミノ酸リンカーを介してそれぞれ結合されている、[13]~[16]のいずれかのタンパク。
[18]蛍光タンパクのN末端にckkap配列が、C末端側にCaM配列が結合されており、
ckkap配列と蛍光タンパクがアミノ酸リンカーAを介して結合されており、かつ、
蛍光タンパクとCaM配列がアミノ酸リンカーBを介して結合されており、
アミノ酸リンカーA及びアミノ酸リンカーBの組み合わせが以下のいずれか一つである、[17]のタンパク。
アミノ酸リンカーA(-Pro-Val-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Arg)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、及び
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。
【0012】
[19]細胞内で発現されたカルシウム指示タンパクから放射される蛍光を検出する手順を含む、細胞の活動電位の測定方法であって、
前記カルシウム指示タンパクは、ckkap配列及びCaM配列の一方が蛍光タンパクのN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されている、カルシウム指示タンパクであることを特徴とする方法。
[20]細胞内で発現されたカルシウム指示タンパクから放射される蛍光を検出する手順を含む、細胞内カルシウムイオンのイメージング方法であって、
前記カルシウム指示タンパクは、ckkap配列及びCaM配列の一方が蛍光タンパクのアミノ酸配列のN末端側に、他方が前記蛍光タンパクのC末端側に結合されている、カルシウム指示タンパクであることを特徴とする方法。
[21]ckkap配列をコードするヌクレオチド及びCaM配列をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されている、カルシウム指示遺伝子を前記細胞に導入する手順を含む、[19]の細胞活動電位の測定方法又は[20]の細胞内カルシウムイオンのイメージング方法。
【0013】
[22]細胞の活動電位の測定及び/又は細胞内カルシウムイオンのイメージングのためのカルシウム指示試薬であって、
ckkap配列をコードするヌクレオチド及びCaM配列をコードするヌクレオチドの一方のヌクレオチドが蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの5’末端側に、他方のヌクレオチドが前記蛍光タンパクをコードするヌクレオチドの3’末端側に結合されているDNA又は該DNAを含むベクターを含む、試薬。
[23]前記細胞が神経細胞である、[22]の試薬。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、蛍光特性及びカルシウム反応性に優れるカルシウム指示タンパクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカルシウム指示タンパクR-CaMP2と公知技術に係るカルシウム指示タンパクR-CaMP1.07の構造を示す図である。
【図2-1】本発明に係るカルシウム指示タンパクのckkap配列のアミノ酸配列の一例を示す図である。
【図2-2】本発明に係るカルシウム指示タンパクのckkap配列のアミノ酸配列の他の一例を示す図である。
【図3】R-CaMP1.07、R-CaMP2、及びR-GECO2LのCa2+滴定曲線を示す図である。曲線は、ヒルの式に従ってフィッティングをした。
【図4】R-CaMP1.07、R-CaMP2、及びR-GECO2Lのin vitroでのベースラインの蛍光強度とダイナミックレンジ(Fmax/Fmin)を示す図である。
【図5】EGFPとR-CaMP2(A)またはR-GECO2L(B)を発現する海馬培養神経細胞を示す図である。スケールバー:10μm。
【図6】海馬培養神経細胞のシナプス終末から記録されたフィールド刺激による単一活動電位に応答した蛍光変化を示す図である。
【図7】海馬培養神経細胞の細胞体から記録された、MNI-glutamateの単一UVアンケージングパルスに応答した蛍光変化を示す図である。
【図8】単一活動電位で誘導されるシナプス終末のCa2+イメージングにおいて、1試行(灰色)及びR-CaMP1.07、R-CaMP2、R-GECO2Lの各試行の平均応答のトレースを示す図である。
【図9】単一活動電位で誘導されるシナプス終末のCa2+イメージングにおける、単一活動電位の振幅、SNR、立ち上がり時間、減衰時定数を示す図である。
【図10】海馬培養神経細胞の細胞体において、グルタミン酸アンケージングの単一パルスに対する1回の試行(n=9)及び各試行の平均応答のトレースを示す図である。AはR-CaMP1.07の結果、BはR-CaMP2の結果を示す。
【図11】海馬培養神経細胞の細胞体において、単一パルスのグルタミン酸アンケージングに対する振幅、SNR、立ち上がり時間、減衰時定数を示す図である。
【図12】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞の活動電位(n=10細胞)に対するR-CaMP2の蛍光変化(ΔF/F)を、R-CaMP1.07との比較で示す図である。
【図13-1】急性スライス単一活動電位によって誘発されるCa2+応答の振幅、SNR、立ち上がり時間、減衰時定数を示す図である。
【図13-2】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞の活動電位(n=10細胞)に対するR-CaMP2_LLAの蛍光変化(ΔF/F)を、R-CaMP2との比較で示す図である。
【図13-3】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞の活動電位(n=10細胞)に対するX-CaMPGreenの蛍光変化(ΔF/F)を、公知技術に係るカルシウム指示タンパクGCaMP6s及びGCaMP6fとの比較で示す図である。
【図14】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞において、20Hzで1、2、4及び8発のスパイクに応答する際のR-CaMP1.07及びR-CaMP2発現神経細胞の代表的なトレース(上図)と平均の性能(下図)を示す図である。
【図15-1】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞において、5発のスパイクに固定して、異なる周波数で刺激した際のR-CaMP2の1回の試行での応答を示す図である(B)。(A)は比較のためのR-CaMP1.07の結果を示す。
【図15-2】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞において、5発のスパイクに固定して、異なる周波数で刺激した際のR-CaMP2_LLAの1回の試行での応答を示す図である。
【図15-3】急性スライスにおけるバレル野2/3層錐体細胞において、5発のスパイクに固定して、異なる周波数で刺激した際のX-CaMPGreenの1回の試行での応答を示す図である(A)。(B)は比較のためのGCaMP6fの結果を示す。
【図16】エアパフひげ刺激によるCa2+変動をin vivoイメージングにより複数の神経細胞で記録した結果を示す図である。
【図17】in vivoでのR-CaMP2発現新皮質神経細胞のCa2+変動(上段)と活動電位(下段)の同時記録の代表的トレースを示す図である。各バーストのスパイク数をトレースの下に示す。スケールバー:5μm。
【図18】in vivoの新皮質神経細胞において、200ミリ秒のビン内の活動電位数で誘導されるCa2+変動の振幅、SNR、時間積分値(1、2、3、4、5発の活動電位はn=254、115、45、26、13イベントを検出した。n=7匹のマウスから9細胞)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

【0017】
1.カルシウム指示遺伝子及びカルシウム指示タンパク
本発明に係るカルシウム指示遺伝子及びカルシウム指示タンパクについて、実施例に記載の「R-CaMP2」及び「R-GECO2L」等を例として説明する。

【0018】
本発明に係るカルシウム指示タンパクは、蛍光タンパクのアミノ酸配列、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼ(CaMKK)のカルモジュリン結合配列(以下「ckkap配列」)のアミノ酸配列、及びカルモジュリンのカルシウム結合配列(以下「CaM配列」)のアミノ酸配列を含んでなる。同様に、本発明に係るカルシウム指示遺伝子は、蛍光タンパクをコードするヌクレオチド、ckkap配列をコードするヌクレオチド、及びCaM配列をコードするヌクレオチドを含んでいる。

【0019】
また、本発明に係るカルシウム指示タンパクは、ckkap配列と蛍光タンパクを結合するアミノ酸リンカー、及び蛍光タンパクとCaM配列とを結合するアミノ酸リンカーを有していてもよい。同様に、本発明に係るカルシウム指示遺伝子は、ckkap配列と蛍光タンパクを結合するアミノ酸リンカーをコードするヌクレオチド、及び蛍光タンパクとCaM配列とを結合するアミノ酸リンカーをコードするヌクレオチドを有していてもよい。

【0020】
図1に、本発明に係るカルシウム指示タンパク(あるいはカルシウム指示遺伝子)の構造の一例を示す。図上段は、特許文献1に記載される従来のカルシウム指示タンパクであるR-CaMP1.07の構造、下段は本発明に係るカルシウム指示タンパクであるR-CaMP2の構造を示す。図中、「ckkap-WL」はckkap配列の好適な一例を示す。また、「cpApple」は赤色蛍光タンパクを表す。

【0021】
本発明に係るR-CaMP2は、蛍光タンパクのアミノ酸配列cpAppleのN末端側にckkap配列が、C末端側にCaM配列が結合されている。同様に、R-CaMP2遺伝子においては、蛍光タンパクをコードするヌクレオチドcpAppleの5’末端にckkap配列をコードするヌクレオチドが、3’末端側にCaM配列をコードするヌクレオチドが結合されている。この構造は、従来のR-CaMP1.07の構造において「M13」で示されるミオシン軽鎖キナーゼのカルモジュリン結合配列をckkap配列に置換した構造に相当する。また、本発明に係るR-GECO2Lは、非特許文献1に記載される従来のカルシウム指示タンパクであるR-GECO1のM13配列をckkap配列に置換した構造を有する。R-CaMP2及びR-GECO2Lの全長アミノ酸配列を配列番号11及び配列番号13に、R-CaMP2及びR-GECO2Lをコードするヌクレオチドの全長塩基配列を配列番号12及び配列番号14にそれぞれ示す。

【0022】
本発明に係るR-CaMP2は、特許文献1に記載のR-CaMP1.07と同様に、N末端側及びC末端側にそれぞれ付加配列を有していてもよい。図中、「MGS」で示される付加配列(37アミノ酸残基)は、タンパクを精製する際に用いられるタグ配列である。また、「F2A」で示される付加配列(21アミノ酸残基)は、タンパクを細胞内において細胞質に局在させるために機能する。

【0023】
本発明に係るカルシウム指示タンパクは、CaM配列にカルシウムが結合し、さらにカルシウム結合CaM配列にckkap配列が結合することで、立体構造を変化させる。本発明に係るカルシウム指示タンパクは、カルシウム存在下で立体構造を変化させることで、蛍光タンパクの立体構造変化とそれに伴う蛍光特性変化をもたらし、カルシウムセンサーとして機能する。実施例に記載する通り、本発明に係るR-CaMP2及びR-GECO2L等は、カルシウム結合CaM配列に対する結合ドメインとしてckkap配列を有することにより、同結合ドメインとしてM13配列を有するR-CaMP1.07及びR-GECO1等の従来のカルシウム指示タンパクに比して優れた蛍光特性及びカルシウム反応性を発揮する。より具体的には、R-CaMP2及びR-GECO2L等は、カルシウム存在下と非存在下との間での蛍光強度の変化量(ダイナミックレンジ)がより大きく、カルシウムとの結合と解離に伴う蛍光特性の変化速度もより大きい点で、従来のカルシウム指示タンパクに比して優位な特性を備える。

【0024】
R-CaMP2のアミノ酸配列を配列番号11に示す。配列番号11に示すアミノ酸配列のうち、1~37番目がMGS配列、38~63番目がckkap配列(ckkap-WL)、66~307番目がcpApple配列、310~456番目がCaM配列、472~492番目がF2A配列である。MGS配列、ckkap配列、cpApple配列、CaM配列及びF2A配列は、リンカーによって隣接する配列と結合されていてよい。リンカーは、カルシウム指示タンパクの機能が維持される限りにおいて特に限定されない。

【0025】
R-CaMP2の好適なリンカー構造は、ckkap配列と蛍光タンパクを結合するアミノ酸リンカーAが「-Pro-Val-」であり、蛍光タンパクとCaM配列を結合するアミノ酸リンカーBが「-Thr-Arg」である。

【0026】
本発明に係るカルシウム指示タンパクにおける好適なアミノ酸リンカーA,Bの組み合せは、上記の「-Pro-Val-」及び「-Thr-Arg」の組み合せの他に以下が挙げられる。
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、及び
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。

【0027】
これらのリンカー構造を採用することにより、カルシウム存在下での蛍光強度が高く、ダイナミックレンジが大きいカルシウム指示タンパクを得ることができる。

【0028】
また、R-GECO2Lのアミノ酸配列を配列番号13に示す。配列番号13に示すアミノ酸配列のうち、1~3番目がMGS配列、4~29番目がckkap配列(ckkap-WL)、32~273番目がcpApple配列、276~422番目がCaM配列である。MGS配列、ckkap配列、cpApple配列及びCaM配列は、リンカーによって隣接する配列と結合されていてよい。

【0029】
[ckkap配列]
本発明に係るカルシウム指示タンパクのckkap配列は、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼキナーゼ(CaMKK)のカルモジュリン結合配列である。CaMKKのカルモジュリン結合配列には、αサブユニットとβサブユニットが存在するが、本発明のckkap配列は、αサブユニット由来の配列(アミノ酸配列を配列番号4、当該アミノ酸配列をコードするヌクレオチドを配列番号1に示す)であっても、βサブユニット由来の配列(アミノ酸配列を配列番号5、当該アミノ酸配列をコードするヌクレオチドを配列番号2に示す)であってもよい。なお、これらの配列は、ラットのCaMKK由来のものであるが、ckkap配列の由来は、カルシウムが結合したCaM配列に対する結合性を有する限り、任意の生物種であってよい。

【0030】
さらに、ckkap配列は、カルシウムが結合したCaM配列に対する結合性を有する限り、配列番号4又は5に記載のアミノ酸配列中の1個又は数個(好ましくは1~5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列であってもよい。このようなckkap配列として、上記ckkap-WL(アミノ酸配列を配列番号6、当該アミノ酸配列をコードするヌクレオチドを配列番号3に示す)が挙げられる。また、ckkap配列として、ckkap-WLのアミノ酸配列をさらに改変したアミノ酸配列(ckkap-WL2~6)も採用できる。ckkap配列のアミノ酸配列は、カルシウム指示タンパクの蛍光特性及びカルシウム反応性を高める観点から、配列番号6,15~19に示す配列が好ましく、配列番号15~19に示す配列が最も好ましい。配列番号6,15~19に示す配列からckkap配列のアミノ酸配列を適宜選択することにより、カルシウム指示タンパクの蛍光特性やカルシウム反応性を所望の程度に設定することもできる。実施例に記載のR-CaMP2及びR-GECO2Lは、ckkap配列として、ckkap-WLを含む。また、R-CaMP2_LLAは、ckkap配列としてckkap-WL5を含む。図2-1に、αサブユニット由来のckkap配列(ckkapα)とβサブユニット由来のckkap配列(ckkapβ)及びckkap-WLのアミノ酸配列を示す。図2-2に、ckkap-WL2~6のアミノ酸配列を示す。

【0031】
なお、ckkap配列は、CaMKKのカルモジュリン結合配列のみからなるものに限られないものとする。すなわち、ckkap配列は、CaMKKのアミノ酸配列のうち、カルモジュリン結合配列以外のアミノ酸配列を含んでいてもよく、例えばカルモジュリン結合配列のN末端側及び/又はC末端側のアミノ酸を数残基~数十残基含んでいてもよいものとする。

【0032】
[CaM配列]
本発明に係るカルシウム指示タンパクのCaM配列は、カルモジュリンのカルシウム結合配列である。CaM配列には、配列番号9又は配列番号10に示すアミノ酸配列を用いることができる。配列番号9に示すアミノ酸配列はR-CaMP2が備えるCaM配列であり、配列番号10に示すアミノ酸配列はR-GECO2Lが備えるCaM配列である。これらのCaM配列は、ラットカルモジュリンの2番目から148番目のアミノ酸配列に由来し、該アミノ酸配列に4残基又は5残基のアミノ酸置換を導入したアミノ酸配列である。R-CaMP2のCaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列を配列番号7に、R-GECO2LのCaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列を配列番号8に示す。なお、CaM配列の由来は、カルシウムに対する結合性を有し、カルシウムが結合した状態でckkap配列と結合し得る限り、任意の生物種であってよい。

【0033】
さらに、CaM配列も、カルシウムに対する結合性を有し、カルシウムが結合した状態でckkap配列と結合し得る限り、配列番号9又は10に記載のアミノ酸配列中の1個又は数個(好ましくは1~5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列であってもよい。なお、CaM配列は、カルモジュリンのカルシウム結合配列のみからなるものに限られないものとする。すなわち、CaM配列は、カルモジュリンのカルシウム結合配列のうち、カルシウム結合配列以外のアミノ酸配列を含んでいてもよく、例えばカルシウム結合配列のN末端側及び/又はC末端側のアミノ酸を数残基~数十残基含んでいてもよいものとする。

【0034】
[蛍光タンパク]
本発明に係るカルシウム指示タンパクの蛍光タンパクには、特に限定されないが、青色蛍光タンパク(例えば実施例に記載のX-CaMPBlueにおけるBFPなど)、緑色蛍光タンパク(例えば実施例に記載のX-CaMPGreenにおけるEGFPなど)、黄色蛍光タンパク(例えば実施例に記載のX-CaMPYellowにおけるVenusなど)及び赤色蛍光タンパクが用いられる。特に赤色蛍光タンパクが好適に用いられ、例えばmApple又はその改変体が用いられる。光刺激で細胞機能を操作し、同時に蛍光カルシウムイメージングで細胞機能を測定するためにカルシウム指示タンパクを用いる場合、蛍光タンパクが赤色蛍光タンパクであれば、その励起波長が細胞機能操作を目的として汎用される光刺激プローブChannelrhodopsin-2の励起波長と重複しないため好ましい。

【0035】
mAppleの改変体とは、蛍光特性に影響を及ぼすアミノ酸残基の近傍でmAppleのアミノ酸配列を切断して該蛋白質の構造を改変し、さらに特定部位のアミノ酸残基を置換したものである。mAppleの改変体の具体例は、特許文献1に記載されている。

【0036】
図1では、本発明に係るカルシウム指示タンパク(あるいはカルシウム指示遺伝子)において、ckkap配列、蛍光タンパク及びCaM配列が、この順序でN末端側(あるいは5’末端側)からC末端側(あるいは3’末端側)に配列する例を説明した。本発明に係るカルシウム指示タンパクにおいて、ckkap配列、蛍光タンパク及びCaM配列の配列順序は、N末端側からC末端側に向かって、CaM配列、蛍光タンパク及びckkap配列であってもよいものとする。

【0037】
本発明に係るカルシウム指示タンパクは、カルシウムと結合することで立体構造が変化し、該立体構造の変化がカルシウム指示タンパクに含まれる蛍光タンパクの立体構造に影響を与えることで、蛍光タンパクの蛍光特性を可逆的に変化させる。ここで、蛍光特性とは、蛍光強度、蛍光波長、蛍光強度比、吸光度、吸光波長などの蛍光特性を指す。本発明では蛍光特性の一例として、蛍光強度を使用する。蛍光特性の変化が蛍光強度の変化である場合、蛍光の変化量ΔF/Fが、好ましくは、少なくとも0.3以上変化すること、より好ましくは0.6以上変化することをいう。

【0038】
本発明におけるカルシウム指示タンパクは、ckkap配列を備えることにより、従来のカルシウム指示タンパクに比べ、カルシウムとの結合時に、より大きな蛍光特性の変化を引き起こすことを特徴とする。ここでより大きな蛍光特性変化とは、蛍光特性の変化が蛍光強度の変化である場合、蛍光の変化量ΔF/Fが、従来のカルシウムセンサーよりも大きく、好ましくは3倍以上増強されることをいう。

【0039】
2.ベクター、形質転換細胞及びトランスジェニック動物
本発明に係るカルシウム指示遺伝子は、公知の遺伝子工学的手法を用いて作成できる。例えば、ckkap配列、蛍光タンパク及びCaM配列等の配列をコードするヌクレオチドをそれぞれPCRにより増幅し、増幅断片を繋ぎ合わせることにより本発明に係るカルシウム指示遺伝子を作成できる。

【0040】
得られたカルシウム指示遺伝子は、プラスミドやウイルス等の公知のベクターに組込むことができる。カルシウム指示遺伝子を搭載したベクターを所望の細胞に導入することにより、カルシウム指示タンパクを発現する形質転換細胞を得られる。カルシウム指示遺伝子を搭載したベクターあるいはカルシウム指示遺伝子そのものは、後述する細胞の活動電位の測定又は細胞内カルシウムイオンのイメージングのための試薬の一部となり得る。

【0041】
また、公知の遺伝子工学的手法を用いて、カルシウム指示遺伝子が導入されたトランスジェニック動物を作成できる。カルシウム指示遺伝子を哺乳動物の全能性細胞に導入し、この細胞を個体へと発生させ、体細胞のゲノム中にカルシウム指示遺伝子が導入された個体を選別することによってトランスジェニック動物を作成できる。この際、組織特異的プロモーターの制御下にカルシウム指示遺伝子を組み込んで導入することによって、例えば脳神経細胞のみでカルシウム指示タンパクを発現するトランスジェニック動物を得ることもできる。

【0042】
3.細胞の活動電位の測定方法及び細胞内カルシウムイオンのイメージング方法
本発明に係るカルシウム指示タンパクは、細胞内カルシウム濃度変化を高感度に検知することができ、細胞の活動電位の測定及び細胞内カルシウムのイメージングのために好適に利用できる。細胞は、特に限定されないが、神経細胞が好ましい一例である。

【0043】
例えば、本発明に係るカルシウム指示遺伝子を搭載したベクターを測定対象とする細胞に導入してカルシウム指示タンパクを発現させる。あるいは、測定対象とする細胞でカルシウム指示タンパクを発現するトランスジェニック動物を作成する。そして、蛍光顕微鏡もしくは多光子顕微鏡等により、カルシウム指示タンパクに含まれる蛍光タンパクの励起波長に応じた波長の励起光を測定対象細胞に照射し、カルシウム指示タンパクから放射される蛍光を検出する。蛍光強度の変化を経時的に取得することで細胞の活動電位を測定することが可能であり、蛍光強度の変化をリアルタイムに画像化処理することで細胞内カルシウムのイメージングが可能となる。

【0044】
本発明に係るカルシウム指示タンパクを用いた細胞活動電位の測定方法及び細胞内カルシウムイオンイメージング方法は、細胞活動電位及び細胞内カルシウムイオン濃度に影響を及ぼす物質をスクリーニングするために応用できる。例えば、被検物質を処置した細胞あるいは被検物質を個体レベル、組織レベル又は細胞レベルで投与した動物を用いて、細胞内の細胞活動電位等を記録する。そして、記録された細胞活動電位を、被検物質を処置しないで同様に取得された細胞活動電位等と比較し、被検物質が細胞活動電位等に与える影響の有無を判定し、細胞活動電位等の亢進又は抑制に機能する物質を選択する。被検物質には、合成又は天然の各種化合物、ペプチドやタンパク、及びDNAやRNAなどの核酸などであってよく、核酸を用いる場合には遺伝子導入によって該核酸がコードする遺伝子を細胞に発現させた上で細胞活動電位等の変化を記録する。
【実施例】
【0045】
1.材料と方法
[R-CaMP2,R-GECO2L]
文献(PLoS One, 2012, 7, e39933)記載の手法に従って、R-CaMP1.07発現コンストラクトを構築した。R-GECO1は、Addgene(http://www.addgene.org/)を通して得た。R-GECO1は、pEGFP-N1(Clontech)由来のpCMVベクターからサブクローニングした。
【実施例】
【0046】
R-CaMP1.07及びR-GECO1のM13配列をラットCaMKKαのVal438‐Phe463に相当するCa2+/カルモジュリン結合配列(ckkap配列)に置換し、R-CaMP2及びR-GECO2Lを作成した(図1参照)。ckkap配列には、CaMKKαの配列(ckkapα、配列番号4)とCaMKKβの配列(ckkapβ、配列番号5)とのハイブリッド配列(ckkap-WL、配列番号6)を部位特異的変異法により作成して用いた(図2-1参照)。CaM配列には、文献(Nature, 2013, 499, 295-300、J. Biol. Chem., 2009, 284, 6455-6464)記載のアミノ酸置換を導入した(配列番号8,9)。R-CaMP2及びR-GECO2Lは、pCAGベクターにサブクローニングした。
【実施例】
【0047】
[R-CaMP2_LLA]
R-CaMP2のckkap配列(ckkap-WL)を部位特異的変異法により改変し、ckkap配列をckkap-WL5(図2-2参照)とするR-CaMP2_LLAを作成した。
【実施例】
【0048】
[X-CaMPBlue,X-CaMPGreen、X-CaMPYellow]
文献(PLos One, 2010, Vol.5, No. 2, e8897)記載のG-CaMP4.1のM13配列をckkap配列(ckkap-WL)に置換した。さらに、蛍光タンパクとしてBFP、EGFP又はVenusを組み込んだものをそれぞれX-CaMPBlue,X-CaMPGreen、X-CaMPYellowとした。
【実施例】
【0049】
ckkap配列と蛍光タンパクを結合するアミノ酸リンカーA、及び蛍光タンパクとCaM配列を結合するアミノ酸リンカーBには以下の組み合わせを採用した。
X-CaMPBlue:
アミノ酸リンカーA(-Leu-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)又は
アミノ酸リンカーA(-Met-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)。
X-CaMPGreen:
アミノ酸リンカーA(-Leu-Glu-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Lys-)、又は
アミノ酸リンカーA(-Arg-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Pro-)。
X-CaMPYellow:
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Ala-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、
アミノ酸リンカーA(-Gln-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Thr-Asp-)、又は
アミノ酸リンカーA(-Phe-Asp-)・アミノ酸リンカーB(-Phe-Asp-)。
【実施例】
【0050】
[In vitroにおけるCa2+蛍光測定]
作成したカルシウム指示タンパクをHEK293T細胞に発現させて、Ca2+フリーのバッファー(20 mM MOPS (pH 7.5), 100 mM potassium chloride, 1 mM DTT, 1×Protease Inhibitor Cocktail (Complete, EDTA free, Roche))にて細胞を回収した。回収後、超音波破砕を行い、遠心して上清を取りライセートとした。このライセートをスクリーニングやIn vitroの性能評価に用いた。
【実施例】
【0051】
In vitroの蛍光測定は、室温にてプレートリーダー(Fusion α、Perkin Elmer)と96ウェルプレートを用いて行った。ダイナミックレンジはFmax/Fminとして計算した。Fmaxは0.3 mM Ca2+の条件下においてCa2+飽和状態の時の蛍光強度を、Fminは15mM EGTA存在下でのゼロCa2+の時の蛍光強度を測定した。Ca2+適定曲線は、市販のキット(Ca2+ Calibration Kit #1、Invitrogen)を用いて、10 mMのK22EGTAとCa2EGTAの混合液により定量した。Kd値及びHill係数は、解析ソフトウェア(Origin Pro 7.5、Origin Lab)を用いてカーブフィットを行って算出した。
【実施例】
【0052】
[海馬培養神経細胞におけるCa2+イメージング]
文献(Cell, 1996, 87, 1203-1214、Cell Rep., 2013, 3, 978-987)記載の手法に従って、海馬分散培養を行った。海馬培養神経細胞は生後当日のSDラット(日本SLC)の海馬(CA1/CA3領域)から取った。培養後10~11日目で、CMVプロモーターのカルシウム指示タンパクをコードする遺伝子をリポフェクションにより神経細胞に導入した。遺伝子導入2~3日後、フィールド電気刺激によって引き起こされるCa2+イメージングをTyrode溶液(129 mM NaCl, 5 mM KCl, 30 mM glucose, 25 mM HEPES-NaOH [pH 7.4], 1 mM MgCl2 and 3 mM CaCl2)を用いて行った。自発発火を防ぐために、Tyrode溶液には、10 μM CNQX (Tocris Bioscience)及び50 μM D-AP5(Tocris Bioscience)を加えた。
【実施例】
【0053】
シナプス終末(軸索起始部から100 μm以上離れてかつ、軸索の直径が3倍以上大きい部位)のイメージングを、倒立顕微鏡(IX81, Olympus)とEM-CCD(C9100-12またはC9100-13, 浜松ホトニクス)を用いて行った。神経細胞は、ステージCO2インキュベーター中で37℃に維持した。神経細胞は、フィールド電気刺激(50 mA、1 msecの電流パルス)を用いて刺激した。この刺激条件は、パルス刺激装置(Master-8、A.M.P.I.)を用いて、確実に細胞体のスパイクを誘導するのに十分であった。
【実施例】
【0054】
UVグルタミン酸アンケージングでは、神経細胞を0.4 mMのMNI-グルタミン酸(Tocris Bioscience)と1μMのTTXで処置した、Mg2+を含まないTyrode溶液中でイメージングを行った。MNI-グルタミン酸のUVアンケージングは、AQUACOSMOSソフトウェアプラットフォーム(浜松ホトニクス)上で動作する紫外線光分解システム(浜松ホトニクス)と、該システムにより制御された355nmのUVナノ秒パルスレーザー((Polaris II, New Wave Research)を用いて誘導した(Cell Rep., 2013, 3, 978-987)。
【実施例】
【0055】
[子宮内電気穿孔法]
子宮内電気穿孔法は、文献(J. Neurosci., 2009, 29, 13720-13729)記載の方法に従った。胎生14.5日目のICRマウス(SLC日本)の側脳室に、麻酔下で、精製したプラスミド溶液約1.0 μlを注入し、5回の電気パルス(45 V、1 Hz、50ミリ秒の持続時間を5回)をエレクトロポレーター(BTX)により与えた。カルシウム指示タンパクを発現するマウスまたは細胞を可視化するために、体積のコントロールとしてEGFPを共発現させた。生後4~7週間後のマウスを、急性スライス標本またはin vivoイメージングに供した。
【実施例】
【0056】
[急性脳スライスにおけるCa2+イメージングとホールセル記録の同時測定]
文献(Eur. J. Neurosci., 2014, 39, 1720-1728)記載の手法に従って、急性脳スライス実験を行った。4~7週齢のマウスをCO2で深く麻酔し、断頭した。カルシウム指示タンパクは、CAGプロモーター下で、あるいは、TRE-tightプロモーターとTet3G(Clontech及びTet-Systems)を用いたテトラサイクリン誘導発現系を用いて、発現させた。
【実施例】
【0057】
全脳を迅速に除去し、氷冷した人工脳脊髄液(ACSF)(125 mM NaCl, 2.5 mM KCl, 1.25 mM NaH2PO4, 26 mM NaHCO3, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 25 mM glucose, bubbled with 95% O2 and 5% CO2)中に浸した。体性感覚野(厚さ250 μm)の急性冠状脳スライスは、ミクロトーム(VT1200S, Leica)を使用して切断した。脳スライスを記録チャンバーに移動する前に30℃で酸素飽和ACSF中に30分間培養し、続いて室温に維持した。
【実施例】
【0058】
脳切片を、二光子顕微鏡ステージ上に液浸型記録チャンバーに装着し、バレル野の第4層を明視野によって同定した。ホールセルパッチクランプ記録は、バレル野の第2/3錐体細胞で行った。記録中、記録チャンバーは連続的に30℃の酸素飽和ACSFで灌流した。パッチピペットは、垂直プラー(PC-10、成茂)を使用して、ホウケイ酸ガラスキャピラリーから引き出し、細胞内液(133 mM K-MeSO3, 7.4 mM KCl, 10 mM HEPES, 3 mM Na2ATP, 0.3 mM Na2GTP, 0.3 mM MgCl2)が満たされたときに5~8 Mオームの抵抗を有した。ホールセル電流固定記録は、EPC10増幅器(Heka)を用いて行った。すべての電気生理学的データは、10 kHzでフィルターし、20 kHzでデジタル化した。
【実施例】
【0059】
[In vivoイメージングのための頭蓋骨手術]
In vivoイメージングのために、マウス(4~7週齢)にウレタン(1.5~1.8mg/ g)を腹腔内投与し麻酔した。加熱パッド(FHC, Bowdoin)を用いて体温を37℃に維持した。瞬間接着剤と歯科用セメントを用いて、右バレル野の上の頭蓋骨にステンレス製のヘッドプレートを接着した(ブレグマから3.0~3.5 mm横、1.5 mm後部)。円形の開頭(直径1.8~2.0 mm)を作製し、硬膜を慎重に取り除いた。開頭を溶液(150 mM NaCl, 2.5 mM KCl, 10 mM HEPES, 2 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 1.5% agarose, pH 7.3)で満たした。露出された脳の動きを抑制するために、ガラスカバースリップをアガロース上に置いた後、マウスを二光子顕微鏡の動物用ステージに移した。
【実施例】
【0060】
[In vivo 2光子Ca2+イメージング]
カルシウム指示タンパク発現神経細胞のin vivo Ca2+イメージングは右バレル野の第2/3層(軟膜から約150~300 μm下部)で実施した。カルシウム指示タンパクの発現は、CAGプロモーターによって行った。CAGプロモーターによる永続的なカルシウム指示タンパクの発現は、測定可能な神経細胞毒性を引き起こさなかった。
【実施例】
【0061】
感覚刺激は、短いエアパフ(40~45 psiで50 ms)を用いて対側のひげに与えた。神経細胞集団の自発的および感覚誘発活動は、3分間、256×192画素(サンプリングレート= 2.3 Hz)の分解能で取得した。単一神経細胞におけるCa2+変動の高速撮像のために、高速ラインスキャン(サンプリングレート= 650~700 Hz)は、皮質ニューロンの細胞体で行った。樹状突起イメージングのために、可能な限り1焦点面に多くの目に見えるスパインと樹状突起が入るように選択した。イメージングは、22秒、232×64ピクセルの解像度(サンプリングレート= 4.3 Hz)で取得した。
【実施例】
【0062】
[Ca2+イメージング及びin vivo loose-seal cell attached電気記録法の同時測定]
in vivoでのセルアタッチ記録は、蛍光物質(Alexa488、50 μM)を含むACSFで満たされたガラス電極(5-7M オーム)を用いて行った。カルシウム指示タンパクを発現させたバレル野の神経細胞に、2光子ターゲットのパッチ法(Neuron, 2003, 39, 911-918)を適用した。セルアタッチ成立から約10分後、スパイク記録と高速ラインスキャンのCa2+イメージング(サンプリングレート=675 Hz)の同時測定を細胞体にて実施した。電気生理学的データは、クランプモードでEPC10増幅器(HEKA)を用いて増幅した。10kHzでフィルターをかけて、20kHzでデジタル化した。さらにオフラインで100Hzのハイパスフィルターをかけた。スパイクの検出は、MATLABを使用して、閾値処理することにより自動的に計数した。
【実施例】
【0063】
以上に説明した材料と方法については、本願優先日後に公表された文献(Nature Method, 2015, Vol.12, No.1, p.64-70)も参照できる。
【実施例】
【0064】
2.結果
R-CaMP2とR-GECO2Lは、Kd値が100nM以下であった(図3参照)。また、R-CaMP2とR-GECO2Lは、Ca2+非存在下の基底蛍光値(Baseline Fluorescence)においてはR-CaMP1.07に比べて同等ないし2倍以内に留まり、ダイナミックレンジにおいてはR-CaMP1.07には劣るものの5倍以上であった。(図4参照)。
【実施例】
【0065】
R-CaMP2とR-GECO2Lを初代海馬培養神経細胞に発現させた。また、赤色指示薬の蛍光スペクトルと分離するEGFPを体積のコントロールとして発現させた。R-CaMP2は特徴的な核外の局在を示した(図5A)。一方、R-GECO2Lは細胞質だけでなく核内にも局在を示した(図5B)。さらに、R-CaMP2及びR-GECO2Lは、樹状突起、軸索及びシナプス終末において一様な分布を示した。
【実施例】
【0066】
フィールド電気刺激による単一活動電位(1AP)(図6)及び細胞体近傍へのUVパルスレーザーによる単一のナノ秒パルスによるMNI-glutamateのアンケイジング(図7)は、顕著なCa2+変動を引き起こし、単一指数関数でフィットできた。
【実施例】
【0067】
R-CaMP2及びR-GECO2Lは、in vitroにおいて既存の蛍光カルシウム指示タンパクよりもずっと高いCa2+親和性を示した(表1)。加えて、R-CaMP2及びR-GECO2Lは、生きた神経細胞において、R-GECO1及びR-CaMP1.07よりも早いキネティクスを有した(図8~11)。さらに、R-CaMP2のΔF/Fの振幅応答はR-CaMP1.07より3倍以上大きく、R-GECO2L(図8,9)より大きかった。
【実施例】
【0068】
【表1】
JP2015190083A1_000003t.gif
※PLOS One,2012,7,e51286参照。
【実施例】
【0069】
【表2】
JP2015190083A1_000004t.gif
【実施例】
【0070】
R-CaMP2及びR-GECO2Lは、1近くのヒル係数を有する(表1)。これはOGB-1(J. Neurosci., 2008, 7399-7411)のような化学合成されたカルシウム指示薬のヒル係数とほぼ同じである。このことは、既存の蛍光カルシウム指示タンパクの多くが、ヒル係数2以上(表1)であることと明確に異なる。
【実施例】
【0071】
脳組織中のR-CaMP2の有用性を検証するために、子宮内電気穿孔法(J. Neurosci., 2009, 29, 13720-13729)にてバレル野第2/3層の神経細胞にR-CaMP2を導入し、成体マウスにおいて急性スライスを作成した。チタンサファイアレーザーで励起し、R-CaMP2発現神経細胞の細胞体および近位樹状突起において、ホールセルパッチクランプと組み合わせて高速(700Hz近傍)の2光子ラインスキャンでCa2+イメージングを行った。R-CaMP2_LLA及びX-CaMPGreenについても同様の実験を行った。
【実施例】
【0072】
初代海馬培養神経細胞の結果と同様に、単一の脱分極電流注入によるΔF/F応答振幅は、R-CaMP1.07発現神経細胞よりR-CaMP2発現神経細胞の方が有意に大きかった(図12、13)。信号対雑音比(SNR:signal to noise ratio)(最大4.0倍大きい)、立ち上がり時間(最大2.6倍早い)、減衰時定数(最大3.4倍早い)において、R-CaMP2は、R-CaMP1.07に比して数倍の改善を示した(図13-1)。R-CaMP2_LLAは、R-CaMP2に比してさらに早い立ち上がり時間を示した(図13-2)。また、X-CaMPGreenは、従来の緑色蛍光カルシウム指示タンパクであるGCaMP6s,GCaMP6f(Nature, 2013, Vol.499, p.295-300)に比して早い立ち上がり時間を示した(図13-3)。なお、GCaMP6s,GCaMP6fは、M13配列を用いたカルシウムセンサーである。
【実施例】
【0073】
R-CaMP2は、これらの改善されたパラメータと一致して、最大4パルスに対する電流注入の連続パルスまでΔF/F振幅およびSNRの改善を示した(図14)。また、20~40Hzの連続した活動電位までは単一の試行でも判別することができた(図15-1、B)。同じ実験条件下で、R-CaMP1.07発現神経細胞から記録したCa2+シグナルは、よりベースラインのノイズが大きく、また立ち上がり時間が遅く、5Hzの周波数のパルスまでしか活動電位を判別できなかった(図15-1、A)。R-CaMP2_LLAは、R-CaMP2に比してさらに高周波数の刺激に追従し、50Hzまでの分解能を有した(図15-2)。また、X-CaMPGreenは、80~100Hzの超高速周波数にも追従した(図15-3)。
【実施例】
【0074】
麻酔下の頭固定マウスのバレル野第2/3層の神経細胞におけるin vivoでのCa2+イメージングを行った。第2/3層錐体神経細胞の約30~60%を標識した条件下では、自発的なCa2+スパイクを確実に記録できた(図16)。触覚情報の表現はまばらな神経細胞にコードされている(Neuron, 2010, 67, 1048-1061、Neuron, 2013, 78, 28-48、Trends Neurosci., 2012, 35, 345-355)。これと一致して、ひげへのエアパフ刺激は限られた細胞でしかCa2+変動が生じなかった。また、R-CaMP2ベースのCa2+変動に刺激相関活性を示すアクティブ神経細胞は、連続的なエアパフ刺激の際に誘発反応を起こした。つまり、バレル野での感覚刺激に応答するアクティブな神経細胞を同定することができた。
【実施例】
【0075】
in vivoでの記録の解像度を確認するために、loose-seal cell attached電気記録法と同時に、高速ラインスキャンのCa2+イメージングを行った(図17)。自発的な活動電位は、5パルスまでSNR、振幅、振幅の時間積分のぞれぞれの応答において、線形に近い増加を示した(図18)。以上より、R-CaMP2はin vivoにおける単一の活動電位に伴うCa2+変動の立ち上がりと減衰時間のキネティクスが、これまでに報告されているGCaMP6f(Nature, 2013, 499, 295-300)またはfast-GCaMP(Nat. Commun., 2013, 4, 2170)といった早いキネティクスを持つ緑色蛍光カルシウム指示タンパクと同程度であることが明らかになった。
【配列表フリ-テキスト】
【0076】
配列番号1:CaMKKのαサブユニットに由来するckkap配列(
ckkapα)をコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号2:CaMKKのβサブユニットに由来するckkap配列(ckkapβ)をコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号3:ckkap-WLをコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号4:CaMKKのαサブユニットに由来するckkap配列(
ckkapα)のアミノ酸配列。
配列番号5:CaMKKのβサブユニットに由来するckkap配列(ckkapβ)のアミノ酸配列。
配列番号6:ckkap-WLのアミノ酸配列。
配列番号7:R-CaMP2のCaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号8:R-GECO2LのCaM配列をコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号9:R-CaMP2のCaM配列のアミノ酸配列。
配列番号10:R-GECO2LのCaM配列のアミノ酸配列。
配列番号11:R-CaMP2のアミノ酸配列。
配列番号12:R-CaMP2をコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号13:R-GECO2Lのアミノ酸配列。
配列番号14:R-GECO2Lをコードするヌクレオチドの塩基配列。
配列番号15:ckkap-WL2のアミノ酸配列。
配列番号16:ckkap-WL3のアミノ酸配列。
配列番号17:ckkap-WL4のアミノ酸配列。
配列番号18:ckkap-WL5のアミノ酸配列。
配列番号19:ckkap-WL6のアミノ酸配列。
図面
【図1】
0
【図2-1】
1
【図2-2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13-1】
13
【図13-2】
14
【図13-3】
15
【図14】
16
【図15-1】
17
【図15-2】
18
【図15-3】
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【図16】
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【図17】
21
【図18】
22