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明細書 :金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法及び金属酸化物ナノ薄膜の製造方法並びに金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明の名称または考案の名称 金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法及び金属酸化物ナノ薄膜の製造方法並びに金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜
国際特許分類 B32B   9/00        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
B32B  37/15        (2006.01)
C04B  35/468       (2006.01)
H01G   4/33        (2006.01)
H01G   4/12        (2006.01)
FI B32B 9/00 A
C01G 23/00 C
B32B 37/15
C04B 35/46 D
C04B 35/46 N
H01G 4/06 102
H01G 4/12 397
H01G 4/12 400
H01G 4/12 394
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2016-544249 (P2016-544249)
国際出願番号 PCT/JP2015/073391
国際公開番号 WO2016/027858
国際出願日 平成27年8月20日(2015.8.20)
国際公開日 平成28年2月25日(2016.2.25)
優先権出願番号 2014168124
2015033580
優先日 平成26年8月21日(2014.8.21)
平成27年2月24日(2015.2.24)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】下岡 弘和
出願人 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
審査請求 未請求
テーマコード 4F100
4G031
4G047
5E001
5E082
Fターム 4F100AA17A
4F100AB12
4F100AB12A
4F100AB22A
4F100AB40
4F100AB40A
4F100AH08
4F100AH08A
4F100AJ01
4F100AJ01B
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EJ42
4F100GB41
4F100JM01
4F100JM01A
4F100YY00B
4G031AA05
4G031AA06
4G031AA09
4G031AA11
4G031AA13
4G031AA14
4G031AA15
4G031AA34
4G031AA40
4G031BA05
4G031BA09
4G031CA08
4G031GA01
4G047CA01
4G047CA07
4G047CB06
4G047CC02
4G047CD02
5E001AB06
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AH01
5E001AJ02
5E082FG26
5E082PP03
5E082PP09
要約 金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜は、1)金属アルコキシド溶液に金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて金属アルコキシドを加水分解し、2)加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜を得て、3)ゲル膜をそのまま保持して熟成し、熟成したゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着する高分子化合物の溶液を展開して、4)ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成し、5)非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得て製造する。
特許請求の範囲 【請求項1】
金属アルコキシド溶液に該金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて金属アルコキシドを加水分解する工程と、
加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜を得る工程と、
前記ゲル膜をそのまま保持して該ゲル膜を熟成する工程と、
熟成したゲル膜の展開する前記非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着する高分子化合物の溶液を展開して、ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程と、
前記非水溶媒の表面に形成される前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程と、
を有することを特徴とする金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液に該異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて該異なる金属種の金属アルコキシドを加水分解し、前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程において、前記ゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、加水分解された前記異なる金属種の金属アルコキシド溶液を展開して2層のゲル膜を形成し、該2層のゲル膜の展開する非水溶媒の表面に前記高分子化合物の溶液を展開して2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層の積層膜を形成し、
前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程において、2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層積層ナノ薄膜を得ることを特徴とする
請求項1記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液に、該異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.001~1倍のモル量のドープ用金属を加えることを特徴とする請求項2記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記金属アルコキシド溶液が、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液が、ストロンチウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液であることを特徴とする請求項2又は3に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記ドープ用金属の金属種が、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、バナジウム、ランタン、アンチモン又はフッ素であることを特徴とする請求項3記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記金属アルコキシド溶液の溶媒が、メタノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒又はイソプロパノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記金属アルコキシド溶液及び前記異なる金属種の金属アルコキシド溶液の溶媒が、メタノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒又はイソプロパノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒であることを特徴とする請求項2又は3に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記非水溶媒が、流動パラフィンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項10】
熟成時間が0.1~100時間であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記高分子化合物の溶液が、ポリ乳酸をアセトンに溶解したものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項12】
溶剤で前記非水溶媒を除去することで該非水溶媒の表面に形成される前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出すことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載された金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法により得られる金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜から高分子化合物膜を除去することを特徴とする金属酸化物ナノ薄膜の製造方法。
【請求項14】
厚みが100nm未満の金属酸化物ゲル薄膜を、除去可能な高分子化合物膜で補強したことを特徴とする金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜。
【請求項15】
前記高分子化合物膜の厚みが100nm未満であることを特徴とする請求項14記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜。
【請求項16】
前記金属酸化物ゲル薄膜が金属種の異なる複数の金属酸化物ゲル薄膜から形成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アルコキシド溶液を出発原料とする金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法、及び金属酸化物ナノ薄膜の製造方法、並びに金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高誘電率を有するチタン酸バリウムの緻密で薄い膜を積層すれば、極めて静電容量が大きいコンデンサを製造することができる。
しかし、無機化合物の結晶は有機高分子や有機-無機ハイブリッドのような柔軟性と強度の源となる網の目状の架橋構造を持たないので、まず自立膜を作ることが難しい。
【0003】
金属アルコキシド溶液と水界面での界面重合により金属酸化物の自立膜を作製する方法がある。
しかし、この方法では、膜質が悪く、焼結性が低いという問題がある。
また、大気と昇華性ナフタレンとの固体界面でアルミナやムライト等の自立膜を作製する方法がある。
しかし、この方法では、ナフタレンの昇華により膜中に貫通気孔が生成し、また、ナフタレンに接する面の表面粗度が大きいなどの問題がある。
更にまた、ドクターブレード法によりチタン酸バリウム厚膜を作製する方法がある。
しかし、この方法では100nm未満の薄膜作製が難しいという問題がある。
【0004】
本発明者は、先に、部分的に加水分解した高濃度の金属アルコキシド溶液を不活性ガスと非水溶媒の気液界面に供給してゲル膜を生成し、この膜を熟成し、洗浄し、不活性ガス中で乾燥することによってチタン酸バリウム自立膜を作製する方法を提案している。作製したチタン酸バリウム自立膜を酸化性雰囲気中で焼結することによって、更にチタン酸バリウム自立焼結膜を得る(特許文献1参照)。
得られるチタン酸バリウム自立膜は、5nm以下の擬立方晶チタン酸バリウム結晶からなる、厚さが数十μm以下の透明な膜である。
しかし、この方法では、得られる膜の強度が弱いため、大面積で自立膜を作製することが出来ず、また、作業性に問題が残る。
【0005】
また、層状化合物(論文ではCa2Nb3O10-)のナノシートを含むコロイド溶液を用い、気液界面に浮かぶナノシートをLB法と同じ要領で面方向に寄せ集め、それを基板に移し取って数ナノメートルの厚さのナノ薄膜を作製する方法が開示されている(非特許文献1参照)。層状化合物を用いるため、剥離によって厚さ0.5~3nm薄い結晶の薄片を得ることができる。
しかし、この方法は、気液界面で面方向に寄せ集めなければち密な膜が得られず、また、作業性に問題が残る。更に、ナノシートが数μm程の大きさに止まるため、必要な大きさを得るためには、薄片を多数寄せ集める必要があり、そのため、支持基板上でしか膜を得られないため、自立性がないという問題もある。ナノシートが自立性を有することは、ナノシートの積層化に最適なテープ成形法では必須といえる。また、この方法は、ナノシートの薄膜化を実現するためには、分子レベルの薄さに剥離する性質を持つ層状化合物を用いることが必要となる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001-261434号公報
【0007】

【非特許文献1】Chengxiang Wang et al., ACS Nano, 8, 3, 2658-66 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、特許文献1の技術では、得られる膜の強度や柔軟性に改良の余地があり、また、これらの特性を実現できる膜を作製する際の作業性にも改良の余地がある点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、
金属アルコキシド溶液に金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて金属アルコキシドを加水分解する工程と、
加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜を得る工程と、
ゲル膜をそのまま保持してゲル膜を熟成する工程と、
熟成したゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着する高分子化合物の溶液を展開して、ゲル膜と非水溶媒との界面に高分子化合物の溶液が浸入して、ゲル膜と高分子化合物の積層膜を形成する工程と、
非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法において、好ましくは、前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液に、該異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて該異なる金属種の金属アルコキシドを加水分解し、前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程において、該ゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、加水分解された該異なる金属種の金属アルコキシド溶液を展開して2層のゲル膜を形成し、2層のゲル膜の展開する非水溶媒の表面に高分子化合物の溶液を展開して2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層の積層膜を形成し、前記ゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程において、2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層積層ナノ薄膜を得ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液に、該異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.001~1倍のモル量のドープ用金属を加えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記金属アルコキシド溶液が、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液が、ストロンチウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記ドープ用金属の金属種が、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、バナジウム、ランタン、アンチモン又はフッ素であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記金属アルコキシド溶液及び前記異なる金属種の金属アルコキシド溶液の溶媒が、メタノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒又はイソプロパノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記非水溶媒が、流動パラフィンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、熟成時間が0.1~100時間であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、前記高分子化合物の溶液が、ポリ乳酸をアセトンに溶解したものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、好ましくは、溶剤で非水溶媒を除去することで非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出すことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法は、上記の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法により得られる金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜から高分子化合物膜を除去することを特徴とする。
【0021】
そして、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜は、厚みが100nm未満(かつ例えば5nm以上)の金属酸化物ゲル薄膜を、除去可能な高分子化合物質で補強して構成される。
なお、高分子化合物膜の厚みは特定しないが、例えば、100nm未満(かつ例えば5nm以上)とするのがよい。
更に、前記金属酸化物ゲル薄膜が金属種の異なる複数の金属酸化物ゲル薄膜から形成されている場合もある。
また、この金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜は上記した製造方法によって製造される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、金属アルコキシド溶液に金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて金属アルコキシドを加水分解する工程と、加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜を得る工程と、ゲル膜をそのまま保持してゲル膜を熟成する工程と、熟成したゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着する高分子化合物の溶液を展開して、ゲル膜と非水溶媒との界面に高分子化合物の溶液が浸入して、ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程と、非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程と、を有するため、簡易な方法で、強度や柔軟性に富む積層ナノ薄膜を大面積で作製することができる。
【0023】
また、本発明に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法は、上記の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法により得られる金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜から高分子化合物膜を除去するため、例えば、高分子化合物膜の除去が焼成によるものでない場合は多孔質なゲル膜である金属酸化物ナノ薄膜を分離膜やガスセンサーの材料に利用することができ、また、高分子化合物膜の除去が焼成による場合は、得られる金属酸化物焼成ナノ薄膜(膜厚が例えば100nm未満)を用いて静電容量が大きいコンデンサ(例えば、MLCC)を製造することができる。
本発明に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法においては、従来法では必要であった脱バインダ工程を省略したうえで、積層物を一度で焼成することができる。この焼成は素材を選択することによって、低温でも十分焼結できるので、低融点の電極材料にも適用できる。
そして、本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜は、金属酸化物ゲル薄膜が高分子化合物膜で補強されているので、取り扱いが容易なより薄いより広い金属酸化物膜となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ポリ乳酸のアセトン溶液を流動パラフィン上に滴下したときの様子、及びアルコキシドゲルが数分で不透明化したときの様子を示す図である。(実験例1)
【図2】透明チタン酸バリウムゲルとポリ乳酸の積層膜のSEM写真である。(実験例1)
【図3】積層膜が柔軟性を示すことを確認する様子を示す図である。(実験例1)
【図4】チタン酸バリウム焼結膜のSEM写真ある。(実験例1)
【図5】チタン酸バリウム焼結膜の外観を示す図である。(実験例1)
【図6】チタン酸バリウム焼結膜の誘電率及び誘電損失の周波数依存性を測定した結果を示す図である。(実験例1)
【図7】チタン酸バリウム焼結膜の誘電率及び誘電損失の温度依存性を測定した結果を示す図である。(実験例1)
【図8】BaTiO3/SrTiO3積層膜の表面(図8中、左半分)と側面(図8中、右半分)のSEM写真(二次電子像)である。(実験例2)。
【図9】図8と同じ場所のSEM写真(反射電子像)である。(実験例2)
【図10】Nb:SrTiO3膜のエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトルを示す図である。(実験例3)
【図11】Nb:SrTiO3膜の電流-電圧特性を示す図である。(実験例3)
【図12】プレパラート上に転写した後、焼成した透明チタン酸バリウムゲルのSEM写真である。(実験例1)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例について、以下に説明する。
本実施例の第一の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、金属アルコキシド溶液に金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて金属アルコキシドを加水分解する工程と、加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜(金属酸化物ゲル薄膜)を得る工程と、ゲル膜をそのまま保持してゲル膜を熟成する工程と、熟成したゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着して、ゲル膜の表面を修飾する高分子化合物の溶液を展開して、ゲル膜と非水溶媒との界面に高分子化合物の溶液が浸入して、ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程と、非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程と、を有する。

【0026】
金属アルコキシド溶液を加水分解する工程において、金属アルコキシド溶液は、金属酸化物膜の出発原料である。
金属アルコキシドは、一般式M(OR)で表される。Mは金属元素であり、特にその種類を限定するものではないが、チタン、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、スズ等が好ましく、これらのうち、チタン及びバリウムがより好ましい。Rはアルキル基であり、特にその種類を限定するものではないが、C2m+1で表される一般式においてm=1~10の範囲のものが好ましい。nは金属の酸化数である。

【0027】
金属アルコキシドは、単一の金属種であってもよく、また、複数の金属種の混合物であってもよい。バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液を用いることは好適な実施態様である。
なお、金属β-ジケトネート、金属カルボキシレート、金属ジアルキルアミド等の加水分解する有機金属化合物であれば、金属アルコキシドに変えて使用可能である。
金属アルコキシド溶液の溶媒は、アルコール、エーテル、ニトリル、アミド等を用いる
ことができ、これらのうち、低級アルコールが好ましい。低級アルコールとしてメタノール、イソプロパノール、2-メトキシエタノール等を用いることは好適な実施態様である。
溶媒は、単一種であってもよいが、複数種の混合溶媒であることが好ましい。例えば、メタノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒やイソプロパノール及び2-メトキシエタノールの混合溶媒を用いることができる。

【0028】
金属アルコキシド溶液の溶媒中の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、0.7モル/l(リットル)以上程度、好ましくは、1~1.2モル/l(リットル)の高濃度であると、ゲル化後に熟成すると離漿が生じてより高密度のゲル膜が得られる。金属アルコキシドの濃度を調整することで、得られる積層ナノ薄膜の金属酸化物膜の嵩密度、膜厚、粒子の粒径を適宜のサイズに制御することができる。金属アルコキシドを複数種用いる場合、その比率は特に限定するものではないが、等モルであることが好ましい。
金属アルコキシド溶液の溶媒としてメタノールと2-メトキシエタノールの混合溶媒を用いる場合その配合比率は、モル比でメタノール:2-メトキシエタノール=1:0.1~0.7程度とすることが好ましい。
金属アルコキシド溶液は、次に加水分解するに先立ち、例えば室温で数日間十分攪拌しておくことが好ましく、このとき、水分の混入を防止するために、乾燥窒素雰囲気中で行うことが好ましい。

【0029】
金属アルコキシド溶液の金属アルコキシドを加水分解するために、金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を金属アルコキシド溶液に加える。水の量は、金属アルコキシド溶液の金属のモル量の2~3倍のモル量であると、より好ましい。これにより、金属アルコキシドが部分的に加水分解し、金属アルコキシド同士が重合してコロイドとなり、それらが溶媒中に分散したゾルとなる。コロイドの表面には親水性のOH基や疎水性のアルキル基を有する。そして、金属アルコキシドは、次の工程で、良好なゲル膜を形成する。水の量が0.01倍のモル量未満であると、次の工程で、金属アル
コキシド溶液が非水溶媒に溶解してゲル膜が得られないおそれがある。一方、水の量が6倍のモル量を超えると、次の工程で、金属アルコキシド溶液がいわゆる液体レンズ状態となって良好なゲル膜が形成されないおそれがある。
金属アルコキシド溶液に水を加える方法は、特に限定するものではなく、適宜の方法を採用することができる。水蒸気を金属アルコキシド溶液に例えば100~1000分間吹き付けて徐々に加水分解することは好適な実施態様である。

【0030】
部分的に加水分解された金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開して金属酸化物のゲル膜を得る工程において、非水溶媒は、その種類を特に限定するものではない。例えば、パラフィン系、シクロパラフィン系、オレフィン、シクロオレフィン系炭化水素等を用いることができる。また、液晶も使用できる。流動パラフィンを用いることは好適な実施態様である。このとき、更に、界面活性剤を適宜添加してもよい。
金属アルコキシド溶液を非水溶媒の表面に展開する方法は、滴下法等の適宜の方法を用いることができる。これにより、非水溶媒の表面に、言い換えれば気相と液相の界面に金属酸化物のゲル膜を生成する。この気液界面としては、窒素/流動パラフィン界面が最も好ましい。金属アルコキシド溶液の滴下量を調整することにより、ゲル膜の膜厚を制御することができる。

【0031】
ゲル膜をそのまま保持してゲル膜を熟成する工程では、例えば室温下で0.1~100時間その状態を維持する。これにより、ゲル膜の形成が進み、また、重縮合反応が進行することにより、ゲル膜の嵩密度が向上し、金属酸化物の結晶化が促進される。

【0032】
熟成したゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、ゲル膜と反応又はゲル膜に吸着する高分子化合物の溶液を展開して、ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程において、用いる高分子化合物は、特に限定するものではなく、ゲル膜表面を化学修飾でき、固体に強度や柔軟性を付与するためにガラス転移点が低く、適当な分子量を有する高分子化合物であればよい。具体的には構造中にカルボニル基や水酸基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、スルホン基、ハロゲンを含む化合物等が好ましく、より具体的には、ポリ乳酸、ポリメタクリル酸メチル等が好ましい。ポリ乳酸を用いることは好適な実施態
様である。高分子化合物を溶解する溶媒はトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等が好ましく、アセトンを用いることは好適な実施態様である。
高分子化合物の溶液の高分子化合物の濃度は、特に限定するものではないが、0.1~10質量%とすることが好ましく、1~5質量%とすることがより好ましい。

【0033】
ゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、高分子化合物の溶液を展開するには適宜の方法を用いることができ、例えば滴下法を用いることができる。高分子化合物の溶液はゲル膜の展開していない非水溶媒の露出表面に滴下する。滴下した高分子化合物の溶液は、ゲル膜中の細孔内液体と非水溶媒の液液界面、細孔内気体と非水溶媒の気液界面、ゲル骨格と非水溶媒の固液界面に素早く拡散して展開して、ゲル膜のOH基やアルコキシ基と反応するか、静電引力や分子間力による吸着でゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を生成する。得られる積層膜は、ゲル膜のみの場合に比べて強固であり、かつ、柔軟性に富む。

【0034】
非水溶媒の表面に形成されるゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を取出し、乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程において、積層膜の取出しは、適宜の方法で行うことができ、例えば、積層膜をLB法と同じ要領で支持基板に掬い取ってもよいが、網で掬い取ったり、膜上面から巻き上げてもよい。溶剤で非水溶液を除去する方法は、好適な実施態様である。取り出した積層膜に付着した非水溶媒は、乾燥して除去するか、乾燥して除去できない場合はヘキサン、トルエン、クロロホルム等の非水溶媒を溶解し、かつ高分子化合物膜を溶解しない溶剤で簡単に除去できる。
ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を乾燥してゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る。乾燥は、適宜の方法で行うことができ、例えば、窒素雰囲気中で0~100℃程度の温度で1~100分間程度乾燥することは好適な実施態様である。

【0035】
これにより、厚みが5~1000nm程度(5nm以上100nm未満がより好ましい)の金属酸化物膜(金属酸化物ゲル薄膜)を、厚みが1~1000nm(5nm以上10nm未満がより好ましい)の高分子化合物膜で補強した積層ナノ薄膜を一辺の長さが0.1~10cm程度の大面積で得ることができる。この厚みは滴下する金属アルコキシド溶液の量と高分子化合物溶液の量によって決まる。
金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜は、高分子化合物膜で補強されているので、自立性に富み、また柔軟性に富むため、テープ成形が可能である。

【0036】
本実施例の第二の例に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法は、上記の金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法により得られる金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜から高分子化合物膜を除去する。
高分子化合物膜の除去方法は、溶剤に溶かす方法や光分解、生分解等であってもよく、また、焼成であってもよい。前者の溶剤に溶かす場合の溶剤としては、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等を用いることができる。一方、後者の焼成は、熱伝導や熱伝達による加熱によるものでもよく、また、マイクロ波やレーザー照射、電流印加等によるものであってもよい。たとえば、熱伝導や熱伝達による加熱による場合、焼成条件は、特に限定するものではない。例えば、大気雰囲気中で1~600℃/分で昇温し、300~1350℃の温度で0.1~1000分間加熱することは、好適な実施態様である。
これにより、高分子化合物膜が焼失し、自立性に富む金属酸化物ナノ薄膜が得られる。高分子化合物膜の除去が焼成によるものでない場合は、多孔質なゲル膜である金属酸化物ナノ薄膜を分離膜やガスセンサーの材料に利用することができ、また、高分子化合物膜の除去が焼成による場合は、得られる金属酸化物焼成ナノ薄膜を用いて静電容量が大きいコンデンサを製造することができる。

【0037】
本実施例の第三の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、本実施例の第一の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法における金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液(例えば、ストロンチウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合溶液)に異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.01~6倍のモル量の水を加えて異なる金属種の金属アルコキシドを加水分解し、ゲル膜と高分子化合物膜の積層膜を形成する工程において、ゲル膜の展開する非水溶媒の表面に、加水分解された異なる金属種の金属アルコキシド溶液を展開して2層のゲル膜を形成し、2層のゲル膜の展開する非水溶媒の表面に高分子化合物の溶液を展開して2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層の積層膜を形成し、ゲル膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜を得る工程において、2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層積層ナノ薄膜を得る。ここで、金属アルコキシド、非水溶媒及び高分子化合物膜等については、本実施例の第一の例と同様であるため、重複する記載を省略する。

【0038】
本実施例の第三の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法によれば、2層のゲル膜と高分子化合物膜の3層積層ナノ薄膜が得られるため、積層ナノ薄膜の機械的強度を向上することができる。
本実施例の第四の例に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法は、本実施例の第三の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法により得られる金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜から高分子化合物膜を除去する。ここで、具体的な製造条件は本実施例の第二の例に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法と同様であるので、重複する記載を省略する。なお、金属酸化物ゲル薄膜が、金属種の異なる複数(例えば、2枚以上)の金属酸化物ゲル薄膜から形成されている場合もあり得る。

【0039】
本実施例の第四の例に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法によれば、本実施例の第二の例に係る金属酸化物ナノ薄膜の製造方法と同様の効果を得ることができ、例えば、電極としての機能を有する導電性酸化物膜に誘電体酸化物を積層すれば、本実施例の第二の例に比べて、誘電体膜の厚さを極めて薄くすることができ、コンデンサの静電容量を更に増大できる。

【0040】
本実施例の第五の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法は、本実施例の第三の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法において、本実施例の第一の例における金属アルコキシドとは異なる金属種の金属アルコキシド溶液に、異なる金属種の金属アルコキシド溶液の金属のモル量の0.001~1倍のモル量のドープ用金属を加える。ここで、ドープ用金属以外の条件は本実施例の第三の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法と同様であるため、重複する記載を省略する。

【0041】
ドープ用金属は特に限定するものではないが、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、バナジウム、ランタン、アンチモン又はフッ素を好適に用いることができる。

【0042】
本実施例の第五の例に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法によれば、ドープされる金属酸化物膜の物性を好適に制御することができる。
例えば、ドープされる金属酸化物膜がもともと絶縁体である場合、導電性金属をドープするとで、導電性を得ることができる。

【0043】
以下、本発明を実験例により具体的に説明するが、この実験例は何ら本発明の範囲を制限するものではない。

【0044】
(実験例1)
Ba(OEt)2(高純度化学研究所社製、2Nup)とTi(OiPr)4(イソプロポキシチタン 高純度化学研究所社製、5N)を出発原料として、乾燥した窒素雰囲気中において、CH3OH/CH3OC24OH混合溶媒(体積比60/40)にBa:Ti=1:1のモル比でBaが2.5mol/kgとなるように溶解して高濃度の金属アルコキシド溶液を調製し、室温で約24時間攪拌した。次に、この高濃度の金属アルコキシド溶液にH2O/Ti=3の比率で水蒸気を720分間吹き付けて、金属アルコキシドを徐々に加水分解した。

【0045】
加水分解したアルコキシド溶液を流動パラフィン(関東化学社製、特級)の表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。界面にはアルコキシド溶液が展開した。この状態を72時間保持して、アルコキシドをゲル化した。

【0046】
濃度2質量%のポリ乳酸(Polysciences Inc.、MW40000~70000)のアセトン溶液を調製し、流動パラフィンの表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。ポリ乳酸は、アルコキシドゲルと流動パラフィンの界面に展開した。
図1にポリ乳酸のアセトン溶液を流動パラフィン上に滴下したときの様子、及びアルコキシドゲルが数分で不透明化したときの様子を示す。アルコキシドゲルは数日で透明化した。

【0047】
ヘキサンで流動パラフィンを洗い流し、残ったチタン酸バリウムゲルとポリ乳酸の積層膜を窒素ガス雰囲気中で数分間乾燥させて、透明チタン酸バリウムゲルとポリ乳酸の積層膜を得た。図2のSEM写真に示すように、積層膜は、透明チタン酸バリウムゲルの厚みが600nm、ポリ乳酸の厚みが30nmであった。また、積層膜の展開面積が850mm程度であった。
図3は、積層膜が柔軟性を示すことを確認した写真である。

【0048】
つぎに、チタン酸バリウムゲルとポリ乳酸の積層膜を大気雰囲気中で加熱速度600℃/分で昇温し、950℃で10分間加熱して焼結した。ポリ乳酸が焼失し、厚みが500nmのチタン酸バリウム焼結膜が得られた。なお、図4のSEM写真に示すように、アルコキシド溶液の滴下量を調節することで厚みが170nmのチタン酸バリウム焼結膜も作製できた。膜はチタン酸バリウム単相であり透明であった。また、膜は緻密化して高密度であった。チタン酸バリウム焼結膜の外観を図5に示す。
更に、アルコキシド溶液の滴下量を制御することによって、10nm以上100nm未満の実用的厚み、更に1nm~10nmの極限厚みのチタン酸バリウム焼結膜が製造できる。この場合でも製造時には高分子化合物膜が積層されているので、作業に必要な強度を有する金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜となる。

【0049】
チタン酸バリウム焼結膜の誘電率及び誘電損失の周波数依存性を測定した結果を図6に、温度依存性を測定した結果を図7に示す。
また、図12には、500℃で加熱処理した透明チタン酸バリウムゲルの厚みが40nmの例を示すが、高分子化合物膜は除去され、プレパラート(例えば、ガラス板)の上に載置されている。

【0050】
(実験例2)
Sr(OEt)2(高純度化学研究所社製、2Nup)とTi(OiPr)4(高純度化学研究所社製、5N)を出発原料として、乾燥した窒素雰囲気中において、(CH32CHOH/CH3OC24OH混合溶媒(重量比15/1)にSr:Ti=1:1のモル比で、Srが0.3mol/kgとなるように溶解して金属アルコキシド溶液を調製し、室温で約12時間攪拌した。このSr-Tiアルコキシド溶液にH2O/Ti=2.5の比率で水蒸気を720分間吹き付けて、Sr-Tiアルコキシドを徐々に加水分解した。次に、加水分解したSr-Tiアルコキシド溶液を真空中で2mol/kgの濃度になるまで減圧濃縮した。

【0051】
濃縮したSr-Tiアルコキシド溶液を流動パラフィン(関東化学社製、特級)の表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。界面にはSr-Tiアルコキシド溶液が展開した。この状態を10分保持して、Sr-Tiアルコキシドをゲル化した。

【0052】
一方、実験例1で調製したBa(OEt)2とTi(OiPr)4を出発原料として用いた加水分解したアルコキシド溶液を、流動パラフィンの表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。Sr-Tiアルコキシドゲルと流動パラフィンの界面にBa-Tiアルコキシド溶液が展開した。

【0053】
ヘキサンで流動パラフィンを洗い流し、残ったチタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を窒素ガス雰囲気中で数分間乾燥させて、透明なチタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を得た。

【0054】
つぎに、チタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を真空中で加熱速度600℃/分で昇温し、850℃で10分間加熱して焼結した。その後、大気中で加熱速度600℃/分で昇温し、850℃で10分間加熱して再酸化処理を行った。
図8に、BaTiO3/SrTiO3積層膜の表面(図8中、左半分)と側面(図8中、右半分)のSEM写真(二次電子像 加速電圧1kV)を示す。また、図9に図8と同じ場所のSEM写真(反射電子像 加速電圧1kV)を示す。図9より、数十nm以下の薄いBaTiO3がSrTiO3膜表面を覆っており、二層膜であることが分かる。

【0055】
(実験例3)
Sr(OEt)2(高純度化学研究所社製、2Nup)とTi(OiPr)4(高純度化学研究所社製、5N)とNb(OEt)(高純度化学研究所社製、4N)を出発原料として、乾燥した窒素雰囲気中において、(CH32CHOH/CH3OC24OH混合溶媒(重量比15/1)にSr:Ti:Nb=1:0.9:0.1のモル比で、Srが0.3mol/kgとなるように溶解してNbドープSr-Tiアルコキシド溶液を調製し、室温で約12時間攪拌した。このNbドープSr-Tiアルコキシド溶液にH2O/Ti=2.5の比率で水蒸気を720分間吹き付けて、金属アルコキシドを徐々に加水分解した。
次に、加水分解したNbドープSr-Tiアルコキシド溶液を真空中で2mol/kgの濃度になるまで減圧濃縮した。

【0056】
濃縮したNbドープSr-Tiアルコキシド溶液を流動パラフィン(関東化学社製、特級)の表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。界面にはNbドープSr-Tiアルコキシド溶液が展開した。この状態を10分保持して、NbドープSr-Tiアルコキシドをゲル化した。

【0057】
一方、実験例1で調製したBa(OEt)2とTi(OiPr)4を出発原料として用いた加水分解したアルコキシド溶液を、流動パラフィンの表面1cm当たり0.2mlの割合で流動パラフィンと窒素界面に滴下した。NbドープSr-Tiアルコキシドゲルと流動パラフィンの界面にBa-Tiアルコキシドゲルが展開した。

【0058】
ヘキサンで流動パラフィンを洗い流し、残ったニオブドープチタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を窒素ガス雰囲気中で数分間乾燥させて、透明なニオブドープチタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を得た。

【0059】
つぎに、ニオブドープチタン酸ストロンチウムゲルとチタン酸バリウムゲルの積層膜を真空中で加熱速度600℃/分で昇温し、850℃で10分間加熱して焼結した。その後、大気中で加熱速度600℃/分で昇温し、850℃で10分間加熱して再酸化処理を行った。

【0060】
図10に、Nb:SrTiO3(ニオブドープチタン酸ストロンチウム)膜のエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトルを示す。NbがSrTiO3にドープされていることが分かる。また、図11に、Nb:SrTiO3膜の電流-電圧特性を示す。Nb:SrTiO3膜が良好な導電性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜の製造方法、金属酸化物ナノ薄膜の製造方法、及び金属酸化物膜と高分子化合物膜の積層ナノ薄膜によって、より小型で大容量のコンデンサを製造できる。また、金属酸化物ナノ薄膜を分離膜やガスセンサーの材料に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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