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明細書 :骨芽細胞の調製方法及び骨芽細胞誘導剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 骨芽細胞の調製方法及び骨芽細胞誘導剤
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
FI C12N 5/071
国際予備審査の請求
全頁数 30
出願番号 特願2016-513843 (P2016-513843)
国際出願番号 PCT/JP2015/061893
国際公開番号 WO2015/159982
国際出願日 平成27年4月17日(2015.4.17)
国際公開日 平成27年10月22日(2015.10.22)
優先権出願番号 2014086757
優先日 平成26年4月18日(2014.4.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】山本 健太
【氏名】岸田 綱郎
【氏名】山本 俊郎
【氏名】松田 修
出願人 【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB04
4B065BB12
4B065CA44
4B065CA46
要約 本発明は、骨欠損の修復や、骨吸収、骨折や骨粗しょう症などに対する治療に応用可能で、癌化の危険性がない骨芽細胞を調製する方法を提供することを課題とする。
斯かる課題を解決する手段として、哺乳動物の分化した体細胞を培地中、(1)スタチン化合物、(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、(3)cAMP誘導剤及び(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養して前記体細胞を骨芽細胞に変換することを特徴とする、骨芽細胞を調製する方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物の分化した体細胞を培地中、
(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養して前記体細胞を骨芽細胞に変換することを特徴とする、骨芽細胞を調製する方法。
【請求項2】
前記体細胞が線維芽細胞、歯肉細胞または脂肪細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地が、骨芽細胞の誘導培地である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物のを含む、分化した体細胞を骨芽細胞に誘導するための誘導剤。
【請求項5】
(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに、培地を含む分化した体細胞を骨芽細胞に誘導するためのキット。
【請求項6】
前記培地が、骨芽細胞の誘導培地である、請求項5に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨芽細胞の調製方法及び骨芽細胞誘導剤に関する。さらに、本発明は体細胞を骨芽細胞に誘導するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症に伴う骨折、関節リウマチに伴う関節破壊、重度外傷や骨腫瘍切除に伴う広範囲骨欠損、重度歯周病に伴う歯槽骨吸収等、さまざまな疾患で骨のリモデリングが十分に機能せずに、骨破壊が進行したり骨欠損が残存する例がある。特に高齢者では、骨折後の骨再生が遅延して障害や長期臥床に陥る例も多く、医療上、社会上の大きな問題となっている。
【0003】
骨芽細胞は、骨の形成とリモデリングに中心的な役割を果たす細胞である。骨粗鬆症や関節リウマチでは破骨細胞が活性化することで骨密度及び強度が低下するが、骨芽細胞数や機能を増強させることができれば有用な予防又は治療法となり得る。また、骨欠損病変に自家骨髄細胞を移植する治療が行われており、骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞が、骨再生を促進すると考えられる。しかしながら、骨髄採取の際の患者に対する侵襲が大きく、また、得られる細胞数が不十分な例が多いのが現状である。もし、患者由来の骨芽細胞を多数調整して骨欠損部位に自家移植できれば、上記疾患に対する効果的な治療法となる可能性がある。
【0004】
非特許文献1は、ヒトES細胞へのOsterixのLentivirusベクター導入+Osteogenic培地での骨芽細胞への分化誘導を行っているが、このような遺伝子導入による骨芽細胞の誘導では、癌化の危険性があった。
【0005】
ES細胞や、MC3T3-E1細胞、骨髄間質細胞などの骨芽細胞の前駆細胞は、種々の化合物により骨芽細胞への分化、石灰化、骨関連タンパク質の産生を誘導することが報告されている。
【0006】
非特許文献2,3は、骨芽細胞の前駆細胞であるMC3T3-E1にスタチン化合物を作用させて骨芽細胞に分化誘導することを記載する。
【0007】
非特許文献4は、マウスES細胞にシンバスタチンを作用させて骨芽細胞に分化誘導することを記載する。
【0008】
非特許文献5は、マウス骨髄間質細胞にオキシステロールを作用させて骨芽細胞に分化誘導することを記載する。
【0009】
非特許文献6は、マウス骨髄間質細胞にフェナミルを作用させて骨芽細胞への分化と石灰化を誘導することを記載する。
【0010】
非特許文献7は、シンバスタチンとアトルバスタチンが初代ヒト骨芽細胞及び骨肉腫細胞株(MG63)におけるI型コラーゲン及びオステオカルシンの産生を促進することを記載する。
【0011】
非特許文献8は、シンバスタチンがヒト歯根膜幹細胞の骨芽細胞への分化を誘導することを記載する。
【0012】
非特許文献9は、各種スタチン化合物が骨密度を増大させることを開示する。
【0013】
これらの先行技術文献はすべて、ES細胞、骨髄間質細胞、歯根膜細胞のような、もともと骨芽細胞に分化する能力のある細胞を骨芽細胞に誘導した技術、あるいはすでに骨芽細胞である細胞の骨形成能を増強した技術として開示されたものである。
【先行技術文献】
【0014】

【非特許文献1】Karner E et al. J Cell Physiol. 2009.
【非特許文献2】T. Maeda et al. Journal of Cellular Biochemistry 92: 458-471 (2004)
【非特許文献3】T. Maeda et al. Biochem Biophys Res Commun 280: 874-877 (2001)
【非特許文献4】Ling Juan Qiao et al. Mol. Cells 32, 437-444 (2011)
【非特許文献5】Tara L. Aghaloo et al. Journal of Ortho paedic Research 2007, 1488-1497
【非特許文献6】Kye Won Park et al. Mol. Cell. Biol. vol.29, 2009, p.3905-3914
【非特許文献7】Silvia Ruiz-Gaspa et al. Journal of Cellular Biochemistry 101: 1430-1438 (2007)
【非特許文献8】Bing-jiao Zhao et al. Fundamental & Clinical Pharmacology (2013), 1-10
【非特許文献9】B. Uzzan et al. Bone 40 (2007) 1581-1587
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、分化した体細胞を遺伝子導入を行うことなく骨芽細胞に変換する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
スタチン化合物などの低分子化合物を用いて本来骨芽細胞になる能力のない正常体細胞をリプログラムして骨芽細胞にした報告はない。スタチン化合物などが、骨芽細胞に分化する能力のある細胞を骨芽細胞に誘導する、あるいはすでに骨芽細胞である細胞の骨形成能を増強することが公知であっても、本来骨芽細胞になる能力のない体細胞をリプログラムして骨芽細胞にできるかどうかは別問題であり、本発明は、上記の非特許文献から予想できないものである。つまり、骨芽細胞への分化能を有する細胞が骨芽細胞に分化する機構と、無関係の細胞を骨芽細胞に強制的に運命転換する機構は、同一であるという保証はないので、同じ化合物が両方を行うことができるかどうかは、実験してみなければわからない。実際たとえば、ES細胞を心筋細胞に分化誘導する化合物が知られているが、この化合物をつかって線維芽細胞を心筋細胞に転換したという報告はない(Minami I, et al. Cell Rep. 2012 Nov 29;2(5):1448-60.)。
【0017】
本発明は、以下の骨芽細胞の調製方法、骨芽細胞誘導剤及びキットを包含する。
【0018】
項1、哺乳動物の分化した体細胞を培地中、
(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養して前記体細胞を骨芽細胞に変換することを特徴とする、骨芽細胞を調製する方法。
【0019】
項2、前記体細胞が線維芽細胞、歯肉細胞または脂肪細胞である、項1に記載の方法。
【0020】
項3、前記培地が、骨芽細胞の誘導培地である、項1または2に記載の方法。
【0021】
項4、(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物のを含む、分化した体細胞を骨芽細胞に誘導するための誘導剤。
【0022】
項5、(1)スタチン化合物、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに、培地を含む分化した体細胞を骨芽細胞に誘導するためのキット。
【0023】
項6、前記培地が、骨芽細胞の誘導培地である、項5に記載のキット。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、低分子化合物の作用により分化した体細胞から短期間で骨芽細胞を提供できる。この骨芽細胞は、移植する本人の体細胞から容易に誘導できるので、骨芽細胞自体又はそれから作製した骨組織を移植した場合にも免疫学的な拒絶応答などの問題は生じない。また、iPS細胞やES細胞を経由することなく直接体細胞から骨芽細胞を誘導できるため、癌化などの多能性幹細胞に起因する問題を回避できる。一方で、あらかじめ作成してバンク化しておき、そこから患者へのアロ移植や異種移植に使うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】Alizarin Red S染色像を示す。(28 days)
【図2】Alizarin Red S染色像を示す。(28 days)
【図3】Alizarin Red S染色強度を示す。
【図4】Alizarin Red S染色像を示す。(28 days)
【図5】Alizarin Red S染色強度を示す。
【図6】Alizarin Red S染色像及び染色強度を示す。
【図7】Alizarin Red S染色像及び染色強度を示す。
【図8】リアルタイムRT-PCRによる、Runx2、Osteocalcin (OC)およびALPのmRNA発現量を示す。図中、FBs: Fibroblasts、OBs: Osteoblasts、SS: Simvastatinを添加して培養した細胞、SS+D: SimvastatinとD4476を添加して培養した細胞;をそれぞれ示す。
【図9】DNAマイクロアレイの結果を示す。
【図10】Alizarin Red S染色強度を示す。(28 days)
【図11】Alizarin Red S染色像及び強度を示す。(28 days)
【図12】Alizarin Red S染色像及び強度を示す。(28 days)
【図13】リアルタイムRT-PCRによる、ALP mRNAの発現量を示す。(28 days)
【図14】リアルタイムRT-PCRによる、ALP mRNAの発現量を示す。(28 days)
【図15】リアルタイムRT-PCRによる、ALP mRNAの発現量を示す。(28 days)
【図16】リアルタイムRT-PCRによる、Osteocalcin(OC)の発現量を示す。(28 days)
【図17】リアルタイムRT-PCRによる、Runx2の発現量の測定結果を示す。(28 days)
【図18】リアルタイムRT-PCRによる、Osterixの発現量の測定結果を示す。(28 days)
【図19】Alizarin Red S染色像及び強度を示す。(28 days)
【図20】DNAマイクロアレイの結果を示す。図中、FBs: Fibroblasts、OBs: Osteoblasts、SS: Simvastatinを添加して培養した細胞、SS+D: SimvastatinとD4476を添加して培養した細胞;をそれぞれ示す。
【図21】生体内骨形成を示す(μCTイメージ)。(左図:Fibroblasts)骨欠損を作ったのち、線維芽細胞を移植した大腿骨。アローヘッドは、人工骨欠損を作り移植した部位に、骨欠損が残存していることを示す。(右図:SS+D)骨欠損を作った後、SimvastatinとD4476を添加して培養した細胞を移植した大腿骨。黒矢印は、人工骨欠損を作って移植した部位に、再生骨が作られて欠損が修復されていることを示す。白矢印は骨、周囲に移植した部位に、再生骨が作られていることを示す。アローヘッドは、人工骨欠損を作り移植した部位に、骨欠損が残存していることを示す。
【図22】生体内骨形成を示す(HE staining及びAlizarin Red S staining)。FBs:骨欠損を作ったのち、線維芽細胞を移植した大腿骨。SS+D:骨欠損を作った後、SimvastatinとD4476を添加して培養した細胞を移植した大腿骨。三角印は人工骨欠損を作って移植した部位を示し、骨欠損が残存している。矢印は、人工骨欠損を作って移植した部位を示し、再生骨が作られて欠損が修復されている。
【図23】Alizarin Red S染色像を示す。(ヒト正常白色脂肪前駆細胞、21days)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、分化した体細胞の培地に(1)スタチン化合物、(2)カゼインキナーゼ阻害剤、(3)cAMP誘導剤及び(4)ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の低分子化合物を共存させることで分化した体細胞から骨芽細胞を得ることを特徴とする。

【0027】
本発明の方法で骨芽細胞にダイレクト・リプログラミングされる分化した体細胞としては、骨芽細胞を含まない限り特に限定されないが、例えば線維芽細胞、ケラチノサイト、口腔粘膜上皮細胞、気道粘膜上皮細胞、胃粘膜上皮細胞、腸管粘膜上皮細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、歯肉細胞(歯肉線維芽細胞、歯肉上皮細胞)、白血球、リンパ球、筋細胞、結膜上皮細胞、破骨細胞などが挙げられ、好ましくは線維芽細胞、ケラチノサイト、口腔粘膜上皮細胞、歯肉細胞、白血球、リンパ球、破骨細胞、脂肪細胞などが挙げられる。

【0028】
本発明の方法においてさらに他の化合物を併用して骨芽細胞へのダイレクト・リプログラミングを促進し得る。このような化合物としては、(i)iPS細胞誘導や細胞リプログラミングを促すような低分子化合物、(ii)Oct4を誘導する化合物、(iii)メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤などのエピジェネティック制御化合物が挙げられる。

【0029】
スタチン化合物としては、HMG-CoA還元酵素阻害剤を広く包含し、特に限定されないが、例えばシンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、ジヒドロコンパクチン、コンパクチン、ベルバスタチン、カルバスタチン、クリルバスタチン、ダルバスタチン、グレンバスタチン、フルインドスタチン、ベロスタチン、メバスタチン、リバスタチン、シリバスタチン、CI-981などが挙げられる。今後開発されるスタチン化合物は全て本発明のスタチン化合物に包含される。

【0030】
本発明を束縛するものではないが、スタチン化合物は、特にRunx2遺伝子の発現量増大等を介して、骨芽細胞へのダイレクトリプログラミングを促進すると考えられる。また、カルシウム沈着の促進にも寄与すると考えられる。

【0031】
カゼインキナーゼ阻害剤は、カゼインキナーゼ1、カゼインキナーゼ2などのサブタイプが存在するカゼインキナーゼに対する阻害剤を広く包含する。骨芽細胞を誘導する効果が高いとの観点から、カゼインキナーゼ1阻害剤が好ましい態様として挙げられる。

【0032】
カゼインキナーゼ1阻害剤としては、D4476、IC261、CK1-7、A3、SB-431542、DRB、ハイメニアルディシン、マタイレジノール、5-ヨードツベルジシン、メリジアニン、SB-203580などの化合物(カゼインキナーゼ1を特異的に阻害する化合物を含む。)が、好適な例として挙げられる。

【0033】
その他、ファスジル、ヒドロキシファスジル、フェンレチニド、PKZ-ζペプチド偽基質、ジメチルスフィンゴシン、CVS-3989、AG1024、648450、K252a、C3トランスフェラーゼ、553502、LY333531、ルボキシスタウリン、Go-6976、IWR-1-endo(IWR1e)、IWP-2などのカゼインキナーゼ1を阻害する活性を有する化合物も挙げられる。

【0034】
カゼインキナーゼ2阻害剤としては、CX-4945が例示される。

カゼインキナーゼ1阻害剤としては、上記の化合物に替えてその誘導体を使用することもできる。誘導体は、必ずしも、カゼインキナーゼを阻害する活性を有さなくてもよい。例えば、カゼインキナーゼ1阻害剤であるD4476(4-[4-(2,3-dihydro-1,4-benzodioxin-6-yl)-5-(2-pyridinyl)1H-imidazol-2-yl]-benzamide)に替えて、WO00/61576号に記載の下記式(I)で表されるD4476の誘導体を使用することができる:

【0035】
【化1】
JP2015159982A1_000002t.gif

【0036】
[式中、R1は、ハロゲン、C1-6アルコキシ(-O-C1-6アルキル)、C1-6アルキルチオ(-S-C1-6アルキル)、C1-6アルキル、-O-(CH2)n-Ph、-S-(CH2)n-Ph、シアノ、フェニル(Ph)、およびCO2R(ここで、Rは、水素またはC1-6アルキルであり、nは、0、1、2または3である)からなる群から選択される1個またはそれ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル、アントラセニル、またはフェニルであるか;またはR1は、N、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含有していてもよい5~7員の芳香環または非芳香環と縮合したフェニルであり;
2は、H、NH(CH2)n-PhまたはNH-C1-6アルキルであり(ここで、nは、0、1、2または3である);
3は、CO2H、CONH2、CN、NO2、C1-6アルキルチオ、-SO2-C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、SONH2、CONHOH、NH2、CHO、CH2OH、CH2NH2、またはCO2Rであり(ここで、Rは、水素またはC1-6アルキルである);
1およびX2のうち一方は、NまたはCR'であり、他方は、NR'またはCHR'である(ここで、R'は、水素、OH、C1-6アルキル、またはC3-7シクロアルキルである)か;またはX1およびX2のうち一方がNまたはCR'である場合、他方は、SまたはOであってもよい]。

【0037】
1-6アルキルとしては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~6のアルキル、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルを挙げることができる。

【0038】
3-7シクロアルキルとしては、炭素数3~7のシクロプロピル、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルが挙げられる。

【0039】
1が、N、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含有していてもよい5~7員の芳香環または非芳香環と縮合したフェニルである場合、具体例としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾリル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニルが挙げられる。

【0040】
このようなD4476の誘導体として、下記の化合物が例示される:
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-(2-ピリジル)-1-ヒドロキシ-1H-イミダゾール-2-イル]ベンゾニトリル;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンゾニトリル;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]安息香酸;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]安息香酸メチル;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]安息香酸エチル;
4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-1-ヒドロキシ-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンゾニトリル;
4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンゾニトリル;
4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)安息香酸;
2-[4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-イミダゾール-5-イル]ピリジン;
3-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)フェニルアミン;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-1H-イミダゾール-5-イル]ピリジン;
4-[4-(4-フルオロフェニル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)フェニルアミン;
4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)フェニル]メタノール;
4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンズアミド;
4-[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンゾニトリル;
4-[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-5-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド;
3-[4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)ベンゾニトリル;
4-[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-6-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンゾニトリル;
4-[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフラン-6-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド;
3-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)安息香酸;
4-[4-(4-メトキシフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンゾニトリル;
4-[4-(2,2-ジフルオロ-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド;
4-[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-1-メチル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド;
4-[5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-1-メチル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド;
4-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-オキサゾール-2-イル)ベンゾニトリル;
4-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-オキサゾール-2-イル)ベンズアミド;および 4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-ピロール-2-イル)ベンズアミド。

【0041】
本発明を束縛するものではないが、カゼインキナーゼ1阻害剤は、特にALP(アルカリフォスファターゼ)の発現量増大、カルシウム沈着の促進等を介して、骨芽細胞へのダイレクトリプログラミングを促進すると考えられる。

【0042】
cAMP誘導剤(アデニル酸シクラーゼ活性化剤と換言することもできる。)としては、アデニル酸シクラーゼの活性化作用により細胞内のcAMP(サイクリックAMP)レベルを上昇させる化合物を広く包含し、例えば、フォルスコリン(FRK)、イソプロテレノールなどが挙げられる。

【0043】
本発明を束縛するものではないが、cAMP誘導剤は、特にRunx2遺伝子の発現量増大等を介して、骨芽細胞へのダイレクトリプログラミングを促進すると考えられる。また、カルシウム沈着の促進にも寄与すると考えられる。

【0044】
ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤としては、DZNep(3-deazaneplanocin A)、BIX-01294などが挙げられる。

【0045】
本発明を束縛するものではないが、cAMP誘導剤は、特にカルシウム沈着の促進等を介して、骨芽細胞へのダイレクトリプログラミングを促進すると考えられる。

【0046】
培地中のスタチン化合物の濃度としては、骨芽細胞を誘導できる限り特に限定されないが、例えば100pM~10μM程度、好ましくは500pM~5μM程度、より好ましくは1nM~1μM程度、さらに好ましくは10-100nM程度である。

【0047】
培地中のカゼインキナーゼ1阻害剤の濃度としては、骨芽細胞を誘導できる限り特に限定されないが、例えば0.01~100μM程度、好ましくは0.1~50μM程度、より好ましくは1~10μM程度である。

【0048】
培地中のcAMP誘導剤の濃度としては、骨芽細胞を誘導できる限り特に限定されないが、例えば0.01~100μM程度、好ましくは0.1~50μM程度、より好ましくは1~10μM程度、である。

【0049】
培地中のヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤の濃度としては、骨芽細胞を誘導できる限り特に限定されないが、例えば100pM~50μM程度、好ましくは1nM~10μM程度、より好ましくは5nM~1μM程度、さらに好ましくは10~100nM程度である。

【0050】
上記培地中に共存させる低分子化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合、組み合わせは特に限定されない。骨芽細胞を誘導をできる効果が高いとの観点から、スタチン化合物とカゼインキナーゼ1阻害剤との組み合わせが、好ましい組み合わせとして例示される。無論、スタチン化合物とカゼインキナーゼ1阻害剤との組み合わせに、さらにcAMP誘導剤及び/又はヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を組み合わせてもよい。

【0051】
2種以上の低分子化合物を組み合わせて用いて場合、培養期間中に2種以上を同時に共存させても、培養期間中の部分毎に異なる低分子化合物(複数可)を使用してもよい。また、1種以上の低分子化合物を添加して培養した細胞と、別の1種以上の低分子化合物を添加して培養した細胞とを混合してもよい。

【0052】
骨芽細胞を誘導するための培地としては、特に限定されないが、誘導培地が好ましい。誘導培地としては、アスコルビン酸;β-Glycerophosphate;デキサメタゾン及びヒドロコルチゾンなどの糖質コルチコイドからなる群から選択される少なくとも1種;血清成分(Fetal Bovine Serum(FBS)、Human serum(HS)など);ストレプトマイシンなどの抗生剤等を通常の液体培地(DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、EMEM(Eagle's minimal essential medium)など。)に添加したものが例示される。より具体的には、例えばDMEMなどの通常培地に50 μg/mlアスコルビン酸、10 mM β-Glycerophosphate、100 nMデキサメタゾン(いずれも最終濃度)、10%FBS若しくは5%HS、さらに必要に応じて1%抗生剤、1%NEAA(Non-Essential Amino Acid)を加えたものが挙げられる。

【0053】
培養温度は37℃程度であり、培養期間は1~6週間程度、好ましくは2~5週間程度、より好ましくは3~4週間程度である。

【0054】
また、培地には、DMSOなどの溶媒を使用してもよい。

【0055】
本発明のキットは、骨芽細胞の培地とスタチン化合物、さらに必要に応じてカゼインキナーゼ阻害剤、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤などが含まれる。

【0056】
本発明により、前骨芽細胞、未熟骨芽細胞、成熟骨芽細胞、骨細胞等を調製することができる。本明細書では簡単のためこれらをすべて骨芽細胞と呼ぶ。

【0057】
本発明により得られる骨芽細胞(移植材料)を用いて治療する対象となる疾患としては、骨腫瘍、外傷や骨髄炎等にともなう骨欠損、また骨腫瘍等の掻爬後の骨欠損、骨折、骨粗しょう症、歯周病、歯槽骨吸収、関節リウマチ、突発性大腿骨頭壊死、変形性関節症、腰椎変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎分離症、脊椎分離すべり症、脊椎側弯症、頸椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、脊髄損傷、変形性股関節症、変形性膝関節症、大腿骨頭すべり症、骨軟化症、下顎再建術などの複雑骨折により破壊された骨折部位の再建術、手術後の骨の修復(心臓手術後の胸骨の修復など)、人工足関節手術に伴う欠損部の修復、骨髄炎、骨壊死などが挙げられる。また、骨芽細胞を移植すれば、骨移植、人工骨移植、人工関節やインプラントと併用し治療効果を高められる可能性がある。また骨芽細胞を3次元的なスキャホルド等を用いて培養して種々な形態の骨組織を体外で作成し、その骨組織を移植するによって、上記の疾患の治療を行うこともできる。それ以外にも骨芽細胞の欠損、不足もしくは機能低下に関係するさまざまな疾患が対象となる。

【0058】
本明細書において、特に明示のない限り、「治療」という用語は、患者が特定の疾患又は障害を患っている間に行う処置を意図し、これによって疾患若しくは障害の重症度、又は1つ若しくは複数のその症状が軽減されるか、又は疾患若しくは障害の進行が遅延又は減速することを意味する。本明細書において、「治療」には「予防」を含むものとする。

【0059】
本発明で得られる骨芽細胞はまた、疾患の治療に限らず、美容目的で用いることもできる。例えば事故や手術などにより欠損した部位に骨芽細胞もしくはそれにより作製された骨組織を移植することで、骨基質を産生させて欠損部位を修復し、ふっくらさせて目立たなくすることができる。その際、ヒトに対する処置も、本明細書では便宜上治療と呼び、「患者」は「健常者」あるいは「ヒト」、「疾患」は「美容」と読み替えることができる。

【0060】
本発明はまた、ヒトだけでなく、イヌ、ネコ等の愛玩動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜を含む哺乳動物の疾患の治療にも用いることが可能である。その場合、「患者」を「患畜」あるいは「哺乳動物」と読み替えることとする。

【0061】
移植材料とは、骨組織の修復、再建のために生体内に導入する、骨芽細胞を含有する材料をいう。移植材料は、インビトロで部分的もしくは完全に骨組織を再生させて、同一または別の個体に移植する材料を包含する。本発明で得られた骨芽細胞は、移植材料の作製に使用することができる。骨芽細胞自体も移植材料になる。したがって、骨芽細胞を細胞製剤として患者に移植することもできるし、ヒドロキシアパタイトや生体吸収性セラミックなどの人工材料からなる基材(スキャホルド)とともに移植したり、スキャホルドとともに培養してから移植することができる。これらの場合、スキャホルドは移植目的に応じて様々な3次元的な形状を作らせることができる。

【0062】
体細胞は、哺乳動物由来であればよい。骨芽細胞を生体に移植する場合には、移植される被験体由来の体細胞(自家細胞)を用いることが、感染や拒絶応答等の危険を低減させるために好ましい。しかしながら、突然の骨折などに対して移植するなどの目的の場合、自家細胞でなく、他人や他の動物の体細胞からあらかじめ準備しておいた骨芽細胞を移植に用いることができる。またはあらかじめ準備しておいた他人や他の動物の体細胞から骨芽細胞を作り、移植に用いることができる。すなわち、骨芽細胞バンク、または骨芽細胞前駆細胞のバンクを作っておき移植目的に供することができる。このような場合、拒絶応答等の危険を低減させるために、あらかじめMHCをタイピングしておくことができる。また、あらかじめ骨芽細胞のキャラクターや造腫瘍性などを確認しておくことができる。

【0063】
本明細書において、哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ヒト、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタなどが挙げられ、特にヒトが挙げられる。

【0064】
本発明はまた、骨芽細胞を用いたさまざまな研究や技術開発等に用いることができる。たとえば骨の発生と老化、形態形成、リモデリングの機構、これらに対する力学的ストレス、栄養、免疫、神経、ホルモンの影響の解析などの基礎研究に有用である。またストロンチウム90等の放射性物質の内部被爆における骨への影響の解析と骨からのストロンチウム90の除去技術の開発等にも有用である。

【0065】
本発明を用いれば、さまざまな疾患や遺伝的背景を有するヒトや動物から簡便、迅速、安価に骨芽細胞を樹立できるので、疾患や遺伝的背景に関連した骨芽細胞の異常を生化学的、分子生物学的、免疫学的等手法により解析することが可能であり、これにより疾患の発症機序の解明などの研究や診断法の開発に役立てることができる。またこのような骨芽細胞を用いて、薬剤の開発、薬剤の毒性試験等を行えば、種々の疾患に対する新規治療法の開発に役立てることができる。

【0066】
骨芽細胞が得られたことは、ALP(アルカリフォスファターゼ)、オステオカルシン(Osteocalcin、OC) 、オステオポンチン(Osteopontin)、Runx2のmRNAのリアルタイムPCRによる測定、アリザリンレッドSによる染色(ミネラル化した骨基質の産生)、などにより確認することができる。

【0067】
Runx2は骨形成において必須の転写因子である。Runx2は、生体での間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化において必要不可欠な役割を果たしている。間葉系幹細胞へのRunx2の強制発現は、OC(オステオカルシン)、BSP(Bone sialo-protein)、ALP(アルカリフォスファターゼ)、COL1A1等の骨芽細胞特異的遺伝子を増大させる。Runx2 KOマウスは、成熟骨芽細胞の喪失から完全に膜性骨化も軟骨内骨化も示さない。しかし、このマウス由来の間葉系幹細胞は、脂肪細胞と軟骨細胞への誘導能は有している。

【0068】
ALP(アルカリフォスファターゼ)は、骨芽細胞の早期から中期分化マーカーである。骨芽細胞の膜表面と骨芽細胞より分泌される基質小胞に多く含まれ、石灰化基質産生の開始に関与する。

【0069】
オステオカルシン(Osteocalcin、OC)は骨芽細胞特異的に発現し、骨形成の促進に寄与すると考えられている。

【0070】
アリザリンレッドSによる染色やvon Kossa染色は、骨形成の重要な要素の一つである、ミネラル化した骨基質の産生、すなわちカルシウムの沈着を検出することができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例だけに限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1
1-1、Alizarin Red S染色(図1)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、5×104 細胞/ウェルの濃度で35 mm培養ディッシュに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)、または、100 nMのシンバスタチン(SS)と1μMのDZnepを添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した。誘導培地の組成は、50 μg/ml アスコルビン酸、10 mM β-Glycerophosphate、100 nM dexamethasone(いずれも最終濃度)、10% FBS、1% 抗生剤、1% NEAA 、α-MEMである。標準条件とは、37°C、5%CO2, 95% humidified airである。約4日に1回培地交換を行い、28日間培養した。培養ディッシュから培養液を吸引除去し、蒸留水で2回洗浄を行い、10%ホルマリンで固定。滅菌蒸留水で洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で20分間静置。滅菌蒸留水で洗浄した後、肉眼および顕微鏡で観察した。結果を図1に示す。赤い染色は石灰化骨基質を示している。SS、またはSSとDZnepの添加により、線維芽細胞が石灰化骨基質を多量に産生する骨芽細胞に転換したことがわかる。
【実施例】
【0073】
1-2、Alizarin Red S染色(図2-3)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、24-well plateに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)と、種々の濃度のハイドロキシコルチゾンおよびβ-グリセロフォスフェイトを添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した(表中、〇は各濃度の化合物を添加したことを示す)。約4日に1回培地交換を行い、28日間培養した。プレートから培養液を吸引除去し、蒸留水で2回洗浄を行い、10%ホルマリンで固定。滅菌蒸留水で洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で静置。20分後、染色反応液を回収した後、滅菌蒸留水で洗浄した、肉眼および顕微鏡で観察した。結果を図2に示す。また各ウェルから回収した染色反応液の吸光度(550 nm)をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。結果を図3に示す。100 nMのシンバスタチン(SS)は、ハイドロキシコルチゾンとβ-Glycerophosphate の存在下に、線維芽細胞を骨芽細胞に転換すること、その際ハイドロキシコルチゾンは125~4000 nM、β-Glycerophosphate は10~20 μMの濃度であることが望ましいことが分かる。
【実施例】
【0074】
1-3、Alizarin Red S染色(図4-5)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、24-well plateに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)と、種々の濃度のデキサメサゾン(Dex)およびβ-グリセロフォスフェイトを添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した(表中、〇は各濃度の化合物を添加したことを示す)。約4日に1回培地交換を行い、28日間培養した。プレートから培養液を吸引除去し、蒸留水で2回洗浄を行い、10%ホルマリンで固定。滅菌蒸留水で洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で静置。20分後、染色反応液を回収した後、滅菌蒸留水で洗浄した、肉眼および顕微鏡で観察した。結果を図4に示す。また各ウェルから回収した染色反応液の吸光度(550 nm)をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。結果を図5に示す。100 nMのシンバスタチン(SS)は、デキサメサゾンと、β-Glycerophosphate の存在下に、線維芽細胞を骨芽細胞に誘導すること、その際デキサメサゾンは25~800 nM、β-Glycerophosphate は10~20 μMの濃度であることが望ましいことが分かる。
【実施例】
【0075】
1-4、Alizarin Red S染色(図6)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、24-well plateに培養し、種々の濃度のシンバシタチン(SS)を添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した。約4日に1回培地交換を行い、28日間培養した。培養プレートから培養液を吸引除去し、蒸留水で2回洗浄を行い、10%ホルマリンで固定。滅菌蒸留水で洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で静置。20分後の染色反応液を回収した後、滅菌蒸留水で洗浄した、肉眼および顕微鏡で観察した。また回収した染色反応液の吸光度(550 nm)をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。結果を図6に示す。シンバスタチンが骨芽細胞を誘導する望ましい濃度は10~100nMであることが分かる。
【実施例】
【0076】
1-5、Alizarin Red S染色(図7)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、24-well plateに培養し、種々の濃度のシンバスタチン(SS)とD4476(カゼインキナーゼインヒビター)を添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した。約4日に1回培地交換を行い、28日間培養した。その後培養プレートから培養液を吸引除去し、蒸留水で2回洗浄を行い、10%ホルマリンで固定。滅菌蒸留水で洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で静置。20分後の染色反応液を回収した後、滅菌蒸留水で洗浄した、肉眼および顕微鏡で観察した。また回収した染色反応液の吸光度(550 nm)をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。結果を図7に示す。100 nMのシンバスタチンに、2~5 μMのD4476が共存すると、骨芽細胞への誘導効率がより高まることが分かる。
【実施例】
【0077】
1-6、Real-time RT-PCR(図8)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、12-well plateに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)と種々の濃度のD4476(カゼインキナーゼインヒビター)を添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した(カッコ内の数字はμM)。約4日に1回培地交換を行い、21日間培養した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを作製した。Real-time PCR Master Mix、Taqman probes、Specific PrimersおよびcDNAを混和し、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行い、Runx2、オステオカルシン(OC)、アルカリフォスファターゼ(ALP)遺伝子のmRNAを定量した。コントロールとしてシンバスタチンを添加しない培養を行った線維芽細胞からRNAを採取し同様の解析を行った。またヒト骨芽細胞からRNAを採取し同様の解析を行った。結果を図8に示す。縦軸は、コントロールの細胞のmRNAレベルを1としたときの各遺伝子のmRNAの相対値である。100nMのシンバスタチンによって線維芽細胞から誘導された骨芽細胞が、Runx2、オステオカルシン(OC)、アルカリフォスファターゼ(ALP)を発現すること、また2~5 μMのD4476が共存すると、それらの発現が同等もしくはより高まることが分かる。
【実施例】
【0078】
1-7、DNA micro array(図9)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、60 mm培養ディシュに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)、または100 nMのシンバスタチンと2μMのD4476(SS+D4)を添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した。約4日に1回培地交換を行い、21日間培養した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収した。ヒト線維芽細胞(HDFs)とヒト骨芽細胞(OBs)からも同様にtotal RNAを回収した。各細胞のmRNA発現パターンをaffymetrix 社のDNAチップを用いてゲノムワイドに解析した。結果を図9に示す。SS、SS+D4とも、線維芽細胞よりも骨芽細胞に類似の網羅的遺伝子発現パターンを示し、SS+D4の方がSSよりもより骨芽細胞に類似の網羅的遺伝子発現パターンを示すことが分かる。
【実施例】
【0079】
実施例2
2-1、Alizarin Red S染色(図10)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、5×103 細胞/ウェルの濃度で24 well plateに播種した(day 0)。翌日、各wellの培養液を棄て、500 μl/wellの新しい培地に交換した。誘導培地はDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)、50 μg/mlアスコルビン酸、10 mM β-glycerophospahte、100 nM Dexamethasoneに10% ウシ胎仔血清(FBS)を添加したものである。また記載の小分子化合物を加えた。ただし、ASはAtorvastatin、LSはLovastatin、RSはRosuvastatin、PiSはPitavastatin、SSはSimvastatin、PrSはPravastatin、FSKはforskolinを示す。ASはLKT Laboratories(St Pau, USA)、LSはCayman chemical(Ann Arbor, USA)、RSはCayman chemical(Ann Arbor, USA)、PiSはCayman chemical(Ann Arbor, USA)、SSはSigma(St Louis, USA)、PrSは(Cayman chemical(Ann Arbor, USA)、FSKはSigma(St Louis, USA)からそれぞれ購入した。3~4日に1度、培養液を交換して培養した。
【実施例】
【0080】
本実施例で使用した化合物を下記に示す。
【実施例】
【0081】
【化2】
JP2015159982A1_000003t.gif
【実施例】
【0082】
【化3】
JP2015159982A1_000004t.gif
【実施例】
【0083】
培養28日後に、各wellの培養液を吸引し、PBS(-)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水にて3回洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で15分間incubateした。各ウェルから液を回収して96 well plateに移し、吸光度計にて吸光度(OD 550 nm-650 nm)を測定した。
【実施例】
【0084】
結果を図10に示す。AS、LS、RS、SS、PrS、FSK、D4476を添加した培養により、線維芽細胞に石灰化基質産生能が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0085】
また、10 nM PiSを添加した培養によっても、他のスタチン化合物と同様の結果が観察できた。
【実施例】
【0086】
2-2、Alizarin Red S染色(図11)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、5×103 細胞/ウェルの濃度で24 well plateに播種した(day 0)。翌日、各wellの培養液を棄て、500 μl/wellの新しい培地に交換した。誘導培地はDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)、50 μg/mlアスコルビン酸、10 mM β-glycerophospahte、100 nM Dexamethasoneに10% FBSを添加したものである。また記載の小分子化合物を加えた。3~4日に1度、培養液を交換して培養した。
【実施例】
【0087】
培養28日後に、各wellの培養液を吸引し、PBS(-)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水にて3回洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で15分間incubateした。各ウェルから液を回収して96 well plateに移し、吸光度計にて吸光度(OD 550 nm-650 nm)を測定した。また染色後のwellを滅菌蒸留水にて洗浄した後に写真撮影を行った。
【実施例】
【0088】
結果を図11に示す。赤い染色は石灰化骨基質を示している。D4476を添加した培養により、線維芽細胞に石灰化基質産生能が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0089】
2-3、Alizarin Red S染色(図12)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、5×103 細胞/ウェルの濃度で24 well plateに播種した(day 0)。翌日、各wellの培養液を棄て、500 μl/wellの新しい培地に交換した。誘導培地はDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)、50 μg/mlアスコルビン酸、10 mM β-glycerophospahte、100 nM Dexamethasoneに5% Human Serumを添加したものである。また記載の小分子化合物を加えた。3~4日に1度、培養液を交換して培養した。
【実施例】
【0090】
培養28日後に、各wellの培養液を吸引し、PBS(-)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水にて3回洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で15分間incubateした。各ウェルから液を回収して96 well plateに移し、吸光度計にて吸光度(OD 550 nm-650 nm)を測定した。また染色後のwellを滅菌蒸留水にて洗浄した後に写真撮影を行った。
【実施例】
【0091】
結果を図12に示す。赤い染色は石灰化骨基質を示している。D4476を添加した培養により、線維芽細胞に、より高い石灰化基質産生能が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0092】
2-4、Real-time RT-PCR(図13)
上記「2-1、」と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。
【実施例】
【0093】
培養28日後に、各wellから培養液を除去し、PBS(-)で洗浄した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。Real-time PCR Master Mixと、ヒトアルカリフォスファターゼ(ALP)遺伝子に特異的なTaqman probeとPrimersを加え、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。また、正常ヒト骨由来骨芽細胞からもtotal RNAを抽出し、同様に解析した。
【実施例】
【0094】
結果を図13に、正常ヒト線維芽細胞の値を1とした相対値で示す。AS、LS、RS、SS、PrS、D4476を添加した培養により、ALP遺伝子のmRNA発現が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0095】
2-5、Real-time RT-PCR(図14)
上記「2-1、」と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。
【実施例】
【0096】
培養28日後に、実施例3と同様の方法で、各wellの細胞のALP遺伝子のmRNA発現をReal-time RT-PCRで解析した。また、正常ヒト骨由来骨芽細胞からもtotal RNAを抽出し、同様に解析した。
【実施例】
【0097】
結果を図14に、正常ヒト線維芽細胞の値を1とした相対値で示す。SS、PrSをD4476と共に加えるとD4476単独よりもさらにALP発現を強く誘導したことがわかる。
【実施例】
【0098】
2-6、Real-time RT-PCR(図15)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、5×103 細胞/ウェルの濃度で24 well plateに播種した(day 0)。翌日、各wellの培養液を棄て、500 μl/wellの新しい培地に交換した。誘導培地はDulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)、50 μg/mlアスコルビン酸、10 mM β-glycerophospahte、100 nM Dexamethasoneに5% Human Serumを添加したものである。また記載の小分子化合物を加えた。3~4日に1度、培養液を交換して培養した。
【実施例】
【0099】
培養28日後に、上記「2-3、」と同様の方法で、各wellの細胞のALP遺伝子のmRNA発現をReal-time RT-PCRで解析した。また、正常ヒト骨由来骨芽細胞からもtotal RNAを抽出し、同様に解析した。
【実施例】
【0100】
結果を図15に、正常ヒト線維芽細胞の値を1とした相対値で示す。SS、PrSをD4476と共に加えると、D4476を単独で加えた場合よりもさらにALP発現を強く誘導したことがわかる。
【実施例】
【0101】
2-7、Real-time RT-PCR(図16)
上記「2-6、」と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。
【実施例】
【0102】
培養28日後に、各wellから培養液を除去し、PBS(-)で洗浄した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。Real-time PCR Master Mixと、ヒトオステオカルチン(OC)遺伝子に特異的なTaqman probeとPrimersを加え、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。
【実施例】
【0103】
結果を図16に示す。RS、PrSのいずれかを加えて培養すると、オステオカルチン遺伝子のmRNA発現が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0104】
2-8、Real-time RT-PCR(図17)
上記「1、」と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。
【実施例】
【0105】
培養28日後に、各wellから培養液を除去し、PBS(-)で洗浄した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。Real-time PCR Master Mixと、ヒトRunx2遺伝子に特異的なTaqman probeとPrimersを加え、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。
【実施例】
【0106】
結果を図17に示す。AS、LS、RS、SS、PrS、またはFSKを添加して培養することで、Runx2遺伝子のmRNA発現が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0107】
2-9、Real-time RT-PCR(図18)
上記「2-1、」と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。
【実施例】
【0108】
培養28日後に、各wellから培養液を除去し、PBS(-)で洗浄した。細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収し、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。Real-time PCR Master Mixと、ヒトOsterix遺伝子に特異的なTaqman probeとPrimersを加え、AB7300 Real-time PCR systemを用いてReal-time RT-PCRを行った。
【実施例】
【0109】
結果を図18に示す。FSKを添加して培養することで、Osterix遺伝子のmRNA発現が誘導されたことがわかる。
【実施例】
【0110】
2-10、Alizarin Red S染色(図19)
実施例1と同様の培養を、記載の化合物を添加して行った。DZnepは、Cayman chemical (Ann Arbor, USA)、CX-4945はBiovision(Zurich, Switzerland)から購入して用いた。
【実施例】
【0111】
培養28日後に、実施例2と同様の方法で、アリザリンレッドS染色を行い、吸光度(OD 550 nm-650 nm)の測定と写真撮影を行った。
【実施例】
【0112】
結果を図19に示す。D4476、FSK 、またはDZnepを添加した培養により、線維芽細胞に石灰化基質産生能が誘導されたことがわかる。CX-4945は影響を与えなかった。
【実施例】
【0113】
2-11、DNA micro array(図20)
ヒト正常皮膚線維芽細胞株HDFsを、60 mm培養ディシュに培養し、100 nMのシンバスタチン(SS)、または100 nMのシンバスタチンと2μMのD4476(SS+D4)を添加した誘導培地にて、標準条件下で培養した。3~4日に1回培地交換を行い、21日間培養した。
細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを回収した。ヒト線維芽細胞(HDFs)とヒト骨芽細胞(OBs)からも同様にtotal RNAを回収した。各細胞のmRNA発現パターンをaffymetrix 社のDNAチップを用いてゲノムワイドに解析した。
【実施例】
【0114】
結果を図20に示す。SS添加培養した細胞と、SS+D4添加培養した細胞は、いずれも線維芽細胞よりも骨芽細胞に類似の網羅的遺伝子発現パターンを示し、後者の方が前者に比べてより骨芽細胞に類似性が高い網羅的遺伝子発現パターンを示すことが分かる。
【実施例】
【0115】
2-12、生体内骨形成(図21)
動物実験は、京都府立医科大学の認可を得て行った。8週齢オスのNOD/SCIDマウス(Charles River)の腹腔内にペントバルビタールを注射し麻酔した。注水下に歯科ドリルを用いて左大腿骨骨幹に直径約4mmの部分骨欠損を作成した。実施例11と同様の方法で、HDFsをシンバスタチンとD4476存在下で21日間培養した細胞を、50 μLの培地と50 μLのマトリゲル (BD Bioscience, San Jose, CA)の1:1混合液に懸濁し、骨欠損部とその周辺の骨表面に5×105 個 /マウスの濃度で移植した. また、同様に骨欠損を作ったのち線維芽細胞を移植したマウスも準備した。21日後にマウスを安楽死させ、大腿を切除し、中性ホルマリンで固定後、X-ray CT device (Scan Xmate-L090, Com Scan Techno, Yokohama, Japan)を用いてマイクロ・コンピューター断層撮影(μCT)した。
【実施例】
【0116】
図21に3次元構築したμCTイメージを示す。黒矢印:人工骨欠損を作って移植した部位に、再生骨が作られて欠損が修復されている。白矢印:骨周囲に移植した部位に、再生骨が作られている。アローヘッド:人工骨欠損を作り移植した部位に、骨欠損が残存している。シンバスタチン(SS)+D4476(D)を添加して培養した細胞は、生体内で骨形成能を有することが示された。
【実施例】
【0117】
2-13、生体内骨形成(図22)
動物実験は、京都府立医科大学の認可を得て行った。上記「2-12、」と同様に移植実験を行った。また、線維芽細胞を移植したマウスも準備した。21日後にマウスを安楽死させ、実施例11と同様に大腿を切除し、中性ホルマリンで固定後、骨組織をSCEM (Leica Microsystem) compoundで包埋し、急速凍結した。6 μmの切片にスライス後、連続切片をヘマトキシリン・エオジン (H&E)(左)およびAlizarin Red S (右)で染色した。
【実施例】
【0118】
図22に結果を示す。SS+D4476添加培養した細胞は、生体内で骨形成能を有することが示された。
【実施例】
【0119】
2-14、ヒト正常白色脂肪前駆細胞からの誘導(図23)
ヒト正常白色脂肪前駆細胞(HWPs)を、5×104 細胞/ディシュの濃度で35mmディシュに播種した(day 0)。翌日、各wellの培養液を棄て、2 mL/wellの新しい培地(通常培地、または、記載の小分子化合物を加えた誘導培地)に交換した。通常培地は、Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)に10% FBSを添加した培地であり、誘導培地はDMEMに50 μg/mLアスコルビン酸、10 mM β-glycerophospahte、100 nM Dexamethasoneおよび10% FBSを添加したものである。3~4日に1度、培養液を交換して培養した。
【実施例】
【0120】
培養21日後に、各wellの培養液を吸引し、PBS(-)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水にて3回洗浄した後、アリザリンレッドS染色液を加え、室温で15分間incubateした。染色後のwellを滅菌蒸留水にて洗浄した後に写真撮影を行った。
【実施例】
【0121】
結果を図23に示す。赤い染色は石灰化骨基質を示している。D4476を添加した培養により、HWPsの石灰化基質産生能が強く誘導されたことが分かる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図15】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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