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明細書 :神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法
国際特許分類 A61B   5/02        (2006.01)
A61B   5/0452      (2006.01)
FI A61B 5/02 310Z
A61B 5/02 310A
A61B 5/04 312A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 17
出願番号 特願2015-508749 (P2015-508749)
国際出願番号 PCT/JP2014/059081
国際公開番号 WO2014/157605
国際出願日 平成26年3月28日(2014.3.28)
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権出願番号 2013074027
優先日 平成25年3月29日(2013.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】加藤 有一
出願人 【識別番号】307014555
【氏名又は名称】北海道公立大学法人 札幌医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100110766、【弁理士】、【氏名又は名称】佐川 慎悟
【識別番号】100133260、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 基子
【識別番号】100169340、【弁理士】、【氏名又は名称】川野 陽輔
【識別番号】100195682、【弁理士】、【氏名又は名称】江部 陽子
審査請求 未請求
テーマコード 4C017
4C027
4C127
Fターム 4C017AA09
4C017AB02
4C017AB03
4C017AB08
4C017AC16
4C017AC26
4C017AC27
4C017BC11
4C017BC14
4C017BC21
4C017BD01
4C017FF05
4C017FF15
4C027AA02
4C027FF07
4C027GG02
4C027GG05
4C027GG10
4C127AA02
4C127FF07
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG10
要約 【課題】 血圧や頸動脈における血管径の脈動変化を用いることなく、簡易的かつ客観的に、血管の硬さに依存しない神経性の圧反射感度を測定することができる神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法を提供する。
【解決手段】 動脈の脈波データを取得する脈波データ取得部41と、脈波データに基づいて規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出部42と、脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得部43と、規準化脈波容積および拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出部44と、圧反射系列における規準化脈波容積と拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出部45とを有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
動脈の脈波データを取得する脈波データ取得部と、
前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出部と、
前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得部と、
前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出部と、
前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出部と
を有する神経性圧反射感度測定装置。
【請求項2】
動脈の脈波データを取得する脈波データ取得部と、
前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出部と、
前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得部と、
前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出部と、
前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出部と
してコンピュータを機能させる神経性圧反射感度測定プログラム。
【請求項3】
動脈の脈波データを取得する脈波データ取得ステップと、
前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出ステップと、
前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得ステップと、
前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出ステップと、
前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出ステップと
を有する神経性圧反射感度測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧を一定の範囲に保持する圧反射機能の感度を測定する技術に関し、特に、血管の硬さに依存しない神経性の圧反射感度を測定するのに好適な神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血圧変動に関連する自律神経機能として、血圧の値を一定の範囲に保持するための圧反射機能が知られている。この圧反射機能の低下は、高血圧症ないし起立性低血圧を引き起こすものと考えられているため、当該圧反射機能の感度を測定する技術が提案されている。具体的には、血圧の上昇ないし下降とともに生じる心拍間隔(RR間隔)の延長ないし短縮として現れる反射感度により測定する、いわゆる静注法やシーケンス法が知られている。また、血圧の変動とそれに伴う脈波伝播時間の変動との関係に基づいて、圧反射機能を測定する方法も提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、圧反射機能の基礎となる大動脈弓や頸動脈圧受容器は、血管壁の伸展(stretch)によりインパルスを発する性質を有している。このため、上述したように、血圧を用いて測定した圧反射感度は血管硬化度に依存しており、正確に測定されていないという問題がある。すなわち、血圧から算出された圧反射感度は、血管が軟らかいほど実際の値よりも良い結果となり、血管が硬いほど実際の値よりも悪い結果になってしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、近年、超音波エコーを用いて頸動脈における血管径の脈動変化を追跡測定し、血圧を用いることなく、血管径の変化に従った心拍間隔の対応関係に基づいて圧反射感度を測定する方法も提案されている(非特許文献1:以下、「エコー法」という)。このエコー法によれば、理論上は、血圧や血管硬化度による影響を受けない神経性の圧反射感度の測定が可能である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-86568号公報
【0006】

【非特許文献1】Brian E. Huntら,「Quantification of Mechanical and Neural Components of Vagal Baroreflex in Humans, Hypertension, 2001, Vol.37」,p.1362-1368,American Heart Association
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記エコー法においては、頸動脈における血管径の脈動変化を測定するに際し、超音波プローブを患者の首に固定した状態で、しばらく安静にする必要がある。このため、測定中に患者がつばを飲み込む等して喉を少しでも動かしてしまうと、測定をやり直さなければならず、正確な脈動変化を測定することが困難なため、臨床には極めて不向きであるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、血圧や頸動脈における血管径の脈動変化を用いることなく、簡易的かつ客観的に、血管の硬さに依存しない神経性の圧反射感度を測定することができる神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る神経性圧反射感度測定装置は、動脈の脈波データを取得する脈波データ取得部と、前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出部と、前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得部と、前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出部と、前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出部とを有するものである。
【0010】
また、本発明に係る神経性圧反射感度測定プログラムは、動脈の脈波データを取得する脈波データ取得部と、前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出部と、前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得部と、前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出部と、前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出部としてコンピュータを機能させるものである。
【0011】
また、本発明に係る神経性圧反射感度測定方法は、動脈の脈波データを取得する脈波データ取得ステップと、前記脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積を算出する規準化脈波容積算出ステップと、前記脈波データに対応する拍間隔を取得する拍間隔取得ステップと、前記規準化脈波容積および前記拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する圧反射系列検出ステップと、前記圧反射系列における前記規準化脈波容積と前記拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度として算出する神経性圧反射感度算出ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血圧や頸動脈における血管径の脈動変化を用いることなく、簡易的かつ客観的に、血管の硬さに依存しない神経性の圧反射感度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る神経性圧反射感度測定装置および神経性圧反射感度測定プログラムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る「拍間隔」および「脈波データに対応する拍間隔」を説明する図である。
【図3】本発明に係る神経性圧反射感度測定方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図4】(a)指動脈の光電式容積脈波を測定する様子を示す図、(b)光が透過する液層を示す指尖の断面図、および(c)組織成分のみが異なる指尖を示す断面図である。
【図5】(a)統合圧反射感度(Int BRS)、収縮期血圧(SBP)、心拍間隔(RRI)、規準化脈波容積(NPV)および神経性圧反射感度(nBRS)の実測データ、(b)指動脈における交感神経系の活動を示す図、(c)(a)の実測データにおける収縮期血圧とNPVの散布図である。
【図6】本実施例1の実測データを示すグラフである。
【図7】図6における実測データのうち、測定開始から約80秒前後における圧反射系列の例を抜き出したグラフである。
【図8】図7の圧反射系列における散布図であり、(a)統合圧反射感度(Int BRS)、(b)本発明に係る神経性圧反射感度(nBRS(NPV))、および(c)エコー法による神経性圧反射感度(nBRS(D))を示す図である。
【図9】本実施例2において、(a)本発明に係る神経性圧反射感度(nBRS(NPV))と、エコー法による神経性圧反射感度(nBRS(Carotid diameter))との相関を示すグラフ、および(b)両者の自然対数(Ln)の相関を示すグラフである。
【図10】慢性心不全の患者における、圧反射感度の違いによる将来の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法は、血管の硬さに依存しない圧反射感度である神経性圧反射感度(neural baroreflex sensitivity:nBRS)を測定するのに好適なものである。

【0015】
本願発明者は、鋭意研究の結果、上述したエコー法における頸動脈の血管径の代わりに、特許第5039123号等で提案されている、指動脈における脈波の交流成分の振幅を同時刻における当該脈波の直流成分の平均値で除算してなる規準化脈波容積(Normalized Pulse Volume:以下、NPVという場合がある)を使用することにより、簡易的かつ客観的に、信頼性の高い神経性圧反射感度を測定できることを見出した。

【0016】
以下、本発明に係る神経性圧反射感度測定装置、神経性圧反射感度測定プログラムおよび神経性圧反射感度測定方法の一実施形態について図面を用いて説明する。

【0017】
図1に示すように、本実施形態の神経性圧反射感度測定装置1は、主として、動脈の脈波を検出するための脈波検出手段2と、本実施形態の神経性圧反射感度測定プログラム1aや各種のデータを記憶する記憶手段3と、これら各構成手段を制御するとともに各種のデータを取得して演算処理を実行する演算処理手段4とを有している。以下、各構成手段について詳細に説明する。

【0018】
脈波検出手段2は、動脈における容積変化を示す容積脈波を検出するものである。本実施形態において、脈波検出手段2は、光量を検出する光電式センサ21と、この光電式センサ21からの出力信号を増幅して脈波データとして出力する脈波アンプ22とを有している。光電式センサ21は、指の爪に固定されるLED(Light Emitting Diode)等の発光部21aと、この発光部21aと対向する位置において指の腹側に配置されるフォトダイオード等の受光部21bとを備えており、発光部21aから発光されて指を透過した透過光量を受光部21bで検出する。また、脈波アンプ22は、増幅した脈波データを時系列で出力するようになっている。

【0019】
なお、本実施形態では、脈波データとして、光電容積脈波データ(FPG)を検出している。また、本実施形態では、脈波データの検出対象部位として指動脈を用いているが、これに限定されるものではない。すなわち、脈波検出手段2によって動脈の脈波を検出できる部位であれば、耳、鼻、掌、手首、腕、足等を検出対象部位とすることもできる。

【0020】
さらに、脈波検出手段2も上記構成に限定されるものではなく、動脈の脈波を検出できるものであればよい。例えば、耳に取り付け可能なイヤフォン・イヤリングタイプ、手首や上腕等に取り付け可能なブレスレットタイプ、指に取り付け可能な指輪タイプ等のように、ウェアラブルな脈波センサでもよい。このような脈波検出手段2を用いれば、装着する際の負荷が小さい上、日常生活における検出も可能となる。

【0021】
記憶手段3は、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段4が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段3は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、図1に示すように、本実施形態の神経性圧反射感度測定プログラム1aを格納するプログラム記憶部31と、脈波データ記憶部32と、規準化脈波容積記憶部33と、拍間隔記憶部34と、心電図データ記憶部35とを有している。

【0022】
プログラム記憶部31には、本実施形態の神経性圧反射感度測定プログラム1aがインストールされている。そして、この神経性圧反射感度測定プログラム1aが演算処理手段4によって実行されることにより、パーソナルコンピュータやスマートフォン等のコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。

【0023】
なお、神経性圧反射感度測定プログラム1aの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD-ROMやDVD-ROM等のように、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に神経性圧反射感度測定プログラム1aを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、外部サーバ等からASP(Application Service Provider)方式やクラウドコンピューティング方式で利用してもよい。

【0024】
脈波データ記憶部32は、脈波検出手段2により検出された脈波データを記憶するものである。規準化脈波容積記憶部33は、後述する規準化脈波容積算出部42により算出された規準化脈波容積を記憶するものである。拍間隔記憶部34は、後述する拍間隔取得部43により取得された拍間隔を記憶するものである。心電図データ記憶部35は、心電計等の心電図取得手段(図示せず)により得られた心電図データを記憶するものである。

【0025】
演算処理手段4は、CPU(Central Processing Unit)等から構成されており、神経性圧反射感度測定プログラム1aを実行することにより、脈波データ取得部41と、規準化脈波容積算出部42と、拍間隔取得部43と、圧反射系列検出部44と、神経性圧反射感度算出部45として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。

【0026】
脈波データ取得部41は、脈波検出手段2により検出された動脈の脈波データを取得し、時系列で脈波データ記憶部32に格納するものである。なお、本実施形態において、脈波データ取得部41は、脈波検出手段2から直接脈波データを取得しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の装置によって測定された脈波データをインターネットを介してダウンロードしてもよく、USBメモリ等の記録媒体から脈波データ記憶部32に取り込んでもよい。

【0027】
規準化脈波容積算出部42は、上述した規準化脈波容積(NPV)を算出するものである。ここで、規準化脈波容積はΔI/Iによって評価されるところ、脈動変化分の透過光量(ΔI)は、脈波の交流成分の振幅によって決定される。また、脈波の検出対象部位(組織+血液)の透過光量(I)は、同時刻における脈波の直流成分の平均値によって決定される。したがって、規準化脈波容積算出部42は、脈波データ記憶部32に記憶された脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における脈波の直流成分の平均値で除算することにより、規準化脈波容積を毎拍ごとに算出するようになっている。

【0028】
拍間隔取得部43は、脈波データに対応する拍間隔を取得するものである。ここで、本発明において、「拍間隔」とは、図2に示すように、脈波データにおける脈拍間隔(図2の★印間の間隔)、脈波データの交流成分が立ち上がる部分の間隔(図2の●印間の間隔:以下、「立ち上がり間隔」という)、および心電図データにおける心拍間隔(RR間隔)等のように、拍動の一拍分に相当する全ての時間間隔を含む概念である。

【0029】
また、本発明において、「脈波データに対応する拍間隔」とは、脈波データが取得された時間帯と同じ時間帯における拍間隔のみならず、脈波データが取得された時間帯よりも一拍分遅れた拍間隔を含む概念である。具体的には、拍間隔が心拍間隔の場合、図2に示すように、脈波A,B,Cに対して、心拍間隔a,b,cのみならず、心拍間隔b,c,dも「脈波データに対応する拍間隔」に当たる。

【0030】
したがって、本実施形態において、拍間隔取得部43は、脈波データ記憶部32に格納された脈波データを参照し、当該脈波データに対応する脈拍間隔や立ち上がり間隔を時系列で取得する。なお、本実施形態では、脈拍間隔や立ち上がり間隔が判別しにくい老人等の測定に際しては、別途、心電図データを心電図データ記憶部35に用意している。この場合、拍間隔取得部43は心電図データを参照し、脈波データに対応する心拍間隔を時系列で取得するようになっている。

【0031】
圧反射系列検出部44は、血管の交感神経系による影響を受けていない圧反射系列を検出するものである。具体的には、圧反射系列検出部44は、規準化脈波容積記憶部33内の規準化脈波容積と拍間隔記憶部34内の拍間隔とを参照し、規準化脈波容積および拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加する上昇系列、または同様に、規準化脈波容積および拍間隔がいずれも3拍以上連続して減少する下降系列を圧反射系列として検出するようになっている。

【0032】
神経性圧反射感度算出部45は、神経性の圧反射機能を示す指標である神経性圧反射感度を算出するものである。本実施形態において、神経性圧反射感度算出部45は、圧反射系列検出部44により検出された圧反射系列のデータを取得し、当該圧反射系列における規準化脈波容積と拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性圧反射感度として算出するようになっている。

【0033】
なお、本実施形態では、記憶手段3および演算処理手段4を備えたパーソナルコンピュータによって神経性圧反射感度測定装置1が構成されており、別途、脈波検出手段2が周辺機器として接続されている。しかしながら、装置構成は上記に限定されるものではなく、例えば、本実施形態の神経性圧反射感度測定プログラム1aをアプリ化してスマートフォンにインストールし、当該スマートフォンを本実施形態の神経性圧反射感度測定装置1として機能させることも可能である。

【0034】
つぎに、本実施形態の神経性圧反射感度測定プログラム1aによって実行される神経性圧反射感度測定装置1の作用および神経性圧反射感度測定方法について、図3を参照しつつ説明する。

【0035】
本実施形態の神経性圧反射感度測定装置1を用いて神経性圧反射感度を測定する場合、まず、脈波データ取得部41が脈波データを取得する(ステップS1:脈波データ取得ステップ)。つぎに、規準化脈波容積算出部42が、ステップS1で取得された脈波データに基づいて、脈波の交流成分の振幅を同時刻における脈波の直流成分の平均値で除算することにより、規準化脈波容積を毎拍ごとに算出する(ステップS2:規準化脈波容積算出ステップ)。

【0036】
ここで、神経性圧反射感度の算出に際し、規準化脈波容積を用いることのメリットについて説明する。まず、図4(a)に示すように、発光部21aと受光部21bとを用いて指動脈における光電式容積脈波を測定した場合、ランバート・ベールの法則(Lambert-Beer's law)に従えば、発光部21a(光量I)からの光が、一層で成り立つ溶液中を通過する際の吸収(I/I)は、溶液の濃度(C)および通過する液層の厚さ(D)に比例する。すなわち、動静脈を合わせた平均吸光係数をεとすれば、以下の式(1)が成立する。
I/I=exp(-εCD) ・・・式(1)

【0037】
一方、図4(b)に示すように、光が指尖を透過する際の液層としては、動脈が拍動していないときの「非拍動成分」、動脈が拍動したときの「拍動成分」、および指の組織である「組織成分」が存在する。そこで、図4(c)に示すように、非拍動成分および拍動成分が同一で、組織成分のみが異なる指尖について試算すると、脈波容積(PV=ΔI)は組織成分が少ない方が大きく算出されてしまう。これに対し、規準化脈波容積(NPV=ΔI/I)は、組織成分の違いに影響を受けることなく正しい脈動変化量(ΔVa)が算出された。つまり、規準化脈波容積は、無次元の絶対量であるため、同一被験者について異なる日時に取得した測定結果の比較のみならず個人間での比較が可能となる上、指尖の組織成分に起因する誤差が除外されるというメリットを有している。

【0038】
つづいて、拍間隔取得部43が、脈波データに対応する拍間隔を取得すると(ステップS3:拍間隔取得ステップ)、圧反射系列検出部44が、規準化脈波容積および拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少する圧反射系列を検出する(ステップS4:圧反射系列検出ステップ)。これにより、以下に示すとおり、動脈における交感神経系の影響を受けていない圧反射系列が特定される。

【0039】
具体的には、本来、動脈においては、交感神経系による活動が頸動脈よりも支配的である。このため、図5(a),(b),(c)に示すように、血圧の急激な上昇に伴い拍間隔が増大すると、交感神経系活動の増大により動脈の血管は収縮し、規準化脈波容積により表される血液量が低下する。同様に、血圧の急激な低下に伴い拍間隔が短縮すると、交感神経系活動の減少により動脈の血管は拡張し、規準化脈波容積により表される血液量が増加する。そこで、本願発明者は、上記の系列とは逆の系列、すなわち、規準化脈波容積および拍間隔がいずれも連続して増加または減少する系列においては、交感神経系の影響が排除されていることを見出し、これを本発明に係る圧反射系列とした。

【0040】
なお、本発明において、圧反射系列として検出する連続拍数を3拍以上とするのは、交感神経系の影響を受けていないことの信頼性を担保するためである。

【0041】
最後に、神経性圧反射感度算出部45が、圧反射系列検出部44により検出された圧反射系列のデータに基づいて、当該圧反射系列における規準化脈波容積と拍間隔との相関を示す回帰直線の傾きを神経性圧反射感度として算出する(ステップS5)。これにより、エコー法における頸動脈の血管径の代わりに、規準化脈波容積で代用した神経性圧反射感度が測定される。

【0042】
以上のような本発明によれば、以下のような効果を奏する。
1.血圧や頸動脈における血管径の脈動変化を用いることなく、簡易的かつ客観的に、血管の硬さに依存しない神経性圧反射感度を測定することができる。
2.動脈における交感神経系の影響を受けておらず、信頼性の高い神経性圧反射感度を測定することができる。
3.無次元の絶対量である規準化脈波容積を用いることにより、組織成分に起因する誤差を除外し、同一被験者についての比較のみならず個人間での比較が可能となるため、広く一般的に神経性圧反射感度の動向を把握することができる。
4.圧反射系列からは副交感神経系の指標を取得できるとともに、圧反射系列以外の系列からは、交感神経系の指標を取得することができる。
5.心電図データを用いることにより、脈波における拍間隔が読み取りにくい被験者からも正確な拍間隔を取得することができる。

【0043】
つぎに、本発明に係る神経性圧反射感度測定装置1、神経性圧反射感度測定プログラム1aおよび神経性圧反射感度測定方法の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0044】
本実施例1では、脈波データを取得する指動脈において、交感神経の影響を受けない圧反射系列が実際に存在するのか否かを確認するための実験を行った。
【実施例1】
【0045】
具体的には、被験者(20歳、男性)に対し、血圧計(機器名:MUB101,製造元:株式会社メディセンス)、心電図検出手段(機器名:LRR-03,製造元:株式会社ジー・エム・エス)および脈波検出手段2(機器名:MPN1001,製造元:株式会社メディセンス)を装着し、血圧(AP)、心拍間隔(RRI)および脈波データを540秒間、時系列で測定した。同時に、被験者の首に超音波プローブ(機器名:UNEXEF38G,製造元:株式会社ユネクス)を固定し、頸動脈における径変化(Carotid Diameter)を測定した。
【実施例1】
【0046】
そして、これらの実測データを本実施形態の神経性圧反射感度測定装置1やユネクスイーエフ(機器名:UNEXEF38G,製造元:株式会社ユネクス)により処理し、従来のシーケンス法による統合圧反射感度(Int BRS)、本発明に係る神経性圧反射感度(nBRS(NPV))および従来のエコー法による神経性圧反射感度(nBRS(D))を算出した。この結果を図6に示す。
【実施例1】
【0047】
なお、図7は、図6における実測データのうち、測定開始から約80秒前後における圧反射系列の例を抜き出したグラフである。また、図8は、図7の圧反射系列における散布図であり、(a)シーケンス法による統合圧反射感度(Int BRS)、(b)本発明に係る神経性圧反射感度(nBRS(NPV))、および(c)エコー法による神経性圧反射感度(nBRS(D))を示す図である。
【実施例1】
【0048】
図6から図8に示すように、本発明に係る圧反射系列は、大きさ及び頻度において、従来のシーケンス法における圧反射系列や、エコー法による圧反射系列よりもむしろ多く存在することが示された。
【実施例1】
【0049】
以上の本実施例1によれば、脈波データを測定する指動脈においても、本発明に係る圧反射系列、すなわち規準化脈波容積および拍間隔がいずれも3拍以上連続して増加または減少し、交感神経の影響を受けていない圧反射系列が存在することが実証された。
【実施例2】
【0050】
本実施例2では、図6に示す実施例1の実測データにおいて、本発明に係る神経性圧反射感度(nBRS(NPV))と、エコー法による神経性圧反射感度(nBRS(Carotid diameter))とを同時に測定できた点についての関連性を評価した。その結果を図9に示す。
【実施例2】
【0051】
図9(a)は、本発明に係る神経性圧反射感度と、エコー法による神経性圧反射感度との相関を示すグラフであり、図9(b)は、両者の自然対数(Ln)の相関を示すグラフである。図9(a)における相関係数rは0.952であり、図9(b)における相関係数rは0.976であった。すなわち、いずれのグラフにおいても、本発明に係る神経性圧反射感度と、エコー法による神経性圧反射感度との間に高い相関が認められた。
【実施例2】
【0052】
以上の本実施例2によれば、本発明に係る神経性圧反射感度と、エコー法による神経性圧反射感度との間に高い相関が認められるため、エコー法における頸動脈の血管径の代わりに、規準化脈波容積を使用することが妥当であることが実証された。
【実施例2】
【0053】
なお、本発明に係る神経性圧反射感度測定装置1、神経性圧反射感度測定プログラム1aおよび神経性圧反射感度測定方法は、前述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【実施例2】
【0054】
例えば、神経性圧反射感度の数値範囲に対応させて、圧反射機能の感受性を評価を示す表示テーブル(例:良好,普通,悪い)を記憶手段3に格納しておき、神経性圧反射感度算出部45によって算出された神経性圧反射感度の値に基づき、圧反射機能の感受性に関する評価を表示手段や印刷手段から出力し、被験者に提示するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
従来、慢性心不全の患者においては、図10に示すように、圧反射感度(副交感神経機能)の低下が、将来の生存率に深く関係することが知られている。このため、信頼性の高い神経性圧反射感度を定期的に測定することは、慢性心不全を含む生活習慣病全体のプレクリニカルな段階での疾病予測、スクリーニング、診断、および長期の経過観察に役立ち、医療現場への波及効果は極めて広範である。
【0056】
また、上述したように、本発明に係る神経性圧反射感度測定装置1が、スマートフォン等の携帯端末サイズに小型化できれば、子供からお年寄りまで手軽に扱うことができる健康機器として家庭用・個人用に広く普及することも考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 神経性圧反射感度測定装置
1a 神経性圧反射感度測定プログラム
2 脈波検出手段
3 記憶手段
4 演算処理手段
21 光電式センサ
21a 発光部
21b 受光部
22 脈波アンプ
31 プログラム記憶部
32 脈波データ記憶部
33 規準化脈波容積記憶部
34 拍間隔記憶部
35 心電図データ記憶部
41 脈波データ取得部
42 規準化脈波容積算出部
43 拍間隔取得部
44 圧反射系列検出部
45 神経性圧反射感度算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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