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明細書 :イリジウム錯体およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 イリジウム錯体およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
国際特許分類 C07F  15/00        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C07F 15/00 CSPE
C09K 11/06 660
C09K 11/06 690
H05B 33/14 B
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 45
出願番号 特願2016-507293 (P2016-507293)
国際出願番号 PCT/JP2015/000760
国際公開番号 WO2015/136845
国際出願日 平成27年2月18日(2015.2.18)
国際公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
優先権出願番号 2014047889
優先日 平成26年3月11日(2014.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】八木 繁幸
出願人 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100117972、【弁理士】、【氏名又は名称】河崎 眞一
【識別番号】100190713、【弁理士】、【氏名又は名称】津村 祐子
審査請求 未請求
テーマコード 3K107
4H050
Fターム 3K107AA01
3K107CC02
3K107CC04
3K107CC45
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD67
3K107DD70
3K107GG06
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
4H050WB11
4H050WB14
4H050WB21
要約 新規なイリジウム錯体、およびそれを用いた有機EL素子を提供する。イリジウム錯体は、Ir原子と、これに配位する下記式(L1)で表される第1配位子とを含む
(式中、*を付した原子は、Irに配位する配位原子、R1は電子求引性の置換基、R2~R6のそれぞれは置換基であり、mは1~3、nは0~4、pは0~4、qは1~3、p+q≦5、rは0~4、sは1~3、r+s≦5であり、tおよびuのそれぞれは0~4である。)。
【化1】
JP2015136845A1_000026t.gif
特許請求の範囲 【請求項1】
イリジウム原子と、前記イリジウム原子に配位する第1配位子とを含み、
前記第1配位子は、下記式(L1
【化1】
JP2015136845A1_000023t.gif
(式中、*を付した原子は、前記イリジウム原子に配位する配位原子であり、R1は電子求引性の置換基であり、R2は電子求引性の置換基、アルキル基、アルコキシ基またはジアルキルアミノ基であり、R3およびR4のそれぞれは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または過ハロゲン化アルキルであり、R5およびR6のそれぞれは、アルキル基またはアルコキシ基であり、mは1~3の整数であり、nは0~4の整数であり、pは0~4の整数であり、qは1~3の整数であり、p+q≦5であり、rは0~4の整数であり、sは1~3の整数であり、r+s≦5であり、tおよびuのそれぞれは0~4の整数である。)
で表される、イリジウム錯体。
【請求項2】
前記第1配位子を2個または3個含む、請求項1に記載のイリジウム錯体。
【請求項3】
下記式(1)
【化2】
JP2015136845A1_000024t.gif
(式中、L1は前記第1配位子であり、L2はアニオン性の二座配位子である第2配位子であり、aは2または3であり、a+b=3である。)
で表される、請求項1または2に記載のイリジウム錯体。
【請求項4】
1はハロゲン原子または過ハロゲン化アルキル基であり、mは1または2であり、nは0~2の整数であり、pは0~2の整数であり、qは1または2であり、rは0~2の整数であり、sは1または2であり、tは1または2であり、uは1または2である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイリジウム錯体。
【請求項5】
前記第1配位子は、下記式(L1-1)
【化3】
JP2015136845A1_000025t.gif
(式中、R5aおよびR5bのそれぞれは前記R5と同じであり、R6aおよびR6bのそれぞれは前記R6と同じであり、t1およびt2のそれぞれは前記tと同じであり、u1およびu2のそれぞれは前記uと同じであり、vは0または1であり、*を付した原子、R1~R3、m、n、pおよびqのそれぞれは前記と同じである。)
で表される、請求項1~4のいずれか1項に記載のイリジウム錯体。
【請求項6】
1は、フッ素原子またはペルフルオロC1-5アルキル基であり、nは0であり、R5およびR6のそれぞれは、C1-8アルキル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載のイリジウム錯体。
【請求項7】
陽極、陰極、前記陽極と前記陰極との間に介在する発光層を含み、
前記発光層は、請求項1~6のいずれか1項に記載のイリジウム錯体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層は、さらに電子輸送材料を含む、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子材料として利用可能なイリジウム錯体、およびそれを用いた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極と、陰極と、これらの間に介在する発光層とを含む。陽極と発光層との間にはホール注入層、および/またはホール輸送層などが形成され、陰極と発光層の間には、電子注入層、および/または電子輸送層などが形成される場合もある。発光層に含まれる発光材料としては、蛍光性の材料、および/またはりん光性の材料などが使用されており、高い量子効率を確保し易い観点から、りん光性の発光材料が注目されている。
【0003】
有機EL素子を形成する各層は、蒸着などにより形成することができるが、溶液塗布法(コーティング法)を利用することができれば、素子の作製を簡素化できるため、工業的に有利である。例えば、発光層を形成する発光材料としては、ホール輸送性および/または電子輸送性のホスト材料と発光色素とを含むドープ型の発光材料、またはホール輸送ユニットおよび/または電子輸送ユニットと発光色素ユニットとが連結した非ドープ型の発光材料などが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ホスト材料としてのカルバゾリルフェニルベンゼン誘導体と、りん光色素とを含むドープ型の発光層が提案されている。
非特許文献1には、ビフェニル骨格またはジフェニルエチレン骨格などをりん光性の発光色素に導入したデンドリマーが提案されている。このようなデンドリマーは、非ドープ型の材料であり、ドープ型の材料と比べて、溶液を調製し易く、均一な膜を形成し易いため、コーティング法の利用が期待される。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2013-155153号公報
【0006】

【非特許文献1】J.AM.CHEM.SOC.2009,131,16681-16688頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機EL材料が、発光色素などの比較的低分子量の機能性化合物を含む場合(例えば、ドープ型の発光材料などの場合)、機能性化合物は分子間相互作用を受け易い。そのため、機能性化合物の会合などにより、エネルギー、電子、および/またはホールなどが望まない反応に消費され、所望する機能が得られなくなる場合がある。例えば、ドープ型の発光材料では、発光色素が分子間相互作用を受け易く、会合および/またはエキシマー形成などにより、安定な発光が得られ難い。
【0008】
非ドープ型の材料では、例えば、ホール輸送性および/または電子輸送性の骨格と発光色素とを連結させるなど、機能性の骨格同士を連結するため、発光色素間の相互作用の影響を低減できる。しかし、分子内相互作用により、期待する機能が発現しない場合がある。例えば、非ドープ型の発光材料では、発光色素ユニットに、ホール輸送ユニットおよび/または電子輸送ユニットを連結することで、期待する発光色が得られない場合がある。
【0009】
また、発光材料としては、光の三原色である赤色、緑色および青色のものが特に有用である。中でも、非ドープ型で青色の発光材料は、報告例が少なく、さらなる開発が期待されている。
【0010】
本発明の目的は、有機EL材料としての利用が期待される新規なイリジウム錯体、およびそれを用いた有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面は、イリジウム原子と、前記イリジウム原子に配位する第1配位子とを含み、前記第1配位子は、下記式(L1
【化1】
JP2015136845A1_000003t.gif
(式中、*を付した原子は、前記イリジウム原子に配位する配位原子であり、R1は電子求引性の置換基であり、R2は電子求引性の置換基、アルキル基、アルコキシ基またはジアルキルアミノ基であり、R3およびR4のそれぞれは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または過ハロゲン化アルキルであり、R5およびR6のそれぞれは、アルキル基またはアルコキシ基であり、mは1~3の整数であり、nは0~4の整数であり、pは0~4の整数であり、qは1~3の整数であり、p+q≦5であり、rは0~4の整数であり、sは1~3の整数であり、r+s≦5であり、tおよびuのそれぞれは0~4の整数である。)
で表される、イリジウム錯体に関する。
【0012】
本発明の他の一局面は、陽極、陰極、前記陽極と前記陰極との間に介在する発光層を含み、前記発光層は、上記イリジウム錯体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記局面によれば、有機EL材料としての利用が期待される新規イリジウム錯体、およびそれを用いた有機EL素子を提供できる。
【0014】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機EL素子を概略的に示す模式図である。
【図2】実施例1で得られたイリジウム錯体Ir-1の溶液サンプルおよび薄膜サンプルを用いたフォトルミネッセンス(PL)スペクトルである。
【図3】実施例2Aで得られたイリジウム錯体Ir-2の溶液サンプルおよび薄膜サンプルを用いたPLスペクトルである。
【図4】実施例3Aで得られたイリジウム錯体Ir-3の溶液サンプルおよび薄膜サンプルを用いたPLスペクトルである。
【図5】実施例4~7で得られた有機EL素子(A1-1)~(A1-4)のELスペクトルである。
【図6】実施例8~11で得られた有機EL素子(A2-1)~(A2-4)のELスペクトルである。
【図7】実施例12~13で得られた有機EL素子(A3-1)~(A3-2)のELスペクトルである。
【図8】実施例2Bで得られたイリジウム錯体Ir-4の溶液サンプルおよび薄膜サンプルを用いたPLスペクトルである。
【図9】実施例3Bで得られたイリジウム錯体Ir-5の溶液サンプルおよび薄膜サンプルを用いたPLスペクトルである。
【図10】実施例8および16で得られた有機EL素子(A2-1)および(A2-7)のELスペクトルである。
【図11】実施例12および19で得られた有機EL素子(A3-1)および(A3-7)のELスペクトルである。
【図12】実施例20および23で得られた有機EL素子(A4-1)および(A4-4)のELスペクトルである。
【図13】実施例24および27で得られた有機EL素子(A5-1)および(A5-4)のELスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(イリジウム錯体)
本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体は、イリジウム原子と、このイリジウム原子に配位する第1配位子とを含む。第1配位子は、イリジウム原子に配位するフェニルピリジンユニット、およびカルバゾールユニットを含んでいる。このような第1配位子は、下記式(L1)で表わされる。
【化2】
JP2015136845A1_000004t.gif

【0017】
式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子であり、R1は電子求引性の置換基であり、R2は電子求引性の置換基、アルキル基、アルコキシ基またはジアルキルアミノ基であり、R3およびR4のそれぞれは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または過ハロゲン化アルキル基であり、R5およびR6のそれぞれは、アルキル基またはアルコキシ基であり、mは1~3の整数であり、nは0~4の整数であり、pは0~4の整数であり、qは1~3の整数であり、p+q≦5であり、rは0~4の整数であり、sは1~3の整数であり、r+s≦5であり、tおよびuのそれぞれは0~4の整数である。

【0018】
イリジウム錯体は、イリジウム原子およびイリジウム原子に配位するユニットなどを含むコア部分と、コア部分に導入されたデンドロンとを含むデンドリマーと考えることができる。第1配位子(L1)は、コア部分に含まれるフェニルピリジンユニット(Phpy)と、フェニルピリジンユニットPhpyに、ベンゾイルユニット(Bz)のカルボニル基を介して結合したデンドロン(D)とを含む。デンドロンDは、ベンゾイルユニットBzのベンゼン環と、このベンゼン環に結合したカルバゾリルフェニルユニット(Czph)とを含む。カルバゾリルフェニルユニットCzphは、ベンゾイルユニットBzのベンゼン環に結合したフェニル基と、このフェニル基に結合したカルバゾールユニット(カルバゾリル基)(Cz)とを有する。

【0019】
【化3】
JP2015136845A1_000005t.gif

【0020】
デンドロンに含まれるカルバゾールユニットは、ホール輸送機能を有し、錯体のコア部分は、ホールおよび電子を受容する機能を有する。また、錯体にデンドロンを導入することにより、コア部分間の相互作用を抑制することができ、コア部分の会合を抑制することができる。そのため、コア部分の会合および/またはエキシマーの生成などに伴って、エネルギー、電子および/またはホールが望まない反応に消費されることを抑制することができる。よって、本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体は、有機EL材料としての利用が期待される。

【0021】
また、イリジウム錯体のコア部分は、りん光性の発光が得られ易い構造を有している。デンドロンの導入により、コア部分のπ共役系とデンドロンのπ共役系とがつながると、コア部分の発光が失われる傾向がある。しかし、本発明の一実施形態に係る錯体では、フェニルピリジンユニットのフェニル基において、イリジウム原子の配位原子のp-位に、カルボニル基を介して、デンドロンを導入している(つまり、ベンゾイル基を介して、カルバゾリルフェニルユニットを導入している)。このような構造のおかげで、コア部分とデンドロンとでπ共役系がつながり難くなる。そのため、デンドロンを導入しても、コア部分のりん光発光性が損なわれるのを抑制できる(つまり、コア部分のりん光発光性が保存される)。しかも、上記のように、デンドロンの導入により、発光性のコア部分間の相互作用が抑制され、コア部分の会合および/またはエキシマーの生成が抑制されるため、これらに由来する望まない発光(より長波長側の発光)も抑制できる。このように、イリジウム錯体は、りん光発光性が確保され易いため、このような観点からも、有機EL材料(中でも、発光材料)としての利用に適している。

【0022】
イリジウム錯体では、上記のように、デンドロンを導入することで、ホール輸送機能が付与され、コア部分間の相互作用が抑制される。そのため、ホスト材料などのポリマー成分と組み合わせて使用する必要がなくなる。つまり、イリジウム錯体を用いると、溶液を調製し易く、均一な膜を形成し易いため、成膜にコーティング法が利用できる。よって、イリジウム錯体は、非ドープ型の材料(発光材料など)として利用することができる。

【0023】
(第1配位子)
第1配位子において、*を付した原子、すなわち、フェニルピリジンユニットにおけるピリジン環を構成するN原子、およびフェニル基の2位の炭素原子は、イリジウム原子に配位する配位原子である。
フェニルピリジンユニットにおけるフェニル基は、電子求引性の置換基R1を有する。
フェニル基が電子求引性の置換基を有することで、より短波長側の発光(例えば、青色の発光)が得られる。

【0024】
1としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、過ハロゲン化アルキル基、アシル基、およびシアノ基などが例示できる。アシル基としては、アセチル基などの脂肪族アシル基(C2-6脂肪族アシル基など)、ベンゾイル基などの芳香族アシル基が例示できる。

【0025】
過ハロゲン化アルキル基を構成するハロゲン原子としては、上記のハロゲン原子が例示できる。過ハロゲン化アルキル基を構成するアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル基などの直鎖状または分岐鎖状アルキル基(C1-6アルキル基など)が例示できる。過ハロゲン化アルキル基を構成するアルキル基としては、C1-5アルキル基またはC1-4アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基などのC1-3アルキル基がさらに好ましい。より短波長側の発光が得られ易い点から、R1としては、ハロゲン原子および過ハロゲン化アルキル基が好ましく、中でも、フッ素原子およびペルフルオロアルキル基(特に、ペルフルオロC1-5アルキル基など)が好ましい。

【0026】
フェニルピリジンユニットのフェニル基において、R1の個数mは、1~3の整数であり、好ましくは1または2である。R1の位置は、フェニル基の3位、4位、および6位のいずれであってもよい。フェニル基が2つのR1を有する場合、R1の位置は、3,4位、3,6位、または4,6位であってもよい。発光波長をブルーシフトさせる観点からは、R1としてのハロゲン原子の位置は、4位、および/または6位であることが好ましい。また、R1としてのハロゲン原子以外の電子求引性の置換基の位置は、少なくとも3位であることが好ましい。なお、フェニル基が複数のR1を有する場合、R1の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0027】
フェニルピリジンユニットのピリジン環は、置換基R2を必ずしも有する必要はないが、置換基R2を有していてもよい。R2としては、電子求引性の置換基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基などが挙げられる。これらの置換基R2を有する場合にも、置換基R2を有さない場合と同様のまたは類似の効果を得ることができる。

【0028】
2のうち、電子求引性の置換基としては、R1について例示したハロゲン原子、R1について例示した過ハロゲン化アルキル基を含むハロゲン化アルキル基(例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基など)、R1について例示したアシル基およびシアノ基、ならびにニトロ基などが例示できる。ハロゲン化アルキル基を構成するハロゲン原子およびアルキル基のそれぞれとしては、R1について例示したものから適宜選択できる。ハロゲン化アルキル基においてハロゲン原子の個数は特に制限されない。電子求引性の置換基は、ハロゲン原子、および/または過ハロゲン化アルキル基などであってもよい。このような電子求引性の置換基をピリジン環に有する場合にも、置換基を有さない場合と同様のまたは類似の効果が得られる。

【0029】
2は、電子供与性の置換基であってもよい。電子供与性の置換基のうち、アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状アルキル基が例示できる。アルキル基は、C1-4アルキル基またはC1-3アルキル基であってもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジC1-6アルキルアミノ基(好ましくはジC1-4アルキルアミノ基)などが例示できる。ピリジン環に電子供与性の置換基(アルコキシ基および/またはジアルキルアミノ基など)を導入すると、LUMO(最低空軌道)が不安定になることによって励起状態が高エネルギー化し、発光波長をブルーシフトさせ易い。

【0030】
ピリジン環において、R2の個数nは、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1である。R2の位置は、フェニルピリジンユニットのピリジン環において、3位、4位、5位および6位のいずれであってもよい。R2(例えば、アルキル基、過ハロゲン化アルキル基など)が少なくとも3位に位置する場合、フェニルピリジンユニットにおいて、フェニル基とピリジン環とのねじれが大きくなり、LUMOが不安定する。よって、励起状態が高エネルギー化し、発光波長をブルーシフトさせ易くなる。

【0031】
ピリジン環が複数のR2を有する場合、R2の位置は、例えば、3,4位、3,5位、3,6位、4,5位、4,6位、5,6位、3,4,5位、3,4,6位、3,5,6位、4,5,6位などであってもよい。ピリジン環が複数のR2を有する場合、複数のR2の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0032】
フェニルピリジンユニットのフェニル基に結合したベンゾイルユニットは、置換基R3を有していてもよい。R3としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子および過ハロゲン化アルキル基が挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基としては、それぞれ、R2について記載したものが例示される。ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれ、臭素原子および/またはヨウ素原子であってもよい。過ハロゲン化アルキル基としては、R1について記載したものが例示できる。カルバゾリルフェニルユニットと、コア部分との共役系のつながりをより効果的に切断して、発光波長をブルーシフトし易い観点からは、R3として、アルキル基および/またはアルコキシ基をベンゾイルユニットに導入することが好ましい。

【0033】
3の個数pは、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1である。R3の位置は、ベンゾイルユニットのベンゼン環において、カルボニル基(-C(=O)-)の置換位置を1位とするとき、2位、3位、4位、5位および6位のいずれであってもよい。

【0034】
カルバゾリルフェニルユニットのフェニル基は、カルバゾリル基以外に置換基R4を有してもよい。R4としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子および/または過ハロゲン化アルキル基が挙げられる。これらの基のそれぞれとしては、R3について例示したものから適宜選択できる。R4の個数rは、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1である。フェニル基におけるR4の位置は特に制限されない。フェニル基が複数のR4を有する場合、複数のR4の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0035】
カルバゾールユニットが有する2つのベンゼン環は、それぞれ、置換基R5およびR6を有していてもよい。カルバゾリルフェニルユニットにおいて、1つのフェニル基が有するカルバゾールユニット(カルバゾリル基)の個数sは、1~3であり、好ましくは1または2である。カルバゾリルフェニルユニットにおいて、置換基R4の個数rと、カルバゾリル基の個数sとの合計:r+sは、r+s≦5である。

【0036】
カルバゾリルフェニルユニットのフェニル基において、カルバゾールユニットの位置は、ベンゾイルユニットへのフェニル基の結合位置(1位)に対して、2位、4位および/または6位であってもよいが、3位および/または5位であることが好ましい。フェニル基の3位および/または5位に、カルバゾールユニットを有する場合、デンドロンと、コア部分とで、π共役系がつながることをさらに抑制することができる。よって、錯体に、デンドロンによりホール輸送機能を付与しながらも、コア部分の発光をさらに効果的に保存することができる。また、デンドロンの三重項準位を高めることができるため、デンドロンからコア部分へのエネルギー移動を効率よく行うことができ、デンドロンに由来する望まない発光を抑制することができる。

【0037】
フェニル基の3位および/または5位にカルバゾールユニットを有するカルバゾリルフェニルユニットを含む第1配位子は、下記式(L1-1)で表すことができる。
【化4】
JP2015136845A1_000006t.gif
式中、R5aおよびR5bのそれぞれはR5と同じであり、R6aおよびR6bのそれぞれはR6と同じであり、t1およびt2のそれぞれはtと同じであり、u1およびu2のそれぞれはuと同じであり、vは0または1であり、*を付した原子、R1~R3、m、n、pおよびqのそれぞれは前記と同じである。

【0038】
5、R5a、R5b、R6、R6a、およびR6bで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基など直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が例示できる。R5、R5a、R5b、R6、R6a、およびR6bで表されるアルコキシ基としては、アルキル部分が上記のアルキル基に対応するアルキル-オキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基など)が例示できる。アルキル基は、例えば、C1-8アルキル基であり、C1-6アルキル基またはC1-4アルキル基であってもよい。アルコキシ基は、例えば、C1-8アルコキシ基、C1-6アルコキシ基またはC1-4アルコキシ基であってもよい。

【0039】
カルバゾールユニットの各ベンゼン環における置換基R5およびR6の個数tおよびuは、それぞれ、0~4の整数であり、1~3の整数であってもよく、1または2(特に1)であってもよい。R5aの個数t1およびR5bの個数t2のそれぞれは、tと同様の範囲から選択できる。t1とt2とは同じであってもよく、異なっていてもよい。R6aの個数u1およびR6bの個数u2のそれぞれは、uと同様の範囲から選択できる。u1とu2とは同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0040】
なお、式(L1-1)において、R5aおよびR5bのそれぞれは、式L1では、R5に対応する。R5aとR5bとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、式L1において、カルバゾールユニットが複数のR5を有する場合、R5の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。式(L1-1)において、カルバゾールユニットが複数のR5aを有する場合、R5aの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。式(L1-1)において、カルバゾールユニットが複数のR5bを有する場合、R5bの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0041】
式(L1-1)において、R6aおよびR6bのそれぞれは、式L1では、R6に対応する。R6aとR6bとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、式L1において、カルバゾールユニットが複数のR6を有する場合、R6の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。式(L1-1)において、カルバゾールユニットが複数のR6aを有する場合、R6aの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。式(L1-1)において、カルバゾールユニットが複数のR6bを有する場合、R6bの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0042】
5、R5aおよびR5bのそれぞれの置換位置は、カルバゾリル基の1位、2位、3位および4位のいずれであってもよく、中でも、1,3位または3位が好ましい。R6、R6aおよびR6bのそれぞれの置換位置は、カルバゾリル基の5位、6位、7位および8位のいずれであってもよく、中でも、6,8位または6位が好ましい。

【0043】
ベンゾイルユニットにおけるカルバゾリルフェニルユニットの置換位置は、ベンゾイルユニットのカルボニル基(1位)に対して、2位、3位、4位、5位および6位のいずれであってもよい。例えば、少なくとも3位および/または5位であってもよく、3,4位または3,4,5位などであってもよい。ベンゾイルユニットの少なくとも3位および/または5位にカルバゾリルフェニルユニットを導入すると、デンドロンとコア部分とで、π共役系がさらにつながり難くなるため、コア部分の発光が損なわれるのをさらに抑制できる。

【0044】
ベンゾイルユニットに導入されるカルバゾリルフェニルユニットの個数qは、1~3の整数であり、好ましくは1または2である。ただし、ベンゾイルユニットにおいて、置換基R3の個数pとカルバゾリルフェニルユニットの個数qとの合計:p+qは、p+q≦5である。

【0045】
イリジウム錯体において、イリジウム原子は、6配位であることが好ましい。第1配位子は、2座配位子であるため、イリジウム錯体は、1~3個の第1配位子を有することができる。イリジウム錯体が、1個または2個の第1配位子を含む場合、イリジウム原子には、第1配位子以外の補助配位子(第2配位子とも言う)を配位させることができる。

【0046】
(補助配位子(第2配位子))
イリジウム原子がカチオン性を示すため、補助配位子は、アニオン性の配位子である。補助配位子は、単座配位子であってもよいが、二座配位子であることが好ましい。イリジウム錯体は、1つの第1配位子と補助配位子として2つの二座配位子とを含んでもよく、2つの第1配位子と補助配位子としての1つの二座配位子とを含んでもよい。

【0047】
デンドロン導入による効果を確保し易い観点からは、イリジウム錯体は、第1配位子を2個または3個含むことが好ましい。つまり、イリジウム錯体が補助配位子を含む場合には、2つの第1配位子と補助配位子としての1つの二座配位子とを含むイリジウム錯体が好ましい。好ましいイリジウム錯体としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。なお、式(1)では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。

【0048】
【化5】
JP2015136845A1_000007t.gif
(式中、L1は上記の第1配位子であり、L2はアニオン性の二座配位子である補助配位子(第2配位子)であり、aは2または3であり、a+b=3である。)

【0049】
補助配位子としては、イリジウムに配位し得る公知の配位子が挙げられる。青色の発光を確保し易い観点からは、発光波長がブルーシフトし易い配位子を補助配位子として用いることが好ましい。

【0050】
補助配位子L2としては、イリジウム原子に配位する配位原子として、X1およびX2を有し、X1およびX2のそれぞれが、炭素原子またはヘテロ原子であるものが例示できる。ヘテロ原子としては、酸素原子、イオウ原子および窒素原子などが例示され、酸素原子または窒素原子が好ましい。

【0051】
1およびX2のそれぞれが炭素原子である補助配位子としては、例えば、3位にアリール基(フェニル基など)またはアラルキル基(ベンジル基など)を有するベンゾイミダゾール骨格を有する配位子が挙げられる。アリール基またはアラルキル基に含まれるベンゼン環は、電子求引性の置換基を有することが好ましい。このような配位子としては、例えば、式(2-1)または式(2-2)で表される配位子が挙げられる。

【0052】
【化6】
JP2015136845A1_000008t.gif
(式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子であり、R1a~R1d、およびR8のそれぞれは置換基であり、R7aおよびR7bのそれぞれは置換基であり、m1~m4のそれぞれは0~4の整数であり、w1は0~2の整数である。)

【0053】
1a~R1dで表される置換基としては、R1について例示したものから適宜選択でき、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子など)などであってもよい。R7a、R7b、およびR8で表される各置換基しては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基(C1-4アルキル基など)、アリール基(フェニル基など)などが挙げられる。w1は0または1であってもよい。

【0054】
補助配位子において、X1およびX2の少なくともいずれか一方がヘテロ原子(特に、酸素原子および/または窒素原子)であってもよく、X1およびX2のいずれもヘテロ原子であってもよい。

【0055】
1およびX2がいずれも酸素原子である補助配位子としては、例えば、式(2-3)で表されるジケトン骨格を有する配位子などが挙げられる。
【化7】
JP2015136845A1_000009t.gif
(式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子であり、R9aおよびR9bのそれぞれは、アルキル基であり、R9cは水素原子またはアルキル基である。)
9a~R9cで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基が例示できる。

【0056】
1が酸素原子であり、X2が窒素原子である補助配位子としては、例えば、窒素含有環(5員環または6員環など)のカルボン酸骨格を有する配位子が挙げられる。このような骨格としては、ピラゾール-3-カルボン酸骨格またはピコリン酸骨格を有する配位子が挙げられる。このような配位子において、窒素含有環には、置換基を有してもよい。ピコリン酸骨格を有する配位子としては、式(2-4)で表すものなどが好ましい。

【0057】
【化8】
JP2015136845A1_000010t.gif
(式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子であり、R10aは置換基であり、x1は0~4の整数である。)
10aで表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、ハロゲン化アルキル基が例示できる。ハロゲン化アルキル基としては、R2について記載したものから適宜選択できる。x1は、0または1であってもよい。

【0058】
1およびX2がいずれも窒素原子である補助配位子としては、例えば、1-アミノカルボニルピラゾール骨格を有する配位子、複数の窒素含有環が連結した骨格を有する配位子が挙げられる。後者の配位子における窒素含有環の個数は、2~4個、または2~3個であってもよい。各窒素含有環が有する窒素原子の個数は、特に制限されず、例えば、1~4個、または1~3個であってもよい。複数の窒素含有環のそれぞれにおいて、窒素原子の個数は同じであってもよく、異なっていてもよい。各窒素含有環の員数は特に制限されず、5員または6員であってもよい。複数の窒素含有環のそれぞれの員数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、窒素含有環にはベンゼン環などの炭化水素環(芳香環など)が縮合していてもよい。配位子において、複数の窒素含有環は、直接結合(単結合)で連結していてもよく、ホウ素原子などを介して連結していてもよい。

【0059】
各窒素含有環としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの5員環、ピリジン、ピラジン、トリアジンなどの6員環が挙げられる。窒素含有環と炭化水素環との縮合環の具体例としては、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
窒素含有環および/または縮合環における炭化水素環は、置換基を有してもよい。置換基としては、R1またはR2として例示したものから適宜選択できる。置換基の個数も特に制限されない。補助配位子が複数の置換基を有する場合、複数の置換基の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0060】
1およびX2がいずれも窒素原子である補助配位子の具体例としては、式(2-5)~(2-7)で表される配位子が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【化9】
JP2015136845A1_000011t.gif
(式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子であり、R10b、R10c、R2a~R2fのそれぞれは置換基であり、x2およびx3のそれぞれは0~4の整数であり、n1は0~2の整数であり、n3~n6のそれぞれは0~3の整数であり、n2は0または1である。)

【0061】
10b、R10c、およびR2a~R2fで表される各置換基は、上記の置換基である。R10bおよびR10cで表される置換基としては、R1またはR2として例示したものから適宜選択できる。R2a~R2fで表される置換基としては、R2として例示したものから適宜選択できる。これらの置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、電子求引性の置換基(特に、ハロゲン原子、および過ハロゲン化アルキル基などのハロゲン化アルキル基)などであってもよい。x2およびx3のそれぞれは、0~2の整数であってもよく、0または1であってもよい。n1は、0または1(特に、1)であってもよい。n3~n6のそれぞれは、0~2の整数、もしくは0または1(特に、0)であってもよい。n2は、例えば、1である。

【0062】
1が窒素原子であり、X2が炭素原子である補助配位子としては、窒素含有環と炭化水素環(特に、フェニル基などの芳香環)とが連結した骨格を有する配位子が例示できる。窒素含有環としては、上記で例示した窒素含有環(5員環または6員環など)から適宜選択できる。窒素含有環と炭化水素環とは直接結合(単結合)で連結していてもよい。また、窒素含有環と炭化水素環とがさらに架橋されていてもよい。窒素含有環および/または炭素水素環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、R1またはR2として例示したものから適宜選択できる。置換基の個数も特に制限されない。補助配位子が複数の置換基を有する場合、複数の置換基の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0063】
1が窒素原子であり、X2が炭素原子である補助配位子の具体例としては、フェニルピリジン骨格、フェニルピラゾール骨格、フェニルイミダゾール骨格、またはフェニルトリアゾール骨格を有する配位子などが挙げられる。これらの配位子としては、例えば、式(2-8)~(2-14)で表されるものなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。

【0064】
【化10】
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【0065】
(式中、R1e~R1k、R1m、R1n、R2g~R2k、R2m、R2n、R3a、R3b、R7c、およびR8aのそれぞれは置換基であり、m5、m7、m8、m11、m12、m13、n7、およびn8のそれぞれは、0~4の整数であり、m6、m10、n9、およびn10のそれぞれは、0~3の整数であり、m9、n11、n12、n13、およびw2のそれぞれは、0~2の整数であり、p1およびp2のそれぞれは0~5の整数である。)

【0066】
1e~R1k、R1m、およびR1nで表される各置換基としては、R1について例示したものから適宜選択でき、ハロゲン原子または過ハロゲン化アルキル基などであってもよい。R2g~R2k、R2m、およびR2nで表される各置換基としては、R2について例示したものから適宜選択でき、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または過ハロゲン化アルキル基などであってもよい。R3aおよびR3bで表される各置換基としては、R3について例示したものから適宜選択できる。R7cで表される置換基としては、R7aについて例示したアルキル基が挙げられる。R8aで表される置換基としては、R8について例示したものから適宜選択できる。

【0067】
5、m7、m8、m11~m13、n7、およびn8のそれぞれは、0~2の整数であってもよい。m6、m10、n9、n10、およびn12のそれぞれは、0~2の整数であってもよい。m9、n11、およびn13のそれぞれは、0、1または2であってもよい。w2は好ましくは0である。p1およびp2のそれぞれは、0~3の整数、または0~2の整数であってもよい。

【0068】
(イリジウム錯体の製造方法)
(スキームI~III)
イリジウム錯体は、イリジウム(III)を含む溶液中で、イリジウム原子に、第1配位子、および必要により補助配位子(第2配位子)を配位させることにより製造することができる。より詳しくは、塩化イリジウム(III)を含む溶液中で、2つの配位子が配位したイリジウムと、2つの配位子が配位したイリジウムとが、2つの塩素原子を介して架橋した、μ-クロロ架橋イリジウム(III)ダイマーを生成させ、このダイマーに、第1配位子または第2配位子を作用させることにより、イリジウム錯体を得ることができる。

【0069】
2つの配位子が配位したイリジウムにおいて、2つの配位子のうち、少なくとも1つ(好ましくは2つ)は第1配位子であることが好ましい。特に、2個または3個の第1配位子を含むイリジウム錯体を得るには、2つの第1配位子が配位したイリジウムと、2つの第1配位子が配位したイリジウムとが、2つの塩素原子を介して架橋したダイマーを経由することが好ましい。このような反応は、例えば、スキームI~IIIで表すことができる。なお、下記式では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。

【0070】
【化11】
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(式中、L1は第1配位子であり、(L1-H)は、第1配位子の2つの配位原子のうち一方に水素原子が結合した化合物(化合物7)であり、L2は第2配位子であり、(L2-H)は、第2配位子の2つの配位原子のうち一方に水素原子が結合した化合物(化合物9)である。)

【0071】
スキームIでは、4分子の化合物7と、2分子の塩化イリジウム(III)との反応により、1分子のμ-クロロ架橋イリジウム(III)ダイマー(化合物8)と、4分子の塩化水素とが生成する。
そして、1分子の化合物8と、2分子の化合物7とを反応させることにより、3個の第1配位子を含むイリジウム錯体(錯体Ir-a)2分子を得ることができる(スキームII)。また、1分子の化合物8と、2分子の化合物9とを反応させることにより、2個の第1配位子と1個の補助配位子とを含むイリジウム錯体(錯体Ir-b)2分子を得ることができる(III)。

【0072】
(スキームI)
スキームIの反応は、化合物7と塩化イリジウム(III)が溶解した溶液中で行われる。溶液に使用される溶媒としては、化合物7および塩化イリジウム(III)(水和物など)を溶解するものが使用できる。このような溶媒としては、有機溶媒、有機溶媒(水溶性の有機溶媒など)と水との混合物などを用いることが好ましい。有機溶媒としては、反応に不活性なものが使用でき、例えば、2-エトキシエタノールなどのアルコキシアルコール(C1-2アルコキシC2-4アルコールなど)、エーテル[例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)などのアルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールまたはポリエチレングリコール(ジまたはトリエチレングリコールなど)のモノまたはジC1-4アルキルエーテルなど);テトラヒドロフラン(THF)など]、ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族ポリオールなど)などの極性有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせてもよい。溶媒全体に占める水の含有量は、例えば、0~30質量%の範囲で調節してもよい。

【0073】
反応温度は、溶媒の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、80~150℃、好ましくは80~140℃または80~120℃である。反応は、必要に応じて、還流下で行ってもよい。反応は、大気圧下で行ってもよく、必要に応じて、加圧下で行ってもよい。また、反応は、窒素、および/またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。

【0074】
スキームIで得られる化合物8は、反応混合物またはその濃縮物に、水、および/またはメタノールなどのC1-4アルコールなどを添加することにより、析出させることができる。析出物を分離した後、必要に応じて精製処理をしてもよいが、特に精製処理を行うことなく、後続の反応(スキームIIまたはIII)に供してもよい。

【0075】
(スキームII)
スキームIIまたはIIIでは、化合物8と、化合物7または化合物9とを反応させる。
これらの反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、極性有機溶媒が好ましく、中でも、2-エトキシエタノールなどのアルコキシアルコール(C1-2アルコキシC2-4アルコールなど);ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族ポリオールなど);ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールまたはポリエチレングリコール(ジまたはトリエチレングリコールなど)のモノまたはジC1-4アルキルエーテルなど)などが好ましい。溶媒は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0076】
スキームIIまたはIIIの反応では、化合物8に対して、過剰の化合物7または化合物9を用いることが好ましい。例えば、1モルの化合物8に対して、化合物7を、2~5モル用いることが好ましく、化合物9を、5~30モル用いることが好ましい。

【0077】
スキームIIの反応は、必要に応じて、反応促進剤の存在下で行ってもよい。反応促進剤としては、銀化合物、例えば、銀塩(トリフルオロメタンスルホン酸銀、硝酸銀など)、および/または酸化銀などが例示できる。反応促進剤は、1モルの化合物8に対して、2~5モルの割合で使用することが好ましい。
スキームIIの反応温度は、例えば、100~300℃、好ましくは130~200℃である。反応温度に応じて、溶媒を選択してもよい。

【0078】
スキームIIIの反応は、必要に応じて、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩を用いることができる。塩基は、化合物9と同程度のモル量、例えば、1モルの化合物9に対して、1~1.5モルの割合で用いることが好ましい。

【0079】
スキームIIIの反応温度は、化合物9の種類に応じて決定でき、例えば、40~150℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは80~150℃または80~130℃である。反応温度に応じて、溶媒を選択してもよい。反応は、必要に応じて、還流下で行ってもよい。
スキームIIおよびIIIの反応はそれぞれ、大気圧下で行ってもよく、必要に応じて、加圧下で行ってもよい。また、反応は、窒素および/またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。

【0080】
イリジウム錯体は、スキームIIまたはIIIで得られる反応混合物を、必要に応じて、濃縮し、抽出、洗浄、クロマトグラフィー、および/または再結晶などの公知の分離または精製方法などを利用して、精製することにより得ることができる。

【0081】
スキームIIIに使用される化合物9としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。第2配位子部分が、式(2-9)で表される化合物は、後述のスキームVなどに従って、合成してもよい。

【0082】
(スキームIV)
化合物7は、スキームIVに示されるように、式(3)で表される、カルバゾリルフェニルユニット(カルバゾリルフェニル基)を有するジオキサボロラン化合物(化合物3)と、式(6)で表されるベンゾイルフェニルピリジン化合物(化合物6)との反応により得ることができる。この反応により、カルバゾリルフェニルユニットは、化合物6のベンゾイルユニットに導入される。

【0083】
【化12】
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(式中、X3はハロゲン原子である。R1~R6、m、n、およびp~uは前記に同じ。)

【0084】
3のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が好ましく、特に、臭素原子およびヨウ素原子が好ましい。X3の個数およびベンゾイルユニットにおける位置は、導入するカルバゾリルフェニルユニットの個数および位置に応じて決定できる。

【0085】
スキームIVの反応は、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、例えば、パラジウム錯体(トリフェニルホスフィン配位子を有するパラジウム(II)錯体またはパラジウム(0)錯体など)などが使用できる。触媒は、1モルの化合物6に対して、例えば、0.01~0.1モルの割合で使用してもよい。

【0086】
反応は、塩基の存在下で行われる。塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、および/またはアルカリ金属りん酸塩などが好ましい。塩基は、1モルの化合物6に対して、例えば、10~100モル、好ましくは20~50モルの割合で使用できる。

【0087】
スキームIVの反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、例えば、水、または水と水溶性の有機溶媒(極性有機溶媒など)とを含む混合物などが使用できる。極性有機溶媒としては、スキームIについて例示したものから適宜選択でき、THFなどが好ましい。

【0088】
スキームIVの反応温度は、例えば、60~120℃、好ましくは80~100℃である。反応は、必要に応じて、還流下で行ってもよい。スキームIVの反応は、大気圧下で行うことができる。また、反応は、窒素および/またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。

【0089】
化合物7は、反応混合物を、必要に応じて、濃縮し、抽出、洗浄、クロマトグラフィー、および/または再結晶などの公知の分離または精製方法などを利用して、精製することにより得ることができる。

【0090】
原料となる化合物3は、公知の方法、例えば、特許文献1の合成例1~5に準じて合成することができる。また、特許文献1の合成例1~5を適宜変更してもよい。例えば、2つのカルバゾリルフェニル基を有するジオキサボロラン化合物は、特許文献1の合成例4または5の手順に従って、ブロモ-ジカルバゾリルフェニル-ベンゼンの臭素原子を4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル基で置換することにより得ることができる。ブロモ-ジカルバゾリルフェニル-ベンゼンは、例えば、カルバゾリルフェニル基に対応する9H-カルバゾールとブロモジフルオロベンゼンとを、金属アルコキシドの存在下で反応させることにより得ることができる。

【0091】
(スキームV)
化合物6は、スキームVに従って、式(4)で表されるピリジルベンズアルデヒド化合物(化合物4)と、式(Gr)で表されるグリニャール試薬との反応により、式(5)で表されるアルコール体(化合物5)を生成させ、さらに、化合物5のヒドロキシメチレン基をカルボニル基に酸化することにより得ることができる。
【化13】
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(式中、X4は、ハロゲン原子であり、X3、R1~R3、m、n、p、およびqは前記に同じ。)

【0092】
グリニャール試薬において、X4で表されるハロゲン原子としては、X3で例示したものから適宜選択でき、中でも、臭素原子およびヨウ素原子(特にヨウ素原子)が好ましい。グリニャール試薬は、公知の製法により合成することができる。例えば、ハロゲン原子X3をq+1個有するハロゲン化ベンゼンに、マグネシウムと、活性化剤(ヨウ素、1,2-ジブロモエタンなど)とを反応させることにより、グリニャール試薬を得ることができる。

【0093】
化合物4は、公知の方法を利用して得ることができる。例えば、右田・小杉スティルカップリング反応などで、化合物4にそれぞれ対応する、ピリジル基を有する有機スズ化合物と、ハロゲン化ベンズアルデヒド化合物とを反応させることにより合成できる。反応は、パラジウム触媒(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどのパラジウム錯体など)の存在下で行うことができる。

【0094】
グリニャール試薬と化合物4との反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、エーテル類、例えば、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル、および/またはTHFなどの環状エーテルが挙げられ、中でも、THFが好ましい。この反応は、脱水および脱酸素条件で行うことが好ましい。反応は、大気圧下、常温(例えば、15~30℃)で行うことができる。グリニャール試薬の添加は、必要に応じて、冷却下で行ってもよい。

【0095】
得られた反応混合物には、酸(硫酸などの無機酸など)を添加し、さらに塩基を添加して中和してもよい。化合物5は、中和処理された混合物を、必要に応じて、濃縮し、抽出、洗浄、クロマトグラフィー、および/または再結晶などの公知の分離または精製方法などを利用して、精製することにより得ることができる。

【0096】
化合物5から化合物6を生成する酸化反応には、酸化剤が使用される。酸化剤としては、アルコールをケトンに変換するのに使用される公知の酸化剤(例えば、二クロム酸ピリジニウムなど)を用いることが好ましい。酸化反応は、必要に応じて、吸着剤(例えば、モレキュラーシーブスなど)の存在下で行ってもよい。

【0097】
酸化反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、極性有機溶媒が使用でき、中でも、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトンなどのケトン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドが好ましい。酸化反応は、大気圧下、常温(例えば、15~30℃)で行うことができる。

【0098】
化合物6は、反応混合物を、必要に応じて、濃縮し、抽出、洗浄、クロマトグラフィー、および/または再結晶などの公知の分離または精製方法などを利用して、精製することにより得ることができる。

【0099】
本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体は、コア部分がホールおよび電子を受容する機能を有する上、ホール輸送機能が付与されている。そのため、イリジウム錯体は、有機EL素子の各層を形成する有機EL素子材料としての利用が期待される。特に、コア部分は、りん光発光性を確保し易いため、イリジウム錯体は、有機EL素子の発光材料としての利用に適している。本発明には、イリジウム錯体を含む発光層を有する有機EL素子も包含される。以下、有機EL素子について、より詳細に説明する。

【0100】
(有機EL素子)
有機EL素子は、陽極、陰極、陽極と陰極との間に介在する発光層を含む。発光層は、上記のイリジウム錯体を含む。
(陽極および陰極)
陽極および陰極としては、有機EL素子で使用される公知の陽極および陰極がそれぞれ使用できる。

【0101】
陽極および陰極としては、それぞれ、例えば、導電性材料の薄膜が使用される。導電性材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物などの金属化合物、および/または導電性ポリマーなどが挙げられる。陽極を構成する導電性材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性の金属化合物が好ましく使用される。陰極を構成する導電性材料としては、金属、合金、および/または金属化合物などが好ましく、中でも、銀、アルミニウムなどの金属、または合金(リチウム-アルミニウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金などのアルミニウム合金;銀-マグネシウム合金などの銀合金など)などが好ましく使用される。

【0102】
導電性材料の薄膜は、ガラス板またはポリマーシートなどの基板上に形成してもよく、有機EL素子を構成する層の表面に形成してもよい。陽極および陰極の一方を基板上に形成し、他方を、有機EL素子を構成する層の表面に形成してもよい。薄膜の形成方法は、導電性材料の種類などに応じて、適宜選択できる。金属、合金、金属化合物などでは、蒸着法(真空蒸着など)、スパッタリング法、電子ビーム法などの気相法を利用して薄膜が形成される。導電性ポリマーでは、導電性ポリマーを含むコーティング液を基板上または有機EL素子を構成する層の表面に塗布することにより薄膜を形成してもよい。また、導電性ポリマーの原料(モノマーなど)を含む溶液を用いて、基板上または層の表面に、電解重合などにより薄膜(重合膜)を形成してもよい。なお、有機EL素子を構成する層としては、陽極では、発光層、ホール注入層またはホール輸送層などが挙げられ、陰極では、発光層、電子注入層または電子輸送層などが挙げられる。

【0103】
陽極(導電性材料の薄膜)の厚みは、例えば、50~300nm、好ましくは100~200nmである。
陰極の厚みは、例えば、100~350nm、好ましくは200~300nmである。

【0104】
(発光層)
発光層は、イリジウム錯体を含む。イリジウム錯体は、デンドロンを含むため、ホスト材料を特に用いることなく、発光層(非ドープ型の発光層)を形成することができる。発光層において、イリジウム錯体は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0105】
発光層は、さらに電子輸送材料を含んでもよい。イリジウム錯体は、コア部分が電子を受容することができるが、デンドロンによりホール輸送機能が付与されている。そのため、イリジウム錯体と電子輸送材料とを組み合わせることで、ホール輸送機能と電子輸送機能とのバランスを取り易くなる。

【0106】
電子輸送材料としては、電子輸送機能を有する公知の材料、例えば、オキサジアゾール化合物、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、トリアジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、キノリン化合物、キノキサリン化合物などの窒素含有環を有する化合物;ペリレン化合物;ジフェニルキノン化合物、フルオレノン化合物(トリニトロフルオレノンなどのニトロ基を有するフルオレノン化合物など);チオピランジオキシド化合物;有機ホスフィンオキシド化合物;金属錯体(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)など)などが挙げられる。これらの材料は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせてもよい。これらのうち、1,3-ビス(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)-2-イル)ベンゼン(OXD-7)などのオキサジアゾール化合物;ビス(2-ジフェニルホスフィノ)フェニル)エーテルオキシド(DPEPO)などの有機ホスフィンオキシド化合物などが好ましい。

【0107】
発光層が電子輸送材料を含む場合、電子輸送材料の量は、イリジウム錯体1モルに対して、例えば、0.05~10モルであり、好ましくは0.1~7モル、さらに好ましくは0.5~5モルである。電子輸送材料の量がこのような範囲である場合、発光層における電子輸送機能と、ホール輸送機能とのバランスを、さらに取り易くなる。

【0108】
発光層は、イリジウム錯体を含むインク(溶液または分散液など)を陽極または陰極の表面、もしくは、陽極または陰極と発光層の間に他の層を含む場合には、この層の表面に、インクを塗布し、乾燥することにより形成できる。インクには、さらに電子輸送材料を添加してもよい。インクの塗布には、公知のコーティング法または印刷法、例えば、スピンコート、ディップコート、バーコート、ロールコート、キャスト、ラングミュア-ブロジェット、および/またはインクジェットなどが特に制限なく利用できる。

【0109】
インクは、通常、溶媒を含む。溶媒としては、イリジウム錯体を溶解し得る有機溶媒が好ましく使用でき、例えば、トルエンなどの炭化水素(芳香族炭化水素など)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルムなど)などが挙げられる。溶媒は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。

【0110】
(ホール注入層および/またはホール輸送層)
陽極と発光層との間には、ホール注入層および/またはホール輸送層などの層を設けてもよい。
ホール注入層および/またはホール輸送層を設けることで、陽極から供給されるホールを、発光層に効率よく注入および/または輸送することができる。
ホール注入層およびホール輸送層は、それぞれ、ホール注入機能および/またはホール輸送機能を有する材料で形成できる。

【0111】
ホール注入機能および/またはホール輸送機能を有する材料としては、例えば、フタロシアニン化合物、トリアリールメタン化合物、トリアリールアミン化合物、オキサゾール化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、ポリシラン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリチオフェン化合物(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)など)、ポリ-N-ビニルカルバゾール化合物などが挙げられる。これらの材料は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。

【0112】
ホール注入機能および/またはホール輸送機能を有する材料は、必要に応じて、ドーパントを含んでもよい。ドーパントとしては、例えば、ポリ(スチレン-4-スルホネート)(PSS:poly(4-styrene sulfonate))などのポリアニオンが挙げられ、低分子系ドーパントを用いてもよい。

【0113】
ホール注入層およびホール輸送層は、それぞれ、上記の材料と、必要に応じてドーパントとを含む溶液または分散液を、陽極または有機EL素子を構成する層(発光層、ホール注入層など)の表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。また、ホール注入層およびホール輸送層は、それぞれ、上記の材料(またはその原料)、および必要に応じて、ドーパントを用い、蒸着法(真空蒸着など)などの気相法により形成してもよい。
ホール注入層およびホール輸送層の厚みは、例えば、5~150nm、好ましくは20~100nmである。

【0114】
(電子注入層および/または電子輸送層)
陰極と発光層との間には、電子注入層および/または電子輸送層などの層を設けてもよい。電子注入層および電子輸送層の双方を形成する場合、その順序は特に制限されず、陰極と接するように電子注入層を形成し、電子注入層と発光層との間に電子輸送層を形成してもよい。また、陰極と接するように電子輸送層を形成し、電子輸送層と発光層との間に電子注入層を形成してもよい。

【0115】
電子注入層は、電子注入材料を含む。電子注入材料としては、公知の材料が使用でき、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属フッ化物;炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;酸化リチウムなどのアルカリ金属酸化物など)、アルカリ土類金属の単体(例えば、カルシウム、バリウムなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、フッ化マグネシウム、フッ化バリウムなどのアルカリ土類金属フッ化物など)、遷移金属化合物(例えば、酸化モリブデン、酸化タングステンなどの遷移金属酸化物など)などが挙げられる。電子注入材料は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
電子注入層は、蒸着(真空蒸着など)、スパッタリングなどの気相法により形成できる。
電子注入層の厚みは、例えば、0.3~10nm、好ましくは0.5~5nmである。

【0116】
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、発光層について例示した電子輸送材料から適宜選択できる。電子輸送層は、電子輸送材料を含む溶液または分散液を発光層、電子注入層または陰極の表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。溶液または分散液の塗布には、発光層について記載したコーティング法または印刷法などが利用できる。溶液または分散液に含まれる溶媒としては、発光層のインクに含まれる溶媒として例示したものから適宜選択できる。電子輸送層は、電子輸送材料(またはその原料)を用いて、蒸着(真空蒸着など)などの気相法により形成してもよい。
電子輸送層の厚みは、例えば、5~100nm、好ましくは10~70nmである。

【0117】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL素子を概略的に示す模式図である。
有機EL素子1は、陽極2と、陰極3と、これらの間に発光層4とを含む。陽極2はガラス基板2a上に形成されている。陽極2と発光層4との間には、ホール注入層5が形成されており、発光層4と陰極3との間には、電子注入層6が形成されている。発光層4は、上記のイリジウム錯体を含んでおり、必要に応じて、さらに電子輸送材料を含んでもよい。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、合成は、特に断りのない限り、窒素雰囲気下で行った。
生成物の同定には、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、マス(MS)スペクトル、および元素分析を利用した。NMRスペクトルの測定には、Jeol JNM-ECX400 (400 MHz) またはJeol JNM-ECS400 (400 MHz)を用いた。MSスペクトルは、α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(CHCA)をマトリックスとし、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF-MS,Shimadzu-Kratos AXIMA-CFR PLUS TOF mass)を用いて測定した。元素分析にはJ-Science MICRO CORDER JM10 analyzerを用いた。
【実施例】
【0119】
実施例1(イリジウム錯体Ir-1の合成)
下記の手順で、ビス[2-(5-((3,3''-ビス(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1':3',1''-ターフェニル])-5'-イル)カルボニル)-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2']イリジウム(III)[ペンタン-1,3-ジオナト-O,O](イリジウム錯体Ir-1)を合成した。
【実施例】
【0120】
(a)2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)ベンズアルデヒド(化合物4a)の合成
乾燥トルエン(150mL)に、3-ブロモ-2,6-ジフルオロベンズアルデヒド(7.16g, 32.4mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.86g, 1.61mmol)をそれぞれ混合し、撹拌しながら120℃に昇温した。混合物に、2-トリブチルスタニルピリジン(10mL,31.2mmol)を加え、130℃で21時間反応を行った。反応混合物を放冷し、2回水洗し、次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相を回収した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=2:3(体積比))を用いて精製し、化合物4aを白色固体として得た(5.01g, 22.9mmol, 収率73%)。
【実施例】
【0121】
(b)(3,5-ジブロモフェニル)(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)メタノール(化合物5a)の合成
まず、次のようにしてグリニャール試薬を調製した。フラスコに、マグネシウム(0.261g,10.9mmol)、ヨウ素(5mg,0.02mmol)、および乾燥テトラヒドロフラン(THF)(5mL)を加えて混合した。混合物に、常温で、1,3,5-トリブロモベンゼン(3.15g,10.0mmol)および乾燥THF(15mL)を含む溶液を滴下し、2時間攪拌して対応するグリニャール試薬を得た。
【実施例】
【0122】
別のフラスコに、(a)で得られた化合物4a(0.438g,2.00mmol)、および乾燥THF(4mL)を加えて混合した。混合物に、氷冷下で、上記で得られたグリニャール試薬(4.4mL)を滴下し、次いで、常温で4時間攪拌させて反応を行った。反応混合物に、硫酸(濃度1mol/L、5mL)を加えて酸性にした後、飽和Na2CO3水溶液を加えて中和した。得られた混合物の有機相を回収し、溶媒を留去した。残渣をクロロホルムに溶かし、2回水洗した後、飽和NaCl水溶液で洗浄し、有機相を回収した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン =1:2(体積比))を用いて精製し、溶媒を留去することにより、化合物5a(白色固体,0.509g,1.12mmol,収率56%)を得た。
【実施例】
【0123】
化合物5aの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ3.46(d,J=7.6Hz,1H), 6.23(d,J=7.6Hz,1H), 6.99-7.05(m,1H), 7.25-7.30(m,1H), 7.51(s,2H), 7.55-7.58(m,1H), 7.66-7.70(m,1H), 7.72-7.78(m,1H), 7.88-7.96(m,1H), 8.70(d,J=5.2Hz,1H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z 456 ([M+H]+).
元素分析:C18H11Br2F2NO理論値: C, 47.51; H, 2.44; N, 3.08. 実測値: C, 47.77; H, 2.67; N, 2.96.
【実施例】
【0124】
(c)(3,5-ジブロモフェニル)(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)メタノン(化合物6a)の合成
フラスコに、(b)で得られた化合物5a(0.321g,0.705mmol)、二クロム酸ピリジニウム(0.465g,2.16mmol)、モレキュラーシーブス(4A 1/16,0.819g)、およびジクロロメタン(40mL)を加え、常温で、8時間攪拌して反応を行った。得られた混合物を濾過して濾液を回収した。得られた濾液を、2回水洗し、飽和NaCl水溶液で洗浄して、有機相を回収した。得られた有機相を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、溶媒を留去することにより、化合物6a(白色固体,0.251g,0.554mmol,収率78%)を得た。
【実施例】
【0125】
化合物6aの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ7.13-7.20(m,1H), 7.27-7.32(m,1H), 7.70-7.80(m,2H), 7.87-7.96(m,3H), 8.17-8.26(m,1H), 8.70-8.77(m,1H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z 454 ([M+H]+).
元素分析:C18H9Br2F2NO理論値: C, 47.72; H, 2.00; N, 3.09. 実測値: C, 47.76; H, 2.08; N, 3.03.
【実施例】
【0126】
(d)(3,5-ビス(2-((3,6-ジtert-ブチル)カルバゾール-9-イル)フェニル)フェニル)(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)メタノン(化合物7a)の合成
まず、特許文献1の合成例1、2および4の手順に従って、3,6-ジtert-ブチル-9-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(化合物3a)を合成した。
【実施例】
【0127】
次いで、化合物3a(2.95g,6.12mmol)、(c)で得られた化合物6a(1.26g,2.78mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.226g)、炭酸カリウム(14.0g)、水(50mL)、およびTHF(50mL)をフラスコに入れ、100℃で、18時間還流させながら、反応を行った。二相に分離した反応混合物から有機相を回収し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムに溶かし、2回水洗し、飽和NaCl水溶液で洗浄して、有機相を回収した。有機相を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:2(体積比))で精製し、溶媒を留去することにより、化合物7a(白色固体,0.370g,0.369mmol,収率66%)を得た。
【実施例】
【0128】
化合物7aの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.44(s,36H), 7.14(t,J=8.4Hz,1H), 7.21-7.26(m,1H), 7.36(d,J=8.8Hz,4H), 7.43(dd,J=8.4Hz および4.6Hz,4H), 7.54-7.62(m,2H), 7.62-7.75(m,6H), 7.82(s,2H), 8.08-8.24(m,8H), 8.69(d,J=4.4Hz,1H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z1002 ([M]+), 1025 ([M+Na]+).
元素分析:C70H65F2N3O理論値: C, 83.88; H, 6.54; N, 4.19. 実測値: C, 84.12; H, 6.57; N, 3.87.
【実施例】
【0129】
(e)μ-クロロ架橋イリジウム(III)ダイマー(化合物8a)の合成
(d)で得られた化合物7a(0.201g,0.200mmol)、塩化イリジウム(III)三水和物(35mg,0.100mmol)、2-エトキシエタノール(10mL)、THF(5mL)、および水(1mL)を、フラスコに入れ、135℃で12時間攪拌することにより反応を行った。得られた反応混合物を濃縮し、メタノールを加えて、化合物8aを析出させて、回収した(化合物8a,黄色粉末,0.184g,0.0413mmol,収率82%)。化合物8aは、さらなる精製を行うことなく、次の合成に供した。
【実施例】
【0130】
(f)イリジウム錯体Ir-1の合成
化合物8a(0.487g,0.109mmol)、アセチルアセトン(0.30mL,2.94mmol)、炭酸ナトリウム(0.309g,2.92mmol)、および2-エトキシエタノール(70mL)をフラスコに入れ、80℃で2時間攪拌することにより反応を行った。反応混合物を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させた。得られた溶液を、2回水洗し、飽和NaCl水溶液で洗浄して、有機相を回収した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:3(体積比))で精製して、溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン/メタノール二相系で再結晶することにより、イリジウム錯体Ir-1(黄色固体、0.102g,0.0445mmol,収率20%)を得た。
【実施例】
【0131】
錯体Ir-1の分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.42 (s,72H), 1.67(s,6H), 5.20(s,1H), 5.81(d,J=9.2Hz,2H),7.20(t,J=7.2Hz,2H), 7.33(d,J=8.8Hz,8H), 7.39(dd,J=8.8Hzおよび2.0Hz,8H), 7.49-7.
56(m,4H), 7.56-7.64(m,8H), 7.57-7.64(m,6H), 7.98(s,2H), 8.07-8.13(m,12H), 8.25(d,J=8.8Hz,2H), 8.41(d,J=4.4Hz,2H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z 2195 ([M-acac]+), 2294 ([M]+), 2317 ([M+Na]+).
元素分析C145H135F4IrN6O4理論値: C, 75.92; H, 5.93; N, 3.66. 実測値: C, 75.88; H,6.23; N, 3.45.
【実施例】
【0132】
実施例2A(イリジウム錯体Ir-2の合成)
以下の手順で、ビス[2-(5-((3,3''-ビス(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1':3',1''-ターフェニル])-5'-イル)カルボニル)-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2']イリジウム(III)[ピリジン-2-カルボキシレート-N,O](イリジウム錯体Ir-2)を合成した。
【実施例】
【0133】
実施例1の(a)~(e)と同様にして合成した化合物8a(0.198g,0.0443mmol)、ピコリン酸(26mg,0.21mmol)、炭酸ナトリウム(0.168g)、および2-エトキシエタノール(30mL)をフラスコに入れ、80℃で3時間攪拌することにより反応を行った。反応混合物を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させた。得られた溶液を、2回水洗し、飽和NaCl水溶液で洗浄した後、有機相を回収した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣を、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン/メタノール二相系で再結晶することにより、イリジウム錯体Ir-2(黄色固体,63mg,0.027mmol,収率31%)を得た。
【実施例】
【0134】
錯体Ir-2の分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.42(s,36H), 1.43(s,36H), 5.75(d,J=8.8Hz,1H), 5.98(d,J=9.2Hz,1H), 6.95-7.02(m,2H), 7.15-7.20(m,1H), 7.30-7.45(m,17H), 7.50-7.70(m,14H), 7.71-7.84(m,6H), 7.99(t,J=1.2Hz,1H), 8.05(t,J=2.0Hz,1H), 8.07-8.17(m,12H), 8.20-8.26(m,2H), 8.30(dd,J=9.2および1.4Hz,1H), 8.75 (dd,J=6.0および0.9Hz,1H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z 2194 ([M-pic]+), 2316 ([M]+), 2339 ([M+Na]+).
元素分析C146H132F4IrN7O4+0.25CH2Cl2理論値: C, 75.13; H, 5.71; N, 4.19. 実測値: C, 75.07; H, 5.32; N, 4.25.
【実施例】
【0135】
実施例3A(イリジウム錯体Ir-3の合成)
以下の手順で、トリス[2-(5-((3,3''-ビス(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1':3',1''-ターフェニル]-5'-イル)カルボニル)-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2']イリジウム(III)(イリジウム錯体Ir-3)を合成した。
【実施例】
【0136】
実施例1の(a)~(e)と同様にして合成した化合物8a(0.200g,0.0449mmol)、実施例1の(a)~(d)と同様にして合成した化合物7a(0.115g,0.114mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(37mg)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(10mL)をフラスコに入れ、遮光下、170℃で12時間攪拌することにより、反応を行った。減圧下で、反応混合物から溶媒を留去し、残渣をクロロホルムに溶解させた。得られた溶液を、2回水洗し、飽和NaCl水溶液で洗浄して、有機相を回収した。有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:ヘキサン=2:1(体積比))で精製して、溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン/メタノール二相系で再結晶することにより、イリジウム錯体Ir-3(黄色固体,32mg,0.010mmol,収率23%)を得た。
【実施例】
【0137】
錯体Ir-3の分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.41(s,108H), 6.51(d,J=9.2Hz,3H), 6.67(t,J=6.8Hz,3H), 7.27-7.45 (m,30H), 7.46-7.69(m,18H), 7.73-7.84(m,6H), 8.01(s,3H), 8.05-8.18(m,18H),
8.21(d,J=10.4Hz,3H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z 3194 ([M]+)
元素分析C210H192F6IrN9O3理論値: C, 78.92; H, 6.05; N, 3.94. 実測値: C, 78.74; H,6.11; N, 3.85.
【実施例】
【0138】
実施例1、2Aおよび3Aで合成したイリジウム錯体Ir-1~Ir-3の構造を以下に示す。下記の構造式では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。このような構造式で表されるイリジウム錯体も本発明に包含される。
【化14】
JP2015136845A1_000016t.gif
【実施例】
【0139】
参考例1
下記の手順で、ビス[2-(5-ベンゾイル-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')]イリジウム(III)[ペンタン-1,3-ジオナト-O,O](イリジウム錯体r-Ir-1)を合成した。
まず、1,3,5-トリブロモベンゼンに代えて、1-ブロモベンゼンを用いる以外は、実施例1の(b)と同様にして、グリニャール試薬を調製した。得られたグリニャール試薬を用いる以外は、実施例1の(b)と同様にして、式(5b)で表される(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)メタノール(化合物5b)を合成した。
次いで、化合物5aに代えて、化合物5bを用いる以外は、実施例1の(c)と同様にして、式(6b)で表される(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)メタノン(化合物6b)を合成した。
【実施例】
【0140】
化合物7aに代えて、化合物6bを用いる以外は、実施例1の(e)と同様にして、式8bで表される化合物8bを合成した。そして、化合物8aに代えて、化合物8bを用いる以外は、実施例1の(f)と同様にして、式(r-Ir-1)で表されるイリジウム錯体r-Ir-1を合成した。
なお、各化合物の精製および/または再結晶などの条件は、適宜変更した。各化合物の同定は、1H-NMR、MSスペクトル、および元素分析により行った。下記式では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。
【実施例】
【0141】
【化15】
JP2015136845A1_000017t.gif
【実施例】
【0142】
参考例2
参考例1と同様にして合成した化合物8bを、化合物8aに代えて用いる以外は、実施例2Aと同様にして、式(r-Ir-2)で表されるビス[2-(5-ベンゾイル-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')]イリジウム(III)[ピリジン-2-カルボキシレート-N,O](イリジウム錯体r-Ir-2)を合成した。
なお、化合物の精製および/または再結晶などの条件は、適宜変更した。化合物の同定は、1H-NMR、MSスペクトル、および元素分析により行った。
【実施例】
【0143】
参考例3
参考例1と同様にして合成した化合物8bを、化合物8aに代えて用い、参考例1と同様にして合成した化合物6bを、化合物7aに代えて用いる以外は、実施例3Aと同様にして、式(r-Ir-3)で表されるトリス[2-(5-ベンゾイル-4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')]イリジウム(III)(イリジウム錯体r-Ir-3)を合成した。
なお、化合物の精製および/または再結晶などの条件は、適宜変更した。化合物の同定は、1H-NMR、MSスペクトル、および元素分析により行った。下記式では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。
【実施例】
【0144】
【化16】
JP2015136845A1_000018t.gif
【実施例】
【0145】
実施例2B(イリジウム錯体Ir-4の合成)
下記の手順で、ビス[2-(4,6-ジフルオロ-5-(3,3’’,5,5’’-テトラキス(3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)(1,1’,3’,1’’-ターフェニル)-5’-イル-カルボニル)フェニル)ピリジナト-N,C2']イリジウム(III)[ピコリネート-N,O](イリジウム錯体Ir-4)を合成した。
【実施例】
【0146】
(a)(2,6-ジフルオロ-3-(ピリジン-2-イル)フェニル)(3,3’’,5,5''-テトラキス(3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-5’-イル)メタノン(化合物7c)の合成
9,9’-(5-(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3-フェニレン)ビス(3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール)(化合物3c、1.84g、2.43mmol)、実施例1の(a)~(c)と同様にして得られた化合物6a(0.500g、1.10mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.884g、0.126mmol)、炭酸カリウム(4.99g、36mmol)、水(20mL)、およびTHF(20mL)をフラスコに入れ、100℃で、24時間還流させながら、反応を行った。二相に分離した反応混合物から有機相を回収し、水相を酢酸エチル(50mL)で抽出した。回収した有機相と抽出した酢酸エチル相とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:ヘキサン=2:1(体積比))で精製し、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムで溶解し、メタノールを添加することにより析出した化合物7c(白色固体,1.18g,0.758mmol,収率69%)を得た。
【実施例】
【0147】
化合物7cの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.43(s,72H), 7.13(t,J=8.2Hz,1H), 7.21(ddd,J=8.1,4.9および1.2Hz,1H), 7.44(dd,J=8.7および1.8Hz,8H), 7.48(d,J=8.7Hz,8H), 7.58(td,J=7.8および1.8Hz,1H), 7.67(d,J=6.9Hz,1H), 7.82(t,J=1.8Hz,2H), 7.86-7.93(m,4H), 8.00-8.13(m,8H), 8.14-8.25(m,4H),8.66(d,J=4.6Hz,1H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z:C110H111F2N5O([M]+) 理論値1557, 実測値1557.
元素分析:C110H111F2N5O理論値: C, 84.85; H, 7.19; N, 4.50. 実測値: C, 84.94; H, 7.51; N, 4.30.
【実施例】
【0148】
なお、化合物3cは以下の手順で合成した。
3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール(15.8g、56.7mmol)、ジメチルイミダゾリジノン(40mL)、およびカリウムtert-ブトキシド(6.71g、59.8mmol)をフラスコに入れ、120℃に加熱した。さらに1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン(5.47g、28.3mmol)を加え、攪拌下、140℃まで加熱してこの温度で1時間反応させた。放冷後、得られた混合物に、酢酸エチル(300mL)を加えて攪拌し、分離した有機相を回収した。有機相を水(合計200mL)で2回洗浄した後、有機相を回収した。得られた有機相から減圧下で溶媒を留去した。残渣に適量のエタノールを加えて加熱下で攪拌しながら洗浄し、得られる混合物を吸引ろ過することにより、9,9’-(5-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール)(化合物2c、白色固体、17.5g、20.7mmol、収率73%)を得た。
【実施例】
【0149】
化合物2cの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.46(s,36H), 7.44-7.52(m,8H), 7.76(t,J=1.8Hz,1H), 7.76(d,J=1.8Hz,2H), 8.13(d,J=0.9Hz,4H) ppm.
13C-NMR(101MHz,CDCl3) δ32.1, 34.9, 109.2, 116.5, 123.0, 123.9, 123.9, 124.0, 127.7, 138.7, 140.9, 143.8 ppm.
MALDI-TOF MS m/z:C46H51BrN2 ([M+H]+) 理論値711, 実測値711.
元素分析:C46H51BrN2理論値: C, 77.62; H, 7.22; N, 3.94. 実測値: C, 77.28; H, 7.21; N, 3.88.
【実施例】
【0150】
得られた化合物2c(5.00g、7.03mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.91g、15.4mmol)、酢酸カリウム(2.01g、20.5mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(0.306g、0.375mmol)、および乾燥ジメチルスルホキシド(120mL)をフラスコに入れ、減圧と窒素吹き込みのセットを3回繰り返して、フラスコ内の空気を窒素で置換した。フラスコ内の混合物を、窒素雰囲気下、100℃で攪拌しながら6時間加熱した。得られた混合物に、水200mLを添加して白色固体を析出させ、吸引ろ過により回収した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム:ヘキサン=1:1(体積比))を用いて精製し、溶媒を留去することにより、化合物3c(白色固体、4.57g、6.02mmol、収率86%)を得た。
【実施例】
【0151】
化合物3cの分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.35(s,12H), 1.46(s,36H), 4.20(dd,J=8.7および1.8Hz,4H), 7.43(d,J=8.7Hz,4H), 7.83(t,J=2.3Hz,1H), 8.05(d,J=2.3Hz,2H), 8.13(d,J=1.8Hz,4H) ppm.
13C-NMR(101MHz,CDCl3) δ25.0,32.2, 34.9, 84.4, 109.3, 116.4, 123.6, 123.8, 127.5, 131.4, 132.9, 139.2, 139.3, 143.1 ppm.
MALDI-TOF MS m/z:C46H51BrN2 ([M]+) 理論値759, 実測値759.
元素分析:C52H63BN2O2理論値: C, 82.30; H, 8.37; N, 3.69. 実測値: C, 82.34; H, 8.55; N, 3.56.
【実施例】
【0152】
(b)μ-クロロ架橋イリジウム(III)ダイマー(化合物8c)の合成
(a)で得られた化合物7c(0.250g,0.160mmol)、塩化イリジウム(III)三水和物(28.0mg,0.0794mmol)、2-エトキシエタノール(8mL)、THF(4mL)、および水(0.4mL)をフラスコに入れ、100℃で12時間攪拌することにより反応を行った。得られた反応混合物を濃縮し、メタノールを加えて、化合物8bを析出させて、回収した(化合物8c,黄色粉末,0.254g,0.0380mmol,収率96%)。化合物8cは、さらなる精製を行うことなく、次の合成に供した。
【実施例】
【0153】
(c)イリジウム錯体Ir-4の合成
化合物8c(0.254g,0.0380mmol)、ピコリン酸(10.6mg,0.0861mmol)、炭酸ナトリウム(0.0943g、0.890mmol)、および2-エトキシエタノール(18mL)をフラスコに入れ、50℃で1時間攪拌することにより反応を行った。反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解させて濾過し、濾液から溶媒を留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン/メタノール二相系で再結晶することにより、イリジウム錯体Ir-4(黄色固体,106.2mg,0.0310mmol,収率41%)を得た。
【実施例】
【0154】
錯体Ir-4の分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.43(s,108H), 6.51(d,J=9.5Hz,3H), 6.66(t,J=6.8Hz,3H), 7.27-7.45(m,30H), 7.48(d,J=7.7Hz,6H), 7.56(t,J=7.7Hz,6H), 7.62(d,J=7.7Hz,6H), 7.77(s,6H), 8.01(s,3H), 8.10(d,J=1.36Hz,18H), 8.21(d,J=10.4Hz,3H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z ([M]+)C210H192F6IrN9O3 理論値3196, 実測値3196.
元素分析C210H192F6IrN9O3理論値: C, 78.92; H, 6.06; N, 3.94. 実測値: C, 78.74; H, 6.11; N, 3.85.
【実施例】
【0155】
実施例3B(イリジウム錯体Ir-5の合成)
以下の手順で、fac-トリス[2-(4,6-ジフルオロ-5-(3,3'',5,5’’-テトラキス(3,6-ジtert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-[1,1':3',1''-ターフェニル]-5'-イル-カルボニル)フェニル)ピリジナト-N,C2']イリジウム(III)(イリジウム錯体Ir-5)を合成した。
【実施例】
【0156】
実施例2Bの(a)および(b)と同様にして合成した化合物8c(0.199g,0.0298mmol)、実施例2Bの(a)と同様にして合成した化合物7c(0.117g,0.0745mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(31.5mg、0.123mmol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(10mL)をフラスコに入れ、遮光下、170℃で12時間攪拌することにより、反応を行った。減圧下で、反応混合物から溶媒を留去し、残渣をジクロロメタンに溶解させて濾過し、濾液から溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:4(体積比))で精製した後、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=1:5(体積比))で精製した。次いで、溶媒を留去し、残渣をクロロホルム/メタノール二相系で再結晶することにより、イリジウム錯体Ir-5(黄色固体,14mg,0.0029mmol,収率5%)を得た。
【実施例】
【0157】
錯体Ir-5の分析結果は以下の通りである。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) δ1.41(s,216H), 5.59(t,J=6.4Hz,3H), 6.30(d,J=9.2Hz,3H), 6.53(t,J=7.8Hz,3H), 6.97(d,J=4.6Hz,3H), 7.37-7.50(m,48H), 7.75(s,6H), 7.77-7.87(m,15H), 8.04(d,J=10.1Hz,9H), 8.10(s,24H) ppm.
MALDI-TOF MS m/z ([M]+) C330H330F6IrN15O3 理論値4861, 実測値4861.
元素分析C330H330F6IrN15O3 理論値: C, 81.55; H, 6.84; N, 4.32. 実測値: C, 81.33; H, 7.03; N, 4.66.
【実施例】
【0158】
実施例2Bおよび3Bで合成したイリジウム錯体Ir-4およびIr-5の構造を以下に示す。下記の構造式では、極限状態におけるイリジウム原子と配位原子との結合のうち、配位結合を点線で示し、共有結合を実線で示す。このような構造式で表されるイリジウム錯体も本発明に包含される。
【化17】
JP2015136845A1_000019t.gif
【実施例】
【0159】
試験例1
実施例1、2A、3A、2Bおよび3Bで得られたイリジウム錯体を用いて、PLスペクトル、PL発光寿命、およびPL量子収率を測定した。参考例1~3で得られたイリジウム錯体については、PLスペクトルを測定した。
【実施例】
【0160】
測定には、溶液サンプルおよび/または薄膜サンプル(ニート膜)を用いた。溶液サンプルとしては、10μmol/Lの濃度で錯体を含むジクロロメタン溶液を用い、測定に先立ってアルゴンバブリングを行い、密閉した状態で測定を行った。薄膜サンプルは、錯体を所定濃度で含むクロロホルム溶液を、膜厚が80nmとなるように、石英基板上にスピンコートすることにより作製した。薄膜サンプルを用いた測定は、窒素フロー下で行った。
【実施例】
【0161】
PLスペクトルの測定には、分光蛍光光度計(日本分光(株)製、FP-6600)を用いた。
PL発光寿命は、励起光源としてnanoLED(励起波長:390nm)を用い、時間相関単一光子計数法蛍光寿命測定装置(Horiba JobinYvon社、FluoroCube)により測定した。
PL量子収率は、絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920-12)で測定した。
【実施例】
【0162】
錯体Ir-1~Ir-3のPLスペクトルを図2~図4に示し、錯体Ir-4およびIr-5のPLスペクトルを図8~図9に示す。これらの図に示されるように、錯体Ir-1~Ir-5はいずれも、450~500nm付近の波長域でりん光性の発光を示した。また、錯体Ir-1~Ir-5では、溶液サンプルと、薄膜サンプルとで、PLスペクトルの発光波形がそれほど変わらず、発光のピーク波長もほとんど同じであり、長波長側へのシフトも見られなかった。これらの結果から、実施例の錯体では、色素の会合およびこれによる発光などが抑制されていることが分かる。
【実施例】
【0163】
表1に、実施例の錯体のPLスペクトルにおける発光ピーク波長λPL(nm)、溶液中のPL量子収率ΦPL、および溶液中のPL発光寿命τPL(μsec)を示す。表1には、溶液サンプルを用いて測定した、参考例の錯体の発光ピーク波長λPL(nm)も合わせて示した。
【実施例】
【0164】
【表1】
JP2015136845A1_000020t.gif
【実施例】
【0165】
表1に示されるように、実施例の錯体Ir-1の発光のピーク波長は、参考例の錯体r-Ir-1と同じであった。また、実施例の錯体Ir-2およびIr-4の発光ピーク波長も、参考例の錯体r-Ir-2とほぼ同じであった。実施例の錯体Ir-3およびIr-5の発光ピーク波長も、参考例の錯体r-Ir-3とほぼ同じであった。実施例および参考例の錯体の発光ピーク波長460~491nmであり、いずれも、青色に特徴的な波長であった。これらの結果から、実施例の錯体では、色素ユニットへのデンドロンの結合によっても、色素本来(つまり、参考例の錯体)の青色のりん光発光が失われることなく、保存されていることが分かる。
また、実施例の錯体はいずれも、0.5近くか、または0.5を超える高いPL量子収率を有しており、PL発光寿命は0.5μ秒から1.6μ秒程度と適切であった。
【実施例】
【0166】
実施例4(有機EL素子の作製)
イリジウム錯体Ir-1を用いて、下記の手順で、図1に示す有機EL素子1を作製し、評価を行った。
(a)ホール注入層5の形成
ITO-ガラス基板(三容真空工業製,ITO、膜厚150nm)にパターニング処理を施し、洗浄することにより陽極2を準備した。
【実施例】
【0167】
次いで、ITO薄膜を、オゾンにより表面処理した。表面処理後、速やかに、ホール注入材料をスピンコート法によりITO膜上に成膜し、110℃にて1時間焼成することにより、厚み40nmのホール注入層5を形成した。ホール注入材料としては、PEDOTとPSSとを含む導電性ポリマー(Heraeus Clevios製、PVP CH8000)を用いた。
【実施例】
【0168】
(b)発光層4の形成
脱水クロロホルムに、イリジウム錯体Ir-1を溶解させて発光層用インクa1-1を調製した。得られた発光層用インクa1-1を用いて、ホール注入層5上に、スピンコート法により成膜し、80℃で一時間焼成することにより、厚み80nmの発光層4を形成した。
【実施例】
【0169】
(c)電子注入層6および陰極3の形成
シャドウマスクを用いて、真空蒸着により、電子注入材料としてのフッ化セシウムの薄膜(電子注入層6、厚み1nm)を形成し、次いで、アルミニウムの薄膜(陰極3、厚み250nm)を作製した。このとき、発光部の面積が、10mm2(2mm×5mm)となるように、電子注入層6および陰極3を作製した。
このようにして、有機EL素子A1-1を完成させた。
【実施例】
【0170】
実施例5~7(有機EL素子の作製)
脱水クロロホルムに、イリジウム錯体Ir-1と、電子輸送材料としてのOXD-7とを、1:0.50のモル比で溶解させて発光層用インクa1-2を調製した。
また、Ir-1と、OXD-7とのモル比を、1:3.0および1:5.0にそれぞれ変更した発光層用インクa1-3およびa1-4を調製した。
発光層用インクa1-1に代えて、インクa1-2~a1-4をそれぞれ用いる以外は、実施例4の(b)と同様にして発光層4を形成した。
発光層4の形成以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子A1-2~A1-4を完成させた。
【実施例】
【0171】
実施例8~11(有機EL素子の作製)
発光層4の形成において、イリジウム錯体Ir-1に代えて、イリジウム錯体Ir-2を用いる以外は、実施例4~7と同様にして発光層4を形成した。
発光層4の形成以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子A2-1~A2-4を完成させた。
【実施例】
【0172】
実施例12および13(有機EL素子の作製)
発光層4の形成において、イリジウム錯体Ir-1に代えて、イリジウム錯体Ir-3を用いる以外は、実施例4および7と同様にして発光層4を形成した。
発光層4の形成以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子A3-1およびA3-2を完成させた。
【実施例】
【0173】
実施例14~16(有機EL素子の作製)
イリジウム錯体Ir-1に代えてイリジウム錯体Ir-2と、OXD-7に代えて電子輸送材料としてのDPEPOとを、表3に示すモル比で用いるように変更した以外は、実施例5~7と同様にして発光層4を形成した。
発光層4の形成以外は、実施例4と同様にして、有機EL素子A2-5~A2-7を完成させた。
【実施例】
【0174】
実施例17~19(有機EL素子の作製)
イリジウム錯体Ir-2に代えてイリジウム錯体Ir-3を用いた以外は、実施例14~16と同様にして、発光層4を形成し、有機EL素子A3-5~A3-7を完成させた。
【実施例】
【0175】
実施例20~23
イリジウム錯体Ir-1に代えて、イリジウム錯体Ir-4を用いた以外は、実施例4と同様にして、発光層4を形成し、有機EL素子A4-1を完成させた。
イリジウム錯体Ir-2に代えてイリジウム錯体Ir-4を用いた以外は、実施例14~16と同様にして、発光層4を形成し、有機EL素子A4-2~A4-4を完成させた。
【実施例】
【0176】
実施例24~27(有機EL素子の作製)
イリジウム錯体Ir-1に代えて、イリジウム錯体Ir-5を用いた以外は、実施例4と同様にして、発光層4を形成し、有機EL素子A5-1を完成させた。
イリジウム錯体Ir-2に代えてイリジウム錯体Ir-5を用いた以外は、実施例14~16と同様にして、発光層4を形成し、有機EL素子A5-2~A5-4を完成させた。
【実施例】
【0177】
試験例2(有機EL素子特性の評価)
実施例4~27で得られた有機EL素子を、紫外線硬化樹脂を用いて、キャビティガラス中に封止し、有機EL特性評価用のサンプルを作製した。
ELスペクトル、最大輝度Lmax(cd/m2)、最大外部量子効率ηext,max(%)およびCIE表色系(x,y)などの有機EL素子特性は、輝度配光特性測定装置(浜松ホトニクス社製、C-9920-11)を用いて測定した。
【実施例】
【0178】
ELスペクトルは、最大輝度Lmaxにおいて測定した。図5は、実施例4~7で得られた有機EL素子(A1-1)~(A1-4)のELスペクトルである。図6は、実施例8~11で得られた有機EL素子(A2-1)~(A2-4)のELスペクトルである。図7は、実施例12~13で得られた有機EL素子(A3-1)~(A3-2)のELスペクトルである。図10は、実施例8および16で得られた有機EL素子(A2-1)および(A2-7)のELスペクトルである。図11は、実施例12および19で得られた有機EL素子(A3-1)および(A3-7)のELスペクトルである。図12は、実施例20および23で得られた有機EL素子(A4-1)および(A4-4)のELスペクトルである。図13は、実施例24および27で得られた有機EL素子(A5-1)および(A5-4)のELスペクトルである。
【実施例】
【0179】
有機EL素子のELスペクトルにおけるピーク波長λEL(nm)、最大輝度Lmax(cd/m2)、最大外部量子効率ηext,max(%)およびCIE表色系(x,y)の結果を、表2および表3に示す。Lmax、およびηext,maxについては、[]内に測定時の印加電圧(V)も合わせて示した。表2は、電子輸送材料としてOXD-7を用いた場合のデータであり、表3は、DPEPOを用いた場合のデータである。表3には、実施例8の有機EL素子A2-1および実施例12の有機EL素子A3-1の結果も合わせて示した。
【実施例】
【0180】
【表2】
JP2015136845A1_000021t.gif
【実施例】
【0181】
【表3】
JP2015136845A1_000022t.gif
【実施例】
【0182】
いずれの有機EL素子でも、高い発光強度で青色の発光が確認された。このことから、実施例のイリジウム錯体は、いずれも、非ドープ型の発光材料として有用であることが分かる。電子輸送材料であるOXD-7またはDPEPOを用いない場合にも、十分な発光が確認されたが、電子輸送材料を用いることにより、輝度がさらに高くなり、外部量子効率も向上した。これは、電子輸送材料の添加により、ホールおよび電子のキャリアバランスが向上したためと考えられる。
【実施例】
【0183】
ELスペクトルからは、カルバゾールに由来する発光は見られない。このことから、デンドロンが高い三重項準位を有し、デンドロンから色素ユニットへのエネルギー移動が効率よく起こっていることが示唆される。
【実施例】
【0184】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体は、有機EL素子材料、特に発光材料(非ドープ型の発光材料など)としての利用が期待される。
【符号の説明】
【0186】
1 有機EL素子、2 陽極、2a ガラス基板、3 陰極、4 発光層、5 ホール注入層、6 電子注入層
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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