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明細書 :触媒前駆体および不斉鎖状化合物の合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月2日(2017.2.2)
発明の名称または考案の名称 触媒前駆体および不斉鎖状化合物の合成方法
国際特許分類 B01J  31/22        (2006.01)
C07F  15/00        (2006.01)
C07C  13/605       (2006.01)
C07C  15/24        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/22 Z
C07F 15/00 CSPA
C07C 13/605
C07C 15/24
B01J 31/24 Z
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
国際予備審査の請求
全頁数 90
出願番号 特願2015-500238 (P2015-500238)
国際出願番号 PCT/JP2014/053096
国際公開番号 WO2014/126068
国際出願日 平成26年2月10日(2014.2.10)
国際公開日 平成26年8月21日(2014.8.21)
優先権出願番号 2013028947
優先日 平成25年2月18日(2013.2.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】平野 雅文
【氏名】小宮 三四郎
【氏名】小峰 伸之
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求
テーマコード 4G169
4H006
4H039
4H050
Fターム 4G169AA05
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE03A
4G169BE03B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE10A
4G169BE11A
4G169BE11B
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE34B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169CB25
4G169CB57
4G169CB63
4G169DA02
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H039CA42
4H039CF10
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
要約 本発明では、キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と第2の配位子とを有するルテニウムを含む触媒前駆体が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と第2の配位子とを有するルテニウムを含む触媒前駆体。
【請求項2】
前記ルテニウムは、0価ルテニウムまたは2価ルテニウムである請求項1に記載の触媒前駆体。
【請求項3】
前記キラルな環状ジエン配位子は、6~8員環の単環、または、前記単環に架橋部を有するビシクロ環を含む請求項1または請求項2に記載の触媒前駆体。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、および下記一般式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【化1】
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〔一般式(1)中、Aは、6電子配位子を表し、R~Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n1は0または1を表し、n1が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(2)中、A21はジエン配位子を表し、A22は-NCR配位子を表す(ただし、Rは、アルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す)。R21~R28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n2は0または1を表し、n2が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(3)中、A31~A34は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A31とA32、およびA33とA34は、互いに連結して環を形成してもよい。R31~R38は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n3は0または1を表し、n3が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
連結基(i)中、R11およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表し、mは1以上の整数を表す。〕
【化2】
JP2014126068A1_000065t.gif

〔一般式(4)中、A41は、6電子配位子を表し、R41~R46は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n4は0または1を表し、n4が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(5)中、A51はジエン配位子を表し、A52は-NCR配位子を表す(ただし、Rは、アルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す)。R51~R56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n5は0または1を表し、n5が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(6)中、A61~A64は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A61とA62、およびA63とA64は、互いに連結して環を形成してもよい。R61~R66は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n6は0または1を表し、n6が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。〕
【請求項5】
下記一般式(1-11)で表される化合物、下記一般式(1-12)で表される化合物、下記一般式(2-11)で表される化合物、下記一般式(2-12)で表される化合物、下記一般式(2-21)で表される化合物、下記一般式(3-11)で表される化合物、下記一般式(4-11)で表される化合物、下記一般式(4-12)で表される化合物、下記一般式(5-11)で表される化合物、下記一般式(5-12)で表される化合物、下記一般式(6-11)で表される化合物、および下記一般式(6-12)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【化3】
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〔一般式(1-11)および一般式(1-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(2-11)、一般式(2-12)、および一般式(2-21)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、一般式(2-21)中、Rは、不斉炭素を有するアルキル基を表す。
一般式(3-11)中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(4-11)および一般式(4-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(5-11)および一般式(5-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(6—11)および一般式(6—12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。〕
【請求項6】
キラルな環状ジエン配位子を有し6電子反応場を持つ0価ルテニウム種を触媒として、第1の共役アルケンと、非共役アルケンまたは第2の共役アルケンと、の不斉鎖状二量化を行う不斉鎖状化合物の合成方法。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の触媒前駆体を用いて、前記キラルな環状ジエン配位子を有し、6電子反応場を持つ0価ルテニウム種を発生させる請求項6に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
【請求項8】
前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、共役カルボニル化合物、共役イミン化合物、または共役ジエン化合物である請求項6または請求項7に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
【請求項9】
前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、下記構造式(I-1)~構造式(I-4)のいずれか1種で表される化合物である請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
【化4】
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〔構造式(I-1)中、Rは、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、または-N(R)(R)を表す。ただし、RおよびRは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立に、水素原子またはメチル基を表す。
構造式(I-2)中、R~Rは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。
構造式(I-3)中、R11~R16は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(I-4)中、R17は、水素原子またはアルキル基を表し、Yは、酸素原子、イオウ原子または一置換窒素原子を表し、Zは、酸素原子、イオウ原子、一置換窒素原子、またはアルキレン基を表す。〕
【請求項10】
前記非共役アルケンは、下記構造式(II-1)~構造式(II-7)のいずれか1種で表される化合物である請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
【化5】
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〔構造式(II-1)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(II-3)中、Yは、メチレン基、酸素原子、イオウ原子、または一置換窒素原子を表す。
構造式(II-5)~構造式(II-7)中、R21~R27は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。〕
【請求項11】
前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、前記構造式(I-1)または前記構造式(I-3)で表される化合物である請求項9に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
【請求項12】
前記非共役アルケンは、前記構造式(II-3)で表される化合物である請求項10に記載の不斉鎖状化合物の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒前駆体および不斉鎖状化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不斉化合物の合成は、医農薬品をはじめとする生理活性物質の合成には不可欠であり、多くの研究が行われている。特に最近世界で承認された不斉中心を持つ合成医薬品の70%以上が光学活性体であり、医薬品分野での光学活性化合物の重要性は益々大きくなっている。このため、不斉合成は、近年活発に研究されている。
不斉合成は、種々の方法が試みられている。
例えば、野依触媒を用いた不斉還元反応により炭素-水素の形成に基づいた不斉構築を行ったり、香月・シャープレス酸化により、炭素-酸素結合を形成して不斉構築を行うことが知られている。また、炭素-炭素結合を形成することにより不斉構築を行うことも進められており、不斉共役付加、不斉クロスカップリング、不斉マンニッヒ反応、ZACA反応、アルキンの不斉環化三量化などの開発が行われている。しかし、炭素-炭素結合の形成による不斉構築は未だ発展途上にあり、今後大きな進展が望まれている。
【0003】
合成反応においては、触媒の存在も重要であり、種々の触媒が合成され、合成反応に用いられている。
具体的には、例えば、キラルなアザホスホレン配位子を持つニッケル触媒により、エチレンとスチレンやエチレンとノルボルネンをカップリングすることにより、不斉ヒドロビニル化反応が開示されている(例えば、下記非特許文献1および下記特許文献1参照)。
また、類似な反応としてキラルなホスフィナイト配位子を持つニッケル触媒によるエチレンとスチレンを用いた不斉ヒドロビニル化反応(例えば、下記非特許文献2参照)、キラルなホスフォラミダイト配位子を持つニッケル触媒によるエチレンとスチレンを用いた不斉ヒドロビニル化反応(例えば、下記非特許文献3参照)、およびキラルなホスフェート配位子を持つルテニウムヒドリド錯体を用いたエチレンとビニルナフタレンによるヒドロビニル化反応(例えば、下記非特許文献4参照)などが報告されている。これらの反応はいずれも、カップリングパートナーとしてエチレンが必須であり、ヒドリド挿入機構により反応が進行している。
また、キラルな配位子および元素周期表9族の金属を有する触媒を用いて共役カップリングする手法(例えば、下記非特許文献5参照)や、アリル化合物の動力学的分割を行う手法が開示されている(例えば、下記非特許文献6参照)。
【0004】
元素周期表8族の金属であるルテニウムを触媒に用いた反応も研究されており、例えば、ビシクロノナジエンを配位子として持つ0価ルテニウム錯体を合成し、置換オレフィンの選択的共二量化(交差二量化)反応に応用することが試みられている(例えば、下記非特許文献7~12参照)。
【0005】
非特許文献1: G. Wilke, Angew. Chem., 27, 185-206 (1988).
非特許文献2: H. Park, R. Kumareswaran, T. V. RajanBabu, Tetrahedron, 61, 6352-6367 (2005).
非特許文献3: N. Lassauque, G. Francio,W. Leitner, Adv. Synth. Catal.,351, 3133-3138 (2009).
非特許文献4: G. Jiang, B. List, Chem. Commun.,47, 10022-10024 (2011).
非特許文献5: T. Hayashi, K. Ueyama, N. Tokunaga, and K. Yoshida, J. Am. Chem. Soc., 125, 11508-11509 (2003).
非特許文献6: C. Fischer, C. Defieber, T. Suzuki, E. M. Carreira, J. Am. Chem. Soc., 126, 1628-1629 (2004).
非特許文献7: M. Hirano. Organometallics, (2010) Vol.29, pp.3690-3693
非特許文献8: M. Hirano. Organometallics, (2011) Vol.30, pp.1307-1310
非特許文献9: M. Hirano. Organometallics, (2012) Vol.31, pp.4006-4019
非特許文献10: 日本化学会第92春季年会予稿集,2B1-11(2012)
非特許文献11: 第59回有機金属化学討論会予稿集,P2C-16(2012)
非特許文献12: XXVth International Conference on Organometallic Chemistry予稿集, PB79 (2012)
【0006】
特許文献1: 独国特許出願公開第3618169号明細書(Offenlegungsschrift DE000003618169A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一般的に置換アルケンの化学的性質はよく似ているため、アルケンの基質選択自体が困難であり、置換アルケンの交差二量化の報告は少ない。また、ジアステレオ選択的な交差二量化反応は、非特許文献8に示される反応が初めての例であり、置換アルケン間のエナンチオ選択的な不斉鎖状カップリング反応はいまだ報告例がない。
【0008】
本発明は、アルケン2分子から炭素-炭素結合の形成に伴って不斉鎖状化合物を合成することができる触媒前駆体および前記不斉鎖状化合物の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と第2の配位子とを有するルテニウムを含む触媒前駆体である。
<2> 前記ルテニウムは、0価ルテニウムまたは2価ルテニウムである<1>に記載の触媒前駆体である。
<3> 前記キラルな環状ジエン配位子は、6~8員環の単環、または、前記単環に架橋部を有するビシクロ環を含む<1>または<2>に記載の触媒前駆体である。
<4> 下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、および下記一般式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である<1>~<3>のいずれか1つに記載の触媒前駆体である。
【0010】
【化1】
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【0011】
一般式(1)中、Aは、6電子配位子を表し、R~Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n1は0または1を表し、n1が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(2)中、A21はジエン配位子を表し、A22は-NCR配位子を表す(ただし、Rは、アルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す)。R21~R28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n2は0または1を表し、n2が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(3)中、A31~A34は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A31とA32、およびA33とA34は、互いに連結して環を形成してもよい。R31~R38は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n3は0または1を表し、n3が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
連結基(i)中、R11およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表し、mは1以上の整数を表す。
【0012】
【化2】
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【0013】
一般式(4)中、A41は、6電子配位子を表し、R41~R46は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n4は0または1を表し、n4が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(5)中、A51はジエン配位子を表し、A52は-NCR配位子を表す(ただし、Rは、アルキル基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す)。R51~R56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n5は0または1を表し、n5が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
一般式(6)中、A61~A64は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A61とA62、およびA63とA64は、互いに連結して環を形成してもよい。R61~R66は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n6は0または1を表し、n6が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
【0014】
<5> 下記一般式(1-11)で表される化合物、下記一般式(1-12)で表される化合物、下記一般式(2-11)で表される化合物、下記一般式(2-12)で表される化合物、下記一般式(2-21)で表される化合物、下記一般式(3-11)で表される化合物、下記一般式(4-11)で表される化合物、下記一般式(4-12)で表される化合物、下記一般式(5-11)で表される化合物、下記一般式(5-12)で表される化合物、下記一般式(6-11)で表される化合物、および下記一般式(6-12)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である<1>~<4>のいずれか1つに記載の触媒前駆体である。
ここで、一般式(1-11)または一般式(1-12)で表される化合物は、前述の一般式(1)で表される化合物の例であり、一般式(2-11)、一般式(2-12)、または一般式(2-21)で表される化合物は、前述の一般式(2)で表される化合物の例であり、一般式(3-11)で表される化合物は、前述の一般式(3)で表される化合物の例であり、一般式(4-11)または一般式(4-12)で表される化合物は、前述の一般式(4)で表される化合物の例であり、一般式(5-11)または一般式(5-12)で表される化合物は、前述の一般式(5)で表される化合物の例であり、一般式(6-11)または一般式(6-12)で表される化合物は、前述の一般式(6)で表される化合物の例である。
【0015】
【化3】
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【0016】
一般式(1-11)および一般式(1-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(2-11)、一般式(2-12)、および一般式(2-21)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、一般式(2-21)中、Rは、不斉炭素を有するアルキル基を表す。
一般式(3-11)中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(4-11)および一般式(4-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(5-11)および一般式(5-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
一般式(6—11)および一般式(6—12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
【0017】
<6> キラルな環状ジエン配位子を有し6電子反応場を持つ0価ルテニウム種を触媒として、第1の共役アルケンと、非共役アルケンまたは第2の共役アルケンと、の不斉鎖状二量化を行う不斉鎖状化合物の合成方法である。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の触媒前駆体を用いて、前記キラルな環状ジエン配位子を有し、6電子反応場を持つ0価ルテニウム種を発生させる<6>に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
<8> 前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、共役カルボニル化合物、共役イミン化合物、または共役ジエン化合物である<6>または<7>に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
<9> 前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、下記構造式(I-1)~構造式(I-4)のいずれか1種で表される化合物である<6>~<8>のいずれか1項に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
【0018】
【化4】
JP2014126068A1_000006t.gif

【0019】
構造式(I-1)中、Rは、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、または-N(R)(R)を表す。ただし、RおよびRは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立に、水素原子またはメチル基を表す。
構造式(I-2)中、R~Rは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。
構造式(I-3)中、R11~R16は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(I-4)中、R17は、水素原子またはアルキル基を表し、Yは、酸素原子、イオウ原子または一置換窒素原子を表し、Zは、酸素原子、イオウ原子、一置換窒素原子、またはアルキレン基を表す。
【0020】
<10> 前記非共役アルケンは、下記構造式(II-1)~構造式(II-7)のいずれか1種で表される化合物である<6>~<9>のいずれか1項に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
【0021】
【化5】
JP2014126068A1_000007t.gif

【0022】
構造式(II-1)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(II-3)中、Yは、メチレン基、酸素原子、イオウ原子、または一置換窒素原子を表す。
構造式(II-5)~構造式(II-7)中、R21~R27は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
【0023】
<11> 前記第1の共役アルケンおよび前記第2の共役アルケンは、前記構造式(I-1)または前記構造式(I-3)で表される化合物である<9>に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
<12> 前記非共役アルケンは、前記構造式(II-3)で表される化合物である<10>に記載の不斉鎖状化合物の合成方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルケン2分子から不斉鎖状化合物を合成することができる触媒前駆体および前記不斉鎖状化合物の合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1-1で合成した触媒前駆体2aの分子構造(X線構造解析)である。
【図2】実施例1-1で合成した触媒前駆体2bの分子構造(X線構造解析)である。
【図3】実施例1-1で合成した触媒前駆体2cの分子構造(X線構造解析)である。
【図4】実施例1-2で合成した△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)のH NMRスペクトルである。
【図5】実施例1-2で合成した△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の分子構造(X線構造解析)である。
【図6】実施例2-1で合成した生成物の液体クロマトグラフィの測定結果である。
【図7】比較例1で合成した生成物の液体クロマトグラフィの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。

【0027】
<不斉鎖状化合物の合成方法>
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法は、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒として、第1の共役アルケンと、非共役アルケンまたは第2の共役アルケンと、の不斉鎖状二量化を行う合成方法である。
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法には、
(1)第1の共役アルケンと非共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行う形態(以下、この形態を、「第1の合成方法」ともいう)、および、
(2)第1の共役アルケンと第2の共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行う形態(以下、この形態を、「第2の合成方法」ともいう)
が包含される。
第1の合成方法および第2の合成方法は、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒として、アルケン同士の不斉鎖状二量化を行う点で共通する。
以下、第1の合成方法を中心に説明する。第2の合成方法については後述する。
また、以下において、単なる「共役アルケン」との語は、上記「第1の共役アルケン」を意味する。

【0028】
第1の合成方法は、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒として、共役アルケン(第1の共役アルケン)と非共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行う合成方法である。
第1の合成方法では、基質(以下、「反応基質」ともいう)として、共役アルケンと非共役アルケンとを用い、両者の不斉鎖状二量化を行うに当たり、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒として用いることで、炭素-炭素結合を形成しながら、一段階で中心不斉を1つ以上有する鎖状化合物を合成することができる。

【0029】
第1の合成方法では、ルイス塩基性の高い0価ルテニウム種上に発生する6電子反応場を利用して、4電子配位できる共役アルケンと2電子配位する非共役アルケンとの配位電子数の違いにより、分子識別を行い、単一の面および単一の回転異性体から酸化的カップリングを行う。
第1の合成方法では、反応基質の供与電子数が4+2=6であることを利用した基質の選択が行われる。触媒としては、0価ルテニウム種を用いる。4電子配位化合物には共役アルケンを用い、2電子配位化合物には非共役アルケンを用いることで化学選択性(基質選択性)が発現される。
付加反応により不斉構築を行う反応としては、炭素-水素結合の形成による不斉還元法や、炭素-酸素結合の形成による不斉酸化法などが広く研究されてきたが、炭素-炭素結合の形成による不斉構築法は、現在、大変注目を集めている研究分野である。しかし、置換アルケンを用いて不斉鎖状二量化する方法はこれまでに知られていない。現時点で本発明は、2種類の置換アルケンを前述のように分子識別するのみならず、不斉交差鎖状二量化を高い収率と不斉収率で実現できる唯一の方法である。

【0030】
ここで、「単一の面および単一の回転異性体から酸化的カップリングを行う」とは、基質(共役アルケンおよび非共役アルケン)が上記0価ルテニウム種に配位する段階(例えば、後述の合成スキーム1において、「+Ru(diene)」が付された矢印の段階)において、
(a)1つの基質が持つ2つのプロキラル面(Re面およびSi面)のうち、上記0価ルテニウム種に対向する面が特定され、かつ、
(b)2つの基質の立体配座(共役アルケンと非共役アルケンとの立体配座)が特定された状態で、基質が上記0価ルテニウム種に配位し、この配位によって生じた反応中間体から酸化的カップリング反応(例えば、後述の合成スキーム1において、「Oxidative coupling」が付された矢印の反応)が進行することを意味する。特に、上記(b)により、上記反応中間体として、複数の回転異性体が生じることが抑制される。
第1の合成方法では、上記(a)および上記(b)により、エナンチオ選択的な不斉鎖状二量化を行うことができる。
第1の合成方法における反応は、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒とするからこそ実現できる反応である。第1の合成方法は、上記の反応機構によりキラル化合物を作り出せることを世界で初めて実証したものである。後述の第2の合成方法についても同様である。
なお、後述の第2の合成方法においては、第2の共役アルケンが、上述した非共役アルケンの役割を果たす。

【0031】
また、本発明の合成方法で用いる触媒(即ち、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種)は、高度に配位不飽和であるため、不安定である。このため、キラルな環状ジエン配位子を有するルテニウムを含む本発明の触媒前駆体を用い、反応系中において、上記触媒としての、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を発生させればよい。
本発明の触媒前駆体の詳細は後述するが、例えば、解離しやすい6電子配位子であるナフタレンとキラルな環状ジエン配位子とを有する0価ルテニウム錯体を、触媒前駆体として用いることができる。

【0032】
また、ルテニウム上の不斉配位子(キラルな環状ジエン配位子)を用いることで、単一の面および単一の回転異性体から酸化的カップリング反応が進行し、β-ヒドリド脱離ならびに還元的脱離により、化学、位置および立体選択的な炭素-炭素結合が形成され、不斉骨格が構築されると考えられる。
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法の好ましい態様は後述するが、例えば、環状ジエン配位子を持つルテニウム(0)錯体を触媒とすると、β-ヒドリド脱離が速く進行し、ルテナシクロペンタンに対してはさらにアルケンが挿入することなく、鎖状交差二量化が得られ易い。
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法(第1の合成方法)の一例である合成スキーム1の点線枠内に示す。

【0033】
【化6】
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【0034】
合成スキーム1は、不斉鎖状化合物合成の一例を模式的に示したに過ぎず、本発明で用いる共役アルケンも、非共役アルケンも、合成スキーム1に示す形態に限定されない。
なお、合成スキーム1中、R~Rは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、Zは、メチレン基〔=CH〕、置換メチレン基〔=C(R)もしくは=C(R)H;Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基等〕、酸素原子、硫黄原子、または、一置換窒素原子〔=NHもしくは=NR;Rはアルキル基、アルコキシ基、アリール基等〕などを表す。また、合成スキーム1中、「Ru(diene)」は、触媒としての、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を表す。

【0035】
なお、既述のように、非特許文献1~3においても、金属を含む触媒を用いて、不斉合成を行っているが、次の点で本発明とメカニズムが異なる。
非特許文献1~4および特許文献1に示される手法は、カップリングパートナーの1つが必ずエチレンであるが、本発明の不斉鎖状化合物の合成方法は、置換アルケン同士の交差鎖状二量化反応であり、基質を選択することができる。また、非特許文献1の手法では、ヒドリド挿入機構であるが、本発明は酸化的カップリング機構で進行する。さらに、非特許文献1ではキラル配位子としてリン配位子が用いられているが、本発明では環状ジエン配位子を用いている。

【0036】
非特許文献5に示される手法は、支持配位子として環状ジエン配位子をもつ9族金属触媒を用いて、共役化合物と有機ホウ素化合物との共役付加反応をはじめとする有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物、有機ケイ素化合物などのアリール化試薬やアルキル化試薬を用いている。本発明の合成方法でも、触媒が有する支持配位子としては、キラルな環状ジエン配位子であれば特に制限されず、0価ルテニウム種を用いる点で異なる。
非特許文献5に示される手法では、共役アルケンと非共役アルケンとが二量化して不斉鎖状化合物は合成されていない。

【0037】
非特許文献6に示される手法は、動力学的分割である。同一グループにより、アリールホウ素化合物の不斉共役付加反応も報告されている。本発明は、置換アルケン間の不斉鎖状交差二量化であり、置換アルケンのみを用いた不斉反応は報告されていない。

【0038】
〔触媒〕
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法は、キラルな環状ジエン配位子を有し、6電子反応場を持つ0価ルテニウム種を触媒として用いる。
キラルな環状ジエン配位子を有し、6電子反応場を持つ0価ルテニウム種は、共役アルケンと、非共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行う反応系中において存在していればよいが、高度に配位不飽和であるため不安定であり、「キラルな環状ジエン配位子のみを有する0価ルテニウム種」として単離することができない。
したがって、反応開始前においては、キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と第2の配位子とを有するルテニウムを含む触媒前駆体として単離することができる。
まず、本発明の触媒前駆体について説明する。

【0039】
<触媒前駆体>
本発明の触媒前駆体は、キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と第2の配位子とを有するルテニウムを含む。

【0040】
〔ルテニウム〕
触媒前駆体が含むルテニウムは、0価であってもよいし、反応時に還元剤と組み合わせて反応を行う場合には2価であってもよい。不斉鎖状化合物の合成反応においては、0価ルテニウムが有する6電子反応場を利用するため、反応効率の観点からは、触媒前駆体が含むルテニウムも0価であることが好ましい。

【0041】
〔配位子〕
本発明の触媒前駆体に含まれるルテニウムは、キラルな環状ジエン配位子である第1の配位子と、第2の配位子と、を有している。
第1の配位子は、第1の共役アルケンと、非共役アルケンまたは第2の共役アルケンと、の不斉鎖状二量化において、触媒中に含まれるキラルな環状ジエン配位子である。
第2の配位子は、不斉鎖状化合物の合成反応において、ルテニウムから速やかに解離し易い配位子であることが好ましい。

【0042】
-キラルな環状ジエン配位子(第1の配位子)-
キラルな環状ジエン配位子は、少なくとも1つの不斉炭素を有するジエン化合物であれば、特に制限されない。
また、キラルな環状ジエン配位子の環員数は、錯体の安定性と触媒活性の観点から、6~12であることが好ましく、7~10であることがより好ましい。
環状ジエン化合物は、モノシクロ環であっても、ビシクロ環であっても、トリシクロ環であってもよい。

【0043】
以上の中でも、反応性の観点から、キラルな環状ジエン配位子は、6~8員環の単環、または、前記単環に架橋部を有するビシクロ環を含むことが好ましい。すなわち、キラルな環状ジエン配位子は、6~8員環の単環を含む環状ジエン化合物であるか、6~8員環の単環に架橋部を有するビシクロ環状ジエン化合物であることが好ましい。
ここで、架橋部とは、前記単環が環内での結合形成によりビシクロ環となったビシクロ環状ジエンにおける「環内での結合形成部分」(すなわち、単結合)、または、6~8員環の単環が有する2つの原子に置換する原子数1以上の2価の連結基をいい、アルキレン基、2価の原子(酸素原子、硫黄原子等)等が挙げられる。後述する一般式(1)~(6)中のX~Xは、架橋部の一例である。
架橋部は、原子数1~6の連結基であることが好ましい。連結基の原子数は、3~6であることがより好ましい。

【0044】
-第2の配位子-
第2の配位子は、触媒前駆体に含まれるルテニウムに配位する配位子であり、不斉鎖状化合物の合成反応系中において、速やかに解離する。反応系中において、ルテニウムから第2の配位子が脱離することで、本発明の触媒前駆体は、反応系中で、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種となり、これが触媒となって、共役アルケンと非共役アルケンまたは第2の共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行うことができる。

【0045】
第2の配位子は、特に制限されないが、不斉鎖状化合物の合成反応系中において、速やかに解離し易い配位子であることが好ましい。このため、配位力の弱いルイス塩基性配位子もしくは還元剤により容易に除去することが可能なアニオン性配位子が望ましい。また、第2の配位子は、芳香族化合物である中性配位子であってもよい。
ここで、アニオン性配位子とは、ルテニウムと共有結合またはイオン結合をしている配位子をいい、弱い還元剤により還元可能であることが好ましい。なお、弱い還元剤としては、亜鉛粉末または、亜鉛粉末と同等の還元力を有する還元剤が挙げられる。一般に、金属亜鉛は、ナトリウム、リチウム、マグネシウム等に較べて、弱い還元剤として知られている。
また、中性配位子とは、ルテニウムに配位結合をしている配位子をいい、配位力が弱いことが好ましい。具体的には、中性配位子は、基質となる置換アルケンより配位力の弱い配位子であることが好ましい。

【0046】
第2の配位子は、触媒前駆体が0価のルテニウムを含むときは、例えば、ベンゼン、パラシメン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の6電子配位子、ジエン化合物とNCR(Rはアルキル基もしくはアリール基、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基)との組み合わせ等が挙げられる。
触媒前駆体が2価のルテニウムを含むときは、第2の配位子は、例えば、カルボキラト、アセチルアセトナト、スルホナトおよびハロゲン等の配位子が挙げられる。
第2の配位子の例として挙げたベンゼン等の上記の化合物は、無置換であってもよいし、置換基をさらに有していてもよい。

【0047】
第2の配位子は、以上の中でも、反応効率およびルテニウムからの脱離のし易さの観点から、6電子配位子であることが好ましく、置換ベンゼンまたはナフタレンが好ましい。

【0048】
本発明の触媒前駆体は、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物、および下記一般式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

【0049】
【化7】
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【0050】
【化8】
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【0051】
一般式(1)中、Aは、6電子配位子を表し、R~Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n1は0または1を表し、n1が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0052】
一般式(2)中、A21はジエン配位子を表し、A22は-NCR配位子を表す(ただし、Rはアルキル基またはアリール基を表す)。R21~R28は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n2は0または1を表し、n2が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0053】
なお、本明細書中における「-NCR配位子」は、「ニトリル配位子」に包含される配位子である。

【0054】
一般式(3)中、A31~A34は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A31とA32、およびA33とA34は、互いに連結してアセチルアセトナト基の様に環を形成してもよい。R31~R38は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n3は0または1を表し、n3が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0055】
一般式(4)中、A41は、6電子配位子を表し、R41~R46は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n4は0または1を表し、n4が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0056】
一般式(5)中、A51はジエン配位子を表し、A52は-NCR配位子を表す(ただし、Rはアルキル基またはアリール基を表す)。R51~R56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n5は0または1を表し、n5が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0057】
一般式(6)中、A61~A64は、各々独立に、中性配位子またはアニオン性配位子を表し、A61とA62、およびA63とA64は、互いに連結してアセチルアセトナト基の様に環を形成してもよい。R61~R66は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表す。n6は0または1を表し、n6が1のとき、Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。

【0058】
連結基(i)中、R11およびR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアリールオキシ基を表し、mは1以上の整数を表す。

【0059】
一般式(1)~(6)において、A、A21~A22、A31~A34、A4、A51~A52、およびA61~A64で表される基は触媒前駆体が有する第2の配位子である。
そして、R~Rが結合する炭素原子(n1が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエン、R21~R28が結合する炭素原子(n2が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエン、および、R31~R38が結合する炭素原子(n3が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエン、R41~R46が結合する炭素原子(n4が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエン、R51~R56が結合する炭素原子(n5が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエン、およびR61~R66が結合する炭素原子(n6が1のときは、さらにX〔ただし、Xが単結合である場合を除く〕)によって構成されるシクロジエンは、それぞれ、触媒前駆体が有する第1の配位子である。

【0060】
一般式(1)におけるA、または、一般式(4)におけるAとして表される6電子配位子は、例えば、ベンゼン、パラシメン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。列挙したベンゼン等は、さらに置換基を有していてもよい。
これらの中でも、AまたはAとして表される6電子配位子は、置換基を有するベンゼン、または、ナフタレンが好ましい。

【0061】
置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ヘテロ環基等が挙げられる。
中でも、アルキル基またはアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。

【0062】
一般式(2)におけるA21、または、一般式(5)におけるA51として表されるジエン配位子は、各々独立に、炭素数4~12のジエン配位子であることが好ましく、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1、3-ペンタジエン、2、3-ジメチルブタジエン、ミルセン等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、1,3-ブタジエンまたは2、3-ジメチルブタジエンがより好ましい。

【0063】
一般式(2)におけるA22、または、一般式(5)におけるA52として表される-NCR配位子におけるRを、以下、「特定R」という。
特定Rとして表されるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。特定Rとして表されるアルキル基の炭素数は1~8が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。

【0064】
また、特定Rとして表される、アリール基およびアリールオキシ基が有するアリール基部分としては、フェニル基等が挙げられる。
特定Rは、以上の中でも、直鎖状または分岐状の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。

【0065】
一般式(3)におけるA31~A34、または、一般式(6)におけるA61~A64として表されるアニオン性配位子または中性配位子としては、カルボキラト基、アセチルアセトナト基、スルホナト基、ハロゲン原子等が挙げられる。なお、アニオン性配位子および中性配位子の詳細は、既述のとおりである。
一般式(3)および一般式(6)において、A31とA32、およびA33とA34、並びに、A61とA62、およびA63とA64は、互いに連結して環を形成してもよい。

【0066】
一般式(1)~(6)中のR~R、R21~R28、R31~R38、R41~R46、R51~R56、および、R61~R66を総じて、以下、「特定R」ともいう。
ただし、R、R、R21、R31等は、各々、同じであっても、異なっていてもよい。

【0067】
特定Rで表されるアルキル基およびアルコキシ基が有するアルキル基部分(以下、「特定アルキル基1」という)は、各々独立に、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。
特定アルキル基1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。特定アルキル基1はさらに、既述の置換基を有していてもよく、例えば、置換アルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。

【0068】
特定Rで表されるアリール基およびアリールオキシ基が有するアリール基部分(以下、「特定アリール基1」という)としては、各々独立に、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。特定アリール基1は、さらに、既述の置換基を有していてもよく、置換アリール基としては、トリル基等が挙げられる。

【0069】
なお、一般式(3)において、R31、R32、R35、およびR36が同時に水素原子となるときは、A31~A34の少なくとも1つが不斉炭素を有する
一般式(1)~(6)において、水素原子でない特定Rの数は、1~2が好ましい。

【0070】
以上の中でも、一般式(1)および(4)中のR~R、および、R41~R46は、各々独立に、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~8のアルキル基が好ましい。
一般式(2)、(3)、(5)、および(6)中のR21~R28、R31~R38、R51~R56、および、R61~R66は、各々独立に、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。

【0071】
既述のように、n1~n6は、各々独立に、0または1であり、n1~n6が1のとき、X~Xは、酸素原子、連結基(i)、または単結合を表す。
連結基(i)中、R11およびR12で表されるアルキル基、およびアルコキシ基が有するアルキル基部分は、R~Rで表されるアルキル基、およびアルコキシ基が有するアルキル基部分と同義であり、好ましい態様も同様である。
連結基(i)においてR11およびR12で表されるアリール基は、R~Rで表されるアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。

【0072】
連結基(i)において、mは1~5が好ましく、1~2がより好ましい。
mが2以上であるとき、複数の各R11および各R12は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
連結基(i)は、具体的には、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CH-CH-)、イソプロピレン基(-C(CH-)、置換エチレン基(例えば、-C(CH)(OCH)-CH-)等が挙げられる。

【0073】
一般式(1)~(6)中のn1~n6は、各々独立に、配位子の安定性と反応性の観点から、1であることが好ましく、このときX~Xは、各々独立に、酸素原子、メチレン基、またはエチレン基であることが好ましい。

【0074】
本発明の触媒前駆体は、さらに、一般式(1-11)、一般式(1-12)、一般式(2-11)、一般式(2-12)、一般式(2-21)、一般式(3-11)、一般式(4-11)、一般式(4-12)、一般式(5-11)、一般式(5-12)、一般式(6-11)、または、一般式(6-12)で表される化合物であることが好ましい。具体的には、次の通りである。

【0075】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1-11)または下記一般式(1-12)で表される化合物であることが好ましい。

【0076】
【化9】
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【0077】
一般式(1-11)および一般式(1-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0078】
一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(2-11)、下記一般式(2-12)、または下記一般式(2-21)で表される化合物であることが好ましい。

【0079】
【化10】
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【0080】
一般式(2-11)、一般式(2-12)、および一般式(2-21)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、一般式(2-21)中、Rは、不斉炭素を有するアルキル基を表す。

【0081】
一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3-11)で表される化合物であることが好ましい。

【0082】
【化11】
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【0083】
一般式(3-11)中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0084】
一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(4-11)または下記一般式(4-12)で表される化合物であることが好ましい。

【0085】
【化12】
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【0086】
一般式(4-11)および一般式(4-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0087】
一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(5-11)または下記一般式(5-12)で表される化合物であることが好ましい。

【0088】
【化13】
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【0089】
一般式(5-11)および一般式(5-12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0090】
一般式(6)で表される化合物は、下記一般式(6-11)または下記一般式(6-12)で表される化合物であることが好ましい。

【0091】
【化14】
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【0092】
一般式(6—11)および一般式(6—12)中、Rは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0093】
一般式(1-11)、一般式(1-12)、一般式(2-11)、一般式(2-12)、一般式(2-21)、一般式(3-11)、一般式(4-11)、一般式(4-12)、一般式(5-11)、一般式(5-12)、一般式(6-11)および一般式(6-12)中のRを、以下、「特定R」ともいう。
特定Rがアルキル基であるとき、特定Rで表されるアルキル基は、前述の「特定アルキル基1」と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、特定Rがアリール基であるとき、特定Rで表されるアリール基は、前述の「特定アリール基1」と同義であり、好ましい態様も同様である。
ただし、一般式(2-21)におけるRは、中心不斉、軸性不斉または面性不斉を持つ置換基であることが好ましい。
また、一般式(2-21)中のRは、不斉炭素を有するアルキル基であれば特に制限されず、例えば、α-アミノニトリル、フェネチルニトリル等が挙げられる。一般式(2-21)中のRの炭素数は3~20であって、かつ、少なくとも1つの炭素原子が中心不斉、軸性不斉または面性不斉であることが好ましい。

【0094】
-触媒前駆体の合成方法-
本発明の触媒前駆体の合成方法は特に限定されない。本発明の触媒前駆体の合成例は、後述する。

【0095】
〔共役アルケン〕
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法で用いる共役アルケンは、π酸性化合物であるため、電子供与性の高いルイス塩基性の0価ルテニウム触媒と反応しやすいと考えられる。
本発明の合成方法に用いられる共役アルケンは、4電子配位可能な化合物であることが好ましく、例えば、共役カルボニル化合物、共役イミン化合物、共役ジエン化合物、共役エンイン化合物等が挙げられる。
より具体的には、共役アルケンとして、下記構造式(I-1)~構造式(I-4)のいずれか1種で表される化合物を用いることができる。
また、共役アルケンとしては、下記構造式(I-1)~構造式(I-4)のいずれか1種で表される化合物以外にも、共役ジエン化合物であるミルセンを用いることもできる。
以下、構造式(I-1)~構造式(I-4)のいずれか1種で表される化合物について説明する。

【0096】
【化15】
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【0097】
構造式(I-1)中、Rは、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、または-N(R)(R)を表す。ただし、RおよびRは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RおよびRは、各々独立に、水素原子またはメチル基を表す。
構造式(I-2)中、R~Rは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表す。
構造式(I-3)中、R11~R16は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(I-4)中、R17は、水素原子またはアルキル基を表し、Yは、酸素原子、イオウ原子、または一置換窒素原子を表し、Zは、酸素原子、イオウ原子、一置換窒素原子、またはアルキレン基を表す。

【0098】
構造式(I-1)におけるR、R、およびRを総じて、以下、「特定RD1」ともいう。
構造式(I-1)中においてRで表されるアルキル基、アルコキシ基のアルキル基部分、並びに、RまたはRで表されるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよく、炭素数は1~8が好ましい。具体的には、特定RD1は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
構造式(I-1)中において、特定RD1、R、およびRは、さらに置換基を有していてもよい。
特定RD1は、以上の中でも、水素原子、または、直鎖状または分岐状の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。

【0099】
構造式(I-1)で表される共役アルケンとしては、具体的には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、チグリン酸エステル等が挙げられる。

【0100】
構造式(I-2)におけるR~Rを総じて、以下、「特定RD2」ともいう。
特定RD2で表されるアルキル基は、各々独立に、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよく、炭素数は1~8が好ましい。具体的には、特定RD2は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
特定RD2は、さらに置換基を有していてもよい。
特定RD2は、以上の中でも、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。

【0101】
構造式(I-2)で表される共役アルケンとしては、具体的には、3-ブテニリデンフェニルアミン等が挙げられる。

【0102】
構造式(I-3)中においてR11~R16を総じて、以下、「特定RD3」ともいう。
特定RD3で表されるアルキル基は、各々独立に、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよく、炭素数は1~8が好ましい。具体的には、特定RD3は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
特定RD3で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
特定RD3は、さらに置換基を有していてもよい。
特定RD3は、以上の中でも、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。

【0103】
構造式(I-3)で表される共役アルケンとしては、具体的には、1、3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,4-ジフェニルブタジエン等が挙げられる。

【0104】
構造式(I-4)中においてR17で表されるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよく、炭素数は1~8が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
構造式(I-4)におけるR17は、さらに置換基を有していてもよい。
構造式(I-4)におけるR17は、以上の中でも、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基が好ましい。

【0105】
構造式(I-4)中においてYで表される一置換窒素原子とは、>N-Rで表される窒素原子をいい、Zで表される一置換窒素原子とは、=N-Rで表される窒素原子をいう。>N-Rないし=N-RにおけるRは、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、さらに置換基を有していてもよい。
構造式(I-4)中のYは、以上の中でも、酸素原子、一置換窒素原子が好ましい。

【0106】
構造式(I-4)中においてZで表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基等が挙げられる。
構造式(I-4)中のZは、以上の中でも、酸素原子またはメチレン基が好ましい。

【0107】
共役アルケンは、以上の中でも、共役カルボニル化合物、または、共役ジエン化合物が好ましく、構造式(I-1)または構造式(I-3)で表される化合物であることがより好ましい。

【0108】
〔非共役アルケン〕
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法で用いられる非共役アルケンは、特に制限されず、種々の非共役アルケンを用いることができる。特に2電子化合物が好ましく、例えば、下記構造式(II-1)~構造式(II-7)のいずれか1種で表される化合物を用いることができる。
また、非共役アルケンとしては、構造式(II-1)~構造式(II-7)のいずれか1種で表される化合物以外にも、ノルボルネン、ビニルトリメトキシシランを用いることもできる。
以下、構造式(II-1)~構造式(II-7)のいずれか1種で表される化合物について説明する。

【0109】
【化16】
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【0110】
構造式(II-1)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
構造式(II-3)中、Yは、メチレン基、酸素原子、イオウ原子、または一置換窒素原子を表す。
構造式(II-5)~構造式(II-7)中、R21~R27は、各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。

【0111】
以下、構造式(II-1)におけるR、R、R、及びR、並びに、構造式(II-5)~構造式(II-7)におけるR21~R27を総じて、「特定R」ともいう。
構造式(II-3)において、Yとして表される一置換窒素原子は、構造式(I-4)におけるYで表される一置換窒素原子と同義である。
構造式(II-3)におけるYは、酸素原子または一置換窒素原子が好ましい。またベンゾ環が縮環していてもよい。
構造式(II-3)で表される非共役アルケンとしては、具体的には、2,5-ジヒドロフラン、2H-ベンゾフラン、2、5-ジヒドロチオフェン、2Hベンゾチオフェン、2、5-ジヒドロピロール、インドール、シクロペンテン、インデン等が挙げられる。

【0112】
特定Rで表されるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよく、炭素数は1~6が好ましい。具体的には、特定Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
特定Rで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
特定Rは、さらに置換基を有していてもよい。
特定Rは、以上の中でも、水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、または、フェニル基が好ましい。

【0113】
構造式(II-1)で表される非共役アルケンとしては、共役アルケンとの交差二量化の反応性が高い点で、一置換アルケン、二置換アルケンが好ましい。
一置換アルケンは、構造式(II-1)において、R、R、R、及びRのうち、いずれか一つがアルキル基またはアリール基であり、残りが水素原子である非共役アルケンである。
一置換アルケンとしては、スチレンが特に好ましい。
二置換アルケンは、構造式(II-1)において、R、R、R、及びRのうち、いずれか二つがアルキル基またはアリール基であり、残りが水素原子である非共役アルケンである。
二置換アルケンとしては、1,1-二置換アルケン、1,2-二置換アルケンが挙げられる。1,1-二置換アルケン及び1,2-二置換アルケンは、特に、共役カルボニル化合物(例えば、上記構造式(I-1)で表される共役アルケン)との交差二量化の反応性に優れる。1,2-二置換アルケンは、特に、共役ジエン化合物(例えば、上記構造式(I-3)で表される共役アルケン)との交差二量化の反応性に優れる。
ここで、交差二量化の反応のし易さは、基質のルテニウムへの配位し易さによって決まる。

【0114】
構造式(II-5)で表される非共役アルケンとしては、具体的には、2,3-ブタジエン酸メチル、フェニルアレン、メトキシアレン等が挙げられる。
構造式(II-6)で表される非共役アルケンとしては、具体的には、ジメチルケテン、ジフェニルケテン、メチルフェニルケテン等が挙げられる。
構造式(II-7)で表される非共役アルケンとしては、具体的には、フェニルイソシアネートおよびそのイオウ誘導体であるフェニルイソチオシアネート等が挙げられる。

【0115】
本発明の合成方法で用いる非共役アルケンは、以上の中でも、反応性の観点から、構造式(II-3)または構造式(II-4)で表される化合物が好ましく、構造式(II-3)で表される化合物がより好ましい。

【0116】
-合成条件-
本発明の不斉鎖状化合物の合成方法(第1の合成方法)では、既述の共役アルケンおよび非共役アルケンを基質とし、本発明の触媒前駆体を作用させてやればよい。
このとき、反応温度は、特に制限されないが、反応速度を向上する観点から20℃以上であることが好ましく、触媒の分解を抑制する観点から100℃以下であることが好ましい。反応温度は、20℃~70℃であることがより好ましく、20℃~50℃であることがさらに好ましい。
反応時間は、反応温度等の他の条件により異なるが、不斉鎖状化合物の収率の観点から、12時間~10日間の範囲で行えばよく、1日~8日間がより好ましい。
反応溶媒は、公知の溶媒を用いればよい。
触媒前駆体は、基質に対し、0.5mol%~20mol%の範囲で用いればよい。

【0117】
以上、説明した共役アルケン、非共役アルケン、および触媒前駆体を用いて、キラルな環状ジエン配位子を有し、6電子反応場を持つ0価ルテニウム種の存在下、不斉鎖状二量化を行うことで、種々の不斉鎖状化合物を、1段階で合成することができる。
例えば、安価で単純なアルケンから原子利用効率100%の反応で生理活性物質によく見られる鍵中間体を簡便に1段階で合成することができる。これにより、テルペノイド、アルカロイド、幼若ホルモンなどの生理活性物質を容易に合成することができる。

【0118】
<第2の合成方法>
第2の合成方法は、キラルな環状ジエン配位子を有する0価ルテニウム種を触媒として、第1の共役アルケンと第2の共役アルケンとの不斉鎖状二量化を行う合成方法である。
本発明の触媒前駆体は、上述した第1の合成方法だけでなく、この第2の合成方法にも好適に用いることができる。
第2の合成方法においては、第1の共役アルケンが4電子を供与し、第2の共役アルケンが2電子を供与することにより、第1の合成方法と同様のメカニズムにより、酸化的カップリング反応が進行する。これにより、第1の合成方法と同様に、エナンチオ選択的な不斉鎖状二量化が行われる。
即ち、第2の共役アルケン(即ち、2電子を供与する共役アルケン)が、第1の合成方法における非共役アルケンと同じ役割を果たす。

【0119】
第2の合成方法において、第1の共役アルケンおよび第2の共役アルケンは、同一種の共役アルケンであってもよいし、異種の共役アルケンであってもよい。
第2の合成方法では、第1の共役アルケンおよび第2の共役アルケンが同一種の共役アルケン(例えばメタクリル酸メチル)である場合でも、一方の共役アルケン(例えばメタクリル酸メチル)が4電子を供与し、他方の共役アルケン(例えばメタクリル酸メチル)が2電子を供与することにより、共役アルケン(例えばメタクリル酸メチル)の不斉鎖状二量化を行うことができる。
第2の合成方法における、第1の共役アルケンおよび第2の共役アルケンとしては、第1の合成方法における共役アルケン(第1の共役アルケン)と同様のものを用いることができる。
その他、第2の合成方法の好ましい態様は、共役アルケン同士を反応させること以外は第1の合成方法の好ましい態様と同様である。
第2の合成方法における不斉鎖状二量化の例としては、アクリル酸メチル(Methyl acrylate; MA)の二量化、メタクリル酸メチル(methyl methacrylate; MMA)の二量化、1,3-ペンタジエンとアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとの反応、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエンとアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとの反応、等が挙げられる。
第2の合成方法の更に具体的な例は、後述の実施例3中に示すとおりである。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は物質量基準である。なお、物質量とは、純粋な化合物の質量を分子量で除した数である。
【実施例】
【0121】
<実施例1>
(実施例1-1)-触媒前駆体の合成-
下記手法に従い、一般式(1)で表される触媒前駆体を合成した。
【実施例】
【0122】
〔(1-1-1)ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)の原料であるジケトンの合成と速度論的分割〕
1-1-1a)Meerwein's esterの合成
以下に示す反応により、Meerwein's Esterを合成した。
【実施例】
【0123】
【化17】
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【実施例】
【0124】
この合成は、C. J. Wallentin, E. Orentas, E. Butkus, and K. Warnmark,Synthesis, 2009, 5, 864.に従って行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0125】
2Lのナスフラスコに、マロン酸ジメチル460.0ml〔4.025mol〕、ベンゼン700ml、パラホルムアルデヒド96.9g(95%)〔3.07mol〕、ピペリジン8.0mlを加え、撹拌し、dean-sterk管およびジムロート冷却管を取り付け、マントルヒーターで加熱、22時間還流を行い、反応させた。水は約53mlトラップされた(理論値54.4ml,97%)。
【実施例】
【0126】
反応後、エバポレーターによりベンゼンを留去したところ、淡黄色のオイルが約600ml得られた。
2Lナスフラスコにメタノール800mlを入れ、金属ナトリウム65.4gを加えて、ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を調製した。ここからメタノール300mlを分けとり、この溶液に先の淡黄色のオイルを加えた。加えて暫く後、溶液全体が固化したため、固体を砕きながら還流を開始した。固体は30分ほどで完全に溶解した。
7時間還流後、2時間氷冷し、エーテル400mlを加え、室温で一晩放置した。
その後、吸引ろ過を行い、固体をメタノール/エーテル1:1(体積比)を用いて洗浄したところ、白色~淡黄色の固体が得られた。得られた固体を風乾した後、得られた淡黄色固体を2Lナスフラスコに入れ、蒸留水1280mlを加え、撹拌した。ナスフラスコに塩酸を添加して、混合物をpH4~5にした。目的物が白色沈殿として沈殿したため、吸引ろ過を行い、白色固体として目的物であるMeerwein's Esterを187g(収率48%)得た。生成物の同定はNMR測定結果を文献値と比較することにより行った。
【実施例】
【0127】
1-1-1b)Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneの合成
【実施例】
【0128】
【化18】
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【実施例】
【0129】
ジムロート冷却管および滴下ろうとを装着した2Lナスフラスコに、Meerwein’s ester181.4g〔0.4720mol〕、氷酢酸500ml、蒸留水120ml、および濃塩酸170mlを入れ、加熱、撹拌してMeerwein's esterを溶解させた。24時間の還流を行った。
エバポレーターを用いて溶媒を留去したところ、橙色のオイルが約100ml得られた。得られたオイルに塩化メチレン250ml、飽和炭酸水素ナトリウム水100mlを加え、分液した。さらに有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水100mlで洗浄、後に飽和食塩水100mlで洗浄し、分液した後得られた有機層を、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、ろ過後濃縮した。得られた黄色の固体を、熱エタノール60mlに溶解し、再結晶操作を行った。得られた結晶をエタノールで2回洗浄し、真空乾燥を行ったところ、白色の結晶として、Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneを25.4300g〔0.167094mol〕、収率35%で得た。
【実施例】
【0130】
1-1-1c)Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneの速度論的光学分割(その1)
【実施例】
【0131】
【化19】
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【実施例】
【0132】
1Lナスフラスコに、Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneを22.3377g、HOを700ml、それぞれ入れ、50℃に加熱し溶解させた。その後、スクロース100.8gを加え、溶液の温度を30℃付近まで下げた後、生イースト52.5gを加え、一日反応させた。
反応により得られた生成物について、遠心分離を行った後、残渣は酢酸エチルで、上澄みはクロロホルムで、それぞれ抽出を行い、有機層を濃縮することにより、淡黄色の半固体として未精製の反応物を取り出した。
【実施例】
【0133】
反応で得られた淡黄色の半固体約22gを、シリカゲルカラム(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル=2/1)を用いて分取した。
目的とするBicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneのフラクションを濃縮後、エタノールから再結晶を行ったところ、白色微針状晶として6.4400g〔42.316mmol〕(収率29%)の(+)-(1S,5S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione(75.6%ee)が得られた。
以下、「(+)-(1S,5S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione」を、「(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione」ともいう。
【実施例】
【0134】
生成物はGCおよびNMRにより同定した。
生成物の光学純度は、ダイセル(株)のLCカラム(CHIRALPAK IC)を用いて測定した(75.6%ee)。
その他反応生成物として、ケトールが8.7287g〔56.603 mmol〕(収率39%)、ジオールが0.5875g〔3.7607mmol〕(収率3%)得られた。
【実施例】
【0135】
1-1-1d)Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneの速度論的光学分割(その2)
500mlナスフラスコにHOを200ml、スクロースを49.3g、ドライイーストを7.96g、それぞれ入れ、32℃で1時間撹拌した。その後、(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione(75.6%ee)5.6583gを加え、25時間反応させた。反応溶液にセライトを加え、吸引ろ過し、固体を酢酸エチルで抽出(20ml×5)、水層を酢酸エチルで抽出(50ml×10)し、濃縮したところ、淡黄色の半固体が得られた。シリカゲルカラム〔展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1(体積比)〕により目的物を分取し、濃縮したところ、白色の半固体が4.96g得られた。これをエタノールから再結晶を行い、白色微針状晶として(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneを2.9313g(収率52%)得た。得られた生成物を、液体クロマトグラフィ(以下、LCともいう)により分析したところ、98.4%eeであった。
二次晶は678.8mg(収率12%)(98.2%ee)得られた。
【実施例】
【0136】
〔(1-1-2)無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)の合成〕
下記反応により、無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)である、(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを合成した。
【実施例】
【0137】
【化20】
JP2014126068A1_000022t.gif
【実施例】
【0138】
この合成は、M. Mayr, C. J. R. Bataille, S. Gosiewska, J. A. Raskatov, and J. M. Brown, Tetrahedron: Asymmetry, 2008, 19, 1328.に従って行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0139】
1-1-2a)(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneのヒドラゾン化
50mlナスフラスコに、TsNHNHを1.7237g〔9.2558mmol〕入れ、EtOH(エタノール)を7ml加え、撹拌し、懸濁させた。そこに(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione(75.6%ee)を700.3mg〔4.601mmol〕加え、撹拌した後、その懸濁液を2時間還流した。還流後、-20℃に冷却し、しばらく放置した後、ろ過し、得られた白色固体を冷エタノールで洗浄し、真空乾燥を行った。
白色粉末として、4-Methyl-N’-((2E,6Z)-6-{[(4-methylphenyl)sulfonyl]hydrazono}(S,S)-bicyclo[3.3.1]-nona-2-ylidene)benzenesulfonohydrazide(以下、「(S,S)-bis-tosylhydrazone」ともいう)を、1.3748g〔2.8136mmol〕(61%yield)で得た。同定はHNMRおよび13CNMRにより行った。
なお、J. Org. Chem., 1981, 46(17), 3483にNMRデータが載っているが、一部値が異なる。文献は、水のピークを誤ってNHのピークとして同定していたようであった。
【実施例】
【0140】
H NMR(400MHz,r.t.,DMSO-d):
δ1.42 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.70 (br.s, 2H), 1.93 (m, 2H), 2.37 (s, 6H, -Me), 2.69 (dd, J = 17.4, 6.9 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 4H, aromatic), 7.70 (d, J = 8.0 Hz, 4H, aromatic), 10.0 (s, 2H, -NH-).
【実施例】
【0141】
13C{H} NMR(100.5MHz,r.t.,DMSO-d):
δ20.9, 23.9, 29.0, 32.1, 36.7, 127.4, 129.3, 136.4, 143.0, 162.5.
【実施例】
【0142】
1-1-2b)(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneの合成
200mlシュレンク管にPrNHを3ml、TMEDAを11ml、それぞれ入れ、0℃に冷却した後、BuLi/ヘキサン溶液(ca.3M)を5.5ml(ca.16.5mmol)加えた。溶液を撹拌した後、(S,S)-bis-tosylhydrazoneを1.3748g〔2.8136mmol〕加え、暫く撹拌した後、室温まで昇温し、一晩反応させた。
【実施例】
【0143】
反応溶液は、(S,S)-bis-tosylhydrazoneの添加直後に黄色の沈殿を生じ、その後反応の進行に伴い、気体を発生しながら沈殿は溶解した。一晩反応させると、白色のLi塩の沈殿を生じ、溶液は薄い茶色になった。
反応後、0℃に冷却し、水を注意深くLi塩が溶解するまで加えた。反応溶液は淡黄色の水層と無色の有機層に分かれた。溶液を分液し、水層をペンタンで抽出した(5ml×2)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮したところ、淡黄色のオイルが927.0mg得られた。淡黄色のオイルをシリカゲル/ペンタンを用いてシリカゲルカラムにより精製したところ、無色のオイルとして、(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを133.5mg(77wt%/ペンタン、0.86mmol、収率30%、75.6%ee(原料より推定))得た。生成物の同定は、GCおよびNMRにより行った。
【実施例】
【0144】
〔(1-1-3)モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)の合成〕
下記反応により、(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneを出発物質として、モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)である、(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0145】
【化21】
JP2014126068A1_000023t.gif
【実施例】
【0146】
【化22】
JP2014126068A1_000024t.gif
【実施例】
【0147】
1-1-3a)(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-oneの合成
MeMgBr(EtO,3.0M)2.0ml〔6.0mmol〕を25mlシュレンク管に入れ、THF6mlを加え希釈した。得られた希釈液を、(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione(98.4%ee)610.9mg,4.0139mmol/THF10mlに対し0℃に冷却し、滴下して加えた。0℃で10分撹拌した後、2時間室温で撹拌、さらに2時間還流を行い反応させた。還流後、0℃に冷却し、飽和NHClaq.を5ml、蒸留水を2ml加え、反応溶液をクエンチした。その後、酢酸エチルを用いて抽出操作を行い(5ml×3)、合わせた有機層を、MgSOを用いて乾燥し、エバポレーターで濃縮したところ、白色の半固体が得られた。得られた生成物を、塩化メチレン10mlに溶かし、0℃に冷却した後、BF・OEtを5ml滴下して加え、室温で16時間反応させた。その後、飽和NaHCOaq.を30ml加え、反応溶液をクエンチし、塩化メチレンで抽出した(10ml×3)。合わせた有機層を、MgSOを用いて乾燥した。有機層をろ過後濃縮し、得られた淡黄色のオイルをシリカゲル/ペンタンカラムにより精製した。(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-oneを427.9mg(92.3wt%)〔2.629mmol〕(収率66%)得た。
【実施例】
【0148】
(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-one
GC-MS(EI):m/z=150(M),135(M-Me)
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.72 (s, 3H, -Me), 1.82(tt, J = 13.3, 4.6 Hz, 1H, -CH2-), 1.89(br.s, 2H, -CH2-), 1.93-1.98(m, 2H, -CH2-), 2.21-2.26(m, 2H, -CH2-, -CH-), 2.29-2.40 (m, 2H, -CH2-), 2.64 (br.s, 1H, -CH-), 5.48 (s, 1H, =CH-).
【実施例】
【0149】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,CDCl):
δ22.21, 29.18, 29.63, 31.54, 33.26, 36.33, 44.07, 120.13, 136.28, 215.23.
【実施例】
【0150】
1-1-3b)(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-oneのヒドラゾン化
30mlナスフラスコに、TsNHNHを497.2mg〔2.670mmol〕入れ、エタノールを2ml加え懸濁させた。引き続き、6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-oneを427.9mg(92.3wt%)〔2.629mmol〕取り、これをエタノール3mlで希釈し、反応系に加えた。撹拌後、4時間還流し、反応させた。反応後、溶液を濃縮したところ淡黄色のオイルが得られた。このオイルをシリカゲルカラム〔展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:2(体積比)〕で精製し、真空乾燥を行ったところ、淡黄色の粉末として目的物である(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-one 4-Methylbenzenesulfonhydrazoneを、681.4mg,95.6wt%〔2.046mmol〕78%の収率で得た。
【実施例】
【0151】
(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-one 4-Methylbenzenesulfonhydrazone
H NMR(400MHz,r.t.,DMSO-d):
δ1.4-1.8 (m, 7H), 1.63 (s, 3H), 2.10 (br.s, 1H), 2.29 (m, 1H), 2.36 (s, 3H, -Me), 2.63 (dd, J = 15.1, 5.6 Hz, 1H), 5.39 (s, 1H, =CH-), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 2H, aromatic), 7.70 (d, J = 8.0 Hz, 2H, aromatic), 10.0 (s, 1H, -NH-).
【実施例】
【0152】
1-1-3c)(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneの合成
50mlシュレンク管にPrNHを2ml、TMEDAを8ml、それぞれ入れ、0℃に冷却した後BuLi/ヘキサン溶液(ca.3M)を2.3ml(ca.6.0mmol)加え、撹拌した。その後、(S,S)-6-methyl bicyclo[3.3.1]nona-6-en-2-one 4-Methylbenzenesulfonhydrazone(95.6wt%)675.9mg〔2.029mmol〕をTMEDA 2mlの溶液に対し、0℃で加え、暫く撹拌した後室温まで昇温し、一晩反応させた(14h)。
【実施例】
【0153】
反応後、0℃に冷却し、NHClaq.5ml、HO 5mlを加えた。溶液を分液し、水層をペンタンで抽出した(10ml×3)。有機層を濃縮したところ、淡黄色のオイルが2.2354g得られた。淡黄色のオイルをシリカゲル/ペンタンカラムにより精製したところ、無色のオイルとして、(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを169.6mg(96.9wt%,1.224mmol,収率60%)得た。生成物の同定は、GC、NMRにより行った。
【実施例】
【0154】
(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene
GC-MS(EI):m/z=134(M),119(M-Me)
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.61 (m, 1H), 1.67 (s, 3H, -Me), 1.68 (m, 1H), 1.81 (m, 1H), 1.92 (m, 1H), 2.18 (m, 2H), 2.21 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 5.31 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 5.62 (dd, J = 9.6, 4.6 Hz, 1H), 5.69 (dd, J = 10.1, 5.5 Hz, 1H)
【実施例】
【0155】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,CDCl):
δ22.56, 27.57, 29.06, 29.27, 31.80, 32.93, 118.90, 125.15, 131.37, 137.49
[α]23D -88.1 (c = 1.00, CHCl3)
【実施例】
【0156】
〔(1-1-4)ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)の合成〕
以下の反応により、ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエン(配位子)である、(S,S)-2,6-dimethyl-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを合成した。
【実施例】
【0157】
【化23】
JP2014126068A1_000025t.gif
【実施例】
【0158】
この合成は、ラセミ体合成の文献(B. Graetz, S. Rychnovsky, W.-H. Leu, P. Farmer and R. Lin, Tetrahedron: Asymmetry, 2005, 16, 3584.)に従って行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0159】
MeMgBr(EtO,3M)2.7ml〔8.1mmol〕を25mlシュレンク管に入れ、0℃に冷却した後、そこに(S,S)-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dione(98.4%ee)307.5mg,0.2020mmol/THF10mlを滴下して加えた。0℃で5分間撹拌後、12時間還流を行った。還流後、0℃に冷却し、飽和NHClaq.を5ml、蒸留水を3ml加え、反応溶液をクエンチした。その後、酢酸エチルを用いて水槽から抽出し(5ml×4)、合わせた有機層を、MgSOを用いて乾燥し、エバポレーターで濃縮したところ、白色の半固体が得られた。
得られた生成物を、塩化メチレン7mlに溶かし、0℃に冷却した後、BF・OEtを1ml滴下して加え、0℃で5分撹拌後、室温で1時間反応させた。飽和NaHCOaq.を8ml加え、反応溶液をクエンチし、塩化メチレンで抽出した(5ml×3)。合わせた有機層を、MgSOを用いて乾燥し、エバポレーターで濃縮したところ、無色のオイルを得た。
【実施例】
【0160】
粗生成物を原点カラム(シリカゲル/ペンタン)で精製し、エバポレーターで濃縮した。無色のオイルとして目的物(S,S)-2,6-dimethyl-Bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene/ヘキサンを190.2mg(78wt%,1.001mmol,収率50%,98.4%ee(原料より推定))であった。同定はGCおよびH NMRにより行った。
【実施例】
【0161】
〔(1-1-5)無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体の合成〕
以下の反応により、無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体である、Ru(acac)2((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)を合成した。以下、詳細を説明する。
なお、「acac」および「bnd」は、それぞれ、acetylacetonatoおよびbicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを指す(以下、同様である)。
【実施例】
【0162】
【化24】
JP2014126068A1_000026t.gif
【実施例】
【0163】
25mlシュレンク管に、THFを5ml、(S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを85.5mg(ca.80wt%,75.6%ee(原料より推定),ca.0.57mmol)、それぞれ入れ、凍結脱気した後、HOを3滴、Ru(acac)を212.5mg〔0.5333mmol〕、亜鉛粉末を529.1mg、それぞれ加え、一晩撹拌した後、4時間還流し、反応させた。溶液は、初め赤黒い懸濁液であったが、還流後30分程度で黄色(+亜鉛の沈殿)になった。反応後、溶液を室温まで放冷し、亜鉛をろ別した。ろ液を、エバポレーターを用いて濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を1.5mlのアセトンに溶かし、ろ過、黄色粉末と橙色のろ液に分けた。黄色粉末は、THF/ヘキサン系で再結晶を行い、黄色の微結晶(Λ-Ru(acac)((S,S)-bnd))を41.1mg〔0.0980mmol〕、収率18.4%で得た。
【実施例】
【0164】
橙色のろ液は、ヘキサンを5ml加え、茶色のZn種を沈殿させた後、濃縮し、ヘキサンから再結晶を行い、橙色の結晶としてRu(acac)2((S,S)-bnd))(Δ,Λ mixture)を74.9mg〔0.1786mmol〕、収率33.5%で得た。生成物の同定は、NMRによって行った。
【実施例】
【0165】
rac-Λ-Ru(acac)2((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.55 (s, 2H, bnd bridge -CH2-), 1.91 (s, 6H, acac -Me), 2.08 (s, 6H, acac -Me), 2.15 (d, J = 14.2 Hz, 2H, bnd -CH2-), 2.26 (br.s, 2H, bnd bridgehead), 2.73 (dt, J = 14.2, 3.9 Hz, 2H, bnd -CH2-), 3.43 (dd, J = 7.8, 6.0 Hz, 2H, bnd =CH-), 4.34 (dt, J = 7.8, 3.2 Hz, 2H, bnd =CH-), 5.20 (s, 2H, acac γ-CH-)
【実施例】
【0166】
13C{1H}NMR(100.5MHz,r.t.,CDCl):
δ27.28(acac, -Me), 28.42(acac, -Me), 30.43(bnd, bridgehead >CH-), 35.52(bnd, bridge -CH2-), 36.04(bnd, -CH2-), 86.99(bnd, =CH-), 87.94(bnd, =CH-), 98.59(acac, γ-CH-), 185.93(acac, >C=O), 186.87(acac, >C=O)
【実施例】
【0167】
IR(KBr,cm-1):
3082(w), 3028(w), 2967(m), 2906(s), 2861(m), 1584(vs), 1515(vs), 1397(vs), 1270(s), 1196(m), 1017(s), 957(m), 933(m), 761(s), 611(m), 601(m), 435(m).
E.A. calcd for RuC19H26O4 :C, 54.40; H, 6.25% Found : C, 54.55; H,6.04%
【実施例】
【0168】
rac-△-Ru(acac)2((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.53 (s, 2H, bnd bridge -CH2-), 1.92 (s, 6H, acac -Me), 2.04-2.12 (overwrapped with acac-Me, 4H, bnd -CH2-), 2.11 (s, 6H, acac -Me), 2.43 (br.s, 2H, bnd bridgehead), 3.84 (dd, J = 7.3, 5.5 Hz, 2H, bnd =CH-), 4.31 (m, 2H, bnd =CH-), 5.44 (s, 2H, acac γ-CH-)
【実施例】
【0169】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,CDCl):
δ27.45(acac, -Me), 28.54(acac, -Me), 30.21(bnd, bridgehead >CH-), 35.28(bnd, bridge -CH2-), 37.42(bnd, -CH2-), 85.64(bnd, =CH-), 91.81(bnd, =CH-), 98.85(acac, γ-CH-), 185.41(acac, >C=O), 186.57(acac, >C=O)
【実施例】
【0170】
IR(KBr,cm-1):
3078(w), 3030(w), 3029(m), 3000(m), 2962(m), 2919(s), 2844(m), 1582(vs), 1515(vs), 1397(vs), 1333(s), 1270(s), 1197(m), 1018(s), 959(m), 933(m), 765(s), 617(m), 605(m), 437(m).
【実施例】
【0171】
〔(1-1-6)モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体の合成〕
以下の反応により、モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体である、Ru(acac)2{(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0172】
【化25】
JP2014126068A1_000027t.gif
【実施例】
【0173】
25mlシュレンク管に、(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを198.8mg〔1.437mmol〕、THFを3ml、それぞれ入れ、凍結脱気した後、THFを更に7ml、Ru(acac)を542.1mg〔1.361mmol〕、亜鉛粉末を1.0181g、HOを6滴、それぞれ加えた。溶液を一晩撹拌した後、4時間還流し、反応させた。
反応後、溶液を室温まで放冷し、亜鉛をろ別した。ろ液を2ml程度まで濃縮し、Zn種を取り除くためアルミナカラムをかけた。再度、溶液を濃縮し、粗生成物として橙色のオイルを得た。得られたオイルをヘキサン1mlで希釈し、室温で静置した。橙色の針状晶が生成していたため、ろ別後ヘキサンで洗浄、真空乾燥を行った。結果、橙色の針状晶として、Ru(acac)2{(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を202.5mg〔0.4671mmol〕、収率33%で得た。ろ過後の母液および洗液はまとめて濃縮し、ヘキサンで希釈後-20℃のフリーザーで静置する事により、二次晶(黄色粉末)を143.8mg(23%)得た。
【実施例】
【0174】
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
major diastereomer of Ru(acac)2(2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)
δ1.14 (s, 3H), (1.4-2.3 (bnd methylene and methyne , 6 H), 1.85 (s, 3H, acac-Me), 1.89 (s, 3H, acac-Me), 2.10 (s, 3H, acac-Me), 2.17 (s, 3H, acac-Me), 2.37 (br s, 1H), 2.86 (m, 1H), 3.75 (s, 1H, =CH), 3.90 (dd, J = 7.8, 5.5 Hz, 1H, =CH), 4.19 (m, 1H, =CH), 5.37 (s, 1H, acac γ-CH), 5.43 (s, 1H, acac γ-CH)
【実施例】
【0175】
minor diastereomer of Ru(acac)2(2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)
δ0.83 (s, 3H), (1.4-2.3 (bnd methylene and methyne , 7 H), 1.85 (s, 3H, acac-Me), 1.87 (s, 3H, acac-Me), 2.07 (s, 3H, acac-Me), 2.13 (s, 3H, acac-Me), 2.87 (m, 1H), 3.43 (dd, J = 7.4, 6.0 Hz, 1H, =CH), 4.10 (s, 1H, =CH), 4.19 (m, 1H, =CH), 5.14 (s, 1H, acac γ-CH), 5.24 (s, 1H, acac γ-CH)
【実施例】
【0176】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,CDCl):
(mixture of 2 diastereomers)
δ24.13, 24.36, 26.97, 27.07, 27.18, 27.37, 28.31, 28.46, 28.75, 28.81, 29.37, 29.51, 35.28, 35.34, 35.51, 36.36, 36.72, 36.90, 38.09, 82.83, 84.35, 85.43, 86.27, 88.12, 90.76, 96.87, 97.71, 98.17, 98.41, 98.66, 98.81, 184.70, 185.64, 186.00, 186.09, 186.17, 186.20, 186.74
【実施例】
【0177】
IR(KBr,cm-1):
3076(w), 3032(w), 2971(m), 2897(s), 2840(m), 1582(vs), 1515(vs), 1398(vs), 1364(s), 1270(s), 1196(m), 1018(m), 930(m), 763(s), 612(m), 600(m), 436(m).
E. A. calcd for RuC20H28O4 C, 55.41; H, 6.51% Found : C, 54,46; H, 6.46%
【実施例】
【0178】
〔(1-1-7)ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体の合成〕
以下の反応により、ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体である、Ru(acac)2{(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0179】
【化26】
JP2014126068A1_000028t.gif
【実施例】
【0180】
25mlシュレンク管に、(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dieneを190.2mg(78%)〔1.001mmol〕、THFを7mlそれぞれ入れ、凍結脱気した。その後、Ru(acac)を381.3mg〔0.9571mmol〕、亜鉛粉末を660.2mg、HOを5滴、それぞれ加えた。
溶液を一晩撹拌した後、4時間還流し、反応させた。反応後、アルミナカラムで淡黄色のフラクションを分取した。再度、溶液を濃縮し、粗生成物として黄色のオイルを得た。生成物の再結晶を行うため、ヘキサン1mlでオイルを希釈し、ろ過後-20℃のフリーザーに静置した。橙色の針状晶が生成していたため、ろ別後ヘキサンで洗浄、真空乾燥を行った。結果、橙色の針状晶として、Δ-Ru(acac)2{(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を135.0mg〔0.3017mmol〕、収率32%で得た。
【実施例】
【0181】
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ1.41 (br.s, 2H, diene -CH2-), 1.55 (s, 6H, diene -Me), 1.74 (s, 6H, acac -Me),1.98 (br.s, 2H, diene bridge head), 2.02 (s, 6H, acac -Me), 2.19 (br.d, J = 13.5 Hz, 2H, diene exo-CH2-), 2.45 (br.d, J = 13.5 Hz, 2H, diene endo-CH2-), 3.97 (br.s, 2H, diene =CH-), 5.34 (s, 2H,acac γ-CH)
【実施例】
【0182】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,C):
δ24.6 (diene, -Me), 27.1(acac, -Me), 28.8 (acac, -Me), 35.6 (bridge-CH2-), 36.6 (bridgehead-CH-), 37.9 (-CH2-), 83.0 (diene, =CH-), 96.6 (=C<), 98.9 (acac, =CH-), 185.2 (-CO-), 186.2 (-CO-)【0183】
IR(KBr,cm-1):
3082(w), 2966(m), 2895(s), 2834(m), 1579(vs), 1517(vs), 1401(vs), 1363(s),
1269(m), 1196(m), 1031(s), 1008(m), 934(m), 756(s), 615(m), 601(m), 437(w).
E. A. calcd for RuC21H30O4 : C, 56.36; H, 6.76% Found : C, 55.92; H, 6.72%
【実施例】
【0184】
〔(1-1-8)無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)の合成〕
以下の反応により、無置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)である、Ru(naphthalene)((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)(下記触媒前駆体2a)を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0185】
【化27】
JP2014126068A1_000029t.gif
【実施例】
【0186】
25mlシュレンク管にRu(acac)2((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)を125.8mg〔0.2999mmol〕入れ、THFを3ml加え、撹拌した。その後、-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(117.5mg、0.9167mmol)、Na(85.6mg)、およびTHF(4ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの〕を加え、-78℃で2時間反応させた後、室温で13時間反応させた。溶液をアルミナカラムによりろ過し、濃縮したところ、暗橙色の固体が得られた。濃縮後、真空乾燥し、ナフタレンの除去を行った。得られた茶色の固体を、THF 0.5ml、ヘキサン 3.5mlに溶かし、ろ過後フリーザーに入れ、再結晶操作を行った。再結晶操作によって得られた茶色粉末を、ろ別し、真空乾燥を行い、茶色の粉末として、Ru(naphthalene)((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)(75.6%ee(原料より推定))を61.3mg〔0.175mmol〕、収率58.5%で得た。生成物の同定はNMRによって行った。
得られたRu(naphthalene)((S,S)-bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene)、即ち触媒前駆体2aは、既述の一般式(1-11)において、2つのRが共に水素原子であるものである。
【実施例】
【0187】
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ1.14 (s, 2H, bnd bridge -CH2-), 1.88-1.93(m, 2H, bnd -CH2-), 1.98 (br.s, 2H, bnd bridgehead), 2.52 (d, J = 12.4 Hz, 2H, bnd -CH2-), 3.51 (t, J = 6.4 Hz, 2H, bnd =CH-), 3.86 (br.d, J = 7.3 Hz, 2H, bnd =CH-), 4.17 (d, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 4.31 (d, J = 6.0 Hz, 1H, coord naphthalene), 5.47 (t, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 5.54 (t, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 7.0-7.2 (m, 4H, uncoord naphthalene)
【実施例】
【0188】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,C):
δ29.10(bnd, bridgehead >CH-), 34.88(bnd, bridge -CH2-), 45.59(bnd, -CH2-), 61.92(bnd, =CH-), 64.39(bnd, =CH-), 73.96, 74.30, 89.59, 89.94, 104.79, 105.22, 125.52, 126.20, 126.35, 126.70
【実施例】
【0189】
IR(KBr,cm-1):
3040(w), 2978(m), 2901(s), 2871(s), 2807(s), 1481(w), 1448(w), 1364(w), 1322(w), 1228(w), 1048(w), 874(w), 832(w), 815(w), 803(m), 741(s)
E.A. calcd for RuC19H20:C, 65.21; H, 5.77% Found : C, 65.27; H, 6.36%
【実施例】
【0190】
〔(1-1-9)モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)の合成〕
以下の反応により、モノメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)である、Ru(naphthalene){(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}(下記触媒前駆体2b)を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0191】
【化28】
JP2014126068A1_000030t.gif
【実施例】
【0192】
50mlシュレンク管にRu(acac)2{(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を342.2mg〔0.7894mmol〕入れ、THFを8ml加え、撹拌した。その後、-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(300.0mg、2.340mmol)、Na(182.5mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの〕をゆっくり滴下して加え、-78℃で4時間反応させた後、室温で16時間反応させた。溶液をアルミナカラムにより、ろ過し、濃縮したところ、暗橙色のオイルが得られた。濃縮後、真空乾燥し、ナフタレンの除去を行った。暗橙色オイルを、ヘキサン2ml、THF 0.5mlで希釈し、ろ過後、-60℃フリーザーに入れ、静置した。さらに、ろ過後、真空乾燥を行ったところ、暗茶色の粉末として、Ru(naphthalene){(S,S)-2-methylbicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}(98.4%ee(原料より推定))が124.5mg〔0.3425mmol〕(収率43%)得られた。生成物の同定はNMRにより行った。
得られたRu(naphthalene){(S,S)-2-methylbicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}、即ち触媒前駆体2bは、既述の一般式(1-11)において、2つのRのうち一方が水素原子で、他方がメチル基のものである。
後述の実施例2-1では、「Ru(naphthalene){(S,S)-2-methylbicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}」(触媒前駆体2b)を、「Ru(naphthalene)((S,S)-Me-bnd)」と略称することがある。
また、後述の実施例2-1および比較例1では、触媒前駆体2bを、「触媒前駆体(S,S)-2b」ともいう。
【実施例】
【0193】
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ1.08 (dd, J = 11.9, 6.0 Hz, 1H, Me-bnd bridge -CH2-), 1.15 (dd, J = 11.9, 6.0 Hz, 1H, Me-bnd bridge -CH2-), 1.44 (s, 3H, Me-bnd -Me), 1.60 (m, 1H, Me-bnd 1-bridgehead), 1.88 (d, J = 12.4 Hz, 1H, Me-bnd 4-CH2-), 1.96 (m, 1H, Me-bnd 5-bridgehead), 2.09 (d, J = 12.8 Hz, 1H, Me-bnd 8-CH2-), 2.46 (d, J = 12.4 Hz, 1H, Me-bnd 4-CH2-), 2.55 (d, J = 12.8 Hz, 1H, Me-bnd 8-CH2-), 3.45 (t, J = 6.9 Hz, 1H, Me-bnd 6-=CH-), 3.80 (br.s, 2H, bnd 3,7-=CH-), 4.23 (d, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 4.35 (d, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 5.36 (t, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 5.57 (t, J = 5.5 Hz, 1H, coord naphthalene), 6.98 (d, J = 8.2 Hz, 1H, uncoord naphthalene) 7.12 (m, 2H, uncoord naphthalene) 7.0-7.2 (m, 4H, uncoord naphthalene)
【実施例】
【0194】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,C):
δ8.46, 30.14, 34.22, 35.71, 43.15, 46.17, 61.68, 62.05, 67.38, 74.10, 74.63, 76.02, 90.29, 91.48, 104.67, 105.90, 125.45, 126.11, 126.97
E.A: Anal. Calc: C, 66.09; H, 6.10, Found: C, 65.74; H, 6.75, C, 66.42; H, 6.71
【実施例】
【0195】
〔(1-1-10)ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)の合成〕
以下の反応により、ジメチル置換ビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)である、Ru(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6- diene}(下記触媒前駆体2c)を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0196】
【化29】
JP2014126068A1_000031t.gif
【実施例】
【0197】
50mlシュレンク管に、Ru(acac)2{(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}を266.3mg〔0.5950mmol〕入れ、THFを7ml加え、撹拌した。その後、-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(242.2mg、1.890mmol)、Na(170mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの)を加え、-78℃で3.5時間反応させた後、室温で一晩反応させた。溶液をアルミナカラムによりろ過し、濃縮したところ、暗橙色のオイルが得られた。濃縮後、真空乾燥し、ナフタレンの除去を行った。THF(2ml)とヘキサン(5ml)との混合溶媒から再結晶を行ったところ、暗赤色の結晶が39.4mg得られた。生成物をNMRにより確認したところ、Ru(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}とRu(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}2との混合物〔1:0.8(物質量比)〕(98.4%ee(原料より推定))であった。
得られたRu(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}、即ち触媒前駆体2cは、既述の一般式(1-11)において、2つのRがともにメチル基のものである。
後述の実施例3では、「Ru(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}」(触媒前駆体2c)を、「Ru(naphthalene)((S,S)-Me2-bnd)」と略称することがある。
【実施例】
【0198】
Ru(naphthalene){(S,S)-2,6-dimethyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-diene}
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ1.08 (br.m, 2H, diene -CH2-), 1.40 (s, 6H, diene -Me), 1.57 (br.m, 2H, diene bridgehead), 2.19 (br.d, J = 11.9 Hz, 2H, diene exo-CH2-), 2.49 (d, J = 12.8 Hz, 2H, diene endo-CH2-), 3.75 (s, 2H, diene =CH-), 4.39 (d, J = 5.5 Hz, 1H,coord naphthalene), 4.42 (d, J = 6.0 Hz, 1H,coord naphthalene), 5.17 (t, J = 5.5 Hz, 1H,coord naphthalene), 5.67 (dt, J = 0.9, 5.5 Hz, 1H,coord naphthalene), 6.93 (d, J = 7.8 Hz, 1H,uncoord naphthalene), 7.07 (dt, J = 1.8, 6.0 Hz, 1H,uncoord naphthalene), 7.1-7.2(overwrapped with C6D6, 2H,uncoord naphthalene),
【実施例】
【0199】
13C{H}NMR(100.5MHz,r.t.,C):
δ30.1 (Me-bnd, -Me), 33.5 (Me-bnd, bridge-CH2-), 35.1 (Me-bnd, bridgehead-CH-), 43.7 (Me-bnd, -CH2-), 62.5 (Me-bnd, =CH-), 73.9 (coord naphthalene), 75.1 (coord naphthalene), 75.8 (Me-bnd, =C<), 90.6 (coord naphthalene), 94.2 (coord naphthalene), 104.7 (naphthalene, ring junction), 106.7 (naphthalene, ring junction), 125.4 (uncoord naphthalene), 125.9 (uncoord naphthalene), 126.0 (uncoord naphthalene), 127.2 (uncoord naphthalene)【0200】
IR(KBr,cm-1):
3057(w), 2950(m), 2877(s), 2803(s), 1482(w), 1444(m), 1360(m), 1334(w), 1173(w), 1026(s), 1001(w), 818(s), 740(s), 674(w), 413(w)
E.A: Anal. Calc: C, 66.82; H, 6.41, Found: C, 66.72; H, 6.87
【実施例】
【0201】
〔(1-1-11)X線による合成した触媒前駆体の分子構造確認〕
以上のようにして、得られた触媒前駆体2a~触媒前駆体2cについて、X線構造解析を行い、得られた分子構造を、図1~図3に示す。
なお、X線構造解析に当たっては、理学電機社製のAFC7R-Mercury IIを用いた。
【実施例】
【0202】
(実施例1-2)-触媒前駆体の合成-
下記手法に従い、一般式(4)で表される触媒前駆体を合成した。
【実施例】
【0203】
〔(1-2-1)カルボン由来のビシクロ[2.2.2]オクタジエンのトリフルオロメタンスルホン酸エステル化物(配位子前駆体)の合成〕
まず、配位子前駆体として、カルボン由来のビシクロ[2.2.2]オクタジエンのトリフルオロメタンスルホン酸エステル化物である、Trifluolomethansulfonic acid 8-methoxy-1,8-dimethylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dien-2-yl esterの合成を行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0204】
1-2-1a)(R)-(-)カルボンの臭素化反応
【実施例】
【0205】
【化30】
JP2014126068A1_000032t.gif
【実施例】
【0206】
A. Srikrishna , G. V. R. Sharma , S. Danieldoss and P.y Hemamalini, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1996, 1305-1311. に従って、上記反応式に示す、(R)-(-)カルボンの臭素化反応を行った。以下、詳細を説明する。
なお、上記反応式中、NBSは、N-ブロモスクシンイミド(N-Bromosuccinic imide)を表す。
200mlのシュレンク管に、MeOH〔30ml〕、CHCl〔45ml〕、(-)-carvone〔7.5ml(48mmol)〕を入れ、0℃に冷却した。その後、NBS(前日にMeOHで再結晶したもの)を10.1697g(57.140mmol)を1.5時間かけて加えた。全て加え終わった後、室温まで昇温し、22時間攪拌し、暗所下で反応させた。反応後、CHCl〔80ml〕を加え、0.5MのNaOHaq〔100ml〕およびbrine〔100ml〕により洗浄した。また、有機層をNaSOにより乾燥し、エバポレーターにより濃縮した。得られた黄色のオイルをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〔体積比〕)により精製し、淡黄色のオイルとして目的物であるbromocarvoneを8.6504g(96wt%/solv)(31.798mmol)得た。収率は66%であった。
【実施例】
【0207】
1-2-1b)臭素化した(R)-(-)カルボンの環化反応
【実施例】
【0208】
【化31】
JP2014126068A1_000033t.gif
【実施例】
【0209】
500mlのシュレンク管に、上記で得られたbromocarvoneを10.2624g〔(95.8wt%),37.641mmol〕、BuOHを100ml、THFを120ml、それぞれ入れ、0℃に冷却した後、BuOKを5.0022g〔44.6mmol(1.2eq)〕加えた。BuOKを全量加え終わった後、0℃で10分間撹拌し、その後、室温まで昇温して18時間反応させた。反応後、酸性食塩水(飽和食塩水:1M HCl=1:1〔体積比〕)50mlを加え、溶液をクエンチし、EtO〔50ml〕を加えた後に分液した。
有機層を酸性食塩水(飽和食塩水:1M HCl=1:1〔体積比〕)50mlで2回洗浄し、その後、NaSOで乾燥し、濃縮したところ黄色のオイルとして粗生成物を得た。このオイルをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=5:1〔体積比〕)で精製し、無色のオイルとして、(1S*,4S*,8R*)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを、2.6470g〔14.084mmol〕、収率37%で、(1S*,4S*,8S*)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを、2.3882g〔10.388mmol〕、収率28%で、分割しきれなかった混合物を683.6mg、それぞれ得た。
【実施例】
【0210】
1-2-1c)Trifluolomethansulfonic acid 8-methoxy-1,8-dimethylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dien-2-yl esterの合成〕
【実施例】
【0211】
【化32】
JP2014126068A1_000034t.gif
【実施例】
【0212】
C. Fischer, C. Defieber, T. Suzuki, and E. M. Carreira, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1628-1629. の方法に従って、上記反応式により、Trifluolomethansulfonic acid 8-methoxy-1,8-dimethylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dien-2-yl esterの合成を行った。以下、詳細を説明する。
50mlのシュレンク管に、THFを20ml、PrNHを0.65ml〔4.6mmol〕を入れ、-78℃に冷却した後、nBuLi/ヘキサン(2.6M)を2ml加えた。20分間撹拌した後、THF2mlで希釈した(1S*,4S*,8R*)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを637.9mg(96wt%/solv.、3.4mmol加えた。反応溶液を-78℃で1時間加熱した後、PhNTfを1.7878g,5.0043mmol加え、その後室温まで昇温し、12時間(終夜)反応させた。反応後、反応物を0℃に冷却し、蒸留水10mlを加え、反応溶液をクエンチし、エバポレーターでTHFを留去し、生成物が分散懸濁している水溶液とした。この水溶液にCHClを加えて可溶成分を抽出(10ml×4)し、有機層をまとめて、食塩水で洗浄した。洗浄した有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後に、濃縮したところ粗生成物として、黄色のオイルを1.5g得た。
得られたオイルを、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=10/1〔体積比〕)で精製し、淡黄色のオイルとして目的物であるTrifluolomethansulfonic acid 8-methoxy-1,8-dimethylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dien-2-yl esterを、811.3mg(96.6wt%)、2.509mmol、収率73.9%で得た。生成物の同定はH NMRにより、文献値と比較して行った。
【実施例】
【0213】
〔(1-2-2) 2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエン(配位子)の合成〕
【実施例】
【0214】
【化33】
JP2014126068A1_000035t.gif
【実施例】
【0215】
Angew.Chem.Int.Ed.2008,7669.に従って、上記反応式により、2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエン(配位子)である、(-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-dieneの合成を行った。以下、詳細を説明する。
25mlシュレンク管Aに、Trifluolomethansulfonic acid 8-methoxy-1,8-dimethylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dien-2-yl ester(97wt%)を808.3mg(2.510mmol)、KCOを1.0562g、PhB(OH)を611.4mg(5.015mmol)、DMFを2.5mlそれぞれ入れ、撹拌した。その後、別途、25mlシュレンク管B中に、Pd(OAc)を30.6mg(0.125mmol)、dppfを68.1mg(0.125mmol)、DMFを2.5mlそれぞれ入れ、10分間撹拌して得た触媒溶液を、チューブ移動によって、シュレンク管A内に加えた。なお、dppfとは、1,1'-bis(diphenylphosphino)ferroceneである。
シュレンク管A内の反応溶液を100℃に加熱し、1時間反応させた。反応後、溶液を室温まで冷まし、ろ過した。その後トルエン40mlを複数回に分けて加え、エバポレーターによってDMFを共沸留去した。得られた茶色のオイルをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〔体積比〕)を用いて精製し、淡黄色のオイルとして、(-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-dieneを、325.2mg(94.9wt%)、1.284mmol、収率51.2%で得た。
生成物の同定は、H NMRにより、文献値と比較して行った。
【実施例】
【0216】
〔(1-2-3)2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体の合成〕
1-2-3a)Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
下記反応式により、2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつアセチルアセトナトルテニウム(II)錯体である、Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成を行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0217】
【化34】
JP2014126068A1_000036t.gif
【実施例】
【0218】
25mlのシュレンク管に、(-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene(95wt%)を317.8mg〔1.255mmol〕、THFを3ml入れ、凍結脱気した後、THFを更に7ml、Ru(acac)を481.5mg〔1.209mmol〕、亜鉛粉末を787.0mg、HOを5滴、それぞれ加えて溶液とした。溶液を一晩撹拌した後、2時間還流し、反応させた。溶液は、初め赤茶色であったが、還流後30分程度で黄色になった。反応後、溶液を室温まで放冷し、亜鉛をろ別した。その他、Zn種、Ru種、および有機物を取り除くため、溶液をシリカゲルショートカラムに通し、固相抽出の要領で、ヘキサンを流した後アセトンで抽出した。
エバポレーターで、目的物を含む溶液を濃縮し、粗生成物として橙色のオイルを得た。生成物の再結晶を行うため、ペンタン2mlでオイルを希釈し、ろ過後、-20℃で一晩静置した。生成した黄色の粉末をろ別し、ペンタンで洗浄した。得られた固体を真空乾燥し、黄色の粉末として、Λ-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を301.5mg〔0.5587mmol〕、収率46%で得た。得られた黄色の粉末について、H NMR測定を行ったところ、Λ/△=95/5であった。比率はH NMRから算出した。
また、再結晶の際のろ液を自然濃縮させたところ、橙色の結晶が生成し、二次晶として橙色結晶を95.8mg〔0.1175mmol〕、収率15%で得た。この結晶を単結晶X線構造解析により同定を行ったところ、△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)であった。化学式を下記に示す。
【実施例】
【0219】
【化35】
JP2014126068A1_000037t.gif
【実施例】
【0220】
この結晶のH NMRを測定したところ、ほぼ純粋な△体であった(Λ/△=5/95、比率はH NMRから算出)。
本反応においては、Ru中心に対する△およびΛの配位形式があることからから、2種のジアステレオマーが生成することが予測される。
【実施例】
【0221】
得られた△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)のH NMRスペクトルを図4に示した。
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.00 (d, J = 13.8 Hz, 1H, -CH2-), 1.19 (s, 3H,-Me), 1.43 (d, J = 13.8 Hz, 1H, -CH2-), 1.67 (s, 3H,-Me), 1.69 (s, 3H, acac-Me), 1.84 (s, 3H, acac-Me), 2.18 (s, 3H, acac-Me), 2.19 (s, 3H, acac-Me), 3.22 (s, 3H, -OMe), 3.79 (t, J = 4.0 Hz, 1H, >CH-), 4.09 (dd, J = 1.1, 6.3 Hz, 1H, =CH-), 4.13 (t, J = 5.7 Hz, 1H, =CH-), 4.48 (d, J = 5.7 Hz, 1H, =CH-), 5.26 (s, 1H,acac-γ), 5.30 (s, 1H, acac-γ), 7.02-7.11 (m, 3H, -Ph), 7.19-7.22 (m, 2H,-Ph)
【実施例】
【0222】
また、△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)のX線構造解析により得られた分子構造を、図5に示す。また、結晶学的データ概要を表1に示す。
【実施例】
【0223】
【表1】
JP2014126068A1_000038t.gif
【実施例】
【0224】
1-2-3b)Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
下記反応式により、2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体である、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成を行った。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0225】
【化36】
JP2014126068A1_000039t.gif
【実施例】
【0226】
200mlシュレンク管に、△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を325.6mg〔0.6039mmol〕入れ、THFを7ml加え、撹拌した。その後、混合物を-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(233.2mg、1.819mmol)、Na(142mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの〕を加え、-78℃で3時間反応させた。その後、さらに室温で15時間反応させた。得られた溶液をアルミナカラムによりろ過し、濃縮したところ、橙色の粉末が得られた。さらに溶液を濃縮した後、粉末を真空乾燥し、ナフタレンの除去を行った。得られた橙色の粉末を、ヘキサン1mlと、THF2mlに溶解させ、ろ過した後、さらにヘキサン5mlを加え、-72℃で再結晶をおこなった。得られた固体を冷ヘキサンで洗浄し、固体を真空乾燥したところ、橙色の粉末として、下記構造のRu(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)〔主生成物〕が、97.8mg〔0.8923mmol〕、収率33%で得られた。
なお、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)〔主生成物〕の生成に際し、一部ナフタレンに対し、Ru種が2分子配位したRu(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)2〔副生成物〕が、主生成物:副生成物=81:19(物質量比)の割合で得られた。
【実施例】
【0227】
【化37】
JP2014126068A1_000040t.gif
【実施例】
【0228】
生成物の同定は、NMRにより行った。主生成物の同定結果を下記に示す。
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ0.60 (d, J = 13.2 Hz, 1H, -CH2-), 0.97 (s, 3H,-Me), 1.14 (s, 3H,-Me), 1.29 (d, J = 13.8 Hz, 1H, -CH2-), 2.53 (d, J = 5.2 Hz, 1H, >CH-), 2.61 (t, J = 5.7 Hz, 1H, =CH-), 2.96 (t, J = 6.3 Hz, 1H, =CH-), 3.03 (d, J = 6.3 Hz, 1H, overwrapped, =CH-), 3.04 (s, 3H, -OMe), 4.21 (d, J = 5.7 Hz, 1H, coord. naphthalene), 4.37 (d, J = 5.2 Hz, 1H, coord. naphthalene), 5.53 (t, J = 6.3 Hz, 1H, coord. naphthalene), 5.73 (t, J = 6.3 Hz, 1H, coord. naphthalene), 7.0-7.2 (m, 7H, uncoord. naphthalene and -Ph(m,p)), 7.53-7.57 (m, 2H,-Ph(o))
【実施例】
【0229】
13CNMR(100.5MHz,r.t.,C):
δ21.37(1°, -Me), 23.79(1°, -Me), 32.11(3°), 32.57(3°), 42.08(3°), 46.61(4°, >C<), 48.20(3°), 48.81(2°, -CH-), 48.97(1°, -OMe), 56.13(4°, >C<), 72.50(3°, =CH-), 73.23(3°, =CH-), 80.17(4°, =C<), 89.22(3°, =CH-), 90.00(3°, =CH-), 104.24(4°, =C<), 104.55(4°, =C<), 125.53(3°, =CH-), 125.71(3°, =CH-),125.97(3°, =CH-), 127.13(3°, 2C, -Ph(o or m)), 127.47(3°,from dept135 =CH-), 128.28(3°,from dept135 -Ph(p)), 132.77(3°, 2C, -Ph(m or o)), 144.72(4°, -Ph(i))【0230】
〔(1-2-4) 2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体の元素分析〕
元素分析により得られた△-Ru(acac)2((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の元素分析の分析結果は次のとおりである。
calcd for C27H34O5Ru
C, 60.10; H, 6.35; O, 14.82; Ru, 18.73%
Found : C, 59.62; H, 6.44%
【実施例】
【0231】
〔(1-2-5) 2位に水素を持つビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体の合成〕(キラルビシクロオクタジエン錯体の合成)
ビシクロ[2.2.2]オクタジエンを用い、錯体を合成した。
【実施例】
【0232】
配位子の合成は、E. M. Carreira et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1628. およびS. Darses et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 7669.の方法を用いた。この系においては、交差二量化反応は、進行はしたものの収率、選択性共に低い結果となった。
【実施例】
【0233】
この結果を受け、二重結合上のPh基の立体障害が強すぎるため、反応が進行しなくなっているのではないかと考え、二重結合上に置換基を持たない配位子を合成した。
【実施例】
【0234】
1-2-5a)(R)-(-)カルボンの臭素化反応
J. Chem. Soc. Perkin. Trans. I 1996. 1305.に従って合成した。
200mlシュレンク管にMeOH 30 ml, CH2Cl245 ml, (-)-carvone 7.5 ml, 48 mmolを入れ、0℃に冷却した後、N-ブロモスクシンイミドを10.1697 g, 57.140 mmol を加えた。全て加え終わった後、室温まで昇温し、22時間反応させた。反応後、CH2Cl280 mlを加え、0.5M NaOHaq 100 mlおよび食塩水100 mlにより洗浄、有機層をNa2SO4により乾燥し、エバポレーターにより濃縮した。得られた黄色のオイルをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、淡黄色のオイルとして目的物を9.8302g、37.641mmol、78%の収率で得た。
【実施例】
【0235】
1-2-5b)臭素化した(R)-(-)カルボンの環化反応
500mlシュレンク管に、bromocarvoneを9.8343g(37.641mmol)、BuOHを100ml、THFを120ml入れ、0℃に冷却した後、BuOK 5.0022g(44.6mmol〔1.2eq〕)を少しずつ加えた。BuOKを全量加え終わった後、0℃で10分間撹拌し、その後室温まで昇温して18時間反応させた。反応後、酸性食塩水(飽和食塩水:1M HCl=1:1)50mlを加え、溶液をクエンチし、EtOを50ml加えた後に分液した。有機層を酸性食塩水(食塩水:1M HCl=1:1)50mlで2回洗浄し、その後NaSOで乾燥し、濃縮したところ黄色のオイルとして粗生成物を得た。このオイルをシリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色のオイルとして、(1S*,4S*,8R*)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを2.5384g(14.084mmol)、収率37%で、(1S*,4S*,8S*)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを1.8723g(10.388mmol)、収率28%で、それぞれ得た。
【実施例】
【0236】
H NMR(400MHz,r.t.,DMSO-d):
δ1.08(s, 6H, -Me×2), 1.29(d, J = 13.2 Hz, 1H, -CH2-), 1.39 (d, J = 13.2 Hz, 1H, -CH2-), 1.79(dd, J = 17.8, 2.9 Hz, 1H, -CH2-), 2.37 (s, 3H, -Me), 2.42(dd, J = 17.8, 2.3 Hz, 1H, -CH2-), 2.82(m, bridgehead), 3.04(s, 3H, -OMe), 5.86(d, J = 7.5 Hz, 1H, =CH-), 6.30(d, J = 6.9 Hz, 1H, =CH-), 7.38(d, J = 8.6 Hz, 1H, Ts), 7.71(d, J = 8.0 Hz, 1H, Ts), 9.73 (s, 1H, -NH-)
【実施例】
【0237】
1-2-5c)-キラル触媒前駆体の合成-
1-2-5c-1)(1S,4S,8R)-1,8-dimethyl-8-methylbicyclo[2.2.2]octa-5-ene-2-oneのヒドラゾン化
【実施例】
【0238】
【化38】
JP2014126068A1_000041t.gif
【実施例】
【0239】
25mlシュレンク管に、(1S,4S,8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]oct-5-en-2-oneを189.3mg(1.050mmol)、EtOHを3ml、TsNHNHを208.2mg(1.118mmol)入れ、4時間加熱還流し、反応させた。反応後、室温まで冷却し、1ml程度まで濃縮、シリカゲルカラムによって精製した(ヘキサン/酢酸エチル=5/1~1/1)。生成物のフラクションを集め、濃縮、真空乾燥したところ、無色のオイル~白色の半固体として、目的生成物を343.9mg(0.9838mmol)、94%の収率で得た。生成物の同定はNMRにより行った。
【実施例】
【0240】
H NMR(400MHz,r.t.,DMSO-d):
δ1.08(s, 6H, -Me×2), 1.29(d, J = 13.2 Hz, 1H, -CH2-), 1.39 (d, J = 13.2 Hz, 1H, -CH2-), 1.79(dd, J = 17.8, 2.9 Hz, 1H, -CH2-), 2.37 (s, 3H, -Me), 2.42(dd, J = 17.8, 2.3 Hz, 1H, -CH2-), 2.82(m, bridgehead), 3.04(s, 3H, -OMe), 5.86(d, J = 7.5 Hz, 1H, =CH-), 6.30(d, J = 6.9 Hz, 1H, =CH-), 7.38(d, J = 8.6 Hz, 1H, Ts), 7.71(d, J = 8.0 Hz, 1H, Ts), 9.73 (s, 1H, -NH-)
【実施例】
【0241】
1-2-5c-2)(8R)-1,8-dimethyl-8-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dieneの合成
【実施例】
【0242】
【化39】
JP2014126068A1_000042t.gif
【実施例】
【0243】
25mlシュレンク管にPrNHを1ml、およびTMEDAを6ml入れ、0℃に冷却した後、BuLi/ヘキサン溶液(ca.2.6M)を1.2ml(ca.3.1mmol)ゆっくりと加え、撹拌した。その後、先に合成したヒドラゾン〔332.9mg(0.9554mmol)〕を少しずつ加え、暫く撹拌した後、室温まで昇温し、一晩反応させた。
反応後、0℃に冷却し、反応物に、NHClaq(3ml)と、HO(3ml)を注意深く加えクエンチした。反応溶液は淡黄色の水層と無色の有機層に分かれた。溶液を分液し、水層をペンタンで抽出した(5ml×3)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで濃縮したところ、淡黄色のオイルが859.4mg得られた。淡黄色のオイルをシリカゲル/ペンタンカラムにより精製したところ、無色のオイルとして、(1S,4S,8R)-1,8-dimethyl-8-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dieneを86.8mg(0.5259mmol)、収率55%で得た。生成物の同定は、GCおよびNMRにより行った。
【実施例】
【0244】
H NMR(400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.21(overlapped with -Me, 1H, -CH2-), 1.21(s, 3H, -Me), 1.37(d, J = 11.5 Hz, 1H, -CH2-), 1.43(s, 3H, -Me), 3.16(s, 3H, -OMe), 3.58(tt, J = 5.7, 1.7 Hz, 1H, bridgehead >CH-), 6.05(d, J = 6.9 Hz, 1H, =CH-), 6.18(dd, J = 6.8, 1.1 Hz, 1H, =CH-), 6.24(t, J = 6.8 Hz, 1H, =CH-), 6.33(dd, J = 7.4, 5.7 Hz, 1H, =CH-)
【実施例】
【0245】
1-2-5c-3)Ru(acac)2((8R)-1,8-dimethyl-8-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0246】
【化40】
JP2014126068A1_000043t.gif
【実施例】
【0247】
25mlシュレンク管に、THFを5ml、(8R)-1,8-dimethyl-8-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-dieneを104.3mg(79wt%/ペンタン)(0.4991mmol)、それぞれ入れ、凍結脱気した。その後、HO(3滴)、Ru(acac)(190.8mg、0.4789mmol)、および亜鉛粉末309.4mgを加え、一晩撹拌した後、4時間還流し、反応させた。反応後、溶液を室温まで放冷し、亜鉛をろ別し、さらにアルミナカラムを通した後、ろ液を、エバポレーターを用いて濃縮し、黄色のオイルとして粗生成物を305.7mg得た。粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=10/1~1/1)により精製し、濃縮した後、真空乾燥を行った。橙色のオイルとして、目的物Ru(acac)2((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を216.0mg(0.4660mmol)、粗収率97%で得た。
【実施例】
【0248】
1-2-5c-4)Ru(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0249】
【化41】
JP2014126068A1_000044t.gif
【実施例】
【0250】
25mlシュレンク管に、Ru(acac)2((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を208.7mg(0.4503mmol)入れ、THFを5ml加え、撹拌した。その後、混合物を-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(181.9mg,1.419mmol)、Na(122mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの〕をゆっくり滴下して加えた。さらに、-78℃で2時間反応させた後、室温で17時間反応させた。溶液をアルミナカラムによりろ過し、濃縮したところ、茶色の粉末が得られた。真空乾燥後、得られた茶色の粉末をTHF(1ml)に溶解させ、ろ過後ヘキサン5mlを加え、-72℃で再結晶をおこなった。析出した固体をろ別し、ヘキサンで洗浄し(1ml×3)、真空乾燥を行ったところ、茶色粉末として、Ru(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を、53.8mg(0.137mmol)、30%の収率で得た。
【実施例】
【0251】
得られたRu(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)をNMRで同定した。同定結果は次の通りである。
【実施例】
【0252】
H NMR(400MHz,r.t.,C):
δ0.79(d, J = 13.5 Hz, 1H, -CH2-), 0.98(s, 3H, -Me), 1.00(s, 3H, -Me), 1.27(d, J = 13.5 Hz, 1H, -CH2-), 2.17(d, J = 5.2 Hz, 1H, =CH-), 2.41(d, J = 4.6 Hz, 1H, =CH-), 2.64(t, J = 5.2 Hz, 1H, =CH-), 2.9-3.0(m, 2H, =CH-, >CH-), 3.02(s, 3H, -OMe), 4.32(m, 2H, coord. naphthalene), 5.65(m, 2H, coord. naphthalene), 7.07-7.12(m, 2H, uncoord. naphthalene), 7.13-7.18(m, 2H, uncoord. naphthalene),
【実施例】
【0253】
13C NMR(100MHz,r.t.,C):
δ21.70, 23.62, 30.46, 32.76, 39.52, 40.67, 42.54, 47.58, 49.00, 50.75, 72.06, 72.23, 80.22, 87.66, 87.79, 103.06, 103.13, 125.37, 125.42, 126.58, 126.67
【実施例】
【0254】
(実施例1-3)
実施例1-1および実施例1-2と同様に、環状ジエン配位子とアセチルアセトナト配位子とを有する各種のルテニウム錯体を合成した。
以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0255】
1-3-1) Ru(acac)2(bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0256】
【化42】
JP2014126068A1_000045t.gif
【実施例】
【0257】
25mlシュレンク管に、bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene 91.4mg〔0.8797mmol〕、THF 8ml、Ru(acac)3 331.1mg〔0.8311mmol〕、亜鉛粉末 522.4mg、および、HO 4滴を加えた。溶液を終夜撹拌した後、4時間還流したところ、溶液は、初め赤茶色であったが、還流後1時間程度で黄色になった。反応後、溶液を室温まで放冷し、亜鉛をアルミナショートカラムでろ別した。ろ液をエバポレーターを用いて濃縮し、真空乾燥したところ、粗生成物として橙色の粉末を291.1mg得た。得られた粉末に40℃程度のアセトンを3.5ml加え、良く撹拌した後、ろ過し、液体を-20℃のフリーザーに入れ静置したところ、黄色の針状晶として、Ru(acac)2(bod)が237.1mg(0.5848mmol)、70%の収率で得られた。生成物の同定はNMRを用いて行った。
二次晶は、30.0mg(0.0740mmol)、収率9%で得られた。
【実施例】
【0258】
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ1.24(m, 4H, -CH2-), 1.87(s, 6H, acac-Me), 2.18(s, 6H, acac-Me), 3.62(m, 2H, bridgehead), 4.02(t, J = 6.3 Hz, 2H, =CH-), 4.21(t, J = 6.3 Hz, 2H, =CH-), 5.31(br.s, J = 8.6 Hz, 4H, Ar), 5.32(br.s, 2H, acac-γ)
【実施例】
【0259】
1-3-2) Ru(acac)2(2-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0260】
【化43】
JP2014126068A1_000046t.gif
【実施例】
【0261】
同様にして、2-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene 100.0mg〔0.8320mmol〕と、Ru(acac)3 315.6mg〔0.7922mmol〕と、の反応により、黄色の粉末として、Ru(acac)2(Me-bod)が、112.9mg〔0.2691mmol〕、34%の収率で得られた。この錯体は、NMR、元素分析、および単結晶X線構造解析により同定した。
【実施例】
【0262】
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ1.20(m, 4H, -CH2-), 1.43(s, 3H, bod-Me), 1.84(s, 3H, acac-Me), 1.86(s, 3H, acac-Me), 2.17(s, 3H, acac-Me), 2.18(s, 3H, acac-Me), 3.34(d, J = 5.2 Hz, 1H, =CH-), 3.57(m, 2H, >CH-(bod bridgehead)), 3.96(t, J = 6.9 Hz, 1H, =CH-), 4.19(m, 1H, =CH-), 5.31(br.s, 2H, acac-γ-H).
E.A. calcd for RuC19H26O4 :C, 54.40; H, 6.25% Found : C, 54.82; H,6.34%.
【実施例】
【0263】
1-3-3) Ru(acac)2(dbcot)の合成(参考例)
【実施例】
【0264】
【化44】
JP2014126068A1_000047t.gif
【実施例】
【0265】
同様にして、上記のdbcot 428.8mg〔2.099mmol(1.05eq.)〕と、Ru(acac)3 796.8mg〔2.000mmol〕と、の反応により、黄色の針状晶としてRu(acac)2(dbcot)を、547.5mg〔1.269mmol〕、63%の収率で得た。二次晶は、183.8mg、収率21%で得られた。生成物の同定はNMRおよび元素分析により行った。
【実施例】
【0266】
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ1.87(s, 6H, acac-Me), 1.96(s, 6H, acac-Me), 4.93(d, J = 9.2 Hz, 2H, =CH-), 5.11(d, J = 9.2 Hz, 2H, =CH-), 5.35(br.s, 2H, acac-γ), 6.86-6.92(m, 6H,aromatics), 7.01(m, 2H, aromatics).
13C NMR (100.5 MHz, r.t., CDCl3): δ27.45(-Me), 28.16(-Me), 91.03(=CH-), 94.99(=CH-), 98.59(acac-γ), 125.48, 125.54, 126.80, 128.08, 143.98, 144.08, 186.57(>C=O), 187.01(>C=O).
E.A. calcd for RuC26H26O4 :C, 62.02; H, 5.20% Found : C, 61.89; H,5.19%.
【実施例】
【0267】
なお、dbcotは、不斉炭素を持たないため、キラルな配位子ではない。このため、上記のRu(acac)2(dbcot)は、本発明の触媒前駆体には該当しない。よって、上記のRu(acac)2(dbcot)の合成は、「参考例」である。
しかし、dbcot中の8員環に含まれる4つの水素原子のうちの少なくとも1つが、置換基(アルキル基、アリール基など)によって置換された化合物(以下、「配位子X」とする)は、不斉炭素を有する。この場合、置換基と結合している炭素が不斉炭素である。かかる配位子Xは、公知の手法によって合成できる。
従って、上述したRu(acac)2(dbcot)の合成において、dbcotを配位子Xに置き換えることにより、本発明の触媒前駆体に該当するキラル触媒前駆体を合成できることが期待される。
即ち、Ru(acac)2(dbcot)中のdbcotを、上述した配位子Xに置き換えたキラル触媒前駆体は、本発明の触媒前駆体に該当する。
【実施例】
【0268】
1-3-4) Ru(acac)2(troppPh)の合成
【実施例】
【0269】
【化45】
JP2014126068A1_000048t.gif
【実施例】
【0270】
同様にして、上記のtroppPh 1.1854g〔3.1491mmol(1.05eq.〕と、Ru(acac)3 1.2087g〔3.0340mmol〕と、の反応により、黄色の板状晶としてRu(acac)2(troppPh)を、1.6503g〔2.4423mmol〕、80%の収率で得た。同定はNMRおよび元素分析により行った。
【実施例】
【0271】
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ1.59(s, 3H, -Me), 1.60(s, 3H, -Me), 1.76(s, 3H, -Me), 2.02(s, 3H, -Me), 4.76(s, 1H, acac-γ-H), 4.94(d, J = 10.3 Hz, 1H, =CH-), 5.04(d, JP-H = 13.8 Hz, 1H, >CH-PPh2), 5.31(s, 1H, acac-γ-H), 5.44(d, J = 10.3 Hz, 1H, =CH-), 6.08(t, J = 8.0 Hz, 2H, aromatics), 6.80(m, 2H, aromatics), 6.93(m, 2H, aromatics), 7.01(m, 1H, aromatics), 7.07(m, 3H, aromatics), 7.13(m, 1H, aromatics), 7.2-7.3(m, 4H, aromatics), 7.65(d, J = 7.5 Hz, 1H, aromatics), 7.83(m, 2H, aromatics).
31P{1H} NMR (161.8 MHz, r.t., CDCl3): δ89.52.
E.A. calcd for RuC37H35O4P :C, 65.77; H, 5.22% Found : C, 65.78; H,5.27%.
【実施例】
【0272】
1-3-5) Ru(acac)2(2,5-dimethyl-7,8-(tetrafluorobenzo)bicyclo[2.2.2]octatriene)の合成
【実施例】
【0273】
【化46】
JP2014126068A1_000049t.gif
【実施例】
【0274】
同様にして、2,5-dimethyl-7,8-(tetrafluorobenzo)bicyclo[2.2.2]octatriene 275.8mg〔1.085mmol〕と、Ru(acac)3 410.4mg〔1.030mmol〕と、の反応により、黄色の針状晶としてRu(acac)2(2,3-(tetrafluorobenzo)bicyclo[2.2.2]octatriene)が、448.0mg〔0.8094mmol〕、79%の収率で得られた。生成物はジアステレオマーの混合物であり、(major : minor = 85 : 15)であった。生成物の同定はNMRおよび元素分析によって行った。
【実施例】
【0275】
-ジアステレオマーの主生成物-
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3), major diastereomer: δ1.48(s, 6H, -Me), 1.86(s, 6H, acac-Me), 2.25(s, 6H, acac-Me), 3.69(d, J = 6.9 Hz, 2H, =CH-), 4.79(d, J = 5.8 Hz, 2H, >CH-(bridgehead)), 5.35(s, 2H, acac-γ-H).
13C NMR (100 MHz, r.t., CDCl3), major diastereomer:: δ17.47(-Me), 27.14(acac-Me), 28.36(acac-Me), 47.51(bridgehead), 69.24(=CH-), 84.13(=C<), 99.30(acac-γ), 127.1-127.4(m, aromatic C), 186.57(acac- >C=O), 187.10(acac- >C=O).
【実施例】
【0276】
-ジアステレオマーのマイナー生成物-
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3), minor diastereomer: δ1.21(s, 6H, -Me), 1.88(s, 6H, acac-Me), 2.28(s, 6H, acac-Me), 4.13(d, J = 5.2 Hz, 2H, =CH-), 4.97(d, J = 5.2 Hz, 2H, >CH-(bridgehead)), 5.34(s, 2H, acac-γ-H) .
13C NMR (100 MHz, r.t., CDCl3), minor diastereomer:: δ18.35(-Me), 27.18(acac-Me), 28.30(acac-Me), 47.39(bridgehead), 71.59(=CH-), 85.18(=C<), 98.74(acac-γ), 127.1-127.4(m, aromatic C), 186.40(acac- >C=O), 187.41(acac- >C=O).
【実施例】
【0277】
E.A. calcd for RuC24H24F4O4 :C, 52.08; H, 4.37% Found : C, 51.81; H, 4.54%.
【実施例】
【0278】
(実施例1-4)
実施例1-1および実施例1-2と同様に、環状ジエン配位子とナフタレン配位子とを有する各種のルテニウム錯体を合成した。
ここで、環状ジエン配位子とナフタレン配位子とを有する各種のルテニウム錯体は、実施例1-3で合成した、環状ジエン配位子とアセチルアセトナト配位子とを有する各種のルテニウム錯体を用いて合成した。
以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0279】
1-4-1) Ru(naphthalene)(bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0280】
【化47】
JP2014126068A1_000050t.gif
【実施例】
【0281】
50mlシュレンク管に、実施例1-3で合成したRu(acac)2(bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) 230.5mg〔0.5685mmol〕を入れ、THF 5mlを加えて撹拌した後、-78℃に冷却し、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(232.7mg,1.815mmol)、Na(170mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの〕を約10分間かけて滴下し、-78℃で2時間反応させた後、室温で2時間反応させた。溶液をアルミナカラムによりろ過し、濃縮したところ、暗橙色の固体が得られた。濃縮後、真空乾燥し、オイル拡散ポンプによってナフタレンの除去を行った。その後、THF/ヘキサン系での再結晶を試みたが、うまくいかなかったため、溶媒留去後、ヘキサン 5mlに溶解させ、ろ過後-63℃(deep freezer)で再結晶を行った。得られた固形物をろ別、真空乾燥したところ、黒茶色の粉末として、Ru(naphthalene)(bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を、80.9mg〔0.241mmol〕、42%の収率で得た。生成物の同定はNMR、元素分析および単結晶X線構造解析により行った。
【実施例】
【0282】
1H NMR (400 MHz, r.t., C6D6): δ1.08(m, 4H, -CH2-), 2.80(dd, J = 2.3, 4.6 Hz, 4H, =CH-), 2.89(m, 2H, >CH-(bod bridgehead)), 4.34(dd(AA’BB‘), J = 2.3, 4.0 Hz, 2H, coord. naphthalene), 5.68(dd(AA’BB‘), J = 2.3, 4.6 Hz, 2H, coord. naphthalene), 7.10-7.14(m, 2H, uncoord. naphthalene), 7.16-7.20(m, 2H, uncoord. naphthalene).
E.A. calcd for RuC18H18 :C, 64.46; H, 5.97% Found : C, 63.93; H,5.62%.
【実施例】
【0283】
1-4-2) Ru(naphthalene)(2-mehtyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)の合成
【実施例】
【0284】
【化48】
JP2014126068A1_000051t.gif
【実施例】
【0285】
同様にして、実施例1-3で合成したRu(acac)2(2-methylbicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) 199.8mg〔0.4763mmol〕と、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(184.4mg,1.439mmol)、Na(130mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの)と、の反応により、茶色の粉末として、Ru(naphthalene)(2-mehtyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)を、78.1mg〔0.224mmol(収率47%)〕得た。錯体の同定は、NMRおよび元素分析によって行った。
【実施例】
【0286】
1H NMR (400 MHz, r.t., C6D6): δ1.0-1.2(m, 4H, bridge -CH2-), 1.50(s, 3H, bod-Me), 2.64(d, J = 5.8 Hz, 1H, =CH-), 2.74(m, 1H, bridgehead), 2.78(t, J = 5.2 Hz, 1H, =CH-), 2.83(t, J = 5.2 Hz, 1H, =CH-), 2.90(m, 1H, bridgehead), 4.34(d, J = 5.2 Hz, 1H, coord. naphthalene), 4.39(d, J = 5.2 Hz, 1H, coord. naphthalene), 5.50(t, J = 5.7 Hz, 1H, coord. naphthalene), 5.78(t, J = 5.7 Hz, 1H, coord. naphthalene), 7.08-7.18(m, 3H, uncoord. naohthalene), 7.21(d, J = 8.0 Hz, 1H, uncoord. naphthalene).
13C NMR (100 MHz, r.t., C6D6): δ22.79, 25.85, 28.86, 33.19, 33.66, 37.82, 39.65, 43.85, 48.61, 71.20, 71.54, 87.96, 89.19, 103.71, 104.37, 125.19, 125.34, 126.41, 126.67.
E.A. calcd for RuC19H20 :C, 65.31; H, 5.77% Found : C, 63.49; H,5.85%.
【実施例】
【0287】
1-4-3) Ru(naphthalene)(dbcot)の合成(参考例)
【実施例】
【0288】
【化49】
JP2014126068A1_000052t.gif
【実施例】
【0289】
同様にして、実施例1-3で合成したRu(acac)2(dbcot) 974.2mg〔1.935mmol〕と、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(1.0006g,7.8062mmol)、Na(503mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの)と、の反応により、黄土色の柱状晶としてRu(naphthalene)(dbcot)・0.25THFが237.4mg〔0.4695mmol〕、24%の収率で得られた。化合物の同定はNMRおよび元素分析により行った。
なお、上述したとおり、Ru(naphthalene)(dbcot)中のdbcotを、上述した配位子X(即ち、dbcot中の8員環に含まれる4つの水素原子のうちの少なくとも1つが、置換基(アルキル基、アリール基など)によって置換された化合物)に置き換えた触媒前駆体は、キラル触媒前駆体であり、本発明の触媒前駆体に該当する。
【実施例】
【0290】
1H NMR (400 MHz, r.t., C6D6): δ4.30(s, 4H, =CH-), 4.37(m(AA’BB‘), 2H, coord. naphthalene), 5.60(m(AA’BB‘), 2H, coord. naphthalene), 6.70(m(AA’BB‘), 4H, ligand), 6.88(m(AA’BB‘), 2H, uncoord. naphthalene), 6.91(m(AA’BB‘), 4H, ligand), 7.04(m(AA’BB‘), 2H, uncoord. naphthalene).
13C NMR (100.5 MHz, r.t., C6D6): δ66.57(=CH-), 77.53(coord. naphthalene), 93.85(coord. naphthalene), 107.03(naphthalene, 4°), 124.98(ligand), 126.75(ligand), 127.16(uncoord. naphthalene), 128.00(uncoord. naphthalene), 148.93(ligand, 4°).
E.A. calcd for RuC26H20(C4H8O)0.25:C, 71.82; H, 4.91% Found : C, 71.53; H,5.22%.
【実施例】
【0291】
1-4-4) Ru(naphthalene)(troppPh)の合成
【実施例】
【0292】
【化50】
JP2014126068A1_000053t.gif
【実施例】
【0293】
同様にして、実施例1-3で合成したRu(acac)2(troppPh) 1.5824g〔2.3418mmol〕と、ナトリウムナフタレン〔ナフタレン(917.1mg,7.155mmol)、Na(546.3mg)、およびTHF(10ml)を、窒素下で3時間撹拌し、作製したもの)と、の反応により暗茶色の粉末として、Ru(naphthalene)(troppPh)・0.25THFを、251.9mg〔0.4039mmol〕、17%の収率で得た。化合物の同定はNMRおよび元素分析により行った。
【実施例】
【0294】
1H NMR (400 MHz, r.t., C6D6): δ4.10(s, 2H, =CH-), 4.44(d, JP-H = 13.2 Hz, 1H, >CH-PPh2), 4.63(m, 2H, coord. naphthalene), 5.44(m, 2H, coord. naphthalene), 6.61(d, J = 6.9 Hz, 2H, aromatics), 6.72(t, J = 7.5 Hz, 2H, aromatics), 6.78(m, 2H, aromatics), 6.88(m, 2H, aromatics), 6.92-7.06(m, 12H, aromatics), 7.31(d, J = 7.5 Hz, 2H, aromatics).
31P NMR (161.8 MHz, r.t., C6D6): δ105.64.
E.A. calcd for RuC37H29P(C4H8O)0.25:C, 73.18; H, 5.01% Found : C, 74.43; H,5.56%.
【実施例】
【0295】
<実施例2>(不斉鎖状化合物の合成)
(実施例2-1)
〔(2-1-1)モノメチルビシクロ[3.3.1]ノナジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体によるメタクリル酸メチルとジヒドロフランとの不斉鎖状交差二量化〕
2-1-1a)Ru(naphthalene)((S,S)-Me-bnd)によるMMAと2,5-dihydrofuranとの交差二量化反応
実施例1-1において速度論的分割を経由して合成されたキラル触媒前駆体である、触媒前駆体2b(以下、「触媒前駆体(S,S)-2b」ともいう)(即ち、Ru(naphthalene)((S,S)-Me-bnd))を用い、次の合成スキーム2のようにして、不斉鎖状化合物を合成した。以下、詳細を説明する。
【実施例】
【0296】
【化51】
JP2014126068A1_000054t.gif
【実施例】
【0297】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)((S,S)-Me-bnd)(98.4%ee)37.7mg〔0.1037 mmol〕とMMA(メタクリル酸メチル)を110μl〔1.04 mmol〕、および2,5-dihydrofuranを780μl〔10.3mmol〕(10eq.)を加えた。室温で数分撹拌し、触媒前駆体2bを溶解させた後、20℃の恒温槽を用いて7日間反応させて、不斉鎖状二量化を行った。反応後、内部基準としてビフェニルを220 mg加え、良く撹拌したのちGCにより収率を求めた。主生成物の収率は74%であり、鎖状交差二量体の合計収率は83%であった。
【実施例】
【0298】
反応溶液を濃縮後、シリカゲルカラムにより精製した。この際の展開溶媒は、ヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比)の混合溶媒を用いた。
カラム精製により無色のオイルとして、交差二量体E体のaを純度97%で95.3mg得た。この単離収率は54%であった。
【実施例】
【0299】
得られた交差二量体E体(a)のオイルを、ヘキサン/IPA=80/20〔体積比〕を用いて、5mL/Lに薄め、液体クロマトグラフィ(LC)〔CHIRALPAK IC〕を用いて光学純度を測定した。主生成物であるE-aの光学純度は80%eeであった。(bのピークの光学純度は84%eeであった。)
【実施例】
【0300】
2-1-1b)液体クロマトグラフィによる分析結果
液体クロマトグラフィにより分析した結果を、図6に示す。
図6は、(S,S)体のキラル触媒前駆体2bを用いて生成物を得たときの、生成物の分析結果である。
なお、測定条件は、次のとおりである。
Column: CHIRALPAK IC
Eluent: Hex / IPA = 90/10 [v/v]
Flow Rate: 1 mL/min
Temp: 32 °C
Det.: 254 nm(UV)
Injection: 5μl (5g/L in Hex / IPA = 80/20)
【実施例】
【0301】
単離したキラルなE体の化合物aの旋光度を測定したところ[α]20=-13.7°(C=0.59、80%ee、CHCl)であった。
【実施例】
【0302】
【化52】
JP2014126068A1_000055t.gif
【実施例】
【0303】
20mlナスフラスコに単離したキラルなE体の化合物a(53.4mg,0.30mmol)をメタノール2mlに溶解し、水1mlに溶解した水酸化リチウム(41.6mg,0.991mmol)を加え、50℃で5時間反応させた。その後、塩酸により酸性溶液とし、塩化メチレンにより抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を留去し、無色のオイルを53.8mg得た。このオイルを塩化メチレン4mlに溶解し、2-ナフトール(40.5mg,0.281mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(1.7mg、0.014mmol)を加え、0℃でN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(52.5μl、0.335mmol)を加え、室温で5時間反応させた。反応溶液を濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル(5:1(体積比))の混合溶媒を用いてシリカゲルカラム精製を行った。得られた留分を溶媒留去後、エーテル200μlとヘキサン1.2mlを用いて再結晶したところ白色針状結晶として純粋なナフチルエステルを36.6mg,0.130mmol、単離収率43%で得た。
【実施例】
【0304】
H NMR (400MHz,r.t.,CDCl):
δ1.82 (dq, J = 12.0, 8.0, 1H, -CH2-), 2.02(s, 3H, -Me), 2.23(ddt, J = 12.6, 4.6, 7.5 Hz, 1H, -CH2-), 3.25(dquintet, J = 8.0, 7.5 Hz, 1H, -CH<), 3.55(dd, J = 8.0, 7.5 Hz, 1H, -OCH-), 3.86(q, J = 8.6 Hz, 1H, -OCH2-), 3.97(dt, J = 4.6, 8.6 Hz, 1H, -OCH2-), 4.01(dd, J = 8.6, 7.5 Hz, 1H, -OCH2-), 6.97(dq, J = 9.7, 1.7 Hz, 1H, -CH=), 7.23(dd, J = 8.6, 2.3 Hz, 1H), 7.46(m, 2H), 7.56(d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.76-7.86(m, 3H).
【実施例】
【0305】
この分光学的に純粋なナフチルエステルをメタノール/塩化メチレン溶液中でオゾン分解により分解し、methyl tetrahydro-3-furoateに誘導した。化合物の同定はJ.Org.Chem.,1997,62,4285との比較により行った。
【実施例】
【0306】
得られたmethyl tetrahydro-3-furoateを用いてメタノール中で旋光度を測定したところ、[α]18=-20.3°(c=0.12,MeOH)であった。
【実施例】
【0307】
J. Org. Chem., 1997, 62, 4285には、R体のmethyl tetrahydro-3-furoateが(+)の旋光度[α]22=+14.1°(c=1.12,63%ee、MeOH)を示すと記載されている。今回合成されたmethyl tetrahydro-3-furoateは、(-)の旋光度を持つことからS体である。従って、(S,S)体のキラル触媒前駆体2bにより不斉合成されたキラルなE体の化合物aの絶対構造はR体であると判明した。
【実施例】
【0308】
(実施例2-2)
〔(2-2-1)2-フェニル置換ビシクロ[2.2.2]オクタジエンをもつナフタレンルテニウム(0)錯体によるメタクリル酸メチルとジヒドロフランの不斉鎖状交差二量化〕
2-2-1a)Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)によるMMAと2,5-dihydrofuranの交差二量化反応
【実施例】
【0309】
【化53】
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【実施例】
【0310】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) (mixture of Ru(naphthalene)(diene) Ru2(naphthalene)(diene)2) 12.2 mg, 0.0272 mmol(based on Ru)を入れた。シュレンク管に、さらに、MMA〔55μl、0.52mmol〕および2,5-dihydrofuran〔390μl、5.16mmol〕を、凍結脱気後、trap-to-trapで加えた。混合物を良く撹拌した後、30℃で1日反応させた。反応後、biphenyl〔11.9mg〕を加え、良く撹拌した後、GCにより収率の測定を行った。また、2,5-ジヒドロフランは、1日経過した時点でほぼすべて2,3-ジヒドロフランに異性化していた。
【実施例】
【0311】
2-2-1b)Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)、MMA、2,5-dihydrofuran、およびMeCNの化学量論反応
【実施例】
【0312】
【化54】
JP2014126068A1_000057t.gif
【実施例】
【0313】
NMR管に、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) (mixture of Ru(naphthalene)(diene) Ru2(naphthalene)(diene)2) 6.3 mg, 0.014 mmol(based on Ru)、および、重ベンゼン500μlを入れた。さらに、マイクロシリンジを用いて、NMR管に、MeCN〔0.8μl、0.015mmol〕、MMA〔1.6μl、0.015mmol〕、および、2,5-dihydrofuran〔2.0μl、0.026mmol〕を加えた。基質を加えた後、NMRで、混合物を測定し、試薬が概ね予定した量入っているのを確認した後、混合物を、30℃で加熱し、反応させた。反応を開始してから2時間後と、39時間後の反応物について、それぞれNMRで測定し、どのような反応が進行しているかを確認した。
【実施例】
【0314】
反応は、基質投入直後に、Ru2(naphthalene)(diene)2のピークが消失し、わずかに新しいピークが見られた。反応後2時間では、約30%程度が反応しており、反応後39時間では、ほぼ完全に原料錯体は消失し、新しい錯体らしきピークが見られた。また、アセトニトリルを表すピークがやや高磁場側にシフトした他は、あまり変わらなかった。具体的には、MMAを表すピークはほぼそのまま残っており、2,5-ジヒドロフランを表すピークは消失したもののほぼ定量的に2,3-ジヒドロフランを表すピークが見られた。
錯体自体は、配位しているとみられるキラルジエンのピークのみがみられ、それが1種しかないことから、MeCNの配位の可能性はあるものの、想定される種の空の配位座との量論比からみて重ベンゼンが配位しているのではないかと推測される。
【実施例】
【0315】
<比較例1>(ラセミ触媒前駆体を用いた合成)
実施例1-1の触媒前駆体2b(即ち、キラル触媒前駆体である「触媒前駆体(S,S)-2b」)の合成において、キラル体である(S,S)-2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneを、ラセミ体である2-methyl bicyclo[3.3.1]nona-2,6-dioneに変更したこと以外は触媒前駆体2bの合成と同様にして、ラセミ触媒前駆体(後述する、(S,S)-2b:(R,R)-2b=1:1である混合物)を合成した。
次に、実施例2-1において、キラル触媒前駆体の代わりに、上記で得られたラセミ触媒前駆体を用いた他は同様にして、不斉鎖状化合物の合成を試みた。
得られた生成物について、実施例2-1と同様にして、液体クロマトグラフィにより分析した。結果を、図7に示す。
図7は、ラセミ触媒前駆体を用いて生成物を得たときの、生成物の分析結果である。なお、液体クロマトグラフィによる測定条件は、実施例2-1と同様である。
【実施例】
【0316】
なお、実施例2-1で用いたキラル触媒前駆体〔(S,S)-2b〕と、比較例1で用いたラセミ触媒前駆体〔(S,S)-2b:(R,R)-2b=1:1である混合物〕の化学式を以下に示す。
【実施例】
【0317】
【化55】
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【実施例】
【0318】
図6および図7の分析結果に示されるように、本発明のキラル触媒前駆体を用いることにより合成反応の反応系で生じたキラル触媒を使用することで、片方の立体生成物が優先的に生成していることがわかる。
合成スキーム2に示されるように、化合物aは、二重結合に対してE体と、Z体の2種類の混合物として得られ、その割合は93:7である。すなわち、化合物aはほぼE体である。
反応生成物をキラルカラムで分離すると、このE体の化合物aのR体とS体に分離することができる。このため、図6および図7に示されるように、E体は2本のピーク(E-a)が現れる。
【実施例】
【0319】
また、図6からわかるように、キラル触媒前駆体(S,S)-2bを使って合成反応を行った実施例2-1では、R体のピーク面積比率が大きくなり、R体が優先的に生成したことが分かる。
図6に示されるように、14.86分のS体のピークと、19.38分のR体のピークとが、両方とも化合物aのE体のピークであり、19.38分のR体のピークが大きくでている。このように、実施例2-1では、不斉合成ができたことを表す。
なお、14.86分のピークと、19.38分のピークとの面積比から、不斉収率を求めた。
図6および図7において、各ピークの面積は、各図の下方の一覧に表示した。
【実施例】
【0320】
一方、図7は、比較例1においてラセミ触媒前駆体を用いて合成反応を行った系の測定結果である。図7に示される14.83分のピークおよび19.35分のピークは、化合物aのE体のそれぞれS体およびR体のピークであるが、各ピークの面積(エリア)は、図の下方の一覧からわかるように、ほとんど同じである。これは、すなわち、ラセミ触媒前駆体では、不斉誘導は行えないことを示している。
【実施例】
【0321】
実施例2-1および比較例1からわかるように、合成反応でキラル触媒を用いれば、14.8分のピークと19.3分のピークのうち、19.3分のエナンチオマーを優先的に合成することができる。
【実施例】
【0322】
したがって、本発明の触媒前駆体を用いれば、共役アルケンと非共役アルケンとから、容易に両者が二量化した不斉鎖状化合物が合成される。また、既述の非特許文献に記載される方法では、カップリングパートナーはエチレンのみで他の置換アルケンを用いることができない。
このように、本発明によれば、テルペノイド、アルカロイド、アミノ酸、幼若ホルモンなどの中間体を容易に合成することができるため、医薬品や生活活性物質の合成への適用が期待される。
【実施例】
【0323】
<実施例3>
実施例1-1~1-3で合成したナフタレンルテニウム錯体(触媒前駆体)のうち、Ru(naphthalene)((S,S)-Me2-bnd)、Ru(naphthalene)(troppPh)、Ru(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)、Ru(naphthalene)(dbcot)、および、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)をそれぞれ用い、下記の各種の二量化反応を行った。
以下に示すように、これらの触媒前駆体から生じた触媒も、交差二量化反応等の二量化反応に活性を有することが確認された。
なお、以下では、触媒前駆体を「cat.」と略称することがある。
【実施例】
【0324】
〔(3-1) Ru(naphthalene)((S,S)-Me2-bnd)による、E-1,3-pentadieneとMAとの交差二量化反応〕
【実施例】
【0325】
【化56】
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【実施例】
【0326】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)((S,S)-Me2-bnd)を8.5mg〔0.025mmol〕、内部基準としてビフェニル10.2mgを入れ、toluene 1ml、1,3-pentadiene 50μl〔0.50mmol〕、MA 50μl〔0.56mmol〕を加えた。良く撹拌した後、70℃に加熱し8時間反応させた。反応後、GCを測定したところ、主生成物はmethyl 4-methyl-2,5-heptadienoateであり、収率は43%であった。キラルGCにより分析を行ったところ、生成物は4%eeであった。
なお、「MA」は、アクリル酸メチル(methyl acrylate)を指す。
【実施例】
【0327】
〔(3-2) Ru(naphthalene)(troppPh)による、MMAと2,5-dihydrofuranとの交差二量化反応〕
【実施例】
【0328】
【化57】
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【実施例】
【0329】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)(troppPh)を32.2mg〔0.0516mmol〕入れ、内部基準としてビフェニル19.1mgを加え、そこに、MMA 110μl〔1.04mmol〕および2,5-dihydrofuran 380μl〔5.03mmol〕を、trap-to-trapで加えた。撹拌した後、50℃で4時間反応させた。GCにより解析を行ったところ、交差二量体が収率9%(a:b:c = 56:44:0)得られた。
【実施例】
【0330】
〔(3-3) Ru(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) による、MMAの二量化反応〕
【実施例】
【0331】
【化58】
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【実施例】
【0332】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)((8R)-1,8-dimethyl-8-methoxybicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene) 20.0mg〔0.0508mmol〕を入れ、内部基準としてビフェニルを40.6mg加え、そこに、MMA 540μl〔5.09mmol〕を、凍結脱気後trap-to-trapで加えた。撹拌した後、30℃で1時間反応させた。1時間反応させた時点で二量体の収率は50%(a:E-b:Z-b = 91:7:2)、三量体の収率は20%であった。さらに7時間(計8時間)反応させると、二量体の収率は38%(a:E-b:Z-b = 73:22:6)、三量体の収率は34%となった転化率は92%であった。転化率と収率の差からみて、4量体も生成しているものと推測される。
【実施例】
【0333】
〔(3-4) Ru(naphthalene)(dbcot)による、1,3-pentadieneとMAとの交差二量化反応〕(参考例)
【実施例】
【0334】
【化59】
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【実施例】
【0335】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)(dbcot)を5.1mg〔0.010mmol〕、内部基準としてビフェニル15.5mgを入れ、toluene 1ml、1,3-pentadiene 100μl〔1.00mmol〕、MA 95μl〔1.05mmol〕を加えた。良く撹拌したのち、50℃で1時間反応させ、生成物の収率をGCにより求めた。収率は、100%(a/b/c/d = 6/71/14/9)であった。
このように、Ru(naphthalene)(dbcot)は、ジエンとアルケンとのカップリング反応に対し、極めて高い活性を示すことが確認された。
従って、この(3-4)項の例(参考例)において、Ru(naphthalene)(dbcot)中の配位子dbcotを、前述の配位子X(即ち、dbcot中の8員環に含まれる4つの水素原子のうちの少なくとも1つが、置換基(アルキル基、アリール基など)によって置換された化合物)に置き換えることにより、高い収率で、しかも、エナンチオ選択性に優れた不斉鎖状二量化を行えることが期待される。
【実施例】
【0336】
〔(3-5) Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)による、2,3-dimethyl-1,3-pentadieneとMAとの交差二量化反応〕
【実施例】
【0337】
【化60】
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【実施例】
【0338】
25mlシュレンク管に、Ru(naphthalene)((-)-8-methoxy-1,8-dimethyl-2-phenyl bicyclo[2.2.2]octa-2,5-diene)(ナフタレン架橋の2核錯体を含む)を11.3mg〔0.0252mmol〕(Ru(diene)種ベース)、および内部基準としてビフェニル10.7mgを入れ、そこに、toluene 1ml、2,3-dimethyl-1,3-pentadiene(36wt%) 190μl(133mg; 2,3-dimethyl-1,3-pentadieneの量として47.9mg〔0.498mmol〕相当)、MA 50μl〔0.55mmol〕を加えた。良く撹拌したのち、50℃に加熱し1時間反応させ、生成物の収率をGCにより求めた。収率は、69(74)%(a:b:c = 32:27:41)(注:カッコなしの収率は通常のGCから、カッコ内はキラルGCから求めた収率。 通常GCでは、基準の位置にブロードに配位子のピークが重なるため、値がやや低く出る様だったので併記)であった。この溶液をChiralGCで分析したところ、化合物aは22.7%eeであった。さらに3時間、計4時間反応させたところ、収率は、60(79)%(a:b:c = 34:25:41)、化合物aは29.0%eeであった。
【実施例】
【0339】
-化合物aの同定-
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ1.08(d, J = 6.9 Hz, 3H, -Me), 1.47(br.s, 3H, -Me), 1.63(s(overwrapped with a), 3H, -Me), 1.66(br.s, 3H, -Me), 3.52(ddq., J = 1.7, 6.3, 6.9 Hz, 1H, >CH-), 3.69(s(overwrapped with a), 3H, -OMe), 5.71(dd, J = 15.5, 1.7 Hz, 1H, =CH-), 6.90(dt, J = 15.5, 6.3 Hz, 1H, =CH-).
13C NMR (100.5 MHz, r.t., CDCl3): δ13.38(-Me), 16.77(-Me), 19.95(-Me), 20.94(-Me), 38.36(>CH-), 51.37(-OMe), 119.06(=CH-), 126.05(=C<), 127.72(=C<), 152.90(=CH-), 167.45(>C=O).
【実施例】
【0340】
-化合物bの同定-
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ0.92(t, J = 7.5 Hz, 3H, -Me), 1.59(s, 3H, -Me), 1.63(s(overwrapped with a), 3H, -Me), 1.98(q, J = 7.5 Hz, 2H, -CH2Me), 2.88(d, J = 6.3 Hz, 2H, -CH2-), 3.69(s(overwrapped with a), 3H, -OMe), 5.76(dt, J = 15.5, 1.7 Hz, 1H, =CH-), 6.89(dt, J = 15.5, 6.3 Hz, 1H, =CH-).
13C NMR (100.5 MHz, r.t., CDCl3): δ13.00(-Me), 17.90(-Me), 18.60(-Me), 27.24(-CH2-), 36.92(-CH2-), 51.37(-OMe), 120.75(=CH-), 122.70(=C<), 133.19(=C<), 147.82(=CH-), 167.23(>C=O).
【実施例】
【0341】
-化合物cの同定-
1H NMR (400 MHz, r.t., CDCl3): δ0.95(t, J = 7.5 Hz, 3H, -Me), 1.73(s, 2H, -Me), 2.16(q, J = 7.5 Hz, 2H, -CH2Me), 3.13(d, J = 7.5 Hz, 2H, -CH2-), 3.66(s, 3H, -OMe), 5.62(dt, J = 15.5, 8.0 Hz, 1H, =CH-), 6.56(d, J = 15.5 Hz, 1H, =CH-).
【実施例】
【0342】
2013年2月18日に出願された日本国特許出願2013-028947の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図6】
0
【図7】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6