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明細書 :ヒト上皮増殖因子受容体を標的とした二重特異性抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 ヒト上皮増殖因子受容体を標的とした二重特異性抗体
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
C07K  16/46        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C07K 16/28 ZNA
C07K 16/46
C12N 5/10
C12P 21/02 C
A61K 39/395 E
A61P 35/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 34
出願番号 特願2016-510149 (P2016-510149)
国際出願番号 PCT/JP2015/055357
国際公開番号 WO2015/146438
国際出願日 平成27年2月25日(2015.2.25)
国際公開日 平成27年10月1日(2015.10.1)
優先権出願番号 2014064141
優先日 平成26年3月26日(2014.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】熊谷 泉
【氏名】浅野 竜太郎
【氏名】梅津 光央
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100181、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 正博
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
4C085
4H045
Fターム 4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA22
要約 【課題】
抗体528とは別の新たなヒト上皮細胞成長因子受容体1(EGFR)に対する抗体を用いて作製した、二重特異性抗体及び各種の高機能性二重特異性抗体等の二重特異性抗体を提供すること。
【解決手段】
抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体225のL鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)、並びに、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL:配列番号6)及びH鎖のヒト型化可変領域(OH:配列番号8)を含む、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1及びCD3に対する二重特異性抗体等。
【選択図】図15
特許請求の範囲 【請求項1】
抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体225のL鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)、並びに、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL:配列番号6)及びH鎖のヒト型化可変領域(OH:配列番号8)を含む二重特異性抗体。
【請求項2】
ダイアボディ型二重特異性抗体である請求項1記載の抗体。
【請求項3】
各ポリペプチドにおいてL鎖可変領域がH鎖可変領域のN末側にある、請求項1又は2記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
(2L2H)-(ペプチドリンカー)-(OHOL)で示される構造を有するタンデム型の1本鎖抗体(scFv)である、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
更にヒンジ領域、並びに、Fc領域を含む請求項1記載の抗体。
【請求項6】
抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1及びCD3に対する二重特異性抗体である請求項1乃至5に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された抗体を構成する一本鎖ポリペプチド。
【請求項8】
請求項7記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項8記載の核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項10】
プラスミドベクターである、請求項9記載のベクター。
【請求項11】
請求項9又は10記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項12】
哺乳動物細胞である請求項11記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項11記載の宿主細胞を培養して宿主細胞中で該核酸を発現せしめ、請求項7に記載の一本鎖ポリペプチドを回収し、精製し、得られた該一本鎖ポリペプチドを会合させ、形成された抗体を分離・回収することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載された抗体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
腫瘍細胞を排除する、殺傷する、傷害する及び/又は減少せしめるためのものであることを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れ、がん特異的免疫療法に使用することのできる二重特異性抗体、それを構成する一本鎖ポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、該抗体の製造方法、及び、それらの医薬として用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
がん(悪性腫瘍)及びリウマチ等に対する安全な治療法として、近年、免疫療法が用いられている。がんに対する免疫療法では、がんに対して特異的に細胞傷害活性を示す抗体が使用される。このような抗体から成る抗体医薬は、副作用の少ない、安心安全で治療効果の高いことが認められる一方、確立された動物細胞を用いて製造する必要があるためにコスト高が問題となっている。
【0003】
このため、投与量を大幅に軽減して低コスト化を計る手段として、極めて強力な活性を有する組換え抗体の作製が試みられてきた。
【0004】
例えば、このような組換え抗体のうちの一つである二重特異性抗体(Bispecific Antibody:BsAb)は2つの異なる抗原に対して特異的に結合することが可能であるため、この特性を生かして特異的な抗腫瘍効果を持った治療薬としての利用法が可能であるとして、その研究が盛んに行われている。ダイアボディ(diabody:Db)とはこのような二重特異性抗体の最小単位であり、それぞれ同じ親抗体由来の重鎖(H鎖)の可変領域(V領域)(「VH」と表わされる)VHと軽鎖(L鎖)の可変領域(V領域)(「VL」と表わされる)VLとが互いに非共有結合によりヘテロ二量体を形成するという性質を利用し考案されたものである(非特許文献1)。又、ダイアボディ型二重特異性抗体以外の二重特異性抗体の調製等は、例えば、非特許文献2及び非特許文献3記載されている。
【0005】
本発明者等は、これまでに、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1(Her1)抗体528及び抗CD3抗体OKT3を用いて作製したダイアボディ型二重特異性抗体(Ex3)及び該抗体をヒト型化したダイアボディ型二重特異性抗体(hExh3)が極めて強力な抗腫瘍効果を有していることを見出している(特許文献1)。更に、このヒト型化ダイアボディ型二重特異性抗体等に基づき多様な構造を有する高機能性二重特異性抗体を開発している(特許文献2)。
【0006】
更に、本発明者は、ヒト型化ダイアボディ型二重特異性抗体を構成する各ポリペプチドにおいてL鎖可変領域がN末側にある「LH型」であることを特徴とするLH型二重特異性抗体及び該LH型二重特異性抗体を含む高機能性二重特異性抗体を開発した(特許文献3)。又、Her1抗体528のH鎖又はL鎖に各種のアミノ酸変異・置換を有するこれらの抗体(特許文献4及び特許文献5)も開発した。
【0007】
上記特許文献2~5に記載された高機能性二重特異性抗体は、夫々、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体528及び抗CD3抗体OKT3のL鎖及びH鎖を含む可変領域に加えてFc領域を含む、二重特異性抗体である。このような構造を有するヒト型化高機能性二重特異性抗体は、Ex3に比べて細胞傷害活性が格段に向上し、各抗原に対して二価で結合可能であり、プロテアーゼ消化によりTag等の付加配列を最小限にした二重特異性抗体が容易に調製され、プロテインAによる簡易精製が可能となる。更に、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)作用の誘導等のエフェクター効果を誘導する機能が新たに付与される。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第3803790号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2007/108152号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO2010/109924号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2011/062112号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO2012/020622号パンフレット
【0009】

【非特許文献1】Hollinger, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 6444-6448, 1993
【非特許文献2】Alt M, et. al. Novel tetravalent and bispecific IgG-like antibody molecules combining single-chain diabodies with the immunoglobulin gamma1 Fc or CH3 region. FEBS Lett., 454, 90-4. (1999)
【非特許文献3】Lu D, et. al. A fully human recombinant IgG-like bispecific antibody to both the epidermal growth factor receptor and the insulin-like growth factor receptor for enhanced antitumor activity. J Biol Chem., 280, 19665-72. (2005)
【非特許文献4】J Biol Chem. 2005:280 (20)19665-72
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の各種の二重特異性抗体は非常に優れた特性を有するが、これらの抗体を用いた最終的な治療薬を開発する途上において、様々な要因からドロップアウトせざるを得ない可能性もあり、そのような場合に備えて、ヒト上皮細胞成長因子受容体1に対する抗体として、上記の抗体528とは異なる抗体の可変領域由来を構成要素として含む、ダイアボディ型二重特異性抗体及び各種の高機能性二重特異性抗体を開発することが求められている。
【0011】
従って、本発明の課題は、抗体528とは別の新たなヒト上皮細胞成長因子受容体1(EGFR)に対する抗体を用いて作製した、二重特異性抗体及び各種の高機能性二重特異性抗体等の二重特異性抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、抗EGFR抗体として、528抗体に代えて225抗体を用いることによって、より高い抗腫瘍効果等の優れた特性を有する二重特異性抗体を作製することに成功し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は以下に示す各態様に係るものである。
[態様1]
抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体225のL鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)、並びに、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL:配列番号6)及びH鎖のヒト型化可変領域(OH:配列番号8)を含む二重特異性抗体。
[態様2]
ダイアボディ型二重特異性抗体である態様1記載の抗体。
[態様3]
各ポリペプチドにおいてL鎖可変領域がH鎖可変領域のN末側にある、態様1又は2記載の二重特異性抗体。
[態様4]
(2L2H)-(ペプチドリンカー)-(OHOL)で示される構造を有するタンデム型の1本鎖抗体(scFv)である、態様1に記載の抗体。
[態様5]
更にヒンジ領域、並びに、Fc領域を含む態様1記載の抗体。
[態様6]
抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1及びCD3に対する二重特異性抗体である態様1乃至5に記載の抗体。
[態様7]
態様1~6のいずれか一項に記載された抗体を構成する一本鎖ポリペプチド。
[態様8]
態様7記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
[態様9]
態様8記載の核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクター。
[態様10]
プラスミドベクターである、態様9記載のベクター。
[態様11]
態様9又は10記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
[態様12]
哺乳動物細胞である態様11記載の宿主細胞。
[態様13]
態様11記載の宿主細胞を培養して宿主細胞中で該核酸を発現せしめ、態様7に記載の一本鎖ポリペプチドを回収し、精製し、得られた該一本鎖ポリペプチドを会合させ、形成された抗体を分離・回収することを特徴とする、態様1~6のいずれか一項に記載された抗体の製造方法。
[態様14]
態様1~6のいずれか一項に記載の抗体を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物。
[態様15]
腫瘍細胞を排除する、殺傷する、傷害する及び/又は減少せしめるためのものであることを特徴とする態様14記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
以下の実施例に示されるように、本発明の二重特異性抗体において、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体の中でLH型は、細胞傷害活性、サイトカイン分泌誘導能、及び、担がんマウスを用いたin vivoでの抗腫瘍活性等の点で高い効果を示した。
【0015】
更に、抗体528と抗体225とは互いに結合阻害が起こることが知られており(Mol Biol Med. 1983;1(5):511-29)、又、マウスを用いた治験実験においても、同等な効果であることが報告されている(Cancer Res. 1993;53(19):4637-42)が、本発明のLH型のダイアボディ型二重特異性抗体は、528抗体由来の可変領域を構成要素としたLH型のダイアボディ型二重特異性抗体(特許文献3)と比較しても、上記の活性に関して顕著に高い活性を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HL型共発現ベクター(b)LH型共発現ベクター(c)tandem scFv型発現ベクターを示す。
【図2】不溶性画分から調製したE225x3の細胞傷害性試験の結果を示す。
【図3】細胞傷害性試験(E225x3とEx3の比較) の結果を示す。
【図4】E225x3 Dbの配向性を示す。
【図5】pRA1-E225x3 O2G1の作製を示す。
【図6】pRA1-E225x3 2OG1の作製を示す。
【図7】各種E225x3 Dbのゲルろ過クロマトグラフィーの結果を示す。
【図8】各種E225x3 Dbの細胞傷害活性の比較を示す。
【図9】EGFRに対する各種E225x3 DbのSPR測定結果を示す。
【図10】各種E225x3 Dbの架橋能比較:a(A431、E225x3 Db、CD3-FITC),b(T-LAK、E225x3 Db、EGFR-FITC) を示す。
【図11】各種E225x3 DbのIFN-γ分泌量比較(上),及び、TNF-α分泌量比較(下)を示す。
【図12】MTSアッセイによるEx3 DbとE225x3 Dbの細胞傷害活性比較を示す。
【図13】Ex3 LHG1とE225x3 LHG1の細胞傷害活性の比較を示す。
【図14】Tumor early stage modelおよびTumor establish modelの概要を示す。
【図15】Ex3 LHG1とE225x3 LHG1のin vivo活性評価(Tumor early stage model) の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の抗体の第一の態様は、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体225のL鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)、並びに、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL:配列番号6)及びH鎖のヒト型化可変領域(OH:配列番号8)を含む二重特異性抗体に係る。その結果、本発明抗体は、対抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1及びCD3に対する二重特異性を有する。

【0018】
このような二重特異性抗体の代表例として、ダイアボディ型二重特異性抗体(「 E225x3」と標記する)を挙げることが出来る。なお、これら二重特異性抗体を構成する各ポリペプチドにおいてL鎖可変領域がH鎖可変領域のN末側にある(LH型)二重特異性抗体がより高い効果を示す場合があり、好適である。

【0019】
抗EGFR抗体(225抗体)の可変領域の配列は公知であり、例えばInt J Cancer. 1995 Jan 3;60(1):137-44.に示されている。

【0020】
具体的には、225抗体のL鎖の可変領域の塩基配列(配列番号1)及びH鎖の可変領域の塩基配列(配列番号3)は以下の通りである。又、それらは、夫々、L鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)をコードしている。一方、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL)をコードする塩基配列及びアミノ酸配列、並びに、抗CD3抗体OKT3のH鎖のヒト型化可変領域(OH)をコードする塩基配列及びアミノ酸配列は、特許文献4又は特許文献5において、夫々、配列番号5及び配列番号6、並びに、配列番号7及び配列番号8として記載されており、公知である。

【0021】
【表1】
JP2015146438A1_000003t.gif
【表2】
JP2015146438A1_000004t.gif

【0022】
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体において、各可変領域の配向性を考慮すると、以下に示す4つの種類の構造を取り得る。
(1)HL型:各ポリペプチドにおいてH鎖可変領域がN末側
(2)LH型:各ポリペプチドにおいてL鎖可変領域がN末側
(3)O2型:各ポリペプチドにおいてOKT3の可変領域がN末側
(4)2O型:各ポリペプチドにおいて抗体225の可変領域がN末側。

【0023】
本発明の抗体の第二の態様は、(2L2H)-(ペプチドリンカー)-(OHOL)で示される構造を有するタンデム型の1本鎖抗体(scFv)に係る。

【0024】
上記のscFvは、特許文献2に「第六の型」として挙げられている構造を有する抗体であって、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体抗体225のH鎖及びL鎖の可変領域を含む一本鎖Fv(225 scFv)(5HL)と抗CD3抗体OKT3のH鎖及びL鎖のヒト型化可変領域を含む一本鎖Fv(OKT3 scFv)とをポリペプチドリンカーで縦列に連結させて、全体としてシングルポリペプチド鎖となったものである。尚、225 scFv又はOKT3 scFvのいずれかが一本鎖ポリペプチドにおけるN末端側になっても良く、更に、225 scFv及びOKT3 scFvの夫々において、各H鎖及びL鎖のいずれがN末端側になっても良い。その結果、夫々2種類あるH鎖及びL鎖の順序を考慮すると、本発明BsAbの第六の型は総計8種類の一本鎖ポリペプチドを含むものである。

【0025】
本発明抗体のその他の1本鎖抗体としては、特許文献2において第一の型として記載されているような構造、(OH2L)-(ペプチドリンカー)-(2HOL)で示される構造(E225x3 scDb)を有する。即ち、上記のE225x3を構成する2種類のポリペプチド鎖であるOH2L及び2HOLが更にペプチドリンカーにより結合されて、全体としてシングルポリペプチド鎖となったものである。この結果、BsAb分子の構造がE225x3に比べてより安定化される。更に、このBsAbを製造する際に必要な発現ベクターは一種で済み、その結果、E225x3に比べてより均一なBsAb分子を調製することが可能である。尚、「scDb」は一本鎖(Single Chain) ダイアボディ抗体を意味する。

【0026】
尚、上記ペプチドリンカーは、5H及び5Lの間、又は、OH及びOLの間のいずれかに挿入されていても良い。更に、各E225x3単位において、VH又はVLのいずれがポリペプチド鎖のN末側に位置していても良い。即ち、このような型の抗体は、(i)N末側:OH-2L-(ペプチドリンカー)-2H-OL:C末側、(ii)N末側:2H-OL-(ペプチドリンカー)-OH-2L:C末側、(iii)N末側:2L-OH-(ペプチドリンカー)-OL-2H:C末側、又は、(iv)N末側:OL-2H-(ペプチドリンカー)-2L-OH:C末側のいずれかの順で各可変領域を含んで成るものである。尚、この中の(iii)及び(iv)は、LH型のダイアボディ型二重特異性抗体を構成する1本鎖ポリペプチドを結合させて得られる構造に相当する。

【0027】
更に、本発明抗体の他の態様としては、基本的な構成要素として、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体1抗体225のL鎖の可変領域(2L:配列番号2)及びH鎖の可変領域(2H:配列番号4)、抗CD3抗体OKT3のL鎖のヒト型化可変領域(OL:配列番号6)及びH鎖のヒト型化可変領域(OH:配列番号8)を含む可変領域に加えて、更に、ヒンジ領域及びFc領域を含む抗体を挙げることが出来る。尚、「Fc領域」とは、定常領域(C領域)を構成するH鎖のC末端側の2個のドメイン(CH2及びCH3)及びヒンジ部を含む領域を意味する。

【0028】
このような高機能性二重特異性抗体の例として、例えば、特許文献2において、第二の型(Ex3-Fc)及び第三の型(Ex3 scDb-Fc)として記載されている通常のIgG型抗体分子である高機能性二重特異性抗体、並びに、上記の構成要素に加えて更にL鎖定常領域(CL)及びH鎖定常領域(CH1)を含む第四の型(Ex3 scFv-Fc)として記載されている高機能性二重特異性抗体と同様の構造を有し、「Ex3」に代えて、「E225x3」を含む各種抗体を挙げることが出来る。

【0029】
以上の本発明の第二の型、第三の型及び第四の型のBsAbは何れもヒトFc領域を有しているために、プロテインAによる精製が容易であり、又、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)作用を誘導することが出来、更には、各抗原に対して二価で結合することが可能、というE225x3には見られない効果を奏する。

【0030】
これらの型二重特異性抗体に含まれるFc領域、L鎖定常領域(CL)及びH鎖定常領域(CH1)はヒト抗体に由来するものである限り特に制限はない。例えば、CLはκまたはλ鎖の何れに由来するものでも良い。Fc領域又はCH1としては、通常、IgG1型のγ鎖に由来するものが使用される。CH1、Fc領域及びCLの一例として、夫々、特許文献2に開示された配列番号29、配列番号30及び配列番号33に示したアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。更に、エフェクター効果の誘導能がより低いIgG2型(GenBankのhuman IgG2 遺伝子配列(BX640623. 1) のFc領域を用いることも出来る。

【0031】
より具体的には、上記の第二の型(E225x3-Fc)は、OH2L及び2HOLの二種類のポリペプチドから構成されるダイアボディ型二重特異性抗体(E225x3)がいずれか一方のポリペプチドによりヒンジ領域を介してヒト抗体の2つのFc領域に結合しているものである。即ち、具体的には、ヒンジ領域を介してヒト抗体のFc領域と結合したE225x3を構成する2種類のポリペプチドの何れか一方のポリペプチド(例えば、(2HOL)-ヒンジ領域-Fc領域)、及び、E225x3を構成するもう一方のポリペプチド(例えば、(OH2L))の2種類のポリペプチドから構成されるものである。該抗体はこれら2種類の一本鎖ポリペプチドを共発現させた後に会合せしめることによって製造することが出来る。

【0032】
この型の抗体において、2HOL又はOH2Lの何れかのポリペプチドをヒンジ領域を介してヒト抗体のFc領域に結合させることができ、更に、各一本鎖ポリペプチドに含まれるH鎖可変領域又はL鎖可変領域の何れがヒンジ領域と結合していても良い。

【0033】
上記の第三の型(E225x3 scDb-Fc)は、上記の第二の型におけるEx3の代わりに、E225x3 scDb、即ち、E225x3を構成する2種類のポリペプチド鎖であるOH2L及び2HOLが更にペプチドリンカーにより結合された(OH2L)-(ペプチドリンカー)-(2HOL)で示される構造を有するシングルポリペプチド鎖、(OH2H)-(ペプチドリンカー)-(2LOL)で示されるシングルポリペプチド鎖、又は、(2L2H)-(ペプチドリンカー)-(OHOL)で示されるタンデム型のシングルポリペプチド鎖がヒンジ領域を介してヒト抗体のFc領域に結合した構造を有している。尚、以上の一本鎖ポリペプチドに含まれる2種類のH鎖可変領域又はL鎖可変領域の何れがヒンジ領域と結合していても良い。

【0034】
上記の第二の型及び第三の型を構成するドメインの数はIgGタイプの免疫グロブリン分子と同じであり、これらの抗体は該免疫グロブリン分子に近い立体的構造を有しているものと考えられる。更に、これら本発明BsAbの第ニの型(ii)及び第三の型(iii)において、E225x3又はE225x3 scDbとヒンジ領域の間にプロテアーゼ切断部位を介在させることにより、これらのBsAbをプロテアーゼ消化し、その後、後述する各種精製操作を適宜行うことによって、E225x3又はE225x3 scDbを容易に製造することが可能となる。

【0035】
上記の第四の型(E225x3 scFv-Fc)は、抗体(免疫グロブリン分子)のVH及びVLを、夫々、抗ヒト上皮細胞成長因子受容体抗体225のH鎖及びL鎖の可変領域を含む一本鎖Fv(scFv)(2HL)又は抗CD3抗体OKT3のH鎖及びL鎖のヒト型化可変領域を含む一本鎖Fv(OHL)で置換して成る抗体である。即ち、該抗体は、IgGタイプの免疫グロブリン分子においてH鎖の定常領域を構成するCH1ドメインのN末端側にscFvであるOHL又は2HLのいずれか一方が結合してなるポリペプチド、及びL鎖の定常領域CLのN末端側にもう一方のscFvが結合してなるポリペプチドの2種類の一本鎖ポリペプチドから構成されるものである。尚、scFvに含まれるH鎖可変領域又はL鎖可変領域の何れがこれら領域と結合していても良い。従って、該抗体はこれら2種類の(一本鎖)ポリペプチドを共発現させた後に会合せしめることによって製造することが出来る。

【0036】
又、本発明の二重特異性抗体等を構成する各ポリペプチドにおいて、非特許文献3に記載されているようなL鎖可変領域がH鎖可変領域のN末側にあること(LH型)を特徴とする各種の抗体も本発明に含まれる。即ち、例えば、第三の型(E225x3 scDb-Fc)におけるこのようなLH型の例として、(OL2H)-(ペプチドリンカー)-(2LOH)で示される構造を有するシングルポリペプチド鎖がヒンジ領域を介してヒト抗体のFc領域に結合した構造を挙げることができる。

【0037】
更に、本発明の二重特異性抗体等を構成する各ポリペプチドにおいて、特許文献4及び特許文献5に記載されているように、Her1抗体225のH鎖又はL鎖に各種のアミノ酸変異・置換を導入することもできる。

【0038】
本発明抗体を構成する一本鎖ポリペプチドは、例えば、特許文献2の図3-3及び図3-4に開示された、PreScission配列、ペプチドリンカー、シグナルペプチド等のアミノ酸配列を含むことができる。尚、PreSission配列はプロテアーゼ切断部位を含む配列である。使用するプロテアーゼの種類に特に制限はなく、例えば、Thrombin及びFactor Xa等の当業者に公知の酵素を使用することが出来、それに応じて、プロテアーゼ切断部位を含むアミノ酸配列を適宜選択することが出来る。

【0039】
発明抗体の断片化をより効果的に抑制するためには、PreSission配列等のプロテアーゼ切断部位は含まれていないことが好ましい。

【0040】
一方、抗CD3抗体OKT3を産生するハイブリドーマは東北大学加齢医学研究所付属医用細胞資源センターに寄託されている(ID:TKG0235)。又、OKT3抗体を産生するハイブリドーマはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)においてATCC No.CRL-8001 として保管されており、かかる寄託機関からも容易に入手可能である。

【0041】
これを用いて、当業者に公知の方法によってcDNAを調製することが出来る。例えば、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いmRNAを抽出、First-Strand cDNA Synthesis Kit(Amersham Biosciences社)によりcDNAを調製し、参考論文(Krebber, A. et al. Reliable cloning of functional antibody variable domains from hybridomas and spleen cell repertoires employing a reengineered phage display system. J Immunol Methods 201, 35-55. (1997))に基づき合成したクローニングプライマーを用いPCRを行いこの抗体のH鎖及びL鎖の可変領域の配列を決定することができる。

【0042】
本発明の二重特異性抗体を構成する一本鎖ポリペプチドに含まれる可変領域の「ヒト型化」とは、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)のヒト型化可変領域における相補性決定領域 (complementarity-determining region; CDR)の残基の少なくとも一部において、マウス、ラット、またはウサギといったような非ヒト動物(ドナー抗体)であり且つ所望の特異性、親和性、および能力を有するCDR に由来する残基によって置換されている抗体を意味する。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置換される場合もある。さらに、ヒト型化抗体は、レシピエント抗体および導入されたCDR またはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに優れたものあるいは最適なものとするために行われる。更に詳しくは、Jones et al., Nature 321, 522-525 (1986); Reichmann et al., Nature 332, 323-329 (1988);EP-B-239400; Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992); およびEP-B-451216 を参照することができる。

【0043】
このような抗体のヒト型化可変領域のヒト型化は当業者に公知の方法に従って実施することが出来る。例えば、レシピエント抗体及びドナー抗体の3次元イムノグロブリンモデルを使用し、種々の概念的ヒト型化生成物を分析する工程により、ヒト型化抗体が調製される。3次元イムノグロブリンモデルは、当業者にはよく知られている。更に詳細については、WO92/22653等を参照することができる。

【0044】
従って、ヒト型化されたヒト型化可変領域の例として、ヒト型化可変領域における相補性決定領域(CDR)がマウス抗体由来であり、その他の部分がヒト抗体由来である抗体を挙げることができる。

【0045】
本発明では更に、ヒト型化によって抗体自身の機能低下等が生起する場合があるので、一本鎖ポリペプチド中の適当な部位、例えば、CDR構造に影響を与える可能性があるフレームワーク(FR)中の部位、例えば、canonical 配列又はvernier 配列において部位特異的変異を起こさせることによってヒト型化抗体の機能の改善をすることが出来る。

【0046】
ヒト型化OKT3ヒト型化可変領域はすでに報告されており、マウスOKT3に比べて十分に活性を保持していることも確かめられている(Adair, J. R. et al. Humanization of the murine anti-human CD3 monoclonal antibody OKT3. Hum Antibodies Hybridomas 5, 41-7. (1994))。この文献に記載されているヒト型化OKT3ヒト型化可変領域のアミノ酸配列を基に、オーバーラップPCR法により遺伝子の全合成を行った。この際にコドンは宿主細胞における至適コドンを用いることが好ましく、至適コドンに置換した全合成遺伝子を用いることでの宿主細胞における発現量の増加はすでに報告されている。

【0047】
各一本鎖ポリペプチドの構造において示されるペプチドリンカーに加えて、各L鎖可変領域断片及びH鎖可変領域断片は適当なペプチドリンカーで連結されていることが好ましい。該ペプチドリンカーは、一本鎖抗体の分子内での相互作用を困難にし、複数の一本鎖抗体による多量体の形成を可能ならしめ、その結果、互いに別の一本鎖抗体に由来するVHとVLが適切に会合することによって、オリジナルのタンパク質(当該ポリペプチドは該オリジナルのタンパク質に由来するものあるいは該オリジナルのタンパク質から誘導されたものである)の機能、例えば生物活性などの一部あるいはその全てを模擬又は促進する構造をとることができるようなものであれば特に限定されず、例えば当該分野で広く知られたものあるいは該公知のリンカーを改変したものの中から選択して使用することが可能である。例えば、ペプチドリンカーは1~20個、好ましくは1~15個、より好ましくは2~10個のアミノ酸の長さであることが好ましい。

【0048】
更に、各一本鎖ポリペプチドは上記のペプチドリンカーを含まずに、二つの可変領域断片が直接結合していても良い。このような場合には、各一本鎖抗体の三次元的自由度を高めて多量体化を促進させるために、各一本鎖ポリペプチドにおいてN末端側にある可変領域断片のC末端の1ないし数個のアミノ酸、又は、C末端側にある可変領域断片のN末端の1ないし数個のアミノ酸が除去されていることが好ましい。

【0049】
更に、上記の各配列番号で示される各アミノ酸配列において、一個又は数個(例えば、2~5個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列であって、元のアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能・活性、例えば、可変領域断片の抗原特異性と実質的に保持しているアミノ酸配列も本発明の抗体を構成する一本鎖抗体のポリペプチドとして使用することが出来る。欠失、置換、挿入若しくは付加されるアミノ酸は、好ましくは、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士が置換されるか、又は、アミノ酸の欠失若しくは付加によって、蛋白質の三次元構造及び/又は局所的電荷状態に大きな変化が生じない、又は、実質的にそれらが影響を受けないようなものが好ましい。このような欠失、置換又は付加されるアミノ酸を有するポリペプチドは、例えば、部位特異的変異導入法(点突然変異導入及びカセット式変異導入等)、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作製することが可能である。尚、これらの一個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列全長に対して、90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上の配列相同性(同一性)を示すものということもできる。

【0050】
本発明の各抗体に含まれる一本鎖ポリペプチドに含まれる各領域をコードする核酸分子(ポリヌクレオチド)の代表例は、上記の各配列番号に示された塩基配列を有するものである。その他に、各配列番号に記載の塩基配列の全長と90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上の配列相同性を示すような塩基配列から成る核酸分子は、上記の各領域又は配列と実質的に同等の活性又は機能を有するポリペプチドをコードしていると考えられるので、これらの核酸分子も上記の本発明の核酸に含まれる。このような核酸分子には本発明の二重特異性抗体を構成する2種類の一本鎖ポリペプチドの少なくともいずれか一つのポリペプチドをコードする塩基配列が含まれているが、2種類の一本鎖ポリペプチドを夫々コードする2種類に塩基配列が共に含まれていることが好ましい。

【0051】
2つのアミノ酸配列又は塩基配列における配列相同性を決定するために、配列は比較に最適な状態に前処理される。例えば、一方の配列にギャップを入れることにより、他方の配列とのアラインメントの最適化を行なう。その後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩基が比較される。第一の配列におけるある部位に、第二の配列の相当する部位と同じアミノ酸残基又は塩基が存在する場合、それらの配列は、その部位において同一である。2つの配列における配列相同性は、配列間での同一である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基)数に対する百分率で示される。

【0052】
ここで、「相同性(同一性)」とは、ポリペプチド配列(あるいはアミノ酸配列)又はポリヌクレオチド配列(あるいは塩基配列)における2本の鎖の間で該鎖を構成している各アミノ酸残基同志又は各塩基同士の互いの適合関係において同一であると決定できるようなものの量(数)を意味し、二つのポリペプチド配列又は二つのポリヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。相同性は容易に算出できる。二つのポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」なる用語は、当業者には周知である (例えば、Lesk, A. M. (Ed.), Computational Molecular Biology, Oxford University Press, New York, (1988);Smith, D. W. (Ed.), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Academic Press, New York, (1993); Grifin, A. M. & Grifin, H. G. (Ed.), Computer Analysis of Sequence Data: Part I, Human Press, New Jersey, (1994);von Heinje, G., Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press,New York, (1987); Gribskov, M. & Devereux, J. (Ed.), Sequence Analysis Primer, M-Stockton Press, New York, (1991) 等) 。二つの配列の相同性を測定するのに用いる一般的な方法には、Martin, J. Bishop (Ed.), Guide to Huge Computers, Academic Press, San Diego, (1994); Carillo, H. & Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988) 等に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。相同性を測定するための好ましい方法としては、試験する二つの配列間の最も大きな適合関係部分を得るように設計したものが挙げられる。このような方法は、コンピュータープログラムとして組み立てられているものが挙げられる。二つの配列間の相同性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法としては、GCG プログラムパッケージ (Devereux, J. et al., Nucleic Acids Research, 12(1): 387 (1984)) 、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215: 403 (1990)) 等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、当該分野で公知の方法を使用することができる。

【0053】
更に、上記の各核酸分子は、各配列番号で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記配列番号で示された各ポリペプチドの機能・活性と実質的に同じものを有するポリペプチドをコードするDNAを含むものである。

【0054】
ここで、ハイブリダイゼーションは、Molecular cloning third.ed.(Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。

【0055】
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。

【0056】
本明細書において、DNAのハイブリダイズにおける「ストリンジェント(stringent)な条件」は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件の適当な組み合わせによって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)は増加する。更に、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。

【0057】
従って、「ストリンジェントな条件」とは、各塩基配列間の相同性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い相同性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリッドが形成されるような条件を意味する。具体的には、例えば、温度60℃~68℃において、ナトリウム濃度150~900mM、好ましくは600~900mM、pH 6~8であるような条件を挙げることが出来る。ストリンジェントな条件の一具体例としては、5 x SSC (750 mM NaCl、75 mM クエン酸三ナトリウム)、1% SDS、5 x デンハルト溶液50% ホルムアルデヒド、及び42℃の条件でハイブリダイゼーションを行い、0.1 x SSC (15 mM NaCl、1.5 mM クエン酸三ナトリウム)、0.1% SDS、及び55℃の条件で洗浄を行うものである。

【0058】
更に、各一本鎖ポリペプチドにおける可変領域断片をコードする核酸を作製する場合には、予め設計されたアミノ酸配列に基づきオーバーラップPCR法により全合成することができる。尚、「核酸」とは、一本鎖ポリペプチドをコードする分子であれば、その化学構造及び取得経路に特に制限はなく、例えば、gDNA、cDNA、化学合成DNA及びmRNA等を含むものものである。

【0059】
具体的には、cDNAライブラリーから、文献記載の配列に基づいてハイブリダイゼーションにより、あるいはポリメラーゼチェインリアクション(PCR) 技術により単離されうる。一旦単離されれば、DNA は発現ベクター中に配置され、次いでこれを、大腸菌(E. coli )細胞、COS 細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞) 、またはイムノグロブリンを産生しないミエローマ細胞等の宿主細胞にトランスフェクションさせ、該組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させることができる。PCR 反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えば R. Saiki, et al., Science, 230: 1350, 1985; R. Saiki, et al., Science, 239: 487, 1988 ; H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. ed., “DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; M. A. Innis et al. ed., “PCR Protocols: a guide to methods and applications", Academic Press, New York (1990)); M. J. McPherson, P. Quirke and G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002 (1988)などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR 法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。

【0060】
DNA など核酸の配列決定は、例えばSanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467 (1977)などを参考にすることができる。また一般的な組換えDNA 技術は、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (ed.), “Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition)", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)及び D. M. Glover et al. (ed.), “DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) などを参考にできる。

【0061】
こうして取得された本発明の抗体を構成する一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域をコードする核酸は、目的に応じて、当業者に公知の手段により適宜所望のペプチド又はアミノ酸をコードするように改変することができる。この様にDNA を遺伝子的に改変又は修飾する技術は、Mutagenesis: a Practical Approach, M.J.Mcpherson (Ed.), (IRL Press, Oxford, UK(1991) における総説において示されており、例えば、位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法)、カセット変異誘発法及びポリメラーゼチェインリアクション(PCR) 変異生成法を挙げることができる。

【0062】
ここで、核酸の「改変」とは、得られたオリジナルの核酸において、アミノ酸残基をコードする少なくとも一つのコドンにおける、塩基の挿入、欠失または置換を意味する。例えば、オリジナルのアミノ酸残基をコードするコドンを、別のアミノ酸残基をコードするコドンにより置換することにより一本鎖ポリペプチドを構成するアミノ酸配列自体を改変する方法がある。

【0063】
又は、アミノ酸自体は変更せずに、CHO細胞等の宿主細胞にあったコドン(至適コドン)を使用するように、一本鎖ポリペプチドをコードする核酸を改変することも出来る。このように至適コドンに改変することによって、宿主細胞内における一本鎖ポリペプチドの発現効率等の向上を図ることが出来る。

【0064】
本発明の抗体は、当業者に公知の方法、例えば、遺伝子工学的手法又は化学合成等の各種手段を用いて製造することが出来る。遺伝子工学的手法としては、例えば、該二重特異性抗体を構成する夫々の一本鎖抗体のポリペプチドをコードする核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクターを作製し、このベクターで宿主細胞を形質転換せしめ、該形質転換された宿主細胞を培養して一本鎖ポリペプチドを発現させ、該ポリペプチドを回収・精製し、それらの一本鎖ポリペプチドを会合させ、形成された抗体分子を分離・回収することによって製造することが出来る。

【0065】
ここで、「複製可能な発現ベクター(replicable expression vector)」および「発現ベクター(expression vector) 」は、DNA(通常は二本鎖である)の断片(piece) をいい、該DNAは、その中に外来のDNAの断片を挿入せしめることができる。外来のDNAは、異種DNA (heterologous DNA)として定義され、このものは、対象宿主細胞においては天然では見出されないDNA である。ベクターは、外来DNAまたは異種DNA を適切な宿主細胞に運ぶために使用される。一旦、宿主細胞中に入ると、ベクターは、宿主染色体DNA とは独立に複製することが可能であり、そしてベクターおよびその挿入された(外来)DNA のいくつかのコピーが生成され得る。さらに、ベクターは外来DNAのポリペプチドへの翻訳を可能にするのに不可欠なエレメントを含む。従って、外来DNAによってコードされるポリペプチドの多くの分子が迅速に合成されることができる。

【0066】
このようなベクターは、適切な宿主中で DNA配列を発現するように、適切な制御配列(control sequence)とそれが機能するように(operably)(即ち、外来DNAが発現できるように)連結せしめられたDNA配列を含有する DNA構築物(DNA construct) を意味している。そうした制御配列としては、転写(transcription) させるためのプロモーター、そうした転写を制御するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードしている配列、エンハンサー、リアデニル化配列、及び転写や翻訳(translation) の終了を制御する配列等が挙げられる。更にベクターは、当業者に公知の各種の配列、例えば、制限酵素切断部位、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子(選択遺伝子)、シグナル配列、リーダー配列等を必要に応じて適宜含むことが出来る。これらの各種配列又は要素は、外来DNAの種類、使用する宿主細胞、培養培地等の条件に応じて、当業者が適宜選択して使用することが出来る。更に、製造した一本鎖ポリペプチドの検出及び精製等を容易にする目的のために、当業者に公知の各種のペプチドタグ(例えば、c-mycタグ及びHis-tag)をコードする配列を一本鎖ポリペプチドに対応する配列の末端等に含ませることが出来る。

【0067】
該ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、あるいは単純にゲノムの挿入体(genomic insert)等の任意の形態が可能である。一旦、適切な宿主の中に形質転換で導入せしめられると、該ベクターは宿住のゲノムとは独立して複製したり機能するものであり得る。又は、該ベクターはゲノムの中に組み込まれるものであってもよい。

【0068】
本発明の抗体を構成する一本鎖ポリペプチドを製造する為に使用する各種の発現ベクターは、当業者であれば、当該技術分野における公知技術を用いて容易に作製することが出来る。その一例として、特許文献1、特に、実施例1、2、11及び12の記載及び特許文献2における各実施例を挙げることが出来る。

【0069】
宿主細胞としては当業者に公知の任意の細胞を使用することができるが、例えば、代表的な宿主細胞としては、大腸菌(E. coli) 等の原核細胞、及び、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞) 、ヒト由来細胞などの哺乳動物細胞、酵母、昆虫細胞等の真核細胞が挙げることができる。形質転換菌は当業者に公知の任意の抵当な条件・方法で培養することができる。宿主として、例えば、BL21 star(DE3)株、培地として2xYT培地、培養温度28℃前後、0.5 mM 程度のIPTGで発現を誘導することによって、培養上清又は可溶性画分における本発明の抗体の収量を大幅に向上させることができ、製造効率を高めることが可能となる。

【0070】
このような宿主細胞における発現等により得られた一本鎖ポリペプチドは一般に分泌されたポリペプチドとして培養培地から回収されるが、それが分泌シグナルを持たずに直接に産生された場合には宿主細胞溶解物から回収することが出来る。一本鎖ポリペプチドが膜結合性である場合には、適当な洗浄剤(例えば、トライトン-X100) を使用して膜から遊離せしめることができる。

【0071】
精製操作は当業者に公知の任の方法を適宜組み合わせて行うことが出来る。例えば、必用に応じてPEG化等の化学修飾を行った後、遠心分離、硫酸アンモニウム沈殿、クロスフロー濃縮、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースでのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン樹脂クロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム等)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及びアフィニティクロマトグラフィーによって好適に精製される。アフィニティクロマトグラフィーは、一本鎖ポリペプチドが有するぺプチドタグとの親和力を利用した効率が高い好ましい精製技術の一つである。

【0072】
回収された一本鎖ポリペプチドは不溶性画分に含まれている場合には、精製操作は、一本鎖ポリペプチドを可溶化し変性状態にした上で行うことが好ましい。この可溶化処理は、エタノールなどのアルコール類、各種試薬類、グアニジン塩酸塩、尿素などの解離剤として当業者に公知の任意の薬剤を使用して行うことが出来る。更に、こうして精製された同一種類又は2種類の一本鎖ポリペプチドを会合(巻き戻し)せしめ、形成された抗体を分離して回収することによって、本発明の抗体を製造することが出来る。

【0073】
会合処理は、単独の一本鎖ポリペプチドを適切な空間的配置に戻すことによって、所望の生物活性を有する状態に戻すことを意味する。従って、会合処理は、ポリペプチド同志あるいはドメイン同志を会合した状態に戻すという意味も有しているので「再会合」ともいうことができるし、所望の生物活性を有するものにするという意味で、再構成ということもでき、或いは、リフォールディング (refolding)とも呼ぶことが出来る。会合処理は当業者に公知の任意の方法で行うことが出来るが、例えば、透析操作により、一本鎖ポリペプチドを含むバッファ溶液中の変性剤(例えば、塩酸グアニジン)の濃度を段階的に下げる方法が好ましい。この過程で、凝集抑制剤、及び酸化剤を反応系に適宜添加することによって、酸化反応の促進を図ることも可能である。形成された多量体化低分子抗体の分離及び回収も当業者に公知の任意の方法で行うことが出来る。

【0074】
以上に示したように、本発明の抗体は、例えば、培養宿主細胞の培養培地上清、ペリプラズム画分、菌体内可溶性画分、又は、菌体内不溶性画分から調製することが可能である。

【0075】
本発明のベクターとして、本発明の抗体を構成する一本鎖ポリペプチドに対応する核酸分子を共に含む共発現ベクターを用いることによって、又は、一本鎖ポリペプチドの夫々をコードする核酸分子を含む発現ベクターを同一の宿主細胞を形質転換せしめ、該形質転換菌内で夫々の一本鎖ポリペプチドが発現した後に抗体分子が形成され、それを培養宿主細胞の培養培地上清又は可溶性画分から調製することが可能である。従って、このような場合には、上記の会合(巻き戻し)処理は不要となり、低コストで高生産性が得られる。

【0076】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体、一本鎖ポリペプチド、核酸、ベクター、及び形質転換された宿主細胞から成る群から選ばれたものを有効成分として含有することを特徴とする。かかる有効成分は、以下の実施例に示されているように、インビトロ及びインビボで上皮細胞成長因子受容体を発現する(陽性)腫瘍細胞を有意に排除・殺傷・傷害する作用を有しているので、本発明の医薬組成物はこのような腫瘍細胞に対する抗腫瘍剤として使用することが出来る。

【0077】
本発明の有効成分の有効量は、例えば治療目的、腫瘍の種類、部位及び大きさ等の投与対象における病状、患者の諸条件、及び投与経路等によって当業者が適宜決めることが出来る。典型的な1回の投与量又は日用量は、上記の条件に応じ、可能ならば、例えば当分野で既知の腫瘍細胞の生存又は生長についての検定法を使用して、まずインビトロで、そして次に、人間の患者のための用量範囲を外挿し得る適切な動物モデルで、適当な用量範囲を決定することもできる。

【0078】
本発明の医薬組成物には、有効成分の種類、薬剤形態、投与方法・目的、投与対象の病態等の各種条件に応じて、有効成分に加えて当業者に周知の薬学上許容し得る各種成分(例えば、担体、賦形剤、緩衝剤、安定化剤、等)を適宜添加することが出来る。

【0079】
本発明の医薬組成物は、上記各種条件に応じて、錠剤、液剤、粉末、ゲル、及び、噴霧剤、或いは、マイクロカプセル、コロイド状分配系(リポソーム、マイクロエマルジョン等)、及びマクロエマルジョン等の種々薬剤形態をとり得る。

【0080】
投与方法としては、静脈内、腹腔内、脳内、脊髄内、筋肉内、眼内、動脈内、特には胆管内、又は病変内経路による注入又は注射、及び持続放出型システム製剤による方法が挙げられる。本発明の活性物質は、輸液により連続的に、または大量注射により投与されることができる。尚、本発明の医薬組成物を投与する場合には、食作用又は細胞傷害活性を有する細胞と共に投与することが好ましい。或いは、投与前に本発明のLH型ダイアボディ型二重特異性抗体のような有効成分と上記細胞とを混合することによって、投与前に該抗体を予め該細胞に結合させておくことが好ましい。

【0081】
持続放出製剤は、一般的には、そこから本発明の活性物質をある程度の時間放出することのできる形態のものであり、持続放出調製物の好適な例は、蛋白質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性担体を含み、該担体は、例えばフィルムまたはマイクロカプセル等の成型物の形態のものである。

【0082】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の方法、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十三改正 日本薬局方解説書、平成8年7月10日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して製造することができる。

【0083】
尚、本明細書及び図面において、用語はIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。

【0084】
以下に実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、これらは単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。

【0085】
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。尚、以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNA クローニングでは J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, “Molecular Cloning", 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, N. Y. (1989) 及び D. M. Glover et al. ed., “DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) ; 特にPCR 法では、H. A. Erlich ed., PCR Technology, Stockton Press, 1989 ; D. M. Glover et al. ed.,“DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995) 及び M. A. Innis et al. ed.,“PCR Protocols", Academic Press, New York (1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している。
【実施例1】
【0086】
E225x3発現ベクター(HL型、LH型、tandem scFv型)の作製
pRA1-2HOL及びpRA1-OH2Lの作製
発現ベクターは既に作製されているEGFR及びCD3を標的としたヒト型化ダイアボディ型発現ベクターpRA-5HOL、pRA-OH5L (特許文献1)を基に作製した。配列番号9および配列番号10のプライマーで2HをPCR増幅させ、NcoIとEagIで消化後、ライゲーション反応によりpRA-5HOLの5H部位と入れ換えることでpRA1-2HOLを作製した。続いて、配列番号11および配列番号12のプライマーで2LをPCR増幅させ、EcoRVとSacIIで消化後、ライゲーション反応によりpRA- OH5Lの5L部位と入れ換えることでpRA1-OH2Lを作製した。
【実施例1】
【0087】
back primer (NcoI-225H)5’-NNNCCATGGCCCAGGTACAACTGCAGGAGTCAGGACCTGGCCTAGTGCAGC-3’(配列番号9)
forward primer (225H-EagI) 5’-NNNCGGCCGAGGAAACGGTGACCGTGGTCCCTTGGCCCCAGTAAGC-3’(配列番号10)
back primer (EcoRV-225L)5’-NNNGATATCCAACTGACCCAGTCT-3’(配列番号11)
forward primer (225L-SacII) 5’-NNNCCGCGGCACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCCC-3’(配列番号12)
【実施例1】
【0088】
(1) HL型E225x3 Db共発現ベクターの作製
pRA1-2HOLを下記のプライマーを用いてPCRし、そのPCR産物とpRA1-OH2LをSpeI、EcoRIで消化後、ライゲーションすることでHL型共発現ベクター(pRA1-E225x3 HLG1)を作製した(図1a)。
【実施例1】
【0089】
<x3 HLG1作製用プライマー>>
back primer (SpeI-pelB) 5’-NNNACTAGTTATTTCAAGGAGACAGTCATAATGAAATAC-3’(配列番号13)
forward primer(T7term-EcoRI)5’-NNNGAATTCATCCGGATATAGTTCCTCCTTTCAG-3’(配列番号14)
【実施例1】
【0090】
(2) LH型E225x3 Db共発現ベクターの作製
pRA1-2H2Lの作製
配列番号9および配列番号15のプライマーで2HをPCR増幅させ、NcoIとEcoRVで消化後、ライゲーション反応により前述のpRA1-OH2LのOH部位と入れ換えることでpRA1-2H2Lを作製した。
back primer (NcoI-225H)5’-NNNCCATGGCCCAGGTACAACTGCAGGAGTCAGGACCTGGCCTAGTGCAGC-3’(配列番号9)
forward primer (225H-G3-EcoRV)
5’-NNNGATATCGGATCCGCCACCGCCCGACCCGCCACCGCCGCTACCGCCCCCGCCGGCCGAGGAAACGGTGACCGTGG-3’(配列番号15)
【実施例1】
【0091】
まず、前述のpRA1-2H2L, すでに既に作製されているpRA1-5LOH(特許文献3のpRA-h5LhOLと同義)を鋳型として下記のプライマーを用い1stPCRを行い、NcoI-2L-G1-OH, 2L-G1-OH-SacII及びNcoI-OL-G1-2H, OL-G1-2H-SacIIを作製した。それらを鋳型として2ndPCRを行いNcoI-2L-G1-OH-SacII, NcoI-OL-G1-2H-SacIIを作製し、NcoI, SacIIで消化後、同様に消化して得られたpRA1ベクターとライゲーションすることでpRA1-2LOH, pRA1-OL2Hを作製した。以降、HL型と同様の処理を行うことによりLH型共発現ベクター(pRA1-E225x3 LHG1)を作製した(図1b)。
【実施例1】
【0092】
<x3 LHG1作製用プライマー>>
1ndPCR
back primer (NcoI-2L) 5’-NNNCCATGGCCGATATCCAACTGACCCAGTCTCCAGTCATCCT-3’(配列番号16)
forward primer (2L-G1-OH)5’-ACCTGGCCACCGCCACCAGATTTGATCTCCAGCTTGGTCCCAGCACCGAA-3’(配列番号17)
back primer (2L-G1-OH) 5’-AGATCAAATCTGGTGGCGGTGGCCAGGTGCAACTGGTGCA-3’(配列番号18)
forward primer (OH-SacII) 5’-NNNNAGCCGCGGAGCTAACGGTCACCGGGGTGCCCTGGCC-3’(配列番号19)
2ndPCR
back primer (NcoI-2L) forwardプライマー(OH-SacII) 配列は上記。
【実施例1】
【0093】
<
1ndPCR
back primer (NcoI-OL) 5’-NNNNCCATGGCCGATATTCAGATGACCCAGAGCCCG-3’(配列番号20)
forward primer (OL-G1-2H) 5’-TTGTACCTGGCCACCGCCACCAGAGGTAATCTGCAGTTTGG-3’(配列番号21)
back primer (OL-G1-2H) 5’-ATTACCTCTGGTGGCGGTGGCCAGGTACAACTGCAGGAGTCAGGACCT-3’(配列番号22)
forward primer (2H-SacII) 5’-NNNNCCGCGGAGGAAACGGTGACCGTGGTCC-3’(配列番号23)
2ndPCR
back primer (NcoI-OL), forwardプライマー(2H-SacII) 配列は上記。
【実施例1】
【0094】
(3) tandem scFv型E225x3発現ベクターの作製
pRA1-5L5HOHOLの作製
既に作製されているEx3 tandem scFv発現ベクターpKHI-Ex3 tandem scFv(特許文献2)を鋳型に、配列番号24および配列番号25のプライマーを用いてPCR増幅させ、NcoI、SacIIで消化後、ライゲーション反応によりpRA-OH5LのOH5L部位と入れ換えることでpRA1-5L5HOHOLを作製した。
【実施例1】
【0095】
back primer (NcoI-5L) 5’-NNNNCCATGGCCGATATTGTGATGACCCAGAGCCCG- 3’ (配列番号24)
forward primer (OL-SacII) 5’-NNNNAGCCGCGGCGCGGGTAATCTGCAGTTTGGTACC- 3’ (配列番号25)
【実施例1】
【0096】
pRA1-2H2Lを鋳型として下記のプライマーを用い1stPCRを行い、NcoI-2L-EcoRI, 2L-G3-2H-SacIIを作製した。それらを鋳型として2ndPCRを行いNcoI-2L-G3-2H-SacIIを作製し、NcoI, SacIIで消化後、同様に消化して得られたpRA1ベクターに挿入しpRA1-2L2Hを作製した。次にpRA1-2L2H, pRA1-5L5HOHOLを鋳型として下記のプライマーを用いて1stPCRを行い、NcoI-2L-G3-2H, 2H-G1-OH-OL-SacIIを作製した。それらを鋳型として2ndPCR行いNcoI-2L-G3-2H-G1-OH-OL-SacIIを作製し、NcoI, SacIIで消化後、同様に消化して得られたpRA1ベクターとライゲーションでpRA1-2L2HOHOLを作製した(図1c)。
【実施例1】
【0097】
<
1stPCR
back primer (NcoI-2L) 5’-NNNCCATGGCCGATATCCAACTGACCCAGTCTCCAGTCATCCT-3’(配列番号16)
forward primer (T7term-EcoRI)5’-NNNGAATTCATCCGGATATAGTTCCTCCTTTCAG-3’(配列番号14)
back primer (2L-G3-2H) 5’-AAAGGCGGGGGCGGTAGCGGCGGTGGCGGGTCGGGCGGTGGCGGATCCCAGGTACAACTGCAGGAGTC- 3’(配列番号26)
forward primer (2H-SacII) 5’-NNNNCCGCGGAGGAAACGGTGACCGTGGTCC-3’(配列番号23)
2ndPCR
back primer (NcoI-2L), forwardプライマー(2H-SacII) 配列は上記。
【実施例1】
【0098】
<
1stPCR
back primer (NcoI-2L) 5’-NNNCCATGGCCGATATCCAACTGACCCAGTCTCCAGTCATCCT-3’(配列番号16)
forward primer (2L-G3-2H) 5’-CTGGGATCCGCCACCGCCCGACCCGCCACCGCCGCTACCGCCCCCGCCTTTGATCTCCAGCTTGGTCC-3’(配列番号27)
back primer (2H-G1-OH) 5’-GTTTCCTCCGGCGGGGGCGGTTCGCAGGTGCAA-3’(配列番号28)
forward primer (OL-SacII) 5’-NNNNAGCCGCGGCGCGGGTAATCTGCAGTTTGGTACC- 3’ (配列番号25)
2ndPCR
backプライマー(NcoI-2L), forwardプライマー(OL-SacII) 配列は上記。
【実施例2】
【0099】
E225x3 (HL型、LH型、tandem scFv型)の調製
実施例1で作製したベクターを用いて市販のコンピテントセルBL21(DE3)及びBL21(DE3)Star(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を形質転換し、試験管スケール(LB培地3mL)、28℃で培養後SDS-PAGEとウェスタンブロッティングにより発現確認を行った。その結果BL21(DE3)Starに濃いバンドがみられたため、今後BL21(DE3)Starを用いて培養を行うことにした。
【実施例2】
【0100】
BL21(DE3)Starを用いて培養を行った結果、HL型, LH型E225x3は、「28℃→20℃(O.D.=0.8の時)」という条件においてもっともよく発現が確認出来、可溶性画分からも発現が確認された。またtandem scFv型E225x3は「28℃を維持」という条件においてもっともよく発現が確認されたが、可溶性画分からはあまり発現が確認されなかった。従って、この条件を用いて大量培養を行うことにした。
【実施例2】
【0101】
上記培養条件で培養後、遠心分離により培地上清を可溶性画分として回収した。沈殿はOsmotic Shock処理を行った後、遠心分離を行うことでペリプラズム画分に存在する可溶性タンパク質を可溶性画分として培地上清と一緒に回収した(可溶性画分(1))。さらに、その沈殿をBugBuster試薬で可溶化、遠心し、上清(可溶性画分(2))と沈殿(不溶性画分)に分けた。
【実施例2】
【0102】
当業者に公知の方法を用いたSDS-PAGE及びウェスタンブロッティングにより各画分のサンプルの発現を確認した。その結果、HL型はBugBuster試薬処理後の可溶性画分以外で、LH型はすべての画分で発現が確認出来た。tandem scFv型は超音波破砕後の可溶性画分および不溶性画分では発現が確認されたが、他の画分では発現が確認できなかった。
【実施例2】
【0103】
硫安沈殿法を用いた可溶性画分からの調製
上記の可溶性画分(1)に質量の6割の硫酸アンモニウムを徐々に溶かし低温室で一晩攪拌し続けた後、遠心分離により回収した沈殿をPBSに溶出させた。。そのサンプルを以下の条件を用いて(金属キレートアフィニティークロマトグラフィー:IMAC)により精製した。各精製度をSDS-PAGE及びウェスタンブロッティングにより確認し、HL型, LH型は溶出画分3を、tandem scFv型は溶出画分2
をゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。その結果、HL型はきれいな目的バンドが確認されたため高純度のHL型E225x3が得られたことがわかった。吸光度から収量を求めると、25 μg/Lであった。LH型, tandem scFv型からは目的バンドが確認出来なかった。
【実施例2】
【0104】
【表3】
JP2015146438A1_000005t.gif
【実施例2】
【0105】
クロスフローを用いた可溶性画分からの調製
硫安沈殿法を用いた可溶性画分からの調製ではLH型は共雑が多すぎたので再度培養し可溶性画分(1)をクロスフローを用いて濃縮した。tandem scFv型に関しては発現が確認されなかったので精製をしなかった。濃縮したサンプルを表3に記載の条件でIMACで精製後、精製度をSDS-PAGE及びウェスタンブロッティングにより確認し、HL型及びLH型ともに溶出画分4をゲルろ過クロマトグラフィーで精製した。その結果、HL型は共雑が多く精製出来なかった。LH型は多少共雑は見られたが精製できた。吸光度から収量を求めると96 μg/Lであった。
【実施例2】
【0106】
BugBuster試薬処理後の可溶性画分からの調製
可溶性画分(2)をまずPBSで透析し、表3に記載の条件でIMAC精製した。各精製度をSDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングにより確認し、硫安沈殿法を用いた可溶性画分からの調製と同様に、HL型, LH型は溶出画分3を、tandem scFv型は溶出画分2をゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。その結果、HL型, LH型, tandem scFv型すべて目的バンドにたいして共雑が多すぎて精製できなかったことがわかった。
【実施例2】
【0107】
巻き戻し法を用いた不溶性画分からの調製
不溶性画分を6 Mグアニジン塩酸塩PBS水溶液で可溶化し、以下に記載の条件でIMACにより精製した。各サンプルの精製度をSDS-PAGE及びウェスタンブロッティングにより確認し、HL型, LH型, tandem scFv型すべて溶出画分4(300 mM)に目的タンパク質を精製できた。この画分を透析膜内に入れ、外液のグアニジン塩酸塩水溶液濃度を6 Mから6時間おきに3 M、2 M、1 M、その後12 時間おきに0.5 M、0 Mと徐々に下げていき(1 M、0.5 M、0 Mでは凝集抑制剤として400 mM L-アルギニンを添加)、最後にL-アルギニンを除去することで巻き戻し操作を行った。可溶化率はHL型, LH型, tandem scFv型の順に、16 %, 12 %, 6 %であった。巻き戻し後の内液を遠心し凝集したタンパク質を取り除き、上清をゲルろ過クロマトグラフィーで精製した。その結果、、HL型, LH型, tandem scFv型すべてきれいな目的バンドが確認できたため高純度なE225x3を得られたことがわかった。吸光度から収量を求めると、HL型, LH型, tandem scFv型の順に340 μg/L, 192 μg/L, 126μg/Lであった。
【実施例2】
【0108】
【表4】
JP2015146438A1_000006t.gif
【実施例3】
【0109】
本発明抗体の細胞傷害試験
不溶性画分から調製したHL型, LH型, tandem scFv型E225x3及び硫安沈殿法を用いて可溶性画分から調製したHL型E225x3の4サンプルで細胞傷害性試験を行った。表5に示したように、活性化リンパ球(T-LAK)を用いた細胞傷害性試験(MTS assay)により、EGFR陽性のヒト胆管がん細胞株であるTFK-1細胞に対する細胞傷害性を調べ、この4種のE225x3を比較した。その結果を図2に示す。尚、TFK-1は東北大学加齢医学研究所付属医用細胞資源センター ID:TKG036に寄託されている。
【実施例3】
【0110】


【表5】
JP2015146438A1_000007t.gif
【実施例3】
【0111】
その結果、不溶性画分から調製したE225x3において、細胞傷害性は高い方からtandem scFv型, LH型, HL型E225x3であることがわかった。Ex3において細胞傷害性は、tandem scFv型≒LH型>HL型であったことを考えると、HL型よりLH型, tandem scFv型の方が細胞傷害性が高いという点では共通していることがわかった。また、HL型E225x3に着目すると、不溶性画分から調製するより可溶性画分から調製した方が細胞傷害性が高いことがわかった。Ex3において可溶性画分から調製した場合と不溶性画分から調製した場合では細胞傷害性にあまり差が見られなかったことを考えると、E225x3はEx3と異なり巻き戻しの際に正しくフォールディングされにくい分子でるあることが示唆された。
【実施例3】
【0112】
そこで次に、可溶性画分から調製したHL型E225x3及び LH型E225x3とHL型Ex3及び LH型Ex3の細胞傷害性を比較した。E225x3に関して、HL型は硫安沈殿法を用い可溶性画分から調製し、LH型はクロスフローを用い可溶性画分から調製したサンプルを用いた。その結果を図3に示す。
【実施例3】
【0113】
図3の結果から、E225x3, Ex3ともにHL型よりLH型の方が細胞傷害性が高いことがわかった。しかしHL型に関してはE225x3, Ex3ともに同程度の細胞傷害性であるのに対し、LH型に関してはE225x3の方がEx3よりも細胞傷害性が高かった。このことから、低分子二重特異性抗体においてHL型よりLH型の方が細胞傷害性は高いが、その影響の程度は抗体によってことなることが示唆された。
【実施例4】
【0114】
配向性が異なる4種のE225x3 Dbの調製と機能解析
本発明のE225x3 Dbに関して4種類の配向性の分子の調製と機能解析を行った。E225x3 Dbの4種類の配向性(図4)のうち、OKT3由来のドメインをN末端側に配置したO2型(O2G1)、及び、225由来のドメインをN末端側に配置した2O型(2OG1)の共発現ベクターを、実施例1に記載のベクターに基づき、以下のように作製した。
【実施例4】
【0115】
E225x3 O2G1共発現ベクターの作製
E225x3 O2G1共発現ベクターの作製に向けて、実施例1で作製したpRA1-OL2Hを鋳型とし、以下の条件でポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)を行った。なお、2Lの遺伝子配列中にはBamHIサイト(GGATCC)が存在するため、BamHIを使用しない方法で遺伝子作製を目指した。
【実施例4】
【0116】
【表6】
JP2015146438A1_000008t.gif
【実施例4】
【0117】
上記のPCRで増幅したOL2H断片(インサート側)をNheI、EcoRIで、また当研究室既存のpRA1-OH2L(ベクター側)をSpeI、EcoRIで制限酵素消化し、これらをライゲーションすることで、pRA1-E225x3 O2G1を作製した(図5)。NheI消化断片とSpeI消化断片は同じ付着末端(CTAG)となるため、ライゲーションが可能である。
【実施例4】
【0118】
E225x3 2OG1共発現ベクターの作製
E225x3 2OG1共発現ベクターは、E225x3 O2G1共発現ベクター作製時と同様の条件でPCRを行うことで増幅した2LOH断片(インサート側)をNheI、EcoRIで制限酵素消化後、pRA1-2HOL(ベクター側)のSpeI、EcoRIサイトに挿入することで作製した(図6)。
【実施例4】
【0119】
4種類のE225x3 Dbの調製
実施例1で作製した共発現ベクターpRA1-E225x3 HLG1、pRA1-E225x3 LHG1(図1)と、これらの共発現ベクターpRA1-E225x3 O2G1、pRA1-E225x3 2OG1をそれぞれ用いてBL21(DE3)starを形質転換し、実施例2に記載のように、培地上清画分とペリプラズム画分を併せ、クロスフローにより濃縮・透析を行う調製法を用いた。尚、E225x3 HLG1、E225x3 LHG1に関してはそれぞれ2×YT培地2 Lと4 L、E225x3 O2G1、E225x3 2OG1に関しては3 Lで大量培養を行った。以下に詳細を記す。
【実施例4】
【0120】
SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングによる発現確認の結果、、E225x3 HLG1、E225x3 LHG1、E225x3 2OG1に関しては可溶性画分に目的タンパク質の発現がみられたが、E225x3 O2G1に関してはほとんど確認することができなかった。原因としては、E225x3 O2G1が他の配向性に比べ可溶性画分に分泌されにくい分子であるということや、検出用のタグが切れていた、もしくはSDS-PAGE用のサンプル調製時における人為的なミスが考えられる。しかしながら、Ex3 Dbと同様に配向性の異なる4種類を同じ画分から調製し収量を比較するため、E225x3 O2G1に関しても培地上清画分およびペリプラズム画分からの調製を行った。
【実施例4】
【0121】
クロスフローによる濃縮・透析後のIMAC精製結果、300 mMのイミダゾール濃度で溶出した画分に最も多くの目的タンパク質がみられたが、Ex3 Dbとは異なり多くの夾雑タンパク質が混在していた。また、ウェスタンブロッティングの結果からE225x3 2OG1はデグラデーションし易い分子であることが明らかになった。目的タンパク質の純度を高めるために、300 mMイミダゾール溶出画分を回収し、リン酸生理食塩水(Phosphate Buffered Saline:PBS)で透析後、再びIMAC精製を行った。
【実施例4】
【0122】
その結果、E225x3 HLG1とE225x3 LHG1に関してはある程度純度の高い画分を得ることができたため、300 mMイミダゾール溶出画分を用いてゲルろ過クロマトグラフィーによる精製を行った。一方、E225x3 O2G1とE225x3 2OG1は目的タンパク質と近い分子量の夾雑タンパク質を除くことができなかったので、300 mMイミダゾール溶出画分を回収し透析後、さらにIMAC精製を行った。
【実施例4】
【0123】
その結果、E225x3 O2G1とE225x3 2OG1に関してもある程度純度の高い画分を得ることができたため、300 mMイミダゾール溶出画分を用いてゲルろ過クロマトグラフィーによる精製を行った。各種E225x3 Dbのゲルろ過クロマトグラフィー精製結果を図7に示した。
ゲルろ過クロマトグラフィーによる最終精製、次いでフィルター滅菌を行った後に、各種E225x3 Dbの培地1 Lあたりの収量を算出し、Ex3 Dbの収量と比較した(表7)。Ex3 Dbと同様の培養条件で調製した場合、E225x3 Dbの収量はEx3 Dbに比べ大幅に低くなることが示された。
【実施例4】
【0124】
【表7】
JP2015146438A1_000009t.gif
【実施例4】
【0125】
4種類のE225x3 Dbの細胞傷害活性比較
Ex3 Dbは配向性の違いによりその細胞傷害活性に差が生じたが、E225x3 Dbでは4種類の配向性間での比較は行われていない。そこで、各種E225x3 Dbの細胞傷害活性を比較するために、標的細胞にTFK-1、エフェクター細胞にT-LAKを用いてMTSアッセイを行った(図8)。その結果、配向性の異なる4種類のE225x3 Dbの細胞傷害活性は「LHG1 > HLG1 > O2G1 > 2OG1」となり、Ex3 Dbと同様にLHG1の活性が最も高いということが示され、用いる抗EGFR抗体を528から225に変えても機能的配向性はLHG1で共通している、ということが明らかになった。その一方で、他の配向性の活性差に関してはEx3 Dbとは傾向が異なっていることが示された。そこで次に、このような各種E225x3 Dbの活性差が何に起因しているのかを調べるために、種々の手法を用いて機能解析を行った。
【実施例4】
【0126】
4種類のE225x3 DbのEGFRに対する親和性比較
まず、各種E225x3 Dbの細胞傷害活性の差と抗原に対する親和性の相関を調べるために、EGFR(固定化量1318 RU) に対する親和性をSPR(J Biol Chem. 2010 Jul 2:285(27):20844-9)により評価した。SPRの測定結果を図9に、それにより算出した結合・解離定数を表8に示した。
【実施例4】
【0127】
【表8】
JP2015146438A1_000010t.gif
【実施例4】
【0128】
結合平衡定数の値は、「HLG1 > LHG1 > 2OG1 ≫ O2G1」となり、EGFRに対する親和性と細胞傷害活性には相関がみられなかったことから、Ex3 Dbのように各種E225x3 Dbの活性差もEGFRに対する親和性には起因していないことが明らかになった。また、O2G1のEGFRに対する親和性は他の配向性に比べ大幅に低いということが示された。
【実施例4】
【0129】
4種類のE225x3 Dbの架橋能の比較
続いて、当業者に公知の方法(例えば、特許文献5の実施例2に記載の方法)に準じた方法を用いたフローサイトメトリー(FCM)により各種E225x3 Dbの架橋能を比較した。E225x3 DbとCD3-FITCを等mol量混合した後にヒト扁平上皮がん細胞株であるA431細胞(ATCC No.CRL-1555)表面上のEGFRへの結合を検出した結果を図10aに、E225x3 DbとEGFR-FITCを等mol量混合した後に細胞傷害性T細胞であるT-LAK(CD3+)表面上のCD3への結合を検出した結果を図10bに示した。
【実施例4】
【0130】
図10の結果から、E225x3 Db-CD3複合体のA431表面上EGFRへの結合は2OG1を除く3種類で検出され、その蛍光強度はLHG1が最も強く、次いでHLG1、O2G1の順であった。従って、架橋能の優位性がE225x3 LHG1の高い細胞傷害活性に寄与していると考えられる。E225x3 Dbでは、架橋能と細胞傷害活性の間に相関がみられた。
一方、E225x3 Db-EGFR複合体のT-LAK表面上CD3への結合は、すべての配向性で検出されなかった。因みに、E225x3 Db単独では細胞表面上CD3への結合がみられた。従って、細胞表面上のTCR等の存在によってE225x3 Db-EGFR複合体がCD3へ結合する際に立体障害が生じており、それが架橋能に影響したのではないかと推測できる。
【実施例4】
【0131】
4種類のE225x3 Dbのサイトカイン分泌誘導能の比較
各種E225x3 Dbに関して当業者に公知の方法(J Biol Chem. 2011 Jan 21;286(3):1812-8)でELISAによって抗腫瘍性サイトカインを検出し、活性との相関を調べた。TFK-1存在下・非存在下、TFK-1:T-LAK=1:10の場合においてIFN-γおよびTNF-αを検出した結果をそれぞれ図11(上、下)に示した。また、コントロールとしてマウスOKT3 Fabを用いた。
【実施例4】
【0132】
図11の結果から、TFK-1、E225x3 Db、T-LAK共培養時での各種サイトカインの分泌量は、IFN-γ:LHG1≒2OG1>O2G1>HLG1、及び、TNF-α:LHG1>2OG1>O2G1>HLG1、となり、抗腫瘍性サイトカインの分泌誘導に最も優れているのは、高活性かつ架橋能に有利な配向性であるLHG1であった。この結果から、標的細胞とエフェクター細胞の架橋により惹起されるサイトカイン誘導、つまりT-LAKの活性化がE225x3 Dbによる細胞傷害においても重要な機構であることが示唆された。TFK-1非存在下ではサイトカイン分泌量が大幅に低いため、やはりサイトカイン誘導には標的細胞とエフェクター細胞の接着が関与していると推測できる。また、マウスOKT3 FabはTFK-1の有無に関わらずサイトカインの分泌を促進していた。
【実施例5】
【0133】
E225x3 Db およびEx3 Dbを用いた細胞傷害活性評価
Ex3 DbとE225x3 Dbは共にEGFRとCD3を標的としていることから、共通の標的細胞およびエフェクター細胞を用いた細胞傷害性試験において活性を比較することが可能であり、また重要である。そこで本実施例では、Ex3 DbとE225x3 Dbのin vitroやin vivoにおける細胞傷害活性を比較した。
【実施例5】
【0134】
まず、実施例4で作製した配向性の異なる4種類のEx3 DbおよびE225x3 Dbを用いて、MTSアッセイにより細胞傷害活性を比較した結果を図12に示した。
【実施例5】
【0135】
更に、MTSアッセイによりEx3 LHG1とE225x3 LHG1の活性差を調べるために細胞傷害活性を比較した(図13)。その結果、E225x3 LHG1の細胞傷害活性はEx3 LHG1より約100倍高いことが示された。
【実施例6】
【0136】
Ex3 LHG1とE225x3 LHG1のin vivo活性比較
実施例5で示されたように、4種類のEx3 DbおよびE225x3 Dbはin vitroでは細胞傷害活性を有していたが、in vivoでの活性比較は行われていない。そこで、SCIDマウスを用いてTumor early stage model(図14)でのin vivo活性評価を行った。ネガティブコントロール(PBS単独投与)のほかに、mOKT3 IgGをコントロールとして用いた。
図15に示したように、Ex3 LHG1の場合は腫瘍の効果的な成長抑制がみられたのは2 μg投与時であったのに対し、E225x3 LHG1は0.2 μg投与で完全な腫瘍成長抑制効果がみられたことから、これらの抗腫瘍活性の優劣に関してはin vitroとの相関が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明によって、528抗体及び225抗体のように、標的抗原が同一で結合特性が類似している場合であっても、二重特異性抗体に利用した際には、その機能が大きく変化することが明らかになった。従って、標的抗原に対する抗体の種類を検討することによって、より高機能な二重特異性抗体を開発できる可能性が示された。
図面
【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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