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明細書 :気分障害マーカーおよびその用途、ならびに統合失調症マーカーおよびその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明の名称または考案の名称 気分障害マーカーおよびその用途、ならびに統合失調症マーカーおよびその用途
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI C12Q 1/68 A
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
G01N 33/50 P
国際予備審査の請求
全頁数 101
出願番号 特願2016-540758 (P2016-540758)
国際出願番号 PCT/JP2015/072492
国際公開番号 WO2016/021719
国際出願日 平成27年8月7日(2015.8.7)
国際公開日 平成28年2月11日(2016.2.11)
優先権出願番号 2014161176
優先日 平成26年8月7日(2014.8.7)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】大森 哲郎
【氏名】沼田 周助
【氏名】石井 一夫
【氏名】井本 逸勢
【氏名】田嶋 敦
出願人 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
【識別番号】100194515、【弁理士】、【氏名又は名称】南野 研人
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B063
Fターム 2G045AA35
2G045AA40
2G045CA01
2G045CA25
2G045DA13
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
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4B063QR50
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
要約 診断精度の高い気分障害の罹患の可能性の試験方法を提供することを第1の目的とする。
前記第1の目的を達成するために、本発明の気分障害の罹患可能性を試験する方法は、被検者の生体試料における下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、気分障害の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする。
(a)(1)~(506)および(507)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(b)(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者の生体試料における下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、気分障害の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする、気分障害の罹患可能性を試験する方法。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【表1A】
JP2016021719A1_000056t.gif
【表1B】
JP2016021719A1_000057t.gif
【表1C】
JP2016021719A1_000058t.gif
【表1D】
JP2016021719A1_000059t.gif

【請求項2】
前記基準値が、健常者の生体試料における対応する前記サイトのシトシンのメチル化率または気分障害患者の生体試料における対応する前記サイトのシトシンのメチル化率である、請求項1記載の気分障害の罹患可能性を試験する方法。
【請求項3】
前記試験工程において、前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンが、対応する下記の条件を満たす場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるとする、請求項2記載の気分障害の罹患可能性を試験する方法。
(x1)前記サイトが前記(a)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも低い場合、または前記気分障害患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以下の場合
(y1)前記サイトが前記(b)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも高い場合、または前記気分障害患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以上の場合
【請求項4】
前記生体試料が、全血である、請求項1から3のいずれか一項に記載の気分障害の罹患可能性を試験する方法。
【請求項5】
前記生体試料が、血球および白血球の少なくとも一方である、請求項1から4のいずれか一項に記載の気分障害の罹患可能性を試験する方法。
【請求項6】
前記気分障害が、うつ病および双極性感情障害の少なくとも一方である、請求項1から5のいずれか一項に記載の気分障害の罹患可能性を試験する方法。
【請求項7】
下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンを含むことを特徴とする、気分障害マーカー。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の試験方法に使用する試験試薬であって、下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする、気分障害の試験試薬。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項9】
気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(a’)および(b’)の少なくとも一方の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする、気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法。
(a’)下記(a)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(b’)下記(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる

(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項10】
被検者の生体試料における下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、統合失調症の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする、統合失調症の罹患可能性を試験する方法。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)下記(1000)~(1867)および(1868)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(g)下記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)下記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)下記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【表2A】
JP2016021719A1_000060t.gif
【表2B】
JP2016021719A1_000061t.gif
【表2C】
JP2016021719A1_000062t.gif
【表2D】
JP2016021719A1_000063t.gif
【表2E】
JP2016021719A1_000064t.gif
【表3】
JP2016021719A1_000065t.gif
【表4】
JP2016021719A1_000066t.gif
【表5】
JP2016021719A1_000067t.gif

【請求項11】
前記基準値が、健常者の生体試料における対応する前記サイトのシトシンのメチル化率または統合失調症患者の生体試料における対応する前記サイトのシトシンのメチル化率である、請求項10記載の統合失調症の罹患可能性を試験する方法。
【請求項12】
前記試験工程において、前記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンが、対応する下記の条件を満たす場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるとする、請求項11記載の統合失調症の罹患可能性を試験する方法。
(x2)前記サイトが前記(f)または前記(h)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも高い場合、または前記統合失調症患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以上の場合
(y2)前記サイトが前記(g)または前記(i)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも低い場合、または前記統合失調症患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以下の場合
【請求項13】
前記生体試料が、全血である、請求項10から12のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項14】
前記生体試料が、血球および白血球の少なくとも一方である、請求項10から13のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項15】
下記(f)および(h)のサイトのメチル化シトシン、ならびに下記(g)および(i)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも2つを含むことを特徴とする、統合失調症マーカーセット。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項16】
請求項10から14のいずれか一項に記載の試験方法に使用する試験試薬であって、下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする、統合失調症の試験試薬。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項17】
統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(c’)、(d’)または(e’)の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする、統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法。
(c’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(d’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる、ならびに
下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(e’)下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【請求項18】
下記(f)のサイトのメチル化シトシンおよび下記(g)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、新規統合失調症マーカー。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気分障害マーカー、それを用いた気分障害の罹患の可能性の試験方法、および試験試薬に関し、また、統合失調症マーカー、それを用いた統合失調症の罹患の可能性の試験方法、および試験試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
大うつ病性障害は、多くの精神的障害および身体的障害を引き起こすため、うつ病(Major depressive disorder、MDD)の罹患者は、社会生活をおくることが困難となる。MDDの生涯有病率は、約16または17%と推計されており、女性は、男性の約2倍の有病率であることが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
MDDの発症には、生物学的要因、遺伝的要因、環境的要因を含む複数の要因が関連しているが、決定的な診断方法は、未だ確立されていない。このため、MDDは、患者の症状に基づいて診断されている。しかしながら、症状に基づく診断は、大きなばらつきがあり、診断精度が低いという問題があった(非特許文献2)。このため、診断精度の高いうつ病を含む気分障害の罹患の可能性の試験方法が求められている。
【0004】
また、他の精神疾患である統合失調症(Schizophrenia、SCZ)においても、MDDと同様に、症状に基づく診断は、大きなばらつきがあり、診断精度が低いという問題があった(非特許文献3)。
【0005】
このため、診断精度の高い統合失調症の罹患の可能性の試験方法が求められている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Kessler RC. et.al. “The epidemiology of major depressive disorder: results from the National Comorbidity Survey Replication (NCS-R).” JAMA.2003 Jun 18;289(23):3095-105.
【非特許文献2】Mitchell AJ. et.al. “Clinical diagnosis of depression in primary care:a meta-analysis.” Lancet 2009;374(9690):609-19.
【非特許文献3】Bromet EJ et al. Diagnostic shifts during the decade following first admission for psychosis. Am J Psychiatry. 2011 Nov;168(11):1186-94.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、診断精度の高い気分障害の罹患の可能性の試験方法を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、診断精度の高い統合失調症の罹患の可能性の試験方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第1の目的を達成するために、本発明の気分障害の罹患可能性を試験する方法は、被検者の生体試料における下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、気分障害の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0010】
【表1A】
JP2016021719A1_000003t.gif

【0011】
【表1B】
JP2016021719A1_000004t.gif

【0012】
【表1C】
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【0013】
【表1D】
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【0014】
本発明の気分障害マーカーは、下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンを含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0015】
本発明の気分障害の試験試薬は、前記本発明の気分障害の罹患可能性を試験する方法に使用する試験試薬であって、下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0016】
本発明の気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法は、気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(a’)および(b’)の少なくとも一方の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする。
(a’)下記(a)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(b’)下記(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる

(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0017】
本発明の統合失調症の罹患可能性を試験する方法は、被検者の生体試料における下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、統合失調症の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)下記(1000)~(1867)および(1868)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(g)下記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)下記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)下記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0018】
【表2A】
JP2016021719A1_000007t.gif

【0019】
【表2B】
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【0020】
【表2C】
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【0021】
【表2D】
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【0022】
【表2E】
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【0023】
【表3】
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【0024】
【表4】
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【0025】
【表5】
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【0026】
本発明の統合失調症マーカーセットは、下記(f)および(h)のサイトのメチル化シトシン、ならびに下記(g)および(i)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも2つを含むことを特徴とする。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0027】
本発明の統合失調症の試験試薬は、前記本発明の試験方法に使用する試験試薬であって、下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0028】
本発明の統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法は、統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(c’)、(d’)または(e’)の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする。
(c’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(d’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる、ならびに
下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(e’)下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【0029】
本発明の新規統合失調症マーカーは、下記(f)のサイトのメチル化シトシンおよび下記(g)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
【発明の効果】
【0030】
本発明者らは、鋭意研究の結果、生体における少なくとも1つ以上の前記サイトのメチル化シトシン(気分障害マーカー)と気分障害の発生とが相関を示すことを見出し、本発明を確立するに至った。このため、本発明によれば、少なくとも1つ以上の前記気分障害マーカーを測定することによって、高い診断精度で被検者の気分障害の罹患可能性を試験できる。また、本発明において、気分障害の罹患により少なくとも1つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率が変化することから、例えば、少なくとも1つ以上の前記気分障害マーカーを用いたスクリーニングにより、気分障害の治療用候補物質を得ることもできる。このため、本発明は、臨床分野および生化学分野等において極めて有用である。
【0031】
また、本発明者らは、鋭意研究の結果、生体における少なくとも1つ以上の前記サイトのメチル化シトシン(統合失調症マーカー)と統合失調症の発生とが相関を示すことを見出し、本発明を確立するに至った。このため、本発明によれば、少なくとも1つ以上の前記統合失調症マーカーを測定することによって、高い診断精度で被検者の統合失調症の罹患可能性を試験できる。また、本発明において、統合失調症の罹患により少なくとも1つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率が変化することから、例えば、少なくとも1つ以上の前記統合失調症マーカーを用いたスクリーニングにより、統合失調症の治療用候補物質を得ることもできる。このため、本発明は、臨床分野および生化学分野等において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施例1における、MDDの罹患可能性のスコアを示すプロット図である。
【図2】図2は、実施例2における、SCZの罹患可能性のスコアを示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.気分障害マーカーおよびその用途
まず、本発明の気分障害の罹患の可能性の試験方法、気分障害マーカー、気分障害の試験試薬、気分障害の治療薬のスクリーニング方法等について説明する。

【0034】
1A.気分障害の罹患可能性を試験する方法
本発明の気分障害の罹患可能性を試験する方法(以下、「気分障害の試験方法」ともいう。)は、前述のように、被検者の生体試料における下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト(以下、「(a)および(b)のサイト」ともいう。)のシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、気分障害の罹患の可能性を試験する試験工程を含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0035】
本発明において、前記(a)および(b)のサイトは、例えば、前述の表1A~1Dを参照できる。

【0036】
本発明の気分障害の試験方法は、前記(a)および(b)のサイトのシトシンのメチル化率を測定することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の気分障害の試験方法は、前記少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を測定することで、例えば、従来の症状に基づく診断方法に対して、高い診断精度で被検者の気分障害の罹患の可能性を試験することができる。本発明において、診断精度とは、例えば、感度、特異度等があげられる。本発明において、「感度が高い」とは、例えば、罹患患者が陽性となる確率が高いことを意味し、「特異度が高い」は、罹患していない健常者が陰性となる確率が高いことを意味する。対象となる気分障害は、例えば、うつ病、双極性感情障害等があげられる。

【0037】
生体内において、メチル化シトシンは、例えば、シトシン-リン酸-グアニン(CpG)のシトシンがメチル化され、メチル化CpGとなることで生じる。このため、前記シトシンは、例えば、CpGということもでき、前記メチル化シトシンは、例えば、メチル化CpGということもでき、また、前記シトシンのメチル化は、例えば、CpGのメチル化ということもできる。

【0038】
本発明の気分障害の試験方法によれば、例えば、気分障害の発症の可能性、気分障害の発症の有無、気分障害の予後の状態等を評価できる。

【0039】
本発明において、前記(a)および(b)のサイトの由来は、特に制限されず、例えば、被検者の種類によって適宜設定できる。前記被検者は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。

【0040】
前記(a)のサイトのメチル化シトシンは、本発明者らが新たに同定した新規気分障害マーカーである。前記(a)のサイトのシトシンは、例えば、気分障害者から単離した生体試料における前記(a)のサイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(a)のサイトのシトシンのメチル化率より低い。

【0041】
前記(a)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(a)のサイトは、例えば、前記表1A~1Cの前記(a)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(a)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(a)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。

【0042】
前記(b)のサイトのメチル化シトシンは、本発明者らが新たに同定した新規気分障害マーカーである。前記(b)のサイトのシトシンは、例えば、気分障害者から単離した生体試料における前記(b)サイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(b)のサイトのシトシンのメチル化率より高い。

【0043】
前記(b)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(b)のサイトは、例えば、前記表1Dの前記(b)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(b)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(b)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。

【0044】
本発明において、前記(a)および(b)のサイトのシトシンのメチル化は、マイナスストランド側のシトシンのメチル化であってもよいし、プラスストランド側のシトシンのメチル化であってもよいし、両者であってもよい。また、前記(a)および(b)のサイトのメチル化シトシンは、マイナスストランド側のメチル化シトシンであってもよいし、プラスストランド側のメチル化シトシンであってもよいし、両者であってもよい。

【0045】
前記測定工程において、測定するサイトの個数は、その下限は、1つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。

【0046】
本発明の気分障害の試験方法において、前記生体試料の種類は、特に制限はされず、例えば、生体から分離した、体液、体液由来細胞、器官、組織または細胞等があげられる。前記体液は、例えば、血液があげられ、具体例として、例えば、全血、血清、血漿等があげられる。前記体液由来細胞は、例えば、血液由来細胞があげられ、具体的には、血球、白血球等の血球細胞があげられる。前記白血球は、例えば、好中球、好酸球、好塩基球等の顆粒球、リンパ球、単球等があげられる。前記リンパ球は、例えば、B細胞、顆粒球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞等があげられる。また、本発明の気分障害マーカーによれば、例えば、血液由来細胞のゲノムを使用して試験できる。このため、例えば、患者や医師の負担を軽減できることから、前記生体試料は、好ましくは、全血由来のゲノムであり、より好ましくは、血球、白血球、リンパ球由来ゲノムである。

【0047】
前記測定工程において、前記(a)および(b)のサイトのシトシンのメチル化部位は、特に制限されず、例えば、シトシンの5位、6位等があげられる。具体例として、前記メチル化シトシンは、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン等があげられる。測定する前記メチル化シトシンは、例えば、一種類の前記メチル化シトシンであってもよいし、二種類以上の前記メチル化シトシンであってもよい。

【0048】
前記測定工程において、前記(a)および(b)のサイトのシトシンのストランドは、特に制限されず、例えば、前記マイナスストランドでもよいし、前記プラスストランドでもよいし、両者であってもよい。

【0049】
前記メチル化シトシンの測定方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。具体例として、前記メチル化シトシンの測定方法は、例えば、亜硫酸水素塩を用いたバイサルファイトシーケンシング法、メチル化特異的PCR(MSP)法、COBRA法、メチル化感受性制限酵素を使用する方法、抗メチル化シトシン抗体を使用する方法、制限酵素ランドマークゲノムスキャニング(RLGS)法、下記表6に示した前処理工程および分析工程を組合せた方法等があげられる。

【0050】
【表6】
JP2016021719A1_000015t.gif

【0051】
本発明の気分障害の試験方法は、例えば、さらに、前記被検者の生体試料(以下、「被検生体試料」ともいう。)における前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、前記被検者の気分障害の罹患可能性を試験する試験工程を含む。前記基準値は、特に制限されず、例えば、健常者、気分障害患者および重症度ごと気分障害患者の前記シトシンのメチル化率等があげられる。また、予後の評価の場合、前記基準値は、例えば、同じ被検者の治療後(例えば、治療直後)の前記シトシンのメチル化率であってもよい。

【0052】
前記基準値は、例えば、前述のような、健常者および/または気分障害患者から単離した生体試料(以下、「基準生体試料」ともいう。)を用いて、得ることができる。また、予後の評価の場合、例えば、同じ被検者から治療後に単離した基準生体試料を用いてもよい。前記基準値は、例えば、前記被検者の被検生体試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。後者の場合、例えば、前記被検者の被検生体試料を測定する度に、基準値を得ることが不要となるため、好ましい。前記被検者の被検生体試料と前記基準生体試料は、例えば、同じ条件で採取し、同じ条件で前記シトシンのメチル化率の測定を行うことが好ましい。

【0053】
前記試験工程において、被検者の気分障害の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、前記気分障害患者から単離した生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における対応するシトシンのメチル化率より低い前記(a)のサイトの場合、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、および/または、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。

【0054】
また、前記気分障害患者から単離した生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における対応するシトシンのメチル化率より高い前記(b)のサイトの場合、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、および/または、前記気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。

【0055】
また、前記試験工程において、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率を、前記重症度ごとの気分障害患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と比較することで、気分障害の重症度を評価できる。具体的には、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、例えば、いずれかの重症度の前記基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。前記気分障害の重症度を評価する場合、前記サイトのシトシンのメチル化率は、(364)~(507)および(600)~(647)のサイトのシトシンのメチル化率を用いることが好ましい。

【0056】
前記試験工程において、前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンが、対応する下記の条件を満たす場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があると評価することが好ましい。
(x1)前記サイトが前記(a)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも(有意に)低い場合、または前記気分障害患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以下の場合
(y1)前記サイトが前記(b)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも(有意に)高い場合、または前記気分障害患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以上の場合

【0057】
本発明の気分障害の試験方法は、さらに、測定した前記サイトのシトシンのメチル化率から、前記気分障害の罹患の可能性のスコアを算出する算出工程を含み、前記試験工程は、前記算出工程における前記気分障害の罹患の可能性のスコアを、前記スコアの基準値と比較することにより、気分障害の罹患の可能性を試験する工程であってもよい。なお、以下に一例として、前記サイトのシトシンのメチル化率に基づき、スコアを算出し、試験する方法について説明するが、本発明は、これに限定されない。

【0058】
前記算出工程において、前記気分障害の罹患可能性のスコアの算出する方法は、特に制限されず、例えば、測定した1つの前記サイトのシトシンのメチル化率または2つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率のパターン(以下、「メチル化パターン」ともいう。)、および前記健常者と前記気分障害患者とを分離可能な数式から算出する方法、2つ以上の前記サイトのシトシンメチル化パターンと、前記健常者、前記気分障害患者および/または前記重症度ごとの気分障害患者の対応するシトシンのメチル化パターンとの類似性から算出する方法等があげられ、より診断精度を向上できることから、好ましくは、前者である。

【0059】
前者の場合、前記サイトのシトシンのメチル化率から前記罹患可能性のスコアを算出する方法は、特に制限されず、例えば、前記健常者と前記気分障害患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。また、前記健常者と前記重症度ごとの気分障害患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。

【0060】
前記判別式は、特に制限されず、例えば、重回帰分析、判別分析、主成分分析法、因子分析、機械学習、サポートベクトルマシン、単純ベイズ分類器(naive Bayes classifier)、ランダムフォレスト等における判別関数を使用することができる。

【0061】
前記判別関数の算出方法は、特に制限されず、例えば、前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率を用いて、算出することができる。具体例として、前記健常者と前記気分障害患者とを分離可能な判別式を算出する場合、例えば、前記健常者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率と、前記気分障害患者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率とを用いて、算出することができる。また、前記健常者と前記重症度ごとの気分障害患者とを分離可能な判別式を算出する場合、例えば、前記健常者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率と、前記重症度ごとの気分障害患者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率とを用いて、算出することができる。

【0062】
前記判別式は、例えば、予め測定した前記基準生体試料の前記サイトのメチル化率に基づき、算出された判別式を使用してもよいし、前記測定工程において、前記被検者の被検生体試料と同時に測定した前記基準生体試料の前記サイトのメチル化率に基づき、算出された判別式を使用してもよい。

【0063】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、使用する前記判別関数に基づき、適宜決定できる。具体例として、前記判別式として、前記判別分析法の判別関数を使用する場合、前記スコアの基準値は、例えば、0があげられる。

【0064】
前記試験工程において、被検者の気分障害の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、使用する前記判別式によって適宜決定できる。具体例として、前記健常者を0より大きい値に、前記気分障害患者を0より小さい値に分離可能な判別分析法の判別関数に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記スコアが、例えば、0より小さい場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記スコアが、例えば、0より大きい場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。なお、前記試験工程は、これに限定されず、例えば、前記健常者を0より小さい値に、前記気分障害患者を0より大きい値に分離可能な判別分析法の判別関数を使用してもよい。

【0065】
また、前記健常者と前記重症度ごとの気分障害患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとすることで、例えば、気分障害の重症度を評価できる。具体的として、前記健常者を0より大きい値に、前記重症度ごとの気分障害患者を0より小さい値に分離可能な判別分析法の判別関数に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記スコアが、例えば、0より小さい場合、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。なお、前記試験工程は、これに限定されず、例えば、前記健常者を0より小さい値に、前記重症度ごとの気分障害患者を0より大きい値に分離可能な判別分析法の判別関数を使用してもよい。

【0066】
後者の場合、前記サイトのシトシンのメチル化率から前記罹患可能性のスコアを算出する方法は、特に制限されず、例えば、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよいし、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよいし、これらの相関係数を比較した値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの気分障害患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。

【0067】
前記相関係数は、特に制限されず、例えば、ピアソンの積率相関係数、スピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数等を使用することができる。

【0068】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、使用する前記相関係数に基づき、適宜決定できる。

【0069】
前記試験工程において、被検者の気分障害の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、使用する前記相関係数によって適宜決定できる。具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記罹患可能性のスコアが、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。

【0070】
また、具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記類似度が、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。

【0071】
また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの気分障害患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアすることで、気分障害の重症度を評価できる。具体的には、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと、いずれかの重症度の前記基準生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を前記罹患可能性のスコアとする場合、前記類似度が、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。

【0072】
前記相関係数を比較した値(相対類似度)を前記罹患可能性のスコアとする場合、前記相対類似度は、例えば、下記数式1により算出してもよい。下記数式1において、Rs,phyは、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を示し、Rs,controlは前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を示す。

【0073】
【数1】
JP2016021719A1_000016t.gif

【0074】
前記相対類似度は、例えば、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンが、前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンおよび前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンのいずれに類似するかを示す値である。

【0075】
前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンは、特に制限されず、例えば、一人の気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンでもよいし、二人以上の気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンの平均メチル化パターンでもよい。また、前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンは、特に制限されず、例えば、一人の健常者の生体試料におけるメチル化パターンでもよいし、二人以上の健常者の生体試料におけるメチル化パターンの平均メチル化パターンでもよい。

【0076】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、0があげられる。

【0077】
前記試験工程において、被検者の気分障害の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されない。具体例として、前記スコアの基準値を0とした場合、前記相対類似度が0以上の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記相対類似度が0未満の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、気分障害に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。

【0078】
また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記気分障害患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数に代えて、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの気分障害患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を用い、前記相対類似度を算出することで、気分障害の重症度を評価できる。具体的には、前記スコアの基準値を0とした場合、前記相対類似度が0以上の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、重症度ごとの気分障害患者の基準生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。

【0079】
1B.気分障害マーカー
本発明の気分障害マーカーは、前述のように、下記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンを含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0080】
本発明の気分障害マーカーは、前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのメチル化シトシンを含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の気分障害マーカーによれば、例えば、被検者の生体試料における前記(a)および(b)のサイトのシトシンのメチル化率を測定することで、前記被検者の気分障害の罹患可能性を試験できる。なお、本発明の気分障害マーカーは、前記本発明の気分障害の試験方法の説明を援用できる。

【0081】
1C.気分障害の試験試薬
本発明の気分障害の試験試薬は、前述のように、前記本発明の気分障害の罹患可能性を試験する方法に使用する試験試薬であって、前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイトのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。
(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0082】
本発明の気分障害の試験試薬によれば、前記本発明の気分障害の罹患可能性の試験方法を簡便に行える。本発明の気分障害の試験試薬は、気分障害の罹患可能性の試験を前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのメチル化シトシンの測定に基づいて行うことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の気分障害の試験試薬は、例えば、前記(a)および(b)のサイトのメチル化シトシンが測定できればよく、前記(a)および(b)のサイトのメチル化シトシンの測定試薬(以下、「気分障害マーカーのメチル化測定試薬」ともいう。)の種類は、特に制限されない。なお、本発明の気分障害の試験試薬は、前記本発明の気分障害の試験方法等の説明を援用できる。

【0083】
前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬は、例えば、前述のメチル化の測定方法に応じて、適宜決定できる。前記メチル化の測定方法が、亜硫酸水素塩を用いたバイサルファイトシーケンシング法の場合、例えば、亜硝酸水素塩、バイサルファイト変換後の前記(a)および(b)のサイトのシトシンを含む塩基配列の増幅用プライマーおよびシークエンス用プライマー等があげられる。

【0084】
前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬は、それぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬が別個の容器に未混同で収納されている場合、本発明の気分障害の試験試薬は、気分障害の試験キットということもできる。また、前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬は、同一の容器に未混同で収納されている場合、本発明の気分障害の試験試薬は、アレイということもできる。

【0085】
本発明の気分障害の試験試薬において、前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬は、担体に固定化されていてもよい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬の固定化方法は、前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬の種類に応じ、適宜決定できる。

【0086】
本発明の気分障害の試験試薬は、前記気分障害マーカーのメチル化測定試薬の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、使用説明書等があげられる。

【0087】
1D.気分障害の診断方法および診断試薬
本発明の気分障害の診断方法は、被検者の生体試料における前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程を含むことを特徴とする。また、本発明の気分障害の診断試薬は、前記(a)および(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。なお、本発明の気分障害の診断方法および診断試薬は、前記本発明の気分障害の試験方法等の説明を援用できる。

【0088】
1E.気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法
本発明の気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法は、前述のように、気分障害の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(a’)および(b’)の少なくとも一方の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする。
(a’)下記(a)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を増加させる
(b’)下記(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を低下させる

(a)下記(1)~(506)および(507)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(b)下記(600)~(646)および(647)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0089】
本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、気分障害治療用候補物質のスクリーニングの指標に前記(a’)および(b’)の少なくとも一方の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法によれば、例えば、前記(a’)および(b’)の少なくとも一方の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択することで、効率良く気分障害の治療用候補物質を選択できる。なお、本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、前記本発明の気分障害の試験方法等の説明を援用できる。

【0090】
本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法において、前記被検物質は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、核酸等があげられる。

【0091】
本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法において、使用するサイトの個数は、その下限は、1つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。

【0092】
本発明の気分障害の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、例えば、下記(a’’)または(b’’)の誘導系に前記被検物質を共存させて、前記サイトのシトシンのメチル化または脱メチル化を誘導する誘導工程と、前記誘導系における前記サイトのシトシンのメチル化率を検出する検出工程と、前記サイトのシトシンのメチル化率が、対応する下記条件を満たす場合、前記被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程とを含んでもよい。
(a’’)前記(a)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトの脱メチル化する脱メチル化誘導系
(b’’)前記(b)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンをメチル化するメチル化誘導系

(x1’)前記サイトが前記(a)のサイトの場合、前記被検物質を共存させていないコントロールの脱メチル化誘導系の対応するシトシンのメチル化率より有意に高い場合
(y1’)前記サイトが前記(b)のサイトの場合、前記被検物質を共存させていないコントロールのメチル化誘導系の対応するシトシンのメチル化率より有意に低い場合

【0093】
前記脱メチル化誘導系は、特に制限されず、例えば、前記気分障害患者由来の組織、細胞等、DNA脱メチル化酵素活性化物質で処理した動物、組織、細胞等があげられる。前記メチル化誘導系は、特に制限されず、例えば、前記気分障害患者由来の組織、細胞等、DNAメチル化酵素活性化物質で処理した動物、組織、細胞等があげられる。

【0094】
前記検出工程において、検出対象の前記シトシンのメチル化は、例えば、一種類の前記メチル化シトシンを検出してもよいし、二種類以上の前記メチル化シトシンを検出してもよい。

【0095】
2.統合失調症マーカーおよびその用途
つぎに、本発明の統合失調症の罹患の可能性の試験方法、統合失調症マーカー、統合失調症の試験試薬、統合失調症の治療薬のスクリーニング方法等について説明する。

【0096】
2A.統合失調症の罹患可能性を試験する方法
本発明の統合失調症の罹患可能性を試験する方法(以下、「統合失調症の試験方法」ともいう。)は、被検者の生体試料における下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程、および
測定した前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、統合失調症の罹患の可能性(「危険度」ともいう。)を試験する試験工程を含むことを特徴とする。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)下記(1000)~(1867)および(1868)のGeneome Research Consortium human genome build 37/UCSC human genome 19(GRCh37/Hg19)の座標で特定されるサイト
(g)下記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)下記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)下記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0097】
本発明において、前記(f)~(h)および(i)のサイトは、例えば、前述の表2A~2E、3、4、および5を参照できる。

【0098】
本発明の統合失調症の試験方法は、前記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化率を測定することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の統合失調症の試験方法は、前記少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を測定することで、例えば、従来の症状に基づく診断方法に対して、高い診断精度で被検者の統合失調症の罹患の可能性を試験することができる。本発明において、診断精度とは、例えば、感度、特異度等があげられる。本発明において、「感度が高い」とは、例えば、罹患患者が陽性となる確率が高いことを意味し、「特異度が高い」は、罹患していない健常者が陰性となる確率が高いことを意味する。

【0099】
生体内において、メチル化シトシンは、例えば、シトシン-リン酸-グアニン(CpG)のシトシンがメチル化され、メチル化CpGとなることで生じる。このため、前記シトシンは、例えば、CpGということもでき、前記メチル化シトシンは、例えば、メチル化CpGということもでき、また、前記シトシンのメチル化は、例えば、CpGのメチル化ということもできる。

【0100】
本発明の統合失調症の試験方法によれば、例えば、統合失調症の発症の可能性、統合失調症の発症の有無、統合失調症の予後の状態等を評価できる。

【0101】
本発明において、前記(c)、(d)または(e)および前記(f)~(h)および(i)のサイトの由来は、特に制限されず、例えば、被検者の種類によって適宜設定できる。前記被検者は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。

【0102】
前記(f)のサイトのメチル化シトシンは、本発明者らが新たに同定した新規統合失調症マーカーである。前記(f)のサイトのシトシンは、例えば、統合失調症者から単離した生体試料における前記(f)のサイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(f)のサイトのシトシンのメチル化率より高い。

【0103】
前記(f)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(f)のサイトは、例えば、前記表2A~2Eの前記(f)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(f)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(f)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。前記(f)のサイトは、さらに、後述する(1869)~(5267)および(5268)のサイトを含んでもよい。前記(1869)~(5267)および(5268)のサイトは、例えば、後述する表9E~9Xのサイトがあげられる。

【0104】
前記(g)のサイトのメチル化シトシンは、本発明者らが新たに同定した新規統合失調症マーカーである。前記(g)のサイトのシトシンは、例えば、統合失調症者から単離した生体試料における前記(g)のサイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(g)のサイトのシトシンのメチル化率より低い。

【0105】
前記(g)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(g)のサイトは、例えば、前記表3の前記(g)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(g)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(g)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。前記(g)のサイトは、さらに、後述する(5531)~(5969)および(5970)のサイトを含んでもよい。前記(5531)~(5969)および(5970)のサイトは、例えば、後述する表10A~10Cのサイトがあげられる。

【0106】
前記(h)のサイトのシトシンは、例えば、統合失調症者から単離した生体試料における前記(h)のサイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(h)のサイトのシトシンのメチル化率より高い。

【0107】
前記(h)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(h)のサイトは、例えば、前記表4の前記(h)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(h)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(h)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。

【0108】
前記(i)のサイトのメチル化シトシンは、例えば、統合失調症者から単離した生体試料における前記(i)のサイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における前記(i)のサイトのシトシンのメチル化率より低い。

【0109】
前記(i)のサイトの具体例として、ヒト由来の前記(i)のサイトは、例えば、前記表5の前記(i)のサイトがあげられる。なお、本発明は、この一例には限定されず、前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(i)のサイトを使用してもよい。前記ヒトを除く非ヒト動物由来の前記(i)のサイトは、例えば、公知のデータベースに登録されている情報を参照し、前記ヒト由来の前記サイトを含む領域の塩基配列と前記データベースの塩基配列とを比較することで、同定することができる。

【0110】
本発明において、前記(f)~(h)および(i)のサイトのシトシンのメチル化は、それぞれマイナスストランド側のシトシンのメチル化であってもよいし、プラスストランド側のシトシンのメチル化であってもよいし、両者であってもよい。また、前記(f)~(h)および(i)のサイトのメチル化シトシンは、マイナスストランド側のメチル化シトシンであってもよいし、プラスストランド側のメチル化シトシンであってもよいし、両者であってもよい。

【0111】
前記測定工程において、測定するサイトの個数は、特に制限されず、前記(c)のサイトを使用する場合、その下限は、1つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。前記(d)のサイトを使用する場合、例えば、前記(f)および(g)のサイトから少なくとも1つ、ならびに前記(h)および(i)のサイトから少なくとも1つであればよく、その合計の個数は、特に制限されず、その下限は、2つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。前記(e)のサイトを使用する場合、その下限は、2つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。

【0112】
本発明の統合失調症の試験方法において、前記生体試料の種類は、特に制限はされず、例えば、生体から分離した、体液、体液由来細胞、器官、組織または細胞等があげられる。前記体液は、例えば、血液があげられ、具体例として、例えば、全血、血清、血漿等があげられる。前記体液由来細胞は、例えば、血液由来細胞があげられ、具体的には、血球、白血球等の血球細胞があげられる。前記白血球は、例えば、好中球、好酸球、好塩基球等の顆粒球、リンパ球、単球等があげられる。前記リンパ球は、例えば、B細胞、顆粒球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞等があげられる。また、本発明の統合失調症マーカーによれば、例えば、血液中の統合失調症マーカーによって試験できる。このため、例えば、患者や医師の負担を軽減できることから、前記生体試料は、全血が好ましく、より好ましくは、血球、白血球、リンパ球である。

【0113】
前記測定工程において、前記(f)~(h)および(i)のサイトのシトシンのメチル化部位は、特に制限されず、例えば、シトシンの5位、6位等があげられる。前記メチル化シトシンの具体例は、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン等があげられる。測定する前記メチル化シトシンは、例えば、一種類の前記メチル化シトシンであってもよいし、二種類以上の前記メチル化シトシンであってもよい。

【0114】
前記測定工程において、前記(f)~(h)および(i)のサイトのシトシンのストランドは、特に制限されず、例えば、前記マイナスストランドでもよいし、前記プラスストランドでもよいし、両者であってもよい。

【0115】
前記メチル化シトシンの測定方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。具体例として、前記メチル化シトシンの測定方法は、例えば、亜硫酸水素塩を用いたバイサルファイトシーケンシング法、メチル化特異的PCR(MSP)法、COBRA法、メチル化感受性制限酵素を使用する方法、抗メチル化シトシン抗体を使用する方法、制限酵素ランドマークゲノムスキャニング(RLGS)法、下記表6に示した前処理工程および分析工程を組合せた方法等があげられる。

【0116】
【表6】
JP2016021719A1_000017t.gif

【0117】
本発明の統合失調症の試験方法は、例えば、さらに、前記被検者の生体試料(以下、「被検生体試料」ともいう。)における前記シトシンのメチル化率を、基準値と比較することにより、前記被検者の統合失調症の罹患可能性を試験する試験工程を含む。前記基準値は、特に制限されず、例えば、健常者、統合失調症患者および重症度ごと統合失調症患者の前記シトシンのメチル化率等があげられる。また、予後の評価の場合、前記基準値は、例えば、同じ被検者の治療後(例えば、治療直後)の前記シトシンのメチル化率であってもよい。

【0118】
前記基準値は、例えば、前述のような、健常者および/または統合失調症患者から単離した生体試料(以下、「基準生体試料」ともいう。)を用いて、得ることができる。また、予後の評価の場合、例えば、同じ被検者から治療後に単離した基準生体試料を用いてもよい。前記基準値は、例えば、前記被検者の被検生体試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。後者の場合、例えば、前記被検者の被検生体試料を測定する度に、基準値を得ることが不要となるため、好ましい。前記被検者の被検生体試料と前記基準生体試料は、例えば、同じ条件で採取し、同じ条件で前記シトシンのメチル化の測定を行うことが好ましい。

【0119】
前記試験工程において、被検者の統合失調症の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、統合失調症患者から単離した生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における対応するシトシンのメチル化率より高い前記(f)および(h)のサイトの場合、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、および/または、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。

【0120】
また、統合失調症患者から単離した生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、健常者から単離した生体試料における対応するシトシンのメチル化率より低い前記(g)および(i)のサイトの場合、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、および/または、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に低い場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、および/または、前記統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも有意に高い場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。

【0121】
また、前記試験工程において、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率を、前記重症度ごとの統合失調症患者の基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と比較することで、統合失調症の重症度を評価できる。具体的には、前記被検者の被検生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、例えば、いずれかの重症度の前記基準生体試料における対応するシトシンのメチル化率と同じ場合(有意差がない場合)、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。

【0122】
前記試験工程において、前記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンが、対応する下記の条件を満たす場合、前記被検者は、統合失調症患者に罹患する可能性があると評価することが好ましい。
(x2)前記サイトが前記(f)または前記(h)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも(有意に)高い場合、または前記統合失調症患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以上の場合
(y2)前記サイトが前記(g)または前記(i)のサイトの場合、前記被検者の生体試料における前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率よりも(有意に)低い場合、または前記統合失調症患者の生体試料における対応するシトシンのメチル化率以下の場合

【0123】
本発明の統合失調症の試験方法は、さらに、測定した前記サイトのシトシンのメチル化率から、前記統合失調症の罹患の可能性のスコアを算出する算出工程を含み、前記試験工程は、前記算出工程における前記統合失調症の罹患の可能性のスコアを、前記スコアの基準値と比較することにより、統合失調症の罹患の可能性を試験する工程であってもよい。なお、以下に一例として、前記サイトのシトシンのメチル化率に基づき、スコアを算出し、試験する方法について説明するが、本発明は、これに限定されない。

【0124】
前記算出工程において、前記統合失調症の罹患可能性のスコアの算出する方法は、特に制限されず、例えば、測定した1つの前記サイトのシトシンのメチル化率または2つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率のパターン(以下、「メチル化パターン」ともいう。)、および前記健常者と前記統合失調症患者とを分離可能な数式から算出する方法、2つ以上の前記サイトのシトシンメチル化パターンと、前記健常者、前記統合失調症患者および/または前記重症度ごとの統合失調症患者の対応するシトシンのメチル化パターンとの類似性から算出する方法等があげられ、より診断精度を向上できることから、好ましくは、前者である。

【0125】
前者の場合、前記サイトのシトシンのメチル化率から前記罹患可能性のスコアを算出する方法は、特に制限されず、例えば、前記健常者と前記統合失調症患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。また、前記健常者と前記重症度ごとの統合失調症患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。

【0126】
前記判別式は、特に制限されず、例えば、重回帰分析、判別分析、主成分分析法、因子分析、機械学習、サポートベクトルマシン、単純ベイズ分類器(naive Bayes classifier)、ランダムフォレスト等における判別関数を使用することができる。

【0127】
前記判別関数の算出方法は、特に制限されず、例えば、前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率を用いて、算出することができる。具体例として、前記健常者と前記統合失調症患者とを分離可能な判別式を算出する場合、例えば、前記健常者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率と、前記統合失調症患者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率とを用いて、算出することができる。また、前記健常者と前記重症度ごとの統合失調症患者とを分離可能な判別式を算出する場合、例えば、前記健常者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率と、前記重症度ごとの統合失調症患者の前記基準生体試料における前記サイトのメチル化率とを用いて、算出することができる。

【0128】
前記判別式は、例えば、予め測定した前記基準生体試料の前記サイトのメチル化率に基づき、算出された判別式を使用してもよいし、前記測定工程において、前記被検者の被検生体試料と同時に測定した前記基準生体試料の前記サイトのメチル化率に基づき、算出した判別式を使用してもよい。

【0129】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、使用する前記判別関数に基づき、適宜決定できる。具体例として、前記判別式として、前記判別分析法の判別関数を使用する場合、前記スコアの基準値は、例えば、0があげられる。

【0130】
前記試験工程において、被検者の統合失調症の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、使用する前記判別式によって適宜決定できる。具体例として、前記健常者を0より大きい値に、前記統合失調症患者を0より小さい値に分離可能な判別分析法の判別関数に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記スコアが、例えば、0より小さい場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記スコアが、例えば、0より大きい場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。なお、前記試験工程は、これに限定されず、例えば、前記健常者を0より小さい値に、前記統合失調症患者を0より大きい値に分離可能な判別分析法の判別関数を使用してもよい。

【0131】
また、前記健常者と前記重症度ごとの統合失調症患者とを分離可能な判別式に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとすることで、例えば、統合失調症の重症度を評価できる。具体的として、前記健常者を0より大きい値に、前記重症度ごとの統合失調症患者を0より小さい値に分離可能な判別分析法の判別関数に基づき算出された値を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記スコアが、例えば、0より小さい場合、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。なお、前記試験工程は、これに限定されず、例えば、前記健常者を0より小さい値に、前記重症度ごとの統合失調症患者を0より大きい値に分離可能な判別分析法の判別関数を使用してもよい。

【0132】
後者の場合、前記サイトのシトシンのメチル化率から前記罹患可能性のスコアを算出する方法は、特に制限されず、例えば、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよいし、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよいし、これらの相関係数を比較した値を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの統合失調症患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアとしてもよい。

【0133】
前記相関係数は、特に制限されず、例えば、ピアソンの積率相関係数、スピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数等を使用することができる。

【0134】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、使用する前記相関係数に基づき、適宜決定できる。

【0135】
前記試験工程において、被検者の統合失調症の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、使用する前記相関係数によって適宜決定できる。具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記罹患可能性のスコアが、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。

【0136】
また、具体例として、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を、前記罹患可能性のスコアとする場合、前記類似度が、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。

【0137】
また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの統合失調症患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を、前記罹患可能性のスコアすることで、統合失調症の重症度を評価できる。具体的には、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと、いずれかの重症度の前記基準生体試料におけるメチル化パターンとのピアソンの積率相関係数を前記罹患可能性のスコアとする場合、前記類似度が、例えば、0.2以上の場合、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。

【0138】
前記相関係数を比較した値(相対類似度)を前記罹患可能性のスコアとする場合、前記相対類似度は、例えば、下記数式1により算出してもよい。下記数式1において、Rs,phyは、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を示し、Rs,controlは前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を示す。

【0139】
【数1】
JP2016021719A1_000018t.gif

【0140】
前記相対類似度は、例えば、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンが、前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンおよび前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンのいずれに類似するかを示す値である。

【0141】
前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンは、特に制限されず、例えば、一人の統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンでもよいし、二人以上の統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンの平均メチル化パターンでもよい。また、前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンは、特に制限されず、例えば、一人の健常者の生体試料におけるメチル化パターンでもよいし、二人以上の健常者の生体試料におけるメチル化パターンの平均メチル化パターンでもよい。

【0142】
前記試験工程において、前記スコアの基準値は、特に制限されず、例えば、0があげられる。

【0143】
前記試験工程において、被検者の統合失調症の罹患の可能性の評価方法は、特に制限されない。具体例として、前記スコアの基準値を0とした場合、前記相対類似度が0以上の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記相対類似度が0未満の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、前記健常者の生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、統合失調症に罹患する可能性がないまたは可能性が低いと評価できる。

【0144】
また、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記統合失調症患者の生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数に代えて、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンと前記重症度ごとの統合失調症患者の基準生体試料におけるメチル化パターンとの相関係数を用い、前記相対類似度を算出することで、統合失調症の重症度を評価できる。具体的には、前記スコアの基準値を0とした場合、前記相対類似度が0以上の場合、前記被検者の被検生体試料におけるメチル化パターンは、重症度ごとの統合失調症患者の基準生体試料におけるメチル化パターンと類似している、すなわち、前記被検者は、前記重症度の可能性があると評価できる。

【0145】
2B.統合失調症マーカーセット
本発明の統合失調症マーカーセットは、前述のように、下記(f)および(h)のサイトのメチル化シトシン、ならびに下記(g)および(i)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも2つを含むことを特徴とする。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0146】
本発明の統合失調症マーカーセットは、前記(f)および(h)のサイトのメチル化シトシン、ならびに前記(g)および(i)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも2つを含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の統合失調症マーカーセットによれば、例えば、被検者の生体試料における前記(f)~(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイトのシトシンのメチル化率を測定することで、前記被検者の統合失調症の罹患可能性を試験できる。なお、本発明の統合失調症マーカーセットは、前記本発明の統合失調症の試験方法の説明を援用できる。

【0147】
2C.統合失調症の試験試薬
本発明の統合失調症の試験試薬は、前述のように、前記本発明の統合失調症の罹患可能性を試験する方法に使用する試験試薬であって、下記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。
(c)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(d)下記(f)および(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト、ならびに下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイト
(e)下記(h)および(i)からなる群から選択された少なくとも2つのサイト

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0148】
本発明の統合失調症の試験試薬によれば、前記本発明の統合失調症の罹患可能性の試験方法を簡便に行える。本発明の統合失調症の試験試薬は、統合失調症の罹患可能性の試験を前記(c)、(d)または(e)のサイトのメチル化シトシンの測定に基づいて行うことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の統合失調症の試験試薬は、例えば、前記(c)、(d)または(e)のサイトのメチル化シトシンが測定できればよく、前記(c)、(d)または(e)のサイトのメチル化シトシンの測定試薬(以下、「統合失調症マーカーのメチル化測定試薬」ともいう。)の種類は、特に制限されない。なお、本発明の統合失調症の試験試薬は、前記本発明の統合失調症の試験方法等の説明を援用できる。

【0149】
前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬は、例えば、前述のメチル化の測定方法に応じて、適宜決定できる。前記メチル化の測定方法が、亜硫酸水素塩を用いたバイサルファイトシーケンシング法の場合、例えば、亜硝酸水素塩、バイサルファイト変換後の前記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンを含む塩基配列の増幅用プライマーおよびシークエンス用プライマー等があげられる。

【0150】
前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬は、それぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬が別個の容器に未混同で収納されている場合、本発明の統合失調症の試験試薬は、統合失調症の試験キットということもできる。また、前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬は、同一の容器に未混同で収納されている場合、本発明の統合失調症の試験試薬は、アレイということもできる。

【0151】
本発明の統合失調症の試験試薬において、前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬は、担体に固定化されていてもよい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬の固定化方法は、前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬の種類に応じ、適宜決定できる。

【0152】
本発明の統合失調症の試験試薬は、前記統合失調症マーカーのメチル化測定試薬の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、使用説明書等があげられる。

【0153】
2D.統合失調症の診断方法および診断試薬
本発明の統合失調症の診断方法は、被検者の生体試料における、前記(c)、(d)または(e)のサイトのシトシンのメチル化率を測定する測定工程を含むことを特徴とする。また、本発明の統合失調症の診断試薬は、前記(c)、(d)または(e)のサイトのメチル化シトシンの測定試薬を含むことを特徴とする。なお、本発明の統合失調症の診断方法および診断試薬は、前記本発明の統合失調症の試験方法等の説明を援用できる。

【0154】
2E.統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法
本発明の統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法は、前述のように、統合失調症の治療用候補物質のスクリーニング方法であって、被検物質から、下記(c’)、(d’)または(e’)の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程を含むことを特徴とする。
(c’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)増加させる
(d’)下記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)低下させる、および/または下記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)増加させる、ならびに
下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)増加させる
(e’)下記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)低下させる、および/または下記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンのメチル化率を(有意に)増加させる

(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(h)前記(6000)~(6059)および(6060)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(i)前記(6100)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0155】
本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、統合失調症治療用候補物質のスクリーニングの指標に前記(c’)、(d’)または(e’)の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法によれば、例えば、前記(c’)、(d’)または(e’)の条件を満たす被検物質を、前記治療用候補物質として選択することで、効率良く統合失調症の治療用候補物質を選択できる。なお、本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、前記本発明の統合失調症の試験方法等の説明を援用できる。

【0156】
本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法において、前記被検物質は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、タンパク質、核酸等があげられる。

【0157】
本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法において、前記(c’)の条件を使用する場合、使用するサイトの個数は、その下限は、1つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。前記(d’)の条件を使用する場合、使用するサイトの個数は、例えば、前記(f)および(g)のサイトから少なくとも1つ、ならびに前記(h)および(i)のサイトから少なくとも1つであればよく、その合計の個数は、特に制限されず、その下限は、2つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。前記(e’)の条件を使用する場合、使用するサイトの個数は、特に制限されず、例えば、その下限は、2つあればよく、好ましくは、4つであり、より好ましくは、10つであり、その上限は、特に制限されず、例えば、50つであり、好ましくは、30つであり、より好ましくは、20つであり、さらに好ましくは、17つであり、特に好ましくは、13つであり、その範囲が、例えば、1~50つであり、好ましくは、1~30つであり、より好ましくは、1~20つであり、さらに好ましくは、4~17つであり、特に好ましくは、10~13つである。

【0158】
本発明の統合失調症の治療薬候補物質のスクリーニング方法は、例えば、下記(c’’)、(d’’)または(e’’)の誘導系に前記被検物質を共存させて、前記サイトのシトシンのメチル化または脱メチル化を誘導する誘導工程と、前記誘導系における前記サイトのシトシンのメチル化率を検出する検出工程と、前記サイトのシトシンのメチル化率が、対応する下記条件を満たす場合、前記被検物質を、前記治療用候補物質として選択する選択工程とを含んでもよい。
(c’’)前記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンをメチル化するメチル化誘導系および/または前記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトの脱メチル化する脱メチル化誘導系
(d’’)前記(f)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンをメチル化するメチル化誘導系および/または前記(g)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトの脱メチル化する脱メチル化誘導系、ならびに
前記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンをメチル化するメチル化誘導系および/または前記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトの脱メチル化する脱メチル化誘導系
(e’’)前記(h)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトのシトシンをメチル化するメチル化誘導系および/または前記(i)からなる群から選択された少なくとも1つのサイトの脱メチル化する脱メチル化誘導系

(x2’)前記サイトが前記(f)または前記(h)のサイトの場合、前記被検物質を共存させていないコントロールのメチル化誘導系の対応するシトシンのメチル化率より有意に低い場合
(y2’)前記サイトが前記(g)または前記(i)のサイトの場合、前記被検物質を共存させていないコントロールの脱メチル化誘導系の対応するシトシンのメチル化率より有意に高い場合

【0159】
前記メチル化誘導系は、特に制限されず、例えば、前記統合失調症患者由来の組織、細胞等、DNAメチル化酵素活性化物質で処理した動物、組織、細胞等があげられる。前記脱メチル化誘導系は、特に制限されず、例えば、前記統合失調症患者由来の組織、細胞等、DNA脱メチル化酵素活性化物質で処理した動物、組織、細胞等があげられる。

【0160】
前記検出工程において、前記(c’’)、(d’’)および(e’’)の誘導系で使用するサイトの個数は、特に制限されず、例えば、前記(c’)、(d’)および(e’)の条件のサイトの個数において、「条件」を「誘導系」に、「(c’)」を「(c’’)」に、「(d’)」を「(d’’)」に、「(e’)」を「(e’’)」に読み替えて援用できる。

【0161】
前記検出工程において、検出対象の前記シトシンのメチル化は、例えば、一種類の前記メチル化シトシンを検出してもよいし、二種類以上の前記メチル化シトシンを検出してもよい。

【0162】
2F.新規統合失調症マーカー
本発明の新規統合失調症マーカーは、下記(f)のサイトのメチル化シトシンおよび下記(g)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする。
(f)前記(1000)~(1867)および(1868)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト
(g)前記(5500)~(5529)および(5530)のGRCh37/Hg19の座標で特定されるサイト

【0163】
本発明の新規統合失調症マーカーは、前記(f)のサイトのメチル化シトシンおよび前記(g)のサイトのメチル化シトシンからなる群から選択された少なくとも1つを含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の新規統合失調症マーカーは、例えば、前記本発明の統合失調症の試験方法等の説明を援用できる。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0165】
[実施例1]
(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンについて、うつ病(MDD)患者の前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者に対して低いことを確認し、また、被検者の前記気分障害マーカーに基づき、MDDの罹患の可能性を試験できることを確認した。
【実施例】
【0166】
(1)シトシンのメチル化率の測定
MDD患者20人および健常者(非MDD)19人から全血を採取した。なお、前記MDD患者のうち17人は、抗うつ薬ならびに気分安定薬を含む向精神薬の使用経験がなく、また、前記MDD患者のうち2人は、少なくとも前記採血前の6ヶ月間、向精神薬の治療薬を使用していない。
【実施例】
【0167】
前記全血から、常法によりゲノムDNAを抽出した。つぎに、EZ DNA methylation kit(Zymo Research社製)を用い、500ngの前記ゲノムDNAをバイサルファイト変換した。さらに、変換後の前記ゲノムDNAおよびInfinium(登録商標)HumanMethylation450 Beadschips(Illumina Inc.社製)を用い、添付のプロトコルに従って、前記(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンのβ値(メチル化率)を測定した。これらの結果を表7A~7Cに示す。
【実施例】
【0168】
【表7A】
JP2016021719A1_000019t.gif

【実施例】
【0169】
【表7B】
JP2016021719A1_000020t.gif
【実施例】
【0170】
【表7C】
JP2016021719A1_000021t.gif
【実施例】
【0171】
前記表7A~7Cに示すように、前記(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンにおいて、前記MDD患者のメチル化率は、前記健常者のメチル化率に対して、有意に低い値を示した。これらの結果から、前記(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンのメチル化とMDDの発症との間に相関があること、すなわち、全血における前記サイトのメチル化シトシンが、MDDの高い発症可能性を示すマーカー、およびMDDのマーカーとなることがわかった。
【実施例】
【0172】
(2)MDDの罹患の可能性の試験
下記表8に示した各サイトの組合せについて、前記MDD患者のメチル化率および前記健常者のメチル化率を用い、前記健常者と前記MDD患者とを分離可能な判別分析法の判別関数を算出した。つぎに、前記MDD患者および前記健常者を被検者とし、前記各サイトの組合せについて、前記MDD患者のメチル化率および前記健常者のメチル化率、ならびに前記判別関数を用い、前記MDDの罹患可能性のスコア(判別スコア)を算出した。そして、スコアの基準値を0とし、0より小さいスコアの被検者をMDDの可能性が高いと評価し、0より大きいスコアの被検者を健常者の可能性が高いと評価した。前記評価後、前記各サイトの組合せについて、感度および特異度を算出し、それぞれ、下記の感度および特異度の評価基準に基づき、評価した。なお、感度および特異度は、それぞれ70%以上であれば、実用上問題ないレベルである。これらの結果を表8に示す。
【実施例】
【0173】
(感度および特異度の評価基準)
70%未満 :C
70%以上80%未満 :B
80%以上90%未満 :A
90%以上100%未満 :AA
100% :AAA
【実施例】
【0174】
【表8】
JP2016021719A1_000022t.gif
【実施例】
【0175】
表8に示すように、いずれのサイトの組合せにおいても、感度および特異度が、共にB以上であり、優れた感度および特異度であった。
【実施例】
【0176】
また、(1)~(9)および(11)~(19)の18つのサイトを使用した際の前記健常者および前記MDD患者のMDDの罹患可能性のスコアのプロット図を図1に示す。
【実施例】
【0177】
図1において、縦軸は、MDDの罹患可能性のスコアを示し、黒丸(●)は、健常者を示し、白丸は、MDD患者を示し、破線は、スコアの基準値(MDDの罹患可能性のスコア=0)を示す。図1に示すように、前記MDD患者の全員が、前記基準値未満の値(陽性)となった。また、前記健常者の全員が、前記基準値以上の値(陰性)となった。すなわち、感度100%および特異度100%でMDDの罹患を判断できることがわかった。
【実施例】
【0178】
これらの結果から、前記気分障害マーカーに基づき、優れた診断精度で気分障害の罹患の可能性を判断できることがわかった。
【実施例】
【0179】
[実施例2]
(f)および(h)のサイトのシトシンについて、統合失調症(SCZ)患者の前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者に対して高いこと、および(g)および(i)のサイトのシトシンについて、SCZ患者の前記サイトのシトシンのメチル化率が、前記健常者に対して低いことを確認し、また、被検者の前記統合失調症マーカーのメチル化率に基づき、SCZの罹患の可能性を試験できることを確認した。
【実施例】
【0180】
(1)シトシンのメチル化率の測定
統合失調症(SCZ)患者23人および健常者(非SCZ)24人から全血を採取した。
【実施例】
【0181】
前記(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンに代えて、前記(f)~(h)および(i)のサイトのシトシンのメチル化率を測定した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、β値(メチル化率)を測定した。これらの結果を表9A~9X、10A~10C、11、および12に示す。
【実施例】
【0182】
【表9A】
JP2016021719A1_000023t.gif
【実施例】
【0183】
【表9B】
JP2016021719A1_000024t.gif
【実施例】
【0184】
【表9C】
JP2016021719A1_000025t.gif
【実施例】
【0185】
【表9D】
JP2016021719A1_000026t.gif
【実施例】
【0186】
【表9E】
JP2016021719A1_000027t.gif
【実施例】
【0187】
【表9F】
JP2016021719A1_000028t.gif
【実施例】
【0188】
【表9G】
JP2016021719A1_000029t.gif
【実施例】
【0189】
【表9H】
JP2016021719A1_000030t.gif
【実施例】
【0190】
【表9I】
JP2016021719A1_000031t.gif
【実施例】
【0191】
【表9J】
JP2016021719A1_000032t.gif
【実施例】
【0192】
【表9K】
JP2016021719A1_000033t.gif
【実施例】
【0193】
【表9L】
JP2016021719A1_000034t.gif
【実施例】
【0194】
【表9M】
JP2016021719A1_000035t.gif
【実施例】
【0195】
【表9N】
JP2016021719A1_000036t.gif
【実施例】
【0196】
【表9O】
JP2016021719A1_000037t.gif
【実施例】
【0197】
【表9P】
JP2016021719A1_000038t.gif
【実施例】
【0198】
【表9Q】
JP2016021719A1_000039t.gif
【実施例】
【0199】
【表9R】
JP2016021719A1_000040t.gif
【実施例】
【0200】
【表9S】
JP2016021719A1_000041t.gif
【実施例】
【0201】
【表9T】
JP2016021719A1_000042t.gif
【実施例】
【0202】
【表9U】
JP2016021719A1_000043t.gif
【実施例】
【0203】
【表9V】
JP2016021719A1_000044t.gif
【実施例】
【0204】
【表9W】
JP2016021719A1_000045t.gif
【実施例】
【0205】
【表9X】
JP2016021719A1_000046t.gif
【実施例】
【0206】
【表10A】
JP2016021719A1_000047t.gif
【実施例】
【0207】
【表10B】
JP2016021719A1_000048t.gif
【実施例】
【0208】
【表10C】
JP2016021719A1_000049t.gif
【実施例】
【0209】
【表11】
JP2016021719A1_000050t.gif
【実施例】
【0210】
【表12】
JP2016021719A1_000051t.gif
【実施例】
【0211】
前記表9A~9X、10A~10C、11、および12に示すように、前記(f)および(h)のサイトのシトシンにおいて、前記SCZ患者のメチル化率は、前記健常者のメチル化率に対して、有意に高い値を示し、前記(g)および(i)のサイトのシトシンにおいて、前記SCZ患者のメチル化率は、前記健常者のメチル化率に対して、有意に低い値を示した。これらの結果から、前記(f)および(h)のサイトのシトシンのメチル化、ならびに(g)および(i)のサイトのシトシンの脱メチル化とSCZの発症との間に相関があること、すなわち、全血における前記(f)および(h)のサイトのメチル化シトシン、ならびに前記(g)および(i)のサイトのシトシンのメチル化シトシンが、SCZの高い発症可能性を示すマーカー、およびSCZのマーカーとなることがわかった。
【実施例】
【0212】
(2)SCZの罹患の可能性の試験
下記表13に示した各サイトの組合せについて、前記SCZ患者のメチル化率および前記健常者のメチル化率を用い、前記健常者と前記SCZ患者とを分離可能な判別分析法の判別関数を算出した。つぎに、前記SCZ患者および前記健常者を被検者とし、前記各サイトの組合せについて、前記SCZ患者のメチル化率および前記健常者のメチル化率、ならびに前記判別関数を用い、前記SCZの罹患可能性のスコア(判別スコア)を算出した。そして、スコアの基準値を0とし、0より小さいスコアの被検者をSCZの可能性が高いと評価し、0より大きいスコアの被検者を健常者の可能性が高いと評価した。前記評価後、前記各サイトの組合せについて、感度および特異度を算出し、それぞれ、下記の感度および特異度の評価基準に基づき、評価した。なお、感度および特異度は、それぞれ70%以上であれば、実用上問題ないレベルである。これらの結果を表13に示す。
【実施例】
【0213】
(感度および特異度の評価基準)
70%未満 :C
70%以上80%未満 :B
80%以上90%未満 :A
90%以上100%未満 :AA
100% :AAA
【実施例】
【0214】
【表13】
JP2016021719A1_000052t.gif
【実施例】
【0215】
前記表13に示すように、いずれのサイトの組合せにおいても、感度および特異度が、共にAA以上であった。
【実施例】
【0216】
また、(1000)、(1001)、(6000)および(6001)の4つのサイトを使用した際の前記健常者および前記SCZ患者のSCZの罹患可能性のスコアのプロット図を図2に示す。
【実施例】
【0217】
図2において、縦軸は、SCZの罹患可能性のスコアを示し、黒丸(●)は、健常者を示し、白丸は、SCZ患者を示し、破線は、スコアの基準値(SCZの罹患可能性のスコア=0)を示す。図2に示すように、前記SCZ患者の全員が、前記基準値未満の値(陽性)となった。また、前記健常者の全員が、前記基準値以上の値(陰性)となった。すなわち、感度100%および特異度100%でSCZの罹患を判断できることがわかった。
【実施例】
【0218】
これらの結果から、前記統合失調症マーカーに基づき、優れた診断精度で統合失調症の罹患を判断できることがわかった。
【実施例】
【0219】
[実施例3]
(364)~(507)および(600)~(647)のサイトのシトシンについて、うつ病の重症度とメチル化率が相関することを確認した。
【実施例】
【0220】
MDD患者20人から全血を採取し、前記(1)~(362)および(363)のサイトのシトシンに代えて、前記(364)~(507)および(600)~(647)のサイトのシトシンのメチル化率を測定した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、β値(メチル化率)を測定した。
【実施例】
【0221】
また、前記MDD患者を、それぞれ、17項目版ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D、17-item Hamilton Rating Scale for Depression)に基づき評価した。前記評価にあたっては、下記参考文献1を参照した。そして、得られた評価値を、前記MDD患者および前記健常者のMDDの重症度とした。
参考文献1:Williams JB.、「A structured interview guide for the Hamilton Depression Rating Scale.」、Arch Gen Psychiatry.、1988年8月、第45巻、第8号、742-747頁
【実施例】
【0222】
つぎに、(364)~(507)および(600)~(647)のサイトについて、それぞれ、前記メチル化率と前記MDDの重症度とのスピアマンの順位相関係数(cor. spearman)を算出した。これらの結果を表14A、14Bおよび15に示す。
【実施例】
【0223】
【表14A】
JP2016021719A1_000053t.gif
【実施例】
【0224】
【表14B】
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【実施例】
【0225】
【表15】
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【実施例】
【0226】
前記表14Aおよび14Bに示すように、(364)~(506)および(507)のいずれのサイトにおいても、前記メチル化率と前記MDDの重症度とのスピアマンの順位相関係数は、-0.675以下であり、極めて強い負の相関を示した。すなわち、(364)~(506)および(507)のサイトのシトシンのメチル化率に基づき、MDDの重症度を判断できることがわった。また、前記表15に示すように、(600)~(646)および(647)のいずれのサイトにおいても、前記メチル化率と前記MDDの重症度とのスピアマンの順位相関係数は、0.675以上であり、極めて強い正の相関を示した。すなわち、(600)~(646)および(647)のサイトのシトシンのメチル化率に基づき、MDDの重症度を判断できることがわった。
【実施例】
【0227】
これらの結果から、前記気分障害マーカーに基づき、気分障害の重症度を判断できることがわかった。
【実施例】
【0228】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【実施例】
【0229】
この出願は、2014年8月7日に出願された日本出願特願2014-161176を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0230】
以上、説明したように、本発明によれば、少なくとも1つ以上の前記気分障害マーカーを測定することによって、高い診断精度で被検者の気分障害の罹患可能性を試験できる。また、本発明において、気分障害の罹患により少なくとも1つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率が変化することから、例えば、少なくとも1つ以上の前記気分障害マーカーを用いたスクリーニングにより、気分障害の治療用候補物質を得ることもできる。このため、本発明は、臨床分野および生化学分野等において極めて有用である。
【0231】
また、本発明によれば、少なくとも1つ以上の前記統合失調症マーカーを測定することによって、高い診断精度で被検者の統合失調症の罹患可能性を試験できる。また、本発明において、統合失調症の罹患により少なくとも1つ以上の前記サイトのシトシンのメチル化率が変化することから、例えば、少なくとも1つ以上の前記統合失調症マーカーを用いたスクリーニングにより、統合失調症の治療用候補物質を得ることもできる。このため、本発明は、臨床分野および生化学分野等において極めて有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1