TOP > 国内特許検索 > 脱分化脂肪細胞の製造方法 > 明細書

明細書 :脱分化脂肪細胞の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5991687号 (P5991687)
登録日 平成28年8月26日(2016.8.26)
発行日 平成28年9月14日(2016.9.14)
発明の名称または考案の名称 脱分化脂肪細胞の製造方法
国際特許分類 C12N   5/077       (2010.01)
C12N   5/0775      (2010.01)
FI C12N 5/077
C12N 5/0775
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2016-520701 (P2016-520701)
出願日 平成27年6月29日(2015.6.29)
国際出願番号 PCT/JP2015/068658
国際公開番号 WO2016/013352
国際公開日 平成28年1月28日(2016.1.28)
優先権出願番号 2014149676
優先日 平成26年7月23日(2014.7.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年4月6日(2016.4.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】本田 雅規
【氏名】鶴町 仁奈
【氏名】秋田 大輔
【氏名】外木 守雄
【氏名】加野 浩一郎
【氏名】松本 太郎
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】原 大樹
参考文献・文献 特開2010-124814(JP,A)
特開2013-017434(JP,A)
特開2000-157260(JP,A)
特開2013-223504(JP,A)
特表2014-509517(JP,A)
特開2011-116715(JP,A)
国際公開第2008/153179(WO,A1)
国際公開第2008/150001(WO,A1)
特表2014-511827(JP,A)
八木研他,成熟脂肪細胞由来の前駆脂肪細胞株DFAT-D1の樹立,肥満研究,2005年,Vol.11, No.3,p.92-94
鶴町仁奈他,ヒト頬脂肪体から脱分化脂肪細胞を獲得する酵素処理条件の検討,再生医療,2015年 2月,Vol.14, Suppl 2015,p.219,O-23-5
KAJITA Kazuo et al.,Small proliferative adipocytes: identification of proliferative cells expressing adipocyte markers,Endocrine Journal,2013年,Vol.60, No.8,p.931-939
調査した分野 C12N 1/00-7/08
C12M 1/00-3/10
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
次のAの工程及びBの工程を含む、脱分化脂肪細胞の製造方法。
A.脂肪組織を0.02~0.05w/v%のコラゲナーゼで処理することにより、成熟脂肪細胞を単離する工程
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
【請求項2】
次のA、BおよびCの工程を含む、間葉系細胞の製造方法。
A.脂肪組織を0.02~0.05w/v%のコラゲナーゼで処理することにより、成熟脂肪細胞を単離する工程
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
C.上記Bの工程によって製造された脱分化脂肪細胞を分化誘導する工程
【請求項3】
間葉系細胞が、骨芽細胞、筋芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、軟骨細胞または脂肪細胞から選ばれるいずれかである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
次のAの工程及びBの工程を含む、脱分化脂肪細胞の製造方法。
A.脂肪組織を0.02~0.05w/v%のコラゲナーゼで処理することにより、40μm未満の成熟脂肪細胞を単離する工程
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
【請求項5】
次のA、BおよびCの工程を含む、間葉系細胞の製造方法。
A.脂肪組織を0.02~0.05w/v%のコラゲナーゼで処理することにより、40μm未満の成熟脂肪細胞を単離する工程
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
C.上記Bの工程によって製造された脱分化脂肪細胞を分化誘導する工程
【請求項6】
間葉系細胞が、骨芽細胞、筋芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、軟骨細胞または脂肪細胞から選ばれるいずれかである請求項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脱分化脂肪細胞(Dedifferentiated fat cells;DFAT cells)の製造方法に関する。さらに詳しくは、脂肪組織を特定の濃度のコラゲナーゼで処理することにより成熟脂肪細胞を単離し、該成熟脂肪細胞より脱分化脂肪細胞を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪組織から成熟脂肪細胞を単離するために、脂肪組織をコラゲナーゼで処理して組織中の細胞外マトリックスから細胞を切り離し、成熟脂肪細胞のみを採取する方法が行われてきた。この方法において、一般的に0.1w/v%の濃度でコラゲナーゼが使用されている。
この0.1w/v%というコラゲナーゼの濃度は、Rodbellが1964年に報告したものであり(非特許文献1、2)、現在に至るまで、この濃度のままコラゲナーゼを使用するのが一般的である。しかし、コラゲナーゼはトリプシンと同様に細胞への障害作用があるため、濃度が高いほど細胞に与える傷害が大きくなるという問題がある。
【0003】
本発明者らは脂肪組織から成熟脂肪細胞を単離し、該成熟脂肪細胞より脱分化脂肪細胞を製造している。脱分化脂肪細胞は、単離した成熟脂肪細胞を天井培養法によって培養することで、成熟脂肪細胞が自発的に脱分化を開始することによって得られる多分化能を再獲得した細胞であるため、再生医療の細胞源として有用視されている。
このような脱分化脂肪細胞を大量に製造するには、細胞に極力障害を与えない条件で、脂肪組織より成熟脂肪細胞を効率的に単離することが重要となる。そこで、本発明者らは本発明において、脱分化脂肪細胞を大量に製造するための、脂肪組織の処理にあたり最適なコラゲナーゼ濃度を検討した。
【0004】
なお、脂肪組織のコラゲナーゼによる処理について、特許文献1において、ウシ科動物組織を0.25v/v%のコラゲナーゼ濃度で消化させたこと、また、ヒト、イヌ科動物等の脂肪組織が通常の濃度(0.02%または0.05%)のコラゲナーゼで全て消化されたことが開示されている。しかし、この文献は、脱分化脂肪細胞を大量に製造することを目的とする、本発明とは異なるものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2014-511827号公報
【0006】

【非特許文献1】LOCALIZATION OF LIPOPROTEIN LIPASE IN FAT CELLS OF RAT ADIPOSE TISSUE. RODBELL M J Biol Chem. 1964 Mar;239:753-5.
【非特許文献2】METABOLISM OF ISOLATED FAT CELLS. I. EFFECTS OF HORMONES ON GLUCOSE METABOLISM AND LIPOLYSIS. RODBELL M. J Biol Chem. 1964 Feb;239:375-80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脱分化脂肪細胞の効率的な製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、脂肪組織からの成熟脂肪細胞の単離において、従来、0.1w/v%の濃度で用いられてきたコラゲナーゼの濃度を0.01w/v%より高く、かつ、0.1w/v%より低い濃度にした場合に従来の濃度と比較して約3倍の高効率で成熟脂肪細胞が採取でき、脱分化脂肪細胞を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(6)の脱分化脂肪細胞の製造方法等に関する。
(1)次のAの工程を含む、脱分化脂肪細胞の製造方法。
A.脂肪組織を0.01w/v%より高く、かつ、0.1w/v%より低い濃度のコラゲナーゼで処理することにより、成熟脂肪細胞を単離する工程
(2)コラゲナーゼの濃度が0.02w/v%以上であり、かつ、0.05%以下である上記(1)に記載の製造方法。
(3)成熟脂肪細胞が60μm未満の大きさである上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)さらに次のBの工程を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の脱分化脂肪細胞の製造方法。
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
(5)上記(1)~(4)のいずれかの方法によって製造された脱分化脂肪細胞を分化誘導する工程を含む、間葉系細胞の製造方法
(6)間葉系細胞が、骨芽細胞、筋芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、軟骨細胞または脂肪細胞から選ばれるいずれかである上記(5)に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の提供により、単離する成熟脂肪細胞に損傷を与えることなく、高効率で成熟脂肪細胞を採取することが可能となる。また、処理に使用するコラゲナーゼの量を減らすことでコストを抑えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】脱分化脂肪細胞の各継代培養時における細胞数を示した図である(実施例1)。
【図2】脱分化脂肪細胞の各継代培養時における細胞数を示した図である(実施例1)。
【図3】脱分化脂肪細胞の各継代培養時における細胞数を示した図である(実施例1)。
【図4】採取された成熟脂肪細胞の細胞数を示した図である(実施例2)。
【図5】採取された成熟脂肪細胞を蛍光染色した結果を示した図である(実施例2)。
【図6】脱分化脂肪細胞の細胞数を示した図である(実施例2)。
【図7】アルカリフォスファターゼ活性を示した図である(実施例3)。
【図8】アリザリンレッドS染色の結果を示した図である(実施例3)。
【図9】カルシウム沈着量を示した図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「脱分化脂肪細胞の製造方法」は、次のAの工程を含む、脱分化脂肪細胞の製造方法であれば良く、脱分化脂肪細胞の効率的な製造にあたり有用なその他の工程を含んでいても良い。
A.脂肪組織を0.01w/v%より高く、かつ、0.1w/v%より低い濃度のコラゲナーゼで処理することにより、成熟脂肪細胞を単離する工程

【0013】
例えば、「成熟脂肪細胞を単離する工程」には、皮下や内臓等から得られた脂肪組織を0.01w/v%より高く、かつ、0.1w/v%より低い濃度のコラゲナーゼで処理することに加えて、このコラゲナーゼ処理によって得られた成熟脂肪細胞を含む酵素液を孔径100および150μmのメッシュでフィルトレーションし、成熟脂肪細胞である単胞性脂肪細胞のみからなる単一の画分として成熟脂肪細胞を単離すること等が挙げられる。

【0014】
コラゲナーゼの濃度は0.01w/v%より高く、かつ、0.1w/v%より低い濃度であれば良く、特に0.02w/v%以上であり、かつ、0.05%以下であることが好ましい。

【0015】
製造される成熟脂肪細胞は、60~100μm程度の通常の大きさであっても良いが、60μm未満であることが好ましく、特に40μm未満であることが好ましい。

【0016】
また、本発明の「脱分化脂肪細胞の製造方法」は、さらに、次のBの工程を含むものであっても良い。
B.上記Aの工程により単離された成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
この「脱分化脂肪細胞を取得する工程」には、単離された成熟脂肪細胞を天井培養法によって培養することが挙げられる。
これらの工程を行うにあたり、本発明者らの先願発明(特許第5055611号、特許第5055613号)を参照して行っても良い。

【0017】
本発明の「間葉系細胞の製造方法」は、「脱分化脂肪細胞の製造方法」によって得られた脱分化脂肪細胞を分化誘導する工程を含む、間葉系細胞の製造方法であれば良く、間葉系細胞の製造にあたり有用なその他の工程を含んでいても良い。
「間葉系細胞」には、骨芽細胞、筋芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、軟骨細胞または脂肪細胞等が挙げられる。脱分化脂肪細胞を分化誘導する工程では、分化誘導する各細胞に合わせて分化誘導に有用な剤、方法等の従来知られているいずれの方法も用いることができる。

【0018】
以下、実施例、試験例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例、比較例では、特に記載がない限り、次の試料を使用した。
1)酵素
コラゲナーゼ(TypeII;C6885-1G,SIGMA)を使用した。
2)脂肪組織
顎変形症の手術の際に得られたヒト頬脂肪体から脂肪組織を得た。
【実施例】
【0020】
〔実施例1〕
脱分化脂肪細胞の製造方法(1)
工程A.脂肪組織から成熟脂肪細胞を単離する工程
ヒト頬粘膜下に位置する頬脂肪体より採取した脂肪組織5gを、コラゲナーゼ(TypeII;SIGMA)添加のNaHCO含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;SIGMA)に入れ、コラゲナーゼ処理を行った。本発明において該培地におけるコラゲナーゼの濃度を0.02w/v%とし、比較として0.01w/v%、0.10w/v%または0.50w/v%の濃度としたものも作成した。
各濃度のコラゲナーゼ処理を行った後、ナイロンメッシュにて濾過し、細胞懸濁液を得た。得られた細胞懸濁液を1分間、700Gで遠心分離し、上層に分離される単胞性脂肪画分を新鮮な10%FBS添加DMEM培地に加え、1分間、700Gの遠心分離を3回繰り返すことで、単胞性脂肪細胞として成熟脂肪細胞を得た。
【実施例】
【0021】
工程B.成熟脂肪細胞より、脱分化脂肪細胞を取得する工程
工程Aによって得られた単胞性脂肪細胞を組織培養フラスコ(Falcon,3107)に移し、20%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM培地でフラスコ内を完全に満たし、37℃、5%CO、95%空気の気相に調節した炭酸ガス培養装置内にフラスコ底面が上となるように静置して7日間培養した。
培養4日後には大部分の細胞がフラスコ天井面にしっかりと接着し、大型の脂肪滴の周辺に種々の大きさの脂肪滴を有する多胞性脂肪細胞へと形態変化した。培養6日後には脂肪滴がさらに小さくなり、脂肪滴をまったく持たない線維芽細胞様の形態に変化する細胞が多数観察された。
培養7日後にフラスコ内の培地を20%FBS添加DMEM培地に交換し、細胞接着面が底面になるようにして炭酸ガス培養装置内で10日間培養を続けた。培地交換は4日毎に行った。脂肪滴を持たない細胞は活発に増殖し、培養10日後にはフラスコ内の細胞は線維芽細胞様の細胞のみとなり、コンフルエントに達した。
この線維芽細胞様の細胞は、活発な増殖能を有し、またDEX、INS、IBMX等の分化誘導剤により、脂肪滴を有する脂肪細胞に再分化する分化能を有することから、単胞性脂肪細胞由来の脱分化脂肪細胞として作出された。
【実施例】
【0022】
作出された脱分化脂肪細胞を1×10cells/mlとなるように20%FBS添加したDMEM培地に再浮遊させた。その後、コラーゲンタイプIIを塗布した組織培養用の培養フラスコ(Falcon,3001)中に播種し、37℃、5%CO、95%空気の気相に調節した炭酸ガス培養装置内に静置して培養した。なお、培地の交換は4日ごとに行った。培養8日後、本発明の脱分化脂肪細胞がコンフルエントに到達した段階で細胞数を数えた(図1~3、P1)。
その後、2回目の継代培養を行い、同様に細胞数を数えた(図1~3、P2)後、さらに3回目の継代培養を行い、同様に細胞数を数えた(図1~3、P3)。
【実施例】
【0023】
その結果、図1~3に示されるように、コラゲナーゼの濃度を0.02w/v%として脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞を用いた場合、コラゲナーゼの濃度を0.01w/v%、0.10w/v%、0.50w/v%とした場合と比べて、有意に大量の脱分化脂肪細胞が製造できることが確認された。図1~3以外にも同様の試験を複数回行ったが、いずれもコラゲナーゼの濃度を0.02w/v%とした場合に、有意に大量の脱分化脂肪細胞を製造することができ、同様の結果であった。
【実施例】
【0024】
〔実施例2〕
脱分化脂肪細胞の製造方法(2)
1.成熟脂肪細胞数の比較
実施例1と同様の方法に、ヒトの頬脂肪体より採取した脂肪組織をコラゲナーゼ処理した。各濃度のコラゲナーゼ処理を1時間行った後、100μmのセルストレーナー(BD FALCON)を用いて細胞外基質成分を除去した後、濾過および低速遠心分離を行い、成熟脂肪細胞分画を得た。この各コラゲナーゼ濃度の浮遊細胞分画200μl中に含まれる細胞数をコールターカウンター:Coulter Counter(登録商標) Multisizer3(Beckman Coulter,Miami,FL,USA)を用いて測定し、採取された成熟脂肪細胞数を比較した。この測定は各濃度それぞれ3回行った。
【実施例】
【0025】
2.成熟脂肪細胞分画の大きさによる分取
上記1において低速遠心分離後に単離した浮遊細胞分画を、40μmのセルストレーナー(BD FALCON)で濾過し、得られた細胞分画を40μm未満の細胞分画とした。また、同じく100μmのセルストレーナーで濾過後、さらに40μmのセルストレーナーで40μm未満の細胞分画を排除して得た細胞分画を40μm以上100μm未満の細胞分画とした。
【実施例】
【0026】
上記1、2により得られた成熟脂肪細胞数を図4に示した。図4に示されるように、60μm以上100μm未満の範囲の大きさの成熟脂肪細胞は、いずれのコラゲナーゼ濃度であっても同程度の数の成熟脂肪細胞が採取された。一方で、60μm未満の大きさの成熟脂肪細胞は、コラゲナーゼ濃度を0.02w/v%とした場合に、他の濃度と比較して有意に大量に採取できることが示された。さらに、40μm未満の大きさの成熟脂肪細胞は、コラゲナーゼ濃度を0.02w/v%とした場合に、他の濃度とした場合と比べて6倍以上採取できることが確認できた。
【実施例】
【0027】
3.蛍光染色
上記2.において分取した40μm未満の細胞分画または40μm以上100μm未満の細胞分画について、脂肪滴(トリグリセリド)に陽性を示すAdipored(Lonza,Walkerslive,MD,USA)および核に陽性を示すHoechst 33342(Sigma-Aldrich,5μg/ml)にて20分染色を行い、蛍光顕微鏡(KEYENCE)にて観察を行った。
その結果、図5に示されるように、40μm未満の細胞分画(図5、A)も40μm以上100μm未満の細胞分画(図5、B)のいずれもトリグリセリドおよび核が染色されたことから、成熟脂肪細胞であることが確認できた。
【実施例】
【0028】
4.脱分化脂肪細胞数の比較
40μm未満の細胞分画または40μm以上100μm未満の細胞分画の成熟脂肪細胞を1フラスコあたり、1×10個ずつ播種し、天井培養を行った。天井培養開始後6日目の細胞数を測定した後、その後7日目にフラスコを反転し、10日目、14日目、18日目の脱分化脂肪細胞の数を測定した。
その結果、図6に示されるように、40μm未満の成熟脂肪細胞の方が40μm以上100μm未満の成熟脂肪細胞に比較して、天井培養開始6日目から有意に多く、脱分化脂肪細胞へ脱分化することが確認できた。
【実施例】
【0029】
5.細胞表面抗原の確認
上記4.にて得られた40μm未満の成熟脂肪細胞または40μm以上100μm未満の成熟脂肪細胞から得られた脱分化脂肪細胞をそれぞれ継代培養し、1継代目の細胞を1×10個ずつ10cm dishに播種し、60%コンフルエントの細胞を回収した。これを5×10/tubeに分注した。
それぞれの脱分化脂肪細胞について、CD13(PE-CD13)、CD44(FITC-CD44)、CD45(FITC-CD45)、CD73(PE-CD73)、CD90(APC-CD90)、CD105(APC-CD105)、CD146(PE-CD146)、CD271(PE-CD271)、STRO-1(FITC-STRO1)(いずれもBD Biosciences,San Jose,CA,USA)で20分間反応させた。その後、反応後の細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメーターにて陽性細胞の割合を計測した。
その結果、表1に示されるように、40μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞は40μm以上100μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞に対して間葉系幹細胞のマーカーであるCD146陽性細胞の割合が約1.5~2倍多いことが確認できた。
【実施例】
【0030】
【表1】
JP0005991687B2_000002t.gif

【実施例】
【0031】
従って、これら1.~5.の結果より、40μm未満の成熟脂肪細胞を得ることにより、効率的に脱分化脂肪細胞が製造できることが示された。また、脂肪組織より40μm未満の成熟脂肪細胞を得るには、コラゲナーゼ濃度を0.02w/v%として採取することが特に好ましいことも確認できた。
【実施例】
【0032】
〔実施例3〕
間葉系細胞の製造方法
実施例2において得た40μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞と40μm以上100μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞を継代培養し、1継代目の細胞を1×10個ずつ12ウェルプレートに播種した、コンフルエントになったら、骨芽細胞誘導培地にて21日間誘導培養を行った。
分化誘導培地(DIFFERENTIATION-INDUCING CULTURE MEDIUM(図面においてIMまたはOsteogenic mediumと示す場合がある))の組成は増殖培地(Growth medium(図面においてGMと示す場合がある))[DMEM、10%(v/v) fetal bovine serum(FBS;13B103,Sigma-Aldrich),1% antibiotics]に100nM dexamethasone(Sigma-Aldrich),10mM b-glycerophosphate(Sigma-Aldrich),50mM L-ascorbic acid-2-phosphate(Sigma-Aldrich)を添加したものである。
この骨芽細胞誘導の評価は、アルカリフォスファターゼ活性、アリザリンレッドS染色、カルシウム定量試験にて行った。
【実施例】
【0033】
1.アルカリフォスファターゼ活性
誘導開始0、3、5、7、10、14日目の細胞を回収し、Pierce BCA protein Assay Reagent Kit(Thermo Scientific,Rockford,IL,USA)を用いてタンパク量を測定およびアルカリフォスファターゼ活性の測定を行った。
その結果、図7に示すように、40μm未満の細胞分画から得た脱分化脂肪細胞(図7、under 40μm IM)の方が、40μm以上100μm未満の細胞分画から得た脱分化脂肪細胞(図7、40-100μm IM)に比較して、誘導開始3、5、7日目に有意に高いアルカリフォスファターゼ活性を示した。
【実施例】
【0034】
2.アリザリンレッドS染色
誘導開始0、7、14、21日目の細胞を10%中性ホルマリン緩衝液で固定し、アリザリンレッドS染色液 (Wako)を用いて10分染色を行った。
その結果、図8に示すように、40μm未満の細胞分画から得た脱分化脂肪細胞(図8、under 40μm Osteogenic medium)は40μm以上100μm未満の細胞分画から得た脱分化脂肪細胞(図8、40-100μm Osteogenic medium)に比較して、誘導開始7日目に有意に強いアリザリンレッドS染色を示した。
【実施例】
【0035】
3.カルシウム定量試験
誘導開始0、7、14、21日目のカルシウム沈着量をCa-Eテストキットを用いて測定した。
その結果、図9に示すように、40μm未満の成熟脂肪細胞から得た脱分化脂肪細胞(図9、under 40μm IM)は、40μm以上100μm未満の成熟脂肪細胞から得た脱分化脂肪細胞(図9、40-100μm IM)に比較して、誘導開始7および21日目に有意に多いカルシウム沈着量を示した。なお、増殖培地にて培養した脱分化脂肪細胞(図9、under 40μm GMおよび40-100μm GM)は、いずれも誘導開始21日までカルシウムの沈着は見られなかった。
【実施例】
【0036】
従って、これら1.~3.の結果より、40μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞も、40μm以上100μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞もいずれも間葉系細胞に分化誘導できることが確認できた。そして、40μm未満の細胞分画から得られた脱分化脂肪細胞の方が、間葉系細胞の誘導に有用であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の提供により、単離する成熟脂肪細胞に損傷を与えることなく、効率的に成熟脂肪細胞を採取することが可能となる。本発明の提供により、大量に脱分化脂肪細胞を製造できるため、再生医療の細胞源として幅広く使用することも可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図5】
8