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明細書 :精神障害の検査方法および検査キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月2日(2017.2.2)
発明の名称または考案の名称 精神障害の検査方法および検査キット
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12Q 1/68 Z
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
G01N 33/50 P
C12N 15/00 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 15
出願番号 特願2015-501446 (P2015-501446)
国際出願番号 PCT/JP2014/053710
国際公開番号 WO2014/129437
国際出願日 平成26年2月18日(2014.2.18)
国際公開日 平成26年8月28日(2014.8.28)
優先権出願番号 2013029643
優先日 平成25年2月19日(2013.2.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】新田 淳美
【氏名】宇野 恭介
出願人 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B024
4B063
Fターム 2G045AA25
2G045DA13
4B024AA01
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA02
4B024DA06
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA08
4B024HA12
4B024HA19
4B063QA01
4B063QA11
4B063QA18
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4B063QQ42
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4B063QR80
4B063QS05
4B063QS10
4B063QS12
4B063QS13
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS28
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS38
4B063QS39
4B063QX01
要約 【課題】薬物依存症、統合失調症、鬱病などの精神障害を体外診断するための検査方法および該検査に使用する検査キットの提供。
【解決手段】被験体であるヒトまたはマウスなどで、Shati遺伝子のメチル化状態を調べることにより、被験体が薬物依存症、統合失調症、鬱病など精神関連疾患に罹患しているか否か、それら疾患の病状の進行状況などを知ることができる。従って、薬物依存症、統合失調症、鬱病など精神関連疾患の治療や治療薬開発に有用である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を検出する検出工程、
(2)被験体から採取した試料のメチル化状態を、精神障害の個体および非精神障害の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態と比較して、被験体が精神障害か否かを検査する検査工程、
を含むことを特徴とする精神障害の検査方法。
【請求項2】
精神障害が、薬物依存症、統合失調症、鬱病のいずれかにより生じたものである請求項1の精神障害の検査方法。
【請求項3】
試料が、哺乳動物から採取した生体試料であることを特徴とする請求項1または2に記載の精神障害の検査方法。
【請求項4】
生体試料が、げっ歯類またはヒトから採取した血液であることを特徴とする請求項3に記載の精神障害の検査方法。
【請求項5】
CpGアイランドは、配列番号1又は4に記載の塩基配列を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかの項に記載の精神障害の検査方法。
【請求項6】
被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態検出用の、配列番号2,3、配列番号6,7、又は配列番号8,9のプライマーセットを含むことを特徴とする精神障害の検査用キット。
【請求項7】
被験化合物の非存在下および存在下において、被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を検出する検出工程と、
精神障害の個体および非精神障害の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を指標として、被験化合物の非存在下における被験体から採取した試料のメチル化状態と被験化合物の存在下における被験体から採取した試料の前記メチル化状態とを比較して、被験化合物が精神障害の治療剤および/または予防剤となるか否かを評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法。
【請求項8】
精神障害が、薬物依存症、統合失調症、鬱病のいずれかにより生じたものである請求項7の精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法。
【請求項9】
試料が、動物から採取した生体試料であることを特徴とする請求項7または8に記載の精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法。
【請求項10】
CpGアイランドは、配列番号1又は4に記載の塩基配列を含むことを特徴とする請求項7~9のいずれかの項に記載の精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、精神障害関連タンパク質Shati遺伝子に係るCpGアイランドのメチル化状態に基づく精神障害の検査方法および検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
精神が障害された疾患の多く、例えば、統合失調症や鬱病などは、思春期などの人生の早い時期に発症し、患者は薬物や行動療法などと共に一生その疾患と共に生きていかなければならず、日常生活や職業選択に制限が生じている。
このような疾患は、少しでも早い時期から治療を開始することが出来れば、疾病の悪化を食い止め、さらには回復の可能性を見出すこともできる。
鬱病や統合失調症の検査方法として、例えば、BDNF遺伝子のエクソンI上流のCpGアイランドにおけるメチル化状態を指標とする検査方法が知られている(特許文献1)といった報告がなされている。
【0003】
一方、覚醒剤や麻薬による薬物依存症は大きな社会問題となっており、治療法の確立を目指して、依存形成に係わる機能分子の探索が行われた。
その結果、覚醒剤精神病モデルマウスの脳側坐核において高い発現量を示すShati (NCBIアクセスナンバーABA54615)が見出された(非特許文献1)。
また、Shatiの核酸の検出による精神障害の診断が提案されている(特許文献2)。
【0004】

【特許文献1】WO2012/017867
【特許文献2】WO2006/093034
【非特許文献1】J. Neurosci., 27, 7604-7615, 2007
【非特許文献2】PLoS One, 6(8), e23881, 2011.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エピジェネティクスは、遺伝子と環境の両方の要因によって初めて現れる症状を追究する分野であり、鬱病や統合失調症のような精神疾患との関連が注目されている (非特許文献2) 。
本発明は、薬物依存症、統合失調症、鬱病などの精神障害を体外診断するための検査方法および該検査に使用する検査キットを提供し、簡便にかつ早期に精神障害を発見する方法・ツール提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、エピジェネティクスの観点から、Shatiの発現制御機構の解明を行い、ShatiにおけるCpGアイランドのメチル化状態を指標とする精神障害の検査方法を確立し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の第1の発明は、以下の検出工程(1)および検査工程(2)を含むことを特徴とする精神障害の検査方法である。
(1)検出工程:被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態の検出。
(2)検査工程:被験体から採取した試料のメチル化状態を、精神障害の個体および非精神障害の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態と比較して、被験体が精神障害か否かの検査。
ここで、精神障害は、薬物依存症、統合失調症、鬱病のいずれかにより生じたものであり、試料が、哺乳動物から採取した生体試料である。
【0008】
本発明の第2の発明は、被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態検出用の特定のプライマーセットを含むことを特徴とする精神障害疾患用の検査キットである。
【0009】
本発明の第3の発明は、以下の検出工程(3)および評価工程(4)を含むことを特徴とする精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法である。
(3)被験化合物の非存在下および存在下において、被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を検出する検出工程。
(4)精神障害の個体および非精神障害の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を指標として、被験化合物の非存在下における被験体から採取した試料のメチル化状態と被験化合物の存在下における被験体から採取した試料の前記メチル化状態とを比較して、被験化合物が精神障害の治療剤および/または予防剤となるか否かを評価する評価工程。
ここで、精神障害は、薬物依存症、統合失調症、鬱病のいずれかにより生じたものであり、試料が、哺乳動物から採取した生体試料である。
【発明の効果】
【0010】
Shati遺伝子のメチル化を指標とすることで、精神障害の状態を客観的判断することができる。
また、Shati遺伝子のメチル化の指標とすることで、被験化合物が精神障害治療剤および/または予防剤となるか否かを評価することができる。
すなわち、臨床医等の主観的な判断によらずに精神障害治療剤および/または予防剤の評価ができるため、より正確な評価を行うことが可能となる。
Shati遺伝子のCpGアイランドにおける個別のCpGメチル化状態は、被検体が精神障害のときや、統合失調症の病態が進行すると、CpGのメチル化率が減少するので、その減少の程度を評価指標に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ターゲットマウスのShati DNA領域の概要である。
【図2】ゲル電気泳動によるマウスゲノムDNAの検出を示す図である。
【図3】ゲル電気泳動によるPCR産物の検出を示す図である。
【図4】シーケンススキャナによる配列解析の一例を示す図である。
【図5】血中におけるShatiのメチル化解析を示す図である。
【図6】側坐核におけるShatiのメチル化解析を示す図である。
【図7】ヒトのShati DNA領域の概要である。
【図8】ゲル電気泳動によるPCR産物の検出を示す図である。
【図9】ヒト血中におけるShatiメチル化解析を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の検出工程(1)または(3)において、被験体は、哺乳動物であれば、特に限定されないが、マウス、ラットなどげっ歯類;ウサギ;ネコ;イヌ;ヒトなどが挙げられる。好ましい、被験体は、げっ歯類またはヒトである。
【0013】
試料は、生体から採取された組織・血液であればよく、特に血液が好ましい。血液は、全血または血小板など特定の血液成分を使用すればよい。
【0014】
Shati遺伝子のCpGアイランドは、Shati遺伝子のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化DNAの割合を見ることができれば、特に限定されないが、例えば、mouseのShati CpG islandである配列番号1又はhumanのShati CpG islandである配列番号4の塩基配列を含むことが好ましい。
【0015】
Shati DNAのメチル化状態の検出に用いる方法は、メチル化DNAを濃縮する方法、バイサルファイト処理による塩基置換を利用する方法、メチル化感受性の制限酵素を利用する方法など、特に限定されないがバイサルファイト処理による塩基置換を利用する方法が好ましい。
バイサルファイト処理には、例えば、EZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)などの市販のキット品を用いればよい。
【0016】
メチル化状態の解析には、公知の方法を利用すればよいが、例えば、バイサルファイト処理後に、目的のDNA領域をPCR増幅し、クローニングしてシーケンス解析を行えばよい。
【0017】
目的のDNA領域をPCR増幅に使用するメチル化検出用および非メチル化検出用のプライマーの設計は、例えば、「Methyl Primer Express(アプライドバイオシステムズ)」などを使用すればよい。
具体的なプライマーとしては、以下のものが挙げられる。
【0018】
配列番号1を目的のDNA領域する場合にバイサルファイト処理後に下記のプライマーセットを用いる
<Shati BSP up>
配列:5’-gggatttaggagaagttaatgtg-3’(配列番号2)
<Shati BSP down>
配列:5’-aaaaacccacaatacatacaccc-3’(配列番号3)
配列番号4のhumanのShati CpG islandを目的のDNA領域する場合に、バイサルファイト処理後の配列番号5のDNAを解析領域として、下記のプライマーセットを用いるとよい。
Up15’-ttatgtgggatttttaaaga-3’(配列番号6)
Down25’-acctaacccccttcaattctac-3’(配列番号7)
又は
Up45’-ggggtggtgttgggagg-3’(配列番号8)
Down15’-aaaacccacaatacatacaccc-3’(配列番号9)
【0019】
上記のプライマーを使用したPCR増幅は、公知の方法で行えばよく、例えば、「Epi Taq HS(タカラバイオ)」および「カスタムプライマー(invitrogen)」を用いて「PCR Thermal Cycler Dice Gradient(タカラバイオ)」でPCRを行えばよい。さらにPCR産物をゲル電気泳動に供し、「QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン)」などを用いて目的のバンドからDNAを抽出すればよい。
【0020】
DNAのベクターへの組み込みと増幅は、公知の方法で行えばよく、例えば、「pGEM-T Easy Vector System(Promega)」を用いてDNAをベクターにライゲーションし、「E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ)に形質転換し、LB/Amp液体培地中などで培養すればよい。
さらに、ボイリング法に準じて形質転換E.coliからプラスミドDNAを抽出し、フェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿により目的とするDNAを精製すればよい。
【0021】
シークエンスの決定は、公知の方法で行えばよく、例えば、「BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kits (Applied Biosystems)」 を用い、T7またはSP6プライマーを用いてPCRを行い、Sequence Scanner(Applied Biosystems)によりシークエンス解析を行えばよい。
【0022】
本発明の検査工程(2)は、被験体から採取した試料のメチル化状態を、精神障害の個体および非精神障害の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態と比較して、被験体が精神障害か否かの検査を行う。
具体的には、例えば、被験体がヒトである場合、予め複数の精神障害の患者および健常者のメチル化状態のデータを収集しておき、当該平均データと比較することによって被験体が精神障害か否かを検査することができる。
さらには、例えば、複数種の精神障害毎の患者の平均データと比較し、いずれの精神障害に該当するか検査してもよい。
好ましくは、健常者、薬物依存患者、統合失調症患者、鬱病患者の平均データと比較することにより、被験体(対象者)がいずれに該当するかを検査する。
または、平均データでなくとも、多変量解析を用いることにより、いずれに該当するか検査することも可能である。
【0023】
本発明の評価工程(4)は、精神障害治療剤および/または予防剤の評価方法に関する。
具体的には、精神疾患の個体および非精神疾患の個体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を指標として、被験化合物非存在下の試料のメチル化状態と被験化合物存在下の試料のメチル化状態を比較し、被験化合物が精神障害治療剤および/または予防剤となるか否かを評価する工程である。
【0024】
ここで、「被験化合物」とは、精神障害治療剤および/または予防剤となるか否かの評価(精神障害治療剤および/または予防剤のスクリーニングも含む)の対象となりうる、あらゆる物質を意味する。
例えば、低分子化合物、核酸またはポリペプチド等が挙げられる。低分子化合物、核酸またはポリペプチド等は、天然物から抽出および精製されたものであってもよく、人工的に合成されたものであってもよい。
また、精製されたものに限らず、未精製のものでも被験化合物として使用することができる。
また、新規な物質に限らず、公知の物質またはその改良物であってもよい。例えば、既存の治療薬もしくは予防薬またはその誘導体につき、評価をすることも可能である。
【0025】
評価工程(4)に先立って、まず、検出工程(3)を行う。被験化合物の非存在下および存在下において、被験体から採取した試料のShati遺伝子のCpGアイランドにおけるメチル化状態を検出する。
試料の採取、およびメチル化状態の検出手段などについては、検出工程(1)と同様である。
【0026】
精神障害のマウスやヒトの個体および非精神障害のマウスやヒトの個体から採取した当該CpGアイランドにおけるメチル化状態を指標とし、このように検出した被験化合物の非存在下および存在下における試料のメチル化状態を比較する。
その結果から、被験化合物が精神障害治療剤および/または予防剤となるか否かを評価する。
具体的には、例えば、予め複数の精神障害のマウス・ヒトおよび健常のマウス・ヒトのメチル化状態のデータを収集しておき、当該平均データ等を指標とし、被験化合物の投与前後の試料のメチル化状態を比較する。
これにより、被験化合物が精神障害の治療剤および/または予防剤となるか否かを評価することができる。
好ましくは、精神障害治療剤および/または予防剤は、薬物依存症、統合失調症および鬱病の治療剤または予防剤である。
なお、平均データでなくとも、多変量解析により評価を行うことも可能である。
【0027】
上記のShati遺伝子のCpGアイランドを検出するためのプライマーセットは、精神障害の検査用キットとすることができる。
キットには、プライマーセットの他、各メチル化状態の検出手段に合わせた、各種試薬、酵素、緩衝液、反応器材および/または説明書等が含まれてもよい。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明を参考例、実施例で説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
<目的領域の決定とプライマー設計>
(1)マウスShati DNAの塩基配列は、「Ensemble Genome Browser(http://asia.ensembl.org/index.html)」の配列データを用いた。
【0030】
(2)バイサルファイト処理最適化のため、マウスShati DNA領域を切断しない制限酵素を「ApE (http://biologylabs.utah.edu/jorgensen/wayned/ape/)」 を用いて検索した。
その結果、DraI(タカラバイオ)を見出した。
DraIの(切断配列は、「TTT/AAA」である。
【0031】
(3)バイサルファイト処理を受けたDNAに対するプライマーの設計を行った。設計には、「Methyl Primer Express(アプライドバイオシステムズ)」を使用した。設計したプライマー以下のとおりである。
【0032】
<Shati BSP up>
配列:5’-GGGATTTAGGAGAAGTTAATGTG-3’
位置:-562~-539
Tm値:53~55℃
【0033】
<Shati BSP down>
配列:5’-AAAAACCCACAATACATACACCC-3’
位置:+854~+877
Tm値:53~55℃
【0034】
(4)CpGアイランドの定義は、以下のとおりとした。
・%GC>50
・長さ:300~2000bp
・Observed/Expected CpG>0.6
この条件の解析の結果、プロモーターにあたる-648からイントロンIである+1342までがCpGアイランドとなった(図1)。
【0035】
<モデルマウスの作成とDNA採取>
C57BL/6Jマウス(雄、8週齢、日本SLC)に0.9%食塩液に溶解し100μg/mLとしたメタンフェタミンを10mL/kgで、一日一回、6日間皮下投与した。
対象群に対しては、0.9%食塩液(10mL/kg) を同様に投与した。
6日目の投与から2時間後にネンブタール 10mL/kgを腹腔内投与で麻酔を施し、心臓から血液を採取してヘパリンと混合して氷中で保存した。
この全血から「Gentra Puregene Blood Kit(キアゲン)」を用いてDNAを抽出した。
全血から精製したマウスのDNAは、ゲル電気泳動によってフラッシュされ、紫外線によって検出された(図2)。
また、側坐核の組織サンプルは、同マウスの全脳を摘出後、ブレインマトリックス(ニューロサイエンス社)を用いて分取し、「REDExtract-N-Amp Tissue PCR Kit(シグマ)」を用いてDNAを抽出した。
なお、これらの実験は、富山大学動物実験取扱規則に沿って行った。
【0036】
<目的配列の増幅>
(1)フェノール/クロロホルム抽出
マウス全血200μLに、トリス・フェノール/クロロホルム混合液200μLを加えて転倒混和し、4℃、20000gで5分間遠心した。上澄みを新たなチューブに採取し、クロロホルムを等量加えて撹拌混合し、再度4℃、20000gで5分間遠心し、上澄みを新たなチューブを採取した。
【0037】
(2)エタノール沈殿
上記の上澄み液200μLに、イソプロパノール200μL、3M酢酸ナトリウム20μLを加えて転倒混和し、4℃で30分間、または-20℃で10分間以上インキュベートした後、4℃、20000gで20分間遠心した。
上澄みをデカンテーションで捨て、70%エタノールを1mL加えて撹拌混合し、4℃、20000gで5分間遠心した。
上澄みをデカンテーションで捨て、逆さのままキムワイプ上で風乾した。
沈殿を長期保存の場合には、トリス/EDTA溶液(TE Buffer)にて溶解し、シークエンスを行う場合は蒸留水で溶解した。
【0038】
(3)目的配列の増幅
バイサルファイト処理の最適化のため、DraI(タカラバイオ)でDNAを分割し、フェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿によりDNAを精製した。精製DNAを「EZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)」を用いてバイサルファイト処理を行い、「Epi Taq HS(タカラバイオ)」および「カスタムプライマー(invitrogen)」を用いて「PCR Thermal Cycler Dice Gradient(タカラバイオ)」でPCRを行った。
反応条件は、以下のとおり。
・94℃で5分
・(98℃で30秒、56.8℃で1分、72℃で2分)を35サイクル
・72℃で7分
PCR産物を1.5%TBE(トリス・ホウ酸・EDTA)緩衝液ゲルで泳動した。PCR産物が検出され、ターゲットを絞ったPCR産物の長さは1438bpであった(図3)。
「QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン)」を用いて目的のバンドからDNAを抽出した。
【0039】
<DNAのベクターへの組み込みと増幅>
(1)「pGEM-T Easy Vector System(Promega)」を用いてDNAをベクターにライゲーションし、「E.coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ)」に形質転換した。
LB/Ampプレートに塗布して37℃で一晩インキュベートした後、コロニーをピックアップし、LB/Amp液体培地中で培養した。ボイリング法に準じて形質転換E.coliからプラスミドDNAを抽出し、フェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。
【0040】
<シークエンス>
「BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kits (Applied Biosystems)」を用い、T7またはSP6プライマーを用いてPCRを行った。
反応条件は、以下のとおり。
・96℃で1分
・(96℃で10秒、50℃で5秒、60℃で4分)を25サイクル
PCR産物はエタノール沈殿を行った後、HiDi-ホルムアミドに溶解し、3130ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems)によりシークエンス反応を行った。
Sequence Scanner(Applied Biosystems)によりシークエンスを解析し、メチル化シトシンと非メチル化シトシン(チミン)を判別した(図4)。
メチル化パターンは、生理食塩水投与群(図4下)とメタンフェタミン投与群(図4上)で差が認められた。
【0041】
<結果>
転写開始点から-533~-159の領域のCpGメチル化を検索した。多くの位置でCpGのメチル化が観察された。食塩液群とメタンフェタミン群での有意な差は、2番目のCpG(-525)でのみあった。
また、食塩液群(SALINE)の方がメタンフェタミン投与群(MAP)より高いメチル化割合を示した(図5、図6)。
なお、メチル化を100%、非メチル化を0%と示した。
【実施例2】
【0042】
マウスの場合と同様にヒトでの目的領域の決定とプライマー設計を行い、ヒトのDNAの配列番号4からなる塩基配列を目的領域して、バイサイルファイト処理し配列番号5からなる塩基配列を解析領域とした。
この結果、プロモーターにあたる-1726からイントロン2である+2010までがCpGアイランドとなった(図7)。
【0043】
プライマー配列番号6,7又は8,9の組み合せにてPCRを行った(図8)。
さらにマウスの場合と同様にメチル化パターンの解析した結果を図9に示す。
Schizophreniaの方が明らかに Normolの被検体よりもほぼ全てのメチル化可能部位においてメチル化が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
被験体であるヒトまたはマウスなど動物の血液で、Shati遺伝子のメチル化状態を調べることにより、被験体が薬物依存症、統合失調症、鬱病など精神関連疾患に罹患しているか否か、それら疾患の病状の進行状況などを知ることができる。
従って、薬物依存症、統合失調症、鬱病など精神関連疾患の治療や治療薬開発に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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