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明細書 :金属製研磨パッドおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 金属製研磨パッドおよびその製造方法
国際特許分類 H01L  21/304       (2006.01)
FI H01L 21/304 622F
H01L 21/304 622D
H01L 21/304 622W
国際予備審査の請求
全頁数 28
出願番号 特願2015-527226 (P2015-527226)
国際出願番号 PCT/JP2014/066169
国際公開番号 WO2015/008572
国際出願日 平成26年6月18日(2014.6.18)
国際公開日 平成27年1月22日(2015.1.22)
優先権出願番号 2013150678
優先日 平成25年7月19日(2013.7.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】江龍 修
【氏名】山口 英二
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5F057
Fターム 5F057AA14
5F057AA24
5F057BA11
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB12
5F057BB40
5F057CA11
5F057DA40
5F057EA03
5F057EA22
5F057EB02
5F057EB05
5F057EB30
要約 被加工面における触媒と接触または極近接する領域を増大できる金属製研磨パッドを提供する。被加工物(6)の被加工面(6a)を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工するための金属製研磨パッド(2)を、遷移金属触媒からなる金属繊維の圧縮成型体で構成する。この圧縮成型体は、金属繊維から構成されており、空隙を有しているので、研磨パッド表面(2a)に存在する金属繊維は弾性変形が可能である。このため、研磨パッド表面(2a)と被加工物(6)の被加工面(6a)とが押し合わされると、被加工面(6a)に存在する微細な凹凸に対応して、金属繊維が変形することで、研磨パッド表面(2a)と被加工面(6a)との間に生じる隙間を小さくできる。これにより、被加工面(6a)における触媒と接触もしくは極近接する領域を増大させることができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
被加工物(6)の被加工面(6a)を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工するための金属製研磨パッド(2)であって、遷移金属触媒からなる金属繊維(21、22、23)の圧縮成型体で構成され、所定の空隙率を有することを特徴とする金属製研磨パッド。
【請求項2】
前記金属繊維(21、22、23)は、直径が1μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属製研磨パッド。
【請求項3】
前記空隙率は、10%以上90%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製研磨パッド。
【請求項4】
前記圧縮成型体は、圧縮回復率が90%以上100%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の金属製研磨パッド。
【請求項5】
前記金属繊維(21、22、23)は、チタン、ニッケル、銅、鉄、クロム、コバルト、白金の中から選択された1種の金属または2種類以上の組み合わせからなる合金で構成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の金属製研磨パッド。
【請求項6】
前記圧縮成型体は、第1金属繊維(22)と、前記第1金属繊維とは異なる材質の第2金属繊維(23)とを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の金属製研磨パッド。
【請求項7】
前記圧縮成型体は、研磨面となる一面(2a)と、それとは反対側の他面(2b)とを有し、
前記他面にゴム弾性を有するクッションシート(13)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の金属製研磨パッド。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の前記金属製研磨パッドの製造方法であって、
遷移金属触媒からなる金属繊維をホットプレスして一次成型体を成型する一次成型工程(S2)と、
前記一次成型体を常温で静水圧プレスして二次成型体を成型する二次成型工程(S3)とを有し、
前記一次成型工程によって、前記金属繊維同士を焼結により固定させ、
前記二次成型工程では、静水圧で変形しない型材(11)により前記一次成型体の一面(10a)を覆うとともに、静水圧で変形可能な被覆材(12)により前記一次成型体の残りの面(10b)を覆った状態で前記静水圧プレスすることを特徴とする金属製研磨パッドの製造方法。
【請求項9】
難加工材料からなる被加工物(6)の被加工面(6a)を平滑化加工する触媒支援型の化学加工方法において、
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の前記金属製研磨パッド(2)の研磨面(2a)と前記被加工面(6a)とを押し合わせ、前記被加工面(6a)と前記研磨面(2a)との間に酸化剤を供給しながら、前記被加工物(6)と前記金属製研磨パッド(2)とを相対移動させることを特徴する触媒支援型の化学加工方法。
【請求項10】
前記酸化剤とともに、補助研磨粒子を供給することを特徴とする請求項9に記載の触媒支援型の化学加工方法。
【請求項11】
前記補助研磨粒子として、前記被加工物よりも軟らかいものを用いることを特徴とする請求項10に記載の触媒支援型の化学加工方法。
【請求項12】
前記補助研磨粒子は、前記被加工物の表面改質層よりも硬いことを特徴とする請求項11に記載の触媒支援型の化学加工方法。
【請求項13】
前記難加工材料は、SiC、GaN、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビーのいずれか1つであることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1つに記載の触媒支援型の化学加工方法。
【請求項14】
前記酸化剤として、純水、過酸化水素水、シュウ酸、フッ化水素酸の中から選択された1種の溶液または2種類以上の組み合わせから成る混合溶液を用いることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の触媒支援型の化学加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、難加工材料の表面を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工するための金属製研磨パッドおよびその製造方法や、その金属製研磨パッドを用いた触媒支援型の化学加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題やエネルギー問題の観点から、自動車や鉄道車両、産業機器、家電製品などの電力制御における省エネルギーを促進するために、パワーエレクトロニクス機器の高性能化が要求されている。従来、これらのパワーエレクトロニクス機器にはパワー半導体材料としてシリコン(以下、Siと略記する。)が使われてきたが、更なる省エネルギーを実現する方法として、シリコンカーバイト(以下、SiCと略記する。)であるとか、窒化ガリウム(以下、GaNと略記する。)、ダイヤモンドなどの新しいパワー半導体材料が提案されはじめている。これらの新しいパワー半導体材料は、Siと比較して高硬度で且つ脆い材料であり難加工材料であるといった課題があった。
【0003】
これらの難加工材料の表面を効率的に平滑化加工する先行技術として、特許文献1、2に記載された触媒支援型の化学加工方法がある。
【0004】
特許文献1に記載の方法は、酸化剤の溶液中に被加工物を配し、遷移金属からなる触媒を被加工物の被加工面に接触もしくは極近接させ、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種と被加工物の表面原子との化学反応で生成した化合物を除去あるいは溶出させることによって被加工物を加工する方法である。特許文献1には、この方法の実施例として、表面の全部または一部が遷移金属で構成された定盤を用いることが記載されている。
【0005】
特許文献2に記載の方法は、フッ化水素酸等のハロゲンを含む分子が溶けた処理液中に、GaNやSiC等の被加工物を配し、モリブデンまたはモリブデン化合物からなる触媒を被加工物の被加工面に接触または極近接させながら該触媒と被加工物とを相対移動させて被加工物の被加工面を加工する方法である。特許文献2には、この方法の実施例として、モリブデンまたはモリブデン化合物からなる触媒定盤を用いることが記載されている。
【0006】
なお、特許文献1、2に記載の方法は、どちらも、砥粒を用いずに、酸化剤から発生した活性種のみで研磨する方法である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4873694号公報(段落0031、図7)
【特許文献2】特開2008-81389号公報(段落0057、図25)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した触媒支援型の化学加工方法においては、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種であるヒドロキシルラジカルやハロゲンラジカルが、発生から消滅までに100万分の1秒程度しか存在できないので、被加工物の被加工面が触媒から離れていると、活性種による酸化作用が得られない。このため、触媒を被加工物の被加工面に接触または極近接させる必要がある。
【0009】
しかし、上記した従来技術のように、研磨定盤を触媒金属で構成した場合、下記の理由により、被加工物の被加工面において、触媒と接触または極近接する領域が少ないという問題が生じる。
【0010】
すなわち、研磨定盤は金属の緻密なバルク体であるため、剛性が高くなってしまう。一方、被加工物の被加工面には、通常、うねりや数十μmオーダーの微細な凹凸(粗さ)が存在する。このため、被加工物の被加工面と定盤表面を押し合わせたとき、被加工面に存在する凸部の頂点のみが定盤表面に接触し、被加工物の被加工面と定盤表面との間に微細な隙間が生じる。したがって、研磨定盤を触媒金属で構成した場合、被加工物の被加工面における触媒と接触または極近接する領域が少なくなってしまう。
【0011】
この結果、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種を被加工物の被加工面に効率よく作用させることができず、被加工物の平滑化加工の際の加工速度が小さくなり、加工時間が長くなってしまう。
【0012】
本発明は、上記点に鑑みて、被加工面における触媒と接触または極近接する領域を増大できる金属製研磨パッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その金属製研磨パッドを用いた触媒支援型の化学加工方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、被加工物(6)の被加工面(6a)を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工するための金属製研磨パッド(2)であって、遷移金属触媒からなる金属繊維(21、22、23)の圧縮成型体で構成され、所定の空隙率を有することを特徴としている。
【0014】
本発明の研磨パッドは、金属繊維から構成されており、空隙を有しているので、研磨パッド表面に存在する金属繊維は弾性変形が可能である。このため、本発明の研磨パッド表面と被加工物の被加工面とが押し合わされると、被加工面に存在する微細な凹凸に対応して、金属繊維が変形することで、研磨パッド表面と被加工面との間に生じる隙間を小さくできる。これにより、上記した従来技術と比較して、被加工面における触媒と接触もしくは極近接する領域を増大させることができる。この結果、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種を被加工物の被加工面に効率よく作用させることが可能となり、平滑化加工の加工速度を大きくできる。
【0015】
ところで、隙間を埋めるだけであれば、研磨パッドの研磨面全体が変形可能に構成されていれば良いが、研磨面に被加工面を押し当てた際に、研磨面全体が変形してしまうと、平滑化加工が困難となる。
【0016】
これに対して、本発明の研磨パッドは、金属繊維の圧縮成型体で構成されているので、研磨パッド全体としては、剛性が高く、研磨パッドの研磨面に被加工面を押し当てた際の研磨面全体の変形は抑制される。よって、本発明の研磨パッドを用いることで、高精度な平滑化加工が可能である。
【0017】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載の発明のように、金属繊維(21、22、23)として、直径が1μm以上500μm以下であるものを用いることが好ましい。この場合に、圧縮成型体の製造の際に、高密度かつ均一に圧縮成型することが容易となる。
【0018】
請求項1に記載の発明においては、請求項3に記載の発明のように、空隙率は、10%以上90%以下とすることが好ましい。この場合に、成型体を容易に成型できるとともに、成型体の強度を確保できる。
【0019】
請求項1に記載の発明においては、請求項4に記載の発明のように、圧縮回復率が90%以上100%以下であることが好ましい。
【0020】
ここで、圧縮回復率は、金属製研磨パッドの表面に研磨荷重300g/cmを10sec負荷したときの金属製研磨パッドの厚さT1と、金属製研磨パッドの表面に研磨荷重1800g/cmを10sec負荷したときの金属製研磨パッドの厚さT2と、金属製研磨パッドの表面に研磨荷重1800g/cmを10sec負荷した後に研磨荷重300g/cmを10sec負荷したときの金属製研磨パッドの厚さT3とを用いて、次式で定義される。
【0021】
圧縮回復率(%)=(T3-T2)/(T1-T2)×100
この圧縮回復率が90%以上である場合に、平滑化加工する前の被加工物の被加工面に凹凸やうねりがあった場合でも、平滑化加工の最中に金属製研磨パッドと被加工物の被加工面を十分に極近接または接触させることができる。
【0022】
請求項1に記載の発明においては、請求項5に記載の発明のように、金属繊維(21、22、23)として、チタン、ニッケル、銅、鉄、クロム、コバルト、白金の中から選択された1種の金属または2種類以上の組み合わせからなる合金で構成されたものを採用できる。被加工物の酸化性に合わせて、金属繊維の材質、すなわち、触媒の種類を選択することにより、加工速度を調整することが可能となる。
【0023】
請求項1に記載の発明においては、請求項6に記載の発明のように、圧縮成型体の構成を、第1金属繊維(22)と、第1金属繊維とは異なる材質の第2金属繊維(23)とを備える構成とすることが好ましい。このように、被加工物の酸化性に合わせて、金属繊維の材質、すなわち、触媒の種類を組み合わせて選択することにより、加工速度を調整することが可能となる。
【0024】
請求項1に記載の発明においては、請求項7に記載の発明のように、成型体の構成を、研磨面となる一面とは反対側の他面に、ゴム弾性を有するクッションシートが設けられている構成とすることが好ましい。これによれば、触媒支援型の化学加工を行う際に、クッションシートによって被加工面にかかる加工圧力を均一にすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の金属製研磨パッドの製造方法であって、
遷移金属触媒からなる金属繊維をホットプレスして一次成型体を成型する一次成型工程(S2)と、
一次成型体を常温で静水圧プレスして二次成型体を成型する二次成型工程(S3)とを有し、
一次成型工程によって、金属繊維同士を焼結により固定させ、
二次成型工程では、静水圧で変形しない型材(11)により一次成型体の一面(10a)を覆うとともに、静水圧で変形可能な被覆材(12)により一次成型体の残りの面(10b)を覆った状態で静水圧プレスすることを特徴としている。
【0026】
ところで、本発明と異なり、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスを単独で行って金属製研磨パッドを製造する場合、焼結による成型体の収縮や、型材や成型体の熱膨張による歪の影響により、成型体の平坦度が低下し、空隙率も不均一となってしまう。
【0027】
これに対して、本発明では、ホットプレスによって金属繊維同士を焼結させた後に、型材や成型体の熱膨張による歪の影響をほとんど受けない常温での静水圧プレスを行うので、成型体の高い平坦度を確保できる。また、二次成型工程の静水圧プレスでは、被覆材側から型材側に均一の圧力がかかるので、型材の平坦形状を圧縮成型体に精密に転写させることができ、かつ、金属製研磨パッドのどの部位においても均一な空隙率とすることができる。
【0028】
また、二次成型工程の静水圧プレスでは、常温で成型するので、高価で多くのエネルギーを必要とする熱間静水圧プレス装置を用いる必要が無い。したがって、型材も特別に耐熱性の高い材料を準備する必要は無く、型材は金属繊維として選択した材料よりも若干硬い材料であれば十分であり、工業的に安価なコストで金属製研磨パッドを製造できる。
【0029】
請求項9に記載の発明では、難加工材料からなる被加工物(6)の被加工面(6a)を平滑化加工する触媒支援型の化学加工方法において、
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の金属製研磨パッド(2)の研磨面(2a)と被加工面(6a)とを押し合わせ、被加工面(6a)と研磨面(2a)との間に酸化剤を供給しながら、被加工物(6)と金属製研磨パッド(2)とを相対移動させることを特徴としている。
【0030】
これによれば、請求項1に記載の金属製研磨パッドを用いるので、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0031】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の発明において、酸化剤とともに、補助研磨粒子を供給することを特徴としている。
【0032】
これによれば、補助研磨粒子を供給することで、上記した従来技術のように活性種のみで加工する場合と比較して、活性種で生じた被加工物の表面改質層を効率的に除去できる。このとき、請求項11に記載の発明のように、補助研磨粒子として、被加工物よりも軟らかいものを用いることで、被加工物に線状痕がつくことを抑制できる。さらに、請求項12に記載の発明のように、補助研磨粒子として、被加工物の表面改質層よりも硬いものを用いることで、加工速度を大きくできる。
【0033】
請求項9~12に記載の発明は、請求項13に記載の発明のように、難加工材料が、SiC、GaN、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビーのいずれか1つである場合に、特に有効である。
【0034】
請求項9~13に記載の発明においては、請求項14に記載の発明のように、酸化剤として、純水、過酸化水素水、シュウ酸、フッ化水素酸の中から選択された1種の溶液または2種類以上の組み合わせから成る混合溶液を用いることができる。被加工物の酸化性に合わせて、酸化剤の種類を選択することで、加工速度を調整することが可能となる。これにより、加工精度の調整を容易に行うことができる。
【0035】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態における触媒支援型の化学加工装置の全体構成を示す概念図である。
【図2(a)】図1中の金属製研磨パッドの模式図であり、研磨面に平行な断面図である。
【図2(b)】図1中の金属製研磨パッドの模式図であり、研磨面に垂直な断面図である。
【図3】第1実施形態における金属製研磨パッドの製造工程を表すフローチャートである。
【図4】図3中の二次成型工程で静水圧プレスを行う際の一次成型体の状態を示す断面図である。
【図5(a)】第1実施形態における各種研磨パッドと被加工物とを押し合わせたときの被加工物の被加工面近傍の拡大図である。
【図5(b)】比較例1における各種研磨パッドと被加工物とを押し合わせたときの被加工物の被加工面近傍の拡大図である。
【図5(c)】比較例2における各種研磨パッドと被加工物とを押し合わせたときの被加工物の被加工面近傍の拡大図である。
【図6】第2実施形態における触媒支援型の化学加工装置の金属製研磨パッドおよび定盤を示す断面図である。
【図7】実施例1の直径20ミクロンのチタン繊維からなる、空隙率36%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例2の直径20ミクロンのチタン繊維からなる、空隙率78%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例3の直径20ミクロンのチタン繊維とニッケル繊維からなる金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10(a)】SiCウエハを研磨する前のSiCウエハ表面の粗さ曲線である。
【図10(b)】実施例1の金属製研磨パッドを用いてSiCウエハを研磨した後のSiCウエハ表面の粗さ曲線である。
【図10(c)】実施例1の金属製研磨パッドを用いてSiCウエハを更に研磨した後のSiCウエハ表面の粗さ曲線である。
【図11(a)】SiCウエハを研磨する前のSiCウエハ表面のレーザー顕微鏡による観察写真である。
【図11(b)】実施例1の金属製研磨パッドを用いてSiCウエハを研磨した後のSiCウエハ表面のレーザー顕微鏡による観察写真である。
【図11(c)】実施例1の金属製研磨パッドを用いてSiCウエハを更に研磨した後のSiCウエハ表面のレーザー顕微鏡による観察写真である。
【図12】実施例5の直径80ミクロンのチタン繊維からなる、空隙率56%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例6の直径80ミクロンのチタン繊維からなる、空隙率78%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態における触媒支援型の化学加工装置および触媒支援型の化学加工方法について説明する。図1に、本発明の金属製研磨パッドを用いた触媒支援型の化学加工を行う加工装置の概念図を示す。

【0038】
図1に示すように、加工装置は、定盤1と、金属製研磨パッド2と、ホルダー3と、第1ノズル4と、第2ノズル5とを備えている。

【0039】
定盤1は、平坦な上面を有し、上面に垂直な回転軸心を中心に回転可能となっている。金属製研磨パッド2は、定盤1の上面に取り付けられる。金属製研磨パッド2の研磨面2aは、被加工物6の被加工面6aよりも広い。ホルダー3は、難加工材料からなる被加工物6を保持する。ホルダー3は、定盤1の回転軸心に対して平行かつ偏心して設けられた回転軸を中心に回転可能となっている。なお、定盤1とホルダー3の両方が回転可能であるが、一方のみが回転する構成であっても良い。定盤1とホルダー3の回転方向は同じでも異なっていても良い。

【0040】
第1ノズル4は、金属製研磨パッド2の研磨面2aと被加工物6の被加工面6aとの間に、酸化剤を供給する第1供給部である。第2ノズル5は、金属製研磨パッド2の研磨面2aと被加工物6の被加工面6aとの間に、補助研磨粒子を供給する第2供給部である。

【0041】
本明細書で言う難加工材料は、材料が高硬度かつ脆いために、機械的に強い条件で加工することが困難な材料を意味する。高硬度とは、Si等よりも硬度が高いことを意味する。このような難加工材料の中でもSiC、GaN、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビーのいずれか1つである場合に、工業的な価値が特に高い。ただし、被加工物を構成する材料は、難加工材料に限定されるものではなく、触媒支援型の化学加工方法で加工できる材料であれば良い。

【0042】
酸化剤としては、純水、過酸化水素水、シュウ酸、フッ化水素酸の中から選択された1種の溶液または2種類以上の組み合わせからなる混合溶液を用いることができる。酸化剤は、加工する難加工材料に対して最適な触媒反応を起こす酸化剤の種類から選択される。

【0043】
補助研磨粒子は、後述する、被加工物の表面に形成される表面改質層を除去するために用いられる補助加工材である。補助研磨粒子としては、被加工物よりも軟らかものを用い、より好ましくは、被加工物よりも軟らかく、かつ、被加工物の表面改質層よりも硬いものを用いる。補助研磨粒子の硬さを被加工物の硬さより軟らかく設定することで、被加工物の表面を損傷することなく、表面改質層を除去することができ、新たな触媒反応を促進することが可能となる。補助研磨粒子の硬さを表面改質層の硬さよりも硬く、被加工物の硬さより軟らかい硬さに設定することで、被加工材を損傷することなく大きな加工速度で加工することが可能となる。補助研磨粒子の材質としては、例えば、アルミナ、炭化ホウ素、シリカなどが挙げられる。補助研磨粒子の粒子径は、被加工材の材質、あるいは加工後の平滑度により選択されれば良く、特に限定されるものではない。

【0044】
次に、金属製研磨パッド2について説明する。図2(a)に、金属製研磨パッド2の研磨面2aに平行な断面を示し、図2(b)に、金属製研磨パッド2の研磨面2aに垂直な断面を示す。

【0045】
金属製研磨パッド2は、遷移金属触媒からなる金属繊維21の圧縮成型体で構成されたものであり、所定の空隙率を有している。圧縮成型体は、綿状の金属繊維に対して加熱および圧縮して成型されたものである。綿状の金属繊維は、1本もしくは複数本の金属繊維から構成されている。なお、金属製研磨パッド2の製造方法の詳細は後述する。

【0046】
より具体的には、図2(a)に示すように、金属製研磨パッド2は、金属繊維21同士が交差しており、交差した箇所21aが焼結していることにより、金属繊維21同士が固定されている。また、図2(b)に示すように、金属製研磨パッド2の研磨面2aは高い平坦度を有している。すなわち、研磨面2aでは金属繊維21が平坦面をなすように並んでいる。また、図2(a)、図2(b)に示すように、金属製研磨パッド2は、直径がほぼ均一である金属繊維21によって構成されている。

【0047】
金属製研磨パッド2の原料となる金属繊維21の直径は、1μm以上500μm以下が好適である。金属繊維21の直径が500μmを超える場合、金属繊維21自体の強度が高すぎて高密度かつ均一に圧縮成型することが困難となる。金属繊維21を高密度に成型できないと、原材料を繊維化する目的の一つである触媒反応させる表面積を増大させる効果が十分に得られないので、原料を金属繊維21とする利点が小さくなる。現在では、集束引抜き法によって直径1μmまでの極細径の金属繊維の製造が可能であるので、金属繊維21としては直径1μm以上のものが使用可能である。ただし、次の理由により、金属繊維21の直径は、10μm以上とすることが、より好ましい。金属繊維21の直径が10μm未満の場合、原料となる金属繊維21の製造にコストがかかってしまう。また、この場合、後述する成型工程での加熱の際に、金属繊維21の活性が高すぎて大気中の酸素で酸化してしまう。

【0048】
なお、本明細書でいう金属繊維21の直径とは、金属繊維21の断面積から算出した円相当径を言う。また、上記した金属繊維21の直径とは、原料として使用する金属繊維の1本あたりの直径の平均値である。複数本の金属繊維21を用いて金属製研磨パッド2を製造する場合、複数本の金属繊維21の全てにおいて、直径が1μm以上500μm以下であることが好適である。また、金属製研磨パッド2の製造後における金属繊維21の直径は、金属製研磨パッド2の製造前の金属繊維21の直径とほぼ等しいことから、上記した金属繊維21の直径は、金属製研磨パッド2を構成する金属繊維21の直径のことである。

【0049】
金属製研磨パッド2の空隙率は、小さすぎず、大きすぎない所定の範囲内である。空隙率が小さすぎると、金属繊維21が弾性変形できなくなるため、金属製研磨パッド2と被加工物6とを押し合わせたときに、被加工面6aにおける触媒と接触または極近接する領域が少なくなってしまう。また、空隙率が小さすぎると、加工に用いる酸化剤や補助研磨粒子を被加工物6の被加工面6aに対向する研磨パッド表面2aで十分に保持することも困難となる。一方、空隙率が大きすぎると、酸化力を持つ活性種を発生させる反応表面積を大きくすることができなくなる。

【0050】
具体的には、金属製研磨パッド2の空隙率を10%以上90%以下とする。これは、本発明者が種々の空隙率となるように圧縮成型体を成型したところ、空隙率10%未満とすることは困難であり、90%超とすると、型を外した際に成型体の形状が維持されなかったからである。

【0051】
金属製研磨パッド2の圧縮回復率は、金属繊維の直径と圧縮成型した際の成型体の成型密度により変化するが、90%以上100%以下とすることが好適である。圧縮回復率が90%未満の場合は、金属製研磨パッドと被加工物を加圧状態で加工した際に被加工物と金属製研磨パッドの全面を均一に接触させる事が難しく、局部的な接触となってしまうからである。

【0052】
金属繊維は、例えば、チタン、ニッケル、銅、鉄、クロム、コバルト、白金の中から選択された1種の金属または2種類以上の組み合わせからなる合金で構成される。金属繊維の材質は、加工する難加工材料に対して最適な触媒反応を起こす金属材料の種類から選択される。本実施形態では、圧縮成型体を構成する金属繊維の材質は全て同じである。

【0053】
次に、金属製研磨パッド2の製造方法について説明する。図3に、金属製研磨パッド2の製造工程を表すフローチャートを示す。図3に示すように、原料準備工程S1と、一次成型工程S2と、二次成型工程S3とを行うことで、金属製研磨パッド2を製造する。

【0054】
原料準備工程S1では、金属製研磨パッド2の原料として、遷移金属触媒からなる金属繊維を準備する。このとき、準備する金属繊維は複数本でも1本でもよいが、複数本の場合、比較的長いものを用いることが好ましい。触媒支援型の化学加工法による平滑化加工の際における金属繊維の脱落を防止するためである。

【0055】
一次成型工程S2では、金属繊維をホットプレスして一次成型体(予備成型体)を成型する。このとき、金型内に金属繊維を綿状に配置して、加熱および加圧する。

【0056】
加熱温度は、交差した金属繊維同士の接触箇所が焼結して固化する温度である。例えば、金属繊維をチタンで構成する場合、加熱温度を700℃以上1000℃以下とする。成型温度が700℃未満であると金属繊維の変形が十分でなく成型体の密度が不均一となり、金属製研磨パッド2として使用できる成型体が得られない。成型温度が1000℃を超えると、金属繊維同士が局部的に焼結融合して接合されて収縮する。その結果、成型体の表面積が小さくなり、原料を金属繊維として狙う触媒反応面積を増大する効果が小さくなってしまう。また、成型体の焼結が進みすぎると、成型体自体の寸法が収縮してしまい成型体の寸法精度を確保することが困難となり、被加工物との密着を確保することが可能な金属製研磨パッド2の形状を得ることが困難となる。

【0057】
また、ホットプレスの方法としては、金属繊維が酸化しやすい場合、予備成型体をなす金属繊維の酸化を抑制できて、成型体内への空気巻き込みによる成型不良の心配が無い、真空ホットプレス法を採用することが好ましい。これにより、触媒反応させる表面積が大きく、寸法精度の良い成型体を得ることができる。

【0058】
二次成型工程S3では、一次成型体を常温で静水圧プレスして二次成型体を成型する。図4に、二次成型工程S3で静水圧プレスを行う際の一次成型体の状態を示す。具体的には、図4に示すように、静水圧プレス時の静水圧で変形しない型材11により一次成型体10の一面10aを覆うとともに、静水圧で変形可能な被覆材12により一次成型体10の他面10bを含む残りの面を覆った状態で静水圧プレスする。これにより、一次成型体10の一面10aを平坦化させる。一次成型体10の一面10aが金属製研磨パッド2の研磨面2aとなる。

【0059】
型材11としては、鉄、アルミ、ガラスなどで構成された剛性の高い型材を採用できる。被覆材12としては、ゴムなどの弾性材料で構成されたシート状部材を採用できる。この二次成型工程S3では、熱間静水圧プレスに使用するような耐熱性のある特殊な金型材料を準備する必要は全く無い。ここでいう常温とは、加熱しない状態での温度を意味する。

【0060】
ところで、本実施形態と異なり、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスを単独で行って金属製研磨パッド2を製造する場合、焼結による成型体の収縮や、型材や成型体の熱膨張による歪の影響により、成型体の平坦度が低下し、空隙率も不均一となってしまう。

【0061】
これに対して、本実施形態では、ホットプレスによって金属繊維同士を焼結させた後に、型材や成型体の熱膨張による歪の影響をほとんど受けない常温での静水圧プレスを行うので、成型体の高い平坦度を確保できる。また、二次成型工程S3の静水圧プレスでは、被覆材12側から型材11側に均一の圧力がかかるので、型材11の平坦形状を成型体に精密に転写させることができ、かつ、金属製研磨パッド2のどの部位においても均一な空隙率とすることができる。

【0062】
また、二次成型工程S3の静水圧プレスでは、常温で成型するので、高価で多くのエネルギーを必要とする熱間静水圧プレス装置を用いる必要が無い。したがって、型材11も特別に耐熱性の高い材料を準備する必要は無く、型材11は金属繊維として選択した材料よりも若干硬い材料であれば十分であり、工業的に安価なコストで金属製研磨パッド2を製造できる。

【0063】
次に、上記した構成の加工装置を用いた触媒支援型の化学加工方法について説明する。定盤1とホルダー3とをそれぞれ回転させながら、被加工物6の被加工面6aと金属製研磨パッド2の研磨面2aとを押し合わせる。そして、第1、第2ノズル4、5から酸化剤と補助研磨粒子を、被加工面6aと研磨面2aとの間に供給する。

【0064】
このとき、金属製研磨パッド2を構成する金属繊維の表面において、酸化剤から強力な酸化力を持つ活性種が発生する。例えば、金属繊維がチタンで構成され、酸化剤として過酸化水素を用いた場合、フェントン反応によって、ヒドロキシラジカルが発生する。この活性種によって、被加工面6aの表層が酸化層に改質され、すなわち、被加工面6aに表面改質層が形成される。そして、補助研磨粒子によって、この表面改質層が削り取られる。このようにして、被加工物6の被加工面6aが平滑化加工される。

【0065】
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。図5(a)、図5(b)、図5(c)のそれぞれに、本実施形態、比較例1、比較例2における各種研磨パッドと被加工物とを押し合わせたときの被加工物の被加工面近傍の拡大図を示す。

【0066】
図5(b)に示す比較例1は、上記発明が解決する課題の欄に記載の触媒金属で構成した研磨定盤J1を用いた例である。この研磨定盤J1と被加工物6とを押し合わせると、研磨定盤J1は剛性が高いため、研磨定盤J1は被加工物6の被加工面6aに存在する微細な凹凸に対応して変形しない。このため、被加工面6aと研磨定盤J1の表面との間に微細な隙間が生じてしまう。

【0067】
これに対して、本実施形態の金属製研磨パッド2は、金属繊維21から構成されており、空隙を有しているので、研磨パッド表面2aに存在する金属繊維は弾性変形が可能である。このため、図5(a)に示すように、研磨パッド表面2aと被加工物6の被加工面6aとが押し合わされると、被加工面6aに存在する微細な凹凸に対応して、研磨パッド表面2aが変形することで、研磨パッド表面2aと被加工面6aとの間に生じる隙間を小さくできる。すなわち、研磨パッド表面2aにおける被加工面6aの凸部に接する金属繊維21が押されて、被加工面6aの凹部に対向する金属繊維21が凹部に入り込む。これにより、比較例1と比較して、被加工面6aにおける触媒と接触もしくは極近接する領域を増大させることができる。この結果、触媒表面上で生成した強力な酸化力を持つ活性種を被加工物の被加工面に効率よく作用させることが可能となる。すなわち、被加工面6aに表面改質層を速く形成でき、平滑化加工の加工速度を大きくできる。

【0068】
また、図5(c)に示す比較例2は、柔軟性が高い研磨パッドJ2を用いた例である。この研磨パッドJ2は、触媒金属で構成されたものではなく、例えば、ポリウレタン樹脂製の不織布で構成されている。比較例2の研磨パッドJ2と被加工物6とを押し合わせ場合、被加工面6aに存在する微細な凹凸に対応して、研磨パッド表面J2aが変形することで、研磨パッド表面J2aと被加工面6aとの間の隙間をなくすことができる。

【0069】
しかし、この場合、研磨パッドJ2の柔軟性が高すぎるため、研磨パッド表面J2aが被加工面6aに押されて変形してしまう。具体的には、研磨パッド表面J2aが被加工面6aよりも大きい場合、研磨パッド表面J2aが被加工面6aに押されると、研磨パッド表面J2aのうち被加工物6の縁に対向する部位が変形してしまう。このため、被加工面6aの平滑化加工が困難となる。

【0070】
これに対して、本実施形態の金属製研磨パッド2は、金属繊維21の圧縮成型体で構成されているので、研磨パッド全体としては、剛性が高く、研磨面2aに被加工面6aを押し当てた際の研磨面2a全体の変形は抑制される。すなわち、研磨面2aに被加工面6aを押し当てた際、研磨面2aは高い平坦度が維持される。よって、本実施形態の金属製研磨パッド2を用いることで、高精度な平滑化加工が可能である。

【0071】
また、本実施形態の金属製研磨パッド2によれば、触媒金属が500μ以下の繊維形状であり、繊維の周囲に空隙を有するので、触媒金属が緻密なバルク形状の場合と比較して、酸化力を持つ活性種を発生させる反応表面積を大きくすることができる。

【0072】
さらに、本実施形態の金属製研磨パッド2によれば、研磨面に空隙が存在するので、被加工物の被加工面の加工に十分な量の酸化剤や補助研磨粒子を、研磨面に保持することができる。

【0073】
また、本実施形態の触媒支援型の化学加工方法では、被加工面6aと研磨面2aとの間に、酸化剤だけでなく、補助研磨粒子も供給することにより、被加工物6の表面改質層を除去するようにしている。このため、本実施形態によれば、上記した従来技術のように活性種のみで加工する場合と比較して、被加工物の表面改質層を効率的に除去できる。
(第2実施形態)
図6に、第2実施形態における触媒支援型の化学加工装置の金属製研磨パッドおよび定盤を示す。

【0074】
第1実施形態では、金属製研磨パッド2を、直接、定盤1に取り付けたが、図6に示すように、ゴム弾性を有するクッションシート13を介在させて、金属製研磨パッド2を、定盤1に取り付けてもよい。すなわち、金属製研磨パッド2のうち研磨面(一面)2aの反対側の面(他面)2bに、クッションシート13を設けてもよい。

【0075】
これによれば、触媒支援型の化学加工を行う際に、クッションシート13によって被加工面6aにかかる加工圧力を均一にすることができる。
(第3実施形態)
圧縮成型体を構成する金属繊維の材質は、全て同じ場合に限らず、異なっていても良い。すなわち、圧縮成型体が、金属繊維として、第1金属繊維と、この第1金属繊維とは異なる材質の第2金属繊維とを備える構成としてもよい(実施例3参照)。

【0076】
このように、被加工物の酸化性に合わせて、金属繊維の材質、すなわち、触媒の種類を組み合わせて選択することにより、加工速度を調整することが可能となる。
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、触媒支援型の化学加工を行う際に、第2ノズル5から補助研磨粒子を供給したが、上記した特許文献1、2に記載の従来技術のように、補助研磨粒子を供給せずに、触媒支援型の化学加工を行ってもよい。

【0077】
(2)第1実施形態では、触媒支援型の化学加工装置が、被加工物6と金属製研磨パッド2とを回転運動させる構成であったが、被加工物6と金属製研磨パッド2の少なくとも一方を直線的な往復運動させる構成であってもよい。要するに、触媒支援型の化学加工装置は、被加工物6と金属製研磨パッド2とを相対移動させる構成であればよい。

【0078】
(3)第1実施形態では、金属製研磨パッド2は、直径の大きさが1種類の金属繊維21によって構成されていたが、直径の大きさが複数種類の金属繊維によって構成されていてもよい。この場合であっても、1本の金属繊維の直径は1μm以上500μm以下であることが好ましい。

【0079】
(4)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。実施例1~3は、金属製研磨パッドの製造例である。実施例4は、金属製研磨パッドを用いた触媒支援型の化学加工法による平滑化加工の例である。
(実施例1)
上記した第1実施形態に記載の金属製研磨パッドの製造方法によって、空隙率36%の金属製研磨パッドを製造した。以下、具体的な条件を説明する。
【実施例】
【0081】
表1に示す金属繊維を準備した(原料準備工程S1)。なお、準備した金属繊維は、直径がほぼ均一のものである。
【実施例】
【0082】
【表1】
JP2015008572A1_000003t.gif
そして、表2に示す成型条件にて、一軸真空ホットプレスにより、予備成型体を成型した(一次成型工程S2)。このとき、予備成型体の目標密度を、二次成型工程の圧縮率と目的とする金属製研磨パッドの空隙率より逆算して設定した。
【実施例】
【0083】
具体的には、目的とする金属製研磨パッドの空隙率が36%のときでは、空隙率がやや高い45%となるように一軸真空ホットプレスで圧縮する成型ストロークを調整した。目的とする金属製研磨パッドの空隙率もよりもやや高い空隙率とする理由は、目標とする空隙率に最終成型する静水圧プレスでの成型性を考慮する必要があるためである。一軸真空ホットプレス後の成型体の密度が高すぎると、静水圧プレスでの変形量が少なくなり成型体の密度を均一化することが難しくなる。逆に、一軸真空ホットプレス後の成型体の密度が低すぎると、静水圧プレスでの変形量が大きくなり、目標とする成型密度に圧縮することができず、さらに、成型体に大きな圧縮残留応力が生じて、成型体が大きく変形してしまうからである。
【実施例】
【0084】
【表2】
JP2015008572A1_000004t.gif
その後、表3に示す成型条件にて、静水圧プレスにより、金属製研磨パッドを成型した(二次成型工程S3)。このとき、静水圧プレスの成型圧力を、最終的に目的とする金属製研磨パッドの空隙率、チタン繊維の直径や一軸真空ホットプレス後の予備成型体の密度に応じて設定した。
【実施例】
【0085】
【表3】
JP2015008572A1_000005t.gif
このようにして製造された空隙率36%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。図7より、成型した金属製研磨パッドの表面が均一な密度であることが確認できる。また、空隙率36%の金属製研磨パッドについて、圧縮回復率を測定した結果、圧縮回復率は99%であった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、空隙率78%の金属製研磨パッドを製造した。なお、金属製研磨パッドの空隙率78%となるように、一軸真空ホットプレスでの成型ストロークを調整するとともに、静水圧プレスでの成形圧力を調整した。
【実施例】
【0086】
製造された空隙率78%の金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。また、空隙率78%の金属製研磨パッドについて、圧縮回復率を測定した結果、圧縮回復率は97%であった。
(実施例3)
ニッケル繊維(第1金属繊維)とチタン繊維(第2金属繊維)とを用いて、実施例1と同様の方法により、金属製研磨パッドを製造した。製造された金属研磨パッドの顕微鏡写真を図9に示す。図9より、ニッケル繊維22と、チタン繊維23とによって、金属製研磨パッドが構成されていることが確認できる。
(実施例4)
実施例1で製造した金属製研磨パッドを用い、第1実施形態で説明した図1の加工装置によって、触媒支援型の化学加工方法で被加工物の平滑化加工を行った。このときの加工条件を表4に示す。
【実施例】
【0087】
【表4】
JP2015008572A1_000006t.gif
図10(a)、図10(b)に、実施例1で製造した金属製研磨パッドを用いて難加工材料であるSiCウエハのSi面を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工したときのSiCウエハ表面の加工前後の粗さ曲線を示す。図10(a)が加工前の粗さ曲線、図10(b)が加工後の粗さ曲線を示している。加工前の粗さ曲線と加工後の粗さ曲線を比較すると、粗さ曲線における谷の形状が鋭角形状に維持されつつ、粗さ曲線における山の形状が鋭角から丸い形状に変わっていることがわかる。よって、加工前後の粗さ曲線より、加工前のSiCウエハ表面の粗さ凸部のみが選択的に加工されていることが確認できる。
【実施例】
【0088】
これは、一般的なダイヤモンドスラリーを用いたポリッシングでは、SiCウエハ表面の粗さ凸部と凹部両方が同時に加工されてしまい目的とする表面粗さとするまでに多くの加工代を必要とするが、本発明の金属製研磨パッドを用いたSiCウエハの加工方法では、凸部のみが選択的に加工できて加工代が少なくて済み、効率的であるといったことを証明している。
【実施例】
【0089】
図11(a)、図11(b)に、実施例1で製造した金属製研磨パッドを用いて難加工材料の表面を触媒支援型の化学加工方法で平滑化加工したときの加工前後のSiCウエハ表面のレーザー顕微鏡による観察写真を示す。図11(a)が加工前の表面状態、図11(b)が加工後の表面状態を示している。加工前の表面状態と加工後の表面状態を比較すると、加工前のSiCウエハ表面に多くの線状痕があるのに対して、加工後は線状痕が減少して平滑化した表面が多く観察できる。
【実施例】
【0090】
ところで、一般的なダイヤモンドスラリーを用いたポリッシングでは、平滑化した表面にもダイヤモンドの粒子で傷つけられた線状痕が必ず残る。
【実施例】
【0091】
これに対して、図11(b)に示されるように、本発明の金属製研磨パッドを用いたSiCウエハの加工方法では、平滑化した表面に全く線状痕が存在していない。これは、SiCウエハの加工のほとんどが化学的な作用で行われており、加工による欠陥が全く無い、無欠陥、つまりダメージレスで、SiCウエハの表面が形成できるといったことを証明している。
【実施例】
【0092】
図10(c)、図11(c)に、それぞれ、図10(b)および図11(b)に示す状態のSiCウエハ表面に対して更に平滑化加工を進めたときのSiCウエハ表面の粗さ曲線、レーザー顕微鏡による観察写真を示す。図10(c)、図11(c)に示されるように、更に平滑化加工を進めることで、SiCウエハ表面の平坦度が増すことがわかる。
(実施例5)
純チタンで構成され、直径が80μmである金属繊維を用いて、実施例1と同様の方法により、空隙率56%の金属製研磨パッドを製造した。製造された金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真を図12に示す。
(実施例6)
純チタンで構成され、直径が80μmである金属繊維を用いて、実施例1と同様の方法により、空隙率78%の金属製研磨パッドを製造した。製造された金属製研磨パッドの走査型電子顕微鏡写真を図13に示す。
【実施例】
【0093】
上記の説明から明らかなように、本発明は、金属繊維からなる金属製研磨パッドを用いて難加工材料の表面を触媒支援型の化学加工方法で加工することにより、金属触媒から発生させた強力な酸化力を持つ活性種を、効率的に、被加工物の被加工面に接触、もしくは極近接させることが可能であり、加工速度が大きいばかりではなく、被加工材の表面に欠陥が全く無い研磨方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の金属製研磨パッドを用いた触媒支援型の化学加工方法は、難加工材料、特に、パワー半導体材料として使用されるSiCであるとか、GaN、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビーなどの加工に好適である。
【符号の説明】
【0095】
1 定盤
2 金属製研磨パッド
2a 研磨面
21 金属繊維(触媒)
3 ホルダー
4 第1ノズル
5 第2ノズル
6 被加工物
6a 被加工面
10 一次成型体
11 型材
12 被覆材
13 クッションシート
図面
【図1】
0
【図2(a)】
1
【図2(b)】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5(a)】
5
【図5(b)】
6
【図5(c)】
7
【図6】
8
【図10(a)】
9
【図10(b)】
10
【図10(c)】
11
【図7】
12
【図8】
13
【図9】
14
【図11(a)】
15
【図11(b)】
16
【図11(c)】
17
【図12】
18
【図13】
19