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明細書 :(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月30日(2017.3.30)
発明の名称または考案の名称 (S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法
国際特許分類 C07C 201/12        (2006.01)
C07C 205/26        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
B01J  31/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  31/18        (2006.01)
A61K  31/536       (2006.01)
FI C07C 201/12
C07C 205/26
C07B 53/00 B
B01J 31/02 102Z
C07B 61/00 300
A61P 43/00 111
A61P 31/18
A61K 31/536
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 18
出願番号 特願2016-505204 (P2016-505204)
国際出願番号 PCT/JP2015/055060
国際公開番号 WO2015/129630
国際出願日 平成27年2月23日(2015.2.23)
国際公開日 平成27年9月3日(2015.9.3)
優先権出願番号 2014034045
優先日 平成26年2月25日(2014.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】大楠 賢
【氏名】徳永 恵津子
【氏名】柴田 哲男
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
4G169
4H006
4H039
Fターム 4C086AA04
4C086BC72
4C086GA16
4C086NA20
4C086ZB33
4C086ZC20
4C086ZC55
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA49
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB25
4G169CB57
4G169CB69
4G169CB70
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB77
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC81
4H006BA65
4H006BB11
4H006BB12
4H039CA19
4H039CA60
4H039CF30
要約 【課題】(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの新規な製造方法を提供する。
【解決手段】溶媒中にて、塩基および触媒量の下記の一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表されるキナアルカロイド相間移動触媒の存在下で、下記の式(1)で表されるアルキニルケトンと(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを反応させる。
【化10】
JP2015129630A1_000017t.gif
【化12】
JP2015129630A1_000018t.gif
(式中、R、R、R、R、Xは、請求項1に記載の意味を表す。)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒中にて、塩基および触媒量の下記の一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表されるキナアルカロイド相間移動触媒の存在下で、下記の式(1)で表されるアルキニルケトンと(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを反応させることを特徴とする下記の式(2)で表される(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法。
【化10】
JP2015129630A1_000013t.gif

【化11】
JP2015129630A1_000014t.gif
【化12】
JP2015129630A1_000015t.gif
(式中、Rはアルコキシ基を示し、Rはエチル基またはビニル基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を示し、Xはカウンターアニオンを示す。)
【請求項2】
前記キナアルカロイド相間移動触媒として、前記Rが直鎖のアルコキシ基であるものを用いることを特徴とする請求項1に記載の(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法。
【請求項3】
前記溶媒として、トルエンと塩化メチレンの混合溶媒を用いる請求項1または2に記載の(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法。
【請求項4】
前記塩基として、アンモニウムフロリドを用いる請求項1ないし3のいずれか1つに記載の(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法。
【請求項5】
前記キナアルカロイド相間移動触媒として、下記の一般式(7)で表される化合物を用いる請求項1に記載の(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法。
【化13】
JP2015129630A1_000016t.gif
(式中、Rは、メチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基またはセチル基であり、Rは、フェニル基、3,5-tBu基または3,5-(CF基である。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エイズ治療薬であるエファビレンツ(Efavirenz)の鍵中間体となる(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Merck社が開発したエファビレンツ(Efavirenz)はエイズ発症抑制剤(非核酸系逆転写酵素阻害剤)であり、世界的なトップドラッグの一つであり、その売り上げは年間約200億円にのぼる。エファビレンツ(Efavirenz)はトリフルオロメチル基を持つ不斉炭素を有し、(S)-体の光学異性体のみに抗HIV活性があり、(R)-体には活性がないことが知られている。しかしながら、現在の実際の製造プロセスでは(-)-Camphanoyl chlorideをキラル補助基として利用した光学分割が用いられているのが現状であり(非特許文献1)、光学分割では中間体をラセミ体として合成し、光学分割剤を作用させた後にジアステレオマーを分離するので、半分の化合物は捨てていることになる。
【0003】
また、エファビレンツの鍵中間体となる(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの製造方法には、大きく大別して二つ挙げられる。一つ目は、従来の方法であるトリフルオロメチルケトンに対する不斉アルキニル化反応であり(非特許文献2、3、4参照)、二つ目は、新たな方法であるアルキニルケトンに対する直接的不斉トリフルオロメチル化反応である(非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】S. D. Young, F. S. Britcher, L. O. Tran, L. S. Payne, W. C. Lumma, T. A. Lyle, J. R. Huff, P. S. Anderson, D. B. Olsen, S. S. Carrol, D. J. Pettibone, J. A. O. Brien, R. G. Ball, S. K. Balani, J. H. Lin, I.-W. Chen, W. A. Schleif, V. V. Sardana, W. J. Long, V. W. Byrnes, E. A. Emini, Antimicrob. Agents Chemother,1995,39, 2602.
【非特許文献2】A. S. Thompson, E. G. Corley, M. F. Huntington, E. J. J. Grabowski, Tetrahedron Lett. 1995, 39, 2602.
【非特許文献3】L. Tan, C.-Y. Chen, R. Tillyer, E. J. J. Grabowski, P. J. Reider, Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38, 711.
【非特許文献4】N. Chinkov, A. Warm, E. M. Carreira, Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 2957.
【非特許文献5】H. Kawai, T. Kitayama, E. Tokunaga, N. Shibata, Eur. J. Org. Chem. 2011, 5959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、以前に本発明者が上記二つ目の方法を報告しているが、エナンチオ選択性が中程度(50% ee)とあまり高くなかった。
【0006】
そのため、エナンチオ選択性をより高められるように、本発明者が以前に報告した方法を改良した新規な製造方法の開発が求められていた。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、エナンチオ選択的トリフルオロメチル化反応を利用した(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、上記非特許文献5に記載の触媒とは一部の官能基が異なるキナアルカロイド相間移動触媒と(トリフルオロメチル)トリメチルシランを用いることにより、次式で示すアルキニルケトンへの高エナンチオ選択的トリフルオロメチル化反応に成功した。
【0009】
【化1】
JP2015129630A1_000003t.gif

【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、溶媒中にて、塩基および触媒量の下記の一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表されるキナアルカロイド相間移動触媒の存在下で、下記の式(1)で表されるアルキニルケトンと(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを反応させることを特徴とする下記の式(2)で表される(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールの新規な製造方法である。
【0011】
【化2】
JP2015129630A1_000004t.gif

【0012】
【化3】
JP2015129630A1_000005t.gif

【0013】
【化4】
JP2015129630A1_000006t.gif

【0014】
(式中、Rはアルコキシ基を示し、Rはエチル基またはビニル基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を示し、Xはカウンターアニオンを示す。)
請求項1に記載の発明では、一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表され、式中のRがアルコキシ基であるキナアルカロイド相間移動触媒を用いている。なお、非特許文献5に記載のキナアルカロイド相間移動触媒は、一般式(3)、(4)、(5)、(6)中のRがヒドロキシ基であるものに相当する。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールをエナンチオ選択的に製造することができる。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載の発明のように、キナアルカロイド相間移動触媒として、Rが直鎖のアルコキシ基であるものを用いることが好ましい。
【0017】
請求項1、2に記載の発明においては、請求項3に記載の発明のように、溶媒として、トルエンと塩化メチレンの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0018】
請求項1~3に記載の発明においては、請求項4に記載の発明のように、塩基として、アンモニウムフロリドを用いることが好ましい。
【0019】
請求項1に記載の発明においては、請求項5に記載の発明のように、キナアルカロイド相間移動触媒として、下記の一般式(7)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0020】
【化5】
JP2015129630A1_000007t.gif

【0021】
(式中、Rは、メチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基またはセチル基であり、Rは、フェニル基、3,5-tBu基または3,5-(CF基である。)
請求項5に記載の発明によれば、非特許文献5に記載の製造方法と比較して、(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールを、高エナンチオ選択的に製造することができる(後述の実施例における表1中の7b、7c、7d、7e、7f、7j、7k、7l、7mの触媒を用いた反応例参照)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、溶媒中にて、塩基およびキナアルカロイド相間移動触媒の存在下で、上記の式(1)で表されるアルキニルケトンと(トリフルオロメチル)トリメチルシランとを反応させる。これにより、上記の式(2)で表されるトリフルオロメチルアルコール化合物、すなわち、(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オールを製造する。

【0023】
式(1)で表されるアルキニルケトンは、1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-シクロプロピル-2-プロピン-1-オールである。式(1)で表されるアルキニルケトンは、既存の製法で製造されたものを用いることができる。

【0024】
反応に用いるキナアルカロイド相間移動触媒は、上記の一般式(3)、(4)、(5)または(6)で表されるキナアルカロイド誘導体である。一般式(3)、(4)、(5)、(6)で表される化合物は、異性体の関係であり、同じ性能を有する。このため、キナアルカロイド相間移動触媒として、一般式(3)、(4)、(5)、(6)で表される化合物のいずれを用いてもよい。キナアルカロイド相間移動触媒の使用量は、相間移動触媒として作用する触媒量であればよい。

【0025】
一般式(3)、(4)、(5)、(6)中において、Rはアルコキシ基を示し、Rはエチル基またはビニル基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を示し、Xはカウンターアニオンを示している。

【0026】
本明細書において、R及びRのアルキル基としては、例えば、炭素数1乃至20程度のアルキル基を用いることができる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、又はこれらの環状アルキル基、分鎖アルキル基などを用いることができる。

【0027】
及びRのアルケニル基又はアルキニル基に含まれる不飽和結合の数は特に限定されないが、好ましくは1乃至2個程度である。該アルケニル基又はアルキニル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。

【0028】
及びRが示すアリール基は、ヘテロアリール基も含有し、具体例としては、例えば炭素数2~30のアリール基、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アンスラニル基、ピレニル基、ビフェニル基、インデニル基、テトラヒドロナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダニジル基、ピペラジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、キニリル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基などが挙げることができる。

【0029】
アルキル基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。

【0030】
アルケニル基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。

【0031】
アルキニル基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。

【0032】
アリール基はアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基などの置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。

【0033】
のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ペンタフルオロベンジル基、o-メチルベンジル基、m-メチルベンジル基、p-メチルベンジル基、p-ニトロベンジル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、α-フェネチル基等が挙げられる。

【0034】
が示すアミノ基としては、N上に水素、置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、アリール基の置換基が1つか2つ置換しているものが挙げられる。置換基はそれぞれ独立しており、同一である必要はない。アミノ基は、置換基を組み合わせて形成されうる環状構造を形成することができる。特に3員環から20員環でなる単環、双環、またはそれ以上の多環の構造を示すことができる。また、ヘテロ原子の介在もしくは非介在で環状構造の一部を形成してもよい。

【0035】
およびRが示すアルコキシ基は炭素数が1~20のアルコキシ基が好ましく、炭素数が1~10のアルコキシ基がさらに好ましい。アルコキシ基の場合も上記のアルキル基の場合と同様の置換基により置換されていてもよい。エナンチオ選択性をより高めるという観点では、後述する実施例に示すように、Rのアルコキシ基は、直鎖のアルコキシ基であることが好ましく、その中でも、炭素数が4または6の直鎖のアルコキシ基であることが最も好ましい。

【0036】
Xが示すカウンターアニオンとしては、ハロゲンやアルコキシドが挙げられ、より具体的には、フロリド、クロリド、ブロミド(Br)、ヨード、フェノキシド、トリフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロフォスフェート(PF)などが挙げられる。

【0037】
反応に用いる溶媒の種類は特に限定されないが、溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘプタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン等の芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、i-プロピルアルコール、アミノエタノール、N、N-ジメチルアミノエタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらは単独で使用し得るのみならず、2種類以上を混合して用いることも可能である。アルキニルケトンに対するエナンチオ選択的トリフルオロメチルアルコールの合成に用いる溶媒としては、後述する実施例に示すように、トルエンと塩化メチレンの混合溶媒が好ましく、トルエンと塩化メチレンの溶媒比が2対1の混合溶媒が最も好ましい。

【0038】
反応に用いる塩基として、無機塩基、有機塩基、有機金属試薬等が使用できる。塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩;テトラメチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムフロリド、テトラブチルアンモニウムフロリドなどのアンモニウムフロリド;フッ化カリウム、フッ化セシウムなどのフッ化アルカリ金属類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルコキシド化合物;DABCO、DBU、トリエチルアミン、N、N-ジメチルアミノピリジン等の有機塩基;n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ヘキサメチルジシラザンリチウム塩などのリチウム塩などが挙げられる。アルキニルケトンに対するエナンチオ選択的トリフルオロメチルアルコールの合成に用いる塩基としては、後述する実施例に示すように、アンモニウムフロリドが好ましく、テトラメチルアンモニウムフロリドが最も好ましい。使用量は一般的に式(1)に対して、0.1~10当量で、好ましくは0.5当量である。

【0039】
反応温度は特に限定されるものではないが、通常-80℃~120℃であり、より好ましくは室温付近である。反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。反応圧力は大気圧下、または加圧下のいずれも可能である。反応時間は特に限定されるものではないが、通常1時間~5日で反応は完結する。

【0040】
反応後、上記の式(2)で示されるトリフルオロメチルアルコール化合物は一般的な手法によって反応液から単離および精製することができる。例えば、反応液を濃縮した後、シリカゲル、アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製、塩析、再結晶等が挙げられる。

【0041】
この反応では、キナアルカロイド相間移動触媒の構造が不斉収率(エナンチオ選択性)に影響する。特に、本発明では、一般式(3)、(4)、(5)、(6)中のRがアルコキシ基であることによって、高エナンチオ選択的に、上記の式(2)で示されるトリフルオロメチルアルコール化合物を製造することが可能である。また、この反応は、金属触媒を用いず、キナアルカロイド相間移動触媒を用いるので、反応物に金属触媒が不純物として残存することがないため、安全な反応である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0043】
下記の反応式に示すように、溶媒中にて、塩基およびキナアルカロイド相間移動触媒の存在下で、式(1)で表されるアルキニルケトンと(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(MeSiCF)とを反応させることにより、式(2)で表されるトリフルオロメチルアルコール化合物を製造した。この反応では、溶媒として、トルエンと塩化メチレンの混合溶媒(toluene/CHCl)を用い、塩基として、テトラメチルアンモニウムフロリド(MeNF)を用い、キナアルカロイド相間移動触媒として、下記の一般式(7)で表される化合物(cat.(7))を用いた。なお、この反応は、密閉型の容器内で、窒素雰囲気下で行った。
【実施例】
【0044】
【化6】
JP2015129630A1_000008t.gif
【実施例】
【0045】
【化7】
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【実施例】
【0046】
この一般式(7)で表されるキナアルカロイド相間移動触媒は、上記の一般式(5)で表され、Rがビニル基であり、Rがアリール基であり、Rがメトキシ基(アルコキシ基)であり、Xがブロミドであるキナアルカロイド相間移動触媒に相当する。本実施例では、一般式(7)中のRおよびRが下記の表1に示す基である各触媒7a~7mを用いた。なお、Rは一般式(5)中のRの一部に相当し、Rは一般式(5)中のRの一部に相当する。
【実施例】
【0047】
下記の表1のRの欄において、Meはメチル基、n-butylはn(ノルマル)-ブチル基、n-hexylはn-ヘキシル基、Bnはベンジル基、allylはアリール基、n-pentylはn-ペンチル基、n-octylはn-オクチル基、n-decylはn-デシル基、cetylはセチル基を示す。表1のRの欄において、Phは置換していないフェニル基を示し、3,5-tBu基および3,5-(CF基は置換型のフェニル基である。
【実施例】
【0048】
【表1】
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【実施例】
【0049】
具体的には、アルキニルケトン(0.10mmol)、テトラメチルアンモニウムフロリド(0.05mmol)および表1に示す7a~7mのいずれか1つのキナアルカロイド相間移動触媒(0.01 mmol)を、溶媒2mLに溶かし、表1に示す温度において(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(0.20 mmol)を加えた。このとき用いた溶媒のトルエンと塩化メチレンの溶媒比(Tol./CHCl)は、表1に示す通り、トルエン:塩化メチレン=2:1または1:1である。
【実施例】
【0050】
そして、表1に示す時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。塩化メチレンを用いて抽出し、集めた有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を留去、テトラヒドロフラン(THF)1mLとテトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、下記の式(2)で表されるトリフルオロメチルアルコール化合物を得た。
【実施例】
【0051】
本実施例の一例として、表1中の7mのキナアルカロイド相間移動触媒の構造式を以下に示すとともに、表1中の7mのキナアルカロイド相間移動触媒を用いたときの得られた式(2)の化合物のNMR等による分析結果を以下に示す。
【実施例】
【0052】
【化8】
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【実施例】
【0053】
【化9】
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【実施例】
【0054】
化合物(2):(S)-2-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-シクロプロピル-1,1,1-トリフルオロブト-3-イン-2-オール
1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 0.79-0.92 (m 4H), 1.26-1.36 (m, 1H), 3.57 (s, 1H), 7.44-7.52 (m, 2H), 7.80 (s, 1H); 19F NMR (CDCl3, 188 MHz) δ-78.8 (s, 3F) ; MS (ESI, m/z) 318 [M-H]-. The ee of the product was determined by HPLC using an OD-3 column (n-hexane/i-PrOH = 95/5, flow rate 1.0 mL/min, λ = 254 nm, τmaj = 8.4 min, τmin = 9.5 min) ; [a]D25 = -10.9 (c = 0.27, CHCl3) , 74%収率,80% ee.
表1に、本実施例で得られた化合物のエナンチオ選択性(Ee(%))を示している。表1に示す結果より、7a~7mのキナアルカロイド相間移動触媒のいずれを用いたときでも、エナンチオ選択的に式(2)の化合物が得られたことがわかる。
【実施例】
【0055】
また、非特許文献5に記載の製造方法でのエナンチオ選択性は最高で50%であったのに対して、7b、7c、7d、7e、7f、7j、7k、7l、7mのキナアルカロイド相間移動触媒を用いたときは、エナンチオ選択性は60%以上であり、非特許文献5に記載の製造方法と比較して、エナンチオ選択性が高いことがわかる。これらの触媒のうち、7c、7d、7e、7f、7j、7k、7mは、一般式(5)において、Rが直鎖のアルコキシ基であるキナアルカロイド相間移動触媒に該当する。したがって、一般式(3)、(4)、(5)または(6)において、Rが直鎖のアルコキシ基であるキナアルカロイド相間移動触媒を用いたときに、エナンチオ選択性が高くなる傾向があることがわかる。
【実施例】
【0056】
また、7f、7mのキナアルカロイド相間移動触媒を用いたときが、エナンチオ選択性が80%と最も高いことから、一般式(7)で表され、Rがn-ブチル基またはn-ヘキシル基であるキナアルカロイド相間移動触媒を用いることが最も好ましいことがわかる。