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明細書 :フィルタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月1日(2017.6.1)
発明の名称または考案の名称 フィルタ
国際特許分類 H03H   7/01        (2006.01)
H01Q  15/14        (2006.01)
FI H03H 7/01 A
H01Q 15/14 B
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2016-535895 (P2016-535895)
国際出願番号 PCT/JP2015/070276
国際公開番号 WO2016/013466
国際出願日 平成27年7月15日(2015.7.15)
国際公開日 平成28年1月28日(2016.1.28)
優先権出願番号 2014148464
2014154363
2014253858
優先日 平成26年7月22日(2014.7.22)
平成26年7月30日(2014.7.30)
平成26年12月16日(2014.12.16)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】若土 弘樹
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001128、【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5J020
5J024
Fターム 5J020AA06
5J020BA06
5J020BD01
5J020BD03
5J024AA01
5J024CA20
5J024DA01
5J024DA25
5J024DA34
要約 電波の波形によって電波の吸収率が異なる波形選択メタサーフェスが、複数の導電性部材11と、これら導電性部材11の内、隣り合う2つの導電性部材11間を繋ぐ回路20、30と、を備え、回路20、30は、2つの導電性部材11の一方から他方に流れる電流により起電力を発生させるインダクタと電流を熱に変換する抵抗とを含むRL回路30を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
電波の波形によって電波の吸収率が異なるフィルタであって、
導電性部材と、
前記導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、
前記整流回路によって整流された電流により起電力を発生させるインダクタと前記電流を熱に変換する抵抗とを含むRL回路と、を備えたフィルタ。
【請求項2】
電波の波形によって電波の吸収率が異なるフィルタであって、
導電性部材と、
前記導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、
インダクタと抵抗が直列に接続され、前記整流回路によって整流された電流が流れるRL回路と、を備えたフィルタ。
【請求項3】
前記RL回路の時定数が可変になっていることで、電波のパルス幅に対する吸収特性の依存性を操作することが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
コンデンサと抵抗が並列に接続されたRC回路を備え、
前記RC回路は、前記RL回路と並列に接続することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のフィルタ。
【請求項5】
コンデンサと抵抗が並列に接続されたRC回路を備え、
前記RC回路は、前記RL回路と直列に接続することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のフィルタ。
【請求項6】
前記RC回路の時定数が可変になっていることで、電波のパルス幅に対する吸収特性の依存性を操作することが可能であることを特徴とする請求項4または5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記導電性部材は、複数個に分離して周期的に配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のフィルタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、同一周波数の電波でも、電波の波形に応じて選択的に吸収、透過できるようにする電磁特性を持ったフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からある通常の材料は、同一の周波数の電波に対して、パルス幅に対する選択性がない。ここで、パルス幅とは、図1Aに示すように、電波の発生している時間単位の電波(パルス)の長さである。また、パルス幅は、電波のエネルギーが発生している時間の長さ(励振時間)でもある。
【0003】
一方、メタサーフェスと呼ばれる「人工的に構築された入射電波波長よりも短い周期構造」では、周期構造の共振現象によって電磁界特性が決定することから、周期構造を適宜設計することで、自然界から得られないような特異な電磁界特性でも得られるようになった。
【0004】
非特許文献1、2のメタサーフェスは、全波整流を用い、平面状の誘電体の上に、導電性を有する複数の導電性部材を格子状に周期的に配置する構造を持っている。更に、図24のように、隣接する導電性部材11を、ダイオードブリッジで構成される全波整流回路22で繋ぎ、全波整流回路22内にはコンデンサを抵抗と並列に接続したRC回路60を有している。なお、この回路構造は電界の集中する場所に配置される。したがって、従来例のような構造ではRC回路60は導電性部材11間に接続されている。
【0005】
図24の従来例のメタサーフェスは同一周波数電波でも短いパルスのものを吸収し、長いパルスのものを透過する特性を持っている。その作動原理を説明する。コンデンサは1/jωCから成るインピーダンスを有している。ここで、jは虚数単位であり、ω=2πf(fは周波数)、Cはキャパシタンスを表す。
【0006】
つまり、コンデンサは、高い周波数のエネルギーを蓄えることができる。しかし、低い周波数成分のエネルギーはコンデンサを完全に充電してしまうため、コンデンサがそれ以上エネルギーを蓄えることができなくなる。なお、コンデンサに蓄えられたエネルギーは、その後抵抗へと放出される。よって、短いパルス幅電波は、次の電波が到来する前に、全てのエネルギーを消散できる。
【0007】
一方、入射波は表面電流を誘起させ、ここでは周波数成分fを有している。ただし、ダイオードの整流作用によってこの周波数成分は徐々に直流成分へと変換される。
【0008】
これらの点からパルス幅(励振時間または波形)の短い電波はメタサーフェスにより吸収され、長いものは透過される。非特許文献1、2では、図25に示す特性が掲載されている。図25中において、横軸はパルス幅、縦軸は吸収率であり、黒四角はシミュレーション結果を、白四角は実験結果を、表す。
【0009】
また、これらの特性は時定数RCによってコントロール可能であることが記載されている。具体的には、図25Aのカーブを、今回、新たに特定した時定数RCを変化させることにより図25Bのように左右にシフトすることができる。ただし、図25Bは全てシミュレーション結果を示し、白丸は黒四角よりも10倍大きなキャパシタンス(すなわち10倍大きな時定数)を使用しており、白三角は黒四角の10分の1のキャパシタンス(すなわち10分の1の時定数)を使用している。
【0010】
これらで開発された従来例の波形選択性は、時定数により吸収されるパルス幅のレンジを変更可能であるものの、必ず短いパルスの方が高い吸収特性となり、長いパルスや連続波の吸収特性は小さくなる。
【0011】
したがって、従来例には、以下の課題がある。短いパルス幅信号を通して、長いパルスを吸収することはこのコンデンサと抵抗を用いた構造からは得ることはできない。関連して、任意のパルス幅の信号のみ吸収または透過させ、その他の信号をそれぞれ透過、吸収することもできない。
【先行技術文献】
【0012】

【非特許文献1】H. Wakatsuchi, J. J. Rushton, J. Lee, F. Gao, M. Jacob, S. Kim, D. F. Sievenpiper, “Experimental Demonstration of Nonlinear Waveform-Dependent Metasurface Absorber with Pulsed Signals”, Electronics Letters, vol.49, no.24, pp.1530-1531, November 2013.
【非特許文献2】H. Wakatsuchi, S. Kim, J. J. Rushton, D. Sievenpiper, “Waveform-Dependent Absorbing Metasurfaces”, Physical Review Letters 111, 245501, December 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、パルス幅が長くなるほど吸収率が上昇するような特性を少なくとも一部のパルス幅領域で有するフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、以下のような構成にすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のフィルタが提供される。
【0015】
第1の観点に係るフィルタは、電波の波形によって電波の吸収率が異なるフィルタであって、導電性部材と、導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、整流回路によって整流された電流により起電力を発生させるインダクタと電流を熱に変換する抵抗とを含むRL回路と、を備えたフィルタである。
【0016】
第2の観点に係るフィルタは、電波の波形によって電波の吸収率が異なるフィルタであって、導電性部材と、導電性部材の2箇所を繋ぐ整流回路と、インダクタと抵抗が直列に接続され、整流回路によって整流された電流が流れるRL回路と、を備えたフィルタである。
【0017】
第1または第2の観点に係るフィルタによれば、パルス幅が長くなるほど吸収率が上昇するような特性を少なくとも一部のパルス幅領域で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】パルス幅の定義を示す図である。
【図1B】同一周波数におけるパルス幅に依存した選択的な透過の概念を実施形態について示す図である。
【図2】波形選択メタサーフェスの全体構造を示す図である。
【図3A】誘電体上の導電性部材の配置のパターン例を示す図である。
【図3B】誘電体上の導電性部材の配置のパターン例を示す図である。
【図3C】誘電体上の導電性部材の配置のパターン例を示す図である。
【図4A】波形選択メタサーフェスの断面構造を示す図である。
【図4B】波形選択メタサーフェスの断面構造を示す図である。
【図4C】波形選択メタサーフェスの断面構造を示す図である。
【図5A】裏打ちの金属板を有する波形選択メタサーフェスの断面構造を示す図である。
【図5B】裏打ちの金属板を有する波形選択メタサーフェスの断面構造を示す図である。
【図6A】第1実施形態において、全波整流回路22にRL回路30を接続した波形選択メタサーフェスを示す図である。
【図6B】第1実施形態において、半波整流回路24a、24bにRL回路30を接続した波形選択メタサーフェスの平面図である。
【図6C】図6BのVIC-VIC断面図である。
【図7】波形選択メタサーフェスのパルス幅に対する吸収率を測定する実験装置を示す。
【図8A】パルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示すグラフである。単一の時定数を用いている。
【図8B】周波数に対する吸収率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8C】パルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示すグラフである。複数の時定数を用いている。
【図9A】第2実施形態に係る全波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。
【図9B】第2実施形態に係る半波整流を用いる波形選択メタサーフェスの配置を示す構成図である。
【図9C】第2実施形態に係る半波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。
【図10A】第2実施形態におけるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す図である。
【図10B】第2実施形態における周波数に対する吸収率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11A】第3実施形態に係る全波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。
【図11B】第3実施形態に係る半波整流を用いる波形選択メタサーフェスの配置を示す構成図である。
【図11C】第3実施形態に係る半波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。
【図12A】第3実施形態におけるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す。
【図12B】第3実施形態における周波数に対する吸収率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】メタサーフェスに連続波(表面波)を照射した際の時間領域における透過波の様子を簡易的に表した図である。
【図14】第4実施形態における波形選択メタサーフェスの構成図である。
【図15】第4実施形態における波形選択メタサーフェスの回路図である。
【図16】第4実施形態における波形選択メタサーフェスの過渡特性を示す図である。
【図17】第5実施形態における波形選択メタサーフェスの構成図である。
【図18】第5実施形態における波形選択メタサーフェスの回路図である。
【図19】第5実施形態における波形選択メタサーフェスの過渡特性を示す図である。
【図20】第6実施形態における波形選択メタサーフェスの回路図である。
【図21】第6実施形態における波形選択メタサーフェスの過渡特性を示す図である。
【図22】第7実施形態における波形選択メタサーフェスの回路図である。
【図23】第7実施形態における波形選択メタサーフェスの過渡特性を示す図である。
【図24】従来例である全波整流回路22にRC回路60を配置した図である。
【図25A】従来例の効果であるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す図である。
【図25B】従来例の効果であるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0020】
本実施形態で使用する「パルス幅」を図1Aに定義する。パルス幅は、電波の発生している時間単位の電波(パルス)の長さで、電波のエネルギーが連続で発生している時間の長さでもある。

【0021】
本実施形態の波形選択メタサーフェスにおける、同一周波数におけるパルス幅に依存した選択的な透過特性を図1Bに示す。図1Bは、本実施形態の波形選択メタサーフェス(フィルタに相当する)が、同一周波数の電波を、パルス幅の短い電波は透過し、パルス幅の長い電波は吸収できることを示している。よって、波形選択メタサーフェスは、波形選択フィルタであり、フィルタ機能をもった電磁界材料でもある。

【0022】
図2に、波形選択メタサーフェスの全体構造を示す。この波形選択メタサーフェスでは、金属板13の上に誘電体10があり、誘電体10の上に複数の導電性部材11が配置された平面状の基本形状をしている。

【0023】
図3A、図3B、図3Cに、誘電体10上の導電性部材11の配置のバリエーションのうち、周期性がある配置例を示す。図3Aは、1個の四角形状(より具体的には正方形状)の誘電体10の上に複数個の四角形状(例えば一辺が約18mmの正方形形状)の導電性部材11を、周期性を持った2次元正方格子状(すなわち、マトリックス状)に配置した例を示す。

【0024】
図3Bは、1個の四角形状(より具体的には正方形状)の誘電体10の上に、四角形状の穴を2次元正方格子状(すなわち、マトリックス状)に複数個形成する格子縞形状の1個の導電性部材11を配置した例を示す。この際、RL回路30および/またはRC回路40(RL回路30に対して並列追加または直列追加)は、誘電体10内に配置する。

【0025】
図3Cは、図3Aの例に対して、導電性部材11の形状を十字形状に変化させた例を示す。導電性部材11の形状は、図3A~図3Cの例以外にも、周期性のある配置ができれば様々な形状が可能である。このように、複数個の導電性部材を、分離して周期的に配置することにより、波形選択メタサーフェスを平面形状または平板形状にすることができる。平面形状または平板形状にすることで、電波を効率的に受信できるアンテナとして波形選択メタサーフェスを機能させることができ、または既存のアンテナの上に積層して波形選択メタサーフェスを構成することができる。

【0026】
図4A、図4B、図4Cは、波形選択メタサーフェスの断面構造のバリエーションを示す。図4Aは、誘電体10の上に導電性部材11を配置した基本構造を示す。図4Bは、誘電体10の上下の両面に導電性部材11を配置した構造を示す。図4Cは、図4Aの基本構造を積層した構造を示す。図4A、図4B、図4Cの断面構造はどれでも、図3A、図3B、図3Cのいずれの配置とも組み合わせ可能である。

【0027】
図4Bまたは図4Cのように複層にすることにより、選択吸収性を向上できたり、チューニングすることができたりする。図5A、図5Bは、波形選択メタサーフェスの断面構造の更なるバリエーションとして、誘電体10に裏打ちされた金属板13を有する波形選択メタサーフェスの断面構造を示す。

【0028】
図5Aは、金属板13の上に誘電体10を積層し、誘電体10の上に導電性部材11を配置した基本構造を示す。図5Bは、金属板13の上下の両面にそれぞれ1個ずつ誘電体10を積層し、2つの誘電体10の上にそれぞれ導電性部材11を配置した構造を示す。金属板13によって誘電体10を裏打ちすることにより、自由空間中の電波だけでなく、金属板の表面上を図5A、図5Bの左右方向に伝搬する電波に起因して同じ方向に伝搬する表面電流に対しても、選択吸収性を実現することができる。

【0029】
また、図5Bのように金属板の両面に誘電体10および導電性部材11を配置することで、選択吸収性を両面において実現することができる。

【0030】
なお、図5A、図5の断面構造はどれでも、図3A、図3B、図3Cのいずれの配置とも組み合わせ可能である。

【0031】
図3A~図3C、図4A~図4Cまたは図5A、図5Bのように周期性を持って互いに間隔を開けて複数個配置された導電性部材11は、図6Aに示すように、全波整流回路22の構造を介して電気的に接続される。ここでは、そのような波形選択メタサーフェスの一例としてダイオードブリッジを用いているものを示す。なお、ダイオードブリッジに代えて、トランジスタやオペアンプによって構成される理想ダイオードなどの整流回路素子や整流回路構造などを使用することでも、全波整流を得ることができる。

【0032】
(第1実施形態)
図6A、図6Bに、第1実施形態として、整流回路にRL回路30を接続した波形選択メタサーフェスを示す。図6Aは、整流回路として全波整流回路22を用いる場合を示す。図6Aでは、隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として全波整流回路22が形成されている。全波整流回路22の中に、インダクタLと抵抗Rが直列に接続したRL回路30が接続されている。ここで、上述のようにこの全波整流回路22は、ダイオードブリッジだけでなく、その他の全波整流回路によって置き換えることが可能である。例えばトランジスタやオペアンプを使用した理想ダイオードを使用することで同等の役割が果たされる。

【0033】
インダクタLは全波整流回路22に接続されているため、高周波数信号による特性劣化を受けない。

【0034】
図6B、図6Cは、整流回路として、半波整流回路24a、24bを用いる波形選択メタサーフェスを示す。図6Bはこの波形選択メタサーフェスの平面図であり、図6Cは図6BのVIC-VIC断面図である。図6C中で最上部の隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として、導電性部材11からの電流流出をカットする半波整流回路24aと、導電性部材11への電流流入をカットする半波整流回路24bが、交互に形成されている。半波整流回路24a、24bに対し、インダクタLと抵抗Rが直列に接続しており、これらインダクタLと抵抗RがRL回路30を構成している。

【0035】
なお、図示していないが、図6A、図6B、図6Cのいずれの波形選択メタサーフェスにおいても、図3A~図3C、図4A~図4C、図5A、図5Bに示すような種々のバリエーションで、誘電体10を配置することが可能である。

【0036】
以上の通り、第1実施形態の波形選択メタサーフェスは、誘電体10の上に、導電性部材11を周期的に配置し、導電性部材11の内、隣接する導電性部材11を整流回路で配線したメタサーフェス(フィルタ)において、整流回路に、導電性部材11の一方から他方に流れる電流により起電力を発生させるインダクタLと電流を熱に変換する抵抗Rとを含むRL回路30を接続している。ここで、整流回路は、全波整流回路22、または半波整流回路24aまたは24bを交互に配置したものである。

【0037】
図6A~図6Cで示された第1実施形態の波形選択メタサーフェスは、同一周波数電波でも短いパルスのものを透過し、長いパルスのものを吸収する特徴を有する。

【0038】
その作動原理を説明する。RL回路30のインダクタLは、jωLから成るインピーダンスを有している。ここで、jは虚数単位であり、ω=2πf(fは周波数)、Lはインダクタンスを表す。

【0039】
このインダクタンスLの効果により、低い周波数の信号は透過されるものの、高い周波数成分は起電力を生じて遮断される。なお、インダクタを通過した電流は、抵抗Rによってそのエネルギーが消散される。

【0040】
一方、入射波は、導電性部材の表面に、電流を誘起させる。ここでは、入射波および誘起される電流は周波数成分fを有しているとする。この周波数成分は、ダイオードの整流作用によって徐々に直流成分へと変換されるため、長いパルスはインダクタの起電力を弱め、そのエネルギーは抵抗にて消散される。

【0041】
これらの点から、十分にパルス幅(励振時間または波形)の長い電波は、波形選択メタサーフェスにより吸収され、短いものは透過される。なお、これらの特性は時定数L/R(ただし、Lはインダクタのインダクタンス、Rは抵抗の抵抗値)によってコントロール可能である。

【0042】
図7に、波形選択メタサーフェスのパルス幅に対する吸収率を測定する実験装置を示す。この実験装置を用いた実験では、信号発生器より正弦波パルス波が発生される。入射波のエネルギーEは結合器に取り付けたパワーメータ、パワーセンサにより測定され、同様に反射波のエネルギーEも測定される。

【0043】
波形選択メタサーフェスはTE導波管内の底面に配置され、入射波によって誘起される表面電流を吸収または透過する。よって、透過波のエネルギーEは、TE導波管の通過後に測定される。以上より、吸収率Aは、A=1-(E+E)/Eという式により算出される。

【0044】
第1実施形態の効果を示すため、図8Aに、パルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す。シミュレーションは、実験と同等の条件で行っている。黒四角はシミュレーション結果、白四角は実験結果を表す。パルス幅が短いとき吸収率は小さく、パルス幅が長いとき吸収率は大きい。

【0045】
なお、このシミュレーションおよび実験では、インダクタLは100μHのインダクタンスを有し、抵抗Rは5.5オームの抵抗値を有する。電波の周波数はこの結果を含む全てのシミュレーションで4.2GHzとし、実験では4.0GHzとした。

【0046】
なお、波形選択メタサーフェスで吸収等の効果を得られる電波の周波数(動作周波数ともいう)は、例えば、誘電体上の金属(導電性部材11)の周期構造の大きさ(ここでは18mm角の正方形)やその間隔などを変化させることで異なる周波数で動作可能である。

【0047】
例えば、図8Aのシミュレーションにおいて、電波のパルス幅を50nsに固定して電波の周波数を5GHzから5GHzまで変化させた場合、図8Bの黒三角に示すような吸収率を示した。なお、図8B中のシミュレーションにおいて、黒四角は、電波をパルスではなく連続波とした場合の吸収率を示す。

【0048】
波形選択性の得られる周波数範囲としては全波整流回路22が動作する範囲に最も強く依存し、例えばGaAs(ヒ化ガリウム)を用いたダイオードを使用した場合は20GHzなどの高い周波数でも動作可能となる。

【0049】
図8Cには図8Aのシミュレーション(図8C中の黒四角)に対して、インダクタンスを10倍した結果を白丸で示し、10分の1にした結果を白三角で示した。パルス幅が短いとき吸収率は小さく、パルス幅が長いとき吸収率は大きい。また、吸収率Aは、インダクタンスが小さい程大きくなる。

【0050】
このように、RL回路30により、パルス幅が短いとき、吸収率が最小値となり、パルス幅が長いとき、吸収率が最大値となる特性を持つ波形選択メタサーフェスを得ることができる。また、RL回路30の時定数を変化させることにより、パルス幅が短いとき、吸収率が最小値となり、パルス幅が長いとき、吸収率が最大値となる特性を持つ波形選択メタサーフェスの特性を変化させることができる。

【0051】
(第2実施形態)
図9A、図9B、図9Cに、第2実施形態である整流回路にインダクタLと抵抗Rが直列に接続されたRL回路30とコンデンサCと抵抗Rが並列に接続されたRC回路40を並列に接続したものを示す。

【0052】
図9Aは、全波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。この波形選択メタサーフェスでは、隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として全波整流回路22が形成されている。全波整流回路22の中に、インダクタLと抵抗Rが直列に接続したRL回路30に、コンデンサCと抵抗Rが並列に接続されたRC回路40を、並列に接続されている。インダクタLは全波整流回路22に接続されているため、高周波数信号による特性劣化を受けない。

【0053】
図9B、図9Cは、半波整流を用いる波形選択メタサーフェスの配置を示す構成図および回路構成図である。これは、最上部の隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として半波整流回路24a、24bが交互形成されている。半波整流回路24a、24bに、RL回路30に並列にRC回路40が接続されている。

【0054】
第2実施形態では、第1実施形態において少ししか吸収されなかった短いパルスもコンデンサCを用いた回路で吸収することができる。一方、両回路構造において吸収されない中間のパルス幅信号は透過することができる。

【0055】
RC回路40の回路特性は、時定数RC(ただしCはコンデンサのキャパシタンス、Rは当該コンデンサとペアで使用される抵抗の抵抗値)によって制御可能であり、インダクタンスの回路構造の特性も、時定数L/Rlによって制御できることから、任意の特定波形を透過させ、その他の信号を吸収することができる。

【0056】
よって、第2実施形態は、誘電体10の上に、導電性部材11を周期的に配置し、導電性部材11の内、隣接する導電性部材11を整流回路で配線したメタサーフェスにおいて、整流回路内に、RL回路30と並列にRC回路40を接続している。ここで、整流回路は、全波整流回路22、または半波整流回路24a、24bを交互に配置したものである。

【0057】
なお、図示していないが、図9A、図9B、図9Cのいずれの波形選択メタサーフェスにおいても、図3A~図3C、図4A~図4C、図5A、図5Bに示すような種々のバリエーションで、誘電体10を配置することが可能である。

【0058】
図10Aに、第2実施形態におけるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す。図10A中、黒四角と黒丸は異なる時定数を使用した際のシミュレーション結果を示しており、白丸は黒丸のシミュレーションと同条件の実験結果を示している。ただし、黒四角のシミュレーションは、黒丸のシミュレーションに比べて大きなキャパシタンスと小さなインダクタンスを使用し、黒丸のシミュレーションシは、黒四角のミュレーションに比べ小さなキャパシタンスと大きなインダクタンスを使用した。

【0059】
より具体的には、黒四角のシミュレーションでは、C、L、R、Rが、それぞれ1nF、100μH、10kΩ、5.5Ωであり、黒丸のシミュレーションおよび白丸の実験では、C、L、R、Rが、それぞれ100pF、1mH、10kΩ、31.2Ωである。シミュレーションおよび実験の他の条件は、図8A~図8Cの場合と同じである。

【0060】
これらの実験およびシミュレーションでは、パルス幅が長いときおよび短いとき、吸収率が最大値となり、パルス幅が当該長いときと当該短いときの間の時、即ち中間の時、吸収率が最小値となる特性を持っている。

【0061】
すなわち黒丸は、図25Bにおける小さな時定数(例えば黒四角に対する白三角)の回路と図8Cにおける大きな時定数(例えば黒四角に対する白丸)の回路を組み合わせたことになる。

【0062】
本実施形態のようにRL回路30とRC回路40が並列になっている場合は、各パルス幅において、図25Bのグラフと図8Cのグラフのうち、そのパルス幅で吸収率が高い方が実現され、その結果、図10Aのような吸収率が実現する。

【0063】
なお、図10Aのシミュレーション結果と実験結果では、使用した回路のパラシティック・パラメータやインダクタの直流重畳特性によって差異が生じているものの、実験的にも特定のパルス幅信号を透過できることを示している。

【0064】
また、図10Aのシミュレーションにおいては、電波のパルス幅を50nsに固定して電波の周波数を5GHzから5GHzまで変化させた場合、図10Bの黒三角に示すような吸収率を示した。なお、図10B中のシミュレーションにおいて、黒四角は、電波をパルスではなく連続波とした場合の吸収率を示す。

【0065】
このように、RL回路30とRC回路40が並列に接続されていることで、パルス幅が長いときおよび短いとき、吸収率が最大値となり、パルス幅が長いときと短いときの間の時、吸収率が最小値となる特性を持つ波形選択メタサーフェス(フィルタに相当する)ができる。よって、RL回路30、および/またはRC回路40の時定数を変化させることにより、吸収率が最大値となるパルス幅を所望の値に設定することができる。

【0066】
(第3実施形態)
図11A、図11B、図11Cに、第3実施形態である整流回路にインダクタLと抵抗Rが直列に接続されたRL回路30とコンデンサCと抵抗Rが並列に接続されたRC回路40を直列に接続した波形選択メタサーフェスを示す。

【0067】
図11Aは、全波整流を用いる波形選択メタサーフェスの回路構成図である。この波形選択メタサーフェスでは、隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として全波整流回路22が形成されている。全波整流回路22の中に、インダクタLと抵抗Rが直列に接続したRL回路30に、コンデンサCと抵抗Rが並列に接続されたRC回路40を、直列に接続されている。インダクタは全波整流回路22に接続されているため、高周波数信号による特性劣化を受けない。

【0068】
図11Bは、半波整流を用いた波形選択メタサーフェスの配置を示す構成図および回路構成図である。この波形選択メタサーフェスでは、最上部の隣り合う導電性部材11の間の電気配線(接続回路)には、整流回路として半波整流回路24a、24bが交互形成されている。半波整流回路24a、24bにRL回路30が接続され、RL回路30に直列にRC回路40が接続されている。

【0069】
第3実施形態では、第1実施形態において吸収された長いパルスもコンデンサを用いた回路で透過することができる。一方、両回路構造において透過されない中間のパルス幅信号は吸収することができる。

【0070】
RC回路40のコンデンサの回路特性は、時定数RC(ただしCはコンデンサのキャパシタンス、Rはペアで使用される抵抗の抵抗値)によって制御可能であり、RL回路30の回路構造の特性も時定数L/Rによって制御できることから、これら2つの時定数は独立に調整することで、任意の特定波形を吸収させ、その他の信号を透過することができる。

【0071】
図12Aは、第3実施形態におけるパルス幅に対する吸収率のシミュレーション結果と実験結果を示す。黒四角と黒丸は異なる時定数を使用した際のシミュレーション結果を示しており、白四角は黒四角の実験結果を示している。ただし、黒四角は相対的に小さなキャパシタンスと大きなインダクタンスを使用し、黒丸は相対的に大きなキャパシタンスと小さなインダクタンスを使用した。

【0072】
より具体的には、黒四角のシミュレーションでは、C、L、R、Rが、それぞれ1nF、100μH、10kΩ、5.5Ωであり、黒丸のシミュレーションおよび白丸の実験では、C、L、R、Rが、それぞれ10nF、10μH、10kΩ、2Ωである。シミュレーションおよび実験の他の条件は、図8A~図8Cの場合と同じである。

【0073】
パルス幅が長いときおよび短いとき、吸収率が最小値となり、パルス幅が当該長いとき1と当該短いときの間の時、即ち中間の時、吸収率が最大値となる特性を持っている。すなわち、黒丸は図25Bにおける大きな時定数(例えば黒四角に対する白丸)の回路と図8Cにおける小さな時定数(例えば黒四角に対する白三角)の回路を組み合わせたことになる。

【0074】
本実施形態のようにRL回路30とRC回路40が直列になっている場合は、図25Bのグラフと図8Cのグラフのうち、パルス幅毎に、そのパルス幅で吸収率が低い方が実現され、その結果、図12Aのような吸収率が実現する。

【0075】
なお、図12Aのシミュレーション結果と実験結果では使用した回路のパラシティック・パラメータやインダクタの直流重畳特性によって差異が生じているものの、実験的にも特定のパルス幅信号を吸収できることを示している。

【0076】
また、図12Aのシミュレーションにおいては、電波のパルス幅を50nsに固定して電波の周波数を5GHzから5GHzまで変化させた場合、図12Bの黒三角に示すような吸収率を示した。なお、図12B中のシミュレーションにおいて、黒四角は、電波をパルスではなく連続波とした場合の吸収率を示す。

【0077】
このように、RL回路30、および/またはRC回路40の時定数を変化させることにより、パルス幅が長いときおよび短いとき、吸収率が最小値となり、パルス幅が長いときと短いときの間の時、吸収率が最大値となる特性を持つ、波形選択メタサーフェス(フィルタに相当する)ができる。

【0078】
(時間領域における透過特性)
図13は、本発明等のメタサーフェスに、連続波(表面波)を照射した際の時間領域における透過波の様子を簡易的に表した図である。(a)は従来例、(b)は第1実施形態、(c)は第2実施形態、(d)は第3実施形態を示す。図13の各グラフ中、黒く塗り潰されているように見える部分は、実際には波形が密集している部分である。

【0079】
波形選択性は入射電波の波形を変更して透過するフィルタリング効果も併せ持つ。(a)は、従来例のメタサーフェスに連続波を照射した際の透過波を、時間領域において示す。従来例のメタサーフェスは、図25A、図25Bに示す特性を持つので、パルス幅が小さい時に吸収率は大きく、パルス幅が大きい時に吸収率は小さい。よって、連続波は、時間領域において、初期状態において吸収され、時間が経過すると透過する。このように、透過波は、連続波から初期のエネルギーを切り取ったような波形になる。

【0080】
(b)は、第1実施形態のメタサーフェスに連続波を照射した際の透過波を、時間領域において示す。第1実施形態のメタサーフェスは、図8A、図8Cに示す特性を持つので、パルス幅が小さい時に吸収率は小さく、パルス幅が大きい時に吸収率は大きい。よって、連続波は、時間領域において、初期状態において透過し、時間が経過すると吸収される。このように、透過波は、連続波のうち初期のエネルギーのみの波形になる。

【0081】
(c)は、第2実施形態のメタサーフェスに連続波を照射した際の透過波を、時間領域において示す。第2実施形態のメタサーフェスは図10Aに示す特性を持つので、パルス幅が小さい時および大きい時に吸収率は大きく、パルス幅がそれらの中間時に吸収率は小さい。よって、連続波は、時間領域において、初期状態および時間が経過した状態において吸収され、パルス幅がそれらの中間時に相当する時間において透過する。このように、透過波は、連続波から初期と時間が経過した状態のエネルギーをカットし、パルス幅がそれらの中間時に相当する時間のみの波形になる。

【0082】
(d)は、第3実施形態のメタサーフェスに連続波を照射した際の透過波を、時間領域において示す。第3実施形態のメタサーフェスは、図12Aに示す特性を持つので、パルス幅が小さい時および大きい時に吸収率は小さく、パルス幅がそれらの中間時に吸収率は大きい。よって、連続波は、時間領域において、初期状態および時間が経過した状態において透過し、パルス幅がそれらの中間時に相当する時間において吸収する。このように、透過波は、初期と時間が経過した状態のエネルギーを残し、パルス幅がそれらの中間時に相当する時間の波形をカットした波形になる。

【0083】
以上のように、ある時間においてのみ強く透過または吸収し、その他の時間領域においてそれぞれ吸収、透過した波形に変換することが可能となる。したがって、波形選択性の応用例として、連続波をパルスに変換して発振するアンテナや、到来電波をパルスに変換して通信する受信機などの開発も考えられる。

【0084】
なお、上記各実施形態および変形例では、図3A、図3B、図3Bのどの例においても、導電性部材11の2箇所を整流回路が繋ぐ。具体的には、図3A、図3Cの例では、複数に分離した導電性部材11の隣り合う2つ(すなわち2箇所)を、整流回路が繋ぐ。また、図3Bの例では、分離せず連続している導電性部材11の2箇所を整流回路が繋ぐよう、当該2箇所に同じ整流回路が接続される。

【0085】
(第4実施形態)
次に第4実施形態について、図14~図16を用いて説明する。本実施形態の波形選択メタサーフェスは、図14に示す通り、第1実施形態の図3Aに示した波形選択メタサーフェスに対し、2次元格子状(すなわち、マトリックス状)に配置された導電性部材11の各々の形状を縦長の矩形形状に変更したものである。

【0086】
また、本実施形態においては、誘電体10のうち、長手方向に隣り合う2つの導電性部材11の間の部分10aに、全波整流回路22および当該全波整流回路22内に接続されたRL回路30が配置される。RL回路30の構成は、図15に示すように、第1~第3実施形態と同じである。

【0087】
そして、本実施形態では、波形選択メタサーフェスに到来する電波の伝搬方向は、図14の紙面に垂直な方向かつ紙面手前側から奥側に向かう方向である。また、当該電波の電界ベクトルの向きは紙面上下方向であり、磁界ベクトルの向きは紙面左右方向である。

【0088】
このような場合、波形選択メタサーフェスにおける当該電波の吸収率、透過率、および反射率のシミュレーション結果は、図16のようになる。このシミュレーションにおいては、L、Rが、それぞれ100μH、5.5Ωである。

【0089】
ただし、本実施形態のシミュレーションでは、シミュレーション対象の波形選択メタサーフェスに対して、連続波を入射させている。図16のグラフの横軸は、波形選択メタサーフェスに電波の連続波が到来し始めてからの経過時間、すなわち、連続波が到来し続けている時間長を、示す。そして縦軸は、各経過時間から過去所定期間(具体的には連続波の一周期)における電波の吸収率を表している。したがって、ここでは各パルス幅に対する平均化された吸収特性ではなく、時間領域における過渡特性を評価している。ただし、パルス幅に対する吸収特性もこれに近い傾向が得られると考えられる。

【0090】
したがって、このシミュレーションによれば、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの反射率は、当該電波のパルス幅が増大するほど小さくなる。また、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの透過率は、当該電波のパルス幅が増大するほど大きくなる。また、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの吸収率は、当該電波のパルス幅が0.1μ秒未満の場合に比べ、当該電波のパルス幅が0.1μ秒以上の場合の方が大きくなる傾向にある。

【0091】
このように、本実施形態の波形選択メタサーフェスは、吸収率、透過率のみならず、反射率も、電波のパルス幅に応じて異なる。つまり、波形選択メタサーフェスは、散乱特性全般が、電波のパルス幅に応じて異なる。

【0092】
(第5実施形態)
次に第5実施形態について、図17~図19を用いて説明する。本実施形態の波形選択メタサーフェスは、図17に示す通り、第1実施形態の図3Bに示した波形選択メタサーフェスに対し、二次元格子状(すなわち、マトリックス状)に形成された導電性部材11の穴の形状を横長の矩形形状に変更したものである。

【0093】
また、本実施形態においては、誘電体10のうち当該複数個の穴の各々の長手方向中央部10bに、全波整流回路22および当該全波整流回路22内に接続されたRL回路30が配置される。RL回路30の構成は、図18に示すように、第1~第4実施形態と同じである。

【0094】
そして、本実施形態では、波形選択メタサーフェスに到来する電波の伝搬方向は、図17の紙面に垂直な方向かつ紙面手前側から奥側に向かう方向である。また、当該電波の電界ベクトルの向きは紙面上下方向であり、磁界ベクトルの向きは紙面左右方向である。

【0095】
つまり、本実施形態の波形選択メタサーフェスは、第4実施形態の波形選択メタサーフェスを、電波の伝搬方向を軸に90°回転し、更に、導電性部材11のある場所と無い場所を入れ替えたものである。

【0096】
このような場合、本実施形態の波形選択メタサーフェスにおける当該電波の散乱特性は、それぞれ、第4実施形態の波形選択メタサーフェスに対して反射率と透過率を入れ替えたものと同じになる。

【0097】
より具体的には、本実施形態の波形選択メタサーフェスにおける当該電波の吸収率、透過率、および反射率のシミュレーション結果は、図19のようになる。このシミュレーションにおいては、L、Rが、それぞれ100μH、5.5Ωである。なお、図19のグラフは、図16のグラフと同じ形式で記載されている。

【0098】
このシミュレーションでは、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの透過率は、当該電波のパルス幅が増大するほど小さくなる。また、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの反射率は、当該電波のパルス幅が増大するほど大きくなる。また、到来する電波に対する波形選択メタサーフェスの吸収率は、当該電波のパルス幅が0.1μ秒未満の場合に比べ、当該電波のパルス幅が0.1μ秒以上の場合の方が大きくなる傾向にある。

【0099】
このように、本実施形態の波形選択メタサーフェスは、吸収率、透過率のみならず、反射率も、電波のパルス幅に応じて異なる。つまり、波形選択メタサーフェスは、散乱特性全般が、電波のパルス幅に応じて異なる。

【0100】
(第6実施形態)
次に第6実施形態について、図20、図21を用いて説明する。本実施形態の波形選択メタサーフェスは、第1実施形態で図6Aに示した波形選択メタサーフェスに対して、全波整流回路22の中に接続される回路を変更したものである。

【0101】
具体的には、本実施形態の波形選択メタサーフェスでは、全波整流回路22の中に、第1RL回路31、第2RL回路32、第1RC回路41、第2RC回路42が接続されている。

【0102】
具体的には、第1RL回路31と第1RC回路41が直列に接続された回路、および、第2RL回路32と第2RC回路42が直列に接続された回路が、全波整流回路22に対して並列に接続されている。

【0103】
第1RL回路31は、インダクタLと抵抗RL1が直列に接続した回路であり、第2RL回路32は、インダクタLと抵抗RL2が直列に接続した回路である。第1RC回路41はコンデンサCと抵抗RC1が並列に接続した回路であり、第2RC回路42はコンデンサCと抵抗RC2が並列に接続した回路である。

【0104】
このように、RL回路とRC回路が直列に繋がったものを2個並列に配置する構成により、第1~第5実施形態よりも複雑な吸収率が実現する。

【0105】
図21は、本実施形態の波形選択メタサーフェスのシミュレーション結果である。このシミュレーションにおいては、L、RL1、L、RL2、C、RC1、C、RC2の値をそれぞれ30μH、10Ω、300μH、10Ω、30pF、10kΩ、3nF、10kΩとし、他の条件を第4実施形態のシミュレーションと同じにしている。なお、図21のグラフは、図16のグラフと同じ横軸を用いて記載されている。

【0106】
図21に示す通り、この波形選択メタサーフェスの吸収率のグラフは、第3実施形態の波形選択メタサーフェスの吸収率(図12A)のような中央部で吸収率が高い山形状のカーブを時間方向に2個並べたカーブを描く。

【0107】
これら2つの山のうち、一方が、第1RL回路31および第1RC回路41から成る回路に起因する吸収率の上昇を表し、他方が、第2RL回路32および第2RC回路42から成る回路に起因する吸収率の上昇を表している。

【0108】
このように、RC回路とRL回路を複雑に組み合わせることで、吸収率のパルス幅に対する依存性を複雑にすることができる。

【0109】
(第7実施形態)
次に第7実施形態について、図22、図23を用いて説明する。本実施形態の波形選択メタサーフェスは、第1実施形態で図6Aに示した波形選択メタサーフェスに対して、全波整流回路22の中に接続される回路を変更したものである。

【0110】
具体的には、本実施形態の波形選択メタサーフェスでは、全波整流回路22の中に、第1RL回路31、第2RL回路32、第1RC回路41、第2RC回路42が接続されている。これら回路31、32、41、42の内部構成は、第6実施形態と同じである。

【0111】
具体的には、第1RL回路31と第1RC回路41が並列に接続された回路、および、第2RL回路32と第2RC回路42が並列に接続された回路が、全波整流回路22に対して直列に接続されている。

【0112】
このように、RL回路とRC回路が並列に繋がったものを2個直列に配置する構成により、第1~第5実施形態よりも複雑な吸収率が実現する。

【0113】
図23は、本実施形態の波形選択メタサーフェスのシミュレーション結果である。このシミュレーションにおいては、L、RL1、L、RL2、C、RC1、C、RC2の値をそれぞれ30μH、10Ω、10mH、10Ω、30pF、10kΩ、1nF、10kΩとし、他の条件を第6実施形態のシミュレーションと同じにしている。なお、図24のグラフは、図21のグラフと同じ横軸を用いて記載されている。

【0114】
ただし、本実施形態のシミュレーションでは、シミュレーション対象の波形選択メタサーフェスに対して、連続波を入射させている。図23のグラフの表示形式は、図21の表示形式と同じである。

【0115】
図23に示す通り、この波形選択メタサーフェスの吸収率のグラフは、第2実施形態の波形選択メタサーフェスの吸収率(図10A)のような中央部で吸収率が低い谷形状のカーブを時間方向に2個並べたカーブを描く。

【0116】
これら2つの谷のうち、一方が、第1RL回路31および第1RC回路41から成る回路に起因する吸収率の下降を表し、他方が、第2RL回路32および第2RC回路42から成る回路に起因する吸収率の下降を表している。

【0117】
このように、RC回路とRL回路を複雑に組み合わせることで、吸収率のパルス幅に対する依存性を複雑にすることができる。

【0118】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。

【0119】
(変形例1)
上記第4、第5実施形態において、波形選択メタサーフェスは、散乱特性全般が、電波のパルス幅に応じて異なると説明したが、このことは、第1~第3実施形態、第6、第7実施形態にも当てはまる。つまり、第1~第3実施形態、第6、第7実施形態の波形選択メタサーフェスも、到来する電波のパルス幅が変化すると当該電波の反射率が変化する。

【0120】
(変形例2)
上記第1~第7実施形態において用いられる抵抗の抵抗値、コンデンサのキャパシタンス、インダクタのインダクタンスは、それぞれ、可変であってもよい。この場合、上記第1~第7実施形態において用いられるRL回路およびRC回路の時定数も、可変となる。

【0121】
(変形例3)
また、上記第1~第7実施形態の抵抗は、抵抗単体として機能する素子に限らず、抵抗成分を有する素子中の抵抗成分を実現する部分であってもよい。抵抗成分を有する素子としては、例えば、ドレインとソースの間の電圧に応じた抵抗成分を発生することで、ドレインとソースの間の電圧が変化するとドレイン電流が可変になるMOSFETがある。

【0122】
また、上記第1~第7実施形態のコンデンサは、コンデンサ単体として機能する素子に限らず、キャパシタンス成分を有する素子(例えば、バリギャップダイオード)中のキャパシタンス成分を実現する部分であってもよい。

【0123】
また、上記第1~第7実施形態のインダクタは、インダクタ単体として機能する素子に限らず、インダクタンス成分を有する素子中のキャパシタンス成分を実現する部分であってもよい。
(まとめ)
以上の通り、第1~第7実施形態および変形例のフィルタ(波形選択メタサーフェス)の一部またはすべてのフィルタによれば、同一周波数電波でも長いパルス幅に対してより高い吸収特性を得る効果がある。また、パルス幅が長くなるほど吸収率が上昇するような特性を少なくとも一部のパルス幅領域で得ることができる。

【0124】
また、RL回路の時定数を変化させることにより、同一周波数電波でも長いパルス幅に対してより高い吸収特性を得る効果の電波のパルス幅に対する吸収特性の依存性を操作することができる。

【0125】
また、短いパルス幅信号と長いパルス幅信号を吸収し、その中間に位置する任意のパルス幅信号を選択的に透過する効果がある。

【0126】
また、短いパルス幅信号と長いパルス幅信号を透過し、その中間に位置する任意のパルス幅信号を選択的に吸収する効果がある。

【0127】
また、選択的な吸収特性のパルス幅に対する依存性を操作する効果がある。すなわち、短いパルス幅信号と長いパルス幅信号を吸収し、その中間に位置する任意のパルス幅信号を選択的に透過する効果、または短いパルス幅信号と長いパルス幅信号を透過し、その中間に位置する任意のパルス幅信号を選択的に吸収する効果、の2種の効果の電波のパルス幅に対する吸収特性の依存性を操作することができる。

【0128】
また、複数個の導電性部材を、分離して周期的に配置することにより、フィルタを平面形状にすることができる。平面形状にすることで電波を効率的に受信できるアンテナを構成することができる。

【0129】
以上の様に、第1実施形態ないし第3実施形態によれば、長いパルス幅信号の吸収を図ることができるとともに、短いパルスと長いパルスの間に位置するパルス幅信号を任意に透過または吸収できる波形選択はフィルタを提供することができる。よって、本発明によれば、同一周波数に対して、波形(パルス幅)によって選択する装置ができる。

【0130】
パルス幅に対する吸収率の特性が異なる第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態に基づく装置をアンテナに適用すれば、周波数資源を2次元的に拡張でき、無線通信技術の周波数枯渇問題に対する根本的な解決手段となる。

【0131】
なお、上記実施形態では、全波整流回路22と直列に繋いだRL回路30およびRC回路40から成る回路が、隣り合う導電性部材間を電気的に繋ぐ接続回路の一例に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0132】
上記実施形態の波形選択メタサーフェスは、アンテナなどの既存の無線通信機器やアプリケーションに新たな自由度となる「パルス幅」を与えて利用することができるので、周波数資源の枯渇問題を解決する可能性が高まる。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3A】
3
【図3B】
4
【図3C】
5
【図4A】
6
【図4B】
7
【図4C】
8
【図5A】
9
【図5B】
10
【図6A】
11
【図6B】
12
【図6C】
13
【図7】
14
【図8A】
15
【図8B】
16
【図8C】
17
【図9A】
18
【図9B】
19
【図9C】
20
【図10A】
21
【図10B】
22
【図11A】
23
【図11B】
24
【図11C】
25
【図12A】
26
【図12B】
27
【図13】
28
【図14】
29
【図15】
30
【図16】
31
【図17】
32
【図18】
33
【図19】
34
【図20】
35
【図21】
36
【図22】
37
【図23】
38
【図24】
39
【図25A】
40
【図25B】
41