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明細書 :シアノバクテリアにおける完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 シアノバクテリアにおける完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12P   1/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
C12N 1/21 ZNA
C12P 1/00 Z
国際予備審査の請求
全頁数 28
出願番号 特願2016-507766 (P2016-507766)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年11月20日掲載、ウェブサイトのアドレスhttp://pcp.oxfordjournals.org/content/56/2/334.full?sid=d6e4d6a8-270b-4835-b569-e22c2ac7c104 〔刊行物等〕 平成26年11月20日掲載、ウェブサイトのアドレスhttp://pcp.oxfordjournals.org/content/early/2014/12/16/pcp.pcu165.abstract 〔刊行物等〕平成26年12月6日開催、日本光合成学会若手の会第11回セミナー、立命館大学びわこ・くさつキャンパス エポック立命21K310会議室(滋賀県草津市野路東1-1-1 立命館大学内)
国際出願番号 PCT/JP2015/057046
国際公開番号 WO2015/137352
国際出願日 平成27年3月10日(2015.3.10)
国際公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
優先権出願番号 2014046585
優先日 平成26年3月10日(2014.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】藤田 祐一
【氏名】平出 優人
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
Fターム 4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AB01
4B065AC09
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065BB02
4B065BB15
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC48
要約 【課題】シアノバクテリアにおいて完全暗所従属栄養能を付与したり当該栄養能を向上させることができるのに用いることができる完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用を提供する。
【解決手段】シアノバクテリアを、シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子を不活性化するように形質転換する。この遺伝子の不活性化により、シアノバクテリアは、完全暗所従属栄養能が付与されるかあるいは増強される。
特許請求の範囲 【請求項1】
シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を備える、シアノバクテリア形質転換体。
【請求項2】
前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、請求項1に記載の形質転換体。
【請求項3】
前記不活性化は、前記cytM遺伝子が配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異である、請求項1又は2に記載の形質転換体。
【請求項4】
前記cytM遺伝子は、以下のいずれかに記載のタンパク質;
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質
(d)配列番号1で表される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質
(e)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるタンパク質であって、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする、請求項1~3のいずれかに記載の形質転換体。
【請求項5】
光合成独立栄養能と完全暗所従属栄養能とを備える、請求項1~4のいずれかに記載の形質転換体。
【請求項6】
さらに、有用物質を生産するための外来遺伝子を備える、請求項1~5のいずれかに記載の形質転換体。
【請求項7】
シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を付与するポリヌクレオチドを含む、シアノバクテリアに従属栄養能を付与するための形質転換ベクター。
【請求項8】
前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、請求項7に記載の形質転換ベクター。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の形質転換体の製造方法であって、
シアノバクテリアに、シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を付与するポリヌクレオチドで形質転換する工程、
を備える、製造方法。
【請求項10】
前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記形質転換工程は、前記ポリヌクレオチドをエレクトロポレーションで前記シアノバクテリアに導入する、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載の形質転換体を培養する工程、
を備える、シアノバクテリアの培養産物の生産方法。
【請求項13】
前記培養工程は、暗所での培養を含む、請求項12に記載の生産方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれかに記載の形質転換体を暗所で培養する工程、
を備える、シアノバクテリアの培養方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書は、シアノバクテリアにおける完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用に関する。
本出願は、2014年3月10日に出願された日本国特許出願である特願2014-046585の関連出願であり、この日本出願に基づく優先権を主張するものであり、その全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
シアノバクテリアは、藍藻(ラン藻)類とも称され、光合成独立栄養細菌である。シアノバクテリアの高い光合成能力を利用し、遺伝子改変によりバイオ燃料や有用化学物質などの有機化合物生産への適用が期待されている。
【0003】
シアノバクテリアは、高い光合成能力を有する一方、暗所での従属栄養能が必ずしも高くない。日中の太陽光などの天然光源を利用してシアノバクテリアに光合成を行わせようとするとき、夜間や曇天下で十分な太陽光等がないときには増殖速度が低下し、その結果、全体として有用物質の生産能が低下する可能性がある。その反面、むしろ、有用物質生産能が暗所において上昇する場合もある。
【0004】
シアノバクテリアとしては、Synechocystissp. PCC 6803が標準株として知られている。このシアノバクテリアは、完全に暗所に保つと生育できず、1日10分程度の光照射を要求する(この現象を、"Light-Activated Heterotrophic Growth"(LAHG)ともいう。)。一方、シアノバクテリアとしてLeptolyngbya boryana(L. boryana)(Plectonema boryanumともいう。)がある。L. boryanaは、シアノバクテリアの分類ではセクションIIIのグループに属しており、形態的には分岐していない糸状性で、ヘテロシストと呼ばれる窒素固定専門の細胞を分化しないタイプのシアノバクテリアである。L. boryanaは、Synechocystis sp. PCC 6803とは異なり、完全な暗所であってもグルコースなどの糖があれば従属栄養的に生育することが知られている。また、より完全暗所従属栄養能のより高い、すなわち、暗所でより早く増殖する変異株も単離されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Fujita et al. 1996, Plant and Cell Physiology 37: 313-323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのシアノバクテリアは、上記標準株と同様に完全暗所従属栄養能を有していないか低く、シアノバクテリアにおいて光合成独立栄養能と完全暗所従属栄養能との両立は一般的には困難であった。
【0007】
本明細書は、シアノバクテリアにおいて完全暗所従属栄養能を付与したり当該栄養能を向上させることができるのに用いることができる完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、完全暗所従属栄養能に優れるL. boryanaの変異株から当該変異の原因となる遺伝子における変異を特定した。本明細書によれば、こうした知見に基づき以下の手段が提供される。
【0009】
(1)シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を備える、シアノバクテリア形質転換体。
(2)前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、(1)に記載の形質転換体。
(3)前記不活性化は、前記cytM遺伝子が配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異である、(1)又は(2)に記載の形質転換体。
(4)前記cytM遺伝子は、以下のいずれかに記載のタンパク質;
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質
(d)配列番号1で表される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質
(e)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるタンパク質であって、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする、(1)~(3)のいずれかに記載の形質転換体。
(5)光合成独立栄養能と完全暗所従属栄養能とを備える、(1)~(4)のいずれかに記載の形質転換体。
(6)さらに、有用物質を生産するための外来遺伝子を備える、(1)~(5)のいずれかに記載の形質転換体。
(7)シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を備え、完全暗所従属栄養能を有する、シアノバクテリア。
(8)L. boryana dg5株以外のシアノバクテリアである、(7)に記載のシアノバクテリア。
(9)さらに、有用物質を生産するための外来遺伝子を備える、(7)又は(8)に記載のシアノバクテリア。
(10)シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を付与するポリヌクレオチドを含む、シアノバクテリアに完全暗所従属栄養能を付与するための形質転換ベクター。
(11)前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、(10)に記載の形質転換ベクター。
(12)(1)~(6)のいずれかに記載の形質転換体の製造方法であって、
シアノバクテリアに、シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を付与するポリヌクレオチドで形質転換する工程、
を備える、製造方法。
(13)前記不活性化は、前記cytM遺伝子の破壊又は活性が低下した前記タンパク質をコードする変異の導入である、(12)に記載の製造方法。
(14)前記形質転換工程は、前記ポリヌクレオチドをエレクトロポレーションで前記シアノバクテリアに導入する、(12)又は(13)に記載の製造方法。
(15)(1)~(6)のいずれかに記載の形質転換体を培養する工程、
を備える、シアノバクテリアの培養産物の生産方法。
(16)前記培養工程は、暗所での培養を含む、(15)に記載の生産方法。
(17)(1)~(6)のいずれかに記載の形質転換体を暗所で培養する工程、
を備える、シアノバクテリアの培養方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】cytM遺伝子がコードするシトクロムcMタンパク質と近縁の他のシトクロムcクラスIタンパク質との系統樹及びアライメント結果を示す図である。
【図2】L. boryana IAM-M101 dg5株におけるシトクロムcMタンパク質をコードする遺伝子における変異を示す図である。
【図3】完全暗所従属栄養能の原因変異を有する可能性のある遺伝子に対する相同組換えのためのDNAコンストラクトを示す図である。
【図4】形質転換後の完全暗所従属栄養能の評価結果(寒天培地)を示す図である。
【図5】形質転換後の完全暗所従属栄養能の評価結果(液体培地)を示す図である。
【図6】Synechocystis sp. PCC 6803のゲノム上でのcytM遺伝子の配置とΔcytM株の構築の概要を示す図である。
【図7】ΔcytM株の確認のためのPCR結果を示す図である。
【図8】4つの生育条件(寒天培地)での野生株(WT)とΔcytM株の生育比較結果を示す図である。
【図9】液体培地でのWTとΔcytM株の暗所従属栄養生育結果を示す図である。
【図10】寒天培地における短日及び長日条件での生育比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の開示は、シアノバクテリアにおける完全暗所従属栄養能に関連する遺伝子及びその利用に関する。本明細書の開示によれば、シトクロムcMタンパク質をコードするcytM遺伝子の不活性化を備えるようにシアノバクテリアを改変することで、シアノバクテリアに対して光合成独立栄養性を有するシアノバクテリアに完全暗所従属栄養能を付与しあるいはその完全暗所従属栄養能を増強したりできる。

【0012】
これにより、シアノバクテリアは、太陽光エネルギーなどの天然の光エネルギーを利用するとともに有機栄養による完全暗所従属栄養能を備える混合栄養性となるため、天然の光エネルギーを利用しつつこうした光エネルギーが抑制された状態であっても連続的に増殖し効率的に有用物質を生産することができる。また、改変されたシアノバクテリアは、暗所においても増殖し有用物質を生産できるため、暗所特異的に生産する有用物質も効率的に生産できる。

【0013】
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたシアノバクテリア等を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。

【0014】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。

【0015】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。

【0016】
以下、本明細書の開示について詳細に説明する。

【0017】
(シアノバクテリア形質転換体)
本明細書に開示されるシアノバクテリア形質転換体は、シトクロムcMタンパク質(Cytochrome cMともいう。)をコードするcytM遺伝子の不活性化を備えることができる。

【0018】
(シアノバクテリア)
本明細書において、シアノバクテリアとは、グラム陰性の真性細菌であり、酸素発生型の光合成を行う原核光合成微生物である。本明細書におけるシアノバクテリアは、従属栄養能とは、炭素源として、糖、脂肪酸、アミノ酸などの有機化合物によって生育又は増殖できる能力をいう。

【0019】
また、本明細書において、暗所の語は、完全暗所と限定的暗所とを含むものとする。ここで完全暗所とは、生育又は増殖期間において、生育又は増殖のための人為的な操作に必要な時間及び必要量の光照射下に置く以外は、光を遮断した状態を意味している。生育又は増殖のための人為的な操作に不可避である光照射条件とは、例えば、10日~2週間に一度、10分から30分以内程度、好ましくは20分以下の時間に光照射する条件である。一方、限定的暗所とは、1日10分~20分程度、好ましくは10分程度の光照射下に置く以外は、光を遮断した状態を意味している。

【0020】
シアノバクテリアは、完全暗所で生育できないが限定的暗所で従属的栄養能を発揮する場合がある。この現象を、"Light-Activated Heterotrophic Growth"(LAHG)ともいう。これに対して完全暗所においても従属栄養的に生育等可能な場合を完全暗所従属栄養能という。シアノバクテリアは、こうした暗所従属栄養能を有していてもよいし、有していなくてもよい。

【0021】
シアノバクテリアとしては、酸素発生型光合成を行う原核生物であり、特に限定しないで、クロオコッカス目、プレウロカプサ目、ユレモ目、ネンジュモ目、スティゴネマ目、グロエオバクター目等が挙げられる。さらには、Synechococcus elongatus PCC 7942などのSynechococcus 属、Prochlorococcus marinus MED4などのProchlorococcus属、Anabaena sp. PCC 7120などのAnabaena属、Synechocystis sp. PCC 6803などのSynechocystis属、Thermosynechococcus elongats BP-1などのThermosynechococcus属、 Gloeobacter violaceus PCC 7421などGloeobacter属、Arthrospira platensisなどのArthrospira属、Trichodesmium erythraeum IMS101などのTrichodesmium属、Acaryochloris marina MBIC11017などのAcaryochloris属が挙げられる。

【0022】
(cytM遺伝子)
cytM遺伝子がコードするシトクロムcMタンパク質は、その機能は必ずしも明らかではないが、シトクロムcオキシダーゼのCuドメイン電子供与体として機能するものと考えられている(Bernroitner et al. 2009, Biochim Biophys Acta 1787(3):135-43)。

【0023】
シアノバクテリアにおけるcytM遺伝子の塩基配列は概して既に知られている。L. boryana IAM-M101のcytM遺伝子のシトクロムcMタンパク質をコードする塩基配列は配列番号1で表され、また、そのタンパク質のアミノ酸配列は配列番号2で表される。なお、L. boryana IAM-M101及びその変異株であるL. boryana IAM-M101 dg5は、国立大学法人名古屋大学大学院生命農学研究科(日本国愛知県名古屋市千種区不老町1番)であり分譲可能である。

【0024】
L. boryanaは、糸状性のシアノバクテリアである。シアノバクテリアは、その形態的特徴からセクションI~Vに分類されているが、L. boryanaは、ヘテロシストを形成しない糸状性という形態的特徴をもつセクションIIIに分類されている。セクションIIIは、さらに糸状体の形態的特徴とガス胞の有無などにより細分されるが、等径の細胞から直線的な糸状体(分岐していない)を形成し、ガス胞がなく、細胞間にくびれがない、という特徴を示すL. boryanaはLPP group Bに属する。また、L. boryanaは、ヘテロシストと呼ばれる窒素固定専門の細胞を分化しないタイプである。

【0025】
L. boryanaは、完全暗所であってもグルコースなどの糖があれば従属栄養的に生育することができる(完全暗所従属栄養能)。また、L. boryanaは、エレクトロポレーションによってDNAを細胞へ導入し、ゲノムとの相同的組換えによって特定の遺伝子が破壊された変異株を得ることができる(Fujita et al. 1992, Plant Cell Physiology, 33: 81-92)。

【0026】
そのほか、シアノバクテリアのcytM遺伝子としては、例えば、以下のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が知られている。なお、配列番号3~12は、シトクロムcMタンパク質である。一方、配列番号13は、シトクロムcクラスIタンパク質であるが、配列番号2で表されるアミノ酸配列と30%程度の同一性(%)しか示さず、機能的にはシトクロムc6タンパク質と考えられる。

【0027】
【表1】
JP2015137352A1_000002t.gif

【0028】
本明細書で不活性化対象となるcytM遺伝子は、こうして既に開示されているもののほか、公知のシトクロムcMタンパク質のアミノ酸配列と一定の同一性を有するアミノ酸配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等であるタンパク質をコードするものであってもよい。こうした不活性化対象遺伝子は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有していることが好ましく、より好ましくは65%以上の同一性を有しており、70%以上の同一性、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、一層好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、さらに一層好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有していることが好ましい。

【0029】
また、例えば、cytM遺伝子は、アラインメントしたときに、-NCXXCH-モチーフと-TPPMP-モチーフとを備えることがタンパク質をコードするものであってもよい。これら2つのモチーフは、本明細書におけるシトクロムcMタンパク質に共通して観察される(Bernroitner et al. Biochem. Biophys. Acta, 2009, 1787: 135-143)。例えば、これらのモチーフは、配列番号2で表されるアミノ酸配列において第36位~41位及び第74位~78位にそれぞれ対応している。したがって、cytM遺伝子は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列とアライメントしたとき、これらに対応する位置にこれらのモチーフが見出され、しかも、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等であるタンパク質をコードするものであってもよい。cytM遺伝子がコードするシトクロムcMタンパク質及び近縁の他のシトクロムcクラスIタンパク質についての系統樹とアライメント結果を図1に示す。

【0030】
本明細書において、アミノ酸配列又は塩基配列において「同一性」とは、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基又は塩基の一致の程度の意味で用いられる。このとき、アミノ酸配列については、ギャップの存在及びアミノ酸の性質が考慮される(Wilbur, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:726-730 (1983))。同一性の計算には、市販のソフトであるBLAST(Altschul: J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990))、FASTA(Peasron: Methods in Enzymology 183:63-69 (1990))等を用いることができる。「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、算出することができる。

【0031】
シトクロムcMタンパク質と機能的に同等とは、完全暗所従属栄養能を発現ないし増強させる機能を実質的に同程度維持することを意味している。機能的に同等か否かは、シアノバクテリアにおいて当該遺伝子を破壊した遺伝子破壊シアノバクテリアと非破壊のシアノバクテリアとを比較して、完全暗所従属栄養能が発現若しくは増強されているか又は限定的暗所従属栄養能が増強されて完全暗所従属栄養的になっていることかで決定することができる。すなわち、遺伝子破壊シアノバクテリアにおいて、完全暗所従属栄養能が発現・増強されるか完全暗所従属栄養的になっているとき、その遺伝子がコードするタンパク質は、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等であると決定できる。また、当該遺伝子は、cytM遺伝子と機能的に同等であると決定できる。

【0032】
また、cytM遺伝子は、公知のシトクロムcMタンパク質のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸の挿入、置換、欠失及び付加されたアミノ酸配列を有してシトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするものであってもよい。こうしたタンパク質は、例えば、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、一層好ましくは1~2個のアミノ酸の挿入、置換、欠失及び付加を備えることができる。

【0033】
こうしたタンパク質は、公知のシトクロムcMタンパク質のアミノ酸配列において1又は数個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~2個程度の保存的置換を有するアミノ酸配列であることが好ましい。

【0034】
ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。

【0035】
さらに、cytM遺伝子としては、公知のシトクロムcMタンパク質をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする相補性を有するDNAであって、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするものであってもよい。

【0036】
「ストリンジェントな条件下」とは、当業者が通常使用し得るハイブリダイゼーション緩衝液中で、温度が40℃~70℃、好ましくは60℃~65℃などで反応を行い、塩濃度が15~300mmol/L、好ましくは15~60mmol/Lなどの洗浄液中で洗浄する方法に従って行なうことができる。温度、塩濃度は使用するプローブの長さに応じて適宜調整することが可能である。さらに、ハイブリダイズしたものを洗浄するときの条件は、0.2または2×SSC、0.1%SDS、温度20℃~68℃で行うことができる。ストリンジェント(high stringency)な条件にするかマイルド(low stringency)な条件にするかは、洗浄時の塩濃度または温度で差を設けることができる。塩濃度でハイブリダイズの差を設ける場合には、ストリンジェント洗浄バッファー(high stringency wash buffer)として0.2×SSC、0.1%SDS、マイルド洗浄バッファー(low stringency wash buffer)として2×SSC、0.1%SDSで行うことができる。また、温度でハイブリダイズの差を設ける場合には、ストリンジェントの場合は68℃、中等度(moderate stringency)の場合は42℃、マイルドの場合は室温(20℃~25℃)でいずれの場合も0.2×SSC、0.1%SDSで行えばよい。

【0037】
cytM遺伝子は、公知のシトクロムcMタンパク質をコードする塩基配列と一定の同一性を有する塩基配列を有し、シトクロムcMタンパク質と機能的に同等であるタンパク質をコードするものであってもよい。こうした不活性化対象遺伝子は、例えば、公知のシトクロムcMタンパク質をコードする配列番号1で表される塩基配列と60%以上の同一性を有していることが好ましく、より好ましくは65%以上の同一性を有しており、さらに好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、一層好ましくは90%以上、より一層好ましくは95%以上、さらに一層好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有していることが好ましい。

【0038】
本願明細書において、「アミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸の挿入、置換または欠失、あるいはその一方または両末端への付加がなされた」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、または天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等によりなされたことを意味する。

【0039】
(cytM遺伝子の不活性化)
シアノバクテリアにおいてcytM遺伝子の不活性化を備えている。ここで遺伝子の不活性化とは、結果的にその遺伝子がコードするタンパク質の活性が低下ないし喪失するものであればよい。したがって、遺伝子の不活性化とは、遺伝子破壊、転写阻害、転写産物の分解、翻訳阻害、不活性なタンパク質の翻訳等が挙げられる。

【0040】
こうした遺伝子の不活性化は、概して、遺伝子の破壊の形態で行われる.遺伝子破壊は、例えば、cytM遺伝子への外来配列の挿入、cytM遺伝子遺伝子全体またはその一部の外来配列による置換、cytM遺伝子の全部または一部の欠失によって行うことができる。外来配列の塩基数並びに置換、欠失、および挿入の位置は、シトクロムcMタンパク質の発現や活性が実質的に喪失する限り、特に限定されない。なお、遺伝子組換え体の選別の観点から、外来配列は選択マーカー遺伝子であることが好ましい。選択マーカー遺伝子は公知のものから適宜選択して使用でき、好ましくは薬剤に対する耐性遺伝子等が挙げられる。

【0041】
cytM遺伝子の破壊にあたっては、好ましくは、cytM遺伝子の全部または一部を外来遺伝子に置換することにより行うことができる。置換されるcytM遺伝子の一部としては、例えば、シトクロムcMタンパク質のC末端側を置換する形態が挙げられる。

【0042】
また、cytM遺伝子の破壊にあたっては、cytM遺伝子がコードするタンパク質に変異を導入して活性が低下したタンパク質を産生させるようにしてもよい。例えば、コード配列において塩基を挿入したり、欠損させたりすることにより、フレームシフト変異であってもよいし、タンパク質の一部を異なるアミノ酸に置換するものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。

【0043】
遺伝子破壊の技術は当業者に公知であり、当業者であれば公知の方法に従って遺伝子の破壊を実施することができる。遺伝子破壊は、概して、標的となる遺伝子の塩基配列に改変を施したポリヌクレオチド(好ましくは選択マーカー遺伝子)を細胞に導入し、導入したポリヌクレオチドと標的遺伝子との間で相同組換えを生じさせ、相同組換えが生じた細胞を選択することにより、標的遺伝子に変異を導入することができる。

【0044】
また、cytM遺伝子を不活性化するには、例えば、シトクロムcMタンパク質を配列番号14で表されるアミノ酸からなるタンパク質をコードする変異であってもよい。

【0045】
本明細書に開示される形質転換体は、cytM遺伝子の不活性化を備えているシアノバクテリアである。内在性のcytM遺伝子を備える場合において、そのcytM遺伝子の不活性化を付与することで、そのシアノバクテリアに暗所従属栄養能を付与しあるいは増強することができる。

【0046】
(形質転換ベクター及び形質転換体の作製)
シアノバクテリアにcytM遺伝子の不活性化を付与するには、既に説明したcytM遺伝子の各種形態の不活性化を付与するためのポリヌクレオチドを備える形質転換ベクターを用いることができる。ポリヌクレオチドは、概してDNA及びRNAであるが、典型的にはDNAである。この形質転換ベクターは、シアノバクテリアに暗所従属栄養能を付与するためのベクターとして用いることができる。また、上記ポリヌクレオチド(例えば、少なくとも標的となるcytM遺伝子を破壊し置換するための相同性領域を備えるポリヌクレオチドカセット)は、それ自体、シアノバクテリアに暗所従属栄養能を付与するための暗所従属栄養能付与剤として利用することができる。

【0047】
形質転換ベクター上のポリヌクレオチドは、例えば、シアノバクテリアの染色体上の1又は2以上のcytM遺伝子を破壊しあるいは変異等を導入可能にそれぞれ適切な相同組換え領域を備えるとともに、必要に応じて、例えば外来遺伝子等をコードする置換領域や、薬剤耐性マーカー領域や不活性シトクロムcMタンパク質を産生させるための変異のための置換領域)を備えている。

【0048】
形質転換ベクターは、さらに、1つ以上のエンハンサー若しくはサイレンサー、オペレーター、ターミネーター、ポリアデニル化シグナル、1つ以上の薬剤耐性遺伝子、外来遺伝子を挿入するためのクローニング部位などを含んでいてもよい。

【0049】
薬剤耐性遺伝子としては、以下に限定されるものではないが、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。

【0050】
形質転換ベクターは、特にその形態を特定しないで、各種形態を採ることができる。DNA断片であってもよいが、典型的にはプラスミドベクターであるが、例えば、ウイルスベクターなどの非プラスミドベクターも使用できる。また好ましくは、本明細書に開示される形質転換ベクターは、複数の宿主細胞に適合させるためのシャトルベクターである。例えば、大腸菌及びシアノバクテリアのいずれの細胞にも導入可能であり、これらの宿主細胞中で外来遺伝子を発現し得るベクターが挙げられる。このようなシャトルベクターは大腸菌を用いて大量に複製することが可能である。

【0051】
本明細書の開示の形質転換ベクターは、シアノバクテリアで高効率に遺伝子を発現させ得る限り、母体となるベクターの由来は特に限定されない。例えば、シアノバクテリアで使用されるベクターであるpVZ321(Zinchenko VV, Piven IV, Melnik VA, Shestakov SV (1999) Genetika 35:291-296)、pMB1(Kreps S, Ferino F, Mosrin C, Gerits J, Mergeay M, Thuriaux P (1990) Mol. Gen. Genet. 221:129-133)、RSF1010(Meyer R (2009) Plasmid 62:57-70)などの公知のベクターを利用することができる。ベクターに各領域を挿入するには、適宜リガーゼ反応等を利用することができる。

【0052】
形質転換ベクターは、さらに、シアノバクテリアで発現させようとする外来遺伝子を備えていてもよい。外来遺伝子としては、形質転換ベクター等により外部から導入される遺伝子であればよく、シアノバクテリアに内在する遺伝子であってもよい。外来遺伝子としては、各種の有用物質あるいは当該有用物質を生産するための1又は2以上の酵素をコードするものであってもよい。例えば、医薬成分として有用なタンパク質(例えばインターフェロン、インスリン、エリスロポエチン、ヒト成長ホルモン、各種サイトカイン)、試薬として有用なタンパク質(例えばDNA/RNAポリメラーゼ、プロテアーゼ、制限酵素)、蛍光タンパク質(例えばGFP、DsRed、フィコシアニン)、バイオプラスチック製造関連タンパク質(例えばポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)又はポリヒドロキシ吉草酸(PHV)合成酵素)、アミノ酸合成酵素、バイオ燃料関連合成酵素(例えばトリグリセリド、脂肪酸(ステアリン酸若しくはオレイン酸など)又は炭化水素(アルカン/アルケン)合成酵素、水素生産酵素)、抗菌活性物質合成酵素、機能性物質合成酵素(機能性物質としては、例えばγ-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸、β-カロテン、アスタキサンチンがある)などをコードする遺伝子が挙げられ、特に、バイオ燃料関連合成酵素遺伝子が好ましい。また、脂肪酸生産のためのチオエステラーゼ遺伝子、ニトロゲナーゼの構造遺伝子、nifE, nifN, nifH, nifU, nifS, nifB, nifP, nifM nifV, nifZ, nifX, nifW, hesA, hesB, fdxB, fdxN, fdxHなどのニトロゲナーゼの金属中心生合成に関わる遺伝子、ヒドロゲナーゼ構造遺伝子、hydE, hydGなどのヒドロゲナーゼの金属中心生合成に関わる遺伝子が挙げられる。こうした有用物質等をコードする遺伝子は、GenBankなどの既存のデータベースに登録されている塩基配列又はアミノ酸配列の情報から設計したプライマー又はプローブを利用して、PCR法又はハイブリダイゼーション法などの公知の方法により取得することができる。

【0053】
シアノバクテリアに対して本明細書開示の形質転換ベクターを用いてシアノバクテリアについての公知の形質転換法を用いることで、シアノバクテリアの形質転換体を得ることができる。シアノバクテリアの形質転換法としては、例えば、自然形質転換法及びエレクトロポレーション法を使用することができる。また、接合伝達法を用いることができる。自然形質転換法とは、シアノバクテリアと形質転換体ベクターとを混合するだけで遺伝子導入が可能な方法である。エレクトロポレーション法とは、シアノバクテリアと形質転換体ベクターの混合溶液に電気パルスをかけることで、遺伝子導入を行う方法である。接合伝達法とは、導入したい遺伝子を挿入したプラスミドを大腸菌に形質転換した後、その大腸菌とシアノバクテリアを混合し遺伝子導入を行う方法である。これらの方法は、当業者であれば適宜実施することができる。また、形質転換体を選択するには、形質転換ベクターに保持させた薬剤耐性遺伝子等を用いることができる。

【0054】
こうして得られた形質転換体であるシアノバクテリアは、本来備えている光合成独立栄養能と、初めて付与された暗所従属栄養能又は増強された暗所従属栄養能を備えることができる。暗所従属栄養能の有無や程度は、暗所において、グルコースなどの有機栄養成分を含む培地を用いた従属栄養条件下にて形質転換体を培養した際に、生育又は増殖を観察することで判断することができる。

【0055】
本開示の形質転換体は、暗所従属栄養能が付与ないし増強されているために、太陽光などの天然の光エネルギーを利用しつつかつ当該光エネルギーの枯渇状態(暗所)であっても、従属栄養的に生育・増殖できるため、昼夜を通して連続的な生育等と物質生産が可能となる。すなわち、効率的で実用的な生育等と物質生産が可能となっている。また、必要に応じて暗所従属条件下においてのみ、あるいは光エネルギーの存在下でのみ生育等させることで、生産させる物質対象を異ならせることもできる。

【0056】
本開示の形質転換体は、さらに、有用物質を生産するための外来遺伝子を備えることもできる。こうした形質転換体によれば、光エネルギーと有機化合物とを利用して効率的に及び/又は選択的に有用物質を生産することができる。

【0057】
なお、以上の開示によれば、本明細書に開示される形質転換体の製造方法も提供される。また、以上の開示によれば、形質転換体でないが、cytM遺伝子の不活性化を備え、暗所従属栄養能を有する、シアノバクテリアも提供される。シアノバクテリアに対して、cytM遺伝子の不活性化や不存在に基づいてスクリーニングすることで天然のシアノバクテリアから、暗所従属栄養能に優れるシアノバクテリアを容易に選択することができるからである。天然のシアノバクテリアとしては、L. boryana以外のシアノバクテリアを対象とすることが好ましい。また、こうしてスクリーニングされたシアノバクテリアに対して有用物質を生産するための外来遺伝子を上記方法に準じて導入して形質転換することで、実用的なシアノバクテリアを得ることができる。

【0058】
(シアノバクテリアの培養産物の生産方法)
本明細書の開示によれば、シアノバクテリアの培養産物の生産方法も提供される。この生産方法は、本明細書に開示されるcytM遺伝子の不活性化を備えるシアノバクテリア又はシアノバクテリア形質転換体を培養する工程を備えることができる。この生産方法によれば、暗所従属栄養能が付与されあるいは増強されているために、連続的、効率的、あるいは選択的にシアノバクテリアを培養し、その培養産物を得ることができる。

【0059】
本生産方法としては、特に、完全暗所従属栄養能が付与・増強又は完全暗所従属栄養能的に改変されているために暗所での従属栄養条件での培養工程を備えることが好ましい。

【0060】
培養産物としては、培養菌体及び培養上清を含むことができるが、その一部であってもよい。また、シアノバクテリアにおいて外来遺伝子が導入されて外来遺伝子の発現に基づく有用物質を生産している場合には、当該有用物質も培養産物に含まれる。

【0061】
培養工程としては、太陽エネルギーなどの天然の光エネルギー条件、従属栄養条件等を適宜組み合わせることができる。その他の培養条件としては、公知のシアノバクテリアの培養条件を採用することができる。

【0062】
以上の開示によれば、シアノバクテリアの培養方法も提供される。本培養方法は、cytM遺伝子の不活性化を備えるシアノバクテリア又はシアノバクテリア形質転換体を暗所で培養する工程を備えることができる。この培養方法によれば、光エネルギーがなくても、シアノバクテリアを生育・増殖させることができる。また、光エネルギー下での独立栄養条件下でもシアノバクテリアを生育・増殖させることができ、効率的な培養が可能となる。
【実施例1】
【0063】
(dg5の単離)
Leptolyngbya boryana(旧名Plectonema boryanum)IAM-M101の完全暗所従属栄養能が向上した自然変異株dg5は、1991年藤田によって野生株から単離された(Fujita et al. 1996, Plant and Cell Physiology 37:313-323)。
【実施例2】
【0064】
(野生株のゲノム配列の再決定)
野生株(WTo)のゲノム配列を後述のようにして決定し、既知のdg5ゲノム配列との比較を行った。
【実施例2】
【0065】
ゲノムDNAの抽出には以下のようにWizard Genomic DNA Purification kit (Promega)を用い、マニュアルを一部改変して行った。WToの細胞約20 mgを450 μlの緩衝溶液(50 mM Tris-HCl pH 8.0, 50 mM NaCl, 5 mM EDTA)に懸濁し、50 μLのリゾチーム (2.5 mg/50 μl)を加えた。その後、37 ℃で1時間静置した。サンプルを遠心し (15,000 rpm, 2分, 室温)、上清を除いた。その後の沈殿にNuclei Lysis Solution 0.6 mlを加える手順からは、Wizard Genomic DNA Purification kit (Promega)のマニュアルにそって行った。
【実施例2】
【0066】
ゲノム配列決定の方法として高速シークエンサーの一つSOLiD system 5500を用いた。Paired-endでのゲノムライブラリーをマニュアルに沿って作成し、シークエンスを行った。結果、ライブラリーDNA断片4,802,686本の両側からのシークエンンスデータを得た。なお、この際対照としてdg5のゲノム配列の同様にSOLiD system 5500を用いてシークエンスデータを得た。このデータを解析ソフトBioScope (Applied Biosystems)を用い、dg5ゲノム配列をレファレンスとしてデータのマッピングを行った後、一塩基多型(SNP)と挿入欠失(Indel)解析を行った。その際の設定は初期設定を用いた。
【実施例2】
【0067】
ゲノム配列の再決定を行った結果、dg5とWToのゲノムには4か所の差異が存在していた(表2)。ただし、dg5由来の他の変異株のゲノム配列も同様に再決定しており、4か所のうち1か所についてはこのdg5由来の変異株はWToと同じ配列であったため、この変異はdg5が単離された後、最近になって固定した変異だと考え、候補から除外した。その結果、残った3か所について該当部位を含む領域を表3に示したプライマーで、WToの細胞を用いたコロニーダイレクトPCRで増幅し、その断片についてサンガー法を用いて塩基配列を決定し、WToの配列がdg5の配列と異なっていることを確認した。なお、サンガー法によるシークエンスの際に用いたプライマーはPb1305262-r、Pb3151287-f、Pb5175165-fである。
【実施例2】
【0068】
【表2】
JP2015137352A1_000003t.gif
【実施例2】
【0069】
【表3】
JP2015137352A1_000004t.gif
【実施例2】
【0070】
図2に、cytM遺伝子におけるdg5における変異の概要を示す。フレームシフト変異によりタンパク質のトランケートが生じていることがわかった。
【実施例3】
【0071】
(形質転換によるWToへの dg5変異の導入に用いたプラスミドの構築)
実施例2で同定したdg5とWToとの3つの遺伝的差異のうちどれが完全暗所従属栄養生育能を促進するのかを突き止めるため、それぞれのdg5型の塩基配列を個別にWToに導入した。
【実施例3】
【0072】
方法としてはオーバーラップPCRを用いてdg5変異をもつ3つの断片を連結し、これを高コピープラスミドであるpUC19のBamHIまたはBamHIとKpnIサイトにクローニングした。この際、大腸菌JM105株をプラスミド構築に用いた。使用したprimerの塩基配列を表4に示し、目的DNA断片におけるアニーリング部位を図3に示した。相同二重組換えの足場となる二つの断片はdg5ゲノムを鋳型としてprimer-f1とprimer-r1の組み合わせ、およびprimer-f3とprimer-r3の組み合わせでPCRを行った。またカナマイシン耐性カセットはprimer-f2とprimer-r2を用いてpUCK121を鋳型にして増幅した。各断片は増幅に用いたプライマーへの塩基付加によって、連結させる断片同士の末端30 bpの同一配列をもつ。これらの3つの断片を鋳型としてprimer-f1およびprimer-r3を用いて二次PCRを行うことで、3つの断片が連結した目的のDNA断片を得た。この断片は制限酵素サイトを持つようにprimer-f1およびprimer-r3が設計されている。BamHI、またはBamHIとKpnIで制限酵素処理を行い、pUC19の対応するクローニングサイトにクローニングした。
【実施例3】
【0073】
【表4】
JP2015137352A1_000005t.gif
【実施例3】
【0074】
またChr;5175165の変異に関しては変異によってフレームシフトが生じ遺伝子の機能欠損を引き起こすと想定できたため、遺伝子のコード領域全てを除いた完全欠損株を作製するためのプラスミドを同様に作製した。
【実施例3】
【0075】
また対照株の作製のため、各々のdg5変異を有さない薬剤耐性マーカーのみを挿入されたプラスミドも同時に作成した。そのために連結する3つのDNA断片のうちdg5変異を保持した断片のみPCRによって増幅する段階でdg5ゲノムではなくWToのゲノムを鋳型としPCRを行い、その他は上記に記したプラスミド構築の手順に従った。
【実施例3】
【0076】
WToへの二重相同組換えはエレクトロポレーション法を用いた(Fujita et al. 1992, Plant Cell Physiology, 33: 81-92)。形質転換には、作製したプラスミドを鋳型としてprimer-f1およびprimer-r3を用いて得たPCR断片を使用した。WToの培養はBG-11 (20 mM HEPES-KOH; pH 7.5含有、以下BG-11Hとする)、寒天(BactoAgar, Difco)15 % (w/v)の寒天培地を用いた。また、培養の光源として白色蛍光灯(FLR40SW/M/36-B, 日立)を用いた。30℃、寒天培地で光合成的に生育させたWToの細胞を水で回収し、150mL Bottle Top Vacuum Filter, 0.22 μm Pore (Corning)上において吸引した後、滅菌した冷水に再懸濁し、その後吸引して水を除いた。この操作を計3回行うことで細胞懸濁液から塩を除いた。この細胞を0.5-2.0 mlの冷却した滅菌水に再懸濁し、これをエレクトロポレーションに供するコンピテントセルとした。
【実施例3】
【0077】
コンピテントセル50 μlと各PCR断片10 μlを混合し、電圧1410 V、抵抗250Ω、静電容量25 μF、電極間距離1 mmの設定で減衰パルス処理を行った。パルス処理した細胞を350 μlのBG-11 (20 mM HEPES-KOH; pH8.2含有)を加えて回収し、ナイロン膜(Amersham HybondTM-N+, GE Healthcare)を載せた寒天培地BG-11Hに広げた。30℃、光強度2 μmol photon m-2s-1で2日間生育させた後、ナイロン膜とともにカナマイシン(終濃度15 mg/L)を添加した寒天培地BG-11Hに移し、光強度50 μmol photon m-2s-1照射下で薬剤耐性株の選抜を行った。
【実施例3】
【0078】
2週間後、カナマイシン耐性株として選抜されたdg5変異個別導入株をdm1 (Chr;1305262変異を有する)、dm2 (Chr;3151287を有する)、dm3 (Chr;5175165を有する)、dm3n (Chr;5175165を含む遺伝子(ORF番号LBDG_45050)の完全欠損株)と称する。これらの変異株のdg5変異導入の確認のため、表3に示したprimer-f1とprimer-r3を用いてPCRにより、細胞から直接DNA断片を増幅した。同時に、カナマイシン耐性カセットが二重組換えによってゲノムに挿入されていることを確認した。
【実施例3】
【0079】
さらにそのDNA断片をアガロースゲルから精製後、鋳型として用い、Chr;1305262はPb1305262-fとprimer-r2の組み合わせ、Chr;3151287に対してはPb3151287-fとprimer-r2の組み合わせ、Chr;5175165に対してはprimer-f2とPb5175165-rの組み合わせで二次PCRを行い、得られたDNA断片をサンガー法によってシークエンスし、dg5変異の導入を確認した。なお、サンガー法によるシークエンスの際に用いたプライマーは表1に示したPb1305262-f、Pb3151287-f、Pb5175165-rである。
【実施例4】
【0080】
(形質転換体の完全暗所従属栄養生育の比較)
実施例3で得られた4種の変異株およびその対照株(dm1c, dm2c, dm3c;カナマイシン耐性を示すが該当する変異が導入されていない株)を用いて完全暗所従属栄養条件での生育比較を行った。
【実施例4】
【0081】
生育条件として30℃、暗所または明所(光強度50 μmol photon m-2s-1)における30 mMグルコース添加および無添加の寒天培地BG-11H上でのdg5、WToおよび上記の変異株の生育を確認した。完全暗所従属栄養条件では14日、明所光合成条件では3日間生育させた。なお、培養の光源として白色蛍光灯(FLR40SW/M/36-B, 日立)を用いた。結果を図4に示す。
【実施例4】
【0082】
また、WT、dg5、dm3およびdm3cの4株について、暗所従属栄養生育および光合成独立生育を液体培養によって評価した。前培養として、30 ℃、光強度60 μmol photon s-1 m-2で光合成的に3日間生育させた。この際、培養容器として25 cm2 Tissue Culture Flask (IWAKI)を用い、振盪はROTARY SHAKER NR-20 (TAITEC)で行った(回転速度140 rpm)。濁度(OD730)がおよそ0.4に達した前培養を種菌とし、初期濁度OD730=0.05となるように新しい液体培地に接種し、各条件で生育をモニターした。暗所従属栄養生育の評価では、アルミ箔で遮光した25 cm2 Tissue Culture Flask (IWAKI)に、最終濃度30 mMグルコース添加の15 ml BG-11培地を入れ,回転速度140 rpmで震盪培養した。また、光合成独立栄養生育の評価にはグルコースを含まない15 ml BG-11培地を用い、遮光せずに60 μmol photon s-1 m-2の光強度で、他の条件は同様にして培養した。なお、培養の光源として白色蛍光灯(FLR40SW/M/36-B, 日立)を用いた。結果を図5に示す。
【実施例4】
【0083】
図4に示すように、明所での光合成的生育はグルコースの有無に関わらず全ての株で有意な差は認められないが、暗所ではdm3およびdm3nのみがdg5と同様に顕著に良好な生育を示した。これはChr;5175165のdg5への変異(一塩基挿入)がLBDG_45050にフレームシフトを生じ遺伝子欠損を引き起こすことで生じたと推察される。LBDG_45050は相同性検索の結果、シトクロムcMをコードすることが分かった。シトクロム cMの欠損がdg5の完全暗所従属栄養生育能を促進した原因変異であることを示している。
【実施例4】
【0084】
また、図5に示すように、液体培地においても、明所では全ての株で有意な差は認められないが、暗所ではdm3およびdm3nのみがdg5と同様に顕著に良好な生育を示した。dg5、dm3は光独立栄養生育条件では、WT、dm3cと同様に生育するが、暗所従属栄養生育条件では、増殖速度および最終到達濁度が有意に高いことが確認された。
【実施例5】
【0085】
本実施例では、シアノバクテリア(Synechocystis sp. PCC 6803)のチトクロムcM欠損株を作製して、従属栄養的生育の向上について評価した。すなわち、図6に示すように、cytM (sll1245) のコード領域全体をジェンタマイシン耐性カセットと置換することでΔcytM株を単離した。図6中、黒いバーはΔcytM単離のために構築したプラスミドにもちいたゲノム領域を示す。
【実施例5】
【0086】
ΔcytM株においてcytM遺伝子がジェンタマイシン耐性カセット(gen) と完全に置換していることを、このカセットに特異的なプライマーf4, r4でWT(レーン1)とΔcytM株(レーン2)のコロニーをもちいたPCRにより確認した。結果を図7に示す。レーン3は遺伝子破壊にもちいたプラスミドを鋳型としたPCRの結果である。これらの結果により、ΔcytM株において確実にcytM遺伝子が破壊されていることがわかった。
【実施例5】
【0087】
次に、WTとΔcytM株について、光合成独立栄養条件(レーン1)、光合成混合栄養条件(レーン2)、LAHG条件(レーン3)および暗所従属栄養条件(レーン4)での生育を比較した。OD730が0.1の細胞懸濁液を5.0μlスポットした。図8中、レーン1と2ではBG-11H培地で3日間、レーン3と4ではグルコース含有BG-11H培地で10日間培養を行った。なお、LAHG (Light-activated heterotrophic growth光活性化従属栄養) 条件とは、24時間ごとに15分の光照射を行い、それ以外は暗所で培養を行ったことを示す。結果を図8に示す。
【実施例5】
【0088】
図8に示すように、光合成条件(レーン1)ではΔcytMはWTと変わりがないが、グルコースによる混合栄養条件(レーン2)ではWTよりも有意に生育が促進された。さらに、LAHG条件(レーン3)ではその差はもっとも顕著となった。なお、本研究で用いたWT(“YF”)は、LAHG条件での生育がよくない株である。さらに、暗所従属栄養条件(レーン4)ではWTはまったく生育しないが、ΔcytMは明らかな生育が見られた。
【実施例5】
【0089】
次に、グルコース含有BG-11H液体培地(15ml) にてWTとΔcytM株の培養ボトルをアルミホイルで覆い完全に光を遮蔽し140rpmの旋回培養(シェーカーNR-20、タイテック)を行い、生育はOD730(分光光度計UV-1700、島津)により評価した。結果を図9に示す。
【実施例5】
【0090】
図9に示すように、液体培地では、WTの生育は24時間以降ほとんど停止してしまうが、ΔcytM株は世代時間約33時間(24~92時間にかけての対数増殖期)で生育し、寒天培地の結果よりも明瞭に増殖が促進していることが確認された。
【実施例5】
【0091】
さらに、寒天培地BG-11Hにて光合成的に6日間生育させたSynechocystis sp. PCC 6803のWTとΔcytM株を滅菌水に懸濁し、濁度(OD730)を0.1に調製し、5.0μlを寒天培地BG-11H(光合成独立栄養)とグルコース(5mM)含有BG-11H(光合成混合栄養)寒天培地にスポットした。短日条件 (8L16D) では8時間明条件-16時間暗条件、長日条件(16L8D)では16時間明条件-8時間暗条件でいずれも4日間培養した。結果を図10に示す。
【実施例5】
【0092】
図10に示すように、光合成条件では短日、長日いずれもWTとΔcytM株の生育に差が見られないが、グルコース存在下の混合栄養条件では、特に短日条件においてΔcytMの生育がWTよりも促進していることがわかる。また、長日条件でもΔcytMの生育は有意にWTよりも良好に見える。この結果から、明暗周期を伴う環境においてもグルコース存在下であればΔcytM株がよりよい生育を示すことがわかった。
【配列表フリ-テキスト】
【0093】
配列番号15~42:プライマー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9