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明細書 :緑藻による希土類元素の回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-061739 (P2017-061739A)
公開日 平成29年3月30日(2017.3.30)
発明の名称または考案の名称 緑藻による希土類元素の回収方法
国際特許分類 C22B   3/18        (2006.01)
C22B  59/00        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
B01J  20/22        (2006.01)
C12N   1/12        (2006.01)
FI C22B 3/18
C22B 59/00 ZNA
C12N 1/00 P
C02F 1/28 A
B01J 20/22 B
C12N 1/12 C
C12N 1/12 Z
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2015-208673 (P2015-208673)
出願日 平成27年10月23日(2015.10.23)
優先権出願番号 2015187382
優先日 平成27年9月24日(2015.9.24)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】越川 博元
【氏名】古橋 康弘
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000914、【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4D624
4G066
4K001
Fターム 4B065AA83X
4B065AC20
4B065BA22
4B065BD22
4B065CA01
4B065CA55
4D624AA09
4D624AB16
4D624BA19
4D624BB01
4D624BB08
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4D624DB20
4G066AB29B
4G066CA46
4G066DA07
4K001AA39
4K001AA40
4K001DB05
4K001DB12
4K001DB23
4K001DB35
4K001DB36
要約 【課題】環境汚染を起こさず、環境への負荷を低減しつつ、低濃度の希土類元素を高い選択性で回収できる希土類元素の回収方法を提供する。
【解決手段】イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を含む、希土類元素の回収方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を含む、希土類元素の回収方法。
【請求項2】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程をpH5~9で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
希土類元素がイットリウム、ユーロピウム、ネオジム、またはジスプロシウムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を、グルコースの存在条件下で行う、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
藻体処理物が加熱乾燥物、凍結乾燥物、または減圧乾燥物である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物が担体に固定化され、または膜に包含されている、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus属に属する緑藻である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus acuminatusに属する緑藻である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を含む、希土類元素の回収剤。
【請求項10】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus属に属する緑藻である、請求項9に記載の回収剤。
【請求項11】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus acuminatusに属する緑藻である、請求項9または10に記載の回収剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、選択性の高い希土類元素の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素(レアアース)は、蛍光体、蓄電池や発光ダイオードなどの電子部品の性能向上に必要不可欠な材料である。日本の廃棄物中には、世界の埋蔵量の10位内に該当する量の希土類元素が含まれており、希土類元素を廃棄物から回収し、国内で循環利用する技術の開発が求められている。従来、希土類元素を回収するために強酸等の化学薬品を使用する方法が知られているが、危険性や毒性が高く、環境への負荷が大きいという課題を有している。
【0003】
一方、環境への負荷が小さい希土類元素の回収方法として、微生物の生物作用によって希土類元素を吸着・分離する技術が開発されている。
【0004】
特許文献1は、水溶液中の希土類イオンをクロレラ、あるいはスピルリナを用いて吸着する方法を開示する。しかし、クロレラを用いた方法では、金属に対する選択性が十分ではなく、希土類元素以外の金属も混入してしまう。
【0005】
特許文献2、および非特許文献1~2は、溶液中で、硫酸性温泉より単離された紅藻を培養することにより、溶液に含まれる金属イオンを回収または除去する方法を開示する。しかし、希土類元素はpH2.5の条件下で回収されており、金属に対する選択性を向上するためには、さらにpH1という強酸条件にすることが必要である。工業スケールで回収する場合にこれらのpH条件で回収すると、反応条件の管理が困難であり、環境への負荷が大きいことが問題となる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平6-212309号公報
【特許文献2】特開2013-67826号公報
【0007】

【非特許文献1】Minoda et al.,Appl Microbiol Biotechnol 2015 Feb;99(3):1513-9
【非特許文献2】筑波大学・産業技術総合研究所・大阪大学・科学技術振興機構プレスリリース「硫酸性温泉紅藻が強酸性条件下でレアアースを効率的に吸収する」2014年10月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
環境汚染を起こさず、環境への負荷を低減しつつ、低濃度の希土類元素を高い選択性で回収できる希土類元素の回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を含む、希土類元素の回収方法に関する。
【0010】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を、pH5~9で行うことが好ましい。
【0011】
希土類元素がイットリウム、ユーロピウム、ネオジム、またはジスプロシウムであることが好ましい。
【0012】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を、グルコースの存在条件下で行うことが好ましい。
【0013】
藻体処理物が加熱乾燥物、凍結乾燥物、または減圧乾燥物であることが好ましい。
【0014】
イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物が担体に固定化され、または膜に包含されていることが好ましい。
【0015】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus属に属する緑藻であることが好ましい。
【0016】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus acuminatusに属する緑藻であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を含む、希土類元素の回収剤に関する。
【0018】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus属に属する緑藻であることが好ましい。
【0019】
イカダモに属する緑藻が、Scenedesmus acuminatusに属する緑藻であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の希土類元素の回収方法および回収剤によれば、低濃度の希土類元素を、環境に過大な負荷を掛けることなく選択的に回収でき、資源の有効利用と地球環境の保全に顕著な寄与をすることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】緑藻によるEuの収着を示す。
【図2】緑藻によるYの収着を示す。
【図3】Sample8によるEuの収着の経時変化を示す。
【図4】図4A~Cは、それぞれalgaeA~Cの顕微鏡観察図である。
【図5】Sample8を構成するalgaeA~CによるEuの収着を示す。
【図6】図6AはalgaeAによるEuの収着を示す。図6BはalgaeAによるYの収着を示す。
【図7】図7AはalgaeBによるEuの収着を示す。図7BはalgaeBによるYの収着を示す。
【図8】図8Aは無炭素・明条件、図8Bは無炭素・暗条件、図8Cはグルコース添加・明条件、図8Dはグルコース添加・暗条件での、algaeAによる金属の収率を示す。
【図9】緑藻によるNd、Eu、Dy、Yの収着を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を希土類元素と接触させる工程を含む、希土類元素の回収方法に関する。

【0023】
本発明では、緑藻として、イカダモを使用する。イカダモを使用することにより、希土類元素以外の元素の混入を抑えつつ、希土類元素を選択的に回収できる。
イカダモとしては、Scenedesmus属、またはDesmodesmus属に属する緑藻が挙げられる。本発明では、これらの中でもScenedesmus属に属するイカダモを使用することが好ましい。Scenedesmus属は、Acutodesmus属という別名で呼称されることもある。

【0024】
Scenedesmus属としては、Scenedesmus acuminatus(Acutodesmus acuminatus)、Scenedesmus abundans、Scenedesmus acutus、Scenedesmus armatus、Scenedesmus balatonicus、Scenedesmus brasiliensis、Scenedesmus carinatus、Scenedesmus circumfusus、Scenedesmus communis、Scenedesmus costatus、Scenedesmus dactyloccoides、Scenedesmus denticulatus、Scenedesmus dispar、Scenedesmus elegans、Scenedesmus ecornis、Scenedesmus granulatus、Scenedesmus intermedius、Scenedesmus javanensis、Scenedesmus longispina、Scenedesmus maximus、Scenedesmus microspina、Scenedesmus nanus、Scenedesmus oahuensis、Scenedesmus opoliensis、Scenedesmus pannonicus、Scenedesmus pecsensis、Scenedesmus perforates、Scenedesmus polyglobulus、Scenedesmus polydenticulatus、Scenedesmus product-capitatus、Scenedesmus protuberans、Scenedesmus quadricauda、Scenedesmus qutwinskii、Scenedesmus raciborskii、Scenedesmus rostrato-spinosus、Scenedesmus serratus、Scenedesmus sooi、Scenedesmus spinosus、Scenedesmus spicatus、Scenedesmus unicus、Scenedesmus vesiculosusが挙げられる。これらの中でも、Scenedesmus acuminatusであることが好ましい。

【0025】
Desmodesmus属としては、Desmodesmus abundans、Desmodesmus acuminatus、Desmodesmus acutus、Desmodesmus armatus、Desmodesmus balatonicus、Desmodesmus brasiliensis、Desmodesmus carinatus、Desmodesmus circumfusus、Desmodesmus communis、Desmodesmus costatus、Desmodesmus dactyloccoides、Desmodesmus denticulatus、Desmodesmus dispar、Desmodesmus elegans、Desmodesmus ecornis、Desmodesmus granulatus、Desmodesmus intermedius、Desmodesmus javanensis、Desmodesmus longispina、Desmodesmus maximus、Desmodesmus microspina、Desmodesmus nanus、Desmodesmus oahuensis、Desmodesmus opoliensis、Desmodesmus pannonicus、Desmodesmus pecsensis、Desmodesmus perforates、Desmodesmus polyglobulus、Desmodesmus polydenticulatus、Desmodesmus product-capitatus、Desmodesmus protuberans、Desmodesmus quadricauda、Desmodesmus qutwinskii、Desmodesmus raciborskii、Desmodesmus rostrato-spinosus、Desmodesmus serratus、Desmodesmus sooi、Desmodesmus spinosus、Desmodesmus spicatus、Desmodesmus unicus、Desmodesmus vesiculosusが挙げられる。

【0026】
イカダモは、その18S rDNA配列によっても同定され得る。本発明において使用されるイカダモの18S rDNA配列は、配列番号1に記載の塩基配列と90%以上の相同性を有することが好ましく、95%以上の相同性を有することがより好ましく、98%以上の相同性を有することがさらに好ましく、99%以上の相同性を有することが特に好ましい。

【0027】
イカダモに属する緑藻は、通常の方法により培養することができる。たとえば、リン、窒素、炭素、微量元素(ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、鉄)を含む液体培地中で、20~30℃、好ましくは20~25℃で、4~17日間、好ましくは7~14日間培養する方法が挙げられる。

【0028】
イカダモに属する緑藻としては、イカダモを培養して得られる培養液を用いることもでき、イカダモの培養液から液体成分を除去して得られる藻体を用いることもできる。藻体は湿潤藻体であってもよく、乾燥藻体であってもよい。湿潤藻体を使用する場合には、培養後のイカダモを超純水で洗浄した後、使用することができる。

【0029】
希土類元素を回収するために、イカダモに属する緑藻の藻体処理物を用いることもできる。藻体処理物としては、藻体の凍結乾燥物、減圧乾燥物、加熱乾燥物、濃縮物、ペースト化処理物、希釈物が挙げられる。

【0030】
希土類元素を回収するために、イカダモに属する緑藻、またはその藻体処理物の抽出物を用いることもできる。当該抽出物は、希土類元素の収着に寄与する、酵素、構造タンパク質、細胞膜、細胞壁等を含有するものであることが好ましい。

【0031】
希土類元素は、元素周期表で3族に分類されているスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイドである。ランタノイドにはセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Td)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が含まれる。本発明で回収される希土類元素は、イットリウム、ユーロピウム、ネオジム、ジスプロシウムが好ましい。希土類元素は、塩として存在していてもよい。このような塩としては、たとえばYCl、EuCl、NdCl、DyClが挙げられる。

【0032】
イカダモに属する緑藻と希土類元素との接触方法は、イカダモに希土類元素が収着できれば特に限定されない。例えば、イカダモの湿潤藻体を超純水に懸濁し、その懸濁液と、希土類元素の含有液とを混合して反応させる方法が挙げられる。本発明の回収方法では、溶液中の希土類元素の濃度が低い場合でも希土類元素を効率的に回収できる。イカダモと希土類元素とを含む反応液中の、希土類元素の濃度は、0.5mg/L以下であってもよく、50mg/L以下であってもよい。

【0033】
イカダモに属する緑藻と希土類元素とを含む反応液のpH条件は、pH5~9であることが好ましく、pH6~8であることがより好ましく、pH7~8であることがさらに好ましい。pH9を超えると希土類元素が不溶性塩を形成するという傾向がある。pH5未満では収着量が減少するという傾向がある。

【0034】
イカダモに属する緑藻と希土類元素とを含む反応液の温度は、20~30℃であることが好ましく、20~25℃であることがより好ましい。光条件は、明条件でもよく、暗条件でもよい。イカダモと希土類元素との接触時間は、としては、12~24時間が挙げられる。

【0035】
イカダモに属する緑藻と希土類元素とを含む反応液は、さらに炭素源を含むことが好ましい。炭素源を含むことにより、希土類元素に対する回収の効率を改善できる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、スクロース、マルトースが挙げられる。炭素源の濃度は100~1000mg/Lであることが好ましい。また、イカダモと希土類元素とを含む反応液に、二酸化炭素ガスを通気することによって炭素を供給することもできる。

【0036】
イカダモに属する緑藻に希土類元素を収着させた後、イカダモに属する緑藻を遠心分離により沈殿させ、当該沈殿物に溶出剤を添加することにより、イカダモから希土類元素を溶出できる。溶出剤としては酸溶液が挙げられ、この中でもHNOが好ましい。希土類元素の収着量は、たとえば高周波誘導結合プラズマ発光分析法(ICP発光分析法)を用いて測定できる。

【0037】
また、本発明は、イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物を含む希土類元素の回収剤に関する。回収剤の形態としては、ペレット、錠剤、培養物が挙げられる。回収剤は軽量で保存性が良好であり、希土類元素の濃度や、希土類元素を含む溶液の液量に応じて適切な個数を設定し、必要なときに、必要な量を使用することができる。

【0038】
回収剤は、イカダモに属する緑藻、もしくはその藻体処理物、またはこれらの抽出物以外に、賦形剤、安定化剤、酸化防止剤を含んでいてもよい。

【0039】
希土類元素の回収方法において、イカダモに属する緑藻の藻体、藻体処理物、藻体抽出物は、担体に固定化した状態で希土類元素と接触させてもよい。藻体、藻体処理物、藻体抽出物を担体に固定化した状態で希土類元素と接触させることにより、希土類元素の回収を、より短時間に、大量に行うことができ、藻体、藻体処理物、藻体抽出物を処理対象液から回収し、再利用することも可能となる。

【0040】
藻体、藻体処理物、藻体抽出物を固定するための担体としては、アルミナ、シリカ、活性炭、ポリアクリルアミド等の合成樹脂、カラギーナン等の多糖が挙げられる。藻体、藻体処理物、藻体抽出物の担体への固定化は、架橋剤を用いて行うこともできる。藻体、藻体処理物、藻体抽出物を固定化した担体を固定化担体ともいい、一般に、生体触媒を固定化した担体は固定化生体触媒として知られている。藻体、藻体処理物、藻体抽出物をカプセルに入れることも固定化法に該当する。包括固定により、藻体、藻体処理物、藻体抽出物を保護し、高濃度に保持することができる。その結果、回収剤の長期利用、高濃度化による高効率化に寄与できる。

【0041】
藻体、藻体処理物、藻体抽出物を固定化した担体と、希土類元素との接触方法としては、浮遊法と、カラムを利用した接触方法が挙げられる。

【0042】
浮遊法では、藻体、藻体処理物、藻体抽出物、またはこれらを固定化した担体を、反応液中で浮遊した状態で希土類元素と接触させる。藻体、藻体処理物、藻体抽出物を担体に固定化した固定化担体の比重は1に近いことが好ましい。比重を1に近づけることにより水中における浮遊性が改善し、希土類元素と藻体、藻体処理物、藻体抽出物との相対的な接触面積が増大し、収着効率を改善できる。一般的に、水処理では、固定化担体を浮遊させるための空気吹き込みのためのブロアや撹拌などに必要な電力が、コストの7割程度を占めるといわれており、固定化担体そのものの浮遊性を改善できれば処理コストを低減できる。また、藻体は沈降しやすいため、適切な浮力を与えることにより希土類元素との接触面積を増大でき、回収効率を改善できる。

【0043】
カラムを利用した接触方法では、藻体、藻体処理物、藻体抽出物を固定化した担体をカラムに充填し、このカラムに希土類元素を含む溶液を通液し、希土類元素を選択的に収着する。その後、必要があれば適切な条件でカラムを洗浄し、収着した希土類元素を脱着することにより、希土類元素をその濃縮液として回収できる。希土類元素の脱着は、pHの変化、温度の変化、加圧・減圧、電圧の印加、光条件の変化によって行うことができる。カラムへの希土類元素を含む溶液の通液方向は、上向流でもよく、下向流でもよい。上向流とすることにより、カラム中で固定化担体が充填されているカラムベッドを処理対象液で満たせるため、収着が容易となる。下向流とする場合には、自然流下であることからカラムへの通液エネルギーが不要である。

【0044】
藻体、藻体処理物、藻体抽出物との接触は、膜分離処理法と組み合わせて行うこともできる。具体的には、藻体、藻体処理物、藻体抽出物、あるいはそれらを担持させた担体を膜に包み、処理対象液と接触させる。この方法により藻体、藻体処理物、藻体抽出物、あるいはそれらを担持させた担体を高濃度に保持できるとともに、膜で保護できる。膜としては、メンブレン、半透膜、セラミック膜が挙げられる。藻体、藻体処理物、藻体抽出物、あるいはそれらを担持させた担体を包む膜をモジュール化し、必要に応じて、モジュールの増減、交換を行うこともできる。
【実施例】
【0045】
(参考例1)緑藻の採取及び培養
複数の環境中より、緑藻を含む水を採取した。緑藻を、P(リン)、N(窒素)、C(炭素)、および微量のミネラルを含有した培養液中で、温度23℃、明暗12時間の条件で培養した。培養液成分は表1~3に示す。表2~3に示すA5 solution、Fe solutionは、1000倍に希釈して培養液に加えた。
【実施例】
【0046】
【表1】
JP2017061739A_000002t.gif
【実施例】
【0047】
【表2】
JP2017061739A_000003t.gif
【実施例】
【0048】
【表3】
JP2017061739A_000004t.gif
【実施例】
【0049】
定常期に達した緑藻を遠沈管に分注し、超純水で洗菌した後、藻体の湿重量を測定した。100mg/LのEuClまたはYCl溶液を加え、23℃、明所の条件で24時間振とうした。
【実施例】
【0050】
24時間の振とうの終了後、緑藻と金属溶液を遠心分離し、緑藻を超純水で洗菌した。0.1M HNOを加えて1時間静置することで、藻体中の金属を溶出した。その後再度遠心分離した。HNO溶液に含まれるEu、Yの金属量を、緑藻の収着による希土類元素(レアアース)の回収量とし、分離した金属溶液と0.1M HNO溶液に含まれるEuとYの濃度を、高周波誘導結合プラズマ発光分析法(ICP発光分析法)を用いて測定した。
【実施例】
【0051】
Eu、Yの収着が確認できた24サンプルについて、藻体の湿重量1gあたりのEuの収着量を図1に、Yの収着量を図2に示す。図1~2に示すように、Sample8(S8)は多くの希土類元素を回収できる。
【実施例】
【0052】
さらに、EuClの濃度を100mg/Lとしたときの、Sample8によるEuの収着の経時変化を検討した。その結果を図3に示す。図3において、黒色は藻体単位質湿重量あたりの希土類元素の収着量を表し、白色は回収率を表す。図3に示されるように、Sample8を用いた場合、緑藻を希土類元素と接触させると、希土類元素の収着は速やかに開始され、24時間で終了すると考えられる。
【実施例】
【0053】
(実施例1、比較例1~2)藻類の単離
参考例1で選択したSample8には、複数の藻類が混合した群集態が含まれていた。希土類元素の収着に寄与する藻類を単離するために、顕微鏡を用いてピペット洗浄法で藻類を単離し、無機栄養培地で培養を行った。その結果、3種の緑藻を単離できた。便宜上、単離した藻類をalgaeA、algaeB、algaeCとした。algaeA~Cの顕微鏡観察図を、それぞれ図4A~Cに示す。
【実施例】
【0054】
単離したalgaeAの藻体(実施例1)、およびalgaeB~Cの藻体(比較例1~2)を用いて、参考例1に記載の方法により、再度、Euの収着を行った。実施例1および比較例1~2の結果を図5に示す。図5から、algaeAは藻類群の中ではEuの収着に大きく寄与し、algaeCはEuの収着にほとんど寄与しないことが分かった。その後、顕微鏡観察を繰り返し行った結果、algaeAはイカダモに属し、algaeCはクロレラに属すると判定した。
【実施例】
【0055】
(実施例2、比較例3)algaeAおよびalgaeBによる希土類元素の収着試験
より多くの希土類元素を回収できる最適条件を探るため、algaeA(実施例2)とalgaeB(比較例3)について、光条件、および炭素条件が希土類元素の回収効率に及ぼす効果を検討した。人工気象器内おいて24時間の金属溶液の接触時に明所と暗所の2系列を設定した。また、金属溶液に含まれる炭素源を0mg/L(control)、100mg-C12/L、またはCOガスの3系列に設定し、希土類元素の収着量を比較した。algaeAによる希土類元素の収着量を図6A~Bに示し、algaeBによる希土類元素の収着量を図7A~Bに示す。図6~7において、白色は明所での回収結果を表し、黒色は暗所での回収結果を表す。
【実施例】
【0056】
図6A~Bに示されるように、algaeA(実施例2)は光の有無によってEuの収着量は変化せず、グルコース、CO存在下ではEuの収着量は減少した。一方、Yの収着量は、炭素源が存在しない、またはCO存在下の時、光条件による収着量は大きく変化しないが、グルコース存在下では暗所の場合に収着量が増大した。またCO存在下では光条件に関わらず、炭素源が存在しない場合と比較して収着量が増大した。
【実施例】
【0057】
図7A~Bに示されるように、algaeB(比較例3)はEu、Y共に明所の時、収着量が増大した。炭素源について明所ではCO存在下に収着量が減少し、暗所では炭素源による収着量の変化はみられなかった。
【実施例】
【0058】
(実施例3)希土類元素の選択的回収試験
イカダモの一種であるalgaeA単離体を用いて、重金属元素が共存するときの、希土類元素の選択的な回収について検討した。Eu、Y、Zn、Ni、Mo、Cu、Mnの7種の金属をそれぞれ5mg/Lの濃度で含有する溶液に、培養した緑藻(algaeA単離体)を4.0mg-wet/mLの濃度で加えた。その後190rpmで24時間振とうした。24時間の振とう時には、明条件または暗条件、およびグルコース(100mg/L)の有無により4種の条件で振とうした。その後、遠心分離(2500rpm、10min)で金属溶液と藻体を分離し、溶液はさらに遠心分離(10000rpm、10min)し、10倍希釈した。藻体に0.1M HNOを加え、撹拌し、1時間静置した後、同様の方法で遠心分離し、上清を10倍希釈をした。作成した溶液についてICP発光分析法を用いて先述の7種の金属濃度を測定し、それぞれの回収率を求めた。
【実施例】
【0059】
図8Aは無炭素・明条件、図8Bは無炭素・暗条件、図8Cはグルコース添加・明条件、図8Dはグルコース添加・暗条件での、algaeAによる金属の収率を示す。図8A~Dにおいて、白色は溶液中に残留した金属量を比率で示し、灰色は藻体に収着し回収された金属量を収率(比率)で示す。
【実施例】
【0060】
図8A~Dにおいて、Eu、Yは、Zn、Ni、Mo、Cu、Mnと比較して極めて高い選択性で回収された。明条件では、無炭素(図8A)と比較してグルコース添加(図8C)のEuおよびYの選択性が向上した。暗条件でも、無炭素(図8B)と比較してグルコース添加(図8D)のEuおよびYの選択性が向上した。
【実施例】
【0061】
(実施例4)希土類元素の収着試験
algaeAによるNd、Eu、Dy、Yの収着量を検討した。収着条件は、24時間、明所下で行い、金属の初期濃度を0.5mg/L、5mg/L、15mg/L、25mg/L、または50mg/Lとした以外は、参考例1に記載の収着条件に準じて行った。各元素の収着量を図9に示す。Nd、Dyも、Eu、Yと同様に藻体に収着した。
【実施例】
【0062】
(実施例5)藻類の同定
algaeAの18S rDNA配列を同定した。その塩基配列を配列表の配列番号1に示す。次いで、配列番号1の塩基配列と相同な配列を、国際塩基配列データベースからBLASTにより検索した。その結果、algaeAの18S rDNA配列は、Scenedesmus acuminatus Hagewald 1986-2株(Accession No.AB037088)の18S rDNAと最も高い相同性を示し、その相同性は99.8%であった。algaeAはScenedesmus acuminatusに属すると判定された。なお、18S rDNA配列の特定と、相同配列の検索は、株式会社テクノスルガ・ラボにおいて行った。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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