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明細書 :屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-090259 (P2017-090259A)
公開日 平成29年5月25日(2017.5.25)
発明の名称または考案の名称 屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置
国際特許分類 G01B   9/02        (2006.01)
FI G01B 9/02
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2015-220789 (P2015-220789)
出願日 平成27年11月10日(2015.11.10)
発明者または考案者 【氏名】美濃島 薫
出願人 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
【識別番号】100169764、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 雄一郎
審査請求 未請求
テーマコード 2F064
Fターム 2F064AA01
2F064CC10
2F064DD06
2F064EE02
2F064FF01
2F064FF02
2F064FF06
2F064GG16
2F064GG22
2F064GG70
2F064HH01
2F064HH06
2F064JJ03
2F064KK01
要約 【課題】空気屈折率の補正を行う光学系のスペースを抑え、且つ光学的距離の測定精度を高めることが可能な屈折率補正法を提供する。
【解決手段】互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含む光周波数コムを測定領域中で伝搬させる工程と、二以上の前記スペクトルの搬送波を前記測定領域中で伝搬させた際の第一光学的距離を測定し、二以上の前記スペクトルの包絡線を構成する波束を前記測定領域中で伝搬させた際の第二光学的距離を測定する工程と、前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との第一光学的距離差を得る工程と、前記第一光学的距離に基づいて算出される第一屈折率又は前記第二光学的距離に基づいて算出される第二屈折率を前記第一光学的距離差に基づいて補正する工程と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
測定領域中を第一速度で伝搬する第一波と、前記第一波の中心波長と同一の中心波長であり、且つ前記測定領域中を前記第一速度とは異なる第二速度で移動する第二波と、を同一の光源から前記測定領域中に出射する工程と、
前記第一波を前記測定領域中で伝搬させた際の第一光学的距離と、前記第二波を前記測定領域中で伝搬させた際の第二光学的距離とをそれぞれ測定する工程と、
前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との光学的距離差を得る工程と、
前記第一光学的距離に基づいて算出される第一屈折率又は前記第二光学的距離に基づいて算出される第二屈折率を前記光学的距離差に基づいて補正する工程と、
を備える屈折率補正法。
【請求項2】
前記光源とは、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含む第一光周波数コムを発する第一光周波数コム光源であり、
前記第一波とは、二以上の前記スペクトルの搬送波であり、
前記第二波とは、二以上の前記スペクトルの包絡線を構成する波束であって、
前記第一光学的距離と前記第二光学的距離とをそれぞれ測定する工程において、
前記搬送波の位相差屈折率に基づいて前記第一光学的距離を測定し、前記波束の群屈折率に基づいて前記第二光学的距離を測定する請求項1に記載の屈折率補正法。
【請求項3】
前記第一波の中心波長と前記第二波の中心波長との何れとも異なる中心波長の第三波を前記測定領域中で伝搬させる工程と、
前記第三波を前記測定領域中で伝搬させた際の第三光学的距離を測定する工程と、
前記第一光学的距離又は前記第二光学的距離と前記第三光学的距離との第二光学的距離差を得る工程と、
をさらに備え、
前記第一屈折率又は前記第二屈折率を補正する工程に替えて、
前記第一屈折率又は前記第二屈折率を前記第一光学的距離差及び前記第二光学的距離差に基づいて補正する工程と、
を備える請求項1に記載の屈折率補正法。
【請求項4】
前記第三波とは、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含み、且つ前記第一波の中心波長と前記第二波の中心波長との何れとも異なる中心波長を有する第二光周波数コムの二以上の前記スペクトルの搬送波及び前記第二光周波数コムの二以上の前記スペクトルの包絡線を構成する波束のうち少なくとも一方である請求項3に記載の屈折率補正法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、
前記第一光学的距離差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する工程を備える距離測定法。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、
前記第一光学的距離差及び前記第二光学的距離差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する工程を備える距離測定法。
【請求項7】
測定領域中を第一速度で伝搬する第一波と、前記第一波の中心波長と同一の中心波長であり、且つ前記測定領域中を前記第一速度とは異なる第二速度で移動する第二波と、を出射する光源と、
前記光源から出射した前記第一波同士を干渉させる第一干渉部と、
前記光源から出射した前記第二波同士を干渉させる第二干渉部と、
前記第一干渉部において干渉した前記第一波同士の第一干渉縞を取得し、取得した前記第一干渉縞の間隔に基づいて前記第一光学的距離を測定する第一光学的距離測定部と、
前記第二干渉部において干渉した前記第二波同士の第二干渉縞を取得し、取得した前記第二干渉縞の間隔に基づいて前記第二光学的距離を測定する第二光学的距離測定部と、
前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との差を得る光学的距離差算出部と、
前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する幾何学的距離算出部と、
を備える距離測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
距離を測定する方法の一つに、光波を用いた距離測定法がある。光波を用いた距離測定法によって求められる幾何学的距離Lと、実際に測定値として得られる光学的距離Lと、光波が伝搬した測定領域中の屈折率nとの間には、(1)式に示す関係が成り立つ。
【0003】
【数1】
JP2017090259A_000003t.gif

【0004】
測定領域中が真空であれば、屈折率n=1(一定)となる。測定領域が空気環境下である場合には、屈折率n(以下、空気屈折率という場合がある)は、気温、気圧や湿度等の環境パラメータに依存する。空気屈折率nは、Edlenの経験式やCiddorの経験式から導出されることが知られている。
【0005】
実際には、環境パラメータは時間的・空間的に変動しているため、その変動に伴い空気屈折率も変動する。従って、空気屈折率を正確に求めるためには、環境パラメータを時間的・空間的に細かく測定し、前記経験式に基づき、環境パラメータの測定値を用いて空気屈折率を随時補正する必要がある。ところが、環境パラメータを細かく測定するために、測定領域中における温度計や気圧計等の計測器の数を増やすとなると、測定領域中の環境状態の推定の複雑化や、設置作業量及び設置費用の増大等を招く。また、測定領域が地上と衛星等の飛行物との間である場合のように、そもそも測定領域内に予め環境パラメータを測定する計測器を設置すること自体が難しい場合もある。
【0006】
上述した状況等もあって、環境パラメータを測定する計測器を設置しなくても空気屈折率をより正確に補正する方法が求められていた。
このような方法の一つに、所謂、「2色法」と呼ばれる方法がある。2色法は、互いに異なる波長の二つの光を用いて、各波長における光学的距離を同時に測定することで、それらの光学的距離の差を用いて空気屈折率を補正する方法である。近年では、測定技術の進展も伴い、2色法による地殻歪みの精密計測や、前記経験式との高精度な比較等も実現されている。
【0007】
2色法では、互いに異なる波長の二つの光を用いた光学的距離の測定を高精度に行うことが重要であり、高安定且つ高分解能なレーザー光源及び測定方法が必要となる。この点をふまえ、光源として光周波数コム光源を用い、測定方法として干渉計測法を採用した2色法が提案されている。
例えば、特許文献1には、光周波数コム光源を用い、この光周波数コム光源から発せられた第一の光パルスとその第二高調波として生成された第二の光パルスとを用いて、各々の光パルスにおいて同一パルス列に属する異なるパルス同士の干渉計測を行い、空気屈折率の自己補正を行う空気屈折率補正法が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】K.Minoshima,K.Arai,H,Inaba,“High-accuracy self-correction of refractive index of air using two-color interferometry of optical frequency combs”,Optics Express,Vol.19,26095(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている空気屈折率補正法では、第一の光パルスを発生させる光周波数コム光源と、第二の光パルスを発生させる光学系とを用いるため、空気屈折率の補正を行う光学系のスペースが大きくなるという問題がある。また、異なる二つの波長の光パルスを用いるため、光学系における色収差が大きくなり、光学的距離の測定精度が低下するという問題がある。光学系における色収差を抑えるために、空気屈折率の補正を行う光学系に各波長で最適化された光学部品を用いるという対策が考えられるが、その対策では使用する光学部品の数が増え、空気屈折率の補正を行う光学系のスペースがますます大きくなり、且つ使用する光学部品のコストが高くなるという別の問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、空気屈折率の補正を行う光学系のスペースを抑え、且つ光学的距離の測定精度を高めることが可能な屈折率補正法、前記屈折率補正法に基づく距離測定法及び前記距離測定法を用いた距離測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の屈折率補正法は、測定領域中を第一速度で伝搬する第一波と、前記第一波の中心波長と同一の中心波長であり、且つ前記測定領域中を前記第一速度とは異なる第二速度で移動する第二波と、を同一の光源から前記測定領域中に出射する工程と、前記第一波を前記測定領域中で伝搬させた際の第一光学的距離と、前記第二波を前記測定領域中で伝搬させた際の第二光学的距離とをそれぞれ測定する工程と、前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との光学的距離差を得る工程と、前記第一光学的距離に基づいて算出される第一屈折率又は前記第二光学的距離に基づいて算出される第二屈折率を前記光学的距離差に基づいて補正する工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、「測定領域」は、真空ではなく、何らかの分散媒質が存在し、屈折率の変動が生じ得る領域であることを示す。
【0012】
上述の屈折率補正法において、前記光源とは、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含む第一光周波数コムを発する第一光周波数コム光源であり、前記第一波とは、二以上の前記スペクトルの搬送波であり、前記第二波とは、二以上の前記スペクトルの包絡線を構成する波束であって、前記第一光学的距離と前記第二光学的距離とをそれぞれ測定する工程において、前記搬送波の位相差屈折率に基づいて前記第一光学的距離を測定し、前記波束の群屈折率に基づいて前記第二光学的距離を測定してもよい。
【0013】
また、上述の屈折率補正法において、前記第一波の中心波長と前記第二波の中心波長との何れとも異なる中心波長の第三波を前記測定領域中で伝搬させる工程と、前記第三波を前記測定領域中で伝搬させた際の第三光学的距離を測定する工程と、前記第一光学的距離又は前記第二光学的距離と前記第三光学的距離との第二光学的距離差を得る工程と、をさらに備え、前記第一屈折率又は前記第二屈折率を補正する工程に替えて、前記第一屈折率又は前記第二屈折率を前記第一光学的距離差及び前記第二光学的距離差に基づいて補正する工程と、を備えてもよい。
【0014】
また、上述の屈折率補正法において、前記第三波とは、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含み、且つ前記第一波の中心波長と前記第二波の中心波長との何れとも異なる中心波長を有する第二光周波数コムの二以上の前記スペクトルの搬送波及び前記第二光周波数コムの二以上の前記スペクトルの包絡線を構成する波束のうち少なくとも一方であってもよい。
【0015】
本発明の距離測定法は、上述の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、前記第一光学的距離差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する工程を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の距離測定法は、上述の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、前記第一光学的距離差及び前記第二光学的距離差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の距離測定装置は、測定領域中を第一速度で伝搬する第一波と、前記第一波の中心波長と同一の中心波長であり、且つ前記測定領域中を前記第一速度とは異なる第二速度で移動する第二波と、を出射する光源と、前記光源から出射した前記第一波同士を干渉させる第一干渉部と、前記光源から出射した前記第二波同士を干渉させる第二干渉部と、前記第一干渉部において干渉した前記第一波同士の第一干渉縞を取得し、取得した前記第一干渉縞の間隔に基づいて前記第一光学的距離を測定する第一光学的距離測定部と、前記第二干渉部において干渉した前記第二波同士の第二干渉縞を取得し、取得した前記第二干渉縞の間隔に基づいて前記第二光学的距離を測定する第二光学的距離測定部と、前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との差を得る光学的距離差算出部と、前記第一光学的距離と前記第二光学的距離との差に基づいて前記測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離を算出する幾何学的距離算出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空気屈折率の補正を行う光学系のスペースを抑え、且つ周波数領域において二以上含む光周波数コムの高精度な周波数制御性を活用することで、干渉測定等により光学的距離の測定精度を高めることが可能な屈折率補正法、前記屈折率補正法に基づく距離測定法及び前記距離測定法を用いた距離測定装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る屈折率補正法の原理を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る屈折率補正法で用いられる光周波数コムの原理を説明するための模式図である。
【図3】本発明に係る距離測定装置の第一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明に係る距離測定装置の第二実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る屈折率補正法、前記屈折率補正法に基づく距離測定法及び前記距離測定法を用いた距離測定装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。

【0021】
本発明に係る屈折率補正法の意義を説明するにあたり、始めに、光波を用いた距離計測で主に用いられている2色法について説明する。図1は、2色法の原理を説明するための模式図である。

【0022】
波長λ,λの2つの波長の光(以下、第一波長光波、第二波長光波とする)を用いて空気中の距離を同時に測定すると、環境パラメータの変動による空気屈折率の変化によって、第一波長光波及び第二波長光波を用いて得られる光学的距離はそれぞれ変化する。図1は、空気屈折率の波長分散特性を示している。気温や気圧等の環境パラメータが変動すると、図1に示すように、空気屈折率の分散曲線全体がシフトする。このとき、各波長の光学的距離同士の相関関係は保持されており、(2)式が成り立つ。

【0023】
【数2】
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【0024】
(2)式において、nλ1は、環境パラメータの変動前における第一波長光波の空気屈折率である。nqλ1は、環境パラメータの変動後における第一波長光波の空気屈折率である。Δnは、環境パラメータの変動前における第一波長光波の空気屈折率と第二波長光波の空気屈折率との差である。Δnqは、環境パラメータの変動後における第一波長光波の空気屈折率と第二波長光波の空気屈折率との差である。また、図1中のnλ2は、環境パラメータの変動前における第二波長光波の空気屈折率である。
(2)式に示す相関関係が成り立つのは、種々の距離測定が行われる環境条件下では、環境パラメータの変動によって空気屈折率の分散関係は変化しないとみなせるからである。

【0025】
第一波長光波及び第二波長光波を用いて得られる光学的距離は、それぞれ(3)式のように表される。

【0026】
【数3】
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【0027】
(3)式において、Lλ1は、第一波長光波を用いて得られる光学的距離である。Lλ2は、第二波長光波を用いて得られる光学的距離である。Lは、測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離であり、測定領域そのものの大きさでもよく、測定領域内に配置されている対象部材の長さ、厚み等の寸法であってもよい。第一波長光波及び第二波長光波を用いて得られる光学的距離同士の差(以下、光学的距離差ともいう)に基づいて、幾何学的距離は、(3)式より、(4)式のように表される。

【0028】
【数4】
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【0029】
(4)式の係数Aは、(5)式のように表される。

【0030】
【数5】
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【0031】
係数Aは、波長λ,λの分散関係を表す値であり、空気屈折率の補正係数を表し、A係数と呼ばれる。(5)式では、光学的距離Lλ1に含まれる空気屈折率nλ1は、光学的距離差Lλ2-Lλ1に基づいて補正可能であることを示している。2色法では、光波距離計等で取得される光学的距離Lλ1,Lλ2と、A係数から、幾何学的距離Lを求めることができる。

【0032】
一方で、(4)式で補正項として用いられる右辺第二項は、A係数と光学的距離差との積である。そのため、算出される幾何学的距離の実効的な精度は、光学的距離差の測定精度に対してA係数の測定精度の分だけ劣化する。従って、実際の測定においては、各波長における光学的距離の測定をより高精度に行う必要がある。
例えば、λ=1568nm,λ=788nmである場合には、A係数は145となる。また、λ=1570nm,λ=780nmである場合には、A係数は147となり、非常に大きい。幾何学的距離を高精度に算出するためには、光学的距離差を高精度に測定しなければならないことがわかる。

【0033】
(第一実施形態)
次に、本発明を適用した第一実施形態の屈折率補正法、前記屈折率補正法に基づく距離測定法及び前記距離測定法を用いた距離測定装置について、説明する。
改めて(3)式及び(4)式に着目すると、必ずしも互いに異なる波長の第一波長光波と第二波長光波でなくとも、環境パラメータの変動によって各々の空気屈折率が変化し、光学的距離同士の相関関係が保持され得る二つの光波を用いれば、2色法と同様の空気屈折率の補正及び幾何学的距離Lの算出が可能であることがわかる。以下、このような関係性を有する二つの光波を、第一波及び第二波と称する。
発明者は、このことを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。

【0034】
(3)式、(4)式、(5)式をそれぞれ第一波及び第二波に関して書き直すと、(6)式、(7)式、(8)式のようになる。

【0035】
【数6】
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【数7】
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【数8】
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【0036】
(6)式から(8)式において、nw1は、環境パラメータの変動前における第一波の空気屈折率であり、第一屈折率とする。nw2は、環境パラメータの変動前における第二波の空気屈折率であり、第二屈折率とする。Lw1は、第一波を用いて得られる第一光学的距離である。Lw2は、第二波を用いて得られる第二光学的距離である。
即ち、互いに同一の波長の第一波及び第二波であっても、環境パラメータの変動によって各々の空気屈折率が変化し、光学的距離同士の相関関係が保持されれば、(6)式から(8)式に基づいて空気屈折率の補正及び幾何学的距離Lを算出することができる。

【0037】
本発明に係る屈折率補正法では、測定領域中を第一速度で伝搬する第一波と、第一波の波長と同一の波長であり、且つ測定領域中を第一速度とは異なる第二速度で移動する第二波と、を用いる。第一波と第二波では、測定領域中を伝搬する速度が互いに異なるので、屈折率も互いに異なる。
本発明に係る屈折率補正法は、第一波と第二波とを同一の光源から測定領域中に出射する工程と、第一波を前記測定領域中で伝搬させた際の第一光学的距離Lw1と、第二波を測定領域中で伝搬させた際の第二光学的距離Lw2とを測定する工程と、光学的距離差Lw1-Lw2を得る工程と、第一空気屈折率nw1、又は、第二空気屈折率nw2を光学的距離差Lw1-Lw2に基づいて補正する工程と、を備えている。これらの工程を経て、第一光学的距離Lw1及び第二光学的距離Lw2が求められ、(8)式により、第一空気屈折率nw1、又は、第二空気屈折率nw2が補正される。

【0038】
また、本発明に係る距離測定法は、上記の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、第一光学的距離Lw1、又は、第二光学的距離Lw2と光学的距離差Lw1-Lw2とに基づいて、(7)式により、幾何学的距離Lを算出する工程を備えている。

【0039】
そして、発明者は、上述した2色法の原理に基づいて光学的距離差を高精度に測定することが可能な光パルスとして、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含む光周波数コムを用いること、2色法の二波長の光に替えて光周波数コムの二以上のスペクトルの搬送波と、前記光周波数コムの二以上のスペクトルの包絡線を構成する波束を用いることが有益である点を見出した。

【0040】
図2は、光周波数コムの原理を説明するための模式図である。時間と周波数とは、互いにフーリエ変換の関係にある。図2に示すように、パルスの時間幅τと周波数の広がりΔνとの間には、(9)式に示す関係が成り立つ。

【0041】
【数9】
JP2017090259A_000011t.gif

【0042】
(9)式は、時間幅τの狭い超短光パルスは、周波数領域では広帯域な光スペクトルΔνを持っているということを意味している。図2の上段に示すように一定の繰り返し時間Trepで発振される超短光パルス列は、周波数で見ると一定の周波数間隔frepを持っている。繰り返し時間Trepと周波数間隔frepとの間には、(10)式に示す関係が成り立つ。

【0043】
【数10】
JP2017090259A_000012t.gif

【0044】
ここで、多数のパルス列に注目すると、光パルス列は光源の共振器等の内部で伝搬する多くの縦モードの重ね合わせから成り立っている。そして、光パルス列は、これらの縦モードの重ね合わせの波である搬送波(キャリアとも呼ばれる)と、その包絡線(エンベロップとも呼ばれる)を構成する波束とによって構成されている。空気等の分散媒質が存在する領域中では、搬送波は位相速度νで移動し、波束は位相速度νと異なる群速度νで移動する。このように、搬送波と波束とでは互い速度が異なるため、時間の経過に伴い、位相差が生じる。レーザー共振器は分散媒質より構成されているため、それよりTrep異なる時間ごとに繰り返し発せられるパルス列においては、隣り合うパルス間に位相のずれφCEOが生じる。位相のずれφCEOは時間TCEOで一周期する。繰り返し時間Trep、時間TCEO及び位相のずれφCEOの間には、(11)式に示す関係が成り立つ。

【0045】
【数11】
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【0046】
上述した時間軸上における超短パルス列をフーリエ変換し、周波数軸上で観測すると、図2の下段に示すように、互いに時間間隔Trepの逆数に相当する繰り返し周波数frepの間隔をあけて並んだ多数のスペクトルが観測される。これらのスペクトルは、「櫛の歯(Comb)」を成すように配置されていることから、光周波数コム(単に、光コム、或いはコムとも)と呼ばれている。光周波数コムの広がる全体のスペクトル幅は、超短光パルスの時間幅の逆数(1/τ)に相当する。また、光周波数コムのスペクトルを中心周波数から繰り返し周波数frepの間隔で0(零)Hzまで仮想的に伸ばしていくと、最後にfrep以下の余りの周波数が存在する。余りの周波数は、キャリア・エンベロップ・オフセット(Carrier Envelope Offset: CEO)fCEOと呼ばれている。キャリア・エンベロップ・オフセットfCEOは、時間TCEOの逆数に相当する。そして、キャリア・エンベロップ・オフセットfCEO、位相のずれφCEO、時間TCEOの間には、(12)式に示す関係が成り立つ。

【0047】
【数12】
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【0048】
また、光コムのm番目のスペクトルの周波数は、繰り返し周波数frepとキャリア・エンベロップ・オフセットfCEOとをパラメータとして、(13)式のように表される。

【0049】
【数13】
JP2017090259A_000015t.gif

【0050】
例えば、マイクロ波周波数標準に、繰り返し周波数frepとキャリア・エンベロップ・オフセットfCEOとを同期させることで、光周波数コム及び二以上のスペクトルの安定性が高くなる。

【0051】
繰り返し周波数frep及びキャリア・エンベロップ・オフセットfCEOが高精度に制御され、安定化している光周波数コムは、2色法の第一波長光波として有用である。また、例えば非線形光学結晶等によって第一波長光波の光周波数コムを波長変換した第二高調波の光周波数コムを、2色法の第二波長光波として利用することができる。第一波長光波の光周波数コムと第二高調波の光周波数コムとを用い、前述の2色法の原理に従って、測定対象の幾何学的距離Lが算出されることは、既に知られている。

【0052】
しかしながら、本発明に係る屈折率補正法では、光周波数コムの二以上のスペクトルの搬送波と、二以上のスペクトルの包絡線を構成する波束(単に波束ともいう)と、を用いる。図2に示すように、搬送波と波束は、周波数領域においては二位以上のスペクトル(即ち、スペクトル群)とその包絡線であるので、中心波長(波長)を共有している。また、搬送波と波束では、測定領域中を伝搬する速度が互いに異なるので、屈折率も互いに異なる。
従って、(6)式から(8)式を、搬送波と波束について対応させ、(14)式から(16)式のように表すことができる。

【0053】
【数14】
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【数15】
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【数16】
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【0054】
(14)式から(16)式において、nは、光周波数コムのスペクトル群の搬送波の位相屈折率(第一屈折率)である。nは、光周波数コムのスペクトル群の群屈折率(第二屈折率)である。Lは、搬送波を用いて得られる第一光学的距離である。Lは、スペクトル群の包絡線を構成する波束を用いて得られる第二光学的距離である。

【0055】
本発明に係る屈折率補正法は、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含む第一光周波数コムを測定領域中で伝搬させる工程と、二以上のスペクトルの搬送波を測定領域中で伝搬させた際の第一光学的距離Lを測定し、二以上のスペクトルの包絡線を構成する波束を測定領域中で伝搬させた際の第二光学的距離Lを測定する工程と、第一光学的距離Lと第二光学的距離Lとの第一光学的距離差(L-L)を得る工程と、第一光学的距離Lに基づいて算出される位相屈折率n又は第二光学的距離Lに基づいて算出される群屈折率nを第一光学的距離差(L-L)に基づいて補正する工程と、を備えている。
なお、前述のように、「測定領域」は、真空ではなく、何らかの分散媒質が存在し、屈折率の変動が生じ得る領域であることを示す。
上述の屈折率補正法では、第一光周波数コムの搬送波及び波束を用い、(14)式から(16)式に基づいて位相屈折率n又は群屈折率nの高精度な補正が可能である。

【0056】
第一実施形態の距離測定法は、第一実施形態の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、第一光学的距離差(L-L)に基づいて測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離Lを算出する工程を備えている。即ち、第一光周波数コムの搬送波及び波束を用い、(14)式から(16)式に基づいて幾何学的距離Lの算出が可能である。
幾何学的距離Lは、測定領域内に存在する測定対象の形状を示す物理量であれば、特に限定されず、例えば測定対象が測定領域の空間の一端から他端までであってもよく、測定領域内に配置されている部材の長さ寸法や幅寸法、或いは厚み寸法等であってもよい。

【0057】
次に、第一実施形態の屈折率補正法及び距離測定法を用いて測定対象の幾何学的距離を測定可能な距離測定装置について、図3を参照し、説明する。図3は、第一実施形態の距離測定装置10の構成を示す概略図である。

【0058】
距離測定装置10は、第一光周波数コム光源22と、第一干渉部31と、第二干渉部32と、第一光学的距離測定部35と、第二光学的距離測定部36と、光学的距離差算出部38と、幾何学的距離算出部42と、を備えている。
図3に示す構成では、測定領域Sは空気中であり、測定対象Bは空気中のビームスプリッターBS1とコーナーリフレクターCRとの間の幾何学的距離Lである。BS1とM4の間の参照距離は短く設定できるため安定に決定でき、別途差し引くことが可能である。

【0059】
第一光周波数コム光源22は、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含み、中心波長λの第一光周波数コム(光周波数コム)を出射する。第一光周波数コム光源22から出射される第一光周波数コムの繰り返し周波数frepおよびキャリア・エンベロップ・オフセットfCEOは、周波数標準21によって安定化制御されている。
このような第一光周波数コム光源22には、例えば、モード同期ファイバレーザーを用いることができる。距離測定装置10において光源22から出射した光波で干渉計測を行うことをふまえると、モード同期ファイバレーザーの中でも、平均出力が大きく、スペクトル群の包絡線の半値幅が広く、包絡線の形状が滑らかであるモード同期ファイバレーザーを用いることが最適である。例えば、モード同期エルビウム添加ファイバレーザーの場合、平均出力は波長1560nmにおいて10mW以上、スペクトル群の包絡線の半値幅は10nm以上のスムースな形状のスペクトルが容易に得られる。
以下、第一光周波数コムのパルス間隔周波数frepを54MHzとし、第一光周波数コムの中心波長λを1570nmとして、説明する。

【0060】
第一光周波数コム光源22から出射された第一光周波数コムの二以上のスペクトルの搬送波W1と波束W2は、ミラーM1,M2によって、入射方向に対して略垂直に反射し、ビームスプリッタBS1に入射する。
ビームスプリッタBS1に入射した搬送波W1と波束W2は、ビームスプリッタBS1によって分岐し、二方向に出射する。

【0061】
ビームスプリッタBS1によって分岐した搬送波W1は第一干渉部31に入射し、波束W2は第二干渉部32に入射する。第一干渉部31及び第二干渉部32は、図3に示すように例えばヘテロダイン干渉計の構成を備え、構成要素を互いに共用している。
なお、第一光周波数コム光源22から出射した搬送波W1と波束W2を、それぞれ第一干渉部31と第二干渉部32に入射されれば、第一光周波数コム光源22と第一干渉部31及び第二干渉部32との間の光学系の構成は、上述した構成に限定されない。

【0062】
第一干渉部31の測定光路には、コーナーリフレクターCRが設けられている。コーナーリフレクターCRは、ビームスプリッターBS1から搬送波W1の進行方向に沿って測定対象Bの幾何学的距離Lだけ離間した位置に配置されている。第一干渉部31の参照光路には、音響光学素子AOM1と、ミラーM4が設けられている。
第一干渉部31は、第一光周波数コム光源22から出射し、ビームスプリッターBS1によって測定光路と参照光路とに分岐された搬送波W1同士を干渉させる。ビームスプリッターBS1によって測定光路に分岐された搬送波W1は、コーナーリフレクターCRに入射し、入射方向と平行し、且つ逆向きに反射し、ビームスプリッターBS1まで戻る。一方、ビームスプリッターBS1によって参照光路に分岐された搬送波W1は、音響光学素子AOM1を通り、ミラーM4で入射方向と略平行に、且つ逆向きに反射した後、再び音響光学素子AOM1を通ってビームスプリッターBS1まで戻る。
ビームスプリッタBS1に戻った搬送波W1は、ビームスプリッターBS2によって、入射方向に対して略垂直に反射し、第一光学的距離測定部35に入射する。

【0063】
第二干渉部32は、第一干渉部31と同様の構成要素を備え、ビームスプリッターBS1によって測定光路と参照光路とに分岐された波束W2同士を干渉させる。
従って、ビームスプリッターBS1によって測定光路に分岐された波束W2は、コーナーリフレクターCRに入射し、入射方向と平行し、且つ逆向きに反射し、ビームスプリッターBS1まで戻る。ビームスプリッターBS1によって参照光路に分岐された波束W2は、音響光学素子AOM1を通り、ミラーM4で入射方向と略平行に、且つ逆向きに反射した後、再び音響光学素子AOM1を通ってビームスプリッターBS1まで戻る。
ビームスプリッターBS1に戻った波束W2は、ビームスプリッターBS2を透過し、ミラーM5によって、入射方向に対して略垂直に反射し、第二光学的距離測定部36に入射する。

【0064】
第一光学的距離測定部35は、第一干渉部31において干渉した搬送波W1同士の測定光路と参照光路との光路長差に応じた分だけ時間軸上で離れたパルス間の第一干渉縞を取得し、取得した第一干渉縞の間隔に基づいて第一光学的距離L(第一光学的距離L)を測定する。第一光学的距離測定部35は、フォトディテクタPD1と、ロックイン検出器LID1と、信号制御部SC1と、距離測定部DD1によって構成されている。信号制御部SC1からは、音響光学素子AOM1に対してドライブ周波数における所望の位相信号が入力され、ロックイン検出器LID1に対して前記位相信号に応じた参照信号が入力可能とされている。第一光周波数コムの搬送波W1同士を干渉させ、音響光学素子AOM1のドライブ周波数におけるヘテロダイン検出によって搬送波W1同士の干渉縞を取得する。距離測定部DD1では、搬送波W1同士の第一干渉縞の位相測定を行うことで、位相速度による距離測定がなされる。そして、従来の干渉計測と同様に、取得した第一干渉縞の位相の増減によって第一光学的距離Lを定量的に測定することができる。

【0065】
第二光学的距離測定部36は、フォトディテクタPD2と、包絡線ピーク検出器PS1と、距離測定部DD2によって構成されている。波束W2同士の第二干渉縞は、測定光路と参照光路との光路長差に応じた分だけ時間軸上で離れたパルス間の干渉を利用している。そのため、例えば、パルス間隔周波数frepを制御しながら変化させることにより、パルス間隔時間Trepを精密に変化させながら、第一光周波数コムの波束W2同士を干渉させ、第二干渉縞を取得する。そして、包絡線ピーク検出器PS1で取得した第二干渉縞の包絡線のピーク検出によって、距離測定部DD2で第二光学的距離L(即ち、第二光学的距離L)を定量的に測定することができる。但し、図2を参照するとわかるように、時間領域において、パルスの包絡線の幅は、個々の搬送波の幅(パルス内部の振動する波の波長に相当)に比べて大きい。従って、第一光周波数コムの搬送波W1同士の第一干渉縞に基づく第一光学的距離Lの測定精度に比べて、波束W2同士の第二干渉縞に基づく第二光学的距離Lの測定精度が低下し易いことが考えられる。この点をふまえ、波束W2同士の第二干渉縞の測定時に、例えば干渉光強度の微分値を算出し、その増減を観測することで、高精度に第二光学的距離Lを測定することができる。

【0066】
光学的距離差算出部38は、第一光学的距離測定部35で測定された第一光学的距離Lと第二光学的距離測定部36で測定された第二光学的距離Lから光学的距離差(L-L)を算出する。即ち、第一光周波数コムの搬送波W1に基づく第一光学的距離Lと第一光周波数コムの波束W2に基づく第二光学的距離Lとの光学的距離差(L-L)を算出する。

【0067】
幾何学的距離算出部42は、光学的距離差算出部38で算出された第一光学的距離差(L-L)に基づいて、前述した(7)式により、幾何学的距離Lを算出する。第一実施形態では、第一光学的距離差(L-L)に基づいて、前述した(15)式により、幾何学的距離Lを算出する。
なお、A係数は前述した(8)式及び(16)式により、第一光学的距離測定部35及び第二光学的距離測定部36で測定された第一光学的距離L、第二光学的距離Lを用いて算出することができる。
光学的距離差算出部38及び幾何学的距離算出部42には、例えばコンピュータ等を用いることができる。

【0068】
上記説明したように、第一実施形態の屈折率補正法では、第一光周波数コムに含まれる二以上のスペクトルの周波数が極めて高く安定しているので、二以上のスペクトルの搬送波及び二以上のスペクトルの包絡線による干渉縞が高精度に取得できる。これにより、搬送波の位相屈折率に基づく第一光学的距離及び波束の群屈折率に基づく第二光学的距離の変動要因は、環境パラメータの変動に略限られる。従って、光周波数コムの活用によって、二波長のレーザーや白色干渉を用いた従来法に比べて、屈折率の補正、光学的距離の測定及び距離測定技術における高精度化が可能である。即ち、第一光学的距離L及び第二光学的距離Lを安定して高精度に測定することができる。

【0069】
また、第一実施形態の屈折率補正法では、第一光周波数コムの搬送波と波束が同一の第一光周波数コム光源22から発せられ、且つ環境パラメータの変動によって各々の空気屈折率が変化し、光学的距離同士の相関関係が保持される。従って、第一実施形態の屈折率補正法によれば、二波長のレーザーを用いた従来法のように複数の光源を用意する必要がなくなる。従って、空気屈折率の補正を行う光学系のスペースの縮小化を図ることができる。また、搬送波及び波束の波長が同一であるため、光学系における色収差が小さくなり、第一光学的距離L及び第二光学的距離Lをより高精度に測定することができる。

【0070】
また、第一実施形態の距離測定法によれば、補正された空気屈折率を用い、第一光学的距離差(L-L)(即ち、(L-L))に基づいて、幾何学的距離Lを高精度に算出することができる。

【0071】
また、第一実施形態の距離測定装置10によれば、干渉計測によって第一干渉縞及び第二干渉縞を容易且つ高精度に取得するので、第一光学的距離測定部35において第一光学的距離Lを容易且つ高精度に測定し、且つ第二光学的距離測定部36において第二光学的距離Lを容易且つ高精度に測定することができる。その結果、第一光学的距離差(L-L)に基づいて、幾何学的距離Lを高精度に算出することができる。

【0072】
(第二実施形態)
次に、本発明を適用した第二実施形態の屈折率補正法、前記屈折率補正法に基づく距離測定法及び前記距離測定法を用いた距離測定装置について、説明する。なお、第一実施形態の屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、各々の構成要素の説明は省略する。

【0073】
第二実施形態の屈折率補正法は、第一波の中心波長と第二波の中心波長との何れとも異なる中心波長の第三波を測定領域中で伝搬させる工程と、第三波を測定領域中で伝搬させた際の第三光学的距離を測定する工程と、第一光学的距離又は第二光学的距離と第三光学的距離との第二光学的距離差を得る工程と、をさらに備え、第一屈折率又は第二屈折率を補正する工程に替えて、第一屈折率又は第二屈折率を第一光学的距離差及び第二光学的距離差に基づいて補正する工程と、を備える。

【0074】
そして、第二実施形態の屈折率補正法は、第一光周波数コムの搬送波の中心波長λと波束の中心波長λとの何れとも異なる中心波長λの第二光周波数コム(第三波)を測定領域中で伝搬させる工程と、第二光周波数コムを測定領域中で伝搬させた際の第三光学的距離Lを測定する工程と、第一光学的距離L又は第二光学的距離Lと第三光学的距離Lとの第二光学的距離差(即ち、(L-L)又は(L-L))を得る工程と、を備え、位相屈折率n又は群屈折率nを補正する工程に替えて、位相屈折率n、群屈折率n及び第二光周波数コムの測定領域中の屈折率nの何れか一つの屈折率を第一光学的距離差(L-L)及び第二光学的距離差((L-L)又は(L-L))に基づいて補正する工程を備えている。
ここで、第二光周波数コムの測定領域中の屈折率nは、第二光周波数コムのスペクトルの搬送波の位相屈折率np2又は、中心波長λの光周波数コムの波束の群屈折率ng2であることが好ましい。
上述の屈折率補正法では、第一光周波数コム及び第二光周波数コムの搬送波及び波束を用い、(14)式から(16)式に示す原理と同様に、位相屈折率n,np2又は群屈折率n,ng2の高精度な補正が可能である。

【0075】
第二実施形態の距離測定法は、第二実施形態の屈折率補正法を用いた距離測定法であって、第一光学的距離差(L-L)及び第二光学的距離差((L-L)又は(L-L))に基づいて測定領域内に存在する測定対象の形状を示す幾何学的距離Lを算出する工程を備えている。
具体的には、第二光学的距離差は(L-Lp2)又は(L-Lg2)と表される。Lp2は、第二光周波数コムのスペクトルの搬送波を用いて得られる光学的距離(第三光学的距離)である。Lg2は、第二光周波数コムのスペクトル群の包絡線を構成する波束を用いて得られる光学的距離(第三光学的距離)である。

【0076】
図4は、第二実施形態の距離測定装置12の構成を示す概略図である。
距離測定装置12は、第一実施形態の距離測定装置10の構成要素に加え、光周波数コム光源24と、第三干渉部33と、第三光学的距離測定部37と、を備えている。

【0077】
第二光周波数コム光源24は、互いに異なる周波数で且つ所定の周波数間隔で分布するスペクトルを二以上含み、中心波長λの第二光周波数コムを出射する。第二光周波数コム光源24から出射される第二光周波数コムのキャリア・エンベロップ・オフセットfCEOは、周波数標準23によって安定化されている。
このような第二光周波数コム光源24には、第一光周波数コム光源22と同様に、例えば、モード同期ファイバレーザーを用いることができる。
第二光周波数コム光源24から出射された第二光周波数コムは、ダイクロイックミラーDM1によって、入射方向に対して略垂直に反射し、ビームスプリッタBS1に入射する。
以下、第二光周波数コム光源24から出射された第二光周波数コムの搬送波W3を用いることを想定して説明する。

【0078】
第三干渉部33の測定光路は、第一干渉部31及び第二干渉部32の測定光路と共通である。第三干渉部33の参照光路には、ダイクロイックミラーDM2と、音響光学素子AOM2と、ミラーM6が設けられている。
第三干渉部33は、第二光周波数コム光源24から出射し、ビームスプリッターBS1によって測定光路と参照光路とに分岐された第二光周波数コムの搬送波W3同士を干渉させる。ビームスプリッターBS1によって測定光路に分岐された搬送波W3は、コーナーリフレクターCRに入射し、入射方向と平行し、且つ逆向きに反射し、ビームスプリッターBS1まで戻る。一方、ビームスプリッターBS1によって参照光路に分岐された搬送波W3は、ダイクロイックミラーDM2によって、入射方向に対して略垂直に反射し、音響光学素子AOM1を通り、ミラーM4で入射方向と略平行に、且つ逆向きに反射した後、再び音響光学素子AOM1を通ってダイクロイックミラーDM2によって反射し、ビームスプリッターBS1まで戻る。
ビームスプリッタBS1に戻った搬送波W3は、ダイクロイックミラーDM3によって、入射方向に対して略垂直に反射し、第三光学的距離測定部37に入射する。

【0079】
第三光学的距離測定部37は、第三干渉部33において干渉した搬送波W3同士の測定光路と参照光路との光路長差に応じた分だけ時間軸上で離れたパルス間の第三干渉縞を取得し、取得した第三干渉縞の間隔に基づいて第三光学的距離Lp2(第三光学的距離L)を測定する。第三光学的距離測定部37は、フォトディテクタPD3と、ロックイン検出器LID3と、信号制御部SC3と、距離測定部DD3によって構成されている。信号制御部SC3からは、音響光学素子AOM2に対してドライブ周波数における所望の位相信号が入力され、ロックイン検出器LID3に対して前記位相信号に応じた参照信号が入力可能とされている。第二光周波数コムの搬送波W3同士を干渉させ、音響光学素子AOM2のドライブ周波数におけるヘテロダイン検出によって搬送波W3同士の干渉縞を取得する。距離測定部DD3では、搬送波W3同士の第三干渉縞の位相測定を行うことで、位相速度による距離測定がなされる。そして、従来の干渉計測と同様に、取得した第三干渉縞の間隔の増減によって第三光学的距離Lを定量的に測定することができる。

【0080】
光学的距離差算出部38は、第一光学的距離Lと第二光学的距離Lから第一光学的距離差(L-L)を算出すると共に、第一光学的距離L又は第二光学的距離Lと第三光学的距離Lp2から第二光学的距離差(Lp2-L),(Lp2-L)を算出する。例えば、第一光周波数コムの搬送波W1に基づく第一光学的距離Lと第二光周波数コムの搬送波W1に基づく第三光学的距離Lp2との第二光学的距離差(Lp2-L)を算出する。

【0081】
幾何学的距離算出部42は、光学的距離差算出部38で算出された第一光学的距離差(L-L)及び第二光学的距離差(Lp2-L)に基づいて、幾何学的距離L及びA係数を算出する。

【0082】
上記説明したように、第二実施形態の屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置12では、光周波数コム(第三波)を活用することで、第一実施形態の屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置10と同様の作用効果が得られる。
さらに、従来の2色法と第一実施形態の屈折率補正法及び距離測定法とを組み合わせることで、空気屈折率をより高精度に補正し、第一光学的距離差(L-L)、第二光学的距離差(Lp2-L)及び幾何学的距離Lをより高精度に取得することができる。距離測定装置12における光学系のスペースが多少大きくなるが、湿度等の環境パラメータの変動に対して補正精度をより一層高め、高精度な距離測定が実現可能となる。

【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。

【0084】
なお、上述した実施形態の屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置では、測定領域中の分散媒体が空気であることを想定して説明したが、本発明に係る屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置の対象は、空気屈折率、空気環境下の測定領域に限定されない。即ち、本発明に係る屈折率補正法、距離測定法及び距離測定装置は、測定対象が真空である、即ち屈折率の変動が生じない場合を除き、あらゆる測定領域そのもの又は測定領域内に配置されている部材等に適用することができる。特に、本発明に係る屈折率補正法は、温度や湿度等の環境パラメータの変動の影響を受けやすい気体環境下の屈折率に対して有用である。
【符号の説明】
【0085】
10,12・・・距離測定装置
22・・・第一光周波数コム光源(光周波数コム光源)
24・・・第二光周波数コム光源(光周波数コム光源)
31・・・第一干渉部
32・・・第二干渉部
35・・・第一光学的距離測定部
36・・・第二光学的距離測定部
38・・・光学的距離差算出部
42・・・幾何学的距離算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3