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明細書 :癌幹細胞抑制剤、癌の転移又は再発の抑制剤並びに癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-071592 (P2017-071592A)
公開日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 癌幹細胞抑制剤、癌の転移又は再発の抑制剤並びに癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
A61K  31/4196      (2006.01)
A61K  31/16        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/04
A61K 31/4196
A61K 31/16
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-078614 (P2016-078614)
出願日 平成28年4月11日(2016.4.11)
優先権出願番号 2015197598
優先日 平成27年10月5日(2015.10.5)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】大原 利章
【氏名】二宮 卓之
【氏名】友野 靖子
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】399015780
【氏名又は名称】医療法人創和会
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C086
4C206
Fターム 4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
要約 【課題】癌幹細胞による疾患を治療する。
【解決手段】鉄キレート剤を含む癌幹細胞抑制剤。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄キレート剤を含む癌幹細胞抑制剤。
【請求項2】
癌幹細胞の増殖を抑制する、請求項1に記載の癌幹細胞抑制剤。
【請求項3】
癌幹細胞の機能を抑制する、請求項1に記載の癌幹細胞抑制剤。
【請求項4】
鉄キレート剤がデフェラシロクス又はデフェロキサミンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の癌幹細胞抑制剤。
【請求項5】
鉄キレート剤を含む癌の転移又は再発の抑制剤。
【請求項6】
鉄キレート剤を含む、癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌幹細胞抑制剤、癌の転移又は再発の抑制剤並びに癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌幹細胞は癌の再発や治療抵抗性に重要な役割を果たしており、今後の癌治療の飛躍的な進歩のためには癌幹細胞の治療法の開発が必要と考えられているが、現在まで確立された癌幹細胞治療法はない。
【0003】
鉄の過剰が発癌の原因となっている事は知られている。また、特許文献1は、デフェロキサミン又はその誘導体を有効成分とする癌治療薬を開示する。
【0004】
癌幹細胞はNanogや山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)の発現が造腫瘍性や自己複製能の維持に重要で、癌の再発や治療抵抗性に重要な役割を果たしているとされている(非特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-196959
【0006】

【非特許文献1】Cancer Res 2010; 70: 10433-10444
【非特許文献2】Nature Vol.511, p.246-250 (2014)
【非特許文献3】Oncogene. 2013; 32(37): 4397-4405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、がん幹細胞の増殖及び機能を抑制する技術並びに癌の転移と再発を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の癌幹細胞抑制剤、癌の転移又は再発の抑制剤並びに癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤を提供するものである。
項1. 鉄キレート剤を含む癌幹細胞抑制剤。
項2. 癌幹細胞の増殖を抑制する、項1に記載の癌幹細胞抑制剤。
項3. 癌幹細胞の機能を抑制する、項1に記載の癌幹細胞抑制剤。
項4. 鉄キレート剤がデフェラシロクス又はデフェロキサミンである、項1~3のいずれか1項に記載の癌幹細胞抑制剤。
項5. 鉄キレート剤を含む癌の転移又は再発の抑制剤。
項6. 鉄キレート剤を含む、癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
鉄キレート剤は、癌幹細胞に対して他の非癌幹細胞と同様に濃度依存的に増殖を抑制するだけなく癌幹細胞マーカーの発現を抑制し、癌幹細胞の機能を抑制する事が明らかになった。さらに、癌細胞の未分化マーカー発現を抑制し、癌の悪性度を低下させて抗癌剤に対する治療抵抗性を低下させ、癌の転移、再発を抑制できることが明らかになった。
【0010】
本発明は、今まで未確立である癌幹細胞の治療開発につながるだけでなく、既存の抗癌剤と組み合わせて使う事で癌を制圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】鉄キレート剤(デフェラシロクス、デスフェラール)投与による癌幹細胞株(miPS-LLCcm)の濃度依存的な増殖抑制効果
【図2】デフェラシロクスの培地への投与による癌幹細胞マーカーの発現抑制
【図3A】デスフェラールの培地への投与による癌幹細胞マーカーの発現抑制
【図3B】デフェラシロクスの培地への投与による癌細胞の未分化マーカー(Nanog)の発現抑制
【図4A】ヌードマウスでの癌幹細胞による造腫瘍抑制
【図4B】ヌードマウスでの癌幹細胞による造腫瘍抑制
【図5A】鉄キレート剤の正常細胞に対する効果
【図5B】鉄キレート剤の正常細胞に対する効果
【図6】癌幹細胞の鉄依存性
【図7】幹細胞性マーカーのOct3/4, c-Myc, GFPの発現についてウエスタンブロット
【図8】5-FU又はCDDP投与48時間後の癌幹細胞(miPS-LLCcm)の細胞生存率
【図9】5-FU又はCDDP投与後の癌幹細胞(miPS-LLCcm)の未分化マーカー
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、治療の対象となる癌幹細胞は、任意の臓器もしくは組織の特性を有していてもよく、例えば大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、前立腺癌、胃癌、肝臓癌、食道癌、膵臓癌、膀胱癌、胆管癌、喉頭癌、黒色腫、肺癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺癌、多発性骨髄腫などの任意の癌に含まれるがん幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。

【0013】
癌幹細胞及び癌細胞は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物由来の癌幹細胞及び癌細胞が挙げられ、マウス、ラット、ヒトが好ましく例示され、ヒトが最も好ましい治療対象である。

【0014】
本発明の癌幹細胞抑制剤は、癌幹細胞の増殖を抑制し、さらに癌幹細胞の機能を抑制することができる。癌幹細胞の機能としては、造腫瘍性や自己複製能が挙げられる。本発明の癌幹細胞抑制剤及び癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤は、Nanog、山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子発現を抑制する。これらの遺伝子発現の抑制により、癌幹細胞及び癌細胞の機能が抑制され、その結果癌の転移や再発、治療抵抗性を抑制することができる。

【0015】
本発明の癌幹細胞抑制剤、癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤及び癌の転移又は再発の抑制剤の有効成分は鉄キレート剤である。この鉄キレート剤は、鉄イオン(Fe2+, Fe3+)とキレートすることで鉄イオンの体外への排出を促進することができる。このような鉄キレート剤としては、鉄とキレート可能な任意の鉄キレート剤が使用でき、好ましくは鉄イオンに対して選択的もしくは特異的にキレート可能なキレート剤が挙げられる。鉄イオン選択的なキレート剤は、他の金属イオン(例えば銅イオン又は亜鉛イオン)に比べて鉄に対し10倍以上高い親和性を有する(鉄イオンの濃度が他の金属イオンの1/10以下であっても他の金属イオンと同等以上に鉄イオンとキレート剤が複合体を形成する)ものであり、鉄イオン特異的なキレート剤は、他の金属イオン(例えば銅イオン又は亜鉛イオン)に比べて鉄に対し100倍以上高い親和性を有する(鉄イオンの濃度が他の金属イオンの1/100以下であっても他の金属イオンと同等以上に鉄イオンとキレート剤が複合体を形成する)ものである。

【0016】
鉄キレート剤としては、デフェロキサミン、デフェラシロクス、デフェリプロン、デフェリポン、S-DFO、PIHなどの経口で活性な3座キレート剤、第2世代のヒドロキシピリドン(HBEDなど)、トリアゾールファミリーの3座キレート剤(例えばICL-670)などの公知の鉄キレート剤を使用することができ、今後開発される任意の鉄キレート剤を全て使用することができる。

【0017】
本発明の癌幹細胞抑制剤及び癌の転移又は再発の抑制剤は、抗腫瘍剤と組み合わせて使用することができる。本発明の癌幹細胞抑制剤、癌細胞の未分化マーカー発現抑制剤は、癌の悪性度、治療抵抗性を低下させることで、他の抗癌剤の有効性を高めることができる。組み合わせて使用される抗腫瘍剤としては、131I-chTNT、アバレリクス、アビラテロン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アルグラビン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、バシリキシマブ、BAY 80-6946、BAY 1000394、ベロテカン、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ビスアントレン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カバジタキセル、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カルボプラチン、カルモフール、カルムスチン、カツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シスプラチン(CDDP)、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デスロレリン、塩化ジブロスピジウム、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、エクリズマブ、エドレコロマブ、エリプチニウムアセテート、エルトロンボパグ、エンドスタチン、エノシタビン、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フィルグラスチム、フルダラビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、フォルメスタン、ホテムスチン、フルベストラント、ガリウムニトレート、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、glutoxim、ゴセレリン、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルボアミド、I-125シード、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、イピリムマブ、イリノテカン、イクサベピロン、ランレオチド、ラパチニブ、レナリドマイド、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、ロイプロレリン、レバミソール、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルテストステロン、ミファムルチド、ミルテホシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ネダプラチン、ネララビン、ニロチニブ、ニルタミド、ニモツズマブ、ニムスチン、ニトラクリン、オファツムマブ、オメプラゾール、オプレルベキン、オキサリプラチン、p53遺伝子治療、パクリタキセル、パリフェルミン、パラジウム-103シード、パミドロン酸、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガスパルガーゼ、PEG-エポエチンベータ(メトキシPEG-エポエチンベータ)、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピシバニール、ピラルビシン、プレリキサホル、プリカマイシン、ポリグルサム、ポリエストラジオールホスフェート、ポリサッカリドK、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プロカルバジン、キナゴリド、ラジウム-223クロライド、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラニムスチン、ラゾキサン、レファメチニブ、レゴラフェニブ、リセドロン酸、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、サルグラモスチム、シプロイセルT、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシジダゾールナトリウム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タミバロテン、タモキシフェン、タソネルミン、テセロイキン、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、チオグアニン、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラスツマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリプトレリン、トロホスファミド、トリプトファン、ウベニメクス、バルルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム-90ガラスマイクロスフェア類、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、ゾルビシンなどが挙げられる。

【0018】
癌幹細胞抑制剤及び癌の転移又は再発の抑制剤の投与量は、成人1日あたり1μg~10g程度、好ましくは1mg~5g程度、より好ましくは10mg~3g程度、より好ましくは100mg~2g程度である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
製造例1:miPS-LLCcm
マウスiPS細胞(miPS)を既知の方法によって、肝細胞へと分化誘導した。本製造例ではIwamuroら(Cell Transplant. 2010;19(6):841-7)に準じた方法で以下の手順でEB(Embryonic Body)形成、DE(Definitive Endoderm)への誘導、Heps(Hepatocytes)の作成を行った。
【実施例】
【0021】
【化1】
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【実施例】
【0022】
肝細胞への誘導過程でマウス肺癌細胞株LLC培養上清を添加して、肝臓のがん幹細胞モデル(miPS-LLCcm)を作製した。
【実施例】
【0023】
実施例1
製造例1で得られた癌幹細胞モデル(miPS-LLCcm)を用い、鉄キレート剤(デフェラシロクス、デスフェラール)を用いて癌幹細胞マーカーの発現について検討を行った。この癌幹細胞モデルは、iPS細胞から作成された癌幹細胞モデルのため、Naongと山中因子(c-Myc、Oct3/4、SOX2、Klf4)を発現している。
【実施例】
【0024】
まず、基本的な細胞の機能の確認として、鉄キレート剤(デフェラシロクス、デフェロキサミン)を培地に投与して48時間後の増殖の抑制効果を確認した(図1)。鉄キレート剤を投与すると濃度依存的に癌幹細胞は増殖が抑制された。
【実施例】
【0025】
実施例2
次に癌幹細胞(miPS-LLCcm)に特異的に発現されている癌幹細胞マーカーの発現に対するデフェラシロクスの効果を、デフェラシロクスを培地に添加して48時間後に蛋白質を回収し、ウエスタンブロット法で検証した(図2)。デフェラシロクスを投与すると癌幹細胞マーカーであるNanogと山中因子(c-Myc、Oct3/4、Sox2、Klf4)の発現が、ある一定の濃度以上になると発現が抑制されることが判明した。
【実施例】
【0026】
鉄キレート剤は、癌幹細胞の増殖を抑制するだけなく、癌幹細胞マーカーの発現を減弱させる効能を有している画期的な薬剤である事が示された。
【実施例】
【0027】
実施例3
癌幹細胞(miPS-LLCcm)の培地に対して鉄キレート剤のデスフェラールを投与し48時間後に蛋白質を回収し、幹細胞性マーカーのNanogの発現についてウエスタンブロット法で検証した(図3A)。この実験ではデスフェラールが50μM以上となるとNanogの発現が抑制された。
【実施例】
【0028】
実施例4
癌幹細胞(miPS-LLCcm)以外に幹細胞性マーカーのNanogを発現しているヒト乳癌細胞株MCF-7についてデフェラシロクスを培地に投与し、48時間後に蛋白質を回収し、ウエスタンブロット法で検証した(図3B)。この実験でもNanogの発現は抑制され、鉄キレート剤を投与すると未分化性マーカーであるNanogを発現抑制する事を示している。
【実施例】
【0029】
実施例5
miPS-LLCcm細胞株を用いてヌードマウスで皮下腫瘍を作成し(n=4)、鉄キレート剤であるデフェラシロクスを腫瘍作成1週間後から30mg/Kg、或いは、デスフェラールを腫瘍作成1週間後から30mg/Kgで週5回腫瘍に局所注射で投与すると、各々腫瘍の増殖が抑制された(図4A)。腫瘍作成後19日目に腫瘍を回収し、重量を測定し、免疫組織で幹細胞性マーカーのひとつであるSOX2で染色を行うと、コントロール(鉄キレート剤非投与)では腫瘍全体がSOX2で染色されるのに対してデフェラシロクス、デスフェラール投与群では、腫瘍内部に非染色部位が認められる(図4B)。in vivoにおいてもこれらの除鉄剤は幹細胞性マーカーを抑制する事が可能と考えられる。
【実施例】
【0030】
実施例6:正常細胞に対する効果について
マウス繊維芽細胞 :NIH 3T3(図5A)とマウス胚性線維芽細胞:MEF(図5B)に対するデフェラシロクスの投与データを示す。miPS-LLCcmと同様にデフェラシロクス投与48時間後のcell viabilityについて検討を行った。正常細胞に対しても増殖はやや抑制される傾向にあるが、癌幹細胞モデルと比較すると明らかにその効果は弱い。
【実施例】
【0031】
実施例7
癌幹細胞モデル(miPS-LLCcm)の鉄依存性について、トランスフェリン鉄を用いて鉄の依存性についても下記の通りcell viabilityを測定して検討を行った(図6)。通常のFBS(牛血清)15%の状態ではトランスフェリン鉄を投与しても48時間後の増殖は刺激されないが、FBS1%にしてトランスフェリン鉄を投与すると約3倍に増殖が刺激される。この事は癌幹細胞モデル(miPS-LLCcm)が高い鉄依存性を有する事を示している。
【実施例】
【0032】
実施例8
癌幹細胞(miPS-LLCcm)の培地に対して鉄キレート剤のデスフェラール(デフェロキサミンメシル酸塩)を添加し48時間後に蛋白質を回収し、幹細胞性マーカーのOct3/4, c-Myc, GFPの発現についてウエスタンブロット法で検証した(図7)。この実験ではデスフェラール濃度依存的にOct3/4, c-Myc, GFPの発現が抑制された。
【実施例】
【0033】
実施例9
癌幹細胞(miPS-LLCcm)に既存の代表的な抗癌剤である5-FU又はCDDPを投与し、48時間後に細胞生存率をXTT法で計測し、蛋白を回収した。増殖抑制効果は認められたが(図8)、ウエスタンブロット法では未分化マーカーの抑制は認められず(図9)、未分化マーカーの抑制は除鉄剤特有の効果である事を示している。除鉄剤が従来の抗癌剤にはない新しい効能により癌幹細胞治療法になり得る事を示している。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図5A】
6
【図5B】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11