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明細書 :耐震性向上用弾性部材、耐震性向上用構造体、及び耐震性向上用弾性部材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-089714 (P2017-089714A)
公開日 平成29年5月25日(2017.5.25)
発明の名称または考案の名称 耐震性向上用弾性部材、耐震性向上用構造体、及び耐震性向上用弾性部材の製造方法
国際特許分類 F16F  15/04        (2006.01)
E04H   9/02        (2006.01)
F16F   1/02        (2006.01)
F16F   1/18        (2006.01)
FI F16F 15/04 A
E04H 9/02 311
F16F 1/02 B
F16F 1/18 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2015-218453 (P2015-218453)
出願日 平成27年11月6日(2015.11.6)
発明者または考案者 【氏名】澤田 樹一郎
【氏名】鶴田 将悟
【氏名】江藤 弘樹
【氏名】中村 建人
【氏名】西田 銀次
【氏名】山下 翼
【氏名】後藤 拓史
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査請求 未請求
テーマコード 2E139
3J048
3J059
Fターム 2E139AA01
2E139AB04
2E139AC19
2E139BA30
2E139BD04
3J048AA01
3J048AB01
3J048BC04
3J048CB05
3J048DA04
3J048EA38
3J059AA04
3J059AB11
3J059AD05
3J059BA14
3J059BA18
3J059BC01
3J059BD03
3J059CA14
3J059CB03
3J059DA16
3J059EA01
3J059EA11
3J059GA42
要約 【課題】多数回の繰り返し荷重が作用する場合や、揺れの振幅が大きな場合でも、建物の損傷を抑える効果が失われにくく、設置箇所の制約を受けにくい耐震性向上用弾性部材を提供する。
【解決手段】耐震性向上用弾性部材としての芯材2は、平板状体Sを部分的に除去した形状の外形を有する。芯材2は、平板状体Sの延在方向(x方向)両端部分に位置する一対の取り付け部21及び22と、一対の取り付け部21及び22間に配置される本体部23と、を備える。本体部23は、平板状体Sに対する平面視においてx方向と交差する方向に折り返された形状を有し、x方向の荷重によってx方向に弾性的に伸縮可能な折り返しばね部231を有する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
平板状体を部分的に除去した形状の外形を有する耐震性向上用弾性部材であって、
前記平板状体の延在方向両端部分に位置する一対の取り付け部と、
前記一対の取り付け部間に配置される本体部であって、前記平板状体に対する平面視において前記延在方向と交差する方向に折り返された形状を有し、前記延在方向の荷重によって前記延在方向に弾性的に伸縮可能な折り返しばね部を有する本体部と、
を備える耐震性向上用弾性部材。
【請求項2】
前記本体部が、前記平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向に、複数のセグメントに分割して構成され、各々の前記セグメントが前記折り返しばね部を有すると共に、前記セグメント同士が前記幅方向に互いに遠ざかる方向及び近づく方向に弾性的に変位可能に構成された請求項1に記載の耐震性向上用弾性部材。
【請求項3】
前記本体部が、前記折り返しばね部を前記延在方向に複数連結した構造を有する請求項1又は2に記載の耐震性向上用弾性部材。
【請求項4】
前記折り返しばね部が、前記平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向外方に矩形に折り返された形状を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の耐震性向上用弾性部材。
【請求項5】
前記一対の取り付け部と、前記本体部と、が一体に形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の耐震性向上用弾性部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の耐震性向上用弾性部材と、
前記耐震性向上用弾性部材の、前記延在方向の圧縮荷重に対する、前記平板状体の厚さ方向の座屈変形を防止する座屈防止部材と、
を備える耐震性向上用構造体。
【請求項7】
前記座屈防止部材が、前記耐震性向上用弾性部材を、前記平板状体の厚さ方向に関して両側から挟み込んでいる請求項6に記載の耐震性向上用構造体。
【請求項8】
前記平板状体の、該平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向に向かい合う側面の位置よりも外方に、前記折り返しばね部が撓むことが可能に構成された請求項6又は7に記載の耐震性向上用構造体。
【請求項9】
平鋼を部分的に除去することにより、前記平鋼の長さ方向両端部分に、一対の取り付け部を形成する工程と、
前記平鋼を部分的に除去することにより、前記平鋼の長さ方向中間部分に、前記一対の取り付け部に接続される本体部であって、前記平鋼に対する平面視において前記長さ方向と交差する方向に折り返された形状を有し、前記長さ方向の荷重によって前記長さ方向に弾性的に伸縮可能な折り返しばね部を有する本体部を形成する工程と、
を含む耐震性向上用弾性部材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震性向上用弾性部材、耐震性向上用構造体、及び耐震性向上用弾性部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大地震が発生した場合に、建物の損傷を低減するためには、予め建物の柱や梁に、方杖や筋交い等として耐震性向上用構造体を取り付けておくことが有効である。
【0003】
特許文献1に示されるように、鋼板の平面視中央部分にスリットを形成してなる芯材と、この芯材の座屈変形を防止する部材と、を備える耐震性向上用構造体が知られている。
【0004】
特許文献2に示されるように、板ばねを備える耐震性向上用構造体も知られている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2015-14100号公報
【特許文献2】特開2005-350937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の耐震性向上用構造体は、芯材が塑性変形することで地震のエネルギを吸収する。芯材のスリットは、その部分を優先的に塑性変形させるために形成されたものであり、芯材に弾性復元力をもたせるためのものではない。
【0007】
このような耐震性向上用構造体は、小規模の地震に対しては建物の損傷を抑える効果を示すが、揺れの継続時間が長く多数回の繰り返し荷重が作用する場合や、揺れの振幅が大きな場合は、かかる効果を発揮し難い。これは、芯材は、塑性変形後は剛性がほぼゼロとなり、弾性復元力による原点復帰の効果を発揮できないことによる。
【0008】
特許文献2の耐震性向上用構造体は、板ばねによって弾性復元力を発揮できる。しかし、板ばねを、仕口を構成する柱と梁の双方の長手方向に直交する奥行方向に幅方向を向けた状態で設置する必要がある。このため、板ばねの幅に見合う奥行が確保できる箇所にしか設置することができない。
【0009】
また、特許文献2の耐震性向上用構造体は、複数の板ばねを束ねる複雑な構造を有するため、製造に手間を要する。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、多数回の繰り返し荷重が作用する場合や、揺れの振幅が大きな場合でも、建物の損傷を抑える効果が失われにくく、設置箇所の制約を受けにくい耐震性向上用弾性部材及び耐震性向上用構造体を提供することを第1の目的とする。
【0011】
また、本発明は、耐震性向上用弾性部材を容易に得ることができる耐震性向上用弾性部材の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係る耐震性向上用弾性部材は、
平板状体を部分的に除去した形状の外形を有する耐震性向上用弾性部材であって、
前記平板状体の延在方向両端部分に位置する一対の取り付け部と、
前記一対の取り付け部間に配置される本体部であって、前記平板状体に対する平面視において前記延在方向と交差する方向に折り返された形状を有し、前記延在方向の荷重によって前記延在方向に弾性的に伸縮可能な折り返しばね部を有する本体部と、
を備える。
【0013】
前記本体部が、前記平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向に、複数のセグメントに分割して構成され、各々の前記セグメントが前記折り返しばね部を有すると共に、前記セグメント同士が前記幅方向に互いに遠ざかる方向及び近づく方向に弾性的に変位可能に構成されていてもよい。
【0014】
前記本体部が、前記折り返しばね部を前記延在方向に複数連結した構造を有してもよい。
【0015】
前記折り返しばね部が、前記平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向外方に矩形に折り返された形状を有していてもよい。
【0016】
前記一対の取り付け部と、前記本体部と、が一体に形成されていてもよい。
【0017】
本発明の第2の観点に係る耐震性向上用構造体は、
上記第1の観点に係る耐震性向上用弾性部材と、
前記耐震性向上用弾性部材の、前記延在方向の圧縮荷重に対する、前記平板状体の厚さ方向の座屈変形を防止する座屈防止部材と、
を備える。
【0018】
前記座屈防止部材が、前記耐震性向上用弾性部材を、前記平板状体の厚さ方向に関して両側から挟み込んでいてもよい。
【0019】
前記平板状体の、該平板状体の厚さ方向及び前記延在方向に直交する幅方向に向かい合う側面の位置よりも外方に、前記折り返しばね部が撓むことが可能に構成されていてもよい。
【0020】
本発明の第3の観点に係る耐震性向上用弾性部材の製造方法は、
平鋼を部分的に除去することにより、前記平鋼の長さ方向両端部分に、一対の取り付け部を形成する工程と、
前記平鋼を部分的に除去することにより、前記平鋼の長さ方向中間部分に、前記一対の取り付け部に接続される本体部であって、前記平鋼に対する平面視において前記長さ方向と交差する方向に折り返された形状を有し、前記長さ方向の荷重によって前記長さ方向に弾性的に伸縮可能な折り返しばね部を有する本体部を形成する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の観点に係る耐震性向上用弾性部材及び第2の観点に係る耐震性向上用構造体によれば、折り返しばね部が延在方向に弾性的に伸縮するため、塑性変形によって揺れを吸収する場合に比べると、多数回の繰り返し荷重が作用する場合や、揺れの振幅が大きな場合でも、建物の損傷を抑える効果が失われにくい。
【0022】
また、耐震性向上用弾性部材が、平板状体を部分的に除去した形状の外形を有するため、例えば、柱と梁で構成される仕口に設置する場合、柱と梁の双方の長手方向に直交する奥行方向に、平板状体の厚さ方向を向けた状態で設置できる。即ち、厚さに見合う奥行さえ確保できれば設置できるため、設置箇所の制約を受けにくい。
【0023】
本発明の第3の観点に係る耐震性向上用弾性部材の製造方法によれば、平鋼を部分的に除去するだけで、耐震性向上用弾性部材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る耐震性向上用構造体の一設置態様を示す概念図である。
【図2】実施形態に係る耐震性向上用構造体の主要部を示す分解斜視図である。
【図3】実施形態に係る耐震性向上用構造体の芯材の平面図である。
【図4】実施形態に係る耐震性向上用構造体のx方向に垂直な部分断面図である。
【図5】実施形態に係る耐震性向上用構造体の製造方法のフローチャートである。
【図6】実施形態に係る耐震性向上用構造体の芯材の作用を示す概念図である。
【図7】実施形態に係る耐震性向上用構造体の芯材の作用を示す概念図である。
【図8】他の実施形態に係る耐震性向上用構造体の芯材の平面図である。
【図9】さらに他の実施形態に係る耐震性向上用構造体の芯材の平面図である。
【図10】(A)は、実施形態に係る耐震性向上用構造体の他の設置態様を示す概念図であり、(B)は取り付け部とプレートとの連結部分のy方向に垂直な断面図である。
【図11】他の実施形態に係る耐震性向上用構造体のx方向に垂直な部分断面図である。
【図12】実施例に係る耐震性向上用構造体の芯材に作用させたx方向荷重と、芯材のx方向変位量との関係を計測した結果のグラフである。
【図13】実施例に係る耐震性向上用構造体の地震波に対する応答を求めるためのシミュレーションの条件を示す概念図である。
【図14】(A)は、骨組の地震波に対する応答を示すシミュレーション結果のグラフであり、(B)は、実施例に係る耐震性向上用構造体を取り付けた骨組の地震波に対する応答を示すシミュレーション結果のグラフである。
【図15】芯材に生じるミーゼス応力の値を濃淡で表した濃淡グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図中、同一又は対応する部分に同一符号を付す。

【0026】
図1に示すように、実施形態に係る耐震性向上用構造体1は、耐震性向上の対象となる建物90の柱91と梁92とで構成される仕口に、方杖として斜めに架け渡された態様で使用可能である。耐震性向上用構造体1は、大略、板状を成しており、柱91と梁92の双方の長手方向に直交する奥行方向(図1では紙面に垂直な方向)に厚さ方向を向けた状態で設置されている。

【0027】
耐震性向上用構造体1は、耐震性向上用弾性部材としての芯材2と、芯材2の座屈変形を防止する座屈防止部材3と、を備える。芯材2は、梁92に固定されたプレート93に取り付けられる取り付け部21と、柱91に固定されたプレート94に取り付けられる取り付け部22と、を有する。なお、図1では、芯材2の、座屈防止部材3の背後に位置する部分を破線(隠れ線)で示した。

【0028】
芯材2の、一対の取り付け部21及び22が対向する方向(以下、対向方向という。)に、地震等に起因する荷重が加えられる。ここで荷重とは、引張荷重及び圧縮荷重を含む。

【0029】
図2は、耐震性向上用構造体1の主要部を示す分解斜視図である。上記対向方向をx方向とし、上記厚さ方向をz方向とするxyz直交座標系を定義する。図1の座屈防止部材3は、芯材2をz方向に関して、両側から挟み込む第1及び第2の座屈防止部材31及び32を備える。

【0030】
これら第1及び第2の座屈防止部材31及び32は、図1に示す固定手段としてのボルト33を用いて、芯材2を挟み込んだ状態で、固定される。第1、第2の座屈防止部材31、32には、夫々そのボルト33が挿通するボルト挿通孔31a、32aが複数形成されている。

【0031】
なお、図2には、x方向に荷重が加えられていない無荷重状態の芯材2を示す。芯材2は、無荷重状態においては、x方向に延在する平板状体Sを部分的に除去した外形を有する。なお、平板状体Sは、x方向を長手方向とするようにx方向に長尺に延在しており、平板状体Sの延在方向としてのx方向は、平板状体Sの長手方向でもある。

【0032】
芯材2と同様、第1及び第2の座屈防止部材31及び32も、x方向に長尺に延在する。但し、芯材2のx方向の長さは、第1及び第2の座屈防止部材31及び32のx方向の長さより長い。第1及び第2の座屈防止部材31及び32が芯材2を挟み込んだ状態では、芯材2のx方向両端部分に位置する取り付け部21、22が、夫々第1、第2の座屈防止部材31、32よりもx方向外方に突出する。

【0033】
取り付け部21及び22は、各々平板状体Sと平行な扁平状を成す。これら扁平な取り付け部21、22は、夫々その扁平な面(表面又は裏面)の略全域が、建物(具体的に図1のプレート93、94)に面接触した状態で、建物に固定される。取り付け部21、22には、夫々建物に固定するためのボルトが挿通するボルト挿通孔21a、22aが複数形成されている。

【0034】
芯材2は、一対の取り付け部21及び22間の、第1及び第2の座屈防止部材31及び32によって挟み込まれる部分に、本体部23を有する。本体部23は、一対の取り付け部21及び22と一体に形成されてなる。以下、本体部23の構成について説明する。

【0035】
図3に示すように、本体部23は、図2の平板状体Sの厚さ方向(z方向)及び延在方向(x方向)に直交する幅方向(y方向)に、2つのセグメント23a及び23bに分割されて構成されている。セグメント23aと23bは、y方向に離間している。

【0036】
セグメント23a及び23bの各々は、平面視で互いに合同な外形をもつ複数の折り返しばね部231が、連結部232によってx方向に連結された周期的連結構造を有する。

【0037】
各々の連結部232は、本体部23のy方向ほぼ中央部分においてx方向に延在する。

【0038】
各々の折り返しばね部231は、本体部23の幅方向(y方向)外方に矩形に折り返されたコ字形状を有する。具体的には、各々の折り返しばね部231は、本体部23の幅方向(y方向)最外方に位置する頂部231aと、頂部231aを連結部232に接続する一対の脚部231bと、を有する。頂部231aは、x方向に延在し、各脚部231bは、y方向に延在する。

【0039】
一方のセグメント23aの頂部231a、連結部232は、夫々他方のセグメント23bの対応する頂部231a、連結部232とy方向に対向している。

【0040】
セグメント23a、23bのx方向両端部分は、夫々取り付け部21、22に接続されている。その接続位置は、取り付け部21及び22のy方向端部である。具体的には、セグメント23a及び23bの各々は、そのx方向両端部分において、連結部232のx方向終端からy方向外方に延在する脚部233と、脚部233のy方向終端からx方向に延在し、取り付け部21又は22に接続される接続部234と、を有する。

【0041】
図3中、破線で示す円Vは、図2のボルト挿通孔31a及び32aに挿通される図1のボルト33の挿通位置を示す。図示のように、ボルト33は、x方向に隣り合う折り返しばね部231の間を挿通される。なお、ボルト33の挿通位置は、本体部23に接触しない位置であれば、特に限定されるものではない。

【0042】
図4は、耐震性向上用構造体1の、図3のA-A線の位置における、x方向に垂直な部分断面図である。第1の座屈防止部材31は、平板状の底板部311と、底板部311の幅方向両側から垂直に立ち上がった、補剛リブとしての側板部312とを有する溝形鋼よりなる。同様に、第2の座屈防止部材32も、底板部321と、側板部322と、を有する溝形鋼よりなる。

【0043】
第1及び第2の座屈防止部材31及び32は、互いの底板部311、321の底面を向かい合わせ、それら底板部311と321間に芯材2を挟み込んだ状態で、ボルト33及びナット34、35で固定されている。

【0044】
本体部23と、底板部311及び321とは面接触している。芯材2にx方向の荷重が加えられた場合、本体部23は、底板部311及び321との間の摩擦力に抗して、底板部311及び321に平行なxy面内で弾性的に撓むことが可能である(図6及び図7参照)。

【0045】
図5を参照し、以下、耐震性向上用構造体1の製造方法について説明する。

【0046】
まず、得ようとする芯材2のx方向の長さと等しい長さ、y方向の幅と等しい幅、及びz方向の厚さと等しい厚さをもつ平鋼を準備する(ステップS11)。なお、図1に示した平板状体Sは、かかる平鋼を表したものである。平鋼(平板状体S)は、厚さ(z方向の長さ)が幅(y方向の長さ)及び長さ(x方向の長さ)よりも小さい扁平形状をなす。

【0047】
次に、平鋼を部分的に除去する除去加工を行う(ステップS12)。このステップS12は、除去加工により、平鋼の長さ方向両端部分に一対の取り付け部21及び22を形成する工程Aと、平鋼の長さ方向中間部分に、一対の取り付け部21及び22に接続される本体部23を形成する工程Bと、を含む。なお、工程Aと工程Bの順序は任意であり、工程AとBを同時に行うこともできる。

【0048】
工程Aでは、平鋼の長さ方向両端部分にボルト挿通孔21a(図3参照)を形成すれば、取り付け部21及び22が得られる。この場合、除去加工としては、ボルト挿通孔21aを形成するための、穴あけ加工が用いられる。

【0049】
工程Bでは、折り返しばね部231、連結部232、幅方向延在部233、及び軸方向延在部234が残されるように、これら以外の部分を除去すれば、本体部23が得られる。この場合、除去加工としては、ワイヤ放電加工が用いられる。平鋼を一方の電極とし、放電ワイヤを他方の電極とする。放電ワイヤを平鋼の厚さ方向に送りながら、放電ワイヤの貫通位置を平鋼の表面に平行な面内で走査させることにより、所望の部分を除去できる。

【0050】
なお、除去加工の方法は特に限定されず、ワイヤ放電加工の他、例えば、打ち抜き加工や切削加工等を用いてもよい。また、除去加工の後、平鋼の表面であった面や除去加工で形成された面の粗さを低減させる仕上げ加工を行ってもよい。また、得られた芯材2に、溶接等で他の部材を接続してもよい。

【0051】
次に、平鋼の除去加工で得られた芯材2を、各々溝鋼よりなる第1及び第2の座屈防止部材31及び32で挟み込み、ボルト33とナット34及び35で固定することにより、耐震性向上用構造体1が完成する(ステップS13)。

【0052】
以下、図6及び図7を参照し、耐震性向上用構造体1の作用について説明する。

【0053】
図6(A)は、地震等に起因して芯材2にx方向の引張荷重が加えられた場合に、折り返しばね部231が弾性的に撓む様子を示す。この場合、折り返しばね部231は、その脚部231bがx方向に開くように撓む。これにより、図1の取り付け部21及び22が互いにx方向に遠ざかるように相対変位することが実現される。

【0054】
図6(B)は、芯材2にx方向の圧縮荷重が加えられた場合に、折り返しばね部231が弾性的に撓む様子を示す。この場合、折り返しばね部231は、その脚部231bがx方向に閉じるように撓む。また、折り返しばね部231の頂部231aが、図1の平板状体Sのy方向に向かい合う側面よりも外方に撓む。これにより、図1の取り付け部21及び22が互いにx方向に近づくように相対変位することが実現される。

【0055】
なお、図3に示したように、図4のボルト33は、本体部23の撓みを妨げない位置に挿通されており、第1及び第2の座屈防止部材31及び32で挟み込まれた折り返しばね部231のy方向両側は開放されている。このため、図6(B)で、折り返しばね部231の頂部231aは、図2の平板状体Sのy方向に向かい合う側面よりy方向外方に撓むことが可能である。

【0056】
図7(A)は、芯材2にx方向の引張荷重が加えられた場合に、連結部232が撓む様子を示す。この場合、一方のセグメント23aの連結部232と、他方のセグメント23bの連結部232とが、互いにy方向に近づくように撓む。この撓みは、図6(A)に示す折り返しばね部231の撓みと相まって、図1の取り付け部21及び22の、互いに遠ざかる方向の相対変位可能量を高めることに寄与する。

【0057】
図7(B)は、芯材2にx方向の圧縮荷重が加えられた場合に、連結部232が撓む様子を示す。この場合、一方のセグメント23aの連結部232と、他方のセグメント23bの連結部232とが、互いにy方向に遠ざかるように撓む。この撓みは、図6(B)に示す折り返しばね部231の撓みと相まって、図1の取り付け部21及び22の、互いに近づく方向の相対変位可能量を高めることに寄与する。

【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば次の効果が得られる。

【0059】
(1)芯材2に、x方向の荷重が作用すると、折り返しばね部231がx方向に弾性的に伸縮すると同時に、建物90に、x方向の弾性復元力を作用させる。このため、塑性変形によって揺れを吸収する場合に比べると、多数回の繰り返し荷重が作用する場合や、揺れの振幅が大きな場合でも、建物の損傷を抑える効果が失われにくい。

【0060】
(2)本体部23がy方向にセグメント23a及び23bに分割して構成され、セグメント23a及び23bの各々が折り返しばね部231を有すると共に、セグメント23a及び23bの連結部232同士がy方向に互いに遠ざかる方向及び近づく方向に弾性的に変位可能に構成されている。このため、本体部23がセグメント23aと23bとに分割されてない場合に比べると、取り付け部21及び22のx方向の相対変位可能量を大きくすることができる。

【0061】
(3)本体部23が、折り返しばね部231をx方向に複数連結した構造を有する。このため、1つの折り返しばね部231のみを有する場合に比べると、取り付け部21及び22のx方向の相対変位可能量を大きくすることができる。

【0062】
(4)第1及び第2の座屈防止部材31及び32で挟まれた状態の折り返しばね部231が、平板状体Sのy方向に向かい合う側面よりも外方に撓むことが可能に構成されている。このため、取り付け部21及び22のx方向の相対変位可能量を大きくすることができる。

【0063】
(5)芯材2が平板状体Sを部分的に除去した外形を有するため、図1に示すように、例えば、柱91と梁92で構成される仕口に設置する場合、柱91と梁92の双方の長手方向に直交する奥行方向にz方向、即ち平板状体Sの厚さ方向を向けた状態で設置できる。即ち、厚さに見合う奥行さえ確保できれば設置できる。このため、設置箇所の制約を受けにくい。また、このように耐震性向上用構造体1は、設置スペースが小さくて済むので、他の制振ダンパー等と併用することも容易に実現できる。

【0064】
(6)芯材2は、平鋼を除去加工するだけで、容易かつ安価に得ることができる。

【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下の変形が可能である。

【0066】
上記実施形態では、座屈防止部材3を備えたが、芯材2の圧縮力による座屈を許容し、その圧縮抵抗力を無視して構造設計できる場合や、芯材2に引張荷重しか作用しない場合等には、座屈防止部材3は備えなくてもよい。芯材2のみを、耐震性向上用弾性部材として、建物90に取り付ければよい。

【0067】
上記実施形態では、無荷重状態において、セグメント23aと23bとがy方向に離間した構成を示したが、セグメント23aと23bが無荷重状態においてy方向に接触する部分を有していてもよい。例えば、セグメント23aと23bの連結部232同士がy方向に接触していても、図7(B)に示すように、引張荷重が加わった際、それら連結部232同士が離れる弾性変位が実現される。

【0068】
上記実施形態では、ボルト33を折り返しばね部231の撓みを妨げない位置に挿通させたが、折り返しばね部231が一定以上撓んだ場合にボルト33に接触するような位置にボルト33を挿通させ、ボルト33によって本体部23の一定以上の撓みが規制されるようにしてもよい。

【0069】
上記実施形態では、図1に、耐震性向上用構造体1を方杖として仕口に設置した例を示したが、耐震性向上用構造体1又は芯材2は、相隣る柱と柱の間に筋交いとして設置することも可能であるし、梁と梁の間に設置すること等も可能である。また、耐震性向上用構造体1は、鉄骨構造だけでなく、木造構造やRC構造にも取り付け可能である。また、耐震性向上用構造体1又は芯材2は、既存の建物に後付けすることもできるし、新築の際に建物に予め組み込むこともできる。

【0070】
上記実施形態では、芯材2を平鋼から形成したが、芯材2の素材は、耐震性向上用に使用可能な弾性を示すものであれば、特に鋼に限定されない。例えば、芯材2の素材は、鋼以外の鉄であってもよいし、鉄以外の金属又は合金であってもよい。

【0071】
図8(A)~(E)に、芯材2の本体部の変形例を示す。

【0072】
図8(A)に示すように、折り返しばね部をリング状部材241で構成し、複数のリング状部材241を連結部242で接続してもよい。このように、本体部は、必ずしもy方向に複数のセグメントに分割されていなくてもよい。

【0073】
図8(B)に示すように、y方向最外方に位置する頂部243aと、頂部243aを連結部243cに接続する一対の脚部243b-1及び243b-2と、を有する折り返しばね部243の、脚部243b-1及び243b-2の少なくともいずれか一方が、y方向と交差する方向に延在していてもよい。図8(B)では、脚部243b-2がy方向と交差する斜め方向に延在し、のこぎり波状の本体部が構成されている。

【0074】
図8(C)に示すように、或る折り返しばね部244の形状及び/又は寸法が、他の折り返しばね部245のそれと異なっていてもよい。このように、折り返しばね部は、平面視において必ずしも互いに合同で無くてもよい。

【0075】
図8(D)に示すように、y方向に関して、一方のセグメント246における連結部246cが、一方のセグメント246における折り返しばね部の頂部246aよりも、他方のセグメント247における折り返しばね部の頂部247aに近い位置に配置されていてもよい。図8(D)では、一方のセグメント246における折り返しばね部の脚部246bと、他方のセグメント247における折り返しばね部の脚部247bとが、x方向に対向している。そして、一方のセグメント246における折り返しばね部の頂部246aと、他方のセグメント247における連結部247cとが、y方向に対向している。

【0076】
図8(E)に示すように、折り返しばね部248の脚部248bは、平面視において、頂部248aとの接続部から、連結部248cとの接続部までの間に、略直角状の屈曲部が2箇所有するクランク状をなしていてもよい。図8(E)では、脚部248bは、頂部248a及び連結部248cの双方とy方向に対向する部分を有する。

【0077】
図9(A)~(E)に、芯材2の本体部のさらに他の変形例を示す。

【0078】
図9(A)に示すように、折り返しばね部249は、y方向外方を向く角部を有するよう平面視略V字状に折り返された形状を有していてもよい。

【0079】
図9(B)に示すように、折り返しばね部250は、y方向外方に向かって凸に湾曲するよう平面視略U字状に折り返された形状を有していてもよい。

【0080】
図9(C)に示すように、一方のセグメントの折り返しばね部231と、他方のセグメントの折り返しばね部231とで、x方向の位置にずれがあってもよい。

【0081】
図9(D)に示すように、折り返しばね部251は、平面視において、x方向及びy方向と交差する斜め方向に折り返された形状を有していてもよい。

【0082】
図9(E)に示すように、一方のセグメントと、他方のセグメントとの間に、x方向に延在する軸部材252を配置してもよい。軸部材252は、例えば、芯材2のy方向への曲がりを防止する効果を奏する。軸部材252のx方向両端と、取り付け部21及び22との間には間隙が確保され、軸部材252は、取り付け部21及び22の、互いに近づく方向の相対変位を妨げない。また、軸部材252のy方向両端と、折り返しばね部との間にも間隙が確保されている。軸部材252は、図2に示す第1及び第2の座屈防止部材31及び32に厚さ方向に挟まれた状態で保持される。なお、軸部材252も、芯材を得るための平鋼と同一の平鋼から得ることができる。

【0083】
図10(A)は、耐震性向上用構造体1の他の設置態様を示す概念図である。図示のように、取り付け部21とプレート93とを添板81を用いて連結し、取り付け部22とプレート93とを添板82を用いて連結してもよい。

【0084】
図10(B)は、取り付け部21とプレート93との連結部分の、xz平面に平行な断面図である。添板81は、取り付け部21とプレート93とを厚さ方向(z方向)に挟み込む表裏一対の添板81a及び81bで構成されている。添板81a及び81bによって取り付け部21及びプレート93を挟み込んだ状態で、添板81a及び81bと取り付け部21、並びに添板81a及び81bとプレート93とが、それぞれz方向に挿通されたボルトで結合されている。また、図示しないが、添板82も表裏一対の添板で構成され、取り付け部22とプレート94との連結部分も、図10(B)と同様に構成されている。

【0085】
図11(A)~(C)は、耐震性向上用構造体1の他の変形例を示す。

【0086】
図11(A)に示すように、芯材2と、第1及び第2の座屈防止部材31及び32との間に、介在物4を配置してもよい。介在物4としては、芯材2と、第1及び第2の座屈防止部材31及び32との摩擦力を調整するための摩擦力調整剤(例えば、オイルや粘着剤等)や、緩衝のための弾性体(例えば、ゴムパッキン)等が挙げられる。

【0087】
図11(B)に示すように、第1及び第2の座屈防止部材31及び32のy方向両側に側板5を配置し、その側板5と、第1及び第2の座屈防止部材31及び32とを、y方向に挿通するボルト33で固定してもよい。

【0088】
なお、第1及び第2の座屈防止部材31及び32の幅を、芯材2の幅より広くしておけば、芯材2のy方向外方への弾性変位は許容される。また、側板5の、折り返しバネ部231と対向する位置に、折り返しばね部231の突出を許容する開口を形成してもよい。

【0089】
図11(C)に示すように、芯材2と、これを挟み込んだ第1及び第2の座屈防止部材31及び32とを、角形鋼管よりなる中空管状体6内に挿入してもよい。この場合、ボルト33とナット34及び35が不要となる。

【0090】
〔実施例〕
以下、実施例について説明する。

【0091】
日本鉄鋼連盟製品規格に規定される高強度鋼H‐SA700よりなる平鋼を準備した。かかる平鋼の厚さは9mm、長さは1140mm、幅は140mmである。この平鋼をワイヤ放電加工することにより、図3に示す形状の芯材2を得た。

【0092】
得られた芯材2は、平鋼と同じ厚さ、長さ、及び幅をもつ。本体部23のx方向の長さは760mmである。各折り返しばね部231のx方向の長さは80mmである。各連結部232のx方向の長さは60mm、幅は10mmであり、連結部232同士のy方向の間隔は10mmである。

【0093】
次に、得られた芯材2を、各々溝鋼よりなる第1及び第2の座屈防止部材31及び32で挟み込み、手締めで軽くボルト締めし、耐震性向上用構造体1を得た。

【0094】
得られた耐震性向上用構造体1の取付け部21及び22間に、x方向に引張荷重と圧縮荷重とを交互に繰返し作用させ、x方向の変位量を計測した。

【0095】
図12は、計測された変位量と荷重との関係を示すグラフである。横軸は、一対の取り付け部21及び22のx方向の相対変位量を示し、この値は変位計により計測した。縦軸は、芯材2に作用させたx方向の荷重を示し、この値はロードセルにより計測した。なお、荷重は、圧縮荷重を正とし、引張荷重を負とした。荷重は、x方向変位量が、±5mm、±10mm、±15mmとなるように段階的に変化させた。

【0096】
図示のように、x方向変位量約±15mmの範囲内で、弾性挙動が維持されることが確認された。グラフの傾きで表される芯材2の剛性は、約5kN/cmである。グラフが示す若干の非線形挙動は、芯材2と座屈防止部材3との間の摩擦に起因すると考えられる。

【0097】
芯材2に生じた最大ひずみは、15/1140≒1/67であり、この値は、大地震で一般的な建築物に強制されるひずみにほぼ等しい。このように、本実施例に係る耐震性向上用構造体1によれば、揺れが大きく、かつ多数回の繰り返し荷重が作用する場合でも、その弾性が維持されることが確認された。

【0098】
〔シミュレーション1〕
上記実施例に係る耐震性向上用構造体1の地震に対する応答を求めるためのシミュレーションを行った。耐震性向上用構造体1の剛性は、5kN/cmとした。

【0099】
図13に、シミュレーションの条件を示す。基礎97、97に夫々柱95、95が立設され、柱95、95間には梁96が架設されてなる門型の骨組の四隅に、耐震性向上用構造体1を取り付ける。柱95の高さは400cm、梁96の長さは800cm、耐震性向上用構造体1の長さ(x方向の長さ)は、約141.4cmである。

【0100】
柱95は、肉厚12mm、一辺角250mmの角型鋼管とした。梁96は、H寸法450mm、B寸法200mm、t1寸法9mm、t2寸法14mmのH型鋼とした。柱95と梁96の材料の降伏強さは235N/mm、ヤング係数は2.05×10N/mmとした。また、梁96の両端に50kNの集中重量が存在し、梁96の中央には100kNの集中重量が存在しているとした。

【0101】
上記構成の骨組に、地震波を与えた。地震波は、1995年神戸海洋気象台で観測された兵庫県南部地震の地震波(神戸NS波)と同一のものとした。地震波の最大地動加速度は818galであり、継続時間は29.6秒である。

【0102】
図14(A)は、比較例として、耐震性向上用構造体1が取り付けられて無い上記骨組に、上記地震波を与えた場合の応答を示すグラフである。横軸は、骨組みの、梁96の位置の横方向(梁96の長さ方向)の変位(以下、層間変位という。)を示し、縦軸は横方向のせん断力(以下、層せん断力という。)を示す。

【0103】
図示のように、ヒステリシスはみられるが、層間変位の正方向への偏りがみられる。正方向の最大変位は8.28cmであった。また、ヒステリシスを表すグラフの上部C1は、略水平であり、この部分では骨組の剛性がほぼゼロとなっていることを示す。

【0104】
図14(B)は、実施例に係る耐震性向上用構造体1を四隅に取り付けた骨組の、同じ地震波に対する応答を示すグラフである。図示のように、層間変位の正方向への偏りが緩和されている。これは、耐震性向上用構造体1の弾性復元力による原点復帰の効果が発揮されたことを示す。正方向の最大変位は6.93cmへと減少した。さらに、ヒステリシスを表すグラフの上部C2の傾きは、比較例の対応する部分C1の傾きよりも大きい。このことは、骨組の剛性が維持されていることを示す。このように、実施例に係る耐震性向上用構造体1によれば、大地震が生じた場合でも建物の損傷を抑える効果が維持されることが確認された。

【0105】
〔シミュレーション2〕
同一の平鋼(H‐SA700)よりなり、平面視での形状のみが異なる芯材の試験体A~Hの各々について、x方向一端を固定し、他端にx方向の引張荷重を与えた場合に、試験体に生じるミーゼス応力を、弾性有限要素解析により算出した。

【0106】
図15(A)~(H)に、ミーゼス応力の算出結果を、濃淡で表現した画像を示す。ミーゼス応力比が0の部分を白色で表現し、ミーゼス応力比が1の部分を黒色で表現し、ミーゼス応力比が0を超え1未満の部分は、1に近い程濃くなるよう灰色で表現した。色の濃い部分程、応力が集中していることを表す。

【0107】
図15(A)は、試験体Aの解析結果を示す。試験体Aは、図3に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を10mmとした。

【0108】
図15(B)は、試験Bの解析結果を示す。試験体Bは、試験体Aと比べて、各セグメントが有する折り返しばね部の数が1つ少ない。

【0109】
図15(C)は、試験体Cの解析結果を示す。試験体Cも、試験体A及びBと同様、図3に示す形状のものとした。但し、折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を20mmとした。

【0110】
図15(D)は、試験体Dの解析結果を示す。試験体Dは、図8(A)に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を10mmとした。

【0111】
図15(E)は、試験体Eの解析結果を示す。試験体Eは、図8(B)に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を10mmとした。

【0112】
図15(F)は、試験体Fの解析結果を示す。試験体Fは、図8(C)に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を15mmとした。また、x方向中央の折り返しばね部の頂部のx方向の長さは、他の折り返しばね部のそれの2倍とした。

【0113】
図15(G)は、試験体Gの解析結果を示す。試験体Gは、図8(D)に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を15mmとした。

【0114】
図15(H)は、試験体Hの解析結果を示す。試験体Hは、図8(E)に示す形状のものとした。折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅を15mmとした。

【0115】
また、試験体A~Hの各々について、いずれかの箇所がミーゼス降伏条件にはじめて達するときのx方向の変位(降伏時変位)と、そのときの荷重(降伏荷重)とを算出した。

【0116】
表1に、算出結果を示す。表1中、幅とは、折り返しばね部を構成する頂部及び脚部並びに連結部の各々の幅のことを指す。

【0117】
【表1】
JP2017089714A_000003t.gif

【0118】
例えば、試験体A及びBと、試験体Dとの計算結果を比較すると、試験体A及びBの方が、試験体Dよりも、大きな降伏時変位を確保できることが分かる。これは、試験体A及びBにおいては、本体部がy方向に2つのセグメントに分割されており、図7(A)を参照して説明したように、セグメント同士がy方向に互いに遠ざかる方向に弾性的に変位可能であることによる。

【0119】
また、のこぎり波状の本体部を有する試験体Eの降伏時荷重は、矩形状の折り返しばね部を有する他の試験体のそれに比べて著しく小さい。このことから、折り返しばね部は、矩形に折り返された形状を有する方が好ましいと言える。

【0120】
なお、試験体Cは、降伏時荷重は最も大きいが、降伏時変位は最も小さい。降伏時変位よりも大きな変位がもたらされると、弾性復元力を発揮できなくなる。このため、降伏時荷重と降伏時変位の双方が大きいことが好ましい。この観点から、試験体A、B、G、及びHが好ましいと言える。

【0121】
本発明は、その広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされる。上記実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0122】
1…耐震性向上用構造体、2…芯材(耐震性向上用弾性部材)、3…座屈防止部材、4…介在物、5…測板、6…中空管状体、21,22…取り付け部、21a,22a…ボルト挿通孔、23…本体部、23a,23b…セグメント、31…第1の座屈防止部材、31a,32a…ボルト挿通孔、32…第2の座屈防止部材、33…ボルト、34,35…ナット、81,81a,81b,82,82a,82b…添板、90…建物、91,95…柱、92,96…梁、93,94…プレート、97…基礎、231,235,236,238…折り返しばね部、232…連結部、233…幅方向延在部、234…軸方向延在部、231a…頂部、231b,233…脚部、234…接続部、241…リング状部材、242…連結部、243…折り返しばね部、243a…頂部、243b-1,243b-2…脚部、243c…連結部、244,245…折り返しばね部、246…セグメント、246a…頂部、246b…脚部、246c…連結部、247…セグメント、247a…頂部、247b…脚部、247c…連結部、248…折り返しばね部、248a…頂部、248b…脚部、248c…連結部、249,250,251…折り返しばね部、252…軸部材、311,321…底板部、312,322…側板部、S…平板状体。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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