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明細書 :エーテル結合を有する化学物質の生分解促進方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5527495号 (P5527495)
公開番号 特開2007-306802 (P2007-306802A)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成19年11月29日(2007.11.29)
発明の名称または考案の名称 エーテル結合を有する化学物質の生分解促進方法
国際特許分類 C12N   1/00        (2006.01)
A62D   3/02        (2007.01)
C12N   1/14        (2006.01)
FI C12N 1/00 A
C12N 1/00 R
A62D 3/02
C12N 1/14 E
請求項の数または発明の数 11
全頁数 23
出願番号 特願2006-080614 (P2006-080614)
出願日 平成18年3月23日(2006.3.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年9月27日 環境ホルモン学会(日本内分泌撹乱化学物質学会)発行の「第8回環境ホルモン学会研究発表会 要旨集」に発表
審判番号 不服 2012-012175(P2012-012175/J1)
審査請求日 平成21年3月18日(2009.3.18)
審判請求日 平成24年6月28日(2012.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506099225
【氏名又は名称】中宮 邦近
【識別番号】501273886
【氏名又は名称】独立行政法人国立環境研究所
発明者または考案者 【氏名】中宮 邦近
【氏名】伊藤 裕康
【氏名】ジョン エス エドモンズ
【氏名】森田 昌敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
調査した分野 C12N 1/00-1/38
JSTPlus
JMEDPlus
JST7580
BIOSIS
MEDLINE
WPIDS
特許請求の範囲 【請求項1】
エーテル結合を有する脂質を用いることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化1】
JP0005527495B2_000006t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化2】
JP0005527495B2_000007t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化3】
JP0005527495B2_000008t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法。
【請求項2】
エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中に、エーテル結合を有する脂質を加えることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化4】
JP0005527495B2_000009t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化5】
JP0005527495B2_000010t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化6】
JP0005527495B2_000011t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法。
【請求項3】
エーテル結合を有する脂質が、2,3-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロール、サイクリックアーキオール、α-ヒドロキシアーキオール、β-ヒドロキシアーキオール、カルドアーキオール、H字型カルドアーキオール又はこれらのいずれかの誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法。
【請求項4】
式(III)及び/又は式(IV)における、置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基が、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法。
【請求項5】
エーテル結合を有する化学物質が、ジオキサン、ダイオキシン、ビフェニルエーテル及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の化学物質であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法。
【請求項6】
エーテル結合を有する化学物質が、1,4-ジオキサン、2-ヒドロキシメチル-1,4-ジオキサン及び塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシンからなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の化学物質であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法。
【請求項7】
エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中で、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物と、エーテル結合を有する脂質とを接触させることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化7】
JP0005527495B2_000012t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化8】
JP0005527495B2_000013t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化9】
JP0005527495B2_000014t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法。
【請求項8】
(a)エーテル結合を有する脂質と、(b)エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を用いることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化10】
JP0005527495B2_000015t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化11】
JP0005527495B2_000016t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化12】
JP0005527495B2_000017t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法。
【請求項9】
エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の活性化剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化13】
JP0005527495B2_000018t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化14】
JP0005527495B2_000019t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化15】
JP0005527495B2_000020t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、活性化剤。
【請求項10】
エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化して、エーテル結合を有する化学物質の分解促進するための分解促進剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化16】
JP0005527495B2_000021t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【化17】
JP0005527495B2_000022t.gif

(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【化18】
JP0005527495B2_000023t.gif

(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、分解促進するための分解促進剤。
【請求項11】
エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、コルディセプス属に属する微生物の増殖促進剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【化19】
JP0005527495B2_000024t.gif

(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記コルディセプス属に属する微生物が、前記エーテル結合を有する脂質を資化しうる微生物である、増殖促進剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4-ジオキサンやダイオキシン類等のエーテル結合を持つ化学物質に汚染された環境の修復方法には、熱処理等の物理化学的な分解処理法が提案されてきた(例えば特許文献1参照)。しかし、これらの方法は多くのエネルギーを使い特殊な反応装置を用いておこなうため、工場等の排水等のエーテル結合を持つ化学物質に高濃度で汚染されたサイトへの応用には有効であったが、汚染が低濃度で広範囲に広がっている場合は、大量のエネルギーが無駄に浪費されることとなるため、コスト面だけでなく、環境面に対しても好ましくない。そのため、物理化学的な分解処理法の使用は、高濃度のエーテル結合を持つ化学物質に汚染された特殊な場所に限定されている。
【0003】
一方、生物学的処理法として、汚染物質を分解する微生物を汚染地帯に散布する方法が従来から知られているが、汚染地帯に微生物が定着しづらく、微生物の活性はすぐに失われてしまうという欠点があった。
【0004】
また、子のう菌類のカビであるコルディセプス シネンシス(Cordyceps sinensis)は、1,4-ジオキサン(例えば非特許文献1参照)やダイオキシン類(例えば非特許文献2参照)等のエーテル結合を持つ汚染化学物質を分解することが知られている。しかし、コルディセプス シネンシスが自然環境中で何を資化しているかは全く知られていなかった。

【特許文献1】特開2000-233165号公報
【非特許文献1】Appl. Environ. Microbiol., vol. 71, pp.1254-1258, 2005.
【非特許文献2】FEMS Microbiol. Lett., vol. 248, pp.17-22, 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法を提供することにある。また、本発明の課題は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法を提供することにある。また、本発明の課題は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法を提供することにある。また、本発明の課題は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する活性化剤を提供することにある。また、本発明の課題は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解を促進する分解促進剤を提供することにある。また、本発明の課題は、コルディセプス属に属する微生物を、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に増殖させる増殖促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、古細菌由来の脂質である2,3-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロールが、コルディセプス シネンシスが自然環境中で資化する物質の一つであることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(1)エーテル結合を有する脂質を用いることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、式(I)
【0008】
【化4】
JP0005527495B2_000002t.gif

【0009】
(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、式(III)
【0010】
【化5】
JP0005527495B2_000003t.gif

【0011】
(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は式(IV)
【0012】
【化6】
JP0005527495B2_000004t.gif

【0013】
(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法や、
(2)エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中に、エーテル結合を有する脂質を加えることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、上記式(III)(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は上記式(IV)(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法や、
(3)エーテル結合を有する脂質が、2,3-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロール、サイクリックアーキオール、α-ヒドロキシアーキオール、β-ヒドロキシアーキオール、カルドアーキオール、H字型カルドアーキオール又はこれらのいずれかの誘導体であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法や、
(4)上記式(III)及び/又は上記式(IV)における、置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基が、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法や、
(5)エーテル結合を有する化学物質が、ジオキサン、ダイオキシン、ビフェニルエーテル及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の化学物質であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法や、
(6)エーテル結合を有する化学物質が、1,4-ジオキサン、2-ヒドロキシメチル-1,4-ジオキサン及び塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシンからなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の化学物質であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法、
に関する。
【0014】
また、本発明は、()エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中で、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物と、エーテル結合を有する脂質とを接触させることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、上記式(III)(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は上記式(IV)(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、(8)(a)エーテル結合を有する脂質と、(b)エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を用いることを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、上記式(III)(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は上記式(IV)(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、方法に関する。

【0016】
また、本発明は、()エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の活性化剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、上記式(III)(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は上記式(IV)(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、活性化剤に関する。
【0017】
さらに本発明は、(10)エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化して、エーテル結合を有する化学物質の分解促進するための分解促進剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記エーテル結合を有する化学物質の分解微生物が、エーテル結合を有する脂質を資化しうる、コルディセプス属に属する微生物であり、
前記エーテル結合を有する化学物質が、上記式(III)(式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質、又は上記式(IV)(式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。RとR10は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12は互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。)で表される化学物質である、分解促進するための分解促進剤に関する。
【0018】
また、本発明は、(11)エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴とする、コルディセプス属に属する微生物の増殖促進剤であって、
前記エーテル結合を有する脂質が、上記式(I)(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。ここで、RとRは互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環、又は2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。)で表される、古細菌由来の脂質であり、
前記コルディセプス属に属する微生物が、前記エーテル結合を有する脂質を資化しうる微生物である、増殖促進剤に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法、及び分解微生物の活性化剤は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化することができる。本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を環境中へ集積することができる。本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法、及び分解促進剤は、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的にエーテル結合を有する化学物質の分解を促進することができる。また、本発明の増殖促進剤は、コルディセプス属に属する微生物を、環境への負荷が少なく、安価に、かつ、持続的に増殖させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物(以下、「本発明における分解微生物」という)を活性化する方法は、エーテル結合を有する脂質(以下、「本発明における脂質」という)を用いることを特徴としており、本発明における脂質を用いる限り特に制限はされない。本発明のエーテル結合を有する化学物質(以下、「本発明における化学物質」という)の分解微生物を活性化する方法における、本発明における脂質を用いる方法は、本発明における分解微生物の活性化効果が得られる限り特に制限はされないが、具体的には例えば、本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させることや、本発明における分解微生物を含む環境中に、本発明における脂質を加えること等が含まれる。本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、本発明における分解微生物が活性化する。
【0021】
ここで、「エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する」とは、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を増殖させることをいうが、より好ましくは、エーテル結合を有する化学物質を分解し得ない微生物の増殖率より高い増殖率で、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物を増殖させることをいう。ここでいうエーテル結合を有する化学物質を分解し得ない微生物とは、エーテル結合を有する化学物質を分解し得ないいずれか1種の微生物でよく、そのような微生物として例えば大腸菌K12株等を例示することができる。
【0022】
本発明におけるエーテル結合を有する脂質としては、少なくとも1種の本発明における分解微生物を活性化しうる脂質であって、エーテル結合を有する脂質であれば特に制限はされない。本発明におけるエーテル結合を有する脂質としては、例えば、式(I)で表される脂質を挙げることができる。
【0023】
式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいC20~C60の炭化水素基を表す。R及びRの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよいし、RとRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。また、式(I)で表される脂質同士が、RとRの炭化水素鎖の末端で互いに共有結合して2量体を形成してもよい。R及びRは、いずれか一方が置換されていてもよいヒドロキシメチル基又はリン酸メチル基を表し、他の一方は水素原子を表す。
やRにおけるヒドロキシメチル基は、例えば糖残基で置換されていてもよいし(糖脂質)、ホスホジエステル結合を介してイノシトール等が結合してもよいし(リン脂質)、又はその両方が結合してもよい(リン糖脂質)。
本発明における分解微生物の少なくとも1種を活性化しうる脂質であって、エーテル結合を有する脂質である限り、式(I)中のRやRの炭化水素基における置換基は特に制限されないが、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、糖残基等を挙げることができる。
また、本発明における分解微生物の少なくとも1種を活性化しうる脂質であって、エーテル結合を有する脂質である限り、式(I)中のRとRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成している場合の環は特に制限されず、単環であっても多環であってもよく、複素環であってもよい。
【0024】
本発明における式(I)で表される化合物の中でも、入手が比較的容易であって、より安価であることから、例えば、以下の式(II)
【0025】
【化7】
JP0005527495B2_000005t.gif

【0026】
で表される2,3-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロール(アーキオール)、サイクリックアーキオール(RとRの炭化水素基の末端が共有結合したもの)、α-ヒドロキシアーキオール(外側の炭化水素基にヒドロキシル基が結合したもの)、β-ヒドロキシアーキオール(真ん中の炭化水素基にヒドロキシル基が結合したもの)、カルドアーキオール(式(I)で表される脂質の一方のRがもう一方の式(I)で表される脂質のRと共有結合し、一方のRがもう一方のRと共有結合することによって、式(I)で表される脂質が2量体化したもの)、H字型カルドアーキオール(カルドアーキオールの炭素鎖同士が途中で架橋されているもの)又はこれらの誘導体を好ましく例示することができ、2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロール又はその誘導体を特に好ましく例示することができる。
本発明における脂質は、古細菌由来の脂質でなくてもよいが、古細菌由来の脂質であってもよい。古細菌としては、例えばメタノバクテリウム(Methanobacterium)属、ハロバクテリウム(Halobacterium)属、パイロコッカス(Pyrococcus)等の細菌を例示することができる。
【0027】
本発明における脂質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明における脂質として、本発明における脂質を含有する物質を用いてもよい。本発明における脂質を含有する物質としては、特に制限されないが、例えば、本発明における脂質を有する古細菌の菌体や、本発明における脂質を有する古細菌の菌体を含む培養物等を例示することができる。また、本発明における脂質を有する古細菌の菌体を含む培養物には、例えば、該古細菌の菌体を含む嫌気性汚泥や、該嫌気性汚泥を好気的に処理したものや、該古細菌の発酵済みの残さ等も含まれる。
【0028】
本発明における環境とは、土壌、水又はその混合物が含まれていれば特に制限はされない。本発明における環境は、自然環境であってもよいし、人工の環境であってもよい。また、屋外環境であってもよいし、室内環境であってもよい。
【0029】
本発明におけるエーテル結合を有する化学物質の分解微生物は、好適な条件下でエーテル結合を有する化学物質を分解しうる微生物である限り特に制限はされないが、好適な条件下において式(III)又は式(IV)で表されるいずれかの化学物質を分解しうる微生物であることが好ましく、ジオキサン、ダイオキシン、ビフェニルエーテル及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の化学物質を分解しうる微生物であることがより好ましく、1,4-ジオキサン、2-ヒドロキシメチル-1,4-ジオキサン及び塩素化ジベンゾ-p-ダイオキシンからなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上の化学物質を分解しうる微生物であることがさらに好ましい。
ある微生物がある化学物質を分解しうるかどうかは、その化学物質の存在下でその微生物を培養し、培養後にその化学物質が減少していることを調べるなどして容易に確認することができる。
【0030】
式(III)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。R~Rの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。また、RとRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、RとRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。A及びBは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。
【0031】
本発明における分解微生物の少なくとも1種が分解しうる限り、式(III)中の炭化水素基における置換基は特に制限されないが、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、糖残基等を挙げることができる。
また、本発明における分解微生物の少なくとも1種が分解しうる限り、式(III)中のR及びRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成している場合の環や、R及びRが互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成している場合の環は特に制限されず、単環であっても多環であってもよく、複素環であってもよい。
【0032】
式(IV)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよいC1~C5の炭化水素基を表す。R~R12の炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。また、RとR10が互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよいし、R11とR12が互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成してもよい。C~Fは、それぞれ独立して、一重結合又は二重結合を表す。
【0033】
本発明における分解微生物の少なくとも1種が分解しうる限り、式(IV)中の炭化水素基における置換基は特に制限されないが、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、糖残基等を挙げることができる。
また、本発明における分解微生物の少なくとも1種が分解しうる限り、式(IV)中のRとR10が互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成している場合の環や、R11とR12が互いに炭化水素鎖の末端で共有結合して環を形成している場合の環は特に制限されず、単環であっても多環であってもよく、複素環であってもよい。
【0034】
本発明における化学物質は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
本発明におけるエーテル結合を有する化学物質の分解微生物として、具体的には、エーテル結合を有する化学物質を分解する能力を有するコルディセプス(Cordyceps)属に属する微生物、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属に属する微生物等のカビ(特表平08-509376参照);アクチノマイセテス (Actinomycete) 属に属する微生物等の放線菌;スフィンゴモナス属細菌、コリネバクテリア属細菌、シュードモナス属細菌等の細菌;等を挙げることができる。
コルディセプス属に属する微生物は、子のう菌類に属する。本発明におけるコルディセプス属に属する微生物としては、具体的には、コルディセプス シネンシス(Cordyceps sinensis)、コルディセプス ジャポニカ(Cordyceps japonica:タンポタケモドキ)、コルディセプス ソボリフェラ(Cordyceps sobolifera:セミタケ)、コルディセプス アグリオタ(Cordyceps agriota:コメツキムシタケ)、コルディセプス シカダエ(Cordyceps cicadae:キアシオオゼミタケ)等を挙げることができるが、中でもコルディセプス シネンシスが好ましい。
なお、コルディセプス属細菌は、18S rRNAによって分類した場合は、しのう菌類のカビと同定されるが、形態的に同定する場合、不完全世代を持つため不完全菌類のPenicillium やScopulariopsis等に同定される場合もある。また形態的にコルディセプス属に同定出来た株は18S rRNAの配列からCladosporium属等のしのう菌類に同定される場合もある。したがって、本発明における「コルディセプス属」は、「コルディセプス属」に加えて、「ペニシリウム(Penicillium)属」、「スコプラリオプシス(Scopulariopsis)属」及び「クラドスポリウム属(Cladosporium)属」からなる群から選ばれるいずれか1つ又は2つ以上を含む概念である。
【0036】
また、本発明におけるエーテル結合を有する化学物質の分解微生物は、好適な条件下で本発明におけるエーテル結合を有する脂質を資化しうることが好ましく、好適な条件下において式(I)で表される少なくとも1種の脂質、又は、少なくとも1種の古細菌の少なくとも1種の脂質を分解しうる微生物であることがより好ましく、好適な条件下で2,3-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロールを分解しうる微生物であることがさらに好ましい。ある微生物がある脂質を分解しうるかどうかは、その脂質の存在下でその微生物を培養し、培養後にその脂質が減少していることを調べるなどして容易に確認することができる。
【0037】
本発明の化学物質の分解を促進する方法は、本発明における脂質を用いる工程以外に任意の工程をさらに含んでいてもよい。そのような任意の工程として、コルディセプス属に属する微生物の生菌の菌体を用いる工程をさらに有していてもよい。コルディセプス属に属する微生物の生菌の菌体を用いる工程をさらに有していると、環境中のエーテル結合を有する化学物質の分解がより促進される。
【0038】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法は、エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中で、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物と、エーテル結合を有する脂質とを接触させることを特徴とする。本発明における脂質を、本発明における分解微生物に接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、本発明における分解微生物以外の微生物に比べて、本発明における分解微生物が優先的に増殖する結果、環境中に本発明における分解微生物が集積される。
【0039】
本発明における分解微生物を環境中へ集積するとは、エーテル結合を有する化学物質を分解し得ない微生物の少なくとも1種の増殖率より高い増殖率で、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の少なくとも1種を増殖させることをいう。ここでいう増殖率とは、ある特定の微生物と本発明における脂質とを接触させて一定時間経過後のその微生物の菌体数を、本発明における脂質を接触させる前のその微生物の菌体数で割った数値をいう。ここでいうエーテル結合を有する化学物質を分解し得ない微生物として例えば大腸菌K12株等を例示することができる。
【0040】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法においては、エーテル結合を有する化学物質と、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物とを含む環境中に、エーテル結合を有する脂質を加えることもできる。
【0041】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法は、エーテル結合を有する脂質を用いることを特徴としており、本発明における脂質を用いる限り特に制限はされない。本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法において、本発明における脂質を用いる方法に関しては特に制限はされないが、より具体的には例えば、エーテル結合を有する化学物質と、本発明における分解微生物とを含む環境中で、本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させることや、エーテル結合を有する化学物質と、本発明における分解微生物とを含む環境中に、本発明における脂質を加えることや、エーテル結合を有する化学物質を含む環境中に、本発明における脂質と本発明における分解微生物とを加えることが含まれる。本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、エーテル結合を有する化学物質を分解する能力を有する本発明における分解微生物が、該化学物質を分解する能力のない微生物に比べて優先的に増殖する。その結果、環境中のエーテル結合を有する化学物質の分解が促進される。
【0042】
本発明における脂質が、本発明における化学物質の分解の促進効果を有しているかどうかは、例えば、本発明における脂質を施用すること以外は同じ条件で比較実験を行った場合に、本発明における脂質を施用したときの方が本発明における脂質を施用しなかったときと比べて、本発明における化学物質の分解量が多いことを確認することにより容易に調べることができる。本発明における化学物質の量は、例えばクロマトグラフィー等を用いることにより測定することができる。
【0043】
本発明における環境中に化学物質が含まれている場合、分解微生物の活性化や集積は環境汚染物質によってでは無く脂質によって行われるので、環境中に含まれる本発明における化学物質の濃度は特に制限されず、高濃度であっても低濃度であってもよいが、低濃度である場合は、物理化学的な分解方法に比べてより多くのメリット(例えばかなり低コストであること)を享受することができる。
ここで、低濃度とは、本発明における化学物質を含む環境が汚染土壌の場合、例えばダイオキシンで環境基準値1,000pg-TEQ/g以下であり、汚染水の場合、例えば1,4-ジオキサンで実汚染濃度として報告例のある1ppm(実験値)以下である場合を挙げることができる。
【0044】
本発明のコルディセプス属に属する微生物の培養方法は、エーテル結合を有する脂質を用いることを特徴としており、本発明における脂質を用いる限り特に制限はされない。本発明のコルディセプス属に属する微生物の培養方法において、本発明における脂質を用いる方法に関しては特に制限はされないが、より具体的には例えば、本発明における脂質を含む適当な培地中でコルディセプス属に属する微生物を培養することや、コルディセプス属に属する微生物を含む適当な培地中に本発明における脂質を加えること等が含まれ、本発明における脂質を唯一の炭素源として含む適当な培地中でコルディセプス属に属する微生物を培養することや、コルディセプス属に属する微生物を含む適当な培地中に本発明における脂質を唯一の炭素源として加えることがより好ましい。
【0045】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の活性化剤は、本発明における脂質を含有することを特徴とする。該活性化剤に含有される本発明における脂質は、1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の活性化剤は、本発明における脂質以外に、本発明の効果を妨げない限り、例えば、コルディセプス属に属する微生物の栄養源となる他の物質等の任意成分を含有していてもよい。
【0047】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物の活性化剤の剤型は特に制限されず、粉状、液状等任意の剤型とすることができる。
【0048】
本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、本発明における分解微生物が活性化する。
【0049】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解促進剤は、本発明における脂質を含有することを特徴としており、本発明における脂質を用いる限り特に制限はされない。該分解促進剤に含有される本発明における脂質は、1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解促進剤は、本発明における脂質以外に、本発明の効果を妨げない限り、例えば、コルディセプス属に属する微生物の栄養源となる他の物質や、コルディセプス属に属する微生物の生菌の菌体等の任意成分を含有していてもよい。本発明における脂質に加えて、コルディセプス属に属する微生物の菌体を含有していると、本発明における脂質のみを用いた場合に比べて、環境中のコルディセプス属に属する微生物の菌体数がより増加し、環境中の本発明における化学物質の分解がより促進される。コルディセプス属に属する微生物の生菌の菌体としては、コルディセプス シネンシスの生菌の菌体であることが好ましい。
【0051】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解促進剤の剤型は特に制限されず、粉状、液状等任意の剤型とすることができる。
【0052】
本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、エーテル結合を有する化学物質を分解する能力を有する本発明における分解微生物が、該化学物質を分解する能力のない微生物に比べて優先的に増殖する。その結果、環境中のエーテル結合を有する化学物質の分解が促進される。
【0053】
本発明のコルディセプス属に属する微生物の増殖促進剤は、エーテル結合を有する脂質を含有することを特徴としており、本発明における脂質を用いる限り特に制限はされない。該増殖促進剤に含有される本発明における脂質は、1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明のコルディセプス属に属する微生物の増殖促進剤は、本発明における脂質以外に、本発明の効果を妨げない限り、例えば、コルディセプス属に属する微生物の栄養源となる他の物質等の任意成分を含有していてもよい。
【0055】
本発明のコルディセプス属に属する微生物の増殖促進剤の剤型は特に制限されず、粉状、液状等任意の剤型とすることができる。
【0056】
本発明における分解微生物と、本発明における脂質とを接触させると、本発明における分解微生物が本発明における脂質を分解するなどして栄養源として利用し、本発明における分解微生物の増殖を促進することができる。特に、エーテル結合を有する化学物質を分解する能力を有しない微生物と比較して、本発明の分解微生物を優先的に増殖させることができる。
【0057】
本発明における脂質の製造方法については特に制限されず、例えば有機合成してもよいし、古細菌由来の脂質である場合は、培養した古細菌の菌体を利用してもよいが、より安価に得る観点からは、培養した古細菌の菌体を利用することが好ましい。古細菌の菌体の利用方法としては特に制限されないが、古細菌の菌体の培養物をそのまま用いてもよいし、古細菌の菌体又はその培養物から古細菌の脂質を抽出してもよい。古細菌の脂質の抽出方法は特に制限されず、通常の油分の抽出方法を用いることができる。
【0058】
有機合成の方法は特に制限されないが、例えば2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの場合、Takadaらの方法(J.Org.Chem. 1985.50.5634)により合成することができる。
古細菌の培養方法については、古細菌が増殖し得る培養方法である限り特に制限されず、通常の培養方法を用いることができる。培養に用いる培地としては特に制限されず、液体培地であっても固体培地であってもよいが、例えば、硝酸体窒素を加えた無機培地(Leeuwenhoekの培地:Antonie van Leeuwenhoek 1976. 42, 59-71参照)に炭素源を加えた培地を好ましく例示することができる。
また、古細菌の培養物からの古細菌の分離方法としては、特に制限されず、例えば、培地を遠心する等の方法を採用することができる。
【0059】
本発明におけるコルディセプス属に属する微生物の菌体は、例えば、適当な土壌や冬虫夏草等から公知の手法(Appl. Environ. Microbiol., vol. 71, pp.1254-1258, 2005.)により単離したコルディセプス属に属する微生物を、適当な培地で培養することにより容易に得られる。また、本発明におけるコルディセプス属に属する微生物は、ATCC(American Type Culture Collection)やNRBC(製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門)から分譲したものを用いることもできる。
【0060】
本発明のエーテル結合を有する化学物質の分解微生物を活性化する方法や、エーテル結合を有する化学物質の分解微生物の環境中への集積方法や、エーテル結合を有する化学物質の分解を促進する方法において、環境が水及び土壌の混合物、又は水である場合は、該混合物や水を例えば撹拌するなどして、該混合物や水を好気的又は微好気的にすることが好ましい。
【0061】
本発明における脂質の使用量は、本発明の効果が得られる限り特に制限されない。
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
(1)2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの合成
Takadaらの方法(J.Org.Chem. 1985.50.5634)にしたがって、フィトールとマンニトールから2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールを合成した。フィタニン酸は、Jellumらの方法(Acta Chem. Scand. 1966.20.2535)にしたがって合成した。その他の試薬は市販されているものを用いた。化合物の合成は、NMR(800Mhz, JEOL Ltd, Tokyo)を用いて確認した。
(2)コルディセプス シネンシスの2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールでの培養
硝酸体窒素を加えた以下のような組成の無機培地(Leeuwenhoekの培地)を調製した。
NaNO32.0g, K2HPO4 0.5g, KH2PO4 0.5g, MgSO4・7H2O 0.2g, CaCl2 0.015g, CuSO4・5H2O 5μg, H3BO3 10μg, ZnSO4・7H2O 10μg, MnSO4・5H2O 10μg, Na2MoO4・2H2O 10μg (pH 6.8)/ 1L
調製したこの培地を、密閉出来るガラス製の容器に2ml入れた。その容器に、実施例(1)で得られた2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールを単一炭素源として加え混合した。培地中の2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの含有量は0.05重量%であった。
ここで、本発明者らが単離したコルディセプス シネンシスA株(Appl. Environ. Microbiol., vol. 71, pp.1254-1258, 2005.参照)の菌体を添加し、150rpmで攪拌しつつ30℃で前培養した。前述と同様の新鮮な培地2mlを入れた同様のガラス製の容器を用意し、前培養の培養液をその容器内に100μl添加した後、150rpmで攪拌しつつ30℃で72時間培養した。
培養24時間後、48時間後及び72時間後における菌体量(μg/ml)を測定した。その結果を図1に示す。
(3)コルディセプス シネンシスの1,4-ジオキサンでの培養
単一炭素源として2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの代わりに1,4-ジオキサンを用いたこと以外は、実施例の上記(2)と同様の方法で培養を行った。培養24時間後、48時間後及び72時間後における菌体量(μg/ml)を測定した。その結果を図1に示す。
(4)コルディセプス シネンシスのグルコースでの培養
単一炭素源として2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの代わりにグルコースを用いたこと以外は、実施例の上記(2)と同様の方法で培養を行った。培養24時間後、48時間後及び72時間後における菌体量(μg/ml)を測定した。その結果を図1に示す。
(5)図1の結果から、コルディセプス シネンシスは、グルコースとほぼ同様に、2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールを単一炭素源として増殖することが示された。また、コルディセプス シネンシスは、グルコースとほぼ同様に、エーテル結合を有する汚染化学物質である1,4-ジオキサンを単一炭素源として増殖することが分かった。このことから、コルディセプス シネンシスは、1,4-ジオキサン等の、エーテル結合を有する汚染化学物質を分解することが示された。
(6)さらに、実施例の上記(2)の培養において、培養中の培養液を酢酸エチルで抽出し、これをNaSOで乾燥した後にN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)又はトリメチルシリルジアゾメタン(TMSD)によって誘導体化した。誘導化した物質を、DB17カラム(30 m x 0.25 mm i.d.; J&W Scientific, CA. USA)を備えたGC/MS(GC MATE, JEOL Ltd, Tokyo)を用いて分析した。その結果、2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの分解産物に由来するグリセロール及びフィタノール、並びにフィタノールの代謝産物と思われるフィタニン酸の生成が確認出来た。コルディセプス シネンシスによる、2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの分解の経路を図2に示す。
フィタニン酸は培養の後期には減少しており、これはさらに代謝されていることが示唆された。おそらくα酸化に次ぐβ酸化によって完全に分解されているものと思われた。以上の結果から、コルディセプス シネンシスは、2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールを、単一の炭素源として資化することが示された。また、このことから、本発明における脂質を土壌等に施用することにより、土壌中のコルディセプス シネンシスを活性化させたり、増殖させたりすることが可能であることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】いくつかの基質に対するコルディセプス シネンシスの培養の経時的変化を示す図である。
【図2】コルディセプス シネンシスによる2,3-ジ-O-(3’R,S,7’R,11’R) -フィタニル-sn-グリセロールの分解の経路を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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