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明細書 :血圧制御異常の新規治療法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-100958 (P2017-100958A)
公開日 平成29年6月8日(2017.6.8)
発明の名称または考案の名称 血圧制御異常の新規治療法
国際特許分類 C07K  14/705       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N   5/16        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A61P   9/02        (2006.01)
A61K  31/122       (2006.01)
A61K  31/223       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C07K 14/705
G01N 33/50 ZNAZ
C12N 5/16
C12N 15/00 A
A61K 45/00
A61P 43/00 111
A61P 9/12
A61P 9/02
A61K 31/122
A61K 31/223
G01N 33/53 G
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2015-232939 (P2015-232939)
出願日 平成27年11月30日(2015.11.30)
発明者または考案者 【氏名】五嶋 良郎
【氏名】中村 史雄
【氏名】増川 大輝
【氏名】及川 雅人
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B024
4B063
4B065
4C084
4C206
4H045
Fターム 2G045AA40
2G045DA80
2G045FB03
4B024AA11
4B024CA04
4B024CA11
4B024CA20
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4B063QS36
4B063QX07
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4B065CA46
4B065CA60
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA421
4C084ZA431
4C084ZC411
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB25
4C206FA56
4C206KA01
4C206KA17
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4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA42
4C206ZA43
4C206ZC41
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA23
4H045EA50
要約 【課題】 高血圧症、低血圧症に関する治療戦略をもたらすこと。
【解決手段】 血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするための、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体の使用。ドーパ受容体OA1及び/又はα1Bアドレナリン受容体を強制発現させたことを特徴とする、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体とを共発現する細胞。ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を標的とする血圧制御剤。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするための、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体の使用。
【請求項2】
ドーパ受容体OA1及び/又はα1Bアドレナリン受容体を強制発現させたことを特徴とする、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体とを共発現する細胞。
【請求項3】
ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を標的とする血圧制御剤。
【請求項4】
GS416及びDOPA cyclohexyl esterからなる群より選択される化合物、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを有効成分として含有する、請求項3記載の血圧制御剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧制御異常の新規治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧制御異常には、高血圧、低血圧症をはじめ、様々な血圧制御の異常を示す疾患が存在する。血圧制御異常に対する治療は、食事や運動療法に加え、抗高血圧薬が重要な位置づけを占めている。抗高血圧薬は、利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン阻害薬などがあり、病態に応じて様々な治療が行われている。
【0003】
ところで、ドーパは、神経伝達物質ドーパミンの前駆体として位置づけられているが、本発明者らは、ドーパが、それ自体で神経伝達物質ないし修飾物質として働くことを示してきた(非特許文献1:Misu and Goshima, TiPS 14; 119-123, 1993)。また、最近、ドーパ受容体としてGpr143を同定し、この受容体が、脳幹部孤束核において、降圧薬や除脈性応答を仲介することを示した(非特許文献2:Hiroshima et al., British journal of Pharmacology (2014) 171 403-414)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Misu and Goshima, TiPS 14; 119-123, 1993
【非特許文献2】Hiroshima et al., British journal of Pharmacology (2014) 171 403-414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血圧異常、特に高血圧症に関する治療戦略は、ほぼ完成しているという認識が流布しているが、未だに現在の治療法では難治の疾患が存在する。また低血圧症については、有効な治療手段は皆無と言ってよい。パーキンソン病患者では高率に血圧制御異常が存在するが、そのメカニズムは未知である。本発明は、こうした現在では解決不能な課題に対して新たな治療戦略をもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ドーパ受容体OA1(Gpr143)が、末梢血管収縮に関わるα1B-アドレナリン受容体と機能的に連関し、血圧制御に関わることを発見した。この知見は、OA1/α1B受容体複合体が、高血圧や低血圧症などの血圧制御異常の新しい創薬ターゲットとなることを示す(図17、18)。
【0007】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするための、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体の使用。
(2)ドーパ受容体OA1及び/又はα1Bアドレナリン受容体を強制発現させたことを特徴とする、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体とを共発現する細胞。
(3)ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を標的とする血圧制御剤。
(4)GS416及びDOPA cyclohexyl esterからなる群より選択される化合物、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを有効成分として含有する、(3)記載の血圧制御剤。
【0008】
現在、血圧を制御する薬物は、血管の緊張性、循環血液量、心拍出量を制御するものに分類される。血管の緊張性を制御する薬物の一つに、α1遮断薬があり、現在でもある種の病態には有効である。しかしながら、同薬物の副作用として頻発するものは、起立性低血圧であり、治療の障害となっている。α1受容体は、末梢血管のみならず中枢神経系にも発現しており、学習記憶にも関与する。Gpr143がα1受容体と機能的な連関を有するという事実は、直接α1を修飾する薬物以外に、Gpr143を標的とする分子(薬物)、あるいはα1とGpr143の複合体を対象とする薬物を創成することにより、より副作用のない治療法を確立できる可能性を示唆する。
【0009】
以下、本明細書において、ドーパ受容体OA1は、Gpr143(タンパク質)、Gpr143(遺伝子)と記すこともある。また、α1Bアドレナリン受容体は、α1BARと記すこともある。
【発明の効果】
【0010】
GPR143あるいはGPR143/α1複合体を標的とする薬物は、血圧制御に対してより選択的、かつ病態に適合した治療法となりうる。
【0011】
従来の降圧薬α1受容体拮抗薬には起立性低血圧などの副作用がある点、また他の降圧薬には抵抗性の高血圧症も存在することから、新たな難治性降圧薬の開発に繋がる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】麻酔下のマウスにおけるフェニレフリンの昇圧応答におけるGPR143の関与 (A)実験デザインの模式図。血圧と心拍数は麻酔下のマウスで行い、薬物は静注(i.v.)で行った。(B) 麻酔下の野生型(上)とGpr143-/yマウス(下)におけるフェニレフリン(0.3-2.4 μg/kg, i.v.)の血圧および心拍に及ぼす効果の典型的な例。(C)データのまとめ(F1.52 =42.39, P < 0.001, n = 7-8)。(D)生食とDOPA CHE (10 mg/kg, i.v.)投与下のフェニレフリン(0.3 to 2.4 μg/kg, i.v.)の血圧に及ぼす効果のまとめ。(F1,40 = 46.75, P < 0.001, n = 6) (E) 野生型とGpr143-/yマウスにおけるバソプレシン (0.25 to 2.0 μg/kg, i.v.)の血圧に及ぼす効果のまとめ。(F1,32 = 0.209, P > 0.05, n = 5)。 (F) SM22-cre; Gpr143+/y マウスと SM22-cre; Gpr143flox/y マウスにおけるフェニレフリンの血圧に及ぼす効果のまとめ。(F1,44 = 20.99, P < 0.005, n = 6 and 7)。(G) 野生型およびGpr143-/yマウスにおけるDOPA CHE (1 to 20 mg/kg, i.v.) の血圧におよぼす効果のまとめ(F1,28 = 10.18, P < 0.005, n = 5 and 4). すべての値は平均値 ± 標準誤差. *P < 0.05, **P < 0.01, ***P < 0.001, ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図2】HEK293細胞におけるGPR143 と α1BAR との相互作用 (A) α1BAR-mCherry (右), GPR143-EGFP (中央) と両者のマージ (右). スケールバー、10 μm. (B) α1BAR-Myc と GPR143-HAの共免疫沈降. バンドは抗Myc抗体(上)あるいは抗HA抗体により検出した。(C) α1BAR-Myc と GPR143-HA との相互作用はドーパ 10 nMにより増強された。(D) ERKのリン酸化レベルと総ERKタンパク質レベルはフェニレフリン投与後10分後に検出した。 (E)α1BARとGPR143 または α1BARとEGFP を発現する HEK293細胞におけるpERK/ERK (% of control)のまとめ (F1,32 = 7.899, P < 0.001, n = 5). (F) α1BARとGPR143 または α1BARとEGFP を発現する HEK293 細胞における[H3]-prazosin (4 nM)結合に対するフェニレフリン (0.005-50 μM) の置換曲線 (F1,40 = 18.29, P < 0.001, n = 3). すべての値は平均値 ± 標準誤差. **P < 0.005, ***P < 0.001, ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図3】GPR143 はドーパによるフェニレフリンによる血管収縮とCa2+応答との増強作用を媒介する。(A) 野生型およびGpr143-/yマウスにおけるフェニレフリン(10-8 to 10-5 M)による張力の増大 (F1,68 = 20.29, P < 0.001, n = 9 and 10). (B) 野生型マウスにおけるDOPA CHE (1 mM)存在下および非存在下のフェニレフリンによる張力の増大 (F1,56 = 4.363, P < 0.01, n = 8). (C)野生型およびGpr143-/yマウスにおけるNSD1015 10 μM存在下におけるDOPA (0, 1, 10 nM)処置下のフェニレフリン 10-7 M による張力の増大(F1,44 = 7.818, P < 0.005, n = 6 to 10). 張力は高カリウムによって得られた最大収縮応答を100とした場合の相対値で表す。 (D) α1BAR と GPR143とを発現するARPE-19細胞におけるドーパ10 nM存在下および非存在下のフェニレフリン 500 pM に対する応答 (scale bar, 50 μm)。Fura2 蛍光強度 (340 nm/380 nm) は疑似カラーで表す。矢頭は発現細胞を表す。(E) 血管平滑筋細胞の細胞質におけるカルシウム応答変化の時間経過。各々の実験では、最初の30秒間は一分毎にイメージングを行い、ドーパ (10 nM)ないし対照溶液を投与後、さらに3分間は2秒毎にイメージングを行った。ドーパの処置は、Fura2の蛍光強度を顕著に増加した(F2,4272 = 5.168, P < 0.01, n=24-26)。この作用はGpr143-/yマウスでは認められたかった(F1,3600 = 5.012, P < 0.01, n = 24 -26)。すべての値は平均値 ± 標準誤差. *P < 0.05, **P < 0.005 (Gpr143+/y +対照液 vs. Gpr143+/y +L-DOPA), #P < 0.01 (Gpr143+/y +L-DOPA vs. Gpr143-/y +L-DOPA) ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図4】GPR143は生理学的に血圧を制御する。(A) Gpr143+/y, Gpr143-/y 及びSM22-cre; Gpr143flox/yマウスにおけるテールピンチによる昇圧応答。(Aa) 野生型およびGpr143-/yマウスにおけるテールピンチ(10秒間)の血圧と心拍数に及ぼす効果 (Ab) 野生型およびGpr143-/yマウスにおけるテールピンチによる血圧、心拍数上昇に対するプラゾシン (1 mg/kg, i.p.) の効果 (n = 9 , 6)。(Ac) SM22-cre; Gpr143+/y 及び SM22-cre; Gpr143flox/yマウスにおける昇圧応答 (n = 8, 4)。 (B)野生型およびGpr143-/yマウスにおける夜間および昼間のテールカフ法で測定した収縮期血圧。(Ba) Gpr143+/y 及び Gpr143-/yマウスにおける昼間・夜間の収縮期血圧 (n = 9-10)。(Bb) まとめの図。フェニレフリンによる昇圧応答はDOPA-GPR143シグナル伝達系によって増強される。DOPA-GPR143シグナル伝達機構は、活動期の血圧維持に役割を果たす。すべての値は平均値 ± 標準誤差。 *P < 0.05, **P < 0.01, ***P < 0.001, 対応のない t-testで検定した。
【図5】血管平滑筋におけるGPR143の発現。(A) 野生型 (左上)、Gpr143-/yマウス(右上)、SM22-cre; Gpr143+/y (左下) 及び SM22-cre; Gpr143flox/y (右下)平滑筋におけるGPR143 の発現。GPR143 シグナルは Gpr143-/y 及び SM22-cre; Gpr143flox/y マウス血管平滑筋細胞においては認められなかった。スケール, 25 μm。細胞の核はHematoxylin-eosin により対比染色を行った。
【図6】野生型およびGpr143-/yマウスにおけるアドレナリン受容体およびグルタミン酸受容体のmRNAレベル。野生型およびGpr143-/yマウスにおけるαARs (下行大動脈) and βARs (心臓) and AMPA and NMDA グルタミン酸受容体(下位脳幹部)のmRNAs発現レベルに差は認められなかった。データは、野生型の各レベルを100%として相対値で表す(P > 0.05, n = 6, unpaired t-test)。
【図7】大動脈におけるチロシン水酸化酵素(TH)の発現と、昼間および夜間のドーパおよびカテコラミンの血中含量。(A) 野生型およびGpr143-/yマウス下行大動脈におけるTH 発現。 (B) 野生型およびGpr143-/yマウス間にTHの発現レベルに差は認められない (C) 野生型およびgpr143遺伝子欠損マウスの昼間および夜間における血中のドーパ (左), ノルアドレナリン (中央) 及びアドレナリン (右) 。すべての値は平均値 ± 標準誤差 (n = 8 to 10) 。*P < 0.01, **P < 0.005, ***P < 0.001, 対応のない t-testで検定した。
【図8】HEK293細胞におけるα1AAR及びα1DARとGPR143 との相互作用。 各々α1AAR-Myc 及び GPR143-HA 又は α1DAR-Myc 及び GPR143-HA を共発現するHEK293細胞におけるα1AAR-Myc とGPR143-HA (A)ならびに α1DAR-Myc と GPR143-HA (B) との共沈降。
【図9】ドーパはα1BAR と GPR143との相互作用を増強する。図2のすべてのブロット図を示す。α1BAR シグナルの予想サイズは60 kDaである. 上に位置するバンドについてもドーパ処置により増加する。矢印は予想サイズのバンドを表す。
【図10】HEK293細胞におけるGPR143 と α1AAR ならびに α1DARとの機能的相互作用。リン酸化ERKと総ERKレベルはフェニレフリン(0, 1 μM) 投与後10分で検出した. HEK293細胞において、α1AAR 及び EGFP 、 α1AAR 及び GPR143 を発現する場合(F1,32 = 0.003, P > 0.05, n = 5, A)、ならびに α1DAR 及び EGFP 、α1DAR 及び GPR143 (F1,32 = 0.801, P > 0.05, n = 5, B)を発現する場合の、フェニレフリンによるpERK/ERK (% of control) には差が認められなかった。 すべての値は平均値 ± 標準誤差。**P < 0.01, ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図11】野生型及びGpr143-/yマウス培養平滑筋細胞におけるフェニレフリンによるERKリン酸化。pERK及びERKの蛋白質レベルはフェニレフリン(0, 10, 30 μM)投与後、10分後に検出した。データは野生型及びGpr143-/yマウス培養平滑筋細胞におけるpERK/ERK (% of control) (F1,42 = 7.803, P < 0.01, n = 8). **P < 0.01, ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図12】GPR143及びα1BARを共発現するARPE-19細胞におけるドーパのフェニレフリンによるカルシウム応答の増強。(A)GPR143及びα1BARを1対1で発現するための二重発現プラスミドの構築。(B)GPR143及びα1BARを発現するHEK293細胞におけるイムノブロット解析。α1BAR及びGPR143は各々myc抗体およびRFP抗体で検出した。矢印の各々は予想されるバンドを示す。(C)10 nMドーパ存在・非存在下におけるα1BAR及びGPR143を共発現するARPE-19細胞におけるフェニレフリン500 pMに対するカルシウム応答。Fura2蛍光強度の程度は疑似カラーにより表す。矢頭はプラスミドを発現する細胞を示す。(D)細胞質における蛍光強度の経時変化。イメージングは細胞体における細胞質においてドーパおよびフェニレフリン投与前後で行った(n = 13-20)。ドーパの前処置はフェニレフリンによるカルシウム応答を増強した(F2,4272 = 5.168, P < 0.01)。ドーパの効果はL-DOPA CHEにより抑制された (F1,2759 = 4.469, P < 0.05)。すべての値は平均値 ± 標準誤差。ボンフェローニの多重比較検定を用いた二因子分散解析(ANOVA) による。
【図13】明暗期におけるGPR143 と α1BARのmRNAレベル。GPR143 と α1BARの血管平滑筋におけるmRNAレベルは明暗期において差異は認められなかった。すべての値は平均値 ± 標準誤差。統計解析は対応のないt-検定を用いた。
【図14】GS416はGPR143を発現するCHO細胞における特異的3H-DOPA結合を阻害する。
【図15】L-DOPAおよびGS416はα1Bアドレナリン受容体 (α1BAR) およびGPR143を発現する ARPE-19細胞 において、フェニレフリンに対する細胞内カルシウム応答を濃度異存的に増強する。結合実験における有効濃度に比べて低濃度で増強作用が現れることが注目される。この増強はDOPA CHEにより拮抗される。
【図16】L-DOPAおよびGS416はラット孤束核に微量注入したさいに降圧・徐脈応答を惹起する。
【図17】OA1/α1B受容体複合体が、高血圧や低血圧症などの血圧制御異常の新しい創薬ターゲットとなることを説明する図である。
【図18】GS416が作動薬、DOPA CHEが拮抗薬として作用することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0014】
本発明は、血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするための、ドーパ受容体OA1(GPR143)とα1Bアドレナリン受容体(α1BAR)との複合体の使用を提供する。

【0015】
ドーパ受容体OA1(Gpr143)とα1Bアドレナリン受容体(α1BAR)との複合体は、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体を共発現する細胞において形成されたものであってもよい。

【0016】
血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするためのアッセイ系としては、受容体結合実験を用いることができる。例えば、α1BAR-MycとEGFPを発現するHEK293細胞と、α1BAR-MycとGPR143-EGFPを発現するHEK293細胞を用意し、[H3]-prazosin(α1受容体ブロッカー)の存在下、α1作動薬とともにインキュベートし、[H3]-prazosin結合に対するα1作動薬の置換曲線を作成して、親和性を求め、α1BAR-MycとEGFPを発現するHEK293細胞よりも、α1BAR-MycとGPR143-EGFPを発現するHEK293細胞において、α1BARに対する親和性が高い場合には、血圧制御剤(昇圧剤又は降圧剤)として有効であると判定することができる。α1BARやGPR143を発現させる細胞は、HEK293細胞に限定されることはなく、公知のいかなる細胞を用いてもよい。また、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体は、エピトープタグ(例えば、Myc)、蛍光タンパク質(例えば、EGFP)、酵素などの検出可能なシグナルを提供するタンパク質との融合タンパク質として、発現させるとよい。

【0017】
被験物質は、いかなる物質であってもよく、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ホルモン、多糖、オリゴ糖、単糖、低分子化合物、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド等)、脂質、上記以外の天然化合物、合成化合物、植物抽出物、植物抽出物の分画物、それらの混合物などを例示することができる。

【0018】
血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするために、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体に被験物質を接触させ、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との相互作用に対する被験物質の影響を測定してもよい。例えば、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を基板上に固定したプロテインチップに被験物質を接触させ、プロテインチップに捕捉された被験物質を表面プラズモン共鳴法などにより検出することができる。検出法は、表面プラズモン共鳴法に限定されるわけではなく、他の公知の方法(例えば、蛍光標識、放射性標識などによる検出)を用いてもよい。また、被験物質が未知の物質である場合には、TOF-MSなどで解析を行うことができる。ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体との相互作用が観察された場合には、血圧制御剤として有効な物質であると判定することができる。

【0019】
さらに、二次スクリーニング系として、GPR143を発現する細胞(例えば、CHO細胞)を用いて、被験物質が特異的3H-DOPA結合を阻害するかどうかを検出するとよい。あるいはまた、被験物質をラット孤束核に微量注入したさいに降圧・徐脈応答を惹起するかどうかを調べるとよい。

【0020】
本発明のスクリーニング法により、血圧制御剤として有効な物質、特に、末梢血管抵抗を下げる、あるいは上げる物質を同定することが可能となる。

【0021】
また、本発明は、ドーパ受容体OA1及び/又はα1Bアドレナリン受容体を強制発現させたことを特徴とする、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体とを共発現する細胞を提供する。本発明の細胞において、ドーパ受容体OA1及びα1Bアドレナリン受容体を共に同レベルに強制発現させることが好ましく、そのためには、二重発現プラスミドを用いるとよい。発現レベルは、イムノブロット解析で確認することができる。

【0022】
ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体とを共発現する細胞においては、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体が形成されるとよい。

【0023】
ドーパ受容体OA1及び/又はα1Bアドレナリン受容体を強制発現させるには、ドーパ受容体OA1遺伝子及び/又はα1Bアドレナリン受容体遺伝子を細胞に導入すればよい。遺伝子の導入は、公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、発現ベクターを含む、市販のトランスフェクション試薬を用いて行うことができる。本発明の細胞は、血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするために用いることができる。血圧制御剤として有効な物質をスクリーニングするためのアッセイ系については上述した。

【0024】
さらに、本発明は、ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を標的とする血圧制御剤を提供する。ドーパ受容体OA1とα1Bアドレナリン受容体との複合体を標的とする血圧制御剤の有効成分としては、GS416(5β,6α-ビス(ベンジルオキシ)-2-シクロヘキセン-1-オン(2S,3R)-2,3-ビス(ベンジルオキシ)-5-シクロヘキセン-1-オン)、DOPA cyclohexyl esterなどを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。GS416及びDOPA cyclohexyl esterは、公知化合物であり、市販されている。

【0025】
本発明の血圧制御剤を医薬として用いる場合には、通常の方法により、有効成分である化合物を医薬的に許容される塩にしてもよい。

【0026】
また、有効成分である化合物及びその塩は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの溶媒と溶媒和物を生成してもよい。また、溶媒和物は、単独のものであっても、複数種の混合物であってもよい。

【0027】
有効成分である化合物は、プロドラッグにしてもよい。プロドラッグは、生体に投与された後、酵素の作用や代謝的加水分解などにより、医薬的に活性な化合物になる。ヒドロキシ基やアミノ基において使用されるプロドラッグを構成する基としては、例えば、C2-7アシル基、C1-6アルコキシ(C2-7アシル)基、C2-7アルコキシカルボニル(C2-7アシル)基、C2-7アルコキシカルボニル基、アリール(C2-7アルコキシカルボニル)基、C1-6アルコキシ(C2-7アルコキシカルボニル)基等を挙げることができる。化合物のプロドラッグは、公知の方法で製造することができる。

【0028】
化合物の分子内に不斉炭素が存在する場合は、ラセミ体および光学活性体も包含される。

【0029】
有効成分である化合物、その塩、溶媒和物又はプロドラッグは、常法により製剤化した医薬製剤(例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤など)として、ヒト又は動物に投与することができる。例えば、有効成分の量に換算して、1日あたり約0.1~100 mg/kg(体重)、好ましくは1日あたり約1~50 mg/kg(体重)の投与量で、1回または数回に分けて経口投与又は非経口投与(例えば、注射や点滴などの静脈内投与)するとよいが、その投与量や投与回数は、症状、年齢、投与方法などにより適宜変更しうる。注射剤に製剤化する場合には、蒸留水、生理食塩水などの担体を用いるとよく、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤に製剤化する場合には、デンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウムなどの賦形剤、デンプンのり液、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤など、デンプン、寒天、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤などを用いるとよい。製剤中の有効成分の含有率は、1~99重量%の間で変動させることができる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの形態をとる場合には、有効成分を5~80重量%含有させるのが好ましく、注射剤の場合には、有効成分を1~10重量%含有させるのが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
[要約]
血圧は常に変動し概日リズムを示す。この概日リズムは中枢及び末梢神経系を介して制御される。しかしながら、その機序の詳細は明らかではない。我々は、末梢性機序の一つとしていままで前駆体としてのみ考えられて来たL-ドーパ(ドーパ)がGPR143を介して血管のα1B-アドレナリン受容体の感受性を感作することを通じて血圧の概日リズムの調節因子としての役割を果たすことを見出した。GPR143の全身および血管平滑筋特異的遺伝子欠損マウスにおいて、フェニレフリンによる血圧上昇応答が減弱する。ドーパは大動脈平滑筋細胞において、フェニレフリンによる血管収縮ならびに細胞内カルシウム応答を増強する。Gpr143遺伝子欠損マウスにおいて、ストレスに対する昇圧応答や夜間における血圧上昇が認められない。我々の結果は、交感神経系は、DOPA-GPR143を介するシグナル伝達経路によって心血管機能の概日リズムを制御することを示す。
【実施例】
【0031】
[本文]
血圧は心拍数と末梢血管のトーヌスによって決まる。この両者はα1アドレナリン受容体(α1AR)を含むGタンパク質連関型受容体 (GPCR) を介して交感神経から放出されるノルアドレナリンによって制御される(文献1-5)。
ドーパはカテコールアミンの前駆体として確立され、それ自体は活性がないとされてきた。この一般概念に反して、ドーパ自体が伝達物質様に遊離され、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 (AADC)阻害下においても一定の薬理学的作用が認められること、そしてこれらの作用がDOPA シクロヘキシルエステル(DOPA CHE)をはじめとするドーパに構造が類似した化合物によって拮抗される(7)。圧受容器反射は、心血管系をネガティブフィードバックに制御する血圧制御の基本的な機構である。圧受容器反射の一次求心性線維は、孤束核 (NTS)と呼ばれる中枢にある減圧神経に神経終末を送るが、ドーパはその部位で圧受容器反射を媒介する神経伝達物質として作動する。ドーパは眼白子症の原因遺伝子OA1(ocular albinism-1) (GPR143)というG蛋白質連関型受容体を介して脳幹部孤束核における圧受容器反射一次求心性線維の伝達物質として作動する(8,9)。しかし、この生体内における役割は未だ明らかではない。ドーパの生体内における役割を明らかにするため、我々は今回、Grp143遺伝子欠損(Gpr143-/y)マウスにおいて、α1作動薬のフェニレフリンに対する昇圧応答を検討した。野生型マウスに比して、Gpr143-/yマウスにおいては、この応答が野生型に比べて低下していることを発見した(図1B, C)。バソプレシンもクラスB GPCRに属するV1a受容体を介して血管収縮をひき起す(12)。バソプレシンはGpr143-/yマウスにおいても、野生型と同程度に用量依存性に血圧を上昇させた (図1E)。この結果は、GPR143はα1アドレナリン作動性神経伝達を選択的に修飾することを示唆する。血管の緊張性は、α1ARによって制御されるため、GPR143が血管平滑筋(VSMCs)に発現しているかどうかを検討した。GPR143の免疫陽性シグナルはおもにVSMCsの細胞質に検出された(図5)。Gpr143-/yマウスにおいて同シグナルは検出されなかった。さらにフェニレフリン応答の減弱が平滑筋に発現するGPR143の機能によるものかどうかを検討するため、Tg(Taglin-cre)1Her/J, (smooth muscle protein 22-alpha; sm22)-cre (sm22-cre; Gpr143flox/y) マウスを用いて、平滑筋特異的Gpr143遺伝子欠損マウスを作製した。フェニレフリンによる血圧上昇応答は、平滑筋特異的Gpr143遺伝子欠損マウスにおいても全身遺伝子欠損マウス同様に減弱していた(図 1F)。この結果は、血管平滑筋に発現するGPR143がα1アドレナリン受容体を介する交感神経伝達を陽性に制御し血圧調節に関わることを示唆する。このフェニレフリンに対する応答能の減弱が血管収縮・弛緩機能や交感神経系の興奮調節機能に関わるα1ARなどの受容体の発現レベルの変化に基づくのかもしれない。しかしながら、Gpr143-/yマウスの下降大動脈におけるα1アドレナリン受容体、心臓β受容体、そして孤束核のグルタミン酸受容体は野生型との間に差は認められなかった(図6)。また、カテコラミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素 (TH) はgpr143欠損マウスにおいても野生型と同程度に、交感神経系を含む組織および副腎に発現していた(図7A, B)。ドーパおよびカテコラミンは中枢神経系、交感神経、副腎髄質細胞からカルシウム依存性に遊離される(7,13,14)。我々は野生型およびGpr143-/yマウスにおける夜間と昼間のドーパ、ノルアドレナリン、アドレナリンの血中濃度を測定したが、両群に有意な差異は認められなかった(図7C)。
【実施例】
【0032】
もしGPR143が生理学的に血圧、心拍数を緊張性に制御しているとすれば、Gpr143-/yマウスの血圧・心拍数は野生型と比して低下していると考えられる。しかし、実際には野生型とgpr143遺伝子欠損マウスとの間に基礎平均血圧および心拍数には差がなかった。これは、遺伝子欠損マウスにおいて良く起こる代償性変化によるものかもしれない。GPR143がドーパによる緊張性制御を受け、血圧制御に関わるか否かを検討するため、DOPA CHE単独の血圧・心拍数に対する効果を検討した。DOPA CHEの静脈内注射は、用量依存性に野生型マウスにおいて平均血圧を低下した。一方、DOPA CHEはGpr143-/yマウスにおいて無作用であった(図1G)。この結果は、ドーパ受容体であるGPR143の血圧維持における緊張性機能を示唆する。
【実施例】
【0033】
Gpr143-/yマウスのフェニレフリン応答の低下は、GPR143とα1アドレナリン受容体(αAR)の機能的連関を示唆する。血管平滑筋にはα1A, 1B, 1Dの三種類のα1ARが発現している。α1Aとα1D受容体が交感神経系による血管収縮における主要な役割を果たしている(15)。α1BARはマイナーではあるが、重要な役割を果たしている(16-18)。興味深いことに、α1BARはGPR143が高い発現を示す網膜ではフェニレフリンによる血管収縮における主要な役割を果たす(19)。従って、GPR143はα1BARと相互作用し、フェニレフリンによる血管収縮を修飾する可能性がある。α1BとGPR143の機能的連関の可能性を検討するため、α1BARとGPR143との局在関係を免疫組織化学的に検討した。HEK293細胞に発現させたα1BAR-mCherryとGPR143-EGFPとは共局在した(図2A)。免疫沈降法では、GPR143はα1A, α1B および α1DARのいずれとも共沈することが明らかになった (図 2B, C,図8A, B)。この相互作用は、37℃下にドーパ10 nMを作用させることにより増強した(図 2C,図9メンブレン全体)。α1BAR と GPR143との機能的連関を検討するため、ERKのリン酸化アッセイを行った。免疫沈降法アッセイもまた、GRP143がα1ARと相互作用することを示した(図2B)。GPR143とα1BARとの相互作用はドーパを一分間、37℃でインキュベートした際に増強した(図2C、図9ではメンブレンの全体を示す)。この相互作用の機能的連関を調べるため、ERKのリン酸化アッセイを行った。フェニレフリンはα1ARを発現する細胞(20)および血管平滑筋細胞(21)においてERKのリン酸化を引き起こす。我々はHEK293細胞において、このα1ARを介するフェニレフリンの効果がGPR143の存在によって修飾されるかどうかを検討した。フェニレフリンは濃度依存性にEGFPとα1A, α1B および α1DAR-Mycを発現する細胞においてERKのリン酸化を増加した。このα1AR単独発現細胞におけるフェニレフリンの増加効果は、GPR143-EGFPとα1BAR-Myc発現細胞においてさらに増強する一方、GPR143-EGFP と、α1Aあるいは α1DAR-Myc発現細胞においては認められなかった(図2D, E,図10)。フェニレフリンはGpr14+/yマウス血管平滑筋において濃度依存性にERKのリン酸化を引き起こした。一方、Gpr143-/yマウス由来平滑筋細胞においては、この作用は認められなかった(図11)。加えて、受容体結合実験は、GPR143-EGFPとα1BAR-Mycとの双方を発現するHEK293細胞において、α1BARに対するフェニレフリンの親和性を、α1BAR-Mycのみを発現する細胞に比し(Ki = 2.4 μM, n = 3)、高い親和性を示した(Ki = 9.3 μM, n = 3)(図2F)。この結果は、α1BAR とGPR143との機能的連関がα1AR受容体を介する情報伝達をポジティブに制御することを示唆する。 たとえば、ドパミンD1受容体はプロスタグランディンEP1と相互作用し、D1受容体作用はEP1作動薬依存性に増強される(23)。CXCR4とα1Aおよびα1Bとの相互作用は、α1AR受容体機能を修飾する(4)。
【実施例】
【0034】
この受容体間相互作用の生理学的な妥当性についての証拠を得るため、Gpr143-/yおよび野生型マウスの下行大動脈において、フェニレフリンによる血管収縮を検討した。野生型マウスの血管標本において、フェニレフリンは濃度依存性に収縮を引き起こした。一方、Gpr143-/yマウス血管標本においては有意に抑制されていた(図3A)。DOPA CHEの前処置はフェニレフリンの効果を抑制した(図3B)。ドーパ(1と10 nM)の前処置は、濃度依存性に野生型大動脈においてフェニレフリン (100 nM)の効果を増強したが、Gpr143-/y大動脈においては増強しなった(図3C)。この効果はドーパからドパミンへの変換を触媒する芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase, AADC)阻害剤であるα-Hydrazino-m-cresol dihydrochloride, 3-(Hydrazinomethyl)phenol dihydrochloride (NSD-1015)(10 μM) 存在下にAADCを阻害した条件下においても認められた。これらの結果はナノモル濃度のドーパが血管平滑筋においてGPR143を介してフェニレフリンに対する収縮応答を増強することを示す。このドーパの有効濃度は、血液中のドーパ濃度に匹敵する(図7C)ものであり、GPR143を介するドーパの生理学的作用を示唆する。次に、マウス血管平滑筋細胞におけるフェニレフリン誘発性カルシウム応答を検討した(図 3D, E)。野生型細胞ではドーパ10 nMはフェニレフリンの効果を増強したが、gpr143遺伝子欠損平滑筋細胞においては増強しなかった(図3D,E)。導入したタンパク質が2つに効率的に開裂されるようなブタテッショウウイルスの配列由来のあるペプチド配列を用いて、α1BARとGPR143を両方発現するベクターを構築した。ヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE19)細胞に遺伝子導入したこの発現ベクター産物のブロットパターンは、α1BARおよびGPR143のブロットパターンとそれぞれほぼ同等であるため、この発現ベクターから得られた産物が2つのタンパクに正しく開裂されていることが確認できた(図12A, B)。α1BARとGPR143とを発現するARPE19細胞においてフェニレフリン (500 pM)はわずかではあるが有意に細胞内Ca2+の上昇を惹起した。この効果はドーパ10 nMによって顕著に増強され、このドーパの効果は10 μMのDOPA CHEにより抑制された(図12C,D)。
【実施例】
【0035】
我々は次にGPR143を介する制御が生理学的な状況下で作動するかを検討した。我々はGpr143-/yマウスと野生型マウスとでテールピンチによる昇圧応答と血圧の日内変動を検討した。テールピンチは野生型マウスに血圧上昇をもたらした。この上昇はプラゾシン前処置により消失した(図4a, b)。この結果はテールピンチ刺激が交感神経を介して昇圧応答を引き起こすことを示す。テールピンチによる昇圧応答はGpr143-/yマウスにおいては野生型に比し、減弱していた(図4Aa, b)。同様な減弱は、Gpr143の血管平滑筋特異的欠損マウスにおいても認められた(図4Ac)。この結果は血管に発現するGPR143が急性ストレスの昇圧応答に関わることを示す。さらにGpr143-/yマウスは血圧の日内リズムにも異常を示した(図4B)。この血圧・心拍の日内リズムは、交感神経系の活動変動と血管平滑筋の感受性変化の2つのうちどれかあるいは双方が関わる可能性がある。我々の検討でも血中のドーパおよびカテコラミンには明らかな日内変動が認められた(図7B,中央および右)。ドーパおよびノルアドレナリンの血中レベルは昼間よりも夜間の方が有意に高い値を示した(図7C)。野生型では、夜間の血圧が高く、同時に血中カテコラミンレベルも高値を示した(図4Ba, 図7C)。注目すべきは、Gpr143-/yマウスにおいてはこの血圧の概日リズムは障害されていた(図4Ba)。野生型とGpr143-/yマウスの間に血中カテコラミンレベルの日内変動の相違は認められなかった(図7C)。血管平滑筋におけるα1AR、GPR143についての日内変動についても野生型およびGpr143-/yマウスともに認められなかった(図13)。
【実施例】
【0036】
我々の結果は、血管平滑筋のGPR143が痛みのストレスや日内変動下における血圧制御に関わることを示す(図4)。さらに血中ドーパが夜間の活動期に上昇することは、ドーパ-GPR143伝達が交感神経伝達におけるα1BARの修飾を介して血圧の生理学的な調節に関与することを示唆する。このカテコラミンの前駆体による制御機構の異常は、早朝高血圧、non-dipper, riser、不整脈、心筋梗塞や血圧異常などの循環器障害の発症に関与する昼夜の循環制御リズムの異常につながるかもしれない。ドーパの生理学的な機構の理解は心血管調節の異常に対する新たな治療戦略に貢献する。
[材料と方法]
[実験手順]
すべての手技は横浜市立大学大学院医学研究科において定めた実験動物計画の基準および米国NIHの実験動物取り扱い基準に準拠した。実験を通じ、実験動物の使用数と苦痛の軽減に最大限の努力を払った。
[動物]
遺伝子型 Gpr143-/y (8), Gpr143flox (8), SM22-cre (23)マウス (体重、20-25 g)を使用した。Gpr143-/yを用いた実験は一つの遺伝学的バックグランド(C57BL/6J)において行った。SM22-creはJaxson laboratory から購入したものを用いた。マウスは室温23 ± 1 ℃、湿度55 %下、12時間の明暗サイクル下に制御された部屋に、食餌と水の制限なしに飼育した.
[観血的血圧・心拍測定]
マウスはウレタン(1.2 g/kg, i.p.)で麻酔した。大腿動脈と静脈に各々、血圧のモニターと静脈内投与とを目的としてカニューレを挿入した(7、24)。フェニレフリン(0.3-2.4 μg/kg)、バソプレシン (0.25-2.0 μg/kg) そして DOPA CHE (1-20 mg/kg)に対する心血管系の急性応答は血圧と心拍を測定することによって行った。L-DOPA CHE 10 mg/kg, i.v.を前投与する際にはフェニレフリンの投与5分前に行った。テールピンチに対する昇圧応答では、マウスは3% イソフルレンにて麻酔導入を行い、2 %で維持した。カニューレ挿入後は、血圧と心拍数を記録し、マウスのテールピンチは10秒間行った。
[テールカフによる間接測定法による血圧・心拍数のモニタリング]
収縮期血圧はスフィングモナノメーター(BP-monitor MK-2000; Muromachi Kikai Co., Tokyo, Japan)を用い、テールカフ法により測定した(28)。マウスをホルダーに入れ、血圧と心拍数を麻酔下に測定した。8:30-11:30 amに測定した血圧を昼間血圧とし、8:30-11:30 pmに測定した血圧を夜間血圧とした。
[血中ドーパ及びカテコラミンの測定]
マウスをイソフルランで麻酔し11:00 amおよび 9:00 pmに、心臓から血液を採取した。除タンパクを行うため、予め血清に10 ngのイソプロテレノールを内部標準として加えた後、トリクロロ酢酸4%、エチレンジアミン四酢酸(EDTA) 0.1 %(いずれも最終濃度)を加え、30分間、氷上に置いた。遠心後、上清中のドーパとカテコラミンをアルミナを用いて部分精製し、0.1規定塩酸により溶出し、高速液体クロマトグラフィーと電気化学的検出器(Eicom, Kyoto, Japan) を用いて測定した。
[下行大動脈血管環の等尺性緊張度測定]
野生型およびGpr143遺伝子欠損マウスをイソフルランを用いて麻酔し、下行大動脈を摘出し、容器に移して37℃に保った。2本のタングステンワイヤー(40 μm径)を管腔に通し、2チャンネルの筋運動記録器(Dial wire myograph system-410A, Unique Medical, Tokyo, Japan)に装着した。張力が安定した後、フェニレフリン (10-8~10-5 M)を適用した。DOPA CHE (1 mM)はフェニレフリン投与前、5分で投与した。ドーパ(1, 10 nM)はフェニレフリン処置2.5 分前にNSD1015 10 μM処置下に投与した。実験終了後、高カリウム溶液 (NaCl, 22mM; KCl, 120mM; CaCl2, 1.5mM; glucose, 6mM; MgCl, 1mM; HEPES, 5mM; pH7.4)により収縮が起こることを確認した。
[リアルタイムPCR]
マウス下行大動脈、心臓、下位脳幹部の総RNAをTRIzol試薬 (Invitrogen, CA, USA)により抽出した。一本鎖cDNAを得るため、500 ng総RNAを50 pmolの oligo(dt)20, 10 pmol dNTP混合液を混ぜ、13.5 μl容量で65℃で5分間インキュベートし、1分間氷上に置いた。そしてこの混合液に緩衝液、5 mMジチオスレイトール、100 UのSuperScript逆転写酵素(Invitrogen, CA, USA)を加え、50℃、50分間インキュベート、さらに70℃、15分間インキュベートした。これを鋳型としてα1AAR, α1BAR, α1DAR, α1AR, α2AR, GluR1, GluR2, NR2A, NR2B mRNAについての判定量的PCR解析を行った。GAPDHは内部標準として用いた。それぞれのプライマーの配列は別表に示した。リアルタイムPCRは95℃、20秒間、続いて95℃、5秒間と60℃で20秒の45サイクルで行った。結果は、RQマネージャー1.2ソフトウェア(Invitrogen)を用いて相対的2-ΔΔCt法で評価した。すべてのデータは野生型における各レベルを基準とした相対値で示した。

プライマー:
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【実施例】
【0037】
[マウス下行大動脈からの血管平滑筋細胞培養]
マウス血管平滑筋細胞を既報に従って調整した(29)。野生型ないしgpr143遺伝子欠損マウスをイソフルランで麻酔し、大動脈を中央でカットし放血し、1000U/mlのヘパリンを含む生理的食塩水 1 mLで左室から還流した。大動脈を大動脈弓から腹部大動脈にかけて摘出した。血管は縦軸にそって切開し、60 mmのディッシュに置いて2,3 mm程度の大きさに細断した。大動脈に付着した溶液を軽く乾燥させてから10 % FBSを含むDMEM溶液を加え、細胞をインキュベーターに置き、10日培養した。
[免疫沈降]
FuGENE6 (Roche, Meylan, France)を用いてα1AAR-Myc, α1BAR-Myc 及び α1DAR-Myc と GPR143-HAとをHEK293細胞に発現させた。2日後、細胞を免疫沈降液(20mM Tris-HCl, pH 8.0, 150 mM NaCl, 1mM 2-({2-[bis(carboxymethyl)amino]ethyl}(carboxymethyl)amino)acetic acid (EDTA), 10mM NaF, 1 mM Na3VO4, 0.1 % Nonidet P-40 and 0.1 % protease inhibitor) 300 μlにて溶解した。細胞溶解液をさらに破砕し、4℃、20分、15000rmpで遠心した。上清をアガロースに結合したMyc抗体(sc-40 AC, Santa Cruz, San Diego, CA)およびHA抗体(sc-7392 AC, Santa Cruz, San Diego, CA)と共に3.5時間、4℃、インキュベートした。免疫沈降液で3回洗浄した後、サンプルを抗Myc抗体(sc-789, Santa Cruz, San Diego, CA)とHA抗体により検出した(sc-805, Santa Cruz, San Diego, CA)。
[イムノブロット解析]
培養したHEK293細胞ないし血管平滑筋細胞をフェニレフリンあるいはDOPA CHEを処置10分で37℃インキュベートした後、回収した。細胞を免疫沈降緩衝液(20mM Tris-HCl, pH 8.0, 150 mM NaCl, 1mM EDTA, 10mM NaF, 1 mM Na3VO4, 0.1 % Nonidet P-40 and 0.1 % protease inhibitor)中にて溶解した。溶解液は15000回転で20分間、4℃で遠心した。タンパク量はBCAアッセイ(Thermo scientific, Hudson, NH, USA)で行った。まず同量のタンパク質(15 μg)をジチオスレイトール(50 μM)を含むSDS 4Xサンプル緩衝液に溶解し、9%SDS-PAGEにより分離した後PVDF膜(Millipore, Bedford, MA)に移した。サンプルをERKおよびリン酸化ERK抗体(diluted 1:6000, Cell Signaling, Danvers, MA)によるイムノブロット解析にかけた。一次抗体で処置した後、膜を3度洗った後、二次抗体であるhorseradish パーオキシダーゼ (HRP)に結合したウサギIgG抗体で検出した。抗原-抗体複合体はWestern Chemiluminescent HRP Substrate (Millipore, Bedford, MA)で検出した。
[免疫組織化学]
マウスの下行大動脈は4%パラフォルムアルデヒド/PBS pH7.4で室温に10分間固定した。切片を0.1 %TritonX-100/PBS(PBST)溶液に10分間、さらに0.3% H2O2に30分間室温下に浸した。ついで、切片を10%ヤギ血清を含むTriton-Tris緩衝液[137 mM NaCl, 2.68 mM KCl, 25 mM Tris base, 0.1 % TritonX-100](TBST)を用いて固定した。切片は、抗TH抗体(Immunostar, Hudson, WI)を4℃、24時間インキュベートし、室温で30分間、Dako EnVision + Dual Link System Peroxidase (DAKO, Glostrup, Denmark)にてインキュベートした。特異的結合をImmPACT DAB Peroxidase substrate kit (Vector Laboratories, CA, USA)により検出した。
[免疫細胞化学]
FuGENE6 (Roche, Meylan, France)を用いてHEK293 細胞に一過性にα1BAR-mCherryおよびGPR143-EGFPを発現させた。2日培養後、細胞を4 %パラフォルムアルデヒドにより室温で10分固定し、PSBで洗浄した。蛍光は共焦点顕微鏡(LSM510, Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)で観察した。培養平滑筋細胞は4%パラフォルムアルデヒド室温、10分間固定した。グラスボトムディッシュ上の細胞は、PBSTに10分間浸け、その後0.3 % H2O2に30分間室温で処置した。細胞は10 %ヤギ血清を含むTBST溶液に室温で1時インキュベートした。細胞を抗GPR143抗体(12)ないし平滑筋アクチン抗体(Sigma, St. Louis, MO)に付け、4℃で24時間処置した後、Alexa594を結合させたヤギのウサギ抗IgG抗体ないしAlexa594を結合させたヤギのマウス抗IgG抗体(Invitrogen, CA, USA)を処置した。GPR143のConjugateおよびペプチド吸収テストは4℃で一昼夜行った。マウスの大動脈細胞はヤギ血清10 %を含むTBST中にてブロックした。細胞を抗GPR143抗体(Santa Cruz, San Diego , CA)にて4℃24時間インキュベートし、Dako EnVIsion + Dual Lin system Peroxidase (DAKO, Glostrup, Denmark)で室温、30分処置した。特異的結合はImmPACT DAB Peroxidase Substrate kit (Vecoto Laboratoreis, CA, USA)を用いて検出した。この後、ヘマトキリンーエオジン染色を用いて核染色を行った。
[カルシウムイメージング]
α1BARおよびGPR143を発現する ARPE-19細胞またはマウス培養血管平滑筋細胞を2.5 μM Fura2-AM (WAKO, Osaka, Japan)を含む10 mM HEPESを含む Hanks’ balanced salt solution (HBSS-HEPES緩衝液、pH7.4)に1時間、37℃でインキュベートし、カルシウム蛍光指示薬を負荷する。ドーパを投与する場合は、10 μM NSD-1015存在下に指示薬を負荷する。負荷後、細胞を10分間さらにインキュベートし、回復させた。Fura-2によるカルシウムイメージングは対物レンズ 20 x (UAPo/340)を装着した顕微鏡(Olympus IX71)を用いて行った。フィルターを用いて200 Wキセノンバルブからの励起光を340 nmと380 nmとの波長で交互に当てるようにした。510 nmにおいて中央化した、30 nmのバンドパスフィルターを励起蛍光として選び、これをCCDカメラ(iXon3)に通した。340/380 nmの比をMetaFluor (Molecular device, CA, USA)により算出した。各々の実験で2秒毎に150秒採取した。ドーパ(10 nM)およびフェニレフリン(1 μM)は30および90秒投与した。最後に、KCl (10 mM)をポジティブコントロールとして適用した。この結果が2倍以上の細胞内カルシウム上昇を示した細胞のみをデータとして作用した。
[受容体結合実験]
α1BAR-MycならびにEGFPまたはα1BAR-MycならびにGPR143-EGFPを発現するHEK293細胞を10cmディッシュに播く。細胞を氷上で冷やし、25 mM Tris, 150 mM NaCl, 5 mM EDTA (pH7.4)を含む結合実用緩衝液でリンスする。細胞を0.4 x 106個に調整し、[3H]-prazosin 0.4 nM (Perkin Elmer-Cetus, Norwalk, CT)およびフェニレフリン (0.005-50 μM)を含む緩衝液でインキュベートした。細胞は5回、冷やした結合実験用緩衝液で洗浄する。[3H]-prazosinの特異的結合は総結合量からフェニレフリン1 mM存在下で得られた結合量を差し引いて求めた。
[データ解析]
結果は独立の実験の平均値 ± 標準誤差で表した。統計解析は二群間の対応のないスチューデントt-testあるいは一要因、二要因のBonferroniの多重解析で行った。すべての統計解析はPrism version 5.0a (GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA, USA)。P値が0.05以下を有意とみなした。
【実施例】
【0038】
(文献)
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【実施例】
【0039】
〔実施例2〕GS416
γセクレターゼ阻害剤であるGS416(5β,6α-ビス(ベンジルオキシ)-2-シクロヘキセン-1-オン(2S,3R)-2,3-ビス(ベンジルオキシ)-5-シクロヘキセン-1-オン)を用いて、以下の実験を行った。
JP2017100958A_000004t.gif
【実施例】
【0040】
マウスGPR-143の 翻訳領域cDNAを2つのプライマー(Mouse-OA1 forward 5’- atcgaattccgaatggcctccccgcgcctgggaattttc -3’(配列番号21), Mouse-OA1 reverse5’- atcctcgagtcagagttccccctgggcttgggaaatgga -3’(配列番号22))を用いマウス網膜由来のpoly-(A)+RNAからRT-PCRによりクローニングした。さらにGPR143C末端にEGFPを融合させた発現ベクターを作成した。マウス GPR143-EGFPをCHO細胞に発現させた。GPR143-EGFP発現細胞を用い [3H]-L-DOPA の結合実験を行った。特異的 [3H]-L-DOPA結合は、EGFPを発現させたCHO細胞への[3H]-L-DOPA結合を非特異的結合としてGPR143-EGFPへの結合量から差し引いて求めた。1μM [3H]-L-DOPA結合に対してGS416の濃度を変化させ、拮抗阻害を検討した。
【実施例】
【0041】
結果を図14に示す。GS416はGPR143を発現するCHO細胞における特異的3H-DOPA結合を阻害した。
【実施例】
【0042】
次に、α1Bアドレナリン受容体 (α1BAR) およびGPR143を発現する ARPE-19細胞を2.5 μM Fura2-AM (WAKO, Osaka, Japan)を含む10 mM HEPESを含む Hanks’ balanced salt solution (HBSS-HEPES緩衝液、pH7.4)に1時間、37℃でインキュベートし、カルシウム蛍光指示薬を負荷した。ドーパを投与する場合は、10 μM NSD-1015存在下に指示薬を負荷した。負荷後、細胞を10分間さらにインキュベートし、回復させた。Fura-2によるカルシウムイメージングは対物レンズ 20 x (UAPo/340)を装着した顕微鏡(Olympus IX71)を用いて行った。フィルターを用いて200 Wキセノンバルブからの励起光を340 nmと380 nmとの波長で交互に当てた。510 nmにおいて中央化した、30 nmのバンドパスフィルターを励起蛍光として選び、これをCCDカメラ(iXon3)に通した。340/380 nmの比をMetaFluor (Molecular device, CA, USA)により算出する。各々の実験で2秒毎に150秒採取した。ドーパ(10 nM)およびフェニレフリン(1 μM)は30および90秒投与した。最後に、KCl (10 mM)をポジティブコントロールとして適用した。この結果が2倍以上の細胞内カルシウム上昇を示した細胞のみをデータとして作用した。
【実施例】
【0043】
結果を図15に示す。L-DOPAおよびGS416はα1Bアドレナリン受容体 (α1BAR) およびGPR143を発現する ARPE-19細胞 において、フェニレフリンに対する細胞内カルシウム応答を濃度異存的に増強した。結合実験における有効濃度に比べて低濃度で増強作用が現れることが注目される。この増強はDOPA CHEにより拮抗される。
【実施例】
【0044】
また、雄性ラット(240-250g)をウレタンで麻酔し、さらに筋弛緩薬であるツボクラリンを投与後、人工呼吸下に脳を固定し、孤束核にL-DOPAないしGS416溶液を50 nLをおよそ2秒間の速度で微量注入し、投与前後の血圧および心拍数を記録した。実験終了時にエバンスブルーを同様に微量注入し、注入部位を組織学的に確認した。GS416はドーパ同様に降圧・徐脈応答を惹起し、これらの作用はDOPA CHEにより拮抗された(図16)。
【実施例】
【0045】
以上の結果は、GS416がドーパ作動薬であることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、高血圧症、低血圧症、あるいは認知症を対象とする創薬に応用できる。
【配列表フリ-テキスト】
【0047】
<配列番号1>
配列番号1は、α1AARを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、α1AARを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、α1BARを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、α1BARを標的とするアンチセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、α1DARを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、α1DARを標的とするアンチセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、α1ARを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、α1ARを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号9>
配列番号9は、α2ARを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号10>
配列番号10は、α2ARを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号11>
配列番号11は、GluR1を標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号12>
配列番号12は、GluR1を標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号13>
配列番号13は、GluR2を標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号14>
配列番号14は、GluR2を標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号15>
配列番号15は、NR2Aを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号16>
配列番号16は、NR2Aを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号17>
配列番号17は、NR2Bを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号18>
配列番号18は、NR2Bを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号19>
配列番号19は、GAPDHを標的とするセンス鎖側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号20>
配列番号20は、GAPDHを標的とするアンチセンス側のプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号21>
配列番号21は、Mouse-OA1 forwardプライマーのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号22>
配列番号22は、Mouse-OA1 reverseプライマーのヌクレオチド配列を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
17