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明細書 :生体試料標識用蛍光プローブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6164637号 (P6164637)
公開番号 特開2014-185224 (P2014-185224A)
登録日 平成29年6月30日(2017.6.30)
発行日 平成29年7月19日(2017.7.19)
公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
発明の名称または考案の名称 生体試料標識用蛍光プローブ
国際特許分類 C09K  11/56        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
G01N  33/551       (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C09K 11/56 CPC
C09K 11/08 D
C09K 11/08 G
G01N 33/551
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2013-060365 (P2013-060365)
出願日 平成25年3月22日(2013.3.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 (1)第39回日本臓器保存生物医学会学術集会 プログラム・抄録集 第19巻第2号第(239)109頁 日本臓器保存生物医学会 発行年月日 平成24年10月20日 (2)日本化学会第93春季年会(2013)プログラム2G1-36 公益社団法人日本化学会 発行年月日 平成25年3月8日
審査請求日 平成28年3月18日(2016.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】湯川 博
【氏名】西 弘泰
【氏名】鳥本 司
【氏名】馬場 嘉信
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】仁科 努
参考文献・文献 特開2007-146008(JP,A)
特開2010-031115(JP,A)
特開2009-215465(JP,A)
特開2007-146154(JP,A)
米国特許出願公開第2007/0096128(US,A1)
特開2007-101498(JP,A)
国際公開第2010/082625(WO,A1)
特開2009-216603(JP,A)
国際公開第2010/071137(WO,A1)
国際公開第2007/026746(WO,A1)
笹村哲也等,低毒性元素からなる新規半導体ナノ粒子の作製と光機能材料への応用,日本写真学会誌,日本,2010年,73巻6号,290-296
調査した分野 C09K 11/56
C09K 11/08
G01N 21/78
G01N 33/551
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体ナノ粒子を含む生体試料標識用蛍光プローブであって、
前記半導体ナノ粒子は、
コアと該コアを取り囲むシェルとを備えたコアシェル構造の半導体ナノ粒子であって、
前記コアが(AgIn)xZn2(1-x)2(xは0.4≦x≦0.95を満たす)であり、
前記シェルがZnS又はZnOであり、
前記シェルの表面に親水性の官能基を有し
前記親水性の官能基は、カルボキシル基若しくはその塩、又は、スルホ基若しくはその塩である、
生体試料標識用蛍光プローブ。
【請求項2】
xは0.8≦x≦0.9を満たす、
請求項1に記載の生体試料標識用蛍光プローブ
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子及び生体試料標識用蛍光プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞のイメージング技術は、細胞動態を解明する上で重要な技術である。これまでに様々な色素を用いた細胞イメージングが開発されてきたが、近年では高い発光量子収率や高い吸光係数、広い吸収領域、高い耐久性を合わせ持つ量子ドットを用いた細胞イメージングが注目されている。しかしながら、量子ドットを用いたイメージングでは、毒性が懸念されるカドミウム(Cd)を含んだ粒子を用いていることが多く、毒性の低い代替元素を用いた高輝度量子ドットの開発が望まれている。こうした状況下、例えば、特許文献1や非特許文献1,2には、ZnS-AgInS2固溶体(ZAIS)の半導体ナノ粒子にスルホ基(-SO3H)を導入した水溶性の半導体ナノ粒子が報告されている。スルホ基を導入するとナノ粒子は水溶性になり細胞へ取り込まれやすくなることから、細胞イメージングに用いられる量子ドットとしての利用が期待される。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2009-215465公報(実施例1,2)
【0004】

【非特許文献1】Chemistry Lett. 2008, vol.37, p700-701
【非特許文献2】Electrochemistry 2011, vol.79, p790-792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献2に記載されているように、ZAISにスルホ基を導入した後の半導体ナノ粒子の発光量子収率は8%に過ぎず、ZAISにスルホ基を導入する前の発光量子収率(約20%)に比べて大きく落ち込んでしまうという問題があった。一方、ZAISをコアとし、ZnSをシェルとするコアシェル構造の半導体ナノ粒子も知られている(例えば特開2010-31115号公報)が、これらを細胞イメージングに利用する具体的な技術についてはこれまでのところ報告されていない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、毒性が低く発光量子収率が高い半導体ナノ粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、ZAISをコアとしZnSをシェルとするコアシェル構造の半導体ナノ粒子のシェルの表面を種々の分子で修飾してその性質を調べた。そうしたところ、親水性の官能基を有する分子で修飾したものが細胞イメージングに用いられる量子ドットとして有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の半導体ナノ粒子は、コアと該コアを取り囲むシェルとを備えたコアシェル構造の半導体ナノ粒子であって、前記コアが(AgIn)xZn2(1-x)2(xは0.4≦x≦0.95を満たす)であり、前記シェルがZnS又はZnOであり、前記シェルの表面に親水性の官能基を有しているものである。
【0009】
また、本発明の生体試料標識用蛍光プローブは、上述した半導体ナノ粒子を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体ナノ粒子は、毒性が低く発光量子収率が高い。そのため、細胞イメージングに用いられる量子ドットとして適しており、生体試料標識用蛍光プローブとしての利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の半導体ナノ粒子の合成手順の一例を示す説明図。
【図2】毒性試験の結果を示すグラフ。
【図3】毒性試験の結果を示すグラフ。
【図4】増殖試験の結果を示すグラフ。
【図5】分化誘導試験の結果を示す写真。
【図6】細胞標識に関する写真。
【図7】細胞標識に関する写真。
【図8】吸収スペクトル及び発光スペクトルのグラフ。
【図9】ZnS-ZAIS(x=0.4~1.0)の発光量子収率と発光ピーク波長(λPL)との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の半導体ナノ粒子は、コアと該コアを取り囲むシェルとを備えたコアシェル構造の半導体ナノ粒子であって、前記コアが(AgIn)xZn2(1-x)2(xは0.4≦x≦0.95を満たす)であり、前記シェルが、ZnS又はZnOであり、前記シェルの表面に親水性の官能基を有しているものである。

【0013】
本発明の半導体ナノ粒子は、コアが(AgIn)xZn2(1-x)2である。xは0.4≦x≦0.95である。この範囲であれば、発光量子収率が比較的高いからである。xは0.8≦x≦0.9であることが好ましい。この場合、発光量子収率が非常に高い値になると共に、発光波長が700~900nmであり、生体の分光学的窓に入るためin vivo動態の解明に役立つからである。

【0014】
本発明の半導体ナノ粒子は、シェルがZnS又はZnOである。このうち、ZnSが好ましい。シェルの膜厚は、発光量子収率をより向上させることを考慮すると、0nmより厚く50nm以下であることが好ましく、0nmより厚く1.0nm以下であることがより好ましく、0nmより厚く0.5nm以下であることが特に好ましい。

【0015】
本発明の半導体ナノ粒子は、シェルの表面に親水性の官能基を有している。親水性の官能基としては、例えば、カルボキシル基(-CO2H)やその塩、スルホ基(-SO3H)やその塩、四級アンモニウム塩などが挙げられるが、このうちカルボキシル基、スルホ基及びそれらの塩が好ましく、生体への取り込みを考慮するとカルボキシル基及びその塩がより好ましい。なお、塩としては、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、シェルの表面には、前出の親水性の官能基(第1の官能基)とシェルの表面に結合可能な官能基(第2の官能基)とを有する二官能性分子が第2の官能基にてシェルの表面に結合していることが好ましい。なお、シェルの表面への結合の様式は、特に限定されるものではないが、例えば共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、ファンデルワールス結合等の化学結合が挙げられる。第1の官能基については、親水性の官能基として既に説明したとおりである。第2の官能基としては、例えば、硫黄原子を含む官能基や窒素原子を含む官能基などが挙げられる。硫黄原子を含む官能基としては、メルカプト基、アルキルジチオ基等のジスルフィド結合を有する基、アルキルチオ基等のスルフィド結合を有する基、ピリジルチオ基、ジチオカルボキシル基などが挙げられる。窒素原子を含む官能基としては、例えば、イミノ基、アミド基、イミド基、ピリジル基などの窒素原子を含む官能基などが挙げられる。二官能性分子としては、例えば、第1の官能基と第2の官能基とを炭化水素基やエーテル基で連結した構造の分子であることが好ましい。二官能性分子の具体例としては、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプトブタン酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸などが挙げられる。

【0016】
本発明の半導体ナノ粒子は、量子サイズ効果が現われる粒径であることが好ましく、具体的には、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。

【0017】
本発明の半導体ナノ粒子は、例えば以下の手順(1)~(3)にしたがって合成する(図1参照)。ここでは、シェルがZnSの場合について説明する。
(1)アルキルアミンで修飾された(AgIn)xZn2(1-x)2(xは0.4≦x≦0.95を満たす)のナノ粒子、すなわちZAISナノ粒子を合成する。
(2)ZAISナノ粒子を原料として、アルキルアミンで修飾されたコアシェル構造のZnS-ZAISを合成する。なお、ZnS-ZAISとは、ZnSで被覆されたZAISナノ粒子のことをいう。
(3)配位子置換法により、アルキルアミンで修飾されたZnS-ZAISのアルキルアミンを、親水性の官能基を有する分子に置換する。

【0018】
手順(1)では、Ag塩とIn塩とZn塩と硫黄を配位元素とする配位子とを混合して錯体を合成し、その錯体を100~300℃、好ましくは150~200℃で加熱し、加熱後の物質の表面をアルキルアミンにより修飾する。各塩としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩などが挙げられるが、このうち硝酸塩が好ましい。硫黄を配位元素とする配位子としては、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどのジアルキルジチオカルバミン酸塩類、1,2-ビス(トリフルオロメチル)エチレン-1,2-ジチオールなどのチオール類、チオアセトアミドなどのチオカルボン酸アミド類などが挙げられるが、このうちジアルキルジチオカルバミン酸塩類が好ましい。各塩の混合比はxの値に応じて決定すればよい。アルキルアミンとしては、炭素数4~20の炭化水素基を有するアミンが好ましい。なお、Ag、In及びZnの各ジアルキルジチオカルバミン酸塩を原料として用いる場合には、硫黄を配位元素とする配位子は不要なため、これら3者を混合して加熱し、加熱後の物質の表面をアルキルアミンにより修飾してもよい。

【0019】
手順(2)では、アルキルアミンで修飾されたZAISナノ粒子を、酢酸亜鉛とチオアセタミドとアルキルアミンと共に100~350℃、好ましくは150~250℃で加熱する。これにより、ZAISナノ粒子の表面がZnSで被覆されてコアシェル構造のZnS-ZAISになると共に、そのシェルの表面がアルキルアミンによって修飾される。なお、手順(1),(2)については、特開2010-31115号公報に詳しく説明されている。

【0020】
手順(3)では、アルキルアミンで修飾されたZnS-ZAISを、上述した第1及び第2の官能基を備えた二官能性分子と共に混合撹拌することにより、アルキルアミンを二官能性分子に置換する。二官能性分子は、第2の官能基がシェルの表面に結合し、第1の官能基すなわち親水性の官能基が外側を向く。混合撹拌は、室温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。溶媒は有機相と水相の二相系としてもよく、二相系の場合には相関移動触媒を添加してもよい。この反応によって得られる本発明の半導体ナノ粒子は、水溶性である。

【0021】
本発明の生体試料標識用蛍光プローブは、上述した半導体ナノ粒子を含むものである。この蛍光プローブは、細胞毒性が低い。また、波長700~900nmで発光するようにxの値を調節することにより、in vivo動態の解明が可能になる。
【実施例】
【0022】
A.親水性の官能基を持つ分子で修飾したZnS-ZAISの合成
1.オレイルアミンで修飾したZAISナノ粒子の合成
(1)合成例1
J. Am. Chem. Soc. 2007, vol.129, p12388-12389に記載された手法でZAISナノ粒子を合成した。前駆体である(AgIn)xZn2(1-x)(S2CN(C2524はx=0.85のものを用いた。
(2)合成例2
以下のようにZAISナノ粒子を合成した。Ag(S2CNEt2(13.6mg)、In(S2CNEt23(29.7mg)、およびZn(S2CNEt22(6.8mg)をオレイルアミン(3.0mL)に分散し、窒素雰囲気下、180℃で30分間加熱した。得られた溶液を4000rpmで5分間遠心分離することで大きな粒子を沈殿物として取り除き、上澄みにメタノールを加えて4000rpmで5分間遠心分離することでZAISナノ粒子(x=0.85)を沈殿物として得た。
【実施例】
【0023】
2.ZnS-ZAISの合成
Chem. Commun. 2010, vol.46, p2082-2084を参考にして、以下のようにZnS-ZAISを合成した。上記1.(1)又は(2)に記載した方法、分量で合成したZAISナノ粒子全てと、酢酸亜鉛2水和物(11.8mg)と、チオアセトアミド(4.0mg)をオレイルアミン(2.0mL)に分散させ、窒素雰囲気下、180℃で30分間加熱した。得られた溶液をシリンジフィルタでろ過した後にメタノールを加え、4000rpmで5分間遠心分離を行うことによりZnS-ZAISを沈殿物として分離した。
【実施例】
【0024】
3.カルボキシル基を持つ分子で修飾したZnS-ZAIS(ZnS-ZAIS-COOH)の合成
Nanoscale 2011, vol.3, p201-211を参考にして、以下のようにZnS-ZAIS-COOHを合成した。上記2.に記載した方法、分量で合成したZnS-ZAIS全てをクロロホルム(1.0mL)に溶解し、3-メルカプトプロピオン酸(MPA)(100mL)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液(730μL)を含むエタノール(1.0mL)溶液と混合した。この反応液を窒素雰囲気下、70℃で5時間加熱した。減圧下で溶媒を取り除き、得られた粗成生物をエタノールに溶解し、クロロホルムを加えて4000rpmで5分間遠心分離を行うことにより粒子を沈殿物として分離した。このエタノールに溶解およびクロロホルムを加えて遠心分離するサイクルを数回繰り返し、残留試薬を取り除いた。得られた粒子は減圧下で乾燥し、超純水に溶解してZnS-ZAIS-COOHの水溶液とした。
【実施例】
【0025】
4.スルホ基を持つ分子で修飾したZnS-ZAIS(ZnS-ZAIS-SO3)の合成
(1)合成例1
Chem. Lett. 2008, vol.37, p700-701に記載された手法で、上記2.で合成したZnS-ZAISからZnS-ZAIS-SO3Hを合成した。
(2)合成例2
Nanoscale 2011, vol.3, p201-211を参考にして、以下のようにZnS-ZAIS-SO3を合成した。上記2.に記載した方法、分量で合成したZnS-ZAIS全てをクロロホルム(1.0mL)に溶解し、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MES)(164mg)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%メタノール溶液(730μL)を含むメタノール(1.0mL)溶液と混合した。この反応液を窒素雰囲気下、70℃で1.5時間加熱した。減圧下で溶媒を取り除き、得られた粗成生物をメタノールに溶解し、クロロホルムを加えて4000rpmで5分間遠心分離を行うことにより粒子を沈殿物として分離した。この溶解および遠心分離を数回繰り返し、余分な残留試薬を取り除いた。得られた粒子は減圧下で乾燥し、超純水に溶解してZnS-ZAIS-SO3の水溶液とした。
【実施例】
【0026】
以下の毒性試験等で用いたZnS-ZAIS-SO3は、合成例2によって得られたものを使用した。
【実施例】
【0027】
B.毒性試験
毒性試験を以下のように実施した。培養培地(FD培地:F12とDMEMがそれぞれ50%ずつ混合されている培地+20%FBS+1%ペニシリン-ストレプトマイシン)を用いて、マウス脂肪組織由来幹細胞(Adipose tissue-derived stem cells:ASCs)を96ウェルのプレートに1×104cells/wellで播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。その後、維持培地(FD培地:F12とDMEMがそれぞれ50%ずつ混合されている培地+2%FBS+1%ペニシリン-ストレプトマイシン)を用いて、ZnS-ZAIS-SO3H及びZnS-ZAIS-COOHを膜浸透性ペプチドであるオクタアルギニンR8とそれぞれ目的の濃度となるように調整して混合し、20分間静置させた。その後、ASCsの培養液を、調整したZnS-ZAIS-SO3H溶液あるいはZnS-ZAIS-COOH溶液に交換して24時間培養した。なお、R8を用いたのは、ZnS-ZAIS-SO3HやZnS-ZAIS-COOHを細胞に取り込ませやすくするためである。細胞数はMTTアッセイを用いて測定し、無添加の細胞群の細胞数を100%とした時の細胞数の割合を算出した。その結果を図2及び図3に示す。図2及び図3から明らかなように、ZnS-ZAIS-SO3Hは500nMでも細胞毒性は見られず、ZnS-ZAIS-COOHは1000nMでも細胞毒性は見られなかった。
【実施例】
【0028】
C.増殖試験
増殖試験を以下のように実施した。上述した培養培地を用いてZnS-ZAIS-SO3H及びZnS-ZAIS-COOHをそれぞれ目的の濃度となるように調整し、その調整した溶液を用いてASCsを4時間培養した。これにより、ASCsはZnS-ZAIS-SO3HあるいはZnS-ZAIS-COOHによって標識された。その後、通常の培養培地に交換し、標識されたASCsを4日間培養した。その後、MTTアッセイを用いて細胞数を測定した。ZnS-ZAIS-COOHで標識されたASCsの結果を図4に示す。図4から明らかなように、ZnS-ZAIS-COOHで標識されたASCsは、未標識のASCsと同程度に増殖した。このことから、ZnS-ZAIS-COOHは細胞増殖に悪影響を与えることがないことがわかった。
【実施例】
【0029】
D.分化誘導試験
DMEM培地に、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(シグマ社製のL-6768)、1μMデキサメタゾン(シグマ社製のD-1756)、10μMインシュリン(シグマ社製のI-5500)、及び10%FBSを添加して脂肪細胞分化誘導用培地を調整した。また、DMEM培地に10%FBSを添加して脂肪細胞培養用培地を調整した。ZnS-ZAIS-COOHで標識したASCsに、先ず脂肪細胞分化誘導用培地を添加して、3日間培養した。誘導をかけてから3日後に新鮮な分化誘導用培地に取り換え、7日後には脂肪細胞培養用培地に取り換えた。10日後に新鮮な脂肪細胞培養用培地に取り換え、更に4日間培養した。その後、脂肪組織分化の確認のために、オイルレッドO染色を行ったところ、図5に示すように赤色の脂肪滴が確認された。これにより、ZnS-ZAIS-COOHで標識したASCsが分化誘導を行うことで脂肪細胞に分化することが確認された。
【実施例】
【0030】
また、ZnS-ZAIS-COOHで標識したASCsを分化誘導せずに培養した後、オイルレッドO染色を行ったところ、染色はみられなかった。これにより、標識しただけでは脂肪細胞に分化することはないことも確認された。
【実施例】
【0031】
E.細胞標識
ZnS-ZAIS-COOH及びZnS-ZAIS-SO3H(濃度250nM)でASCsを標識した。図6は、ZnS-ZAIS-COOHで標識されたASCsの写真であり、(a)が光学顕微鏡像、(b)が蛍光顕微鏡像である。また、図7は、ZnS-ZAIS-SO3Hで標識されたASCsの写真であり、(a)が光学顕微鏡像、(b)が蛍光顕微鏡像である。図6及び図7の蛍光顕微鏡像では細胞が赤色に発色していることから、ZnS-ZAIS-COOH及びZnS-ZAIS-SO3Hの両方とも、細胞イメージングに有用であることがわかる。
【実施例】
【0032】
F.発光量子収率
発光量子収率は、常温での光吸収された光子数に対する発光により放出された光子数の比で表される。発光量子収率の測定は、十分に希釈したZnS-ZAISのクロロホルム溶液、又は水溶性ZnS-ZAISナノ粒子(ZnS-ZAIS-SO3H、ZnS-ZAIS-COOH)の水溶液を用い、絶対量子収率測定装置により測定した。365nmの励起光下での発光量子収率は、ZnS-ZAISを3-メルカプトプロピオン酸で修飾する前後で47%から30%(修飾前の約64%)に変化し、2-メルカプトメタンスルホン酸で修飾する前後で58%から35%(修飾前の約60%)に変化した。なお、修飾する前の発光量子収率に差があるのは、ロット間でバラツキがあるためである。非特許文献2には、ZAISを2-メルカプトメタンスルホン酸で修飾する前後で発光量子収率が20%から8%(修飾前の約40%)に低下していることと比較すると、ZnS-ZAISでは修飾の前後で発光量子収率の低下が抑えられていることがわかる。
【実施例】
【0033】
ZnS-ZAISを3-メルカプトプロピオン酸で修飾する前後の発光スペクトルを図8に示す。図8には、修飾前のZnS-ZAISの吸収スペクトルも合わせて示した。図8から、発光スペクトルのピーク波長は修飾前後でほとんど変わらないことがわかる。また、図示しないが、ZnS-ZAIS-SO3Hの発光スペクトルも、ZnS-ZAIS-COOHとほぼ同じ形状であり、発光波長領域は約500~900nm、発光ピーク波長は約650nmであった。
【実施例】
【0034】
シェル表面に親水性の官能基を有していないZnS-ZAIS(x=0.4~1.0)の発光量子収率と発光ピーク波長(λPL)との関係を図9に示す。ここで、図8を見ると、シェル表面に親水性の官能基を有する場合と有さない場合とで発光ピーク波長がほとんど同じである。この点を考慮すると、シェル表面に親水性の官能基を有する場合も、x=0.4~0.95における発光量子収率と発光ピーク波長(λPL)との関係は図9と同じ傾向を示すことが示唆される。つまり、本発明の半導体ナノ粒子において、x=0.4~0.95であれば、比較的量子収率が高いことが示唆される。
【実施例】
【0035】
G.粒径
TEM像から計算した上記2.のZnS-ZAIS自体の粒径は3-4nmであったことから、ZnS-ZAIS-SO3H及びZnS-ZAIS-COOHにおけるシェルコア構造のZnS-ZAIS粒子の粒径もこれと同じ大きさと考えられる。
【実施例】
【0036】
H.水溶液中の挙動
ZnS-ZAIS-SO3H水溶液及びZnS-ZAIS-COOH水溶液の動的光散乱(DLS)測定を行った。そうしたところ、10nm前後に極大値を持つピークが得られた。このことから、いずれの水溶液においても、ナノ粒子が水中で凝集することなく良好に分散していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、細胞イメージングに用いられる量子ドットに利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8