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明細書 :高温型プロトン導電体を用いた炭化水素改質ガス類から水素を分離する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4353657号 (P4353657)
公開番号 特開2003-002610 (P2003-002610A)
登録日 平成21年8月7日(2009.8.7)
発行日 平成21年10月28日(2009.10.28)
公開日 平成15年1月8日(2003.1.8)
発明の名称または考案の名称 高温型プロトン導電体を用いた炭化水素改質ガス類から水素を分離する方法
国際特許分類 C01B   3/56        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
B01D  53/32        (2006.01)
FI C01B 3/56 Z
B01D 53/22
B01D 53/32
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2001-190705 (P2001-190705)
出願日 平成13年6月25日(2001.6.25)
審査請求日 平成18年5月15日(2006.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松本 広重
【氏名】高村 仁
【氏名】岩原 弘育
個別代理人の代理人 【識別番号】100110168、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 晴視
審査官 【審査官】岡本 恵介
参考文献・文献 特開昭60-046902(JP,A)
特開昭62-007886(JP,A)
特開昭61-256901(JP,A)
調査した分野 B01D 53/22
B01D 53/32
C01B 3/00- 6/34
特許請求の範囲 【請求項1】
高温型プロトン導電性固体電解質からなる膜の両面に水素の酸化・プロトンの還元反応が可能な電極が取り付けられ、一方が陽極室(アノード室)を、他方が陰極室(カソード室)を構成するよう前記電極に電圧が加えられ、かつ前記高温型プロトン導電性固体電解質が充分なイオン導電性を持つように維持された電気化学セルの、アノード室に一酸化炭素および水素を含む混合ガスを供給し、カソード室には0.1-0.4mol/発生Hmol比の水分または水分を含むスイープガスをカソード室に供給することを特徴とする前記混合ガスから分離された水素を得る方法。
【請求項2】
高温型プロトン導電性固体電解質からなる膜を700℃以上1000℃迄に維持することを特徴とする請求項1に記載の混合ガスから分離された水素を得る方法。
【請求項3】
混合ガスが生成した高温の改質ガスであることを特徴とする請求項1または2に記載の分離された水素を得る方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素および水素を含む混合ガス、特に合成直後の高温の合成ガスから実質的に水素のみを分離する水素分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球温暖化の原因である二酸化炭素および生物に有害な排気ガスなどの問題を地球規模で解決するためには、化石燃料の燃焼エネルギーを機械エネルギー源としていたエネルギー変換技術から、前記問題をできるだけ小さく抑えることができるエネルギー変換手段への、または前記問題のガスを実質的に発生させないエネルギー変換手段への変更の必要性が、より切迫した問題とされるようになってきた。自動車などでも、エネルギーのハイブリッド化が進められ、更にはエネルギー変換手段を全く変えた、燃料電池をエネルギー変換手段とするものに大きく変わろうとしている。
【0002】
燃料電池は、研究の歴史も長く、燃料の持つ化学エネルギーを電気化学的な反応によって直接電気エネルギーに変換でき、変換効率が高く、クリーンな排気、低騒音であるなどの長所を持つため、都心部にも設置可能なエネルギー変換手段として注目され、実用化の研究も更に盛んになっている。中でも、固体電解質型燃料電池は、従来の熱機関より遙かに高い発電効率が予想されており、今後の資源エネルギーの問題や前記環境問題を解決できるものとして注目されている。
特に、水素を燃料とするものは、クリーンで、かなりコンパクトな電池が設計可能であることから、最も注目されている。
【0003】
ただ、前記現時点でのコンパクト化可能な電池では、水素燃料中への一酸化炭素の混入は貴金属系触媒に被毒をきたすなど、該変換手段に悪影響を引き起こすという問題があり、燃料中のこの量を100ppm以下にすることが重要な課題となっている。前記一酸化炭素などを除去するのにこれまで提案されている技術を、水素源として、改質ガス、合成ガスを用いる場合について、挙げると、
1,多孔質体(フイルター)を用いる方法。
2,パラジウムあるいはパラジウム合金を改質ガスからの水素分離に用いる方法。
3,固体電解質を用いる方法などがある。
3,の方法は、分離性能および被毒の問題が少ないものとして注目されている。
【0004】
特開平10-297902号公報には、酸素イオン輸送に基づく、炭化水素の部分酸化による合成ガスの製造と、該生成した合成ガスから水素輸送膜として、例えばパラジウム若しくはパラジウム合金を利用するもの又はプロトン輸送膜、例えば高温型プロトン導電性固体電解質水素輸送膜を用いて水素のみを分離する工程とを一体化した水素の製造プロセスの発明について説明されている。
そして、使用する固体電解質水素輸送膜を構成する材料および水素製造法の原理的な説明はあるが、水素製造の具体的な説明がなされておらず、実際に水素の生成がされたことを確認したことのデータもない。また、本発明者らは、前記公開公報に記載の範囲でその技術の実施を試みたが、水素の継続的分離を確かめることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、基本的には前記先行技術の不都合の原因を見出し、その不都合を取り除いた高温型プロトン導電性固体電解質を用いて純粋な水素を分離できる技術を確立する、特に前記分離の駆動力を電圧にのみに依存させ、圧力差、濃度差に依存しない水素の分離技術を確立することである。
そこで、前記公報の技術説明だけの原理ではなぜ作動しないかを次のように推測した。もし高温型プロトン導電性固体電解質が、化学的組成および構造が安定に存在するならば、前記固体電解質のプロトン導電性の特性から、水素の分離が実現されなければならない。しかしながら、それが進まないのは化学的組成および結晶構造が、プロトンの導電体として機能させない化学量論的な変化が生じているものと考えられる。そこで、そのような変化をどうすれば防ぐことができるかを検討することを試みる実験をした。その際、可能性としては酸素の減少が考えられるので、酸素を何らかの方法で供給することを試み、前記化学量論的な変化をなくすことができれば、前記固体電解質のプロトン導電性を維持できるものと考えた。この考えの基に、酸素そのものおよび酸素を固体電解質に供給できる物質、例えば水(蒸気として)を供給したところ、カソード側に水素(一部は添加した蒸気の電気分解により発生する水素を含む)が電解により、安定に移送されて来ることが確認できた。これにより、前記本発明の課題を解決することができた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高温型プロトン導電性固体電解質からなる膜の両面に水素の酸化・プロトンの還元反応が可能な電極が取り付けられ、一方が陽極室(アノード室)を、他方が陰極室(カソード室)を構成するよう前記電極に電圧が加えられ、かつ前記高温型プロトン導電性固体電解質が充分なイオン導電性を持つように維持された電気化学セルの、アノード室に少なくとも一酸化炭素および/または二酸化炭素ならびに水素を含む混合ガスを供給し、カソード室には0.1-0.4mol/発生Hmol比の水分または水分を含むスイープガスをカソード室に供給することを特徴とする前記混合ガスから分離された水素を得る方法である。好ましくは、高温型プロトン導電性固体電解質からなる膜を700℃以上1000℃迄に維持することを特徴とする前記混合ガスから分離された水素を得る方法であり、より好ましくは、混合ガスとして生成した高温の改質ガスを用いることを特徴とする前記分離された水素を得る方法である。
【0007】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明で用いる電気化学セルの概略の構造を図1を参照しながら説明する。図1において、[A]はアノード室を構成し、この室には改質ガスなどの一酸化炭素(CO)を含む混合ガスGMIXが供給され、直流電圧D.C.が印加されたアノード電極ELおよびとカソード電極ELと高温型プロトン導電性固体電解質S.E.からなる膜とから構成される電気化学セルにより水素が分離されCO濃度が上がったガスGcoが室外に取り出される。また、[C]はカソード室を構成し、この室からは、カソード電極EL表面に移動した分離された水素ガスと該分離された水素ガスを電極表面から分離させるために供給されるスイープガスGSW中の水分が電気分解されて発生する水素ガスとが前記スイープガスGSWと共に取り出される。このような構成により、水素が分離される。
【0008】
ここで、スイープガスを用いず、水分のみを供給しても良い。
前記膜の概念には、比較的厚い数mm厚のものを含み、その形状も、板状、チューブ状(この場合筒状の電解セルとすることができる)など、要は前記原理による水素分離機能を発揮するものであればよい。
また、水素分離の原料混合ガスとしては、例えば1,CH+1/2O→CO+2Hの反応によって生じる水素と一酸化炭素の混合ガス(比は2/1)、2,CO+HO→CO+Hの反応より前記1,で生成する一酸化炭素を水蒸気と反応させることにより得られる水素と二酸化炭素の混合ガス(比は3/1)などを挙げることができる。
【0009】
B.前記電気化学セルは、高温型プロトン導電体固体電解質の両側に水素の酸化・プロトンの還元反応を行わせることのできる電極を取り付けたものである。前記電気化学セルの電極での反応は理論的には
→2H+2e(アノード) (1)
2H+2e-→H(カソード) (2)
のようになるはずであるが、前記反応が安定に維持できないので、カソード側に少量の酸素補給体、例えば水蒸気を供給し、前記固体電解質に少量の酸化物イオンによる電流を生じさせることにより、本発明の水素の分離を実現した。
【0010】
C.前記高温型プロトン導電体固体電解質としては、SrCe0.95Yb0.053-α、BaCe0.800.203-α、CaZr0.90In0.103-α(αは混合酸化物の電荷を中和する値である。)などを好ましい材料として挙げることができる。基本的にはプロトン導電性酸化物固体電解質であれば使用可能である。
D.電極構成材料としては、PtやNiなどの金属、および電子導電性酸化物を使用できる。
【0011】
【実施例】
実施例1
プロトン導電性電解質SrCe0.95Yb0.053-αを直径13mm、厚さ0.5mmのディスク状に加工したものに多孔質白金電極を取り付け、アノード室、およびカソード室を構成する磁製の部材で、気密にはさみ付けて電気化学セルを構成した。アノード室には水素と一酸化炭素の2:1の混合ガスを希釈ガスArで希釈したガスを導入し直流を通電して、他方の電極室で発生する水素の量をガスクロマトグラフ(島津製作所社製GC-8A)で調べた。本実験にはスイープガスGSWとして湿潤アルゴンを用い、カソード室へ水蒸気を導入することにより比較的高い電流密度まで高い電流効率が得られた。900℃において実験を行った結果、通電とともにカソード室において水素の発生が確認され、このような方法により改質ガスからの水素分離がなされた。図2に示すように水素の発生量は、120mA/cm程度の電流密度まで電流から計算される値に一致した。これは、通電した電気量の全てがカソード室での水素発生に使われたことを示し、電流効率はほぼ1である。
【0012】
図3に示すように、アノード室出口ガスGCO中の水素および一酸化炭素の濃度の通電による変化を調べたところ、一酸化炭素の濃度は電流に対してほとんど変化せず、一方、水素は単調に減っており、水素が分離されたことを示す。
ここでは、水素の減少量は小さいが、電極面積、電流を大きくすれば、水素の分離効率を上げることができることは明らかである。
【0013】
比較例
ここでは、スイープガスGSWとして水蒸気を添加しないアルゴンを用い、カソード室での水素の発生速度と電流値の関連を調べたところ、水素発生速度は電流密度25mA/cmで飽和し水素の分離が電流量に比例していないことが分かる(図4)。また、アノード室での水素の減少率を測定した結果を図5に示す。図3と対比すると電解セルによる水素分離の性能が明らかに悪いことが理解される。
【0014】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の方法によってCOを含まない水素を得ることができ、改質ガスの製造と組み合わせることにより、純度の高い水素の製造ができる装置を設計できる、水素の分離技術を提供できるという、優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の水素分離装置の一例
【図2】 本発明の方法による電流密度と水素発生速度
【図3】 本発明の方法による水素分離効率
【図4】 非湿潤スイープガスを用いた比較例(カソード室)
【図5】 非湿潤スイープガスを用いた比較例(アノード室)
【符号の説明】
〔A〕 アノード室 〔C〕 カソード室 EL アノード電極
EL カソード電極 S.E 高温型プロトン導電性電解質
MIX 混合ガス GCO カソード室排出ガス GSW スイープガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4