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明細書 :X線回折装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-015468 (P2017-015468A)
公開日 平成29年1月19日(2017.1.19)
発明の名称または考案の名称 X線回折装置
国際特許分類 G01N  23/207       (2006.01)
FI G01N 23/207
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2015-130466 (P2015-130466)
出願日 平成27年6月29日(2015.6.29)
発明者または考案者 【氏名】佐々木 敏彦
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 2G001
Fターム 2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001DA09
2G001GA01
2G001JA01
要約 【課題】回折X線により発生する回折環の均一化に有効なX線回折装置の提供を目的とする。
【解決手段】 測定対象物にX線を照射して当該測定対象物で回折した回折X線により発生する回折環の画像を撮像するためのX線回折装置であって、前記X線照射部と、回折環画像の撮像部とが支持された支持部を備え、前記支持部は、移動制御手段を有し、前記X線の照射点を所定の範囲移動させつつ、前記回折環画像を累積的に撮像可能になっていることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象物にX線を照射して当該測定対象物で回折した回折X線により発生する回折環の画像を撮像するためのX線回折装置であって、
前記X線照射部と、回折環画像の撮像部とが支持された支持部を備え、
前記支持部は、移動制御手段を有し、前記X線の照射点を所定の範囲移動させつつ、前記回折環画像を累積的に撮像可能になっていることを特徴とするX線回折装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記測定対象物のX線照射面の曲率及び凹凸形状等による変位を補正するためのレーザー変位計等の補正制御手段を有することを特徴とする請求項1記載のX線回折装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射して得られる回折X線による回折環の画像を撮像するためのX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに提案されているX線回折装置としては、特許文献1に試料を揺動させる技術を開示し、特許文献2にX線管とX線検出器とを二軸揺動させる技術を開示する。
しかし、特許文献1の方法では試料の大きさが小さい場合に限られ、特許文献2による方法はsinΨ法を前提にしており、制御機構が複雑になり実用的ではない。
なお、本出願に係る発明者は他の発明者と共同して鉄道用レールを測定対象としたX線回折装置をこれまでに特許文献3として提案しているが、本発明は回折環の撮像精度の向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2013-88113号公報
【特許文献2】特公平6-54265号公報
【特許文献3】特開2005-241308号(特許第4276106号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回折X線により発生する回折環の均一化に有効なX線回折装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、測定対象物にX線を照射して当該測定対象物で回折した回折X線により発生する回折環の画像を撮像するためのX線回折装置であって、前記X線照射部と、回折環画像の撮像部とが支持された支持部を備え、前記支持部は、移動制御手段を有し、前記X線の照射点を所定の範囲移動させつつ、前記回折環画像を累積的に撮像可能になっていることを特徴とする。
【0006】
ここで回折環とは、図1(a)に模式図を示すように測定対象物の測定面に向けてX線照射部からX線を照射すると、測定対象物の表面付近の結晶内に存在する結晶格子で、Braggの法則に基づいて回折された回折X線によりデバイ環(デバイーシェラー環)と称される二次元的な回折環が現れる。
この回折環を後述するイメージングプレートを用いたIPカメラやCCDセンサー,CMOSセンサー,SOI検出器等のX線撮像装置にて撮像する。
従来は1ポイントの照射点から得られる回折環を撮像していたが、得られる回折環のリング画像データが不均一になる場合もあった。
そこで詳細は後述するが、本発明は図1(b)に示すようにX線照射部と撮像部とを備えた支持部を移動制御部でX軸方向及びY軸方向に移動制御可能にしたものである。
なお、Z軸方向にも移動制御可能にしてもよい。
この際にX線の照射点の位置以外の光学系条件は一定に保ったまま、この照射点を移動させることで回折X線を累積的に蓄積、均一の回折環が得られる。
【0007】
また、本発明において、支持部は、前記測定対象物のX線照射面の曲率及び凹凸形状等による変位を補正するためのレーザー変位計等の補正制御手段を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るX線回折装置は、X線の照射点以外の光学系条件を一定に保ったまま、このX線の照射点を測定面の所定の面積範囲を移動させつつ、回折X線を蓄積させ撮像したので回折環が均一になり、材料特性の測定精度が向上する。
本発明に係るX線回折装置は、構造及び測定システムがシンプルであり実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は回折環の説明図、(b)は本発明に係るX線回折装置の移動制御部を示す。
【図2】cosα法の説明図を示す。
【図3】X線の照射位置の移動量の違いによる回折環画像の変化を示す。
【図4】(a)は、溶接した実験サンプルの外観、(b)は応力測定部位を示す。
【図5】cosα法による計測条件を示す。
【図6】cosα法におけるX線照射面積と得られた測定応力値を示す。
【図7】図6に示した測定応力値の信頼限界値を示す。
【図8】X線照射面積とcosα線図との関係を示す。
【図9】X線照射面積とその際のcosα線図の相関係数の変化を示す。
【図10】X線照射面積とその際のcosα線図の直線近似式の傾きと切片の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るX線回折装置の信頼度をcosα法によるオーステナイト系材料の応力測定にて検証したので以下に説明する。
X線回折装置の測定部の構造を図1に模式的に示す。
支持部11には内部構造を省略したが、図1(a)に入射X線と表現したX線照射部と測定対象物の表面にて回折された回折X線を蓄積及び撮像するための撮像部としてX線撮像装置を配置した。
X線撮像装置には、イメージングプレート,CCDセンサー,CMOSセンサー,SOI検出器等を用いることができる。
このようなX線撮像装置のうち、イメージングプレートはX線を一旦蓄積した後に光による励起によって蛍光を発生する光輝尽性発光現象を利用して回折環の全体画像を撮像する記録媒体である。
ここで、光輝尽性発光(Photo-Stimulated Luminescence(PSL))とは、蛍光体に放射線などの第1の刺激を与えた後に、第2の刺激を励起光としてこの蛍光体に照射すると、第2の光よりも波長が短く、かつ、最初の刺激に対応した第3の光を発生する発光現象である。

【0011】
図1(b)に示した移動制御部12は、例えばロボットのアームハンドに取り付けられ図示を省略したPC等にて移動制御されている。
移動制御部12には、X軸方向に移動制御されたX軸移動ステージ12aとY軸方向に移動制御されたY軸移動ステージ12bとを有し、これら介して支持部11が取り付けられている。
なお、必要により測定面の曲率や凹凸変位等を補正するためのレーザー変位計等を介してZ軸方向も制御されていてもよい。

【0012】
次に応力の測定手順を説明するが、その前にcosα法について説明する。
実用材料の多くは、微細な結晶粒の集合体であり、X線を照射すると次式のBraggの条件に従って回折ビームを発生させる。
【数1】
JP2017015468A_000003t.gif
dは格子面間隔,θはBragg角,λはX線の波長,nは回折次数(以下,n=1を用いる)である。
入射X線と垂直に二次元検出器を置くと、図2に示すようにほぼ円形の回折環が測定される。
二次元検出器方式では、図2のように最初に回折環半径Rを求め次式からθを得る。(単位:rad)
【数2】
JP2017015468A_000004t.gif
はX線照射点と検出器との距離である。
格子面の法線方向の縦ひずみεとθの関係は次のようになる。
【数3】
JP2017015468A_000005t.gif
Δdはdの変化量(=d-d,dは無ひずみ時のd)、θは無ひずみ時のθである。
次に、回折環の中心角がαの位置の場合に対して、式(3)から得られるひずみをεαと書くとεαは試料座標系(S系)のひずみに対して次式の関係を持つ。
【数4】
JP2017015468A_000006t.gif
ijはS系から実験座標系(L系)への変換マトリクスであり、必要な成分のみを示すと次のようになる。
【数5】
JP2017015468A_000007t.gif
ηはθの補角(=π/2-θ)、ψは入射ビームとS軸(z軸)のなす角、φは入射ビームのS面(xy面)への投影とS軸とのなす角である。
材料を等方弾性体として次の応力ひずみの関係(S系)を適用する。
【数6】
JP2017015468A_000008t.gif
δijはクロネッカーのデルタである。
式(6)のsとsは回折弾性定数を表し、ヤング率(E)とポアソン比(ν)により次式で与えられる。
【数7】
JP2017015468A_000009t.gif
(Eおよびνはいずれも回折用の値)
試料のX線照射点に試料座標系の原点を設定し、応力成分を以下のように表記する。
【数8】
JP2017015468A_000010t.gif
回折環の中心角がαの位置に対して、式(3)を用いて得られるひずみεαと式(8)の応力との関係は、式(4)~(8)より次のようになる。
【数9】
JP2017015468A_000011t.gif
式(9)はcosα法の基礎式である.図2に示すように、任意のφに対する回折環においてεαおよび中心角αがπだけ異なる方向のひずみεπ+α,-α方向のひずみε-α,ε-αとπ異なる方向のひずみεπ-αについて考え、これらを用いて次のようなaを求める。
【数10】
JP2017015468A_000012t.gif
式(10)に式(9)を代入すると、φ=0のとき次式が得られる。
【数11】
JP2017015468A_000013t.gif
式(11)より、aはcosαに関して直線的であり、また直線の傾きは以下のようになる。
【数12】
JP2017015468A_000014t.gif
入射X線を試料面の法線方向からy軸方向に傾斜させた場合、式(10)は次のようになる。
【数13】
JP2017015468A_000015t.gif
以下では、次式の平面応力状態の場合について考える。
【数14】
JP2017015468A_000016t.gif
図1,2に示すような光学系を用いて回折環を二次元計測し、式(10),(11)のa(0)の関係を求める。
このとき、cosαに対する直線の傾きは、式(12)に、σ=τxz=τyz=0を代入し、次式のようになる。
【数15】
JP2017015468A_000017t.gif
右辺には応力成分σが1個含まれる。
したがって、回折データから直線の傾きを決定できれば、次式のように垂直応力σを得ることができる。(ただし、ψ≠0)
【数16】
JP2017015468A_000018t.gif
一方、入射X線を試料面法線方向からy軸方向にψだけ倒して回折環を測定すると、次式からσyを得ることができる。(ただし、ψ≠0)
【数17】
JP2017015468A_000019t.gif

【0013】
次に実験方法及びその結果を説明する。
工業部材への適用性を検証するため、平板状の溶接模擬試験体を作製した。
作製した溶接試験体の写真を図4(a)に示す。
測定部を図4(b)に示す。
図5に測定条件を示す。
X線の照射方法による回折環の画像変化を図3に示す。
回折X線を蓄積するためのX線照射面積の増加により、回折環のリング形状が均一化しているのが分かる。
図6にcosα法によるX線照射面積と測定残留応力値との関係をグラフに示す。
図7に信頼限界の変化をグラフに示す。
このグラフからX線照射面積を増すことで、測定値の精度が向上することが分かる。
具体的にはポイント測定においては応力値が10MPa程度低い値を示し、信頼限界値も大きくなっている。
これに対してX線照射面積が20mmで急激に信頼限界値が小さくなり測定精度が向上する。
なお、X線照射面積は測定材料及びその結晶粒の大きさに応じて選定するのがよい。

【0014】
次にcosα線図の直線性について検証した。
X線照射面積によるcosα線図の変化を図8に示す。
X線照射面積の増加に伴って、cosα線図の直線性が良好になることが分かる。
この点を定量的に確認するため、cosα線図の相関係数(R)とX線照射面積の関係を図9に示す。
相関係数は、X線照射面積が4mm以下で低下し、その後は漸増することが分かる。
図10は、図8の各X線照射面積に対する測定結果らえられたcosα線図の傾きと切片の関係を示す。
X線照射面積が20mm以上でほぼ安定することが分かる。
【符号の説明】
【0015】
11 支持部
12 移動制御部
12a X軸移動ステージ
12b Y軸移動ステージ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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