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明細書 :スパークプラズマ焼結方法、歯冠材の製造方法、スパークプラズマ焼結装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月15日(2017.6.15)
発明の名称または考案の名称 スパークプラズマ焼結方法、歯冠材の製造方法、スパークプラズマ焼結装置
国際特許分類 C04B  35/645       (2006.01)
C04B  35/488       (2006.01)
A61C   5/73        (2017.01)
A61C   5/77        (2017.01)
FI C04B 35/645
C04B 35/488
A61C 5/09
A61C 5/10
国際予備審査の請求
全頁数 16
出願番号 特願2016-546376 (P2016-546376)
国際出願番号 PCT/JP2015/070606
国際公開番号 WO2016/035461
国際出願日 平成27年7月17日(2015.7.17)
国際公開日 平成28年3月10日(2016.3.10)
優先権出願番号 2014179361
優先日 平成26年9月3日(2014.9.3)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】塚田 岳司
【氏名】末吉 秀一
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4C159
Fターム 4C159RR15
4C159RR19
4C159SS01
4C159TT02
要約 スパークプラズマ焼結装置には、黒鉛製の焼結ダイ(4)と、焼結ダイ(4)中に酸化性ガスを供給するパイプ(5)等と、焼結ダイ(4)中に充填された粉末原料(1)に荷重をかける加圧手段と、焼結ダイ(4)中に充填された粉末原料(1)に電流を流す通電手段と、が含まれる。
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化物系セラミックスを含む粉末原料を黒鉛ダイ中の原料充填部に充填する工程と、
前記粉末原料を挟む第1のパンチ及び第2のパンチにより前記粉末原料に荷重をかけるとともに、前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流すことによりプラズマを発生させて前記粉末原料を焼結する工程と、
を有し、
前記粉末原料を焼結する工程は、前記原料充填部に外部から酸化性ガスを供給し、前記粉末原料の還元を抑制することを特徴とするスパークプラズマ焼結方法。
【請求項2】
酸化物系セラミックスを含む粉末原料を黒鉛ダイ中の原料充填部に充填する工程と、
前記粉末原料を挟む第1のパンチ及び第2のパンチにより前記粉末原料に荷重をかけるとともに、前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流すことによりプラズマを発生させて前記粉末原料を焼結する工程と、
を有し、
前記粉末原料を焼結する工程は、前記原料充填部に外部から酸化性ガスを供給し、前記粉末原料の還元を抑制することを特徴とする歯冠材の製造方法。
【請求項3】
前記歯冠材は50体積%~99体積%のジルコニア及び1体積%~50体積%の陶材の複合材料からなり、
前記複合材料は、前記歯冠材が接着される支台側から反対側に向けて、段階的又は連続的に前記陶材の比率が高くなる傾斜機能材料であることを特徴とする請求項2に記載の歯冠材の製造方法。
【請求項4】
前記傾斜機能材料は、前記陶材の比率が異なる複数の層からなり、
前記複数の層のそれぞれの厚さが同一であるか、又は段階的に変化していることを特徴とする請求項3に記載の歯冠材の製造方法。
【請求項5】
前記酸化性ガスとして、空気、酸素ガス、オゾン若しくは過酸化水素ガス又はこれらの任意の組み合わせを用いることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の歯冠材の製造方法。
【請求項6】
黒鉛ダイと、
前記黒鉛ダイ中の原料充填部に酸化性ガスを外部から供給する酸化性ガス供給手段と、
第1のパンチ及び第2のパンチにより前記黒鉛ダイ中に充填された粉末原料に荷重をかける加圧手段と、
前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流す通電手段と、
を有することを特徴とするスパークプラズマ焼結装置。
【請求項7】
前記酸化性ガスの供給は、前記黒鉛ダイ、前記第1のパンチ若しくは前記第2のパンチ又はこれらの任意の組み合わせを貫通する第1の通気孔を介して行われることを特徴とする請求項6に記載のスパークプラズマ焼結装置。
【請求項8】
前記第1の通気孔は少なくとも前記第2のパンチに形成されており、
前記酸化性ガスの供給は、複数の第2の通気孔を有し、前記第2のパンチ中の前記第1の通気孔の開口部と前記原料充填部との間に配置されたスペーサを介して行われることを特徴とする請求項7に記載のスパークプラズマ焼結装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークプラズマ焼結方法、歯冠材の製造方法、スパークプラズマ焼結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラズマ焼結法では、ダイとして一般に黒鉛ダイが用いられる。粉末を黒鉛ダイに充填した後、上下の黒鉛パンチに80MPa以下の荷重をかけながらパルス状の大電流を通電し、黒鉛ダイ及びパンチを所定温度に加熱する。このようにして粉末の焼結が行われる。パルス通電によって粉末間にプラズマが発生し、ジュール熱との相乗効果により、それまでの焼結方法と比べて低温、短時間での焼結が可能になる。
【0003】
しかしながら、焼結体の色が物質本来の色とは異なってしまうことがある。例えば、酸化物であるジルコニア及び陶材の複合材料をスパークプラズマ焼結法で製造する方法が特許文献1に記載されているが、焼結体の色は物質本来の色である白色ではなく灰色がかってしまっている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2014/034736号
【特許文献2】特開2012-92359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、焼結体の色が物質本来の色から変化することを抑制することができるスパークプラズマ焼結方法、歯冠材の製造方法、スパークプラズマ焼結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスパークプラズマ焼結方法は、酸化物系セラミックスを含む粉末原料を黒鉛ダイ中の原料充填部に充填する工程と、前記粉末原料を挟む第1のパンチ及び第2のパンチにより前記粉末原料に荷重をかけるとともに、前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流すことによりプラズマを発生させて前記粉末原料を焼結する工程と、を有し、前記粉末原料を焼結する工程は、前記原料充填部に外部から酸化性ガスを供給し、前記粉末原料の還元を抑制することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る歯冠材の製造方法は、酸化物系セラミックスを含む粉末原料を黒鉛ダイ中の原料充填部に充填する工程と、前記粉末原料を挟む第1のパンチ及び第2のパンチにより前記粉末原料に荷重をかけるとともに、前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流すことによりプラズマを発生させて前記粉末原料を焼結する工程と、を有し、前記粉末原料を焼結する工程は、前記原料充填部に外部から酸化性ガスを供給し、前記粉末原料の還元を抑制することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るスパークプラズマ焼結装置は、黒鉛ダイと、前記黒鉛ダイ中の原料充填部に酸化性ガスを外部から供給する酸化性ガス供給手段と、第1のパンチ及び第2のパンチにより前記黒鉛ダイ中に充填された粉末原料に荷重をかける加圧手段と、前記第1のパンチと前記第2のパンチとの間にパルス状の電流を流す通電手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、焼結中に酸化性ガスを供給して歯冠材等の焼結体の変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置の概要を示す図である。
【図2】図2は、図1中の一部を拡大して示す図である。
【図3】図3は、色彩の評価結果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置の一部を拡大して示す図である。
【図5A】図5Aは、歯冠材の製造方法を示す図である。
【図5B】図5Bは、図5Aに引き続き、歯冠材の製造方法を示す図である。
【図5C】図5Cは、図5Bに引き続き、歯冠材の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明者らは、従来のスパークプラズマ焼結方法において焼結体の色が変化する原因を解明すべく鋭意検討を行った。この結果、ダイ中に残存している微量の酸素と黒鉛ダイの成分である炭素とが反応してCOガスが生成されるため、粉末原料が酸化物系セラミックス等の還元されやすい物質を含む場合には、粉末原料が還元されて焼結体に酸素欠陥が形成されていることが明らかになった。酸素欠陥によって変色した場合、酸化雰囲気中で再加熱して色を本来の色に戻すことも可能であるが、そのための時間及びコストがかかる。また、再加熱により機械的性質の変化等が生じることもある。本願発明者らは、このような知見に基づいて、焼結中の還元を抑制すべく下記の諸態様に想到した。

【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。

【0013】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置の概要を示す図であり、図2は、図1中の一部を拡大して示す図である。

【0014】
第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置100には、図1及び図2に示すように、真空冷却チャンバ11、並びに真空冷却チャンバ11内の上部パンチ2、下部パンチ3、焼結ダイ4及びスペーサ6が含まれる。焼結ダイ4に形成された貫通孔内に下から順に下部パンチ3、スペーサ6及び上部パンチ2が配置され、スペーサ6と上部パンチ2との間に粉末原料1が充填される。第1の実施形態では、下部パンチ3の上端部に凹部8が形成され、この凹部8の底から下方に延び、底面の手前で側方に曲がって外面まで延びる通気孔9が形成されており、この通気孔9にパイプ5が繋がっている。パイプ5の他端は真空冷却チャンバ11の外側に位置する。スペーサ6には、下部パンチ3の凹部8内の空間を粉末原料1が充填される空間に連通する複数の通気孔7が形成されている。上部パンチ2、下部パンチ3、焼結ダイ4及びスペーサ6は黒鉛製である。上部パンチ2は第1のパンチの一例であり、下部パンチ3は第2のパンチの一例である。通気孔9は第1の通気孔の一例であり、通気孔7は第2の通気孔の一例である。

【0015】
スパークプラズマ焼結装置100には、上部パンチ2に接続された上部パンチ電極12、及び下部パンチ3に接続された下部パンチ電極13が含まれている。更に、上部パンチ電極12及び下部パンチ電極13間に圧力を印加する加圧機構22、並びに上部パンチ電極12及び下部パンチ電極13間に電圧を印加する電源23が含まれている。加圧機構22及び電源23は制御装置21により制御される。制御装置21には位置計測機構24、雰囲気制御機構25、水冷却機構26及び温度計測装置27も接続されている。

【0016】
次に、スパークプラズマ焼結装置100を用いたスパークプラズマ焼結方法について説明する。このスパークプラズマ焼結方法は、焼結体の製造方法でもある。

【0017】
先ず、スペーサ6と上部パンチ2との間の原料充填部に粉末原料1を充填する。粉末原料1としては酸化物系セラミックスの粉末、例えばジルコニア(ZrO)及び陶材の混合粉末を用いる。次いで、真空冷却チャンバ11内の真空引きを行い、パイプ5、通気孔9、凹部8及び通気孔7を通じて粉末原料1に酸化性ガスを焼結ダイ4の中に供給する。酸化性ガスとしては、例えば、空気、酸素ガス、オゾン若しくは過酸化水素ガス又はこれらの任意の組み合わせを用いることができる。酸化性ガスとして空気を用いる場合は、パイプ5の一端を真空冷却チャンバ11外の大気中に位置させて真空引きを行えば、真空冷却チャンバ11内外の気圧差により自然に空気が焼結ダイ4の中に供給される。そして、加圧機構22により、上部パンチ電極12及び下部パンチ電極13を介して上部パンチ2及び下部パンチ3間に圧力を印加しながら、上部パンチ電極12及び下部パンチ電極13を介して上部パンチ2及び下部パンチ3間にパルス状の電流を通電する。例えば、粉末に作用する圧力を80MPa以下とし、通電による発熱で粉末の温度を1100℃以上とする。パルス状の電流の通電によって粉末間にプラズマが発生し、ジュール熱との相乗効果により、低温、短時間での焼結が行われる。なお、酸化性ガスのうち焼結ダイ4中で反応しなかったものや反応で生成したガスは焼結ダイ4と上部パンチ2や下部パンチ3との間の隙間を介して真空冷却チャンバ11内に排出される。

【0018】
第1の実施形態によれば、焼結ダイ4中に存在している酸素と焼結ダイ4の成分である炭素との反応で還元能のないCOガスが主に生成され、還元能のあるCOガスは発生したとしても微量であり、還元が抑制される。また、酸化性ガスが焼結ダイ4中に連続的に供給されているため、粉末原料1が還元されても、還元で生じる酸素欠損が酸化性ガスにより回復する。従って、還元に伴う変色を抑制することができる。このため、変色を戻すための再加熱を行う必要がなく、再加熱のための時間及びコストを削減し、再加熱に伴う機械的性質の変化等を回避することができる。還元度及び酸化度の調整は、例えば供給する酸化性ガスの種類の選択及び流量等により行うことができる。

【0019】
なお、第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置100は、スペーサ6を原料充填部の下方に配置し、粉末原料1の下方から酸化性ガスが供給されるように構成されているが、粉末原料1の上方から酸化性ガスが供給されるように構成されていてもよい。例えば、上部パンチ2に通気孔が形成され、粉末原料1と上部パンチ2との間にスペーサ6が配置されてもよい。更に、粉末原料1の上方及び下方の双方から酸化性ガスが供給されるように構成されていてもよい。また、粉末原料1の上方及び/又は下方から酸化性ガスが供給されるのではなく、粉末原料1の側方から酸化性ガスが供給されるように構成されていてもよい。例えば、焼結ダイ4に酸化性ガスが通流する通気孔が形成されていてもよい。側方からの供給に、上方及び/又は下方からの供給が組み合わされてもよい。

【0020】
次に、本願発明者が行った実験について説明する。この実験では、実施例として、第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置100を用いて焼結体を製造した。この際に、焼結温度を1350℃、焼結時間を4分間、加圧力を10MPaとした。また、パイプ5の端部を真空冷却チャンバ11の外側に位置させた。そして、真空冷却チャンバ11内を真空引きすることにより、気圧差を用いて、パイプ5、通気孔9、凹部8及び通気孔7を通じて粉末原料1に酸化性ガスとして空気を焼結ダイ4の中に供給した。粉末原料1としては、70体積%のジルコニア及び30体積%の陶材の混合粉末を用いた。

【0021】
また、種々の参考例の実験も行った。第1の参考例では、ポーセレンブロック(ポーセレンの焼結体)を用い、第2の参考例では、ジルコニアブロック(ジルコニアの焼結体)を用いた。ポーセレンブロックとしては、株式会社アドバンス製のA3を用いた。A3は、世界で最も広く使用されているビタ社のシェードガイドの分類の中で、最も一般的に使用されている歯冠色である。ジルコニアブロックとしては、空気中で常圧焼結された東ソー株式会社製のジルコニアを用いた。第3の参考例では、70体積%のジルコニア及び30体積%の陶材の混合粉末を用い、パイプ5等を介しての空気の供給を行わずに焼結を行った。つまり、第3の参考例は従来の方法に相当する。

【0022】
実施例及び各参考例の評価は、L*a*b*表色系に基づく色彩により行った。L*は明度、a*は赤色度、b*は黄色度を示す。この結果を図3に示す。ここで、ポーセレンブロック及びジルコニアブロックは還元されていないため、それぞれ物質本来の色を示す。従って、70体積%のジルコニア及び30体積%の陶材の焼結体(複合材料)の本来の色は、第1の参考例の色と第2の参考例の色との間にある。第3の参考例の明度L*はポーセレンブロック(第1の参考例)の明度L*より低いが、実施例の明度L*はポーセレンブロックの明度L*より高かった。赤色度a*に関しては、各試料間で有意な差はみられなかった。黄色度b*に関しては、ポーセレンブロック(第1の参考例)のみ高い値を示した。これは、天然歯冠色の色を再現しているため、黄色系の色調が現れていることが原因であると考えられる。なお、実施例では真空冷却チャンバ11内の真空度が30Paであり、第3の参考例では真空冷却チャンバ11内の真空度が10Paであった。

【0023】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置は、例えば歯冠材の製造に使用される。第2の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置では、上部パンチ、下部パンチ及びスペーサの構造が第1の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置100のそれらと相違している。図4は、本発明の第2の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置の一部を拡大して示す図である。

【0024】
第2の実施形態に係るスパークプラズマ焼結装置200では、図4に示すように、下部パンチ33の上端部の中央に凹部38が形成され、この凹部38の底から下方に延び、底面の手前で側方に曲がって外面まで延びる通気孔39が形成されている。この通気孔39にパイプ5が繋がる。スペーサ36には、下部パンチ33の凹部38内の空間を粉末原料31が充填される空間に連通する複数の通気孔37が形成されている。スペーサ36の上面は、製造される歯冠材の外面に倣う形状を有する。上部パンチ32には、粉末原料31を押圧する凸部30が設けられている。上部パンチ32、下部パンチ33及びスペーサ36は黒鉛製である。上部パンチ32は第1のパンチの一例であり、下部パンチ33は第2のパンチの一例である。他の構成は第1の実施形態と同様である。

【0025】
スパークプラズマ焼結装置200を用いて歯冠材を製造する場合、粉末原料31として歯冠材の原料を用いる。歯冠材の組成は特に限定されないが、例えばジルコニア及び陶材の複合材料からなる。この場合、粉末原料31としてジルコニア及び陶材の混合粉末を用いる。

【0026】
ジルコニア(ZrO)の粉末の平均粒径は10nm~500μmであることが好ましい。実現が容易である最小の平均粒径は10nmであると考えられる。一方、平均粒径が500μm超であると、焼結温度を著しく高くする必要がある。焼結温度が高いほど、焼結体が灰色がかる。Al等の焼結助剤を添加することにより焼結温度を低くすることが可能であるが、この場合も、白色の焼結体が得られない。従って、ジルコニアの粉末の平均粒径は10nm~500μmであることが好ましい。審美性の観点から、灰色がかった焼結体は歯冠材のコアに用い、陶材により被覆することが好ましい。

【0027】
焼結助剤を用いずに低温での焼結を可能にするため、ジルコニアの平均粒径は10nm~90nmであることがより好ましく、10nm~40nmであることが更に好ましい。例えば、平均粒径が90nmのジルコニア粉末を用いる場合は、焼結温度を1450℃より高くする必要がある。1450℃超で焼結を行うと焼結体が灰色がかるため、この焼結体は歯冠材のコアに用い、陶材により被覆することが好ましい。例えば、平均粒径が40nmのジルコニア粉末を用いる場合は、比較的低い温度、例えば1300℃~1350℃での焼結が可能である。1300℃~1350℃で焼結を行うと焼結体が白色又はそれに近い色となるため、歯冠材のコアに用いてもよく、歯冠材の全体に用いてもよい。

【0028】
ジルコニアとしては、純粋なZrOのみならず、Al、Y等の焼結助剤として用いられている物質が少量含まれているものを用いてもよい。

【0029】
陶材としては、長石系陶材、マイカ系陶材、アルミナ系陶材及びスピネル系陶材が挙げられる。陶材として、これらの任意の組み合わせを用いてもよい。例えば、長石系陶材としては、長石を主成分とし、石英、カオリン、顔料及びフラックス等が添加されたものを用いることができる。

【0030】
陶材は焼成温度によって低溶陶材と高溶陶材とに分けられ、さらに細かく分類すると、超低溶陶材(850℃以下)、低溶陶材(850℃~1100℃)、中溶陶材(1100℃~1300℃)、高溶陶材(1300℃以上)の4種類に分けられる。例えば、低溶陶材(例えば、株式会社松風の「ヴィンテージハロー」)の焼成温度は900℃~950℃と低く、1300℃を超える温度では粘度の低い液体となるので、1300℃~1350℃での焼結には適さない。一方、高溶陶材(例えば、株式会社松風の「SI-HF10901」)の焼成温度は1290℃と高く、ジルコニア粉末の焼結温度と近いため、1300℃~1350℃での焼結に適している。

【0031】
陶材の平均粒径が大きいほど、複合材料の曲げ強さが低くなるが、陶材の平均粒径を小さくするためには、遊星型ボールミルによる粉砕時間が長くなるため、多くの処理時間を要する。従って、曲げ強さ及び処理時間を考慮して、陶材の平均粒径は、ZrOと同様に、10nm~500μmであることが好ましい。焼結温度の低下、複合材料の高強度化及びコストの観点から、陶材の平均粒径は10nm~20μmであることがより好ましく、10nm~1μmであることが更に好ましい。

【0032】
複合材料中のZrOの割合が高いほど、高い曲げ強さが得られる。従って、歯冠材は50体積%~99体積%のZrO及び1体積%~50体積%の陶材の複合材料からなることが好ましい。ZrO及び陶材の特徴をバランスよく得るためには、ZrOの割合は55体積%~99体積%であることがより好ましく、60体積%~99体積%であることが更に好ましく、70体積%~99体積%であることがより一層好ましい。

【0033】
複合材料は、歯冠材が接着される支台側から反対側に向けて、段階的又は連続的に陶材の比率が高くなる傾斜機能材料であることが望ましい。例えば、陶材の比率が3段階で変化する傾斜機能材料からなる歯冠材は、図5A~図5Cに示すように、組成が相違する粉末原料31a~31c、及び形状が相違する凸部30a~30cが設けられた上部パンチ32a~32cを用いて製造することができる。例えば、粉末原料31aの組成は100体積%ZrOとし、粉末原料31bの組成は90体積%ZrO-10体積%陶材とし、粉末原料31cの組成は80体積%ZrO-20体積%陶材とする。粉末原料31aの焼結、粉末原料31bの焼結及び粉末原料31cの焼結を順次行うことで、支台側から反対側に向けて、段階的に陶材の比率が3段階で高くなる傾斜機能材料からなる歯冠材が得られる。歯冠材内での曲げ強さ等の特性の急激な変化を避けるため、傾斜機能材料における組成の変化はできるだけ連続的であることが望ましい。このため、特性面からは、傾斜機能材料に含まれる層の数が多く、隣り合う層の間での組成の変化が小さいことが望ましい。各層の厚さは同一であってもよく、段階的に変化していてもよい。

【0034】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、歯科治療に用いられる歯冠材等に関連する産業に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図5C】
6