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明細書 :トルコギキョウの新品種作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6153213号 (P6153213)
登録日 平成29年6月9日(2017.6.9)
発行日 平成29年6月28日(2017.6.28)
発明の名称または考案の名称 トルコギキョウの新品種作出方法
国際特許分類 A01H   1/02        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
FI A01H 1/02 Z
A01H 5/00 Z
請求項の数または発明の数 11
全頁数 56
出願番号 特願2016-552364 (P2016-552364)
出願日 平成27年10月2日(2015.10.2)
国際出願番号 PCT/JP2015/078700
国際公開番号 WO2016/052760
国際公開日 平成28年4月7日(2016.4.7)
優先権出願番号 2014204695
優先日 平成26年10月3日(2014.10.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年3月27日(2017.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 文雄
【氏名】清水 圭一
【氏名】▲高▼取 由佳
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 国際公開第2004/103065(WO,A1)
国際公開第2010/143749(WO,A1)
国際公開第2009/119914(WO,A1)
HASHIMOTO, F., et al.,Multiple Allelism in Flavonoid Hydroxylation in Eustoma grandiflorum (Raf.) Shinn. Flowers,園芸学会雑誌,2004年,Vol.73, No.3,p.235-240
調査した分野 A01H 1/00
A01H 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いるトルコギキョウの新品種作出方法であって、該遺伝子型が、
(a) フラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化を制御し、トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の合成に関与する複対立遺伝子の遺伝子型HXHX(ここで、HXは、HT、HF、HD、HZ、HO、またはHEで表わされる複対立遺伝子を示す。);
(b) トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の遺伝子型Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp;および
(c) 有色花/白色花の遺伝子型Ans/ans;
からなるAns/ans・HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpである、上記方法。
【請求項2】
前記遺伝子型が、さらに下記の遺伝子型:
(d) 黄色花および白色花の組み合わせを決定する遺伝子型YXYX(ここで、YXはYC、YS、YWで示される複対立遺伝子であって、YCYCは黄色花のホモ型、YCYS(またはYSYC)は黄色花のヘテロ型、YCYW(またはYWYC)は黄色花のヘテロ型、YWYWは白色花のホモ型を示す。);
(e) 八重型、二重型、および一重型の組み合わせを決定する遺伝子型DXDX
(ここで、DXはDD、DS、DWで示される複対立遺伝子であって、DDDDは八重花のホモ型、DDDS(またはDSDD)は八重花のヘテロ型、DSDSは一重花のホモ型、DDDW(またはDWDD)は二重花のヘテロ型、DWDS(またはDSDW)は一重花のヘテロ型、DWDWは一重花のホモ型(野生型)を示す。);
(f) 覆輪花/全色花の遺伝子型E/e;および
(g) 全色花/かすり花の遺伝子型B/b;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子型が、B/b・Ans/ans・HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・YXYXである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子型が、DXDX・E/e・B/b・Ans/ans・HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・YXYXである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子型Ans/ans・HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpが下記経路式で表される反応系に関与し、遺伝するものである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【化1】
JP0006153213B2_000018t.gif
(ここで、HT、HF、HD、HZ、HO、HEは、フラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化を制御する複対立遺伝子型を示す。HT、HF、HD、HZ、HO、HEの6つの複対立遺伝子は、それぞれフラボノイド3’-ヒドロキシラーゼとフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼによるB環の3’,4’位の水酸化、4’位の水酸化、3’,4’,5’位の水酸化、3’,4’,5’位の水酸化、3’,4’位と3’,4’,5’位の水酸化、および3’,4’,5’位の水酸化を制御する。Pg/pg、Cy/cyおよびDp/dpは、Pgn、Cyn、Dpnの生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)の発現に対立する遺伝子座がそれぞれに存在することを示す。Ans/ansは、Pgn、Cyn、Dpnの生合成に関与するアントシアニジンシンターゼ(ANS)の発現に対立する遺伝子座が存在することを示す。)
【請求項6】
トルコギキョウのF1品種、またはF1品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統を作出するための、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とする下記の早見表Aまたは早見表Bに基づいて複対立遺伝子の組み合わせを決定し、目的とする花色のトルコギキョウを作出する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【表1】
JP0006153213B2_000019t.gif

【請求項8】
花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とする下記の早見表C~Fのいずれか1種以上の表に基づいて複対立遺伝子の組み合わせを決定し、目的とする花色および/または花形のトルコギキョウを作出する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【表2】
JP0006153213B2_000020t.gif
JP0006153213B2_000021t.gifJP0006153213B2_000022t.gifJP0006153213B2_000023t.gif
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の方法によって作出されたトルコギキョウのF1品種、または当該F1品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統。
【請求項10】
トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を有する、トルコギキョウのF1品種、または当該F1品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統であって、該遺伝子型が、
(a) フラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化を制御し、トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の合成に関与する複対立遺伝子の遺伝子型HXHX(ここで、HXは、HT、HF、HD、HZ、HO、またはHEで表わされる複対立遺伝子を示す。);
(b) トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の遺伝子型Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp;および
(c) 有色花/白色花の遺伝子型Ans/ans;
からなるAns/ans・HXHX・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpである、上記トルコギキョウのF1品種、または当該F1品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統。
【請求項11】
さらに下記の遺伝子型:
(d) 黄色花および白色花の組み合わせを決定する遺伝子型YXYX(ここで、YXはYC、YS、YWで示される複対立遺伝子であって、YCYCは黄色花のホモ型、YCYS(またはYSYC)は黄色花のヘテロ型、YCYW(またはYWYC)は黄色花のヘテロ型、YWYWは白色花のホモ型を示す。);
(e) 八重型、二重型、および一重型の組み合わせを決定する遺伝子型DXDX
(ここで、DXはDD、DS、DWで示される複対立遺伝子であって、DDDDは八重花のホモ型、DDDS(またはDSDD)は八重花のヘテロ型、DSDSは一重花のホモ型、DDDW(またはDWDD)は二重花のヘテロ型、DWDS(またはDSDW)は一重花のヘテロ型、DWDWは一重花のホモ型(野生型)を示す。);
(f) 覆輪花/全色花の遺伝子型E/e;および
(g) 全色花/かすり花の遺伝子型B/b;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を有する、請求項10に記載のトルコギキョウのF1品種、または当該F1品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いてトルコギキョウの新品種を作出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニン類はフラボノイド化合物の一種であり、植物の花、果実、葉などに広く分布する、赤、紫、青などの呈色に関係する色素配糖体である。アントシアニン類を塩酸で加水分解すると、糖類とアグリコン部であるアントシアニジンに分解される(非特許文献1)。また、フラボノイド化合物の一種であるフラボノール配糖体類を塩酸で加水分解すると、同様に、糖類とアグリコン部であるフラボノールに分解される(非特許文献2)。
アントシアニジン類は、植物の花において、フラバノンであるナリンゲニンを出発物質として生合成される。ナリンゲニンに、フラボノイド3’-ヒドロキシラーゼ(F3’H)またはフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼ(F3’,5’H)が作用することによってB環の3’位がヒドロキシル化されたエリオディクチオール、B環の3’位と5’位の両方がヒドロキシル化されたペンタヒドロキシフラバノンが生成される。また、ナリンゲニン、エリオディクチオール、ペンタヒドロキシフラバノンは、フラボノイド3-ヒドロキシラーゼ(F3H)の作用によりC環の3位がヒドロキシル化され、それぞれジヒドロケンフェロール、ジヒドロケルセチン、ジヒドロミリセチンが生成される。次に、これらがジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)およびアントシアニジンシンターゼ(ANS)の作用を受けて、ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)が生成される(非特許文献2)。
アントシアニジン類は、B環の水酸基が異なることでその呈色が決定される。例えば、一般にアントシアニジン類の化学構造中、B環の4’位に水酸基が1個有るものはペラルゴニジン(Pgn)でオレンジ色~朱赤色を呈し、B環の3’,4’位に水酸基が2個有るものはシアニジン(Cyn)で赤色~深紅色を呈し、B環の3’,4’,5’位に水酸基が3個有るものはデルフィニジン(Dpn)で赤紫色~紫色を呈し、これらが共存することによって様々な花色を発現する(非特許文献3)。
これまでトルコギキョウなどの花卉の花色の遺伝に着目し、その遺伝子型に基づいて、自由に花色を創出する花色育種法が検討されている。例えば、特許文献1には、トルコギキョウの主要花色色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の遺伝の分離から、ペラルゴニジン(Pgn)の生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)とロイコアントシアニジンジオキシゲナーゼ(LDOX)またはアントシアニジンシンターゼ(ANS)の酵素反応系の遺伝がPg/pgの優性/劣性の遺伝子によって制御されていること、また、色素前駆体のB環の水酸化に関与するフラボノイド3’-ヒドロキシラーゼ(F3’H)やフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼ(F3’,5’H)の遺伝の分離が、H、H、H、Hの4つの複対立遺伝子によって制御されているという新しい法則を見出したことが記載されている。そして、これらの知見に基づき、遺伝子組み換えや照射などによって突然変異を起こす方法ではなく、トルコギキョウの色素遺伝型(H・Pg/pg)を用いて新花色を作出する「トルコギキョウの花色遺伝型交配法」が確立されている。
また、特許文献2には、主要アントシアニン色素表現型PgnCynDpn、CynDpn、Dpn、PgnCyn、Cyn、Pgn、Noneに対応する色素遺伝型として、上記のH、H、H、Hの4つの複対立遺伝子にHを加えた5つの複対立遺伝子と、Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpの両方を用いた色素遺伝型(H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp)に基づいて作出したい花色を予測し、予測した花色に基づいて交配する花き植物の花粉親と種子親とを選択し、選択した花粉親と種子親を交配することによって予測した花色と合致した花色を有する花き植物を作出する方法が報告されている。また、特許文献2には、上記の色素遺伝型に加えて、八重の花冠形質(D/d)、覆輪の花冠形質(E/e)の遺伝型も用いて花き植物の花形を予測することが記載されている。
また、特許文献3には、花粉親配偶子及び種子親配偶子由来の上記5つの複対立遺伝子(H、H、H、H、H)の組み合わせを、各複対立遺伝子に対応するフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼ遺伝子のサイズに基づいて開花前の花卉組織から決定し、色素遺伝型(H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp)について花粉親配偶子及び種子親配偶子間の複対立遺伝子の組み合わせと花色との相関に基づいて開花前の花卉の花色を予測する方法が報告されている。
また、特許文献4には、アントシアニジンシンターゼ(ANS)遺伝子中の白色花関連マーカー又は有色花関連マーカーを用いて開花前に又は有色品種から白色花を生じるトルコギキョウを選別する方法が記載されている。
さらに、特許文献5には、トルコギキョウ由来のフラボノイド3’-ヒドロキシラーゼ遺伝子(EgF3’H)を新たに同定し、該遺伝子を用いてアサガオの品種‘バイオレット’を形質転換したところ、アサガオの品種‘バイオレット’には認められなかった赤色系色素のシアニジンを蓄積させることができたことから、当該遺伝子が種々の花卉類の花色を赤色に変換させることのできる機能を有した遺伝子として利用可能であることが記載されている。
このように、これまでトルコギキョウの花色や花形の遺伝様式について幾つかの知見があるが、その全容が解明されているわけではない。例えば、白色花および/または黄色花の遺伝様式については不明な点が多く、白色花と黄色花を交配すると、後代花色が白色花となる場合と黄色花になる場合との二通りがあって、白色花と黄色花を確実に遺伝させF品種を100%作出する方法がない。また、かすり花の遺伝様式については不明な点が多く、また、かすり花と白色花と黄色花の3者の関係についても全く不明である。
さらに、花形に関する八重や一重の花冠形質の遺伝様式は解明されていたが、二重の花冠形質の遺伝様式については不明な点が多く、二重花を有するトルコギキョウを確実に遺伝させF品種を100%作出する方法がない。また、トルコギキョウの覆輪花の遺伝の存在は知られていたが、二重花との関係は明らかではない。
トルコギキョウは現在年間1億本もの切り花が生産されており、この15年間1本あたり100円と安定した価格で取引されており、今後もこの傾向が続くと予想されるため、国内はもとより海外での生産の伸びと市場の安定性が期待される。よって、観賞用としてさらに魅力的かつ多様な花色や花形を有するトルコギキョウの新品種を作出することが期待される。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2004-236516号「トルコギキョウの花色遺伝型交配法」
【特許文献2】特許第4314241号「花き植物の作出方法」
【特許文献3】特許第5039967号「花色の予測方法」
【特許文献4】WO2010/143749「白色花を生じるトルコギキョウを選別する方法」
【特許文献5】特開2011-19432「トルコギキョウ由来のフラボノイド3’-ヒドロキシラーゼとその利用」
【0004】

【非特許文献1】村上孝夫、「アントシアニン誘導体」、天然物の構造と化学、廣川書店、1984年9月、P.170-172
【非特許文献2】村上孝夫、「フラボノイド」、天然物の構造と化学、廣川書店、1984年9月、P.155-185
【非特許文献3】本多利雄と斉藤規夫、「花の色の科学」、現代化学、東京化学同人、1998年5月、P.25-32
【発明の概要】
【0005】
本発明は、これまで未知であった黄色花、白色花、二重、覆輪、かすりの形質の遺伝型を含む、トルコギキョウの遺伝様式を解明し、さらに多様な花色および/または花形のトルコギキョウの新品種を作出する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の遺伝に関し、これまで解明されていなかった黄色花、白色花、二重、覆輪、かすりの形質に着目し、それらの形質遺伝と対応する遺伝子型との関係を明らかにするために、トルコギキョウの自殖や正逆交雑を繰り返し行い、その遺伝の分離を調べた結果、以下の知見を得た。
(i)ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の遺伝が、従来知られていた5つの複対立遺伝子(H、H、H、H、H)に加えてもう一つの新たな複対立遺伝子Hによって制御されていること;
(ii)全色花/かすり花の遺伝子型B/bおよび有色花/白色花の遺伝子型Ans/ansが劣性ホモ型の遺伝子型(bbansans)を有する個体の場合、黄色花はYまたはYの遺伝子型を有する個体(すなわち、bbansansYまたはbbansansYの遺伝子型を有する個体)で発現し、白色花はYの遺伝子型を有する個体(すなわち、bbansansYの遺伝子型を有する個体)で発現すること;
(iii)黄色花がY、Y、Yの3つの対立する遺伝子型の組み合わせによる複対立遺伝の法則で制御され、全色花/かすり花の遺伝子型B/bおよび有色花/白色花の遺伝子型Ans/ansの優劣性に関わらず、黄色花がY、Y、またはYの遺伝子型を有する個体で発現すること;
(iv)白色花がAns-Hpgpg、ansansB-H、またはansansbbHの遺伝子型を有する個体で発現すること;
(v)かすり花がAns-B-の遺伝子型で制御され、Ans-bbの遺伝子型を有する個体で発現すること;
(vi)八重花、二重花、一重花の遺伝がD、D、Dの3つの対立する遺伝子型の組み合わせによる複対立遺伝の法則で制御され、二重花がDまたはDの遺伝子型を有する個体で発現すること;
(vii)覆輪の遺伝がE/eの遺伝子型で制御され、覆輪花がEEおよびEeの遺伝子型を有する個体で発現すること。
本発明は上記の知見により完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いるトルコギキョウの新品種作出方法であって、該遺伝子型が、
(a)フラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化を制御し、トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の合成に関与する複対立遺伝子の遺伝子型H(ここで、Hは、H、H、H、H、H、またはHで表わされる複対立遺伝子を示す。);
(b)トルコギキョウの主要アントシアニジン色素であるペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、またはデルフィニジン(Dpn)の遺伝子型Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp;および
(c)有色花/白色花の遺伝子型Ans/ans;
からなるAns/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpである、上記方法。
(2) 前記遺伝子型が、さらに下記の遺伝子型:
(d)黄色花および白色花の組み合わせを決定する遺伝子型Y(ここで、YはY、Y、Yで示される複対立遺伝子であって、Yは黄色花のホモ型、Y(またはY)は黄色花のヘテロ型、Y(またはY)は黄色花のヘテロ型、Yは白色花のホモ型を示す。);
(e)八重型、二重型、および一重型の組み合わせを決定する遺伝子型D(ここで、DはD、D、Dで示される複対立遺伝子であって、Dは八重花のホモ型、D(またはD)は八重花のヘテロ型、Dは一重花のホモ型、D(またはD)は二重花のヘテロ型、D(またはD)は一重花のヘテロ型、Dは一重花のホモ型(野生型)を示す。);
(f)覆輪花/全色花の遺伝子型E/e;および
(g)全色花/かすり花の遺伝子型B/b;
からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子型を含む、(1)に記載の方法。
(3) 前記遺伝子型が、B/b・Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・Yである、(2)に記載の方法。
(4) 前記遺伝子型が、D・E/e・B/b・Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・Yである、(2)に記載の方法。
(5) 前記遺伝子型Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpが下記経路式で表される反応系に関与し、遺伝するものである、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
【化1】
JP0006153213B2_000002t.gif
(ここで、H、H、H、H、H、Hは、フラボノイド生合成の色素前駆物質のB環の水酸化を制御する複対立遺伝子型を示す。H、H、H、H、H、Hの6つの複対立遺伝子は、それぞれフラボノイド3’-ヒドロキシラーゼとフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼによるB環の3’,4’位の水酸化、4’位の水酸化、3’,4’,5’位の水酸化、3’,4’,5’位の水酸化、3’,4’位と3’,4’,5’位の水酸化、および3’,4’,5’位の水酸化を制御する。Pg/pg、Cy/cyおよびDp/dpは、Pgn、Cyn、Dpnの生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)の発現に対立する遺伝子座がそれぞれに存在することを示す。Ans/ansは、Pgn、Cyn、Dpnの生合成に関与するアントシアニジンシンターゼ(ANS)の発現に対立する遺伝子座が存在することを示す。)
(6)トルコギキョウのF品種、またはF品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統を作出するための、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とする下記の早見表Aまたは早見表Bに基づいて複対立遺伝子の組み合わせを決定し、目的とする花色のトルコギキョウを作出する、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
【表1】
JP0006153213B2_000003t.gif
JP0006153213B2_000004t.gif(8)花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とする下記の早見表C~Fのいずれか1種以上の表に基づいて複対立遺伝子の組み合わせを決定し、目的とする花色および/または花形のトルコギキョウを作出する、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
【表2】
JP0006153213B2_000005t.gif
JP0006153213B2_000006t.gifJP0006153213B2_000007t.gifJP0006153213B2_000008t.gifJP0006153213B2_000009t.gif(9)(1)~(7)のいずれかに記載の方法によって作出されたトルコギキョウのF品種、またはF品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統。
発明の効果
本発明によれば、これまで未知であった黄色花、白色花、二重、覆輪、かすりの形質の遺伝型を含む、トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いるトルコギキョウの新品種作出方法が提供される。本発明の方法を用いることにより、観賞用としてさらに魅力的かつ多様な花色および/または花形のトルコギキョウを作出することができる。
本願は、2014年10月3日に出願された日本国特許出願2014-204695号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1Aは一重花、図1Bは二重花、図1Cは八重花を示す。
【図2】図2Aは八重花系統(D)、図2Bは一重花系統(D)、図2Cは、これらの両系統を交配させた二重花のF系統(D)を示す。
【図3】図3Aは八重花系統(D)、図3Bは一重花野生種系統(D)、図3Cは、これらの両系統を交配させた二重花のF系統(D)を示す。
【図4】図4Aは一重花系統(D)、図4Bは八重花系統(D)、図4Cはこれらの両系統を交配させた八重花のF系統(D)を示す。
【図5】図5Aは、Dの遺伝子型を有する八重花系統の自殖後代の八重花(D)、図5Bは、Dの遺伝子型を有する一重花系統の自殖後代の一重花(D)、図5Cは、野生種(D)の遺伝子型を有する一重花の系統)の自殖後代の一重花(D)を示す。
【図6】図6Aは、Dの遺伝子型を有するF二重花系統の自殖後代の分離を示す(八重:二重:一重)。図6Bは、Dの遺伝子型を有するF八重花系統の自殖後代の分離(八重:一重)を示す。図6Cは、Dのヘテロ遺伝子型を有するF一重花系統の自殖後代の分離(一重)を示す。
【図7】図7Aは、BBAnsAnsの遺伝子型を有する全色花系統の自殖後代の全色花(BBAnsAns)、図7BはbbAnsAnsの遺伝子型を有するかすり花系統の自殖後代のかすり花(bbAnsAns)、図7Cは、BBansansの遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(BBansans)、図7Dはbbansansの遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(bbansans)を示す。
【図8】図8Aは全色花系統(BBAnsAns)、図8Bはかすり花系統(bbAnsAns)、図8Cは、これらの両系統を交配させた全色花のF系統(BbAnsAns)、図8Dは全色花のF系統の自殖後代の分離(全色花:かすり花)を示す。
【図9】図9Aは有色花系統(BBAnsAns)、図9Bは白色花系統(BBansans)、図9Cは、これらの両系統を交配させた有色花のF系統(BBAnsans)、図9Dは有色花のF系統の自殖後代の分離(有色花:白色花)を示す。
【図10-1】図10-1のAはかすり花系統(bbAnsAns)、図10-1のBは白色花系統(bbansans)、図10-1のCは、これらの両系統を交配させたかすり花のF系統(bbAnsans)を示す。
【図10-2】図10-2のDは、図10-1のCに示すかすり花のF系統(bbAnsans)の自殖後代の分離(かすり花:白色)を示す。
【図11】図11は、完全ヘテロ遺伝子型を有する全色花系統(BbAnsans)の自殖後代の分離(全色花:かすり花:黄色花)を示す。
【図12】図12Aは、bbansansYの遺伝子型を有する黄色花系統の自殖後代の黄色花(bbansansY)、図12Bはbbansansの遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(bbansansY)を示す。
【図13】図13Aは黄色花系統(bbansansY)、図13Bは白色花系統(bbansansY)、図13Cは、これらの両系統を交配させた黄色花のF系統(bbansansY)を示す。
【図14】図14Aは黄色花系統(bbansansY)、図14Bは白色花系統(BBansansY)、図14Cは、これらの両系統を交配させた白色花のF系統(BbansansY)を示す。
【図15】図15Aは、BBansansYの遺伝子型を有する黄色花系統の自殖後代の黄色花(BBansansY)、図15Bは、BBAnsansHPgPgYの遺伝子型を有する黄色地桃色花(オレンジ色花)系統の自殖後代の分離(黄色地桃色花(オレンジ色花):黄色花)を示す。図15CはBbAnsansYの遺伝子型を有する黄色地桃色全色花(オレンジ色全色花)系統の自殖後代の分離(黄色地桃色全色花(オレンジ色全色花):黄色地桃色かすり花(オレンジ色かすり花):黄色花)を示す。
【図16】図16Aは、AnsAnsHの遺伝子型を有する紫色花系統の自殖後代の紫色花(AnsAnsH)、図16Bは、ansansHの遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(ansansH)、図16Cは、EEAnsansHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花系統の自殖後代の分離(紫色花(覆輪):白色花(覆輪))を示す。
【図17】図17Aは、AnsAnsH遺伝子型を有する藤色花系統の自殖後代の藤色花(AnsAnsH)、図17Bは、ansansH遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(ansansH)、図17Cは、AnsansHのヘテロ遺伝子型を有する藤色花系統の自殖後代の分離(藤色花:白色花)を示す。
【図18】図18Aは、AnsAnsHの遺伝子型を有する赤色花系統の自殖後代の赤色花(AnsAnsH)、図18Bは、AnsansHのヘテロ遺伝子型を有する赤色花系統の自殖後代の分離(赤色花:白色花)を示す。
【図19】図19Aは、AnsAnsHPgPgの遺伝子型を有する桃色花系統の自殖後代の桃色花(AnsAnsHPgPg)、図19Bは、ansansHの遺伝子型を有する白色花系統の自殖後代の白色花(ansansH)、図19Cは、AnsansHPgPgのヘテロ遺伝子型を有する桃色花系統の自殖後代の分離(桃色花:白色花)を示す。
【図20】図20は、AnsAnsHの遺伝子型を有する野生種紫色花系統の自殖後代の紫色花(AnsAnsH)を示す。
【図21】図21Aは、紫色花系統(AnsAnsH)、図21Bは、野生種紫色花系統(AnsAnsH)、図21Cは、これらの両系統を交配させた紫色花のF系統(AnsAnsH)を示す。
【図22】図22は、紫色花系統(EgHf2ホモ)、野生種紫色花の2系統(EgHf1ホモ)、これらの両系統を交配させた紫色花のF2系統(EgHf1,2ヘテロ)の電気泳動図を示す。
【図23】図23Aは、藤色花系統(AnsAnsH)、図23Bは、野生種紫色花系統(AnsAnsH)、図23Cは、これらの両系統を交配させた紫色花のF系統(AnsAnsH)を示す。
【図24】図24は、藤色花系統(EgHf1ホモ)、野生種紫色花の2系統(EgHf1ホモ)、これらの両系統を交配させた紫色花のF2系統(EgHf1ホモ)の電気泳動図を示す。
【図25】図25Aは、白色花系統(ansansH)、図25Bは、野生種紫色花系統(AnsAnsH)、図25Cは、これらの両系統を交配させた紫色花のF系統(AnsansH)を示す。
【図26】図26は、白色花系統(EgHf3ホモ)、野生種紫色花系統(EgHf1ホモ)、これらの両系統を交配させた紫色花のF系統(EgHf1,3ヘテロ)の電気泳動図を示す。
【図27】図27Aは、赤色花系統(AnsAnsH)、図27Bは、野生種紫色花系統(AnsAnsH)、図27Cは、これらの両系統を交配させた紫色花のF系統(AnsAnsH)を示す。
【図28】図28は、赤色花系統(EgHf3ホモ)、野生種紫色花の2系統(EgHf1ホモ)、これらの両系統を交配させた紫色花のF2系統(EgHf1,3ヘテロ)の電気泳動図を示す。
【図29】図29Aは、AnsAnsH遺伝子型を有する藤色花の系統、図29Bは、AnsAnsH遺伝子型を有する紫色花の系統、図29Cは、これらの両系統を交配させた紫色のF系統(AnsAnsH)、図29Dは、このF系統の次世代のF世代に分離した紫色の花色を示す個体、図29Eは、同じくF世代に分離した藤色の花色を示す個体である。
【図30】図30は、AnsAnsH遺伝子型を有する藤色花の系統とAnsAnsH遺伝子型を有する紫色花の系統を交配させたF世代のF3’5’H遺伝子のEgHf1とEgHf2の分離の電気泳動写真である。
【図31】図31Aは、一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図31Bは、八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY)、図31Cは、これらを交配させたF桃色かすり花(DeebbAnsansHPgPgCyCyDpDpY)を示す。
【図32】図32Aは、一重の白色花(DeeBBansansHpgpgCyCyDpDpY)、図32Bは、八重の赤色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図32Cは、これらを交配させたF八重の紫色全色花(DeeBBAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図33】図33Aは、一重の白色花(DeeBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY)、図33Bは、八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図33Cは、これらを交配させたF八重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHpgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図34】図34Aは、一重の赤色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図34Bは、八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図34Cは、これらを交配させたF八重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図35】図35Aは、一重の白色花(DEEBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY)、図35Bは、八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY)、図35Cは、これらを交配させたF八重の桃色覆輪花(DEeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図36】図36Aは、八重の桃色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図36Bは、一重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図36Cは、これらを交配させたF八重の紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図37】図37Aは、一重の白色花(DeeBBansansHPgPgCyCyDpDpY)、図37Bは、八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY)、図37Cは、これらを交配させたF二重の白色花(DeeBbansansHPgPgCyCyDpDpY)を示す。
【図38】図38Aは、一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図38Bは、八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図38Cは、これらを交配させたF八重の赤紫色かすり花(DeebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図39】は、図39Aは、八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図39Bは、一重の紫色花(DeeBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY)、図39Cは、これらを交配させたF二重の紫色全色花(DeeBbAnsansHpgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図40】は、図40Aは、一重の黄色花(DEEbbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図40Bは、一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図40Cは、これらを交配させたF一重の赤色かすり覆輪花(DEebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図41】図41Aは、八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図41Bは、一重の黄色地紫色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図41Cは、これらを交配させたF八重の黄色地紫色かすり花(DeebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図42】図42Aは、一重の桃色かすり覆輪花(DEEbbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図42Bは、八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図42Cは、これらを交配させたF八重の桃色かすり覆輪花のF系統(DEebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図43】図43Aは、八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図43Bは、一重の藤色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図43Cは、これらを交配させたF二重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図44】図44Aは、八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)、図44Bは、一重の桃色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)、図44Cは、これらを交配させたF二重の桃色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY)を示す。
【図45】図45Aは、一重白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)(系統番号V85)、図45Bは、八重桃色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY)(系統番号V90)、図45Cは、これらを交配させたF八重紫色かすり花(DeebBansAnsHpgPgCyCyDpDpY)(系統番号SAI7)を示す。
【図46】図46Aは、一重白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)(系統番号V85)、図46Bは、八重黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)(系統番号V231)、図46Cは、これらを交配させたF八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY)(系統番号SAI40)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のトルコギキョウの新品種作出方法は、トルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いることを特徴とする。
1.定義
本発明において用いる用語や記号の意味を説明する。
(トルコギキョウおよび系統)
本発明のトルコギキョウとは、フラボノイドを含む花弁、萼片、苞、花被、果皮、種皮、葉柄などのトルコギキョウの部分、およびトルコギキョウの全体をいう。「系統」とは、トルコギキョウのF品種、およびF品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統並びにトルコギキョウの花粉親系統の個体を含む。
(H
は、下記の経路式に示される6つの複対立遺伝子、すなわちH、H、H、H、H、およびHからなる群から選択され、組み合されたホモまたはヘテロの遺伝子型を意味する。この6つの複対立遺伝子の表記方法は、例えば、T、F、D、Z、O、Eなど他の表記法でもよい。
【化2】
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トルコギキョウのアントシアニジン生合成の前駆化合物には、ナリンゲニン、エリオディクチオール、ペンタヒドロキシフラバノン、ジヒドロケンフェロール、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロミリセチンが含まれる。
の対立遺伝子は、ナリンゲニンからエリオディクチオール、およびジヒドロケンフェロールからジヒドロクエルセチンへの生化学的変換を制御する。
の対立遺伝子は、ナリンゲニンおよびジヒドロケンフェロールを生成するので、B環の水酸化には関与していない。
の対立遺伝子は、ナリンゲニンからペンタヒドロキシフラバノン、およびジヒドロケンフェロールからジヒドロミリセチンへの生化学的変換を制御し、基質を完全にペンタヒドロキシフラバノンまたはジヒドロミリセチンへ変換することを特徴する。
の対立遺伝子は、ナリンゲニンからペンタヒドロキシフラバノン、およびジヒドロケンフェロールからジヒドロミリセチンへの生化学的変換を制御する。この対立遺伝子は、一旦基質を完全にエリオディクチオールとジヒドロクエルセチンへ変換し、更にこれらをペンタヒドロキシフラバノンとジヒドロミリセチンへ変換することを特徴とする。従って、Hの対立遺伝子がHの対立遺伝子と対を組んだHヘテロ遺伝型の場合、中間体であるエリオディクチオールとジヒドロクエルセチンが基質として奪われ、結果としてB環の水酸基を2~3個有する4種の前駆化合物(エリオディクチオール、ペンタヒドロキシフラバノン、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロミリセチン)を生成する。
の対立遺伝子は、ナリンゲニンからエリオディクチオールとペンタヒドロキシフラバノン、およびジヒドロケンフェロールからジヒドロクエルセチンとジヒドロミリセチンへの全ての生化学的変換を制御する。
の対立遺伝子は野生種由来であって、ナリンゲニンからペンタヒドロキシフラバノン、およびジヒドロケンフェロールからジヒドロミリセチンへの生化学的変換を制御し、基質を完全にペンタヒドロキシフラバノンまたはジヒドロミリセチンへ変換することを特徴とする。
(EgHf1、EgHf2、EgHf3)
上記6つの複対立遺伝子H、H、H、H、H、およびHは、該複対立遺伝子によって制御される3つのフラボノイド3’,5’-ヒドロキシラーゼ(F3’,5’H)遺伝子群に基づいて、(i)HとH、(ii)HとH、および(iii)HとHに分類できる。HまたはHによって制御されるF3’,5’遺伝子はEgHf3、HまたはHによって制御されるF3’,5’遺伝子はEgHf2、HまたはHによって制御されるF3’,5’遺伝子はEgHf1と称する。
(Pg/pg、Cy/cy、Dp/dp)
Pg/pg、Cy/cy、Dp/dpは、上記経路式において、主要アントシアニジン色素のペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の生合成に関与するジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)の発現に対立する遺伝子座がそれぞれ存在することを意味する。
(Ans/ans)
Ans/ansは、有色花/白色花の遺伝子型であり、有色花が優性型Ans、白色花が劣性型ansに対応する。有色花とは、アントシアニン色素の発現によって色がつく花をいい、白色花とは、アントシアニン色素の非発現によって色がつかず白色または黄色になる花をいう。AnsAns(優性ホモ型)は有色花、Ansans(優性ヘテロ型)は有色花、ansans(劣性ホモ型)は白色花の形質を有する系統であることを示す。遺伝子型がAnsAns(優性ホモ型)またはAnsans(優性ヘテロ型)の場合、この2種類の遺伝子型をまとめてAns-と表記する。
(D
は花形の八重型、二重型、一重型の組み合わせを決定する遺伝子型であり、D、D、Dの3つの対立する遺伝子型の組み合わせによって八重型、二重型、一重型の形質が対応する。Dは八重花のホモ型、D(またはD)は八重花のヘテロ型、Dは一重花のホモ型、D(またはD)は二重花のヘテロ型、D(またはD)は一重花のヘテロ型、Dは一重花のホモ型(野生型)を示す。
(E/e)
E/eは、覆輪花/全色花の遺伝子型であり、覆輪花が優性型E、全色花が劣性型eに対応する。覆輪花とは花弁の縁部分が地と異なる色で縁取られた花をいい、全色花とは、花弁に覆輪が存在せず一色の花をいう。EE(優性ホモ型)は覆輪花、Ee(優性ヘテロ型)は覆輪花、ee(劣性ホモ型)は全色花の形質を有する系統であることを示す。
(B/b)
B/bは、全色花/かすり花の遺伝子型であり、全色花が優性型B、かすり花が劣性型bに対応する。全色花とは、花弁上の色の柄がほぼ均一の載りとなる花をいい、かすり花とは、霧吹きで振り掛けたあとのようなかすれた色の柄の載りとなる花をいう。BB(優性ホモ型)は全色花、Bb(優性ヘテロ型)は全色花、bb(劣性ホモ型)はかすり花の形質を有する系統であることを示す。
(Y
は、黄色花および白色花の組み合わせを決定する遺伝子型であり、Y、Y、Yの3つの対立するトルコギキョウのカロテノイド色素の生合成にかかる複対立遺伝子の遺伝子型の組み合わせによって黄色花および白色花の形質が対応する。Yは黄色花のホモ型、Y(またはY)は黄色花のヘテロ型、Y(またはY)は黄色花のヘテロ型、Yは白色花のホモ型の形質を有する系統であることを示す。
(色素表現型)
本発明において、トルコギキョウのアントシアニジン生合成の前駆化合物生成に関するアントシアニジンシンターゼに係る遺伝子型の組み合わせがAnsAns(優性ホモ型)またはAnsans(優性ヘテロ型)の場合(この2種類の遺伝子型をまとめてAns-と表記する)、トルコギキョウ花弁の色素表現型と得られる花色の関係を以下に示す。
PgnCynDpn型:赤紫色、赤色、紫赤色、淡赤色、ピンク色
PgnCyn型:赤色、深赤色、淡赤色、ピンク色
CynDpn型:淡紫色、紫赤色、紫色、青紫色
Pgn型:赤色、淡赤色、ピンク色、白赤色、クリーム色、白色
Cyn型:赤色、淡赤色、ピンク色、白赤色
Dpn型:紫色
None型:白色
なお、本発明においてPgnDpn型の系統は得られない。
Dpn型色素表現型にはメチル化アントシアニジンであるマルヴィジン(Mv)とペチュニジン(Pt)を含む。Cyn型色素表現型にはメチル化アントシアニジンであるペオニジン(Pn)を含む。
(“-”および“--”)
本発明において、“-”と表記されている遺伝子型は、その一つ前に表記された遺伝子型に優性的に支配されていることを意味し、“--”と表記されている遺伝子型は、対象形質をつかさどる優性・優劣性遺伝子型または複対立遺伝子型のいずれの遺伝子型も用いることができることを意味する。
2.トルコギキョウの新品種作出方法
2-1.遺伝子型Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpを用いる方法(主要アントシアジン色素の遺伝)
トルコギキョウのアントシアニジン生合成の前駆化合物生成に関与するアントシアニジンシンターゼ(ANS)の遺伝子型の組み合わせがAnsAns(優性ホモ型)またはAnsans(優性ヘテロ型)(以下、AnsAnsとAnsansの2種類の遺伝子型をまとめてAns-と表記する)であって、かつ、複対立遺伝子のH遺伝子型の組み合わせが、
、H、HとH-(H-とは、H、H、H、H、H、Hの6種類の組み合わせを示す)の場合、B環に水酸基が1~3個有する6種の前駆化合物(ナリンゲニン、エリオディクチオール、ペンタヒドロキシフラバノン、ジヒドロケンフェロール、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロミリセチン)を生成し;
、Hの場合、B環に水酸基が1個と2個を有する4種の前駆化合物(ナリンゲニエリオディクチオール、ジヒドロケンフェロール、ジヒドロクエルセチン)を生成し;
の場合、B環に水酸基を1個有する2種の前駆化合物(ナリンゲニン、ジヒドロケンフェロール)を生成し;
、H、H、H、H、H、HとHの場合、B環に水酸基を3個有する2種の前駆化合物(ペンタヒドロキシフラバノン、ジヒドロミリセチン)を生成し;
の場合、B環に水酸基を2~3個有する4種の前駆化合物(エリオディクチオール、ペンタヒドロキシフラバノン、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロミリセチン)を生成する。
また、ジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)酵素レベルにあるPg/pgの遺伝子座が存在するため、上記のアントシアニジン生合成の前駆化合物が形成され、かつ、劣性ホモ型(pgpg)を形成した場合には、前駆化合物としてナリンゲニンおよびジヒドロケンフェロールが生成されてもPgnが生合成されない。
また、Ans-であって、かつ、複対立遺伝子の組合せが、H型、H型、H型、H型、H型、H型、H型、H型、H型、H型、H型の場合、Pg/pgが優性型(PgPgまたはPgpg)である遺伝子型であっても、Pgnは生合成されない。
以上から、Ans-とトルコギキョウ花弁の色素遺伝子型であるH・Pg/pg・Cy/y・Dp/dpを含む遺伝子型の種類と対応する色素表現型の関係は下表のとおりであり、各色素表現型に応じて前述の花色のトルコギキョウが得られる。
【表3】
JP0006153213B2_000011t.gif
2-2.遺伝子型B/b・Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・Yを用いる方法(白色花、黄色花、かすりの遺伝)
<B-ansans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp>
Ans-の遺伝子型を有する系統はすべてアントシアニン色素に基づく有色系統となるが、Ans-の遺伝子型を有する系統のうち、遺伝子型がAns-HpgpgCyCyDpDpである場合だけ、白色系統の花となる。
また、かすり形質をB/bで示した場合、B/b・Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpの遺伝子型を有する系統のうち、アントシアニジン生合成の前駆化合物生成に関与するアントシアニジンシンターゼ(ANS)の遺伝子型の組み合わせがansans(劣性ホモ型)である場合、すなわち、B-ansans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dpの遺伝子型を有する場合、ジヒドロフラボノールリダクターゼ(DFR)酵素レベルにあるPg/pg・Cy/cy・Dp/dpの遺伝子型の優劣性に関わらず、かつ、H遺伝子型の組み合わせが6つのH、H、H、H、H、H遺伝子型のいずれにも関わらず、すべてアントシアニン色素が生合成されない白色系統の花となる。
<bbansansY、bbansansY、bbansansY
アントシアニジン生合成の前駆化合物生成に関与するアントシアニジンシンターゼ(ANS)の遺伝子型の組み合わせがansans(劣性ホモ型)であって、かつ、かすり形質に係る遺伝子型がbb(劣性ホモ型)である場合、すなわちbbansansの遺伝子型を有する場合、カロテノイド系色素の発現によって色がつく黄色花、または、カロテノイド系色素が発現しないことによって色がつかない白色花の花弁形質に対応する黄色花/白色花の遺伝子型(優性型Y/劣性型Y)の組み合わせにより、bbansansYの遺伝子型を有する系統は黄色花、bbansansYの遺伝子型を有する系統は黄色花、bbansansYの遺伝子型を有する系統は白色花となる。
<--Y、--Y、--Y
全色花/かすり花の遺伝子型B/bおよび有色花/白色花の遺伝子型Ans/ansの優劣性にかかわらず、Yの遺伝子型は優先的に黄色花を発現する遺伝子を有する系統である。よって、--Yは黄色花のホモ型、--Yは黄色花のヘテロ型、--Yは黄色花のヘテロ型の形質を示す。
上記の白色系統の花の遺伝様式から、白色系統の花(None色素表現型)は、Ans-HpgpgCyCyDpDpの遺伝子型、B-ansansH--CyCyDpDpの遺伝子型、bbansansH--CyCyDpDpYの遺伝子型の3種のいずれかの遺伝子型を有することになる。
<B-Ans-H--CyCyDpDpY->
トルコギキョウのカロテノイド色素表現型の系統であって、アントシアニン色素が生合成される有色系統の花は、B-Ans-H--CyCyDpDpY、B-Ans-H--CyCyDpDpY、B-Ans-H-CyCyDpDpYの3種のいずれかの遺伝子型(これらの3種の遺伝子型をまとめてB-Ans-H--CyCyDpDpY-と表記する)を有し、黄色花となる。
また、遺伝子型B-Ans-H--CyCyDpDpY-において、アントシアニン生合成に係る複対立遺伝子型“H--”の部分遺伝子型が、HPg-を含む場合は赤紫と黄色の複色(2色)系統の(赤黄紫色)花、H、H、Hを含む場合は紫と黄色の複色(2色)系統の(黄紫色)花、Hの場合は赤と黄色の複色(2色)系統の(赤黄[オレンジ]色)花、HPg-の場合は赤と黄色の複色(2色)系統の(赤黄[オレンジ]色)花となる。
<bbansansH--CyCyDpDpY->
トルコギキョウのカロテノイド色素表現型の系統であって、アントシアニン色素が生合成されない系統の花は、bbansansH--CyCyDpDpY、bbansansH--CyCyDpDpYの2種のいずれかの遺伝子型(これらの2種の遺伝子型をまとめてbbansansH--CyCyDpDpY-と表記する)を有し、黄色花となる。
2-3.遺伝子型D・E/e・B/b・Ans/ans・H・Pg/pg・Cy/cy・Dp/dp・Yを用いる方法(八重、二重、一重、覆輪を伴う遺伝)
遺伝子型DEebbAnsansHPgpgCyCyDpDpYを有する系統は、覆輪八重花であって、覆輪の先端部の色がついた部分は紫色となり、かつ、覆輪部以外の花弁部は黄色地となる。
遺伝子型DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpYを有する系統は、全色二重花であって、花色は赤色と黄色が混合したオレンジ色花となる。
遺伝子型DEEbbansansHPgpgCyCyDpDpYを有する系統は、覆輪八重花であって、花色は黄色花となる。この系統は、覆輪の遺伝子型EEの優性ホモ型を有する系統であるが、アントシアニンによる着色がないため、見かけ上、覆輪形質を観察することができない。
3.トルコギキョウの新品種作出方法に用いる早見表
本発明のトルコギキョウの新品種作出方法は、トルコギキョウのF品種、およびF品種を作出するためのトルコギキョウの種子親系統およびトルコギキョウの花粉親系統を作出するために用いることができる。
本発明のトルコギキョウの新品種作出方法に用いる下記の早見表Aおよび早見表B(表4)は、花色を作出する遺伝型交配の組み合わせを決定するものであって、花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とし、前記の複対立遺伝子の組み合わせ、複対立遺伝子の組合せに対応する色素表現型および花色をも表示するものである。
早見表Aは、Pg/pg、Cy/cyおよびDp/dpで示される遺伝子座がPgPgCyCyDpDpまたはPgpgCyCyDpDpで表される場合の組合せ表であり、早見表Bは、Pg/pg、Cy/cyおよびDp/dpで示される遺伝子座がpgpgCyCyDpDpで表される場合の組合せ表である。例えば、遺伝子座がPgPgCyCyDpDpであり、一つの複対立遺伝子Hともう一つの複対立遺伝子Hが受精し、その組合せがHとなった場合は、早見表Aからその色素表現型がDpnであることが、速やかに知ることができる。
【表4】
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また、本発明のトルコギキョウの新品種作出方法に用いる下記の早見表C~F(表5)は、花色および/または花形を作出する遺伝型交配の組み合わせを決定するものであって、花粉親の配偶子を行とし、種子親の配偶子を列とし、前記の複対立遺伝子を含む遺伝子型(Y+Ans/ans+B/bまたはD+Ans/ans+E/e)の組み合わせ、遺伝子型の組合せに対応する花色および/または花形を表示するものである。
早見表CおよびEは、HおよびPg/pgCy/cyDp/dpで示される遺伝子座がHPgPgCyCyDpDpまたはHPgpgCyCyDpDpで表される場合の組合せ表であり、早見表DおよびFは、HおよびPg/pgCy/cyDp/dpで示される遺伝子座がHpgpgCyCyDpDpで表される場合の組合せ表である。例えば、遺伝子座がHpgpgCyCyDpDpであり、一つの遺伝子型がYAns Bともう一つの遺伝子型がYAns bが受精し、その組合せがYAnsAns Bbとなった場合は、早見表Dからその花色表現型が黄色であることが、速やかに知ることができる。
【表5】
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JP0006153213B2_000014t.gifJP0006153213B2_000015t.gifJP0006153213B2_000016t.gifJP0006153213B2_000017t.gif 本発明のトルコギキョウの新品種作出方法は、トルコギキョウの花弁または萼片、花被、苞、果皮などの有色部分から、50%酢酸水溶液、または50%酢酸メタノールを用いてアントシアニンを抽出し(酢酸の濃度は10~50%でも可能で、酢酸の代わりに0.5~2規定塩酸を用いても良い)、これを塩酸加水分解して、アントシアニジンを含む加水分解物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを用いて各種アントシアニジンを分析する。自殖や交雑を繰り返して得られた後代の遺伝子型について、優性ホモ型、優性ヘテロ型、劣性ホモ型を決定し、その遺伝子型より様々な花色および/または花形を自由自在に作出することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(参考例)遺伝子型の決定方法
トルコギキョウの花弁を採集し、全色系または覆輪系(二重花、八重花を含む)の花弁の着色した部分を切除し、精秤後、試験管中にて0.5~2規定塩酸水溶液などの酸性溶媒を加え、アントシアニン色素を抽出した。抽出は、文献記載の方法(Uddin,et al.:J.Japan.Soc.Hort.Sci.,71:40-47,2002;Wang,et al.:J.Plant Res.,114:213-221,2001;松添直隆、ほか5名:園学雑、68:138-145,1999)を用いた。抽出液を綿栓濾過後、濾液について95~100℃で加熱し加水分解を行い、1~6種のアントシアニジンを含む溶液を得た。加水分解は、文献記載の方法(Uddin,et al.:J.Japan.Soc.Hort.Sci.,71:40-47,2002)を用いた。反応後、溶液をメンブランフィルターで濾過後、濾液についてHPLC装置にて分析した。HPLCの分析条件および分析装置は、文献記載の方法(Uddin,et al.:J.Japan.Soc.Hort.Sci.,71:40-47,2002)を用いた。
HPLCクロマトチャートから、3種のアントシアニジン、すなわち、ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)それぞれのアントシアニジンのピークを占有面積として算出し、ペラルゴニジン(Pgn)、シアニジン(Cyn)、デルフィニジン(Dpn)の全ピーク面積を100%とした。得られた固有ピークからアントシアニジンについて、その花の色素遺伝子型を決定した。
【実施例1】
【0008】
一重花、二重花および八重花の遺伝様式
トルコギキョウにおける一重花、二重花および八重花の花冠形質の存在を確認した。その写真を図1に示す。
トルコギキョウの花弁は合弁であるが、切れ込んだ弁数を数えたところ、一重花は5.3±1.1枚[52花の平均値](図1A)、二重花は10.1±2.3枚[79花の平均値](図1B)、八重花は19.8±4.9枚[25花の平均値](図1C)であった。この結果、トルコギキョウに表現型として一重花、二重花、八重花が存在することがわかる。
トルコギキョウの花冠形質の一つである八重と一重の形質について、従来は八重型が優性型であり、その関係をD/dの遺伝子型として帰属していた(特許第4314241号)。しかし、二重花が存在することからこの遺伝子型の想定では説明が付かない。また、不完全優性型の考え方も適用できないことから、複対立するという新しい遺伝様式として、八重の遺伝子型をD型、従来の一重の遺伝子型をD型、二重形質発現に関わる一重の遺伝子型をD型と想定した。即ち、Dのホモ型は八重、Dのホモ型は一重、Dのホモ型は一重とし、そして、Dのヘテロ型は八重、Dのヘテロ型は二重、Dのヘテロ型は一重と想定した。
まずDのホモ型系統(系統番号E99)(図2A)とDのホモ型系統(系統番号E94)(図2B)とを交配し、Fを作出した。その結果、Fは全て二重形質を有する個体(系統番号H10;想定遺伝子型はD)(図2C)であった。この結果から、トルコギキョウのF二重花の作出が可能であることがわかる。
トルコギキョウの八重花系統(系統番号W58、W28;遺伝子型D)(図3A)と一重花野生種(学名Eustoma exaltatum)(系統番号Wi15、Wi18;遺伝子型D)(図3B)とを交配し、Fを作出した。その結果、Fは全て二重形質を有する個体(系統番号U43を42個体、U57を42個体;想定遺伝子型はD)(図3C)であった。この結果から、トルコギキョウのF二重花にかかる遺伝子型Dが野生種由来の形質であることがわかる。また、遺伝子型Dを有するトルコギキョウが一重花であることもわかる。
トルコギキョウの一重花(系統番号W10、W19;遺伝子型D)(図4A)と八重花系統(系統番号W28、WW17;遺伝子型D)(図4B)とを交配し、Fを作出した。その結果、Fは全て八重花形質を有する個体(系統番号U50を6個体、U8を4個体;想定遺伝子型はD)(図4C)であった。
単一形質を確認するため、Dの遺伝子型を有する八重花の系統群(系統番号V51、V160、V161、P16)の自殖を行った。その結果、自殖後代67個体は全て八重の花(D)(図5A:V51)であった。また、Dの遺伝子型を有する一重花の系統群(系統番号V31、V62、V80)の自殖を行った。その結果、自殖後代30個体は全て一重の花(D)(図5B:V31)であった。また、野生種(Dの遺伝子型を有する一重花の系統群(系統番号BC1、BC2、BC2534))の自殖を行った。その結果、自殖後代40個体は全て一重の花(D)(図5C:BC1)であった。
共分離を確詔するため、あらかじめFとして作出したDの遺伝子型を有する二重花の系統群(系統番号V109、H10、SAI7、SAI60、YUU14、YUU30)の自殖を行った。その結果、八重:二重:一重の分離個体数は、系統番号V109は5:9:4個体数、H10は11:18:11個体数、SAI7は3:5:1個体数、SAI60は3:7:5個体数、YUU14は4:9:5個体数、YUU30は6:10:3個体数であった(図6A:V109)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、32:58:29であったことから、その想定された八重(D):二重(D):一重(D)の分離比1:2:1の理論値よりχ検定を行った結果、χ値=0.227で89.3%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花冠形質は複対立するという新しい遺伝様式で八重花、二重花、一重花の形質が遺伝されることがわかる。
あらかじめFとして作出したDの遺伝子型を有する八重花の系統群(系統番号V9、V101、V116、V118、V124、V129、V131)の自殖を行った。その結果、八重:一重の分離個体数は、系統番号V9は44:12個体数、V101は37:10個体数、V116は17:7個体数、V118は31:8個体数、V124は19:4個体数、V129は35:11個体数、V131は28:12個体数であった(図6B:V131)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、211:64であったことから、その想定された八重(DおよびD):一重(D)の分離比3:1の理論値よりχ検定を行った結果、χ値=0.438で50.8%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花冠形質は複対立するという新しい遺伝様式で八重花、一重花の形質が遺伝されることがわかる。
あらかじめFとして作出したDのヘテロ遺伝子型を有する一重花の系統(系統番号V130)の自殖を行った。一重(D):一重(D):一重(D)=1:2:1の分離は見かけ上、全ての個体で一重と想定され、その結果、自殖後代55個体は全て一重の花(図6C)であった。
【実施例2】
【0009】
全色花とかすり花の遺伝様式
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、BBAnsAnsの遺伝子型を有する全色花の系統群(系統番号P16、P26)の自殖を行った。その結果、自殖後代43個体は全て全色花(BBAnsAns)(図7A:P16)であった。また、bbAnsAnsの遺伝子型を有するかすり花の系統群(系統番号V29、V250)の自殖を行った。その結果、自殖後代19個体は全てかすりの花(bbAnsAns)(図7B:V250)であった。BBansansの遺伝子型を有する白色花の系統群(系統番号E96、V77、V85、V161)の自殖を行った。その結果、自殖後代46個体は全て白色花(BBansans)(図7C:V161)であった。bbansansの遺伝子型を有する白色花の系統群(系統番号V31、V51、V62、V79、V80、V160)の自殖を行った。その結果、自殖後代67個体は全て白色花(bbansans)(図7D:V31)であり、これらは、白色花でありながらかすり形質を有する系統群である。
BBAnsAnsの遺伝子型を有する全色花の系統(系統番号E144)(図8A)およびbbAnsAnsの遺伝子型を有するかすり花の系統(系統番号E54)(図8B)を交配し、BbAnsAnsの遺伝子型を有する全色花のF系統(系統番号H42)(図8C)を得た。この全色花のF系統(系統番号H42)を自殖した結果、後代個体(系統番号V98)(図8D)は全色花およびかすり花の形質に分離し、その分離個体数は、18:4であったことから、その想定された全色花(BBAnsAnsおよびBbAnsAns):かすり花(bbAnsAns)の分離比3:1の理論値に基づきχ検定を行った結果、χ値=0.545で46.0%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウのかすり花形質は劣性ホモの遺伝子型bbで発現することがわかる。
BBAnsAnsの遺伝子型を有する有色花の系統(系統番号E94)(図9A)およびBBansansの遺伝子型を有する白色花の系統(系統番号E117)(図9B)を交配し、BBAnsansの遺伝子型を有する有色花のF系統(系統番号H84)(図9C)を得た。この有色花のF系統(系統番号H84)を自殖した結果、後代個体(系統番号V137)(図9D)は有色花および白色花の形質に分離し、その分離個体数は、17:5であったことから、その想定された有色花(BBAnsAnsおよびBBAnsans):白色花(BBansans)の分離比3:1の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.061で80.6%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの白色花形質はアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの劣性ホモの遺伝子型BBansansで発現することがわかる。
bbAnsAnsの遺伝子型を有するかすり花の系統(系統番号E54、E124)(図10A)およびbbansansの遺伝子型を有する白色花の系統(系統番号E99、MA82)(図10B)を交配し、bbAnsansの遺伝子型を有するかすり花のF系統(系統番号H1、H76)(図10C)を得た。このかすり花のF系統(系統番号H1、H76)を自殖した結果、後代個体(系統番号V93、V131)(図10D)はかすり花および白色花の形質に分離し、その分離個体数は、系統番号V93は42:13個体数、V131は33:8個体数であった。これらの系統のすべての個体数を合計したところ、75:21であったことから、その想定されたかすり花(bbAnsAnsおよびbbAnsans):白色花(bbansans)の分離比3:1の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.500で48.0%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの白色花形質はアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの劣性ホモの遺伝子型BBansansに加えてかすり花の形質である遺伝子型bbansansでも発現することがわかる。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したBbAnsansの完全ヘテロ遺伝子型を有する全色花の系統(系統番号V144)の自殖を行った。その結果、全色花、かすり花および黄色花の3つの形質に分離し(図11)、その分離個体数は、14:6:7であったことから、その想定された全色花(B-Ans-):かすり花(bbAns-):黄色花(--ansans)の分離比9:3:4の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.276で87.1%の適合確率を与えた。なお、ここで言う、‘-’の符号は、遺伝子型がBまたはb、Ansまたはansを表すものである。以上の結果より、トルコギキョウの白色花形質はアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの遺伝子座(Ans/ans)ならびに全色花とかすり花を制御する遺伝子座(B/b)が独立して発現することがわかる。
【実施例3】
【0010】
黄色花と白色花の遺伝様式
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、bbansansYの遺伝子型を有する黄色花の系統群(系統番号V34、V103、V104、V174、V235、V239、V249、MA52)の自殖を行った。その結果、自殖後代72個体は全て黄色花(bbansansY)(図12A:V103)であった。また、bbansansYの遺伝子型を有する白色花の系統群(系統番号E5、V8)の自殖を行った。その結果、自殖後代43個体は全て白色花(bbansansY)(図12B:E5)であった。
共分離を確認するため、黄色花の系統(系統番号E4;遺伝子型bbansansY)(図13A)と白色花の系統(系統番号MA82;遺伝子型bbansansY)(図13B)とを交配し、Fを作出した。その結果、Fは全て黄色花形質を有する個体(系統番号H5;想定遺伝子型はbbansansY)(図13C)を得た。
黄色花の系統(系統番号E4;遺伝子型bbansansY)(図14A)と白色花の系統(系統番号E71;遺伝子型BBansansY)(図14B)とを交配し、Fを作出した。その結果、Fは全て白色花形質を有する個体(系統番号H9;想定遺伝子型はBbansansY)(図14C)を得た。以上の結果より、トルコギキョウの全色花とかすり花を制御する遺伝子座(B/b)がbbの劣性ホモ型の場合、遺伝子型Yと遺伝子型Yで黄色花と白色花が制御されていることがわかる。
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、BBansansYの遺伝子型を有する黄色花の系統(系統番号V145)の自殖を行った。その結果、自殖後代30個体は全て黄色花(BBansansY)(図15A)であった。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したBBAnsansHPgPgYの遺伝子型を有する黄色地桃色花(オレンジ色花)の系統(系統番号P24)の自殖を行った。その結果、黄色地桃色花(オレンジ色花)および黄色花の2つの形質に分離し(図15B)、その分離個体数は8:3であったことから、その想定された黄色地桃色花(オレンジ色花)(BBAns-HPgPgY):黄色花(BBansansHPgPgY)の分離比3:1の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.030で86.2%の適合確率を与えた。
あらかじめ作出したBbAnsansYの遺伝子型を有する黄色地桃色全色花(オレンジ色全色花)の系統(系統番号V144)の自殖を行った。その結果、黄色地桃色全色花(オレンジ色全色花)、黄色地桃色かすり花(オレンジ色かすり花)および黄色花の3つの形質に分離し(図15C)、その分離個体数は14:6:7であったことから、その想定された黄色地桃色全色花(オレンジ色全色花)(B-Ans-Y):黄色地桃色かすり花(オレンジ色かすり花)(bbAns-Y):黄色花(--ansansY)の分離比9:3:4の理論値に基づきχ検定を行った結果、χ値=0.276で87.1%の適合確率を与えた。なお、ここで言う、‘-’の符号は、遺伝子型がBまたはb、Ansまたはansを表すものである。以上の結果より、トルコギキョウの全色花とかすり花を制御する遺伝子座(B/b)がB-の優性型の場合、遺伝子型Yで黄色花が制御されていることがわかる。
【実施例4】
【0011】
ANS劣性ホモによる白色花の遺伝様式
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、AnsAnsH遺伝子型を有する紫色花の系統(系統番号RV)の自殖を行った。その結果、自殖後代50個体は全て紫色花(AnsAnsH)(図16A)であった。また、ansansH遺伝子型を有する白色花の系統群(系統番号V85、V79、E112、E125)の自殖を行った。その結果、自殖後代36個体は全て白色花(ansansH)(図16B:E125)であった。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したEEAnsansHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花の系統群(系統番号W3、WW50)の自殖を行った。その結果、紫色花(覆輪花):白色花(覆輪花)の分離個体数は、系統番号W3は27:14個体数、WW50は23:6個体数に分離した(図16C:W3)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、50:20であったことから、その想定された紫色花(EEAnsAnsHおよびEEAnsansH):白色花(EEansansH)の分離比3:1の理論値よりχ検定を行った結果、χ値=0.476で49.0%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花弁色素に関連するフラボノイド水酸化酵素の制御に係る遺伝子型Hが存在しても、その下流を制御するアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの遺伝子座(Ans/ans)がansansの劣性ホモ型の場合は、紫色花にはならず白色花になることがわかる。なお、白色花(EEansansH)には覆輪の遺伝子型が入っているが、白色花であることから見かけ上、確認することはできない。
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、AnsAnsH遺伝子型を有する藤色花の系統(系統番号ME)の自殖を行った。その結果、自殖後代50個体は全て藤色花(AnsAnsH)(図17A)であった。また、ansansH遺伝子型を有する白色花の系統群(系統番号V53、V158、E117)の自殖を行った。その結果、自殖後代41個体は全て白色花(ansansH)(図17B:V53)であった。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したAnsansHのヘテロ遺伝子型を有する藤色花の系統群(系統番号W51、WW42)の自殖を行った。その結果、藤色花:白色花の分離個体数は、系統番号W51は26:12個体数、WW42は18:4個体数に分離した(図17C:W51)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、44:16であったことから、その想定された藤色花(AnsAnsHおよびAnsansH):白色花(ansansH)の分離比3:1の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.089で76.6%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花弁色素に関連するフラボノイド水酸化酵素の制御に係る遺伝子型Hが存在しても、その下流を制御するアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの遺伝子座(Ans/ans)がansansの劣性ホモ型の場合は、藤色花にはならず白色花になることがわかる。
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、AnsAnsH遺伝子型を有する赤色花の系統(系統番号AK)の自殖を行った。その結果、自殖後代50個体は全て赤色花(AnsAnsH)(図18A)であった。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したAnsansHのヘテロ遺伝子型を有する赤色花の系統群(系統番号WW85、WW86)の自殖を行った。その結果、赤色花:白色花の分離個体数は、系統番号WW85は16:6個体数、WW86は10:5個体数に分離した(図18B:WW86)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、26:11であったことから、その想定された赤色花(AnsAnsHおよびAnsansH):白色花(ansansH)の分離比3:1の理論値によりχ検定を行った結果、χ値=0.441で50.6%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花弁色素に関連するフラボノイド水酸化酵素の制御に係る遺伝子型Hが存在しても、その下流を制御するアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの遺伝子座(Ans/ans)がansansの劣性ホモ型の場合は、赤色花にはならず白色花になることがわかる。
トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、AnsAnsHPgPg遺伝子型を有する桃色花の系統(系統番号P16)の自殖を行った。その結果、自殖後代40個体は全て桃色花(AnsAnsHPgPg)(図19A)であった。また、ansansH遺伝子型を有する白色花の系統(系統番号V31、V51、V160)の自殖を行った。その結果、自殖後代38個体は全て白色花(ansansH)(図19B:V31)であった。
共分離を確認するため、あらかじめ作出したAnsansHPgPgのヘテロ遺伝子型を有する桃色花の系統群(系統番号W31、W33、WW70、WW72)の自殖を行った。その結果、桃色花:白色花の分離個体数は、系統番号W31は39:12個体数、W33は13:4個体数、WW70は7:3個体数、WW72は7:3個体数に分離した(図19C:W31)。これら系統のすべての個体数を合計したところ、66:22であったことから、その想定された桃色花(AnsAnsHPgPgおよびAnsansHPgPg):白色花(ansansHPgPg)の分離比3:1の理論値に基づきχ検定を行った結果、χ値=0.000で100.0%の適合確率を与えた。以上の結果より、トルコギキョウの花弁色素に関連するフラボノイド水酸化酵素の制御に係る遺伝子型HPgPgが存在しても、その下流を制御するアントシアニジンシンターゼ酵素レベルでの遺伝子座(Ans/ans)がansansの劣性ホモ型の場合は、桃色花にはならず白色花になることがわかる。
【実施例5】
【0012】
新たな複対立遺伝子H
野生種トルコギキョウのホモ型形質を確認するため、AnsAnsH遺伝子型を有する野生種紫色花系統群(系統番号BC1、BC2、BC2534、BCFW、IRPCC、RPCC、MICC、PICC、PISPI、LVSPI、BOCV、FSP、FMZAP、RGVHS、BAL、Blake、BCFW、BC2)の自殖を行った。その結果、自殖後代372個体は全て紫色花(AnsAnsH)(図20:FSP、BOCV)であった。これらの系統のアントシアニジン色素を調査したところ、Dpn色素のみの組成であった。
これら野生種トルコギキョウ(AnsAnsH遺伝子型)の系統群(系統番号BC1、BC2、BC2534、BCFW、IRPCC、RPCC、MICC、PICC、PISPI、LVSPI、BOCV、FSP、FMZAP、RGVHS、BAL、Blake、BCFW、BC2)のフラボノイド3’5’水酸化酵素(F3’5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査したところ、全てEgHf1遺伝子であった。色素組成がDpnであって、かつ、EgHf1遺伝子を有する遺伝子型は過去に報告例はないため、この遺伝子型Hは野生種由来の新しい遺伝子型であることがわかる。なお、Hは、野生種の学名Eustoma exaltatumの‘exaltatum’の頭文字‘E’をとって、‘H’と表記した。
共分離を確認するため、AnsAnsHの遺伝子型を有する紫色花の系統(系統番号RV)(図21A)およびAnsAnsH遺伝子型を有する野生種紫色花の系統(系統番号Wi5、Wi18)(図21B)を交配し、AnsAnsHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花のF系統(系統番号U33、U59)(図21C)を得た。この紫色花のF系統(系統番号U33、U59)の色素を調査したところ、すべてDpn色素表現型であった。また、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査したところ、EgHf1遺伝子およびEgHf2遺伝子の両者を保有していた(図22)。以上の結果より、対立する遺伝子型HおよびHは、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)のEgHf1およびEgHf2にそれぞれ対応することが分かり、共分離することは明らかである。
共分離を確認するため、AnsAnsHの遺伝子型を有する藤色花の系統(系統番号ME)(図23A)およびAnsAnsH遺伝子型を有する野生種紫色花の系統(系統番号Wi5、Wi18)(図23B)を交配し、AnsAnsHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花のF系統(系統番号U34、U60)(図23C)を得た。この紫色花のF系統(系統番号U34、U60)の色素を調査したところ、すべてCynDpn色素表現型であった。また、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査したところ、EgHf1遺伝子のみを保有していた(図24)。以上の結果より、対立する遺伝子型HおよびHは、フラボノイド3’5’水酸化酵素(F3’5’H遺伝子)のEgHf1に対応することが分かり、共分離することは明らかである。
共分離を確認するため、ansansHの遺伝子型を有する白色花の系統(系統番号W6)(図25A)およびAnsAnsH遺伝子型を有する野生種紫色花の系統(系統番号Wi10)(図25B)を交配し、AnsansHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花のF系統(系統番号U40)(図25C)を得た。この紫色花のF系統(系統番号U40)の色素を調査したところ、すべてDpn色素表現型であった。また、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査したところ、EgHf1遺伝子およびEgHf3遺伝子の両者を保有していた(図26)。以上の結果より、対立する遺伝子型HおよびHは、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)のEgHf1およびEgHf3にそれぞれ対応することがわかり、共分離することは明らかである。
共分離を確認するため、AnsAnsHの遺伝子型を有する赤色花の系統(系統番号AK)(図27A)およびAnsAnsH遺伝子型を有する野生種紫色花の系統(系統番号Wi5、Wi18)(図27B)を交配し、AnsAnsHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花のF系統(系統番号U32、U58)(図27C)を得た。この紫色花のF系統(系統番号U32、U58)の色素を調査したところ、すべてCynDpn色素表現型であった。また、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査したところ、EgHf1遺伝子およびEgHf3遺伝子の両者を保有していた(図28)。以上の結果より、対立する遺伝子型HおよびHは、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)のEgHf1およびEgHf3にそれぞれ対応することがわかり、共分離することは明らかである。
【実施例6】
【0013】
複対立遺伝子のF世代における遺伝子型と表現型の共分離の実証
共分離を確認するため、AnsAnsH遺伝子型を有する藤色花の系統(系統番号ME)(図29A)およびAnsAnsH遺伝子型を有する紫色花の系統(系統番号RV)(図29B)を交配し、AnsAnsHのヘテロ遺伝子型を有する紫色花のF系統(図29C)を得た。この紫色花のF系統の色素を調査したところ、すべてDpn色素表現型であった。さらに、このF系統を自殖しF世代を21個体育成し、フラボノイド3’,5’水酸化酵素遺伝子(F3’,5’H遺伝子)を特許第5039967号に記載の方法で調査し、さらにこのF集団の中でEgHf1とEgHf2をヘテロで持つ個体を自殖して得たF集団11個体を調査した。その結果、F及びF世代32個体におけるF3’5’H遺伝子型の分離比はEgHf1/EgHf2ヘテロ:EgHf2ホモ:EgHf1ホモが15:8:9となり(図30)、ほぼ2:1:1に分離した。また、図30の電気泳動の結果においてEgHf1遺伝子のみを保有することを示した個体は全て図29EのようなCy優勢型の表現型の藤色の花色を示し、EgHf1/EgHf2ヘテロおよびEgHf2ホモの個体は全て図29DのようなDpn優勢色素表現型の紫色の花色を示した。以上の結果より、対立する遺伝子型HおよびHは、それぞれF3’5’H遺伝子のEgHf1およびEgHf2に対応することが分かり、色素表現型とF3’5’H遺伝子型が共分離することがF世代の分離からも確かめられた。
【実施例7】
【0014】
トルコギキョウF種子の交配作出
以下、トルコギキョウF種子の交配作出法を具体的に説明する。
<例1>
一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E54)(図31A)と八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E99)(図31B)を交配し、F八重の桃色かすり花(DeebbAnsansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H1)(図31C)を得た。
<例2>
一重の白色花(DeeBBansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E58)(図32A)と八重の赤色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E107)(図32B)を交配し、F八重の紫色全色花(DeeBBAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H7)(図32C)を得た。
<例3>
一重の白色花(DeeBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E77)(図33A)と八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E100)(図33B)を交配し、F八重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H28)(図33C)を得た。
<例4>
一重の赤色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E56)(図34A)と八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E71)(図34B)を交配し、F八重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H23)(図34C)を得た。
<例5>
一重の白色花(DEEBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E96)(図35A)と八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E99)(図35B)を交配し、F八重の桃色覆輪花(DEeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H32)(図35C)を得た。
<例6>
八重の桃色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E155)(図36A)と一重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E157)(図36B)を交配し、F八重の紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H48)(図36C)を得た。
<例7>
一重の白色花(DeeBBansansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E140)(図37A)と八重の黄色花(DeebbansansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号E99)(図37B)を交配し、F二重の白色花(DeeBbansansHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号H82)(図37C)を得た。
<例8>
一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号W10)(図38A)と八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号W28)(図38B)を交配し、F八重の赤紫色かすり花(DeebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号U50)(図38C)を得た。
<例9>
八重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号W28)(図39A)と一重の紫色花(DeeBBAnsAnsHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号Wi13)(図39B)を交配し、F二重の紫色全花(DeeBbAnsansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号U51)(図39C)を得た。
<例10>
一重の黄色花(DEEbbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号W1)(図40A)と一重の赤色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号W10)(図40B)を交配し、F一重の赤色かすり覆輪花(DEebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号U42)(図40C)を得た。
<例11>
八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R57)(図41A)と一重の黄色地紫色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R65)(図41B)を交配し、F八重の黄色地紫色かすり花(DeebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号P6)(図41C)を得た。
<例12>
一重の桃色かすり覆輪花(DEEbbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R68)(図42A)と八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R58)(図42B)を交配し、F八重の桃色かすり覆輪花(DEebbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号P8)(図42C)を得た。
<例13>
八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R58)(図43A)と一重の藤色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R61)(図43B)を交配し、F二重の赤紫色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号P1)(図43C)を得た。
<例14>
八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R58)(図44A)と一重の桃色全色花(DeeBBAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号R63)(図44B)を交配し、F二重の桃色全色花(DeeBbAnsansHPgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号P3)(図44C)を得た。
<例15>
一重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号V85)(図45A)と八重の桃色かすり花(DeebbAnsAnsHPgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号V90)(図45B)を交配し、F八重の紫色かすり花(DeebbansAnsHpgPgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号SAI7)(図45C)を得た。
<例16>
一重の白色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号V85)(図46A)と八重黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ホモ型、系統番号V231)、(図46B)を交配し、F八重の黄色花(DeebbansansHpgpgCyCyDpDpY遺伝子型、ヘテロ型、系統番号SAI40)(図46C)を得た。
以上の実施例から、本発明のトルコギキョウの花色形質および/または花形形質に対応する遺伝子型を用いるトルコギキョウの新品種作出方法は、優れた育種・品種改良技術であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、多様な花色および/または花形のトルコギキョウを作出することできるので、トルコギキョウの鑑賞性を大いに高めることできる。よって、本発明は、園芸分野、農業分野、アグリビジネスの分野において利用可能である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10-1】
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【図10-2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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