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明細書 :光ファイバ導入編地の製造方法、及び光ファイバ導入編地

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-150124 (P2017-150124A)
公開日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 光ファイバ導入編地の製造方法、及び光ファイバ導入編地
国際特許分類 D04B   1/14        (2006.01)
D04B   1/00        (2006.01)
D02G   3/38        (2006.01)
D02G   3/04        (2006.01)
D04B  39/00        (2006.01)
FI D04B 1/14
D04B 1/00 C
D02G 3/38
D02G 3/04
D04B 39/00
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2017-001499 (P2017-001499)
出願日 平成29年1月9日(2017.1.9)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
優先権出願番号 2016030683
優先日 平成28年2月22日(2016.2.22)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】坂口 明男
【氏名】加藤 美帆
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100144130、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 実
審査請求 未請求
テーマコード 4L002
4L036
4L054
Fターム 4L002AA00
4L002AB00
4L002AB02
4L002AC00
4L002BA01
4L002BA06
4L002CA01
4L002CA04
4L002DA03
4L002EA00
4L002FA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036RA25
4L054AA01
4L054AB02
4L054BD05
4L054CB02
4L054NA05
要約 【課題】光ファイバを編機を使用して編地に導入することができる光ファイバ導入編地の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の光ファイバ導入編地の製造方法は、光ファイバ11に沿うように糸14を付ける第1の工程と、編機により編地2を製造するときに、第1の工程で糸14を付けた光ファイバ11をスレッド編みにより編地2に導入する第2の工程とを含むことを特徴とするものである。第1の工程は、例えば光ファイバ11に沿うように糸14を巻き付ける工程である。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
光ファイバに沿うように糸を付ける第1の工程と、
編機により編地を製造するときに、前記第1の工程で前記糸を付けた前記光ファイバをスレッド編みにより前記編地に導入する第2の工程とを、含むことを特徴とする光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記光ファイバに沿うように前記糸を巻き付ける工程であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、前記光ファイバを芯にして単数又は複数の前記糸を撚糸する工程であることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程は、前記光ファイバを芯にして複数の前記糸で組紐を組む工程であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項5】
前記糸が、フィラメント糸であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程で、筒状の前記編地を製造することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程で、前記筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも前記筒状の半周分の前記編地に前記光ファイバを導入することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程で、前記筒状の編地の筒軸方向に沿うように、前記編地に前記光ファイバを導入することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程の後に、前記編地から前記糸を除去する第3の工程を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程で、溶媒に溶ける前記糸を使用して、
前記第3の工程は、前記第2の工程で製造した編地を前記溶媒で洗浄して前記糸を溶解させる工程であることを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ導入編地の製造方法。
【請求項11】
光ファイバと、編地とを備え、前記光ファイバが前記編地の一部の編目に所々引っ掛けられた状態で前記編地に保持されていることを特徴とする光ファイバ導入編地。
【請求項12】
前記光ファイバに沿うように糸が付けられていることを特徴とする請求項11に記載の光ファイバ導入編地。
【請求項13】
前記糸が、フィラメント糸であることを特徴とする請求項12に記載の光ファイバ導入編地。
【請求項14】
前記編地が筒状に形成されたものであることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の光ファイバ導入編地。
【請求項15】
前記筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも前記筒状の半周分の前記編地に前記光ファイバが導入されていることを特徴とする請求項14に記載の光ファイバ導入編地。
【請求項16】
前記筒状の編地の筒軸方向に沿うように、前記編地に前記光ファイバが導入されていることを特徴とする請求項14に記載の光ファイバ導入編地。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、編機を使用して光ファイバを編地に導入することが可能な光ファイバ導入編地の製造方法、及び光ファイバ導入編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来に伴う医療費の増大と医療従事者の不足は現代における最も深刻な全世界的課題である。これに対応するには現状の医療体制を単純に拡大するだけではなく、医療のあり方そのものを変えていく必要がある。即ち、自覚症状が出てから受診するのではなく、常にバイタルサインを監視してその異常を早期に検出して病状が悪化する前に治療する方法が生活の質(QOL)の向上の観点からも望ましい。これを実現するにはバイタルサインを常時測定し続ける必要がある。その際に測定の精度とともに問題となるのが測定時のストレスがないということである。いかに信頼性が高い手段であってもそれが身体的又は精神的に負担になるようであれば常時測定は望めない。
【0003】
このような背景から人が着用する衣服にバイタルサイン検出機能を組み込もうとする取り組みが多数なされてきている。発明者らは光ファイバセンサが繊維・糸状の形態をしていることに注目した。このような形態であることは既存のテキスタイルのプロセスで光ファイバセンサを衣服材料である布に導入できる可能性を示していると考える。そこで光ファイバセンサを応用したスマートテキスタイル開発の基礎研究として編地に光ファイバを導入する方法について鋭意研究を行っている。
【0004】
先行技術文献として例えば特許文献1には、用途は違うが、繊維生地に光ファイバを組み込んだ装飾繊維生地が記載されている。同文献の段落0012には、繊維生地を構成する他の経糸又は緯糸と同じようにして、光ファイバ(発光装飾体)を織り込んだり、編み込んだりしてもよく、或いは、繊維生地に光ファイバを括り付けるようにしてもよいということの記載がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】実開平5-96095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[光ファイバの物理特性]
センサとして使用する光ファイバは直径がアクリル樹脂による被覆込みで例えば240μmのように細いものであるが、通常の繊維生地の糸に比べてかなり剛直であり、これが編み込む際の障害となりえる。また光ファイバを強く曲げると光を導けなくなるだけでなく、折れてしまう恐れもある。さらに通常の繊維生地の糸はある程度の糸間の摩擦を前提に構成されるものであるのでアクリル樹脂被覆の摩擦の少なさも問題になりえる。
【0007】
まず柔軟性の問題を検討するために直径240μmの光ファイバ(型名SMF-LS,コーニング製)の曲げ剛さを実測してみたところ1μNm2程度であることがわかった。これは通常のテキスタイルの糸に比べて非常に大きいといえそうである。
次に太さである。綿糸の場合、糸番手(英国式綿番手)N(Ne)とおよその直径d(mm)との関係は、
【数1】
JP2017150124A_000003t.gif
で与えられるので、これをもとに計算するとこの光ファイバの直径は16(Ne)程度となる。これ自体はそれほど細いわけではない。仮にこれで直接編地を作ろうとした場合の適合ゲージはチェンバレンの式
【数2】
JP2017150124A_000004t.gif
で計算される。ゲージとは編機において25.4mm間に配置される編針の本数のことである。ただしGは適合ゲージ、Cは英式梳毛番手で表示された糸太さ、Kは編機の種類に依る定数であり平型横編機ではK=3である。英式梳毛番手Cと英式綿番手Nの間には、
【数3】
JP2017150124A_000005t.gif
の関係がある。以上を基に適合ゲージを算出するとおよそ15Gとなる。これは編機の中ではかなり細かい部類に属する。
【0008】
最小屈曲半径の問題はもっと深刻である。もし編地そのものを光ファイバで作ろうとするとかなり大きな曲率(即ち曲率半径はかなり小さい)で曲げなければならない。ピアスのモデルでは編地のループの直径は糸直径の3倍であるから、今回の光ファイバで編地の生地部分を作るには曲率半径が1mmよりも小さくなってしまい、とてもそこまで曲げることはできない。そもそも、光ファイバが機能するためには大幅にファイバの曲率は制限される。
【0009】
これらに加えて摩擦の問題も懸念されるので光ファイバを編地に直接編込むのは現実的でない。
【0010】
以上に検討したように、光ファイバを編地の糸と同じようにして編機で編地に導入することは困難である。又、繊維生地に光ファイバを括り付けることは、人手が必要であり大変な作業になる。光ファイバを編機で繊維生地に導入することができれば、センサとしての用途以外にも、装飾用、通信用、照明用など種々の用途への適用も期待できる。
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、光ファイバを編機を使用して編地に導入することができる光ファイバ導入編地の製造方法、及び製造した光ファイバ導入編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された光ファイバ導入編地の製造方法は、光ファイバに沿うように糸を付ける第1の工程と、編機により編地を製造するときに、前記第1の工程で前記糸を付けた前記光ファイバをスレッド編みにより前記編地に導入する第2の工程とを、含むことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項1に記載のものであり、前記第1の工程は、前記光ファイバに沿うように前記糸を巻き付ける工程であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項2に記載のものであり、前記第1の工程は、前記光ファイバを芯にして単数又は複数の前記糸を撚糸する工程であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項1に記載のものであり、前記第1の工程は、前記光ファイバを芯にして複数の前記糸で組紐を組む工程であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項1から4のいずれかに記載のものであり、前記糸が、フィラメント糸であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項1から5のいずれかに記載のものであり、前記第2の工程で、筒状の前記編地を製造することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項6に記載のものであり、前記第2の工程で、前記筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも前記筒状の半周分の前記編地に前記光ファイバを導入することを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項6に記載のものであり、前記第2の工程で、前記筒状の編地の筒軸方向に沿うように、前記編地に前記光ファイバを導入することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項1から8のいずれかに記載のものであり、前記第2の工程の後に、前記編地から前記糸を除去する第3の工程を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の光ファイバ導入編地の製造方法は、請求項9に記載のものであり、前記第1の工程で、溶媒に溶ける前記糸を使用して、前記第3の工程は、前記第2の工程で製造した編地を前記溶媒で洗浄して前記糸を溶解させる工程であることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の光ファイバ導入編地は、光ファイバと、編地とを備え、前記光ファイバが前記編地の一部の編目に所々引っ掛けられた状態で前記編地に保持されていることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の光ファイバ導入編地は、請求項11に記載のものであり、前記光ファイバに沿うように糸が付けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の光ファイバ導入編地は、請求項12に記載のものであり、前記糸が、フィラメント糸であることを特徴とする。
【0025】
請求項14に記載の光ファイバ導入編地は、請求項11から13のいずれかに記載のものであり、前記編地が筒状に形成されたものであることを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載の光ファイバ導入編地は、請求項14に記載のものであり、前記筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも前記筒状の半周分の前記編地に前記光ファイバが導入されていることを特徴とする。
【0027】
請求項16に記載の光ファイバ導入編地は、請求項14に記載のものであり、前記筒状の編地の筒軸方向に沿うように、前記編地に前記光ファイバが導入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光ファイバ導入編地の製造方法によれば、第1の工程で光ファイバに沿うように糸を付け、第2の工程でスレッド編みを行うことで、光ファイバを編機を使用して編地に導入することができる。
【0029】
第1の工程が光ファイバに沿うように糸を巻き付ける工程である場合、光ファイバに簡便に糸を付けることができる。又、糸を巻き付ける種々の巻き付け機を使用することができる。第1の工程が光ファイバを芯にして単数又は複数の前記糸を撚糸する工程である場合、撚糸機を使用して光ファイバに高速に糸を巻き付けることができる。第1の工程が光ファイバを芯にして複数の糸で組紐を組む工程である場合、光ファイバに偏りなく全体的に糸を付けることができる。組紐だと糸が解けないため取り扱い性が良い。又、種々の組紐機を使用することができる。
【0030】
糸がフィラメント糸である場合、スパン糸のように撚られていないので糸を回転させても(撚っても)糸切れすることがない。そのため、糸の回転方向、糸の回転速度(回転数)、及び/又は、糸(光ファイバ)の走行速度によらず、糸切れすることなく光ファイバをカバリングすることができる。なお、糸がスパン糸である場合には、糸の回転方向、糸の回転速度(回転数)、及び/又は、糸(光ファイバ)の走行速度を、スパン糸の撚りが解けない程度の条件に適宜調整すればよい。このような条件に適宜調整すれば、糸切れすることなくスパン糸で光ファイバをカバリングできる。
【0031】
第2の工程で筒状の編地を製造する場合、従来の編機で簡便に製造することができる。光ファイバを導入した筒状の編地は、例えば衣服の胴部、腕部、首部などにそのまま使用することができる。第2の工程で、筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも筒状の半周分の編地に光ファイバを導入する場合、光ファイバを導入していない残りの少なくとも半周分の伸縮性が確保されるため、例えば衣服としての伸縮性を担保することができる。第2の工程で、筒状の編地の筒軸方向(筒の軸方向)に沿うように、編地に光ファイバを導入する場合、筒状の編地の周回方向の伸縮性を損なわないため、例えば衣服としての伸縮性を担保することができる。
【0032】
第2の工程の後に、編地から糸を除去する第3の工程を行う場合、光ファイバの露出度を高くすることができる。第1の工程で溶媒に溶ける糸を使用して、第3の工程で編地を溶媒で洗浄して糸を溶解させる場合、簡便に糸を除去することができる。
【0033】
本発明の光ファイバ導入編地によれば、光ファイバが編地の一部の編目に所々引っ掛けられた状態で編地に保持されていることにより、この編地を衣服生地として使用することで、例えば光ファイバセンサ付きの衣服として利用することができる。又、光ファイバ付きの衣服や繊維生地として、装飾用、通信用、照明用など種々の用途に利用することが可能になる。光ファイバに糸が付けられていると、光ファイバの露出が少なくなるため見えにくくするようにできたり、糸が肌に接触するため肌触りをよくしたりすることができる。
【0034】
糸がフィラメント糸である場合、細くて表面が滑らかであるため、光ファイバが衣服に導入されていたとしても、引っ掛かり難く衣服を着脱しやすい。編地が筒状である場合、例えば衣服の胴部、腕部、首部などにそのまま使用することができる。筒状の編地の周回方向に沿うように、最大でも筒状の半周分の編地に光ファイバが導入されている場合、例えば衣服としての伸縮性を担保できる。筒状の編地の筒軸方向に沿うように、編地に光ファイバが導入されている場合、例えば衣服としての伸縮性を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用する光ファイバ導入編地の製造方法における第1の工程を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明を適用する光ファイバ導入編地の製造方法における別の第1の工程を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明を適用する光ファイバ導入編地を模式的に示す平面図、及びその一部拡大図である。
【図4】本発明を適用する筒状の光ファイバ導入編地を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明を適用する別の筒状の光ファイバ導入編地を模式的に示す斜視図である。
【図6】実施例で使用した撚糸機を示す図である。
【図7】実施例:撚糸機でカバリングした光ファイバの写真である。
【図8】実施例で使用した組紐機を示す図である。
【図9】実施例:組紐機でカバリングした光ファイバの写真である。
【図10】実施例:組紐機で巻き付けてカバリングした光ファイバの写真である。
【図11】実施例で行った第2の工程の手順を示す説明図である。
【図12】実施例:試作した光ファイバ導入編地の写真である。
【図13】実施例:試作した別の光ファイバ導入編地の写真である。
【図14】実施例:絹糸でカバリングした光ファイバ(絹カバード光ファイバ)の写真である。
【図15】実施例で使用した、パンチカード編機(平型横編機)にリブニッターを取り付けた編機を示す写真である。
【図16】実施例:図15の編機を使用して、筒状の編地に光ファイバを導入する様子(第2の工程)を示す説明図である。
【図17】実施例:試作した筒状の光ファイバ導入編地の写真である。
【図18】実施例:試作した筒状の光ファイバ導入編地の一部拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。

【0037】
まず、発明者らは、スレッド編みの方法で編地に光ファイバを導入することを試みた。スレッド編みとは、インレイ編みとも呼ばれ、横編時の横方向にループを形成せずに所々編地に糸を引っ掛けるようにしてスレッド糸(本発明では光ファイバ)を編地に導入する方法である。

【0038】
実際に5.6Gの平編機(型名SK-280、柏崎ユーエステック株式会社製)で光ファイバ単独をスレッド編みして編地に導入を試みた。しかしながら、光ファイバ単独ではうまく編地に導入することができなかった。これは編機のゲージに対して光ファイバが細すぎることと、摩擦が少ないこと、さらに柔軟性にも難があることが原因とみられる。

【0039】
そこで発明者らは、さらに鋭意研究を進め、光ファイバを編地に導入できる製造方法を発明した。その本発明の光ファイバ導入編地の製造方法は、光ファイバに沿うように糸を付ける第1の工程と、編機により編地を製造するときに、前記第1の工程で糸を付けた光ファイバをスレッド編みにより編地に導入する第2の工程とを、含むものである。なお、以下において、光ファイバに沿うように糸を付けることを、光ファイバをカバリングするとも言う。

【0040】
(第1の工程)
光ファイバをカバリングする第1の工程は、例えば、光ファイバに沿うように糸を巻き付ける工程である。光ファイバに糸を巻き付ける方法は、どのような方法で行ってもよい。手巻きでも機械巻きでもよいが、公知の巻き付け機を使用することが好ましい。又、例えば、第1の工程として糸を巻き付けるために、光ファイバを芯にして単数又は複数の糸を撚糸する工程を行ってもよい。撚糸は公知の撚糸機(巻き付け機の一例)を用いて行うことが好ましい。別の例として、第1の工程が、光ファイバを芯にして複数の糸で組紐を組む工程であってもよい。組紐を手で組んでも機械で組んでもよいが、組紐は公知の組紐機で組むことが好ましい。

【0041】
図1に、第1の工程の例として、光ファイバ11を芯にして単数又は複数の糸14を撚糸する様子を模式的に示す。図1(a)は単数の糸14を撚糸している様子を示し、図1(b)は複数(一例として4本)の糸14,14・・・を巻きつけている様子を示している。

【0042】
撚糸による光ファイバ11のカバリングには、同図に示すように、中空スピンドル31を有する公知の撚糸機を好ましく用いることができる。この撚糸機は、中空スピンドル31を通して光ファイバ11を所定の速度で図の上方に走らせると共に、中空スピンドル31を所定の回転数(回転速度)で回転させ、光ファイバ11の周囲に糸14を周回させて供給するものである。撚糸機を用いると、光ファイバ11に糸14を高速で巻き付けることができる。

【0043】
図1(a)に示すように光ファイバ11の一部が糸14の間から露出していてもよいし、図1(b)に示すように光ファイバ11全体が糸14で被覆されていてもよい。図1(b)には複数の糸14が等間隔に揃えられて均等に巻かれている例を図示しているが、複数の糸14が撚られて1本になった後にその1本が図1(a)のように光ファイバ11に巻き付けられていてもよい。撚糸機を用いると、複数の糸14が撚られて1本になった後に光ファイバ11に巻かれる場合が多いがそれでもよい。

【0044】
図1(b)に示すように複数の糸14を等間隔に揃えて均等に巻くためには、撚糸機でカバリングする前に、撚糸する回転方向と逆方向に複数の糸14を予め撚っておくとよい。各々の糸14を逆方向に予め撚っておくと、撚糸機で撚ったときにちょうど元に戻るため(予め撚った撚りが無くなるため)、図1(b)に示すように巻くことができる。

【0045】
なお、撚糸機として、複数の糸14を引き揃えて撚る片寄りを行うものを用いてもよいし、片撚りの掛かった糸を複数本引き揃えさらに片撚りと反対方向の撚りをかける諸撚りを行うものを用いてもよいし、駒撚りなどの他の撚り方で行うものを用いてもよい。

【0046】
図2に、第1の工程の別の例として、光ファイバ11を芯にして複数の糸14,14・・・で組紐18を組む様子を模式的に示す。

【0047】
組紐18は、公知の組紐機(図8参照)で組む(製造する)ことができる。組紐機は時計回りと反時計回りに回るボビンキャリアが交差しながら回転することでキャリアに保持された糸14が紐状に組織・形成するものである。図2に示すように、組紐18の芯の部分に光ファイバ11を配置して周囲に糸14、14・・・を公知の組み方で組み付けることで、光ファイバ11を組紐18でカバリングすることができる。このとき、光ファイバ11を組紐18の製作速度に合わせて図の上方に走行させればよい。組紐18を組む糸14の数は、4本、8本、16本のように適宜設定すればよい。又、組紐18の組み方には丸打紐などの種々の種類があるが適宜設定すればよい。なお、光ファイバ11を芯として糸14で組紐18を組むことは、光ファイバ11に糸14を巻き付けている例でもあるということもできる。

【0048】
光ファイバ11を組紐18でカバリングすると、光ファイバ11に偏りなく全体的に糸を付けることができる。糸14の本数や密度にもよるが、光ファイバ11の露出がほとんどなくなり、見た目がよい。組紐18の糸14が解けないため取り扱い性がよい。

【0049】
組紐でカバリングする方法では製造速度は撚糸機と比較して遅いが、光ファイバセンサ自体はそれほど長いものではないので、現実的には問題にはならない。又、たとえば組紐機において時計回り(又は反時計回り)のボビンキャリアのみを用いた場合には撚糸機によるカバリングに対応するような巻き付け加工も可能であり、汎用性もある。

【0050】
光ファイバ11をカバリングする方法は、他の方法であってもよい。例えば、光ファイバ11に糸14を絡み付けてもよい。カバリングする糸14が、筒状に編まれていても織られていてもよい。又、糸14の少なくとも一部を接着して光ファイバ11に付けてもよい。又、光ファイバ11と糸14を束ねて一体にしてもよい。

【0051】
糸14として、第2の工程で編地に使用する糸と同種の糸を用いてもよく、異種の糸を用いてもよい。糸14の例として、綿糸、麻糸などの植物繊維糸、毛糸、絹糸などの動物繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸、ポリエステル糸、ポリプロピレン糸、アクリル糸、ナイロン糸などの合成繊維糸が挙げられる。

【0052】
糸14として、スパン糸(短繊維糸、紡績糸ともいう)、又はフィラメント糸(長繊維糸ともいう)を用いることができる。

【0053】
スパン糸とは、多数の短い繊維を撚って繋ぎ(紡績して)長い糸にしたものである。スパン糸の例として、天然繊維では、綿糸、麻糸、毛糸が挙げられ、合成繊維糸では、ポリエステル糸、ポリプロピレン糸、アクリル糸、ナイロン糸などの各種の糸が挙がられる。スパン糸は、生地になじみやすい。

【0054】
糸14としてスパン糸を用いる場合、スパン糸の撚りの方向と逆向きに、かつスパン糸の撚りの回転数以上の回転数で撚ると、撚りが解けてスパン糸が切れて(分断して)しまうため注意が必要である。例えば、光ファイバ11を芯にしてスパン糸(糸14)を撚糸するときに、スパン糸の撚りが解けない方向(スパン糸の撚り方向と同方向)に撚糸する必要がある。又は、スパン糸を撚糸するときに、スパン糸の撚りが解ける方向(スパン糸の撚り方向と逆方向)に撚糸する場合、スパン糸の撚りが解けない程度に撚られるように、糸の回転速度(回転数)、及び糸(光ファイバ)の走行速度を適宜設定する必要がある。

【0055】
光ファイバ11を芯にしてスパン糸(糸14)で組紐を組む場合、複数の糸14、14・・・のうち半数は逆方向に回転するため、半数はスパン糸の撚りが解ける方向に撚れる。そのため、スパン糸で組紐を組む場合、スパン糸の撚りが解けない程度に撚られるように、糸の回転速度(回転数)、及び糸(光ファイバ)の走行速度(組紐の製造速度)を適宜設定して組めばよい。糸の走行速度(組紐の製造速度)は組紐の巻き上げピッチともいう。糸の走行速度が速ければ(巻き上げピッチが大きければ)、スパン糸の撚りが解ける前に組紐が組める。

【0056】
フィラメント糸とは、長く連続した繊維を糸にしたものである。フィラメント糸の例として、天然繊維では、絹糸が挙げられ、合成繊維糸では、ポリエステル糸、ポリプロピレン糸、アクリル糸、ナイロン糸などの各種の糸が挙げられる。フィラメント糸は、細くて強く、表面が滑らかで光沢があるという特徴がある。

【0057】
フィラメント糸は、元々が長い繊維であるため、スパン糸とは異なり何れの方向に撚っても切れる(分断する)ことがない。つまり、フィラメント糸をいずれの方向に撚糸しても、フィラメント糸でどのような回転数や製造速度で撚糸したり組紐を組んだりしても切れることがない。そのため、光ファイバ11をカバリングする糸14としてフィラメント糸を好ましく用いることができる。着用時の快適性を担保するために、糸14として天然繊維である絹糸を用いることがより好ましい。

【0058】
(第2の工程)
第2の工程では、スレッド編みを行うことが可能な公知の編機(例えば平型横編機のような平編機)を使用する。例えば平編機で編地を製造しているときに、光ファイバ11を導入したい場所に対応させて、糸14でカバリングした光ファイバ11をスレッド編み用の糸としてセットして、スレッド編みを行う。スレッド編みのパターンは任意のパターンに適宜設定することができる。例えば、編地になる横方向の所定(例えば2~50個)の編目ごとに、糸14付きの光ファイバ11を連結点になる編目(例えば1~5個の編目)に引っ掛けるようなパターンとする。スレッド編みにより、光ファイバ11が編地に導入される。編機は平編機に限定されず、スレッド編み機能を有する編機であれば使用することができ、例えば、ジャカード平編機、ジャカードリブ編機を使用してもよい。2枚針床(2列針床)の編機を使用してもよいし、4枚針床(4列針床)の編機を使用してもよい。

【0059】
なお、スレッド糸をセットする糸掛けのない編機(スレッド編み機能付きとは機能表示されていない編み機)であっても、スレッド編みを行うことが可能である。編機には編み針が並んでいる。スレッド糸(カバリングされた光ファイバ11)を編地に連結したい間隔で針の上(一方の側)を通し、それ以外は針の下(他方の側)を通すようにセットする。この部位にキャリッジを通すとスレッド編みができ、光ファイバ11を編地に導入できる。

【0060】
第2の工程で編地を製造するときの編み方は、平編みに限定されず、例えば、リブ編み(ゴム編み)、パール編み、タック編みであってもよい。リブ編み、パール編み、タック編みは、2枚針床の編機で編むことができる。

【0061】
編地を編む糸として、綿糸、麻糸などの植物繊維糸、毛糸、絹糸などの動物繊維糸、レーヨン、キュプラなどの再生繊維糸、アセテートなどの半合成繊維糸、ポリエステル糸、ポリプロピレン糸、アクリル糸、ナイロン糸などの合成繊維糸など、公知の糸が挙げられる。

【0062】
図3に、光ファイバ11を編地2に導入した光ファイバ導入編地1を模式的に示す平面図、及びその一部拡大図を示す。光ファイバ11は糸14でカバリングされているが、同図では拡大して示す丸枠内だけに糸14を示している。光ファイバ11が編地2の一部の編目23に所々引っ掛けられた状態で編地2に保持されている。光ファイバ11を一部の編目23に引っ掛ける間隔(編目23の間隔)は任意であり、一定間隔であってもよいし、不定間隔であってもよい。具体的には、同図の例では、横方向の6個の編目21の内1つの割合で、連結点となる編目23が光ファイバ11に引っ掛けられている。編目23は、1つの編目21の中を通るループであり、光ファイバ11に2か所が引っ掛かる。光ファイバ11よりも図の手前側にあるのは編目23だけである。この光ファイバ導入編地1で衣服を製作すればよい。

【0063】
同図に視認可能に表している側の編地2の面にほとんどの光ファイバ11が現れている。同図の背面側の編地2に光ファイバ11はほとんど現れず、背面側には連結点となる編目23の部分だけに光ファイバ11が現れる。したがって、光ファイバ11を着衣者のバイタルサイン検出用のセンサとして使用する場合、同図に表す編地2の面が肌側に向くように使用すると、光ファイバ11が肌に近くなるので着衣者の情報をセンシングしやすくなる。さらに外界側から光ファイバ11付きの衣服であることがほとんど分からない。

【0064】
光ファイバ11を装飾用に使用する場合、同図に表す側の編地2の面が衣服の外界側に向くように使用すると、外界側から光ファイバ11が視認しやすくなり、装飾効果が高くなる。用途により、いずれの面を衣服の外界側にするか肌側にするか決めればよい。

【0065】
第2の工程で、平坦な編地を製造してもよいし、筒状の編地のように立体的な編地を製造してもよい。筒状の編地は、衣服の胴部、腕部、首部などにそのまま使用することができる。例えば公知の2枚針床の編機を使用して、袋編みにより編地を製造することで、筒状の編地を製造することができる。2枚針床の編機として、例えば平型横編機にリブニッターを取り付けた編機(図15参照)を使用してもよい。筒状の編地を製造することができるものであれば、2枚針床の編機に限られず、他の編機を使用してもよい。

【0066】
第2の工程で、例えば2枚針床の編機を使用して袋編みするときに、糸14でカバリングされた光ファイバ11を、編地の任意の位置にスレッド編みして導入することで、筒状の光ファイバ導入編地を製造することができる。2枚針床の編機で袋編みすることで、光ファイバ11は筒状の編地の周回方向に沿うように導入される。光ファイバ11を導入する長さは任意である。

【0067】
第2の工程で筒状の編地を製造するときに、筒状の周回方向に沿うように、最大でも筒状の半周分の編地に光ファイバ11を導入することが好ましい。2枚針床の編機のうちの一方の針床(1枚針床)の編機でスレッド編みを行うと、最大でも筒状の半周分の編地に光ファイバ11を導入できる。

【0068】
このように製造した筒状の光ファイバ導入編地1aを、図4に模式的に示す。光ファイバ導入編地1aは、筒状の編地2aの周回方向に沿って光ファイバ11が導入されたものである。光ファイバ11の一端部側には、一例として小型の測定機器101が接続されている。光ファイバ11は、図示しないが糸14でカバリングされている。光ファイバ11は、一部の編地2aに所々引っ掛けられた状態で編地2aに保持されている。

【0069】
同図に示すように、筒状の編地2aのうちの半周分の編地Aに1本の光ファイバ11が導入されている。そのため、半周分の編地Aは、伸縮性がほとんど無い。一方、筒状の編地2aの残りの半周分の編地Bには、光ファイバ11が導入されていない。そのため、半周分の編地Bは、編地2aの元々の伸縮性を有している。このように、最大でも半周分(つまり半周分以下)だけに光ファイバ11を導入することで、編地2aの少なくとも半周分は伸縮性を有するため、衣服生地としての伸縮性を担保することができる。半周分を超える長さの光ファイバ11を導入すると、編地の伸縮性が悪くなり、衣服の着脱性、快適性が悪くなる。

【0070】
光ファイバ11を導入する長さは、必要性に応じて、筒の1/2周分、1/3周分、又は1/4周分のように1/2周以下で適宜設定すればよい。第2の工程で筒状の編地2aに導入する光ファイバ11の数は任意である。光ファイバ11の数は、測定機器101の数や用途などに対応させればよい。例えば、編機の同じ段(横編みの同じ列)に複数本の光ファイバ11をスレッド糸としてセットすることで、同じ半周分の編地Aに複数本の光ファイバ11を導入するようにしてもよい。又、複数本の光ファイバ11を編機の段を変えて導入することで、筒状の編地2aの筒軸方向に複数本の光ファイバ11を所定間隔で並べて導入するようにしてもよい。

【0071】
筒状の編地2aの伸縮性は悪くなるが、第2の工程で、2枚針床の編機のうちの一方の1枚針床で光ファイバ11のスレッド編みを行うと共に、他方の1枚針床で別の光ファイバ11のスレッド編みを行うことで、筒状の1周のうちに最大でも半周分ずつの2本の光ファイバ11を重ならないように導入してもよい。又、筒状の1周のうちに重ならないように、例えば1/4周分ずつ、4本(複数)の光ファイバ11を導入するようにしてもよい。

【0072】
又、第2の工程で、筒状の編地の筒軸方向に沿うように、光ファイバを編地に導入してもよい。例えば、第2の工程で、縦糸を挿入できる機能を有する公知の2枚針床の編機を使用して、袋編みにより編地を製造する。このときに、カバリングされた光ファイバ11を縦糸として使用して縦糸をスレッド編みすることで、筒状の編地の筒軸方向に光ファイバ11を導入することができる。

【0073】
このように製造した筒状の光ファイバ導入編地1bを、図5に模式的に示す。光ファイバ導入編地1bは、筒状の編地2bの筒軸方向に沿うように、編地2bに光ファイバ11が導入されたものである。光ファイバ11の一端部側には、一例として小型の測定機器101が接続されている。光ファイバ11は、図示しないが糸14でカバリングされている。光ファイバ11は、一部の編地2bに所々引っ掛けられた状態で編地2bに保持されている。

【0074】
用途によって、光ファイバ11が周回方向に導入された筒状の光ファイバ導入編地2aを使用するか、光ファイバ11が筒軸方向に導入された筒状の光ファイバ導入編地2bを使用するかを適宜選択すればよい。筒状の編地に、周回方向の光ファイバ11、及び筒軸方向の光ファイバ11の両方を導入してもよい。

【0075】
なお、用途により、糸14が有ってもよい場合、光ファイバ11が糸14でほとんど覆われていたほうがよい場合、糸14は有ってもよいが光ファイバ11の露出の程度が多い方がよい場合、又は、糸14を無くしたい場合があり得る。糸14が有ってもよい場合、糸14はそのまま残せばよい。光ファイバ11が糸14でほとんど覆われていたほうがよい場合、図2に示したような組紐18でカバリングすればよい。又は、図1(b)に示すように、光ファイバ11が覆われるように糸14を巻き付けてカバリングすればよい。糸14は有ってもよいが光ファイバ11の露出の程度が多い方がよい場合、図1(a)に示したように光ファイバ11の露出が多くなるように単数又は複数の糸14を巻き付ければ(撚れば)よい。

【0076】
(第3の工程)
糸14を無くしたい場合、第3の工程として、光ファイバ11を残しつつ糸14を編地2から例えば引き抜いて除去すればよい。巻き付いた糸14を引き抜きやすくするために、糸14の巻き数、及び糸14の本数をなるべく少なくすることが好ましい。糸14としてフィラメント糸を用いると表面が滑らかなので、スパン糸を用いた場合よりも引き抜きやすい。

【0077】
糸14を無くしたい場合、糸14を溶解して除去してもよい。この場合、第1の工程で溶媒に溶解する糸14を使用して光ファイバ11をカバリングし、第2の工程の後に、第2の工程で製造した編地を溶媒で洗浄して糸14を溶解させる第3の工程を行えばよい。

【0078】
溶媒として、光ファイバ11及び編地を傷めないものを使用する必要がある。そのため、溶媒として水を使用することが好ましい。例えば、糸14としてポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性のものを使用して、第3の工程で編地2を温水で洗浄して糸14を溶解すればよい。
【実施例】
【0079】
本発明を適用する光ファイバ導入編地の製造方法における第1の工程に従い、カバリングした光ファイバ(以下、カバード光ファイバとも言う)を試作した。さらに、試作したカバード光ファイバを使用して、本発明を適用する光ファイバ導入編地の製造方法における第2の工程に従い、光ファイバ導入編地を試作した。
【実施例】
【0080】
(実施例1~21の共通条件)
以下の実施例1~21の試作には、光ファイバとして、型名SMF-LS、コーニング製、直径240μmのアクリル被覆光ファイバを用いた。カバリングする糸として、綿糸20(Ne)を用いた。
【実施例】
【0081】
(実施例1~4:撚糸機による光ファイバのカバリング)
図6に示す中空スピンドルを有する撚糸機(型名DirecTwist D6、AGTEKS製)を使用して試作した。光ファイバは中空スピンドルの頂上から供給される。綿糸はこのスピンドルの下側から、スピンドル外側を経由して光ファイバと同様に中空スピンドル頂上から供給される。ただし、撚糸機の光ファイバ供給経路中にファイバを強く屈曲させるような部分があったため、この部分を改良している。この撚糸機の中空スピンドルに光ファイバを通して芯にし、その周りに糸を撚糸してカバリングした。カバリング条件を表1に示す。
【実施例】
【0082】
【表1】
JP2017150124A_000006t.gif
【実施例】
【0083】
表1中、カバリング数とは、光ファイバに巻かれる撚糸された糸の1メートル当たりの巻き数である。送り速度とは、撚糸の送り速度、すなわち中空スピンドルを通る光ファイバの送り速度である。カバリング糸数とは、カバリングするために撚糸する糸の本数である。
【実施例】
【0084】
試作した実施例1~4の写真を図7に示す。いずれも、1分当たり5mのカバード光ファイバが製造できた。糸切れ(糸が分断)したものは無かった。カバード光ファイバの外径については表3に示す。カバード光ファイバを側面から見ると光ファイバがかなり露出していることがわかる。巻き数を増やすと露出部の割合は減ってくるが、今回最大の438T/mでも露出部がある。又、カバリングに用いた複数の綿糸同士が互いにより合わさってしまっているのがこの写真からもわかる。これを避けるには綿糸を事前に逆方向に876T/mで撚糸しておく必要がある。逆方向に撚る場合の回転数はこの撚糸機の場合2倍であるが撚糸機によって2倍にならない場合もあるので、撚糸機に対応させた回転数で逆方向に撚ればよい。
【実施例】
【0085】
(実施例5~11:組紐機による光ファイバのカバリング)
図8に示す16丸打組紐機(名称:中型キャリアブレーダー、型式:101-C、株式会社コクブンリミテッド製)を使用してカバード光ファイバを試作した。この組紐機の中心に光ファイバをセットして芯にし、その周りに組紐を組んでカバリングした(実施例5~10)。カバリング条件を表2に示す。実施例11は、右回りのみ4本、左回りに0本の糸をセットして、組紐を組まずに光ファイバに4本の糸を巻き付けた例である。
【実施例】
【0086】
【表2】
JP2017150124A_000007t.gif
【実施例】
【0087】
表2中、巻き上げピッチ=11.2×下歯車/上歯車であり、組紐を巻き上げる速度を示す。ピッチが大きいほど巻き上げる速度が速くなる。カバリング糸数は、組紐を組む糸の本数である。
【実施例】
【0088】
実施例5~11のいずれの条件でもカバリングができた。糸切れしたものは無かった。カバード光ファイバの外径については表3に示す。製造速度は1分間に数センチメートル程度であった。試作した内の実施例5~10の写真を図9に示し、実施例11の写真を図10に示す。カバリング糸数が16本の場合全体の直径が太くなるが、このとき、パイプ状の組紐自体の内径も大きくなる。従ってピッチの設定が適切でないと芯の光ファイバとカバリング材料の間に隙間ができてしまう場合が出てくるので注意が必要である。隙間は無い方が好ましい。カバリング糸数が8本の場合にはこのようなことが起こりにくくなるのでいろいろなピッチ範囲でのカバリングが可能であった。この場合、ピッチが大きいほど中の光ファイバが外から見て露出するように見えるようになるが、その割合は撚糸機によるものより大幅に少ない。さらに、実施例11の4本で巻き付けを行った場合にも撚糸機で4本を用いた場合に比べて芯の光ファイバの露出は大幅に少なくなった。これは撚糸機ではカバリング糸に用いた綿糸が必ず一体となって光ファイバに巻付くのに対して、組紐機では各糸が独立して巻付くからである。
【実施例】
【0089】
(実施例12~21:光ファイバ導入編地の製造)
実施例12~21として、平型横編機(型名SK-280、柏崎ユーエステック株式会社製)を使用して、編地を編むときに実施例1~10で試作したカバード光ファイバをスレッド編みで導入し、光ファイバ導入編地を試作した。スレッド編みの間隔は、編み針6本中1本の間隔で編目に引っ掛かるように設定した。編地には、綿糸20(Ne)を使用した。
【実施例】
【0090】
図11に、試作を行った第2の工程の製造手順を示す。同図(1)に示すように、先ず、通常の編み方で編地を編成していった。続いて、同図(2)に示すように、光ファイバを導入したい位置まで編地が編めたときに、スレッド編みの間隔を設定して、スレッド編み用の糸としてカバード光ファイバをセットし、スレッド編みした。スレッド編みの間隔はパンチカード(図示せず)を使用して設定した。スレッド編みで編地に光ファイバが導入された。続いて、同図(3)に示すように、通常の編み方で編地を編成して光ファイバ導入編地が完成した。
【実施例】
【0091】
表3に、編地条件及び導入の成否を記載する。
【表3】
JP2017150124A_000008t.gif
表3中、カバード光ファイバ外径は、実体顕微鏡を用いて糸幅を測定した値である。編地糸本数とは、編地用の糸として用いた綿糸20(Ne)をあらかじめ諸撚りした時の糸本数である。編地糸外径とは、この諸撚り糸について実体顕微鏡を用いて糸幅を測定した値である。
【実施例】
【0092】
実施例12~15の撚糸の場合も、実施例16~21の組紐の場合も、カバード光ファイバを問題なく編地に導入することができた。光ファイバが露出していても、露出していなくても導入が可能であった。試作した内の実施例13、15の写真を図12に示し、実施例16~19、21の写真を図13に示す。
【実施例】
【0093】
このように、撚糸機及び組紐機でカバリングしてスレッド編みしたところ、光ファイバの導入が可能になった。これは、カバリングしたことで太さが適度になると共に糸による摩擦が生じるためと考えられる。曲げ剛さについてはカバリング加工によって低下させることはできないが、カバリングされた光ファイバは太さが太くなっても曲げ硬さが変わらないため見かけ上は柔らかくなっているように見えるためであると考えられる。
【実施例】
【0094】
(実施例22、23の共通条件)
以下の実施例22、23の試作には、光ファイバとして、型名SMF-LS、コーニング製、直径240μmのアクリル被覆光ファイバを用いた。カバリングする糸として、絹糸を用いた。
【実施例】
【0095】
(実施例22:組紐機による光ファイバのカバリング)
実施例22として、図8に示した16丸打組紐機(名称:中型キャリアブレーダー、型式:101-C、株式会社コクブンリミテッド製)を使用してカバード光ファイバを試作した(第1の工程)。
【実施例】
【0096】
カバリング糸には、14tex(精錬済みの実測番手)の絹糸を2本束ねたものを使用した。このカバリング糸を8本のボビンに巻き取り16丸打組紐機にセットすることで、カバリング糸数(ボビン数)を8本とした。16丸打組紐機の歯車を上歯車:90、下歯車:20にセットして、巻き上げピッチを2.49mmとした。16丸打組紐機の中心に光ファイバをセットして芯にした。16丸打組紐機を作動させ、光ファイバの周りに丸八打ち(8本組)の組紐の方法でカバリングを行った。
【実施例】
【0097】
図14に、試作した絹糸カバード光ファイバの写真を示す。同図では、絹糸カバード光ファイバをホルダに巻き付けた状態で示している。同図に示すように、絹糸が切れることなく、光ファイバを組紐でカバリングすることができた。
【実施例】
【0098】
(実施例23:筒状の光ファイバ導入編地の製造)
実施例23として、筒状の光ファイバ導入編地を製造した(第2の工程)。図15に示すように平型横編機(手動式パンチカード編機、型名SK-280、柏崎ユーエステック株式会社製)に、リブニッター(スタンダードリブニッター、型名SRP 60N,柏崎ユーエステック株式会社製)を取り付けることで2枚針床の編機とし、袋編みが出来るようにした。
【実施例】
【0099】
平型横編機とリブニッターにはそれぞれ編目ダイヤルが設置されている。この編目ダイヤルは編目の大きさを変化させるもので、使用する糸番手に対応して変更する。編地用糸には綿糸(20/6Ne)を使用し、編目ダイヤルはパンチカード編機で1.7、リブニッターで3.7とした。
【実施例】
【0100】
袋編みの編成は図15に示すキャリッジを往復させることで作製する。編み方はよこ編みの平編みである。針本数は平型横編機・リブニッターともに26本とした。カバード光ファイバを導入する部位以外は、通常の袋編みで筒状の編地を編成した。
【実施例】
【0101】
光ファイバが光ファイバセンサである場合を想定して、以下のようにスレッド編みの間隔を設定した。光ファイバセンサは、一例として2cmの範囲の中の1cmがセンサ部となっている。高精度でバイタルサインを測定するためにはセンサ部と人体がなるべく近い必要がある。それにはセンサ部が存在する2cmの部分には連結部をなくすことで、干渉しないようにすることができる。今回の編機において2cmは針本数7本分であるから、スレッド編みの間隔として、編機の中央部の編み針7本分についてはカバード光ファイバを連結せず(編目に引っ掛けず)、編機の中央部の編み針7本分の両外側でカバード光ファイバを連結させる(編目に引っ掛ける)こととした。
【実施例】
【0102】
編地の編目密度を任意の箇所5箇所を実測し平均値を算出したところ,1inchあたりのウェール数は17、コース数は9であった。そこで、編機の中央部の針7本分の両外側(編機の中央部の針7本分以外の部分)のスレッド編みの連結の間隔(編目に引っ掛ける間隔)を、編み針の2本に1本、3本に1本、4本に1本、5本に1本、6本に1本、7本に1本、8本に1本、9本に1本のように8種類の条件に設定して導入を試みた。
【実施例】
【0103】
カバード光ファイバの長さは、製造する筒状の編地の半周分の長さよりも長いものを使用した。
【実施例】
【0104】
なお、図15に示した編機は、リブニッターを取り付けて袋編みができるようにした場合、平型横編機(パンチカード編機)のみのときにはあるスレッド編みのためのアーム糸かけとブラシを付けられない。
【実施例】
【0105】
そのため、図16に示すように、スレッド糸として導入するカバード光ファイバを平型横編機の編み針に通しておいてから編む方法でスレッド編みによる導入を試みた。先ずカバード光ファイバを導入したい位置まで袋編みを行ってから、同図(1)に示すように、カバード光ファイバを編地に連結したい間隔で針の上を通し、それ以外は針の下を通す。この上をキャリッジを通すと、同図(2)に示すように、カバード光ファイバを編地に導入することができた。カバード光ファイバは平型横編機で編まれる筒状の編地の半周分だけに導入された。筒状の編地の半周分の長さを超える部分のカバード光ファイバ(カバード光ファイバの両端側)は、筒状の編地の外界側に出た。
【実施例】
【0106】
編機の中央部の針7本分から両外側の連結の間隔(スレッド編みの間隔)を、編み針の2本に1本、3本に1本、4本に1本、5本に1本、6本に1本、7本に1本、8本に1本、9本に1本としたときに、いずれの場合も、カバード光ファイバを筒状の編地に導入することができた。
【実施例】
【0107】
図17に、製造した筒状の光ファイバ導入編地の写真を示す。同図は、スレッド編みの間隔を、編み針の9本に1本の間隔に設定して、光ファイバを導入した例である。図18に、製造した筒状の光ファイバ導入編地の一部を拡大した写真を示す。同図は、スレッド編みの間隔を、編み針の2本に1本の間隔に設定して、光ファイバを導入した例である。
【実施例】
【0108】
図17に示すように、カバード光ファイバを筒の内面側に多く露出するように編地に導入すると、光ファイバセンサとして使用する場合にセンサと人体が近くなる。光ファイバの両端は筒の外面側に出ているのでコネクタや測定機器などを取り付けるのに便利である。
【符号の説明】
【0109】
1は光ファイバ導入編地、1a・1bは筒状の光ファイバ導入編地、2は編地、2a・2bは筒状の編地、11は光ファイバ、14は糸、18は組紐、21は横方向の編目、23は連結点となる編目、31は中空スピンドル、101は測定機器、Aは筒状の編地のうちの半周分の編地、Bは筒状の編地の残りの半周分の編地である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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