TOP > 国内特許検索 > 波形検査プログラム及び波形検査装置 > 明細書

明細書 :波形検査プログラム及び波形検査装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月29日(2017.6.29)
発明の名称または考案の名称 波形検査プログラム及び波形検査装置
国際特許分類 A61B   5/0488      (2006.01)
FI A61B 5/04 330
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 16
出願番号 特願2015-540944 (P2015-540944)
国際出願番号 PCT/JP2015/072785
国際公開番号 WO2016/027738
国際出願日 平成27年8月11日(2015.8.11)
国際公開日 平成28年2月25日(2016.2.25)
優先権出願番号 2014167753
優先日 平成26年8月20日(2014.8.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】蜂須賀 明子
【氏名】蜂須賀 研二
【氏名】本田 あおい
【氏名】渡邊 直樹
【氏名】福田 亮治
出願人 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
審査請求 未請求
テーマコード 4C027
4C127
Fターム 4C027AA04
4C027DD01
4C027DD02
4C027DD03
4C027GG01
4C027GG07
4C027GG10
4C027KK03
4C127AA04
4C127DD01
4C127DD02
4C127DD03
4C127GG01
4C127GG07
4C127GG10
4C127KK03
要約 コンピュータ(11)に、人体への刺激によって変化する人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分αを用いて、特定の波を検出させる。包除積分αは、非加法的測度を用いたファジィ積分であることから、主観的判断を好適に演算式に置き換えることができ、特定の波の検出精度を高くすることが可能となる。
特許請求の範囲 【請求項1】
コンピュータに、人体への刺激によって変化する該人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分αを用いて、特定の波を検出させることを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の波形検査プログラムにおいて、前記人体への刺激は間欠的な電気刺激であり、前記特定の波はF波であって、前記データは複数の前記F波を含み、
前記コンピュータに、更に、ファジィ積分である包除積分βを用いて、前記複数のF波における任意の一つに対する他のF波の類似性を判定させることを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項3】
請求項2記載の波形検査プログラムにおいて、前記電気刺激後所定時間T1が経過してから、該電気刺激後所定時間T2が経過するまでに電位を計測した複数の計測ポイントそれぞれに対して、該計測ポイントの前後それぞれの微分値及び分散値を基に、前記包除積分αの特徴量を決定し、前記F波の開始点にあたる潜時ポイントを検知することを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項4】
請求項3記載の波形検査プログラムにおいて、前記潜時ポイントから所定時間内に計測された電位の最大値と、前記潜時ポイントの電位の差が所定値より小さいものを前記F波から除外することを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1項に記載の波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の1階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項7】
請求項2~4のいずれか1項に記載の波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の2階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査プログラム。
【請求項8】
人体への刺激によって変化する該人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分αを用いて、特定の波を検出する波形検出手段を備えることを特徴とする波形検査装置。
【請求項9】
請求項8記載の波形検査装置において、前記人体への刺激は間欠的な電気刺激であり、前記特定の波はF波であって、前記データは複数の前記F波を含み、
ファジィ積分である包除積分βを用いて、前記複数のF波における任意の一つに対する他のF波の類似性を判定する波形類似判定手段を、更に、備えることを特徴とする波形検査装置。
【請求項10】
請求項9記載の波解析装置において、前記波形検出手段は、前記電気刺激後所定時間T1が経過してから、該電気刺激後所定時間T2が経過するまでに電位を計測した複数の計測ポイントそれぞれに対して、該計測ポイントの前後それぞれの微分値及び分散値を基に、前記包除積分αの特徴量を決定し、前記F波の開始点にあたる潜時ポイントを検知することを特徴とする波形検査装置。
【請求項11】
請求項10記載の波形検査装置において、前記波形検出手段は、前記潜時ポイントから所定時間内に計測された電位の最大値と、前記潜時ポイントの前記電位の差が所定値より小さいものを前記F波から除外することを特徴とすることを特徴とする波形検査装置。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査装置。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか1項に記載の波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の1階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査装置。
【請求項14】
請求項9~11のいずれか1項に記載の波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の2階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定することを特徴とする波形検査装置。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の波形検査装置において、前記F波の検出結果、及び、前記F波の類似判定結果の少なくとも一つを修正する編集手段を、更に、備えることを特徴とする波形検査装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人体への刺激によって変化する人体の電位を計測したデータから、特定の波を検出する波形検査プログラム及び波形検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、電気刺激や、音の刺激、あるいは、光の刺激を与えられることによって、特定の部位で電位が変化する。健常者と、神経疾病の患者では、電位の変化に差があり、電位の変化を分析することは、神経疾患の診断に有効である。例えば、末梢神経を間欠的に電気刺激して得られる誘発電位に出現するF波(F-wave)に高い類似性が認められると、それは、神経疾病の示唆を意味する。
【0003】
ところで、F波は、F波の特徴を理解することにより医療従事者が筋電図から目視で検出することが可能である。
ここで、人が主観的判断によって、誘発電位中のF波を特定する場合、負担が大きく、更に、見落としのリスクもあることが確認されている。従って、F波の類似性の判定は、臨床での応用が進んでいない。また、これは、F波に限ったことではなく、人体の電位の変化から得られる他の種類の波についても同様のことが言える。
そこで、人体の電位の変化から特定の波を、専用機や汎用機等によって自動検出することが求められ、その具体例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の装置は、誘発電位測定装置から入力されたデータに、移動平均や2次曲線近似を行うことによって、ノイズを取り去り、F波の潜時(開始点)等を特定する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-139863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、F波をはじめとする各種波は、該当の波を特定するための定量的な判断基準が定まっているとは限らず、従来の手法による波の自動検出は検出精度が低いという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、人体の電位を計測したデータから、定量的な判断基準が定まっていない波を高い精度で検出する波形検査プログラム及び波形検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る波形検査プログラムは、コンピュータに、人体への刺激によって変化する該人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分αを用いて、特定の波を検出させる。ここで包除積分αは、ショケ積分を一般化したものである。
【0007】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記人体への刺激は間欠的な電気刺激であり、前記特定の波はF波であって、前記データは複数の前記F波を含み、前記コンピュータに、更に、ファジィ積分である包除積分βを用いて、前記複数のF波における任意の一つに対する他のF波の類似性を判定させるのが好ましい。ここで包除積分βは、ショケ積分を一般化したものである。
【0008】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記電気刺激後所定時間T1が経過してから、該電気刺激後所定時間T2が経過するまでに電位を計測した複数の計測ポイントそれぞれに対して、該計測ポイントの前後それぞれの微分値及び分散値を基に、前記包除積分αの特徴量を決定し、前記F波の開始点にあたる潜時ポイントを検知するのが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記潜時ポイントから所定時間内に計測された電位の最大値と、前記潜時ポイントの電位の差が所定値より小さいものを前記F波から除外するのが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の1階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る波形検査プログラムにおいて、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の2階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る波形検査装置は、人体への刺激によって変化する該人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分αを用いて、特定の波を検出する波形検出手段を備える。ここで包除積分αは、ショケ積分を一般化したものである。
【0014】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記人体への刺激は間欠的な電気刺激であり、前記特定の波はF波であって、前記データは複数の前記F波を含み、ファジィ積分である包除積分βを用いて、前記複数のF波における任意の一つに対する他のF波の類似性を判定する波形類似判定手段を、更に、備えるのが好ましい。ここで包除積分βは、ショケ積分を一般化したものである。
【0015】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記波形検出手段は、前記電気刺激後所定時間T1が経過してから、該電気刺激後所定時間T2が経過するまでに電位を計測した複数の計測ポイントそれぞれに対して、該計測ポイントの前後それぞれの微分値及び分散値を基に、前記包除積分αの特徴量を決定し、前記F波の開始点にあたる潜時ポイントを検知するのが好ましい。
【0016】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記波形検出手段は、前記潜時ポイントから所定時間内に計測された電位の最大値と、前記潜時ポイントの前記電位の差が所定値より小さいものを前記F波から除外するのが好ましい。
【0017】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0018】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の1階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0019】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記波形類似判定手段は、前記複数のF波における任意の一つと他のF波の間の、電位の2階微分の差の二乗和、潜時の差、及び、電位の最大値の差それぞれを基に、前記包除積分βの特徴量を決定するのが好ましい。
【0020】
第2の発明に係る波形検査装置において、前記F波の検出結果、及び、前記F波の類似判定結果の少なくとも一つを修正する編集手段を、更に、備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明に係る波形検査プログラム及び第2の発明に係る波形検査装置は、非加法的測度を用いたファジィ積分である包除積分αを用いて、人体の電位を計測したデータから、特定の波を検出するので、主観的判断を好適に演算式に置き換えることができ、特定の波の検出精度を高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る波形検査プログラムを具備する波形検査装置の説明図である。
【図2】電位の変化を記録したデータの説明図である。
【図3】F波の検出の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る波形検査プログラム10は、コンピュータ11に、人体への刺激によって変化する人体の電位を計測したデータから、ファジィ積分である包除積分(Inclusion-exclusion integral)を用いて、特定の波の一例であるF波を検出させる。以下、詳細に説明する。

【0024】
コンピュータ11は、図1に示すように、波形検査プログラム10、波形検査プログラム10を収めた本体部12、キーボードやマウスからなる入力部13、及び、ディスプレイやプリンターからなる出力部14を備えている。
本体部12は、波形検査プログラム10がインストールされた記憶デバイスやCPUに加え、外部からデータを取得するためのインターフェースを具備している。なお、図1において、本体部12が備える記憶デバイス、CPU及び各種インターフェースの記載は省略されている。

【0025】
入力部13及び出力部14は本体部12に接続され、本体部12は、入力部13からの入力操作に従って、波形検査プログラム10を起動し、データ取得用のインターフェースから取得した外部からのデータに対し、所定の演算を行う。
そして、波形検査プログラム10によって演算した結果は、必要に応じて出力部14に出力される。従って、コンピュータ11の使用者は、出力部14からの出力を参照することにより、波形検査プログラム10の演算結果を確認することができる。

【0026】
本実施例では、本体部12(即ち、コンピュータ11)が外部から取得するデータは、人体に電気刺激を与える装置(即ち、誘発電位計測装置15)が、人体の所定部分の電位を計測して得たものである。誘発電位計測装置15に、人体の運動神経を電気刺激して、人体の筋の活動電位の変化を計測するものを採用した場合について、以下、説明するが、誘発電位計測装置15の代わりに、人体の感覚神経を電気刺激して感覚神経の活動電位の変化を計測するものや、人体の他の部位を電気刺激して、人体の他の部分の電位の変化を計測するものを採用することもできる。
また、電気刺激の代わりに、音による聴覚の刺激や、光による視覚の刺激を与えて、人体の所定部分の電位の変化を計測する誘発電位計測装置を、本発明に適用することも可能である。

【0027】
誘発電位計測装置15は、人体の末梢神経を間欠的に電気刺激して、人体の筋の活動電位の変化を測定し、測定した活動電位の時間軸に対する変化をデータ(本実施例では、誘発電位のデータ)として記録する。
電気刺激の強度は、末梢神経に対して最大上刺激を与えるレベルであり、一回の電気刺激により、原則として、図2に示すように、1つのM波と1つのF波が出現する。M波は、電気刺激が与えられた後でF波が出現する前に発生し、F波に比べて振幅が大きい。
図2、図3においては、末梢神経に電気刺激を与えたタイミングに三角の印を付している。

【0028】
誘発電位計測装置15は、一回の計測で、人体の末梢神経に複数回の電気刺激を与えるため、一回の計測結果を含んだデータには、複数のF波が含まれることになる。
誘発電位計測装置15によって記憶されたデータは、記憶デバイスを介して、オフラインで、本体部12に供給されることや、通信ケーブルを介して、オンラインで、本体部12に送信されることが可能である。

【0029】
そして、波形検査プログラム10は、誘発電位計測装置15が本体部12に与えたデータから、F波を検出し、更に、検出した複数のF波において、それらの類似性を判定する。F波の類似性の判定は、神経疾患の診断に有効であり、例えば、ポリオ罹患者の場合、F波の類似性が高くなる。従って、医療関係者は、波形検査プログラム10によるF波の類似性の判定結果を、神経疾病の診断基準の一つとして扱うことができる。
ここで、波形検査プログラム10は、コンピュータ11から独立したものであり、コンピュータ11にインストールされる前は、光ディスク等の記憶媒体に格納されている。本実施例では、主として、波形検査プログラム10及びコンピュータ11によって、波形検査装置が構成されている。

【0030】
従来、活動電位を記録したデータにおけるF波の検出や、F波の類似性の判定は、例えば、医師等が、波形等を参照して主観的に行っていた。
波形検査プログラム10は、主観的な判断により行われていたF波の検出とF波の類似性の判定を、ファジィ積分の一つに分類される包除積分を用いて行う。即ち、波形検査プログラム10は、包除積分を用いて、コンピュータ11に、F波の検出とF波の類似性の判定を行わせる。なお、ファジィ積分は、非加法的測度による積分(Integral with respect to nonadditive measure)であり、単調測度による積分(Integral with respect to monotone measure)は、その特別な場合と言うことができる。
以下、包除積分について説明する。

【0031】
包除積分は、ショケ積分(Choquet integral)を一般化したものであり、包除積分のクラス(class)は、ショケ積分を含む自由度の高いクラスである。
vを要素数nの集合N={1、2、・・・、n}のべき集合2上のファジィ測度とし、次の式1を一般の多変数関数とし、

【0032】
【数1】
JP2016027738A1_000003t.gif

【0033】
次の式2をN上の非負関数(nonnegative measure)とすると、

【0034】
【数2】
JP2016027738A1_000004t.gif

【0035】
fのvについての包除積分は、次の式3で定義される。なお、ファジィ測度とは、非加法的測度(nonadditive measure)であり、単調測度(monotone measure)とも呼ばれる。

【0036】
【数3】
JP2016027738A1_000005t.gif

【0037】
なお、vが2上のファジィ測度であるとは、集合関数v:2→[0、∞]が次の式4、式5の条件を満たすことを意味する。

【0038】
【数4】
JP2016027738A1_000006t.gif

【0039】
【数5】
JP2016027738A1_000007t.gif

【0040】
また、ファジィ測度vについての包除積分は、vのメビウス変換mを用いて、次の式6のように表現することもできる。

【0041】
【数6】
JP2016027738A1_000008t.gif

【0042】
なお、vを2の集合関数として、vのメビウス変換mは以下のように定義される。
即ち、任意のA∈2に対して、次の式7が成立し、

【0043】
【数7】
JP2016027738A1_000009t.gif

【0044】
vとmは一対一対応、即ち逆変換が存在し、任意のA∈2に対して、次の式8が成り立つ。

【0045】
【数8】
JP2016027738A1_000010t.gif

【0046】
波形検査プログラム10が用いるF波を検出する包除積分及びF波の類似性を判定する包除積分は、特徴量等が異なるため、以下、F波を検出するものを包除積分α、F波の類似性を判定するものを包除積分βとして説明する。
波形検査プログラム10は、図1に示すように、包除積分αを用いてF波を検出する第1のプログラム部(即ち、波形検出手段16)及び包除積分βを用いてF波の類似性を判定する第2のプログラム部(即ち、波形類似判定手段17)を備えている。

【0047】
ここで、種々の検討により、活動電位を記録したデータ(人体の電位を計測したデータ)におけるF波の検出は、F波の開始点(F波の開始時点)の前後の微分とF波の開始点の前後の発散とを基に判定基準を定めるのが有効であることが確認された。
また、電気刺激を与えてから、所定時間(以下、所定時間T1とする)が経過するまでに出現する波、及び、電気刺激を与えてから所定時間(以下、所定時間T2とする)が経過した後に出現する波は、F波ではないことが知られている。なお、T1<T2である。
所定時間T1、T2は、それぞれ特定の値が確定しておらず、おおよその範囲が定められている。本実施例では、所定時間T1は5~100msの範囲の値であり、所定時間T2は6~130msの範囲の値である。

【0048】
これらから、本実施例においては、活動電位を記録したデータにおいて、図3に示すように、電気刺激後、所定時間T1が経過してから、電気刺激後、所定時間T2が経過するまでのT2-T1の区間(以下、検出対象区間と言う)で、電位を計測した全ての計測ポイント18に対し、計測ポイント18の前後それぞれの微分値及び分散値を基に、包除積分αの特徴量を決定し、F波を検出するようにしている。

【0049】
波形検出手段16は、まず、電気刺激を与えた時点を基準にして、活動電位を計測したデータから検出対象区間を特定する。次に、波形検出手段16は、検出対象区間内のn番目の計測ポイント18に対し、その計測ポイント18に適用する包除積分αの特徴量を決定し、その包除積分αを用いて、F波の開始点とみなせるレベル(F波の開始点らしさ)の数値を算出する。n番目の計測ポイント18について、F波の開始点とみなせるレベルの数値を算出した後、波形検出手段16は、同様の手順により、n+1番目の計測ポイント18に対し、F波の開始点とみなせるレベルの数値を算出し、検出対象区間内の全ての計測ポイント18について、順次、F波の開始点とみなせるレベルの数値を算出する。なお、nは自然数であり、検出対象区間内にK個の計測ポイント18があるとして、nの最大値はKとなる。

【0050】
次に、波形検出手段16は、検出対象区間内の全ての計測ポイント18の中から、F波の開始点とみなせるレベルの数値が最大であった計測ポイント18をF波の開始点にあたる潜時ポイント(F波開始ポイント)19として検知する。
従って、波形検出手段16は、検出対象区間内の複数の計測ポイント18それぞれに対して、計測ポイント18の前後それぞれの微分値及び分散値を基に、包除積分αの特徴量を決定し、潜時ポイント19を検知することになる。

【0051】
ここで、必ずしも、検出対象区間内の全ての計測ポイント18についてF波の開始点とみなせるレベルの数値を算出する必要はなく、例えば、奇数番目の計測ポイント18のみをその数値を算出する対象にしてもよい。
また、本実施例では、5つの特徴量を備えた包除積分αが採用され、包除積分αは、以下の式9によって表される。

【0052】
【数9】
JP2016027738A1_000011t.gif

【0053】
式9において、yは、F波の開始点とみなせるレベルの数値を表し、0≦y≦1の値であり、yが1に近いほど潜時(F-wave’s latency)らしいことを意味する。
そして、式9において、a、a、・・・、a35、a45、aは係数ないし切片であり、x、x、x、x、xは特徴量である。a、a、・・・、a35、a45、aは教師あり学習によって予め求められる。本実施例では、教師あり学習における教師データを、n番目の計測ポイント18が潜時ポイント19であるとき、y=1とし、n番目の計測ポイント18が潜時ポイント19でないとき、y=0としている。

【0054】
また、n番目の計測ポイントに適用する包除積分αに対応するx、x、x、x、xは、p、q、r、sを自然数として、xが、n-p番目の計測ポイント18の1階微分の逆数、xが、n-q番目の計測ポイント18の1階微分の値、xが、n-r番目の計測ポイント18からn番目の計測ポイント18までの分散、xが、n番目の計測ポイント18からn+s番目の計測ポイント18までの分散、xが、n番目の計測ポイント18の2階微分の値をn番目の計測ポイント18の3階微分で割った値である。

【0055】
波形検出手段16は、検出対象区間内で潜時ポイント19を特定した後、潜時ポイント19から所定時間(本実施例では、3~8ms)内に計測された電位の最大値と潜時ポイント19の電位を比較し、電位の差が所定値(本実施例では、10~50mVの範囲の値)以上の場合、潜時ポイント19を開始点とする波をF波として検知する。逆に、潜時ポイント19から所定時間内に計測された電位の最大値と、潜時ポイント19の電位の差が所定値より小さい場合、潜時ポイント19を開始点とする波は、F波でないと判定され、F波から除外される。

【0056】
ただし、F波の検出において、潜時ポイント19から所定時間内に計測された電位の中で最大の値と、潜時ポイント19の電位の差から、F波を除外するか否かを決定する手順は必ずしも必要ではなく、この手順を省略することも可能である。例えば、式9のyが所定の値(例えば、0.9~1の範囲の値)以上であれば、潜時ポイント19を開始点とする波をF波であると判定してもよい。

【0057】
波形検出手段16によるF波の検出が完了した後、波形類似判定手段17は、包除積分βを用いて、検出された複数のF波において、一のF波と他のF波の類似性(即ち、検出された複数のF波における任意の一つと他のF波の類似性)を判定する。
本実施例において、波形類似判定手段17は、類似性を判定するF波間の、電位の差の二乗和(一のF波の計測ポイントの電位と、その計測ポイントに対応する他のF波の計測ポイントの電位の差の二乗を、F波の計測ポイント全体について足し合わせた値)、潜時の差(電気刺激からF波が開始するまでに経過した時間の差)、及び、電位の最大値の差(F波において、電位が最大である計測ポイント18の電位の差)、それぞれを基に、包除積分βの特徴量を決定する。これは、F波の波長、潜時、電位の最大値がF波の類似性を判定する上で、有効であることを確認したためである。

【0058】
本実施例で採用する包除積分βは、3つの特徴量を備えた以下の式10で表される。

【0059】
【数10】
JP2016027738A1_000012t.gif

【0060】
但し、式10において、a、a、a、a12、a13、a23、aは係数ないし切片であり、特徴量であるx、x、xは、それぞれ、xが、類似性を判定するF波間の電位の差の二乗和であり、xが、類似性を判定するF波間における電気刺激から潜時までの時間の差の二乗であり、xが、類似性を判定するF波間において電気刺激から最大の電位の計測ポイント18までの時間の差の二乗である。
ここで、式9と同様に、yは、潜時らしさを示し、0≦y≦1であり、yが1に近いほど潜時らしいことを意味する。そして、a、a、a、a12、a13、a23、aは、包除積分αと同様に、教師あり学習によって予め求められる。

【0061】
ここで、波形類似判定手段17は、包除積分βの特徴量の決定のために、類似性を判定するF波間の電位の差の二乗和を採用する代わりに、F波間の電位の1階微分の差の二乗和、F波間の電位の2階微分の差の二乗和、及び、F波間の波長の差(F波の潜時からF波の終点までの時間差)の中の1つ又は2つあるいは全部を採用することもできる。
更に、波形類似判定手段17は、包除積分βの特徴量の決定のために、類似性を判定するF波間の、電位の差の二乗和、潜時の差、F波間の電位の最大値の差に加え、F波間の電位の1階微分の差の二乗和、F波間の電位の2階微分の差の二乗和、及び、F波間の波長の差の1つ又は2つあるいは全部を採用することもできる。

【0062】
そして、包除積分αは、式9に示されたものに限定されず、以下の式11で定義されたxの5次元ベクトルを用いて、以下の式12に示す数式に一般化できる。

【0063】
【数11】
JP2016027738A1_000013t.gif

【0064】
【数12】
JP2016027738A1_000014t.gif

【0065】
この点、包除積分βについても同様であり、包除積分βは、式10に示されたものに限定されず、以下の式13で定義されたxのベクトルを用いて、以下の式14に示す数式に一般化できる。

【0066】
【数13】
JP2016027738A1_000015t.gif

【0067】
【数14】
JP2016027738A1_000016t.gif

【0068】
また、波形検査プログラム10は、F波の検出結果、及び、F波の類似判定結果を、入力部13からの入力に従って修正する図示しない編集手段を備えている。編集手段は、波形検査プログラム10の一部であり、第3のプログラム部である。
従って、コンピュータ11の使用者は、編集手段を用いて、F波の検出結果や、F波の類似判定結果をマニュアル操作により修正することが可能であり、包除積分αや包除積分βを基に計算した結果のみに頼るシステムに比べ、インタラクティブなシステムを確立することができる。
なお、編集手段は、F波の検出結果又はF波の類似判定結果のいずれか一方のみを修正できるものにしてもよい。

【0069】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、波形検査プログラムが包除積分αを用いて検出する波や、包除積分βを用いて類似性を判定する波は、F波に限定されず、M波であってもよいし、他の波であってもよい。
また、包除積分αの特徴量は5つである必要はなく、包除積分βの特徴量も3つである必要はない。
そして、包除積分α及び包除積分βは、1次の項及び2次の項を備えるものに限定されず、例えば、3次の項を含んだ積分モデルであってもよい。
更に、編集手段は、必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る波形検査プログラム及び波形検査装置によれば、人体の電位を計測したデータから、定量的な判断基準が定まっていない波を高い精度で検出できるので、神経疾患の検査に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10:波形検査プログラム、11:コンピュータ、12:本体部、13:入力部、14:出力部、15:誘発電位計測装置、16:波形検出手段、17:波形類似判定手段、18:計測ポイント、19:潜時ポイント
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2