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明細書 :トマト耐暑性変異体及びその作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年7月6日(2017.7.6)
発明の名称または考案の名称 トマト耐暑性変異体及びその作出方法
国際特許分類 A01H   1/06        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
FI A01H 1/06 ZNA
A01H 5/00 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 30
出願番号 特願2016-550412 (P2016-550412)
国際出願番号 PCT/JP2015/077186
国際公開番号 WO2016/047778
国際出願日 平成27年9月25日(2015.9.25)
国際公開日 平成28年3月31日(2016.3.31)
優先権出願番号 2014195891
優先日 平成26年9月25日(2014.9.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】江面 浩
【氏名】星川 健
【氏名】福本 庄馬
【氏名】大島 早谷加
【氏名】愛葉 未奈
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100170221、【弁理士】、【氏名又は名称】小瀬村 暁子
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
Fターム 2B030AA02
2B030AB02
2B030AD04
2B030CA08
2B030CA11
要約 高温条件下での種子を有する果実の形成能が高い耐暑性トマト植物が提供される。本発明は、野生型と比較して高温条件下における花粉生存率及び種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異を、トマト植物に導入することを含む、耐暑性トマト植物の作出方法及び該変異を導入した耐暑性トマト植物に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
野生型と比較して高温条件下における種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異を、トマト植物に導入することを含む、耐暑性トマト植物の作出方法。
【請求項2】
前記変異が、受託番号FERM BP-22278で表されるJHT06系統に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変異が、高温条件下における、花粉生存率、並びに種子を有する果実の形成比率及び収量を向上させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記変異が、野生型と比較して葉の葉緑素含量の増加をさらにもたらす、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記変異が、表3に記載の少なくとも1つの遺伝子における非同義変異又は遺伝子欠損である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記変異を導入したトマト植物を35℃~40℃の温度に曝露することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6に記載の方法により作出される、前記変異が導入された耐暑性トマト植物。
【請求項8】
受託番号FERM BP-22278で表されるJHT06系統又は前記変異を保持するその派生株である、請求項7に記載の耐暑性トマト植物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の耐暑性トマト植物を育種親として、他のトマト植物と交配し、子孫植物として前記変異を有するトマト植物を取得することを含む、耐暑性トマト植物の育種方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト耐暑性変異体及びその作出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高等植物は高温、低温、乾燥、塩分、金属など、様々な環境ストレスにさらされている。様々な環境ストレスの中でも、高温による熱ストレスは植物の成長に重篤な障害を引き起こし、世界の農業生産に大きな影響を与えている(Peet, M.M., Willits, D.H., (1998) Agric. Forest Meteorol., 92, p.191-202; Hall, A.E., (2001) Crop Responses to Environment. CRC Press LLC, Boca Raton, Florida)。気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climatic Change)の報告によれば、地球温暖化の影響で、世界の平均気温は一世紀で0.3℃ずつ上昇し、2100年には現在より3℃平均気温が上昇すると予測されており、今後このような問題はさらに深刻なものとなると予想されている(Jones, P.D., et al., (1999) Rev. Geophys., 37, p.173-199; Porter, J.R., (2005) Nature 436, p.174)。
【0003】
トマト栽培においても、周年栽培化に伴い、夏期の高温によるトマトの花粉稔性の低下による着果不良、小玉化、品質低下などの生育障害が多く報告されている。高温期の着果不良は、花粉発達不良や花粉稔性低下が大きな原因となっている。このような問題を解決するために、植物に対する耐暑性の付与が様々な手法を用いて行われてきた。薬剤散布技術として、農園芸用高温ストレス耐性賦与剤を植物に散布することにより、高温条件下における高温ストレスを軽減し、健全な成長を促す方法が知られている(特開平11-199419号公報)。また遺伝子組換え技術として、トマト由来ミトコンドリア型スモールヒートショックプロテインを過剰発現させることにより、耐暑性をタバコ形質転換体に付与する方法も知られている(特開2002-95370号公報)。さらに、施設・栽培方法の工夫として、高温に対する感受性が最も高い雄しべを含む発達途中の蕾だけを効果的に生育適温まで冷却する装置の開発を行い、着果及び生育を促進する方法も知られている(国際公開第WO2007/058347号)。しかし、このような従来の植物への耐暑性付与方法は、経済性、環境負荷、及び/又は作業性に関して課題がある。そのため、高温期においても着果安定性が確保される耐暑性品種の育種は急務である。さらに、耐暑性品種の育種親としては高温条件下でも種子を有する正常な果実を効率よく形成できる品種が必要とされる。しかし、そのような耐暑性品種の効率的な育種方法は確立されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平11-199419号公報
【特許文献2】特開2002-95370号公報
【特許文献3】国際公開第WO2007/058347号
【0005】

【非特許文献1】Peet, M.M., Willits, D.H., (1998) Agric. Forest Meteorol., 92, p.191-202
【非特許文献2】Hall, A.E., (2001) Crop Responses to Environment. CRC Press LLC, Boca Raton, Florida
【非特許文献3】Jones, P.D., et al., (1999) Rev. Geophys., 37, p.173-199
【非特許文献4】Porter, J.R., (2005) Nature 436, p.174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高温条件下での種子を有する果実の形成能が高い耐暑性トマト植物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、花粉生存率及び種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異の存在を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 野生型と比較して高温条件下における種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異を、トマト植物に導入することを含む、耐暑性トマト植物の作出方法。
この遺伝的変異は、受託番号FERM BP-22278で表されるJHT06系統に由来するものであることが好ましい。
この遺伝的変異は、高温条件下における、花粉生存率、並びに種子を有する果実の形成比率及び収量を向上させるものであることが好ましい。
この遺伝的変異は、野生型と比較して葉の葉緑素含量の増加をさらにもたらすものであってもよい。
この遺伝的変異は、例えば、後述の表3に記載の少なくとも1つの遺伝子における非同義変異又は遺伝子欠損である。その非同義変異は、前記遺伝子に対応した表3に記載のアミノ酸変異を引き起こすヌクレオチド変異であってもよいし、前記遺伝子に対応した表3に記載のSNP変異であってもよい。
本方法では、前記変異を導入したトマト植物を35℃~40℃の温度に曝露することを含むことも好ましい。
【0009】
[2] 上記[1]に記載の方法により作出される、前記変異が導入された耐暑性トマト植物。
この耐暑性トマト植物の例は、受託番号FERM BP-22278で表されるJHT06系統又は前記変異を保持するその派生株である。
【0010】
[3] 上記[2]に記載の耐暑性トマト植物を育種親として、他のトマト植物と交配し、子孫植物として前記変異を有するトマト植物を取得することを含む、耐暑性トマト植物の育種方法。
【0011】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2014-195891号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いれば、高温条件下での種子を有する果実の形成能に優れたトマト植物を高効率に作出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は温室内の温度推移(2013年6月1日~11月1日)を示す。
【図2】図2は温室内の湿度推移(2013年6月1日~11月1日)を示す。
【図3】図3は温室内の温度推移(2013年6月26日~8月1日)を示す。
【図4】図4は栽培開始後から2013年10月3日までに開花した花の数を示す。*はt検定による統計学的有意差(P<0.05)を示す。WTは野生型マイクロトム、JHT06はJHT06系統を示す(以下の図についても同様)。【図6】図6はWTとJHT06の、総果実数に対する種子を有する果実の比率(%)を示す。
【図7】図7はWT及びJHT06の種子を有する果実の着果数(図7A)及び果実収量(総重量;図7B)を示す。*はt検定による統計学的有意差(P<0.05)を示す。【図9】図9はWT及びJHT06の種子を有しない果実の着果数(図9A)及び果実収量(総重量;図9B)を示す。
【図10】図10はWT及びJHT06の種子を有しない果実の一果実当たりの平均重量を示す。*はt検定による統計学的有意差(P<0.05)を示す。【図12】図12は閉鎖系植物栽培室を利用したWT及びJHT06の1花当たりの総花粉数(図12A)及び花粉生存率(稔性が維持された花粉の割合;図12B)を示す。con-WT及びcon-JHT06はコントロールの非高温条件下(明25℃、16時間日長(60.0μmol m-2s-1))で栽培したWT及びJHT06、HS-WT及びHS-JHT06は高温条件下(明35℃/暗25℃)で栽培したWT及びJHT06をそれぞれ表す。1回目及び2回目の実験結果をそれぞれ示した。
【図13】図13は閉鎖系植物栽培室で栽培したWT及びJHT06の雄蕊の長さを示す。*はt検定による統計学的有意差(P<0.05)を示す。【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、トマトの夏期高温条件における着果効率の増加をもたらす遺伝子変異を利用した、夏期の着果不良が改善された耐暑性トマト植物の作出方法に関する。

【0015】
より具体的には、本発明では、野生型トマト植物(変異導入前のトマト植物;例えば野生型マイクロトム)と比較したときに(例えばその変異体において)種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異をトマト植物に導入することにより、耐暑性トマト植物を高効率に作出することができる。

【0016】
典型的には、本発明では、野生型トマト植物(変異導入前のトマト植物;例えば野生型マイクロトム)と比較して、高温条件下における、花粉生存率、並びに種子を有する果実の形成比率及び収量の少なくとも1つ、好ましくはその全てを向上させる遺伝的変異を、種子を有する果実の形成能を向上させる遺伝的変異として、トマト植物に導入することにより、耐暑性トマト植物を作出する方法を提供する。

【0017】
本発明において、「花粉生存率」とは、1個体から収集された総花粉数に対する生存花粉数の割合(%)を意味する。また「種子を有する果実の形成比率」とは、1個体から得られる総果実数に対する種子を有する果実の数の割合(%)を意味する。「種子を有する果実の収量」とは、1個体から得られる、種子を有する果実全ての重量の合計(総重量)を意味する。

【0018】
かかる遺伝的変異は、栽培中(例えば、温室内での栽培中)に、高温条件下において、具体的には開花2週間前~開花日までの間に30℃以上45℃未満、例えば35℃~40℃の温度(例えば、温室内の気温)に曝露された場合に、同様に高温条件に曝露された野生型と比較して、花粉生存率、種子を有する果実の形成比率及び収量の少なくとも1つ、好ましくはその全ての向上をもたらすことに加えて、野生型と比較した葉の葉緑素含量の増加ももたらすことが好ましい。かかる遺伝的変異はまた、野生型と比較して、栽培中に上記高温条件に曝露された場合の個体当たりの着果率及び総着果数の増加、雄蕊の長さの増加(雄蕊伸長抑制の低減)をもたらすものであることも好ましい。

【0019】
かかる遺伝的変異は、好ましくは、後述の表2に記載の少なくとも1つの遺伝子、好ましくは表3に記載の少なくとも1つの遺伝子における変異である。かかる遺伝的変異は、表2又は表3に記載の少なくとも1つの遺伝子における、非同義変異であることがさらに好ましい。本発明において非同義変異とは、遺伝子のコード配列に生じる塩基変異のうちアミノ酸配列の変化を生じる変異を指し、例えば、アミノ酸置換をもたらす塩基の置換(非同義置換、ミスセンス変異とも呼ぶ)、タンパク質翻訳を停止させる終止コドンを生じるナンセンス変異、アミノ酸の挿入若しくは欠失又は読み枠の変化(フレームシフト)を引き起こす塩基の欠失又は挿入変異などが含まれる。表2又は表3に記載の遺伝子における非同義変異は、その遺伝子の機能レベルを変化させるものである。

【0020】
そのような非同義変異は、表3に記載されているアミノ酸変異を引き起こすヌクレオチド変異であることが好ましい。例えば、そのような非同義変異は、表3又は表4に記載されているSNP変異等の変異でありうる。

【0021】
より具体的には、本発明の遺伝的変異は、表3に示される遺伝子(遺伝子番号Solyc04g076040.2.1、Solyc06g005540.1.1、Solyc06g005930.1.1、及びSolyc06g071730.2.1)、例えば配列番号63、65、67、及び69からなる群、又は配列番号85、73、77、及び81からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列からなる遺伝子、又はその機能性変異体であって当該塩基配列に対して典型的には80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を示す塩基配列からなる遺伝子における変異であってよい。本発明の遺伝的変異はまた、例えば配列番号64、66、68、及び70からなる群、又は配列番号86、74、78、及び82からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又はその機能性変異体であって当該アミノ酸配列に対して典型的には90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、例えば99.5%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなる機能性タンパク質をコードする遺伝子における変異であってよい。

【0022】
あるいは本発明の遺伝的変異は、表2に記載の少なくとも1つの遺伝子、好ましくは表3に示される遺伝子、例えば配列番号63、65、67、及び69からなる群、又は配列番号85、73、77、及び81からなる群より選択される少なくとも1つの塩基配列からなる遺伝子又はその機能性変異体であって当該塩基配列に対して典型的には80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の配列同一性を示す塩基配列からなる遺伝子の機能を喪失させる変異、すなわち遺伝子の欠損であってもよい。本発明の遺伝的変異はまた、例えば配列番号64、66、68、及び70からなる群、又は配列番号86、74、78、及び82からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又はその機能性変異体であって当該アミノ酸配列に対して典型的には90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、例えば99.5%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列からなる機能性タンパク質をコードする遺伝子の欠損であってよい。そのような遺伝子の欠損は、ゲノム上における遺伝子の全体又は一部の欠失であってもよい。あるいは遺伝子の欠損は、開始コドンの欠失、フレームシフト、及び/又は終止コドンの生成によるタンパク質に翻訳されない遺伝子又は機能性を失ったタンパク質をコードする遺伝子への変異であってもよい。

【0023】
好ましい一実施形態では、本発明の遺伝的変異は、表3に示される、配列番号59で表される塩基配列中のSNP変異、若しくはそれに対応した配列番号63で表される塩基配列を基準として定められる塩基変異G181T、又は配列番号64で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異D61Yを引き起こす塩基変異でありうる。

【0024】
あるいは本発明の遺伝的変異は、表3に示される、配列番号60で表される塩基配列中のSNP変異、若しくはそれに対応した配列番号65で表される塩基配列を基準として定められる塩基変異T2C、又は配列番号66で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異M1Tを引き起こす塩基変異でありうる。本発明の遺伝的変異はまた、配列番号65若しくは73で表される塩基配列を基準として定められる2位のTの置換(開始コドンの欠失をもたらす)、51位~63位の塩基配列の欠失、及び/又は配列番号66若しくは74で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異Y39*(*は終止コドンの生成を意味する)を引き起こす塩基変異、例えば塩基変異T115Aでありうる。

【0025】
あるいは本発明の遺伝的変異は、表3に示される、配列番号61で表される塩基配列中のSNP変異、若しくはそれに対応した配列番号67で表される塩基配列を基準として定められる塩基変異C334T、又は配列番号68で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異Q112*(*は終止コドンの生成を意味する)を引き起こす塩基変異でありうる。

【0026】
あるいは本発明の遺伝的変異は、表3に示される、配列番号61で表される塩基配列中のSNP変異、若しくはそれに対応した配列番号67で表される塩基配列を基準として定められる塩基変異T350G、又は配列番号68で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異L117*(*は終止コドンの生成を意味する)を引き起こす塩基変異でありうる。

【0027】
あるいは本発明の遺伝的変異は、フレームシフト及び終止コドンの生成をもたらす、配列番号67又は77で表される塩基配列を基準として定められる158位への塩基(例えば、グリシン)の挿入変異でありうる。あるいは本発明の遺伝的変異は、配列番号75で表される塩基配列中の終止コドン生成変異であってもよい。

【0028】
あるいは本発明の遺伝的変異は、表3に示される、配列番号62で表される塩基配列中のSNP変異、若しくはそれに対応した配列番号69若しくは81で表される塩基配列を基準として定められる塩基変異A306T、又は配列番号70若しくは82で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異*102C(*は終止コドンの生成を意味する)を引き起こす塩基変異でありうる。

【0029】
上記の遺伝的変異は、好ましくは、受託番号FERM BP-22278で表されるトマトJHT06系統に由来するものであり、すなわち、好ましくは、JHT06系統が有する又はJHT06系統において認められる遺伝子変異である。

【0030】
上記の遺伝的変異は単独で又は組み合わせて導入してもよい。上記の遺伝的変異は、例えば、遺伝子Solyc06g005540.1.1とSolyc06g005930.1.1における変異、例えばそれら両遺伝子の欠損の組み合わせであってもよい。

【0031】
本発明において「配列番号"X"で表される配列を基準として定められる(変異)」とは、その変異が配列番号"X"で表される配列を基準として変異塩基又はアミノ酸とその位置が特定されることを意味する。より具体的には、当該表現は、配列番号"X"で表される配列中の指定された変異、又はその配列に対して高い配列同一性を示す配列中の当該変異に相当する(アラインメントされる)塩基又はアミノ酸の変異を指す。本発明において塩基変異は、場合により、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、又はC(シトシン)で表される変異前の塩基と変異位置と変異後の塩基で表される。例えば配列番号67で表される塩基配列を基準として定められるC334Tは、配列番号67で表される塩基配列中の334位のシトシンに相当するヌクレオチド(シトシン)が、チミンに置換される変異を意味する。ここで配列番号67で表される塩基配列中の334位のシトシンに「相当する」ヌクレオチドとは、配列番号67で表される塩基配列に対して高い配列同一性(例えば、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上)を示す塩基配列を、配列番号67で表される塩基配列とアラインメントしたときに、配列番号67で表される塩基配列中の334位のシトシンに対してアラインメントされるシトシンを指す。同様に、本発明においてアミノ酸変異は、場合により、当技術分野で通常使用される一文字表記で表された変異前のアミノ酸(又は終止コドンを表すアスタリスク)と変異位置と変異後のアミノ酸(又は終止コドンを表すアスタリスク)で表される。例えば配列番号68で表されるアミノ酸配列を基準として定められるアミノ酸変異Q112*は、配列番号68で表されるアミノ酸配列中の112位のQ(グルタミン)に相当するアミノ酸(グルタミン)が終止コドンに変化する変異を意味する。ここで配列番号68で表されるアミノ酸配列中の112位のグルタミンに「相当する」アミノ酸とは、配列番号68で表されるアミノ酸配列に対して高い配列同一性(典型的には90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、例えば99.5%以上)を示すアミノ酸配列を、配列番号68で表されるアミノ酸配列とアラインメントしたときに、配列番号68で表される塩基配列中の112位のグルタミンに対してアラインメントされるグルタミンを指す。本発明における他の変異の表記も上記と同様に理解することができる。

【0032】
本発明において「アミノ酸変異を引き起こす塩基変異」とは、当該アミノ酸変異を引き起こすような塩基配列の変化(例えば、1以上の塩基の置換、挿入、又は欠失)を意味する。

【0033】
上記の遺伝的変異は、常法によりトマト植物のゲノムに導入することができる。例えば、トマト植物に対する変異原処理(例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)、エチレンイミン(MI)、プロパンスルトン、N-メチル-N-ニトロソウレタン(MNU)等の変異誘発剤による処理、X線、ガンマ線、イオンビーム、紫外線などの放射線の照射など)によって変異体を作製し、作製された変異体集団から当該変異を有する個体をスクリーニングすることにより、本発明の遺伝的変異が導入されたトマト植物を取得してもよい。あるいは、本発明の遺伝的変異は、例えば、部位特異的変異導入法により、トマト植物のゲノムに導入してもよい。上記の遺伝的変異は、それを有する遺伝子又はその断片を含むベクターを用いた形質転換に基づく相同組換えによりトマト植物に導入してもよい。上記の遺伝的変異はまた、当該変異が導入されたトマト変異体又は当該変異を有するその子孫植物を他のトマト植物と交雑し、得られた子孫植物から当該変異を有する個体をスクリーニングすることにより、トマト植物に導入してもよい。上記の遺伝的変異を有する個体のスクリーニングは、遺伝的変異を検出できる任意の方法(例えば、核酸増幅法及び/又はサザンハイブリダイゼーションを用いる方法)により行うことができる。例えば、当該変異を導入した領域をPCRにより増幅し、増幅産物の塩基配列を決定し、変異非導入のトマトゲノム配列と比較して当該変異の有無を判定することにより、スクリーニングを行うことができる。そのようなPCRに用いるプライマーは、トマトゲノム配列、例えば野生型マイクロトムの既知ゲノム配列に基づいて設計することができるが、例えば、後述の表1に示されるフォワードプライマー及び/又はリバースプライマーを用いることができる。

【0034】
あるいは、上記の遺伝的変異を有する個体のスクリーニングは、当該変異を導入した領域の増幅産物と変異を導入していない同じ領域の増幅産物をハイブリダイズさせてヘテロ二重鎖を形成させ、変異が導入されていれば生じるミスマッチサイトを特異的に検出(例えば、ヌクレアーゼ等によるミスマッチサイトの特異的切断を利用した検出)することにより、当該変異の有無を判定する方法により行ってもよい。また、競合ハイブリダイゼーションとFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を組み合わせたF-PHFA法や、当該変異を導入した領域に特異的に結合するプローブによるハイブリダイゼーション又はそのハイブリダイゼーションとリアルタイムPCRとを組み合わせた方法なども用いることができる。このような各種の遺伝的変異の検出は、シークエンサーやPCR装置、各種の遺伝子変異検出キットなどの市販品を用いて実施することができる。

【0035】
上記の遺伝的変異を導入するトマト植物中の遺伝子は、表2又は表3に記載の遺伝子又はその相同遺伝子の少なくとも1つ(例えば、表3に示される4つの遺伝子のうち1~4つ)であってよい。そのような遺伝子は、上記の遺伝子、例えば、遺伝的変異を導入しようとするトマト植物が有する、表2又は表3に記載の配列番号で表される塩基配列に対して高い配列同一性(例えば、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上)を有する遺伝子(コード配列)であってよい。

【0036】
上記の遺伝的変異を導入する対象として用いるトマト植物は、ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum)に属する任意のトマト植物であってよいが、非耐暑性のトマト植物であることがより好ましい。一実施形態では、トマト植物は、野生型マイクロトム又はその派生株であってもよい。野生型マイクロトムは、トマト品種マイクロトム(Solanum lycopersicum, cv. Micro-Tom)(Scott JW, Harbaugh BK (1989) Micro-Tom A miniature dwarf tomato. Florida Agr. Expt. Sta. Circ. 370, p.1-6)として知られており、市販もされている。Tomato Genetics Resource Center(TGRC)(米国)からアクセッション番号LA3911の下で入手することもできる。トマト品種マイクロトムは、矮性(約10~20 cm)であり、葉や果実が小さく、従来品種との交雑も可能である。トマト品種マイクロトムについては全ゲノム配列が決定されている(Kobayashi M, et al., (2014)Plant Cell Physiol. 2014 Feb;55(2):445-454)。

【0037】
なお本発明において派生株とは、元の植物の子孫植物であって他の植物系統・品種との1回以上の交配を経て又は変異誘発若しくは変異導入を経て得られたものをいう。

【0038】
上記の遺伝的変異を導入したトマト植物は、栽培中に高温条件下に置き、その耐暑性を確認することも好ましい。具体的には、当該変異を導入したトマト植物を、30℃以上45℃未満、例えば35℃~40℃の温度(例えば、温室内の気温)に曝露する。そのような高温ストレスへの曝露は、開花2週間前から開花日までの日中、1日当たり6時間以上にわたって行うことが好ましい。高温ストレスへの曝露は毎日でなくてもよいが、曝露期間中の例えば50%以上、好ましくは80%以上の日にわたり高温ストレスに曝露することがより好ましい。高温ストレスへの曝露の後、上記の遺伝的変異を導入したトマト植物の着果率や果実収量等を調べることにより、高温条件下でも着果効率が良く種子を有する果実の形成が良好であり、すなわち耐暑性を有するかどうかを確認することができる。上記遺伝的変異が導入された耐暑性のトマト植物については、さらに、そのゲノム配列中の当該変異を検出して、当該変異を有することを確認することも好ましい。当該変異の検出は上述の記載と同様にして行うことができる。

【0039】
本発明の方法により、上記遺伝的変異が導入され、それによって耐暑性が向上したトマト植物を作出することができる。このようにして得られる耐暑性トマト植物は、高温条件下における花粉生存率及び種子を有する果実の形成比率及び種子を有する果実の収量の向上を示す。本発明の耐暑性トマト植物において、高温条件下での花粉生存率は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは5倍以上に向上する。したがって本発明の耐暑性トマト植物は高温条件下でも高い花粉稔性を維持することができる。本発明の耐暑性トマト植物においてはまた、変異非導入の植物と比較して、上記高温条件下における総花粉数も好ましくは増加する。本発明の耐暑性トマト植物は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上増加した総花粉数を示しうる。なお本発明において「高温条件下」とは、トマト植物が開花2週間前~開花日の間に30℃以上45℃未満、例えば35℃~40℃の温度に合計数時間以上、好ましくは数十時間以上曝露される条件をいう。

【0040】
本発明の耐暑性トマト植物において、高温条件下での種子を有する果実の形成比率(総果実数に対する種子を有する果実の割合)は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上に向上する。本発明の耐暑性トマト植物において、高温条件下での種子を有する果実の収量(種子を有する果実の総重量)は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上に向上する。

【0041】
なお本発明の耐暑性トマト植物においては、変異非導入の植物と比較して、上記高温条件下における種子を有する果実と種子を有しない果実の両方を含めた総果実数(総着果数)も好ましくは増加する。本発明の耐暑性トマト植物は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上増加した総着果数を示しうる。本発明の耐暑性トマト植物においてはまた、変異非導入の植物と比較して、上記高温条件下における種子を有する果実と種子を有しない果実の両方を含めた着果率(全開花数に対する全着果数の比率)も好ましくは増加する。本発明の耐暑性トマト植物は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上増加した着果率を示しうる。

【0042】
さらに本発明の耐暑性トマト植物においては、変異非導入の植物と比較して、上記高温条件下における総花粉数も好ましくは増加する。本発明の耐暑性トマト植物は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上増加した総花粉数を示しうる。本発明の耐暑性トマト植物においてはまた、変異非導入の植物と比較して、上記高温条件下における種子を有する果実と種子を有しない果実の両方を含めた着果率(全開花数に対する全着果数の比率)も増加することが好ましい。本発明の耐暑性トマト植物は、変異非導入の植物と比較して、例えば1.3倍以上増加した着果率を示しうる。

【0043】
好ましい一実施形態では、本発明の耐暑性トマト植物はまた、上記高温条件下であるか30℃未満の常温条件下であるかにかかわらず、生長するにつれて、変異非導入の植物と比較してより濃い緑色の葉を有するようになる。そのような本発明の耐暑性トマト植物では、同じ播種後日数の変異非導入の植物と比較して、葉における葉緑素(クロロフィル)含量が、例えば5%以上、好ましくは10%以上増加する。葉緑素含量は、例えば葉緑素光学濃度(SPAD)値を指標として算出してもよい。SPAD値は試料についてクロロフィルのみを吸収する赤色域と色素にほとんど吸収されない赤外領域の光学濃度差に基づいて常法により算出できる。SPAD値は市販のSPAD値測定機器(葉緑素計)を用いて非破壊的に測定することができる。

【0044】
本発明の耐暑性トマト植物は、好ましい一実施形態では、上記高温条件下でも雄蕊の伸長が抑制されにくい。そのような本発明の耐暑性トマト植物の雄蕊の長さは、変異非導入の植物と比較して、例えば5%以上、好ましくは10%以上長くなる。雄蕊の伸長抑制が低減されることにより、受粉阻害が生じにくくなり、受粉能力が向上する。

【0045】
本発明の耐暑性トマト植物は、上記の遺伝的変異をホモ接合性で有していてもヘテロ接合性で有していてもよいが、ホモ接合性で有することがより好ましい。

【0046】
本発明に係る耐暑性トマト植物の好ましい一実施形態は、トマト品種マイクロトム(Solanum lycopersicum, cv. Micro-Tom)の変異体であるJHT06系統又はその派生株である。JHT06系統及びその派生株は、上記の遺伝的変異を保持するものである。JHT06系統の種子は、2014年9月17日付で、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD;日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-22278の下でブタペスト条約に基づき国際寄託されている。本発明に係る耐暑性トマト植物は、トマト生産用に好適に用いることができるだけでなく、育種親としても好適に利用できる。

【0047】
本発明において「トマト植物」は、文脈により異なるが、基本的にはトマトの全植物体の他、茎、葉、根、花、蕾、果実(果肉、果皮)、種子、細胞、及びカルス等を包含する。

【0048】
さらに本発明は、本発明の耐暑性トマト植物を育種親として、他のトマト植物と交配し、子孫植物として前記変異を有するトマト植物を取得することを含む、耐暑性トマト植物の育種方法も提供する。常法によりこのような交配や得られた子孫植物の自家交配を反復的に行うことによって、上記の遺伝的変異及びそれに起因する形質(耐暑性)を目的のトマト植物において固定することができる。得られた子孫植物については、目的の変異を有することを確認することが好ましい。変異の確認は、上記と同様に、遺伝的変異を検出できる任意の方法により行えばよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
[実施例1]耐暑性変異体の選抜
(1)栽培法
本実施例及び後述の実施例においてトマトの栽培は温室で以下のとおり行った。連結ポット(信和株式会社)に培養土を入れ、種子を培養土上に静置した後、上部から培養土を薄くかけて播種した。土の乾燥を防ぐために灌水を毎日行い、週に一度、灌水と同時に施肥した。バイブレーターによって花を振動させることで、受粉の補助を行った。
【実施例】
【0051】
(2)耐暑性候補系統の選抜
筑波大学(日本)においてトマト品種マイクロトム(Solanum lycopersicum, cv. Micro-Tom)のエチルメタンスルホン酸(EMS)処理によって作製した変異誘発集団を、夏期の高温なガラス温室内で栽培し、耐暑性候補系統の選抜を行った。着果の優れる91系統を選抜し、採種を行った。さらに翌年、選抜された91系統を12粒ずつ播種し、夏期の高温な温室内で同様に栽培し、耐暑性について再評価を行った。その結果、高温下での着果性に優れる16系統を選抜した。いずれの選抜試験においても、開花時の最高気温はトマトの着果に大きな影響を与えるとされる35℃を超えていたことから、十分な高温ストレスが付加されたと判断した。
【実施例】
【0052】
さらに翌年、選抜された系統について、夏期高温下で着果率や収量などの定量的な調査を実施した。まず6月1日に、前年までに選抜された16系統の耐暑性候補系統について播種を行った。播種後、発芽し、正常に花を形成した個体をその後の評価対象とした。栽培初期はガラス温室の窓を全開にし、気温の上昇を抑えた。蕾の発達が確認された6月26日から窓の開閉を行って温室内の気温を調節し、開花2週間前には温室内の日中の温度が35℃を超えるようにした高温ストレス条件(高温条件)下で栽培を行い、7月19日に全植物体の鉢上げを行った。その後も同じ温室内で高温ストレス条件下で栽培を続け、着果を確認し果実を収穫した後に栽培を終了した。
【実施例】
【0053】
栽培の開始から終了までのガラス温室内の温度及び湿度の推移をそれぞれ図1、2に示す。また蕾の発達が確認された6月26日からおよそ1ヶ月間のガラス温室内の温度推移を図3に示す。
【実施例】
【0054】
(3)耐暑性候補系統の特性調査(耐暑性試験)
(i)高温条件下での着果率、果実収量及び一果実当たりの重量の調査
上記(2)に記載したようにして高温条件下で栽培中の各トマト系統について、開花数、総着果数、着果率、果実収量、及び一果実当たりの重量を調べた。さらに、種子の有無により果実を分類し、それぞれの分類群における着果率、果実収量、及び一果実当たりの重量を算出した。
【実施例】
【0055】
開花数としては栽培開始後から10月3日までに開花した花の数を計測した。
【実施例】
【0056】
総着果数及び着果率は10月1日~10月3日に調査した。具体的には、調査日までに開花した花のうち、着果した花の数(着果数)を計測し、以下の式に従って着果率を算出した。
着果率(%)=着果数/開花数×100
【実施例】
【0057】
果実収量に関しては、肥大の終了した全ての着色後果実を調査対象として重量及び個数を計測し、一個体毎に着果した全ての果実の重量及び個数から個体当たりの果実収量(総重量)を算出し、さらに各系統内での平均収量(一個体当たりの果実収量の平均値)を算出した。
【実施例】
【0058】
さらに、各個体において得られた果実の平均重量を算出し、さらに系統内での平均値を算出して各系統における一果実当たりの平均重量とした。
【実施例】
【0059】
10月13日~10月15日の果実調査終了時には、種子の有無によって果実を分類し、種子を1つ以上有する果実の群と種子を有しない果実の群のそれぞれについて果実の総重量及び果実数を算出した。また、全果実数のうち種子を含む果実数の割合(%)を算出した。さらに、総重量を果実数で割ることにより、種子を有する果実の群と種子を有しない果実の群のそれぞれについて、一果実当たりの平均重量を算出した。
【実施例】
【0060】
上記と同様の高温条件下での耐暑性試験を、野生型マイクロトム(変異誘発処理を行っていないトマト品種マイクロトム)についても行った。
【実施例】
【0061】
その結果、野生型と比較して優れた着果率を示す複数の系統が見出された。しかしながら、そのほとんどは種子を有する果実の収量が低く、単為結果性変異体系統であると考えられた。優れた着果率を示した系統のうち1つだけが、種子を有する果実の収量の多い系統として選抜された。この1系統(JHT06系統)は特に高い耐暑性を有していた。
【実施例】
【0062】
得られたトマト品種マイクロトム(Solanum lycopersicum, cv. Micro-Tom)JHT06系統の種子は、2014年9月17日付で、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD;日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-22278の下でブタペスト条約に基づき国際寄託されている。
【実施例】
【0063】
JHT06系統と野生型についての耐暑性試験の結果を図4~図10に示す。
図4に示すとおり、JHT06系統は野生型に比べ、栽培開始後から平成25年10月3日までに開花した花の数が少なかった。しかしJHT06系統の着果率及び総着果数は、野生型に比べて高い値を示した(図5A及びB)。この結果から、JHT06系統は、開花する花は少ないが、開花した花は高い確率で果実を形成できることが示された。
【実施例】
【0064】
一方、JHT06系統における総果実数に対する種子を有する果実の比率(割合)は、野生型と比較して有意に高い値を示した(図6)。またJHT06系統では、野生型と比べて、種子を有する果実における着果数が多く、種子を有する果実の収量も顕著に多かった(図7A、B)。JHT06系統の種子を有する果実の一果実当たりの平均重量は野生型と同程度であった(図8)。一方、JHT06系統の種子を有しない果実の着果数及び果実収量は野生型と比較して低く(図9A、B)、種子を有しない果実の一果実当たりの平均重量は野生型と同程度であった(図10)。以上の結果から、JHT06系統は高温条件下において野生型よりも種子を有する正常な果実を形成する能力が高いことが示された。
【実施例】
【0065】
[実施例2]花粉稔性試験
(1)高温条件下での花粉稔性試験
高温条件下でJHT06系統が種子を有する果実を形成する能力が高いことの原因として、高温条件下でも高い稔性を維持する花粉を形成している可能性が考えられた。そこで、高温条件下で生育させたJHT06系統と野生型系統について、細胞呼吸や代謝活性を測定するために用いられる2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)により花粉を染色し、花粉の生存率を算出した。なおTTC染色はミトコンドリアの還元反応に基づく細胞生存活性の指標であり、生存細胞(ここでは生存花粉)はTTCにより赤く染色されるが、非生存細胞は染色されない。
【実施例】
【0066】
実施例1で図1~3に示す条件で生育させたJHT06系統と野生型マイクロトムにおいて開花した花を採取し、開花日毎に花粉の分析を行った。
【実施例】
【0067】
同一開花日の花から葯を取り出し、TTC溶液(TTC 1%(和光純薬工業株式会社)、スクロース50%(和光純薬工業株式会社))に浸し、花粉が液中に拡散するように振盪した。その後、花粉を含むTTC溶液を38℃の暗室に3時間静置し、花粉を染色した。花粉の入ったTTC溶液を細胞計数盤ワンセルカウンター(バイオメディカルサイエンス)に注入した。システム顕微鏡BX53(オリンパス株式会社)を用いて、総花粉数が最低200個になるように視野を設定し、総花粉数と、総花粉数のうち染色されている花粉数(染色花粉数)とを計測し、花粉生存率を以下の式で算出した。
花粉生存率(%)=染色花粉数/総花粉数×100
【実施例】
【0068】
その結果、温室内の最高温度が開花前2週間~開花日の間に45℃を超える超高温条件に数時間以上曝露された個体において形成された花粉は、全系統で生存していなかった。しかし、開花前2週間~開花日の温室内の温度が35℃~40℃の高温条件に頻繁に曝露された個体において発達した花粉では野生型とJHT06系統の間で顕著に花粉生存率に差が認められ、JHT06系統の花粉生存率が大きく向上していることが示された(図11)。
【実施例】
【0069】
以上の結果から、JHT06系統が高温条件下でも高い花粉稔性を維持する変異体であることが示された(図6、7、11)。トマト生産現場では、温室の窓を解放して栽培を行うため、温室内の温度は最大でも40℃程度である。このような環境条件下で栽培を行う場合、高い花粉稔性を持つJHT06系統は野生型よりも優れた着果率及び果実収量を示すと考えられた。
【実施例】
【0070】
(2)35℃の温度条件下での花粉稔性試験
そこで次に、温度条件を35℃に制御できる閉鎖系植物栽培室を利用して、JHT06系統及び野生型マイクロトムの花粉稔性に対する温度条件の影響を温度制御条件下で調査した。
【実施例】
【0071】
蒸留水を含ませたろ紙をシャーレ中に敷き、その上に播種し、発芽1週間後に正常に発芽した実生を水耕栽培用培地ロックウールキューブ(Grodan)に移植した。高温条件は、明期35℃、暗期25℃、16時間日長(60.0μmol m-2s-1)の温度及び日長条件に設定し、水耕栽培にて生育させた。温室での栽培と同様に、バイブレーターによって花を振動させることで、受粉の補助を行った。また、コントロールとして25℃、16時間日長(60.0μmol m-2s-1)の温度条件を用いたこと以外は上記と同じ条件で栽培を行った。
【実施例】
【0072】
次いで、閉鎖系植物栽培室内で育成した野生型及びJHT06系統の花粉稔性を、上記(1)に記載した温室で栽培した耐暑性候補系統の花粉稔性試験と同様の方法により、TTC溶液を用いて評価した。
【実施例】
【0073】
同一開花日の花を最低8個切除し、花粉を採取した。温室での花粉稔性試験と同様にしてTTC溶液により生存花粉のみを染色し、ワンセルカウンターを用いて花粉生存率と総花粉数を決定した。システム顕微鏡BX53の1視野は1.05mm×1.4mmとなっており、ワンセルカウンターの溶液注入部は厚さ0.1mmに設計されている。そこで、4つの異なる視野内の生存花粉数及び総花粉数を計数し、平均値を求めることにより、花粉懸濁液の液中花粉密度を算出した。液中花粉密度を、1つの花に対して懸濁に使用したTTC溶液の量(100μL)に乗ずることにより、1つの花に含まれる染色花粉数及び総花粉数を算出し、上記と同様に花粉生存率を算出した。
【実施例】
【0074】
その結果、野生型では、非高温条件下のコントロールと比べて、高温条件下の総花粉数が顕著に減少していた(図12A)。JHT06系統でも同様に、非高温条件下のコントロールと比べて、高温条件下では花粉の総数が減少していたが、野生型と比べると総花粉数は高い値を示した(図12A)。さらに、花粉生存率でも、総花粉数と同様の傾向が見られ、JHT06系統は野生型よりも高い花粉生存率を示した(図12B)。
【実施例】
【0075】
さらに、高温条件下では雄蕊の伸長が抑制され、雄蕊が短くなり正常な受粉が阻害されることが知られていることから、雄蕊の長さを調査した。同一開花日の花から雄蕊を1つ切除し、その長さを測定し、複数の花における平均値を算出した。
【実施例】
【0076】
その結果、JHT06系統の雄蕊の長さは、野生型よりも顕著に長いことが示された(図13)。よって、JHT06系統では高温条件下でも雄蕊の伸長抑制による受粉阻害が起こりにくいことも示された。
【実施例】
【0077】
以上の結果から、JHT06系統が高い総花粉数及び花粉生存率を示し、それにより高温条件下でも種子を含む正常な果実を形成する能力が高いことが、示された。
【実施例】
【0078】
[実施例3]SPAD値測定
JHT06系統において葉の緑色が濃いという特徴が認められたことから、葉緑素含量の指標であるSPAD値を測定し、野生型とJHT06系統を評価した。
【実施例】
【0079】
実施例1で図1~3に示す条件で生育させた野生型マイクロトム及びJHT06系統について、播種の30、40、50、60、70、80日後、葉のSPAD値を葉緑素計SPAD-502Plus(コニカミノルタ)により計測した。30、40、50、60、70日後の計測では、子葉を除く全ての葉についてSPAD値を計測した。80日後はランダムに選んだ20葉のSPAD値を計測した。
【実施例】
【0080】
各系統9個体を計測し、得られたSPAD値から、一個体当たりの平均SPAD値を算出した。その結果、生育後期に野生型とJHT06系統の間で明らかな差が見られた(図14)。この結果は葉の緑色が濃いというJHT06系統の表現型を裏付けるものであった。このことはまた、フラボノイド等の抗酸化作用を有する物質がJHT06系統の葉内に蓄積し、高温ストレスに対する抵抗力を植物体に付与している可能性を示している。
【実施例】
【0081】
[実施例4]次世代シークエンサーを用いたJHT06系統の全ゲノム解析
JHT06系統について全ゲノム配列を決定し、変異遺伝子の解析を行った。JHT06系統のゲノムDNAの抽出には、DNA精製キットMaxwell(R) 16 DNA Purification Kits(Promega)を用いた。JHT06系統の若い葉を6枚程度切除し、1.5mLチューブに入れ液体窒素によって凍結した。凍結した葉をマイクロペッスルを用いて十分にすり潰した後、上記キット中の溶解バッファーを含むカートリッジに粉砕した葉を入れ、カートリッジを核酸・タンパク質自動精製装置Maxwell(R) 16にセットして、ゲノムDNAの抽出を行った。抽出したゲノムDNAは滅菌水400μLに溶解し、ゲノムDNAが全量1μgになるようにバルクで調整し、次世代シークエンサー HiSeqTMシーケンスシステム(Illumina)を用いて、JHT06系統の全ゲノム配列を決定した。
【実施例】
【0082】
決定した配列を野生型マイクロトムの参照全ゲノム配列と比較解析した結果、186の変異箇所が見出された。同一の遺伝子内に複数の変異箇所が存在したものもあり、変異が認められた遺伝子数としては159個であった。エキソン内の変異(SNP)のうちアミノ酸変異を起こすものは31か所あり、そのうち機能が推定されるものは26か所、機能が未知のものは5か所であった。
【実施例】
【0083】
さらに、次世代シークエンサーを用いた上記解析でエキソン領域に見出された31個のSNPのうち28個のSNPについて、JHT06系統のゲノム中のSNPsの有無をさらに確認する試験を行った。
【実施例】
【0084】
JHT06系統のゲノムDNAは上記と同様の方法で葉から抽出した。抽出したゲノムDNAを鋳型とし、28個のSNPのそれぞれの前後500bp程度を挟むように設計されたプライマー(表1)を用いて、PCRによる増幅を行った。PCR反応液の組成は、10×PCRバッファー 5.0μL、2mM dNTPs 5μL、25mM MgSO4 2μL、鋳型DNA 2μL、DNAポリメラーゼKOD-plus- 1μL、プライマー 各1.5μL、超純水 32μLを含む計50μLとした。PCR反応は初めに94℃で2分間熱変性を行い、その後のサイクルでは94℃で2分間、55℃で30秒、68℃で1分間を1サイクルとし、35サイクル行った。増幅したDNAを1.5%のアガロースゲルで電気泳動し、DNAの増幅を確認した。
【実施例】
【0085】
【表1】
JP2016047778A1_000002t.gif
JP2016047778A1_000003t.gif
【実施例】
【0086】
増幅したDNAは、精製システムWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した後、シークエンス反応を行い、DNAシークエンサー3500 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いてDNA配列を決定及び解析し、JHT06系統のゲノム中の上記SNPsの有無を検証した。
【実施例】
【0087】
その結果、28個のうち5個のSNPがJHT06系統のゲノム中に存在することが確認された(表2)。これら5個のSNPs(表3)の中に、JHT06系統の強い耐暑性、特に高温条件下での高い花粉生存率や雄蕊伸長抑制耐性、種子を有する果実の高い形成能を付与している変異が含まれると考えられた。すなわち、表3に示す遺伝子の少なくとも1つにおける変異が、JHT06系統に強い耐暑性をもたらしていると考えられた。
【実施例】
【0088】
【表2】
JP2016047778A1_000004t.gif
JP2016047778A1_000005t.gif
【実施例】
【0089】
JHT06系統のゲノム中に存在が確認された5個のSNPの情報を表3に示す。表3のSNP番号は、表2のSNP番号と対応している。表3には、上記で決定・解析したトマト品種マイクロトム変異体JHT06系統由来のSNPを含むDNA配列(マイクロトム変異配列)の配列番号も示している。表3中、それぞれのSNP及びアミノ酸変異は、トマト品種Heinz1706(野生型)の対応遺伝子及びアミノ酸配列の全長配列(表3中に配列番号で示す)を基準配列としてその配列上の位置に基づいて表している。これら変異部位の変異前(野生型)の塩基及びアミノ酸は、トマト品種ハインツ1706(Solanum lycopersicum cv. Heinz 1706)のゲノム配列との間で保存されていた。なお表2及び表3中の遺伝子番号は、データベースSol genomics network(http://solgenomics.net)で検索することができる。
【実施例】
【0090】
【表3】
JP2016047778A1_000006t.gif
【実施例】
【0091】
表3中、例えば、遺伝子Solyc06g005930.1.1(赤色光感受性低減タンパク質1[Sensitivity to red light reduced protein 1]遺伝子)がJHT06系統の高い耐暑性の原因遺伝子である可能性が考えられる。当該遺伝子はシロイヌナズナで研究されているシロイヌナズナSSR1(sensitivity to red light reduced protein 1)遺伝子のオルソログである。シロイヌナズナSSR1は概日リズムや光合成に関係していることが知られている(Staiger D., (2003) Gene & Development 17: p.256-268)。
【実施例】
【0092】
[実施例5]
実施例4でSNPsの存在が確認された表3中の4つの遺伝子(JHT06系統の変異型遺伝子)について、実施例4と同様の方法により、再度、配列決定及び変異解析を実施した。併せて対応する野生型遺伝子(野生型マイクロトム由来)の塩基配列も決定した。Solyc06g005540.1.1の変異型遺伝子について決定されたCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号71及び72に、対応する野生型遺伝子のCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号73及び74に示す。Solyc06g005930.1.1の変異型遺伝子について決定されたCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号75及び76に、対応する野生型遺伝子のCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号77及び78に示す。Solyc06g071730.2.1の変異型遺伝子について決定されたCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号79及び80に、対応する野生型遺伝子のCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号81及び82に示す。Solyc04g076040.2.1の変異型遺伝子について決定されたCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号83及び84に、対応する野生型遺伝子のCDS配列及びコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号85及び86に示す。
【実施例】
【0093】
その結果、表3に示したSNPs(実施例4)の全てが検出され、それらのSNPsについて再現性を確認することができた。
【実施例】
【0094】
さらにこの解析では、遺伝子Solyc06g005540.1.1とSolyc06g005930.1.1中に新たな変異が多数確認され、それらの再現性も確認された。
【実施例】
【0095】
同定された重要な変異を表4に示す。
【表4】
JP2016047778A1_000007t.gif
【実施例】
【0096】
表4に示すように、変異型遺伝子Solyc06g005540.1.1(配列番号71)では、対応する野生型遺伝子配列(配列番号73)上の2位のチミンがシトシン(C)に置換されていた。この塩基置換により、開始コドンATGが変異型遺伝子配列上ではACGに変異していた。この遺伝子変異により、野性型アミノ酸配列上の1位のメチオニンは変異型アミノ酸配列上の1位のトレオニンに変異しており、開始メチオニン(開始コドン)の欠失により、当遺伝子は翻訳されておらず、遺伝子Solyc06g005540.1.1は機能を損失していると考えられた。さらに、Solyc06g005540.1.1の変異型遺伝子配列上に13bpの欠失(51位~63位)と塩基置換T115A102が検出された。13bpの欠失の位置(51位~63位)は、野生型遺伝子の塩基配列(配列番号73)上の位置である。T115A102は、野生型遺伝子の塩基配列上の115位のチミンが、JHT06系統(変異型)の遺伝子の塩基配列上の102位のアラニンに置換されたことを意味する。なお、変異部位のずれは上記の13bpの欠失によるものである。この13bpの欠失はフレームシフトを引き起こし、さらに塩基置換T115A102は終止コドンを生成してそれ以降のアミノ酸配列の翻訳を停止させることから、これらの変異の存在からも、JHT06系統の遺伝子Solyc06g005540.1.1は機能を喪失していると考えられた。
【実施例】
【0097】
一方、変異型遺伝子Solyc06g005930.1.1(SSR1遺伝子)では、野生型遺伝子の塩基配列(配列番号77)上の158位(第2エキソン内)にグリシン(G)が挿入されていた。この挿入配列により以後の塩基配列にフレームシフトが起き、アミノ酸配列上の56位に相当する位置には終止コドンTGAが生成し、それ以降のアミノ酸配列の翻訳を停止させることから、JHT06系統の遺伝子Solyc06g005930.1.1(SSR1遺伝子)は機能を喪失していると考えられた。変異型SSR1遺伝子では、野生型塩基配列(配列番号77)上の149位~163位にアミノ酸置換を引き起こす塩基置換も多数認められた。さらに、56位の終止コドン以後にも多数の終止コドンが生成されており、このことからも、JHT06系統の遺伝子Solyc06g005930.1.1(SSR1遺伝子)は機能を喪失していると考えられる。
【実施例】
【0098】
遺伝子Solyc06g005930.1.1(SSR1遺伝子)は赤色光感受性低減タンパク質をコードしていることから、この遺伝子の欠損により植物体の概日リズムに変化が起き、その結果として植物に耐暑性が付与されていることが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明を用いれば、耐暑性に優れたトマト植物の作出が可能になる。例えば、本発明の耐暑性トマト変異体を育種素材として用いることにより、夏期トマト栽培において安定した果実品質や収量をもたらすことが可能なトマト品種の効率的な作出が可能になる。
【0100】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0101】
配列番号1~58:プライマー
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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