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明細書 :ペプチド結合リポソーム、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年7月13日(2017.7.13)
発明の名称または考案の名称 ペプチド結合リポソーム、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチン
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
A61K  47/28        (2006.01)
A61K  39/39        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
FI A61K 37/02
A61K 9/127
A61K 47/24
A61K 47/28
A61K 39/39
A61K 39/00 H
A61P 37/04
A61P 35/00
C07K 7/06 ZNA
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 37
出願番号 特願2016-550123 (P2016-550123)
国際出願番号 PCT/JP2015/076214
国際公開番号 WO2016/047509
国際出願日 平成27年9月16日(2015.9.16)
国際公開日 平成28年3月31日(2016.3.31)
優先権出願番号 2014196454
優先日 平成26年9月26日(2014.9.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】堀内 大
【氏名】赤塚 俊隆
【氏名】内田 哲也
出願人 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
【識別番号】100163038、【弁理士】、【氏名又は名称】山下 武志
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C085
4H045
Fターム 4C076AA19
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB12
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD63
4C076DD70Q
4C076FF36
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA05
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4C084MA52
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4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB261
4C085AA03
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4C085CC32
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4C085EE07
4C085GG02
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4C085GG08
4C085GG10
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA74
要約 配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、リポソームの表面に結合しているペプチド結合リポソームである。
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、リポソームの表面に結合していることを特徴とするペプチド結合リポソーム。
【請求項2】
リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質と、リポソームの安定化剤とを含む請求項1に記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項3】
リン脂質が、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するリン脂質である請求項2に記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項4】
アシル基が、オレイル基である請求項2から3のいずれかに記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項5】
リン脂質が、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル-ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド-ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つである請求項2から4のいずれかに記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項6】
リポソームの安定化剤が、コレステロールである請求項2から5のいずれかに記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項7】
ペプチドが、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質に結合している請求項2から6のいずれかに記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
【請求項9】
更に、アジュバントを含有する請求項8に記載の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする抗腫瘍ワクチン。
【請求項11】
更に、アジュバントを含有する請求項10に記載の抗腫瘍ワクチン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチンとして好適なペプチド結合リポソーム、並びに前記ペプチド結合リポソームを利用した細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腫瘍抗原に対して細胞傷害性Tリンパ球(以下、「CTL」と称することがある)反応を誘導し、活性化したCTLが腫瘍細胞を排除することを期待した免疫療法の開発研究が盛んに行われている。
前記免疫療法としては、腫瘍抗原ペプチドによるCTL誘導型ワクチンが開発の中心となっている。
【0003】
これまでに、Telomere Reverse Transcriptase(以下、「TERT」と称することがある)を標的抗原とした腫瘍抗原ペプチドが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
前記TERTは、様々な種類の臨床腫瘍の約9割で発現が認められる汎腫瘍抗原である。そのため、TERT由来抗原に対して強力な免疫反応を引き起こすワクチンは、汎用性の高い万能抗腫瘍ワクチンとなり得ると期待されている。
【0004】
一般に、ワクチン抗原の候補エピトープの探索では、抗原タンパク質のアミノ酸配列をコンピュータアルゴリズムにより解析し、HLAとの予測アフィニティが高いものを選定することが多い(例えば、非特許文献1参照)。
前記TERT由来抗原を利用したペプチドワクチンにおいても、現在臨床試験が行われている抗原ペプチド540-548は、前記TERTの天然配列の中でHLA-A2に対する予測アフィニティが最も高い配列である(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これまでに十分に満足できる抗腫瘍ワクチンは提供されていない。
これは、腫瘍患者の末梢血中から検出される腫瘍抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球は、抗原刺激に対して無反応な状態に陥っているためと考えられる。その原因は、腫瘍の生育過程において、HLAと高いアフィニティを有し、宿主免疫系に認識されやすいエピトープが腫瘍細胞からCTLに提示され、免疫寛容が誘導されるためと考えられる。
また、前記腫瘍抗原ペプチドは、体細胞のMHCクラスIにも結合するため、副刺激を欠いた不適切な形でT細胞に抗原提示されることになり、投与抗原特異的な免疫寛容を引き起こす可能性があるということも考えられる。
【0006】
そのため、自己抗原由来であるTERTタンパク質の高アフィニティエピトープは、腫瘍の生育過程で腫瘍細胞からTリンパ球に抗原提示され、その結果、免疫寛容が誘導されてしまうという問題が考えられる。抗原特異的な免疫寛容が誘導された場合、抗原特異的Tリンパ球は活性化刺激に不応答な状態に陥り、十分な抗腫瘍効果を発揮する細胞傷害性Tリンパ球を抗腫瘍ワクチンにより誘導することが難しくなると予想される。
【0007】
一方、これまでに、不飽和脂肪酸からなるリポソームの表面に抗原ペプチドを結合させることにより、プロフェッショナル抗原提示細胞(以下、「pAPC」と称することがある)に特異的に取り込まれ、MHCクラスIにクロスプレゼンテーションされ、副刺激を備えた適切な形で抗原提示されることが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、免疫寛容を誘導することなく、細胞性免疫反応を引き起こすことが可能な、抗腫瘍ワクチンは未だ開発されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2010-252810号公報
【特許文献2】特表2002-520293号公報
【0010】

【非特許文献1】Stefan Fest et al., Survivin minigene DNA vaccination is effective against neuroblastoma., Int. J. Cancer, 125, 104-114, 2009
【非特許文献2】Jun-Ping Liu et al., Telomeres in cancer immunotherapy., Biochemica et Biophysica Acta, 1805, 35-42, 2010
【非特許文献3】Tanaka Y. et al., Liposome-Coupled Antigens Are Internalized by Antigen-Presenting Cells via Pinocytosis and Cross-Presented to CD8+ T Cells., Plos ONE, 5(12) e15225, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、免疫寛容を誘導することなく、細胞性免疫反応を引き起こすことが可能なペプチド結合リポソーム、並びに前記ペプチド結合リポソームを利用した細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、リポソームの表面に結合していることを特徴とするペプチド結合リポソームである。
<2> 前記<1>に記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする細胞傷害性Tリンパ球活性化剤である。
<3> 前記<1>に記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする抗腫瘍ワクチンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、免疫寛容を誘導することなく、細胞性免疫反応を引き起こすことが可能なペプチド結合リポソーム、並びに前記ペプチド結合リポソームを利用した細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、試験例2におけるエピトープペプチド#1で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1B】図1Bは、試験例2におけるエピトープペプチド#2で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1C】図1Cは、試験例2におけるエピトープペプチド#3で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1D】図1Dは、試験例2におけるエピトープペプチド#4で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1E】図1Eは、試験例2におけるエピトープペプチド#5で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1F】図1Fは、試験例2におけるエピトープペプチド#6で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1G】図1Gは、試験例2におけるエピトープペプチド#7で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1H】図1Hは、試験例2におけるエピトープペプチド#8で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1I】図1Iは、試験例2におけるエピトープペプチド#9で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1J】図1Jは、試験例2におけるエピトープペプチド#10で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1K】図1Kは、試験例2におけるエピトープペプチド#11で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1L】図1Lは、試験例2におけるエピトープペプチド#12で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1M】図1Mは、試験例2におけるエピトープペプチド#13で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1N】図1Nは、試験例2におけるエピトープペプチド#14で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1O】図1Oは、試験例2におけるエピトープペプチド#15で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1P】図1Pは、試験例2におけるエピトープペプチド#16で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1Q】図1Qは、試験例2におけるエピトープペプチド#17で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1R】図1Rは、試験例2におけるエピトープペプチド#18で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1S】図1Sは、試験例2におけるエピトープペプチド#19で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図1T】図1Tは、試験例2におけるエピトープペプチド#20で抗原刺激した場合の結果を示す図である。
【図2A】図2Aは、試験例3において、免疫に用いたエピトープペプチドに対応するエピトープペプチドで抗原刺激を行った結果を示す図である。
【図2B】図2Bは、試験例3において、免疫に用いたエピトープペプチドに対応するエピトープペプチドの天然エピトープペプチドで抗原刺激を行った結果を示す図である。
【図3】図3は、試験例4の結果を示す図である。
【図4】図4は、試験例5の結果を示す図である。
【図5】図5は、試験例6における移植後24日目の腫瘍の面積を測定した結果を示す図である。
【図6】図6は、試験例6におけるマウスの生存期間の検討を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ペプチド結合リポソーム)
本発明のペプチド結合リポソームは、配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、リポソームの表面に結合してなり、必要に応じて更にその他の成分を含む。

【0016】
<ペプチド>
前記ペプチド結合リポソームにおけるペプチドは、下記配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなる。
LQAYRFHAV(配列番号:14)
前記配列番号:14で表されるアミノ酸配列は、ヒトTERT配列中、944番目から952番目に該当するアミノ酸配列において、952番目のアミノ酸をVに置換したものである。

【0017】
前記ペプチドは、リポソームの表面に結合した状態で用いることにより、プロフェッショナル抗原提示細胞に特異的に取り込まれ、主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIにクロスプレゼンテーションされ、副刺激を備えた適切な形で抗原提示される。

【0018】
前記ペプチド(以下、「抗原」、「エピトープペプチド」と称することもある)は、HLA-A2(「HLA-A*0201」と称することもある)に拘束された細胞障害性Tリンパ球、及びHLA-A24(「HLA-A*2402」と称することもある)に拘束された細胞傷害性Tリンパ球の少なくともいずれかを誘導し得る。
前記「細胞傷害性Tリンパ球を誘導する」とは、哺乳動物を抗原で免疫した場合に、前記哺乳動物の生体内において、前記抗原を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球の数及び活性の少なくともいずれかが上昇することを意味する。
前記哺乳動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどが挙げられる。
前記細胞傷害性Tリンパ球の活性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞傷害活性などが挙げられる。
前記ペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球を誘導し、細胞性免疫を活性化することができる。

【0019】
前記ペプチドは、細胞内でプロテアソームなどの作用により切断されて生じるように設計されたものであってもよい。
また、前記ペプチドは、細胞内でMHC上に提示される際に、MHCの個人差(多型性)による提示抗原の選別を克服できるような残基を付加配列として有していてもよい。

【0020】
前記ペプチドの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、化学合成により製造する方法、生合成により製造する方法などが挙げられる。
前記化学合成により製造する方法としては、例えば、液相合成、固相合成などが挙げられる。
前記生合成による製造方法としては、例えば、前記ペプチドを発現し得る発現ベクターを導入した形質転換体を培養し、その培養物からアフィニティカラムなどの周知の精製技術により前記ペプチドを単離する方法などが挙げられる。
前記発現ベクターの構築方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより構築することができる。
前記形質転換体としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、大腸菌などが挙げられる。

【0021】
<リポソーム>
前記ペプチド結合リポソームにおけるリポソームとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2014-5205号公報、国際公開第2012/033142号に記載のものなどが挙げられる。
前記リポソームを構成するリン脂質膜は、両親媒性界面活性剤であるリン脂質が、極性基を水相側に向けて界面を形成し、疎水基が界面の反対側に向く構造を有する。
前記リポソームとは、閉鎖空間を有するリン脂質二重膜のことをいう。

【0022】
-リン脂質膜-
前記リポソームを構成するリン脂質膜は、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質と、リポソームの安定化剤とを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む態様が好ましい。

【0023】
--不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質--
前記リン脂質は、前記不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するリン脂質からなるものであってもよいし、前記不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基を有するリン脂質からなるものであってもよいし、両者からなるものであってもよい。これらの中でも、細胞傷害性Tリンパ球(CD8T細胞、CTL)をより効率良く特異的に増強することができる点で、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するリン脂質からなることが好ましい。

【0024】
前記リン脂質が有するグリセリン残基の1-位、及び2-位に結合する不飽和のアシル基又は不飽和の炭化水素基は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、工業的な生産性の観点から、同一であることが好ましい。

【0025】
---アシル基---
前記アシル基の炭素数としては、14~24であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、16~22が好ましく、18~22がより好ましく、18が特に好ましい。前記アシル基の炭素数が13未満であると、リポソームの安定性が悪くなったり、またCTL活性増強効果が不十分になったりする場合があり、前記アシル基の炭素数が24を超えると、リポソームの安定性が悪くなる場合がある。
前記アシル基の具体例としては、パルミトオレオイル基、オレオイル基、エルコイル基などが挙げられる。これらの中でも、オレイル基が好ましい。

【0026】
---炭化水素基---
前記炭化水素基の炭素数としては、14~24であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、16~22が好ましく、18~22がより好ましく、18が特に好ましい。
前記炭化水素基の具体例としては、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、C20モノエン基、C22モノエン基、C24モノエン基などが挙げられる。

【0027】
--リン脂質--
前記リン脂質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性リン脂質、中性リン脂質、前記ペプチドを結合することのできる官能基を有する反応性リン脂質などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記リン脂質の種類、その割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0028】
前記酸性リン脂質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸性リン脂質の中でも、CTL活性を実用上十分なレベルに増強することができる点、及び工業的な供給性、医薬品として用いるための品質等の点で、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有する、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルイノシトールが好ましい。
前記酸性リン脂質の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記酸性リン脂質は、リポソームの表面にアニオン性電離基を与えるので、リポソーム表面にマイナスのゼータ電位を付与する。このためリポソームは、電荷的な反発力を得、水性溶媒中で安定な製剤として存在できる。このように、前記酸性リン脂質は、前記ペプチド結合リポソームが水性溶媒中にある際のリポソームの安定性を確保する点で重要である。

【0029】
前記中性リン脂質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホスファチジルコリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中性リン脂質の中でも、ジオレオイルホスファチジルコリンが好ましい。
前記中性リン脂質の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記酸性リン脂質、前記反応性リン脂質、及び前記リポソームの安定化剤の含有量を確保した上で、決定することができる。
前記中性リン脂質は、前記酸性リン脂質及び前記ペプチドを結合したリン脂質に比べ、リポソームを安定化する機能が高く、膜の安定性を向上させ得る。そのため、前記リン脂質膜は、中性リン脂質を含有することが好ましい。

【0030】
前記反応性リン脂質は、前記ペプチドが結合することのできる官能基を有するリン脂質である。
前記反応性リン脂質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記反応性リン脂質の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0031】
前記反応性リン脂質の具体例としては、ホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体、ホスファチジルグリセロール又はその末端変性体、ホスファチジルセリン又はその末端変性体、ホスファチジン酸又はその末端変性体、ホスファチジルイノシトール又はその末端変性体などが挙げられる。
前記反応性リン脂質の中でも、工業的な入手性、前記ペプチドとの結合工程の簡便性、収率などの点で、ホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体が好ましい。前記ホスファチジルエタノールアミンは、その末端に前記ペプチドを結合することのできるアミノ基を有する。
また、前記反応性リン脂質の中でも、CTL活性を実用上十分なレベルに増強することができる点、リポソームでの安定性、及び工業的な供給性、医薬品として用いるための品質などの点で、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体が特に好ましい。

【0032】
前記ジアシルホスファチジルエタノールアミンの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ジアシルホスファチジルコリンを原料に、ホスホリパーゼDを用いてコリンとエタノールアミンとを塩基交換反応させることで製造することができる。
具体的には、ジアシルホスファチジルコリンを溶解したクロロホルム溶液と、ホスホリパーゼD及びエタノールアミンを溶解した水とを任意の比率で混合し、粗反応物を得ることができる。前記粗反応物を、クロロホルム/メタノール/水系溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製し、目的のジアシルホスファチジルエタノールアミンを得ることができる。
前記溶媒の組成比などのカラム精製条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0033】
前記ジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端変性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に2価反応性化合物の一方の末端を結合させたジアシルホスファチジルエタノールアミン末端変性体などが挙げられる。

【0034】
前記2価反応性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と反応することができるアルデヒド基又はコハク酸イミド基を少なくとも片方の末端に有する化合物などが挙げられる。
前記アルデヒド基を有する2価反応性化合物の具体例としては、グリオキサール、グルタルアルデヒド、サクシンジアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、グルタルアルデヒドが好ましい。
前記コハク酸イミド基を有する2価反応性化合物の具体例としては、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコール-ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、ジサクシンイミジルグルタレートなどが挙げられる。

【0035】
また、一方の末端にサクシンイミド基、他方の片末端にマレイミド基を有する2価反応性化合物として、例えば、N-サクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)アセテート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホサクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミドなどが挙げられる。このような2価反応性化合物を用いると、官能基としてマレイミド基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミン末端変性体が得られる。

【0036】
以上のような2価反応性化合物の一方の末端の官能基をジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に結合することにより、ジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端変性体を得ることができる。

【0037】
前記リン脂質膜は、前記不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質を1種含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましく、3種以上含むことが特に好ましい。

【0038】
前記リン脂質としては、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル-ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド-ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つの、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質を含有することが好ましい。前記リン脂質の種類は、2種以上がより好ましく、3種以上が特に好ましい。

【0039】
また、前記リン脂質膜は、(1)不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する酸性リン脂質、(2)不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する中性リン脂質、及び(3)不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する反応性リン脂質を、それぞれ、少なくとも1種含有することが好ましい。

【0040】
前記リン脂質膜は、前記ペプチドが有する官能基を介して、前記ペプチドを安定にリポソームに結合させることができる点で、アミノ基、サクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、ジスルフィド基、メチレン鎖を有する炭化水素基(アルキル基等)からなる疎水基などの官能基を有することが好ましい。
前記官能基の中でも、アミノ基、サクシンイミド基、マレイミド基がより好ましい。

【0041】
--リポソームの安定化剤--
前記リポソームの安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステロール類、トコフェロール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ステロール類の具体例としては、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロールなどが挙げられる。これらの中でも、入手性などの点で、コレステロールが好ましい。
前記トコフェロール類の具体例としては、α-トコフェロールなどが挙げられる。これらの中でも、入手性などの点で、α-トコフェロールが好ましい。

【0042】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、リポソームを構成することができる限り、特に制限はなく、公知の構成成分を適宜選択することができる。

【0043】
前記リン脂質膜の組成の一例としては、例えば、以下を挙げることができる。
(A) 不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質 ・・・ 1モル%~99.8モル%、
(B) リポソームの安定化剤 ・・・ 0.2モル%~75モル%
なお、各成分の含有量は、ペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜の全構成成分に対するモル%である。
前記成分(A)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リポソームの安定性の観点から、10モル%~90モル%が好ましく、30モル%~80モル%がより好ましく、50モル%~70モル%が特に好ましい。
前記成分(B)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リポソームの安定性の観点から、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が特に好ましい。前記成分(B)の含有量が75モル%を超えると、リポソームの安定性が損なわれることがある。

【0044】
前記成分(A)には、以下が含まれる。
(a) ペプチドが結合していない、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質、及び
(b) ペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質。
前記成分(a)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01モル%~85モル%が好ましく、0.1モル%~80モル%がより好ましく、0.1モル%~60モル%が更に好ましく、0.1モル%~50モル%が特に好ましい。
前記成分(b)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2モル%~80モル%が好ましく、0.3モル%~60モル%がより好ましく、0.4モル%~50モル%が更に好ましく、0.5モル%~25モル%が特に好ましい。前記成分(b)の含有量が、0.2モル%未満であると、前記ペプチドの量が低下するため、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となることがあり、80モル%を超えると、リポソームの安定性が低下することがある。

【0045】
前記成分(a)のリン脂質には、前記酸性リン脂質、前記中性リン脂質が含まれる。
前記成分(b)のリン脂質には、前記反応性リン脂質が含まれる。

【0046】
前記酸性リン脂質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1モル%~85モル%が好ましく、2モル%~80モル%がより好ましく、4モル%~60モル%が更に好ましく、5モル%~40モル%が特に好ましい。前記酸性リン脂質の含有量が1モル%未満であると、ゼータ電位が小さくなりリポソームの安定性が低くなり、また、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となることがある。一方、前記酸性リン脂質の含有量が85モル%を超えると、結果として、リポソームのペプチドが結合したリン脂質の含有量が低下し、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となることがある。

【0047】
前記中性リン脂質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01モル%~80モル%が好ましく、0.1モル%~70モル%がより好ましく、0.1モル%~60モル%が更に好ましく、0.1モル%~50モル%が特に好ましい。前記中性リン脂質の含有量が80モル%を超えると、リポソームに含まれる酸性リン脂質、ペプチドが結合したリン脂質及びリポソームの安定化剤の含有量が低下し、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となることがある。

【0048】
前記ペプチドが結合したリン脂質は、前記反応性リン脂質にペプチドが結合して得られるものである。
前記反応性リン脂質が前記ペプチドと結合する割合としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、結合に用いる官能基の種類、結合処理条件などにより適宜選択することができる。
例えば、ジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端アミノ基に2価反応性化合物であるジサクシンイミジルサクシネートの片末端を結合して得たジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端変性体を反応性リン脂質として用いる場合、結合処理条件の選択によって反応性リン脂質の10%~99%をペプチドと結合することができる。この場合、ペプチドと結合していない反応性リン脂質は、酸性リン脂質となってリポソームに含有される。

【0049】
前記リン脂質膜の好ましい態様としては、例えば、以下の組成が挙げられる。
(I) 不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する酸性リン脂質 ・・・ 1モル%~85モル%、
(II) 不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する中性リン脂質 ・・・ 0.01モル%~80モル%、
(III) ペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質 ・・・ 0.2モル%~80モル%、
(IV) リポソームの安定化剤 ・・・ 0.2モル%~75モル%。
(合計100モル%)

【0050】
前記リン脂質膜のより好ましい態様としては、例えば、以下の組成が挙げられる。
前記成分(I) ・・・ 2モル%~80モル%、
前記成分(II) ・・・ 0.1モル%~70モル%、
前記成分(III) ・・・ 0.3モル%~60モル%、
前記成分(IV) ・・・ 10モル%~70モル%。
(合計100モル%)

【0051】
前記リン脂質膜の更に好ましい態様としては、例えば、以下の組成が挙げられる。
前記成分(I) ・・・ 4モル%~60モル%、
前記成分(II) ・・・ 0.1モル%~60モル%、
前記成分(III) ・・・ 0.4モル%~50モル%、
前記成分(IV) ・・・ 20モル%~60モル%。
(合計100モル%)

【0052】
前記リン脂質膜の特に好ましい態様としては、例えば、以下の組成が挙げられる。
前記成分(I) ・・・ 5モル%~40モル%、
前記成分(II) ・・・ 0.1モル%~50モル%、
前記成分(III) ・・・ 0.5モル%~25モル%、
前記成分(IV) ・・・ 25モル%~55モル%。
(合計100モル%)

【0053】
前記リン脂質膜は、本発明の効果を損なわない限り、炭素数が14未満又は24を超える不飽和アシル基、及び不飽和炭化水素基のいずれかを含むリン脂質を含んでいてもよい。

【0054】
前記リン脂質膜中のリン脂質に含まれる全ての不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の合計数に対する、炭素数が14~24である不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の数の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましく、97%以上(例えば実質的に100%)が最も好ましい。

【0055】
前記リン脂質膜は、本発明の効果を損なわない限り、炭素数が14~24のアシル基又は炭化水素基を有する、リン脂質以外の脂質を含んでいてもよい。
前記炭素数が14~24のアシル基又は炭化水素基を有する、リン脂質以外の脂質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下(例えば実質的に0モル%)が特に好ましい。

【0056】
前記リポソームの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
例えば、エクスツルージョン法、ボルテックスミキサー法、超音波法、界面活性剤除去法、逆相蒸発法、エタノール注入法、プレベシクル法、フレンチプレス法、W/O/Wエマルジョン法、アニーリング法、凍結融解法などが挙げられる。

【0057】
前記リポソームの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多重層リポソーム、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームなどが挙げられる。
前記形態のリポソームは、前記リポソームの製造方法を適宜選択することにより、製造することができる。

【0058】
前記リポソームの粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、保存安定性などの点で、20nm~600nmが好ましく、30nm~500nmがより好ましく、40nm~400nmが更に好ましく、50nm~300nmが特に好ましく、70nm~230nmが最も好ましい。
前記リポソームの粒径は、動的光散乱法により測定することができる。

【0059】
前記リポソームは、その物理化学的安定性を向上させるために、リポソーム調製過程又は調製後に、リポソームの内水相及び外水相の少なくともいずれかに、糖類又は多価アルコール類を添加乃至溶解してもよい。
長期保存、或いは製剤化途中での保管が必要な場合には、リポソームの保護剤として、糖類又は多価アルコールを添加乃至溶解し、凍結乾燥により水分を除いてリン脂質組成物の凍結乾燥物とすることが好ましい。

【0060】
前記糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース等の単糖類;サッカロース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース等の三糖類;シクロデキストリン等のオリゴ糖;デキストリン等の多糖類;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記糖類の中でも、単糖類、二糖類が好ましく、入手性等の点で、グルコース、サッカロースがより好ましい。

【0061】
前記多価アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン系化合物;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコール類の中でも、入手性の点で、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、マンニトール、分子量400~10,000のポリエチレングリコールが好ましい。

【0062】
前記リポソームの内水相及び外水相の少なくともいずれかに含ませる、前記糖類又は多価アルコール類の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、リポソーム液に対する質量濃度で、1質量%~20質量%が好ましく、2質量%~10質量%がより好ましい。

【0063】
<結合>
前記ペプチド結合リポソームは、前記リポソームの表面に前記ペプチドが結合している。
前記結合の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ペプチドが、前記不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質に結合している態様が好ましい。

【0064】
前記ペプチドは、前記ペプチドが有する官能基を介して前記リポソームの表面に結合することができる。
前記リポソームの表面への結合に用いられる前記ペプチド中の官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、ジスルフィド基、メチレン鎖を有する炭化水素基(アルキル基等)からなる疎水基などが挙げられる。
前記アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、及びジスルフィド基は、共有結合により、前記ペプチドを前記リポソームの表面に結合することができる。
前記アミノ基、及びカルボキシル基は、イオン結合により、前記ペプチドを前記リポソームの表面に結合することができる。
前記疎水基は、疎水基同士の疎水結合により、前記ペプチドを前記リポソームの表面に結合することができる。
これらの中でも、アミノ基、カルボキシル基、又はチオール基を介してリポソームの表面に結合する態様が好ましい。

【0065】
前記イオン結合、及び前記疎水結合は、リポソームへのペプチドの結合手順が簡便であり、ペプチド結合リポソームの調製容易性の点で、好ましい。
前記共有結合は、リポソーム表面におけるペプチドの結合安定性の点、ペプチド結合リポソームを実用する際の保存安定性の点で、好ましい。
前記ペプチド結合リポソームは、その構成成分であるリポソームの表面に優れた細胞傷害性Tリンパ球活性化効果を有するペプチドが結合していることを1つの特徴としている。したがって、実用段階で、例えば注射行為によって生体内に投与された後にも、該ペプチドがリポソームの表面に安定に結合していることが、本発明の効果をより高める点で好ましい。このような観点から、前記ペプチドと、前記リポソームとの結合としては、共有結合が好ましい。

【0066】
前記ペプチドが有する官能基と、前記リポソームを構成するリン脂質膜が有する官能基との組合せとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ、アミノ基とアルデヒド基、アミノ基とアミノ基、アミノ基とサクシンイミド基、チオール基とマレイミド基が好ましい。

【0067】
前記リポソームの表面に前記ペプチドを結合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記反応性リン脂質を含有するリポソームを調製し、次に前記ペプチドを加えてリポソームの反応性リン脂質にペプチドを結合する方法などが挙げられる。
また、予めペプチドを反応性リン脂質に結合しておき、次に、得られたペプチドが結合した反応性リン脂質を、反応性リン脂質以外のリン脂質及びリポソームの安定化剤と混合することによっても、ペプチドを表面に結合したリポソームを得ることができる。
前記反応性リン脂質への前記ペプチドの結合方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。

【0068】
前記ペプチド結合リポソームは、ペプチドを結合させる前のリポソームを作製した後、ペプチドを結合させることにより簡便に製造することができる。

【0069】
例えば、前記リン脂質、前記リポソームの安定化剤、及び膜表面にペプチドを結合するための前記反応性リン脂質を含有したリポソームの懸濁液を調製し、その外水相に前記糖類の1つであるスクロースを2質量%~10質量%程度加えて溶解する。前記糖類添加物を10mLガラス製バイヤルに移して棚段式凍結乾燥機内に置き、-40℃などに冷却して凍結した後、常法により、リポソームの凍結乾燥物を得ることができる。

【0070】
前記リポソームの凍結乾燥物は、水分が取り除かれているため長期間の保存が可能であり、必要時に特定のペプチドを加えて後の工程を実施することにより、前記ペプチド結合リポソームを簡便かつ迅速に得ることができる。前記ペプチドと、前記リポソームとの相互作用が強く不安定性が強い場合などは、このようにリポソームの凍結乾燥物の段階で保存し、必要な際にペプチドを結合して用いると非常に簡便である。

【0071】
前記ペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、ペプチドが結合したリン脂質を有し得る。
前記ペプチドが結合したリン脂質を含有するリポソームを製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記(i)、(ii)の方法などが挙げられる。
(i) 前記リン脂質、前記反応性リン脂質、前記リポソームの安定化剤を含有するリポソームを調製し、これに前記ペプチド及び前記2価反応性化合物を添加し、リポソーム中に含有される反応性リン脂質の官能基と、該ペプチドの官能基とを、2価反応性化合物を介して連結する方法。
(ii)リン脂質、反応性リン脂質、リポソームの安定化剤を含有するリポソームを調製し、これにペプチドを添加し、リポソームに含まれる反応性リン脂質の官能基と、該ペプチドの官能基を連結して結合させる方法。

【0072】
前記(i)の方法で用いることができる2価反応性化合物は、前記反応性リン脂質の末端変性体の調製において用いたものを同様に用いることができる。
具体的には、アルデヒド基を有する2価反応性化合物として、グリオキサール、グルタルアルデヒド、サクシンジアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、グルタルアルデヒドが好ましい。
更に、コハク酸イミド基を有する2価反応性化合物として、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコール-ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、ジサクシンイミジルグルタレートなどが挙げられる。
また、片末端にサクシンイミド基、もう一方の片末端にマレイミド基を有する2価反応性化合物として、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)アセテート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホサクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミドなどが挙げられる。これらの2価反応性化合物を使用すると、官能基としてマレイミド基を有する反応性リン脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン)の末端変性体が得られる。

【0073】
前記(i)及び(ii)における結合の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン結合、疎水結合、共有結合などが挙げられる。これらの中でも、共有結合が好ましい。
前記共有結合の具体例としては、シッフ塩基結合、アミド結合、チオエーテル結合、エステル結合などが挙げられる。

【0074】
前記(i)、(ii)の方法では、リポソームを構成するリン脂質膜に含まれる反応性リン脂質にペプチドを結合することができ、ペプチドが結合したリポソームが形成される。

【0075】
前記(i)の方法において、原料となるリポソームとペプチドとを2価反応性化合物を介して結合させる方法の具体例としては、例えば、シッフ塩基結合を利用する方法が挙げられる。
前記シッフ塩基結合を介してリポソームとペプチドとを結合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基を表面に有するリポソームを調製し、ペプチドを該リポソームの懸濁液に添加し、次に、2価反応性化合物としてジアルデヒドを加え、リポソーム表面のアミノ基と該ペプチド中のアミノ基とをシッフ塩基を介して結合する方法などが挙げられる。

【0076】
前記シッフ塩基結合を介してリポソームとペプチドとを結合する方法の具体例としては、以下の方法が挙げられる。
(i-1) アミノ基を表面に有するリポソームを得るために、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する反応性リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)をリポソーム原料脂質(リン脂質、リポソームの安定化剤など)中に混合して、アミノ基がリポソーム表面に所定量存在するリポソームを作製する。
(i-2)前記リポソームの懸濁液に、ペプチドを添加する。
(i-3)次に、2価反応性化合物としてグルタルアルデヒドを加えて、所定の時間反応させてリポソームとペプチドとの間にシッフ塩基結合を形成する。
(i-4)その後、余剰のグルタルアルデヒドの反応性を失活させるため、アミノ基含有水溶性化合物としてグリシンをリポソーム懸濁液に加えて反応させる。
(i-5)ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により、リポソームに未結合のペプチド、グルタルアルデヒドとグリシンとの反応産物、及び余剰のグリシンを除去して、ペプチド結合リポソームの懸濁液を得る。

【0077】
前記(ii)の方法の具体例としては、アミド結合、チオエーテル結合、シッフ塩基結合、エステル結合などを形成することのできる官能基を有する反応性リン脂質を、リポソームを構成するリン脂質膜に導入する方法などが挙げられる。
前記官能基の具体例としては、サクシンイミド基、マレイミド基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基などが挙げられる。

【0078】
前記リポソームを構成するリン脂質膜に導入する反応性リン脂質の具体例としては、前記不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有する反応性リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)のアミノ基末端の末端変性物などが挙げられる。

【0079】
前記(ii)の方法の結合手順の具体例として、ジアシルホスファチジルエタノールアミンを用いた場合を例として、以下に説明する。
(ii-1)不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミンと、ジサクシンイミジルサクシネートとを公知の方法で片末端のみ反応させて、官能基としてサクシンイミド基を末端に有するジサクシンイミジルサクシネート結合ジアシルホスファチジルエタノールアミンを得る。
(ii-2)前記ジサクシンイミジルサクシネート結合ジアシルホスファチジルエタノールアミンと、他のリポソーム構成成分(リン脂質、リポソームの安定化剤など)とを公知の方法で混合し、表面に官能基としてサクシンイミド基を有するリポソームを作製する。
(ii-3)前記リポソームの懸濁液に、ペプチドを加え、該ペプチド中のアミノ基と、リポソーム表面のサクシンイミド基とを反応させる。
(ii-4)未反応のペプチド、反応副生物などを、ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離などの方法により除去して、ペプチド結合リン脂質を含有するリポソームの懸濁液を得る。

【0080】
前記リポソームと、前記ペプチドとを結合する場合、官能基として含有されることが多いアミノ基又はチオール基を対象とすることが実用上好ましい。アミノ基を対象とする場合には、サクシンイミド基と反応させることによりシッフ塩基結合を形成させることができる。チオール基を対象とする場合には、マレイミド基と反応させることによりチオエーテル結合を形成させることができる。

【0081】
本発明のペプチド結合リポソームにおけるペプチドは、後述する試験例で示すようにBIMASスコアが低く、生体内では免疫系に認識されない低免疫原性抗原と考えられる。そのため、本発明のペプチド結合リポソームは、免疫寛容を誘導することなく、細胞性免疫反応を引き起こすことができるので、後述する本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び抗腫瘍ワクチンとして、好適に利用することができる。

【0082】
(細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、抗腫瘍ワクチン)
本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤は、本発明のペプチド結合リポソームを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
本発明の抗腫瘍ワクチンは、本発明のペプチド結合リポソームを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。

【0083】
<ペプチド結合リポソーム>
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンにおけるペプチド結合リポソームは、上述した本発明のペプチド結合リポソームである。
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンにおける前記ペプチド結合リポソームの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ペプチド結合リポソーム又はそのペプチドの含有量として、0.1質量%~100質量%が好ましく、1質量%~99質量%がより好ましく、10質量%~90質量%が特に好ましい。
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、前記ペプチド結合リポソームからなるものであってもよい。

【0084】
<その他の成分>
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンにおけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アジュバントを含むことが好ましい。
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンにおける前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0085】
-アジュバント-
前記アジュバントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化アルミニウムゲル、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント、ポリ(I,C)、CpG-DNAなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記アジュバントの中でも、CpG-DNAが好ましい。
前記CpG-DNAは、細菌の非メチル化CpGモチーフを含むDNAであり、特定の受容体(Toll-like receptor 9)のリガンドとして働くことが知られている(Biochim. Biophys. Acta 1489, 107-116 (1999)、 Curr. Opin. Microbiol. 6, 472-477 (2003)参照)。前記CpG-DNAは、樹状細胞(DC)を活性化することにより、前記ペプチド結合リポソームによる細胞傷害性Tリンパ球の誘導を増強することができる。

【0086】
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンにおける前記アジュバントの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましい。

【0087】
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、その有効成分である前記ペプチド結合リポソーム自体を投与してもよいし、又は適当な医薬組成物として投与してもよい。
前記医薬組成物は、前記ペプチド結合リポソームと、薬理学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤とを含むものであってもよい。前記医薬組成物は、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。

【0088】
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、他の成分を有効成分とする医薬組成物と併せた態様で使用されてもよい。
また、前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。

【0089】
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、常法に従って製剤化することができる。
前記ペプチド結合リポソームは低毒性であり、そのまま液剤として、又は適当な剤形の医薬組成物として、経口的又は非経口的(例えば、血管内投与、皮下投与等)に投与することができるが、非経口的に投与されることが好ましい。

【0090】
非経口投与のための医薬組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、注射剤、坐剤などが挙げられる。

【0091】
前記注射剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。前記注射剤は、公知の方法に従って調製できる。前記注射剤の調製方法としては、例えば、前記ペプチド結合リポソームを通常注射剤に用いられる無菌の水系溶媒に溶解又は懸濁するなどが挙げられる。
前記水系溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液などが挙げられる。前記水系溶媒のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~10が好ましく、6~8がより好ましい。
調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。

【0092】
また、前記ペプチド結合リポソームの懸濁液を、真空乾燥、凍結乾燥等の処理に付すことにより、前記ペプチド結合リポソームの粉末製剤を調製することもできる。前記ペプチド結合リポソームを粉末状態で保存し、使用時に該粉末を注射用の水系溶媒で分散することにより、使用に供することができる。

【0093】
前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンの投与量、投与時期、投与間隔、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

【0094】
前記投与量としては、投与する対象、投与方法、投与形態等を考慮して適宜選択することができる。
例えば、皮下投与、又は経鼻投与により生体内の細胞傷害性Tリンパ球を活性化する場合には、通常成人1人(体重60kg)あたり、前記ペプチド結合リポソームにおけるペプチドとして、1回あたり、1μg~1,000μgが好ましく、20μg~100μgがより好ましい。
また、例えば、皮下投与により腫瘍を予防又は治療する場合には、通常成人1人(体重60kg)あたり、前記ペプチド結合リポソームにおけるペプチドとして、1回あたり、1μg~1,000μgが好ましく、20μg~100μgがより好ましい。

【0095】
前記投与時期、及び投与間隔としては、例えば、皮下投与、又は経鼻投与により生体内の細胞傷害性Tリンパ球を活性化する場合には、4週間から18ヶ月間に亘って、2回から3回投与するなどが挙げられる。
また、例えば、皮下投与により腫瘍を予防又は治療する場合には、4週間から18ヶ月間に亘って、2回から3回投与するなどが挙げられる。

【0096】
前記投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、鳥類などが挙げられる。
前記非ヒト哺乳動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マウスなどが挙げられる。
前記鳥類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、ダチョウ、ウズラなどが挙げられる。
前記投与対象の中でも、ヒト、マウスが好ましく、HLA-A2を発現するヒト、HLA-A24を発現するヒトがより好ましく、HLA-A2を発現するヒトが特に好ましい。

【0097】
前記抗腫瘍ワクチンが対象とする腫瘍としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記抗腫瘍ワクチンは、汎腫瘍抗原であるTERTを標的としたワクチンであるため、様々な腫瘍に適応可能であると考えられる。
後述する試験例に示すように、本発明のペプチド結合リポソームは、内因性の低アフィニティ抗原(配列番号:13)に交差反応する細胞傷害性Tリンパ球免疫を強力に誘導することができる。したがって、従来の高アフィニティ抗原を利用した抗腫瘍ワクチンが無効な担癌患者に対しても優れた抗腫瘍効果が得られると考えられる。

【0098】
(腫瘍を予防又は治療するための方法)
前記ペプチド結合リポソームは、細胞傷害性Tリンパ球免疫を強力に誘導することができ優れた抗腫瘍効果を有する。そのため、前記ペプチド結合リポソームを含有する、前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンは、個体に投与することにより、個体における腫瘍の発生を予防したり、腫瘍が発生した個体を治療したりすることができる。
したがって、本発明は、腫瘍を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記抗腫瘍ワクチンの少なくともいずれかを投与することを特徴とする、腫瘍の予防又は治療方法にも関する。
【実施例】
【0099】
以下、試験例などを挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の試験例などに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0100】
(試験例1:候補エピトープの選定)
<試験例1-1:天然エピトープの選定>
ヒトTERT(GenBankアクセッション番号:NP_001180305)のアミノ酸配列、及びマウスTERT(GenBankアクセッション番号:NP_033380)のアミノ酸配列について、コンピュータアルゴリズムであるBIMAS(Bioinformatics and Molecular Analysis Section、 Computational Bioscience and Engineering Lab,、Division of Computational Bioscience、 Center for Information Technology、National Institutes of Health)を用いて、ヒトMHCクラスIの1つであるHLA-A2に結合するHLA-A2結合ペプチドモチーフを解析し、9個のアミノ酸からなるHLA-A2拘束性のCTLエピトープを予測し、前記CTLエピトープの中から、ヒトTERTと、マウスTERTとで共通のアミノ酸配列を有するエピトープであって、BIMASスコアの高いものから順に10種類の候補エピトープ(以下、「天然エピトープ」と称することがある)を選定した。
【実施例】
【0101】
-天然エピトープ-
・ ILAKFLHWL(配列番号:1、以下、「#1」と称することがある)
前記#1は、ヒトTERT配列中、540番目から548番目に該当する。
・ RLFFYRKSV(配列番号:3、以下、「#3」と称することがある)
前記#3は、ヒトTERT配列中、572番目から580番目に該当する。
・ LLQAYRFHA(配列番号:5、以下、「#5」と称することがある)
前記#5は、ヒトTERT配列中、943番目から951番目に該当する。
・ LQVNSLQTV(配列番号:7、以下、「#7」と称することがある)
前記#7は、ヒトTERT配列中、926番目から934番目に該当する。
・ SVWSKLQSI(配列番号:9、以下、「#9」と称することがある)
前記#9は、ヒトTERT配列中、579番目から587番目に該当する。
・ QAYRFHACV(配列番号:11、以下、「#11」と称することがある)
前記#11は、ヒトTERT配列中、945番目から953番目に該当する。
・ LQAYRFHAC(配列番号:13、以下、「#13」と称することがある)
前記#13は、ヒトTERT配列中、944番目から952番目に該当する。
・ PLATFVRRL(配列番号:15、以下、「#15」と称することがある)
前記#15は、ヒトTERT配列中、23番目から31番目に該当する。
・ GDMENKLFA(配列番号:17、以下、「#17」と称することがある)
前記#17は、ヒトTERT配列中、847番目から855番目に該当する。
・ DLQVNSLQT(配列番号:19、以下、「#19」と称することがある)
前記#19は、ヒトTERT配列中、925番目から933番目に該当する。
【実施例】
【0102】
<試験例1-2:改変エピトープの選定>
前記#1、#3、#5、#7、#9、#11、#13、#15、#17、及び#19のそれぞれの天然エピトープについて、以下の3種のアミノ酸置換を行った改変アミノ酸配列を作成し、HLA-A2に対するアフィニティをBIMASで予測した。それぞれの天然エピトープにおける改変アミノ酸配列の中から、最もBIMASスコアの高いものを候補エピトープ(以下、「改変エピトープ」と称することがある)として選定した。
-アミノ酸置換-
(1) 前記候補天然エピトープの1番目のアミノ酸をチロシン(Y)に置換。
(2) 前記候補天然エピトープの2番目のアミノ酸をロイシン(L)に置換。
(3) 前記候補天然エピトープの9番目のアミノ酸をバリン(V)に置換。
【実施例】
【0103】
-改変エピトープ-
・ ILAKFLHWV(配列番号:2、以下、「#2」と称することがある)
前記#2は、前記#1における9番目のアミノ酸をVに置換したものである。
・ YLFFYRKSV(配列番号:4、以下、「#4」と称することがある)
前記#4は、前記#3における1番目のアミノ酸をYに置換したものである。
・ LLQAYRFHV(配列番号:6、以下、「#6」と称することがある)
前記#6は、前記#5における9番目のアミノ酸をVに置換したものである。
・ LLVNSLQTV(配列番号:8、以下、「#8」と称することがある)
前記#8は、前記#7における2番目のアミノ酸をLに置換したものである。
・ SLWSKLQSI(配列番号:10、以下、「#10」と称することがある)
前記#10は、前記#9における2番目のアミノ酸をLに置換したものである。
・ QLYRFHACV(配列番号:12、以下、「#12」と称することがある)
前記#12は、前記#11における2番目のアミノ酸をLに置換したものである。
・ LQAYRFHAV(配列番号:14、以下、「#14」と称することがある)
前記#14は、前記#13における9番目のアミノ酸をVに置換したものである。
・ YLATFVRRL(配列番号:16、以下、「#16」と称することがある)
前記#16は、前記#15における1番目のアミノ酸をYに置換したものである。
・ GLMENKLFA(配列番号:18、以下、「#18」と称することがある)
前記#18は、前記#17における2番目のアミノ酸をLに置換したものである。
・ YLQVNSLQT(配列番号:20、以下、「#20」と称することがある)
前記#20は、前記#19における1番目のアミノ酸をYに置換したものである。
【実施例】
【0104】
前記天然エピトープ、及び前記改変エピトープのBIMASスコアを表1に示す。
【実施例】
【0105】
【表1】
JP2016047509A1_000002t.gif
【実施例】
【0106】
(試験製造例1:ペプチドの製造)
前記試験例1で選定した#1~#20の天然エピトープ、及び改変エピトープのペプチドを人工合成した(ユーロフィンジェノミクス株式会社製)。
【実施例】
【0107】
(試験製造例2:リポソームの製造)
<反応性リン脂質の調製>
-末端変性ホスファチジルエタノールアミンからなる反応性リン脂質(サクシンイミジル-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)の合成-
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン 2g、及びトリエチルアミン 180μLをクロロホルム 50mLに添加及び溶解し、300mL容の4つ口フラスコに入れた。このフラスコをマグネットスタラーで、室温で攪拌しつつ、別に調製した2価反応性化合物であるジサクシンイミジルスベレート 3gをクロロホルム 80mLに溶解した溶液を、常法に従って4時間に亘って滴下し、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基にジサクシンイミジルスベレートの片末端を反応させた。この粗反応溶液をナス型フラスコに移し、エバポレータによって溶媒を留去した。
次に、このフラスコに粗反応物を溶解できるだけのクロロホルムを少量加えて高濃度粗反応物溶液を得、クロロホルム/メタノール/水(65/25/1、体積比)で平衡化したシリカゲルを用いて常法に従ってカラムクロマトグラフィーを行い、目的のジオレオイルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基にジサクシンイミジルスベレートの片末端が結合した画分のみを回収し、溶媒を留去して目的の反応性リン脂質であるサクシンイミド基-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを得た。
【実施例】
【0108】
<脂質混合粉末の調製>
ジオレオイルホスファチジルコリン 1.3354g(1.6987mmol)、前記サクシンイミド基-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン 0.2886g(0.2831mmol)、コレステロール 0.7663g(1.9818mmol)、及びジオレオイルホスファチジルグリセロールのナトリウム塩 0.4513g(0.5662mmol)をナス型フラスコに取り、クロロホルム/メタノール/水(65/25/4、容量比)混合溶剤 50mLを入れ、40℃にて溶解した。
次に、ロータリーエバポレーターを使用して減圧下で溶剤を留去し、脂質の薄膜を作った。
更に、注射用蒸留水を30mL添加し、攪拌して均一のスラリーを得た。このスラリーを凍結させ、凍結乾燥機にて24時間乾燥させ脂質混合粉末を得た。
【実施例】
【0109】
<リポソームの調製>
緩衝液(1.0mM NaHPO/KHPO、0.25M サッカロース、pH7.4) 60mLを前記脂質混合粉末の入ったナス型フラスコ内に入れ、40℃にて攪拌しながら脂質を水和させ、リポソームを得た。
次に、エクストルーダーを用いてリポソームの粒径を調整した。
まず、8μmのポリカーボネートフィルターを通過させ、続いて5μm、3μm、1μm、0.65μm、0.4μm及び0.2μmの順にフィルターを通過させ、平均粒径206nm(動的光散乱法による測定)のリポソーム粒子を得た。
【実施例】
【0110】
(試験例2:免疫原性を有するエピトープペプチドの選定-1)
<ペプチド結合リポソームの製造>
前記人工合成した#1~#20のペプチドを5種類ずつ4つのグループにプールした(プール1:#1~#5、プール2:#6~#10、プール3:#11~#15、プール4:#16~#20)。
前記各プールを用い、ペプチド結合リポソームを以下ようにして調製した。
前記試験製造例2で製造したリポソーム 1.5mLを試験管に採取し、別に調製した3mLの各ペプチドプール溶液を加えた後、5℃で48時間穏やかに攪拌し反応させた。この反応液を、緩衝液で平衡化したSepharoseCL-4Bを用いて常法に従ってゲル濾過した。なお、リポソーム画分は白濁しているので、目的画分は容易に確認できるが、UV検出器等で確認してもよい。
得られたリポソーム懸濁液中のリン濃度を測定し(リン脂質C-テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定)、リン脂質由来のリン濃度を2mMになるように濃度を緩衝液で希釈調整し、ペプチド結合リポソームの懸濁液を4種類得た。
【実施例】
【0111】
<マウスの免疫>
-マウス-
マウスとして、マウス固有のMHCクラスI遺伝子であるH-2D、及びマウスβ2-microglobulin遺伝子がノックアウトされ、ヒトのHLA-A2、及びヒトβ2-microglobulin遺伝子が導入され、発現しているHHDマウス(Pascolo S, Bervas N, Ure JM, Smith AG, Lemonnier FA, Perarnau B. The Journal of Experimental Medicine 1997; 185(12):2043-2051)を使用した。
【実施例】
【0112】
-初回免疫-
前記ペプチド結合リポソームの懸濁液 200μL/匹をCpGアジュバント(北海道システムサイエンス株式会社製) 5μg/匹と共にHHDマウスに皮下注射した。
【実施例】
【0113】
-追加免疫-
前記初回免疫の7日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0114】
<TERT抗原特異的抗腫瘍CTLの誘導の確認>
前記追加免疫の5日間後に、マウスの脾臓中のリンパ球を分離した。
前記リンパ球を、FITC標識抗CD107a抗体(BD社製)存在下で、対応するエピトープペプチド(10μg/mL)で5時間、抗原刺激した。
前記抗原刺激された細胞を回収し、前記細胞表面をPerCP標識抗CD8抗体(Biolegend社製)で染色し、細胞を固定、細胞膜の透過処理を行った後、細胞内部をPE標識抗IFN-γ抗体(Biolegend社製)で染色し、それぞれのエピトープペプチドに特異的に反応し活性化した、CD8陽性リンパ球におけるCD107a陽性、かつIFN-γ陽性リンパ球(以下、「CD107aIFN-γCD8リンパ球」と称することがある)の割合をフローサイトメトリーにより測定した。結果を図1A~図1T、及び表2に示す。
【実施例】
【0115】
【表2】
JP2016047509A1_000003t.gif
【実施例】
【0116】
図1A~図1Tは、それぞれエピトープペプチド#1~#20を用いた場合の結果を示す。
図1A~図1T、及び表2の結果から、#7、#11、#13、#2、#6、#8、#10、#14、#16、及び#18で、抗腫瘍CTLの誘導が確認された。これらの中でも、改変エピトープである#8、#10、及び#14が、CD107aIFN-γCD8リンパ球の割合が高かった。
【実施例】
【0117】
(試験例3:免疫原性を有するエピトープペプチドの選定-2)
<ペプチド結合リポソームの製造>
前記試験例2において、プールしたペプチドを用いていた点を、改変エピトープペプチドである#8、#10、又は#14を単独で用いた以外は試験例2と同様にして、ペプチド結合リポソームを調製した。
【実施例】
【0118】
<マウスの免疫>
-マウス-
前記試験例2と同様に、HHDマウスを使用した。
【実施例】
【0119】
-初回免疫-
前記試験例2において、ペプチド結合リポソームの懸濁液を200μL/匹としていた点を、50μL/匹とした以外は試験例2と同様にして、初回免疫を行った。
【実施例】
【0120】
-追加免疫-
前記初回免疫の7日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0121】
<TERT抗原特異的抗腫瘍CTLの誘導の確認>
前記追加免疫の5日間後に、マウスの脾臓中のリンパ球を分離した。
前記リンパ球を、FITC標識抗CD107a抗体(BD社製)存在下で、(1)対応するエピトープペプチド(10μg/mL)、又は(2)対応するエピトープペプチドの天然エピトープペプチド(対応するエピトープペプチドが#8の場合の天然エピトープペプチドは#7、対応するエピトープペプチドが#10の場合の天然エピトープペプチドは#9、対応するエピトープペプチドが#14の場合の天然エピトープペプチドは#13)で5時間、抗原刺激した。
前記抗原刺激された細胞を回収し、前記細胞表面をPerCP標識抗CD8抗体(Biolegend社製)で染色し、細胞を固定、細胞膜の透過処理を行った後、細胞内部をPE標識抗IFN-γ抗体(Biolegend社製)で染色し、それぞれのエピトープペプチドに特異的に反応し活性化した、CD107aIFN-γCD8リンパ球の割合をフローサイトメトリーにより測定した。結果を図2A~図2Bに示す。
【実施例】
【0122】
図2Aは、前記抗原刺激を対応するエピトープペプチドで行った結果を示し、図2Bは、前記抗原刺激を対応するエピトープペプチドの天然エピトープペプチドで行った結果を示す。
図2A~図2Bの結果から、全ての改変エピトープのペプチドで、天然エピトープペプチドに対する交差反応が認められた。中でも、#14で強い反応が認められた。前記#14を用いたペプチド結合リポソームが誘導した免疫反応は、#14の天然配列である#13が引き起こす免疫反応と比較して非常に強い反応であった。
【実施例】
【0123】
(試験例4:免疫原性を有するエピトープペプチドの選定-3)
<ペプチド結合リポソームの製造>
前記試験例3において、ペプチドを#1、#13、又は#14とした以外は同様にして、ペプチド結合リポソームを調製した。
前記#1は、TERTドミナントエピトープであり、最もBIMASスコアの高い配列であり、対照として用いた。
【実施例】
【0124】
<マウスの免疫>
-マウス-
前記試験例3と同様に、HHDマウスを使用した。
【実施例】
【0125】
-初回免疫-
ペプチド結合リポソームを本試験例4のペプチド結合リポソームとした以外は、前記試験例3と同様にして、初回免疫を行った。
【実施例】
【0126】
-追加免疫-
前記初回免疫の7日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0127】
<TERT抗原特異的抗腫瘍CTLの誘導の確認>
前記追加免疫の5日間後に、マウスの脾臓中のリンパ球を分離した。
前記リンパ球を、FITC標識抗CD107a抗体(BD社製)存在下で、(1)前記免疫に用いたエピトープペプチド、又は(2)前記免疫に用いたエピトープペプチドの天然エピトープペプチドで5時間、抗原刺激した。
前記抗原刺激された細胞を回収し、前記細胞表面をPerCP標識抗CD8抗体(Biolegend社製)で染色し、細胞を固定、細胞膜の透過処理を行った後、細胞内部をPE標識抗IFN-γ抗体(Biolegend社製)で染色し、それぞれのエピトープペプチドに特異的に反応し活性化した、CD107aIFN-γCD8リンパ球の割合をフローサイトメトリーにより測定した。結果を図3に示す。
【実施例】
【0128】
図3の結果から、エピトープペプチドとして#14を用いたペプチド結合リポソームで免疫したマウスでは、CD107aIFN-γCD8リンパ球の割合が、エピトープペプチドとして#1を用いたペプチド結合リポソームで免疫したマウスと比較して、非常に高かった。
【実施例】
【0129】
(試験例5:TERT陽性腫瘍細胞に対する免疫誘導の確認)
<ペプチド結合リポソームの製造>
前記試験例4と同様にして、ペプチドを#1、#13、又は#14としたペプチド結合リポソームを調製した。
【実施例】
【0130】
<マウスの免疫>
-マウス-
前記試験例4と同様に、HHDマウスを使用した。
【実施例】
【0131】
-初回免疫-
前記試験例4と同様にして、初回免疫を行った。
【実施例】
【0132】
-追加免疫-
前記初回免疫の7日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0133】
<TERT陽性腫瘍細胞に対する免疫誘導の確認>
前記追加免疫の5日間後に、マウスの脾臓中のリンパ球を分離した。
分離した前記リンパ球を、前記免疫に用いたエピトープペプチドの存在下で6日間培養した。
その後、TERT陽性HLA-A2陽性マウス腫瘍細胞RMAHHD(パスツール研究所(フランス)のLemmonnier博士より入手)で5時間、前記リンパ球を刺激した。
次いで、細胞表面をPerCP標識抗CD8抗体(Biolegend社製)で染色し、細胞を固定、細胞膜の透過処理を行った後、細胞内部をPE標識抗IFN-γ抗体(Biolegend社製)で染色し、腫瘍細胞に反応し活性化した、CD8陽性リンパ球におけるIFN-γ陽性リンパ球(以下、「IFN-γCD8リンパ球」と称することがある)の割合をフローサイトメトリーにより測定した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0134】
図4の結果から、エピトープペプチドとして#13、又は#14を用いたペプチド結合リポソームで免疫したマウスでは、腫瘍細胞に反応して活性化するリンパ球の割合が、エピトープペプチドとして#1を用いたペプチド結合リポソームで免疫したマウスと比較して、非常に高かった。
このことより、エピトープペプチドとして#14を用いたペプチド結合リポソームが、TERT陽性腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫反応を誘導する効果を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0135】
(試験例6:抗腫瘍効果の検討)
<ペプチド結合リポソームの製造>
前記試験例3において、ペプチドを#13、#14、又は下記配列番号:21で表されるアミノ酸配列からなるペプチドとした以外は同様にして、ペプチド結合リポソームを調製した。
・ DLMGYIPLV(配列番号:21)
前記配列番号:21で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下、「コントロールエピトープ」と称することがある)は、後述するマウスに移植した腫瘍とは無関係であるC型肝炎ウイルスコアタンパク質由来のエピトープペプチドであり、対照として用いた。
【実施例】
【0136】
<マウスの免疫>
-マウス-
前記試験例3と同様に、HHDマウスを使用した。なお、マウスは、1群5匹~6匹使用した。
【実施例】
【0137】
-初回免疫-
ペプチド結合リポソームを本試験例6のペプチド結合リポソームとした以外は、前記試験例3と同様にして、初回免疫を行った。
【実施例】
【0138】
-追加免疫-1-
前記初回免疫の7日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0139】
-追加免疫-2-
前記追加免疫-1の5日間後に、前記初回免疫と同様にして、追加免疫を行った。
【実施例】
【0140】
<腫瘍細胞の移植>
前記追加免疫-2の際に、マウスの大腿皮下に、TERT陽性HLA-A2陽性マウス腫瘍細胞RMAHHD(パスツール研究所(フランス)のLemmonnier博士より入手)を移植した。
【実施例】
【0141】
-腫瘍面積の測定-
前記腫瘍細胞を移植した後、3日間~4日間ごとに腫瘍の面積を、ノギスを用いて計測し、腫瘍組織の成長について検討した。前記移植後24日目の腫瘍の面積を測定した結果を図5に示す。
なお、腫瘍の面積が1,000mm以上に達した場合、腫瘍組織に明らかな自壊や感染を認めた場合、及びマウスの全身状態の明らかな低下を認めた場合は、マウスを安楽死処分した。
【実施例】
【0142】
コントロールエピトープを結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスでは、前記移植の24日間後に、全てのマウスで、腫瘍の面積が1,000mmを超え、安楽死処分を行った。
#13を結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスでは、前記移植後24日間目の時点で、前記コントロールエピトープを結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスと比較して腫瘍面積は小さかったが、統計学的な有意差は得られなかった。
一方、#14を結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスでは、前記移植後24日目の時点で、前記コントロールエピトープを結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスと比較して明らかに腫瘍面積は小さく、統計学的な有意差を認めた(Man-Whitney U test、 p<0.01)。
【実施例】
【0143】
-生存期間-
生存期間の検討は、カプランメイヤー法により行った。結果を図6に示す。
図6の結果から、生存日数においても#14を結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスは、コントロールエピトープを結合させたペプチド結合リポソームで免疫したマウスと比較して明らかに長期間生存していた。
したがって、#14を結合させたペプチド結合リポソームは、腫瘍の増大を抑制し、延命効果をもたらす抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0144】
前記#14は、今まで免疫誘導の報告の無い新規の低免疫原性ヒトTERT由来抗原である#13を改変したものであり、低免疫原性腫瘍抗原であると考えられるものである。
また、前記#14を結合させたペプチド結合リポソームは、抗腫瘍免疫誘導能と、腫瘍生育抑制効果と、生存期間の延長効果とを有することが確認された。
【実施例】
【0145】
また、本発明のペプチド結合リポソームを含有する本発明の抗腫瘍ワクチンは、現在の抗腫瘍ワクチンの主流であるペプチドワクチンや細胞ワクチンと比較して、免疫誘導効果、品質の安定性の面で優れている。
【実施例】
【0146】
以上のことから、本発明の抗腫瘍ワクチンは、T細胞に対する適切な抗原提示を可能にするとともに、低免疫原性腫瘍抗原に対する細胞性免疫応答を引き起こすことができ、腫瘍抗原に対する免疫寛容を回避し、高アフィニティ抗原を利用した抗腫瘍ワクチンが無効な担癌患者に対しても抗腫瘍効果をもたらし得る従来にない特徴を有する抗腫瘍ワクチン製剤であり、優れた腫瘍治療用ワクチンとなることが期待できる。
また、本発明の抗腫瘍ワクチンは、汎腫瘍抗原であるTERTを標的としたワクチンであり、様々な腫瘍性疾患に適応可能であると考えられる。
【実施例】
【0147】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが、リポソームの表面に結合していることを特徴とするペプチド結合リポソームである。
<2> リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質と、リポソームの安定化剤とを含む前記<1>に記載のペプチド結合リポソームである。
<3> リン脂質が、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基を有するリン脂質である前記<2>に記載のペプチド結合リポソームである。
<4> アシル基が、オレイル基である前記<2>から<3>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームである。
<5> リン脂質が、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル-ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド-ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つである前記<2>から<4>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームである。
<6> リポソームの安定化剤が、コレステロールである前記<2>から<5>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームである。
<7> ペプチドが、不飽和結合を1個有する炭素数14~24のアシル基、及び不飽和結合を1個有する炭素数14~24の炭化水素基のいずれかを有するリン脂質に結合している前記<2>から<6>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームである。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする細胞傷害性Tリンパ球活性化剤である。
<9> 更に、アジュバントを含有する前記<8>に記載の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤である。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームを含有することを特徴とする抗腫瘍ワクチンである。
<11> 更に、アジュバントを含有する前記<10>に記載の抗腫瘍ワクチンである。
<12> 腫瘍を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<8>から<9>のいずれかに記載の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤、及び前記<10>から<11>のいずれかに記載の抗腫瘍ワクチンの少なくともいずれかを投与することを特徴とする方法である。
<13> 腫瘍の予防又は治療のための前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームの使用である。
<14> 細胞傷害性Tリンパ球活性化剤を製造するための前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームの使用である。
<15> 抗腫瘍ワクチンを製造するための前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチド結合リポソームの使用である。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図1I】
8
【図1J】
9
【図1K】
10
【図1L】
11
【図1M】
12
【図1N】
13
【図1O】
14
【図1P】
15
【図1Q】
16
【図1R】
17
【図1S】
18
【図1T】
19
【図2A】
20
【図2B】
21
【図3】
22
【図4】
23
【図5】
24
【図6】
25