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明細書 :光電変換素子の製造方法、p型半導体層の製造方法およびp型半導体層

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-162650 (P2015-162650A)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 光電変換素子の製造方法、p型半導体層の製造方法およびp型半導体層
国際特許分類 H01L  31/06        (2012.01)
FI H01L 31/04 E
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2014-038691 (P2014-038691)
出願日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発明者または考案者 【氏名】南 内嗣
【氏名】宮田 俊弘
【氏名】西 祐希
出願人 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151AA07
5F151CB24
5F151DA03
5F151FA02
要約 【課題】安価な材料を用いた光電変換装置において、変換効率を向上する技術を提供する。
【解決手段】光電変換素子の製造方法は、多結晶のCuOからなる第1の半導体層を準備する準備工程と、金属ハロゲン化物が存在する雰囲気で第1の半導体層を熱処理する熱処理工程と、第1の半導体層の上に、第2の半導体層を形成する半導体形成工程と、第2の半導体層の上に透明導電層を形成する導電層形成工程と、を含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
多結晶のCuOからなる第1の半導体層を準備する準備工程と、
金属ハロゲン化物が存在する雰囲気で前記第1の半導体層を熱処理する熱処理工程と、
前記第1の半導体層の上に第2の半導体層を形成する半導体形成工程と、
前記第2の半導体層の上に透明導電層を形成する導電層形成工程と、
を含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程は、不活性ガス雰囲気中で100~1000℃の雰囲気温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程は、前記第1の半導体層を前記金属ハロゲン化物で被覆した状態で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記金属ハロゲン化物は、NaClまたはKClを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2の半導体層は、GaOまたはGaAlO系酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1の半導体層はp型半導体層であり、前記第2の半導体層はn型半導体層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
多結晶のCuOからなるシートを準備する準備工程と、
金属ハロゲン化物が存在する雰囲気で前記シートを熱処理する熱処理工程と、
を含むp型半導体層の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法で製造したp型半導体層であって、
移動度が7×10~2×10[cm/Vs]、抵抗率が10~10[Ωcm]の範囲であるp型半導体層。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電気エネルギーに変換できる光電変換素子の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新興国の飛躍的な経済発展に伴って、地球規模でのエネルギー需要が増大してきている。その結果、石油等の化石エネルギーコストが上昇している。また、これら新興国の化石エネルギー消費の増大は地球規模でのCO排出量の増加を招き、深刻な環境破壊を引き起こしている。これらの問題解決の有力な候補としては、自然エネルギーの積極的な利用が叫ばれており、中でも太陽電池による太陽光発電への期待は極めて大きい。
【0003】
太陽電池には、様々な材料が用いられており、主なものとしは、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムガリウムセレン化合物(CIGS化合物)などが挙げられる。シリコンは、地殻埋蔵量は豊富であるもの、太陽電池の原料となる高純度シリコンの場合、安価な材料とは言い難い。また、CIGS化合物は、埋蔵量が少なく入手が困難なレアメタルを含んでおり、材料コストの低減にも限界がある。
【0004】
そこで、主原料が極めて安価でかつ地殻埋蔵量も豊富な亜鉛や銅を用いた太陽電池の開発も行われている。
【0005】
例えば、多結晶CuOシート上にAlドープ酸化亜鉛(AZO)透明導電膜を積層したAZO/CuOショットキー障壁ダイオードにおいて、1%以上の光電変換効率が得られることが報告されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Hideki Tanaka et al、「Electrical and optical properties of TCO-Cu2O heterojunction devices」、Thin Solid Filmes、2004、469-470、p.80-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、安価な材料からなる太陽電池は実現されつつあるものの、実用的には変換効率の更なる向上が求められている。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところは、安価な材料を用いた光電変換装置において、変換効率を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光電変換素子の製造方法は、多結晶のCuOからなる第1の半導体層を準備する準備工程と、金属ハロゲン化物が存在する雰囲気で第1の半導体層を熱処理する熱処理工程と、第1の半導体層の上に第2の半導体層を形成する半導体形成工程と、第2の半導体層の上に透明導電層を形成する導電層形成工程と、を含む。
【0010】
この態様によると、安価な材料である銅を主として使用した光電変換素子において、第1の半導体層の移動度を下げずに抵抗率を下げる(正孔密度を上げる)ことができ、光電変換効率を向上することができる。
【0011】
熱処理工程は、不活性ガス雰囲気中で100~1000℃の雰囲気温度で行われてもよい。
【0012】
熱処理工程は、第1の半導体層を金属ハロゲン化物で被覆した状態で行われてもよい。これにより、第1の半導体層の移動度を下げずに抵抗率を下げる(正孔密度を上げる)ことができる。
【0013】
金属ハロゲン化物は、NaClまたはKClを含んでもよい。これにより、取扱いや入手が容易な材料を用いて熱処理を行える。
【0014】
第2の半導体層は、GaOまたはGaAlO系酸化物を含んでもよい。
【0015】
第1の半導体層はp型半導体層であり、第2の半導体層はn型半導体層であってもよい。
【0016】
本発明の別の態様はp型半導体層の製造方法である。この方法は、多結晶のCuOからなるシートを準備する準備工程と、金属ハロゲン化物が存在する雰囲気でシートを熱処理する熱処理工程と、を含む。
【0017】
この態様によると、多結晶のCuOからなるp型半導体層の移動度を下げずに抵抗率を下げる(正孔密度を上げる)ことができる。
【0018】
本発明の更に別の態様はp型半導体層である。このp型半導体層は、移動度が7×10~2×10[cm/Vs]、抵抗率が10~10[Ωcm]の範囲である。
【0019】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安価な材料を用いた光電変換装置において、変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係る光電変換素子の構成を示す概略断面図である。
【図2】NaCl熱処理後のCuOからなるp型半導体層の電気的特性の熱処理温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する

【0023】
(光電変換素子)
本実施の形態に係る光電変換素子におけるCuO(亜酸化銅)層は、安価な材料である一方、層の厚さと高い抵抗率によって直列抵抗が高い傾向にある。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、多結晶のCuO層の熱処理を工夫することで移動度を下げずに抵抗率を下げる(正孔密度を上げる)ことができることを見いだした。

【0024】
図1は、本実施の形態に係る光電変換素子の構成を示す概略断面図である。光電変換素子10は、多結晶のCuO(亜酸化銅)からなる第1の半導体層12と、第1の半導体層12の一方の面上に設けられ、Ga-Al-O系の複合酸化物からなる第2の半導体層14と、第2の半導体層14の上に設けられた透明導電層16と、第1の半導体層12の他方の面上に形成されている電極18と、を備える。

【0025】
本実施の形態に係る第1の半導体層12であるCuOは、10~1000μmの厚みを有するp型半導体層である。また、第2の半導体層14であるGa-Al-O系の複合酸化物は、10~100nmの厚みを有するn型半導体層である。また、透明導電層16は、AZO(アルミニウムをドープした酸化亜鉛)である。また、電極18は、φ2mmのAu(金)からなる。

【0026】
(第1の半導体層の製造方法)
次に、本実施の形態に係る第1の半導体層の製造方法について説明する。はじめに、銅板(純度99.96[%])を洗浄後、約1025[℃]で酸化処理することで、基板および活性層を兼ねる多結晶のp型CuOシート(厚さ200μm)を作製し、第1の半導体層12を準備する。

【0027】
次に、CuOシートを金属ハロゲン化物が存在する雰囲気で熱処理をする。金属ハロゲン化物とは、金属元素とハロゲン元素とを有する化合物であり、金属元素としては、Na、K、Li、Mg、Ca、Mn等が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、F、Cl、Br、I等が挙げられる。なお、金属ハロゲン化物としては、取扱いや入手の容易さからNaClやKClが好ましい。

【0028】
本実施の形態に係る熱処理工程では、雰囲気制御が可能な電気炉の内部において、NaCl粉末中にCuOシートを埋めた状態で、不活性ガスであるAr雰囲気とした。熱処理工程は、第1の半導体層を金属ハロゲン化物で被覆した状態で行うとよい。その状態でCuOシートを雰囲気温度100~1000[℃]で1~10[h]熱処理した(以下、「NaCl熱処理」と称する場合がある。)。なお、不活性ガスとしては、Ar以外の希ガスや窒素ガスを適宜用いてもよい。このような熱処理工程を経て多結晶のCuOからなるp型半導体層が形成される。

【0029】
図2は、NaCl熱処理後のCuOからなるp型半導体層の電気的特性の熱処理温度依存性を示すグラフである。

【0030】
図2に示す黒丸、黒三角、黒四角は、CuOシートに処理温度の異なるNaCl熱処理を行った場合の抵抗率ρ[Ωcm]、正孔(ホール)移動度μ[cm/Vs]、正孔密度p[cm-3]を示している。NaCl熱処理は、400℃、500℃、700℃、800℃、850℃で1[h]行った。

【0031】
一方、図2に示す白丸、白三角、白四角は、比較のためにNaClが存在しないAr雰囲気で熱処理(以下、「Ar熱処理」と称する場合がある。)を行った場合の抵抗率ρ[Ωcm]、正孔(ホール)移動度μ[cm/Vs]、正孔密度p[cm-3]を示している。Ar熱処理は、400℃、500℃、700℃、800℃で1[h]行った。なお、図2の”without”は、NaCl熱処理またはAr熱処理前のCuOシートの特性を示している。

【0032】
図2に示すように、NaCl熱処理を行ったCuOシートは、熱処理温度の増加に伴い正孔密度pが大幅に上昇(7×1014[cm-3]から2×1017[cm-3]へ上昇)し、熱処理温度が800℃以上では抵抗率ρが10-1[Ωcm]のオーダまで低下した。また、NaCl熱処理における熱処理温度が700℃程度までは、移動度μを変化させずに抵抗率を10[Ωcm]程度まで低下できた。なお、移動度μは800℃においても7×10[cm/Vs]程度までしか低下していない。一方、Ar熱処理を行ったCuOシートは、熱処理温度によらず電気的特性に大きな変化が認められなかった。

【0033】
このように、金属ハロゲン化物であるNaClによって多結晶のCuOシートを被覆した状態の熱処理によって、多結晶のCuOからなるp型半導体層の抵抗率を10-1~10[Ωcm]の範囲で低下させることができた。

【0034】
(光電変換素子の製造方法)
次に、前述のNaCl熱処理したCuOシートを用いて作製した、AZO/n-酸化物半導体/p-CuOヘテロ接合光電変換素子(太陽電池)の製造方法を説明し、併せて光起電力特性の改善について説明する。

【0035】
前述の方法で得た低抵抗率のCuO層の上に、パルスレーザ蒸着(PLD)法を用いて第2の半導体層14として酸化物薄膜を形成した。薄膜の形成は、室温において1~1.7[Pa]程度のOガス雰囲気で行った。酸化物は、GaAlO(x=Ga/(Al+Ga)、y=Al/(Al+Ga))である。なお、GaO等の酸化物であってもよい。PLD法により第2の半導体層14を形成した後、第2の半導体層14の上に厚さ約200[nm]のAZO透明導電膜を形成し、ヘテロ接合光電変換素子を作製した。

【0036】
[実施例]
500[℃]でNaCl熱処理を行ったCuOシート上に、Al組成が0.025[at.%]のGa-Al-O多元系酸化物薄膜(膜厚:50[nm])を形成し、更にAZOからなる透明導電層を形成し、実施例に係る光電変換素子を作成した。

【0037】
[比較例]
熱処理を行わずにCuOシート上に、Al組成が0.025[at.%]のGa-Al-O多元系酸化物薄膜(膜厚:50[nm])を形成し、更にAZOからなる透明導電層を形成し、比較例に係る光電変換素子を作成した。

【0038】
そして、各光電変換素子の光起電力特性を、AM1.5G(100[mW/cm])光照射下で、セル温度を25[℃]に保持して測定した。表1に、実施例および比較例に係る変換効率(η)、開放短電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、直列抵抗(R)及び並列抵抗(Rsh)を示す。

【0039】
【表1】
JP2015162650A_000003t.gif

【0040】
表1に示すように、実施例に係る光電変換素子は、比較例に係る光電変換素子と比較して曲線因子(FF)が改善しており、最大変換効率(ηmax)5.51[%]を実現できた。以上のように、安価な材料である銅や亜鉛を主として使用した光電変換素子10において、光電変換効率を従来よりも更に向上することができた。

【0041】
上述した本実施の形態に係る光電変換素子の利点を列挙すると以下の通りである。

【0042】
(1)AZOや亜酸化銅(CuO)を主成分とするヘテロ接合型光電変換素子は、主原料が極めて安価でかつ地殻埋蔵量も豊富な亜鉛や銅であり、加えて希少金属(レアアース)をほぼ使用しないことから原料調達コストの低減と安定供給の両方を実現できる。

【0043】
(2)また、亜鉛や銅は人体に対して無毒・無害であり、「環境にやさしい」材料である。主原料の亜酸化銅は銅板を熱酸化させるだけで比較的簡単に製造できる。

【0044】
(3)亜酸化銅に組み合わせるI層やN層となる新規な無機化合物半導体薄膜の作製には、PLD法や真空アークプラズマ蒸着法等のソフトでダメージフリーな成膜技術を適用できる。結果として、既存のSi系若しくはCIGS系太陽電池と比較して、圧倒的な価格優位性を実現できる。例えば、主原料である銅の価格はSi系太陽電池の主原料である高純度Siの4千分の1以下である。

【0045】
(4)また、亜酸化銅製造時のCO排出量はSiウエハー製造時の10分の1以下であり、加えてI層若しくはN層に製造エネルギーの低減が期待できる薄膜材料を導入することにより、太陽電池製造時の対環境負荷の大幅な低減が期待できる。

【0046】
(5)また、携帯電話や携帯ゲーム機器用の太陽光発電器等への応用を考えた場合には室内での使用が前提になるため、Si系材料と比較して広いバンドギャップを有する亜酸化銅(約2eV)は、蛍光灯やLED照明下における発電に有利である。

【0047】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0048】
10 光電変換素子、 12 第1の半導体層、 14 第2の半導体層、 16 透明導電層、 18 電極。
図面
【図1】
0
【図2】
1