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明細書 :銀/塩化銀電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-116399 (P2017-116399A)
公開日 平成29年6月29日(2017.6.29)
発明の名称または考案の名称 銀/塩化銀電極の製造方法
国際特許分類 G01N  27/30        (2006.01)
FI G01N 27/30 311Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-251893 (P2015-251893)
出願日 平成27年12月24日(2015.12.24)
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】黒岩 繁樹
【氏名】秀島 翔
【氏名】大橋 啓之
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079304、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 隆司
【識別番号】100114513、【弁理士】、【氏名又は名称】重松 沙織
【識別番号】100120721、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 克成
【識別番号】100124590、【弁理士】、【氏名又は名称】石川 武史
【識別番号】100157831、【弁理士】、【氏名又は名称】正木 克彦
審査請求 未請求
要約 【課題】銀基材の表面上に、均質で安定な塩化銀皮膜を形成して、狭空間で使用されるオンチップ型のセンサなどの参照電極としての使用に耐える銀/塩化銀電極を提供する。
【解決手段】(A)表面部に酸化被膜を有する銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解還元により酸化被膜を除去する工程と、(B)酸化被膜が除去された銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により銀基材の表面上に塩化銀皮膜を形成する工程とを含み、上記(B)工程において、電解酸化の一部又は全部において、酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように、又は酸化電圧を連続的に高くなるように印加する銀/塩化銀電極11の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)表面部に酸化被膜を有する銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解還元により上記酸化被膜を除去する工程と、
(B)酸化被膜が除去された銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により上記銀基材の表面上に塩化銀皮膜を形成する工程
とを含み、上記(B)工程において、電解酸化の一部又は全部において、酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように、又は酸化電圧を連続的に高くなるように印加することを特徴とする銀/塩化銀電極の製造方法。
【請求項2】
上記(B)工程における電解酸化の酸化電圧を、上記(A)工程の電解還元における還元電圧の1/10以下とすることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
上記銀基材が、直径が2mm以下の銀細線又は厚さが1mm以下の銀薄膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極電位測定や、電極電位の変化を検出する化学センサ、バイオセンサなどに用いられる参照電極として好適な銀/塩化銀電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学の分野において、電位測定の基準電極として用いられる参照電極は、必要不可欠であり、一般に、銀/塩化銀電極が用いられている。銀/塩化銀電極は、従来、作用電極や対極とは分離して用いられるのが一般的であったが、近年、化学センサ、バイオセンサの分野において、オンチップ型のセンサの開発が進められており、これに応じて、参照電極を小型化し、作用電極や対極と同じ基板上に参照電極を形成するニーズが高まっている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平10-253573号公報
【特許文献2】特開2001-4581号公報
【特許文献3】特開2005-265727号公報
【特許文献4】特開2015-99070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気化学センサに用いられる銀/塩化銀電極は、銀を塩素イオンの存在下で電解酸化することで形成されている。通常、銀材料の表面部には、大気中での酸化による酸化被膜が形成されているが、酸化被膜を除去することなくそのまま電解酸化してしまうと、銀の電解酸化反応を妨げるだけでなく、酸素濃度応答によって、正常な銀/塩化銀参照電極の電位からのずれが生じるため、電解酸化する前に、酸化被膜を完全に除去する必要がある。
【0005】
棒状の銀材料の表面上に塩化銀が形成された従来の一般的な銀/塩化銀電極では、電極自体が比較的大きいので、例えば、銀材料の表面部を研削又は研磨するなどの物理的手法により酸化被膜を除去すること、又は銀材料の表面部の酸化被膜を化学的手法により除去することが可能であり、また、その後に施される塩素イオン存在下での電解酸化においても、形成される塩化銀部分に対して、その基体部をなす銀部分が十分大きいので、機械的強度も確保される。
【0006】
しかし、オンチップ型のセンサなどの、例えば、物体の表面等に張り付けるなどして狭い空間で測定を行うセンサにおいて、作用電極や対極と同じ基板上に参照電極を形成する場合、参照電極自体も相応に小型化する必要があり、このような場合、例えば、銀の細線や銀の薄膜を用いることになるが、この場合、上述した物理的手法により酸化被膜を除去することは、銀の細線や薄膜の機械的強度が低いため、銀の細線や薄膜自体を損傷するおそれがあり、また、その近傍に存在するセンサ部を損傷する危険も伴う。そのため、この場合、物理的手法による酸化被膜の除去は、その実施において、工程が煩雑になるため、採用し難い。
【0007】
一方、化学的手法による酸化被膜の除去は、このような微小な銀/塩化銀電極の作製には好適な手法であるが、従来の比較的大きい銀材料を用いた場合と比べて、銀部分が細い又は薄いため、従来の処理条件をそのまま適用することができない。銀の細線や薄膜では、基体部をなす銀部分が極めて細く又は薄いため、酸化被膜を剥離する工程においては、酸化被膜を確実に除去しつつ、その後の電解酸化をスムーズに進行させることができる銀表面を生成させることが求められる。また、その後の電解酸化の工程においては、微細な銀部分を劣化させることなく、銀表面上のみに、塩化銀皮膜を効率よく、かつ銀表面から剥離してしまわないように生成させることが必要である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、オンチップ型のセンサなどの参照電極として好適な微小な銀/塩化銀電極であり、狭空間での測定においても参照電極として有効に機能する銀/塩化銀電極を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、表面部に酸化被膜を有する銀基材から酸化被膜を電解還元により除去した後、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により銀基材の表面上に塩化銀皮膜を生成させる際、電解酸化の一部若しくは全部において、酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように、若しくは酸化電圧を連続的に高くなるように印加することにより、更には、電解還元における還元電圧の1/10以下とすることにより、銀基材が微小であっても、微細な銀部分を劣化させることなく、銀表面上に、塩化銀皮膜を、効率よく生成させることができ、更に、銀基材の表面からの塩化銀皮膜を剥離させることなく、安定して形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は下記の銀/塩化銀電極の製造方法を提供する。
請求項1:
(A)表面部に酸化被膜を有する銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解還元により上記酸化被膜を除去する工程と、
(B)酸化被膜が除去された銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により上記銀基材の表面上に塩化銀皮膜を形成する工程
とを含み、上記(B)工程において、電解酸化の一部又は全部において、酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように、又は酸化電圧を連続的に高くなるように印加することを特徴とする銀/塩化銀電極の製造方法。
請求項2:
上記(B)工程における電解酸化の酸化電圧を、上記(A)工程の電解還元における還元電圧の1/10以下とすることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
請求項3:
上記銀基材が、直径が2mm以下の銀細線又は厚さが1mm以下の銀薄膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銀基材の表面上に、均質で安定な塩化銀皮膜を形成して、狭空間で使用されるオンチップ型のセンサなどの参照電極としての使用に耐える銀/塩化銀電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の方法により好適に製造される銀/塩化銀電極が、センサ電極を備える基板に一体に設けられたセンサの一例を示す斜視図である。
【図2】実施例1における電解還元時の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例1における電解酸化時の1段目の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例1における電解酸化時の2段目及び3段目の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図5】比較例1における電解酸化時の電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図6】参照電極が、センサ部とは別に設けられている状態を示す斜視図である。

【0013】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
本発明では、銀/塩化銀電極を、
(A)表面部に酸化被膜を有する銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解還元により酸化被膜を除去する工程と、
(B)酸化被膜が除去された銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により銀基材の表面上に塩化銀皮膜を形成する工程
とを含む方法により製造する。
【0014】
本発明において、銀基材は銀/塩化銀電極の基体となる材料であり、棒状、ワイヤ状、板状、薄膜状などの態様で用いることができるが、本発明の製造方法は、細線状や薄膜状の銀基材において、特に効果的である。細線は、市販品のワイヤを用いることができる。また、薄膜としては、市販品の銀箔を用いることができる他、基板上に、真空蒸着、スパッタリング、めっき、ペーストの塗布などの方法によって形成したものでもよい。細線としては、直径が2mm以下のものが好ましく、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下であり、10μm以上、特に20μm以上のものが好適である。また、薄膜としては、厚さが1mm以下のものが好ましく、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは5μm以下であり、0.2μm以上、特に1μm以上のものが好適である。
【0015】
銀基材は、大気に触れない状態で密封された銀製品や、基板上に上述したような方法で成膜した薄膜を、酸化を防止した状態でそのまま用いる場合のように、酸化に対する厳密な管理をしなければ、通常、表面が大気中の酸素により酸化される。銀基材の表面部に酸化被膜が存在したままでは、良好な銀/塩化銀電極とはならないため、まず、銀基材を電解還元に供して、表面部の酸化被膜を除去する。
【0016】
本発明においては、この電解還元を、塩素イオンを含む水溶液中で実施する。塩素イオンを含む水溶液としては、塩酸、NaCl、KCl等の、アルカリ金属が含まれる周期表第1族元素の塩化物、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等の、アルカリ土類金属が含まれる周期表第2族元素の塩化物などの無機化合物の水溶液を用いることができる。電解還元における塩素イオンを含む水溶液中の塩素イオンの濃度は、0.1mol/L以上、特に1mol/L以上が好ましい。電解還元における塩素イオンを含む水溶液は、より高濃度の方が、還元が効率よく進行することから好ましく、化合物の飽和濃度で用いることもできる。塩素イオンを含む水溶液は、溶存酸素の影響を減じるために、使用前に窒素ガスやアルゴンガスなどをバブリングして酸素を除去することが好ましい。なお、電解還元における塩素イオンを含む水溶液の温度は、通常0~80℃とし、好ましくは常温(例えば、10~30℃)である。
【0017】
電解還元における還元電圧は、-1V(vs.Ag/AgCl)~-0.3V(vs.Ag/AgCl)とすることが好ましい。この電圧は更に高い(即ち、<-1V(vs.Ag/AgCl)とする)方が、還元時間を短くすることができるが、多量の水素ガスの発生を伴うと、銀細線が折れやすく、また、銀薄膜が基板から剥がれ落ちやすくなるおそれがある。電解還元の時間は、1分間以上、特に10分間以上、とりわけ20分間以上で、5時間以下、特に2時間以下、とりわけ1時間以下とすればよい。
【0018】
このような条件で、電解還元を実施すれば、厚さが、例えば30nm以下、特に20nm以下の酸化被膜の除去が、十分に可能であるが、これより厚い場合(例えば、外観の干渉色が黄色を呈するような状態で、一般に、銀表面を1ヶ月以上大気下に放置した場合に、このような状態となる。)には、更に長時間の還元が必要になることがある。電解還元は、最終的に、電圧が-1V(vs.Ag/AgCl)で、-30μA/cm2程度で電流が流れる状態になるまで実施することが好ましい。
【0019】
次に、酸化被膜が除去された銀基材を、塩素イオンを含む水溶液中に浸漬し、電解酸化により銀基材の表面上に塩化銀を生成させ、塩化銀皮膜を形成する。本発明においては、この電解酸化を、塩素イオンを含む水溶液中で実施する。塩素イオンを含む水溶液としては、塩酸、NaCl、KCl等の、アルカリ金属が含まれる周期表第1族元素の塩化物、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等の、アルカリ土類金属が含まれる周期表第2族元素の塩化物などの無機化合物の水溶液を用いることができる。この水溶液中の塩素イオンの濃度は、より低濃度の方が、塩化銀が安定した状態で生成し、銀基材との密着性もよい。そのため、電解酸化における塩素イオンを含む水溶液の濃度は、1mol/L以下、特に0.5mol/L以下が好ましい。なお、電解酸化における塩素イオンを含む水溶液の濃度は、塩化銀皮膜の形成効率を考慮すれば、通常0.05mol/L以上、特に0.1mol/L以上である。塩素イオンを含む水溶液は、溶存酸素の影響を減じるために、使用前に窒素ガスやアルゴンガスなどをバブリングして酸素を除去することが好ましい。なお、電解酸化における塩素イオンを含む水溶液の温度は、通常0~80℃とし、好ましくは常温(例えば、10~30℃)である。
【0020】
電解酸化における酸化電圧は、+1mV(vs.Ag/AgCl)~+100mV(vs.Ag/AgCl)、特に+5mV(vs.Ag/AgCl)~+50mV(vs.Ag/AgCl)とすることが好ましい。この電圧は、更に高い(即ち、>+100mV(vs.Ag/AgCl)とする)方が酸化時間を短くすることができるが、塩化銀を安定した状態で生成させることが難しくなるおそれがあり、また、銀基材との密着性が損なわれるおそれがある。そのため、本発明の電解酸化においては、(B)工程における電解酸化の酸化電圧を、(A)工程の電解還元における還元電圧の1/10以下、特に1/20以下とすることが好適である。
【0021】
また、本発明の電解酸化においては、電解酸化の一部又は全部において、酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように、又は酸化電圧を連続的に高くなるように印加することが好適である。塩化銀を安定した状態で生成させるためには、比較的低い電圧を適用することが好ましいが、特に、初期段階、即ち、塩化銀の核を形成する段階に過剰な電圧を与えると、銀基材の表面上に均質な核が生成されず、その結果、その後の核の成長や、膜への成長の段階において、不均一な成長となってしまうため、銀基材との密着性の低下や、電極としての機能の低下につながる。一方、初期段階で、一旦、安定した均質な核が生成されて膜が形成されれば、酸化電圧を上昇させても、安定した成長状態が維持できるので、その後は、生産性を考慮して、酸化電圧を上げることが有効である。
【0022】
酸化電圧を異なる2種以上の酸化電圧で段階的に高くなるように印加する場合は、例えば、所定の酸化電圧で所定時間印加し、その後、電圧を上げて所定時間印加する操作を1回又は2回以上繰り返せばよく、また、酸化電圧を連続的に高くなるように印加する場合は、所定の酸化電圧から酸化電圧を徐々に上げながら所定時間印加すればよい。なお、酸化電圧の段階的な上昇と、連続的な上昇とを組み合わせることも可能であり、更には、電解酸化の最終段階で、酸化電圧を低下させることも可能である。電解酸化の時間は、10分間以上、特に30分間以上、とりわけ1時間以上で、5時間以下、特に3時間以下、とりわけ2時間以下とすればよい。特に、低い酸化電圧で長時間電解酸化する方が、安定した塩化銀皮膜を得やすい。
【0023】
このような条件で、電解酸化を実施すれば、厚さが、例えば、10nm(外観の干渉色が灰色を呈するような状態)以上で、30nm以下、特に20nm以下(外観の干渉色が黄色を呈するような状態)の安定な塩化銀皮膜を形成することができる。電解酸化は、最終的に、電圧が+100mV(vs.Ag/AgCl)で、+70μA/cm2程度、又は電圧が+50mV(vs.Ag/AgCl)で、+35μA/cm2程度で電流が流れる状態になるまで実施することが好ましい。
【0024】
塩化銀皮膜は脆く剥離しやすいので、透水性のポリマー、例えば、セルロース、再生セルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルポリピロリドン、デンプン、アガロース、ゼラチン、キチンのようなムコ多糖類、ナフィオン(登録商標)などのごく薄いイオン交換膜などによる透水性の保護層で保護することが好ましい、また、このような透水性の保護層で銀基材を保護してから本発明の(A)工程及び(B)工程、即ち、電解還元の工程及び電解酸化の工程を実施することもできる。
【0025】
本発明の銀/塩化銀電極の製造方法は、化学センサ、バイオセンサなどにおけるオンチップ型のセンサなどの、例えば、物体の表面等に張り付けるなどして狭い空間で測定を行うセンサに用いる参照電極として好適である。オンチップ型のセンサにおいては、一般に、図6に示されるように、参照電極1は、センサ部2と別に設けられ、センサ部2上にサンプル水溶液3を滴下し、サンプル水溶液3に参照電極1を浸漬して、測定がなされる。なお、図6中、11は銀/塩化銀電極、12は容器、121は液絡部、13は飽和塩化カリウム水溶液、14は配線、21は基板、22はセンサ電極、23センサ電極端子、24は配線、25はOリングである。
【0026】
これに対して、本発明の銀/塩化銀電極の製造方法は、微小な銀/塩化銀電極において特に有利であることから、参照電極として良好に機能する微小な銀/塩化銀電極が、センサ電極を備える基板(チップ)に一体に設けられたセンサを提供することができる。このようなセンサとして、具体的には、検出部の表面電位の変化を測定するセンサ電極と、銀/塩化銀電極とが、例えば同一の基板上に一体に形成されているセンサを挙げることができる。このようなセンサとしては、例えば、電界効果トランジスタを用いたセンサが好適である。
【0027】
銀/塩化銀電極がセンサ電極を備える基板(チップ)に一体に設けられたセンサでは、例えば、図1に示されるように、銀/塩化銀電極11とセンサ電極22とが同一の基板21上に設けられ、銀/塩化銀電極11及びセンサ電極22に跨ってサンプル水溶液3を滴下することで、測定が可能である。この場合、短時間の測定を前提にしているセンサであれば、透水性の保護層15に飽和塩化カリウム水溶液等の電解質を含浸させておけばよく、図6に示される参照電極のように飽和塩化カリウム水溶液を充填する部分を形成することは、必ずしも必要ではない。なお。図1中、26は参照電極端子である。また、他の部分は、図6と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
銀/塩化銀電極を、センサ電極を備える基板(チップ)に一体に設ける場合、基板上に、真空蒸着、スパッタ、めっき、ペーストの塗布などの方法によって銀薄膜を形成し、この銀薄膜を銀基材として、本発明の方法により銀/塩化銀電極を製造することができる。この場合、各工程は、必要に応じて、センサ電極などを保護して実施すればよい。一方、銀細線や銀箔を用いる場合は、予め本発明の方法により銀/塩化銀電極を製造して、これを、センサ電極を備える基板(チップ)に取り付けることができる。この場合は、銀/塩化銀電極の製造時に、センサ電極などを保護する必要がなく、簡便である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
電界効果トランジスタを用いたセンサの基板上に、下地層として厚さ200nmのチタン薄膜をスパッタリングにより成膜し、その上に、銀基材として、厚さ1μmの銀薄膜をスパッタリングにより成膜し、約1ヶ月、大気下で放置した。この銀薄膜の表面部には、厚さ30nm程度の銀酸化被膜が形成されていた。この銀薄膜に対し、窒素ガスを40分間バブリングした常温の飽和塩化カリウム水溶液中で、-1V(vs.Ag/AgCl)の還元電圧で30分間電解還元した。電解還元時の電流密度の経時変化を図2に示す。電流密度は、最終的に-30μA/cm2となった。また、自然電位は、最終的に-142mV(vs.Ag/AgCl)となった。
【0031】
次に、電解還元後の酸化被膜が除去された銀薄膜に対し、窒素ガスを40分間バブリングした常温の0.1mol/L塩化カリウム水溶液中で、+5mV(vs.Ag/AgCl)の酸化電圧で120分間電解酸化(1段目)し、次いで、+10mV(vs.Ag/AgCl)の酸化電圧で1分間電解酸化(2段目)し、更に、+50mV(vs.Ag/AgCl)の酸化電圧で2分間電解酸化(3段目)した。電解酸化時の1段目の電流密度の経時変化を図3、電解酸化時の2段目及び3段目の電流密度の経時変化を図4に、各々示す。電流密度は、最終的に+35μA/cm2となった。また、自然電位は、最終的に-0.6mV(vs.Ag/AgCl)となった。これにより、銀基材の表面上に、外観の干渉色が灰色を呈する厚さ10nm程度の安定な塩化銀皮膜が形成され、参照電極として良好に機能する銀/塩化銀電極が得られたことが確認できた。
【0032】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で電解還元した、電解還元後の酸化被膜が除去された銀薄膜に対し、窒素ガスを40分間バブリングした常温の0.1mol/L塩化カリウム水溶液中で、+50mV(vs.Ag/AgCl)の酸化電圧で110分間1段で電解酸化した。電流密度の経時変化を図5に示す。電流密度は単純に減衰せず、最終的に+20μA/cm2となった。また、自然電位は、最終的に-109mV(vs.Ag/AgCl)となった。電流密度の不安定さと自然電位の銀/塩化銀電極とのずれから、表面の塩化銀皮膜に欠陥があり、参照電極としては不適であった。
【符号の説明】
【0033】
1 参照電極
11 銀/塩化銀電極
12 容器
121 液絡部
13 飽和塩化カリウム水溶液
14 配線
15 透水性の保護層
2 センサ部
21 基板
22 センサ電極
23 センサ電極端子
24 配線
25 Oリング
26 参照電極端子
3 サンプル水溶液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5